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1953-12-17 第19回国会 衆議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月十七日(木曜日)     午前十一時四分開議  出席委員    委員長 稻村 順三君    理事 大村 清一君 理事 平井 義一君    理事 八木 一郎君 理事 山本 正一君    理事 細迫 兼光君       江藤 夏雄君    永田 良吉君       長野 長廣君    船田  中君       山崎  巖君    粟山  博君       下川儀太郎君    冨吉 榮二君       辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         保安政務次官  前田 正男君         保安庁次長   増原 恵吉君  委員外出席者         保安庁長 上村健太郎君         官官房長         保安庁人         事局長   加藤 陽三君         保安庁第一幕僚         監部第幕僚長 林  敬三君         保安庁第一幕僚         監部第管区総         監       吉田 忠一君         保安庁第一幕僚         監部第管区副         総監練馬駐屯地         部隊長     池野 清躬君         専  門  員 龜卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  保安隊及び警備隊に関する件     ―――――――――――――
  2. 稻村順三

    稻村委員長 これより内閣委員会を開きます。  本日は保安隊及び警備隊に関する件について調査を進めます。保安隊第一管区総監吉田忠一君、同副総監池野清躬君、第一幕僚長林敬三君にもおいで願い、説明を聞くことにいたしたいと存じますので御了承願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 稻村順三

    稻村委員長 ではさよういたします。質疑の通告があります。これを許します。平井義一君。
  4. 平井義一

    平井委員 木村保安庁長官次長人事局長に御質問申し上げます。実は保安隊の前身である警察予備隊のときにすでに不祥事件が起り、さきにまた厚生課長などがひつぱられて一大汚職事件を起しておるのであります。保安隊はどういう立場ででき上つたものであるか、御承知のごとく各政党が論争を続けながら保安という重大性にかんがみてでき上つたのが今日の保安隊であり、国民はこの保安隊に大きな関心を持つておるのであります。また今日日本がこの保安隊増強するかいなか、世界の紛争のまつただ中に立つわが日本が、実は関頭に立つておるのであります。これをどう切り抜けるかという問題は、いかなる問題よりも大きく国民関心を持つておるのであります。この時期においてさき練馬保安隊不祥事件が起つておる。私は先般木村長官に、保安隊員は少くとも地方の青年の模範でなければならぬ、模範的行動をやらなければならぬ、まず量より質であるという質問をし、長官もまたこれにその通りであると答えられておるのであります。この保安隊というものを一体隊員並びに幹部はどう考えておるか。貴重な国費を投じて保安の任に当つてもらつておるのでありましてわれわれもいる経費あるいは必要な予算はあらゆる苦難を越えて同意し、賛成をいたしておるのであります。今日重ね重ねの不祥事件に対して、保安隊に対する監視はどういうふうにいたしておるか、もし木村長官が、物の買入れはおれは知らぬ、増原次長がやつておるというならば、次長から、どういうふうに監督をし、どういうふうに監視をしておるということをお聞きしたいと思うのであります。
  5. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまお示しになりました松井厚生課長不祥事件練馬部隊不祥事件、まことに遺憾千万で、私は申訳ないと存じております。申すまでもなく私は保安隊警備隊人間修行の道場たれという気持でもつて隊員諸君自省自粛を常に願つておるのであります。大多数の隊員はよくわれわれの意をくんでくれまして厳粛にやつておるのでありますが、たまたまかような不祥事件を出しまして、国民に対してはもちろんのこと、他の一般隊員に対してもまことに申訳ないと考えております。松井厚生課長事件につきましては、ただいま公正なる司直の手によつてこれを取調べておるのであります。いずれその全貌は明らかになることと考えております。練馬部隊事件につきましては、ただいまこれまた部内においてその事実の全貌十分取調べまして、これを司法処分に付すべきものは検察庁の手によつて十分なる取調べ願つて、その結果これまた全貌国民の前に明らかになることを考えております。その事件の発端につきましては後刻十分御説明申し上げることといたしまして、要は隊員教育のその部分について至らなかつたことについては、私は率直にこれを認めざるを得ないと考えております。今後再びかような不始末がないように十分警戒することといたします。しかし、何分御承知通りに十幾万の隊員であります。この間に不祥事件の起ることも、一方から見れば、これまたある程度やむを得なかつたことかと考えております。しかしたとい一人にしろさような者が出ます以上は、ほかの隊員に対する気持の点においても、これはまことに遺憾であります。今後さようなことのないように、くれぐれも注意いたしたい、こう考えております。ただこの際申し上げたいのは国民気持でありまするが、幸いここに私はたまたま持つて来たのでありますが、数日前大阪の赤間知事、岐阜県の武藤知事から、いずれも派遣隊員に対して規律厳粛、その行動はきわめて適正敏活であるという賞讃の言葉、県民一同感謝しておるということを言つて参つております。これらの隊員規律厳正で、各府県の認識を非常に得たという点から考えて、これらの隊員に対しても、まことに私たちは申訳ないことと考えております。今後全力をあげまして再びかような不祥事件のないように十分の努力をいたしたいと考えております。何とぞ御了承をお願いいたしたいと思います。
  6. 平井義一

    平井委員 今後そういうことのないようにという気持はわかりますが、木村保安庁長官精神家である。しからば、どろぼうをやつた隊員だけを罰すれば、それで国民に対して済むと思うのかどうか、一般公務員と同じ立場をとる保安隊増強して行くというようなことを考えるならば、私は与党でありますけれども、今後の保安隊増強に対しては考慮を要すると考えております。そこで保安隊は真に国の安全を守るという気持がありますならば、隊員指導する幹部はこのまま放置していいかどうか、これを私はお伺いするのであります。先ほどの新聞紙に「集団で糧米盗み五十俵売り飛ばす」「関係者三十数名を処分することになつた関係者たちはこんどの事件につき「これはほんの氷山一角だ」ともらしており」また見出しをかえまして「黙認料とる悪徳幹部」と出ておる。しからば今度の三十数名の不祥事件者だけを処分してこの事件が済むかどうか。この点において、ほんとう国費を使つておる保安隊員は国のために働かねばならぬと思われる長官ならば、何とかこのままに済まして、今後またMSAの援助があるから増強するなどと言うても国民は乗りません。先般風水害で点数をかせいだことは知つておるが、これで何にもならなくなつた。いかなる感謝状が来ても、こういうことがあるならこれは問題にならない。人間はいいことを百回しても悪いことを二度すればだめです。そこで幹部に対していかなる考えをお持ちになつておるか。
  7. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま申し上げましたように、実際さような不正行為行つた者については十分の取調べをいたしまして司法処分に付すべきものは付します。これはおそらく検察庁で公正な処分があるものと考えております。そこで氷山一角云々という新聞記事がありましたが、これがはたして氷山一角であるかどうか、これについてはわれわれは今後十分の取調べをいたしたいと考えております。しかしただいまのところでは、他に波及することはない見通しを持つておりますが、十分その点については取調べたいと思います。そこでこれを指揮監督すべき者についての責任いかんという御質問でありますが、その点についても、私は十分取調べの上考慮いたしたい、こう考えております。
  8. 平井義一

    平井委員 今度は増原次長質問をいたします。私は二週間前と思いますが、本委員会で、厚生課長汚職事件を起しておる、これは私はとがめない、しかし今後再び保安隊不祥事件が起つたならば、あなたはおやめになるかということを聞いておる。そこでやめるやめぬは私は命令するわけには行かぬのでありますけれども、あなたは、あのときに何か今後そういうことをしてはならぬという指示を各部隊にしたか、物資買入れとか、その他の任についておる幹部に対して、何か指示をなさつたか、そのままにしておつたか、ひとつうそを言わぬで、ほんとうにお答えを願いたいと思います。
  9. 増原恵吉

    増原政府委員 この前御質問があつたことと関連をして、すぐに指示をしたというわけではありませんが、このたびの練馬部隊等事柄にも関連しまして、規律を厳正にし、国民信頼にこたえるべき旨の長官指示を出しております。特に御質問に応じて出したというわけには申し上げられないかと思います。
  10. 平井義一

    平井委員 あなたの今の御答弁は、指示をせぬでもわかつております。保安隊に志願をして、試験のときにそのくらいのことは試験官が言つておるはずです。厚生課長汚職事件について、こういうことを再びしないようにと、どうしてそれが指示できないか。しからばあなたは黙認したと私は言わざるを得ない。しこうしてこういう事件が起れば、これは辻さんがここにおられますが、昔ならおそらく師団長もやめ陸軍大臣もおそらくやめるでしよう。何もかもやめてしまうのですが、今日は敗戦後ですからそれは申しません。せめて第一監部ですか、この大将などは、北海道かどこかにしばらく行つて修養して来ることが私はほんとうに必要だと思う。これは真剣に申し上げる。こういうことではとても国民は納得しません。そこでこの事件全貌をよくお調べになり、結末がついたならば、いかなる形かにおいて現わさなければ、来るべき通常国会においてわれわれは保安隊の問題を論議できない。保安庁法の改正などは、私は与党でありますけれどもそう簡単にあなた方に同調はできない。そこでこの新聞を見ますならば、すでに処分をしておる。話は片づいておる。片づいておつて何ら責任者をどうするということもなければ、ただ悪いことをした者だけ処分すればいい、そういうことならば、今日失業者が多いから、上野の地下道あたりにおるところの食えない失業者保安隊に雇うてやつた方がいい。大体会社なんかに勤めておるようなつもりである。隊員が悪いのは、幹部精神がしつかりしておらぬからそうなる。幹部精神問題です。幹部がしつかりしておればこういうことはしません。白昼堂々と、この米のないときに、しかも風水害並びに冷害によつて米の非常にない、供出米を出し切らぬときに、隊員が門の外に米を投げ出して、門衛がこれを黙認して黙認料をもらう。それをいいことに使つたのならまだいいが、芸者買いなどに行つて浪費をしておる。よく考えてください。もし今日この師走に困つて食うに食われず、米を一升盗んでも懲役に行かなければならぬのです。保安隊なるがゆえに物資は幾らでも買い込んである。いらぬものを買い込んでおるかどうか知りません。こういううわさがある。それを隊員が五十俵も売り飛ばして飲んだ。こういうことで幹部が、もう少し緊張せぬで、しかたがありませんくらいのことでは済まされぬのです。そこでいずれあとから第一幕僚長あるいは第一管区長ですか、こういう人の説明を聞いた上で、さらに私は質問をしたいのですが、増原さんなどは特に考えなければならぬ。まして今後あなたがいかなる形かにおいて、この結末はこうしましたということを国民の前に表わさなければ、国民は納得しません。あなたが一番長い。警察予備隊からずつとおる。そのあなたがちやんとせねば、長官には一日米を何俵買うとか、どこからどう買いますということを報告するわけに行かぬ。おそらく私は長官は盲判だと思う。また判を押したかどうかもわからぬ。あなたのところでこれはすべてやつている。この点をあなたがほんとう考え精神を入れ直してやつてくれなければ、日本はつぶれますぞ。私は量より質だと思う。保安隊は今からやり直した方がいい。りつぱな保安隊につくり直してこそ、初めて国民の要望にこたえ、また各政党もそれならばよかろうということになる。こういうことをしているなら、反対するのはわかつている。防衛力がいるという者でもいらぬという。その点を十分考えていただきたい。今あなた方はいろいろな点において不自由であろう。また隊員も不自由でしようけれども、これを忍ぶところに保安隊生命がある。敗戦後の一般国民は、衣食の中に道ありと言つておるが、保安隊隊員はせめて道の中に衣食あり、まず道を求めることが保安隊員生命である。この非道な、米を売り飛ばすというようなことを簡単に考えられては困る。この点についてあなたの信念をひとつお聞かせを願いたい。
  11. 増原恵吉

    増原政府委員 警察予備隊以来、保安隊隊員教育訓練、特にその基盤をなしまする心構えの問題につきましては、長官訓示指示等に基きまして、第一幕僚長からもいろいろな形において指示訓示を出しております。私自身も部隊を視察に参りましたときは、長官訓示指示を体して話をして参つておるわけであります。隊員中心として心がくべきことは、国を愛し民族を愛する心持を基盤といたしまして、おのれをむなしゆうして職務に励精をするということを中心に、必要な事柄について私どもの信ずるところを訴えているのであります。隊員ともに練磨し、練成をして行くという建前で第一幕僚長以下管区総監がその指導に当つて努力して参つているわけであります。このたびの事件は目下関係者を厳重に取調べ、供述の十分に行き合わないところを整理いたしておりまして、まだ最後の段階に至つておらないと報告を聞いているのであります。大よその全貌というものは御説明できる程度に相なつているのであります。まことにこれは遺憾しごくのことであります。非違を犯しました者、これを監督をいたします者、いずれもまことに遺憾に考えているわけであります。この点は先ほど長官から申し述べましたように、よく徹底して適正に事実を取調べまして、漏れるところなく関係の者について全貌を明らかにいたしまして、これに応じて将来再びかようなことの起らないように十分適切な措置を長官にとつていただくように意見を申し述べることにしたいと思うのであります。こうした者は一人出ましても、もとより申訳の相立たないことであります。相当数の者がかような非違を犯しましたことは、まことに国民に対しても、また長官も申されましたように、私どもは大部分隊員というものはよくその任務を自覚をし、国民の負託にこたえて職務に邁進をしていると考えるのでありまして、この隊員たちにもまことに相済まぬことであると考えます。それぞれの制度をこうした機会にさらに十分検討をいたしまして、制度としての非違なからしめるようにもとよりこの際大いに検討をいたしたいと思います。また基本は管区総監以下の監督者が十分に部下の平素の心構えについて徹底をし、相ともに励んで国家治安維持の重きに当るという自覚を徹底せしめ、国を愛する念にこれを結集するということにあると考えますが、この点は制度としての調整の上に一人々々の隊員心構えの一層りつぱに固まつて行きますように、将来努力して行きたいと考えます。
  12. 平井義一

    平井委員 これは言うはやすし行うはがたしで、信念りつぱなものでありますが、いい指令ならば長官指令に基かぬでも、あなたが指令を出しても長官はやかましく言いません。悪いことをするなら別ですが、しつかりやれという指令ならば、一々長官指示を仰がぬでもあなたでできるんだ。悪い指令ならいざ知らず、いいことなら今後あなたでも人事局長でもいいから、どんどん指令を出して、りつぱな隊員をつくり上げて行くというような心構えになつていただかなければならぬと思つておるわけであります。またこの新聞を全面的に信頼するわけではありませんが、腐り切つた隊の空気、この中にはほとんどの幹部が書いてある。私はこれを全面的に信頼はしませんが、こういうことを新聞に書かれるということだけでも、保安隊は一体何をしているか。東京の人がこの新聞を見ればいなか行つてみな言います。お前たち保安隊をほめておるけれども、ろくなやつはおらぬぞ、こういうことになるならば、国家の重大問題であります。そこでよほど考えていただかなければならぬのであります。これ以上増原さんを責めたところで、切腹させるわけにも行かぬ。責任というものは自分がとるのであつて、私が言うわけに行かぬですから、これ以上は責めませんが、こういうような保安隊の状態においては、私はとても国家治安維持はできない。そこで長官に私はお願いする。ほんとう保安隊員というものは精神訓練がまず第一だ。極端な例でありますけれども、大東亜戦争侵略戦争と銘を打たれた。しかし日清日露戦争侵略戦争ではなかつた。そこで日清日露に参加した老兵でも、この保安隊に入れて、精神訓練をさせるというくらいな気持は、木村長官にないかどうか、これをひとつお伺いしたい。
  13. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまお説の通り精神訓練というようなものは、われわれといたしても重要視しておるのであります。そこで保安隊におきましても、相当数経験者に来てもらつて、そうしてその方面の事柄について十分検討し、隊員指導の徹底するように、着々機構上やつておる次第であります。どういう人たちに来ていただいてやるかということにつきましても、あらゆる面から考えて適当な人を考慮して、着々その方法について手をつけておる次第でございます。さよう御了承願います。
  14. 平井義一

    平井委員 最後にもう一点要望しておきます。もう済んだかどうか知りませんが、目下保安隊員を募集している。この試験においても、百姓をするよりも保安隊がいいから行こうじやないかというような単なる失業対策気持保安隊に来られてはたまらない。そこでほんとうにしつかりした者を選ぶというためには、まず試験官りつぱな者を選ばなければいけない試験官のつまらぬ者が行けば悪い者を選ぶにきまつているから、木村長官においては特に試験官人格識見ともりつぱな人を真剣にまわす、そうしてりつぱな隊員をとつて行く。保安隊失業対策じやありません。百姓するよりも保安隊に行こうじやないかというような簡単な気持で行かれては国民がたまらない。またわれわれも予算審議の上に、あるいは保安隊増強の上にそういうことがあるならば、もうこれはいやになつて審議はできない。そこでほんとう気持で今後りつぱな保安隊をつくつて行く、一切悪いことはさせぬ、この構えで悪いことをするならしようがありませんが、まず幹部構えができておらぬ。その構えをもつて指導して行く。そして、もしも先般の不祥事件新聞紙上に発表されたこの記事うそがあつたならば、実は調べたがこうこうだということを発表して、国民に明らかにしなければ、保安隊の今後は育つて行きません。この点をひとつ長官はもとより、増原次長がよくわきまえて、真相国民に発表して、そうであつたか、あるいはこの程度かあるいはまだあるのか、あれば今度は大手術をしなければならぬ。長官に頼む。ほんとうにやりなさい。大手術をして、つながつているものがあれば皆片づけなければならぬ。そうしてりつぱなものを木村長官の手で育て上げる。今からでも遅くはありません。みなかえて新規にやつてもいい。そのくらいの心構えでやつてもらいたい。それから新聞うそがあればうそのように、新聞に発表して、国民ほんとう真相を訴える。実はこうであつたということを発表しますように要望いたしまして、私の質問を一まず打切ります。
  15. 稻村順三

  16. 永田良吉

    永田(良)委員 保安隊のことにつきましては、昨年からの国内の災害等に対しては、私どもも親しく水害の場所に行つて実情を調べたことがあるのであります。そういう際において、保安隊の方がたいへん勇敢に災害民救援等について活躍してくださつたために、最近保安隊国民に非常な好感を持たれるようになつたのは、まことにわれわれは喜びとしておつたのであります。これは長官皆様方も御承知のことと思うのであります。たまたま今回こういう不祥事件が起りまして、まことに残念に思う次第でありますが、私はこれらについては多少保安庁内部機構の一部について、昔のことを申し上げるのは失礼ですが、われわれもかつて軍隊におつたことがあるのでありますが、その際におきましては憲兵隊があつて軍隊の軍紀、風紀について厳重な取締りをいたしておつたので、割合過去の日本軍隊には、不祥なことがあつたにしてもごく少かつたのであります。現在保安隊でも、私ども地方保安隊の状況を見てみますと、何かやはり憲兵に類するような監察員みたいなものが、日曜日などには毎日出て隊員行動監視しておられるようで、たいへんけつこうですが、あの監察員を昔の憲兵のようにするということは、少し行き過ぎかもしれませんが、もつとああいう機関を強化されて、こういう不祥事を未然に防ぐような考えはいかがなものでしようか。現在あの監察員――監察か何かしりませんが、あの見まわりをする機構は一体隊員の中でどのくらいの。パーセンテージになつているのか、昔の憲兵隊の数に比べてどうなつているか、御説明を願いたい。
  17. 加藤陽三

    加藤説明員 私からお答え申し上げます。現在保安隊内部規律維持に当るものといたしましては、警務部隊というのがございます。警務部隊保安庁法の七十七条の規定に基きまして、部内の秩序の維持のために、保安官警備官等に関する犯罪の捜査に当るということになつております。警務部長は全国で約八百名ほどありまして、重要な地域に分遣をいたしております。この警務部隊の中で司法警察職員として権限を与えております者は百六七十名であつたと思います。これらの者は警務官または警務官補という名前をもちまして、一般司法警察職員と同様に部内犯罪等を捜査し、これを検察庁に送るという仕事をしているのでございます。それとは別に各駐屯ごと巡察隊というものを出しております。これは駐屯地部隊長指揮下におきまして、隊員犯罪の予防という面から、外出日等におきまして隊員がまわるであろうと思われるようなところを巡察をいたしておるのであります。今回の不祥事件にあたりましても、これらの点につきまして検討を加える必要があると思つておるのであります。先般保安庁長官より第一、第二幕僚長に対しまして、監察機構警備機構強化等につきまして、必要な警告を出すようにという御指示がありまして、この警告に基きまして具体的に検討いたしまして、そういうような取締りを十分にいたしたい、かように考えております。
  18. 永田良吉

    永田(良)委員 とにかく今回の事件のごときは、日本で一番大事な帝都の護衛に当つている――練馬部隊といいますと昔の近衛師団のように、一番模範にならなければならぬ大事な部隊であると思うのであります。これらにかかる不祥事件が起りましたというのは、隊員の心がけにおいても、むろん誤つた点は多々あると思うけれども、これらは今申し上げました昔の憲兵隊のごとき、隊員行動をあらかじめよく調査研究している機関があつて厳重に凝視しておられるならば多少防がれたのではなかろうかと思うのであります。こういう点から考えて、私は隊内の人をもつて隊内の人を取締るということもいいかもしれませんけれども、われわれの昔の軍隊生活におきましては、憲兵隊は別個の一つの機関になつてつて、これからにらまれておつたから憲兵隊というとふるえ上るようにこわがつてつた。こわがるということはいいことではないかもしれませんが、昔のようなああいうむちやな憲兵のやり口もどうかと思いますけれども、いずれにしても今承りますと、全国で八百名とかあるいは千人とかおつしやいますが、十数万の隊員のいろいろな方面の監察にはもつと数も増すとか、もつと厳重な取締りをするように、そうして悪いことをするのを未然に防ぐような監視役を増員されて、機構を強くされてはいかがなものでしようか。これらに対する当局の意見をこの際承つておきたいと思います。
  19. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御意見まことにごもつともな点があると考えます。十分その点を考慮いたします。そうして今後の保安隊規律厳正を保持いたしたい、こう考えます。
  20. 永田良吉

    永田(良)委員 先ほどの長官の御意見には、これは検察庁の方で今いろいろ事件の内容を調査しておるということでありますが、そういう悪いことをした者に対しては、検察庁の手もむろん及ぶものと思うけれども、隊自体としても、かかる不正なことがあつたのが大体明瞭になつたならば、断固として免職する者はする、こういう処置は厳重に、長引かずに、もう短期間に、みずから自粛の意味で断固たる処置をとられた方が、他の隊員の自戒の上にもいいし、また国民信頼感の上にもたいへんけつこうじやないか。かかることを申し上げるのは、善良な保安隊員に対してはまことに気の毒ですけれども、こういう際には、今後再びこういう不祥事件を発生させないという意味から、急速に断固たる処置をとられることがいかがかと思うのです。これらに対して御所見を承つておきたい。
  21. 木村篤太郎

    木村国務大臣 実はただいままだ取調べ中の者もあります。これが終了いたしますると、その経過を十分に国民の前に明らかにいたしまして、その処分については適切にやりたい、こう考えております。
  22. 永田良吉

    永田(良)委員 少し昔の軍隊のあれからすると、人権も擁護しなければなりませんが、もう明らかに実証が上つて国民がそういうふうにみんな見てしまつた。こういう際には、断固たる処置をすみやかにとられた方が、ただいま保安隊は増員もせんければならぬというようなうわさもどんどん出ておりますので、こういう際にあまり躊躇逡巡されれば、かえつて暗雲が低迷して、国民から非常な批判も受け、ますます疑惑の念が高まつて行くかと思うのです。われわれは過去の実績から見て、多年議会にもおつたのでありまするが、こういう際には――さつき平井君からもお話がありました通り、われわれは与党でありますけれども、こういう際には涙を振つて断固たる処置を、明らかな者から刻々にやつて、なおまだ疑惑があつて調査の未了なものはしかたがないとして、こういう際はまことに残念なことでありますけれども、断固たる処置をとつて、将来の保安隊を強固にされんことを望んでやまぬ次第であります。  私はこれだけを申し上げて、終りたいと思います。
  23. 稻村順三

    稻村委員長 江藤夏雄君。
  24. 江藤夏雄

    ○江藤委員 幸い長官がお見えでありますから、ただ一点だけお伺いしておきたいと思います。それは敗戦日本で綱紀の紊乱、官紀の紊乱というものが、非常にはなはだしいのでありまして、その点について信賞必罰ということが絶対に必要だと思うのでありまするが、今までいろんな事件等を見ておりまするというと、その点がどうも厳明を欠いておるという点が、非常に痛感されるのであります。保安隊をしつかりなして行くこともさることながら、また日本全体の官紀の振粛、機構を厳明にするということは、国の再建の上から申し上げましても、絶対必要なことである。今回またたまたま保安隊でこういう不祥事件が起つた。これにつきまして、長官監督者責任、いわゆる監督責任、この点をどういうふうにお考えになつておるか。今までそれは直接悪いことをやつた者が司法処分を受ける、従つて行政処分を受ける、こんなことはあたりまえのことであつて、何もことさらに機構を正して行く、厳明にして行く上において、積極的な施策をやることでも何でもないのでありまして、むしろそういう意味から、すなわち国の機構、国の官紀を正して行くという意味から言うならば、監督責任ということはよほど重大に考えてもらわなければ困る、こう思うわけであります。この点について、ひとつ長官のしつかりした腹をお伺いいたしておきたい、かように考える次第であります。
  25. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま江藤委員のお言葉、ごもつとも考えます。これはただ単に不正行為を直接やつた者に限らず、監督責任についてわれわれも十分この点を慎重に考慮して、何分の処置をいたしたい、こう考えます。
  26. 稻村順三

    稻村委員長 辻政信君。
  27. 辻政信

    ○辻(政)委員 私はただいま自由党の三議員からきわめて良心的な御質問があつたことに、敬意を表するのであります。その立場としては、野党的な立場でなく、政府を攻撃するというような立場でなしに、ほんとうに健全な保安隊をつくろうという、その真心から出られた質問考えるのであります。実は昨年の第十五国会におきまして、私もその点について、この部屋で申し上げた幾つかの例があるのであります。にもかかわらず、それから一年間悪質のデマのように取扱いを受けて、事件の処理をうやむやのうちに葬られたというような感じがいたしますので、その意味におきまして、一つの具体的な例をあげまして、今後の御参考に供したいと考えるのであります。  それは久里浜学校に起きた綱紀紊乱事件であります。時の校長浜名政雄にとかくの風評があり、最近次の事実が明らかになつたのであります。この私が申し上げる資料の出所は、百パーセント信頼すべきものである。その人物、その地位からはつきり知つたことでありますから、単にうわさとして聞き流さないで、事件をさらにさかのぼつて、英断と誠意をもつて、悪をふた葉のうちに取除いていただきたい。その意味において、事件を詳細にわたつて申し上げてみたいと思います。  久里浜学校の汚職またはスキャンダルに、きわめて関係のあつた主要な人物の名を申し上げます。浜名政雄、監補、校長、現在九州の普通科学校の校長に栄転をしておる。次は三正青山基三、当時の総務課長、現在高田駐屯部隊におります。次は三正古思三郎、補給課長、これだけが責任を一身に受けさせられて、依願免職になつておる。次は一士芋生義範、一士矢作静男、一士大塚某、二士宮本晃、二士重田某、これはそれぞれの部隊に転任をさせられておる。その事実の内容はいかなるものかといいますと、一つの例を申し上げますと、第一に、PXの商人が営業をしようとするときは、多額のお礼を強要して、出しておつた事実があります。総務課長の所管事項。第二、PXに新たに開店したローヤル商会と称する洋服屋がある。以上述べました八人の主要人物から、洋服の新調提供を強要されまして、洋服屋が泣かされておつたという事実があります。第三、補給調達時の入札には、談合入札を黙視し、商人から現金でお礼をもらつてつた事実があります。第四、食糧品、乾パン類の入札には、特に談合入札の形式を認め、食糧品の入札により納入する品目は、契約量よりも少く部隊に納め、から伝票で形式をごまかし、その不足量は校長、総務課長、補給課長等がつまみ食いし、家庭に配達されておつた事実があります。  第五、校長浜名監補は、補給課長に命じて官舎の備えつけ調度品、じゆうたん、ふとん類を新調させましたが、これは補給課長が公金をもつて校長の私物として提供し、九州に転任する際にそれを発送した事実がある。  第六、これら一連のグループは毎月数回、場所は常に横須賀の小松グリルで御用商人たちに宴会を強要しておる。その代償として利権を与えた事実がある。このために特に補給課長の部下たちは、上がやるならわれらもやろうということで、日曜日ごとに商人のうちに外泊をして金銭を強要しておつた事実がある。  第七、学校の学生に食わす砂糖類などは、総務課長は給与担任官である炊事班長と結託いたしまして、校長の乗用車を利用して一俵、二俵と持ち出し、八名の主要人物の宅に配達させておつた事実がある。  第八、人事の方面においては、特に彼らに関係のある部下たちはどしどし昇任させて、特に補給課関係において商人たちからの直接の金銭の授受に当つていた士補はすべて幹部候補生として選抜し、これらはすでに任官しておる事実がある。  以上八項に関しましては、事実相違ないと確信をもつてある人が私に訴えて来ました。この人の人物と地位からみて私は百パーセントの信頼性があると思う。単にデマではない。事件が明るみに出ましてから盛んにもみ消し工作をやつております。その概要を申し上げます。これらの罪悪の数々を一身に引受けて依願免官になつた補給課長の古思三正こそいいつらの皮であり、事実は総務課長及び校長が首謀者であつた。もしこの事実を再審査されようと思われるならば、今申しました青山三正、芋生一士、矢作一士、大塚一士、宮本二士などを厳重に処分されたなら必ず出て来る。私は前に悪事があるということをほんとうに好意的に皆様に申し上げたはずであります。この事件については、十五国会においてこの部屋で申し上げたが、それを単なるデマとして聞き流された事実がある。そこでそういうことが露顕されようとしたときに、一士の矢作静男という人は、総務課長青山基三の命を受けまして大急ぎで松本の部隊に転属になつたが、古思三郎、芋生義範、宮本某、大塚某などを歴訪して証拠隠滅をはかるために種々協議をしておる。奔走したその結果古思三正だけが取調べを受けて、全員事なきを得て今日に至つておるのであります。最初に申し上げました主要人物を一々いもづる式に峻厳に検討されたら、おそらく大々的な汚職の全貌が明るみに出ることが予想される。  以上申し上げましたことは単に久里浜学校で起つた事件の一つであります。他にも幾つかの事件があります。しかしこれは軽々しく言えませんから私は目下調査中であります。そこで保安庁長官としてこの事件をこの一年間にいかに調査したかということをまずお伺い申し上げます。
  28. 木村篤太郎

    木村国務大臣 実は率直に申して私はその事件を知らないのです。どういう機会でありましたか、私はその事実は、この委員会におそらく出席していなかつたのじやなかろうかと思いますが、初めて聞き及んだのであります。よくこのことについてはさよう検討してみたいと思います。
  29. 辻政信

    ○辻(政)委員 まさにその通り長官は御出席がなかつたのであります。次長以下があつた。私は加藤人事局長にも具体的にその名前まであげて言つております。これは人の名誉に関係いたしますから、ないしよで言つておる。そこで私が申し上げるのは、かくのごとき重大なことを次長以下幕僚が聞き流しをして長官の耳に入れておらぬということである。そこにこの問題の根本がある。これを長官が知つておられたならば、駿敏に処理されたものと信ずる。なぜそれをやらないか、学校の校長として青年幹部教育に当るべきその最高の人物がかくのごとき汚職の疑いがある。そういうきわめて疑いの濃厚なものを徹底的に究明することなく、単に左遷しただけで、場所をかえて再び久留米の普通科学校長に転勤させておる。学生の食事の上前をはねる校長が世界のどこにあるか。それで保安隊幹部教育ができると思うか。幕僚諸君は長官をロボット扱いにしておる。私はそこをつきたいのであります。他にもそれに似た事件がある。長官は、私どもが本気になつて言うとみな是認をされるが、それを実行しない。なぜ実行しないかというと、増原次長は、私にじきじきに電話で答えられておる。長官は認められても事務当局はそう簡単に行きませんと言われておる。そういう態度が今日保安隊をして今日の状態に持つて来た根本ではないか。幕僚下剋上の風潮を今日において遮断し、悪の根源を根本的に除かない限り、腐つた基礎の上にりつぱな軍隊はできない。練馬事件のみならず松井事件さらに北海道管区に起つた補給系統の汚職事件をあげれば底がわからない。その根本原因は何かというと、警察予備隊当時急速に失業者、無能官吏をかき集めてつくつた、しかもその首脳部がグループをなして甘いしるを吸い合つているということであります。これは歴史的事実であります。私は終戦後国民政府にあつて、あの崩壊する蒋介石軍隊の内幕を見て参りましたが、この様相はまことに遺憾ながらそれとよく似た実情にあることを私の経験から申し上げるのであります。このように汚れた空気の中で、汚れた人の手によつてつくられる自衛隊が、はたして祖国防衛の核心たり得るであろうか。私は保安隊の青年諸君が、北海道においても九州においても涙ぐましい活動をしておるのは認めます。それゆえにこそこの内部における腐敗を剔抉して、あの青年たちにはずかしい気持を起させないようにしてもらいたい。彼らははずかしい気持を持つておる。読売新聞にあの練馬不祥事件が出た翌日、電車に乗つて一人の若い保安隊員に私話しかけた。そうすると、その隊員が――名前は知らぬ隊員ですが、はずかしくて歩けません、こう言つておる。これをどうごらんになるか。私は断じて保安隊を否定するものではありません。りつぱな人がたくさんおるし、風水害あるいは火災の際に身を挺して働いた青年を見ております。よくやつております。しかしながらかくのごとく真剣に働いておる青年たちの反面において、中枢にある高級者の自覚が足りない。このような重大な事件を今日まで次長長官に報告しておらぬとは何事であるか。要は長官が秋霜烈日泣いて馬稜を切るの断を下されまして、悪の根源をふた葉において根こそぎとらないと、新たに発足せんとする自衛隊を健全な基礎の上に育てることはできない。その意味におきまして木村国務長官の御決意を承りたいと思います。
  30. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。保安隊が将来国民信頼をつなぎ得ることについては、まずもつてかような事件の発生を未然に防ぐ。要は綱紀粛正の問題であります。私も相当決意をもちまして将来再びかようなことの起らないように十分考慮いたしたい、こう考えております。
  31. 稻村順三

    稻村委員長 事重大でありますので増原次長の答弁を求めます。
  32. 増原恵吉

    増原政府委員 ただいま具体的に辻委員から先年お述べになりましたときの事実は、ヒントを与えるという形でお述べになつたのであります。本日承りますような事実は当時私どもももちろん予想しておりません。そうして主たる辻委員の御指摘の事実は北海道関係のものにあつたように私どもは印象を受けております。しかしお述べになりましたものにつきましては、辻委員からこの席上外でも加藤人事局長と話を承りまして、当時のわれわれとして必要な調査はいたしたつもりであります。ただ被疑者を捕えて犯罪捜査をやるというような形において行いませんでした。この点なお十分反省考慮の余地があるかと思います。今お述べになりました事実は、私どもにとつては初耳の具体的な問題であります。これはただいま長官から申し述べましたように、厳重に善処をいたすべきものと考えます。なお私に個人的に関係をして御言及になりました、何か私が長官の命令に従わないような行動をとつておるような意味合いにもとれるように承りましたが、これはこの間辻委員とお話をいたしました際の具体的な問題は、ある方面に部隊を設置するということに関連してのお話であつたと記憶しております。これはその以前に辻委員から北海道を視察された結果の話を承つて、大部分のお話を有益に承つたと私ども申し上げました。そのお話の内容については、十分われわれがこれを私どもの仕事をする上に貴重な参考としておることは事実であります。ただ具体的にその際電話で指摘をされました場所に部隊を設置するということは、予算関係、防衛計画の設定その他の問題があり、長官指示を受けておつた問題でもありまして、急にとりきめることは困難であるという実情にあることを申し上げたのであります。これは長官が何とおつしやろうが、なかなかそうは参りませんと、実は私は申し上げた記憶はなかつたのであります。そういうふうに聞きとれましたならば、言葉の足りなかつたところで、訂正をいたしたい。長官にも申し上げて、あそこへ今すぐ決定をするということは事情困難だ。長官もその事情を了承されておるという背景で、今すぐこれをきめるということはむずかしいというお答えをしたという事情を釈明いたしておきます。
  33. 辻政信

    ○辻(政)委員 私が十五国会のこの部屋において申し上げたことは、今増原次長がおつしやつたように、確かにヒントであります。あなた方の自発的な善処を要望してヒントを与えた、追討ちをかけたくなかつた。しかしそれでは取調べが御困難であろうと思つて加藤人事局長には浜名事件ははつきり申し上げております。あるいは、三つ申し上げておりますから、そのうちの幾つかはデマであつたかもしれません。不確実であつたかもしれませんが、少くも浜名問題だけは事実であり、しかも今申しました古思補給課長をこの事件に関連をして依願免職でやめさせておるということは、これは明らかに知つておらなければならない、それが一つ。次の問題は北海道を視察いたしまして、いろいろ皆様の御希望ありましたので、詳しい意見を申し上げた。実は私は防衛問題を国会における論争の具にしたくはなかつた。私は無所属でありますが、建設的に内面的に皆さんに御参考になることを全部申し上げて、そうしてとるべきものがあつたらとつていただきたい。この気持で今日まで参りました。その結果は何一つとして実現されておらない。聞いたときには、よろしい、同意だ、その通りだと言いながら、あとは知らぬ顔で流れてしまうという、その傾向が今日一年間続いて参りましたのであります。これではせつかく、ほんとうに皆様のためにと思つてつたことが何にも役に立たなくなつた。今あなたは長官が言われても自分は聞かないと言つたことは間違いであつたと言われればそれはそれであります。録音をとつていないから何とも言えません。私が電話であなたのお声を聞いたときに、これはまことに困つたものだと長官は同意された、なぜできませんかと言うと、長官は同意されても、事務当局としてはそうは参りませんと、はつきり私の耳に残つておる。そういう態度で将来の保安隊をやりますと、長官がかわつて新しい者が来ると、おみこしの中にかつがれたと同じになつてしまいます。それではいけない。過去の軍隊においてもそういう例があつた幕僚フアツシヨ、下克上の風があつた。それでいくさに負けておるのであります。今新しく保安隊をつくり自衛隊にしようとしておる、新国軍の発足にあたつておるこの重大な時期において、長官を補佐されて仕事をする幕僚諸君は頭の切りかえをやらなければならぬ。お互いにグルーブを組んで、おれの判こを通さなければ長官が何と言つてもできないという空気をつくつたら、過去の過失をより以上に繰返して行く。私はそれを心配して申し上げておる。あなたの個人攻撃をしておるのではない、幕僚服務の根源について私は話をしておるのであります。
  34. 増原恵吉

    増原政府委員 いわゆる幕僚服務のことについての御意見はまことにごもつともと思います。私ども長官を補佐する一同そういう趣旨でやつてつておるつもりであります。そういう点で欠けるところがありまするならば、なお反省をし、長官の命令のもとに、正しい適当な補佐をするように十分心がけるつもりであります。
  35. 辻政信

    ○辻(政)委員 浜名事件に劣らないような事件がまだ二、三あります。しかしこれは私が今調査中でありますから、的確な資料を整えてから、この次の機会に御質問することにいたしまして、きようはこれで打切ります。
  36. 稻村順三

    稻村委員長 なお増原次長に御注意申し上げます。辻委員質問できわめて重大な点は、浜名事件に関してなぜ長官に報告しなかつたかという点でございます。その点に関する答弁がまだございませんで、その答弁を要求いたします。
  37. 増原恵吉

    増原政府委員 当時辻委員の指摘をされました事件は他にもございましてこれについてわれわれとして当時適当と思われる調査をいたしたわけであります。そのことについては、私は明確に長官に申し上げなかつたという記憶はございません。しかしはつきりと申し上げたということを御証拠をもつて申し上げるというわけにも参らぬような形であります。絶対に申し上げなかつたというはつきりしたあれではないのであります。そういうふうな質問を受けて調査をしておるがというふうな話は長官にしたように思つております。その後よく、当時必要と思われる調査をいたしたのであります。
  38. 辻政信

    ○辻(政)委員 今の答弁は私は幕僚の態度としてははなはだ適当ではないと思います。現に長官ははつきり初耳だと言つてびつくりされておる。おそらく木村長官の人格から考えても、これほどの事件を黙殺される人ではないと私は信じている。この重大な問題を、綱紀を粛正しようとするあなた方の良心があるならば、たとい私がヒントを与えた問題でも、直接長官に申し上げられて、その調査を積極的にやるべきものであります。ヒントを尊重したがゆえにヒントしか与えなかつた、そして今日まであなた方の善処を見て来た。それが善処されておらぬから今ここで白日のもとに出さなければならないようになつた来た。その幕僚の態度がいかぬというのです。いかに古くからおられても長官長官幕僚幕僚としてそれぞれ分に応じて動かなければならない。その幕僚の服務の態度において、私は綱紀紊乱の根源はその辺から来ると、こう結論したいと思うのであります。
  39. 冨吉榮二

    ○冨吉委員 長官にちよつとお尋ねいたします。辻君の御質問に対して善処する、考慮する、これはまことにけつこうな言葉で、爾来たびたび使われて来てたびたびほごにされた言葉である。そこで私は長官に念を押しておきますが、長官は、今九州の学校長に転任されたその方の問題を含めての問題について、徹底的に調査せられる意思あるやいなや、その辺のところをお答えいただきたい。
  40. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その点につきましては私は調査いたしたいと考えております。
  41. 冨吉榮二

    ○冨吉委員 大体役所の機構というものは、たとえば部下の方でいろいろ調査をさせて、そしてそのことをやるような機構になつております。そのためにさつき辻委員が指摘しましたようないわゆるグループによるところの隠し合いという問題があるのです。もしそれを新しく調査してみて、長官にいろいろ辻委員の言うような事実が露顕いたしますと、結局現在の幕僚やそれらの調査に当つた人々の手落ちということに問題はなります。そこでその調査の方法でありますが、それは長官みずからひとつ校長を呼びつけておやりになる決意があるのかどうか、その点をお伺いいたします。
  42. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はここでまずその資料の御提供をお願しておきたい、こう考えております。その資料に一応基きまして調査を進めたいと考えております。
  43. 冨吉榮二

    ○冨吉委員 辻委員はきわめて熱心なる保安隊の擁護者である。しかも烈々たる気魄を持つてここにお述べになつておるのでありますし、すでに資料は一応速記録にも残つておりますが、なお辻委員はその問題について責任をもつて提供されることと思うので、それをぼやかさないでやつて、そうしてはつきり理非曲直を明らかにされなければならぬ。これは単に保安隊の問題だけではない、日本の国全体としてこうした大きな問題をほつておくべきではない。官紀の粛正は決して言葉だけで解決すべき問題ではございません。これは上に立つ者が秋霜烈日のごとく、場合によつたら片腕をもがれるくらいの覚悟をもつておやりになりませんと――現在の官僚機構、特にたいへんお耳ざわりと思いますけれども、旧軍人の方もあるし、あるいは内務官僚系統の人もあるしいろいろで、あなたの保安庁というのもあなた自身が育て上げた純一無垢なものではございません。いろいろな角度から見て、必ずしも十分と言えない人々もそろつておることでございますから、よほどあなた決意を持つておやりになりませんと国を誤ります。どうかその点についてとくと決意を持つて、ただ口先だけの決意ではなく、ほんとうに男としての仕事をおやり願いたいと思います。これは決して野党的のやじの気持から申し上げているのではなくて、国を憂える精神から申し上げていることを十分御感得を願いたいと思うのであります。
  44. 木村篤太郎

    木村国務大臣 今日の委員各位の御議論は、まつたく国を思う至誠から出ておるものと私はつつしんで拝聴いたしました。ただいまの御議論もまことにごもつともであります。資料をちようだいいたしまして、その資料に基いて結果をすぐ得れば、それによつて相当の決意を持つてこれを解決いたしたいと考えております。
  45. 辻政信

    ○辻(政)委員 資料の問題はすぐ提供いたしますが、一言申し上げておきます。保安庁の人事関係は、私に関連を持つた者はみなマークされておる。私のところに出入りする者は、正義の士がどんどんほかにもまわされておるという事実がある。私がヒントを与えたのは、これは本人の生活問題に関係するので、今まで名前を言わないで黙つてつたわけであります。辻に関係を持つた者はみなマークされておる。そこで資料は私の旧部下とか友人からは絶対にとつておりません。なぜとらないかというと、その人たちの生活権を奪うからです。問題はそこまで深刻に行つておるのです。このことをつけ加えて申し上げておきます。
  46. 加藤陽三

    加藤説明員 今の辻委員の御発言でありますが、私はどういう点からそういうことをおつしやるのかわかりませんが、私は人事局長として、そういうようなことは絶対にないと思います。しかしもしそういう事実がありますればお示し願いたいと思います。
  47. 辻政信

    ○辻(政)委員 今まで私のところに頻繁に来ておつた旧部下、友人たちも、私に接近するとブラックリストに載せられるから、これからは往復もしなければ通信もやらないと言つてつたりやめておる。それで今は旧部下から来るものは全然ございません。
  48. 稻村順三

    稻村委員長 木村長官はやむを得ざる所用のため、十二時に退席いたしたい旨の申出があります。長官に対する質疑がありましたらこの際まとめてお願いいたしたいと存じます。長官に対する御質疑はありませんか。――下川君。
  49. 下川儀太郎

    ○下川委員 まずお聞きいたしたいことは、先ほど来保安隊不祥事件が次次と指摘されております。しかし長官としては、単に部下に対する処罰だけでなくて、どうして隊員諸君がそういう結果を生んだか、その根本理由を追究しなければならぬ。第一に、部下がそういう不祥事件を起す、それは個人個人の性格にもよるでありましようが、一番大きな問題は環境である。その次は、いわゆる思想のよりどころであると私は考えております。環境という点におきましては、あなた方が常に自負しておられるように、いわゆる国軍の礎といわれ、しかも厳として規律で合宿しておられる。そうすると環境的には何ら不純なものはないはずです。それではどこに環境から生じたものが出て来るかというと、おそらくこれは、現地における物品の購入とか、いわゆる出先の幹部たちがその土地土地の商人たちと結託するという、そういう不純な姿を見せられておるが、そういうところから隊員たち幹部にならつて米を盗み出すとかあるいは遊興費をほかからかせごうとするというような不純な事柄が生れて来るのじやないか。従つてたちは何件こういう問題があつたか知りませんが、やはりこの際隊員だけを処罰するというよりも、むしろ隊員がどうしてそういう罪を生んだかという問題を追究してほしい。そうしてまず隊員を処罰する前にその幹部諸君を十分追究してほしい。それなくしては厳正な政治は行われない。これを長官どうお考えになりますか。
  50. 木村篤太郎

    木村国務大臣 かような不祥事件の起つた根本原因を追究する、まことにごもつともだと思います。どこにかような不祥事件が起る端を発したか、そのよりどころを、すなわち源を追究することの必要なことは当然であると思います。今いろいろ仰せになりましたが、それらの点につきましてもわれわれは十分考慮いたしたいと思います。どこにこの不祥事件が発生した源をなしておるか、そうしてその源を正して、そのすみ寄りの方を私は明らかにし、それについての考え方を十分に考慮いたしたい、こう考えております。
  51. 下川儀太郎

    ○下川委員 お言葉の通り実行していただきたいと思うのですが、もう一つはやはり思想のよりどころの問題がございます。もちろん隊員諸君がいわゆる国を愛する、先ほど増原次長が何かお述べになつたようでありまするが、国を愛する点あるいは民族を愛する点、そういう立場に立つて隊員諸君がやつておられるということは一応わかります。しかし現実的にどうして国を愛する、どうして民族を愛する、自分たち行つておる行動それ自体が、はたして国を愛するあるいは民族を愛する、そういう観点に立つてやられるかという一つの疑問を隊員が持つておられるということを一応注意願いたい。ということは、やはり先般直接侵略とか、そういう問題で長官と論議いたしましたけれども、しかし今日の日本情勢というものは、たとえば直接侵略に備えるために戦うのだとか、あるいは民族、あるいは国を守るためにやるのだといいながらも、今日それ自体がアメリカ軍の駐留によつてあらゆる面が植民地化されておる。たとえば現実的に見ても、私どもが毎日あの霞ケ関の坂を上つて来ると、あそこの元大蔵省の建物が東京PXになつておる。東京のどまん中、日本のどまん中のかつての大蔵省の建物がいまなおアメリカ駐留軍のPXになつておる。私は一隊員から聞きましたが、それを見ましたときに、これがほんとう日本の姿かしら、まず直接侵略に対する自衛力を創設してぶつぱらうと言つておるときに、東京のどまん中に、しかもかつての大蔵省の建物がいかにも日本の国会を監視するように、日本の政治を監視するようにこうして占拠されておる。そういうものをぶつぱらつてからほんとうの自衛軍、あるいはまた国を愛するとか民族を愛するとか、そういうことをやつてもらいたいということを一隊員が言つておられましたが、そのように日本の政治のあり方についても、一個の青年として彼らを考えてみるときに、非常に疑惑を持つておる。根本的にはつきりとそういう立場をかえなかつたならば、立場を十分科学的に理解せしめなかつたならば、青年が動揺するのは当然でございます。単に口先だけで抽象論的に国を愛するためとか、あるいはまた民族を愛するためだとかいうことを言つても今日の青年は納得行きません。そういう点を長官は十分心得てほしいと思いますが、この点ひとつ説明を願いたいと思います。
  52. 木村篤太郎

    木村国務大臣 日本がみずからの手でみずからを守る態勢を一日も早くとりたいと思つております。さようになりますと、今お説のような事柄が全部解消するであろうと考えております。しかし現段階においてはある程度は忍ばなければならぬと考えております。しかしながら、われわれは総力をあげて日本の民族の復興を考える。これにはまず第一に経済力を高めて、そして一日も早くみずからの手によつてみずからの国を守るだけの態勢を整えて行けば、やがてさような事象はすべて解消するものと考えております。
  53. 下川儀太郎

    ○下川委員 経済力を高めるという最後の言葉に大いなる期待を持ちますが、私は先般保安庁を視察に参りました。そうすると、これは不祥事件にも関連いたすのでありますが、その入札のいろいろな処理を見せていただきますと、約三分の二くらいが随契になつております。これが器材あるいはその他の物品購入費のいろいろな問題の起る原因になつております。そうなつて来ると、こういう不祥事件がえてしてそういう入札にからんで生じて来る。この問題は目下調査中でありますが、随契ということは、結局競争入札を廃棄して指名的にこれを随契させる。そうなると勢い保安庁幹部と商人との合作がそこに生れて来る。これが不祥とか不祥でないとかいうのではありませんが、往々にしてそういうところからいろいろな問題が派生的に出て来る。そういういわゆる商人と随契がされる。随契することによつてコミツシヨンとかいろいろなものが生れて参りますと、それを知つた隊員たちが勢い自分たちもまねをしようという考え方になつて来る。これはいろいろその当時幹部の方々から随契についての説明も聞きました。しかしわれわれはまだ根本的に調べておりません。ある自動車会社から聞きますと、自動車を購入するにあたつて、やはりオープンの入札をする。しかしだんだんこれを突き詰めて行くと、パテントを持つておらない商社はみなはずされてしまつて、やはり一部分のパテントが有効になつて、そうして一社か二社が入札の標準になつて行く。いわば高額な自動車の購入に際しましても、初めはオープンの入札が、結局のところ指名的な入札にされて行く。そういう非常な矛盾、あるいは当局から言わしめると、これは合理的だと言うかもしれませんが、そういういろいろな形がやはり国民的な疑惑を持たせる。それに対する隊員の動きが、個人的に今度は自分自身のそういう不祥事件まで発生するような結果になる。こういう点を考えますと、十二分に保安庁幹部諸君は注意しなければならぬと思う。今後この問題についてもあらためて質問いたしますが、十分その点も考慮に入れて、二度とこういう不祥事件のないように、同時にまた不祥事件の根本原因を突き詰めていただきたいと思う。今日はこの辺で打切つておきます。
  54. 稻村順三

    稻村委員長 それでは次長以下に対する質疑を継続いたしますが、第一管区に起つた事件でございますので、吉田第一管区総監説明を求めます。
  55. 吉田忠一

    吉田説明員 まずもつて私の指揮下にありまする部隊の中にかくのごとき事故を起しましたことは、まことに深く責任を痛感いたしておる次第でございます。ただいま御質問によりまして、事件の概要につきまして私から先に申し上げます。練馬駐屯部隊は、練馬の駐屯地と、もう一つ豊島の分屯地と二箇所にわかれておるわけでございます。糧食の不正持出し事件練馬、豊島の両方にたまたま同じ時期に発覚したような次第でございます。最初の練馬の方の持出し事件の発覚いたしました端緒となりましたのは、一月ちよつと前の十一月初めに、警務中隊のある者が外出から帰つて隊へ入ろうとしますときに、どうも二、三人おかしなのがいるというので調べましたところが、それがたまたま米の持出しの相談をしておつたというようなところから発覚の動機になつた次第でございます。これを探知しましてからただちに警務部隊の方で捜査を開始いたしました。その時期が十一月四日ごろでございます。そうしまして、内偵をしてみますと、これはこの二・三人に限らないでかなり大勢の者が米の持出しに関係しておるらしい、こういうことになつて参りましたので、取調べとしましては、事前によくそういう評判を聞いてリストをつくつて、一通り見当をつけました。それによつて取調べを進めて行きましたところが、最初は本人も隠しておつたのもございますけれども、やはり大勢の関係になつて参りますと、いや実は自分もこうだつたのだ、ついてはあの人もやつたからこうしたのだというようなことで、関係者がふえて参りました。結局練馬の駐屯部隊の中におきましては、ただいま取調べましたところでは関係者が全部で十五名でございます。そのうち階級的に申しますと、士補階級の人が二人おります。あとは査長あるいは一査、こういうようになつておるのでございます。  次におもな内容を申し上げますと、まずやり方としましては同じでございますが、やはり一つのグループというような関係にどうしても結びついて参ります。三つほどのグループになつて参ります。一等保査の新田という炊事の勤務者でございますが、これが大体ことしの十月から十一月にかけまして、四回に――名前の点はまだ処分も決定しておりませず、検察庁の方の確定もいたしておりませんので、一応私からは階級だけで何々保査、何々査長、こういうようにして一応言わしていただきたいとい思ます。某一等保査が四回にわたりまして、十月、十一月に白米二斗七升を勤務場所から同僚の某一査とともに持ち出しまして、それを売却いたしまして、その金で遊興に充てておるわけでございます。  それからさらにやはり炊事の勤務者でございますが、某一等保査が、これまた九月、十月両月にわたりまして、前後五回にわたりまして、白米七斗三升同じく勤務場所から同僚の某、某、某、某、某合計五名の一査と共謀をいたしまして、これをやはり売却をして、その代金でもつて遊興に消費しておるような次第でございます。それからもう一件、場所の違つたところでは、某二等保安士補が富士で演習をいたしておりまするそこへ白米を持つてつておりましたが、そのうちの白米一俵を他に売却いたしまして、これは内輪でもつて酒その他を飲んでおる、こういう事実でございます。  練習の関係は以上申しましたような次第でございます。この事件につきましては、もとより行つた者につきましての処分は行政処分として考えられます。これは検察庁とも今打合せをいたしておりまするので、このうち若干の者はまことに本人にはかわいそうでありますが、検察庁の方に若干名の者は送らなければならない。これは今検察庁と打合せをいたしております。  次に豊島分屯隊の関係でございますが、これは御承知通り練馬から少し離れたところにあるのであります。この付近の人の聞込みがございまして、どうも米が出ておるらしいぞといううわさを駐屯地で耳にいたしました。それからまず練馬巡察隊の者がこれを調べかけたのであります。そうしますと、これまた同様一人に限らず、かなり多数の者が関係いたしておる、こういう事実になつた次第でございます。これが調査に着手いたしましたのは、練馬のよりは少し遅れております。時期がずつておりまして、十二月二日から調査をいたしておるのであります。この関係者は三つほどの種類にわけられると思いますが、まず某一等保査がやはり勤務場所から白米を四斗四升外に持ち出して、やはり売却いたしておるのであります。この某一査の取調べを開始しましたところ、その供述から分屯隊の炊事勤務員のかなり大勢の者が糧食を不正処分しておる事実が確認されましたので、さらに取調べを進めまして発展いたしたような次第でございます。おもなものとしましては、某一等保査が今年の八月上旬から十二月一日までの間に、回数で十回ほどになつておりますが、白米三石五斗、これを同僚数名とともに共謀いたしまして売却し、この金でもつて遊興に費しておる。さらに某二等保安士補が、白米一石五斗、食用油一斗カン、これをやはり持ち出しまして売却し遊興に充てておる。さらに某保査長が数回にわたりまして白米三石を同僚数名と共謀持ち出しまして、これでもつてやはり遊興に費消しておる、これで同僚数名ということで……。(平井委員「豊島は全部で何人ですか」と呼ぶ)関係者は豊島もやはり十五名でございます。このうち士補の階級の者が六名、査長以下の者が九名で、同じく十五名でございます。この処置につきましても、前の練馬事件と同様、本人の行為につきましては、十分調査をいたしまして、このうち悪質なものはもとより検察庁の方に送致する、こういう関係になる、またそれ以外のものでも行政処分として内部の規律違反としては全体について処分をされることになると思います。今その取調べの段階が、豊島を除きまして練馬の方は大体手続的にもできたということで、きようあすぐらいに懲戒処分最後の決定がなされるであろう、こういうようになつております。  なお新聞には幹部のもみ消し料とかいう記事もございますが、この事件関係して、これをもみ消すために云々とかいう……(「黙認料だよ」と呼ぶ者あり)失礼いたしました。これらの点は私どもの調査いたしました限りにおきましては、ただいまのところございません。  なおこれに関連いたしまして、その報道にはございませんが、やはり部隊内の某幹部部隊関係の業者から数回にわたりまして金をもらつておる事実がございます。また同様饗応を受けておる事実もございます。これは某幹部と某士補二人が同じような立場になつておるのでありますが、これにつきましても今調査を進めまして、一通りの調べが大体ついて来た、こういう状況になつております。  私から大体以上概要だけとりまとめて申し上げました。
  56. 平井義一

    平井委員 第一管区総監に御質問申し上げますが、あなたの方の隊といいますか中隊で、その中に班があると思いますが、そこに班長とか中隊長とかおると思う。その班長なり中隊長が自分の部下の行動をまつたく無責任に放置しておるということからこういう事件が起る、私はこう思うのですが、まつたく自由主義の世の中だからお前たちはお前たちのかつてにしろというようなことで保安隊というものがまとまつて行くかどうか、これをひとつ考えてもらわなければいかぬ。いつでしたか新町を視察をした折に、日曜日などは鐘紡の女工と手をつないで歩いている、女と遊べば金がいるにきまつている、そういうことも喜んで見ておる、幹部というものはあまりそういう遊びをすると無理が行くくらいのことは部下を思うなら考えてやらなければならぬ。あまり野放しな、責任観念がないからこういう事件が起つたと思う。そこで班長なり中隊長というものは、自分の部下です、自分の子供です、子供が悪いことをすれば親の責任ということは当然である。その班長なり中隊長というものは一体どうしおるか、それを監督するあなたがお前たちはお前たちの道を行け、何をしてもいいという考えかどうか、これをあなたにお聞きする。それからまたさらに第一幕僚長は昔なら陸軍大臣陸軍大臣立場に立つてこういう問題をどうお考えになつておるか、このお気持をお聞きかせ願いたい。
  57. 吉田忠一

    吉田説明員 この隊員にふだん毎日一番接触しておりますのは今お話のありました班長、中隊長、これは一番身近で接触いたしておりますからこれらの者が責任を感じておることは私はもちろんだと思います。私につきましては――これは練馬の駐屯地のことであります、私は全体を持つております。しかしながら練馬駐屯地は私自身がおるのでございます。それから先ほどもお話がございましたように……(平井委員「なお悪いじやないか」と呼ぶ)なお悪うございます。ですから私といたしましても十分責任は感じまして、またふだんにおきましてもこういうことのないようにということは念願をし考えは持つてつたのでありますが、結果こう出てみますとこれは私からも何ら申訳はできない、こう考えております。
  58. 林敬三

    ○林説明員 今回の問題につきましてはまことに遺憾なことでありまして恐縮に存じます。国民保安隊でなければなりませんのでいわゆる国民と心が通い、血が通わなければならない、それがためには国民の各位からほんとう信頼され敬愛される保安隊でなければならないと存じます。それで一人一人がまず第一に心を正しくして――神様、仏様のようにはとても行けないといたしましても、日本の将来を象徴するような頼もしい青年、正しい行き方を持つ青年、こういう人柄の人の集まりに保安隊というものを育成して行かなければならないと存じます。しかるにかかる者が出て参りましたことをまことに残念に存じます。もちろんこの問題についての措置の適正徹底を期しまするはもとより、これからあとこれを契機といたしまして一層徳育の涵養あるいは物品その他の出納の制度というものの確立、これの点検の徹底、あるいは先ほどお話がありましたように炊事の勤務者その他の一般隊員というものが遠く家郷を離れておりまして、お話のように小隊長、中隊長あるいはその上級幹部というものに愛情が欠乏いたしますと、とかくあやまちを起すのではないかということをとくと反省を深めまして、今後のこれらのものの指導あるいは施設その他厚生というものに重点を置いて努力をいたして参りたいと存じます。
  59. 平井義一

    平井委員 長官以下次長みな意見を拝聴いたしたのでありますが、責任を痛感している、ただこれをやつたからそれを処分するだけで――私はあなた方を処分するという意味じやありません、精神的にこの事件によつて立ち直るということが第一の私のねらい。  そこでこういう事件が再々起つているのであります。この事件を契機として監察官があるいは監視員かこれをひとつ強化して、こういう悪いことをする人のないように、こういう考えになられるかどうか、郵政従業員にいたしましても国鉄の従業員にいたしましても監察官というものがございます、監察制度が非常に強化されているので、郵政も国鉄もあまり悪いことはない、これは郵政省などは金をうんと扱つている、それにもかかわらずあまりないのでありますが、国民が一番血をしぼつた予算保安隊に出しながらこういう事件が起るということは監視の目が非常に薄いじやないか。そこでこれを機会にどういう名前でもいいが、憲兵という名前は使われますまいから何とかいう名前にして、ほんとうに常に個人々々の性格をよく調べ、日常生活を調べ、間違いのないように指導して行く、あるいは監督をする、その監督官が必要と思われるがどうか、この点を質問申し上げる。
  60. 林敬三

    ○林説明員 監督官、監察官あるいは警務隊員、こういうものの活動についても、これを契機にいたしまして十分な検討を加えて、もしただすべきところがある、また活動についても強化すべき点があればすみやかに措置を講じたいと思つております。同時に御承知のようにいわゆる監督をしてみるという、これも大勢のものでありますから必要でありますが、それだけにとどまらず、やはり根幹をなしますものはお話があつたように分隊、小隊、中隊、大隊、連隊、管区という系統によりますところの一人々々の個人の練磨、常時の訓練、生活を通じての指導あるいは向上ということが根幹だと思います。それと両々あわせて最善を尽したいと存じます。
  61. 平井義一

    平井委員 よほどしつかりしてもらわなければ、八月から事件をやつて今ごろ実はわかつている、これはまつた監視しておらぬという証拠である。同時に私どもが一番心配するのは貴重な米を持ち出して売りさばいて、その金で酒を飲む、遊興に使うとは何事か、この金で人を助けたというなら幹部もなかなかいいところがあるといわざるを得ないし、それで大体一ぱい飲むというごときは、幹部がときどき一緒に飯を食つたじやないかという気がいたします。これを機会にメスを加え、日本人同士が同胞愛に燃えるならば――困つた人に盗んでやるというのならば話がわかるが、酒を飲むのに米を盗み出したというのでは東北の農民に申訳がありません。そこで十分考えて、あなた方の精神をまずたたき直さなければならぬ。そうしてそれが部下にずつと及ぶ。言わなくても無言のうちに教訓をしなければ、口で百回、二百回、何百回言つてもしようがない。長官以下あなた方は、よく指導します、よく反省しますと言うが、それでは何にもならない。無言の指導ということにひとつ重点を置いて、今度の問題は相当あなたの方で詮議されるでしようけれども、今後は十分考えなければならぬ。私ども保安隊の組織を知らぬのです。総監部とか幕僚とかということはよくわからぬ。これは増原さんは昔から特によく知つているのです。あなたが一番責任者ですよ。十分考えてください。私はこれ以上は追究しませんが、増原さんなどは警察予備隊からの引続きの人だから、十分間違いのないようにしなければ、みんなあなたに責任が行きますよ。木村長官がかわいそうですよ。あの人は正直な人だから何も知らぬかもしらぬ。そこでいろいろ制服を着た方々が悪いことをしても、これは増原次長指導が悪いのである、こういうことを言われるから、あなたはほんとうにりつぱな指導をして行くという姿になつてもらわなければ、われわれがここで何ぼ追究してみても、一人や二人やめてくれと言つたところでこれは直りはせぬのだから、ほんとうにその気持になつてもらいたい。われわれは国民の代表としてあなた方に警告を発しておく。あなた方は個人的にはみんな知つておる。決して文句を言うのじやないけれども国民の膏血をもつて、その予算でまかなつておるところの保安隊がこういうことでは国民に相すまぬ。国民になりかわつてあなた方にもしつかりしてくれと言つておるのですから、どうかそのつもりでりつぱな指導を行う、それにはまず自分が正しく進んで行くというふうにしていただきたいと思うのであります。私は本日はこの程度でとどめます。
  62. 辻政信

    ○辻(政)委員 吉田総監に一言申し上げておきましよう。この事件は相当長期にわたりまして、あなたの目の届く範囲内において起つた事件である。たとえば第一管区内においてあなたの直接の部下が白昼堂々と長期にわたつてつた綱紀紊乱事件であります。先ほどあなたはこの問題について責任を痛感するとおつしやつたが、口先だけで痛感すると言つても何もならない。それを行動をもつて実現する。昔こういう事件が起りますというと、最小限度において師団長と連隊長は首になつたものです。あなたは責任を痛感しながら、今日まで辞表をお出しになりましたかどうか、またその意思があるかどうか、それに対してのあなたの所信と、増原次長の決意、これを承つて質問を終ります。
  63. 稻村順三

    稻村委員長 まず、増原次長の御答弁をお願いします。
  64. 増原恵吉

    増原説明員 事件は、繰返し申し上げまするようにまことに遺憾しごくのことでございます。現実の問題につきましては、事態が大体においてよく調査ができましたならば、さらにこれを完結をたいしまして、司法処分に持ち込むべきもの、行政処分にすべきもの、それぞれ適切に行うことにしたいと思いますが、これは長官の命令に基いて行いたいと思います。  なお、関連をしまする監督者その他の責任についても、それぞれ必要にして適切な措置をとられるよう長官に具申をいたすつもりでございます。
  65. 吉田忠一

    吉田説明員 これについて辞表を出したかどうかということでありますが、まだ事件は私の責任で解決をいたしております。事が起つたからといつてすぐ辞表を出すとか、そういうことは私は軽々だと思つております。どういう責任をとるかということについては私自身の考えもございますが、また上司のお考えもございましよう。私は、建前としては上司に一切をまかすつもりでおるのであります。しかし、私の気分としてはまだいろいろ考えるところもあります。
  66. 下川儀太郎

    ○下川委員 この際、こういう不祥事件が今日まで何件あつたか、その点をつまびらかにしてほしいと思います。
  67. 加藤陽三

    加藤説明員 濱職の事件につきましては、私の記憶では、警察予備隊当時に三件か四件ありました。この種の事件でしますと、今度はおそらく窃盗とか横領というようなことになるのだろうと思いますが、今まで、昨年の十月から本年の三月までに起りました刑事事件は百二件であります。百二件のうちで、交通取締令違反が四十四件、窃盗が三十八件、傷害暴行が九件、横領が四件、詐欺が三件、その他四件、こういうふうになつております。
  68. 稻村順三

    稻村委員長 保安庁の種々の汚職につきましては、本委員会といたしましては今後も十分に追究をいたして参りたいと存じますが、本日は一まずこの程度にとどめ、次会は公報をもつてお知らせいたします。  行政機構の改革につきましては、明日中に資料を提出するとのことでございますので、来る二十三日の予定にいたしておきたいと存じます。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後零時五十六分散会