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田中(稔)
委員 私は日本社会党を代表いたしまして、
政府提案につきましては賛成、
修正案に対しましては反対の意思を表明いたします。
政府の提案は技術的な性格を持
つておるものでありまして、大して論議する必要はありません。
修正案につきましては三点ございますが、第一点は
恩給の
支給を
促進する上からい
つて賛成でありますけれども、
恩給局長の
お話をよく聞きましても、やはり人手が不足であるという点が、
恩給支給の渋滞しておる大きな原因であると思いますので、もつと人手もふやして、
恩給法の建前を貫いて行くのが本筋じやないかと思う。保安隊などの人はふやさないで、こういう
方面に人をふやせばよいと思いますが、
政府の方針とはいいながらはなはだ遺憾であります。
第三点が重要な点でありますが、
提案者の御
説明によりますと
公務扶助料を
支給するのではない。
公務扶助料に
相当する額の
扶助料を
支給するのだ、こういうふうな御
説明で、御遠慮にな
つておるのだと思います。ところが江藤君の今の
自由党を代表しての討論を聞いておりますと、現状やむを得ないからそうしたのであ
つて、これでは不満足だという言葉があります。おそらくその言葉の裏には、そのうちにはこれは
公務扶助料に改めたいという御意図があると思います。そういうふうな御意図がひそんでの御提案である。
ちようど
政府が再軍備をしないしないと言いながらどんどん推進して行くのとまつたく同工異曲であります。この点につきまして私ども反対をいたしますのは、
戦犯の問題であります。私どもは国際裁判の当否を論じようとするのではない。ドイツと同じように、国際裁判と同時に国内裁判が日本に行われたと仮定しますならば、それは国際裁判、国内裁判それぞれ違
つて来ましようけれども、国際裁判を受けて
戦犯に
なつた方で、国内裁判においても
戦犯に該当する人は多いと私は思う。ことにまたA級
戦犯のごときは、これはもちろん国内裁判においてもまず間違いなく
戦犯となる方だと思う。こういう
方々は今度の太平洋戦争におきまして国策を誤
つて、八千万国民を今日の塗炭の苦しみに陥れた重大な政治的責任がある。それはそういう
方々の憂国の至情を疑うものではありませんけれども、主観的な意図はともかく、客観的にはそう
なつた。やはりこのことをはつきりわれわれが認めた上で、今後の日本の政治を考えませんと、また同じような過ちをする危険がある。B、C
戦犯につきましては、それは無実の罪をこうむつた方も確かにある。しかしながら全体の何パーセントかが無実の罪である、あるいはその刑の量定においても当を失した方があることは事実といたしましても、それだからとい
つてB、C
戦犯全部が無実であるとは言えない。私は戦時中ボルネオに行
つておりましたが、やはりああいうところで見ておりましても、ずいぶん悪いことをした兵隊さんがおるのです。憲兵や、海軍の特別警備隊、こういうところには、人道上忍ぶべからざる、天人ともに許さぬような非行をや
つた人がたくさんおる。だからB、C
戦犯のうちにこれらを選別することは今日はほとんど不可能でありますが、何パーセントかの人が無実であるということをも
つて、B、C
戦犯の全部がよかつたということは言えない。B、C
戦犯にはお気の毒でありますけれども、これはしかたがない。それで私どもは罪九族に及ぶというような古い観念は持
つておりません。しかしながら功九族に及ぶということも決して言えない。
戦犯の
方々は罪はあ
つても功はない。
恩給法というものは大体国家に功労のあ
つた人に対して報いるという建前の
法律なんです。だからこういう
法律によ
つて扶助料を
支給する
——提案者は
ちよつと遠慮されて、
公務扶助料ではなく、実をと
つて同額の
扶助料とおつしやるけれども、その腹の中には江藤君のおつしやるように、
公務扶助料的な考えがあることははつきりしておる。これは根本観念が間違
つておる。私ども社会党は
軍人恩給の復活にまず反対して参りました。これは建前上当然反対しておる。
それから
援護法によらず
恩給法によりましてこういう
扶助料を
支給するといたしますと、そこに階級差が出て来るわけです。
援護法なら一律にとにかく
遺族年金を差上げておる。ところが今度は旧
軍人の階級がそこに現われて参りまして、
扶助料に差等がつくということになりますならば、これはやはり現在の再軍備を用意するための一連の政策の現われだと見なければならぬ。そういう心理的効果をねら
つている。こういう
意味におきましてわれわれは非常に危険な
修正案だと思う。そこでわれわれは今言つたように罪九族に及ぶというようなことは考えておりませんから、たといA級でありB級でありC級であ
つても、
戦犯者その人の罪は憎むけれども、罪もとがもない家族の生活のことは考えなければなりませんから、それはすでに
援護法で
遺族年金が
支給されておる。生活の点においては国はちやんとめんどうを見てや
つておる。だから私は現状をも
つて十分だと思う。
さらに
提案者にお尋ねいたしましたところが、国の
予算の上において
経費の増額は大したことはないとおつしやつたが、やはり数千万円は明らかに増額するのです。今日
政府が一兆円
予算とか緊縮
予算とかいうて盛んに国民には耐乏生活を強要している、こういう際にとにかく数千万円でも
予算が膨脹することは私はおかしいと思う。しかも
政府はこういう方針に反対しておるのに、与党の
委員諸君が三派徒党を組んでこういう
修正案を出されたということは非常に行き過ぎだと思う。生活に苦しんでおる大衆はまだ無数におる。しかもそれは日本のか
つての指導者が国策を誤つた結果なんです。その国策を誤つたことに責任を持たなければならぬ人の
遺族に対する給与をふやすために、緊縮方針をあえて曲げるという与党の
委員諸君の態度は、私は受取れない。
いずれにいたしましても私どもは以上述べましたような
理由によりこの
修正案には反対いたします。