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山本参考人 ただいまいろいろ御質問がございまして、範囲が非常に広うございまして、私お答えを
整理して行きたいと思いましたが、あちらこちらいたしましたのでどういう御返事を申し上げていいか、答弁に立
つたことがございませんので、大体
整理しますと、今までの
織機の
設備が無企画であ
つて、ま
つたく無計画である。これを是正して行かなければならない。これが今回の二十九条
発動のおもなるものである。それから
機屋及び
中小企業界が安定するためには
金融の円滑化をはかるということが大問題である。それから第二が
安定法二十九条の
発動は、この
設備制限が
中小企業を救うに一番いい
方法である、こういう
ようなことをまず
最初お尋ねに
なつた
ようでございますので、その点につきまして私
どもの違
つておる点を申し上げたいと思います。
日本の
産業はすべて無企画である。これは私は首藤代議士のお説もつともだと思います。これは
織機ばかりではないと思います。氷屋、ふろ屋、いなかの豆腐屋にいたるまで無企画だと思います。これは人口問題に原因しておると思います。お百姓さんは、これは
設備制限にあ
つております。これは開墾をせなければどうしても
設備は広げられませんので、これはしまいには一坪か、二坪――今の
ような家族制度でございますならば、わけて行きましたらそんなことになるかとも思うのでありますが、ほかのものだけはま
つたく無企画だと思うのであります。その点はま
つたく賛成いたします。が、その無企画がどういう原因によ
つて起
つたかということをもう一ぺん
戦争の直後に思いをはせらせていただけば克明にわかると思います。
戦争はめちやめちやに国を
重工業に走らせました。
機屋さんといえ
ども、何屋といえ
どもみな飛行機をつくれ、飛行機をつくれ、みな鉄工所にさせました。鉄工所が飛行機を取上げられて食うに困りまして、何をつくるかということを考えました。そうすると一番目をつけたのは衣類でございました。衣頻でございますと、綿、スフの
織機は全国にございます。
日本中綿、スフの
織機のないところはございません。毛織
織機というものは県を単位にし、あるいは
整理工場なんかを単位にしまして、ブロツク、ブロツクがございます。綿、スフだけ、タオル
織機なんというものはま
つたく全国的にございましたがために、その
織機をまねてつくればよいというので、
先ほどから申します通り
織機屋でない
織機屋が実に貴重な材料を
スクラツプにいたしました。それに棒材を切
つてクランクでない
ようなクランクをつくり、
織機の部品でない
ような部品をつくる、ともかくあちらにもこちらにも
機械屋ができて、そのまた
機屋さんがガチヤ万時代ができましたので、一流メーカーで買いに行
つたところで何年か先でなければ買えないという
ような状態になりましたので、はたごでないはたごをどんどん買いましたので――これは
繊維局長さんがよく御存じだと思いますが、一番ふえたのが終戦直後のメーカーが数え切れないほどあ
つたときの
織機が一番ふえてお
つたと私は思います。それが結局無企画に追い込んだものだと思います。だから
先ほど申した通りに、今日残
つておりますわれわれの繊維メーカーはみなりつぱな
技術屋ばかりでありまして、外国に
行つても喜ばれておる
機械屋さんばかりでございまして、この
機械には絶対に
設備過剰の数字は持
つておりませんから、これは
繊維局においてお調べ願えばわかります。これは難くせと称するものだろうと私は思うのでございます。だからこれを私
どもの方の残存しておるものの
設備を
制限する、もつと言いかえるならば、製造禁止にも近い
ようなことをやられるのはま
つたくも
つて無企画であり、いわゆる計画性を持たせていただくということにつきましては、私
ども現在の
織機屋としてはこれはたいへん違うところであり、
先ほど本末転倒じやないか、こう申しました私の公述をお調べ願えればわかるわけでありまして、これは質問によ
つてにわかに詭弁を弄するものではないことは皆様お聞きの通りだと思います。
それから
金融の円滑化、お得意さんが倒れてはお前の方は
織機も入らぬじやないか、この説はごもつともでございますが、この
金融の円滑化は、
先ほども申した通りそういうでたらめな
織機を入れておれば、そういうものをつくれば難くせをつけられて
倒産も起りまし
ようが、いい
製品はまだまだ
製品のフレームがついて
倒産のうき目は見ていないと思います。しかしそれすら
倒産いたしますのは、
問屋が
金融難に陥
つて、デフレがいきなり
金融に参りまして、
金融の梗塞によ
つて払える
手形が払えなか
つたので、それが将棋倒しに
機屋さんに来たということでございまして、決していい
織機の
設備過剰ではないということでございます。
それから第三の
安定法が
中小企業を救う最も適切なるものではないかという
お話でございますが、
安定法には二種ございます。
設備制限ともう一つは出荷、
生産の
制限と、この二つがございます。私
どもは、
先ほど多川君が言いました通りに、
設備制限は
反対いたします。出荷、
生産の
制限は私
どもは知りませんと言うよりし
ようがないのでございます。これは私
どもがいいとも悪いとも申せません。願
わくばや
つていただきたくはないのでございますけれ
ども、安定するためには何か
安定法があればこれによ
つてすがろうという
機屋さんのお考えがあるならば、糸を買
つて機を織るのを
制限されるのは、
織機屋があずかり知らざるところでありますから、それは私はや
つてもらいたくないと思いますけれ
ども、やられることならば苦情を申し上げて、今日抗弁を申し上げることはできないのでございます。ところがそうすると八割にしたらどうだということですが、私はあちらこちら
陳情して参りますと、そういう実際私
どもを思
つて心配していただく方がございますが、これは八割にしていただくならば、それはそれでもいいでし
ようけれ
ども、私らも
経営者でありますれば、八割の
制限になれば、これは
労働組合とはなはだ
意見を異にするかもしれませんが、私
どもはただちに五割の人間を
整理し、そうして三割の分を増産させなければならぬ、そうしてやはりつかんだ率の按分だけは逃がさない、これはすべ
つてもころんでも砂をつかまなければ起きないと言うのがわれわれ
中小企業の
生産意欲のたくましさでございますだけに、私はそういうことをやると思います。そうすると結局ぼろぼろの
織機を持
つていたり、
老朽織機を持
つていたりしては、五人で八人分の仕事はできませんので、そこでどうしてもいい
織機を入れなければなりませんが、多分に悪い
織機を持
つていて、それで
設備制限によ
つて中小企業を安定するというよりも、やはり織
つた織物がだぶ
つておるならば、だぶつく
織物を市場に出さないということのためには、
生産を
制限していただくというためにはいい
織機が早くいる、こういう方向に持
つて行つていただくということになりますれば、いわゆる法の第一項の出荷、
生産の
制限、これは私
どもは
設備制限とは違う面ができまして早く安定する、か
ように考えまして、私も残念ながらこの御
意見には
反対でございます。やはり
意見をかえて行けと言われましても、かえて行くわけには参りません。それからそれならば、しばらくた
つたらじきにいい
機械を入れかえる、こうお言いになりますが、私
どもは
組合の理事はしておりましても、地方の理事でございまして、全国を握
つておりません。承りたいことは、この
織機をたとえて申しますれば、ABCにわけまして、Aは新鋭の
織機で一番いい
織機である。今日これ以上の
織機は
日本ではできない。これは最も理想的な
機械です。Bはまだ新しいから、以前から
設備してお
つても、これはまだ使えて
輸出品くらいはどうにか織れるもので、
生産コストもどうにか保てるだろう。Cの
織機、これが私
どもの問題でもあり、
機屋さんの問題でもある。今度、どさくさまぎれにふえる
織機、いわゆる
スクラツプの
ようなもので、これは入れかえたいが、だんだんと貧乏にな
つて来たから入れかえられないで困
つておる。これを動かしたら織るものもろくなものはできませんし、
コストも高くなる。あるいは全然死骸に権利をもら
つてひとつ売り込もうか、あるいは銭を借りて行こうかというものであります。これが一番問題で、われわれはこれをいかにして早く入れかえて参るかということが問題であり、入れかえさせたいと思
つておる。これは同じでございますが、この
台数が一体全国に何台ございますか。これを結局調べもせずにおいて、要するにいきなり
設備制限と来られますと、私
どもはやみに黒い牛をひつぱり出されて、どこが頭かしりやらわからなくて、あぶないもあぶないもこんなものを出されたら、われわれは殺されるだけであ
つて、われわれは角をつかみ、
機屋さんはしりをつかむ。こういう
ように、われわれに牛の角をつかませる、やみの暗がりに牛をひつぱり出されるというよりほかに思えませんので、これも私はどうも残念に思う次第でございます。
それから今日までともかく織屋さんと一緒に無難苦労して来ておりまして、
輸出はわれわれは自前でや
つております。ところが
金融の梗塞はやはりわれわれ
どもも必死にな
つてや
つて来ておりまして、
先ほど質問の先生は御存じなか
つたか知りませんが、われわれも
金融の
わくを、この二十九条
発動なるが
ゆえに
わくを締めかけられました。それからそれよりもまだ
現実にいかぬのは、掛で買えた材料屋が現金を持
つて来なければ売らぬというので、からの
トラツクで二回私
どもは帰
つております。こういう
ようなことで、そういうときが来たら特別な
金融措置をしてやるぞというありがたい
お話でありますが、いささか鍛冶屋は面子を考えまして、だれでも特別に泣き込んで行くことはいやでございます。それでたずねて行けば、ごやつかいになれば国のごやつかいになり、このお互いに国費のいりますところへ
自分の会社のことで泣きついて
行つて金融措置をしていただくというよりは、このままにしておいていただけば、もう天然自然の
設備制限がされておることでございますから、御放任願えば私
どもはいい。それで倒れることならば、特別
金融措置もこんな小さなグループへはまるで来はしませんから、どうか見殺しでもいいから、下手に救い上げていただかない方がよろしゆうございます。どうかそのまま見殺しにしていただけばよろしゆうございます。下手に抱き上げられると、間違
つて足が宙に浮き上
つてしまいますから、思う
ように歩けません。か
ようなことを私は申し上げたいと思います。
それからもう一つ大事なことを申し上げなければならぬのでございますが、それは今日の
輸出織物は、支那も
パキスタンも
インドも非常に労働者の生活程度が低いところでございまして、生むに家なき者が野宿をして
工場に勤めて来る。か
ような
現状を私
どもはこの春見て来ておりますから、それと同じ
ように、
日本が一緒に金巾を織るとか、じんすを一緒に織るとい
つたところで、われわれ
工場の中の者が、野宿して勤めに来て
生産コストを下げるということは、文化度を下げるということになりまして、要するにめちやくちやな値段になるということでございます。それがその国が繊維
機械を
日本で入れなければどこかの国で入れるということになりますと、安物の
生産は海外ではとても
日本の
製品では太刀打ちができなくなる。してみると
日本の
繊維製品はだめかと申しますと、また一方生活程度は高くなりまするから、だんだんいい
織物が着たいという
ようにだれしも思います。そうすると、いい
織物ということになりますると、
イギリスで織
つたものとかフランスで織
つたものとかあるいはアメリカで織
つたものとかいう
ような、欧米の先進国で織
つた高級品が要するに世上で迎えられるわけであります。そうするとわれわれはコーヒーのかわりにみそしるを飲み、肉のかわりにとうふを食い、あげを食い、そしてまことに
日本人の安い
生産費でも
つて欧米の
製品と太刀打ちをして行くところに
日本の
織物のよさを今後見出さなければならぬと思います。すでに鐘紡でも東洋紡でも、一流の
工場はサンフオライズの大きな
設備をしまして、りつぱな
製品をどんどん出しております。いろいろの色のプリントの
織物、非常に込み入
つた縞物、――プリントの
ようなものは大
工場でよろしゆうございますが、縞物の組
織物となりますと、これは黒といいましても一色ではございません。青みを含んだ黒もあれば、赤みを含んだ黒もあり、何となく暗い感じのする黒もあれば明るい色の黒もあります。絵の具の色は十二色ありますが、絵になりますと何百種類の色になるかわかりません。これと同様に柄物を織りますと、実にいろいろの色になります。糸が一本違いましてもきず物であります。そういうものを大
企業においてはたしてやれるかといいますと、それは絶対にできるものではありません。同じ
織物を織りましても、
中小企業の、おかみさんから娘までが働いている
工場と、ピアノを置き、テレビを置き、町村にもない
ようなりつぱな病院をつく
つておりますメーカーの織賃は非常に違います。それに色糸がまじりますと残糸の
整理は何ともかんともならないものが出て来ます。それがために昨今は
中小企業のおかみさんから娘さんまでが色の間違いのない
ように、組織の間違いのない
ように、縦糸、横糸の糸抜けのない
ように――そうすると実に高い工賃にな
つて参ります。それがために昨今は
輸出の
中小企業に与えられたところの、大紡績から出て来るところの
中小企業の
輸出織物は非常に勘定がよくな
つております。よくな
つておりますから、この一月、二月にこれを出してもら
つたらよか
つたのですが、よくな
つてからこんなものを出されるから、一体政府というのは遅れて来るものか、民意を尊重されぬものか、逆に逆にとや
つて来る、こんなものは大
反対だと言
つております。これは御
調査になればわかると思います。ところが今日私
どもは幸いにして
中小企業の
機屋、
織機屋が
東京において雨をあげさしていただいた。
中小企業とうさぎは殺されるときは声を出さない。声を出すとうさぎの本領でなくなり
中小企業の本領でなくなるそうでございます。ところが全国の代表としましてこの国会で
意見を申し上げたということはすでにうさぎではないかもしれません。声を出しました。声を出さしていただいたということでございますが、この
機屋さんの方では地方の大
企業安藤梅吉さんが、――この名前は安梅と覚えておればいいのですが、その人が
中小企業の仲間に入
つておりますが、それは名前の通りあれは
中小企業ではあんめいということになります。あんなものが
中小企業の仲間に入
つて、全国の代表だ
といつて受付けておられる
繊維局長の頭はどうかしていると私は思います。
中小企業の連中は
東京まで出て来るひまがございません。それでも
つて出て来れば大
企業の
中小企業にあんめい連中にひどい目にあわされるのでございます。ですから
先ほどの
お話で、輿論
調査をやられますと、
中小企業の
機屋さんはみんな
反対でございます。全国に調整令ができたとかなんとか言われることは、私は中央としましてまことに地方の
実情を聞かれぬという意味で残念な
ような気がいたします。だから私
ども先ほど申しました通りに、
戦争中でも、
戦争に勝
つために、
スクラツプを出させるために
織機を出せとか、あるいは糸が少いからこうこうこういうものは配給にし
ようということで配給
統制をきめ
ようというときには必ず繊屋に
相談をする、織屋の
組合の偉い連中の
機械は、みんなボロ
機械でもよくな
つて……。