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1954-04-05 第19回国会 衆議院 内閣委員会 第19号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月五日(月曜日)     午後一時五十二分開議  出席委員    委員長 稻村 順三君    理事 平井 義一君 理事 山本 正一君    理事 下川儀太郎君       江藤 夏雄君    大久保武雄君       永田 良吉君    長野 長廣君       船田  中君    山崎  巖君       粟山  博君    飛鳥田一雄君       中村 高一君    辻  政信君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         保安政務次官  前田 正男君         保安庁次長   増原 恵吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁局長         (人事局長)  加藤 陽三君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         海上保安庁長官 山口  伝君  委員外出席者         専  門  員 亀卦川 浩君         専  門  員 小関 紹夫君     ――――――――――――― 四月三日  人権委員会設置法案亀田得治君外九名提出、  参法第八号)(予) 同日  恩給法の一部改正に関する請願千葉三郎君紹  介)(第四一五七号)  同(吉田安紹介)(第四一五八号)  同(藤田義光紹介)(第四二六一号)  旧軍人下級者公務扶助料引上げに関する請願  (吉田安紹介)(第四一五九号)  同(藤田義光紹介)(第四二六二号)  戦犯者恩給支給に関する請願吉田安君紹  介)(第四一六〇号)  同(藤田義光紹介)(第四二六三号)  軍人恩給支給額引上げに関する請願吉田安君  紹介)(第四一六一号)  同(藤田義光紹介)(第四二六〇号)  農林省統計調査機構拡充強化に関する請願(  正木清紹介)(第四二〇三号)  同(佐々木盛雄紹介)(第四二〇四号)  同(安藤覺紹介)(第四二三〇号)  同(吉川兼光紹介)(第四二三一号)  恩給比例増額に関する請願外一件(久野忠治  君紹介)(第四二三二号) の審査を本委員会に付託された。 同月一日  戦争受刑者恩給法上の処遇是正に関する陳情  書  (第二六一八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  防衛庁設置法案内閣提出第九四号)  自衛隊法案内閣提出第九五号)     ―――――――――――――
  2. 稻村委員長(稻村順三)

    ○稻村委員長 これより開会いたします。  本日は防衛庁設置法案及び自衛隊法案一括議題となし、質疑を続行いたします。大久保武雄君。
  3. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 私は防衛庁法案並びに自衛隊法案について御質問申し上げますが、まず最初自衛隊法案にあります直接侵略並びに間接侵略に関連いたしまして、日本戦時における地位の問題であります。世間におきましては、日本中立は可能である、いかなる場合においても日本中立保持は可能であるし、むしろ中立を行わなければならない、こういう意見がございます。私がここに外務大臣並びに保安庁長官にお尋ねしたいと考えますことは、一体日本戦時中立を保持することができるのか。日本の置かれておる戦略的な地勢的な地位、あるいは日本の持つておる工業力、あるいは日本の有しておる人的動員力、こういうものから判断いたしますと、これは現在の一つの世界的な情勢であります米ソ間に処して、中立維持ということはきわめて困難である、しかも中立維持しますためには相当な防衛力を持ち、一つの力を持たなければ中立維持は不可能であろうと私は考えるのであります。ことに潜水艦戦におけるロンドン議定書はほとんど蹂躪されておりまして、海上においては潜水艦の無差別撃沈ということが現在はほとんど常套的手段として行われる。こういう際において、日本四面海をめぐらしておるから中立は容易である、こういう考え方に対しましては、私はきわめて納得できないのであります。周囲に海があるということは、もつと容易に日本、の重大なる民生産業に対する脅威がただちに起つて来る。しかもロンドン議定書潜水艦法規は守られていない。こういうことからいたしますならば、中立は困難ではなかろうかということも考えられる。この点に関しまして、中立問題に対する外務大臣木村保安庁長官の御意見最初に承りたいと思います。
  4. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 中立議論につきましては、二つの問題を始終混同されて議論されておるようであります。というのは、平時においてどこの国とも平等に関係を結んで、どこの国をひいきするでもなく、どこの国と敵対するでもなく、貿易等を行つて行こうという考え方と、それから戦時において戦争に巻き込まれないで、局外中立的な立場をとろうということと、二つを混同してよく議論されておるようであります。そこで平時において中立的な政策で、経済その他の問題を処理して行こうということは、それが国の利益になるかならないかは、その国自体の特殊の事情によつて考えなければなりませんけれども、これは考慮に値する考え方であつて十分研究の値打ちはあると思います。ところがそれと全然性質を異にする戦時におけるいわゆる局外中立ということは、航空とか火力とかいうものの進歩していなかつた十九世紀ないし二十世紀初頭においては行われ得ることであつたでありましようけれども、だんだん総力戦の様相が切実となり、今度は全世界をあげて敵か味方かになるという傾向のある現在において、そしておつしやるように日本としては海外に食糧を求めなければならない。その食糧輸出国中立的な国であればよろしゆうございますが、これがどちらかの国に味方しておるというような場合には、日本中立的な立場でその国と引続き貿易ができるか、また日本の船が潜水艦等脅威にさらされないか、また日本戦略的地位、いずれの点を考えましても、現状におきましては、おつしやるように戦争中の中立維持ということは困難でありますが、これもおつしやる通り、ただ二つ可能であるかもしれないという理論的の方法は、武力を非常に強化して、そして武装中立を守るということであります。できるできないは別として、理論的にこれならば可能の場合があり得ると思いますが、それ以外には全然見込みのない話であると私は考えております。
  5. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 ただいまの御質問要旨は、結局戦時において日本中立を守り得るやいなやという御議論に尽きると考えます。そこでいかなる国と国との間に戦争が起るか。これはわれわれは予測することはできないのでありまするが、御質問要旨は、結局共産軍陣営自由国家陣営との間に戦争が起る場合を予想なすつての御議論かと私は推測いたしますが、その場合に日本がいかなる立場をとるか、また中立をはたして守り得るやいなやということになつて来ますると、今岡崎外務大臣から答弁のありましたように、日本といたしましては、はたしてこの間に中立を守り得るやいなやということは問題でありまするが、中立を守るにいたしましても、強力なる日本国防体制を立てて行かなければ、十分なる中立は推持できぬ、こう考えております。従いましてわれわれといたしましては、独立国家たる以上、いずれの場合にありましても、中立を守り得るだけの防衛力は持たざるを得ない、こう考える次第であります。
  6. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 ただいま両大臣の御答弁によりまして、戦時中立維持は非常に困難である、また中立維持するにしましても、防衛力を必要としよう、かような御答弁でありましたが、そこで私は侵略の問題についてお尋ねをいたします。自衛隊法案第三条にある「直接侵略及び間接侵略」とは、政府はいかなる事態を予想しておられるか。まず国際法上における侵略の概念について明らかにしなければなりませんが、侵略定義について典型的なのは、一九三三年七月三日、ソ連の提唱により、ソ連圏の数箇国間にロンドンで署名された条約であります。すなわちこれによりますれば、かなり範囲が広く、「一、開戦宣言、二、開戦宣言はなくとも、兵力による他国領土への侵入、三、兵力による他国の領域、船舶又は航空機攻撃、四、他国沿岸又は港に対する海上封鎖」これを侵略と規定いたしております。もつとも以上述べましたことは、侵略であるためには正当なる事由、たとえば自衛でありますとか、制裁でありますとか、そういうものによらずして、正当なる事由なく攻撃することを言うものと考えます。この点につきまして、先般私は外務内閣合同委員会におきまして外務大臣に御質問をいたしまして、外務大臣はこれをお認めなつたように記憶いたしております。木村長官もこれをお認めになるやいなや。以上申し上げました諸点を侵略、かように御判断になりますかいなか。あるいはこのうちいかなる行為を予想されますか、この点につきまして木村長官に御答弁をお願いいたします。
  7. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 お答えいたします。侵略についての定義は第二条によつて明白になつておるのであります。条約に明白になつておることをもつて、ただちに自衛隊法における外部からの直接侵略ということに該当するかいなや、これは相当問題であろうと考えております。この自衛隊法の七十六条に用いております外部からの直接侵略、これをいかように解釈するかということが主たる問題でありまするが、要は日本国家独立国家としてわれわれ国民の自由と生命と財産を維持する、それを侵されるような直接に外部からの圧力を加えてやつて来るということをわれわれは意味しておるものと考えておるのであります。そこで具体的にどういうことが行われるかということになりますると、そのときの情勢判断によつて、われわれはこれを外部からの武力侵略と見るかどうかということを考えて行きたい、こう考えております。
  8. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 なおこの点はあとでさらに御質問いたしますが、次に間接侵略であります。間接侵略につきましては、一九三三年の同じ条約の第五に、「自国国内で編成され、他国侵入した武装部隊に対し援助すること」次には「自国で出来る一切の手段をつくしてそういふ武装部隊に対する援助や保護を奪うやうにと侵入された国が要求するに不拘之を拒絶すること。」こういうふうに規定いたしまして、その附属書に、「一国内に罷業、革命、反革命または内乱などの騒乱があるといふことは、そういふ行動を正当化する理由とはならない。」こういうふうに規定してもるようであります。これな間接侵略定義であると考えますが、外務大臣はいかがお考えでありますか。
  9. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 間接侵略定義としましては、確定したものがただいまああとは考えておりません。お話のようなものも当然その対象になるわけだと思いますが、ある定義のようなものをつくりますると、それをくぐり抜けるような方法を案出されることがしばしばでありまして、たとえば一国に対する侵略行為が行われた場合に、第三国がこれを援助する。それも国として援助しないで、たとえば義勇兵が出て行つたというようなかつこうにして、実際上はほとんど組織した、そうして責任ある司令官のもとにおける部隊が出て行きましても、これを義勇軍と称しておる。つまり国民のかつてな意思であるというようなことにしていろいろまぬがれる方法を講じますので、ときとともに侵略、あるいは間接侵略についても定義内容がかわつて来なきやならぬと思います。ただいまのところは、それよりもむしろまだ広汎なものを考えなきやならぬと思いまするが、しかしこの法案等にありまする意味は、必ずしも国際法とぴたつと合わなくてもいいのであつて日本自体間接侵略認めるものに対しては、これは適当な措置国内でとることは当然だろうと考えております。
  10. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 一九二五年、日本ソ連と結びました条約に、「(イ)それぞれ相手国の秩序や安寧を危くするやうなことをしたり(ロ)自国管轄地域内で相手国政府だと称する団体や集団の存在も活動も許してはならぬ」こういう規定がありまして、これはもちろん終戦後消滅はいたしておりますけれども、国際法の原則、この精神はかわりがないものと考えております。日本国内におきましても共産主義団体がございますが、共産主義は、性格から申しましても、また国際主義でありまするし、行動からいつて国際主義の場合が多いのであります。そこで国内共産主義は多かれ少かれ直接的にか間接的にか国際共産主義影響下にあるものである、かように判断せざるを得ないのであります。日本国内におきましても、ソ連労働者の祖国とする、こういつたような主義運動が行われる、こういう一つ運動に対して武器あるいは資金、こういうものが提供されました場合に、外務大臣は、これをいかにお考えになりますかお考えを承りたいと思います。
  11. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 共産党は申すまでもなくただいまのところ合法的に認められた国内の政党であります。これに対しまして、国内といわず、外国からでもその資金等が送られることについては、これは自由でありまして、その点に干渉することは適当でないと思います。ただ武器が送られるようなことになりますると、これはおのずから取締りの方法もありまするし、またその資金が合法的な目的でなく、非合法的な目的に使われるということになれば、これも問題に当然なるわけでありますが、ただ資金が送られたということだけでは、合法的な共産党に対する特殊の問題とはならない、こう考えます。
  12. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 私はたとい資金が送られましても、これは重要な問題だと考えますが、一応外務大臣資金が送られることは正当であるということでございますから、それで論を進めて参りますが、先ほど岡崎外務大臣は、義勇兵が送られた場合に、それは間接侵略の一形態である、かような御答弁でありましたが、私は義勇隊相手国内において組織されて日本に派遣されました場合におきましては、これは日本人であろうと外国人であろうと直接侵略ではないか、かように考えますが、この点に関する外務大臣の御見解をもう一度承りたい。
  13. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 これも実際上はその事実に当面してみないとはつきりしたことは申し上げられませんけれども、直接侵略と申しますものは国を対象として考えております。つまり外国日本に対して侵略を企てたということが主として対象になります。そこで国籍のない、といつてはおかしいのですが、国籍はありましようけれども、ある国がやつたんじやない、そこの国民義勇兵となつて来ておつて、その国民一つの国の国民でなくて、三つも四つもの国民が入り込んで来たという場合、たとえば今現実に認められておりますように、朝鮮の問題のときに中共の義勇軍がやつて来た。これは間接侵略でなくて直接侵略と一般に考えられております。こういう場合ももちろんありますが、それ以外にやはり間接侵略形態をとるものもあり得ると私は考えております。
  14. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 自分の国で一つ義勇隊というようなものを編成して、相手国にそれを送り込んで、あるいは相手国の中に一つ自国義勇隊的なものを組織して、そうして一つ暴力革命を起す。これは今回の戦争後におきましても、共産圏国のやる常套的戦略である。これは歴史があらゆる事実をもつて証明しておる。そういう公算はきわめて大きいと私は思うのでありますが、これに対して木村長官は、自衛隊法第七十六条を御適用になるつもりか、あるいは自衛隊法第七十八条を御適用になるつもりか、これを明確にしていただきたい。
  15. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 第七十六条の場合は、要するに外部からの直接武力攻撃をさして、その場合にいわゆる防衛出動するということになるのであります。そこで今御議論になつております間接侵略か直接侵略かという点になりますと、むろん外部からの直接の武力攻撃は、これは直接侵略であることは疑いを入れる余地はないのであります。そこで間接侵略とは何ぞやという意義いかんによるのであります。われわれの考えておる間接略侵と申しますのは、御承知通り日米安保条約の第一条に掲げております、一または二以上の国の外部からの教唆または干渉によつて国内において起さしめる大擾乱、大反乱、こういうものをさしておるのであります。そこで今お話外国から義勇兵を送つて、そうして内地において大反乱、大擾乱を起させるという場合はいかんということになりますが、その場合には、外国からはもうすでに干渉あるいは教唆あるものと認めて、これは間接侵略取扱つてよかろうと考えております。事は内部において起つた問題であります。これをいわゆる七十六条の直接侵略、すなわち外部からの武力攻撃と解すべきやいなやということになりますと、そこはよほど慎重に取扱う必要があろうと私は考えております。しかし具体的の場合をどう取扱うかということになりますと、そのときの情勢判断いかんによる、こう考えるのでありますが、ただいま率直に申しますと、義勇軍を送つて、それを中心にして日本で大反乱を起させるような場合は、もうすでに外部からそういうものを入り込ませておるのでありますから、これは場合によつては直接侵略と解して、七十六条を発動してよいかと思うのでありますが、その内容、規模のいかんによるということであります。わずかの義勇兵を送つたから、それをもつてただちに外国からの直接侵略取扱つていいかどうか、私はむしろそういう場合は間接侵略として取扱う方が適当じやないか、こう考えております。
  16. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 両大臣の御答弁が、非常にこの点については不明確であります。私は少くとも義勇兵相手国で組織して日本に送り込みました場合においては、これは明確に直接侵略になる、そういう考え方で対処すべきであると思う。それを兵数が多いか少いかによつて、それから考えるというようなことでは、私はとうてい国の防衛の責任は果されない、かように考えるわけでありますが、この点につきましてはひとつ明確にしておかれることを希望しますとともに、私は侵略の構想、すなわちMSA及び自衛隊法案間接侵略というのは、共産革命に対する一つ手段である、そういうふうに割切つていいのじやないかと考えますが、この点木村長官はいかがでありますか。
  17. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 かりに今お話の、共産国家から義勇兵を送つて、大反乱を起さしめるような場合、私がただいまお答え申し上げたように、要するにその義勇兵内容いかんという問題に帰着するのじやなかろうかと思います。わずかな義勇兵を送つて内地反乱軍と一緒に暴動を起さしめたような場合を、これをもつてただちに七十六条の外部からの直接侵略ということに該当するものなりという結論は、私は早計じやなかろうかと考えております。要はその義勇軍内容、装備その他万般の事情から判断すべきものであろう、こう考えている次第であります。もちろん義勇兵が相当多数に上りまして、日本に来てどんどん上陸でもするような場合は、もちろん七十六条の外部からの武力攻撃と解して防衛出動を発動してよろしいかと、こう考えております。
  18. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 木村長官は、兵器の内容を調べてからきめる、こういうお話でありますけれども、そういうまだるつこいことはできた話じやない。いやしくも義勇兵侵入して来ます場合においては、電光石火の防衛が、こちらも必要とすることは当然であります。相手の国が何を持つているから直接侵略である、何を持つていないから間接侵略である、あるいはそれによつてただちに警察力を持つて行くか、あるいは防衛隊を持つて行くか、こういう日本国内措置も起つて来るわけでありますが、私は、相手国義勇兵を組織して、そうして相手国に送り込んだならば、これは明確な直接侵略でなくて何であろう。また相手国義勇兵を送り込むときには、その国に呼応する何ものかをつくつております。これはドイツのベルギー、オランダ侵入のときもそうであります。私はこういう事態に対する、木村長官と認識を異にすることを遺憾と思いますけれども、この点を明確にして御善処願わないと、私は部下の統率はできない、かように考えます。  次に私がお尋ねしたいのは、先ほど申しました直接侵略方式の問題であります。先ほどあげました直接侵略の幾つかの方式のうち、あるいは艦船を攻撃するとか、あるいは航空機攻撃するとか、あるいは領土侵入するとか、あるいは沿岸封鎖をするとか、空艇部隊が来るとか、そういつたような直接侵略の中で、どの侵略がどの方面から起ることを想定されておりますか、この点を少し具体的に承りたいと思います。
  19. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 一体どこから外部からの武力攻撃があることを予想して、いるかという御議論でありますが、これは私はただいま具体的にお答えいたしかねるのであります。われわれは終始いろいろの情報集めまして、情勢判断をして、これに対処することを心がけなければならぬのでありますが、ただいまのところどの方面から外部侵略される危険があるという、具体的のことを言えというお話でありますが、それは私はただいま率直に、具体的にどつから一体空艇部隊が来、どつから船を繰出して来るか、どつから上陸の危険があるかというようなことは、申し上げる段階には至つておりません。しかしここで申し上げたいのは、われわれは各方面からの情報を収集いたしまして、いずれの方面から外部からの武力攻撃がある場合においても、日本防衛するだけの準備は、常に心がくべきものとして研究いたしているわけであります。
  20. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 それでは私の方から御質問いたしたいと思つております。私が考えますには、日本に起りやすい直接侵略方式二つあるのじやないか。一つ空艇部隊による侵入である、もう一つ海上封鎖である、私はこう考えます。そこで空艇部隊による領土への侵入は、先ほど私が間接侵略と関連いたしまして御質問いたしました義勇兵の問題と関連いたして来るのであります。そこでドイツ軍が蘭・白に侵入いたしまして電光石火的な大戦果をあげましたのは、あれは御承知のようにアントン・ムツセルト等を首領とする国家社会党の周到なる準備とその内応によつておることは歴史に明らかなところであります。空艇部隊日本上陸しました場合におきましては、必ずこれに相呼応する国内の動乱の要因がひそんでおるのであります。この点に空艇部隊一つ前提条件があると同時に、空艇部隊日本にその戦力を維持するためには必ず制空権と制海権の維持なくして空艇部隊日本上陸することはできない、必ず制空権をとるか、この空艇部隊戦果を拡大するところの海上補給路を確保しなければならぬ。そこで私が御質問したいのはこの点であります。すなわち日本日本の置かれておる地勢的な環境からして、日本の最も重大な問題は敵に対して補給路を与えるか、みずからの補給路維持し得るか、この点であろうと私は考えるのであります。すなわち日本自衛のために少くとも外国に対して脅威を与えず、みずからを守るために最も本質的なものは何であろうかと申しますと、日本海上の安全を守り抜くことである、海上自衛力をはつきり確立することである、かように私は割切つておるのであります。  そこで私が御質問いたしたいのは、この海上封鎖についてでございます。日本は地形的に申しまして、大兵力日本において駆使する自由を相手国は持つておらぬと考えるのであります。日本大陸を持ち、あるいは南洋群島を持つてつて大陸及び南洋において非常に部の厚い日本戦略態勢を持つてつたときは別でありますが、現在における日本列島地位は、西太平洋に浮んだ孤船にしかすぎない、十分間飛べば日本海から太平洋に突き抜ける、こういつた国柄である。周囲を海に取巻かれて戦略的に非常に弱い地勢を日本は持つておる。しかも先ほど外務大臣が言われましたように食糧問題であります。これは私も先般の外務委員会でも御質問いたしましたが、戦時平時を通じて一番大切なことは、日本民生をどうして維持するか。民生維持するためには食糧の供給をしなければならない。これは海上補給路を絶たれたならば絶対に日本に対する食糧は入つて来ない。われわれの三度の飯も食えない。これは大東亜戦争の最後の終末が雄弁に物語つておる。そこで日本食糧を絶対条件とする民生の上におきましても、海上を封鎖されましたならばひとたまりもなく参つてしまう。また日本の戦力を維持するアルミニウムにいたしましても、普通鋼鋼材にいたしましても、鋼鉄にいたしましても、あるいはガソリンにしましても、重油にしましても、これはすべて船舶によつて日本に補給されて初めて産業が維持される。この海上封鎖日本に加えられましたならば、日本にとつてはきわめて重大な侵害になつて来る。しかも日本は立ちどころに民生並びに産業及び戦力が壊滅する。私はこの点がソ連がとると考えられる一番安易な手段ではないか。原子爆弾を日本に持つて来て、人道上非常に恐るべき、にくまるべき戦略を使い、日本人から多年のうらみを買う。こういう戦略をとるよりも、最も早く日本を参らせるのには、自分たちが一兵も血ぬらずして、日本を参らせるのは、実にこの海上封鎖ではないか。これを大臣はいかにお考えになりますか。これが日本に対する侵略の一番大きな眼目であるとお考えになるかどうか、この点をはつきりお尋ねいたしたいと考えるのであります。
  21. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 ただいま御質問要旨は、海上封鎖がいわゆる七十六条の外部からの武力攻撃に該当するかどうか、端的に言えば、そういう御質問であろうと考えております。そこで今お話のごとく、この周囲海に包まれておる日本武力をもつて海上封鎖をし、日本国民の糧道を断ち、あるいは生産物資を断つ、そうして日本を危殆に陥らしめるというような手段を講ずるならば、それはまさに外部からの武力攻撃に該当するものと私は考えております。と申すのは、一国が独立国家として、国民の生命財産を保護して行かなければならないことは当然であります。その生命線を奪うような封鎖をする。これは申すまでもなく、直接武器を持つて日本侵入して来たと同様な効果を現わすのであります。もちろんかような場合には七十六条の外部からの武力行為に該当するものと私は考えております。
  22. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 私はそういう危険性が一番あるかどうか、こういうことをお尋ねしたのであります。いろいろな侵略形態がありましようけれども、日本民生、産業あるいは戦略的地位からしまして、海上封鎖が最も起り得る侵略であるかどうか、こういう点をお尋ねしたのであります。この点をひとつもう一度明確にお答えをいただきたいと思います。
  23. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 お答えいたします。海上封鎖によつて日本を危殆に陥れる。これは最もとりやすい作戦であろうと考えております。しかも某国は日本の周辺に相当数の潜水艦を持つておるということは明らかな事実であります。さような潜水艦をもつて日本のいわゆる海上封鎖をするというようなことは、あらかじめわれわれは考慮に入れる余地が十分あろうと考えておる次第であります。
  24. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 海上封鎖に関連してお尋ねいたしたいと考えますことは、機雷の問題であります。大東亜戦争におきましても、日本の周辺には、相当の機雷が敷設されました。また終戦後におきましても、日本海におきましては、しばしば浮遊機雷が流れて参りまして、日本の船舶の航行の安全を阻害いたしております。この浮遊機雷の中には、当然繋留索を離れましたならば、安全装置が働いて無害にならなくてはならない。その安全装置がされないままに、危険なままに浮遊しておる機雷が発見された。また戦争が終結しましたならば、武器の危険性はなくなる、こういうことが戦時国際法の原則であると考える。ところがロシヤ並びにアメリカにおいて発明されました感応機雷は、あるいは音響によりあるいは自力によりあるいは水圧によりこれらの危険性は終戦後においても相当な持続をする。十年もその爆発の持続力がある。しかもそれに対しましては、掃海の方法は非常に困難である。一体こういう武器を使うことは戦時国際法違反であると考えるのでありますが、岡崎外務大臣はいかがお考えになつておりますか、お伺いしたいと思います。
  25. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 だんだん武器が進歩するといいますか、新しい武器考えられて来ますと、戦時国際法というものもだんだんかわつて来べきものだと思います。たとえば爆撃機による焼夷弾の投下によつて非戦闘員まで非常に損害をこうむるということは、現に先般は行われておつたのでありまして、こういうものについても、今おつしやつたような、機雷等につきましても新しい考慮がなされなければならぬと思つておるのであります。現にこういう点について研究が進められておるようでありますが、ただいまのところでは少くとも機雷等に関しましては、そういう非常にむずかしい、長くかからなければ無害にならないようなものを含めまして、一般に機雷として取扱われておりますけれども、現在の国際法の表面の議論からいえば、必ずしも一般とならないのではないかと考えます。こういうものは十分研究して、新しい例をつくらなければならぬだろうと考えております。
  26. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 ただいまの外務大臣の御答弁のように、潜水艦に関するロンドン議定書もほとんど蹂躙されまして、無差別撃沈が横行しておる。最近のシユノーケルにいたしましても、ほこんど外部に砲を持つておらない。自分が浮き上つたならば、船舶の小さな砲弾でもやられる、あるいは衝突しても自分から先にやられるというような潜水艦の特異性からして、当然無差別撃沈にならざるを得ないような勢いでもございますが、これはきわめて重大なる損害を起す問題となつて参ります。今後における戦争法規は、相当根本的に反省しなければならぬ問題がたくさん起つております。原子爆弾にいんしましてもそうでありましよう。こういう将来の戦争法規に関して、私は適当な外交的な機会において一つの秩序をつくられることは、きわめて重要なことではないかと思いますが、ただいまの外務大臣のさようなことも考えておるという御答弁を了承いたすわけであります。  次に木村長官にお尋ねしますことは、あるいは外務大臣にも御答弁を願いたいと考えますことは、先ほど申しました海上封鎖が行われる——これは日本に対する最も起りやすい攻撃方法であり、しかも日本に対しては一番手痛い方法である、日本中立を守ろうとする場合におきましても、自分の方につけという場合に、脅迫としてこれをやるかもしれない、こういうような海上封鎖が行われる場合に、どうしても相手の基地に対して、こちらが適当なる制圧の方法をとらなければならない事態が出て来ると思う。こういう場合においては、海上自衛隊あるいはその他の自衛隊は、いかなる対策をおとりになるか。その点をお尋ねいたしたいと思います。
  27. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 お答えいたします、海上封鎖にもいろいろ種類があろうと考えております。先ほど私が申しましたのは、要するに外国日本海上を全部封鎖して、日本の生命線を脅かす、これがために、日本国民が生命の危機に陥つたというような場合においては、むろんこの七十六条の外部からの武力攻撃に該当すると私は信じて疑いません。しかしそういう全般的の問題でなしに、ある一部の日本の港湾を封鎖する場合をもつて、ただちに武力攻撃と解すべきかどうか。これは相当疑いの点があるのであります。しかし今お話海上封鎖は、おそらく私が前に申しましたように、日本国民の生命を脅かすような、大規模の武力をもつてする海上封鎖をされるものと考えます。その場合に、敵の基地を日本から逆に襲撃するかどうかという御質問であります。さしあたつては、われわれはまず海上封鎖をぶち破るだけの力を養わなければならぬと考えます。その情勢いかんによりましては、われわれは日本国民の生命を守るために、今申し上げましたように、どういう基地かわかりませんが、最も根本的でありますさようなある一種の基地と申ましようか、そういう点まで進んでやるような必要もあるようにわれわれは考えるのであります。しかしその当時の情勢判断いかんによつて、ただちにそれをもつて攻撃を加えるか、さし去たり海上封鎖の一部を突破して日本の生命線を守るかということは、今申しますように、その当時の具体的の情勢判断いかんによろうかと考えております。
  28. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 次に三軍均衡方式についてお尋ねしたいと思います。三軍均衡方式というのは、少し抽象的で私はよくわからないのでありますか、これはいかなることを言われるのでありますか。
  29. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 三軍均衡方式、これはだれが用いました言葉か私は存じさせんが、要はつり合いのとれたものをいうのであろうと思います。われわれの考えておるところのいわゆる三軍方式というのは、結局日本の財政力から勘案いたしまして、どの点に重きを置くかをまず考えて行かなければならぬ。同じ金の分配をして、同じような率でもつてやらせるというような方式じやないと思うのであります。日本防衛態勢上どこに重力を置いて、そうしてつり合いをとらして行くか、このことを考えるのであります。そこでさしあたり日本といたしましては、陸海空、この三つの方式を、どうバランスをとつて行かれるか、これについてわれわれは十分慎重に考慮して行かなければならぬ、こう考えております。陸の方が十一万だから海の方も五万にしろとか、空の方も三万にしろとか、そのつり合いを数でとらせるようなことは考えておりません。要はあらゆる場合を勘案いたしまして、最も能率的に、最も経済的に三軍を組織して行きたい、こう考えております。
  30. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 ただいま三軍均衡方式とは陸海空軍に適当なバランス上の重点を置いて行く、こういうお考えでありましたから、私も一つ方式としては異存はございません。そこでしからばいかなるバランスをとるか、この点が重大であろうと考えます。私は先ほど申しましたように、日本に想定される最も大きな脅威海上封鎖である、かように考えておりまするがゆえに、陸上部隊というものは、日本一つの内乱に対応する問題である。日本国内戦略は、相当な分は思想戦によつてあるいは日本の経済、民生の安定によつてこれを行うことができる。そこで三軍均衡方式の重点は、おのずから日本海上封鎖を破る力、すなわち日本の海、空の充実ということにバランスの重点が持つて行かれなければならぬのじやないか。三軍均衡方式で、いずれの部隊においても同じ力を注ぐことは、相当な防衛力を持つておるアメリカのごときはこれはできましよう。またアメリカは地勢的にいつて大陸国であると同時に、海洋国家であります。すなわち私はアメリカが陸海空の三部隊をそれぞれ同じバランスにおいて均衡して持つておることはよくわかるのであります。イギリスはこれに比較して海、空軍をもつて重点としておる。ロシヤは陸、空軍をもつて重点としておる。いずれの国といえども三軍どれも同じようにやつて行くという国はありません。自分の国の財政力、自分の国の、戦略的地位からして、いずれに重点を置くかということがきまつて来なければならぬわけである。私は日本自衛力は海、空にその重点が置かれなければならぬ運命的な地勢を持つておると思いますけれども、この点に関して木村長官はいかにお考えになりますか。
  31. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 お答えいたします。日本の置かれた環境、すなわち四面海に包まれておる日本といたしましては、もちろん今お話のように、海と空の守りをかたくしなければならぬと考えております。しかしながらそれとても私はいわゆる陸上部隊も相当強化して行かなくちやならぬかと考えておるのでありますが、そこにいわゆる三軍均衡方式と申しましようか、バランスのとれた編成をしなければならぬ、こう考えておるわけであります。しかし今お話のように、日本といたしましては、将来海、空について相当重点を注いでこれを強化する必要があろうと考えております。ことに御承知通り日本におきましては終戦後軍艦もなくなつております。飛行機もほとんどないという状態であります。今後この方面について相当力を注がなければならぬ必要があるということは当然であろうと考えております。
  32. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 先般の外務委員会におきまして外務大臣は、私の海上封鎖に対する質問に対し、自衛力で足りない場合は日米安全保障条約によることを考慮したい、こういう御答弁がございました。そこで海上封鎖が行われた場合、一体日本海上自衛力はどの程度の能力を持つておるか、また日本民生、産業を保持するのにどういうようなお考えであるか、この点の木村長官の御答弁を承りたいと思います。
  33. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 日本海上自衛力の現状といたしましてはきわめて微々たるものであります。私から言わせればまことに情ないような状態であります。これからこの方面に相当力を注がなければ、今大久保委員の申されたように、万一不幸にして外部からの封鎖なんかあつた場合においては、とうてい対処することはできません。従いまして、われわれといたしましては日本の財政力と勘案いたしまして漸増的にこれをふやして行こう、一面においてアメリカから相当数の船をもらい受けたい、こう考えて今努力中であります。
  34. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 日本海上自衛隊は、対潜水艦並びに対機雷船を第一目標として充実すべきものである、私は長官と私との今までの討論から申しましても、さように判断いたすのでありますが、海上自衛隊強化のためにこれは十分でない、また海上封鎖を破るための力はない、こういうことでありますならば、ただいまも御答弁がありましたように、MSAによつてある程度の船を借りて来るということがおのずから起つて来るわけであります。最近の潜水艦は相当に大型になつてつております。またその航続距離もきわめて長行程であります。私はMSAは千五百トン以内の艦種に限るということを承知しておりますけれども、この点はさようでありますか、岡崎外務大臣からでも木村長官でもよろしゆうございますが、お尋ねいたしたいと思います。
  35. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 MSAに関しましてはそういうことであります。
  36. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 私は今後における防衛艦は千五百トンの限度では不足である、かように考えるのでありますが、千五百トン以上の船はお考えになつておりませんか。また千五百トン以上の船をお考えになります場合は、いかなる方式によつてこれをアメリカとの間に交渉されますか、この点を承つておきたいと思います。
  37. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 MSA援助によります艦艇は千五百トン以上のものはないのであります。しかしアメリカとの間に、MSA援助協定以外において千五百トン以上の船を貸借できますようにただいま交渉中であります。そういたしますと、千五百トン以上の船は、借り受けることができると考えております。しかしこれとても数に限りがあるわけでありますから、将来は日本でみずからこれを建造して行かなければならぬと考えております。われわれといたしましては、二十八年度予算において多少でありますがこれをやりたい、こう考えておつたのでありますが、これも思うように参りません。将来日本の財政力の許す範囲内において、何とか千五百トン以上の優秀船をつくりたい、こう考えております。
  38. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 ただいまMSA以外において、別の協定で貸借をしたい、こういう御答弁でありましたが、その協定はフリゲート艦の貸借協定の、ごとく、国会に御提出になる形式の協定に相なりますか、いかがか、この点を確かめておきたいと思います。
  39. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 この前のフリゲートの貸借協定と同じような方式でやろうと考えております。従いましてこの協定については国会の承認を得たい、こう考えております。
  40. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 次に私がお尋ねしたいのは、航空自衛隊の問題であります。私は先ほど申しましたように、日本の航空自衛の領域は海洋防衛の場合が非常に多かろうと考えるのであります。そこで本来から申しますならば、私はあるいは海空一体の方がよくはなかつたか、かようなことも考えるのでありますが、航空自衛隊をおつくりになつた場合に、一体海上自衛隊は航空機をお持たせになりますかお持たせになりませんか。また航空自衛隊は相当な海洋訓練が必要であろうかと考えております。こういう点に関して航空自衛隊は相当な海洋訓練をされるかどうか。とかく海洋における訓練はだれしもいやなものであります。下に落ちれば海でありまして、これは沈むよりほかに方法がないのであります。ほつておけば海洋訓練はいやがる。従来から申しましても、ことに日本の守りがまず海であるといつた場合において、やはりこの海洋に相当な訓練を持つておる航空部隊でなければ、戦果はあげられない。そこでこの航空自衛隊と海上自衛隊との関係、その飛行機の配属を一体いかにされる御方針であるか、これを明確にしていただきたい。
  41. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 ただいまの御質問きわめて適切なるものと私は存じます。日本は島国でありまして、飛行機で行けばもうすぐ海に出てしまうのであります。今後の日本防衛ということは、航空に関する限りにおいては主として私は海上であろうと思います。海上における作戦行動について不断の準備をさせることが必要であります。しこうして今度できますいわゆる三幕、航空自衛隊におきましては、これはもちろん陸上の航空もこの中に入るのでありますから、私の構想といたしましては、とにかく陸も海も将来行動はわかれても、初めからわかれさしてはいかぬ、教育は一本にして、そして十分に部内の協力体制を整えて行こう、そして行動する場合においては別の行動をすればいいのであります。要は部内におけるいわゆる融和統合、そしてすべて協力体制を整えて行つてやらせたい、これが三幕、すなわち航空自衛隊をつくらんとする目的にほかならぬのであります。
  42. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 私の御質問したい一点が抜けておりましたが、海上自衛隊には航空機は配属されますか、されませんか。
  43. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 それはむろん配属させます。陸上の方へも配属させます。しかしその統合はすべて三幕でやりたいと考えております。
  44. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 了承いたしましたが、私は陸海空の三自衛隊をおつくりになるのは、従来の陸海軍の対立のいきさつからしまして、これも運用の妙を得られて統一して行かれますことはきわめて必要であると考えております。ただ私が心配いたしますことは、今度顧問団も来るそうでありますが、アメリカは陸海空にわかれておりますが、これまたなかなかセクシヨナリズムの強い国であります。それをそのまま日本自衛隊に持ち込んだならばたいへんである。これは賢明な木村長官もよくしぼられて、日本においては渾然一体たる運用をやられるように希望する次第であります。外務大臣にお尋ねしたいと考えますことは、この自衛隊がだんだん強化されて参りましたことで、安保条約は改訂になるものでありましようか、いかがなものでありましようか、その点をお尋ねいたします。
  45. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 これはまだ先の情勢を見てみないとはつきりしたことは申せないのでありまして、安保条約を廃棄するということは、この条約の四条に書いてあるのですが、改訂の問題は特に取上げてありません。そして安保条約がなくなるという事態は何かというと、一種の安全保障体制ができたときになくなるということであつて、アメリカの駐留軍がいなくなるときになくなるとは書いてないのであります。といいますのは、要するに自国だけの力でその国を守るということは、ちよつと近き将来にどこの国でも考えられないことでありますから、自国防衛力があるに従つて駐留軍の数はなくなるかもしれないと思いますが、しかし安保条約の精神はやはりアメリカの本国の大きな力があつて、それの出先のアメリカの軍隊がここにいるということは日本の安全に資すると考えておりますから、この条約の精神はあるいは形をかえて生きるということになるかもしれません。あるいはそのほかの形の何か安全保障措置ができるということになる事態になるかもしれません。ちよつとそのときになつてみないとわかりませんが、いずれにしましても、安全保障の措置を考慮することは、日本防衛力が相当でき上つたあかつきといえども必要であろうかとこう思つております。
  46. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 次に、私は武力行使の問題をお尋ねしたいと思うわけであります。木村長官にお尋ねいたしたいと考えますのは、自衛艦は軍艦であるかどうかということ。軍艦は正規の海軍軍人によつて指揮されて、軍艦旗を掲揚するものであります。海上自衛隊は軍隊ではございませんし、職員は軍人でもないわけであります。そこで自衛艦、自衛隊の船舶は軍艦とは言えぬのではなかろうか。しかし今度は艦という文字が使つてある、自衛艦と申しますか、その自衛艦は、国際法上における軍艦の特権を受けられるかどうか。すなわち治外法権、不可侵権あるいはその他の特権は受けられますかどうか、この点をまずお尋ねいたします。
  47. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 お答えいたします。日本の持つている自衛隊における船をいわゆる軍艦として取扱うかどうか、これは主として第三国との関係でありますが、実際におきましては、第三国は軍艦として取扱うものと考えております。現にイギリスでも、アメリカにおきましても、日本のフリゲートに対しては軍艦としての儀礼を尽してやつております。その点から見ましても、第三国は、将来日本自衛隊の船に対しては軍艦として取扱うのではなかろうかと考えております。ただそこで制約があるというのは、例の憲法第九条第二項の交戦権の放棄であります。この点においていわゆる純粋な意味における軍艦として取扱うことは、日本としては禁止しておるわけでありますから、その点において相違がある、普通並の軍艦として第三国は取扱うものと考えております。
  48. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 次にお尋ねしたいことは、第三国が軍艦として取扱うであろうということを期待するというふうな御答弁に受取れましたが、公海における外国船を臨検または拿捕する権利はありますかどうか、この点を承りたい。
  49. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 これは憲法第九条第二項において交戦しないことになつておりますから、その点においてはさいぜん申し上げましたように、いわゆる純粋な意味における軍艦としての扱いはできぬということになると思います。
  50. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 公海における外国船の臨検、拿捕の権利がないということになりますと、海上自衛隊の重要な任務は国の防衛及び国民の保護であります。公海を航海して来る船に、いろいろな敵性をもつておる人的、物的なものが乗つておるといつた場合において、自衛艦はそれに対し全然臨検、捜索はできないのでありますか。これがもしできなければ、その船が日本に入つて来て、どこかの港に着くわけであります。それを自衛艦はうしろからついて歩くのでありましようか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  51. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 これはただいま申し上げましたように、国際法上の交戦国としての権利を放棄しておるのでありますから、拿捕、臨検というものはできませんが、しかしながら今お話のように、そういう船が日本にやつて来て、日本のいわゆるはなはだしい危険の事態に瀕せしめるという場合におきましては、いわゆる自衛力の範囲内において相当の処置をすることになろうと考えております。しかしそれを具体的にどうするかということは、ただいまのところはちよつとお答えできかねますが、独立国家として自衛権を持つておるのでありますから、その自衛権の発動によりある程度の処置はとらざるを得ない、こう考えております。
  52. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 これは非常に重大な問題であつて海上における自衛行動はほとんどできなくなりはせぬかと思うのであります。それで、この点は明確にされておかないと部下の指揮統率ができなくなりはせぬかということをおそれるのであります。たとえば漁船の場合を例にとつてみます。漁船が相手国の船から捜索されて拿捕されかかつておる、そういう場合においてかりに自衛艦が出動してそれを返せといつた相手は返さぬといつておる。その場合も向うがもし発砲しなければこつちは発砲するわけには行かない、それでどうして一体国民の保護ができますか。あるいは敵の航海を妨害するために周囲をぐるぐるまわる、あるい威嚇射撃をされます、こういうときにおいて海上自衛隊としてはいかなる行動をとつたらいいか。それが明確にならなければ任務の行使はできないのじやなかろうかと思いますが、この点についての長官の御判断を明確に承りたいと思います。
  53. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 お答えいたします。すべてそういう問題を全部解決いたしますには、いわゆる憲法を改正する必要があろうと存じます。私は、憲法改正が近ごろいろいろ言われることはさような点も一つ契機であろうと考えておるのでございます。しかし今お話のような具体的な問題になりますと、それに対してただちにどう処置するかということについては、私はここで御返答申しかねるのでありますが、われわれといたしましては、少くとも憲法のいかんによらず日本には自衛権があるのでありますから、その自衛権の行使をどこまで伸ばして行くかということについて、今後大いに研究いたしたいと考えております。
  54. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 それでは私の方から申し上げます。私は今言つたような事態が起つた場合におきましては、相手行動いかんによつて武力行使ができるのじやないかと思つております。海上におきましては自分が撃たれるか相手を撃つかどつちか一つであります。弾庫に弾薬を満載して護衛に当つておる場合に、相手が一発先に撃つたならば命中して沈没であります。すなわち相手が撃つ態勢になつたならば、これは攻撃判断しなくちやならぬのじやないか、だからたとえば相手が不規則な行動をするあるいは砲をこちらへ向ける、これは当然攻撃のうちに入る、その場合におきましては海上自衛隊が当然発砲しなければどうするか。それを発砲せぬでついてまわつておるならば、これは何隻あつたつて日本の船は全部沈んでしまいます。この点がきわめて重大な問題でありまして、海上自衛隊の職員はサウンド・ジヤツジメント、良識ある判断海上においてなせといつて、現地官にまかすことは適当ではないと思います。私は今後この問題は頻発する問題であろうと思いますから、木村保安庁長官はこういう国際的な問題の起る事態に対して、いかなる処置を部下に対して命令をしておるか、またいかなる保護を日本国民に対してとられるように命令しておるか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  55. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 御説ごもつともであります。われわれといたしましては、終始それらの方法について慎重考慮いたしております。部下に対しても相当これに対しての指導はしております。しかし具体的に今申しましたことに対して、どうやつて行くかということについての御返答は差控えたい、こう考えております。
  56. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 職員はすべて日本国民の保護のために、木村長官のもとにおいて相当精神的にはりきつておるわけであります。どうか部下が十分に活躍しやすいように一つの道をあけてやるということは、きわめて私は重大な問題であると思う。この点が私は当然の日の独立国としてとつていい問題ではないかと思いますので、木村長官は自信も十分お持ちでありますけれども断固たる自信を持つて、その点は部下のために道をお開きになつてよいのじやないか、それをしないでおいて部下に常識ある判断をせよと御命じになることは、いたずらに前線の部隊海上において奔命につかれしめる、そして彼らを無残なる犠牲にすると私は考えるのでありますが、どうかこの点は一日も早く明確なる態度をおきめになるようにお願いする次第であります、  同時に私は最近の新聞によれば、竹島に韓国が砲艦を派遣して、日本の巡視船を駆逐するとかいうような放送もあるということを承りましたが、これは事実ありますかいなか、またこれに関連いたしまして、外務大臣に承りたいことは、日韓会談が今後いかに御進捗になりますか、日本の漁船の拿捕等について適当なる安全上の処置が日韓会談の再開によつてとられますかどうか、この二点を伺いたいと思います。
  57. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 竹島の問題でありますが、竹島に韓国の砲艦が派遣されたことは、私も新聞紙上でこれを承知したのでありますが、そのことについて詳細取調べるように幕僚の方に命令を出しておるのでありますが、ただいまのところ真偽は判明いたしておりません。しかし竹島に韓国の砲艦が来て砲撃でもするような場合には、事まさに重大であります。われわれといたしましても、これは看過することはできない、こう考えております。相当な手段をとらざるを得ないかと考えております。しかし今のところは真偽未定のようであります。私の方でわかりません。
  58. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 日韓会談は御承知のように停屯いたしております。表向きの先方の言い分は、例の久保田発言を取消すならば会談を再開するに異議ないというふうであります。そこで久保田発言なるものは、久保田代表が正式な委員会でなくして、別の分科会に個人の資格として断つてつた発言でありまするから、これだけがじやまをしておるというならば、政府としては適当の措置を講じて会談の促進をいたしたいと思います。しかしそれがただ言いがかりであつて、実は会談の内容に対して著しい反対があるとなりますと、会談を開きましても、うまく行くかどうかわかりませんが、少くとも会談をなるべく早く開きたいと考えまして、ただいまでもいろいろ、たとえばアメリカの代表者を通じて先方に話したり、こちらにおる韓国の代表部と連絡をいたしたりして努力をいたしております。あるいはこの十日か二週間のうちに開けそうか、開けそうでないかという見込みだけはつくんじやないかという期待を持つております。そこでこの問題が解決せぬと、またいわゆる李承晩ライン等のことで非常にやつかいな問題が出て参りますので、これにつきましては木村長官なりあるいは運輸省の船なりいろいろ今連絡をいたしておりまして、適当なる漁船の保護ということはこれは考えなければいけないのではないか、こう思つております。
  59. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 次に私は自衛隊と海上保安庁との関係の、特に武力行使等に関連する問題についてお尋ねをいたしますが、保安庁法並びに自衛隊法によりますと、防衛出動または治安出動の場合に、特別に必要な場合には総理大臣海上自衛隊を自衛長官の指揮下に入れる、こういう規定がございます。そこで木村長官海上保安庁の部隊のいかなる指揮をなさいますか。自分の指揮下に入れます場合に海上保安庁長官を指揮なさいますか。海上保安庁の船を特定して、あるいは部隊を特定してその船を御指揮になりますか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  60. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 今の点は防衛庁長官は海上保安庁の長官を指揮をして、長官をしてすべてその任に当らしめる、こう考えております。
  61. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 その点は了承いたしましたが、次に海上保安庁の火器の問題であります。これは海上保安庁長官にお尋ねしたいと思つておりますが、海上保安庁の巡視船に対する火器の取付けがきわめてのろかつた、三年がかりであつた、これがまことに私は意外に思うのでありますが、一体何ゆえにこんなに遅かつたのか、またこの火器はいかなる形式で借上げをしておるか、国会にこの借上げ協定は提出されなかつたか、国会に提出せんでもよかつたのかどうか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  62. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    ○山口(伝)政府委員 お答えいたします。海上保安庁の巡視船にも火器を船型に応じて適当なものをつけたいということは、一年以上前に方針としてきめたのでございますが、このとりつけます火器そのものをアメリカから貸与を受けるということで、この折衝に意外にひまどつておりましたが、やつときまりましたのが昨年の暮れでございまして、その貸与の形式はいろいろ借受けるについての財政負担等は内容として含んでおらないので、現物のまま借受けてそのままの状態で将来また返す、このあらためて返すときには、そのときに相談するというような形式でございましたので、従来の保安隊が使用された火器と同様に今日までまだ国会には報告はいたしておりません。
  63. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 火器の取扱いについて海上保安庁長官質問いたしますが、先ほど自衛隊におきましては、自衛艦に対する火器の使用方法、拿捕船、漁船保護についての火器の使用方法がいまだ明確でなかつたのであります。海上保安庁は警備艦よりも先行して海上の警備に当られるわけでありまして、漁船の拿捕の問題に遭遇することはきわめて多いと思う。今までは砲がありませんでしたからあるいはピストルを金庫の中にしまつておいて交渉して解決する、こういうことをしておつたわけでありますが、今度はこちらが火器をすえつけておりますから、問題はきわめて複雑になつて来ると思います。山口長官はこの海上保安庁の巡視船につけている砲の使用について、私が先ほど木村長官質問しました点について、いかにお取扱いになるか、漁船を保護するためにいかなる使用法をとられるか、いかなることを部下に命じておられるか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  64. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    ○山口(伝)政府委員 お答えいたします。巡視船の性質は警察船の範囲でございますので、これがとりつけております火器を使用いたします際は、いわゆる正当防衛あるいは緊急避難という限度を越えていないのであります。将来、このたびの自衛隊法案のごとく防衛庁の統制下に入つた場合におきましても、今日の考え方としては、その場合の海上保安庁の船艇が活動します受持ち分野も、今のところ海上保安庁法の範囲を出ないのでございまして、そのときも同様に正当防衛、緊急避難という限度で使用するというようにただいまのところ考えております。
  65. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 この点は先般の「さど」事件ときわめて関連がありますが、「さど」事件の場合は、相手から機関銃の攻撃を受けたと聞いております。相手海上保安庁の巡視船を攻撃した場合は、もちろん砲は使用する、武力は行使する、こういうお考えでありますか。
  66. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    ○山口(伝)政府委員 お答えいたします。そのときの状況によつて、向うから積極的に攻撃を加えられるというような場合には、もちろんそれに対して応待せざるを得ないと思います。しかしなるべくさような状態は避けたいとは思つておりますが、そういうような事態に当面すればやむを得ないことだと思つております。
  67. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 私は木村長官並びに山口長官、両長官の御答弁を承りまして、火器の使用に対しての方針がまだ明確に立つていないと思う。そこでこの問題はもちろん複雑なる国際問題を引起すこともありましようし、また部下をきわめてナーヴアスな、非常な苦しい判断の場面に押し出してしまう。そこでこれは、もちろんいろいろ複雑な事態がございましようが、遠く国を離れて日本の漁船あるいは日本人の保護に当つておる諸君が、ほんとうに安んじて国旗のもとに働き得る、こういう態勢を早く明確にされなければ、いたずらに部下を苦しめるだけである、かように私は考えるわけであります。この点はひとつ両長官が御協議になりまして、できるだけ早く態度を明確にされんことを希望する次第であります。  次に私は山口長官にお尋ねしたいことは、「さど」は李ラインに立ち入らないという誓約書をとられたということでありますが、これはほんとうでありますか。
  68. 山口(伝)政府委員(山口伝)

    ○山口(伝)政府委員 お答えいたします。釈放されることがきまつたあと、そういつた誓約書みたいなものを判を押しておることは事実でございます。
  69. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 これはとんでもないことでありまして、私は日本の公船が公海を航海することにおいて何の遠慮がいろうか、これは明確に韓国の日本の公船に対して強制した——あるいは釈放の際の不可抗力の強制であつたかもしれませんが、私はこれはとうてい容認できないと考える。この点に関しまして、外務大臣はこれを否認された措置をおとりになつたと考えておりますが、いかなる措置をおとりになつたでございましようか。
  70. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 外務省におきましては、この事実その他を調査しまして先方に対する申入れを行つております。
  71. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 私はこれは当然否認さるべき問題だと考えております。  また私は木村長官にお尋ねいたしたいと考えますが、海上保安庁の部隊を自分の指揮下に入れられまして出動される場合、海上保安庁職員の身分はいかなることになりますか。あるいは待遇の条件はいかがでありますか。自衛隊と全然同じ身分においてお使いになりますか、あるいはそこに差別がございますか、この点を明確にしていただきたい。
  72. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 身分関係につきましては、これは海上保安庁の通りであります。しかしこれを防衛庁長官の指揮下に入れますと、そこにおいていろいろな条件が違つて参ります。いわゆる危険勤務その他については全然かわつて来るのであります。従いまして給与その他の点におきましては特別にこれを取扱いたい、こう考えております。今研究中であります。
  73. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 私は木村長官の指揮下において海上保安庁の部隊を御指揮になる場合におきましては、給与、処遇の公正ということが最も必要なことであります。しかも現在におきましては、自衛隊の身分服務と海上保安庁部隊の身分服務とは違つておりますし、給与の段階も違うのであります。これを一朝有事の場合に、さあ指揮下に入れと言つたつて、急にできるものではない。平素から、そういう防衛出動の場合に、何らか身分的にも、海上保安庁の職員は特別職になり、あるいは給与的にはスライドさせて同じになる、階級処遇も同じになるというような、何らかのスライド制の方式でもおつくりになる御意思があるかどうか、この点についていかにお考えになりますか。
  74. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 お答えいたします。もちろん海上保安庁の船舶職員が防衛庁長官の指揮下に入りましても、その職務、権限については、依然として元の通りであります。防衛庁における海上自衛隊と本質的に異つておるのでありまして、海上自衛隊と同一の権限を与えるわけに参りません。従いましてこれを同一に取扱うことはできませんが、指揮下に入つた以上は、今申し上げました通り、その勤務状態その他の点について本質的に本来のものとは違つて参るのであります。給与その他について別種の取扱いをいたしたい。今お話のようなスライド制をとるとかなんとかいうことについては、一つの研究課題であると考えておりますので、せつかく検討いたしております。
  75. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 私はただいまの木村長官の御答弁には満足できないのであります。自衛隊の任務と違うという御答弁でありますけれども、私はおそらく海上において防衛出動等の場合に、海上自衛隊の行動海上保安隊の行動とは差別できないと思う。これは護衛の場合をとりましても、沿岸哨戒の場合をとりましても、港湾防衛の場合をとりましても、かりに若干の差があつても、現代の近代戦におきましては、前線後方の差別はほとんどないのであります。これは任務が違うからといつて差別した待遇を容認されるというお考えがあるならば、たいへんな問題であると思うのであります。やはり海上保安庁の職員に対しましては何らか明確な規定をおつくりにならなければいかぬ。それなしには指揮することはできないのではないかと考えますので、この点もう一度長官のお考えを承りたいと思います。
  76. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 再度申し上げるようでありますが、これらの給与その他の点については、十分に考慮いたしまして、万違算のないようにとりはからいたいと考えております。
  77. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 次こお尋ねしたいと考えておりますことは、自衛隊法第八十八条において第七十六条、すなわち外部からの武力攻撃に際して出動した自衛隊は必要な武力行使ができることとし、この場合国際法の慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守しというふうに規定してあります。国際法の慣例ということは陸海空戦法規でありますか、外務大臣に承りたい。
  78. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 戦時国際法に規定されておりますものは当然それに入ると思いますが、その他慣例的になつておるもので、国際法に記してないものもあるわけでありまして、そういうものも十分考慮する必要はあると思つておりますから、大体お話のように、陸戦法規、海戦法規その他の国際法、こういうことになろうかと思います。
  79. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 私はこの点を明確にしておきたいと考えますのは、陸海空戦法規によりまして自衛隊が交戦権を持つわけであります。そこで憲法には交戦権はなしというふうに規定してございます。そこでこの陸海空戦法規から交戦権を持ち得るものであるかどうか、この点に対する考え方をお教え願いたいと思います。
  80. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 これは憲法にもありますので、つまり国際間の関係と日本国内の憲法の関係とは必ずしも全然同一でない場合がありまして、たとえばよく議論になることでありますが、集団的安全保障というようなことを日本の国際文書といいますか、平和条約等には書いてあります。しかし集団的安全保障に入るか入らないか、これは日本のかつてであります。と同様に外国でこういう場合に、日本部隊を軍隊なり軍艦なりと同様に扱うということは、先ほどの木村長官お話のように、想像されるのでありますけれども、たとえば国内的の法律関係からしてそういうことを要求できるかどうかというと、これは別問題でありまして要求はできないかもしれません。しかし外国では事実上同じように取扱うことが当然あり得ると思つております。これと同じような関係でありまして、いろいろの戦争に関する法規がありまするが、これをそのまま適用すると言うと語弊があるかもしれませんが、あるいは準用と申しますかそれの中で日本の憲法等に抵触しない範囲のことは、日本としても準用いたすべきである。また国際的に主張することが国の利益である場合には、これを主張いたすこともあると思いますが、いずれにいたしましても、その精神においてはそういう法規等を十分考慮に入れる、こういうことになろうかと思います。
  81. 中村(高)委員(中村高一)

    ○中村(高)委員 ちよつと関連して。今大久保委員から自衛隊の出動の場合の武力の行使についてお尋ねがありましたが、その中で国際の法規及び慣例による、こういう規定が特に武力行使の場合に規定されておるのでありまするが、先般来原爆とか水爆ということが問題になつて、国会でも決議をしたりいろいろのことをやつておるのでありますが、一体原爆や水爆というようなものは、国際の法規及び慣例において現在どういうことになつておりますか、これを外務大臣からひとつお答えを願いたいと思います。
  82. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 原爆等につきましては、御承知のような実情でありまして、新しい国際法なりあるいは国際慣例なりをつくろうとする努力は今なされております。また同時にこれを管理しようという努力もなされておるのでありますが、ただいまのところ成文化したものもありませんし、また先例としては終戦前に使われたものだけが先例になつておるわけでありまして、ほかにありませんし、まだおつしやるような新しい国際法規なり慣例なりができておるとは言えないのでありますから、非常に法律的な実情を考えないようにおとりになるかもしれませんが、現存の法規を適用せんとすれば、一般の爆弾を使う、この法規関係を適用する以外に方法はないと思います。従いまして、新しい法規か慣例ができるまでは、実は実際上適用するものがないと言わざるを得ぬかと考えております。
  83. 中村(高)委員(中村高一)

    ○中村(高)委員 そうしますと、今まで原爆の使用について、国際上何にも規定も慣例もないのだとすれば、ああいうふうな残虐な武器でありまして、現に日本でも広島や長崎のようなああいう非戦闘員までもやられておるし、今度のビキニの実験などを見ましても、非常に遠くにおつても被害を受けるという、ああいう武器が現在存在する。国際法規の爆弾でありますか、そういうようなものとは全然類を異にいたした武器であります。そうするとこの使用は慣例から言つても当然許されないものだと考えますが、外務大臣は現状においてあの実例をどういうふうにお考えになりますか。
  84. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 これは非常にむずかしい問題でありまして、先ほども大久保君のお話がありましたが、たとえば無差別な潜水艦行動とか、あるいはじゆうたん爆撃というような、非戦闘員も含めた、ある都市を壊滅してしまうというようなことが、現に方々で行われておるので、これは事実でございます。おつしやるような原子爆弾と言えば、さらに規模は大きくなるでありましようが、すでに戦闘員だけを目標としていない事実がここに出て来ております。従いまして、国際法的に申せば、ダムダム弾であるとか、あるいは細菌戦であるとかいうような、はつきり禁止されておるものは、これを使えば国際法違反でありますが、そういうものかできていない現在におきましては、これを使つてはいかぬということも、法律で根拠はないというのが実情であります。
  85. 平井委員(平井義一)

    ○平井委員 大久保委員質問に関連してちよつと外務大臣にお尋ねいたしますが、今日われわれは保安隊あるいは海上警備隊を自衛隊に切りかえて拡充するということで審議いたしておるのでありまして、大久保委員が将来できる自衛隊について御意見を出すのは至当と思いますけれども、その戦略まで行くのは少し早過ぎはせぬかと私は思うのであります。それに関連して先般のMSA協定について、私どもは実は外務委員会に連合審査を申し込みたかつたのでありますが、すでにその時期はなくなつてしまつたのであります。MSA協定は御承知のごとく軍事援助でありますが、日本には軍隊がない、戦力のない軍隊と世間では言つております。軍隊のないところに軍事援助をする。しからばアメリカは日本の現在の保安隊を軍隊並に考えておるかどうか、アメリカが軍隊並に考えておるとすれば日本国内であまり遠慮する必要はない。外務大臣はアメリカに向つて、あなた方がつくらした憲法によつて日本は往生しておるのだということをお話をしてもらつて、ほんとうに将来魂を入れてアメリカが考えておるような自衛隊にする気があるか、あるいはまたこれによつて憲法をかえて行く気持があるかどうか、外務大臣が出席をされておるついでにお尋ねを申し上げます。
  86. 岡崎国務大臣(岡崎勝男)

    岡崎国務大臣 これは現実の問題と将来の立法論のようなことと二つ含まれておるようでありますが、外務大臣としてMSAの協定を結びますにあたりましては、現在の憲法のもとに結ぶのでありまして、将来これをかえる必要があるという考えのもとにさような協定を結ぶわけには参りません。従いましてアメリカは軍事援助と称しておりますが、これは世界中に軍隊を持つていない国というのはない——あることはありますが、日本以外はほとんど言うに足りないところでありますから、アメリカは世界のどこの国も軍隊を持つているものと仮定してあの法律をつくつておるのであります。従いまして日本の場合は、現行憲法のもとにおいてMSAの協定を結ぼうといたしますれば、アメリカの考え方に対して特例を求めなければならぬわけです。今度のMSAの協定はこの特例を求めまして、一般には軍隊に対する援助であるが、日本に対しては軍隊でない戦力でない保安隊に対する援助、こういうことでいろいろの点をかえて特例を設けてつくつたわけでございます。将来どうするかということにつきましては、おのおのみな考えがあることであります。まだ内閣としてどうするということはきめておらない実情でございます。
  87. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 次に政治と軍事について承りますが、これは主として木村長官にお尋ねしたい。それはシビリアン・コントロールの問題であります。文官優位の問題であります。保安庁法において内局の幹部に制服を入れるということに今度相なりましたが、これは私は一般的にいつて少し早過ぎはせぬかという気持を持つております。この間第一日目の木村長官の御趣旨も了承をいたしました。しかし何と申しましても、日本は長い間兵権優位の慣習になれております。そこでこの考え方を新しいシビリアン・コントロールにかえて、ほんとうの意味の総合国力、総合戦力というものを運用して行く、こういう考え方に切りかえなくちやならぬ大事な時期に立つております。私はかくのごとき民主的な国軍の統率、部隊の統率という一つのやり方というものは、ある程度年数をかけなければできるものじやないと思う。民主主義の改革というものは、まわりくどいけれども、若干の年数をしんぼう強くかけなければならぬ。ところが保安隊が生れて一年たつかたたぬ間にこのシビリアン・コントロールの計画を排除された。それは制服とセビロとの対立をなくするということは一応了承できますけれども、日本に長い間巣くつてつた兵権優位の思想を打破るために、木村長官はこの規定をなぜもう少ししんぼう強く守られなかつたか、この点について木村長官の腹の中をもう一ぺんお聞かせ願いたい。
  88. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 私は常に政治が軍事に優先する、いわゆる政権が軍権に優位する、こう考えております。申すまでもなく昔は武権が支配した時期が日本において多かつた。それではいかぬ。要するに政治がすべて優先的にものを支配して行くべきである。この建前をとつて行く。シビリアン・コントロールという言葉はよく使われますが、結局根本原則はそこにあるのであろう。何もいわゆる普通のシビリアンを軍務に従事しておる者の上に置くという意味じやありません。今後創設さるべき自衛隊についてみましても、自衛官と内局の職員は渾然一体をなして行かなければならぬ。対立関係があつてはいかぬ。ともに手を携えて日本の国防の全きを期さなければならぬ。これはどちらがよいかということを彼らに考えさせますと、そこに対立関係が生じて来る。お互いに対立関係をなくして、そうしてお互いに友愛の精神に満ち、互いに研究して日本の国防に従事して行く体制をとらなければならぬという建前であります。そこで従来の保安庁法第十六条第六項によつて制限されておるものを撤回いたしまして、一たび制服を着た者であつても、りつぱな人物であれば、適材適所主義でもつて内局に勤め得るのだという建前をとつて、この間の親愛、友愛の念を深くしたい、こういう所存であつたわけであります。
  89. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 長官の御趣旨はよくわかりましたが、制服を脱いでセビロに着かえたからといつて、そこに考え方がかわるわけじやなくて、もちろん制服の中にもりつぱな人がおるし、昔の軍人の中にもりつぱな人がおるということはわかつておりますが、やはり私はものの考え方の問題だと思うのであります。そこに今度のシビリアン・コントロールの意図しておる大きな精神革命があると思うのですが、また内局におきましても、かくのごとき事態が早く来過ぎた原因があつたんじないか。一体幕僚幹部は二十四時間勤務をしておるけれども、内局は八時間勤務である。相当な居残りもしておられるのでしようけれども、何らかそこに実施部隊の機動的な要望に内局が沿わなかつたんじやないか、こういう点も心配される。また内局の人はいろいろな役所から出て来ておられますが、これが役所のからをおけつにくつつけてやつて来て、保安庁の内部で各省の権限争いをしたのではないか、実施部隊が十分な機動的な機敏な措置をとり得ない何らかの欠点が内局にあつたのではないかということを心配するものであります。そこで長官に今後の方針としてお聞きしたいことは、内局の幹部は今後も各省との人事交流をおやりになるのか、それを原則とされるかどうかという点であります。実施部隊を内局が押えて行きますためには、内局の人が戦略的にも軍略的にもある程度制服と対等の議論ができて、どちらからでも来い、大戦略においてはおれの方が上だという、これだけの自信が自分になければならぬ。それが各省の出先根性ではとうてい部隊は押えられないと考えておる。そこでたといセビロを着ておつても、気力からいつても迫力からいつてもあるいは知力からいつても劣らないのだという内局の幹部をつくるのに、長官はいかなる勤務ぶりといかなる研修方法を内局の諸君に要求しておられるか、また実施をせられんとするのであるか。まずこの点を承りたい。
  90. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 ただいまの御趣旨はごもつともであります。人事の交流もけつこうでありますが、腰かけ半分で来られては困る。保安庁においてわれわれは国防の大任を果さなければならぬという精神と気力を持つて来てもらわなければならぬと私は終始言つております。ただ一時腰かけ的に保安庁に来て、職を辞してまたほかの省にもどるというようなことであつてはいけない。ただ保安庁は発足以来わずかに数年で、伝統というものはない。御承知通り各省においては伝統がある。われわれとして極力りつぱな伝統をつくり上げたいと考えて今努力をしております。そこで今お説の通り、保安庁の職員たるものは十分に思いをここにいたされて、保安庁で終始一貫その職を全うするという考えで行かなければならぬと終始私は申しております。だんだんわれわれの考えるところにみな沿われまして、今一生懸命やつてくれております。これが数年たてば、わずかながら保安庁としての伝統もつくり得るのではないかと考えておる次第であります。
  91. 平井委員(平井義一)

    ○平井委員 防衛庁設置法並びに自衛隊法、この二つの法案を審議する上においてまず木村長官にお尋ねしておきたい。ただいまの大久保委員質問に関連をしておりますので、大局から一点だけお尋ねをしておきたいと思うのであります。御承知のごとく今日の保安隊は戦力なき軍隊、すなわち男か女かわかりません。これを一体どう考えられるか。独立国になつたので、独立国のかつこうをつくるために、今日保安隊を増強して航空隊をつくるという程度のものか、将来陸海空の三部隊を持つて、交戦権はないといえども、もしも外国から侵入されるならば、断じてこれを防ぎ得るというような構えの防衛隊をつくるのか。今後戦争をするということはだれしも好むところではないし、われわれも戦争はしてはならぬと思つておりますが、ほんとうの防衛という意味でこの三つを育て上げて行くのかどうか。どうも今日は男か女かわからないような状態に置かれておるので、木村長官は将来この二法案が通過をし国民の要望があるならば日本人にふさわしい憲法をつくるのにもやぶさかでない。今日の憲法下においては万事不自由である、こういう気魄をもつて自分が防衛の任務を担当するのであるから、憲法改正にも先例をたれなければならぬと思うが、この問題に対して木村長官はどういう考えでおるか。日本の捨石となつて、あるいは日本国民防衛のために一身を投げ打つてやるという気があるかどうかお聞かせを願つて、審議に入りたいと私は思うのであります。
  92. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 お答えいたします。ただいま保安隊は男か女かわからぬということを申されましたが、保安隊は男でございます。(笑声)戦力なき軍隊、だれが申したか知りませんが、われわれは戦力なき軍隊とは言つた覚えはありません。ただ保安隊は憲法のわく内においてこれを樹立したのであります。すなわち戦力に至らない程度においてやつておる、これだけにすぎないのであります。そうして申すまでもなくただいま御審議を願つております防衛庁法案第四条においては、「防衛庁は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とし、」まさにこの通りであります。独立国家としてその国の平和と独立を守つて安全を期さなければ国家は成り立たないのであります。その重き任務を、今後自衛隊が持つて行くことになるのであります。われわれはこの自衛隊を育て、国民の輿望に沿うて国防の全きを期したい、こう考えております。  そこで憲法改正の問題に触れられたのでありまするが、御承知通り憲法は国の基本法でありまするから、軽々しくこれを改正するとかどうとかいうことをわれわれは口にいたしたくはないのであります。しかし将来日本がどうしてもこの国防をさらにさらに増強して行こうということについて、憲法に何らかの支障ありと考えまするときにあたつて国民にさような気持が充実いたしますれば、そのときこそ憲法は改正すべき時期じやなかろうかと考えおります。われわれ当局といたしましては、ただいま現存しておりまする憲法のわく内において、わが国の平和と独立を守つて、安全を守り得るよう万全の処置をいたしたい、こう考えておる次第であります。
  93. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 先ほどのつながりでありますから、最後にもう一点だけ木村長官に念を押しておきたいと思います。木村長官は制服を内局にお入れになる御意思があるかどうか。またどの局課にお入れになる御方針であるか、あるいは当分の間と規定は変更したが、やはりシビリアン・コントロールという精神を育てて行くためには、しばらく制服を入れないで、今までの体制で運用上やつて行く、組織は制服と背広が対立するという形をなくしてしまう、運用はシビリアン・コントロールを育てて行くという御方針でおいでになるのかどうか。この点を承つてきようの質問は打切つてあすに延ばしたいと思います。
  94. 木村国務大臣(木村篤太郎)

    木村国務大臣 お答えいたします。御承知通り運用がよくなければ物事はうまく運ばないのであります。それと、結局いかなる機構であつてもその人よろしからざればこれまたその機構の運用はうまく行かない。そこで現在保安隊の内局に勤めておりまする人々は、現在において十分に有能なる者であるということを私は認めます。そこでこの人たちにかえて今ただちに前に制服を着た者を運用するというようなことは今考えておりません。しかし将来において有用な人材であれば、幾たび制服を着た者であつてもこれをとるにやぶさかでない、私はこう考えます。
  95. 大久保委員(大久保武雄)

    大久保委員 それでは今の木村長官の御答弁を了承いたしますが、民主主義の改革は気長にやつていただきたい。一年くらいでただちに変更して文官優位をすりかえる、こういうような点はどうか十分御注意になつて、あくまでシビリアン・コントロールの本髄を生かされるように期待いたしまして、本日はこの程度にいたします。
  96. 稻村委員長(稻村順三)

    ○稻村委員長 大久保君の質疑は次会に続行することにし、次会は明日午後一時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十五分散会