○橋本(登)委員 第四班といたしまして、九州地方の調査結果を御報告申し上げます。
すでに他の各班のお話がありましたが、今回の調査は、これを要しまするに
電気通信事業につきましては、昨年の第十六国会において、電信電話料金の値上げを伴う公衆電気通信法の議決の裏づけとなりました電信電話拡充五箇年計画の第一年度が、どんなぐあいに実施されたか、どの程度の成果が上つているか、またその実施成績から見て、さらに計画変更の必要があるかどうかという点に帰着するであろうと存じます。また
電波管理の関係につきましては、去る第十九国会における定員法の改正が地方の
電波行政にいかように響いているか、
NHKの料金値上げを伴う収支予算、事業計画の
実施状況、ことに本
委員会の附帯決議がいかように反映しているか、なお
民間放送の増加に伴つて
民間放送の育成状況及び
NHK放送との関係がいかようになつて来たかを主眼として調査を進めたのであります。さらにまた
放送法につきまして、立法当初から予想されました
根本的改正について、かねて政府の言明があり、本
委員会においてもさきに小
委員会を設けて調査を続けて参
つたのでありますが、調査の機会をもつて、各地方のこれに対する世論、動向を探ることがきわめて有用であると思われたのであります。
調査班といたしましては、九州
電気通信局及びその所轄電気通信部、
電話局、電報局並びに九州
電波監理局及びその管内における
日本放送協会の
放送局、一般
放送事業者の
放送局等十五箇所を視察し、それぞれに当事者の説明、意見、希望等を聴取いたしましたほかに、福岡市においては特に各界人士約三十名の会同を煩わして、
電波法制及び
電気通信事業に対する参会者の意見を聞き、また各地で行われました
記者会見の機会をも同様に利用することに努めたのであります。以下、その概要を申し述べることといたします。
九州地方は、産業経済上から見れば相当開発されてはいるが、炭田地帯を除いては、それが高度には至らず、就業総人口の五九%を占める農林、水産業についても、温度、地方等に照し、科学的に運営されるならば、さらに幾割かの価値の増加ができようと思われるものがあるのであります。しかも九州地方は、大小の離島二千有余を擁して、常に台風の進路にさらされ、風水害の反復を余儀なくされる状況にあることは御承知の通りであります。従つてここに根本的、恒久的対策が打立てられまして、総合的、科学的の開発計画を積極的に推進することがきわめて肝要のこととなるのでありますが、申すまでもなくこれがためには、電気通信は最も緊要な基盤であり、
ラジオ放送は主要な媒導体となるものであり、ともに先駆的な役割をになうものであります。
最初に
電気通信事業より申し上げることといたします。公社の電信電話拡充五箇年計画の第一年度として、昭和二十八年度には建設費四十億円が九州管内に投入されたのでありまして、これは従来の年度割当額のほぼ倍額に当るものでありますが、たまたま同年度には、ほとんど九州全域にわたる風水害の応急復旧及び奄美大島の復帰に伴う保全、建設等の工程が加わることとな
つたのであります。幸いに公社関係当局の努力により、これらの工程が完遂されました上に、拡充計画の実施が能率的に進捗されまして、第一年度の実績として相当の見るべき成果が上
つたのであります。
これを一般市外回線について見ますと、二十八年度末においてその管内回線数は三千二百余りとなり、前年末現在数に約二五%を増すこととな
つたのであります。すなわち管内外回線数の増加とも相まちまして、これによりサービス面において、市外通話の平均待合せ時間は、前年度とにらみ合せて長距離通話の二時間五分が五十六分となり、中距離の四十二分が三十七分に、近距離の四十分が二十四分にと、それぞれに五五%、一二%、四〇%の短縮を示すこととなり、従つて市外通話の完了率も九一・七%、すなわち前年度に比べて一・二%の上昇を見せているのであります。なおこのサービス面の改善によりまして、通話種別の構成率にも異動を生じまして、直轄局の平均における特別至急通話は二四%が二二・七%に下り、普通通話は五三%が五四%にわずかながら上つておるのであります。
電話の加入開通数についてみますと、年度内の増加は、前年度末現在数の二%弱に当る一万五千加入でありまして、年度末現在総数は十五万四千余となつております。この管内総加入数は、全国百七十六万余の加入総数に対して八・七%に当るのでありますが、ここに注目すべきは、この全国比率が九州について二十五年度の九・七%から九・二%、九・一%と逐年低下し、二十八年度にはその低下率が特に著しくなつていることであります。しかも、現に総需要約五万と推測せられ、積滞数として現われる顕在需要二万四千をかかえておるのに対し、二十九年度に予定し得る新規の開通数は一万三千にすぎないのであります。たまたま二十九年度の建設費は、前年度の一割減の三十六億円となつておるのでありまして、これについて地方においては、公社の拡充五箇年計画が中都市以下にきわめて薄いとする、いわゆる大都市重点主義に対し、とかくの批判が行われているのであります。接続完了率は、自動式平均において六九・九%、すなわち前年度より四二二%を増し、共電式平均においては引続き八〇%を維持する状況にあるのであります。また一方電報についても平均して、所要時間が短縮され、誤謬の減少を示しているのであります。
局舎の建築状況を概観いたしますと、昭和二十八年度においては建築費総額十三億七千万円をもつて、土地一万七千坪の買収、局舎の新築千七百坪、増築一千坪の工事が進められ、二十九年度においては新増築約四千八百坪の予定計画を実施中でありますが、いまだもつて老朽、狭隘局舎を一掃し得ないばかりでなく、郵政省との共同局舎はなお四十を数えるのであります。局舎の新築等について、地元市町村から敷地の斡旋、債券の引受等の協内をもつて、積極的な熱意の示されるものが少くないのでありますが、調査に際し、大分市の電通センタープランの実現促進、日田電報
電話局の新築促進、久留米ではすでに敷地買収済みの
電話局舎増築の陳情を受けたのであります。
電話の改式、加入区域の統合等について、雑餉隈電報
電話局関係の五箇町村連合の直接陳情も受けたのでありますが、都市隣接町村及び合併町村関係のこの種要望には、まことに熾烈なものがあるのであります。
局舎の老朽、狭隘にかかわらず、機械設備等の現況持続を余儀なくされ、またはその増設計画を推進するために、職場環境の悪化など職員の能率増進要件を阻害することになるおそれはないか。この点については、局舎の保全実施面のくふうにおいて鋭意改善に努めておるようでありますが、この面からの間接的影響も考えられまする職員の健康状態について、二十八年度第一回定期健康診断の結果を見ますと、療養中の長期欠勤者三・七%、要療養者三・六%、要注意者五・八%が、管内総員に対する割合となつて現われているのであります。すなわちこれを合せますと、病弱職員数は実に総員数の一二・一%となるのでありまして、それだけ業務陣容に脆弱性を加えることになるのでありますが、申すまでもなくこれは職員福祉の面についてきわめて重大な問題であるとともに、要員の能率的配置、人件費の効率的使用等に関して、
事業経営上はなはだ遺憾な事象と申すべきであります。
爾来医療施設、健康管理等の強化に必要の措置もとられまして、漸次この事態は改善の方向にあるようでありますが、さらに一層の努力を、いわゆる予防医学的見地における未然防止策に傾注すべきことが強く要請されるのであります。これに関連して福岡においては、交換室にも器械室同様に冷房を設備するとか、専属医の配置基準職員数を五百名に改めてほしいという要望もあり、また職員の住宅難救済も訴えられたのであります。
次に翻つて業務取扱いの状況を一瞥いたしますると、二十八年度は前年度に比較して、電話の市内通話呼数は五・四%を、市外通話度数は一四・五%をそれぞれ増加し、電報扱い数も四・四%を増加しているのであります。これを事業収入に照しますと、収益では電話収入の三六・九%の増加で目標額の一〇一%、電信収入の一五・五%の増加で目標額の九八・九%となり、総額において二六%の増加をもたらし、これに対する事業費支出額は二四%の増加でありまして、予算額に比べて二・九%の減少を来しているのであります。
以上の調査から見て、次のような意見を申し上げます。
一、九州地区を熊本通信局で管理しているわけであるが、交通上、経済上、電信電話施設状況より見て、北九州地区と南九州地区に二分すべきである。たとえば福岡通信部の一県地区だけで全九州の職員数で四五%、建設工事五〇%、電話加入四〇%、事業収入三五%を占め、経営規模の点では四国通信局に匹敵し、収入金額一倍半に当るのであります。このような組織上、機構上の無理があるため、通常工事のときですらも南地区より応援を受けており、緊急のときには台風災害等には定員配置のやむを得ざる不均衡から、大量の移動を行わざるを得ない状況であります。
この無理を補うため、請負量を相当に増加して、現状は直営と相半ばしているようであります。これは適当の措置であつて、事業量の十分でない地区に無理に直営工事を多くすれば、事業量に対して不必要な過員を当然に多くせざるを得ないのでありますから、積極的に請負制度を強化すべきであり、事業量の相当多量の地区は比較的に直営工事の多いのが当然であります。公社は官庁経営ではないのでありますから、その機動性は十分に発揮すべきであつて、常に経済的効率を考慮すべきであります。
二、九州地区の施設状況は標準より遅れているようであります。これは一つには北九州と南九州との産業上の全く相反する産業帯であるため、電話の全地区への発展が促進されず、局部的になつたこと、年々の台風による風水害のため建設費の相当量が復旧費に食われること、これは不当であるが従来直営工事主義の建前上、及び地区独立採算制をある程度とつているためにやむを得なか
つたのであるが、この機会に一掃すべきであつて、復旧と施設拡充とは全然切離して施策すべきであり、そのためには請負工事制を積極的に利用すべきであります。
特にこの地区は例外なしに台風を受ける、すなわち通過地区になつているのでありますから、建設方式を経済採算を度外視して、台風防禦の態勢としての施設を行うべきであります。裸線市外線のごときは、原則として一日も早く撤去すべきであつて、長い目で見ればこれが経済的であり、社会治安、防衛上にも欠くべからざる施設であるわけであります。無線の並用も考えられ、地下ケーブルを幹線の基本とし、山くずれ等を考慮に入れての地勢の使用等、幾多研究すべき点が多いようであります。
三、今日の行き詰まりの原因は、右二項の状況より極端に局舎建築費が繰延べられ、あるいは着手がおそすぎたため、ほとんど例外なく今日では
電話局舎の増改築より始めねば、加入電話、市外電話の拡充が実施できない状態であつて、福岡
電話局舎のごときその顕著な例であつて、近く完成を見るので多少の緩和を見ることができると思われますが、九州の主要都市の実態は福岡と同様の劣悪な状況にありと見てよいようであります。換言すれば
電話局舎、市内外線の整備ができれば、収入の点で格別の向上を見るのではないか。現状ではお互いに制約し合つて、収入向上を阻んでいると見ることができるようであります。電話加入率が全国に比し、二十五年度の九・七%から、九・二%、九・一%と年々低下していることは、二項及び三項を原因としており、現存積滞数二方四千はおそらく潜在を含めての総需要数の三分ノ一以下ではないかと推測され、二十九年度に予定されている一万三千では、全需要の二割程度しか十分できないと見られるのであります。
接続完了率が比較的に良好の状態にあるのは、必要需要の状況を示しているのではなく、長い間の電話利用の困難さから習慣づけられ、利用性を極端に制約されていると見るべきであつて、いわゆる利用者が極端に加減して利用しているという理由にほかならないと思われます。従つてある程度電話施設状況がよくなつた場合、一加入当りの収入が減少するかのごとき結果を見ることが予想されるので、電話利用の宣伝普及について格別の措置が必要と思われるのであります。一般に公社は電話利用宣誓ついてまだまだ不十分であります。たとえば東京・大阪のごとき画期的体制(準即時)が完成されているにもかかわらず、一般人の利用はあまり増加されていないようであつて、具体的な宣伝方法によつては一般人の利用を増加せしめることができるし、これはデフレ現下の増収対策の一つでもあるわけであります。
四、都市隣接町村の合併及び町村合併促進法の制度による町村合併の促進に伴う対策であります。今日では全国的に相当数に上つており、この必要施設費は莫大なものになると思います。これに対して明確な対策ができていない。目下方針を策定中といわれますが、一日も早く決定し、これは末端にまで通達しませんと、不必要な混乱を生ずる危険があります。すなわち無制限に数局を一箇所に吸収合併することは技術的にも不可能でありますから、基準を明らかにすべきであります。町村合併の理由の一つに
電話局の改式、統合ができるからであるという理由をつけてあるところもあるほどであつて、見当がつかないということであつては、混乱の原因となるわけであります。またこの施策を実行するためには、相当多額の費用を必要とするのでありますが、もしこれを従来の建設費より賄うものであれば、五箇年計画の遂行は不可能であるばかりでなく、公社としては独立採算制を強要され、国家の要請により緊急の費用をしかもただちには収入減ともなつて来る施策を実行するのであるから、この施設の財源については当然一線を画すべきであつて、政府当局とこの点について協定を行うべきものと考えるものであります。これに類似して従来ともにあいまいにされていた未開発地の電話拡充、不採算地区の電話施設について、公社は政府当局とその財源について協議し、基本方針をきめるべきであると思います。現在の公社の財源は、政府資金の投入を原則として打切られています。政府が政府資金を原則として打切るためには、未開発地区(
北海道及び東北地区のごとき)不採算地区の電話施設費について、政府はその財源を考慮すべきであります。たとえば採算には五箇年以上の時日を要する地区の施設には、政府資金をも
つて施設を行うとか、ある基準によつて政府資金の投入を義務づけるべきものと思います。公社の
公共性ということは莫大なる損益を無視して施設すべき義務を負うというのではなく、独立採算性を前提として全国普及の義務、文化向上の義務、産業効率向上の義務を負うのであつて、これには限度があり、その限度は独立採算制であるが、これにも一定の限度があるわけであります。すなわち料金に課するのには限度があります。大都市利用者に極端な負担を加えることは、電話利用の順調な効率を害し、施設費と料金との極端なる不公平を来すのであります。その結果は都市中心の電話会社の設立を要望するものが現われないとは言えないのであります。この点については政府及び公社において慎重に研究すべきものと思います。
五、健康管理の問題であります。九州地区では長期欠勤者三・七%、要療養者三・六%、計七・三%となつており、要注意者は五・八%であります。この数字は他地区と比較して特に悪いというのではないが、全体的な問題として、約六%が就業不能の状態にあることは重大視すべきであります。公社としては約一万人の病人をかかえているということであります。これらを療養すべき病院、療養所等の施設を完備すべきはもちろんでありますが、この状態では病人をつくることと病院をつくることとが競争状態であります。病院をつくるよりはできれば病人をつくらない施策を講ずべきであります。たとえば年二回の定期健康診断の実施、専属医を五百人に一名とする。嘱託医制度の完備、健康医学的措置、すなわち健康管理、疲労度に応じてのビタミン等の注射臨床等によつて、要療養者の増加を防止すべきであります。この予防医学的施策に対してはより多くの予算を計上し、欠勤、要療養者を四%以下に食いとめ、要注意者を低下するよう積極的な方針を確立すべきものと思います。
なお鉱業特設電話であります。これは
有線電気通信法及び公衆電気通信法の実施に伴つて、その性格がかわり、共同業務用の通信または相互緊密関係を有する業務用の通信のために設置した私設電話設備とな
つたのであります。従つてその通信目的は限定されることになり、またこれに加入回線を収容した従前設備の私設交換機があるときは、その交換設備と内線電話機は、公衆電気通信設備の構内交換電話、すなわちPBXということになりまして、原則としてそれらの設備場所は加入者の占有に属する構内に限られ、その使用も加入者に限られるに至つたことは御承知の通りであります。今回たまたま大牟田において知つた事実であつて、もとより実査までのいとまはなか
つたのでありますが、設置者を異にする多数の設備を相互に接続できるほか、加入回線を収容する交換設備によつて、約三千に上る各設置者所属の従業員の住宅内設備をも接続できるような、従前の状態をそのまま放任してあるやに察せられるものがあ
つたのであります。九州管内で他にも同様事例があろうかと思われますが、とにかく大牟田としては、かような電話設備が数において電話加入数を上まわるのでありまして、公社経営保護の見地からはなはだ憂慮されるのであります。もとより公社設備の収容力にも関係はありましようが、等閑に付すべきでないことは明らかであります。
電気通信事業の関係は以上にとどめまして、続いて
電波管理の関係について申し上げます。まず
電波管理行政を展望いたしますと、管内現在の無線局設備は、公社の公衆通信用の定点設備四十二局、
NHKの二十三
放送局、
民間放送の九局等を含め千八百近くに上り、全国総数の一三%を占めており、高周波利用設備は七百余りで、全国総数の二一・五%、
有線放送業務施設は千二百余で、全国総数の一二・五%に当るのでありまして、最近一年間の増加率は無線局が三九%、
有線放送施設が二〇%となつているのであります。
これらの設備数から見ると、九州は無線局については関東に次ぐ第二位、
有線放送では
北海道をしのぐ第一位となるのであります。
かような情勢が行政措置の種別、件数に反映するであろうことは想像にかたくないのでありますが、管内無線局設備の五一%は船舶局として六十数箇所の停泊港にわかれるものでありまして、検査措置等をそれに適応させる必要上、戸畑、長崎、油津の三箇所に出張所が設けてあり、また国際的ないし全国的にますます重要性を加えて来る電波監視部が福岡及び都城に置かれてある関係上、業務の運行は相当複雑であり、要員の配置も従つて多岐となることを避けられないのであります。
電波管理要員について、全国の定員三千四十五人の約四・三%を本年度内に整理し、終局的に約七%の整理を目標とする行政職員定員法の一部を改正する法律は御承知の通り、遂に第十九国会を通過し、去る六月七日公布、即日施行されたのでありまして、視察当時はまだこれによる臨時待命締切以前であ
つたのでありますが、たまたまそれに伴う部課長以上の一部異動に遭遇したのであります。九州管内の要員整理につきましては、管理対象の量における増加の現実と、質について予見される拡充の必要とに直面して、対策の具体化に至大の困難を感じ、管理要員の減員はほとんど不可能に近いものとして、この間における当局の苦慮が察知されたのであります。
電話監視の状況から見ますと、本年五月中の不法容疑電波捕捉件数は九百十一でありまして、これは実に最近全国の年間捕捉数の、一箇月当り千三百余件の六九%に当るものであります。一方同様の見方で、電波測定の発見事故件数は三五%、運用監査の事故件数は一二%となるのでありまして、これがもし規正、指導等の成果であればはなはだけつこうでありますが、むしろその真相は、不法電波監視を厳重にする必要上、この面の作業が余儀なく手薄にされた結果ではないかとも推察されるのであります。
視察に際して、九州電波従業員組合の求めに応じて、その代表数名に面接したのでありますが、それは行政改革問題に関連して、
電波行政の拡充、要員増強の必要性につき、本
委員会の尽力を謝するとともに、今回の定員法改正が、業務増進を無視する整理に帰着した不合理について、実情に基いてつぶさに陳情するものであ
つたのであります。
要員の整理に伴う事務の簡素化、作業の能率化等については、本
委員会の席上でしばしば政府の抽象的説明は聞いたのであります。この点につきましてあるいは無線従事者の検定、船舶無線の検査等に研究の余地もあろうかと思われるのでありますが、今回の調査において、具体案の一つとして
周波数バンドの広いアマチユア無線につき、
電波法の規制に段階を設け、少くともその設計変更検査は省略できるものとしたいという希望意見が聞かれたのであります。
管内無線局開設の現状を一覧いたしますと、設備者の業務別は三十を越え、局種別は約二十にわたるのでありまして、それぞれに大小多少の問題を伴うのでありますが、そのうち主要なものの概略を次に申上げることといたします。
その第一は公社に関連する事柄であります。九州管内における公社の無線通信設備は、短波、超短波の回線をすべて、これを幹線、支線の系統数から見ますと現在四十系統を越え、全国比率で約一五%に当るのでありますが、なお離島開発その他産業振興関係について、予想される通信需要の増加に応じて、無線通信系拡大の必要が前途に横たわつているのであります。
かような事情から当然のことでありますが、公社は現に公衆通信業務用として、ある範囲の未使用
周波数を保有しているのであります。この未使用波長をめぐつて、あるいは建設省の洪水予防業務用に超短波の希望
周波数が拒否されたとか、あるいは電力会社の開設免許申請を公社の超短波政策が妨げているとか、喧伝されるものがあるのでありますが、およそ公共の福祉のためにする電波の開放が、公衆通信業務の独占、保護はもちろん、広く国民経済の擁護と矛盾すべきでないことはもちろんでありまして、この間の調整には行政当局の良識にまつべきものが多いのであります。
要するに無線利用は非常に拡大されていますが、乱雑の観があります。電波は国民のものであるという観念は、個人の営利企業の利益追求のためにのみ電波が利用されてはいけないということであります。すなわち公共の利益に奉仕し、文化の向上に役立つことが前提であります。従つて通信に利用される場合は公衆通信が優先であるべきであつて、政府、公社ともにこの起点より公衆無線通信の根本方針を策定して、無線利用の混乱を防止すべきであります。
第二は、主として
日本放送協会関係の事柄であります、
NHKの全国
放送設備について、その約一五%が九州に置かれているのでありまして、その
受信契約者数は全国総数の約一〇%に当り、普及率においては、全国最低の四国をわずかにしのぐ程度にあるのであります。あるいは離島など無電灯地区の多いこともその原因の一つにあげられるのでありますが、市部においてすら
放送局開設の根本基準以下の電界強度にあるものが十数箇所を数える実況でありまして、これから推しますと難聴地区の少くないことがその主因をなすものと思われるのであります。
これにつきまして、日田市外三箇所の中継
放送局の復活及び大分、佐世保の増力、佐伯の第二放送実施が地元の要望となつているのでありますが、視察の途次、日田市では市長及び市議会議長から、特に熱烈な直接陳情も受けたのであります。
この間の対策につきましては、協会の地域別放送の充実計画その他本年度の収支予算及び事業計画の承認に附帯して行われた本
委員会の決議の趣旨に照しても、すみやかに具体化をはかるべきであると存ずるのであります。
なお北九州地区においては、モスコー放送その他外来電波の電界強度が強く、各地で混信妨害を受ける現況でありまして、これを救済するため福岡の五十キロワツト増力のすみやかな実現が強く希望されているのであります。
混信の具体的対策として、
NHKは昨年中、
ラジオ大分外四つの
民間放送の開設にあたり、あらかじめ三百三十余の地点について予備調査を行い、それら各局の放送開始後には、約九十箇所に臨時相談所を設けて、二千三百有余名の
聴取者指導を実施したのでありまして、その結果、目下
民間放送に起因する混信妨害はほとんど問題となつておりませんが、外来電波については前申しました北九州地区以外で、人吉局の千百六十KCが、現に沖繩のVOAから電界強度十四・五ミリボルトの強力な妨害を受けている事実があるのであります。
混信対策と並んで、絶えず懸案と取組んでありますものは、受信障害防止対策であります。九州における受信障害状況は漸次変遷して参りまして、現在障害原因の最高率を示すものは螢光灯の五三%であり、小型電気機械の二一%がこれに次ぎ、送配電線は最低の七・五%となつているのであります。
これについて
NHKとしては、受信妨害対策協議会の育成、指導に努める一方、年三回の障害一掃運動月間を実施するなど、相当の努力を注いでおるのでありまして、視察当時、八代市においてはそのモデル運動が展開されていたのであります。個々の受信障害を除去する措置として、実効を収める道の大部分は、申にまでもなく巡回相談であり、ひいては、
受信機修理業務でありますが、この修理業務については御承知の通り
放送法第九条によつて、
NHKには郵政大臣の指定した場所に限ることに制約が加えられているのであります。現在九州における
NHK修理業務の指定町村数は五百三十一でありまして、これは約千三百の市町村全数に対して三五%にとどまるものでありますが、巡回相談によるその最近の実績は、年間開設回数八百回、修理台数一万二千台となつているのであります。
NHKの巡回相談はこのほかに、後援の名のもとに当業者に協力して行われるものがあるのでありまして、その年間千二百一回、一万六千台の記録が前の成績に加えられることになるのであります。かような実情は、
NHKに対する一般信頼度の点から首肯できるものがあるのでありまして、協会に対する制限緩和の必要を感じさせるものでありますが、たまたま福岡において同地
ラジオ商工組合長が、業者の全国的意向であるとして、この制限撤廃を主張された事実があるのであります。
受信機に関する技術指導その他
ラジオの普及策に関連して、九州の持つ特異性の一つとして、
共同聴取施設の顕著な発展を指摘することができるのであります。これは前にも申しましたが、その発祥地として当初急激な発達を遂げた
北海道の現在
施設数四百九十八に比べて、約四%を凌駕する五百五十一となつており、なおますます増加の趨勢を示しているものであります。この
共同聴取施設を通じた現在の
受信契約者は、全九州において七万九千を超え、契約者総数百三十三万七千余の約六%に当るのでありますが、各県中の最高は、全国普及率では宮崎県と並んで最低位にある鹿児島県の四百二十七施設五万六千三百二十五加入であつて、全県契約数十九万四千余に対し、実に二九%に当るものであり、真に注目に値するものであります。この鹿児島の場合は、無電灯地域をその存立の基礎とする
北海道とは事情を異にしているのでありまして、
受信機の個人設備を困難とする経済事情と、戦災者、引揚者等の生活難に促されて勃興した此の種施設の小企業化とが両々相まつて、ここに至つたものであります。なおこの種の
共同聴取は、今後離島の普及開発対策について、主要の地位を占めることになろうと思われるのでありまして、これに対する指導方策の確立とともに、あるいはその施設者に委託集金の道を開き、それを通じて加入者の
受信契約上の負担の実質的軽減をはかるなど、特別の助長策も必要であろうと考えられるのであります。
次に番組編成の問題になりますが、地域的社会生活に直結する
放送番組を拡充することが、実に本年度協会事業計画実施上の一つの重要課題でありまして、特に教育、産業、文化の向上に適する
番組編集がその重点となつているのであります。
九州管内のローカル放送の実況について、これを見て参りますと、編成方針としては、全国番組との表裏即応、管内各局間の出入中継、隣接他管内との番組交換の三点を骨格とし、パネル調査の結果を基本に、投書、モニター、その他収集される各方面の批判を参酌することとしておりまして、編集の細目については、聴取層の業態構成などに照して、各種別放送の時間、回数、内容を定めているのであります。
その実施面を放送時間から見ますと、従前の一日平均三時間程度の編成量は、年度初頭から十五分、二十分と漸次増加され、現在では大体三時間半程度に延びまして、主として農事、社会、教養等の部門に増加の割振りがなされている状況であります。
第三は、
民間放送事業の状況であります。九州の
民間放送は現に八社九局によつて営まれておりますが、目下免許申請中のものとして、現在経営の三社による増設局三局、新規経営もくろみの四社による七局があるのであります。これらはもちろん標準放送でありますが、さらに
テレビジヨンについても二社による四局の免許申請が出ているのであります。
既設局のうち六局は、いずれも昨年十月以降の放送実施にかかるものでありまして、今回視察といたしましたのは
ラジオ大分、
ラジオ熊本、久留米の九州朝日、福岡の
ラジオ九州の四局でありますが、そのうち三局はいずれもこの開局後、日の浅い方に属し、しかもたまたまその開設者、資本構成または運営の実体が、またいずれも新聞社と密接なつながりを持つものであ
つたのであります。
視察各局の
経営状況につきまして、収支をとんとんと明言されたのは二局で、他の二局には黒字または赤字が推察されたのでありますが、それらを時間売りの状況から見ると、最低三時間、最高九時間半であり、収入の割合から見ると、広告主の区分では、地元五〇%ないし六五%、東京、大阪その他が三五%ないし五〇%となり、放送形式の区分では、時間売りが五〇%ないし八〇%、スポツトが二〇%ないし五〇%となるのでありまして、比較的広い開きを示すのであります。
番組の編成または放送の実施につきましては、各社それぞれに特色の発揮をきそつているようでありまして、
ラジオ九州では、マルチ・ステージ・サンプリング方式の聴取状況調査、
ラジオ大分では、標準語護持などを自負しておりましたが、一面、自主番組の編成では、共同製作を目的として、
ラジオ九州以外の各社が五社会なるものを結成し、共通の九州番組を編集しており、
ラジオ大分では、そのほかに南海、中国の両社との共同製作によつて、瀬戸内番組を放送しております。もつとも、これら共通番組の放送実施については、必ずしもネツトワーク方式をとつてはいないのであります。
ネツトワーク関係について、
ラジオ熊本では専用線を得られないことを遺憾とし、
ラジオ九州では提供される中継線の音質不良を訴えられたのでありますが、
民間放送の経営状態について、すでに一部から助成要望の声も聞かれる情勢から見通しまして、経営の統合に至らぬまでも、運営のネツトワーク化が遠からず醸成されるものと思われるのであります。従つて公社の計画に対して、この場合に適応する相当の措置が要請されることになるのでありますが、現に
NHKの専用中継線についても、大分第二放送用の如き、質の改善を要求されるものがあるのであります。
民間放送の現状につきまして、あるいは乱設の批判が聞かれ、あるいは
NHKの
周波数、
娯楽番組等の制約が要求され、あるいは民放相互に放送区域外宣伝の行過ぎ牽制の必要を力説されるなど、各種の問題が提供されたのであります。その多くは論者の利害に密接するものであろうかと思われるのでありますが、その中で
聴取者の利益保護の見地からして放置できない問題としては、混信について九州朝日放送が雑餉隈所在のVOA及び福岡の
ラジオ九州に妨害され、一方長岡付近において新潟放送を妨害すること、並びに
ラジオ熊本のゴールデンアワーが京都放送に妨害されることであり、また放送電力について村落の電界強度を〇・二五ミリボルトとする現行根本基準は、経験に照して不適実であるということであります。いずれも当局の参考に供し、善処を促したいと存ずるものであります。
最後に、福岡において催しました各界人士の会同の席上、開陳されました
放送法の改正等に関する意見でありますが、これは大阪、
名古屋の場合について、第二班から報告されたところと重複する点も多く、かつまた別途配付されました報告書及び速記によつて御承知いただけることと存じますので、省略のことといたしまして、以上で私の報告を終ります。
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