○高瀬委員 ただいまの辻君の質問に関連いたしまして、私は一言所懐を述べたいと思うのであります。なるほど李ラインにおいて、フリゲート艦でありますか、巡視船でありますか知りませんが、それが何ら抵抗もせずに韓国の方に拿捕され、あるいは尋問を受けてほうぼうの体で帰
つて来たということは、われわれ敗戦国といえども
日本人としては非常に耐えがたいことです。これは一応私は
国民的感情として十分わかりますし、私も辻君の先ほどの所見に対しては何も反対する
理由はない。しかしながら十六国会からすでに問題にな
つておりますように、十七、十八と臨時国会がありましても、あの李ラインの撤廃すらいまだわが国の
政府において主張できない。いまだ未解決の状態にある。岡崎外務大臣は、あの問題についてはぜひとも何かの具体的の解決の
方法があるかということを野党から聞いたときに、何とかしてアメリカの圧力ででもこれを頼んで、あの李ラインの撤廃を頼むなどという寝ぼけたようなことを
答弁しておる。その後一体どういうふうにするかと思
つてわれわれが見ておると、少しも何もや
つておらない。だからこういう問題が起るのは当然だと私は思う。これはまことに
政府の怠慢であ
つて、われわれとしては根本的にあの李ラインの撤廃ということを
政府側において善処して解決しない限り、今後幾らだ
つてああいう問題が起る。そのたびに、これは多少
日本国民の生命、財産を危険にしても、断固武力をも
つて抗争するというようなことをや
つておつたのでは、きりがないと思う。それからいわんや辻君が
ちようど敗戦前に陸軍の参謀としてや
つておられたような思想で、敗戦後の
日本の国力の衰えた今日、いたずらに武力といいますか、一種の実力行為によ
つてこれらの国際問題を解決するということに相なりますと、
日本の国際的
立場はますます妙なことに相なり、それから国内はいたずらに実力行為というものに対する何というか、
国民の眠つた感情がわき起
つて、非常にその点問題であろう。私自身は改進党の一員として、この自衛軍の創設について非常に熱意を示している一員でありますけれども、いたずらにこれを武力の強化によ
つて、たとえば対馬を守る、あるいは武力の強化によ
つてああいう問題を直接行動に出て解決するというふうに行くのには、前提条件として私は
政府の断固たる——たとえば李ラインに対する解決の問題、あるいはMSAの問題に関連しても、その
内閣委員会で何ら
保安庁長官からその後の経過の
報告も受けていなければ、一体最近二週間くらいあとでMSAの締結問題について
日本から頼んだ問題が、
政府とアメリカ側において締結されるとかいうことを聞いておるけれども、われわれは
一つも知らない。それから先ほども
前田政務次官に聞けば、改進党と自由党と防衛折衝をや
つておる。あれがきまらなければ、なかなか案もできない。しかしあんなものは
政党間の相談であ
つて、
保安庁長官としては、当然自己の権威の上に立
つてこの
内閣委員会のわれわれに、
日本の防衛方式、あるいはそういう問題をちやんと話されるべき
立場におありになるあなたが、依然として何が何だかわからない。だから目前に起きたところの具体的事象をとらえて論議すれば、なるほど血沸き肉おどることにも相なりましよう。しかし私は辻君と多少
立場を異にして、山口
海上保安庁長官のとつた態度も私は了承する。それから対馬の現状についても、木村
長官もごらんに
なつたが、おそらくそれは確かに涙なくして見られないでしよう。私は沖繩にも行
つて見ました。それから奄美大島にも行
つて見ました。しかしながら、やはりこれは戦争前のような考えで、いきなりすべてを武力をも
つて解決するというような
方法でや
つて行くと、
日本のはなはだ衰えたる国力、現状においては憂うべき結果になる。だからこの点については根本的に李ラインの解決を
政府において努力されると同時に、木村
保安庁長官もいわゆる直接侵略に対するところの最小限度の
日本の国力に即応する自衛軍の創設ということについて早く具体案を出して邁進されたがいいじやありませんか。私はその点についていささか所感がありますから、この辻君の所論はごもつともでありますけれども、もう少しわれわれは内に深く蔵して考える必要があると思いましたので、一言関連して所懐を述べた次第であります。