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1954-03-22 第19回国会 衆議院 電気通信委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十二日(月曜日)     午後二時七分開議  出席委員    委員長 成田 知巳君    理事 岩川 與助君 理事 塩原時三郎君   理事 庄司 一郎君 理事 橋本登美三郎君    理事 小泉 純也君 理事 原   茂君    理事 甲斐 政治君       齋藤 憲三君    中曽根康弘君       片島  港君    松井 政吉君       三宅 正一君  出席政府委員         郵政事務官         (電波監理局         長)      長谷 愼一君  委員外出席者         参  考  人         (日本放送協会         長)      古垣 鐵郎君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     岡部 重信君         専  門  員 吉田 弘苗君         専  門  員 中村 寅市君     ――――――――――――― 三月二十二日  委員松前重義君辞任につき、その補欠として三  輪壽壯君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月二十日  坂井局電話海南局所属替えの請願(田中織  之進君紹介)(第三六九七号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会の  承認を求めるの件(内閣提出承認第一号)     ―――――――――――――
  2. 成田知巳

    成田委員長 ただいまより開会いたします。  前会に引続き、放送法第三十七条第二項の規定に基き国会承認を求めるの件を議題とし、質疑を続けます。質疑の通告があります。松井政吉君。
  3. 松井政吉

    松井(政)委員 大臣のおいでになるまでの間、NHK当局並びに電波監理局事務当局質疑を続けたいと思います。  最初考え方を明らかにしておきますが、放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会承認を求めるの件、この案件についてはやはり予算並びに事業計画等承認することは国会として当然であり、また法の示すところでございます。けれどもその基礎をなすべきものはやはり毎年、事業計画とそれから収支予算等の三十七条第二項できめられる重要なる基礎となるべきものは料金決定である、こういう聴取料決定基礎になるのだ、こういう立場において質問を申し上げるところの了解を求めておきたいと思います。  そこでNHK当局にお伺いをいたしますが、今回の十七円の値上げを伴う料金その料金基礎にして編成されました予算でございます。この予算に対する考え方は、十七円値上げ予算を当初から考えておつたのであるか、それとも政府当局財政計画等に伴う見解をただしながら到達したのがこの予算編成となつたのであるか、この経過と基本的な考え方についてお伺いをいたしたいと思います。
  4. 岡部重信

    岡部参考人 経過的な点について申し上げますと、経営委員会において審議いたしまして、七十円という予算協会として一応決定した次第でございます。そのいろいろの観点に立ちまして新規の事業というものについては、この際どうかというような問題、その他この予算値上げ予算でございますのでそれらの点もよく検討いたしまして、再度経営委員会を聞きまして、七一円の予算はこれを六十七円ということに改訂して、協会として提出した次第でございます。
  5. 松井政吉

    松井(政)委員 当初七十円と決定をしたのが六十七円に経営委員会でなつた、こういうことでございますが、その当初七十円と決定して六十七円にきまるまでの間における、経営委員会政府側との当然公式ではないかもしれませんが、非公式な打合せ等がございましたかどうか。打合せをいたしましたならば、どういう形において予算編成についての打合せをしたか、それをお伺いしたいと思います。
  6. 岡部重信

    岡部参考人 その経過につきましては、私どもとしてもいろいろの観点からこれを考えなければならぬというので郵政の御意見伺いました。しかし郵政省からはこれを何円にしろというようなお話はございませんでした。
  7. 松井政吉

    松井(政)委員 これは大臣がおられないので恐縮でございますが、長谷局長でけつこうでございますが、こういう場合にどう考えたらよろしうございましようか。修正権の問題は過日論議になりましたけれども、私はそういう修正権というような局部的にものを考えないで、もし現在の法律に対する立法解釈が、局長がこの前答弁された通りだといたしますると、予算編成にあたつて料金については国会で幾らにするかということがきめられなければ聴取料はとれないのですけれども、その使い方内容については、要するにNHK当局が自由に編成をして、そうして業務の成績を上げるようにしなければならないという解釈がその次に出て来ると思うのです。その場合に内容使い方、あるいは業務運用のこまかい款項目算の問題については従つて料金の問題については、われわれが中心となつてきめられるけれども国会修正権がなければ政府にも修正権がないはずでございますから、内容についての干渉はできないはずでございますけれども、その場合の考え方をどのように事務当局として考えておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  8. 長谷愼一

    長谷政府委員 お答え申し上げます。御指摘のように政府におきましてて放送協会予算についてこれを修正したり、あるいはこれを調節をする権能はないものと承知いたしております。ところが実際問題といたしまして、放送協会予算国会に御承認を得るにあたりまして、イエスかノーである、こういうふうに考えておるものでございますから、かりに政府意見が、放送協会予算なりあるいは事業計画なりが適当ではないという意見を出した場合には、出し直して来るというようなことになるわけであります。従いまして予算性質上、ある期間までにこれは御承認を得なければならないという時間的な制約のある点等考えまして、協会が最後的に意思決定される前に、郵政省なり政府意向をあらかじめ聞かれるということは、実際問題として今回あつたわけでございます。その際に郵政省としては金額等の指示はしなくとも、こういう考え方ほどうであろうかというようなことをお話をした事実はございます。しかしながらあくまでも協会は自主的に予算編成する権限を持つておるのでございますから、郵政省のそういう意見を聞く聞かないは第二義的でございまして、それを参考にされて内容をかえるか、かえないかは、まつたくこれは協会の自主的な意思によられるわけであります。従つて今回におきましては、端的に申し上げまして政府意見を聞きただされたものですから、それに対してある程度の御意見はあらかじめ申し上げたことは事実でございます。これはどこまでも協会責任者が御参考にされる程度のものであつたと私ども解釈をしております。
  9. 松井政吉

    松井(政)委員 それで大分明らかになりましたが、なぜ私が予算全体の編成についてお伺いするかといいますと、御承知のように現在の法律に基くNHK公共放送を目的とする性格からお伺いをしておるわけであります。たとえばこれが国営なり国家管理公共放送をやらしめるということになれば、当然予算の審議の形態も違つて来なければならないし、財政法上の適用範囲も違つて来なければならないし、さらに予算について具体的な内容に至るまで、政府がこれを干渉でなくて、むしろ立案するといつても過言でないものが生れて来ようと思うのであります。そういう形では、たとえば政党内閣中心とした議会政治日本においては、常に内閣がかわるたびに予算編成方針違つたり、NHK公共放送としての性格が違つて来る、そういうことであつてはならないというので、番組に至るまで放送法第三条並びに四十四条等の規定に基いて、法の許す範囲において、自由なる活動の中にNHK公共放送が存在する性格だと私は現在解釈をしたいのです。こういうふうにわれわれは考えてよろしいのかどうか、現在立法における事務当局解釈を一応参考までにお伺いしておきたいと思います。
  10. 長谷愼一

    長谷政府委員 お答え申し上げます。ただいまお話の御趣旨につきましては、私どもはまつたお話通りだと考えております。
  11. 松井政吉

    松井(政)委員 そうなりますと、これは大臣の御見解についてはあとでお伺いをいたすことにしますが、ただいま私が申し上げたことに対して、事務当局側ではそういう考え方だ、こういうことであります。ところが、これはNHK当局にお伺いいたしますが、最近におきましては、ただいま私たち考えているような自由な立場において、番組編成の自由並びに四十四条による政治的中立ということについて、法律に基いて自由なる活動をしているかどうか、国民全体あるいは当委員会においても、全然相反する立場から、いろいろの非難を受けていることは事実であります。たとえば先般の委員会において、齋藤委員からこの前の放送、たとえばMSA等の問題についての街頭録音において、アナウンサーが行き過ぎだつたという議論が出ております。ところがこの間の公述人のどなたかがおつしやつておりましたが、私はまた逆な立場から、MSA問題等街録で取上げるという場合には、国民の中にはやはり賛成反対がある、国会論議の中でも、やはり反対賛成政党が存在しておるのであります。その場合に、厳正中立番組編成するとするならば、アナウンサーが行き過ぎるという形の前に――あのときには政府政務次官だけしか出ておらないのであります。MSA協定政府が提案しておるのであります。従つて提案者政府は当然このMSA協定の成立を望んでおる。それに対する反対立場国民がおる。反対立場政党国会分野にある、こういうことになりますならば、政治的中立の公正を保つためには、提案している政府当局とともに、賛成反対の諸君が国民の前に出て、街録の場合には公平なる取扱いをやるべきである、そうなつて参りますならば、アナウンサーは単なる取次でありますから、アナウンサー自身が行き過ぎだという非難をこうむらない立場における街録ができることに相なるのであります。これは過ぐる一例を申し上げたのでありますが、あるいはこの前の三木鶏郎の問題も、そういうことで批判を受けておると思いますが、そういう問題に対する本年度の事業計画番組編成等の問題について、どのようなお考えを持つていらつしやるか、NHK当局からお伺いをしておきたいと思います。
  12. 古垣鐵郎

    ○古垣参考人 お答え申し上げます。放送法の第四十四条で「協会は、放送番組編集に当つては、左の各号の定めるところによらなければならない。一 公安を害しないこと。二 政治的に公平であること。三 報道は事実をまげないですること。四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」ということになつておりますから、私どもは始終最善を期して、この四箇条に沿うように努力いたしておりますりにもかかわらず、いろいろ違つた角度から御批判を仰いでおることは事実でございますが、もともと放送というものは、その普及、到達、滲透というようなものが大きければ大きいだけ、その反響はいろいろな角度から起るのでございまして、いかなるときのいかなる番組といえども、それが同じようなレセプシヨンといいますか、反響は受けない。あらゆる種類の反響を受けるのでございまして、ほめられたり、けなされたり、感謝されたり、憤慨されたりするのでございます。それがいわば放送番組性格一つではないかとすら考えております。  そんなぐあいで、ことに第一線に出て放送いたしますアナウンサー立場というもの、アナウンサーの言動というものが、いかに重大でかつ機微であるかということは、私どももまたアナウンサー自身も痛感しておりまして、しよつちゆう間違いのないように、厳正中立、不偏不党という立場において、同時に国民にいかによりよく徹底させるかという努力をしておるのでございます。従いましていろいろの角度からそれがしばしば非難対象になることもありますが、同時にまたその非難対象になつたと同じものが、激賞の対象にもなつておりますことは、毎日のようにNHKに参ります投書、あるいは新聞ラジオ批評等も、同じものが新聞によつてまるで違つた批評をこうむつておるという事実もございます。また先ほど御指摘街頭録音の場合には、街頭の人の意見を聞くという一つのねらいがございまして、問題の性質によりますると、その提案者であるとか、あるいはその直接の関係者であるとかいう人は、しばしば説明役として出ているのでありまして、これは国会討論会とか、そういうような政治討論会みたいなものと違いまして、非常に狭い範囲街頭の声を聞いて、広い全国に聞かせて、さらに聞く人にそれぞれの判断をしていただくということでありまして、その場合には、その問題に最も直接あるいは親密に携わつておられる人を説明者としてつけることがございます。また場合によつて街頭録音の場合は、そういう説明者をつける必要のないこともありまして、そういう場合にはつけておりません。これはいろいろの討論会放送とは違いまして、両方の意見を出すとか何とかいう仕組みには今までいたしていないのでありまして、MSA街頭録音の場合もその場合であつたかと考えております。決して一方の意見を偏重するというような考えからいたしたわけではございません。  それから最後にこの昭和二十九年度の予算において、放送番組編集にあたつて、いかなる態度をもつて臨むかという御質問でございますが、もとより時局はますます重大になり、NHKの責務というものが非常に加重されていることを感じております。ことにこの委員会等における委員皆様の御意向等も、その点を非常に強調しておられますので、私どもは一層この第四十四条の、さきにもあげました条項に対して忠実に、そして大きな使命を達することが可能なようにやつて行きたい、そういう考えでございます。
  13. 松井政吉

    松井(政)委員 大体古垣会長の決意のほどはただいま述べられましたが、たとえばこういう問題についてはどのように考えておるかということを具体的にお尋ねいたします。というのは、ただいま当委員会議論されました、あるいは多くの公述人の方々――多くの公述人という意味は、公述人は各界を網羅したものでございますから、たとい六人であつても多くの人の声である、こう解釈して私は申し上げるのでありますが、その中にもいろいろの意見が出ております。たとえば公共放送性格というものを、ある一種の広報機関のように考えて、娯楽等公共放送としてのNHKはやらない方がよろしいというような御意見もありました。さらにまたNHKこそスポンサー国民であつて、特定のスポンサーとの間に、出演者等希望とかを取入れた番組でない独自の自由な立場において娯楽放送ができるのはNHKであり、そこに政治的にも公平であり、さらに番組編成の自由も第三条に規定をされているのだという御意見もあるわけであります。そこでNHK民間放送とが発達して参りました今日、放送法根本的改正のときに論議をされるのでありますけれども、従来と違つた角度において――違つたという意味は、従来の放送法で、民間放送の発達しない時代と同じような考え方でない立場において、日本公共放送というものの立場を堅持しなければならない時期に来た、このように私は考える。これは議論をされればいろいろわれわれにもりくつはありますが、当委員会において私はしよつちゆう言つておるように、イギリス公共放送一本で行つている、アメリカ民間放送一本で行つている。日本立地条件においてどれがいいかという議論は別にいたしますが、とにかく民間放送公共放送、二本建の問題を明確にわれわれは規定をしておる。その明確に規定をした中において、おのおのの立場国民に忠実に守らなければいかぬということになつて来ておるのが現実であります。従いまして従来の放送法のもとで、NHK番組あるいは国民に対処する考え方を、惰性でやつていいという時期ではなくて、新しい公共放送としての分野を今日画然としなければならない時期に来たように考えますが、そういう問題に対する構想がございましたら、片鱗でもよろしゆうございますから、参考にお述べを願いたいと思つております。
  14. 古垣鐵郎

    ○古垣参考人 お答え申し上げます。最初娯楽放送のことでございますが、先日参考人の中に、娯楽放送こそNHKがその模範を示す意味において公共的にやるべきであるという御意見と、また民間放送代表の方でありましたが、娯楽放送全部とは言わないけれども、この方面は少し少くしてもいいのではないかというような御意見があつたことを記憶しております。民間放送立場からそういうような御意見が出ることはきわめて当然のことでございますが、他方私どもといたしましては、正しいりつぱな娯楽放送というものは、もつとも公共的なものである。全国にわたつて公共放送を受持つておりますNHKといたしましては、模範を示す意味と、それからまた日本全国放送して、不幸にしてまだ民間放送が成立していない地方、あるいは民間放送を聞くことのできない立場人々にサービスをする意味からも、また同時に娯楽というものが国民生活において非常に大切なものである、働きかつ楽しむということが国民生活基礎でございますから娯楽放送については十分意を用いて、どの家庭におきましてもこれを聞いてはずかしくない娯楽、さらに進んでは働くことのかてになる娯楽生活に潤いを与え、働く意気を増させる娯楽を提供することはぜひいたしたいと私ども考えて参つておりますし、今後もそういう考えでいたしております。  次に一、二の例について、将来どういうふうにやつて行くかという御質問にお答え申し上げます。もちろん今日の日本放送事業というものは、アメリカ立場とも異なり、イギリス立場とも異なつております。そうして私どもは、この両者の長を入れ短を防いで行くべきものであると考えております。長を入れる点においては、公共放送及び商業放送がおのおの最善を尽して努力するということに尽きると思いますが、短をためるという点については、今後一層商業放送代表人々ども会合して連絡しつつ、貴重な電波をより有効に使うように、国民生活が、この放送事業によりましてできるだけ恩恵を受けることができるようにいたしたいと考えておりまして、あるいは事業計画交換であるとか、あるいは将来の事業の話合い、連絡協議といつたようなことを、単に番組ばかりでなくて、経営の全体についてそういう機会を持つて行きたいと考えております。また現実には商業放送事務当局の人は、非常に頻繁にかつ連続的にNHKに見えられて、いろいろと相談にあずかつております。さらにそういたしましてやはり全国的な責任を持ち、しかも放送法の大きな部分においてNHKについていろいろの規制がございますので、そのねらうところを十分発揮いたします意味におきまして、どうしても国際的視野に立つて教養番組の面に力を入れて行きたいと思いまして、ことしの正月私が全国放送いたした場合にも、その外郭について国民皆様に申し述べましたが、一つ国民全体があつて、そうしてNHK番組を通して、いわば国民意見交換の場、これを達成させますためにはいろいろ秩序手続をふんで行き、それから単なるバベルの塔にはならないようにして行くべきでありますが、適当な手続方法を講ずることによつて国民聴取者として意見を述べて、この意見が集約されつつ、NHKを通した一つ国民の声としてこれを国会に御連絡し、あるいは政府に通じ、あるいは問題の性質によつてその関係者国民の隠れたる声を通じて、さらにその結果をまた国民のそれぞれの方面に通じて、国民生活前進向上をはかりたいというような計画を持つております。さらに何と申しましても次代をになう青少年というものは非常に大切であります。この点において青少年教育ということに、NHKが一役を買いたい。終戦後日本学校の建築も困難な立場で、また破壊された関係上少い。さらに先生も戦争のために数も減つている。質も戦争のために理想通りに行つていない。また交通も非常に乱れている。そういう場合において、ラジオを通じて青少年教育の一端を受持つというようなことに、力を注いで参りたいというふうに考えております。そうしてその一つの例といたしまして、たとえば全国の大学校で学んでいる人をして、それぞれまたこれも秩序方法を考究いたしまして、大学生の声を集め、整理し、そしてだんだん各県、各地方一つのところを二年の間に盛り上げてピラミツド型にいたしまして、時代を背負う学生たちの声を取上げて、それを先ほどの国民の声と同じように、それぞれの関係当局、特に国会の方に御連絡を申し上げまして、そうしてその声がどういうふうに反響を呼んで行つたか、どういうふうに処理されて行つたかということを、学生の方に返して行く。さらに国際放送も持つておりますからここで取上げて、アメリカイギリス、フランスその他世界各国大学生の声と相交流し合せながら、外から日本大学生に呼びかける声、あるいは内から日本学生が諸外国の学生に呼びかける声、特にこの問題ではアジア地域学生、インドとかパキスタンとかシャムとかビルマとか、あるいは中国といつたような方面若人たちに呼びかけ、また呼びかけられつつ、世界若人が、かれらが孤立しているのではない、かれらが今日の世界よりもより明るい、より繁栄した幸福な世界をつくり得る、またつくらなければなららいという希望を持つようにして行きたいとしたならばどうであろうか。この場合、一年に一回の全国的な会合は、必ずしも中央であるところの東京ばかりを選ぶべきではない。場合によつて東北地方一つの町を選ぶのもよかろうし、近畿あるいは中国地方一つの市というようなところでもよろしい。そこで学生が一年中の総決算をして、そして学生らしい声をそこにまとめ上げて行つたならばどうであろうかといつたような考えを持つております。そしてそれは準備中でございまして、今年中には必ず形をとつてNHK番組に載ることと存じます。
  15. 松井政吉

    松井(政)委員 ただいまえらい経綸抱負をお伺いしました。御議論になつたことはなかなか妥当なことばかりのようでありますが、できるかできないかということが問題でございます。そこでただいまのお答えの前段の中に、非常な僻地といいますか、新聞が二日ぐらい遅れたりあるいは三日ぐらい遅れたりして、新聞を読んだころはもうニュース・バリューのないような山奥あるいは僻地がございます。有線放送を行つておりましても、まだ放送そのものを聞けない地域が多くございます。そういうところはやはりNHKが担当しなければならないことに相なります。その場合に私が一番おそれるのは、先ほど街頭録音の場合についても私なりの意見を申し上げましたが、たとえば政府の側から政務次官が一人出ておる。ところが集まつた聴取者の人にどういう意見があるかといつて、マイクを持つて歩く者はアナウンサー一人である。そうすれば僻地の人が聞いていると、何かアナウンサー政府政務次官がこうやりとりしているように聞えるので、齋藤さんの御意見のような意見も出て来る。それがさらにわれわれから見れば、新聞が二日も三日も遅れるところでこの街頭録音を聞いている者は、政府のえらい人がはつきりそう言うて、そのえらい人に反駁をする議論というものが、いわゆる聴取者以外のものはないのですから、聴取者の中には賛成反対議論はありましたけれどもMSAそのもの説明には政府側しか出ていないのですから、聞いたところの山奥の人は、政府のえらい人が言うのだから、MSAの援助は妥当なものだと解釈をするかもしれない。そういうこまかいところまで留意をして、こういう番組を組まなければならぬ使命NHKにあるのじやないか、現実に私はそう思います。こういう形において、やはり街頭録音等の場合は、大いに留意してもらわなければならぬと思うが、今後そういう場合にはどのようなお考えを持つておられるか、お伺いをしたいと思います。
  16. 古垣鐵郎

    ○古垣参考人 ただいまの御意見はまことにもつともだと思います。具体的にどういうような方法を将来とつて参りますかは、今日の御意見には私も非常に共鳴するところがございますから、その番組の担当者に伝えつつ、そして担当者が専門家としてまた可能性も考えながら、御趣旨に沿うようにやつて行きたいと考えます。そしてこの問題は、先ほど申しましたように常にいろいろの意見が出る問題でございますから、そういう問題については今日までよりもより以上に慎重に、さらに公平であるようにしたいと思います。
  17. 成田知巳

    成田委員長 甲斐政治君。
  18. 甲斐政治

    ○甲斐委員 関連して……。先ほどの抽象的な御意見はまことにごもつともで、何ら押し返して御質問することはないのですが、今問題になつている政務次官だけが出てMSAの応答に立つておるというこの具体的事実、これは担当者が云々すべき問題ではなくして、まさにNHKの根本的な態度の問題でありますから、会長としても御意見なり態度なりがあつてしかるべき問題だと思うのです。これはやはり政務次官だけではなくして、対立的意見を持つた者を街頭録音に出すというような用意があつてしかるべきであるし、あるいはそれがないとするならば、他の機会において、翌日でもけつこうですが、その反対意見の人を表に立てて街頭録音をすべきではないか。この問題は繰返して申しますが、担当者の云云という問題ではなく、会長の問題であり、経営委員会の問題であると思います。これに対する御意見なり、今後における措置についてのお考えを承つておきたいと思います。
  19. 古垣鐵郎

    ○古垣参考人 お答え申し上げます。私も大きな方針は、先ほどから言つておりますように政治的に公平であること、これを守つてやるというのが私の責任だと思つております。しかし普通の場合においては、出演者がだれであるとかなんとかいうことにあまり会長が口を出さないように、政治的公平ということをその実施において十分守るてやる場合においてはそれでいいと思います。この場合にも、街頭録音というのは先ほど申し上げましたように、街頭の人の声をまず聞くということに非常に大きなウエートがあつたものですから、説明者がついておるので、その人が政治的に一つの運動をする、主張をするというのでなしに、必要があつた場合に条文の説明をするとか、あるいは産業の問題であれば、その産業に直接携わつている人が、その直接の問題について必要の場合に説明するというぐらいの程度の立場でお願いして来ていたのであります。この場合だけ一人行つたとか、あるいは片寄つてしたという考えは、企画者、事務執行者には決してなかつたということをお認め願いたいと思います。しかしながら問題は、常に私が言いますように、単にやる方がいかに公平を旨といたしましても、出た者がいかに受けられるかということが確かに重大だと思います。これは半分以上の重大性を持つておりますので、ただいまの御意見などはよく考えて、街頭録音等についてもさらに再検討をすべきではないか。出演者等についてただいまの御意見、また松井委員の御意見等を考えて実施すべきであると考えますが、私は今ここでとりかえますとか、二人にいたしますとか三人にいたしますということでなくて、最も適切にする。私ども番組編成の自由もせつかくいただいておるのでありますから、御趣旨を体してやるということで御了承を願たいいと思います。
  20. 甲斐政治

    ○甲斐委員 大体お答えで尽きておるように思いますが、重ねて申し上げたいことは、そうした会長の方針を、事務担当者、その他の人々に徹底させるということが望ましいということを申し上げておるのであつて、だれを出せとかかれを出せとかいつてこれを指定せられることはなるほど困難であろうと思うのですが、しかしこういう場合に政治的公平を保持しなければならぬということを事務的に表現せられる、この御注意が特に必要だろうと考えるわけでありまして、今問題になつておりますMSA政務次官だけが出て云云したということに関して、会長としては妥当ではなかつたとお認めになるのか、あるいは少し足りないところがあるので、今後そういう点について十分万全を期したいということであるか。もしそうであるとするならば、今後においていかなる注意を担当者、事務関係になさるか、そういう具体問題になつておりますので、具体的にお伺いしたい。
  21. 古垣鐵郎

    ○古垣参考人 街頭録音については先ほどから繰返し申し上げておりまするように、NHKとしては政治的公平を期するという立場に立ちながら、そういうふうにして参りました。しかしながらその反響ということをさらに検討する必要があるように思います。従いまして今までやつて来たことが悪かつたとか、妥当を欠いたというふうには考えませんでしたので、先ほどから街頭録音の仕組みを御説明申し上げた次第でございます。しかし政治的な公平を期するということについては、もう幾ら論議しても限りのないことであります。当事者のこの説明によつて、受信者の中にはそれでけつこうであるという意見もたくさんあり得ましようし、そうではない、さらに人をふやせという意見もあるでありましようし、あるいは人がない方がいいという意見もあるでありましよう。こういうことは幸いに輿論調査の機関も持つております。また放送審議会には有能達識な経験者もたくさんおられますから、十分に伝えまして、そうしてNHKとして最善方法を――最善方法というものは絶えず進んで行くと思いますから、進ませて行きたいと考えております。
  22. 庄司一郎

    ○庄司委員 ただいま街頭録音の問題が議題となり、話題となつておるのでございますが、街頭録音の各界、各層方面の公正一を期するということはNHKの御当局としても、実際問題としてはなかなか困難ではないかと私は考えております。むしろ御同情申し上げております。何となれば、ぼくはあまり農村のことはわかりませんが、少くとも人口が十万とか三十万とかいう程度の市においては、街頭録音の場合は、マイクの周囲を取巻くマイクの第一線は大体共産党だ。第二線、第三線は共産党的だ。ほかから見れば非常に思想的の偏何者がマイクの前に計画的に動員して集まつておる。これは実際問題だ。であるから温厚篤実な保守党系の人間なんか出る余地がない。かような実際問題に直面して、マイクで呼ひかけて第一線に働くNHKの職員諸君も、実際問題としてはなかな困難ではないか。私などは長い間見ております。また国会議員である自分が行つてマイクを借りてやるということもどうかと思つて、穏健にこれを傍見してのるだけであるけれども、このごろはやや下火になつたような傾向であるが、ついこの間までは動員的に、計画的にマイクの周囲を占領する者はことごとく共産党だ。あるいは共産党的色彩の濃厚なる左翼偏両者である。そういう意味において街頭録音というものは、共産党的の考によつて独占されているような傾向を痛感して、私は実ははなはだ遺憾に思つておるものであります。おのおの見る立場は違いますが、ただいま会長さんの答えでは、公正妥当なる見地より職員諸君を御指導なされて公正を期するというお答え、それで満足いたします。それが励行されるように、一方的な赤組の独占を許さざるよう、名案があるならばさような方法でお進めを願いたい。街頭録音のマイクの周囲は赤組によつて独占されて来ておる。この事実だけは都市を通して現実の姿であると私は考えます。こういうことを一言申し上げて、あえて答弁はいりません。
  23. 成田知巳

    成田委員長 今の松井委員質問に関連しまして、私からもちよつとお尋ねしたいのですが、庄司さんが周囲に集まつて来る者は共産党か、または共産党系の者だから非常に御苦労があると言われましたが、これはごもつともと思いますが、集まつて来る人聞を色わけして、お前は来るなとは言えないと思います。松井君の質問内容は、そういう意味での量問じやなくして、MSA協定の場合に、党の代表者である外務政務次官だけが出て説明に当るというのは、政治的な公平を失するのじやないか、こういう御質問であつたと思うのです。最初松井君の質問に対して、古垣さんは、街頭録音性質上、やはりその案件に最も関係のある人が出て説明し、答弁に当るのだ、こう言われたのですが、松井君の再質問で、やはり政治的な公平を失するようなおそれがあるようにも思われるのでよく研究される、こう言われたわけですが、主観的にはNHK当局が一人出しても公平なる、こういうようにお考えになつても、この公平は客観的な公平だと思います。結果において公平を失するようなことがあれば、やはり政治的の公平を失する。松井君の質問に対して大体御了承になつてつたようですから、その点については私はそれ以上申し上げませんが、それに関連しまして、放送討論会の例をおあげになつて放送討論会の場合は賛成反対両者を出す。街頭録音はそうじやないと言われますが、放送討論会のときいつでも問題になるのですが、あとで編成されまして、みな身びいきだから、おれたちのいいところはカットされたとお互いにそう思つておるのでありまして、その点で、放送討論会編成がえされる、たとえば一時間のものを一時間半やるから編成が行われると思うのですが、その際に編成される人の主観で編成されましたら、結果はやはり客観的な公平を害するのじやないかと思います。そこでこの編成がえをやらないように御配慮できないかどうか。一時間なら一時間やりまして、生のまま放送する、こういうことが実際上できないかどうか、これが一つ。  それからニュース解説について、これは非常に一方的だという意見があるわけですが、このニュース解説について、時間の関係もございましようが、今の街頭録音と同じように賛否両論ある問題については、賛成者と反対者のニュース解説を行う、こういうような御配慮がいただけないものかどうか、この二つについてお尋ねするわけです。
  24. 古垣鐵郎

    ○古垣参考人 委員長NHK番組の非常に詳細にわたつての御質問を拝聴いたしまた。討論会を生のままでやるようにしたらどうか、放送番組は生の方がいいとする御意見は、これは一般的に申し上げまして、生の方がいいとする意見と、番組もやはり新聞、雑誌あるいは著書のごとく、一つの広い意味での芸術であるから、その番組をできるだけよくするためには、推敲して、そうしてこれならば最善であるという形にして発表すべきである。たとえばせき払いをしたり、いろいろ途中で詰まる場合もありましようし、書く場合には言わなくていいことをうつかり言つて、本人もそれをひつ込めたい場合もあるでしようし、そういう意味で、影響の大きいことを考えて、推敵して録音でやる方がいいというような意見世界中であるようでございます。しかしこれは同時にそこに出演される人たちのお立場、それからまた芸術性ということも関係いたしておりましして、たとえば娯楽番組にいたしましても、生で出している番組もあり、それから生でなく録音にして、推敲して、そうして娯楽性を一層よく増す、そうして初らからおしまいまで聞く人をしてたいくつせしめない、そうして非常に効果を上げておるものもたくさんございます。話の泉のようなものは、りつぱな出演者・芸術家が出演されても録音でいたしております。これは単に時間の都合とか、出演者の都合ではなくて、効果的な立場からこれは録音にしております。そんな意味討論会も、将来出演される方が、始まつたときからぴつたり最後の時間までを、生のままで出していいような立場になられておやりになるような場合はいいと思いますけれども、場合によつてはあとからその御本人がいろいろ訂正をしたいと思われる場合も、自分の原稿の訂正のようにあると思います。それからまた効果上だれかが来ておらなくても、それが別に議論中心にならないようなこともありましよう。そんなわけで今日は生にはいたしておりません。先ほどお話のありました編成がえをする、その主張の大きな筋をかえる、これは厳に慎まなければならないと思います。簡潔にいたしますとか、あるいはその点はすでに放送しなくてもダブつていて、前にちやんと徹底している問題だ、聴取者がそれほどに聞きたいと思わないような点もあり得る。それで時間きつちりにいたしますために簡潔にする、それだけでございます。そして全体を締めて行くというので、これは編集権の中の問題だろうと思います。もしもそこで発言した人の趣旨に手心を加えたり、かえてしまつたりすることは、これは厳に戒めなければならぬ。それは雑誌等でも、その方にはあらかじめ了解を得てやつておる次第であります。しかし討論などの場合には、編集者が良心を持つてそう考えても、あるいは一部の人がそうでない意見も起り得るということは消してございます。生のままでできる時代が来れば、またそれは一段の進歩だと思いますけれども、録音の場合が一概にいけないということにもならない。放送の効果という点、聞く人をして十分によくわからせる、徹底してわからせるためには、そこをカットしてもさしつかえない。場合によればカットすることによつて、一層端的にその表現ができるという場合もございます。そんな意味で職人と申しますか、専門家の立場編成をいたしておりまして、決して主張とか内容を左右するとかいうことは、これはあつてはならないと思います。
  25. 松井政吉

    松井(政)委員 ただいま古垣会長からいろいろ御説明がありましたが、芸術的にいろいろの議論も出て来るしするからということなんですが、これは私から申し上げるのは古垣さんに対しては釈迦に説法だけれども、たとえば芸術的な面をねらおうとして、生でなくて出そうということになりますと、芝居と映画のようなものだと思います。芝居は一たび舞台に上ればNGはないのです。映画の場合はNGをつくつてやり直すことができるのです。たとえば録音の場合でも映画の場合でもできるのです。その場合、映画のようなつもりで国会討論会街頭録音編集されたのではかなわぬという点を、みんな心配しているのだろうと思うのです。舞台の芝居はNGはございませんから、舞台でちよつと待つた、やり直しということはございません。映画の場合はNGをつくつてやり直すことが可能でございますから、そういう点がただいま議論になつたので、当委員会においては、違つた立場からいろいろ話が出ておりますけれども、結論はやはり公平にやれということに帰するのだろうと思います。従いましてこういう問題について、こまかい番組や、街録国会討論会の内部の扱いにまで議論が出たということは、いろいろの意味において立場ば違つても、公平を期さなければならないという非難が出た、こう考えていただきたいと思うわけであります。従つて今後番組審議会並びに経営委員会等には、当委員会でおのおのの立場からおのおのの議論の出たことを十分反映していただいて、あくまでも法の四十四条に基く立場を堅持していただきたいと希望をいたします。  さて今度は事業計画内容予算内容の数字について、私の持時間だけ若干質問をしてみたいと思います。先ほど来問題になつておりますたとえば二日、三日たたなければ新聞を手にすることのできないような不便な場所、それから山間僻地放送を通じて娯楽を提供し、それから放送を通じて文化の高揚に努め、それからありのままの社会情勢の動きの感覚等を知らせなければならないことは、放送企業の中で今日の公共放送としてのNHKがやらなければならない重要な役割だと考えますが、端的に言つて僻地と申しますか、そういうものに対する本年度の局の増局あるいは増力、いろいろな意味における計画の具体的内容がございましたら、御説明をお願いしたいと思います。
  26. 岡部重信

    岡部参考人 具体的に過ぎるかもしれませんが、一、二具体的な例を申し上げてお答えといたしたいと思います。教育、教養関係で例を申し上げますと、全国に中等学校程度で高等学校に進まざる人たちというものは、おそらく八、九十万いるのではないかと思います。なぜならば、中等学校の卒業生が大体百八十万か九十万あると思います。それらの人たちについては、今お話通り僻地においては、どうしても放送でこれに勉学の機会を与えなければならぬのではないか。それで来年度におきましては、高等学校講座というのを拡充いたしまして、ただいま二十八年度におきましては、日曜日を除きまして、毎日これらについて二十分の放送をいたしておるのでございます。来年度はこれを二十五分増しまして毎日四十五分、これらの方々のために送りたい。英語、国語、数学、社会あるいは理科というよなものを組み入れて、やるという計画をいたしております。  それから僻地関係で特に問題になりますのは、御承知の通り北海道あたりでございます。北海道の実例について申し上げますと、北海道においては僻地と指定されている学校が千五百ほどあります。それでこれらにつきまして、無資格教職員が四割を占めているのではないか、そこでこの教員の方々の資質の向上のお役に立つように、講座を設けて行こうというような計画もございます。それでこれらの問題につきましては、予算編成の方針でございますが、予算の金額から申しますと、番組の経費に振当られているのを、実行面で活動化するというわけであります。なお聞えないところに局を置く、あるいは今まで百ワットのところを五百ワットにするというような増力という計画についてのお尋ねがございましたが、来年度はこの計画につきましては、一応とりやめてある次第でございます。
  27. 松井政吉

    松井(政)委員 放送内容の時間の問題は、ただいまの御答弁でわかりました。たとえば時間をふやしてやるというようなことはわかりましたけれども僻地関係における中継局の増設、増置あるいは増力というような計画があるかないか。それからもう一つすでに北海道等を中心とする有線放送関係について、二十九年度においてどのような計画をお立てになつておるか、これが第二点。第三点は、有線放送料金について今回の値上げはやはり従来と同じように、画一的に、有線放送で各個人に設備してある受信機にも、同じように徴収する考え編成されたかどうか、この三点についてお伺いしたいと思います。
  28. 岡部重信

    岡部参考人 僻地の中継局についてのお尋ねでございますが、松井委員御承知の通り、従来数個年の計画をもちましていわゆる豆局を新しく五つつくつて行く。それから第二のないところへ第二放送の増設をして行く。なお数局の増設をして聴取改善に当るという計画を、NHKは従来からやつてつたのでございますが、今回これはいろいろの考え方はありますが、新しい建設ということにつきまして見合せたものでございますから、もうしばらく待つていただこうという計画になつております。それから有線放送でありますが、私の方の考え方としては、有線放送につきましてはいわゆる無電燈地帯に主眼を置いているわけであります。それで来年度におきましては六百万円ほどの経費をもちまして有線施設の音質の悪い部分、それから他の通信施設に混信を及ぼす部分、それから音の弱いところ、それらについて技術的に御相談に応じ、またあるいは一部モデル的に相当直すというような計画でございます。それから料金につきましては、来年度も一般と同様一画的の料金で実施したい、かように考えております。
  29. 松井政吉

    松井(政)委員 たとえば有線放送によつて無電燈地域の各家庭で受信機を備えておる分と、それから有線ではなくて、直接受信機を備えているところの料金が画一では不公平じやないかという、NHK当局前から御承知の通り議論がまだ続いているわけです。今度の値上げについても陳情等をわれわれは受けております。そういう場合の措置について、経営委員会等で御相談願つたことがございますか。考慮を払わなければならないという議論NHK当局の部内にございますか。全然そういう考え方はなかつたか、お伺いをいたします。
  30. 岡部重信

    岡部参考人 一つ有線放送につきましては、北海道あたりの例もこれが多いのでございますが、アパートなどにもかかる施設がごく若干はあるわけでございます。それで一昨年でしたか、今御指摘のようなものがありましたが、われわれの方といたしまして、北海道におきまして本年度ただいま申し上げた同様の線で、いろいろ技術的な御相談にも乗り、それによつて具体的によく改善されたというような事例もございまして、若干まだこれが、残りがあるとは存じますが、大体御了解を得ておるのじやないか、かように考えておるのでございまして、経営委員会などにもときどき共同聴取の普及状況とか、あるいは今後の状況の見通しの話は出ますが、アパートとかいろいろその他の点も考えまして、この料金を別の料金にするという結論は出ておらぬ次第でございます。
  31. 松井政吉

    松井(政)委員 それなら有線放送の中継所でございますが、厳密に言えばこの中継所に対する手数料等の関係はどのようになつておりますか、具体的にお伺いしたい。さらに、ことしの値上げはそのままだけれども、これはやはり考慮する必要があるとお考えになるか考慮しなくていいというお考えを持つておるのですか、この二点について明らかにしていただきたいと思います。
  32. 岡部重信

    岡部参考人 ただいまのお尋ねで、有線放送の中継所の手数料というのはどういうものか、御説明願いたいと思います。
  33. 松井政吉

    松井(政)委員 具体的に申し上げますと、かりに有線放送の中継所が農業協同組合にあつたと仮定いたしますね。そしてその農業協同組合の中継所を通じて、無電燈地帯のラジオ受信者がその中継所から切りかえて行く有線放送が百戸あつたといたします。そうすると百戸から普通われわれの家庭にあると同一に受信料を徴収するわけですね。その場合にこの中継所に対して手数料的なもの、あるいはリベート式なものがあつたかないか。ないならないでよろしゆうございます。あるならそれはどのような形になつているか、こういうことであります。
  34. 岡部重信

    岡部参考人 今の御指摘のような場合、その施設をされている方に集金をお願いしているような場合におきましては、集金の手数料を百戸なら百戸分差上げておるような次第であります。
  35. 松井政吉

    松井(政)委員 そうすれば、かりに農協なら農協の事務所、あるいは役場なら役場の一室を有線放送の中継所としている場合に、単に中継所としての手数料等は全然考えないで、そこを中心にしておる受信者から受信料をとる。その場合の受信料徴収の手数料は、各郵便局等にお願いをしておる手数料と同じ額でありますか。
  36. 岡部重信

    岡部参考人 この手数料につきましては、有線放送以外のところでも、きわめてわずかなものでございますが、個人に委託して料金を頂戴しているというものもございますが、それと同様の比率で払つておる、さように承知しております。
  37. 松井政吉

    松井(政)委員 特別に措置をしていない、こういうことでございますね。郵便局等に徴収委託をした場合の手数料と同じだ、従つて有線放送の中継所については特別の措置を講じてない、こういうことでございますか。
  38. 岡部重信

    岡部参考人 集金の手数料といたしましては、個人の委託と同様にいたしております。それから親元の施設につきましては、先ほどちよつと触れましたが、北海道ですとその付近の局から出張いたしまして、技術の相談にあずかつて、あるいはそれを直してやるとか、あるいは線なども若干供給をするというような措置はいたしております。
  39. 松井政吉

    松井(政)委員 これは今度有線放送をどうするかというときに、当然われわれが議論しなければならぬ問題でありますから、くどいようですがお伺いしますが、集金手数料は郵便局であろうと、無線放送の中継所であろうと、その徴収を委託した手数料は一緒だ。しかしその有線放送の中継所については、それ以外何も手数料的なもの、あるいは有線放送によつてラジオを聞いている受信者から徴収したもののはね返り等のものは、全然従来取扱つて来ていなかつたかどうかということをお答え願えればよろしいのです。そこで取扱つていないとすれば、今後取扱うために考慮する必要があるか。考慮する必要はないという考え方を現在でも持つているか。その二点について明らかにしていただければよろしいのです。
  40. 岡部重信

    岡部参考人 今のお言葉のうち、郵政に委託していると同じ手数料ということがございましたが、郵政とは別に個人に委託した分がございますので、郵政よりは若干高額ではないかと思つております。それから中継する設備について技術者をNHKから出せというようなことは聞いたことがあります。しかし今のところは私の方は技術指導なり施設の改善につきまして、お手伝いするなり、あるいは若干の線類とか補修の材料とか半田つけとかいろいろありますが、そういうものについてはいろいろいたしますけれども、スイツチマンをNHKから出すというような考えは現在ございません。
  41. 松井政吉

    松井(政)委員 何にもしていないということですね。
  42. 岡部重信

    岡部参考人 何と申し上げたらいいのでしようか。技術屋などを出して、NHKの職員が技術をオペレートするとか、あるいは農業協同組合なら協同組合で雇つている人をNHKの人に直して金を出すということは、現在しておりません。
  43. 松井政吉

    松井(政)委員 そういうことをやらないとすれば、手数料だけは個人に委託したと同じに集金をしてもらつたときにはやつている。それ以上のことはやつていないということになるのでしよう。そうじやないのですか。まだ何かあるのですか。やつているなら具体的なことを言つてもらわなければいかぬし、技術者を派遣しているとかいないとかいうことを聞いているのではない。それ以外の手数料とか何とかを出しているのか。それだけをさつきから伺つているのです。
  44. 岡部重信

    岡部参考人 実は私の申し上げ方が悪かつたのですが、去年はいろいろやることにNHKは六百万円出しているわけでございます。それでさらに今年度それらの要望にも沿うために、五百万円を増してやつて行きたいというわけでございますから、その金が個人の施設者の手に渡るかどうかは別だというわけでございます。
  45. 松井政吉

    松井(政)委員 それではつきりしました。そうすればことしは一千百万円を当然設備等の改善のために出そうということでございますか。そう解釈してよろしゆうございますね。
  46. 岡部重信

    岡部参考人 それでけつこうでございます。ただ助成金という形で渡し切りにするという考え方ではないのでございます。
  47. 松井政吉

    松井(政)委員 もう一点有線放送についてお伺いいたします。今有線放送の中継所といつて当るかどうかしりませんが、そういうものが全国に何箇所あつて有線放送によつて受信している受信者数がどのくらいあるか、お聞かせ願いたいと思います。
  48. 岡部重信

    岡部参考人 昨年の十月三十一日現在で申し上げますと、有線放送の施設数が千二百五十六で、加入者は十六万四千四十一ということになつております。これは無電燈地帯と電燈のある地帯両方合せての数でございます。
  49. 松井政吉

    松井(政)委員 十六万四千も電燈がなくとも放送を聞けるという地方の人たちがやつているのでありますが、まだ電燈のない地域が多くあるのではないかと思われる。従いまして私はこの点について希望を申し上げておきたいのでありますが、これは商業放送民間放送に求めてもでき得ないことなんです。電燈すらない地域でございますから、せめて有線放送設備を拡大するなり、あるいは有線でなくても、山間僻地放送を聞けない地域に設備を増強して、放送を通じて新しいニュースを提供し、あるいはそれをもつて文化向上のかてとしたり、あるいは健全なる娯楽放送をするということが、公共放送としてのNHK使命でありますから、こういう点については有線放送のみならず、僻地放送についてはあらゆる努力を払つていいだきたいことを希望いたしておきます。  それからそれに続いて経営委員会の問題でありますが、ただいま経営委員会は、法の示すところによりまして、ブロック別に各界を網羅した形で選ばれております。けれども、これも私率直に――憎まれ口でなく申し上げますが、要するに国民全体がスポンサー立場において行われるものが公共放送だ、こういう形になつております。それから今度は三月で二百円ということになりましたけれども、一箇月十七円の値上りをしても、公共放送のあらゆる部面について運営を充実しなければばらないというものの考え方は、公共放送だからであります。さらに受信料については、要するにサービスを提供した放送の対価だという議論と、それではなくて受信機を備えているための一種の税金に該当するものだ、こういう二つの意見がありますが、その二つの意見は別として、いずれの性格にしろ、この受信料金以外には収入のない公共企業体であることは間違いない。さらにその費用だけによつて公共放送を守らなければならない。この公共放送は、一種の独占的な立場であることも明らかであります。そういうことになりますと。経営委員の構成等は、今の法律ではいかんともしがたいけれども、将来現在のような構成によつて、ただいまわれわれが心配しているように公共放送の構成なり運営ができるとお考えであるか。これは放送法の改正のときに当然議論になる問題だろうと思うのであります。今日の段階において明確に考え方のお答えができない立場におかれているかもしれませんけれども、できればわれわれは国民全体の各階層から出て、国民全体の電波を利用して、国民全体をスポンサーとしての公共放送経営委員の構成は、ただいまでは不足のように考えられますが、そういうものについてどのようにお考えになりますか。これはNHKのお答えでなければ、個人の見解でもよろしゆうございます。はつきりお答えができなければ、研究をしなければならない問題だ程度のお答えでもけつこうでありますが、その点についてお答えを願いたい。
  50. 古垣鐵郎

    ○古垣参考人 この問題は放送法の改正の中の非常に重要な事項だと思います。それで経営委員会においてもしよつちゆう審議いたしております。また放送協会の中に放送法改正調査委員会を設けまして、研究調査を進めておりますが、その一つの大きな題目にいたしております。今後十分検討してから、はつきりと意見を立てたいと思つております。どうぞ御了承を願います。
  51. 松井政吉

    松井(政)委員 経営委員会のあり方について、いいとか悪いとかいうことは、当然今日の段階で当局が明瞭に御意見を出せないのは了解いたします。いたしますが、要するにそういう議論がすでに台頭しておる。さらに経営委員会のみならず、放送法全体を通じて、法の根本的改正をしなければならない。これも当委員会議論が続けられまして、郵政省電波の当局者の方でも、やはり放送法の根本改正を中心とした審議会をつくられておる。あるいはそれによつて研究を続けておる。われわれ当委員会においても、営々と個人的にあるいは党派を超越して研究を続けておる。こういう情勢でありますから、NHK当局にいたしましても、放送法の根本的な改正について、現在の日本立地条件、それから民間放送の二本建の状態、その中において公共放送をどのようにするかという立場からの法の改正には、真剣にとつ組んでもらいたいと思いますし、それが国民全体に、あるいは国会に、あるいは政府にいれられるかどうかは別として、勇気を持つて、当局としての独自案を作成すべきだと思いますが、こういう考え方についてのお考え伺いたい。
  52. 古垣鐵郎

    ○古垣参考人 まことにごもつともの御意見だと思います。NHKとして最もよいとする案をつくつて、それを皆様に検討していただいて、ぜひわれわれの最善とする形が打立てられることを希望いたしております。
  53. 松井政吉

    松井(政)委員 次に予算内容に触れて若干お伺いいたしたいと思いますが、これは大臣がおいでになれば、先に大臣にお伺いするのが順序だと思いますが、大臣はお見えにならない。そこで長谷局長質問するのは、事務当局としてということで少し筋でないかもしれませんけれども政府NHKの両方にお答えを願いたいと思います。  値上げをしなければならない理由として、値上げをしなければ従業員のベース・アップはできないのかということは、当委員会で十分議論になつたところであります。そこで政府側の方から出していただきました資料にも、国家公務員並びに公共企業体関係の、労働者並びに関連産業と目される報道関係のベースの資料が載つております。これを見ても現在給与が低いということは議論済みである。それを何とかしなければならぬということで、党派を離してわれわれは真剣に議論をして参つたのでありますが、大臣の御答弁でも、NHKの御答弁でも、その当時の速記録を見ても明らかなように、どうしても料金を上げなければベース・アップが困難だというのが、共通のお答えだつたと思います。ところが今回の六十七円の料金に基く予算案の編成を見ますと、増収が二十八億五千九百五十万円、これに対して給与に充てられる分がわずか四億五千五百十二万六千円でございます。そうしますと、従来のお答えの立場から申しますと、要するに料金を上げなければベース・アップはできないと言いながら、料金の値上り額に比較して給与にまわる部分がきわめて少いのであります。そうするとこれはベース・アツプに名をかりて、料金値上げをしたというそしりを受けないとも限らないのであります。六十七円にして予算編成のときに給与の額をきめる場合に、NHK当局はこれ以上はやむを得ないという考え方でこうしたのでございましようか。やむを得ないという考え方の根拠をなすものをどこに求めたか。従業員の給与が高いということでこの程度しかまわせなかつたのか、それとも給与以外に優先的にまわさなければならない理由が存在してやむを得なかつたとお考えになるのか。その考え方は貫いておかなければならないので、明瞭にお答えを願いたい。さらに長谷局長からも、やはり大臣値上げしなければ困難だと思われるということをお答え願つておるのでありますから、政府としてもやはり値上げをしても、この程度しかまわらないだろうとお認めになつて予算案を承認を求めるために国会に提出をしたのか、両方の立場においてお答えを願いたいと思います。
  54. 岡部重信

    岡部参考人 お答え申し上げます。申すまでもないとは思いますが、NHKの仕事につきまして相当頭脳的な知識が必要であるということは、前々から御存じの通りでございますが、しかしわれわれはその頭脳的な知識なり勤労に報いるのに、給与を増額しなければならぬということは当然でございますが、その他の公共放送としての使命を遂行する分野につきましても、十分考えなければならぬ問題であることは、言うまでもないと存ずるのであります。それで今回御承知の通り給与の改訂についての算定といたしまして六%アップ、諸手当五%アップという数字ではじいたのでございます。これは人事院などの裁定などの例も十分参酌いたしましてこの算定をいたしました。しかしこれにつきまして、給与が低いじやないかというお考えもあり得るものと存じますので、それでこの予算総則におきまして特に新たな一項を設けまして「職員の能率向上による企業経営の改善によつて収入が予算額に比し増加し、又は経費を予定より節減したときは、その増加額又は節減額は予備金に繰り入れ、経営委員会の議決を経てその一部を職員に対する特別の給与の支給に充てることができる。というような、従来なかつた一項を総則に設けまして、できるだけ職員の給与を改善いたしたいというのが、二十九度予算のきわめて概略でございますがわれわれの考え方でございます。
  55. 長谷愼一

    長谷政府委員 お答え申し上げます。先般来放送協会の二十九年度の予算につきまして、職員の給与と来年度の予算、つまり受信料の関係をいろいろ御質問になりまして、大臣からも、受信料の値上げなしではベース・アップは行えないのではなかろうかということを申し上げ、私もそういうことを申し上げたのでございますが、もしも私の記憶にして間違いがございませんければ、必ずしもベース・アツプと料金とは常に相関連するものではない。現に昨年度におきましては、受信料の値上げを行わずに一〇%の値上げをいたしておるのでございますから、そういう観点から受信料の値上げをしなければ、全然ベース・アップができないということにはならないけれども、この二十九年度におきましては、どうしても受信料の値上げという結果になると存じますというようなことを申し上げたような気がいたしております。  なおただいま全体において二十九年度の予算は二十数億から増しておるにかかわらず、給与は四億幾らに押えられておるのではなかろうか、この点はどうかというような御質問でありますが、私どもといたしましては、職員の給与ももちろん考えなければいけませんが、まず第一に放送協会の課せられた事業を、満足に行つて行けるかという観点から考えなければいかぬと思うのでございます。協会当局におかれてもそういう観点からだと存ずるのでありますが、老朽施設の補修改善、つまり減価償却というような資産の維持、それから放送運営のための費用と職員の給与、大きくわけますと大体こういうような三題目にわたつて検討しました結果、どうしてもこれだけの受信料を値上げしていただかなければならぬということになつたように私ども承知いたしております。なお給与ベースの算定といたしましては、ただいま協会岡部理事からも御答弁がありましたように私も承つておるのでありまして、大体現行の給与ベースの実行されましたのが昨年の四月でありますが、昨年の四月から今年の三月三十一日までにおきまして、全産業の生活給、定期収入及び平均五人の世帯に換算した場合の家計支出費などのほかの例にもならいまして、そういう支出の平均上昇率を計算した結果、一六%という数字が出て来たので、これに根拠を置いて行つた。また協会の職員の特殊技能者や、あるいは学歴が非常にほかに比べて高い、あるいはほかの関連産業との関係その他を考えまして、特にこの際従来の二〇%から諸手当を二五%に増す、こういうような処置は一応給与額の算定の根拠としては受取れる、こういう考え方政府として見たわけであります。
  56. 松井政吉

    松井(政)委員 長谷局長がこの前お答えになりましたのを私ノートしておりますが、ベース・アップは予算とは別問題だと明瞭にお答えになつた。これはちやんと私書いておりますから間違いありませんが、大臣は、料金を上げなければベース・アップできないのだ、こういうぐあいにお答えになつておる。これと関連して、これを決定せられる政府側考え方等については、大臣が来ないと質問できませんから省きますが、数字の問題等についてさらに質問を続けたいと思います。ただいま両者からお答えを願いましたが、要するに去年の三月三十一日、それから今年の三月三十一日とを比べて、物価その他の変動によつてベース・アップをしたということでありますが、もつとかりに三、四年前の二十五年なり二十六年なりを基準にして、公共企業体関係のベース・アップ、それから関連同種類産業と目される新聞社等のペースアップ、商業放送ができてからのベース、こういうものに比べて基本的に低いということをお認めになるかどうか。さらにお認めになるとするならば、給与総則で弾力条項をつけてもらつたという答弁がありましたが、その範囲はベース・アップではなくて、この弾力はベース・アップとして使えるものであるとお考えになるかどうか。私はそうではないと考えられますが、その具体的内容をこの際明らかにしていただきたいと思います。たとえばベースとなれば毎月の基本給となつて来るが、そうではなくてその日常における生活をカバーするために一時的に考慮しなければならないという解釈ならば、毎月の基本給料となつて毎日の生活のかてにはならないという結論になる。必要欠くべからざるときにそれがまわるということになるので、基本的な考え方はおのずから違つて来なければならない。だからそういう点についての考え方を明らかにしていただきたい。もう一つ民間産業の場合において、われわれが経理上体験もいたしておりますし、考えておるのは減価償却その他も全部経理上計算をして、従業員に関する給与関係が四五%になると、これはやはり危険産業と考えなければならない。四〇%ならば、これは経理上から見ても実際上から見ても、経営可能の産業企業体と解釈されなければならないというのが、われわれの経験における常識でございます。ところが昨年の値上げするまでの間の給与は三六・三%を占めておつた。本年度は値上げしたもののまわし方が少いせいもございますが、大体三〇%が給与関係になる。この点においてパーセントがぐつと落ちておるのであります。一体民間産業と違つて、こういう放送という特殊な企業における公共企業体というものは、何十パーセントが経理上から見た、経営上から見た給与のパーセントになるとお考えになつて予算編成したのか、その点についての具体的な考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  57. 岡部重信

    岡部参考人 最初のお尋ねの給与改訂につきましては、一六%のベース・アップ、それから五%の手当の引上げという算出方法によりまして、一万九千三百円くらいになるのではなかろうかと思います。  それから。パーセントの問題ですが、このパーセントの問題については、卑近な例で申し上げますと、三%ですか、それにつきましては、たとえばテレビジョンなどにつきましては、非常に受信者の数が少い。また謝金の額が少いというような比率からいたしますと、ずつと人件費のウエートは軽くなるのが当然であります。今回の予算編成につきましても、謝金の二五%あるいは作品委嘱費が五〇%というような数字が出ておるわけでありますが、そちらの方の上り方が多くなれば、この人件費のパーセントは申し上げるまでもなく低くなるわけであります。それではこの種の企業体として何パーセントが妥当な線であるかということにつきましては、私ども常にいろいろ私鉄のようなものを調べております。それからその他のものも調べておりますが、何しろ同種企業も非常に少い。最近は商業放送ができたから、あるいは比較の対象になるかとも存じますが、比較がむずかしいので、このパーセントは何パーセントが完全であるかということにつきましては、赤裸々に申し上げて私どもは結論を持つておりません。
  58. 長谷愼一

    長谷政府委員 お答え申し上げます。この関連産業とのいろいろな給与との点を御質問のようでございますが、ただいま岡部理事からもお答えがありましたように、今回の算定根拠になつております数字だけペース・アップが行われたといたしますと、ただいま数字が出たように一万九千幾らになります。これはたとえばNHKの方から提出されております資料によりますと、民間放送関係としても必ずしも低きに失しないように、と申しますのは、NHKの職員は全国であります。ところがここにあげてありますところの関連産業の給与は、はつきりしたところはわかりませんが、地方ではなくて比較的大都市におけるものの引用のように存ぜられるのであります。従いまして全国的に見ますと、同じ新聞でもそれだけの給与に行つていないところはたくさんあるようであります。民間放送も同様でございます。従いまして全国の全職員の給与の平均としては、必ずしも低いというふうには言えないのではなかろうかと感じておる次第であります。ただ放送事業全体として人件費がどれだけであるのが適当かという御質問につきましては、なかなかむずかしい問題で、私もなお研究し ないと御答弁できないような次第であります。
  59. 松井政吉

    松井(政)委員 これは両方に聞きますが、資料をもらつた中に、受信料の各国比較は明瞭に受信料値上げ中心とした予算承認案件でありますから出ておりますが、この各国の公共放送に対する給与並びに従業員の賃金等に対して調べたことがあるかどうか、その調べた資料があるならば御説明願いたい、それが第一点。  第二点はやはり全国的なものでないと、新聞の資料等も中央だけだといいますが、こういうことはお考えになつたことはございますか。ただいまの経済事情では地方の町の物価よりも、汽車も走らない、バスで三里も四里も山奥へ行かなければならないところほ ど、魚でも野菜でも値上りになつて来ている。今私は地域給の議論をやつているまつ最中にそれが出て来た。地域給もけつこうだが、むしろ地方僻地手当をやらなければ不公平じやないかという御議論が出て来る。経済事情が変動しておるということをお考えでございますか。そういうことになつて来ると公共放送の中継局あたりは、三名、四名で局を守つておるところが存在しておる。この場合には僻地の町といつていい、最前線の中継局に働いている諸君があるのです。そういうところの物価は、むしろ地方の都市よりも奥地へ行けば行くほど高くて、僻地手当を出さなければならないというのが今日の公務員の実情でもあるが、そういうことを御考慮のうちに入れて考えているのかいないのか、その点の考え方をひとつ明瞭にしていただきたいと思います。
  60. 岡部重信

    岡部参考人 各国の受信料、それに伴う各国の放送事業体の給与ということについてのお尋ねがございましたが、公共放送にもいろいろの形の公共放送がございます。たとえば私の記憶に誤りなければ、技術設備は国がやつているというところもあつたかと存じます。それからその国の他の産業との勤労者の給与というものもあるのであります。それをただちにここに持つて来ることもいかがかと存じますが、今手元に資料がありませんし、なかなか検討するにしてもむずかしいだろうと思います。  それから僻地手当についてのお話でございますが、私どもの方の考え方の基本といたしましては、ただいま松井さんが地域給ということでお話がございましたが、私の方は考え方としていろいろあると思いますが官公庁の地域給に準じて大体原則としてやつておるようなわけであります。
  61. 長谷愼一

    長谷政府委員 お答え申し上げます。諸外国の放送協会と同じようなところの職員の給与というのは、今放送協会当局からもお話がございましたけれども、私どもも遺憾ながら実は詳細承知いたしておりませんので、協会における調査等もまちまして私ども研究して参りたいと存じます。  第二点でございますが、確かにお話のように僻地と思われるような点がないとは言えないと存じます。放送局のありますところは、たとえば中継局のようなところも必ずこれは都会地でございますので、いわゆる公務員の場合の僻地というものに適当するかどうかは存じませんが、たとえば中継局とか放送を受信して中継するところ、受信所というものは、きわめて奥地にあるわけもないわけではないと思いますので、それは協会当局においてもしかるべく御研究の上、御対策をしていただくのが適当ではなかろうかと思います。
  62. 松井政吉

    松井(政)委員 なお具体的にお伺いいたしたいのは、資料に基いても明瞭のように、たとえば従業員の中における有技者としてのパーセンテージ、それから大学、すなわち高等学府卒業のパーセント度は、他産業に比べてきわめて多いということでございます。従つて表面に現われて来る平均給与の数字だけでは、計算のできない特殊な企業体である。こういうことはお認め願わなければならぬと思うが、その点についてのお考え方を明らかにしていただきたい。  それから第二点として、さらに明らかにしていただかなければならないのは、一番最初岡部参考人からお答えを願いましたが、予算総則における弾力条項といいますか、たとえば予算外収入のあつた場合、予備金に繰入れて云々というお答えがありました。そういう措置によつて、やはり福利厚生並びに生活安定の方策を講じようということについては、これは私まつたく望むところでございますが、そういう形のほかに、この前、昨日の論議の中でも、同僚橋本委員質問をなさいまして応答いたしておりましたが、やはり予算総則と予備金の使途についてもう一ぺん明瞭にしていただきたいと思います。予備金とは予算総則に基いて具体的にどのような形の場合にこれを使うのか、この点をもう一ぺん具体的に私にもお聞かせを願いたい。
  63. 岡部重信

    岡部参考人 第七条の特別給与につきまして、先ほど松井さんからお話がございましたが、私どもはこの特別給与は、ベース・アップというような形には行かないのじやないか、かように考えております。それから予備金を給与にまわす方のお話につきましては、これは松井さんからいつの国会でしたか御質問があつたのじやないかと思います。経済事情の激変があつたような場合にはというようなことだつたかと私記憶しておりますが、しからば経済事情の激変とは何かということになりますと、これは一つの判定の問題だろうと思います。社会情勢、経済情勢、そのときの協会の給与というようなもの、それらを勘案した判定の問題であるのじやないか、かように解釈しております。
  64. 長谷愼一

    長谷政府委員 お答え申し上げます。第七条の予備金の使用につきましては、私どもも今放送協会当局者からの御説明と同じように考えております。なおその前にちよつとお話がありましたように、放送協会職員には、特に技術者、あるいはある技能を持つておる方々のパーセンテージが非常に多いのであります。また御指摘のように、学歴にも高い学歴を持つた人々のパーセンテージが多いのでありますが、これはお手元に差上げました資料等にもございますように、新聞とか、あるいは放送関係を見ましても、同じような傾向をとつておるのでございます。しかもむしろ民間放送等新しくできた会社は、一層この学歴の点では、大学あるいは高等専門学校出の方が非常に多いことになつております。従いましてこの率だけで云々はできないので、それが古い歴史を持つておるか、あるいはきわめて新しい歴史を持つておる会社なり企業体であるかという点も考えませんと、このパーセンテージの数字そのものばかりにとらわれてはいけないようにも考えておるわけであります。
  65. 松井政吉

    松井(政)委員 私冒頭に数字とパーセンテージだけでは計算ができないということを明瞭にいたしておりますから、私もその通りだと思います。けれどもこういう現実があつたかどうか、この際明らかにしてもらいたい。たとえば商業放送の方が、どういう意味か知りませんが、ベースがよろしいのか、それ以外の待遇がよろしいのか、それともベースとしてではなくて、ニュースをとりに歩くような場合に、自動車をかつてに乗りまわして、その負担を社が負う、NHKの場合はニュースをとりに歩こうと思つても、記者の諸君が自動車にも乗れない、そういう状態から転籍するのか知らないけれども、まごまごすると商業放送の方にどんどん優秀な人が出て行く。こういううわさを私はたびたび聞くのであります。そういう事実があるかどうか、これをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  66. 岡部重信

    岡部参考人 ただいまの御質問は、商業放送の方へNHKの職員で行つた者があるかどうかというお尋ねだと思いますが、今数は記憶しておりませんが、行つた者がございます。
  67. 松井政吉

    松井(政)委員 行つた者があるというが、一人行つて行つたことになる。私は行つた人間もよく知つておるのだから、その通りでございましようが、私が聞いているのは、要するに待遇上の問題で、給与だけではなくて、その他の待遇まで含めて、待遇並びに扱い上の問題で、どうせ放送企業に働くならば、NHKよりも商業放送の方がよろしいという角度から行つた者があるかどうか、こういうことを聞いているのです。行つた者があるのは、私も現実に人聞もよう知つておるのですから。
  68. 岡部重信

    岡部参考人 私どもの受けておる印象といたしましては、待遇上の理由であちらへ行つた者が多いのじやない か、かように考えております。
  69. 松井政吉

    松井(政)委員 待遇上の問題で行つた者が多いように考えられる、こういうことになりますと、長谷さんは政府の当事者でございますから、先ほど来うまいこと答えまして、商業放送必ずしも待遇はよくないとお答えになつたけれども、これはやはり勤続年数の問題やその他を見なければ、パーセントと数字だけではほんとうに解決できないけれども現実NHK当局がただいまお答えになつたように、待遇上の問題で商業放送に移つた者があるという現実は否定できないと思う。従つてそれはやはり同じレベルで、同じ学歴で、同じ技術者で、同じ年数ということになると、商業放送の方がいいということで行つたものでございましようから、この現実は認めなければならないのじやないかと思われます。私の質問はこれで終りますが、私は待遇の問題が重要になりますので、要するに予備金をどのような形において具体的に使うのか、こう先ほど質問したところが、岡部参考人は勘違いをしたと見えて、予備金を待遇関係で使う場合は、経済事情の変動とお答えになりました。予備金を待遇上に使うということをみずからお認めになつたのですから、私はこれ以上聞くことはございませんが、経済上の変動はおのずから社会的な判断だ、こう言うのですから、これもわれわれ押問答してもしようがありません。明瞭にお答えになつておりますから、やはりこの予備金をそういう場合に使うことができ得ると解釈するよりしかたがありませんから、そういうように解釈してよろしいかどうか。  それから予備金の場合に、予算総則をそう解釈しても矛盾はないとわれわれは思いますけれども、これはやはり総則の条文から見ても、みだりかつてに使い得るものでないことは明瞭なんです。経済事情の変動があるか、あるいは他産業がやはり経済事情の変動のもとに、年末手当なり期末手当をよけい出すのに、NHKでは出せなかつたというような、ほんとうの特殊な事情しか考えられないことは当然でございますけれども、とにかく予備金をそういう形において、経済事情の変動等によつてまわすことがあり得るということをお認めになつたようでございますから、それでよろしゆうございます。  最後に私は希望条件を付して、他の同僚委員質問を譲りますが、公共放送としてのNHKというものは、いろいろの意味において国民の関心の的となつておる。しかも放送そのものが、民間放送の発達と公共企業体としての公共放送の重要性とをにらみ合せて、まさに放送界の変動期といつては語弊があるかもしれませんけれども、法そのものを根本的に考えなければならない客観情勢下と来ておるのでありますから、やはりいろいろかわつた立場における非難もありましよう。批判もありましよう。しかしながら日本公共放送も必要である、さらに民間放送も今日のごとく隆盛をきわめつつある。こういう事情の中で、公共的立場を維持しなければならないのでありますから、あくまでも公共放送とは何ぞやという根本的な問題から、一ぺん当局は考えてほしい。事務当局としての政府の方々も、公共放送とは何ぞや、それから日本NHKという国家管理でもなければ国営でもなく、特殊法人として存在する公共放送というものの業務運営とか何ぞや、国民全体をスポンサーとするNHK立場とは何ぞや、こういうことから真剣に取組んでいただきたいことを希望いたします。二十九年度の料金値上げは、どの個人にしても、あるいはどの政党にしても、今日の経済事情において、料金値上げがけつこうだなどという考え方を持つ者はだれもないと思う。けれども公共放送の重要性あるいは業務運営の重要性、いろいろの意味らして、やはり賛成をされる方も賛成立場をとるのでございましようから、簡単に予算を提出し、事業計画を提出して、議会の審議が一日も早く終ればよろしいというような考え方では、事済まないものがその裏には存在しておるという点を十分にお考え願いたいと思います。  つけ加えて申し上げますが、放送法の根本的な改正にあたつては、これは局長にお願いするのですが、審議会において大綱等ができましたならば、非公式でけつこうでございますが、国会の当委員会委員諸君との間に懇談会等を開いて、原案をまとめ上げる方向をとつていただきたいと思います。電電公社法の場合は、年半にわたつてそれを続けて参りました。放送協会の方でも独自な立場における原案と、根本的な改正についてどうしたらいいかということを研究なさるならば、やはり国会の当委員会意見等も十分に聴取しながら作業を進めていただくことが、一番円滑にして、さらに審議される場合でも盲点が明瞭になりますから、ぐあいがいいのではないかと思います。つけ加えて蛇足でございますけれども、私の希望を申し上げておきます。以上で私の質問を終ります。
  70. 庄司一郎

    ○庄司委員 ただいまは松井さんより、NHKに勤務する勤労者諸君の給与問題に関して、かなり御理解の深い、御同情ある御質問やら御意見やらがあられ、それぞれの御答弁があつたようでございますが、本員は一昨日舞鶴のソ連引揚者の出迎えのために、国会代表派遣として行つて参りました。その際NHKの第一線の諸君が、引揚げの様子をキャッチするために四十名くらい行つておりました。前夜より困苦欠乏に耐えて、また前夜は春雨といえばたいへん風流でありますが、かなりの大雨でございました。そういう雨をついて奮闘努力されておる光景を、目のあたりこの二つの目で見て参りました。NHKの第一線の勤労者諸君の奮闘努力に、心から敬意を表して参つたのであります。それが終りましてから、舞鶴のNHKの中継所でございますか、そこをおたずねしていろいろ職員諸君と座談を試みて参つたのでありますが、中継所の建物は、まるで麹町あたりの交番程度のまことにささやかな建物である。また四十名程度の職員諸君が臨時の事務所に充てられたものは、お茶の水あたりにこの間まであつた、あの渓谷の極端なるバラックのようなところにおつて働いておられたのであります。私はそのこぎたない、何ともいえないバラックの中で三十分ほど会話を交換し、簡単な座談会をやつて、いろいろ給与問題にも触れて伺つてつたのでございます。実は本日も内閣の方で社会福祉関係の審議会がございまして、それに出て参つたのでございますが、それは恩給関係の問題でございました。しかるにNHKには、老後を養ういわゆる恩給の制度があられない。一時退職金制度のあられることは承知しておりますが、老後を養う、そういう意味における恩給制度 もただいまはない。そこでいよいよ承認の件も時期が迫つて参りました。明日にも各党代表の討論採決で、大体この案は通るものと私は確信しておりますが、もしそれこの予算国会承認を受け、成立のあかつきにおいて、でき得るだけ職員諸君の、待遇を改善するために、この上とも周到なる御対策をもつて善処されたい。NHKの勤労者諸君はやはり服装関係等においても、相当ゼントルマンでなければならないと私は考えております。そこでぜひ田園、都市等を問わず、従業員諸君の待遇の改善については、いわゆる日に日に新たにして日にまた新たなりという古い東洋の格言もございますが、改善に改善を加え、晩年に至るまで恩給制度のない職員でありますから、そういう観点からも、予算の許される範囲内において、十二分の待遇の改善を、私は松井さんと同様に熱望してやまないのであります。他の熱誠なる委員各位の驥尾に付して、ぜひ待遇だけはよくしてやりたいと思います。とにかく現実の待遇は、決して生活の絶対安全な給与でないことは一目瞭然であります。うわさによりますと、何か役員の方だけが高碌をはんで、職員が非常に低いということになれば、いわゆる韓退之の物平らかならざればすなわち鳴るであります。これは決して産業革命以来のストライキの発生とか何とかいう問題ではない、物平らかならざればすなわち鳴るということは、三千年来の大きな東洋の哲学であります。どうかひとつ善処あられて、本予算が通過のあかつきにおいては、待遇改善の問題はとくと意にとめていただいて、適正なる御解決を私は要望してやまないのであります。なお政府代表としての政府委員長谷さんにおかれても、こういう問題は誠心誠意――あえて仲裁のために中に入つてくれとは言いませんが、NHKの労働問題の発生を、努めて未然に防止し得ることができるように、そうして待遇改善によつて全国に散在しているNHKの職員等が心から喜んで、前途に明るい希望のともし火を持つて勤労にいそしみ励むことができ得るように、そういう措置をとられるように、特にこの際私は遅ればせながら私の信念を申し上げて、当局の御善処を強く要望してやまない次第であります。
  71. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 今まで触れておりません問題で、実は陳情が参つておりますので、これについて当局並びに協会当局にもお尋ねいたしたいと思います。というのは、日本傷痍軍人会からでありますが、現在恩給法によつて不具廃疾者というものが認められて、いわゆる恩給を受けております。この中に特別項症から第七項症、それが不具廃疾となつておりまして、その次が障害者となつて、第一款症から第四款症まであります。これの全部が恩給の対象となつているのでありますが、これらに対して全額免除の措置をとつてもらいたいというような申入れを受けているのであります。いろいろ聞きますと、戦争中においては、傷痍軍人に対してはもちろん、戦没者の遺家族ですか、こういうような者に対しては、特別の意味でありましようが、協会は受信料を免除しておつた。こういうような事実もあります関係上、この際これつの者に対して、特別の処置をはかつてもらいたといいうような陳情があるのでありますが、これに対して当局並げに協会の方で、どういうようなお考えを持つておられるかお聞きしたいと思います。
  72. 岡部重信

    岡部参考人 実は私どもといたしましては、二十九年度予算編成いたしますときに、生活保護法によつて継続的に扶助を受けている者、それから恩給法にいう特別項症といいますか、その方々については、協会使命に照しまして免除をして行くという考え方編成いたしたのでございます。ただいま承れば、そのほか恩給法にいう不具廃疾でございますか、そういう者の全部に対して免除をしてくれという陳情が出ておるというお話でございます。これらにつきましては、戦争中確かに大体の線として免除していたのでございますが、御承知のような事情で免除がなくなつたという経緯もございます。しかしその数が何か六万五千ほどおありだというようなお話もありましたが、その数は私どもとしては全然予想しない数で編成されておる。それでかりに六万五千のうちにどのくらい受信機をお持ちになつておるかということも、今推定以外には全然資料を持つていないわけです。あるいは受信料の何分のかを軽減する方法もあるかと思いますが、私これは経営委員会にもまだ諮つておりませんが、全額というようなことでなく、半額というようなことでやれれば、ぜひやつて行きたいというふうに考えております。
  73. 庄司一郎

    ○庄司委員 関連して簡単に申し上げます。ごらんになつたかどうかわかりませんが、いわゆる不具廃疾状態にある昔の傷痍軍人は、特項症から第一項症、ずつと障害の程度が違つております。特項症は寝たきりで絶対に起きることができない状態、あるいは第一項症は両眼が見えないとか、両手がないとか、両足がないとか、そういうような極端にお気の毒な方々であります。一番最後の方まで、にわかに全部というわけには行かなくとも、最も極端な状態にあるそういう諸君をまず御研究の対象とされ、あるいは一応免除の対象とされ、審議会等においてぜひ御吟味を願いたい。なお全国の身体障害関係の連合会もございまして、私は実は偶然全国の副会長をやつておりますが、努めて御審議の対象にしていただきたい。いろいろ長く申し上げれば材料も豊富にございますが、一応本日参りました請願書をお取上げくださつて、御吟味を願いたいと思います。全部というわけにも行かないが、なるべく障害の程度の高い方面から一歩々々援護の手を差延べていただきたい、こういうことを橋本さんの御意見に追加して陳情申し上げる次第であります。
  74. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 大体特別項症から第六項症までを不具廃疾と恩給法では明らかにしておるようであります。従つて一部の者、特別項症とか第一、第二だけを全免なりもしくは半額なりをやることも、実際上の扱い方として困難を感じますので、私個人の希望としては、この際相当の金額になりましようが、特別項症から第七項症までを対象にして考えてもらいたい。その数は陳情によりますと、六万五千六百十ということになるようであります。しかしラジオの受信機を持つておる者は全部でもありますまいから、これを約半分と見ましても、たとえば今協会側の御意向のように、半額免除ということにいたしますれば、大体年間においては千四・五百万円程度の減収になりはし内科と思うのです。この財源としては、もちろん当局において御考慮願わなければならぬのでありますが、この程度のものは、必ずしも現在の予算の上においてゆとりができないこともなかろうと思いますので、十分当局とも打合せの上、ぜひともそういう面のおとりはからいをお願いしたいと思います。  なお別の問題ですが、今度の予算の上では、老朽及び戦時不良施設に対して、早急に改修すべきものが相当あるにかかわらず、これが予算上には十分に出ておらない。もちろん他の予算においては、多少のことはできますが、いろいろ資料によりますと、老朽施設の改善に要する費用は、総額で十一億一千万円に相なるようであります。これは当初のいわゆる七十円案という協会考え方では、これを五年間に改修して行こうというような考え方のようでありましたが、最後に協会側の六十七円という案によつて予算が提出されておりますので、この内容を見ますと、この費目がないようであります。これはある意味においては非常に重大なことであつて、現在の放送事業はまつたく近代設備であり、将来ともに急速にかわらざるを得ない情勢にあるにもかかわず、この内容を見てみますと、さびどめも塗れない、あるいは木造建築で相当にいたんでおる、こういうようなまつたく緊急を要するものが相当にあるようであります。従つてこれらについては、今回の予算には提出されておりませんけれども、実際問題としてこの全部とは言いませんが、その一部を実行することは、予算の流用等において行われるのではないか、かつ、これらはある意味において予算の中に含ませているものではないかというように考えますので、この点に関する予算的な流用関係における措置についての当局の見解、及び協会側としては、もしそれが予算措置として可能であるというならば、二十九年度の予算の運用において、どの程度までこういう問題についてやつて行けるか。これについての見通しをお聞かせ願いたいと思います。
  75. 長谷愼一

    長谷政府委員 お答え申し上げます。最初の傷痍軍人の方々の受信料の免除の問題でございますが、先ほども協会の方からも御答弁がありましたよりに、これは郵政大臣の認可事項になりておりますので、その認可の場合に、私どもとしましてもただいまのお話の趣旨を体して研究して行きたいと思います。  次に今お話のありました協会の設備の改修でございますが、特に老朽はなはだしい施設が全国的に相当ございまので、これの補修改修は関係者の非常に心配をしておるところでございます。今回御指摘のように、いわゆる建設勘定に入りますところの補修改良の点は省かれてございますが、その他維持という形でいろいろ補修をやられることは、従来とも同じでございまして、所期の計画通りには行かないまでも、緊急を要する補修の仕事は、こ予算によりましても相当程度やれるものと存じます。なおこの予算については、いろいろ算定根拠はあおりだと思いますけれども、実行にあたりまして、実際的にAの局をやるかBの局をやるか、あるいは施設の中でも機械をやるか、鉄塔をやるかというような点も、時宜に適した処置を協会当局としておできになるわけでございますので、この予算によりまして、十二分とは申せないまでも、とりあえず緊急を要する老朽施設の補修ということは、やつて行けるのではなかろうかと思つておるわけでございます。
  76. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 もう一つだけお尋ねをいたします。もう一つは難聴地域における新しい豆局の設置ですが、この問題にについては大体は当局並びに協会からもこれに対する御説明があつたのでありますが、もう少しこれを明らかにしておきたいのは、今申しました老朽施設の財源及び先ほどの身体障害者に対する免除等の財源と豆局の財源、こういう三つの関連した問題があるのであります。こういうものの費用が相当にいる関係から、この財源をある程度明らかにしておかなければ、実際上われわれの希望が達成されないと思いますので、こういつたものを二十九年度の事業としてやつて行く上においては、どういう面からこの財源が充てられるか。たとえば旅費の問題にしても、これは大体一箇年の旅費一人当りの平均が六千円台でありますから、あえて運輸当局や郵政当局と比べて、ぜいたくな旅費とは考えられませんが、他の物件費等から考えて、ことに本年度は政府においても何パーセントかのいわゆる物件費の節約を天引にやつておる状態でありますから、ある程度のこうしたものの天引を考えれば、これらの三つの問題の予算的解決の道かあるのではないか。こう考えるのでありますが、協会当局としてはどういうお考えをお持ちか、お聞かせを願いたいと思います。
  77. 岡部重信

    岡部参考人 財源の問題については、一番いい方法としては増収でございます。それからただいま御指摘の節約合理化でございます。節約合理化についても、やるだけのことはに今までいたしましたので、といつて今後やらないとは申しませんが、それらについても十分やつて行きたいと存じます。ただ先般も委員会で申し上げましたように、この財源につきましては、御承知の通り難聴地区の建設費の関係がございまして、この建設費関係の財源が、減価償却と売却固定資産の財源でやつておるわけでございますが、この売却固定資産の財源といたしましても七百万円くらいのものでございます。それで建設をやつていいかどうかという実質上の議論になりますと、片方の老朽施設の改善ということが刻下の問題でございますので、重点的に行われなければならぬ関係から、その財源のよつて来るべき源泉から考えますならば、新規の建設というものはむずかしいのではなかろうか。ただこの予算総則の単なる形式上の面から申しますれば、また別な解釈になるのではなかろうか。さように先般の委員会でも申し上げたわけでございますが、ただいまもやはりそういう考えでおるわけでございます。
  78. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 協会側としては新規事業に手をつけるだけの財源が出て来るかどうか怪しいという、非常に消極的な御意見のようでありますが、財源の問題は今後の問題になりますから、やはり今後経営の合理化、節約によつて、なるべく出してもらいたいという御希望を申し上げておきます。政府の方では、従来の処置から言いますと、何局設置するかという建設勘定が出て来ないと、大体そういうものの処置ができなかつたのではないかと思いますが、この間その点はつきり私は御返答を承らなかつたようですから、もし委員会においてこの問題が重要視され、あるいは附帯条件としてつけられた場合には、たといそうした予算的措置がなくても、いわゆる余裕財源ができた場合には、協会の申請のある限りはこれを承認してやつて設置する、こういうことにして法的にさしつかえないか。また行い得るものかどうか、その点を承りたい。
  79. 長谷愼一

    長谷政府委員 お答え申し上げます。本件につきましては先般も御質問があつたのでありますが、どうも残念ながら私どもといたしましては、御趣旨のところに真正面から沿い得るような解釈が、ただいま御審議を願つておりますところの二十九年度の事業計画及び収支予算、これは予算総則をも含めまして、その中からは出て来ないのじやなかろうかという解釈でございます。と申しますのは、二十九年度の事業計画の中に建設関係といたしまして、ラジオとしましては「老朽設備の改良及び取替並びに技術研究施設等の整備を行うこととし、総額」云々、こういうふうになつておりまして、もしもどんな小さな局でも、新たにやります場合には事業計画の中に、その局数なり規模を示しておるのが通例でございますが、今回はそれが特にこの中かな落ちておりますので、新局というものを、たとい資金的に、あるいは予算総則の上から財源が見出されましてもむずかしいのじやなかろうか、こういうふうに存ずるのであります。ただこの計画の内訳を見ますと、放送施設の改善という項におきまして、放送装置・音声調整装置その他の設備改善整備も行うことになつております。また予算総則の上から、予算総則の第七条に収入が予算額に比較して増加したときは、借入金の返還とか、あるいは減価償却費の補填と同時に設備の改善に充てることができる、こういうことなつておりますので、設備の改善ということに関する限りにおきましては相当のことができると思いますが、まつたく新しい新規のものを生み出すというところには、持つて行きかねるのではなかろうかと思うのでございます。
  80. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 新設か改善かというわかれ目になるわけですが、難聴地域にいわゆる豆局を設置することによつて、これを改善とみなすか、もしくはやはり全然独立した新しい局として拡張というふうに考えるか、こういう点が一つ議論のわかれ目だろうと思うのです。でありますから、これは解釈のしようですが、難聴地区をもつと聞えるようにするのだから改善であるという解釈から行けば、私はそれでもいいと思うのですが、その場合になつてもこれは新しい波が必要になりますから、波の割当でもつてそこで違つた解釈をすると、また新設ということで困難になつて来はしないか、これは御研究を願います。なおこういう場合、たとえば昭和三十年度においては新設を行うのだ、その準備行為として調査の範囲内において土地を買つたり、ある程度の準備を進めることはあえてさしつかえないと思うのですが、その点についてはどうですか。
  81. 岡部重信

    岡部参考人 ただいま非常に具体的なお話ですが、調査ということは協会としては絶えずしておりますから、調査という範囲におきますことは当然問題ないと思います。ただ新規にやつて行くようなものに類するようなことがあまりに明瞭なものについては、これはやはり、相当問題があるのではないか、かように考えております。
  82. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 先日、原委員からもその点についていろいろ質問があつたのですが、民間放送の場合においては、いつ何どきでもこれがやつて行ける、公共放送の場合においてはそれができない、こういうことで、ただ長官は現在の場合においては、そういうような現実の問題として、具体的ケースが前から御心配はないということですが、そういうような心配が現実にないということと、常にもう少し弾力条項によつて機動力を持たせるという考え方も必要じやないかと思うのです。その意味においては、第七条によつて日本放送協会全国に普及するの義務を与えられておる。その意味においての権利行使という意味からも、もう少しこの解釈の仕方を広く考えてもよいじやないか、こういうふうに思うのですが、この点についてはただちにどうということではありませんが、その点をひとつ十分にお考えおきを願いたい。  大体補足的な質問は以上でありますが、先ほど来から申し上げました三つの問題については、われわれ当委員会においても重要に考えておりますので、あるいは委員会として適当の意思表示をするような結果になろうと考えますので、委員会意思表示というものを十分に尊重し、これが実現に相努めるような見地で御研究を願いたいと思います。
  83. 成田知巳

    成田委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十二分散会