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1954-04-01 第19回国会 衆議院 内閣委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月一日(木曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 稻村 順三君    理事 平井 義一君 理事 八木 一郎君    理事 山本 正一君 理事 高瀬  傳君    理事 下川儀太郎君 理事 鈴木 義男君       江藤 夏雄君    大久保武雄君       永田 良吉君    長野 長廣君       船田  中君    山崎  巖君       中曽根康弘君    粟山  博君     早稻田柳右エ門君    飛鳥田一雄君       田中 稔男君    中村 高一君       辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         保安庁政務次官 前田 正男君         保安庁次長   増原 恵吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁局長         (人事局長)  加藤 陽三君  委員外出席者         専  門  員 亀卦川 浩君         専  門  員 小関 紹夫君     ————————————— 三月三十一日  委員生田宏一君及び木村武雄君辞任につき、そ  の補欠として八木一郎君及び津雲國利君が議長  の指名で委員に選任された。 四月一日  八木一郎君が理事に補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  統計法の一部を改正する法律案内閣提出第四  八号)(参議院送付)  防衛庁設置法案内閣提出第九四号)  自衛隊法案内閣提出第九五号)     —————————————
  2. 稻村順三

    稻村委員長 これより開会いたします。  この際お諮りいたします。理事八木一郎君が去る三十日委員を辞任され、理事一名欠員となつておりましたが、三十一日再び委員に選出されましたので、同君を理事に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 稻村順三

    稻村委員長 御異議なければ、八木一郎君を理事に指名いたします。     —————————————
  4. 稻村順三

    稻村委員長 本日はまず統計法の一部を改正する法律案議題といたします。  他に御質疑が、ございませんければ、討論はこれを省略いたし、ただちに採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 稻村順三

    稻村委員長 御異議なければこれより採決に入ります。本案に賛成の方の御起立を願います。     〔総員起立
  6. 稻村順三

    稻村委員長 起立総員。よつて本案は可決いたしました。  本案委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願います。     —————————————
  7. 稻村順三

    稻村委員長 それでは次に防衛庁設置法案及び自衛隊法案一括議題となし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますからこれを許します。山本正一君。
  8. 山本正一

    山本(正)委員 ただいま議題になつております防衛庁設置法案及び自衛隊法案について、基本的な事項について質疑をいたしたいと思いますが、特に申し上げない限り、原則としてお答えは長官からいただきたいと思います。  まず防衛庁設置関係でありますが、この中における統帥関係事柄は、将来の自衛隊運営に関する基本問題でありまして、これは審議の上で非常に重要視せらるべき点であると思うのであります。この長官のもとにあります内部部局、それから統合幕僚会議、この二つ構成及びそれに対する人事問題——内部部局防衛、教育、人事、経理、装備の五局でありますが、これら五局の局長文民をもつて充てる御方針であるのか、あるいは軍人をもつて充てる御方針であるか、まずその点からお伺いいたします。
  9. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。これは少し重要な問題でありますので、ひとつ詳細に御説明いたします。内部部局局長初め課長、これはどういう者をもつて充てるか、ただいま山本君から、文民を充てるか、あるいはてのほかの者を充てるか、こういう御質問でありますが、御承知通りただいまは文民以外には、いわゆる武民というものはないのであります。そして内部部局に勤めておる者と、いわゆる実施部隊でありまする自衛官、この二つにわかれております。そこで御質問の要旨は、実施部隊隊員、いわゆる自衛官内部部局に、あるいは局長なり課長なりに任命するかどうかという御質問であろうと私は推測いたすのであります。そこで今度の防衛庁設置法案におきましては、その制限をとつたわけであります。御承知通り現在の保安庁法では、確か十六条に、内部部局局長なり課長なりには、実施部隊でありまする保安隊、あるいは警備隊の三等保安士、三等警備士以上の者は採用しないという規定があるのであります。その規定をはずしたわけであります。これが結局問題の要点であろうと考えます。それではずした理由はどこにあるかと申しますと、今は武民というものはありませんので、保守隊員でもひとしく文民であります。しこうしてひとたび保安隊に勤めておつて制服を来た者は、いかに有能な者であつて内部部局に採用しないということになると、これは適材適所から考えてみましても私はよろしくないと考えます。もちろんひとたび実施部隊隊員になつて来た者が内部部局に入るには、制服をぬいで来るのであります。普通の職員で来るのであります。そこでもう一つ理由とするのは、これを区別して、ひとたび実施部隊員になつた者が絶対に内部部局に入れないということになりますと、これこそいわゆる実施部隊内部部局との対立関係が生ずるおそれがあります。かようなことがあつてはならぬ、こういう建前から、たとい実施部隊員になつた者でも、その制服をぬいで内部部局に入り得るという建前だけはとつておる。これは今申し上げました通り適材適所主義からと、もう一つは、実施部隊内部部局との間の対立関係をなくする、いわゆる親和友愛の念をそこに起させるという建前から、この立札をはずす方がよかろうというので、はずしたわけであります。しかし実際において、内部部局実施隊員であつた者がたくさん入るという心配はなかろうと考えております。これは一に運用の妙を得れば決して懸念がないと思います。御承知通りただいま内部部局に勤務しておる者は、局長初め課長全部がいわゆる実施隊員であつた経験のない者がやつておる。さような次第でありまして、実施隊員内部部局職員との対立関係をなくし、融和の精神をそこに起させる。適材適所主義で、ひとたび制服を着ても、有能な者であれば、内部部局にも勤務させ得るという建前とつた次第であります。
  10. 山本正一

    山本(正)委員 今の説明によりまして、部内の人の融和、ここに配慮してそういう内部部局実施部隊との人事交流の道を開いたという趣旨はよくわかりました。その点は非常にけつこうでありましようが、一面そういうことの結果として、統帥能力に低下を来しはせぬか。統帥は申すまでもなく用兵作戦の狭い意味においての統帥、これはおそらく現実実施部隊の体験というものが基礎になるだろうと思うのです。これが内部部局及び実施部隊との人事交流によつて人融和ははかり得ても、自衛隊運営の上に最も重要なる統帥能力が低下するということであつては、これは将来非常に憂うべきことであると思うのでありますが、そういう点についての長官の御所見を伺つておきたいと思います。
  11. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。御承知通り長官を補佐するものとして、実施部面においては第一幕僚長、第二幕僚長法案が通過いたしましたあかつきにおきましては、いわゆる陸上幕僚長海上幕僚長航空幕僚長、この三名が長官に対しての補佐機関であります、これは実施部隊において長官を補佐する。内部部局におきましては御承知通り、いわゆる財政面、その他国際情勢、いろいろな観点から将来の日本自衛隊運営はいかにあるべきかということについて、参事官制度をとりまして、これが長官を補佐することになります。両々相まつてそのよろしきを得たい、こう考える次第であります。もちろん三幕僚長がいろいろの計画を立てて来たものをあらためて内部部局においてこれを勘案する、そうして長官がこれに対して最後の決裁をするわけであります。その間の紛淆、混乱というものはないわけであります。必ずや統制がとれた処置はできると思うわけであります。
  12. 山本正一

    山本(正)委員 そこで今お話長官そのものがかつて軍人としての経験がある者でありますならば、非常にけつこうであろうと思うのでありますが、この案によりますと、これは国務大臣なんであります。しかもその上におります総理大臣というものももちろんこれも国務大臣総理大臣から長官に至り、その長官を補佐する者が内部部局であり、一面統合幕僚会議であるという、上から下まで一貫してかつて親しく用兵作戦経験ある者というものは、今お話趣旨がらいたしますと、ポストというものがほとんどきまつておらない。今お話のあります長官補佐機関として統合幕僚会議がある、それを構成するものは議長陸海空の各幕僚長である。  そこで私伺いたいと思いますことは、何と申しましても自衛隊の将来の運営の枢軸は統帥機能の強化ということでなければならぬのであります。その見地からいたしまして、統幕の議長となるべき者、もしくは陸海空の各幕僚長となるべき者を、従来何ら用兵作戦経験を持たざる者をもつて充ててもよろしいという御方針であるのか、あるいはかつてそういう経験のあつた者の中から適材をもつてこれに充てるという御方針であるのか。議長陸海空幕僚長についてその御方針を伺つておきたい。
  13. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。今申し上げました通り実施部隊運営その他については、三幕の幕僚長が直接に長官を補佐する。これが実施部隊についての計画その他をやるわけでありまするこれがいわゆる軍の運営経験のある者、これは十分にわれわれは考慮しなければならぬ。しかしいわゆる旧軍人をすべてこれに充てるかという御質問に対しましては、私は相当考慮の余地があろうと思う。もちろん旧軍人に属しておる人もりつぱな人があります。われわれは率直に尊敬を払つておるわけであります。しかしこの人たちのみが軍の作戦計画を立てるについて万能とは申し上げかねます。御承知通り終戦直後から今日まで多年の月日を要しております。この間において軍事関係についても相当の変遷あるいは進歩がありまして、昔の用兵作戦とは相当異なるものもあるのであります。そこで現在におきましても、幕僚長を勤めておる人で、旧軍人でなかりし人がある。この人たちも一生懸命この用兵作戦については研究いたしておるのであります。実に涙ぐましいほど研究している人があります。これらの人は、私はそのうちのりつぱな者であれば、幕僚長として勤務させるに決して不適当とは考えておりません。われわれの考えるところは、いわゆる旧軍人でありし人とあるいはそうでなかりし人とを問わず、りつぱな統率の妙を得て、また作戦方面について研究をしている人をこのポストにすえたい、こう考えております。一に今後の問題にわたりますが、われわれはそういう方面からして適材適所主義をとつて、万遺憾のないようにしたい、こう考えております。
  14. 山本正一

    山本(正)委員 防衛庁設置法十二条は、内部部局防衛局業務規定しておるのでありますが、これを見ますと三項目にわたつて示しておるのでありますが、第一項目防衛及び警備基本及び調整に関する事項、第二は自衛隊の行動の基本に関する事項、第三は陸海空自衛隊の組織、定員、編成、装備及び配置基本に関する事項をこの防衛局が扱うことになつておるのであります。今長官の考えておられる事柄からいたしまして、これは非常に考慮を要する問題であろうと思う。この十二条が示しております防衛局業務というものは、実質的にはことごとく狭い意味統帥事項に属すべきものと思うのであります。これが、内部部局職員の手によつてこの種類の統帥事項が行われる、統合幕僚会議の方は、実施部隊の立場において国防自衛方策を策定する、これは非常に錯綜することであるし、今の職員実施部隊との区別の上からいたしましても、これを調整するということは実際上長官として非常に困難を感ずる場合があるだろうと思います。要するに、この内部部局の方と統合幕僚会議方針との厳密なる調整をはかるという上において非常に困難が伴うだろう、その困難の伴うと思う基礎は、十二条が定めておる防衛局業務というものがあまりにも狭い意味においての統帥事項に深入りをしておるのではないか、長官の御意見を伺つておきたい。
  15. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御説にはわれわれとして相当考えなければならぬ点があると思います。要はこれがダブりはしないかという御疑念であろうと考えます。法文の上から見ますと、まさしくダブるような懸念はあると考えます。率直に申し上げます。そこでこれをどう調整して行くか。もちろん実施部隊でいろいろの計画を立て、また演習をどうするとか、いろいろ研究した結果、計画を立てるのであります。内部部局においては、これは広い意味においてすべて国際情勢、その他予算面、いろいろな面から見まして計画をどう立てるか、もちろん統合幕僚会議から出ますことに対しましても、あるいは各幕僚長から出ますものにつきましても、それをさらに検討いたしまして、そうして予算の面その他の角度から見てどうあるべきかということを検討いたします。また部局におきましては独自の案を立てる、そこで統合してこれを長官の手もとにおいて最後の決定をいたすわけであります。その間において紛淆を生ずるようなことはないと考えます。またあつてはならないと考えます。その間の調整十分長官のもとでできるものと考えております。
  16. 山本正一

    山本(正)委員 繰返して申しまするように、この自衛隊の任務を十分に果し得るかどうかということは、かかつて統帥能力の現われにあると思うのでありますが、今の御説明をもつてしては、この防衛庁設置法十二条の規定する事柄については、まだ釈然としないものがございますが、これはなお他日適当な機会にお尋ねをいたしたいと思うのであります。  次に自衛隊限界についてお尋ねをいたしたいのでありますが、自衛隊を持つ場合に、自衛力限界をどの辺に置こうかということについては、何らかの一つの測定の目標がなければならないし、またおありのことと思うのでありますが、その点について長官の御見解を伺いたい。
  17. 木村篤太郎

    木村国務大臣 自衛力限界をどこに置くべきやという御質問であります。これは容易に結論を出し得ないと私は思います。申すまでもなく自衛隊は、外部からの直接侵略に対し、あわせて国内における秩序を保つために置かれるものであります。しかし問題の要点は、不幸にして外部からの侵略に対してどういう力でもつてこれを防ぎ得るかという点から考えてみますると、外部からの侵略がどういう程度において行われるかということをわれわれは考えなければならぬ。これはすべて国際情勢あるいは日本周辺におけるいろいろの状態、これを勘案してやらなくちやならぬと思います。そこで日本自衛力の量をどのくらい持つて行くかということについては、われわれとしてもまた細心の注意を払つてこれを検討しなければならぬのであります。しかもこれは日本財政力の面においても限界がある。いかに危険が切迫しておるという情勢判断のもとにおいても、国の財政を破綻に陥れしめる程度においては、これはやり得ないことであります。もちろん外部から侵略があつたときには、国をあげてやらなくちやならぬわけでありますから、保安庁はあらかじめこれらについての予防を講ずるわけでありますが、ふだんからさような大きな力を持つということはなかなか容易でないわけであります。結局において、これはすべての情勢判断からやるわけであります。ただ一応目標としてどういう限度にこれをとどむべきかということについては、これは検討しなくちやならぬと考えます。最終目的をどこに置くかというようなことは、とうてい私は今の段階においてできないと思います。昔のように八八艦隊をつくるとか、あるいは二十三箇師団をつくるとかいうような一つ目標を立ててやるということは、今の段階においてできかねるということであります。要は刻々迫る国際情勢、これを判断し、そうしてわれわれの見る財政状態、どこに限界があるかというようなところからにらみ合せて、いわゆるそのときに重点を置いて計画を立てることが至当であろうと考えておる次第であります。
  18. 山本正一

    山本(正)委員 最終限界を持ち得ないということは、私もその通りと思います。私思いまするに、この自衛力の最低の限度というものは、まず国内の治安の確保をするに足る実力であろうと思うのであります。最高の限度というものは、具体的には今長官の申さるる通りと思いまするが、抽象的には日本侵略脅威を受くるであろう可能の限度を測定して、その侵略の企図を抑圧し得るだけの実力ということは言い得ると思うのであります。そこで今長官の、そういう最終的のものは想定するに困難であるということはごもつともの次第でありますが、日本が当面この侵略を受けはせぬかというところの脅威というものは感じておるだろうと思うのであります。当面さしあたり最小限度として、この程度自衛力は持たなければならぬ、その当面の問題でよろしいのでありますが、一応伺つておきたいと思います
  19. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたしまするが、これはなかなか大きな問題でありまして、われわれは終始この情勢判断をしておるわけであります。日本周辺における軍の配置、兵力、あるいは船舶、艦艇、どういう状態になつておるかということを終始研究しているわけであります。これもしかし御承知通り、われわれとしては的確な資料というものがなかなか容易につかみ得ない——つかめればこれはまことに仕合せでありまするが、なかなかそうは参らぬのであります。大体おいてわれわれがつかみ得るだけの資料に基いて、どうあるべきかということを考えておるのであります。これも私の今の見地からいたしますると、相当数に上つておるやに見受けるのでありますが、しかし申すまでもなく、これに対してすべて日本が対処し得るということは容易にできません。やむを得ませんので、日米安保条約においてアメリカの手を借りておるわけでありますから、これをすべて日本の手でまかなうということは、今の情勢からして私は絶対に不可能であらう、残念がら不可能である。その日の一日も早く来らんことをこいねがうわけでありますが、現実の問題からいたしましてそう参りません。従いまして、日本では可能の範囲においてわれわれは自衛力を漸増して行こう。そこでまず第一に、二十九年度においてはまあこれくらいが至当であろうというようなことで御審議を願つておるわけであります。われわれといたしましては、一日も早く的確なる判断に基いて、これを研究して、でき得る部分は国民にも知つてもらいたいと考えておりますが、なかなかこれは容易ではないということを御了承願いたいと思うのであります。
  20. 山本正一

    山本(正)委員 その点はそれでよろしいのでありますが、原子兵器発達によつて、その威力は非常に恐るべきものでありまして、現実にわれわれは、さきのビキニ環礁原子力実験の結果に徴しても、これを身近に痛感しておるわけなんであります。そこでわが国が別有するところのこの自衛勢力、これに増勢を加えて、この案による自衛隊が完成したといたしましても、この恐るべき原子力の前には現実にはたわいないものと思うのであります。そこで国民の一部の間には、そういう世界情勢の中におきまして、この程度自衛隊を持つということは何ら実際上の役に立たぬ。むしろそういうものは持たぬ方がいいではないかというふうな議論のあることは、長官承知通りであると思う。われわれは必ずしもその意見に賛同するものでないこともまた明らかでありまするが、ともかくこの際この自衛隊を完成させようというところの長官の信念をこの際明らかにしていただいて、かかる誤解に対して答えておいていただきたいと思うのであります。
  21. 木村篤太郎

    木村国務大臣 申すまでもなく、この原子兵器発達が最近非常に進歩して参りまして、ビキニ環礁におけるあの水素爆弾の爆発の偉大なる効力については、われわれは一驚を喫したのであります。かような原子爆弾が用いられるということになりますると、これは最後であります。かようなことはあつては相ならぬ。私は人類の滅亡を来すのじやないかとひそかに憂えておるのであります。しかし原子兵器のかような発達によつて、もうすでにいわゆる第三次世界戦争なんというものはあり得ないのだというようなことになつて世界が平和の一路をたどるということに相なれば、これまた非常に幸いであると私は考えておりますが、申すまでもなく、ソビエトにおいてもこれを研究されておるということをわれわれは知つておるわけでありますので、お互いにかような兵器を使うということはあつてはならぬ。しかしその過程において、どういうことが一体あり得るかということをわれわれは十分に承知しておかなければならない。私は、原子兵器というものは事実上絶対に使い得ないものだと考えております。あればもう世界は破滅になる。そこでそれまでの過程においていろいろないざこざがあるのであります。現実の問題として不幸にしてあります。そこで私、この前の委員会でも申し上げたのでありますが、先月の二日において、イギリスの議会で新国防予算法案が通過いたしました。その際にチヤーチル首相が申したことでありますが、世界はただいまとにかく表面は平和の状態をうまく進むやに見受けられるが、しかしその間において、イギリスとしては少くともこの国防力を漸増して行かなくちやいかぬ。われわれは国内の平和及び不当な外部からの侵略からできる限りイギリスを守るために今から準備しなくちやいかぬといつてあの予算が通過したのであります。かようなぐあいで、これはイギリスといわず、いずれの国においても、原子兵器ができたからといつて国防をゆるがせにする国は、政府一つもありません。これは、原子兵器ができて世界各国国民が全部もう軍備をやめようじやないかという段階に行けばまことに仕合せである。むしろ逆であります。これは何を物語るか、ここへわれわれは十分に考慮を払わなければならぬ。日本におきましても、不当な外部からの侵略に対しては、日本の国力に相当したやはり漸増計画を立てて、これを防止し得るだけの手当をつくつておかないと、私は将来におそれを残すのではないか、こう考える次第であります。国民原子兵器ができたからといつて国防をする必要はないなんということは、これは私は大きな誤つた考え方じやないか、こう考えております。
  22. 山本正一

    山本(正)委員 技術研究所予算構成があるのでありますが、この研究所においては、原子力関係についてその技術もしくは対策等研究される方針でありますか。
  23. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。技術研究所では、まだ原子兵器についての研究をやるということは思つておりません。今の段階におきましては、私は一日も早くむしろ電波兵器研究すべきである、こういうことにおいて電波兵器研究はすべきであるという指示は与えております。これについては、相当所員も関心を持ちまして今後やることだろうと考えております。原子兵器については考えておりません。
  24. 山本正一

    山本(正)委員 現在日本では、外国潜水艦による侵略脅威を受けておりますか、お伺いいたします。
  25. 木村篤太郎

    木村国務大臣 外国からの潜水艦脅威、また脅威と申しましようか、その段階には行つていないと思います。ソビエトにおいては相当潜水艦を持つておることは御存じの通りであります。ウラジオあたりにおきましても、少からぬ数の潜水艦が来ておるということはわれわれはほのかに聞いております。
  26. 山本正一

    山本(正)委員 本年度の保安庁予算構成を見ますると、三百トン駆潜艇八隻の建造計画が出ておるのであります。今お話のごとく、現実外国潜水艦による侵略脅威を受けておらぬとするならば、むしろ他の警戒本位の哨海艇の方にこれらの建造の重点が指向されなければならぬと私は思うのです。予算構成の上に現われておる哨海艇は、きわめて貧弱なる小型のものがわずかに三隻を計画されておる。今お話の実情と計画の内容が少し違うのじやないかと思うのですが、御見解はいかがですか。
  27. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私の申し上げたのは、現在直接の脅威は受けていない。万一の場合においてどうすべきかということに思いをいたしまするとき、あらかじめ相当数のさような船を持つ必要がある。ことに私は常に申し上げるのでありますが、船ができても、これをふだんから動かせる人を養成しなければ一朝事あつたときに間に合わぬ。船よりもむしろ人員の養成というものが私は先じやないかと思う。しかし人員を養成するのには、やはりそれを使うべきものがなければならぬのであります。そこでわれわれとしては、最小限度の今お話のような船を持つておる必要がある、こう考えておる次第であります。もちろん哨戒艇その他についても力を入れなければならぬと思いますが、哨戒艇については、従来の老朽船とまでは行かなくても、もう古い船でありますが、相当数つております。これに少しばかりの新しい船をあわせてやれば、この方面は事足りるのではないか、こう考えております。
  28. 山本正一

    山本(正)委員 自衛隊の性質について伺いたいのでありますが、この案には保安隊、海上警備隊というものに新たに空軍の力を加えて、そうして自衛隊構成しようということになつておる。この案によつてつくられた自衛隊というものは、そういうことによつて性格に変化があるのでありますか、あるいは従来のごとき性格で、変化はないということになるか、その点をお伺いいたします。
  29. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。御承知通り現在の保安隊は、わが国の国内の平和と秩序を維持し、人命、財産を擁護するために必要やむを得ざる場合に出動する部隊であります。主として国内における事変に対処すべきことを目的としておるのであります。今度御審議を願いまする自衛隊につきましては、主目的は外部からの不当な侵略に対処すると同時に、今申しました国内の秩序を保つためにもこれを使い得る、こういうことになつておりますから、性格の変更と申していいか、これは言葉のあやでございまするが、結局大きな目的がそこに附加されたわけであります。しかしながら国内の秩序のために警察力をもつてしてはとうてい対処し得ないような場合にも出動し得ることは、従前の通りであります。
  30. 山本正一

    山本(正)委員 進んでその点について明瞭にいたしたいのでありますが、日本の現行憲法にいう戦力というものについて、戦力と戦力でないものとを区別いたしますと、戦力でないものは、警察力以外にはないという見解が定説のようであります。そういたしますと、今の長官の御見解による自衛隊の性格は、戦力でないということは従来しばしば伺つておるところでありますが、この分類からいたしますると、警察力であるという御見解になるのでありますか、伺つておきたいと思います。
  31. 木村篤太郎

    木村国務大臣 警察力であるかどうか、私が今申し上げたように、国内の平和と秩序を保つために行動するものが警察である、こういうことに限定をするなれば、今度の自衛隊というものは、警察のわくをすでに出ております。申すまでもなく、外部からの不当な侵略に対して対処し得るわけでありますから、そういうことに警察ということを解すれば、そのわくは出ておると考えるわけであります。
  32. 山本正一

    山本(正)委員 そういたしますると、自衛隊は部隊という名称をもつていたしますか、軍隊という名称を用いてさしつかえございませんか、どういうふうに理解するか、一応その点を伺つておきたいと思います。
  33. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。この点につきましては、しばしば申し上げますように、一体軍隊とは何ぞやという定義からこれを解決して行かなければならぬ。私の知る限りにおいて、軍隊とは何ぞやということをはつきり定義を下した学者もいません。そこで外部からの侵略に対して対処し得る部隊を軍隊なりと称するということであれば、まさしくこれは軍隊といつてよかろうと考えております。しかしわれわれ普通のいわゆる常識的の考えにおきましては、軍隊といえばいわゆる交戦国として認められておる交戦権、これらも持つておるものをさすのだ、こういうことになりますれば、これは憲法第九条第二項において、さような権利は日本は持つことをやめておるのでありますから、正確な、厳格な意味における軍隊ということはいえないかもわかりません。しかし繰返して申すようでありますが、外部からの侵略に対して対処し得るものが軍隊であるのだ、こういうことであれば、自衛隊もまさしく軍隊であると見てよかろうと思います。これは言葉の使い方であります。しかしわれわれは自衛隊と称して行くことが妥当なり、こう考えております。
  34. 山本正一

    山本(正)委員 先ほども申し上げますように、戦力としからざるものとの区別においては、警察が対象になる以外には他のものがないということが定説のようになつておりますが、長官は率直に申して、この自衛隊の力というものはこの定説からはずれて、軍隊でも戦力でもない、警察力でもない、その他の第三勢力として自衛隊を扱つておられるのであるか、その点を念のために確かめておきたい。
  35. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は言葉にとらわれる必要はないと思います。今あなたが仰せになりました戦力にあらざるものは警察であるということは、私はそう解釈しない。これは議論の相違でありますが、戦力というものが一定の定義があることは、私が申し上げた通りであります。少くともわれわれといたしましては、独立国家たる以上は自衛権があるのだ、その自衛権の裏づけである自衛力を今度の自衛隊が持ち得るのだ、こういうことであります。それを軍隊と称するかどうか、今申し上げた通り外部からの侵略に対処するものが軍隊なりということであれば、軍隊といつてよろしい。しかし厳格な意味において、また軍隊ということはどうかと思うから自衛隊だ、こう申すわけであります。
  36. 山本正一

    山本(正)委員 このことは両案を審議する上において非常に重要な性質を持つておる事柄でありますから、ただいまの長官の御説明ではなかなかこれは釈然としないだろうと思うわけであります。私はこの案に示されております自衛隊の性格というものは、従前のものから比べまして相当現実的に本質的の変革がなければならぬと思うわけであります。それはどういうことかと申しますと、従来の保安隊警備隊というものを基礎にこの自衛隊というものを考えてみますると、大体三つの重要なる相違点があると思うのであります。  その第一点は、前者は間接侵略に対処するところの警察的な任務を持つておつたものでありまするが、この自衛隊は、この案に明らかなように、直接侵略に対抗するところの純粋なる軍事的任務を加えておるという違いがまず第一にあるのであります。  第二には、日米安全保障条約の中においての日本防衛力を増強するということは、単にアメリカが期待するという内容のものでありますが、すでにMSAの協定は昨日衆議院で可決されており、おそらくこれは近く批准されると思うのでありますが、このMSAの協定によれば、この防衛力増強というものの期待が条約によるところの日本の義務になつている。期待というものはわが国の任意的な事項である。しかるにMSAの協定によるところのものは、条約上の義務に性質がかわつているのであります。  なお第三の問題といたしましては、安全保障条約で予想いたしましたものは、日本の地域における侵略、または脅威に対処するということでありまして、従つてこの場合、海外出兵ということはあり得ないのであります。しかるにMSAの協定によるところの条約上の義務は、条約の明文の示します通り日本は自国の防衛だけではなくして、自由諸国の集団安全保障の構成にも参加しなければならない義務を負つているのであります。そこで当然起きて来る問題は、海外出兵の要素を含んでいるということであります。これほど重大な幾つかの事柄について本質上の変化を持つている自衛隊でありますから、これに対してもなおかつ従来の保安隊または海上警備隊に対する性格をそのまま当てはめて、依然としてこれは軍隊ではないという今の御説明では、この委員会としてはどうも少し釈然といたしがたいところがあるのではないか。もう少しここに説明のくふうと申しますか、何か別の角度から解明をなされんければ、了解するのに困難ではないかと思うのでありますが、長官の御所見を伺いたいのであります。
  37. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまの、MSA協定によつて海外派兵の義務を負つているのではないか、そうすると日本自衛隊の性格が非常にかわるのではないか、いわゆる軍隊的性格を持つのではないかという御議論でありますが、私はMSA協定において海外派兵の義務は負つているものではないと確信いたしております。またわれわれが海外に向いて派兵するようなことは、法規の建前からもできぬ。御承知のように、MSA協定は日本の憲法のわく内において日本が義務を負担している。それで今度御審議を願つております自衛隊法におきましても、これは外部からの侵略に対処するということを主目的にいたしているのであります。これに一つ限界があるわけであります。他国のために海外派兵をするというようなことは、何ら義務を負つているわけでもなし、また自衛隊法におきましても、さようなことは相ならぬことになつているわけであります。これがために性格が一変するのだということは毛頭考えておりません。
  38. 山本正一

    山本(正)委員 長官の御見解をなお確かめたいのでありますが、MSAの協定に基くところの日本の義務の中に、自由諸国の安全保障の機構に日本が参加しなければならない義務があるということは、長官はお認めになつているのでございましようか、その点を伺つておきたい。
  39. 木村篤太郎

    木村国務大臣 将来はそうなることと私は考えております。
  40. 山本正一

    山本(正)委員 将来のこともさりながら、実は今伺つておきたいのは、現実にMSAの協定が効力を発生いたしましたならば、効力発生と同時に日本が負うべき義務として伺つておるのであります。その義務の中には、日本の自国の防衛力増強だけではなくして、当然に自由諸国の集団安全保障の機構の中に参加して行かなければならない、その義務を含んでおるということを長官はお認めになるかどうかをお伺いしたいのであります。
  41. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは要するに国連参加の問題であると思います。しかし国連参加については、まだ現実の問題になつておりませんから、将来の問題であろうと私は考えております。
  42. 山本正一

    山本(正)委員 昨年六月日米両国の間に往復された文書は、長官も御存じと思いますが、この文書の内容は、日本はもし他日アメリカのMSA法に基く援助を受けた場合、わが国の防衛力を増強して、国内の治安を確保して、防衛の目的を達すればそれでよいのであるか、こういうアメリカヘの照会に対するアメリカの回答は、それだけではない、自由諸国の集団安全保障に参加すべきである、こういう回答が来ておりますことも明らかでありますし、その回答の精神が、今度政府の調印をせられたMSAの協定には明文として示されておるのであります。将来の問題でなくして、すでに日本がこのMSAの援助を受けました以上は、その条約上の義務として、自国の防衛だけではない、自由諸国の集団安全保障の機構にも当然参加しなければならない義務があるということは、現実の問題として明瞭であろうと思うのでありますが、長官の御所見を伺つておきたいのであります。
  43. 木村篤太郎

    木村国務大臣 集団安全保障機構に参加するというのはやはり国連参加である、こう私は見ておるのであります。外務省はどういう見解をとつておるかわかりません。これは私の私見でありますが、いまだ国連に参加していない以上は、その問題は生ずることはありません。しかもいかなることがありましても、日本は憲法のわく内においてこれをやるべきであるのでありますから、そのわくを越えてわれわれが海外出兵をするというようなことは、あるべきはずはないと了解しております。
  44. 山本正一

    山本(正)委員 MSAの義務をわが国の憲法のわくの中で履行するということ、及びわが国の憲法の解釈は、わが国のなす解釈に従うものであるということは、MSA協定に明らかに示されておる通りでございますが、その事柄と、今申すところの集団安全保障の機構に参加しなければならないという義務との間に、現実上のずれがありはせぬかと思いますので、その点について長官の所見を伺つておきたいと思うておるのであります。
  45. 木村篤太郎

    木村国務大臣 かりに将来いずれの時期かに国連に参加いたす場合においてどうあるべきかということになりますと、これとてもわれわれは日本の憲法の許されたるわく内においてその義務を履行すべきであろう、こう考えております。
  46. 山本正一

    山本(正)委員 もう少し質疑したい点もあるのでありますが、今日は一応この程度にとどめます。  次は、自衛隊員の教育、訓練に関して少しお尋ねしたいのであります。隊員及び職員に対する一般的教育方針というものはすでにあり、将来行うべきものについてもお持ちのことと思いますが、その一般的教育方針について一応伺つておきたいと思います。
  47. 木村篤太郎

    木村国務大臣 一般教育方針といたしましては、まず第一に、いわゆる自衛隊員たることの自覚を持たせることが必要であると考えております。これは精神的面であります。何といたしましても、自衛隊員おのおのが進んで日本自衛力の中心であるべきである、日本が万一外部からの不当な侵略を受けた場合には祖国を守るのだ、三千年来引継いだわれわれの祖国を守るとうとき任務についているのだという自覚をさせることが、第一の任務であろうと考えております。これなくしては、いかに優秀なる武器を持たせてもだめであります。まずもつて隊員各自に、このとうとき日本の国土を将来不当に侵略されるような場合においては、敢然としてこれに立ち向つて祖国を守るのだという自覚をさせることに重点を置いてやつております。  次には、自衛隊員は国民の信頼を得なければならぬ、国民と遊離してはいかぬ、国民の支持なくしてはいけないのである、各自国民に信頼されるようなものになれ、それにはどうしても一個の社会人としても教養を積んで、なるほど自衛隊員であるという尊敬をされるような人物たれ、これにはふだんから努力しなければいかぬということを第二に置いております。  第三には、訓練をしつかりやれ、訓練の上達なくして祖国は防衛できないのだということで、訓練に重点を置いております。  第四には、友愛の精神、お互いに手をとり合つて日本の国土を防衛しようじやないか、これは私は一番必要なことであろうと思います。お互いに助け合つて行く、隊員は友愛の精神を涵養しろ、これは地についた教育をしろということになります。  第五には、いわゆる上下一致、上の者は下の者をかわいがつてやれ、下の者は上の者を尊敬しろ、そして一糸乱れず統制をとつて行こうじやないか、これに重点を置いて今教育をやつておるわけであります。
  48. 山本正一

    山本(正)委員 伺つたところの一般的教育方針は、非常に意を強くするに足るものを覚えるのでありますが、しかし昨年ははなはだ遺憾なことに、保安庁内に相次いで汚職事実が出たのであります。このことは何か従来の教育の基本方針に重大な欠陥があつたのじやないかと私ども思われるのであります。ここで長官に伺つておきたいと思いますことは、この相次いで起きた汚職事件の個々のケースについて、よつて来る根源が何であるかということを糾明されたのであるかどうか、糾明をされたその根源に対して将来の発生を防止するためにどのような改善の処置を講ぜられたのか、将来のためにこの点は一応承つておきたいと思います。
  49. 木村篤太郎

    木村国務大臣 抑せになりました旧冬保安隊の汚職事件、まことに遺憾であります。まことに申訳ありません。しかし、この原因がどこにあるかということを糾明いたしますと、まず第一に申さなくちやならぬことは、いろいろの人が志願をしてやつて来た点であります。ことに私は申し上げたいのは、警察予備隊時代から——警察予備隊が発足したのは二十五年であります。まだようやく四年ばかりしかたつておりません。この間にいろんな人が入つておりますので、教育の不十分な点があつたことも無視できません。御承知通り学校におきましてもどこにおきましても、伝統ということが非常に必要であります。伝統がないところにあつては、とかくいろんな事件が起る。ところが今申し上げました通り、警察予備隊発足が二十五年、まだわずかに四年一箇月しかたつておりません。伝統も何もないのでありまして、われわれはりつぱな伝統をつくり上げたいということで、今一生懸命やつておる次第でありますが、そういうようなことに非常に原因があると私は考えております。また上官の命令が下の方に十分に流れていなかつた。これを指揮する上官もよくなかつた者があつた。率直に認めます。そういうところに原因があるのであります。まことに遺憾でありまするが、今後かようなことのないように十分に力を注いで行きたい、こう考えております。  なおこの機会に汚職事件の処置について申し上げます。この保安庁部内における汚職事件がたまたま問題になりまして、御承知通りそれについては、われわれは十分今山本委員から申されました原因、それから将来どうするかということについていろいろ研究いたしました。その処置といたしましては、今申し上げまするが、将来は長官直属の監察員制度を設けまして十分監督をして行きたい、こう考えております。  なおその処置について申し上げたいと思います。保安庁といたしましては、最近かかる事件の頻発を見るに至りましたことは、はなはだ遺憾とするところでありまして、今後かかる不正事件の絶滅を期するために、昭和二十八年十二月十六日長官通牒をもつて、隷下に対し綱紀の粛正について厳達いたしました。保安隊及び警備隊においてはその指示に従いまして、ただちに具体的万策を検討しそれぞれ必要なる処置を実施いたしております。すなわち保安隊におきましては、その方策の一環として、本年一月から三月までの間を全保安隊の服務、規律刷新期間とし、服務の実施指導や精神要素の涵養等につき手段を講じ、また同期間中全保安隊の検閲を実施する等、綱紀の粛正、規律の刷新について格段の努力をいたしております。また警備隊におきましても、保安隊と同様各部隊の検閲等を実施いたしました。  次におもなる事件の処置について申し上げます。  まず第一に、練馬部隊の炊事員たる士補以下十数名が、昨年四月上旬から十一月上旬に至る間、糧米倉庫から前後十九回にわたり糧米一石八斗余を窃取し、部外者に売却した事件につきましては、七名を免職とし、それぞれ検事局へ送りましたほか、七名を減給、一名を戒告処分にいたしました。また前記事件を捜査中、別に契約、調達、糧食の関係者数名が業者から饗応を受け、あるいは収賄をなした事件が判明いたしましたので、免職六名、うち三名は検事局へ送りました。減給二名、戒告一名、訓戒三名の処分をいたしました。本件についての駐屯地部隊長等の監督責任の追究は、減給二名、戒告四名となつております。  第二に、豊島分屯隊の炊事員及び糧米倉庫係員五名が、一昨年十二月より昨年十二月に至る間、操縦手六名と共謀し、前後三十二回にわたり糧米約四石八斗を窃取し不正処分した事件につきましては、十名を免職とし、そのうち九名を検事局へ送りましたほか、四名を減給処分にしました。本件の責任処分といたしましては、分屯隊長以下戒告三省、訓戒一名となつております。なお当時の第一管区総監は、前記の練馬及び豊島事件の監督責任を痛感し、昨年末退官いたしました。  第三に、立川部隊の一士補が他の隊員二名と共謀して、昨年十二月十七日及び本年一月二日の二回にわたり、部隊内の倉庫より通信用の銅引き銅線約百貫を窃取し、部外者に売却せんとした事件につきましては、前記三名を懲戒免職に付するとともに検事局へ送り、その責任処分として四名を減給、三名を戒告、三名を訓戒に付しました。  第四に、久里浜の総隊学校の事件につきましては、昨年十二月十七日の内閣委員会における辻委員質問事項につきまして、具体的に調査いたしました。その結果浜名前校長につきましては、刑事上の責任を問うがごとき事実は見当らなかつたのでありますが、浜名君はつとに部下統率上の責任を痛感して退職の申出がありまして、二十九日付をもつてこれを発令いたしました。  以上をもちまして、汚職事件に対するその後の処置の状況を御説明申し上げた次第であります。
  50. 山本正一

    山本(正)委員 二十九年度の自衛隊の増員は、自衛官が三万一千七百九十二名、職員が九千五百九十四名ということになつているのでありますが、きわめて短期間にそれだけ大量の人員をふやすということは実際上困難が伴いはせぬかと思うのであります。時間の関係で質問項目をあわせてここに伺いますが、かように短期間に大量の充員計画をするということになりますと、自然にこの募集に応ずる志願者の質が低下し、現在隊員の体格基準というものは、以前に比べて相当低下していると思われるのに、この本年度の大量増員をしいて行います場合は、この体格基準というものはいよいよ低下するであろうことはもちろんでありますが、さらにその人の知性であるとか、技能であるとか、思想の調査であるとかいうようなものが自然おろそかになり、しかもこれを収容した後の教育方面につきましても、消化不良を来すおそれはなかろうかということを憂うるのであります。簡単でけつこうでございますが、それらに対する御方針を承つておきたいと思います。
  51. 木村篤太郎

    木村国務大臣 増員方に対しましての応募状況について、さような大量に対して応募者が相当数があるかどうか、少ければその間に不適格者が出て来るのではないかという御質問でありますが、ごもつともな御質問であります。そこでわれわれも、その点について非常に考慮払つておるのであります。と申しますのは、本年について除隊者が相当数出て来はしないか、それをカバーして行かなければならぬ。それとまた増員分と、こう二つになるのでありますから、相当数募集しなくちやならぬ。そこにわれわれは大きな関心を寄せておつたのであります。しかし第一点の、本年度退職者がどれくらいあるかというおよその見通しということでありまするが、ただいまのところにおいて、われわれの想像しておつたよりもはるかに退職者が少いということ、これにおいてよほど本年度の応募に好影響を与える、こう考えております。それと新たに入つて来る志願者はどうであろうか、ただいま予測しておるところでありますと、相当数応募者があるんじやないか、こう考えております。ことに九州地方においては、非常な人気と申しますか、ぜひとも保安隊に入りたいという者が出て来ておるようであります。各地からの情報によりますと、今度の増員に対しての募集も、さまで困難はなかろうと考えております。  体力その他の問題につきましては、われわれは非常に注意を払つておりまして、幸い、多少前の軍隊のときよりも体格が悪かつたものの、入りまして後において非常に伸び伸びとやつておりますから、体格も非常にりつぱなものになつておりますし、まことに私はその点うれしく思つております。
  52. 山本正一

    山本(正)委員 今年度の船舶の方ですが、就航または完成する船舶は十六隻、これが教育訓練のために一年間に約一箇月の運航計画である。他日アメリカから供与を受ける船舶については一箇年約三箇月間の運航計画というものに予算処置はなつておるのでありますが、こういう一箇月もしくは三箇月程度の運航では、教育の上にも、訓練の上にも、あまりに計画が貧弱過ぎはせぬかと思うのでありますが、あえてこういう貧弱な運航計画を立てたということは、人員の都合によるものであるのか、あるいは予算の都合によるものであるのか、伺いたいのであります。
  53. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御疑問ごもつともであります。この訓練期間をそう縮めたわけではないのであります。これは御承知通り、船はつくつてから動く、アメリカからもらつてから動くのであります。それがずれますから、本年度においてはそれくらいしか訓練期間がないということであります。つくり上つた以上は、まれに見る猛烈な訓練をいたします。
  54. 山本正一

    山本(正)委員 世上の一部には、援助を受けた兵器の性能というものが非常に低いものである。極端に言う者は、おそらくこれはアメリカの廃兵器を使うものであるというようなことを申す向きもあるのでありまして、国民といたしましては、現在の保安隊警備隊の持つておる兵器の性能というものについて、多少疑いがあると思うのであります。はたして言われるごときものであるとは私ども思いませんが、試みに有効なる使用年限というものを一〇〇と仮定して、現に供与を受けておる兵器の性能というものは、その有効使用期間一〇〇に対してどの程度まで使い古されたものであるかということを一応伺つておきたいのであります。
  55. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまアメリカから貸与を受けております武器でありますが、御承知通り相当古いものもあります。また日本人に適せないものもあるのであります。そこで今度MSA援助におきましてもらい受けまする武器につきましては、さようなことのないように十分にアメリカとの間に交渉いたしまして、万違算ないようにいたしたいと思います。
  56. 稻村順三

    稻村委員長 木村保安庁長官は渉外事務のため退出される必要がありますので、質疑を次会にまわすこととし、本日はこの程度にいたし、散会いたします。  なお次会は、来る四月五日月曜日午後一時より開会いたします。     午後零時十五分散会