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1954-09-30 第19回国会 衆議院 内閣委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月三十日(木曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 稻村 順三君    理事 大村 清一君 理事 平井 義一君    理事 高瀬  傳君 理事 下川儀太郎君    理事 鈴木 義男君       青木  正君    大久保武雄君       山崎  巖君    並木 芳雄君       飛鳥田一雄君    淡谷 悠藏君       中村 高一君    前田榮之助君       辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君  委員外出席者         参  考  人         (政治経済研究         所所員)    矢部 貞治君         参  考  人 安岡 正篤君         参  考  人         (読売新聞論説         委員)     梅田  博君         専  門  員 龜卦川 浩君         専  門  員 小関 紹夫君     ――――――――――――― 九月三十日  委員大久保武雄君、和田博雄君及び中村高一君  辞任につき、その補欠として西村直己君、淡谷  悠藏君及び前田榮之助君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員西村直己辞任につき、その補欠として大  久保武雄君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  行政機構に関する件  参考人より意見聴取     ―――――――――――――
  2. 稻村順三

    稻村委員長 これより内閣委員会を開きます。  本日は反民主主義活動対策協議会及び中央調査社について調査を進めます。まず緒方総理より、反民主主義活動対策協議会閣議決定に至るまでの経緯並びにその目的機構等について、またさらに中央調査社構想について説明を求めます。緒方総理
  3. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 反民主主義活動対策協議会という名前のもとに、九月十五日の閣議一つ閣内連絡機関を決定いたしたのであります。これはいわゆる共産側平和攻勢の現われといたしまして、すでに委員の各位も御承知であろうと思いまするが、最近、反民主主義と申していいと思いますが、いろいろな活動が現われて参つたのであります。そこで関係閣僚相互の間の情報交換連絡というものを緊密にいたしまして、さらに今後これに対する総合的の根本対策を相談いたしまするために、この協議会を設けたのでありまして従来とも各関係閣僚の間の情報交換連絡はもちろんやつて参つたのでありますが、これを一層緊密にする、その反民主主活動も複雑を加えて参つておりますだけに、それに対処するためにはもつと緊密な連絡を必要とするという考えのもとにごしらえたのであります。これは名前協議会ということになつておりますけれども、今申し上げましたように、閣内連絡機関でありまして、法令に基く機関ではもちろん、ございません。ただ閣議決定の上に、事実上の機関として設けたものであります。  委員は副総理でありまする国務大臣、それから法務大臣、外務大臣文部大臣農林大臣運輸大臣労働大臣、それから国家公安委員会委員長、防衛庁の長官内閣官房長官ということにいたしております。なお協議会には会長置ぎまして会長は副総理である国務大臣がこれに当ります。協議会幹事を若干名置きます。幹事関係行政機関の職員のうちから会長がこれを委嘱することになつております。幹事協議会所掌事務につきまして委員を補佐する。これも普通のこの種の会と同じ形をとつております。それなら協議会の庶務はどこでやるか、これは内閣総理大臣官房でやることになつております。  九月十五日にこういう閣議決定をいたしましたが、その後いろいろ目の前の政務が多忙をきわめておりまして、まだ会合を一回もやつておりません。従いまして、どういう方策を立てて今後この目的とするところに当つて参るかということは、まだきめていないようなわけであります。  それから委員長から中央調査社というものについて説明をしろということでございましたが、これは政府と何らの関係がございません。従つて私から御説明申し上げることはできません。
  4. 稻村順三

    稻村委員長 これより質疑を行います。質疑の通告がありますので、順次  これを許します。山崎巖君。
  5. 山崎巖

    山崎(巖)委員 九月十五日に閣議決定に基きまして、非常に突然反民主主義活動対策協議会というものが設置せられたのであります。ただいま御説明を伺いますると、この機関は、最近とみに活発化しつつありまする共産主義運動平和攻勢文化活動に対しまして、関係機関相互情報交換連絡及び総合的の根本対策を樹立するとう点に、その目的があるように信ずるのであります。  そこで伺いたいと思いますることは、第十五国会におきまして、予算委員会その他において非常に問題になりました、いわゆる緒方構想による情報機関の問題でありまするが、その緒方構想による情報機関は当時の御説明によりますと、世界各国情報を収集し、その収集しました情報を官庁その他に流すというのが、大体の構想であつたように伺つておるのであります。この今回の協議会は、かつての十五国会で問題になりましたいわゆる緒方構想に基く情報機関とは、何ら関係のないものと信ずるのでありますが、世間ではこの点について相当誤解があるように思いますので、その点を明瞭に副総理から御答弁を願つておきたいのであります。
  6. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 山崎委員から御質疑がありましたように、一、二の新聞等で今回の反民主主義活動対策協議会が、何らか昔の情報局を連想させるものであるかのような印象を与えております。またさきに私がよほど前の国会でありますが、情報収集に関しまして一つ構想を立てて、御承認を求めかけたことがあるのでありますが、その際、その私の構想があたかも昔の軍がしきりに情報統制しておりました時代の、言いかえますならば、戦争中の情報局に類似する機関であるかのようにとられまして、いろいろ意見がありましセことは、私乍申し上げるるまでもない。しかし当時の私の考えは、まつたくすべての内外情報を、政務を執行いたしまする上にその参考として、あらゆるチャネルを通して集めたい、それによつて政務遂行の上に万全を期したいという考えであつたのでありますが、これは内閣調査室においてできるだけのことをその後もやつております。でありますが、今度の反民主主義活動対策協議会というものは、当時うわさされました戦争中を連想させる情報局のごとき機構、これは何ら政府としては実体がなかつたのでありますが、新聞等でそういうことを伝えられておりますが、そういうものの具体化というようなものでは絶対にないのであります。今回のはまつたく共産主義活動に対しまして、政府また閣僚の間の情報交換、あるいは連絡を密にいたしまして、これに対する対策を根本的に立てて参ろう、そういう機関であるのでございます。
  7. 山崎巖

    山崎(巖)委員 もう一点明瞭にしておきたいと思いますことは、最近新聞で見ますと、世論調査機関として民間中央調査社というものが、明日から発足することに相なつておるようであります。この中央調査社は、前回の第十九国会におきまして、当委員会において内閣所属世論調査所廃止して、世論調査の実際の仕事民間にやらせるということを、われわれはここで承認をいたしておるのであります。世論調査事務占領政策一環として、二十三年からでありましたか、総理府世論調査所設置されて以来、政府仕事としておやりになつてつたのでありますが、世論調査事務のごときはむしろ民間にこれを委譲であろうというので、政府から提出せられましたこの廃止案に私ども賛成をいたしたわけであります。この中央調査社は、その当時の当委員会承認いたしました国立世論調査所廃止に基く民間機構の整備の一つであろうと私は考えるわけであります。この点につきまして非常に世間誤解があるようでありまして、中央調査社が、今回の反民主主義活動対策協議会と何らか関連があるように考えておる向きがあるように私は伺うのでありますが、そういうことは絶対に私はないと信じますが、その点につきましてもなお政府の御所信伺つておきたいと思います。  前回国会におきまして、その当時の官房長官でありました江口政府委員答弁によりますと、国立世論調査所に関する予算が二千四百三十四万円でありましたが、できるだけ減員をして、企画事務だけはしばらく総理府に残す。そうして予算のうちで七百三十万円を民間委託費として世論調査民間に嘱託する、こういう答弁であつたのであります。世間では今回の中央調査社に対しまして政府から三千万円の予算を流すというようなことをうわさいたしておりまするが、これはおそらく私は何らかの誤解であろうと思いまするが、その点につきましても緒方総理の御所信伺つておきたいと思います。
  8. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 世論調査に対しての私の意見山崎委員のお述べになりまし、たことと全然同じでありまして、今の御意見に私は全幅の賛成をいたすのであります。初め内閣国立世論調査庁庄論調査というようなものは政府あるいは官辺ですべきものではない。これは純民間でやつて初めてその権威があるという考えを持つておりまして、そのために先般の行政整理一環として廃止いたしたのであります。その後中央調査社というものがつくられたことは承知しておりまするが、これは先ほども申し上げましたように政府とは何ら関係がございません。率直に申しますると、政」府の私とか官房長官とかに発起人になつてくれぬかというような希望がありましたが、私は世論調査というものは純民間で行うべきものであるという意見を持つておりまするだけに、これを謝絶いたしました。実際その機構といたしましても時事通信の世論調査と、さらに元国立輿論調査所におつた何がしかの人が新たに加わりまして、その機構をさらに強化して独立したものになつておると思います。これは政府は全然関係のないことは今お述べになりました通りであります。  それからこの中央調査社がはたしてどういう業績を立てるかということはあらかじめ予測はできませんが、この中央調査社輿論調査の上に非常に優秀な成績を持ちまするならば、他の輿論調査所と同じように、政府が何らか必要を生じた場合に、輿論調査を依頼することはありましても、あらかじめ政府がこれを補助して参るという機構にはなつておりません。
  9. 山崎巖

    山崎(巖)委員 十五国会で問題になりました緒方構想に基く情報機関並びに今回発足せんとしまする中央調査社とが、今議題になつておりまする反民主主義活動対策協議会と何らの関係がないということはここで明瞭脚に相なつたわけであります。この機会に私は政府言論新聞情報等に対しまする根本的のお考えを念のために伺つておきたいと思います。  世間では今回の協議会設置に基きまして、また政府戦争中あるいは戦争前のような言論統制をやるのじやないか。あるいは言論に制限を加えるのじやないかというような危惧の念を抱いておる者が多数あるようであります。これらの点につきましてこの機会緒方総理から言論あるいは出版その他に対しまする政府の根本的の考え方を一応念のために伺つておきたいと存じます。
  10. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政府といたしましては、言論政策として新聞あるいはその他の出版物、映画、放送等統制あるいは制限するというような考えは全然持つ薫りません。われわれの輩といたしましては、政府が公式に発表をいたすいわゆるステートメントというようなものは別でありまするが、今日の非常に進歩した言論機関というものに一つの既成の意見を押しつけようとすることは、これは不可能であるのみならず、政策といたしましてもきわめて愚劣な政策でありまして、そういうことは政府としても毛頭考えたことはないのであります。今の政府意図を浸透させるということにつきましては、政府はいろいろな方法をもつて内外情報をできるだけ漏れなく吸収いたしまして、そして機会に応じてそれに関する政府考えスポークスマンを通じて新聞その他に発表して参る。それを新聞その他が取入れるか取入れぬかは、これは言論機関そのものの自由でありまして、政府といたしましてはそれ以上にこれを強制する方法をとろうとは考えておりませんし、そういうスポークスマンの品を通して、自然に政府考えを述べますることによつて政府意図輿論の間にだんだんに浸潤して参ろう、そういうことを考えておるだけでございます。
  11. 山崎巖

    山崎(巖)委員 もう一点だけ伺つて質問を打切りたいと思いますが、共産主義運動の実態につきましては、他の機会政府委員その他の方々から十二分に私どもは伺いたいと思つておりますが、現在非常に活発化しております共産主義運動に対しまして、本協議会が今後どういうふうに運営をせられるのか。ただいま伺いますと、設置早々であつて、まだ幹事の任命もしていない。またこの事務を取扱うのは内閣官房であるけれども内閣官房のどこにやらせるのかこれもきまつていない、こういうふうなお話でありまするが、この重大なる問題につきまして、せつかく設置されました協議会が、今後どういうふうな活動方針をとられるのか、大体の御構想がございますればこの機会伺つておきたいと思います。  なお私どもはこの協議会閣議決定の案を見まして非常に奇異に感じます一点は、関係大臣の中に厚生大臣を加えていない。厚生大臣国民生活の面におきまして、非常に重大な御関係があるように思うのでございますが、厚生大臣が加わつておらないというのは、何か特殊の意味があるのかどうか、そういう点につきましても、副総理から一応説明伺つておきたいと思います。またこの協議会につきましては、活動根本方針いかんによりましす。この予算につきましても、あるいは予備費の支出とかそういうことについてお考えになつておるかどうかというような点も、この機会に明らかにしておいていただきたいと存じます。  要は本協議会が重大なる問題であります共産主義活動に対しまして、今後どういうふうに運営して行かれるのか。ただ一片の思いつきで、こういう協議会をつくられたとするならば、かえつてマイナスであつて非常に遺憾なことであると私は信ずるわけであります。こういう点につきまして、緒方総理の御答弁を煩わしておきたいと存じます。
  12. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 反民主主義活動対策協議会が、どういう運営をして行くつもりであるかという御質問でありまするが、まだ一回の会合もしておりませんので、私から会全体としての考えを申し上げる立場におりませんけれども、私の考えとしましては、この反民主主義活動に対します対策も、やはりできれば政府でない方がいい。民間機関活動にまつことが実際的に効果があるのではないかと思います。ただ政府部内の協議会といたしましては、今までそういう機関がどこにもない。そこで政府といたしまして、政府立場からどういう方法をとつてこの政策を効果あらしめて行くか。民間でこれを行うがいいか、民間でやるとしてどういうことが望ましいか。また政府として限界はありますが、その間にどういう活動をするかというまず基本的なことを政府がきめて参りたい。現に民間にすでに相当有力な人々の集まりによります。反民主主義対策協議会と同じ趣旨のものがすでに組織されておりまして、国会の人の中でも御関係が相当あると思います。そういうものと緊密な連絡をとつて参りたいと考えております。  厚生大臣こ委の員に入れなかつたことは、私別に特殊の考えはございませんが、必要に応じてこの委員は増減して参ることができると思つております。
  13. 稻村順三

  14. 高瀬傳

    高瀬委員 ただいま緒方総理から反民主主義活動対策協議会設置趣旨についてお話がありました。しかもこの協議会というものは閣議決定に基く事実上の機関であるというような趣旨の御説明と、この協議会はまだ何ら活動をしていないというお話であります。  そこで私は二、三伺いたいのでありますが、わが国の現状において反民主主義勢力が潜在的にその勢力を増しておる。しかも幾多の事実があるというようなことを緒方総理はただいま言われました。従つてこの反民主主義活動対策を講ずることには私も異論はありません。ただその反民主主義活動というものは共産主義だけに限られておつて、いわゆる国会無視傾向であるとか、あるいはいわゆる暴力を肯定するような極右的な活動であるとか、そういうものには何ら触れておられないようでありますが、その点は非常にあいまいで、私は政府意図を捕捉するに苦しむところなのであります。従つてこの反民主主義活動対策を講ずる場合に、その運営を一歩誤りますと、かつて暗黒政治というようなものを、大きく言えば招来しないとも限らないのでありまして、この際その点について政府の真意を伺つておきたいと思うのであります。
  15. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 この協議会対策を立てまするその対象といたしましては、今お述べになりましたようにもちろん共産主義だけではありません。非合法の活動をする、あるいは暴力活動をするいわゆる極右団体、これに対する対策もどうあるべきかということを研究して参りたいと考えております。反民主主義の字の表わしますように、全体主義的の傾向はその一つ対象になると思つております。
  16. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは重ねて伺いますが、緒方総理はかつて北海道に旅行されましたときに、あのラストボロフ事件にかんがみまして国家機密保護法というようなものを設定する必要があるということを強調されたようでありますが、そのときの心境とこの反民主主義活動対策協議会とは一体どんなふうな関係にあるのですか、これをひとつ伺いたい。
  17. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 北海道で別に強調もいたしませんが、そういうことを述べたことは事実であります。実際今国家機密というようなことを取締る法律が全然ない。先般アメリカから借り受ける兵器につきましては一つ法律ができましたけれども、それ以外には全然ない。その種類法律は十七種類くらいあつたと思いますが、敗戦と同時に全部廃棄されておりまして、これでは私は独立国としてはいかぬのみならず、いかなる独立国にも、この種の法律一つもない独立国はないと考えます。そういう意味ラストボロフによつて生じだ一つの心配、国家機密に対する保護法律ということもまだ法務省では用意はしておりませんけれども、当然に必要なものと考えております。
  18. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは国家機密保護法というようなものを将来設定する心組みを持つて政府は着々準備を進めておるというふうに解釈してよろしいわけですか。
  19. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今準備を進めておりません。法務省でまだ研究中のようであります。
  20. 高瀬傳

    高瀬委員 緒方総理としてはこの必要を十分痛感しておられることは確かであります。
  21. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 国家機密は守らなければならぬと考えております。
  22. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは話題をかえて申し上げますが、一体この反民主主義活動協議会というものはアメリカの非米活動調査委員会のような性格を持たせるつもりでありますかどうか、その点をひとつ
  23. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 アメリカの非米活動委員会というものは、私実は内容はあまりよく存じませんが、国会に所属しておるのじやないかと思います。やはりこれは国会民間か、そういう方面にあるべきものじやないか、政府としてはそれに至るまでの対策の基本的な研究をしようとしておるのでありまして、国会とか民間にそういう対策に関する団体ができることは望ましいと考えております。
  24. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは続いて伺いますが、反民主主義活動を認定するのは、先ほど緒方総理は必ずしも共産主義ばかりではないと言われましたが、この反民主主義を認定する範囲というものは私は非常に重大だと思う。従つて民主主義活動というものの範疇に属するものはどういうものであるかという政府のはつきりした見解を私ども伺つておきたいと思います。これは九月幾日かに発足しておるのでありますから。
  25. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 反民主主義というのは、民主主義の育成を妨げる非合法あるいは暴力を用いる活動でありまして、先ほど申しましたすべての極左極右を問わず全体主義的の活動はすべてそれに属すると考えております。
  26. 高瀬傳

    高瀬委員 ただいまの説明だけではまだはつきりいたしません。それではただいま緒方総理の言われましたように反民主主義活動が明確であつた場合に、一体政府はこれをどういうふうに処置するおつもりでございますか。
  27. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 この協議会としてはそういう限界一つ研究対象でありまして、それに対してどう処置するかということはその後に起つて来る問題と考えております。
  28. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは先ほどお話になりました、最近話題になつておる中央調査社、これは緒方総理の御説明によると、全然政府とは関係ないというようなお話でありますが、新聞紙あるいはその他の伝えるところによりますと、どうもこれは非常に関係がある、先ほどお話の中にいろいろな情報を集めたり、あるいは情報を外国に流したりする機関は、できれば政府でない方がいいということを緒方総理が言われました。つまりただいま政府に存在する公安調査庁ではだめなのであつて、できれば政府以外の機関の方がいいということになりますとそれに該当するのは、常識的に考えてやはり山崎さんが言われました、明日発足するこの中央調査社というもの以外に私はなかろうと思う。しかもこれは行政整理の際国立世論調査所というものがなくなつたために、時事通信社の世論調査室と一緒にして、失業救済のような形で乗りかえて、そして政府がが三千万円金を出すということで、どうも緒方総理などが非常にそれを育成強化する原動力になつておるというふうに伝えられておりますが、その点はいかでございますか。
  29. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 先ほども申しましたように、政府とは全然関係がありません。これは中央調査社というちよつと風がわり名前がついておりますが、純然たる世論調査所でありまして、現在このほかも独立した世論調査所がありはせぬかと思いますし、各大新聞社にも世論調査所とか局というものがあつてつております。その一つ考えておりまして、何ら政策的の色のついたものではないと思います。
  30. 高瀬傳

    高瀬委員 そでれはこの中央調査社というものに対して政府は全然補助金を出しておらない。将来も援助する意思は毛頭ない、こういうことでありますか。
  31. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 その通りであります。(「将来やらないね」と呼ぶ者あり)将来やりません。将来世論調査を依頼することはあつても補助することはありません。
  32. 高瀬傳

    高瀬委員 この反民主主義協議会行政機関に属する、これは先ほど言われたようでありますが、内閣の事実上の機関だというのでありますから、一つ行政機関に属しておることはいなめないと思います。こういうことになりますと、私の考えでは種々この反民主主義協議会というものに弊害が起つて来る。それは反民主主義活動というものを、時々の政府見解によつて解釈を左右するような傾向が非常に多くなる。従つて民主主義活動の名において反対党を弾圧し、あるいは政府反対勢力を弾圧したりするような結果になりはしないかと思うのですが、この点いかがですか。
  33. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政府行政力をもつて反対党を弾圧するというようなことをお考えになるのは、それは政党みずから卑下なさり過ぎるのでありまして、そういうことは絶対できるわけは、ございません。また政府はこの機関を通しまして、そういうことをしようとする意図は全然持つておりません。
  34. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは伺いますが、非米活動調査委員会というものが、御承知のようにアメリカ国会の中に設けられているようであります。理想として言えば、民間人も含めた諮問機関にするか、あるいは国会の中に設けるかすべきだと思うのであります。これは内閣の事実上の機関などという妙な言葉で現われておりますが、やはり理想としては、民間人も含めた諮問機関にするか、あるいは国会の中に設けるのが私は最も民主主義的なやり方だと思うのであります。内閣の事実上の機関などと言つておられますから、ただいま私が前段において質問したようなことが起きるのでありまして、この点に関する政府の所見をひとつ伺つておきたい。
  35. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政府国会にさしずをしてこういう機関を置かせようというよう公ことは、政府としてま考えておりません。私が先ほど申し上げましたのは、こういう機関国会あるいは民間にあることが望ましいと言つたので、政府が現に考えておりますのは、政府としては反民主主義的な活動に対しましては、一つの方針を持つていなければならない。それにつきましてその対策はどうあるべきかということを研究し、その研究をするにつきましては、関係閣僚の間に十分な情報の交換あるいは連絡をして参りたい、それがこの協議会の生れたゆえんであります。
  36. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは伺いますが、公安調査庁というものが内閣にあるようであります。これの使命は一体どういうものですか。
  37. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これは法務省にあります。内閣には、ございません。
  38. 高瀬傳

    高瀬委員 この公安調査庁というものが、単に極右極左の団体に対する調査活動、たとえば国家が極右活動を調べる、あるいは極左の団体活動を調べるというならば、それは公安調査庁が法務省にあろうと何しようと、これは公安調査庁で調べれば間に合うことであると思うのですが、この点いかがですか。
  39. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 公安調査庁では極左極右の非合法的な活動調査しております。しかしこれに対する政治的なあるいは政策的な対策をどうしようかということは考えておりません。政府としましてはそういうものに対する対策をどうしたらいいか、どうあることが望ましいかということを研究してみたいと考えております。
  40. 高瀬傳

    高瀬委員 そうしますと、公安調査庁の任務を具体的にはどういうふうに違うのか。私よくわからないのですか、。
  41. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 公安調査庁の調査をしました資料は、この協議会において研究の有力な材料になると思います。
  42. 高瀬傳

    高瀬委員 そうしますと、この協議会において有力な材料を公安調査庁からもあるいは方々からとつて、具体的にそれを流したり何かする機関中央調査社、こんなふうになるのですか。
  43. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 高瀬委員は非常に疑い深いので…(「あたりまえだよ」と呼ぶ者あり)私が何べん言うても言うた通りに御信用にならないのですから、同じことを繰返してもむだだと思いますが、そういうことは全然考えておりません。
  44. 高瀬傳

    高瀬委員 私は実は、これは緒方さんがかつておられた朝日新聞社の記事を、きのう偶然にも見たのです。週刊朝日に書いてあるのです。これは一昨年の秋から、吉田さんが盛んに、何か情報機関みたいなものをつくれくと言われて、これは吉田さんが一昨年の秋言つたことです。ちよつと読んでみますが、「わが内閣としては、国内の真相を世界に知らせ、外国の真相を集めて、これを国内に知らせる機関を設けたいと考えて立案中である」こういう発言を吉田さんが一昨年川の判秋された。その後だんだんとかわつて来て、また昨年もそういう発言をされた。しかもこれは古野伊之助氏の言葉でありますが、こういうことをうそかほんとうか言つたと書いてある。「私はたびたび首相と会つているが、そのたびに首相は、古野君情報機関はどうなつたかね、ぜひ強力なものを作つてほしいねといわれるんだ。緒方総理にはむしろ私がシリをたたいているようなものだ」こういうふうに古野氏がしやべつているのです。まさかあなたが指導された朝日新聞が、そんなむちやなことを言うはずもないと思う。それで私は、これは特にあなたと御関係の深い記事ですから、その点も伺いたい。それかわこつちに、中央調査社の問題についてもあるいはニュース・センターの問題についても、政府が十億くらいの金を出すといつて、これも国会でわいわいになつてだめになつた。今度は、例の乱闘事件でへんな記事を流したというので、情報文化局長などを左遷したり何かしましたが、とてもたまらぬというので、どうしてもこれは何か機関をつくらなければだめだということ、それから中央調査社に対しては三千万円とりあえずやる、内閣世論調査所がなくなつたから、それを時事通信に併合してもらつて、そのかわりに三千万円くらいとりあえずやつて、あとはだんだんと強化して行つてやるから発足しろ、こういうふうな意味の記事が週刊朝日に載つている。これはうそかほんとうか知りませんが、まんざらうそではなさそうに思えるので私は聞くのですが、古野さんと緒方さんとどういうお話をされたか知りませんけれども、これは相当脈絡がありそうに思いますので、この中央調査社というものは、先ほど緒方総理の言われるように、政府に全然関係がない、一銭も出していない、将来も出さぬということは、どうも私は信用ができないのですが、いかがでございますか。
  45. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは私の言うことを信用していただく以外に、答弁のしようはないのであります。今の週刊朝日にどういう記事が出ているか知りませんが、朝日新聞は公平な新聞でありますから、元在社していた者に対しても、冷静に、公平に批判をしていると思います。でありますが、そのあげられました資料は、非常に間違いが多く、古野君は民間人であつて、古野君に、情報機関はどうなつたと総理が言われることもないと思いますし、私が古野君の鞭撻を受けていることもございません。
  46. 高瀬傳

    高瀬委員 終ります。
  47. 稻村順三

  48. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今高瀬さんから伺つたことと重複する部分が非常に多いと思いますが、私たちの立場からもう一度伺つておきたい、こう思うのです。この協議会の設立について、今副総理は、反共的なことを強調されましたが、しかし今まで共産主義に対する対策対策だということで、破防法ができ、スト規制法ができ、あるいは教育二法ができ上つた。しかし現実には共産主義に対する対策ではなくして、まじめな民主主義的な議論が、あるいは行動が、このために非常に制圧されている。むしろこのことの方が重大な結果を生んでいるのじやないか。こういう過去の経験に照してみますと、あなたのおつしやるこのことについても、そのままには受取りがたいものを感ぜざるを得ないわけです。そこでこの協議会について、もう少し明確に率直に目的についてのお話を繰返して伺つておきたいと思います。
  49. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今回の協議会は、やはり先ほど来申しておりまする極右、極左に属する、いわゆる反民主主義活動民主主義の育成を妨げる活動、非合法、暴力的な活動というものに対する対策をどうやつて行こうかということを協議して、結論を出してみたと考えておるのでありまして、公安調査庁その他共産党に対する一つ政策が行われておりまするけれども、一九五二年でありまするか、スターリンが死ぬ前の年にモスクワで行われました共産党の大会におきまして、スターリンとマレンコフが相並んで資本主義と共産主義が両立し得るという演説をした以後、いわゆる平和攻勢というものが非常な勢いをもつて行われつつあるその実態はわれわれも十分つかんでおりません。しかしそれがそれ以後、たとえば積極的な思想的な浸潤工作等で民主主義の中に入りつつあることは、先般来アメリカの政界の動き等によりましても十分にこれを確かめることができると考えます。そういう意味から、まず反民主主義的な活動の実態をつかむことも一つ研究、協議の対象であろうと思いまするが、その実態をつかみ、それに対する対策考える、特に革命を目標とした思想的な浸潤工作、これはなかなか巧妙でありますだけに対策もよほど検討を要するのではないか、そういうことを主として研究してみたいと存じております。
  50. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 だから私は実は伺つたわけですが、今のお話を聞いておりますと、民主主義というものと共産主義というものとが全然違うもののようなお説であり、しかも民主主義の中に共産主義が侵入しつつあるというようなふうにおつしやる。しかし実際は日本の憲法で共産党は少くとも合法性を今のところは認められておる。現にこの衆議院にも川上貫一さんという方が当選しておられるのであります。こういう憲法のわく内で合法的な活動をしておるものに対してまであたかも時の内閣それ自身がこれに敵対をする、これを弾圧するというようなことを公然と言われることは、とのこと自体として憲法違反でもあり、同時にまたその心根には、もし御都合が悪ければたちまち他の政党にも同様な態度をとるであろうということを暗示していると思わざるを得ないわけです。こういう点で考えてみると、お話伺つておりますと反民主主義というのは反吉田という意味に上かとれない。そういうふうに私には思われるわけですが、憲法のわく内で認められているものに対してまで弾圧をするようなことを心がける協議会などというものはどうぞひとつおやめをいただきたいと思いますが、この点についての御意見を承りたい。
  51. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 共産主義と今日の民主主義を同じように見るか見ないかというところに非常に大きな岐路があると考えます。私ども共産主義民主主義とは同じものではないと考えます。国内的にいかなる思想が行われようとも、いかなる政体をとろうとも、それは他国の関する限りではない。でありまするが、今日の国際共産党と申しまするか、共産主義国のやつているところは共産主義名前に隠れて一つの侵略主義、思想的な侵略主義ということをやつておりますことは、これは明瞭な事実であります。ソ連におきまして、ソ連の、歴史は何回書きかえられたか知りませんが、最近になりまして、ピーター大帝であるとかイワン大帝であるとかいうような者が歴史の中にだんだん賞揚されつつある。そういうことから見ましても、共産主義活動というものは実際かわつて来ておるということは、これは認めざるを得ません。そういう共産主義がだんだん日本の国内に強い思想侵略として入つてつておることは、これは今日では常識になつておる。それをどう防ぐか。それを防いで今日の社会秩序を保つて行くにどうすれば一番適切であるかというその方向を研究してみたいというのが、この協議会目的とするところであります。
  52. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 あなたと議論をするつもりはありませんけれども、しかし憲法で認められている政党なり思想について、あなたがあくまで否定的な言辞を弄せられることについては、これは重大なお考え直しをいただかなければならないことだと思います。そういう御態度それ自身が、単に共産主義に対するばかりではなしに、実は他の健全なる民主主義に対する圧迫になつて行くのではないか、こういうことを私たちは非常におそれるわけであります。しかしこの点についてはあなたと議論を重ねることはおそらく無意味でしよう。  そこで、この点について、今のお話によりますと、アメリカの非米委員会あるいは民間団体そういうもので共産主義と対抗する組織をつくるための準備をして行く、あるいは研究をして行くためのものだ、こういうふうに今おつしやつたのでありますが、もしそうだとすると、この協議会は暫定的な意味を持つだけですか、それとも恒久的にずつと長くやつて行くのか、すなわち非米委員会のようなものをつくり上げてしまえばそれで解散してしまうのか、あるいは中央調査社ということについてはあなたは御否定になりましたが、他の民間団体を育成してしまえばそれでもう目的を達して解散するのか、永久に残つて行くのか、この辺が今のお話によりますと明確でありませんので、ひとつ明確にしていただきたいと思います。
  53. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 内外の情勢の移りかわりとともに共産主義活動の仕方もいろいろにかわつてつております。それだけにこの協議会が臨時の協議会で一応対策を立てればそれで解消するか、あるいは恒久性を持つかということにつきましては、今から申し上げることはできないように考えます。恒久性を持つ可能性もないとは言えないと思います。
  54. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 二一ストのあとでたしか公安関係閣僚懇談会というようなものができたと思いますが、それとこれとは性格的にどう違うでしようか。
  55. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今お述べになりました何とかいう閣僚懇談会は、当時私内閣におりませんでよく実態を知りませんが、名前から言うて似た性格のものではないかと思います。
  56. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今御存じないとおつしやいましたが、これは非常に一時的の性格を持つたものであつたように伺つておりますが、もし似たようなものであるとすれば、時間的にその目的を達すれば解散をしてしまうということになると思います。くどいようですが、その点もう一度…。
  57. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 国際共産党の活動が弱りましてこの協議会を必要としない時期になれば非常にけつこうでありまして、そういう時期が早く来ることを希望しております。
  58. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 話はかわりますが、この協議会をつくるについて、吉田さんがアメリカに出かけられるについてのおみやげだという議論が世間に盛んに行われておりますが、どうでありましようか。
  59. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 そういうことは私の耳には全然入りません。
  60. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 先ほど伺つておりますと、反民主主義的なものに対する対策だというお話ですが、少し皮肉つぽくて恐縮ですが、民主主義を覆滅してしまおうとするいろいろな態度が至るところに行われております。疑獄とか、汚職とかあるいは指揮権の発動とか、国民の意思に沿わない外遊とか、こういうものに対する対策はこの中に入りませんか。
  61. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 そういうものは入りません。
  62. 稻村順三

    稻村委員長 質疑はまだ残つておりますが、緒方総理の都合によつて次会に譲ることとし、午前の委員会はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。  なお次会の分につきましては委員長に御一任を願いたいと思います。     午後零時一分休憩     ―――――――――――――     午後一時四十九分開議
  63. 稻村順三

    稻村委員長 これより内閣委員会を再開いたします。  反民主主義活動対策協議会及び中央調査社設置につきまして、参考人矢部貞治君、安岡正篤君、梅田博君より御意見を承ることにいたします。  参考人の方々には御多忙中にもかかわらず、本委員会のためわざわざ御出席を賜わり厚く感謝いたします。御忌憚のない意見を十分お述べくださるようお願いいたします。  順序を申し上げます。矢部貞治君、安岡正篤君、梅田博君の順序でお願いいたします。三名の方々の御意見の開陳が済んでから、各委員においては御質疑があれば質疑していただくことにいたしたいと思います。  それでは矢部貞治君より御意見を承ることといたします。矢部貞治君。
  64. 矢部貞治

    ○矢部参考人 矢部でございます。実は反民主主義活動対策委員会と申しますものと、ただいま委員長の仰せられました中央調査社というものとの関連につきまして、私は実態を少しも知らないのであります。新聞などで報道されていること以上には何の知識もございませんので、実は国会委員会に参上して意見を申し上げるほどの自信がないということを申したのでありますが、とにかく出席するようにということで参上したのであります。それまでにもし材料が少しでも得られたらいただきたいということも申したのですが、ただいままで材料をいただいておりませんので、結局もしこういうものであるならば私はこう思いますという程度の仮定的、条件的な意見しか申し上げることができないということを御了承いただきたいと思います。従つてもしそれが事実と反したことでありますならば、これはたいへん申訳ないことで、いつでも取消さなければならぬというふうに考えております。  この問題につきまして、私は機構、形式の面からする問題と、それからこの反民主主義活動対策の内容から見た問題と、二つあり得ると思うのであります。ます機構形式の直から考えてみますと、内閣がその内閣の中に関係機関相互の情報の交換、連絡等を緊密にするとともに、これに対処する総合対策を協議する、こういうことでありますならば、その文面に現われております限りにおきましては、私は何ら異論をさしはさむ余地がないと思いますし、政府といたしましては当然このような協議をやつてしかるべきことであろうと考えるのであります。さらにもし伝えられるところの中央調査社というものが純然たる民間機関であるということでございますならば、これも機構、形式の面から申しますと、何ら反対論を申し述べる余地がない。その内容を批判することは別といたしましても、とにかくそのような民間団体が生れるということについては、私は何ら反対意見を持たないのであります。ただ問題になり得ますのは、この内閣協議会が背景にあるいは補助金、あるいは委託費等のいかなる名目であろうと、国庫からの支出をもつてある情報機関あるいは輿論機関をつくるような疑いがもしあるといたしますならば、この点は私はどうしても賛成できないという考えであります。なぜかと申しますと、第一官製の情報輿論機関というようなものは国民が信用いたしませんし、またそのような機関に対しましては、かえつて公正な輿論が生れにくいという意味において、害があるというふうに考えます。のみならず、ただ情報を集めて内閣政策樹立に資するというだけならばけつこうでありますが、その情報を背景にして輿論に働きかけるとか、あるいはまた国民の啓蒙活動をやるとかいうことになりますと、やがてその政府機関の流した情報意見に反対なものを権力を背景にして統制したり、抑圧したりするというふうな危険がどうしても伴いやすいと考えます。そのようなことになりますと、民主主義の本質がだんだん失われて来る。このような意味で過去のいろいろの官製情報機関の経験なども考えまして、そのような機構がもし考えられているとするならば、私は反対せざるを得ない。ひとつ政府政府の中でやられる、それから民間団体輿論情報機関をやると、こういうふうにはつきりとわけていただくことを希望したいという考えでございます。  さらに反民主主義活動対策というものの内容面でありますが、これはどのようなことが出て来るのか一向予想がつきませんので、意見を申し上げるという余地もないのでありますけれども、ただちよつと希望を申させていただきますならば、共産主義に対する対策政府としてお考えになるという場合には、共産主義対策というふうなものを権力主義や武力主義中心に考えても、決して成功しないということを私は申し上げたいのであります。このように申しますのは、防衛や治安の問題を私は軽視するという意味ではございません。ただ防衛にしても治安にいたしましても、一番の根本は、国民が守るに値する、あるいはどうしてもこれを失つてはならないというような国民生活を持つているということで、これが防衛や治安の一番の根本的な基礎だというふうに私は考えますので、防衛や治安をほんとうに充実せしめるということは、実はその軍隊の数をむやみにふやすとか、警察官の数をふやすということではなくしてそれも必要なこともあるけれども、それと同時に国民が自己の生活を守らねばならぬという信念を持つ、そのような前提をまず満たすことが非常に必要だ。さればといつて、そういうものができない前は防衛も治安もいらぬ、こういう議論を私はいたすのではありませんが、ただいまのところ国民生活の充実、国民精神の健全化という方向に全力を注ぐことが、むしろ最も有効な共産党対策ではないか。そのような意味におきましては、現在政府の行つているような政策をもう少し深刻に反省していただいて、たとえばデフレとか就職難とか失業とかいう時代に、今のような国民から信頼を失つているような政治が行われるということの方がむしろ共産主義を育成することになるのであつて法律で取締り、権力で取締るということの前に、むしろもう少し政治のあり方を改めるということの方が、ほんとうの共産主義対策になるのではないか。これは敷衍して申し上げますといろいろに申すことができますけれども、大体その反民主主義活動対策の内容につきましては、そのようなことをちよつと希望させていただきたいと思います。たいへん簡単でありますけれども、実体がわかりませんので、この程度で終ることにいたします。
  65. 稻村順三

    稻村委員長 次に安岡正篤君。
  66. 安岡正篤

    ○安岡参考人 私が安岡でございます。私も最近旅行を続けておりまして、帰つて参りましたばかりでございます。従つて今度のこの反民主主義対策協議会とか中央調査社設置に関しましては、ただいま矢部先生のお話の、ことく私も予備知識を一向に持ちませんでしたが、お招きを受けまして、大体かくあろうという推定のもとに、かつ今日はこれに関係内閣委員の方々のお集りと存じまして、忌憚なく意見を申し上げることをお許し願つて私の私見を申し述べるつもりで参つたのであります。その点御了承をお願いいたします。  まず結論から申し上げますと、現在の状況のもとにおいては、この種の機関を新設することは不得策であると信じます。私はそれよりもむしろ既設機関を正当に充実し、強化することを可とすると考えるのであります。その理由は、この種の問題は、理論的にも実行的にもきわめて困難でありまして、かつ失敗しやすい。元来これは常々私がことごとに感じておるのでありますが、私の最も敬愛する一人の大政治家、蒙古の大宰相に有名な耶律楚材という人があります。これはおそらく歴史を通じて古今の世界的な人物だろうと思いますが、この人の名言、これは相当人口に檜灸いたしております。それは「利を興すは一害を除くにしかず」という言葉であります。そういうことの説明はしばらくお預かりにいたしまして、今度の問題もやはりこの名言に当てはまる一例と考えるのであります。  その理由を説明いたしまするが、第一に私も、これは先ほど申し上げましたように推定でございますが、このことは要するに国家の政治的秩序を根本的に破壊しようとする意図のもとに行われる主義行動を取締ることを目的とするものである、かように存じます。ただ調査研究するだけならば政府としては無意義であります。やはり強い政治的意味を含んだ実行問題、取締り問題であると推定いたします。  しからば第二に、その取締りは徹底を要するのであります。耶律楚材をあげましたが、ついでに東洋政治学の重要な古典であります書経の中におもしろい言葉があります。それは「薬若し瞑眩せずんば厭の病癒えず」というのであります。すなわち薬が病人に目まいを起させるほど徹底しないというと病気というものはいえるものではないというのです。最近できる、病気によくきく新薬なども同じことでありまして、よほどからだにこたえるくらいに徹底して服用しなければ、いいかげんな服用ではかえつてあとで病菌の反撃力を強くして始末に困るものであることはいろいろ実験されておることでありまして、この政治上のこういう取締り機関ども、やはりやるからには徹底しなければかえつてこれは有害であります。失敗になりやすい。その意味において私はソ連や中共の政治がよい参考になると思います。ソ連や中共などの共産党国は、御承知のように実に絶対的な権力を持つて徹底的に弾圧政治を行うております。あの粛清と称する殺籔、投獄、強制労役、何ものをも辞せずして徹底的に行つておる。あれくらいにやられますと、人民はそれこそ書経流に言いますと、瞑眩といつて目まいを起しまして、ほんとうにいわゆるきくのであります。その政策がききまするし、かつ人間の、特に近代文明人心理に特有な、いわばサド・マゾヒズム的な病的な心理にも満足を与えまして、あれは非常に有効であります。この書経のついでに、日本人には有名な禅書を一つ引用しますが、碧巌録、これはだれ知らない者もない禅書でありますが、この碧巌録の第五則に、名高い雪峰という和尚の公案が出ております。その中に「大凡宗教を扶竪するには、須く是れ英霊底漢にして人を殺して眼駈がざる底の手脚有つて、方に立地に成仏すべし」という名言がある。つまり大よそ一宗一派を立てるような一つのドクトリン、一つのイデオロギー、一つの信仰、何でもよろしい、そういうものを新たに打立てるほどの人間は、よほど度胸がすわつてつて、人を殺しても目玉をばちつかさぬくらいの腕前があつて初めて成仏できるというのです。これは非常におもしろい真理、実理でありまして、ソ連や中共共産党国のやり方を見ておりますと、これはまさに真理を運用しておる観がある。彼らの戦略、政略を見ておりますと、たとえば孫子、老子とか六韜、三略とかいつたような東洋兵学をそのままにやつておる観があるのであります。これは偶然の暗合かもしれませんが、孫子などの完全なロシヤ語訳のあるところを見ますと、案外ごれは偶然の暗合でないかもしれません。そこへ行きますと、自由諸国というものは、信念の上から言つて政策を実行する点から言いましても、はなはだ不徹底であつて、そのために、最近の新薬と同じことで反作用が強くて、さつぱり薬がきかぬばかりでなしに、有害であるというようなことが考えられる。その哀れな例はアメリカのマツカシーなどでありまして、マツカシーほどの勇気もない日本の政治家が、マツカシーよりももつと悲惨な失敗をしてまことに見るに見かねる。不遠慮な話でありますけれども、はらはらするのであります。  そこで第三に、その政策の徹底を期するためには、まず政府に確固たる政治的信念と強靱な政治力を要すると信じます。そうでなければその反撃に破れてかえつて混乱を招くわけであります。そこで反民主主義活動対策協議と申しますが、一体政府はそれではどういう政治的思想、信念を持つておるのか、これがまず問題と思います。明らかに政府は、いわゆる民主主義を奉じておることは間違いありますまい。ところが民主主義というものをはたして明確に把握しておるかどうか。言うまでもなく、これは欧米その他の政治学者の一致して論断しておることでありますが、すべて民主主義というものは単なる一片のイデオロギーや法理論ではありません。これは民族の長い生活と歴史の間から生れて来た政治的良識とその習慣との体系化したものであります。  そこでたとえば自由諸国で申しますると、民主主義には大別いたしますとイギリス流の民主主義があり、アメリカ流の民主主義があるわけであります。イギリスのごときは、御承知のようにローマのシーザーが二度もイングランドを征服いたしまして以来、繰返し繰返しあるいはアングロサクソンあるいはノルマンがあるときは北から、あるときは対岸のフランスからというふうに盛んに侵略征服いたしまして、イギリスにあの王室及びその政府をつくつた。今日キャビネットという言葉をまだ使つておりますが、あれは文字通り内閣、すなわち被征服者である人民を向うにまわして、奥まつたその征服者の宮殿の一室で政治を検討いたしました。文字通り奥まつた部屋、内閣であつたのであります。それをそのまま使つておるわけです。そこで王室政府はいかにしてその被征服者である人民を統治しようか、これに対して民衆の方はこれにいかにして抵抗しようかという、長い君主及び政府と人民の対立闘争のうちにだんだん彼らの良識が働いて、こういうことをいくらやつてつてもしかたがない、何かもつと賢明な幸福な方法がないかということに思いをいたして、次第々々に暴力では結局もたらすことのできない賢明にして幸福な結果を討議、デイスカツシヨンという方法でひとつ実現しよう、そこでお互いに忌憚なく意見を闘わせて、そうしてきわめて良識的な結論を導き出して、一旦決定したことには虚心坦懐に従来の行きがかりを捨てて服従して行こうというのがイギリスの議会政治で、彼らのいわゆるデモクラシーというものになつたわけであります。だからある党が反対派の言うことを寛容に、寛大に聞かなくなつたら、あるいはその結論に対して謙虚に聴従、服従しなくなつたら、もうイギリス派のデモクラシーは自殺であります。アメリカのデモクラシーはよほどこれと趣がかわつておりまして、これまた申し上げるまでもなく旧大陸の政府、結局政治にあきたりなかつた連中が新大陸に押し渡つて、はげしい気候やら、猛獣毒蛇やら、原住民やらと戦つていわゆるフロンティアという辺境に向つて勇敢にいどんで行つて、いわゆるパイオニア、開拓者たちが自力、自治をもつて開拓した社会がだんだん発達したものであります。その発達すなわち一村落から州となり、合衆国というふうに発展するにつれて、その上級社会に自分たちの信頼する代表者を送つて、その代表者の賢明なる討論の結果にやはり謙虚に聴従して行こう、これがアメリカのデモクラシーで、国民がそういう自力、自治という能力を失い、自分の信頼する代表者を推さなくなり、またそれらの討議、決議を重んじない、服しないということになつたら、これはアメリカのデモクラシーの自殺であります。日本は従つてデモクラシーの原理から言えば日本デモクラシー、日本的民主主義を生み出さなければならぬのでありますが、それはイギリス型に属するかアメリカ型に属するかと言えば、日本の歴史を振り返つてみれば説明をするまでもなく、いずれにも属しません。おのずから別個のもので、両方の長所をとることはまことにけつこうでありまするが、そのままに軽々にまねをすることは許されない歴史であり、伝統であり、民族的個性を特別に持つております。その意味から言つて、一体政府は、政府のいわゆる信奉する民主主義というものがどういうものであるかということをもつと明確に国民に教育する必要があると思います。今私どもが広く国民各階の人々に接して一様に困つておることは、民主主義というものがどういうものであるかということがさつ。はりわからないということで、これがわからなければ憲法の改正も何もとても期待できたものではないのであります。  そこで民主主義しかりとすれば、反民主主義とは何であるかと言えば、言うまでもなくこれはいわゆる共産主義ないしはソビエト群、マルクス・レニニズムあるいはレニニズム・スターリニズムというもの及びすなわち共産党活動、及びフアッシヨとかナチスとかいう俗にいわゆるフアツシヨの名で呼ばれる極端な右翼主義活動、これであろうと思います。ところがソ連はソ連でやはりデモクラシー、民主主義と言つております。ヒトラーやムソリーニでさえ彼らのナチスやフアツシヨをやはり民主主義と称しております。すべていわゆるエキストリーミズムというもの、従つてそれがほんとうの民主主義でないということをこれまた明確に国民に教えなければなりませんが、それがはたしてどれほど今日よく行われておるか、これは非常な疑問であり、また遺憾な点であります。率直に申しますると、いずれのデモクラシー、民主主義にせよ、私はいずれにも共通して非常に簡潔に、よくその本質を把握しておると思う名言は、イタリアのマツチー二の申しました「プログレス・オブ・オール・スルー・オール・アン、ター・ザ・リーディング・オブ・ザ・ベスト・アンド・ワイ、セスト」国民のすべてを通ずる最も善良にして賢明なる人々の指導のもとにおける国民全般の進歩である、これであろうと思います。これは日本デモクラシーにも通ずることであります。  そ、こでいかなる場合にも必要なことは、国民のすべてを通じてえこひいきなく、へんぱなく国民の最もすぐれた人々を指導者に出すということでありますが、今日日本に流行しておるソー・コールドのデモクラシーの風潮というものは、そういう国民のすぐれた指導者を出すということよりも、漫然と大衆に迎合するという風が強いのではないか、そういうことにおいて非常な自粛反省をすると同時に啓蒙を要する、そういうことを考えて来ますと、こういう機関を新設するのに非常に大事な根本的条件を欠いておると思うのであります。そしてかりにこの種の機関を新設するといたしますと、さしあたつての必要条件として、この種の機関には思想や識見のすぐれた有能なスタッフをそろえなければならない、それから関係機関との調和連絡がよくとれなければならない、それから目的とするところの取締りを要する破壊活動の工作分子に運用されないという確信がなければならないが、これがまた容易でないことで、そこでそういう条件を完備するためにはどうしても最初に申しましたようにすぐれた政治力がいります。それは言いかえますと、第一に国民に魅力のある優勢な保守党というものがなくちやならぬ、第二に賢明にして有能な政府が確立しておらなければならない、これが動揺しておつてはいけない、こういうことを考えますと、むしろ私はたとえば内閣調査室であるとか、公安調査庁というような既設機関を中途はんぱにしておかないで、これをもつと正しい意味において有力有能なものに充実強化する、そして今言つたような日本的民主主義を国民の中につくり上げるのに必要な国民の啓蒙を、マス・コンミニユケーシヨンのあらゆる筋を通してこれを活用指導する、あるいはまた国民各界の実質的指導者、代表者の大会を頻繁に開いてこれらの人々と懇談し、これらの人人に籍し、奨励してそれぞれの機関団体を通じて国民の政治教育を普及徹底さ七るということに努力を傾けた方が賢明ではないかと思う。これ、いわゆる軽々しく利を興すことを考えるものではなくして、害を除く賢明なる方策である、かように信ずるのであります。  簡単にこれだけ私の所見を申し述べておきます。(拍手)
  67. 稻村順三

    稻村委員長 梅田博君。
  68. 梅田博

    ○梅田参考人 梅由であります。実は私だけかと思つていたのでありますが、この協議会の内容は二人の先生も御存じなかつた。結局私も推測に基きまして話を進めて行きたいと存じます。今度参考人として呼ばれましたときに渡された書類は大体これだけなんです。これには、反民主主義活動対策協議会設置について最近内外における緊迫せる反民主主義活動の動向にかんがみ、関係機関相互情報交換連絡を緊密ならしめるとともに、如上の情勢に対処する総合的根本対策を協議するため閣内に反民主主義活動対策協議会というものを設置する。そうしてこれは法令に基く機関でない、閣議決定に基く事実上の機関である、こういうふうにしるしてあるのであります。してみますと、単にこれだけであるならば、あえてわれわれは声を大きくして反対するにも当らない、こんな反民主主義云々といつたような、ぎようぎようしい長つたらしい名前をらけなくても、閣議の席上またそのあとでお茶でも飲みながらお話になればいい話である。それが一たび世間に伝わりますと、たいへん大きな問題になつて来る。大きな問題になつて来たというのは、こういうことを言つているけれども、陰に何か隠されているのではなかろう、ことをたくましくして申し上げてみたいと思う次第であります。  まず第一に問題になつていますのは、中央調査社の問題であります。緒方さんはけさの委員会では、これは従の緒方構想とは縁もゆかりもないものだと言われたということでありますけれども、私はそうは考えない。やはり緒方構想のむし返しといいますか、化粧直しをやつて出て来たものと思う。つまり今までは何べんも緒方構想というものはつぶれましたけれども、手をかえ品をかえて、あの手この手というところで出て来たものでなかろうか、緒方構想が従来生れるたびに問題になつておりましたのは、戦時中言論統制機関の中枢にあつた人が常に浮び上つた。その人が常に出て来るのでありますが、緒方さんはこの方のために何かそうしたようなことをしなければならぬ因縁と申しますか、何かの義務があるのではなかろうか。たいへん下品な想像でまことに恐縮でありますけれども新聞というものは由来言論の自由を生命にして立つているのでありまして、ちよつと統制機関のにおいが復活しますと、これは新聞人として本能的に警戒をして行かなければならぬ、これは新聞人のあり方でありますので、いささか神経過敏だと言われるかもしれませんが、まず第一にそういつたような危険を感ずるのは新聞人であります。もしそうだとしたならば、その某氏というのは、やはり戦時中に言論統制、官製の世論というものを宣伝した以外に何も芸がないと言うと言い過ぎかもしれませんけれども、その道の少くとも専門家である。そうしたような人がなるということにつきましては、われわれはまず警戒してかからなければならぬ。われわれ儀語に言論統制の味をいやというほど味わつております。現に緒方さん自身、最近私が編纂して出版いたしました清沢例の「暗黒日記」の中で、緒方さんが、新聞社の入社試験も。ハスしないような低脳な役人がわれわれの新聞統制するとは何事だ、こう言つておられる緒方さん自身身をもつてこの統制のつらさをよく御存じのはずでありますが、立場がかわると人のお考えというものはこうもかわるものかというような気もいたすのであります。  これに関連して言われておりますのは、例のアメリカの非米活動委員会というものがあります。これと何か関係があるのじやないか。またそういつた方向にこの協議会なるものが行こうという形勢もあるのであります。アメリカにはほかに国内治安対策委員会といつたようなものもありますが、今度政府考えていると伝えられておりますものは、政府がやる。アメリカのは議会がやつておるのであります。しかもアメリカにおきましてもだんだん人間が神経過敏になりますと、昨年のごときはホワイト事件という事件がありましたが、そのホワイト事件におきまして、ルーズヴエルトはソ連のス。ハイだと言いまして、トルーマンを議会にまでひつぱり出した。これはいわゆるマッカーシー旋風と言われているものでありますが、これがだんだん今年になつてから下火になつた。下火になつてほつと思つておりましたところが、本年の八月に共産党規則法、コミュニスト・コントロール・アクトというものが生れまして、共産党を非合法化したのであります。これは従来ありました国内治安法並びに破壊活動規則法を訂正したものでありますけれども、これによりましてアメリカの共産党は法律保護を剥奪された。そうして非合法化されたのであります。ここに私ちようど訳をいたしまして持つておりますが、こういうものを共産党とみなしている。大体十四項目にわたつて非合法化の対象としている。たとえば一つ、二つ読んでみますと、被告は、組織これは共産組織ですが、組織の計画、構想目的などを実現するために言語、行動、文書、その他の方法その方法のいかん及びどのような段階で行われたかは問わない。示唆を与えたことがあるかどうか  サゼスチョンしてもいけない。それから被告は、組織の構想、計画、目的などの実現のために何らかの方法で参与したことがあるかないか。こうしてみますると、われわれもうつかりアメリカつておりますと、どうも共産党とみなされそうだ。戦々きようくたらざるを得ない。アメリカでは共産党コミンという言葉は、売国奴のことで、これが非常に人の精神を圧迫しているのであります。何もかにも当つて来る。当つて来たならば、はしの上げおろしアメリカですから、フォークの上げおろしも安心してできない。このように極端な法律通りましたのは、選挙対策関係もあり、もののはずみで通つた。もののはずみで通りましたけれども、これは札つきの反動立法だということは、アメリカでも良識ある人は言つているのであります。  そういうことになりますと、いわゆる西施の顰にならうという言葉がありますが、アメリカ人の言うことなら、いいことでも悪いことでも応はまねするという風潮の強いどこかの国におきましては、あるいはこういつたような極端な反共立法とかいうことにだんだんなつて行きはしないか、こう思うのであります。アメリカは三十四番目の共産主義を非合法化した国家でありますが、第三十五番目は、おそらく最もアメリカと近い国がなる。そうしたような対策がはたしていいものかどうか。  それからこの中央調査社は決して言論を輸するものではない、いろいろなものを出版する、出版はするけれども統制はしないとおつしやる。しかしながら出版をするということ自身が統制だということをお気づきになつておらぬ。これはアメリカの国務省の情報であります。われわれがアメリカの雑誌を見たり、本を見たいと言いますが、いくらそう思つたところで、金がいる。安くあるいはただで送つて来るものですから、やはり来ると拝見する。もし政府が安い本を国民のために発行した場合には、高い、正当な金を出してその本を見る人が非常に少くなつて来る。これは教科書と同じようになつて来る。ちよつと例をあげてみますると、いなかの新聞社はあまり金がない。金がないから、ニューズ・ソースは無限には持たない。自分の手足を持たないから、テジオでニュースを聞いて、東京発というような記事を書いてしまう。つまり金がないことにはできない。そうした場合に、政府が安い金、もしくはただで言論というものを国民にばらまいた場合に、これが言論統制でなくて、何が言論統制であろう。ことに農村におきましては封建性が強い。われわれ新聞が言つたことは流言飛語で済むが、しかしながら政府関係機関がお出しになりました場合には、これはお上が言つたことだから、間違いないことだろうといつて、うのみにするといつたような傾向が農村には強いと思う。そうした場合これははつきりした言論統制ではなかろうかと思う。  反民主主義活動に対する反撃と申しますが、民主主義というものは、政府自身が民主的な出処進退をしなければならぬ、民主的な政治の運営をしなければならぬ。それをしないからこそ反民主主義的な方向で政府を転覆しようといういわゆる不逞邊のやからが出て来る。そのことはいささか順序を取違えている。それではいかに民主主義の宣伝、おしやべりやお説教なさつても、国民は受付けない。  この組織は、言論統制とは縁のないものだとおつしやいますが、これはやはり、私の想像であるが、官僚の組織であると思う。官僚というものは自分のなわ張りを次第に大きくしようという本能がある。これを私は自己拡大本能と言つております。要するに、何でもかんでも大きくする。情報がないじやないかと言うと、人数が足りません、予算が足りません、必ずこう来る。昔憲兵隊はストライキなんかがあると、そこへ行つてストライキを煽動して、事件をクローズ・アップしておいて、それを種にして自分の組織を大きくする。そういつたことになるのは火を見るよりも確実であります。そのあげくは、緒方さんが言われましたような、新聞社の入社試験にも。ハスしないような官僚によつてわれわれの最も貴重な財産である言論というものが統制される時代が、遠からず来るのではなかろうか。  現在情報機関としましては、公安調査庁、内閣調査室、それから外務省の情報文化局、これが大きなものでありまして、そのほかに海上保安庁の、ごときも、やはりおのおの情報を収集する機関を持つております。たとえば内閣調査室を例にとりますと、民間団体だといつて民間の看板をぶら下げた調査室が銀座にある、そうしてみましたならば、これは民間のものであつて政府のものでないといくら言われても、それは看板が違つておるというだけのことにすぎないのであります。もとより反民主主義活動というものに対しては、われわれは断固たる決意を持つて当らなければならないけれども、これが最近急激に勢力が強くなつたという理由でやられるのは、いささか平家が水鳥の羽音に驚いて逃げ出したのと同じである。そうでなければ、驚きもしないにかかわらず、その水鳥が来たと宣伝して、その組織を無理につくろうといつたようなふうがあるのではないかと思うのであります。この調査社の発足にあたりましていわゆる六十人とかの人数を集めたそうであります。そうして承諾をとりに行きましたところ、三大新聞を初め、各新聞社はそれに入らなかつた。そうして現在は二十何人と伝えられているのでありますが、もし緒方総理が朝日新聞の編集局長であつたならば、おそらく私どもと同じような立場をおとりになつているものと私は確信しております。私は言論の自由ということに対しまして、政府はいやしくもそういう直接の考えがないといたしましても、そうしたおそれのあるものではないか、この反民主主義活動対策協議会はそういつたようなおそれがあるものと信ずるのであります。私の誤解もしくは臆測から出たものでありましたならば、そのことは御容赦相なりたい、」う希望しまして申し上、げた次第であります。(拍手)
  69. 稻村順三

    稻村委員長 これにて参考人の方々の御意見の開陳は終りました。  御質疑はありませんか。御質疑がないようであります。この際委員長より一言お礼申し上げます。本日は御熱心に御意見をお述べくださいましてありがとうございました。厚く感謝いたします。きわめて貴重な御意見を拝聴いたしましたので、今後委員会の審議に十分参考にいたして参りたいと存ずる次第でございます。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時四十三分散会