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塚田国務大臣 それでは私から
電波行政について現下の
問題点及び今後の方針について申し述べたいと思いますが、その前に、まず
電波の
利用及び
電波行政の
発展の経過を概観し、それが今日いかなる
重要性を持つに至
つているかに思いをいたしてみたいと思うのであります。
御
承知のように
電波が人類の用に供せられるように
なつたのは、八九五年(明治二十八年)のことでありますが、その後
僅々半世紀の間に
電波の
利用は真に驚くべき
発展を示したのであります。すなわち
電波は、従来のように
船舶通信、
公衆通信のみに
利用せられているばかりでなく、今日においては、警察、防衛、
海上保安、航空、気象、
水防等の
国家事務のためを初めとし、
地方行政事務のためにも
利用せられ、その他
日本国有鉄道、
日本放送協会、
民間放送会社、
新聞社、
電力会社、
各種メーカー、
銀行等のそれぞれの
業務に、さらに
アマチュア無線のごとき個人に至るまで、広汎な分野にわたり、社会の活動と密接な
つながりを持ち、今日の
国民生活は
電波の恩恵に浴しないものはないと申しましても過言ではないと存じます。
わが国における
電波利用の面も最近非常な
発展を遂げて参り、
無線局の数をも
つて見ますと、
世界各国のうちでも米国、英国に次ぐ状況に
なつております。このように最近
電波の
利用が著しく伸びた理由として考えられるものは、もとより
利用者において
電波利用の
有効性を強く認識し、積極的にその
利用をはかられたことがその
一つでありますが、最近における
電波科学及び
技術の
進歩発達と、従来
政府専掌であ
つた電波の
利用を広く
国民に解放した
電波法の制定による制度の改変が、これを可能ならしめたところのものであると存ぜられます。
次に総括的に、
電波行政の
特質、その
基本的性格といつたものについて触れておきたいと思う次第でございます。
まず第一に、
電波行政の
必要性について申し述べたいのでありますが、
電波は、その
利用し得る数においてまことに強い
制限があることであります。もちろん
電波科学及び
技術の
発達により、逐次従来使用不可能であ
つた周波数帯に対して開拓の手は伸びつつありますが、そのときにおいては
利用し得る
電波が、国内的及び
国際的に
制限のあることは申すまでもありません。このように
電波には、
利用し得る数に
制限がありますので、まことに貴重な
国家的無形資源と申すべきでございます。このような限られた貴重な
資源でありますから、その
利用は
国家的に最も有効に行わなければなりません。ここにどうしても国として
行政の対象としなければならね理由があるのであります。御
承知の
通り電波法は、
電波利用の
国家独占を改めました。しかしながら
国民共有の
電波は、決して個人の
所有物ではないはずであります。従いまして
電波法は私人の
電波利用を認めはいたしましたが、
特定人にこの
貴重資源の
利用を認めるということは、その者に対する大きな利益、大きな特権の設定でありまして、その場合には
共有者たる
国民による全
国民的見地からする選択の意思が働くべきは当然であります。しかもこの許否の決定は、
現行法律のもとにおいて
行政庁が実施すべきものとせられている次第でありますが、私は以上申し述べましたような観点から、
電波利用の
免許あるいは
監督等について
現行の
法律、規則の
運用を行い、また今後
改正を要しますものがあれば、これを
改正することにいたしたいと考えている次第であります。
電波行政の
特質の第二点といたしましては、無限の将来性があるということでございます。御
承知のように
利用し得る
電波の個数はきわめて限られたものでありまして、そのため各国とも
電波獲得のため必死と
なつておりますが、
わが国といたしましても、
国際的に
電波利用の
権利確保のため努力いたすべきは当然であります。さらに
科学技術の振興により、今まで使用不可能であ
つた電波を使えるように開拓することが可能であります。また
通信方式の改善によ
つて、
通信に使用する
周波数の幅を狭めることとか、
通信速度を向上することなども
研究課題であります。これらによ
つて電波界の将来は、まことに洋々たるものがあり、現に日に日に新たなものが生れつつあります。しかしこれはすべて広大な分野にわたる科学、
技術の
研究研鑚の成果、いわばピラミツドの頂点に咲いた花でありまして、われわれは今後この
下部構造をつちかうことに大いなる努力を傾けねばならぬと存ずる次第であります。
電波行政の
特質といたしまして第三に、私はその
国際性について一言いたしたいと存じます。御
承知のように短波及びこれより長い
電波は、
到達距離の
関係上、
国際的に混信の問題を生じます。
従つてどうしても
国際的な統制を必要といたします。さらに船舶及び航空機は
国際的に運航いたすものでありますから、
使用電波や
通信の方式、
通信の
手続等について
国際的なとりきめに従う要があります。そのゆえに
国際間には早くから
電波に関する
条約があり、
わが国もつとにこれに加入いたしておりました。太平洋戦争後も、
昭和二十三年には
国際電気通信条約に加入の手続がとられ、翌
昭和二十四年には加入が完了いたしました。
万国郵便条約復帰に続き、
わが国として戦後
条約に加入した第二番目でありました。それほどに
電波の
関係は、
国際関係と
切つても切れぬ密接な
つながりがあるのでありまして、
条約により
わが国の
政府は、
国際的に認められたところにより
無線局の
免許、
監督及び監視等いろいろな権限を有し、また義務を負
つているのであります。この
意味におきまして、私は
国際的な
電気通信の
業務にできる限りの
協力をすることが必要だと考えておりますが、
各種国際会議等においても、努めて有力な
代表団を派遣し、
国際電波行政に有力な寄与をなすとともに、各国をして
わが国の
電波界における実力を認識せしめ、
国際的な地位においても有力な
発言権のある状態に一日も早く持
つて行きたいものだと念願いたしている次第でございます。
電波関係において
国際問題が多いことは、以上のことや、波の争奪の交渉のことでもおわかりの
通りでありますが、
わが国の
電波関係は、他国に比して
国際問題が一層複雑かつ重要と
なつているのであります。それは第一に、
駐留軍との
関係があることでありますが、これらにつきましては
行政協定に基く
日米合同委員会の
周波数分科委員会において、その間の調整がはかられております。第二には、
わが国がソ連、中共、朝鮮に隣接していることでありまして、これらの国々には、
国際電気通信連合に加盟していないところ、または加盟していても、
国際規則の適用について留保を行
つているところもございますし、これらの地域との間において発生する
混信問題等の処理は、まつたく今後に残されたむずかしい問題といわねばなりません。
電波行政の
特質として第四にあげたく思いますのは、それがまつたく新しい
行政であること及びきわめて
技術的専門的要件を帯びていることでございます。
電波行政以外の
各種の
行政は、いずれも古くからあつたものでございます。
従つて、官庁としてもいずれも長い歴史を持ち、
行政としての
内容も、多かれ少かれ
一般によく周知されて来たものでございます。しかるに
電波行政に至りましては、過去においてはその幅はきわめて限られており、しかもそれが最近に至
つて急激に増大し、また重要となり、
行政として大きな実態を備えるに至つたものであります。しかもその実態についての知識は、きわめて
技術的、専門的となりますために、
一般にはなかなか了解されがたい点が多いのであります。以上述べましたように、私は
電波利用の実態と
電波行政の
重要性を考え、またその
特異性に思いをいたしますときに、解決すべきいろいろな問題があるのでありますが、いずれもゆるがせにできないように思うのであります。これらの問題につきましては、各位の御
協力によりましてそのすみやかな解決を期する所存であります。
以上申し述べましたような基本的な考え方なり、態度なりに立ちまして、当面の二、三の問題につきましてその
方針等を少しく申し述べたいと思います。
まず第一に言及いたしたいことは、国として一貫した、統一された
電波行政を確立するということであります。先ほども申し上げました
通り、
電波は
国家の限りある貴重な
資源であり、またその
利用のいかんやその効果の
国家社会に対する影響のはなはだ大きい点からいたしまして、
電波法の第一条(目的)にうたわれておりますように、
電波の公平かつ能率的な
利用を確保し、も
つて公共の福祉の増進を期すべきことはいまさら申し上げるまでもございません。この観点から
電波の
利用範囲の拡大を期する面、
わが国として現実に
利用可能な
電波を
国家全体として、最も合理的かつ能率的に活用し得るようはからねばならぬこととなるわけでございます。この
電波利用の
積極的拡大の方途としては、
国際的に
わが国として使用可能な
周波数の獲得と、
電波の
利用に関する
技術の
発達振興であります。また現に
利用可能な
電波の合理的かつ能率的な活用の方途としては、
国家全体としての
電波の
使用計画の合理的な
総合調整と、設備せられた
電波施設の能率的な
総合運用と申すようなこととなると存じます。
電波の使用についての
国際権益の
獲得等については、先ほど一言いたしましたし、また
電波についての
技術の
発達、振興については、後にあらためて申し述べたいと存じますので、ここでは特に
電波利用の
総合計画及び合理的、能率的な
運用ということについて言及したいと存じます。
電波利用の合理的な
総合計画としては、
有線通信、
無線通信としての
相互関連から考慮するばかりでなく、
日本電信電話公社の
公衆通信施設とその他の
専用通信施設との
関係、
国家としてのいわゆる
官庁通信と
一般民間通信との比重、あるいは
防衛関係とその他の
電波利用等、
国家全体として種々の面から、しかも常に総合的に、統一的に考慮せらるべきものと存じます。このことは、
周波数の
合理的使用からもそうでありますし、
資材資金に乏しい
わが国情からもそうであり、かつまた
非常災害に対処する考えからもその必要に迫られることは、必至のところと思われるのであります。この
意味において私は、
有無線を統合した
一元的行政を今後強力に推進する必要があると痛感し、両者を統合した
電気通信行政、さらにまた総合的な
電気通信施設計画の設定を
国家として確立する必要があるのではないかと存じておる次第であります。一方
わが国における
電波管理の
行政が、現在
国家全体として一本に統一されていることは、まことに当を得たところでありまして、このことは国として対内的にも、また対外的にも利するところがきわめて大きいと存じております。
電波管理についての
行政機構等が当を得ていないときには、その国の
電波の
利用について、特に軍用あるいは
国防用と、その他の用途との間の
関係がしばしば調整困難と
なつて、
国家全体として
内外ともに不利な状態となる実例が見られるのであります。
わが国におきましても、か
つて陸、海、逓と
電波の
利用が三分されておつたこともあり、現在も
欧米諸国等において、この
関係が国全体として統一ある形態と
なつていないために、
電波の
国際的権益の確保及びその合理的、
能率的活用に欠ける例も少なくないのであります。幸い
わが国においては
国家全体として、
電波管理の仕事は、細部の手続その他の点は別といたしましても、その根本である
電波統制の面が厳として一本に統一されている点は、今後とも保持さるべきものと信じているものであります。
次に
電波利用の合理的、
能率的利用方策に関連いたしまして、
現有設備の
運用についての問題でごごいますが、
わが国の
経済力、
利用し得る
電波に限りある点、また
天災地変の多い
事情等を勘案いたしますときに、
通信施設、特に
電波を
利用いたします
通信施設の合理的、能率的な
総合運用を期すべきことは、
重複施設を避ける
意味から、ただいま申し述べました
施設計画の
総合調整を必要とする面において、きわめて必要なことと思うのでございます。
このために設備や
部品類の
規格統一、
通信運用方法の
規準化あるいは
通信従事者の
総合訓練と申すようなことも、必要に
なつて来るのではないかと存じます。現在
非常災害時等に際して、官民各方面にわたる多数の
無線局の
免許人または
運用者が、まつたく元と
なつて
適時通信網を形づくり、非常時に際する救助、復旧その他の
重要通信の疏通をはか
つて来ておりますことは、御
承知の
通りでございます。しかし現在のところは、中央及び地方に
非常無線通信協議会として、各
無線局を
運用している
関係者が
相当援助の形をと
つているだけでありまして、郵政省としては、単にこれを指導し、援助する立場だけにとどま
つておりますが、ほとんど例年と申しても過言ではないほどに、風水害その他の災害の多い
わが国としては、なお一層効果を発揮し得るよう、この
非常無線通信の
制度化、
国家的補助、平時からの訓練の
実施等についても、
早急対策の必要があると存じております。
さて、
電波の
利用が各方面にわた
つて広くまた深く普及して参りますとともに、問題と
なつて参りますのは、
無線通信や
放送受信に対するいわゆる
雑音障害であります。この影響は、
一般の
電気設備や
高周波利用設備の普及とともに、最近急激に増大の傾向を示して来ているのであります。この
雑音障害、すなわち
電波利用に対する妨害を除去または軽減する問題は、
電波の
利用のための
消極的発展策とでも申せると思うのでありますが、これについての
法的措置も現在十分でない状態でありまして、このまま放置いたしますならば、将来に重大な禍根を残すおそれがありますので、これが
除去対策を急速に樹立し、要すればその
法制化についても考慮すべく、目下鋭意その成案を得べく努力している次第でございます。しかしながら本問題は何分その
関係範囲がきわめて広汎であるため、またその及ぼす経済上の問題も多々ありますので、
通産省関係各省との
協力のもとに施策を講ずる要がございますが、一面広く
国民各位の理解と
協力に期待するところがきわめて多いのであります。
次に
放送について申し上げます。まず第一に私は、
標準放送及び
テレビジヨン放送が現在の
わが国においていかなる位置を占めるものであるかについて、思いをいたしてみたいと存ずるものであります。
わが国の現下の
最高命題は、
国家の再建にあり、しかもこれを
民主主義の原理によ
つて達成するというところにあると存ずるのでございます。この
民主主義原理による
国家の再建ということを遂行するにあた
つては、マスコミユニケーシヨンの手段が絶対に必要であり、この分野において
放送の機能に期待するところはまことに大なるものがあります。すなわち
各種の事実が正確、迅速に
国民全般に報道され、多方面の意見が広く
一般の批判の場に提供されて、これらを素材として
国民の一人々々が自主的な判断を下し得るようにすること、また一旦決定した
事項については、その決定に
至つた経緯及び理由を明らかにして、全
国民の納得のもとに
国民の
協力を形づくるということが根本となるわけであります。また
国民に勤労の疲れをいやすために健全な娯楽を提供することも必要でありますし、一方、特に次の時代を背負うべき青少年に対しましては、深い情操と教養とを涵養する機会を与えることも大切であります。かかる
意味におきまして、
放送の使命はまことに大なるものがあると存じている次第であります。
以上のように私は
放送の持つ意義を理解し、それは単に個人の生活の便宜のために必要であるというような小さなものではなく、まさに
国家としてその
最高度の活用が望まれるものであります。ここにおいて私は
放送について次の三つのことの実現を必要と考える次第であります。すなわち第一は
放送施設の
全国的普及であり、第二は
放送の
使命達成に最もふさわしい
番組の提供であり、第三は
受信機の最大限の普及であります。しかしてこの三者の実現をはかります場合に、
わが国の
現状からいたしまして最も合理的に、最も経済的に行う必要があると存ずるのであります。以上のような
基本的観念の上に立
つて、以下
放送に関する若干の問題について意見を述べてみたいと存じます。
まず第一は、
放送法の
改正問題であります。
現行放送法は被
占領時代に制定せられ、
放送のあり方、
日本放送協会の使命、その
業務内容等を
規定するとともに、
電波法とも関連していわゆる
民間放送を可能ならしめた画期的なものでありましたが、かねがね申し述べました
通り、
現状におきましては
種種改正を必要とする点が少くないように存ずるのであります。また
国会におかれてもその
必要性を指摘せられておりますので、
政府といたしましてはこの
放送関係法令の
改正につきまして、さきにも申し述べましたように特に
調査委員会を設けるなどいたしまして、鋭意その準備を進めている次第でございます。
この際
調査委員会において
調査すべき問題と考えておりますことの二、三を申し上げたいと存じます。申すまでもなくこれらの
問題点といたしましては、今後同
委員会の作業が進捗するに伴い、いろいろな
事項が浮んで来ることとは存じますが、私といたしましては、
目下次のようなことが、問題として十分
調査されなければならないのではないかと考えているのであります。
第一は、
放送の持つ
公共性と表現の自由との
関係をどう処理するかということであります。これに関連するものとしては、
放送番組関係の準則として
法律に
掲ぐべきものは、
現行法に
規定されている程度のものでよろしいかどうか、特に
テレビジヨンが生れた今日においても支障がないかどうか、自主的な
番組規律の実施を確保するための何らか有効な組織ないし手段というものを考える要があるかないか、
民間放送の場合に
放送時間のすべてを
商業番組として
しまつていいものかどうか、
一つの
放送会社に所属してよい
局数に限度を設けるかどうか、ネットワークを構成する場合に何等かの
制限を要するかどうか等が
調査の対象となるように考えられます。
第二は、
放送事業は全体として
公共的性格を持つべきものでありましようが、これを実施する
一般放送事業者の
放送事業と、特に
公共的企業体として設けられている
日本放送協会の
放送事業とは、同じものであ
つてよいものかどうか、異なるところがあるべきものとすれば、その
内容はどういうことか、たとえば
事業の目的、範囲、
放送番組等において、それぞれいかにあるべきであるか、こういつたことが
調査を要することと考えられます。
第三には、
日本放送協会の機構、運営、
国家との
関係等が
問題点として考えられるべきものと存じます。この
関係といたしましては、たとえば
協会の経営の
責任体制は
現行の
経営委員会制度がよいか、あるいは他の形態がよいか、
協会に対する国の
監督は
現状のままでよいかどうか、予算や
事業計画は
国会の
承認事項と
なつているが、
現状のままがよいか等のことが含まれるべきものと思
つております。
第四には、
放送受信料のことが
問題点であると存じます。これにつきましては、
現行制度のままでいいかどうか、
日本放送協会との契約に基く
受信料という観念を何らか他の観念に切りかえる必要があるかどうか、
従つて徴収の法的根拠なり、徴収の方法、
協会の
収入確保の方法に変更を加える必要があるかどうか等のことが問題であろうと思
つております。
第五には、立法の形式として
放送法を二つにわけ、
一つを
放送全般に通ずる
一般準則を
規定する
放送法とし、他を特に
日本放送協会の目的、設立、
業務、組織、財務、
監督等に関する
事項を
規定する
日本放送協会法とでも申すべきものとすることの要否及び適否が問題として
調査されるべきであると存じます。
以上
放送関係法令の
改正について
調査を要すると考えられるところのものを、例示的に御説明申し上げた次第でございますが、これに関連して
電波法の
改正と申しましようか、その
調査研究も必要と
なつて来るかと思われるのであります。
つまり放送局の
免許の基準を十分に
調査いたすべきでないかと思
つております。現在
電波法第七条及び
関係の規則にこれらに関する
規定があるわけでございますが、何分にも重要な
免許処分でありますので、
法律をも
つてできるだけ詳細な
規定を設けることが必要なのではないか、また、
現行法では他の要件が満たされてさえおれば、
電波がある限り
免許を与えなければならず、
国家的な
価値判断あるいは将来にわたる
一般情勢の考慮を加える余地がないかのような形で
規定が設けられておりますが、
国家社会全般の利益、つまり公益の観点に立
つて免許するかいなかをきめる
裁量権をある程度まで、明文をも
つて行政庁に認めることが必要なのではなかろうか、これらの点についても慎重に
調査研究を進める要があると思
つております。
なおこの際言及いたしたいことは、
テレビジヨンにせよ、
標準放送にせよ、新たな
商業放送局を設けたいとする申請がきわめて多いのでありますが、私といたしましては、ただいまも申し上げたことに関連いたしますが、今後の
放送局の
新設免許は、十分慎重に行うべきものではないかと考えておることであります。かく申しますのは
一つには
周波数の面からであり、二つには
わが国の
商業放送の健全な
発達をはからんとすることからであります。すなわち
周波数におきましては、
標準放送については現に使用可能の
限界点まで
利用し尽しており、今後東亜の情勢の変化によ
つては、場合によ
つて国内における
現用周波数の維持すら、実際的にもきわめて困難に
なつてくるのではないかとおそれるのであります。また
事業経営の面からは、
わが国の
経済力からいたしまして
放送広告に充て得る経費にもおのずから一定の限度があり、いたずらに多数の局がこれを奪い合う結果は、勢い
放送内容の低下となることをおそれるのでございます。アメリカのごとく厖大な資力を有する国と異なり、
わが国においては
放送の
受信者たる
一般国民が負担できる
広告費、ないしは負担させても
国家的にないしは社会的に支障なしと認められる
広告費にも、一定の限度があるのではないかとも存ぜられるのであります。このような
意味から私は、最近非常に多く開設されました
商業放送局の実情をしばらく注視したいと考えている次第でございます。
最後に
電波関係の
技術の振興について申し上げたいと存じます。
電波利用の
発展は、
電波に関する
技術の
発達いかんにかか
つていることは、いまさら申し上げるまでもないことでございまして、国として
電波関係の
技術の振興に力をいたすべきことは、しばしば本
電気通信委員会においても御指摘になり、また御激励をいただいておるところでございます。よく二十世紀のシンボルは、航空と
電波と原子力であるといわれており、いずれもこれらの
技術の
進歩発達はまことに目ざましく、文字
通り日進月歩でございます。特に
電波は先ほども申し上げました
通り、
国家、社会万般の活動に、また
国民の日常生活にも浸透している今日の実情を考えますときに、
わが国における
電波技術の振興をはかることはまことに緊要と存ずるのでございます。
電波の
利用に関する
技術は、他の
技術においても同様でございましようが、単に電気工学の面にとどまらず、物理、化学、機械工学、光学、熱学、音響工学から、さらに天文、気象方面の学問や
技術とも有機的に関連を持つた、いわば近代科学の総合
技術であると伺
つているのでありますが、それだけにその
発達、振興をはかるためには、
国家全体の
技術、工業、諸産業の総合的な
発達と、その機能なり、能力なりの一体と
なつた発揮によ
つて、はじめて期し得るものと存じます。しかも
電波は、先ほど申し上げました
通りに強い
国際性を持
つておりますので、他の科学、
技術においてもそうでありましようが、一層
国際的な視野と観点に立
つて、
電波についての
技術の
発達をはからなければならないと思うのであります。
翻
つてわが国の
電波技術界の
現状を見ますに、戦時中における
国際的隔離並びに戦後の空白により、欧米諸国に比し相当の遜色を見せていたのでありますが、その後における外国よりの
技術導入並びに
わが国関係者の努力により、急速にその遅れをとりもどしつつあることは慶賀にたえません。しかしながらいまだ外国
技術の追随期を脱しておらないのでありまして、今日
わが国の経済自立が
科学技術の振興にまつところきわめて大なるものがあるのに思いをいたしますとき、
電波関係技術の振興、たとえば関連する諸研究機関の拡充強化に対して、大いに力をいたさなければならないと存ずるのであります。また従来
わが国の研究体制といたしまして純然たる基礎研究もさることながら、むしろ生産
技術の研究面において著しく欠けるところがあるように申されております。経済的な理由も大分にあることと思いますが、この点に関しましても関心が払われてしかるべきだと存じます。さらに
電波関係の
技術の研究が、その
発達によ
つて他の関連
技術や関連産業の
発展を招来し、単に国内の
電波利用やその他の工業、産業に利するばかりでなく、また
わが国として海外貿易の最も有望なものの
一つとしての
電気通信機器あるいは
電波機器の位置を考えますとき、急速に
電波技術の振興、その研究施設の拡充強化をはかることの必要を痛感するのであります。
電波関係の
技術の振興あるいはその研究施設の充実をはかりますにあた
つて、
電波に関する
技術が、きわめて広範囲にわたる各方面の学問や
技術に基礎を置いている点からいたしましても、一郵政省としてのみではなく、国全体として、一致
協力した線に沿
つて努力すべきことは申すまでもないと存じます。
一般技術の振興、特に生産
技術に関する研究等につきましては、通産省がその所管官庁でありますので、通産省当局等とも十分に連繋、
協力をはか
つて、
電波関係技術の
発達、振興を期したいと存じております。
なお当郵政省
関係といたしましては、その付属機関として
電波研究所を有し、また
日本電信電話公社の
電気通信研究所あるいは
日本放送協会の
放送技術研究所等の有力な研究機関があるのでございますから、今後これらの機関の拡充強化をはかるとともに、場合によ
つては重点的に研究目標を整理調整し、相
協力して急速に研究成果を上げうるような体制を考慮することも必要となるのではないかと存じております。
以上私は
わが国の
電波管理行政について、その
現状、基本的な考え方並びに当面の問題等につきまして卑見を述べたのでありますが、
電波行政が
国家として、また
国民一般にと
つていかに重要であるかを思い、また
電波の
利用の範囲が、
技術の進歩とともに日に月に
発展して参りますことを考えますときに、その
行政の衝に当る者といたしまして、
行政の
運用、
行政機構、法令の
改正、
技術の
発達助成など、
電波利用の
発展のために、各位の御
協力と御援助によ
つて、時代の進運に遅れないよう最善の努力を払いたいと考えている次第であります。