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1954-04-12 第19回国会 衆議院 内閣委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十二日(月曜日)     午後一時五十一分開議  出席委員    委員長 稻村 順三君    理事 江藤 夏雄君 理事 平井 義一君    理事 高瀬  傳君 理事 鈴木 義男君       大久保武雄君    永田 良吉君       長野 長廣君    船田  中君       山崎  巖君    粟山  博君     早稻田柳右エ門君    飛鳥田一雄君       田中 稔男君    辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         保安政務次官  前田 正男君         保安庁次長   増原 恵吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁局長         (人事局長)  加藤 陽三君         外務政務次官  小滝  彬君  委員外出席者         専  門  員 龜卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君     ――――――――――――― 四月九日  農林省統計調査機構拡充強化に関する請願(  松原喜之次紹介)(第四二八二号)  恩給比例増額に関する請願中村時雄君紹  介)(第四二八三号)  同(亘四郎紹介)(第四三一八号)  同外七件(福田一紹介)(第四三一九号)  同(武知勇記紹介)(第四三五三号)  同(竹尾弌君紹介)(第四三五四号)  同(中村庸一郎紹介)(第四三七九号)  同(臼井莊一君紹介)(第四三八〇号)  同(吉川兼光紹介)(第四三八一号)  旧軍人下級者公務扶助料引上げに関する請願  (池田清志紹介)(第四三三五号)  同(吉田重延紹介)(第四三七五号)  軍人恩給支給額引上げに関する請願池田清志  君紹介)(第四三三六号)  同(吉田重延紹介)(第四三七六号)  恩給法の一部改正に関する請願池田清志君紹  介)(第四三三七号)  同(吉田重延紹介)(第四三七七号)  恩給支給促進に関する請願池田清志紹介)  (第四三三八号)  時効にかかる傷病恩給取扱に関する請願(池  田清志紹介)(第四三三九号)  元朝鮮の地方公務員恩給支給に関する請願(  只野直三郎紹介)(第四三四〇号)  戦犯者恩給支給に関する請願吉田重延君紹  介)(第四三七八号)  恩給支給に関する請願中村幸八君紹介)(第  四三八二号) の審査を本委員会に付託された。 同日  行政機構改革断行に関する陳情書  (第二六八一号)  岩手県に保安隊の駐とん誘致に関する陳情書  (第二六八二号)  恩給法改正に関する陳情書  (  第二七四一号)  岩手県に保安隊の駐とん誘致に関する陳情書  (第二七四二号)  北海道開発費増額に関する陳情書  (第二七四三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  防衛庁設置法案内閣提出第九四号)  自衛隊法案内閣提出第九五号)     ―――――――――――――
  2. 稻村順三

    稻村委員長 これより開会いたします。  防衛庁設置法案及び自衛隊法案一括議題とし、質疑を続行します。高瀬博君。
  3. 高瀬傳

    高瀬委員 一昨日に引続きまして質問に入る前に、木村保安庁長官に、この自衛隊性格について——この間緒方さんには伺いましたが、あなたに直接、重複はいたしまするけれども、確かめておきたいことがあるのです。  まず第一に、先日当委員会におきまして、平井義一君の質問に対してあなたが御説明になつたことがあります。そこで木村長官は、自衛隊は男でござるという答弁をされましたが、もう一度これを確認したいのですが、いかがですか。
  4. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。先般当委員会において平井委員から、自衛隊は男であるか、女であるか、性格がわからぬじやないかという御趣旨の御質問がありました、そこで私ははつきりと、自衛隊は男である、性格はつきりしておる。すなわち自衛隊わが国の平和と独立を守り、国の安全を期することをその任務としておる。ここにおいて性格はきわめて明瞭である、こういう趣旨で申し上げたのであります。
  5. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは、その男でござるという、その男というのは軍隊であるということと解釈してよろしゆうございますか。
  6. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは前々から申し上げました通り、一体軍隊とは何であるか、その意義いかんによつてこれは解決できる問題であろうと思います。そこでまず軍隊定義から申し上げますると、確定した定義というものはないのであります。そこで外部からの不当な武力攻撃に対して、これに対処し得る実力部隊をもつて軍隊なりと称するのであれば、自衛隊はまさしく軍隊的性格を帯びておる、こう申したのであります。要は軍隊意義いかんによるものと私は信じております。
  7. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは木村長官は、自衛隊は直接侵略に対抗するという意味軍隊であるというふうに解釈しておられるわけですな。
  8. 木村篤太郎

    木村国務大臣 外部からの不当侵略に対して対処し得るものを軍隊なりと称するのであれば、自衛隊はまさしく軍隊である、こういうことです。
  9. 高瀬傳

    高瀬委員 それではただいま政府がつくろうとしておるところの自衛隊は、外部からの不当侵略に対して対抗できないのですか、できるのですか、それはどうなんです。
  10. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まさに対抗することができます。
  11. 高瀬傳

    高瀬委員 それではまさに軍隊でございますな。
  12. 木村篤太郎

    木村国務大臣 高瀬委員が、外部からの武力攻撃に対して対処し得る実力部隊軍隊なりと解釈されるのであれば、自衛隊はまさに軍隊であります。
  13. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは政府軍隊である、こういうふうに解釈しておるわけですな。
  14. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは意義いかんによるということをしばしば繰返して申し上げておるのであります。軍隊定義いかん外部からの武力攻撃に対処し得る部隊を称して軍隊なりというのならば、自衛隊はまさしくその性格を持つておるから、軍隊言つてよかろう、こういうのであります。
  15. 高瀬傳

    高瀬委員 一昨日私は緒方総理に、自衛隊はどういうものだということを聞いたのです。大体警察力であるか、軍隊であるか。ところが緒方さんはこういうことを言つた速記録を見れば確かだと思いますが、私も確かにこの耳でここで聞いたのだから間違いないと思うのですが、軍隊でも警察力でもない、自衛隊という特殊なものである、こういうことを言つたのです。あなたはそのときお見えになつておらなかつたが、これは皆さんも聞いておられる。そのりくつで行きますと、これは男でも女でもないということになるのです。非常に中性的なものだ、こういうことになつてしまうので、これは非常に重大であると思う。政府答弁がこういうふうに不一致ではたいへんなことなんで、この点はいかがですか。
  16. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。決して不一致じやございません。緒方君はそういうことを申されたとすれば、まさにその通りであります。すなわち、軍隊定義いかんによるのでありますから、解釈のしようによつて軍隊にもあらず、警察にもあらずというような一応の解釈はできるだろうと思います。しかし軍隊定義いかんということになつて、私の今申し上げた趣旨を御了解くだされば、まさにあなたのおつしやるような軍隊的性格を持つということは言えるでしよう。しかし軍隊というものはもう少し深刻に考えて、いわゆる交戦権は持つていないのであるから、まだ軍隊に至らぬのだと仰せになれば、まさにその通りであります。結局するところは、軍隊という定義いかんにかかるものであろうと私は信じます。
  17. 高瀬傳

    高瀬委員 ただいまの答弁緒方さんと木村長官とはかなり考え方が違う。しかし私は緒方総理なんかよりは木村保安庁長官の言を信じて、これは軍隊である、かようにはつきりと解釈いたしますが、それでよろしいんですな。
  18. 木村篤太郎

    木村国務大臣 あなたがそう御解釈くだされば、その通りでよいのであります。繰返して申しますが、これは軍隊定義いかんによる。外部からの武力攻撃に対してこれに対処し得る実力部隊軍隊なりと称するならば、軍隊言つてよかろう、こう申すのであります。
  19. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは世間の大体の常識学者意見、こういうものを考えてみましても、外国からの侵略に対して防衛することを主たる任務としたものは軍隊である。国内秩序の維持をすることを目的としたものは警察であるということは、これは世界一般にわたつた通念だと思うのです。しかも当委員会における委員諸君も、この通念に対しては全然反対しないと思うのです。これはどうですか。
  20. 木村篤太郎

    木村国務大臣 世間がさような常識をもつて申されるならば、さようでよろしかろうと考えます。しかし一体軍隊ということは定義がわからぬ。巨人軍とも申します。(笑声)(「それは岡崎が言つた」と呼ぶ者あり)いや、私がそう言つておる。巨人軍とも言うし、はなはだしいのは救世軍とも言う。またはなはだしいのは娘子軍とも言う。軍隊というのは何だという定義がわからぬ。そこで今申し上げます通り軍隊とは外部からの武力侵略に対して対処し得る部隊軍隊なりと称するならば、自衛隊軍隊でよろしかろう。世間一体にそういうものと解するというならそれでもよかろう、こう申し上げるのであります。
  21. 高瀬傳

    高瀬委員 政府考え方は非常に漠然というよりは、私に言わせれば実に無責任きわまる考えだと思う。大体私は、軍隊というものは定義いかんによつてきまるもんじやないと思う。そんな考えを持つて自衛隊をつくるというなら、これはほんとうに大きな問題である。これは私思うのですが、今度できようとするところの自衛隊使命いかんによると思う。定義じやないと思う。いわゆる外部からの直接侵略に対して、たとい弱くても対抗する使命を持つているものが軍隊である。国内秩序を維持するものは警察である。これは明らかな事実である。だから近代戦に耐え得るものでなければ軍隊ではないと政府は言われたけれども、それじやスイスつて軍隊を持つている。スエーデンでも、ノールウエーでも持つている。おそらく近代戦を行い得るところの軍隊を持つているのはソビエト・ロシヤだの、アメリカくらいしかない。そうすると、ほかの国は全然軍隊を持つていないかというと、さにあらず、みな持つている。スエーデンでも、ノールウエーでも、スイスでも持つている。持つてないのはばくちをやるモナコとリヒテンシユタインくらいなものである。とにかく政府もだらしがない。これはすなわち、ぼくらの考えるように、軍隊使命いかんによつて、いわゆる自衛軍なら自衛軍使命いかんによつて軍隊であるかそうでないかがきまるべきものであつて、大体軍隊定義近代戦に対抗し得るものであるとか、やれジエツト機を持つていなければいかぬとか、そういつた問題ではないと思う。いかがですか、木村さん。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 重ねて申し上げます。私はむしろ高瀬委員軍隊という定義にとらわれておるんじやないかと考える。(高瀬委員使命です。定義じやない」と呼ぶ)使命はつきりしておる。使命は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を守ることを任務としておる。ここにはつきり性格が出ておる。そこで外部からの不当な武力侵略に対しては、これに対処し得るんだ、ここにきわめてはつきり性格が出ておる。これを軍隊と称するかどうかは別個の問題である。今高瀬委員は、政府戦力を持たなければ、そういうものを軍隊と言つちやいかぬと言つたというが、そんなことは申しません。決して申さない。戦力軍隊とは定義が別です。私の申し上げるのは、もしも万一、ある学者の言うがごとく、交戦権を持たぬものであれば、外部からの不当の侵略に対して対処し得る部隊でも、純粋の意味軍隊でないと言う者もある。その定義からすれば、これは軍隊と言えぬかもしれぬが、しかし外部からの不当侵略に対処し得るものを軍隊と言うならば、自衛隊軍隊言つてよかろう、こう私は申し上げるのであります。
  23. 高瀬傳

    高瀬委員 きのう交戦権の問題について増原次長も言われましたが、大体交戦権のないものが国際法規、あるいは拿捕法規、あるいは捕虜取扱い法規、いろいろなものを受けるはずがない。きのう増原さんの言つたところによれば、これは明らかに国際法規、たとえば船の拿捕の問題であるとか、万国赤十字社の条規であるとか、あるいは捕虜取扱方国際法規であるとか、こういうもののちやんとした取扱いを受けると言つておる。これはすなわち、交戦権がなければそんなものを受けることができない。すなわちそういうことを受けるという以上は、交戦権があるからそういう国際法規取扱方を受けるので、ただいま木村長官の言われたのとますます違つて来て、妙なことになつてしまう。これはいかかですか。
  24. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それは違う。私ははつきり申し上げたい。憲法第九条第二項では交戦権を持たないということになつておる。増原君の言われたことは、私そのとき出席していなかつたからわかりませんが、おそらく実際の場合においては、捕虜取扱いを受けるだろう、こう申したと思う。現に北鮮の事変などでも、これは戦争でないと言つておる。警察行為だと言つておる。それでも両軍においては捕虜取扱いを一般にやつておるのでありますから、実際の場合においては捕虜取扱いを受けるものだろうということを申したのだろうと私は思います。
  25. 高瀬傳

    高瀬委員 つまりそういう漠然たる状態のもとにおいてこの自衛隊をつくりますと、一たび直接侵略なつた際には、りつぱな日本の青年が虐殺され、虐待をされる。どんな目にあうかわからない。要するにそれはこれからつくろうとするところの自衛隊に対するはつきりした観念を政府が持つていないと、これはえらいことになると思う。この自衛隊は直接及び間接侵略に対するところの防衛を主たる任務としておるものでありますから、そういう点から申しましても明らかに無条件軍隊であるということ、さつきからあなたの解釈は御随意であるというけれども、私はちやんとそういうふうに解釈しておる。もし軍隊でなければ国防会議とか、あるいは統合幕僚会議とか、こんなものを自衛隊がどういうわけでお持ちになるのですか。
  26. 木村篤太郎

    木村国務大臣 たびたび繰返すようでありますが、自衛隊というのはわが国の平和と独立を守り国の安全を期することを任務としておる。ここで性格はつきりしておるのであります。動かすべからざる点であります。これを私は重ねて申し上げておきます。そうしてこの自衛隊をいかに運営すべきかということが第二の考え方、その運営の面において、陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊、この三つの自衛隊運営の全きを期するために、統合幕僚会議というものを設けてその運用をやつて行こう、こういう趣旨であります。
  27. 高瀬傳

    高瀬委員 せつかくの御答弁でありますが、これは運営だけで解決する問題ではないと思います。私はかたくそれを信じております。幸いに緒方総理か見えましたから——今言われたこの問題は、軍隊であるか、軍隊でないかということは、本案審議の最も基本的な問題であると思います。ですから私は緒方総理に、いろいろなことをくだくだお聞きいたしません。しかし今回つくろうとするところの自衛隊軍隊であるか、軍隊でないか、いずれであるかということだけお答え願つておきたい。
  28. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 同様の御質問は、一昨日の当委員会においても同じ高瀬委員か、たれかにお答えしておると思うのであります。それで……(高瀬委員「念を押して」と呼ぶ)それでは申し上げます。直接侵略に対抗する軍隊という言葉は、私ははつきりした定義はないと思うのであります。それが私どもの解釈しておる通りのものであるならば、それは多分に軍的の性格を持つておりますが、これはいわゆるほんとうの軍備ではない。
  29. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは軍隊であるか、軍隊でないかということについては、軍隊でないという御答弁解釈いたしますが、よろしゆうございますか。
  30. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それも一昨日お答えいたしましたが、特殊のものであります。(笑声
  31. 高瀬傳

    高瀬委員 男でも女でもない、ただ男のきみがかかつておる、こういうわけですね。それでは特殊のものだ、軍隊であるか、軍隊でないかということについては軍隊ではない、特殊のものである、こういうような御答弁ですね。そこで、私は、緒方総理お忙しいようでありますので、一時間くらいたちましたら私の最後の結論に対して御答弁願う点が二点ばかりございます。今やるわけに行きません。そのときにお越し願つて答弁願いたい。  そこで私は木村長官にお伺いいたしますが、このいわゆる今度できましたところの防衛庁設置法案、この設置法の中に内局というものがあります。この内部部局というものは一体どんなものであるか。防衛局教育局人事局経理局装備局と、いろいろのものが書いてありますが、一体これはどういうものなんですか。
  32. 稻村順三

    稻村委員長 先ほど増原次長の言として聞いたということでもつて増原次長答弁と違うから訂正したい、こういう意味の要求がございますが……。
  33. 高瀬傳

    高瀬委員 あまりとらわれておりませんから、適当な機会に。
  34. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御承知通り内部部局保安庁長官のいわゆるブレーンであります。補助的機関であります。これは各分掌を規定しております。要するに各般の事情、特に経済事情その他一般的の情勢を判断して、そうして長官を補助するものであります。実施部隊とは全然別個取扱いを受けております。いわゆる自衛隊実施部隊に属するものであります。
  35. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは伺いますが、この前の質問に対して木村長官は、昔の旧軍人文民ではないというようなことを言われましたが、それでよろしいわけですか。
  36. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは憲法文民という言葉を使つておるのであります。その文民定義いかんによるのでありますが、これによりますると、大体学者の説は旧軍人はいわゆる文民に入らぬであろう、こういう説を唱えておる者が多数あるのであります。それによりますると、旧職業軍人はいわゆる文民のうちには入らぬのじやないか、こういう意味のことを申したのであります。
  37. 高瀬傳

    高瀬委員 それじや憲法にある、たとえば内閣総理大臣文民でなければならないという、あの文民と同じ意味において、この旧軍人は何になるのですか。
  38. 木村篤太郎

    木村国務大臣 いわゆる憲法において文民たることを要する、その規定解釈であります。その解釈について今申し上げるように、学者の説はおおむね旧職業軍人はこの文民のうちに入らぬのじやないか、こういうことを言つておるのです。
  39. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは政府はその学者の説に従つて、この文民という定義解釈しておられるわけなんですね。
  40. 木村篤太郎

    木村国務大臣 一応そのように解釈しております。
  41. 高瀬傳

    高瀬委員 わかりました。
  42. 辻政信

    ○辻(政)委員 関連いたしましてお伺いしますが、アイゼンハウアー大統領文民ですか、軍民ですか。
  43. 木村篤太郎

    木村国務大臣 アメリカにおいてはどう解釈しておるか、私は存じません。
  44. 辻政信

    ○辻(政)委員 憲法にははつきり書いております。憲法基本的人権は人種あるいは宗教、経歴によつて差別されないということがはつきり書いてありますが、長官は差別されるわけですか。
  45. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まさに憲法にははつきり書いてあります。私はそれを認めます。ただいわゆる文民解釈について、どう解釈するか、こういう文民なんという問題は、私は実はわからぬ。憲法に特にこれを規定してある、これは御承知通り。私もその当時閣僚におつたのでありますが、衆議院においてはさような文字は使わなかつたのであります。貴族院において文民という文字が使われた。そこで文民が出て来たのであります。われわれといたしましては日本においては、いわゆる文民に対する武民軍民というものはないはずだ。しかし憲法において文民という文字使つたのはどういう意味で使つたか、それで問題が起つて来たわけです。一応学者の説に従つて、旧職業軍人はこの文民のうちに入らぬのじやないか、こういうように一応解釈されておるようでありますから、その解釈従つたということを申し上げたのであります。
  46. 辻政信

    ○辻(政)委員 そうしますと、憲法基本的人権というものは、元の職業軍人に関する限りは除外するという重大な問題になるのです。これは政府の御見解を御統一なさらぬというと、憲法解釈上の悪例を残すと思いますから申し上げます。
  47. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは御承知通り同じ憲法内においての規定であります。そこで特殊の扱いをしたものと解釈するよりほかに道がなかろう、私はこう解釈いたします。
  48. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは木村長官に伺いますが、この新しい軍人というか、この法案でいわゆる制服を着た自衛官、これは一体文民なんですかどうですか。
  49. 木村篤太郎

    木村国務大臣 文民であります。
  50. 高瀬傳

    高瀬委員 そうすると制服を着た自衛官は、防衛庁長官にもなれるのですか、なれないのですか。
  51. 木村篤太郎

    木村国務大臣 いわゆる制服を着た者であつても、なろうと思えば長官になれないことはありません。
  52. 高瀬傳

    高瀬委員 わかりました。それではこの法案作成の過程で保安庁内で、いわゆる文官と武官つまり平服を着た人と制服を着た人の間で、この内部部局制服自衛官を入れるか入れないかということについて大論争があつたと聞きましたが、事実ありましたか。
  53. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御承知通り、一つの法案を作成するにつきましては、いろいろの角度から調査研究するのであります。しかして私を補佐する者において議論は自由であります。私は議論は自由にさせております。それで結論を得たのがこの法案であります。
  54. 高瀬傳

    高瀬委員 すると、いわゆるこの結論というものは、任用資格制限撤廃ということにおちついた、全部無条件撤廃した、こういうことになつたわけですな。
  55. 木村篤太郎

    木村国務大臣 要するに現在の保安庁法におきましては、制服を着た者は、課長以上の職につくことができないという規定があるのであります。その規定をはずしたのであります。従つて制服を着た者であつても、その人が人格識見申分のない人であれば、内部部局局長あるいは課長にもなり得るということになつたわけであります。
  56. 高瀬傳

    高瀬委員 巷間伝うるところによりますと、任用資格制限撤廃について、木村長官は非常にこれを強硬に主張された。おそらくその主張された内容は、いくら任用資格制限撤廃したつて、そう制服を着た、自衛官つた者が、内局に来て局長なつたりすることはないから、やはり当りさわりがないように任用資格制限を全廃しておいた方がいいということを主張された。前田政務次官は、いや、積極的に制服自衛官は入れなければならぬ、こういう意見であつた。あるいは全然入れるなという増原次長のごときもあり、林幕僚長も違う意見を持つてつた、こういふ点はどうですか。
  57. 木村篤太郎

    木村国務大臣 いろいろな意見の出たことは事実であります。しかし私は、一たび制服を着たからといつて、永久に内部部局課長以上を勤めることができぬというのはよろしくない。いわゆる内部部局に勤める者も制服も、渾然一体をなしてわが国防衛の任に当らなければならぬ。この間にあつて相剋摩擦があつてはならぬのであります。そういう相剋摩擦から恐しい災いが出て来る。そこで私は一たび制服を着た者であつても、りつぱな人材であれば内部部局課長以上にもつけるんだという道を開くことが、私は国家のためによろしかろう、これが保安庁として行くべき道であろうという考えを持つておるから、かような規定いわば制札をはずしたわけであります。
  58. 高瀬傳

    高瀬委員 木村長官に伺いますが、そういたしますと、この内部部局の第十条に「長官官房の外、左の五局を置く。」とあるのでありますが、防衛局教育局人事局経理局装備局、これらの部局については無差別平等に、何らの軽重なく、あらゆる局について、制服を着た自衛官であつてもだれでもなれる、こういうことなんですね。
  59. 木村篤太郎

    木村国務大臣 一たび制服を着た者は、いかに有能であつてもこういうポストにつけないということは、よろしくない。だからそういう禁札をはずした方がいい。禁札を掲げることが悪いのだ、こういうことであります。
  60. 高瀬傳

    高瀬委員 そういたしますと、おそらく制服を来た自衛官がだんだん経験を積み、いろいろな抱負経綸を持つて来ますと、部隊の実情もわかり、いろいろな点がわかつておるから、事実問題として、ほとんどこういう各部局がいわゆる制服自衛官によつて占められるようになつてしまう。私はそういう結果になると思うのですが、木村長官はいかがですか。
  61. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さような結果にはなりません。文民は全然任務を異にしておるのであります。内部部局においては、あらゆる政策面からして長官を補佐し、片一方の実施部隊の方は、いわゆる実施訓練その他の点から長官を補佐するのであります。全然性格を異にしておるのであります。ただ実施部隊に勤めておつた者でも、有能な士であれば入り得るという道を開くことが、双方の融合のためにいいと私は考えておるのであります。
  62. 高瀬傳

    高瀬委員 木村長官はそういうことにはならぬと言われましたが、私は断じてなる、こういう意見を持つております。そこで私はちよつと伺いたいのですが、一体統合幕僚会議というものと、この内部部局のあり方というものは、どういう関係になつておるのですか。
  63. 木村篤太郎

    木村国務大臣 統合幕僚会議は、陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊、各幕僚長が構成メンバーであります。そしていわゆる三部隊の統合的の実施訓練なんかの計画を立てて行くのであります。三部隊がばらばらであつてはいけない。三部隊がともに手を携えて日本防衛の任に当つて行く。たとえて申しますると、対馬海峡を防衛する、それについては、海の方はどうだ、陸の方はどうする、空の方はどうする、こういうことについて、三幕僚長が互いに胸襟を開いて、そこで慎重審議する。こういうことは日本防衛体制を整える上においてきわめて緊要であろう、こういう趣旨から統合幕僚会議というものを設けたのであります。
  64. 高瀬傳

    高瀬委員 そういたしますと、この統合幕僚会議というものは、おもに作戦とか、軍の編成とか、いわゆる実際上の直接侵略に対抗する操作をやる立場から、いろいろ計画を立てるところと私は解釈しておるのです。長官もおそらくこれについては異議がなかろう。それから内部部局の方は、その計画に対してそれが出て来た場合に、装備の点、あるいは国の予算の点、いろいろな点からこれをチエツクして、バランスをとる。いわゆるチエツク・アンド・バランスの原則に基いて、これらいろいろな実際上の問題を大所高所から解決することになるのが、私は内部部局だと思うのです。これも異論がないだろうと思う。そうしますと、結局先ほど木村長官が言われたように、任用資格の制限を無条件撤廃して、何でもなれるということになりますと、同じような思想傾向を持つた実施部隊のちよつと毛のはえたような偉いのが、みんな内部部局に行つてしまうと、自分たちの思うようなことが通らなければ、総理大臣でも何でもおどかしてしまえ、こういうことになつてしまうと、この前の軍のようなことになつてしまう。私はこれを非常に心配する一人なんです。そういう点について長官は一体どういうふうにお考えになりますか。
  65. 木村篤太郎

    木村国務大臣 禁札をはずしたらただちに制服を着た者が内部部局に入る、そういうことはないのであります。あなたが仰せになつたように、内部部局実施部隊はまるつきり性格を異にしております。ただ禁札を立てておくことはよろしくない。これは制服部隊であろうが、内部部局であろうが、ともどもに手を携えて、日本防衛の全きを期する上においては、やはり禁札を掲げておくのはよくない。現に内部部局におる者でも、場合によつて制服を着て部隊に行かなければならぬことがあり、また実際において希望者があつて、りつぱな人であれば、内部部局に勤めておる者でも制服部隊にやることもあるのであります。有無相通ずる道を開くことがよろしい。こういう禁札をはずしたためにすべて内部部局の者は制服で満たされるのじやないか、それは論理の飛躍であろう、こう私は考えております。
  66. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今のことに関連しますけれども、制限をはずしてしまうというお話ですが、そういたしますと、内部部局の人と自衛官とは取扱い上全部平等になる、こういうことですか。
  67. 木村篤太郎

    木村国務大臣 取扱いは全然同じくするという意味ではございません。ただ場合によつては、そういう者を任用し得るという道を開いたわけであります。
  68. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、今度の法律によりますと、内部部局に入つて来る自衛官は、仕事の面においては内部部局の上長の指揮を受け、身分に関しては自己の所属しておる幕僚長、部隊長の統制下にある、こういうふうになつております。こういう条件になつて参りますと、内部部局に入つて来た自衛官は、自分の身分に関しては幕僚長なり部隊長なりによつて支配される。こういう形になりますと、内部部局における自衛官というものは、平服に対してずつと優越した地位を占める。自己の意見を主張して行く場合について強く出られる。しかもその強く出られる根源は、自己の所属しておる幕僚長なり部隊長、すなわち現場におる人々の意思を受けて強く出られる。こういう形になるのでありまして、こういうことはむしろ平服に対する自衛官の特権をつくり上げる。こういうことから、かつて軍隊のような形になつて行くのじやないか、こういう懸念を持たざるを得ないと思いますが、なぜこういうふうに身分を二重にしてあるのか、そうしてこれが特権的に作用しないのか、こういうことにお答えをいただきたいと思います。
  69. 増原恵吉

    増原政府委員 ただいま飛鳥田委員の御質問のありましたのは、法文で参りますと、防衛庁設置法案の第十九条でありまして、「長官は、必要があると認めるときは、陸上幕僚監部、海上幕僚監部若しくは航空幕僚監部又は第二十九条に規定する部隊若しくは機関に所属する自衛官内部部局において勤務させることができる。」こういう規定をお申し述べになつたわけであります。これは自衛官自衛官たるの身分を持つておりまして、内部部局に勤務することを定めた法文であります。現在の保安庁法にもある規定であります。先ほど来御論議になりましたのは、いわゆる制服の経験のあつた者、一度制服を着た者が、いわゆる内部部局における課長以上の職には任用することができない、この任用というのは、制服を脱いで、セビロを着て参りましても、任用ができない、あるいは制服を脱いで何年かたつてつても、内部部局課長以上には任用できないという趣旨のものが、現在の保安庁法の第十六条にあるわけであります。それを削除して、今度の防衛法案には書いていない。すなわち制服を一旦着た者でありましても、その人が内部部局課長以上等に適任であるという場合には、長官はこれを任用してもよろしいということで、その禁札をとつただけであります。第十九条に書いてありますのは、現在保安庁法にもあるのでありますが、制服を着ており、制服部隊等において勤務をしておる、その人を持つて来て、内部部局において仕事をさせることが保安庁全体としての、あるいは防衛庁全体としての能率発揮に適切であるという場合に使うものでありまして、そのものはあくまで部隊所属として幕僚長等の統制を受け、勤務について内部部局のそれぞれ勤めておる課、局等の統制に服するという建前にしております。
  70. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今の御説のところから文民優位というような問題がくずれて行く突破口ができておるのではないかということを伺つたのですが……。
  71. 増原恵吉

    増原政府委員 このいわゆる自衛官自衛官たるそのままの形で長官内部部局に勤務させるということができるということは、現在もあるわけでございまして、そのことは現在の自衛隊防衛庁になつた場合とかわりはないわけでございます。むしろいろいろ御議論になりましたのは、内部部局における課長以上の職に現在の保安官、警備官たる経歴のあるものは任用してはならぬというふうになつてつたものを今度とつた、それがぐあいが悪くはないかという趣旨であるかと思いますが、これは先ほど来長官からるる説明をいたしましたように、そういつた制限を設けておくことが、平服、制服の間の融和一体をなすことに適当でないという見解のもとに新しい法案にはそれを削除した、こういうことになつておるわけであります。
  72. 稻村順三

    稻村委員長 重要ですから委員長からお尋ねしておきますが、それならば自衛官課長以上のものになるときは、自衛官たる現職のままで課長にはなれないという解釈でよろしゆうございますか。
  73. 増原恵吉

    増原政府委員 必ずしも法文上そう解釈されなければならぬということもないようにも考えまするが、ただいまの自衛官のままで勤務させるということは一般的にいえば補助的な仕事であります。主流に入ります場合には、やはり制服を脱いで平服になつて入るというふうに解釈をすべきものと考えます。
  74. 高瀬傳

    高瀬委員 そういう点についておそらくたとえば少将級の人が内部部局に入つて局長になる場合は、少将として入るのではなく、高瀬なら高瀬という資格で入るのだと私は解釈しております。それはそれでもけつこうです。しかしながら要するに統合幕僚会議というものと内部部局のいわゆる制限資格、任用資格無制限撤廃ということは、わが国のようなまだ民主主義がほんとうに確立していない国、それから日本のような国民性のところでは、なかなか幕僚会議内部部局会議というものが対蹠的な存在になり得ない根本的な素因をつくるのではないか、私はこの点に対して非常に木村長官意見を異にしておるわけです。その点はよほど運用をうまくやつて行かなければ、民主主義的ないい軍隊ができないと考えておりますので伺つたわけですが、これに対する私の結論はやめまして次に参ります。  逐条審議ではありませんが、防衛庁設置法案の第四十二条に「国防に関する重要事項を審議する機関として、内閣に、国防会議を置く」というのがあります。しかもその国防会議の内容として、「内閣総理大臣は、左の事項については、国防会議にはからなければならない。」「国防の基本方針」、「防衛計画の大綱」、「前号の計画に関連する産業等の調整計画の大綱」、「防衛出動の可否」、「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」というようにいろいろなことが書いてあります。しかしながらただ国防会議の内容については、第四十二条に「国防会議の構成その他国防会議に関して必要な事項は別に法律で定める。」ということが書いてあるだけなんです。これは一体どうしてこういうことになつておるのですか、これをちよつと伺いたい。
  75. 木村篤太郎

    木村国務大臣 国防会議の構成をどうするかというようなことは、相当国家将来にわたつての大きな重要事項とわれわれは考えております。そこでこの法案をつくるときから今日までいまだこの構想が十分にでき得ないのであります。早々の際にさように国家百年の計にわたるようなものをつくることはどうかと考えまして、十分慎重に考慮し、各方面から資料を得て、この構成をどうするかということは、むしろ法律できめて十分なる御審議を願うのがよかろうと考えて、これを法律の作成にゆだねたのであります。いずれその構想がなつて、原案ができましたならば、御審議を願いたいと思つております。
  76. 高瀬傳

    高瀬委員 これは非常に重大なことなんですが、将来法律できめるといいますけれども、国防会議の構成の内容によつては非常に重大な影響がある。たとえば文民優位の原則がおそらく基幹をなすわけで、この国防会議の構想というものをこの内閣委員会に示していただかなければ私はなかなか審議ができないと思う。ただ重大だから将来法律でもつてきめるのだ、こういういいかげんなことでわれわれにこの法律を審議しろといつても、国防会議の内容がわからなければ審議ができない。一体国防会議の中に民間人を入れるのか入れないのか。あるいは国防会議は閣僚だけでやるのか。政府部内では、保安庁では、国防会議は閣僚のみでやる方がいいという意見が圧倒的だということを私は聞いておるのですが、木本長官の御構想を伺つておきたい。
  77. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まだここで申し上げるまでの結論に達しておりません。改進党においていろいろ議論もあるでしようから、改進党においてきまつておれば、どうかその御意見を承りたいと考えております。
  78. 高瀬傳

    高瀬委員 私は大いにあります。あるけれども、この機会に申し上げる段階にありませんから私は言いませんが、その議論の材料として、担当しておられる長官の御構想を伺いたいのです。いかがですか。
  79. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私も今しきりに練つておるのであります。まだ結論に到達いたしておりません。結論に到達いたしましたら申し上げたいと思います。
  80. 高瀬傳

    高瀬委員 それではこれの審議中に御結論に到達いたしますか。
  81. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それははつきり申し上げることはできません。
  82. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは伺いますが、この国防会議に民間人を入れるつもりですか、入れないつもりですか。
  83. 木村篤太郎

    木村国務大臣 そこまできまつておればもう結論に達するのでありましようが、それらの点について十分構想を練つて結論を得たいと考えております。
  84. 高瀬傳

    高瀬委員 これはいくらやつても水かけ論になりますからしかたがありませんが、少くとも国防会議の内容を別に法律でもつて定めるなんて、こんなつまらないのを一条設けて四十三条の中に入れるなどということは、実に政府もだらしがない。日本の直接侵略に対抗する自衛隊をつくるなどといつても、その熱意いずこにありや、私は疑わざるを得ないのです。これではちよつとこの法案審議に対してわれわれは熱意を失うわけです。政府が熱意がなければ、われわれも熱意をもつて審議できないのは当然でありますから、こういう点についてよく再考されて、国防会議の構想について——あるいはここで言えなければ秘密会でも何でもかまいません。あるいは委員会理事会でもいい、その構想くらいは少くともこの内閣委員会に説明されないと、私どもはどうしてもふに落ちない点が多々ありますから、一応それを長官に参考意見として私は申し述べて、その次に行きます。  今度は私は海外派兵について伺いたいのです。またかと思われるかもしれませんが、私は海外派兵といつてもそんなくどいことは聞きませんが、ただ一つ、木村長官自衛隊について、外国から海外派兵を求められても絶対に海外派兵はしない、また求められることもない、こう答弁しておられるわけです。海外派兵はしないと言うならしないでけつこうです。しない方がいいのですから……。ですが、海外派兵はしないという法律的根拠は一体何ですか。どういう法的根拠に従つて海外派兵はしないとあなたは言つておられるのか、その法的根拠を一言私は伺つておきたい。
  85. 木村篤太郎

    木村国務大臣 自衛隊任務性格、これから十分に解釈できるだろうと思います。いわゆるわが国の平和と独立を守り、そうして国の安全を維持して行こうということがその性格の全部であります。従いまして自衛隊の行動の範囲は、いわゆる国家の自衛権のわく内においてやることになつております。しかして憲法においても、これは精神からして絶対海外派兵なんということはできないことと考えております。
  86. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは憲法第九条第一項によつて海外派兵はできない、こういうふうにお考えなんですか。
  87. 木村篤太郎

    木村国務大臣 いわゆる武力による威嚇と武力の行使は、国際紛争の解決手段として行使しないと明確に規定されております。いわゆる日本の自衛権の範囲内、その範囲内において自衛隊というものは設立されておるのであります。自衛隊というのは、わが国独立を守り、安全を期するためでありまして、海外派兵なんということは考えておりません。     〔「できる」と呼ぶ者あり〕
  88. 高瀬傳

    高瀬委員 それはやはり、並木君もそちらの方から言つておられますが、確かに自衛権の発動としてそういう場合があり得ると私どもは考えております。しかしこれを一々ここで論議してもしかたがありませんから……。(「したらいい」「それが大事なところじやないか」と呼ぶ者あり)それでは輿論に従つて……。それはどうですか。
  89. 木村篤太郎

    木村国務大臣 今申し上げた通りであります。
  90. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは次に私はMSAとの関係について伺います。これは岡崎君にも聞きたいと思つたのですが、岡崎君でなくて、おもに防衛的見地から私は一言長官の所見を伺いたい。これは私がここで申し上げるまでもなく、アメリカでは先年大統領選挙の際に、対外援助費用を削減して納税者の負担を軽減する、こういうことを共和党は国民に公約したことに御承知だと思うのです。その結果アイゼンハウアー大統領が就任してから、だんだんに数次にわたつて対外援助費を削減して来た。日本からも金のかかる軍隊は、すみやかに帰還させることが共和党政府の方針であろうと私は考えるわけであります。これを行うためには、日本というアジアにおける共産国家の防波堤が、赤色政権の脅威にさらされないだけの保障を必要としていることは当然であつて、一昨年来アメリカ日本に対して再軍備を強く要求したのも私はこのためだろうと思うのであります。もちろん朝鮮の動乱によつてその時期を早めたということはあります。しかしながら以上のような理由によつてアメリカ日本に再軍備を強く要求している。あるいは木村長官はそうでないとおつしやるかもわかりませんが、これは輿論です。定説です。従つてMSAというこの協定は、アメリカのこういうふうな深刻な要求に基いて結ばれたのでありますから、日本防衛問題とは密接不可分なものであると私は考えざるを得ない。一体木村長官はいかにお考えになつておられるか、伺いたい。
  91. 木村篤太郎

    木村国務大臣 MSA援助をわれわれが受入れるについては、日本自体においてこれを受入れるがいいかどうか、自主的な判断をいたしたのであります。しこうして日本の自衛力の漸増というものは、これはどうしてもやらなくちやならぬ。いつまでもアメリカさんの手に全部まかせることはいかぬし、またアメリカといたしましても、今仰せになつたようにいろいろ考えるところがあつて、一日も早く駐留軍を引揚げたい、全部ではありません、徐々に引揚げて、それに対して日本もやはり対処して行かなければならぬ、かたがたいろいろの面から考慮いたしまして、いわゆる二十九年度の予算に盛つただけの自衛力の漸増をさしあたりやつているわけであります。それに対してアメリカから、いかにこれが装備その他を受けるかということについていろいろ交渉をやりまして、MSA援助を受けるということになつたのであります。
  92. 高瀬傳

    高瀬委員 それではやはりこの日本防衛問題とMSAの受入れということは、密接な関係があるというふうに解釈してよろしいわけですか。
  93. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その通りであります。
  94. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは政府に伺いますが、このMSA受入れ交渉の際、アメリカ軍隊の引揚げについて具体的に話がありましたか。
  95. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私に対しては具体的の話合いはありません。しかしなるべく早急に陸上部隊の一部を引揚げたいという話は確かに承つております。それに対処するわれわれの構想を十分練つたわけであります。
  96. 高瀬傳

    高瀬委員 それでMSA受入れ交渉の際に、アメリカ部隊の引揚げについて交渉があつたということがわかりました。  それではその次に伺います。陸軍について三十二万五千人という数字を政府が出しており、現にまだその考えは捨てていないと思うのです。いわゆる十箇師団、たとえば三万人くらいの師団を十箇師団にすると三十二万五千人。現に最近の外電を見ましてもそういうことをちやんと言つている。米国軍事分科委員会委員長レロイ・ジヨンソンが、「日本におけるところの国連軍当局は、日本防衛力は地上部隊十箇師団及びこれと均衡するその他の軍隊を必要とする」という報告をアメリカ政府に出している。これに呼応して三十二万五千という数字を政府は出している。これだけの兵力を持たなければアメリカの地上部隊は引揚げないのですか。
  97. 木村篤太郎

    木村国務大臣 われわれは三十二万五千という数字は承つていないのですが、それはアメリカがあるいは希望しているかもわかりませんが、われわれは日本の国の経済状態、あるいはその他人員の面から、日本で独自にこれはきめるべき問題だと初めから考えてやつておるのであります。従いましてアメリカが何と言おうとできぬものはできぬのであります。われわれは日本のあらゆる点から、可能な範囲において自衛力を漸増して行きたい、こう考えております。
  98. 高瀬傳

    高瀬委員 これは非常に重大だと思うのですが、レロイ・ジヨンソンというものが、日本における国連軍が十箇師団必要だということを言つておるという正式なレポートをアメリカ政府に対して出しているのですから、こういう点について、アメリカから言われなくても、少くとも自衛軍をつくろうという、その責任者である木村長官あるいは政府は、こういう点があれば当然これはつつ込んで聞く必要があると思うのですか、この点はいかがですか。
  99. 木村篤太郎

    木村国務大臣 繰返して申すようでありますが、アメリカが何と言おうと日本日本独自の考え方がある。できぬものはできぬのであります。われわれは、日本本位でやるよりいたし方がありません。そういう数字は、アメリカがどういう意図をもつて発表されたかわかりませんが、われわれとしてはわれわれの考えを持つて推し進むよりほかに道はないと考えております。
  100. 高瀬傳

    高瀬委員 それではそういう点は将来聞くつもりもないし、今まで聞いたこともない、こういうことなんですか。
  101. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は、三十二万五千ですか、そういう数字はアメリカ当局から正式に聞いたことはありません。また将来でも、われわれは日本独自で考えて行かなくちやならぬ。これはアメリカも必ずそういう場合においてわれわれの意見は率直に聞き入れるものと考える。私は、アメリカ日本の国情を無視した無理なことは決して言うはずがないと考えております。
  102. 高瀬傳

    高瀬委員 それじや全然聞いたこともないのですね。
  103. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それはしばしば申し上げた通りです。私は正式に三十二万五千という数字は聞きません。
  104. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは海、空軍についてはどうです。
  105. 木村篤太郎

    木村国務大臣 海、空軍につきましても、どの程度まで日本に拡張しろなんということは、アメリカは特に正式に言つて来たことはありません。
  106. 高瀬傳

    高瀬委員 このMSA援助は、その国の防衛計画の規模に基いて行われるものであると解釈しております。これはただ無条件に、計画も何もないところへMSA援助を今までアメリカがやつたことはない。アメリカではかねてからそういうことを言明しておつた。何ら計画のない国に軍事援助が行われるなんというべらぼうな常識は全然ないと私は考える。この交渉の際に、日本の国防計画の提出をアメリカ日本に要求したのですか。全然要求されたことはありませんか。
  107. 木村篤太郎

    木村国務大臣 われわれは、二十九年度の予算に盛られたような程度において計画を立てておるのであります。その計画は、まさにアメリカ承知していることと思います。それに基いてMSA援助を今受けておるわけであります。後年のことについては、またわれわれは日本の財政計画その他を勘案して計画を立てて行く、これはおそらくアメリカとの折衝になるだろう、こう考えております。
  108. 高瀬傳

    高瀬委員 私の聞いているのはそういうことでなくて、一体アメリカから日本の国防計画の提出を要求されたことがあるかないかということを伺つておる。
  109. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私に対しては正式にさような要求は来ておりません。
  110. 高瀬傳

    高瀬委員 あなたはないとおつしやるけれども、政府に対してはいかがですか。
  111. 木村篤太郎

    木村国務大臣 いろいろ聞いておるでしようが、正式にさようなことがあるとは私は聞いておりません。
  112. 高瀬傳

    高瀬委員 その点は私は非常に重大だと思う。あなたはお聞きにならなくても、政府にこの国防計画の提出の要求があつたかどうかということにつき、あなたは保安庁長官としてそのくらいのことを知らぬはずがないと思う。私にないから私は知らぬ、それで一体国防計画が立ちますか。
  113. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はそれだから二十九年度の計画を立てていると申し上げたのです。二十九年度以降の計画については、まだはつきりした計画は立つていないのであります。
  114. 高瀬傳

    高瀬委員 私の考えでは、そんなことは要求されなくたつて積極的に当然そういう計画は立てるべきだ、こういうふうに考える。それをあなた方は計画を立てて、国会にちやんと公表すべきであると私は思つている。これがほんとう保安庁長官の責務だ、仕事だ、義務だと私は思つている。全然あなたにはこの計画はないのですな。
  115. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はしばしば各委員会において言つております。計画は立つるべきであるが、いまだ確定的の計画は立つていない、それは日本の財政その他の面からいろいろ検討しなくちやならぬ、ことに兵器の進歩が著しい時代には確定的の何年計画というものは立てるべきでない、われわれとしてはそのときそのときに日本の財政計画にマツチした計画を立てるべきである、しかし一応の目途というものは立てるべきであろうとわれわれは考えて、せつかく検討中であるということをしばしば繰返しておるのであります。
  116. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは伺いますが、昨年十一月二十六日に、保安庁では、航空関係を除いた防衛五箇年計画を新聞に発表しておる。これはMSA受入れ交渉に必要なためにつくられたと思うのですが、そういうことはありませんか。その内容は当時の新聞にかなり詳しく出ております。私はこの前の内閣委員会においてもそれを聞いた。その後これらが国会で発表されるとわれわれは思つてつたところが、いまだに公表されていない。これは一体どういう理由ですか。
  117. 木村篤太郎

    木村国務大臣 新聞で発表したという事実はありません。あなたが新聞で発表したと言うのはどういう根拠に基いて言われるのですか。
  118. 高瀬傳

    高瀬委員 私は新聞で見たのです。
  119. 木村篤太郎

    木村国務大臣 新聞に発表したと言うが、保安庁で発表しなければ新聞には出ないはずだと思います。
  120. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは木村長官は、三月三日の予算総会において、わが党の須磨委員質問に対して、防衛計画について立案を要求したところが、それを今立案中だと言われた。そういうことはありませんか。
  121. 木村篤太郎

    木村国務大臣 いろいろな点から検討してわれわれは案を立てたいと思つてつておるのであります。しかしそれは急速にはなかなか立たない。今申し上げました通りあらゆる角度から検討を要することであります。財政計画も確定的のものが立たぬことは当然であります。また今申しました通り、兵器の進歩その他からして確定的のことはなかなか立ちにくい、しかし検討はしており、早急にはやりたいが、これはなかなか容易じやないということをしばしば繰返しておるわけであります。
  122. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは防衛上の機密事項であるから発表しないというのですか。
  123. 木村篤太郎

    木村国務大臣 秘密事項だから発表しないというのじやありません。まだ確定的の案を得ていないというのであります。検討中だから、検討中の案は確定していたいというのであります。
  124. 高瀬傳

    高瀬委員 それではアメリカ側から発表をさしとめられたという事実はございませんか。
  125. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さようなことは全然ございません。
  126. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは伺いますが、昨年の九月二十七日に吉田総理とわが党の重光総裁とが鎌倉で会つたときに、一体彼らの申合せでどういうことを言つておるか、これは日本の経済力に応じて長期防衛計画を立てて、自衛軍を創設して、直接侵略に対抗するというように意見の一致を見たと発表しておるように思うのです。こういう共同声明まで発しておいて、それで政府は一回に長期防衛計画を国民に示していない。国民の立場からすれば、何箇年間にどれだけの防衛力を持つかという国防の基本方針が明らかにされないで、例年度に人員を四万一千余名増員するとか、防衛費を二百億増すのだということだけ知らされて、あとは目隠しされておるのです。これで一体納得が行きますか。これは重大なる責任だと思います。これをはつきりさせなければ国民の疑惑は積るばかりで、かえつて反発させる結果になる。そういう点について、ただ研究中だ研究中だと言うて、こういう重大な法案を出して、ただその日暮しでやつてつて、それで一体責任が果せますか、どうなんです。
  127. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は高瀬君とは全然意見を異にしております。われわれといたしまして一国の防衛計画を立てるということは、なかなか容易なものじやありません。またいたずらにそういうようなものを軽率に立てて国民を惑わすようなことがあつてはならないので、これは各方面から検討してやらなければならない。しかもアメリカにおいては、いわゆるニユールツク戦略とか申しまして、前の国防計画をまつたく一新したような計画を立てております。これはそのときそのときによつて大いにかわらざるを得ない。長期の防衛計画というものはいたずらには立てられないものだということは、しばしば繰返して言うておるのであります。そこでさしあたりの問題として、二十九年ではこう、三十年度ではこうというような目途をつけてやることがわれわれは適当であろうと考えております。しかしながら、一応の長期計画というものは、立てられれば立てるに越したことはないというので、繰返して申すようでありますが、われわれとして客方面の資料を集めて検討中である。吉田重光会談においても、長期計画が立つたとは言つていない、立てるべきである、こういうことと私は了承するのであります。しかもそれを立てるということはなかなか容易じやない、いたずらに先走つて確定的のような案を出すことは、かえつて国民を惑わすような結果になるのではないか、こう私は考えております。
  128. 高瀬傳

    高瀬委員 木村長官の立場ももつともですが、将来この案をほおかむりして、いつまでもこういうふうにして、案がないとか、研究中だとかいうことでずつと引延ばして行くのか、また時期が来れば発表するのかしないのか、体その時期はいつなのか、こういう点をくどいようですが、私どもは私どもの立場がありますからはつきりと伺つておきたい。
  129. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。国際情勢、日本の政治情勢、あらゆる観点から勘案して研究しなくてはならぬのであります。そこでいつそれができるか、いつ発表するか、そういうことはここで私はお約束はできかねます。
  130. 高瀬傳

    高瀬委員 その計画が全然ないならないと言われてもけつこうです。それから将来計画を立てるつもりでいるんならいる、いないならいない、またその時期はいつか、この際くどいようですが、もう一回伺つておきます。
  131. 木村篤太郎

    木村国務大臣 一応のめどをつけたいと思つて、今一生懸命各資料を集めて検討中であります。しかしながら、その時期等についてはここで明言することはできません。
  132. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 さつきから伺つておりますと、アメリカ日本防衛折衝をしたことがないというふうに伺えるのですが、それはほんとうですか。
  133. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私に関する限りにおきましては、さようなはつきりした計画を彼に示したことはないのであります。ただ二十九年度においてどれだけのものを日本は増強すべきかということについてわれわれ案を立てて、その結果MSA援助を受けることになつたのであります。
  134. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 私に関する限り、私だけに関してはというお答えですが、私は、政府は、と伺つておるのです。木村長官は御自分だけの問題として御答弁になつておりますが、御自分だけというようなことは、あなたが内閣の閣僚の一人である限りはあり得ないと思うのです。もう一ぺん伺います。政府アメリカ防衛折衝をしたことがあるのですか、ないのですか。
  135. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は保安庁長官としてその責任についております。保安庁長官としてさようなことをやつたことはない。しかし二十九年度の防衛計画については、アメリカに示して、どれだけの援助を受けるかということについて今交渉中であることはしばしば繰返したところであります。
  136. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 くどいようですが、保安庁長官としてのあなたの職務の中には、もし政府アメリカ防衛折衝をやつた事実があれば、それを知つていなければならないという部分を含みますか、含みませんか。
  137. 木村篤太郎

    木村国務大臣 外務大臣がすべて折衝の部面に当つておるのでありまするから、外務大臣が私に知らすべきが適当であると思うものは知らすであろうと考えております。
  138. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、もし政府アメリカとの間に防衛計画に関していろいろな話合いがあつたとしても、それは先ほど来あなたのお説明のように、わが国わが国独自でやるのだ、歯牙にもかけない、男でござるという程度の資料としてわれわれ評価しておつてよろしいんですか。
  139. 木村篤太郎

    木村国務大臣 われわれは二十九年度の計画を立てるについても、各方面からの資料、ことに日本の財政計画その他を勘案して立てるのであります。決して保安庁長官が独断でもつてやるわけじやありません。大蔵当局とも話し、あるいは通産省とも話し、いろいろ各方面から検討して立てたのであります。決して保安庁長官が独断でやつたのではありません。
  140. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、あなたが防衛計画を立てるに際して各方面の意見を徴する、そういう場合、アメリカ意見というもの、アメリカの要求というものは、そういう各方面の意見のうちの一つにしか過ぎない、いわゆる聞きおくという程度、それでもよいのだ、こういうようなお説ですか。要するにその重要度をお示しいただきたい。
  141. 木村篤太郎

    木村国務大臣 アメリカからいろいろなことが、要求ということはありませんが、申出があつても、日本でできなければできないのであります。アメリカもまたこれについて、しいて日本の国情を無視して無理押しをしようということはありません。そこでいろいろな見地から双方の意見が一致するのであります。決してわれわれは、無条件アメリカの申出を受入れる何はありません。
  142. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 最後に、この問題はこの議会の中だけで議論をせられていることではなしに、今の御答弁は国際的な波紋を持つ、価値を持つと思いますから、もう一ぺん念を押して伺つておきます。アメリカが何を言つて来てもおれの方で聞けないものは聞けないのだ、こういうふうに伺つてよいのですね。そういう態度であなたはいらつしやる……。
  143. 木村篤太郎

    木村国務大臣 われわれといたしましては、日本の国情を無視したことはできないのであります。いかにアメリカの申出があろうと、日本でできぬものはできないのであります。これはアメリカもよく承知しております。アメリカも決して日本に無理押しはいたしません。そこでアメリカの言い分も十分聞き入れるが、日本でできぬことはできぬと言うよりほかいたし方がありません。日本の国情に相応して、そうしてアメリカと十分協調を保つた上でやつて行くのであります。
  144. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 けつこうです。
  145. 高瀬傳

    高瀬委員 小瀧政務次官がお見えになつておりますから、簡単に一つ伺います。最近日米交換文書——いやにいんぎん丁重な交換文書を岡崎外務大臣とアメリカ大使とが交換して、防衛分担金が二十五億減額されたようであります。そういう事実は公式に発表されておりますからあつたと思いますが、一体どういう標準で二十五億——ぼくらに言わせれば百億でも二百億でもよいと思う。一体どういう標準でこういうことに相なつたのですか伺いたい。
  146. 小滝彬

    ○小滝政府委員 標準といえば、はつきりしたことは申しにくいのでありますけれども、日本防衛の費用がふえるということに対して、先方で考えるように減額するようにとりきめをすることが日米間の行政協定にも出ておりますので、双方話合いの結果あれだけを減額することにきまつたわけであります。今後もアメリカの駐留軍が非常に減るということになればさらに大きな減額があるかもしれませんが、標準というのではなしに、双方の話合いによつてこれだけ減額するということにきまつた次第であります。
  147. 高瀬傳

    高瀬委員 この交換文書によりますと、日本国が漸増的に自国の防衛のため責任を負いつつあることを閣下に通報し、と書いてある。ですから、漸増的に自衛力を強化するという責務を日本が負つていることを閣下に通報した。だから一体どれだけ漸増したら——ただいま審議の対象になつている自衛力を四万二千増強すれば、これが二十五億の減額である。五十億ならばその倍、百億ならばその四倍、こういうふうに何か標準でもあるのか。これはただ恩恵的なものか、どういうものか、これが非常に大切だと思う。政府は一体努力をしたのかどうか。二十五億のところを百億減額も、努力をすれば外交交渉でできたかもしれぬ。一体努力をしたのかどうか。その標準もちつともわからぬ。いんぎん丁重な交換文書を新聞で発表されても、われわれ国会としては非常に疑問に思うのです。それから漸増的に日本が自衛力を増強したときに、それじや防衛分担金を減らす、こういうアメリカ軍の撤退のプログラムがあるのかどうか。一体アメリカ軍撤退のプログラムの内容を日本政府は提示を求めてあるのかどうなのか。そんなことはおかまいなしに、向うが恩に着せて、今度は二十五億七千二百万円を分担金から減らしてやる、来年はお前たちのやり方によつては恩恵的に百億減らしてやる、これじや実にたよりないと思うのです。しかもこの交換文書の中にあるいんぎん丁寧な文句にも非常に開きがある。ですからこれは外務省として、あるいは日本政府として非常に重大だと思うのです。だからどういう標準でこれを減らしたのか、またそれについて努力したのか、また米軍撤退のプログラムが日本政府に提示されたのかどうか、こういう点をひとつ伺つておきたい。
  148. 小滝彬

    ○小滝政府委員 いつ撤退するかというプログラムというようなものは、決定しているものはございません。これは高瀬さんすでに御承知通り、極東の情勢にもよることでありますし、日本の自衛力漸増の程度にもよることでありまして、あらかじめプログラムがきちんときまつているものではございません。この交渉につきましては、これも新聞紙等で報道しておつたと思いまするが、実は日本側としてはもつとより多くの減額を要求いたしたのであります。しかしながら一方、日本の方では漸増の計画はありまするが、同時にアメリカの方の必要とする費用というものは、米軍の駐留しておる量が急に減るわけでもないので、それほど減らないというような双方の関係をよく勘案いたしまして、話合いの結果結局二十五億円ということに決定したのであります。
  149. 高瀬傳

    高瀬委員 そういたしますと、これはやはり一種の恩恵的なものですな、いかがですか。
  150. 小滝彬

    ○小滝政府委員 いや恩恵ではなくして、行政協定の二十五条の第二項の(b)項の規定に基く減額であります。
  151. 高瀬傳

    高瀬委員 日本側が何ら要求をしないでこういうものがきまるとすると、要求してもけられてしまう。ただいま政務次官の言うのには、要求したけれどもけ飛ばされてしまつた。そうなるとこれは恩恵的なものですから、毎年毎年減額の恩恵があるかどうか首を長くして日本政府は待つという結果になつて、たとえばこのMSA協定でアメリカの大使が言つたように、日本自衛軍がだんだんと増設して、みずからを防衛するようになつたらアメリカ軍が撤退するなんということは、非常に秩序的に行われない。その点ではすこぶるあいまいになつて恩恵的になつてしまうと思うのですが、これは簡単なことですけれども、私は非常に自分で注意を引いた点だものですから伺つておきたい。
  152. 小滝彬

    ○小滝政府委員 恩恵というのでは決してなくして、今申しました行政協定の条項に従うところの減額であります。ただ交渉をいたしましても双方の立場があることでありまするから、そこで結局双方から見て大体適正と思われるところできめなければ、いかなる外交交渉も一方的な主張をあくまで通すというのは、これは松岡外交においては行われたかもしれませんが、なかなかそういうことは期待できないのでありまして、相互の主張を整調して適当なる妥結点を見出すという以外には方法がなかろうかと考えます。
  153. 高瀬傳

    高瀬委員 それではその問題はそれだけにいたしまして、再び木村長官に伺います。  一体自衛隊の幹部の任免について——幹部の任免なんてそんなけちなことを言うなといわれるかもわかりませんが、これは私にとつてはちよつと重大なんです。この法案を見ますと、武官に当る自衛官の最高の地位にある統合幕僚会議の議長、あるいは各幕僚長、いずれもこういう相当重要な地位にあるこれらの人を長官が任免することになつているのですが、その通りでよろしいのですか。
  154. 木村篤太郎

    木村国務大臣 そうであります。今度できまする防衛庁長官が任免することになつております。
  155. 高瀬傳

    高瀬委員 この武官の任免はきわめて重大であつてアメリカなんかでは将官はすべて国会の同意を要することになつているようであります。このような武官の任免というような最高の人事は、やはり国会に付議するか、少くとも内閣総理大臣の任免するところでなければならぬと思いますが、あなたよそうお考えになりませんか。
  156. 木村篤太郎

    木村国務大臣 内閣総理大臣が絶対最高の指揮命令権を持つてつて、そのもとに長官が指揮命令権を持つているのであります。この長官が自分の幕僚を任免するのは私はさしつかえないと考えております。
  157. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは全然国会に諮らずにあなた一存で将官に当る人の任免をやる、こういうわけですな。
  158. 木村篤太郎

    木村国務大臣 任免は長官がするのでありますが、これは閣議に諮つて任免するのであります。
  159. 高瀬傳

    高瀬委員 それではこの防衛庁設置の問題について伺いたいのですが、この法案を見ると内閣総理大臣の地位というものが非常に重大だと私は思う。この自衛隊法第七条によりますると、「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。」こういうふうに言つているが、最高の指揮監督権を持つのは、一体行政府の最高機関としての地位にある総理大臣であるのか、それともそうでないのか、これをちよつと伺つておきたい。
  160. 木村篤太郎

    木村国務大臣 七条の方は内閣の首班であります内閣総理大臣が指揮命令権を持つております。
  161. 高瀬傳

    高瀬委員 つまり行政府の最高機関としての地位の総理大臣、そういうわけですな。それではこの最高の指揮監督権というのは、昔の旧憲法の三十何条でしたかちよつと記憶しておりませんが、旧憲法の天皇の持つ統帥大権に該当するように思うのですが、違いますか。
  162. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 私からお答え申し上げます。第七条の規定は、憲法第七十二条の内閣総理大臣が内閣の首班といたしまして内閣を代表して行政を指揮監督するという規定を第七条のような表現にしたものでありまして、これによりまして統帥的な権能を与えたという趣旨ではないのであります。現在の憲法規定したところを別の表現で書き加えたというだけであります。
  163. 高瀬傳

    高瀬委員 それではこの防衛庁設置法案の第三条の中に「防衛庁の長は、防衛庁長官とし、国務大臣をもつて充てる。とありまして、しかも防衛庁長官内閣総理大臣の指揮監督を受けるというふうにあります。そうするとこの場合の内閣総理大臣というのは、各省大臣としての地位にあるところのミスター吉田、こういうことになるのですか。
  164. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 防衛庁設置法案の方も、第二条の方に「国家行政組織法第三条第二項の規定に基いて、総理府の外局として、防衛庁を置く。」と書いてありまして、第三条はこれを受けたのでありまして、防衛庁の長官総理府の外局である防衛庁の長官でありますので、当然これは各省大臣としての内閣総理大臣の指揮監督権ということになります。
  165. 高瀬傳

    高瀬委員 よくわかりました。それではこんな重大な自衛隊というものを預かつているところの防衛庁をなぜ省としないのですか。木村さんは、防衛庁なんてけちな——いわゆる行政庁の各省大臣としての内閣総理大臣から指揮命令を受けるような、そんな不見識なことをやめて、いわゆる独立防衛大臣、防衛省というふうになぜおやりにならぬか。はなはだどうもたよりないと私は思う。これはいかがですか。
  166. 木村篤太郎

    木村国務大臣 そういう考え方も大いにあろうと考えております。しかし今の段階においては、これが適当だとわれわれは考えております。
  167. 高瀬傳

    高瀬委員 これは非常な見解の相違ですが、ただいまのようなことにして、防衛庁なんてけちな立場にしておきますと、私が関知する限りではこうじやない、政府はどうだかわからないなどということになつてしまいます。しかもまた一方、総理大臣に権力が集中して行く。それだけにそれを防ぐ方法がない。だから、やはりこれはどうしたつて防衛省にして、あなたが防衛大臣におなりにならなければ、私どもはちよつと了解ができない。最後に敬意を表したわけではありませんが、実際私はほんとうにそう思つている。ですから、ぜひ早くそうしていただきたい。こんなけちな機構じやだめですから、この点、われわれは修正するかもわかりません。  なお私は、最後に総括的に緒方総理の所信をただしたいことがあるのでありますが、きよう何か都合があつて来られないという話ですから、約五分くらいかかると思いますが、それは今保留しまして、この次緒方さんが見えたら、この総括質問結論だけを述べて、政府の所信をただしたいと思います。  本日はこれで終りにいたします。
  168. 稻村順三

    稻村委員長 飛鳥田一雄君。     〔委員長退席、平井委員長代理着席〕
  169. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 この二法案について総括的な質問をいたすのでありますが、大体の部分については、すでに各委員会で論議が尽されておるという実情でありますので、残つたほんのわずかな部分と重要な部分を繰返して伺います。そこで第一番目に憲法関係、第二番目にはMSA協定との関係、第三番目には自衛隊創設のもたらす結果、こういうことについて私は順次伺つて行きたいと思います。  第一の憲法関係ということになりますと、もう論議し尽された感じのする言葉でありますが、当然戦力という言葉が出て参ります。この戦力という言葉について、今まで各大臣の述べられた定義を伺つておりますと、種々雑多であります。侵略戦争をする能力のある力とか、その他いろいろのものがありますが、最終的にいかなる定義を伺つておいたらよろしいのであるか。この前の委員会木村長官から、近代戦を遂行することのできる総合戦力というふうに伺つたと思いますが、これを戦力定義の決定版として伺つておいてよろしいものかどうかお伺いいたします。
  170. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。政府の見解はまさにその通りであります。それが要するに日米安全保障条約の前文に掲げられております、外国に対して攻撃的脅威を与えるようなそういう力、この二つのものはまつたく表裏一体をなすものと考えております。言葉の使い方が違うだけのことであります。内容、根本においては近代戦を遂行し得るような装備実力、こう解しておるのであります。
  171. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 ここに弁護士としても大先輩の木村長官がおられ、うしろにも大先輩の鈴木先生がおられるのでありますが、およそ言葉定義を下す場合に、他の未定義の概念を持ち込んで定義するというようなことが正しい定義であるかどうか、私としては疑問にたえないのであります。たとえば今のお説の中には、近代戦などという言葉が出て参りましたが、近代戦とは一体どういうものであるか。これも非常に種々雑多な議論のある言葉だろうと思います。  そこでそういう概念のいまだ定まらざる言葉をまた持ち込んで言葉定義するということがいいかどうか。それから近代戦とはいかなるものであるか。これについてお説を伺いたいと思います。
  172. 木村篤太郎

    木村国務大臣 憲法第九条第二項の戦力については、一定の定義はありません。おそらく学者のうちにもいろいろ説を異にしておつて、一定の定義がないのであります。そこでわれわれといたしましても政府の見解を示せば、ただいまのように近代戦を有効的確に遂行できる実力である。しかし近代というのはいわゆる常識的に判断して現代におけるものをさすのである。要するに時と場合において異なるのでありますが、近代はつまり現代と解釈されてよかろうと私は考えます。
  173. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 おそらくこういうことを押問答しておりましてもきりがないと思います。そこで近代戦という言葉に関して具体的なことから伺つて行きたいと思います。一番共通でだれでもわかりやすいところから出発したいと思います。  アメリカが広島に持つて参りました原子爆弾、この爆弾の持つてつた破壊力、こういう破壊力を持つておれば近代戦を遂行する能力がありますか、ありませんか。
  174. 木村篤太郎

    木村国務大臣 原子爆弾そのものがただちに近代戦遂行の実力組織ということは言い得ないのであります。この原子爆弾にも原子爆弾を積んで行くべき飛行機がいるでありましようし、それに付随したいろいろな部隊がいるでありましよう。つまりわれわれは総合したものを考慮に入れて、これを対象とすべきであろうと考えております。
  175. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、広島に加えられた程度の破壊を具体的に実行できる、それが近代戦を遂行する力、こういうふうに承つてよろしいですか。
  176. 木村篤太郎

    木村国務大臣 原子爆弾を持つておるような大きな総合部隊は、むろん近代戦を遂行し得る力でありますから、憲法第九条第二項の戦力に、われわれは該当するものと考えております。
  177. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 ところがもしそうだとすれば、あなたの現在指揮しておられる保安隊はすでにその力を持つておる、こう言つてもいいのではないかと思います。たとえばその一つの例といたしまして、去年の十二月二十日付の東京タイムズを見ますと、あなたの指揮しておる保安隊は火力を集約した戦闘効率から見ると、昔の日本が持つてつた軍隊の十倍ないし十五倍の戦闘力を持つている、従つて現在の日本保安隊十一万名で旧陸軍の五十ないし七十五個師団に相当する実力を持つていることになる、こういうふうに述べられておりますし、また、広島に落された原爆の破壊力が約八百トンの弾薬に相当するといわれているが、とすれば、保安隊一管区三時間の集中砲火は広島と同規模の都市をほとんど全滅させるわけである、こういうことがいわれております。これは第一幕僚監部の某作戦参謀が述べられたものであるというふうに載つておりますが、これで見ますると、あなたの指揮しておられる保案隊は、すでに広島を破壊したあの原爆と同様な威力を発揮する力を持つている、こういうことになると思うのですが、この点について、そういう火力を持つておられるかおられないか、この点と、もう一つは、こういうようなものが近代戦遂行の能力なしとどうして言えるのか、この点を伺いたいと思います。
  178. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたしまするが、かりに今保安隊の持つている装備、火力が、広島で投げられた原子爆弾に相当するような力を持つてつたとしても、必ずしもそれは近代戦遂行の総合実力ということは私は申すことはできぬと思います。先刻申し上げましたように、原子爆弾そのものが決して近代戦遂行の能力ということは言えない。これを持ち運ぶ飛行機があり、あるいは操縦する者がある、これによつて判断すべきものであります。われわれの考えるところによりますと、憲法第九条第二項の戦力の禁止規定は何を理由とするか、これは他国の侵略の具に供するようなことがあつてはならない、再び他国侵略の愚を繰返して日本を破滅に陥れるようなことがあつてはならぬということから禁止されておるのであります。かりに日本に原子爆弾を一つ持つたからといつて、これを運ぶ飛行機がなければ他国を脅威し他国を侵略するようなことはできないのであります。従つて、それだけでもつて近代戦遂行の能力、すなわち憲法第九条の戦力には該当しないことはきわめて明白なんであります。日本でかりに陸上部隊が相当数あつて、これに相当する火力がありといたしましても、これを輸送するところの船舶、これを護衛するところの艦船がなければ、他国に脅威を感ぜしめるようなものにはならないのであります。従いまして、われわれは憲法第九条第二項の戦力に該当しないものと考えております。
  179. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、結局他国を脅威する段階に至らなければ、いかなる武力を持つといえどもそれは戦力ではない、こういうお説ですか。
  180. 木村篤太郎

    木村国務大臣 憲法第九条第二項の戦力ということを禁止したのは、まさに他国に対して侵略の具に供するような陸上部隊を持たせないということにあるのであります。また日本をただ防衛するだけであれば、そんな無謀なたくさんの兵力を持つことはないのであります。概念論として、日本において五十万も六十万も陸上部隊を持つ、そんなばかげたことは、日本防衛するだけであればできないはずなんです。これを他国の侵略の具に供せんとするところにおいて、大きなものを持たんとするところにおいて初めて危惧の念が起るのであります。今申し上げました通り、われわれは、これから創設せんとする自衛隊におきましても、ただ外部からの武力侵略に対して対処し得るような実力を持たせたい。決して再びこれを他国の侵略の具に使われるようなものにしたくないということにおいて考慮を払つておるのであります。今仮想の、日本だけにとどめておいて何十万というようなものを持とうなんということはわれわれは決して考えておりません。
  181. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 押問答するようでおかしいのですが、結局戦力になるかならぬかということは、他国侵略の意図を持つかいなか、他国侵略の能力を持つかいなかということにかかつているのですか。そういう解釈は初めて伺つたのですが……。
  182. 木村篤太郎

    木村国務大臣 意図の問題ではありません。実力の問題であります。それで、近代戦を有効的確に遂行し得る実力というのは、裏を返せば、他国に攻撃的脅威を与えるような実力だ、私はこう言うのです。帰するところは、憲法第九条第二項の戦力禁止の規定は何を理由とするかといえば、さような力を持たせないということにあるから、これは表裏一体をなすものとわれわれは考えております。
  183. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、現在世界で他国侵略をなし得る戦力を持つているのは米ソに限られるように思いますが、それ以外の国はすべて戦力ではない——これは憲法とは関係ありませんよ。戦力ではないというお考えに到達するのですか。
  184. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それはおのおのの実力の内容を十分検討しなければならぬと考えておりまするが、必ずしも米ソだけに限つたものじやないと私は考えております。
  185. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 ここでこの議論を何べん繰返しておりましてもきりのないことでありますから、この程度でこの問題を打切りますが、問題はこういうことではないかと思います。すなわち、木村長官が、これが戦力であるかないか、戦力となるためには他国を脅威する力を持つ、持たなければ戦力とはならぬというようなお考えをいかになすつたとしても、それはあなたの主観にとどまつているのであつて、世界がこれを何と見るかということであると思います。世界の輿論がこれを戦力と見るか見ないかということになつて来る。こういう世界的な視野を離れていたずらに議論を上げ下げしてみたところで意味がないことであります。そこで、世界はこれをどういうふうに見ているかということから考えて参りますと、先ほど申し上げましたような火力を持ち、これを実行する能力を持つている組織された武力集団を世界はすべて軍隊と呼んでいるのではないか。スイスの軍備について見てもしかり、フインランドの問題について見てもしかり、その他の各国の電力を見ましても、この程度のものはすべて戦力というふうに呼んでいることは間違いがないと思います。特に日本だけがひねくれて、憲法との関係上こう解釈をするのだというようなことを言つているにすぎない。こういう点について、世界的な水準から見てこれは戦力の中に入るか入らないか、これを伺いたいと思います。
  186. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。戦力になるかならぬか、この戦力の問題は、日本憲法第九条第二項において用いたことであります。外国でどういう解釈をしているか私は存知いたしません。日本日本で独自の憲法を制定したのでありまして、われわれはそれに基いて解釈すべきであろうと考えております。いろいろ今取上げられておりまするが、外国において戦力になるかならぬかということは、それは外国においてやるのであります。スイス戦力という問題についても、スイス軍隊の内容がはたしてどれだけのものであるかわれわれは存知しませんが、少くともスイスは、自分の国を防衛するだけにとどめているとわれわれは考えておるのであります。従いまして、われわれが憲法解釈する範疇においては、戦力には該当しないということは申し上げることができると思うのであります。しかし、事は日本独自で解釈すべきである、外国の軍隊と比較して解すべきものではないと考えております。なお、戦力軍隊と混同されてはいかぬと私は思います。日本の今度つくりまするいわゆる自衛隊は、先ほど申し上げましたように、これはまつた外部からの武力侵略に対処し得ることに基くのであります。これをもつて軍隊と言うなればそれは軍隊言つてよろしかろうと私は考えております。しかしこれをもつて軍隊と言い得るからといつて、ただちにこれは戦力ということには当てはまらぬ、こう考えております。
  187. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 また話は戦力にもどつて来ましたが、あなたは今世界が何と言つているか知らぬ、こういう仰せでありましたが、一、二そういう点を拾つてみましてもはつきりいたしております。たとえば台北の中立系の新聞であります公論報という新聞の三月九日を見てみますと、日本政府の声明によると、新たに成立する自衛軍は単なる自衛力量であつて、戦争力量ではないということになつているが、これは憲法の修正を欲しない日本政府が、憲法に牴触する問題を発生せしめまいとするところからこうした言いまわしを用いているのだろう、こういうふうに皮肉を言い、またわれわれのとりかわしている議論を笑つているのであります。世界ははつきり事実を見ている。またたとえばイギリスのエコノミストを見ましても、オブザーバーを見ましても、ことにフランスのユマニテなどを見ますと、すべて日本自衛軍の問題は再軍備という言葉で述べられておる、そういう言葉を使つて説明しております。イギリス、フランスだけでなしに、アメリカの新聞ですら、みなそう書いている。世界中日本自衛隊自衛軍である、軍備でないと思つている国は一つもありません。思つているのは木村さんだけだ、こういうふうに言わざるを得ないのであります。世界のことは知らぬ、おれはおれの信念に生きるのだ、こういうお説はけつこうでありますが、こういうことが再びまた日本をして無謀な暴挙に突入せしめるという一番根本的な問題でありはしないか、もつと世界に目を開いて、率直に物を見ていただきたい、こう思います。  そこで伺いますが、公論報の述べておりますところの所説、その他のイギリス、フランス、アメリカ等の述べておる所説、こういうものはあなたのお説に比べて違つているのですか違つていないのですか。
  188. 木村篤太郎

    木村国務大臣 不幸にして私今お示しになつたそういうものは読んでおりません。何と言われようと、われわれは日本自衛隊戦力に足りない、こう考えております。そういう確信を持つております。
  189. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 ともかく国会の論議の中で、何と言われようと、何だろうと、おれはそう思うのだ、こういうような論議が横行いたしまする以上、あえて私は何をか言わんやであります。これはやがて世界の輿論があなたのお説を批判するでありましよう。  そこで続いて次に移りますが、やはり憲法の関係において出て参りますのは、当然自衛権——自衛権のいろいろな議論はもうほとんど尽きておると思いますが、その中で海外派兵、この問題は今高瀬委員からも質問がありましたけれども、私はこの海外派兵のうち具体的なお話を伺いたいと思います。  まず最初に、あなたは海外派兵はないのだ、こういうお話でありましたが、これはあなたが主観的にしないという約束なのですか、それとも海外派兵というものは自衛権の行使の中には入り得ないのだ、その範囲内にないのだ、こういうことですか、どつちですか。
  190. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は日本の法律の建前からして、海外派兵はできぬもの、こう考えております。
  191. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、あなたの同僚であります岡崎さんが海外派兵は自衛権行使の範囲内に理論的にはあり得るのだ、こういうような説明をされておるところと、あなたのお説はまつこうから矛盾撞着する、この点はどうでありましよう。岡崎さんはこれについて、日本国内に砲弾が落ちて来る、ほかの手段によつて防ぐことができないという場合には必要最小限度において、この砲弾の飛び出して来る場所を押える程度のことは自衛権として認めざるを得ないであろう、こういうふうに言われ、さらにまた、これは極端な場合の例であり、そのような場合にはそういう措置を理論的には認められます、こういうふうに言つておられるのであります。あなたのお説と岡崎さんの説が違う、この点はどうでしよう。
  192. 木村篤太郎

    木村国務大臣 この派兵という意味でありますが、岡崎君の申されたのは、おそらく派兵という概念のうちにまだ入らぬのじやないか、いわゆる向うから砲弾が飛んで来た、そこを押えなければ手がないのだというときにそこを押えるということを言うのであります。これは私は派兵のうちに入らぬのじやないかと思つております。いわゆるそこだけをとどめをさすのであります。軍隊を派遣してそこに駐屯させるとかなんとかいうわけではないのであります。
  193. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 派兵というのは、読んで字のごとく、兵隊を送るという意味じやないでしようか。何か違う珍解釈がありましたら伺いたいと思います。
  194. 木村篤太郎

    木村国務大臣 派兵というのは、結局その国の軍隊を他国に何かの意図をもつて出兵させるという意味に私は解しておるのであります。岡崎君の言うのは、私は聞いてみませんが、大砲のたまが飛んで来る、そのたまはよその陣地から飛んで来る、その陣地をこちらから爆撃するとか、何とか押えなければ日本の自衛は保てないというときにそれを押えるのであります。何か他に目的があつて軍隊を派兵、駐兵させる意図ではないということははつきりわかつておるのであります。少し派兵の概念が違うと思います。
  195. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 爆撃をするというだけでなしに、そこが再び向うに使われないために、そこにあなたの兵隊を駐屯させる、こういうことは当然出て来るのだし、また出て来るべきだと岡崎さんは言つておられるのですが、それはどうでしよう。
  196. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それは概念として自衛権の範囲に入るでしよう。つまりそこを何しなければ日本の自衛は保てないということから言えば、概念としてはそれは自衛権の中に入ることであろうと考えております。しかしわれわれの解釈する派兵というのは他の意図をもつて他国に進駐することを言うのであつて、ただ一局部、そこから日本の自衛権が見出されるというその一つの箇所について岡崎君は言つたのであろう、私はこう解釈します。
  197. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 いろいろ伺つています間にだんだんいろいろな珍解釈が現われて参ります。海外派兵ということは私はそれは自衛のためとか侵略のためとかいうようなこととは無関係だと思います。日本の国土の外にあなたの兵隊を一人でも二人でも出すということ、これは平和的な旅行その他とは違います。武力行使のために出すということが海外派兵であつて、そういう海外派兵の中に、侵略的な意図を持つた海外派兵と、自衛的な意図を持つた海外派兵と、二つにわかれるのだろうと思います。ところがあなたのお話を聞いておりますと、海外派兵というのは侵略的な意図をもつて出す場合だけを言うのだというふうに伺つた。こういう御定義については、私は今までかなり方方で伺つていましたけれども、初めて伺います。あなたとしては自衛のための海外派兵はお認めになるという今の結論ですが、それでさしつかえありませんか。
  198. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は派兵という言葉は使いたくないのであります。端的に言えば、これは日本海のある場所から軍艦でもつて日本を砲撃して来る、どうしても日本の土地を守らなければならぬ、そうすると日本でも相当の船を出してその船を沈めに行かなければならぬという場合が出て来るのであります。これは自衛権の範囲内の行動であります。日本の土地だけで守り得る場合と、日本の領域外に行つて守らなければならぬ場合が出て来ると私は思います。日本の国土だけに日本の武力をとどめておいて、日本へ上陸したときに初めてこれをやるということでは手遅れになる場合が往々にしてある、向うから船舶をもつて日本を領域外から攻撃した場合に日本もまた領域外に出て行つてこれを防ぐことは当然私はあり得ることであると思います。これをもつて私は派兵とはいえないと思います。
  199. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 どうも言葉意味が違うというお話ですが、それじやあなたのお説のような場合は海外派兵と呼ばないのならは何と呼ぶのでしようか。
  200. 木村篤太郎

    木村国務大臣 そういう言葉のあやは私はもう論争いたしたくないのであります。これは事実であるのであります。派兵であろうが、何であろうがわれわれといたしましては実際の事実に着眼してどう解釈すべきかということをいうわけであります。こう考えております。
  201. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今のお説はそのまま長官にお返ししたいと思います。さつきからいろいろ伺つおりますと、都合の悪いときは言葉のあやにお逃げになつて、現実を少しもごらんにならない、問題がこんがらがつて来ると今度は現実を見よう、よろしい、現実を見ましよう。それではあなたとしては、自衛のために自衛権の行使に必要な範囲においては、日本国領土外に兵隊が行動をすることがあり得る、こういうお話です。そこでそういうあり得る場合の一つとして外国軍隊、たとえば国連軍ないしは米軍、こういうものの指揮下に入つて日本国領土の外で後方任務につくことはよろしいのですか、よろしくないのですか。
  202. 木村篤太郎

    木村国務大臣 どういう場合を想定されて御質問になつたのかよくわかりませんが、日本軍隊がかりにありとして、アメリカの指揮下にそれが入つてアメリカの後方任務につく、そういうことはわれわれは考えておりません。日本日本の指揮のもとに行動するのであつてアメリカ日本防衛をするために共同作戦をする場合においても、これは双方十分に協議をするわけであります。日本部隊が全部アメリカの指揮下に入るというようなことは考えておりません。
  203. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 外務委員会で私たちの同僚の穗積七郎君が緒方総理に対して三つの質問をいたしました。読み上げてみますと、「緊急不正の侵略に対し日本部隊が外地におもむき飛行基地攻撃のような戦闘行為を行うこと、」これが一つ。「日本部隊が国連軍または米軍の指揮下に入つて後方勤務につくこと、」これが二つ。「自衛隊員が脱隊して外国軍の戦闘員として外地におもむき戦闘行為を行うこと、」これが三です。「以上三つのようなことを政府憲法違反と考えているかどうか」こういう質問をいたしました。ところが緒方総理は「総理大臣の代理としてはつきり言うが、三点とも憲法の範囲内であると政府考えている」、こういうふうに述べておられるのでありますが、今のお説と違いはしませんか。
  204. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はアメリカの指揮下に入るというようなことはないと考えております。これはそういうときの情勢いかんによりまするが、アメリカと共同作戦をやる場合において、もちろんアメリカ軍隊があるいは日本部隊に配属して後方任務につくこともありましよう、そういうことは予想されます。しかしわれわれといたしましては、それはそのときの情勢いかんによつてやるわけであります。日本防衛のためにいかにアメリカと協力してその態勢を整えるか、それはそのときの情勢いかんによるものであろうとわれわれは考えております。
  205. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 私はこれが憲法違反であるかどうかということを伺つたのです。ところが情勢いかんで判断する。憲法というやつは情勢いかんで判断すべきものですか。もつとも今まで大分そのような判断をなすつているように私は思いますが、この点ははつきりしていただきたい。
  206. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その点は緒方総理言つた通りであります。われわれは今実際の問題として答弁をしておるのであります。あなたが、日本自衛隊が全部アメリカ部隊の指揮下に入ると言うから、そんなことはあり得ない、万一事が起つて来たときには共同してよく合議する、私はこう申したのであります。その場合においては、あるいはアメリカ部隊日本部隊に配属して後方勤務につくこともあるだろうし、また日本部隊アメリカ部隊の一部に入つて後方勤務に従事することもあり得るかもわからぬ、こう申したのであります。日本部隊が全部アメリカの指揮下に入るなどというようなことは全然あり得ないと私は考えております。
  207. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうしますと、アメリカ軍隊の後方勤務に入つて来る、こうなつて参りますと、アメリカ軍隊戦力であることはお認めになると思いますが、いかがでしよう。
  208. 木村篤太郎

    木村国務大臣 アメリカが現在極東に持つておる、すなわち日本防衛のために駐屯しておりまする陸上部隊、海上部隊あるいは航空部隊、全部これらのものを総合すれば、私は日本憲法第九条第二項の戦力になるものと、こう考えております。
  209. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 後方勤務という場合には、前線の勤務と一体をなすもので、これを言葉ではわけておりますが、ことに近代戦の場合においては前線も後方もない、こういわれておるのでありまして、前線後方の相互の作用が有機的に緊密に一体にならなければ軍というものは動いて行かない。これはもうお認めになると思います。それはすなわち後方勤務ということは、その全体の機能の一作用をしておるので、こういう場合に後方勤務につくことが憲法違反でないとおつしやる。ところが後方勤務というやつは、たとえばアメリカ軍の中でやるとすれば、アメリカ戦力の一部となり、アメリカ戦力の有機的な構成要素になるということじやありませんか。その場合にこれが戦力でないとどうして言えるのですか。
  210. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これはよほど飛鳥田君は誤解されておるのだろうと思います。戦力かどうかということは、日本部隊それ自体を目的、対象にして判断すべきであります。アメリカ部隊と総合してこれは判断すべきものじやありません。アメリカ部隊がいかに戦力になつておろうとも、日本がそれの後方勤務をしたからといつて日本がそれに総合して、合せて戦力になるかならぬかということを判断すべきものではない。日本憲法日本が持つ自衛部隊の装備内容を対象にして判断すべきものである、こうわれわれは考えております。
  211. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 くどいようですが、それは戦力としての機能を発揮するのじやないでしようか。あなたがかりに個人の御職業としては弁護士をおやりになつていらつしやつても、政治家として吉田内閣の閣僚に列席せられておる以上は、吉田内閣の機能の一部として行動せられておることだと思います。こういうように考えて参りますと、後方勤務につくということは、後方勤務につくまではかりに戦力でなかつたとしても、現に後方勤務につき出せば、戦力としての機能を果す、戦力じやないでしようか。ここから憲法違反になつて来るのじやないか、御説明願います。
  212. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は全然見解を異にしております。日本憲法第九条第二項を解釈するにあたつては、日本が持つところの部隊の装備能力、これによつて判断すべきもので、ほかの国の部隊とあわせて判断すべきではない、こう考えます。
  213. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そこで海外派兵についても二つ伺いたいと思いますことは、これがあなたの御説によりますと、自衛、こういうことでありますが、自衛として海外同胞保護のために海外派兵をする場合もあるかどうか、これを伺いたいと思います。
  214. 木村篤太郎

    木村国務大臣 海外同胞保護のためにというのはどういうことを申されるのかちよつとわかりませんが、日本自衛隊というものはいわゆる外部からの直接間接の侵略に対してこれを防衛する。いわゆる自衛権の行使であります。海外におる同胞を救済するためにということはちよつと私、意味を解しかねますが、そういうことはあり得ないのではないかと考えております。
  215. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、あなたの自衛というのは地理的な、国土を守るという意味なんでしようか。それとも国民を守るという意味なんでしようか
  216. 木村篤太郎

    木村国務大臣 申すまでもなく国土国民両方を守るためであります。そしてたとえば公海において人命を救護しなければならぬ場合においては、これは自衛隊の別の、いわゆる海上における治安維持のために部隊が行動することはあり得る場合も出て来るだろうと思つております。しかしどこまでもわれわれ日本の国土と国民とを防衛するためのものであります。
  217. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今までにも海外に出ている同胞がいろいろな危害にさらされているということのために軍艦を派遣し、あるいは出兵をした例があります。現在日本の同胞が海外に移住をいたしております量は少いのでありますが、ブラジルにもいる、チリーにもいる、アルゼンチンにもいる、今後東南アジアにも出て行くことと考えます。こういうような場合に、この同胞の保護について出兵をするというようなことはあり得ないのですね。
  218. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さような場合には別の外交手段その他の適宜な手段をとつてやるべきで、日本から部隊が出動するということはあり得ないと考えております。
  219. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、海外に出ておる同胞の保護については、自衛隊は何ら関知しない、外交的手段が残されておるだけだ、こういうふうに承つてよろしいわけですね。——それでは続いて自衛権の発動についてもう少し伺いたいと思いますが、平和条約を見て参りますと、平和条約の五条に、日本は国際連合憲章を尊重する、なかんずく五十一条を尊重するということを約束いたしておりますが、これは間違いないでしようか。
  220. 増原恵吉

    増原政府委員 間違いございません。
  221. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうしますと、今度の自衛隊法が国連憲章と違つたことをやつておられる点がありましようか。
  222. 増原恵吉

    増原政府委員 違つたことをやるつもりはございません。
  223. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは伺いますが、国連憲章の五十一条というのをひとつよく見ていただきたいと思います。国連憲章の五十一条の自衛権、この自衛権の発動には二つの条件があります。一つは、現実にその国に武力攻撃が加えられたとき、武力攻撃が発生したときです。もう一つの条件は、安全保障理事会がこれを救済する手段をとつたときには即時にその自衛権の発動をやめなければならない、この二つの条件です。これは国連憲章が特に規定をしておるところであります。ところがあなた方のきめられた自衛隊法は現実に武力攻撃が加えられていない、ただおそれがあるだけで発動する、これは明らかに国連憲章の定めた精神に完全に背反するものだということははつきりしていると思うのですが、先ほど矛盾しておらない、こういうお話ですから、ひとつその点について御解明をいただきます。
  224. 増原恵吉

    増原政府委員 発動するというのは防衛出動をかけるという意味を仰せになつたものと思います。おそれのある場合にも、事態急迫をしている場合には国会の承認を得て総理大臣は防衛出動をかけます。かけますが、それはかけて配置につくとかなんとかいうことをやるのでありまして、外部からの武力攻撃が現実に起らない限り武力行動をするというわけではないのでありまして、適当な防衛の手段のできるための配備につくとか、その準備行動をやるというようなことのためにおそれある場合を含めて防衛出動がかけられるという規定を置いたわけであります。
  225. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 現実に防衛出動をかけるということと、自衛権の発動をすることと、それは理論的に区別できないと思うのですが、自衛権の行使ではないでしようか。
  226. 増原恵吉

    増原政府委員 やはり理論的に申しますとこれは全然違うのでありまして、外部からの武力攻撃が現実にありました場合に、これに対処していわゆる急迫不正の侵害に対して自衛権を行使する、おそれのある場合には、そういう武力攻撃に対して有効な措置がとれるように事前の配置をするということでありますから、観念的な理論の上では異なるものであるというふうに考えます。
  227. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 結局もしお説の通りだとかりにしましても、防衛出動をする、こういうことがそれでは逆に相手方を挑発する結果になりはしないか、こういうことも当然考えて行かなければいけないと思います。国連憲章が自衛権の発動は現実に武力攻撃があつたときということを規定いたしておりまする精神は、おそれなどということでむやみやたらと兵隊を動かして行くということは、結果として国際間の戦争の挑発行為になりはしないか、こういうことをおそれ、そういうことを防ぐためにこの規定ができた。これは国連憲章ができて参りますときの議事録をごらんになりますと、そういうことは当然議論をせられております。こういう点であなたが言う防衛出動というものは、実は逆に水鳥の羽音に驚いて配置についた、しかしその配置についたということが逆に向うを挑発した、こういう結果を生じて来るおそれがあるかないか。そういうことが考えられないか。
  228. 増原恵吉

    増原政府委員 お説のような疑いが起るような場合というのは、これは若干余裕のある場合と見るべきものと具体的に考えますが、そういう場合には政府がさような判断をするほかに、事前に国会の了承を得、国会の論議を尽して、その承認を得て出すということに具体的にはなる場合と思います。さように政府考え、国会も了承を与えるという事態は、いたずらに他を挑発するというようなことには、具体的にならないというふうに考えます。
  229. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 必ず事前了解を国会に得るということですか。
  230. 増原恵吉

    増原政府委員 法文に書いてありますように、緊急であつて了解をとる間がないという場合にのみ事前に出して、事後ただちに国会の承認を得るということになるのであります。
  231. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、おそれということで発動する場合でも、緊急だとあなた方が考えれば、国会の事後承認でよろしいということになる。あなた方のお考えなつたことだけで、実はそれが水鳥の羽音に驚いただけであつて、挑発になつてしまうという可能性を否定できないのじやないでしようか。
  232. 増原恵吉

    増原政府委員 しかしながら、これは政府の関係諸員も十分四囲の情勢を見て判断をすることでありまして、いたずらに羽音に驚いて、この重大な防衛出動をかけるというようなことは万ないものと確信をいたします。
  233. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういうふうに、万あるまいと思いますとか、慎重であろうと思いますとかいうことで、問題が解決をして行くものでないことは、あなた方も御存じの通りだと思います。むしろこの際、当然国連憲章の精神に従つて、現実に武力攻撃がなければ、おそれではできないというふうになさることの方が首尾一貫しているのじやないでしようか。
  234. 増原恵吉

    増原政府委員 不幸万一の場合ということを考えて、防衛出動の規定というものはできておるわけであります。不幸万一の場合を想定いたしまするに、現実に武力攻撃がなされたという場合は、その場合においても解釈には相当に幅ができるものとは考えます。しかしながら、わが国のような特に海をもつて隔絶されたところが、自己の防衛を行う立場において、おそれのある場合にいわゆる配備につき、出動を行いましても、これは決して他国を挑発するようなことにはならない、かように考えます。     〔平井委員長代理退席、委員長着席〕
  235. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 自国を防衛する配備につく、こういう場合には、いかに防衛出動を行つても挑発にはならぬ、こういうお話ですが、現に挑発をしている、挑発になつて行くじやないかということを私たちは考えざるを得ないのです。と申しますのは、たとえばあなた方が防衛出動をするという場合に、一体どこに出かけて行くのですか。相手方があるから、相手方の来そうだと思うところに防衛出動をして行くということになるのでありまして、ソ連が北海道を襲いそうだと思うのに、九州に出かけて行くばかはない。しかもあなた方の部隊では、現にそういう仮想敵国をつくつて演習をやつていらつしやる。たとえばこれはエコノミストの別冊に載つていることですが「某月某日払暁、某(?)国が空軍二千機と若干の海上部隊の援護をうけた歩兵四個師団を北海道の西北海岸に揚陸させる、同時に空挺一個連隊が上陸点内部に降下する、という想定からはじまつている。そのときの在北海道防衛部隊は普通科二個師、機甲一個師、空軍千五百機で、のちに内地から一個師団と空軍が増援されるけれど、攻撃側も兵力をつぎつぎと揚陸して歩兵五個師、機甲二個師、空挺一個連隊の兵力となり、戦闘は内陸にひろがつてくる。  戦局は三段階に分れ、第一段階の四十日は、防衛側が戦略的退却をして旭川—留萌陣地の線に下るまで。第二段階の五十日は、陣地戦で彼我の補給力が戦勢を左右する。第三段階の四十日では、まず「自由国家」軍の四個師が到着して攻勢転移に入り、水際撃退をするまで……」こういうようなことで現に演習をなさつていらつしやる。そうだとすれば、こういう仮想敵をつくつて始終演習をしておつて、しかも現実に防衛出動をして、北海道へ配備をせられるということになれば、それはソ連に対する一つの挑発行為と当然とれる。こういうことは間違いない事実じやないか。向うの側から見れば、それは当然挑発行為であろう、私はこう思うのであります。従つて侵略のおそれがあるということで防衛出動するということは、実に危険きわまりないことだ。こういう危険を未然に防ぐ必要があるからこそ、国連憲章の五十一条にはつきり二つの条件を付しているのじやないか、こういうふうに思うのです。  そこで伺いたいのは、今言うような仮想敵国あるいは作戦計画、こういうようなもので演習をなさつておられるかどうか、またそういう演習をなさつておられるあなた方が、北海道へ防衛出動すれば、それがソ連に対する挑発行為にならないかどうか。そういう危険が含まれていないかどうかということであります。
  236. 増原恵吉

    増原政府委員 ただいまお述べになりましたようなことは、保安隊において演習をやりまする際に、そういう想定を設けたということは聞いておりません。保安隊が最近北海道において行いましたいわゆる演習といいまするものは、昨年の秋でありましたか、方面隊の査閲という形で行つたものがありまするが、その際はそういう想定を設けなかつたことは明瞭でありまするので、今お読みになりましたものは、どういうようなものであるか、ちよつと想像いたしかねます。単純に図上の演習みたいな場合に、どこか一部でそういうものをこしらえたことが絶対ないとはよう申せませんが、保安隊の正規の演習においてそういう想定を設けたということはまずなかろうと考えます。  なお繰返しますが、新しくできようとしまする自衛隊の措置というものは、外部からの武力攻撃があつた場合にこれに対処するということでありまして、全体としての趣旨は、あくまでも防衛、自衛という線に徹しております。ただその外部からの武力攻撃に対する措置を有効ならしむるための措置は、おそれあるというものを含むにすぎません。いやしくも外部に対して進撃しようということは、主義としても、装備としてもあるいは訓練としても考えておらないので、他国をそのために挑発するということはなかろうと考えております。
  237. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 あなた方が、そう考えない、そういう性格でできているというようなお説をなさつても、挑発というものは向うの受ける印象を言うのであります。向うがあなたのおつしやることを信ずるか信じないかは、向うの自由であります。従つて一定の具体的な武力配置を行えば、それを向うがどう解釈するかは、向うの自由になつておるのでありまして、自衛隊をそういうおそれあるというようなことで、やたらと防衛出動させるということは、向うを刺激しないか、こういうことを私は伺つておるのであります。  またあなた方は目的ということを非常に強くおつしやる。ところがヒトラーが自分たちの軍隊をつくつて参りましたときに、何と言つておりましたか。これは警察軍だ。こういうことで、とうとうあれだけ大きな軍隊をつくり上げてしまつたのであります。従つてその軍隊をつくる人が、これは警察軍でございます、これは自衛に限ります、こういうようなことをいくら述べてみましたところで、それは国際的には意味がないのであります。こういう点から考えてみますと、防衛出動というものは十分に挑発的な意味を持つている、こういう感じがいたします。しかしその点についてあなたのお考えを伺つても、きつとまた同じ結論が出ると思いますから、次のことを伺いましよう。
  238. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 ちよつと関連して。防衛出動ということでありますが、これは具体的にはどういう形態をとるものでありますか。たとえば陸上自衛隊の場合、海上自衛隊の場合、航空自衛隊の場合、その三つの場合、防衛出動というものはどういう具体的な行動となつて現われるか。増原次長に詳細に御説明願いたい。
  239. 増原恵吉

    増原政府委員 防衛出動というものを抽象的に考えてみますと、もちろんいろいろなことがあり得るわけでありますが、抽象的に考え得るにとどまりまして、具体的にというわけになかなか参りません。単なる仮説を設けるにとどまるわけであります。そしてまた仮説をいろいろ設けまして、いわゆる当局者がかれこれ申し上げますことは、十分慎重であることを要するように考えます。外部から相当有力な武力を持つておる国が、陸海空共同してわが方の領土の一部を占有する目的をもつて進撃をして来るというふうなときに、自衛隊が陸海空を共同的に運用をせしめましてこれに対処するというようなことは、一つの典型的な場合であろうと思います。
  240. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 先ほど次長は、日本は海によつて外国と隔てられておるから、防衛出動をしても、それが相手国を挑発するというような心配は起らぬというような御説明があつたようでありますが、それは陸上自衛隊の場合は確かにそういうことが言えると思いますけれども、たとえば航空自衛隊防衛出動をするという場合、おそらく戦闘機が飛び立つて、そして敵の爆撃機なり、あるいはその他の輸送機を攻撃し得る一切の装備を整えて、そして領空を出てその付近の空に行動を起しておる、こういう状態だろうと私は思います。そうしますと、航空機については、距離というようなものはほとんど無視することができるのでありまして、ことに北海道とソ連領の地域というようなことになりますと、ほとんど距離は無視できるような要素であります。私は防衛出動をやりますと、そこに非常に相手方を挑発する危険が起るということは、飛鳥田委員の言われた通りだろうと思います。それについて一体どういうようにお考えになりますか。
  241. 増原恵吉

    増原政府委員 先ほど飛鳥田委員のお言葉の中にも、むやみに防衛出動をやると、というお言葉がちよつとありました。むやみにということは、ちよつとお加えになつたかと思いますが、やはりお心持のうちに、「おそれのある場合」と書いた防衛出動を相当頻繁にでもやるのじやないかという御心配があるのかとも思います。これは目前に敵の武力攻撃がないというふうな場合が、普通おそれのある場合であります。そういう場合には、はやり原則が生きまして、国会の事前承認ということに私は必ずなるものと思います。国会の事前承認を得られないような場合というのは、実際に直接もう武力攻撃が加えられておるということで、間髪を入れず防衛出動ということになるような事態だと思います。そうしてそういう場合に出動をさせましても、事後において国会の承認がいり、その場合に国会がこれを認めないということになりますと、撤退をさせなければならぬ。ことにおそれのある場合の出動というふうな場合について国会が承認を与えないということになりますれば、ただちにこれを下げる、しかし下げるといたしましても、これは政府の政治責任としては防衛出動を一度命じたということは、私は相当の問題であろうというふうにも、これは別問題でありますが、考えるわけであります。防衛出動というものを事態の必要をぎりぎりに見てかけるものでありまする以上、外部からの武力攻撃があつた場合にのみ防衛出動がかけられるということでは、やはり有効な防衛措置が講ぜられないというふうに私どもは判断をいたすわけであります。外部を挑発するというお言葉がありまするが、外へ攻めて行こうという態勢をこちらが整えるというならば、外部を挑発をすると思いますが、こちらは自分を守る態勢を整えるわけであります。ただいま御設例にあげられました航空の場合でも、いわゆるおそれのある場合に出動をかけたと申しましても、これは外国の領空に入つてつて偵察をやるとかなんとかいうふうなことをやらせようという意味はないわけであります。防衛としての措置配備につくというにすぎない、かように考えます。
  242. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 国連憲章に、自衛権の発動の条件として、外国の軍隊武力侵略が現実に行われた場合、こういうことになつているのでありますが、次長なり長官のお話では、外国の軍隊侵略のおそれがある場合に防衛出動をするということでありますが、明らかにこれは国連憲章に規定した自衛権の解釈と違うと私は思います。しかし緒方総理は、保安庁長官とは違つて、大体自衛権の発動は、結局海外派兵というような場合も含むのだという御解釈で、この点において、保安庁が、外国の軍隊侵略のおそれのある場合に防衛出動を命じ得るというならば、これは緒方総理の方の自衛権に対する御解釈の方が私ども筋が通つていると思います。攻撃は最良の防禦なりということがあつて、これはしばしば国会の委員会の席上質問者の口からも出ているのでありますが、いつそこの際そういう点についてはむしろはつきりなさつた方がよくはないか。つまり現実の武力侵略だけでなく、武力侵略のおそれのある場合自衛権を発動できるのだ、そして自衛権の発動は、日本軍隊が外地に出動するということもあり得るのだ、こういうふうに御答弁なつた方が、筋が通り、正直だと私は思う。先ほど木村保安庁長官は、何か日本海の海上のある地点から攻撃を受けたような場合に、そこを押えるために何らかの行動を起すということを例にとられたのでありまするけれども、しかしその日本海の海上のある地点から攻撃を加える敵国の軍隊の後方のさらに大きな基地を攻撃しなければ、その日本海の海上の拠点というものをほんとうに無力化することはできないわけであります。この日本海海上の某地点というものを想定する場合に、当然ソ連あるいは北鮮あるいは中国というようなものが考えられるのでありますが、木村保安庁長官は自衛権の発動乏してソ連、中国、北鮮というような地域に派兵し得る場合があるということをお認めになるかどうか、その点をひとつお尋ねしたい。
  243. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さつきから御議論を拝聴いたしておりまして、私から重ねて申し上げたいと思います。まず外部からの武力攻撃のおそれある場合、その場合について種々御質問があつたのでありますが、この場合を想定いたしておりまするのは、たとえばもうすでに敵の海岸線において、ある国の海岸線において部隊を集結して船も整つておる、出動準備かまさに終了せんとしておるような場合には、日本においては手をつかねて、来るのを待つておるようなことはできません。その場合においても防衛出動をして外部からの武力攻撃に対して一切実力を発揮すべく迎え討つだけの態勢を整えなければならない。この場合においてはやはり防衛出動命令が国家の安全を期するために当然なことであろうと考えております。ただ武力攻撃をするおそれあるというような考えだけで、現実にさような実際におそれのある場合をわれわれは考えておるのじやありません。ただ単に想像的におそれあるなんという場合に防衛出動はすべきものではないと考えておるのであります。それは誤解なさらないようにひとつ記憶にとどめていただきたいと思います。  次に敵の外部からの攻撃の根源を絶つために、派兵する必要がありやいなや。これがとかく間違いやすいのであります。自衛権の名のもとにおいてどこまでも外部に派兵し進撃するということになると、それこそまた大きな問題を引起して、日本を破滅に陥らさないとも限らない。そこはわれわれはぜひとも注意しなければならぬと考えておるのであります。敵の根源を断たなければいかぬ、そういうことを言つたらきりのないことである。われわれの考えるところはいわゆる自衛権の限界というものがあるのであります。緊急やむを得ざる、またそれよりほかに処置がないのだ——きわめて限定的にこれを考えるべきことであろうと思つております。ただ空漠として敵の根拠地をどこまでもたたきつふすのだというようなことの名のもとに、再び戦争の愚を繰返すようなことはあつてはならぬ。これはわれわれは十分に警戒しなければならぬ。自衛権のきわめて厳粛なる制限の範囲内において、われわれは行動すべきであると考えております。そうして先ほど申し上げましたように、某国の船が日本の領海外から日本を大砲でもつて攻撃して来た場合、日本の領海外だからといつて手をつかねておることはできません。そういう場合は緊急やむを得ないのであります。ほかの手段を尽すべき方法はありません。そこでこれに向つて相当な道を講ずるという点は、日本防衛をするために当然な処置であろうと考えております。そこにわれわれは大きな限界があることを十分に了解すべきであろう、こう考えております。
  244. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 もう一点……。今の具体的な例でありますが、日本海海上のある地点、しかも領海外、そこから日本に対して武力攻撃が加えられた、そうすると自衛権の発動には厳密な限界を置きたいというお話、その拠点だけをたたくんだという話だつた。ところがその拠点を日本がたたこうとした場合、今度はその拠点を占有しております外国がその拠点を奪われないために、あるいは拠点を攻撃されることに今度は向うが対抗するために、軍事行動を継続する。そうしますと、その小さな拠点を争つて日本軍隊と外国の軍隊とが交戦状態に入つて来る、なかなかこれが解決しないということになりますと、結局はその拠点をいつまでも占有し続け、そうしてそれに増援を続ける外国の軍隊を、その本土においてあるいはその主たる根拠地においてたたかなければ問題が解決しないわけでありますが、そういうふうになつてこの自衛権の発動がだんだん拡大されるということは、これは私自然だと思うが、長官はどうお考えになりますか。
  245. 木村篤太郎

    木村国務大臣 そういうことを言つておればきりがないことでありまして、われわれとしては自衛権の限界というものがあるだろう、緊急やむを得ない、それよりほかに処置がない、ということに思いをいたさなくちやならぬのであります。向うはある拠点を何して、それを放棄して、また某地に向いて入り込む、それをまたたたかなければならぬ、そういうことをわれわれは言うのではないのであります。自衛権というものは、常識的に考えておのずからそこに限度がある。その当時の情勢判断からして、それよりほかに道がない、またそれが限界だというところにおいて、われわれは事を処置して行くべきであろうと考えております。要はそのときの情勢判断で、今ここで言葉の上でいろいろ申すよりも、われわれはほんとうの原則はどこにあるかということを十分に心をひそめて考えなければならぬ。つまり自衛権の限界、それに基く行動範囲というものを、われわれは大きく取上げてやつて行くべきであろうと、こう考えております。
  246. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今の田中さんに対する長官の御説を伺つておりまして、率直に言えば心が寒くなつた。というのは、今の長官のような御説は、国連憲章の五十一条ができるときに、相当議論をせられておるのであります。直接に武力侵略がやつて来てからではもうおそいではないか、従つてあらかじめ武力攻撃を加えて来るおそれがあるときには、これをたたくことができなければ、完全な自衛とは言い得ないじやないか、この議論は国連憲章ができますときに、アメリカのヴアンデンバーグ将軍が主張したところです。ところが国連憲章の起草委員すべては、そういう場合に、それではおそれということの認定いかんが実は侵略になるじやないか、そのおそれの認定の仕方いかんで武力侵略の口実がつくじやないか、こういうことは自衛権の濫用を防ぐという意味でどうしても否定しなければいけないのだというので、御説のような考え方、すなわちあなたとヴアンデンバーグ将軍は同説ですがこの考え方は国連憲章の五十一条をつくる起草委員の中で否決せられた。少くとも国際的には否定せられた説であります。この国際的に否定せられた説を、今この国会の中で国民に向つて堂々と述べられてよろしいのかどうか。先ほどあなたは、国連憲章は十分尊重する、これに従う、こういう御説を述べながら、たちまち都合の悪いところに行くとすぐそういう御議論をなさる。これは私は非常に残念なことだと思います。堂々と国連憲章の起草委員の中で否決せられ、それが世界の正義だと認められた事実、これと反対することを言つておる。これは国会の論議というものがなるほど低調でしよう、低調でしようが、しかし少くとも世界が見ておるのですから、こういう点で国連憲章の精神と全然相反する御説を述べられたことについてもう一度伺いたいと思います。  それともう一つは、先ほど増原次長の御答弁に、防衛出動ということは配置につくのだ、こういう御説でしたが、それは先ほどの田中さんの御質問に対してお答えになつておるところを伺つておりますと、配置につくのだとは大分違つて来るように思います。一体防衛出動というのはどこまでを言うのですか、この点を伺いたいと思います。二つ、長官からどうぞ……。
  247. 木村篤太郎

    木村国務大臣 武力攻撃のおそれある場合、今申し上げた通りであります。もうすでに某国が戦闘配置について、まさに船に乗つてわが国に進撃して来ようとしている、そういうような場合を予想しておるのでありまして、ただわれわれといたしましては、空漠に、おそれあるなどとは認定いたしません。あらゆる情報を得て、もうすでに進撃するというような危険が目睫の間に迫つた場合、その場合において日本防衛出動をして態勢を整えてこれを迎え撃たなければ、日本の国の安全を期することはできないのであります。手遅れになつてはならぬために、それだけの用意はしなければならぬ。しかしそれだけの用意をするについても、かつてにやるわけではない。いわゆる事前において国会の承認を得べきことは当然である。まつたく緊急やむを得ない、一刻も許すことのできないということを想定して、われわれはこの法案をつくつておるわけであります。ただかつてにおそれある場合なんということを仮想して、軽々に防衛出動命令を出すわけではない。防衛出動命令を出したからといつて、ただちに向うへ行つてこれをたたくというわけではありません。迎え撃つ態勢を整える、私は自衛権の限界がそこにあると考えておるのであります。申すまでもなく、自衛権はみずから守るだけの態勢を整える権利であります。この権利はみだりに行使すべきものじやない。そこに、先ほど申しましたように、おのずから限界がある。それよりほかに方法がない、その手段をわれわれはとつているということにおいて、この規定はでき上つておるわけであります。
  248. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 次長のお答えの前にちよつと質問します。防衛のためにどうしてもそれをやらなければしかたがない、もう来ることは確実だ、今にしてやらなければ防衛できない、こういう考え方は一個のその国の主観ではないか。必ずしもその国の主観が客観的な事実に合致しておるとは言い得ない。従つて一個のそういう主観によつてやたらと自衛権を発動させることは、実は侵略の裏返しになる可能性がある。実は自衛権の濫用になる可能性がある。こういうことで国連憲章をつくりますときには、現実に武力攻撃があつた場合に限るということが特にきめられておるのであります。こういう国連憲章のきめ方、国連憲章の精神についてあなたの御批評を伺いたい。
  249. 木村篤太郎

    木村国務大臣 国連憲章はもとより私はりつぱなものと考えております。つまり世界の平和をそこに求めようというのであります。われわれも世界の平和を祈念することは、国連加入のもろもろの国の人々と何らかわりはありません。ただただわれわれは日本の国の安全をどこまでも守つて行かなければならぬ、それであります。その意図よりほかに何もない。ただわれわれといたしましては、手をつかねて敵の来るのを待つておる、これか時期が遅れたら、日本防衛はすつかりくずれてしまうのであります。それに対する対処だけは、ぜひとも考えておかなければならぬのであります。そこでさような危険が目捷の間に迫つているかどうかということは、もとより日本国自体が判断しなければいけない、他国に判断してもらうべきものではないと考えております。われわれはどこまでも日本国自体がこれを判断して、そうしてそれに対処して日本の安全を期さなければならぬ、こう考えております。
  250. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 くどいようですか、国連憲章についての御批評を伺いたい。この五十一条に関して私は言つているのです。全体としてりつばなものであるか、ないかということは、伺わなくてもあなたのお答えはわかつています。あなたの所説と国連憲章の所説と異なつているこの五十一条の部分について御意見を伺いたい、こういうことであります。  それからも一つは、日本に迫り来る危険ということについては、他国に判断してもらう必要はない、おれたちかかつてにやるのだ、こういうお話でありましたが、この考え方こそ、今まで世界のいろいろな部分に騒乱を巻き起して来た根源じやないでしようか。ヒトラーといえども自国の自由を求めるのだ、自国を守るのだ、こういうことでオーストリアに進駐をし、あるいはポーランドに侵入をやつて参りました。自分の国のことは自分で判断するんだ、他国の容喙を許さぬということは、根本的にいえば、国連憲章の精神にまつたく背馳しておる、こう言わざるを得ないと思います。この二点についてはつきりと伺いたい。繰返します。一つは、あなたの所説と国連の所説と違うところの五十一条についての御意見を伺いたい。国連憲章の五十一条が違つているか違つていないのか、こういうこと。それともう一つは、他国の判断を仰がない、こういうことについて伺いたい。
  251. 木村篤太郎

    木村国務大臣 国連憲章にはむろん五十一条において現実に危険が発生したとき、われわれの今の自衛隊法においては発生したときと、また発生するほんとうに危険が迫つたときと、ここにおいて多少異なる点があろうと考えております。しかし日本防衛の全きを期する上においては、今申します通り、危険が目睫の間に迫つておる場合においても対処する必要があるとわれわれは考えておるのであります。しこうしてこれはだれが判断するか、今申し上げた通り日本国自体が判断するよりほかに方法がない、またそれは日本がみずからの国の防衛を期するのでありますから、その国が判断すべきは当然であろうと私は考えております。今ヒトラーの例を持ち出されましたが、ヒトラーのような独裁政権のもとにおいては誤つたこともできましようが、御承知通り日本は民主主義国家であります。国会がすべての国権の最高機関であつて、結局は国会においてきめるものでありますから、ヒトラーの愚を再び繰返すようなことはないと私は考えております。
  252. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、国連憲章五十一条は、あなたの考え方からすれば、あなたと立場を異にして違つている、こういうことですね。ところが平和条約の中にはちやんと第五条で、これを尊重する、こういうことを約束しておられる。こういう矛盾撞着のあるということは非常に重要なことだと思います。都合のいいときには国連国連といつておいて御自分に都合が悪くなるとかつて解釈をなさる、こういうことはかつての旧日本帝国の外交の一貫した方針であつた、またその愚が日本に行われようとするということは、私は非常に重要なことだと思います。この点についてあなたと何べん議論をしてもいたし方ありませんから、次に移ります。
  253. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 議事進行について。今の点は私は非常に重要な点だと思いますので、これは政府の最高責任者として吉田首相の御出席を待つて質問できるように希望します。
  254. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今田中委員から御注意がありましたが、これは吉田総理のおいでをいただきまして、この点に関する責任ある回答をしていただきたい、こう思います。
  255. 稻村順三

    稻村委員長 委員長においてよろしくとりはからいたいと存じます。
  256. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 続いて次の質問に移りますが、自衛という言葉にからんで当然私たちの頭に浮んで参りますのは、マツカーサー元帥が日本において朝鮮動乱に関してとろうとしたところのいわゆる予防戦争という概念であります。この予防戦争という概念は、自衛権行使の中に入りますか入りませんか、イエスかノーで答えていただきたい。
  257. 木村篤太郎

    木村国務大臣 マツカーサーの予防戦争ということはどういうことを意味するかわかりませんが、われわれの考えておるところは、日本の国の平和と独立を守る、安全を期するためにやるのでありまして、いわゆる外部からの不当侵略に対してこれを防衛することを期するためにやつているのであります。
  258. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 マツカーサーがとろうといたしました予防戦争というものは、これがマツカーサー元帥の場合によれば罷免の原因になつているかもしれない、こういううわさすらあるくらいの事実であります。またはなはだ失礼ですが、マツカーサー元帥によつてこの予防戦争が現実に施行せられたならば、日本もあるいは爆撃の範囲内に入つたかもしれない。日本の安全に対して重要な問題です。ところが一国の治安を守る、防衛の任に当ると称しておられる長官が、予防戦争なんというものはどんなものだか知りません、こんな不勉強で一体よろしいのでしようか。私はそれをひとつ伺いたい。
  259. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はマツカーサーの真意はわからないから言うのです。予防戦争というものは考えていない。われわれは日本の国の防衛をいかにすべきかということを検討すればいい。人は人なんであります。われわれは日本防衛をいかにあるべきかということを考えているのです。そこにわれわれは全力をそそいでやつているわけであります。
  260. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 これは日本に十分関係があるのです。日本におつてやろうとしたことなんです。しかもこれによつてアジアの行動というものは全然かわつて来る。もう一つは自衛権ということについて種々御検討になつているはずです。この場合に自衛権ということの、御検討の中に、マツカーサー元帥のとろうとした予防戦争というものが当然参考として入つて来ないなんというそんなはずはありませんよ。おとぼけになるのにも限りがあります。先ほど来伺つておりますと、場合によりますと御存じない、私は知らぬ、聞いていない、こういうお話であります。私もさつきよほど重ねて質問をしようかと思つたのでありますが、外務省がアメリカ軍と種々防衛折衝を続けておりますことははつきりしております。このはつきりした事実を、防衛庁の長官たる私に連絡がありません、私個人は知りません、こういうお話であります。これではあまりにも国民が気の毒です。こういうような無責任な——無責任なと言うとあなたお怒りになるかもしれませんが、そう言わざるを得ない。そういう御答弁だけはひとつ御容赦いただきたい。私に御答弁になつていると思わないで国民各位に、全体に答えているという考え方でお答えをいただきたい。こう私思います。そこで、それではもう予防戦争についてあなたに伺うことはよしましよう。御存じないのですから……。  続いて憲法の問題については、国際紛争という言葉が出て参ります。これは各委員会速記録を調べてみましても議論の対象になつている度合いが少いと思います。そこで伺います。国際紛争というのは一体どういうことでしようか。ひとつあなたの国際法の知識で定義を下していただきたいと思います。
  261. 木村篤太郎

    木村国務大臣 国際紛争とは私の定義によると、当事者国がおのおの主張があり、その主張が一致せずに解決点を見出すことができない、その場合であります。
  262. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 日本は敗戦の結果、歯舞とか色丹とかいうところの領土権を失つたというふうに外国は見ております。ところが日本はいまだに領土権を失つていないという考え方に立つていると思いますが、これはいかがでしようか。
  263. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これはいろいろ議論があろうと考えております。われわれは領土権を失つていないと解釈しているのでありますが、しかし第三者国が見てどう解釈するかこれは別問題であります。
  264. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、歯舞、色丹、こういうところの領土権に関する争い、こういうものは国際紛争にならないのでしようか。
  265. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これがソビエトとの間にいろいろ問題が起つて当事者がこの問題を契機といたしまして互いに主張し合い、その間に紛争が生ずれば、まさに国際紛争の一つの形であろうと私は考えております。
  266. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 お説のように国際紛争だといたしますならば、この国際紛争にからんでソ連と日本がお互いに自己の意思を相手に押しつけようとする、日本はここはわしの領土だ、こういう意思をソ連に押しつけようとする、ソ連はいやわしのものだという意思を日本の国家に強制しようとする、ここに争いが発生いたしました場合には、しかもその争いが武力行使に及んだ場合には、日本自衛隊は出動できるのでしようか。
  267. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は、万一間違つて国際紛争となつた場合にどうなるかということでありますが、日本はさような国際紛争を解決する手段としては武力行使はしない。さような場合には日本は進んで武力行使はしないことは当然であります。しかしこれを契機としてソビエトが日本に不法な言いがかりをつけて、日本について武力攻撃をした場合には日本は自衛権を発動して行くことは当然であろうと考えるのであります。
  268. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 自衛権の行使と今おつしやいましたが、これは国際紛争解決の手段の一形態ではないでしようか。
  269. 木村篤太郎

    木村国務大臣 憲法趣旨は、日本が進んで国際紛争解決の手段としては武力を行使しないということであります。他国がそれをかつてに国際紛争の種にして武力攻撃をやつた場合には、日本は自衛権を発動することは当然であろうと私は考えております。
  270. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 憲法には武力による威嚇または武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する、こう書いてある。消極とか積極とか一つも書いてないのですが、どこの参照条文を見ますと消極と積極が出て来るのですか。
  271. 木村篤太郎

    木村国務大臣 この憲法趣旨というものはいわゆる日本が進んで武力の行使とか武力による威嚇、そういうものを国際紛争の解決の手段としては行使しない。ここからおのずから私はこの解釈は出て来ると考えております。みずから進んでさようなことはしない。しかし他国がさようなことを言いがかりをつけて日本武力攻撃をして来た場合においては、私は自衛権の範囲内において自衛力を行使することは当然であろうとこう考えております。
  272. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それではもつと具体的な例を伺いましよう。竹島は日本の領土であることはあなたは再々御主張になつているところであります。この点については間違いありませんか。
  273. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ありません。日本の領土であります。
  274. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 ところが竹島に南鮮の船がやつて来て、南鮮の領土だという棒ぐいをおつ立てたとかいう話を聞いたのですが、そういう事実はありますか。
  275. 木村篤太郎

    木村国務大臣 立てたそうですが、ただいまはそれはないようです。
  276. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますとこれは竹島自身について南鮮と日本との間の領土主権の争い、あなたのお説に従えば当然国際紛争だと思います。この場合に、竹島を守るためにあなたのいわゆる自衛隊をお出しになるか。出した場合に国際紛争の解決手段として出すのじやないか、こういうことを伺いたいのです。
  277. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まだ国際紛争というところまでは行つておりません。
  278. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは伺いますが、国際紛争には一般に法律的な紛争と政治的な紛争と二つに区別せられるというふうに言われておりますが、この区別をお認めになりますか。
  279. 木村篤太郎

    木村国務大臣 法律的の国際紛争、政治的の国際紛争そういう区別をしているのかどうか私にはよくわかりません。私にはよく具体的にお聞きしなければわかりません。
  280. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 これはもうどの国際法の一番初歩の教科書を見ましても出ていることですが、このことについて御存じないとすればしかたがありません。(「忘れたのだ」と呼ぶ者あり)忘れたのでしよう。それでは時間もたちますので次へ移らせていただきます。  MSAとの関係について、これもいろいろすでに議論が尽されておりますので、顧問団について二、三伺つておくにとどめます。顧問団の任務ということについて岡崎外相はかなり明細に外務委員会で述べていると思いますが、この述べられた任務というものは、何かアメリカにでも顧問団の任務規定する根拠法があつてその任務がきまつて来たのか、あるいはMSA交渉の過程において、相互の議論の中で出て来たのか、どつちでしようか。
  281. 増原恵吉

    増原政府委員 MSAに基きまする顧問団の任務というのは、アメリカがMSAに基く援助を相当多数の国に与えておりまして、そうした国にやはり顧問団を置いてやらしておるという事例からとつてつておるわけであります。一々読み上げますのは……。
  282. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 いやけつこうです。それを聞いているのじやないのです。それが何か根拠法があつて出て来たのか、それともMSAの交渉の過程において自然にきまつて来たのかということを伺つているのです。
  283. 増原恵吉

    増原政府委員 根拠法という明確なものは承知をしませんが、大体いわゆるMSA法に基いて各国にこういう援助を与えまするときに顧問団の任務規定をしておる、大体それにならつて、このたびのMSAに基く顧問団の任務を定めたということであります。
  284. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうしますとMSA交渉の過程において——よく聞いてください。MSA交渉の過程において話し合つているうちにきまつて来たということですね。
  285. 増原恵吉

    増原政府委員 もちろん話し合つているうちにきまつたわけですが、そのきまる前例というものが方々にあつたということであります。
  286. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 前例はありますが、しかしイギリスやフランスにある顧問団と日本の顧問団との任務、この点においては必ずしも一致していないと思うのですが、この点どうでしようか。
  287. 増原恵吉

    増原政府委員 顧問団の任務は、このMSAによつて与えまする装備品等の使用方法を教えてくれる、そうしてそれがMSAの目的の通りに有効に使われておるかどうかを、いわゆるオブザーヴと書いてありますが、観察をするというふうなことを主たる任務としておるのであります。これは各国の任務と大体違いはないというふうに考えております。
  288. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、この問題について将来、やはり概略的な御説明は岡崎さんの説明でわかるのでありますが、個々の問題になつて参りまするとかなり不明瞭な部分があると思いますので、こういう点について、顧問団の任務に関してあらためて細目協定をつくる意思がおありかどうか、そういうことを考えておられるかどうか、これを伺いたいと思います。
  289. 増原恵吉

    増原政府委員 細目協定というあらたまつた意味の、ことに国と国との間で明確なとりきめをするというふうの程度になるかどうかは今まだはつきりしませんが、一応顧問団というものが同名ぐらいの数で、どういう組織をもつてその任務を遂行するかということについては、事実上は話合いをいたすということになつております。
  290. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは個々に伺いますが、顧問団は一体どこへ配属されるのでしようか。
  291. 増原恵吉

    増原政府委員 現在考えられておりまするものは、顧問団としては一応一本のものになる。そうして顧問団長というようなものができまして、その下に本部というものがあり、本部には、内部的には向うの方の陸海空の三部門がわかれる、しかしその長のもとにやはり総合的な任務を持つ部局もでき、その下に大体陸海空とわかれる、これか形態でありまして、今までは各部隊に将校一人、下士官二、三名というものが大体おつたわけです。だんだん引揚げますが、こういうものが全部引揚げまして部隊としておる者は管区本部に数名の、これも従来よりは数がうんと少くなりますが、数名の者を常駐させる、そのほかは中央における、東京におることになりますが、東京における要員の中から学校等には——わが方の学校ですが、学校等には相当長期駐在をするという形で顧問員を出す、各部隊への配置はやめるという建前で顧問団は仕事をして行くというわけであります。
  292. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、顧問団は、顧問団自体の本部を持ち、顧問団自体の組織を持つて仕事をして行く、ただ自衛隊内における顧問団というものは管区隊に配置するだけだ、ほかには学校その他に配置するだけだというお話になつて参りましたが、そこで、それでは自衛隊内、いわゆる管区隊内における顧問団は、いかなる待遇を受けるのか。たとえばこういうことです。これは小さな話ですが、すわるときに管区隊長よりも一番上席にすわるとかなんとかいう問題が当然出て来ると思います。これは小さなことのようですか、隊員ないしは日本国民に与える心理的な影響は非常に大きい。台湾で蒋介石と陳誠の部屋の真中の部屋に顧問団長のチエース少将が陣どつてつて、右に蒋介石、左に陳誠がすわつておるというような形が出ておるそうでありますが、いわゆるこういう待遇、顧問団の自衛隊内における待遇、こういうことについて伺いたいと思います。
  293. 増原恵吉

    増原政府委員 管区総監部に顧問団がおるということは、これはいわば便宜の問題でありまして、おらなければならぬのではありません。適当な事務所等がほかにありますれば、そこにおつても一向さしつかえないのでありますが、事務所等も、顧問団については日本側か提供するということをMSA協定で約束しておりますし、かたがた便宜の問題として管区総監部内に事務室を提供するということであります。どちらが先に並ぶとか何とかいう問題は、序列をもつて並ぶというようなことはありません。儀礼的に何かよそに招かれたようなときにどういうことになろうかということはあるかもしれませんが、序列をもつて日本側と向うとか並ぶというようなことはありません。
  294. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 序列をもつて並ばないということはよくわかりました。  そこで、顧問団は自衛隊内を自由自在に通行する権利を持つておりますか、通行権を持つておりますか。
  295. 増原恵吉

    増原政府委員 通行権というふうなものを規定したり、約束したりしたことはございませんが、任務の遂行上必要がある場合には、隊内に入つて来て見ることをこちらとしては許容するということになると思います。
  296. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうすると武器庫の中にも入つて行ける、こういうことになりますか。
  297. 増原恵吉

    増原政府委員 武器庫を視察するというふうな権限は、大体において顧問団員の将校等は持つことになつておりまして、そういう職務を持つて来ました場合には見せることになると思います。
  298. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 管区隊くらいになると当然作戦室を持つておるはずであります。作戦室にも自由自在に出入りできますか。
  299. 増原恵吉

    増原政府委員 現在のところまだ作戦室というような名称をもつて呼ぶものを持たないのでありますが、防衛のための計画をする部屋というものは、将来は持つことになるかと思います。そういう場合に自由自在に入るというふうな性質のものではありませんで、その顧問の持つ職務に応じてそういうところへ入れることを適当と認めれば、これを許容するということになると思います。
  300. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと作戦室に入ることを拒否する場合もあり得るということですね。いかがですか。
  301. 増原恵吉

    増原政府委員 顧問団について負つておりますことは、「日本政府は、アメリカ合衆国政府の職員で、この協定に基いて供与される装備、資材及び役務に関するアメリカ合衆国政府の責務を日本国の傾城において遂行し、且つ、この協定に基いてアメリカ合衆国政府が供与する援助の進ちよく状況を観察する便宜を与えられるものを接受することに同意する。」それからあとは待遇のことが書いてあります。こういうふうなことになつておるのであります。どこへでも自衛隊内はかつてに行けるというふうな形のものではありません。
  302. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、顧問団が自衛隊の中にやつて来ます場合には一々許可を得て入つて来る、こういう手続をとるのでしようか。
  303. 増原恵吉

    増原政府委員 顧問団として任命をされておりまする者は、原則的に言いますと、今申しました観察の権限を日本政府として許容しておると見るべきものと思います。そうして具体的に部隊に来ます場合には、部隊側に連絡して、いつ見に参りたいと思うからよろしく頼む、おいでくださいということで行くものと思います。
  304. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうしますと一々通告をしてあなた方の了解を得て、それからでなければ自衛隊の中に入つて来ない、こういうふうに了解をしてよろしいわけですね。
  305. 増原恵吉

    増原政府委員 ただいま申したように、原則的には観察の権能を持つておることを、日本政府が顧問団員については認めておるわけであります。一々正式の承認をとるというふうな形はおそらくとらないと思います。事実上連絡をして来て、こちらの方で見てくださいという形になると思います。
  306. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 自衛隊内における顧問団の地位を考えます場合に、今俗に保安顧問団と呼んでおります顧問団のことを、やはり私たちは頭に浮べないわけに行かないと思う。ところで現在保安隊において弾薬の管理はだれがやつておりますか。
  307. 増原恵吉

    増原政府委員 現在弾薬、あるいは武器についてもそう言えますが、これは正式に協定を結んで、保安隊、警備隊が借り受けたり、もらつたりという正式の手続を実はとつておりません。そのために武器の保管責任者は顧問団将校ということになつております。弾薬についても顧問団将校ということになつております。しかしながら実際の看守に当つております者は、保安隊の幹部及び隊員がこの責任に当つておる。そうした場合に従来間違いがありました場合には、米国側としては責任を顧問団の将校にとらせるという建前をとつております。しかしわが方としては実際上看守の任に当るようにしておりますので、わが方の幹部及び隊員にも、聞違いがあつた場合には行政上の責任はとらせるという形をとつております。
  308. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうしますと武器、なかんずく弾薬については日本軍の管理でなくして、米軍の管理下にある、こういう事情が今のお話によるとあるわけであります。MSAの顧問団の任務として、この問題はどうなるのでしようか。
  309. 増原恵吉

    増原政府委員 MSA協定が実施されますと、これからは向うの政府の方から日本政府に対して正式に供与されますので、名実ともに日本政府、そうしてその実施機関としての保安隊なり、警備隊、将来の自衛隊がその看守の責任者になるわけであります。
  310. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 MSAでもらえるものは、今あなた方が持つておられる五億ドルとか言われております現在の武器までも含んでおるのでしようか。
  311. 増原恵吉

    増原政府委員 この点はなお明確に確かめる余地が少しありますが、大体の筋は、現在十一万の保安隊がおりますが、この十一万の武器は充実しておりません。まだ多少もらわなければ十一万名分になりませんが、この十一万人だけのものは、MSA協定によらないで日本に貸与もしくは供与するということになりそうであります。しかしその場合はやはりMSA協定と別の協定を結ばなければならないということにならうと思いますが、大体の見通しはそういうことでありまして、今度十一万以上に制服がふえますれば、そういう増強分についてはMSA協定に基いて供与するというのが、一応の見通しであります。
  312. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今までの分についてはまだ協定ができていない、未確定であるというお話でありましたが、そうなりますと、これからMSAでもらうというものについては、自衛隊が独自の立場で武器を管理し、弾薬を保管する、従つてMSAによる顧問団はこれについて関与させないこういうことは今の御説明でわかりましたが、すると次の協定ができるまでは、今までのものは今まで通り米軍が管理して行く、こういう形になるわけですか。
  313. 増原恵吉

    増原政府委員 そのところは変則的でありますが、大体そういうことに相なろうと思います。
  314. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、実際は変則的なその部分を通じまして、MSAによる軍事顧問団、こういうものの発言力は非常に強いものになつて来るのではないかと思うのですが、いかがですか。
  315. 増原恵吉

    増原政府委員 現在でも建前は顧問団将校が保管をしておるということになつておりますが、これは建前の問題でありまして、実際上はすでに保安隊の幹部及び隊員がこれを看守しております。このことに関して顧問団将校がとかくの発言をするということは現在もありません。将来にわたりましても、その点の御心配は事実上少しもないものと考えております。
  316. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 しかしそういう建前になつていれば、その建前をたてにとられて強力に主張して来れば防げないのではないか。そういう筋、原則と、現実にどう行われておるかということとは別個だと思います。私たちは現実にどう行われておるかということよりも、どういう筋なり、どういうプリンシプルによつて左右されておるか、その組織、プリンシプルがどういう危険を含んでおるかということを伺つておるのです。もう一ぺんどうぞお答えを願います。
  317. 増原恵吉

    増原政府委員 現在までの保安隊の使つておりまする武器については、内部的にはいろいろ話合いを経過いたしましたが、なかなか適当ないわゆる協定に達するわけに参りませんでした。この点は米国側としても単行法を出しまして、大統領にこれを措置する権限を与えるというようなことをやりつつあるようでありまして、目下向うの国会で審議中のようであります。これと相応じましてこちらは協定を結び、おそらく国会の御承認を受けるようになると思いますが、そうした成規の手続をとりたいということでありまして、これは手続としてはそういうふうになつておりまするが、現実に武器保管ということをもとにして保安隊の訓練その他にとかくの品をはさむということについては御心配はない、かように考えます。
  318. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 いろいろなこういう今まで伺つて参りました点についても、かなりあいまいなものがあると思います。そういうような意味で一番最初に伺つた細目協定というのを、軍事顧問団の長なり保安庁長官なりとの間でつくつて疑義なからしめて行くような方法をとる意思があるかないかということを私伺つたのですが、もう一度繰返してお伺いいたします。
  319. 増原恵吉

    増原政府委員 顧問団長と長官ということになりますか、あるいは次長ということになりますか、次長が適当だというお考え方もありまするが、そういうところである種の協定を結んで細目的に疑義なからしめるという措置はとりたいと考えております。
  320. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 この顧問団の任務についてアドヴアイスという言葉がない。アドヴアイスという言葉を抜いてきめた、アドヴアイスをとつてもらつたということについて、岡崎さんは非常に手柄顔に語つておられますが、アドヴアイスという言葉が抜けて行つた経緯について伺いたいと思います。
  321. 増原恵吉

    増原政府委員 とつてもらつたという経緯は私もよく承知をしております。こまかい経緯は実は知らないのでありますが、従来アドヴアイスという言葉——こういうふうな国際的に用いられました実例がアドヴアイスという形で相当に立ち入つた、事実上干渉、命令に近いようなことがままなくはなかつたというようなことを考えて、アドヴアイスという言葉は除いてもらうようになつたということに了解をしております。
  322. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 岡崎さんのそういうお話がありましたので、私いろいろなところのを調べてみたのですが、どこの国のMSA協定にもアドヴアイスという言葉は一つもないのです。よその国には入つてつて、特に日本はとつてもらつたというようなことは一つもないと思うのですが、この辺でアドヴアイスを特にとつたことを手柄顔にしておられることは私おかしいと思いますが、これはあなたに申し上げたつてしかたがありません。そこで各国のMSA協定を調べてみますと、アドヴアイスという言葉がない。すなわち実はこれは観察という言葉の中にアドヴアイスを含めているという意味にしかとれないのですが、この点についてどうでしようか。
  323. 増原恵吉

    増原政府委員 オブザーヴという中には、何といいますか、言葉そのものとしての適当なアドヴアイスというものはやはり含むと解釈していいものと思います。
  324. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 言葉そのものとして、適当なアドヴアイスというのは一体どういうことでしようか。
  325. 増原恵吉

    増原政府委員 いわゆる助言そのものでございます。
  326. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 軍事顧問団が日本にやつて参りまして観察をするということは、彼らが日本にくれた武器その他を観察をするということだけには解釈ができない。当然観察した結果をアメリカ本国に送り、その結果に従つてアメリカの今後の日本に対する態度がきまつて来る。さらに武器を供与してくれるとかあるいはくれないとかいうようなこともきまる。弾薬についてもきまる。こういう点から考えて来ますと、観察ということは単なる観察ではなくて、今後の日本防衛計画なり何なりに相当の影響を及ぼす、こういうふうに思えるのですがどうでしようか。
  327. 増原恵吉

    増原政府委員 もとよりアメリカとしても国民の主権に基いて兵器、弾薬等をこちらへ供与してくれるわけであります。そうしてそれは供与の目的に従つて使用することをわれわれも約束しているわけであります。顧問団はそれがいわゆる供与の目的に従つて使用されているかどうかを見、万一われわれが供与の目的に従つて使用しておらぬということになつて、その報告が行けば、事後の援助に影響があるということは当然想像されるものであると思います。われわれがまじめに供与の目的に従つて使つておれば、いささかも心配はないということになろうと思います。
  328. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それじや個別的に伺います。統合幕僚会議国防会議、こういうものに顧問団は出席できますか。
  329. 増原恵吉

    増原政府委員 国防会議などには全然予定もしておりませんが、統合幕僚会議にも顧問団が出席するなどということは考えておりません。
  330. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 私はオブザーヴアーという意味で申し上げたのですが、オブザーヴアーとしても出席できませんか。
  331. 増原恵吉

    増原政府委員 オブザーヴアーでもなんでも出席させないつもりでおります。
  332. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと統合幕僚会議国防会議会議の結果の報告を受ける権利がありますか。
  333. 増原恵吉

    増原政府委員 結果の報告を受ける権利などはございません。
  334. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 統合幕僚会議国防会議会議の結果のうちには、相当供与した武器の使用の方法その他顧問団の観察すべき任務に属するものが含まれていると思いますが、この問題についても報告を受ける権利はありませんか。
  335. 増原恵吉

    増原政府委員 統合幕僚会議は陸海空自衛隊を総合したいわゆる防衛計画なり、後方計画なり、その総合した教育、訓練の計画なりというふうなものを見るのでありまして、一々の装備品をどう使つているかなどということは統合幕僚会議の問題ではございません。従つてそういう問題について顧問団に報告をしなければならぬとかなんとかいうことは全然ございません。
  336. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それじや木村長官に伺いますが、自衛隊独立して日本の国土を守る能力がないということをさきにおつしやつたと思いますが、この点についてはどうでしよう。
  337. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまのところでは独力ではさような力はないと考えております。
  338. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、当然日本に駐留しております米軍、これとの総合的なもので日本を守つて行く、こういうお説のように思えて来ますが、これも間違いありませんか。
  339. 木村篤太郎

    木村国務大臣 日米安全保障条約によりまして、アメリカ駐留軍と日本の将来できる自衛隊と互いに協力して日本の国防をやつて行きます。
  340. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、日本防衛計画については、単に日本の兵力、これだけではなしにアメリカ軍も加えた具体的な防衛計画をお立てになつているのかどうか。
  341. 木村篤太郎

    木村国務大臣 もちろん日本が独力では立つて行けないのでありまするから、アメリカ駐留軍のどういう方面について力を尽すべきかということにわれわれは思いをいたして、そうして日本のとるべき計画を立てておるのであります。
  342. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、当然日本を守つて行く上について、あるいはその他の問題についてアメリカ軍と日本軍が合同演習をする作戦についてもお互いに打合せる、合同作戦計画を立てるということは当然出て来ると思うのですが、これらの問題についてどうでしようか。
  343. 木村篤太郎

    木村国務大臣 将来その必要があつたときにはやりたいと考えておりますが、ただいまのところは必要はありません。
  344. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もしアメリカ軍と共同の防衛計画を立て、また合同の演習をするというような事実が出て参りますと、日本アメリカ軍の一部になつてしまう可能性がある。アメリカ軍と現在の日本軍隊との力関係を見て行きますと、どうしてもアメリカの方が強いことはわかつております。こういう場合にイニシアチーヴを向うに持たれる、これは必然的な結果で、そうはさせないといつても、そうなつてしまう可能性がある。可能性というよりは、それはむしろ必然ではないか、こういうふうに思われるのでありますが、この点どうですか。
  345. 木村篤太郎

    木村国務大臣 あなたがどうお思いになろうとごかつてでありますが、日本自衛隊日本のものであります。これは日本が指揮をすべきが当然であろうと考えております。むろんアメリカと協力態勢を整える意味において協議する場合もあるでしよう。しかしアメリカにイニシアチーヴを全部とられるというようなことは、私は想像しておりません。
  346. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 時間もありませんので最後に……。自衛隊があなたのおつしやるような形で、今度のような形ででき上つて参りますと、それは世界のというよりもアジアにおける勢力のバランスにどういう変化をもたらすでしようか。
  347. 木村篤太郎

    木村国務大臣 もちろんこの自衛隊日本の国防のためにやつておるのでありまして、これは外国に対し、決して悪影響を及ぼすべきものじやないと考えております。バランス関係その他の点については私は今考えておりません。ただただ日本わが国の平和と独立を守つて、国の安全を期する上において必要欠くべからざるものとしてわれわれは考えておるのであります。バランス関係がどうなるかということについては別に私は考えるところはありません。
  348. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 日本自衛隊、これは日本の国土を守るとおつしやつておられますが、しかし現実には日本は平和条約、安全保障条約、行政協定等々によつて自由主義諸国家の安全を守ること、またMSAによつても自由主義諸国家の安全を守るために協力する軍事的義務を負うということは、明確になつたのでありまして、従つて自由主義諸国家群の軍隊が増強したと同様な結果を生ずる、こう言つても少しもさしつかえないと思います。そういうような場合に、アジアにおいて今まで二大対立というふうに言われておりましたが、そういう対立の勢力均衡が破れて来るのではないか、こういうことについては全然お考えになつておられませんでしようか、お考えになつておられておつしやらないのでしようか。
  349. 木村篤太郎

    木村国務大臣 アジアの二大勢力の均衡、そういうことはわれわれは考えておりません。ただ日本の国土防衛が即アジアの平和をもたらすゆえんであろうと、われわれはそこに重点を置いております。日本防衛が完全を期することができない、万一外部からの武力攻撃によつて日本侵略でもされるようになりますれば、それこそアジア自体の平和が乱れるのでありまして、日本防衛即アジアの平和、こういう思いでわれわれはやつておるのであります。
  350. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 同じことを繰返すようで恐縮ですが、私たちはむしろここで日本が強力な軍備を持つて行くということはバランスを失し、それが第三次世界大戦のきつかけになるおそれすらあるのではないか、こういうように考えておりますが、この点についてはあなたと全然考え方が違つて来るわけであります。従つてこれを一々あげつらつておりますと、時間がかかりますので、最後にこういうことをお伺いいたしたいと思います。と申しますのは、日本の中にアメリカ軍の軍事基地が非常にたくさんあります。今までは原爆基地にはなつていなかつた日本の軍事基地に、アメリカが原爆、水爆を持つて来ているとはまだ思えないのでありますが、しかし最近の情勢、アジアの情勢を見ておりますと、仏印を中心にして、アメリカは英、仏、タイその他の国を誘つて中共に対して共同申入れをしよう、共同宣言をしようという形になつて参りました。これはすなわち数日後に行われるジユネーヴ会議の難航を見越して、その前に中共に対して一本とつておこうということだと思います。この点については別にあなたと私との間に意見の違いはないと思います。そこでそういう共同宣言がどういう性格を持つているかと申しますと、これはアメリカのニユー・ルツク戦術の適用だということもほぼお互いに意見の違いはないと思います。もしニユー・ルツク戦術の適用だとするならば、それに対する準備をアメリカはやはりしなければならない。こういうことでその準備としてにアジアに原水爆を投ずる基地をつくつておかなければならない、足がかりをつくつておかなければならないということになつて来ると思います。そういう場合にどこにその基地を求られるかといえば、日本の軍事基地か一番適当であろう——私は軍事専門家ではありませんからわかりませんが、適当なものの一つだと思います。ここ数日間のアジアの諸情勢を見ておりますと、日本にある米軍の軍事基地にアメリカが原水爆を持つて来る可能性は非常にふえたと言わざるを得ないと思います。もし原水爆を持つて来るとすれば、これは中共、ソ連の側からしましても、この国自体の自衛権の発動というものもあり得ると思います。そうした場合に日本は原水爆をアメリカが持つて来たばかりに、かえつて逆に他国の原水爆の対象になる可能性が出て来る。これを一刻も早く除去しなければ、自衛隊をつくるかつくらぬかということよりも、日本の国土を守る上において一番重要なことではないか、これが今まずなすべきことではないかというふうに思うのであります。そこでお聞きしたいと思いますことは、日本の軍艦基地にアメリカ軍が原水爆を持つて来ることについて木村保安庁長官日本の国土を守るという立場から抗議をする意思があるかどうか、そうしてこれを阻止するために努力をせらるるかどうか、この点であります。
  351. 木村篤太郎

    木村国務大臣 アメリカも何も好んで水爆、原爆を用いるというような気持は毛頭ないと考えております。ただ世界の平和を維持するためにどういう方法をとればいいかということを考えていることと私は考えております。ビキニの水爆実験も予想外の成功とわれわれは考えております。これによつてむしろ私は世界の平和を求められる一つの手段になつたのではなかろうかと考えております。原水爆を用いるような事態が発生することを、むしろ阻止すべき一つのきつかけになるのではないかとすら私は思つておるのであります。どの国も好んでかようなものを使おうというような気持は毛頭もないのであります。今お話の、アメリカ日本に原水爆の基地を求めるんじやないかどうか、私はさようなことはないと考えております。さようなことは考えたくもありません。おそらくアメリカ日本にさようなものを持つて来て日本の基地を利用するなんということは考えていない、こう考えております。
  352. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それはあなたの主観であつて、ないと思うということでなしに、もし持つて来ようとすれば、これを阻止するかどうか、阻止するためにあなたは努力をするかどうか、こういうことを伺つておるのであります。原爆をアメリカ日本に持つて来る、こういうことの意図を私は聞いているのじやありません。
  353. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はアメリカが持つて来ないものと深く深く信じおりますから、それ以上のことは考えておりません。
  354. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 繰返すようですが、もしそう信じておられても、あなたの御信念に反して持つて来る、こういう事態が出て来ましたらどうでしよう。
  355. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はさようにかたく信じておるのでありますから、仮定をして、もしもなんということは考えておりません。
  356. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 けつこうです。まだほかにたくさんありますが、次の機会に譲らせていただきます。
  357. 稻村順三

    稻村委員長 本日はこの程度にとどめ、明十三日午前十時より公聴会を開き、野村吉三郎君、田畑忍君、佐瀬市太郎君より意見を聴取いたします。  これにて散会いたします。     午後五時四十二分散会