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1954-10-26 第19回国会 衆議院 通商産業委員会中小企業に関する小委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月二十六日(火曜日)     午前十一時二十四分開議  出席小委員    小委員長 永井勝次郎君       首藤 新八君    土倉 宗明君       笹本 一雄君    長谷川四郎君       加藤 清二君    辻  文雄君  小委員外出席者         議     員 齋木 重一君         参  考  人         (日本デパート         メントストア協         会理事長)   能勢 昌雄君         参  考  人         (株式会社三越         取締役)    金子 忠夫君         参  考  人         (日本絹人絹織         物商協会専務理         事)      沼田 義雄君         参  考  人         (全国繊維製品         小売商連合会副         会長)     門脇勝太郎君         参  考  人         (百貨店対策小         売商連盟委員         長)      高橋 貞治君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 十月十五日  永井勝次郎君八月十三日委員辞任につき、委員  長の指名補欠選任された。 同月  永井勝次郎君が委員長指名で小委員長補欠  選任された。     ――――――――――――― 同月二十六日  小委員小川平二君九月十七日委員辞任につき、  その補欠として土倉宗明君が委員長指名で小  委員に選任された。 同日  小委員柳原三郎君及び加藤鐐造君同日小委員辞  任につき、その補欠として長谷川四郎君及び辻  文雄君が委員長指名で小委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  百貨店問題に関する件     ―――――――――――――
  2. 永井勝次郎

    永井委員長 これより会議を開きます。  本日は百貨店問題に関する件について調査を進めます。まず本件について参考人各位より御意見を聴取いたしたいと存じます。参考人各位には御多忙中にもかかわらず、特に本小委員会に御出席くだされ、まことにありがとうございました。何とぞ隔意ない御意見を御発表くださるようお願い申し上げておきます。  なお念のため申し上げておきますが、御意見発表の時間は、一名約十五分とし、また御発言の際は、その都度小委員長の許可を受けらるることとなつておりまするので、御了承を願つておきます。  それでは名簿順に従い、まず能勢昌雄君よりお願いいたします。能勢昌雄君。
  3. 能勢昌雄

    能勢参考人 御紹介いただきました能勢昌雄でございます。御質問の事項は、中小企業対策として、百貨店規制に関する問題、それに伴う立法措置に対する意見、こう解釈してよろしいと思いますが、私ども日本デパートメント・ストア協会と申しましても、わが国における百貨店形態小売商業の全部ではございません。しかし最も有力なもの――有力なものということは力が強いということよりも、最も多くの会員を持つておるものと思つております。従つて、私どもの方のメンバー以外の意見を代表するわけでもございませんが、私が常々考えておりますことは、結論から先に申しますと、わが国における流通経済の上において最も重要なる部門を占めておりますところの中小企業というものの育成発展に対しては、ただ単に国民全体という大きいわくばかりでなく、われわれ小売商一部分である百貨店としても、相当考慮を払つているものでございます。戦争前、御承知通り昭和の初期に、それは少数ではございましたが、有力なる百貨店小売屋を、中小企業を圧迫する。当時の不景気というものも原因の一つでございましたが、中小企業を圧迫するということで、やはり現在と同じように中小企業問題に関連して、百貨店規制ということが問題になつたと記憶しております。その時分と今日とは、われわれ百貨店業界における組合員のものの考え方行動等においても非常に相違を持つておりますし、また世の中の状態も相当かわつておると存じます。私どもは、先ほど申しましたように、中小企業育成ということについては満腔の誠意を示すものでありますが、その手段として、百貨店というものの活動存在規制するということは限度があると考えるのであります。すなわち百貨店業界がそういう問題に関連しまして、行き過ぎている、不当にわがままをしているというような問題は、これを規制すべきであると考えますが、規制方法といたしましては、立法措置によるところの規制というものは、私は必ずしも適当でないと考えておるのであります。工業の問題につきましては私は存じませんが、商業の問題の非常に複雑な、そうして変化の多い問題を、一律の法的規制規制するということは、はなはだむずかしいことである。そしてそれだけの効果があるかどうかということを懸念するのでございます。しからば百貨店は何をしてもいいか、どんなことをしてもいいかというと、先ほど申しましたように、今日のわれわれ百貨店業界の者は、決してそういうふうには考えていないのでございます。わが国における中小企業百貨店の問題というのは、宿命とでも申しますか、消長はございますが、昨年あたりのデフレーシヨンに伴う不況と申しますか、そういうものに伴いまして、またクローズ・アツプされて参つたのでございますが、そういう問題が起りますと、たちまち、私どもの方でも気をつけておりますのみならず、戦前と違いまして、私ども活動についての行き過ぎについては絶えず注意をしておられます公正取引委員会等、また直接の監督庁であります通産省等方面、あるいは中小企業関係の方のお役所である中小企業庁という方面からも、時々いろいろ百貨店行き過ぎというようなものにつきましては、口頭をもつてあるいは文書をもつて注意をいただきますと、私どもはそれを中心といたしまして、十分相談をし、自粛をし、自戒をして参つたのでございます。  さらにまた、一昨年の暮れでございますか、具体的な公正取引委員会の御警告を受けましてからというものは、具体的にその個々の御警告項目についての対策等も考えて参り、さらに今年の八月には業務調査委員会というようなものをつくりまして、各項目にわたりまして十分の注意をして参つたわけであります。これにつきましては、世間あるいは一部の方から、自粛をするというのはカムフラージユで、ちつとも守られていないじやないかというお説もあるのであります。具体的にこういう間違いがまだあるじやないかとおつしやつた問題につきましては、ただちに私どもは会合を開きまして、こういう実例もある、あれだけの申合せをしたにかかわらず、なおこういう間違いがあるじやないかといつて、それを訂正し、今後行わないように気をつけて参つておるのでございます。私もここで百パーセント自粛して守られているということは申し上げませんが、逆にそういう行き過ぎの問題については、十分の慎重さをもつて目的達成に努力しているということは明白に申し上げられますし、その効果相当つているということも自信を持つているのであります。またそういう御批判も一部からこうむつているのでございますが、百貨店業者と申しましても小売屋一部分であります。経済的に有力なものとは断言できないのでございまして、百貨店のうちにも当今やはりデフレーシヨンの影響でもつて、整理しなければならぬ百貨店も出ております。また存在しておりましても、百貨店の商いというものは頭打ちをし、そうして相当経営の上に無理をしているのが現状でございます。百貨店法というものをかりにこしらえて、どういうふうにきまるかということはともかくといたしまして、法律できめれば、その法律できてまつただけのものが明白に禁止されて、それ以外のものは何をしてもいいというような、逆な効果も生まれて来るおそれもありますし、またそのきめ方自身についてもいろいろ問題があると思うのです。たとえば六大都市という中にも、弱い百貨店もございます。また地方都市の中にもなかなか強い百貨店もあります。また小売屋さんの方から見ても、小売り中小業者必ずしも弱体であるとは申し上げられないのでございます。われわれのメンバーに比べて、よりりつぱな御成績を上げられているところもあるのでございます。なかなか個々別々いろいろのケースがあるのでありますから、私は当初に申し上げましたように、法的規制をもつて百貨店規制するというよりは、まず第一番に百貨店自身が、今日のわが国における中小企業存在というものを十分頭に入れまして、自粛自戒しなければならぬ。しかし守れない点もあり、あるいはまた、はからずも行き過ぎの点がある、そういう問題につきましては、百貨店業者ばかりでなく、あるいは当院のごとき、また商工会議所のごとき、あるいは御担当の役所すべての方からケース・バイ・ケースにつきまして、百貨店行き方について御注意を願う。百貨店はそれを尊重する。ただし自分の考えと違うところはあくまでも主張いたしますが、それはもつともだという点になれば、必ず私は自粛自戒ができるものと確信しているのであります。法律をつくることが困難であり、またそのつくつた上において、それだけの効果があるかないかということがはなはだ疑わしいとすれば、むしろ実際的なそういう行き方でもつて習慣法的なものをつくつて百貨店、大商店というものは、百貨店といわず小売商といわず、大きいものは、こういう心構えでこれ以上のことはしていけないというふうに持つて行つて、そして別に中小企業対策というものを政府におかれましても十分御考慮願つて、適切に具体方法を立てていただいて、そうしてやつて行かれるならば、中小企業というものも必ずや悲観することもないし、また百貨店の横暴も十分規制されて行くものと考えておる次第であります。  はなはだ簡単でございますが、一応考えておることを申しまして、なお御質問がございましたら申し上げることといたします。
  4. 永井勝次郎

  5. 金子忠夫

    金子参考人 金子忠夫でございます。今の能勢理事長のお話を補足するというような意味で申し上げたいと思います。  百貨店日本にできましてからちようどことしで五十年になるわけであります。五十年の間に百貨店というものが徐々に内容がかわつて参りまして、今日ではお気づきかどうか知りませんが、必ずしも衣食住に関するものを網羅して売つているというふうにはなつていないのであります。将来これはだんだんかわつて参ると思いますが、今日百貨店といいましても、これは小売り商店という意味におとりくださるのが一番はつきりするんじやないか。たとえば東京にも百貨店が、協会加盟店だけでも八つ以上ありますが、百貨店その店自体の総売上げをとつてみれば、あるいは小売屋さんの大きなお店よりは多いかもしれませんが、そのうちの部門々々にそれをわけて見ますと、必ずしも専門小売屋さん以上に売上げを持つているとは限らないのであります。たとえば瀬戸物とかあるいは美術品とかあるいは食料品のうちのカン詰類とか、いろいろの部門をとつて参りますと、すべての扱い商品小売屋さんの売上げよりはみな多くなつているということは言われないのであります。従つて今日のような、この消費経済がだんだんに合理化され、そして無駄を省くようにして行こうという世の中にありまする私ども百貨店としましては、すべての品物について、すべてのお客様に御満足を得るということはなかなかむずかしくなつて参りまして、その店々のあります土地、場所、いわゆる立地条件でございますとか、あるいはそのお客様の大部分の需要をどういうふうに満たしたらいいかというような点から、その店々の経営方針に従いまして大体中心をどこに置いたらいいかというふうにかわりつつあるのであります。皆さん御存じでもございましようが、百貨店お客様というものは、ほとんど経営者としては存じ上げないお客様であります。個人々々として存じ上げない方々お客様であります。こういうことはよく学者が言つておりますが、マーケツト・エリアといいますか、その店を利用する方々住居区域が非常に広いのであります。小さい、あるいは中くらいの小売屋さんというものは、その利用する人たち住居区域がずつと狭まつて参ります。従つて個人的にお客様と店の主人公とのつながりがそこにできて参ります。百貨店はそれがありません。非常に広い住居区域に住まつておられる方々お客様としていますために、従つてそこにいろいろの宣伝方法を講ずる、あるいはいろいろ設備もいたしまして、わざわざ来てくださるお客様のためにいろいろのサービスをしなくちやならぬ、こういうことが今日のわが国百貨店あり方一つの見方であります。小売屋さんのうちでもある特殊の専門店もしくはある特殊の地域商店街というもの、たとえば銀座といつたようなところは、私ども百貨店と同じように広い区域住居地域を持つた人たち顧客層としているわけであります。しかし大部分小売屋さんは、今申し上げた通り狭い区域住居区域にある方をお客様にしております。従つて毎日の商売の立て方あるいは宣伝あるいは設備、そういうことに非常な相違が出て来るのであります。従つて百貨店のやつておりますることが町の小売屋さん以上に多く、たとえば東京でいえば東京全体の人にとつて目につくということになります。従つてども百貨店の仕事に携わつております者としましては、毎日の一人々々のお客様あるいは毎日の商売あり方が、どちらからごらんになつても間違いのないということをまず建前にしなくちやならない。一々お目にかかつてお客様に、いや私のところはこういうつもりでこういうものを売つているという説明はできません。ごらんくだすつてどういうふうにこれを解釈していただけるか、どういうふうに見ていただけるかということは、一々説明ができない。見た方々が御自分の感じでそれを受取つていただくということに百貨店行き方の本質があるのであります。従つて今日の場合におきましては、戦争前の百貨店と、いわゆる中小小売屋さんとの関係とは、大分内容がかわつて来ておるというふうに私どもは考えておるのであります。従つて今、理事長が言いましたように、百貨店の毎日の商売あり方というものは、すべてどちらから見られても、何といいますか、間違いのない、正しい行き方でなければならない。しかし時として行き過ぎが出ないとも限らぬ。出たならば、お互いにそれを戒め合つて、早く直さなければならぬ、こういうことに今申合せはしているのであります。  大体そんなことで一応私の説明を終らしていただきたいと思います。
  6. 永井勝次郎

  7. 沼田義雄

    沼田参考人 百貨店の問題、百貨店卸売業者、いわゆる問屋との問題は、戦後非常に問屋の力が弱くなつて参りました関係から、非常にそのトラブルが多くなつたのであります。返品の問題、あるいは借上げ店員の問題、あるいは安値提供、納品の値引きというような問題があげられたわけであります。たとえば一番最初返品の問題にいたしましても、売手と買手、卸売業者と、百貨店との話合いによつて、合意の上で妥当な返品もございます。それから借上げ店員の問題にいたしましても、ある卸売業者のごときは、デパートはうちの売場である、売場店員を派し、自分品物をよけい売ろうということは業者としてあたりまえだというような考え方を持つているものもあります。値引き等の問題におきましても、瑕疵、汚染とか、あるいは傷物というようなもの以外のもので、長年の取引によりまするところのいろいろな事情から、その申し入れに快く応じる場合もあるわけであります。さらに安値提供の問題の場合にいたしましても、長年の取引に対して、ある程度のサービスをするというようなこともあり得るわけでございまして、この問題ことごとくが悪いとは言い得ない。ただこの四つの問題にいたしましても、不当な借上げ店員、不当な値引き、不当な安値提供を要求するというような問題につきまして、問題が起るわけでございます。そこでこの問題につきましては、われわれ特に絹、人絹織物関係、柄あるいは色というようなものによつて、嗜好によつて売れます商品につきまして、こういう問題が一番早く起りやすい。何回かにわたつてデパートメント・ストア協会と折衝いたしまして今日に至つております。さきには公正取引委員会の、一昨年の五月でございましたか、警告デパートメント・ストア協会に発せられた。さらにまたその後、昨年デパートメント・ストア協会とわれわれとの話合いによりまして大分緩和されつつある。なおまたデパートメント・ストア協会では業務調整申合せというような自粛申合せをなさいまして、それによつてデパート間の自粛を強調されておられる。かような次第でございまして、一時よりは大分緩和されております。緩和されておりまするけれども、必ずしもトラブルが完全になくなつたとは言い得ない。そこでこれをどういうふうにしてなくするかという解決の方策があるかという問題になるわけでございますが、伺うところによりますと、百貨店法というようなものが制定される。われわれの立場から考えてみまして、まことにけつこうであるという、おせじを言つて、ないよりはいいという考え方を持つておるわけでございます。なぜならばと申しますと、百貨店法によつて規定されまするところの、条文の上に現われますものは、戦前百貨店法というようなものの記憶をたどつてみますと、営業売場面積制限であるとか、あるいは過当サービス規制する、たとえて申しますれば、出迎え、送り迎えの自動車を配するとか、あるいは無料配達の極端なやり方であるとか、こうした表面に現われましたものを規制するということは、百貨店法その他によつて十分私はできると思うのであります。但し卸売業者問屋百貨店との問題、先ほど申し上げました不当返品にいたしましても、あるいは借上げ店員の問題にいたしましても、値引きの要求、安値提供にいたしましても、そこに現われた問題よりも、その裏に光つている、要するに後光の問題、たとえば不当返品がいけないとかいうことであれば、最初から買い取りの契約をしないで、いつでも返品を受諾するような契約を強制される場合がある。あるいは借上げ店員の問題にいたしましても、不当なものはいけないとすれば、これを不当でないようにカムフラージユした方法もあるわけであります。しかしそういう方法を規定するということは、これは条文によつて処理することは困難だと思う。要するに力の問題であります。デパート卸売業者の力の問題であります。その力は、力の均衡といいますか、力を条文あるいは文に表わしたものによつてはつきり押えて行くということは、私は困難じやないかと思います。まことに言い表わし方がうまくないかもしれませんが、これは観念的な問題でありまして、条文等によつてはつきり表に現わすことによつて規制できるという問題ではないと思います。私は百貨店法も決して不賛成ではございません。いいと思いますが、百貨店法によつて強い力のものの頭を押えて行くよりも、弱いものに力を与えて、そして力の均衡をはかつて行く、そうして両者同じラインの上に立つて、公正な取引をなさしめるような方法をお考え願うことが必要ではないか、こう考えるのであります。従つて私は卸売業者という場合におきましては、今日の卸売業者生産部門におきましては中小企業安定法、あるいは独占禁止法の改正によりまして、重要産業におきましても、一応共同的なカルテル行為ができることに相なつております。輸出の場合におきましても、輸出入取引法によりまして、それが確保されております。さらに伺うところによりますと、輸出入取引法をさらに改正して、あるいは強化して行くというようなことを係の専門の方で御研究中のように承つておるのでありますが、商業部門におきてましては今日何らこれに対する擁護立法はいたされておりません。二人以上集まつて話をすれば、たとえば百貨店返品をして困る、どうしようというようなことを相談をするといたしましても、それは独占禁止法によつてわれわれは大きな声でそれができないことになつておる。従つて商業部門小売商も含めてということになるかもしれませんが、卸売部門に関する限り、卸売部門にもつと共同行為が公然とでき得るような力を与え得る法律を持つて、そうして力の強い、百貨店と同じラインの上で対抗できるような方法をお考え願うという方が、百貨店法をお考え願うよりも、卸売部門に関する限りはその方がいい、かように考えます。
  8. 永井勝次郎

  9. 門脇勝太郎

    門脇参考人 全国繊維製品小売商連合会会長門脇勝太郎です。所属団体はつきり書いてありますように、繊維製品小売業者全国連合会でありまして、不肖がその副会長として、全国業者にかわつてここで陳弁いたしたい、かく感ずるわけであります。  百貨店繊維製品小売業者関係でありまするが、現在ありまする全国百貨店、これはほとんどがいわゆる昔の呉服屋さんが大きくなつたものでありまして、従つてその扱う商品の大半が、呉服を初め繊維製品であります。そういつた内訳を検討してみましても、売上げの少くとも五〇%以上は繊維製品を扱つておる、こういう現状でありますので、特に繊維業者小売部門全国連合会としましては、この百貨店問題につきまして、非常に深刻な関心を持つておるわけでありまして、本日の意見発表立場から申しますると、私どもが攻める立場ということになるわけでありまして、よろしくお願いしたいと思うわけであります。現在デフレがますます深刻化いたしまして、購買力が非常に低下して来る、ことに繊維業者は、最近非常に同業者がふえまして、同業者過多のために、ほとんど共倒れといつたような情勢にあるのであります。その上にさらに最近百貨店が非常な攻勢に出ておる。従来あつたものが続々復旧復興する。また売場面積が無制限に大拡張される。また最近どんどん新設がある。これを東京の例にたとえて申しますなれば、銀座の松屋とか、新宿の伊勢丹、これは全面的に接収が解除になりまして、昔より一層りつぱな店舗ができ上つて来る。銀座の松坂屋とか、高島屋の売場面積の大拡張ができ上つておる。こういつた古いものが復興復旧するほかに、新しい百貨店が新規にできて来る。池袋にも大きな百貨店が二つ新しくできておりまするし、また大井には、大阪の阪急が新しくこれも進出して来て店を出しておる。また一番最近全都の小売業界を刺激しておりまするのは、東京駅の八重洲口に先日開店しました大阪大丸東京進出であります。また近く完成を見んとしておるところの渋谷駅頭における東横百貨店の新館の竣工、これは今までの百貨店の坪数よりもずつと大きいものができる。十何階建かの東京で最高のビルができ、そこに全面的に売場面積が拡張される。最近では大丸渋谷東横、これが全都の小売業界に大きなセンセーシヨンを巻き起しておるようなわけでありますが、地方の例を見ましても、名古屋におきましては最近名鉄ビルに厖大な百貨店が生まれんとしておりまするし、また大阪地区では、御承知のように重要なターミナルは全部百貨店が占領しておる。まことにこれに圧迫されて、小売店が汲々としておる。最近下関あるいは福岡には、新しく大丸地方資本と合流しまして、それぞれ進出している。全国的に百貨店が、非常な小売段階に対するところの大きな圧迫になつておる。  もとに返りまして、東京の例を申しますると、先日開店しておりまするところの大阪大丸東京駅頭進出、これが営業の方式といいまするか、やり方が、俗に関西弁で言いますると、えげつないと言いまするか、なかなか営業ぶりがえげつない。たとえて言いますると、資本力にものを言わせて、問屋筋に非常に出血的安値商品提供を強要する。とうていその問屋が引き合わぬような値段であるが、百貨店という魅力に圧迫されて、その資本力に威圧されて、そして出血出品の強要に応ずる。普通の小売店の販売価格、これとはずつとかけ離れた安い価格で、いわゆる廉売戦がそこに展開される。一つ百貨店がそういつたような波瀾の端緒をつくりますと、あとの百貨店が対抗的にやはりそういつたような手段をとります。そこで百貨店間の猛烈な攻防戦が展開するわけでありまして、百貨店間の攻防戦、競争が、結局全面的に一般の小売業者にその余波がしわ寄せして来る。売上げが厖大な数字で毎月計上される。それだけの金額は東京都内の販売業者のどこかにそのしわが寄つて来る。そのしわが百貨店同士に寄らずして、結局一般の小売業者の方へしわが寄つて来る。小売業者としては大資本力というこん棒でたたきのめされたような結果に陥るという今の現状なんでありまして、ことに大丸は夜間常業をする。午後八時まで営業をしておる。従来の百貨店は、夜間常業しておらぬ。大体五時半から六時ごろまででしまつておる。夜間の小売店営業というものが、いわば百貨店一つの落ちこぼれでありまして、百貨店が済んでから一般小売店にやつて来る。そこで息を吹き返して、若干そこに商いができておつた。その最後の落ちこぼれの夜間営業さえも大丸がやる。何でも向うの主張としましては、これは鉄道関係でやれという命令なんだ。国鉄がああいつたような不当横暴な会館をつくつて、しかもそれが一商社に賃貸させられる。それが国鉄の威をかりて夜間営業をして、全都の小売業者をこれによつてますます苦境に追い込むといつたようなことは、あまり今の資本主義というものが行き過ぎであるというようなことの一つの生きた証拠にもなるわけでありますが、こういうような情勢によつて中小企業というものがますます落ち込んで行く。これを政府が傍観をしておられたということじやいかぬ。首くくりの足をひつぱるようなことではいかぬ。やはり一つ行き過ぎ、こういうことはどうしても国の力によつてこれを是正してもらいたい。こういうことから小売業界の方で、百貨店法を制定をしていただき、そしてこれ以上の小売業界に対する圧迫、刺激を除去したい、こういうことを考えて、先般来それぞれの筋に向つて運動を開始しておるようなわけであります。最近公正取引委員会の方が、独禁法に準拠して百貨店業者を特殊指定にして、そしてこのいろいろの常業上の弊害を規制する、先ほど問屋の方から話がありましたように、現在いろいろ弊毒害になつておりまするところの手伝い店員の問題あるいは不当返品の問題、またはおとり広告によるところの廉売政策、こういつたような営業上の弊害は、順次この公取が特殊指定によつてこれを規制して行く、こういうことが発表されております。これもたいへんけつこうなことでありますが、しかし公取のそういつた一つ規制は、そういう営業面だけでありまして、先ほど申しまするところの根本的問題である百貨店の新設であるとか、増設であるとか、あるいは営業時間の問題あるいは休日の問題、支店、分店の設置の問題、または出張販売の問題、こういう基本的な問題は、公取の特殊指定ではこれはもうとうていできないところでありまして、そこでこういう基本的なことを解決する一つ立法措置として、私ども百貨店法の制定を希望しておるような次第であります。終戦前に、御承知のように百貨店法がありました。この百貨店法ができましたのは、昭和の初期以来非常に一般経済情勢が悪化しまして、だんだん不況に沈淪する。そういつたことが続きまするうちに、昭和六年ごろから、この百貨店の圧迫に耐えかねて、当時小売業者が、ぜひ百貨店法を制定願いたい。こういう運動を起したわけであります。その当時一般小売業者のうちの有志家は、この百貨店法制定運動のために巨額の私財を使いまして、非常に犠牲を払つた。こういうことを私ども聞いておりまするが、約七年間ほどこの百貨店法の立法運動をいたしました結果、ようやく昭和十二年の八月十四日に、この百貨店法が制定発令されたわけであります。しかし昭和十二年以後は、支那事変の発端以後でありまして、百貨店法がなくても、世の中が統制になつて順順に物がなくなつてつたのでありますからして、これは自然あつてもなくても一般の小売業者というものの立場が非常に変化した経過になつております。しかし百貨店法の発令によりまして――実施されたのは昭和十二年十月一日からですが、新設とか増設とかいつたものが全面的にとまつた。この百貨店法は、小売業者が非常に希望して、小売業者立場を擁護するために考えられたのが発端でありまするが、しかしでき上つた百貨店法によつて、だれが一番利益を得たかというと、既存の百貨店であります。既存の百貨店は、これによつて非常に営業成績が向上する一つの素地をつくつた。といいまするのは、その当時百貨店間の競争が非常に激甚でありまして、あるいは無料送迎の自動車をふんだんに使用したとか、無制限に遠距離を無賃配送したとか、こういう店の大きな負担が、そういつた法律規制によつて全面的にとまつた百貨店同士の不当競争というものがなくなつたということによつて、既存の百貨店は、この百貨店法によつて非常な好影響を受けております。小売業者の犠牲によつてできた法律によつて、その対象たる百貨店が、逆に大きな利益を享受したというような、まことにおもしろい経過になつておるのであります。しかし何としましても、それによつて新設、増設、その他の不当行為がとまつたということについては、小売業者側もまた大いにこれで安心をしておつたわけでありまして、これは非常に時宜を得た処置だと考えておりましたが、結局、この法律も、終戦後いろいろ角度から撤廃になりまして、現在では野放しになつておるわけであります。結局、この野放しになつておるということが、先ほど申しましたように、最近のいろいろな百貨店の進出を招来したということになつたのでありまして、これはやはりぜひもとに返して行く方が、全面的に中小企業者の常業を安定せしめる大きな原因である、こう実は考えておるようなわけであります。  なお、この機会にあわせて申し上げたいことは、百貨店はそういうことによつて規制をされまするが、しかし一般の小売業者の中にも、相当不当廉売をするものもあります。あるいはおとり政策によるところの誇大広告をして消費者をつる、こういつたようなものもあります。そこで先ほど問屋代表からもお話があつたのでありまするが、工業者に対しては、中小企業安定法等によつて、いろいろその保護法が設定されておる。商業者は、中小企業者に対しては、中小企業等協同組合法がありまするが、これが、まあ内部の統制力というものが非常に今無力でありまして、その点にどうも遺憾の点があります。やはりこういつたような、小売業者が多過ぎて、そしてその一部の不当業者が内部を撹乱するというようなときには、自主的に組合の力によつてそれを押えて行くということの権限をある程度組合に与えるということがたいへん妥当である、こう考えております。全面的に統制経済に復帰というのではありませんが、やはりその情勢に相応じて、そこで適当に政府としても考えていただかなければならぬ。立法府としても考えていただかなければならぬ。そこで百貨店に対する問題は、百貨店法の制定によつてこれが処置をし、また小売業自体の内部で、不当撹乱者に対しては組合力を強化してこれに対処して行く。現在の組合法を、これを改正強化していただくのか、あるいは新たに特殊な業者を指定して、実情に即した一つ商業安定法というものを御立法願うのか、その辺は法律の立法技術でありますから適当にお考え願つて、要するに、経済は生きものでありまするからして、すみやかにこれらに対して、立法府において御対処あらんことを切に希望する次第であります。  またあとで御質問に答えることにしまして、一応以上をもつて終ります。
  10. 永井勝次郎

    永井委員長 次は小売代表として、百貨店対策小売商連盟委員長高橋貞治君。
  11. 高橋貞治

    ○高橋参考人 先ほど門脇さんからお話がございました繊維も入つております。その他あらゆる小売商で、百貨店が扱つている商品が全部入つた東京の団体でございます。東京百貨店対策小売商連盟、こう申しております。この動きが出ましたのは昨年の十一月からでございます。だんだん百貨店が廉売戦をやり、まただんだんと百貨店同士の競争もはげしくなるということから持ち上りましてできたのでございます。現在、小売店は非常に苦しんでおります。一日も早く百貨店法をつくつていただきたいということを念願しております。  東京は店が約十四万、店員と従業員を入れますれば百八十万と申しております。全国でございますと、店舗が百四十万、それから従業員と店員を入れますと約千四百万という数が大体調べによつて出ておるわけであります。また一面デパートは従業員全部入れて十万と伺つております。われわれ同じ小売商であり、同じ日本人でございます。ぜひわれわれが、何にもけんかをせぬで、そうしてりつぱにやつて行く一つ法律をつくつていただきたい、こうわれわれは念願しておるのです。現在、御存じの通り、公取ですでに三回も御警告をなすつておいでになります。このたびは特に特殊指定というものをおつくりになりましたが、実際問題といたしまして、あれをよく私は熟読いたしましたが、このデパートは――私は既製服の小売商をやつておりますが、大体既製服などは委託が多いのでございます。委託に対しては特殊指定がはまらない。勢い手伝い店員も使える。それからなお、友の会におきましても、これは最後におきまして招待とかあるいは景品とかいう面はいけないかもしれませんが、最後の掛金が五千五百円になつた場合、六千円ということになりますれば、これはもう決して公取の特殊指定にひつかからない。われわれが絶えず申し上げておりますのは委託でございます。何らかの形で返品承認済みというような形で、それが承知ならひとつ引受けてやろうという話も聞いております。こういつたことがわれわれ小売商と同じ条件ではないのでございます。小売商資本も小そうございますから、どうしても買取つて――われわれの既製服の場合もそうなんでございますが、サージにおいて、最初つたときから、売れるときになりますと三割から四割下つております。そういう品物小売屋は買つておるのでございます。ですから、安く売れといつても売れないのであります。それがデパートでは三割から四割も値が下がつたようなものはどんどん返す。返して、あらためてまた入れて再交渉をする。こういうことでは小売屋はとても競争ができないのです。ですから、同じ立場で同じ形ならこれはやつて行けるのでございますけれども、こういう面もなかなか公取としては――今申し上げた通り委託という面が全然入つておりません。ですから公取の特殊指定にも入つておりませんし、経済面も違います。これは委託だと、新製品と称して手伝い人まで使つて行きますが、この店員の給料にしても、小売商はなかなか大きなものでございます。みな商社から店員を連れて来るのでございますから、デパートとしてはその負担がございません。こういつたように、要するに小売屋と同じ条件ではないのでございます。ですからいくら競争しようといたしましても、デパートは条件が有利ですから、幾らでも広告もできますし、またどんどん客が寄せられるわけです。なお廉売の件につきましても、すでに御存じの通りだと思いますけれども、こうもりがさが、原価が二百八十円もするものを二百三十円で買つて、二百五十円に売つている。しかるに一般の小売屋は三百円で買つて三百五十円でございます。こういつたふうに、一般がとても買えない値で大丸が買つておるわけなんです。私ども商売でこれを申し上げますと、花色サージでございますが、三分六ですね。これが背広でありまして四千八百円、これはどう考えてもできないのです。きのう布地の卸で一番安い卸商が参つたので聞いたのでありますが、二、三百ひつくるめまして、これをデパートでは売つている。十五、六の卸商社に一着当り三千円で三十着分ずつ卸す。そうして四千八百円でそれを廉売に出している。これはわれわれ小売商はマージンを加えますから、どうしても卸原価は六千円近くになるのです。これだけで特に売れといつて三十着ずつ割当てる。こういつたことでは、とてもわれわれ小売業者は競争できないのです。なお公取はこの程度の取締りでございますけれども、先ほど門脇さんからお話がございましたように、戦前この百貨店法ができましたので、多少競争がはげしくなつたという点がございましようが、その効力がちようど出ます時分に、いよいよ戦争にひつかかつたわけです。でございますから統制というような形にだんだんかわつて来ましたので、競争がなくなつたのであります。われわれはぜひとも、先ほど申しました通り百貨店法をつくつていただきたい。さつき門脇さんからもお話がございましたが、御存じの通り、新聞をごらんになりますと、一家心中がよく出ております。これはたいてい中小企業者でございます。この悲惨な状態は、前に百貨店法をつくるとき以前の状態でございます。最近神田におきましても、特に区会議員を集めて、百貨店法を何とかしようではないかという意見も出たのであります。このように現在は非常にだんだん追い詰められておるのであります。ことに今申しました大丸等ができまして、世間の関心がその方にばかり向いております。これは小売商社に対しても一つの社会問題である。これを先生方に申し上げまして、ぜひこの問題を取上げて、百貨店法を一刻も早くつくつていただきたい。これはお手元に陳情いたしました陳情書に十三箇条ございます。これを読んでいただきますと、われわれの要望する点がよく出ております。特に私は岐阜へ十日ほど前に参つたのでございますが、すでに岐阜のデパートでは、あの町村をまわりまして、一箇月ぐらいの小売屋売上げを枯らしております。これは十四日の岐阜の朝日新聞をごらんになるとわかりますが、それが出ております。ですからもう出張販売を岐阜で始めているということです。これは以前にもございましたが――すでに御存じでございましようが、大阪、名古屋各都市は、このデパート問題で沸き上つております。いよいよ火がついて参つたのであります。われわれ東京都の百貨店対策連盟といたしましては、なるべく臨時国会ででも、一刻も早くこの百貨店法の規定をつくつていただきまして、われわれ全国一千四百万の従業員が、百貨店と同じ線で、同じ商売ができますようなとりはからいをお願いいたしたいと思います。よろしくどうぞお願いいたします。
  12. 永井勝次郎

    永井委員長 以上で参考人の御発言は終了いたしました。引続いて質疑に入ります。御質疑があれば……。
  13. 齋木重一

    ○齋木重一君 百貨店側にちよつとお尋ねいたしますが、これは当らぬかも存じませんが、百貨店商品券発売をやつております。これは全国的に相当な金額の予約販売という形において商品券の発行をやつております。これらは年間を通じて、日本全国で私は相当に大きな額だと存じておりますが、その額の中で、天災地変その他人災によつて消耗、焼失、紛失いたしましたものが、私はこれも相当な金額に上ると思います。それらはどういつたようなバランスで協会としては商品券の発行高、そういうものを集計されておりますか、ひとつ説明を願いたいと思います。
  14. 能勢昌雄

    能勢参考人 御答弁申します。資料を持つて参りませんでしたので、商品券が幾ら出ておりますということは、後刻書類をもつて御報告いたします。これは私どもの出しております月報で報告しておりますから、公開の事実でございますので、それを調べてお答えいたします。それでよろしゆうございますか。――ただ残つているのはどうしているかということは、全国百貨店については私は存じませんが、私の知つております限りは、やはりその会社の負債としていつまでも取扱つているといいましようか、相当長く、震災前のものまで計算しておりますようですし、まず第一に百貨店取締法によりまして、供託の責任を帯びております。それは現在におきましては、東京だけをとりますと、発行高に対して国税と地方税と合せまして一割の課税をされております。そういたしまして全体の商い高は、商品券に関する限りは減つて来ておるように記憶しております。それでよろしゆうございますか。
  15. 齋木重一

    ○齋木重一君 私はその集計を一ついただけばいいのですが、これはけちな話のようですが商品券を発行しても、焼けたり、どうしても紛失したりしますね。これは百貨店が丸もうけになるのか、印紙を張つただけの損害である。今まで一割の税金だけを納入しておるんだけれども、九〇%は丸もうけで、百貨店のもうけになるのじやないかという考えを持つておりますが、そういうような考え方に対してはどういう処置をとつておりますか。
  16. 能勢昌雄

    能勢参考人 ただいま申し上げましたように、債務として背負つておりますが、最後になつて解散でもするときはそれをどう処理するか存じませんけれども、現在ではそれを利益へ振りかえるということはできないと存じます。どれだけ焼けたかとかいうことは何にもわかりません。まだ戦災前の商品券を持つて買いにおいでになる方がありますが、その問題につきましては、私は正確に百貨店業者から報告を聞いていないのでございますけれども戦争前の十円の商品券を持つていて、それで十円の品物をもらうということははなはだ穏やかでないという苦情を申されるお客さんに対して、適当な値段を出しておるようでありますが、あるいはまた何か物をつける、そういうことを聞いております。しかし十円の商品券を持つて来られる人に対しては、十円の商品を払つておる。また関東震災以前のものの取引すらあるそうでございます。
  17. 齋木重一

    ○齋木重一君 もう一点そういう問題について、これは大きな問題だと考えておるのですが、商品券を発行しても、百貨店では商品券では品物でなければ売らない。その商品券をかえる場合、現金では返金いたしません。しかし東京都におきまして、ここに仮定して一万円の商品券があるとするならば、品物もいらないし、何もいらないということに対して、商品券を売買する者が銀座あたりにはあるそうであります。何割とか値引きをすれば、それを買い取るというようなブローカーもあるそうであります。そのブローカーはまたその商品券をどこへ持つて行くかということが疑問なんであります。ブローカーは必ず二割、三割の値引きをして買い取つて、その商品券でブローカー自体が品物を買うのじやないと思うのです。またこれはいずれ発行しておるところの百貨店の中へもどして行くと思われるのです。それでなければ、ブローカーは二割とか三割の値引きをして、商品券を売買をして、営業が成立つて行くわけがないと思う。こういう問題等もお考えになつて、そういう商品券を買い取るような裏道街道をやつているものがあるのではないか、そこに商品券を買い取る方法を講じておるのではないか、こういうことを私どもは直感したことがあるので、お問い申すのであります。
  18. 能勢昌雄

    能勢参考人 私は承知しております限りにおきましては、現金で買いもどしておるということはないと存じます。もし実例がございましたら、取調べて御返事いたしますが、私の承知しておる限りでは、券面にもある通り、金額に相当する商品をお渡しするという契約によつて、物をお渡ししておる。また実際やつておる。あるいは店じまいとか何とかいうときに、そういう不心得なことをする実例があるかどうかは私存じませんけれども、絶対私はそういうものがあるという感じを持つておりませんし、ないことを確信しております。
  19. 齋木重一

    ○齋木重一君 重ねてお尋ねいたします。ないということはあなたの御説明でそれはけつこうですし、われわれこの場合においてはそうでなければならない。たとえば私が一万円の商品券をもらつたとします。これは品物はいらないということで、そこで二割、三割の値引きをすれば買つてくれる。そのブローカーが商品券をどこへ使うかという問題です。そこが私どもがふに落ちぬ問題なんであります。
  20. 能勢昌雄

    能勢参考人 大体私の承知しておる限りでは、商品券の売買業者でありますが、安く買つて高く一定の利潤をとつてこれを売つておるようでございます。千円の商品券なども百貨店で買うよりずつと安く売つておるようでございます。商品券の売買によつて利益を得ておるようでございまして、決して百貨居に売りに来ているというようなことは存じていない。のみならず百貨店で出した商品券を安く買つて来て、それを払えばいいじやないかというお話でありますが、それは百貨店は否定できないのじやないかと思います。
  21. 加藤清二

    加藤(清)委員 まず最初デパート側にお尋ねをいたしたいのでございますが、百貨店売上げの問題でございます。先ほど部門別になりますと、必ずしも小売りと比較いたしまして、さほど大したことはないじやないかというお話がございました。そこで私のぜひお尋ねいたしたいことは、この百貨広の売上げ部門別に占めるパーセンテージでございますが、たとえば繊維は何パーセントで、それから陶磁器は何パーセント、貴金属は何パーセント、こういう御調査はすでに当然経営者としてはでき上つていることと存じます。この点もしできましたならば、三越はどのようでございましようか。あるいは東京都のデパートの総計としては、一体どういうパーセンテージになつておるのでございましようかということを承りたいのでございます。でき得れば、これが東京都だけでなくして、どこか地方の名古屋でもけつこうです。京都でもけつこうでございますが、地方デパート売上げのパーセンテージもわかつておりましたらお願いしたい。ここへちよつとデータを持つて来ないのでわからないということでございますれば、後でもけつこうでございます。
  22. 金子忠夫

    金子参考人 お答えします。大きくわけまして、繊維関係それから家庭用品といいます家具、瀬戸物、そういつたようなもの、それから食料品、雑貨、この四つにわかれた部門別の集計は毎月デパート協会発表しております。各店の、それ以上にこまかい部門になりますと、各店それぞれの数字は自分の店はどうだか知りませんが、お互いにははつきりつかんでおりません。しかし大ざつぱに言いまして、たとえば東京で言いますと、ターミナルデパートとしての特色のあります東横百貨店、都心にありまする日本橋あるいは銀座の店において比較しまして、必ずしも今四つにわけた部門別では同じようなパーセンテージは出ていないと思います。ことに先ほどお話の出ました大井に開店いたしました阪急の支店、これはほとんどが食料品で占めていると思います。ごらんになりましても、そのようであると思います。大わけをしましたデパート協会の数字は、後刻理事長からお答えいたします。
  23. 能勢昌雄

    能勢参考人 そういう御質問があると思つておりませんでしたので、不用意にも書類を持つて参りませんでしたが、毎月出しております。今回のみならず、今後御入用でしたら書面で申し上げますが、これは共通した部門別になつておればわかりますが、百貨店の経営が大きい、小さいいろいろございますし、いろいろな売上げを分類して調べろということは、私の方では指示していないのであります。大体大わけでやつて来たものをまとめておりますから、甲なる店では帯締めがこつちへ入つておるが、乙の店ではこつちに入る、そういうことになりますので、衣料関係でありますとか、雑貨関係であるとか、非常に大きなわくになつております。しかし大体繊維の方はわかりますが、大わけの、洋服はどれだけというようなことになりますと、個々の店でないとわからないので、そういう店へ質問か何か出していただかないとわかりません。協会としましては、そういう大わくの七種類か八種類かございますが、必ずしも一々について正確は期せられないかもわかりませんが、それはさつそく調べましてお送りいたします。
  24. 齋木重一

    ○齋木重一君 繊維は何パーセント占めておりますか。
  25. 能勢昌雄

    能勢参考人 大体において最近のところでは四十七、八パーセント、繊維というより衣料品と称しておりますが、五割近いようでございます。五割を越してはおりません。大都市において、六大都市ではほとんどこのごろは都心と売上げの傾向も大体六大都市あるいはそのほかのところと傾向としては同じようでございます。非常に大都会が衣料が売れて、地方が減つて来ているという著しい変化はないようでございます。そういうように聞いております。その刊行物がありますからお届けいたします。
  26. 齋木重一

    ○齋木重一君 これは将来立法するかしないかの問題につきましても、ぜひ知つておかなければ妥当性を欠くことになりましてもいけませんから、でき得れば逐年に、たとえば終戦直後はどうであつたとか、毎年々々でなくてもいいのですけれども、朝鮮ブーム時代はどうだつたとか、あるいはつい最近に至つてはどうだとかいうくらいの年次別の、しかも部門別はお調べ通りでけつこうでございますからどうぞひとつお願いいたします。
  27. 能勢昌雄

    能勢参考人 お届けいたします。
  28. 加藤清二

    加藤(清)委員 次に株価の上昇率と配当の問題でございますが、これはどうせ皆さん上場株になつていらつしやることでございますし、もうりつぱな銘柄ばかりでございますから証券の方へ聞けばすぐわかることでございますけれども、一応こういう点も当事者の方から、それぞれ研究をしていらつしやるわけでざいますから、できることならひとつお教え願いたいのでございます。これもまた後ほどでけつこうでございます。  次にもう一つぜひ承つておきたいことは、先ほど門脇さんからるる終戦直後から今日に至るまでデパートの進出の状況と申しましようか、非常な勢いでもつて発展しつつある状況を承つたわけでございますが、この勢いは一体いつまで続くかということが私尋ねてみたいのです。ここあたりが峠なのか、それともまだ一層ふえて行こうとするのか、数はあるいはふえないかもしれませんけれども、三越さんは本店の向いに新しい分店をおつくりのようでありますし、それから松坂屋さんは松坂屋さんで逐次お隣をふやしていつていらつしやるようでございますし、どこをながめましても、いずこも同じたいへん御繁昌でまことにけつこうのようでございますけれども、このけつこうなことが、片方にとつてみるとたいへんけつこうでないという場合も聞きますので、この状況が一体いつまで続くのか、増設とか改築とかあるいは新規建築とか、こういうことが、予見し得る範囲内でけつこうでございますけれども、いかがなものでございましようか、おそらく協会の方としてはそれぞれの計画もございましようし、これはやがて株価にも影響することでございましようししますので、この点をひとつ承らせていただきたいと思います。
  29. 能勢昌雄

    能勢参考人 なかなかむずかしい御質問で、私は直接営業しておりませんので、個々の店のふえぐあいもそう存じませんから明白なことを申し上げ得ませんが、協会をお預りしておりまして見ておりますと、もう峠は済んだと私は思つております。その峠というのはどういうことか、数においてふえるとか、あるいは修築をするということでなくて、百貨店の殷賑というようなものは、デフレ政策もようやく消費面に及ばんとしておりまして、売上高も前年同期だけ前月あたりはできておりませんし、逆に売場面積はふえても商い高は前年同期よりも減つているというのが九月の数字でございます。その前の月から見ましても、どちらかと申しますと傾向としては減つてつております。しかし数がふえるかどうかということは、百貨店業者がきめることではありますが、百貨店は何と申していいのですか、ものずきに売場を広げたり支店を設置したりするということでなく、やはり消費者がこれを利用されるかどうかということに大体見通しをつけまして、そうして経済的にそろばんをはじいて、支店をこしらえるがいいか、売場を広げるがいいかということで、こういうことを申し上げると会員の連中からしかられるかもしれませんが、東京におきまして増築、修築をしたところでも、相当外部の資金の導入をしておるわけであります。すなわち資本負担をしながらやつておるわけです。その当時はおそらく今日のようなデフレーシヨンというものもなく、見通しとしては一般の消費というものは相当膨脹されて来るであろうということもあつたと思います。また今後地方都市なんかにおきましても、町が一緒になつて市になる、あるいは百貨店という形態を整えるのが小売の一つ行き方としていいという声が出て来る、そしてそれを消費者が使われるような傾向がある、そう見通しがつくときにはやはりできて参る。かと思います。またそれができて来るのがほんとうじやないかと私は考えるのであります。そういうわけでございますから、経済的の制約があり、消費者がそれを便利をもつて使うかどうかというような見通しによりまして、必ずしもふえるか減るかという問題は、百貨店業者の意思だけによつて決定するものではないと思います。しかし今日の実情から見て参りますと、おそらくもう現在の百貨店の人が支店をこしらえたり、増築をしたりして、そうふえるということはないと私は考えております。それは絶対にないということを申し上げるわけではないのです。私はそう考えております。
  30. 加藤清二

    加藤(清)委員 この問題は国家的に考えれば、こういうデフレの時期に、しかも消費規正をしなければならないという政府の大方針の建前から行けば、こういう消費部門に貴重な資本を投ずる、乏しい資本を投じて行くということは、私どもから考えますと、この問題につきましては、店舗拡張の問題とともに自粛を願いたいと思うことなんです。しかし経営者にとつてみればもうかればふやすのです。これは私も経験がありますけれども、今機場が機械が多過ぎるから何とかしてくれなければいけないということを、綿工連が言つて来ておるようですけれども、がちや万こら千の時代にはそれやれふやせというのでふやしたものです。これが今過剰投資だ二重投資だということを言われておる。今になつてから規制しなければならぬ、こういうことを言われる、すでに手遅れの感があるのです。これが峠で絶対にふえないというものならば、何もそれに追討ちをかけて、もう店舗拡張をしてはいけないということを言う必要はないと思うのですけれども、それをそのままに放任しておきますと銀行と同じことになるのです。銀行はよその店が拡張してきれいに改装しますと、やはり今までの店でよかつたものが改装してきれいにしないというとお客がつかなくなる。だから自然にまたきれいに直す、映画館でもカフエーでもみなそういうことでございますけれども、これは自然競争が内輪で起きて来る。そこでひとつどうしてもお尋ねしなければならぬことは、デパート協会の支配力でございますが、これはアウトサイダーに対して、あるいは内部に対してどのくらいの拘束力を持つておりますか。
  31. 能勢昌雄

    能勢参考人 私の方は拘束力を持つておりません。外部に対してはもちろん持つておりません。内部に対しましても、定款をここに持つてつておりますが、御参考のために読みますと……。
  32. 加藤清二

    加藤(清)委員 けつこうです。
  33. 能勢昌雄

    能勢参考人 こういうふうにしてはいけないとか、いいとかいう権限を持つておりません。ただ任意団体でございますが、実際大きな意味におきまして、百貨店のためになること、ためにならないことに対しては、そういうみんなの気持を持つて行く動きをするというだけの責任と仕事を持つておりますから、たとえばそういうテンデンシーが来た場合に、そういうことをしない方がいいだろう、今日中小企業はこういうことだから、こういうことはしない方がいいだろう、やめてください、しかしやめなければしようがない、やめなければ出て行きなさい、そういうわけには行かない。
  34. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうすると協会というものはあくまでカルテルとか、あるいは中小企業安定法のように拘束力を持たない。こういうふうに解釈しなければならないのですが、そうすると私ちよつとふしぎになるのですが、ここはよく腹をすえてお話願いたいのですけれども、先ほどのあなたのお話を拝聴しておりますと、法律をつくることは反対だ。その意味は、行き過ぎケース・バイ・ケース自粛して行くのだ。法律をつくつてみたところで、つくることが困難であるし、その効果も疑われる。こういうお話でありましたけれども自分協会の力だけでアウト・サイダーないしは内部を押えることもできないということになりますと、法律をつくつたつてだめだと言われる、ここのところが私はわけがわからなくなるのです。そこで、自分の力で守れないものはやはり法律で守る、せめて百パーセント守れないにしても、ないよりましの法律ではないか。それはいかなる法律をつくつてみたつて、守る方の人が守らなければだめでしようし、今日みたいに、法律をつくつた者みずからがそれを守らぬというような、こういう状態ではこれは無理はないでしようけれども、しかし自分の力で守れなければ法律で守るということになるでしようが、その法律効果を疑われて行くということになると、デパートというものはよほど底の恐ろしい存在だ、こういうことになるわけなんですが、どうなんでしようか。そこはどう解釈すればよろしゆうございますか。
  35. 能勢昌雄

    能勢参考人 御答弁申し上げます。私の言葉が足りなかつたのかもわかりませんが、御質問の趣旨と多少考えることが違つております。今法律ができても、法律を守る意思がなければ何にもならないというのと同じで、自粛でも、協会が統制力を持つていれば守れるというのでなく、現在は、そう持つて行けば構成分子がみな寄り集まつてつて行くということは、十分見通しがつくということを私は申し上げたわけであります。
  36. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではその問題についてはあとで伺いますが、問屋さん側にひとつぜひ承りたいのですけれども、私は品物デパートへ納めた経験を持つているのです。その立場から行くと、ずいぶんひどい目にあわされるのですよ。ところがきようの御発言を聞いておりますと、どつちかというと、問屋さんにとつてデパートさんはお客ですから、お客さんを前にしてはちよつと言いにくいことがあるのじやないかと思うわけですが、ここではつきり言うていただくと、あとでいじめられるということがありますか。
  37. 沼田義雄

    沼田参考人 そんなことはありません。
  38. 加藤清二

    加藤(清)委員 これだけはぜひ聞いておかぬといけないのですが、この前大企業の下請企業に対する遅払いの問題で、私がここで申し述べました。名前ははつきり言いますが、東芝です。私は東京のことを言うておつた。ところがとばつちりが愛知県に行つてしまつたのです。それであそこへ納めておる人がこつんと頭をなぐられたということがありましたが、そういうことのないように、ここでは幸いにして問屋さん側は何々商店、何々会社でなくて何々協会ですから、協会の代表だけですから、決して私はある特定の何々商店の人に頼まれて何々デパートへ納めるのはけしからぬということを言うておるのじやないということをまず御了承願つて、それからひとつお願いしたいのです。問屋さん側にとつても痛しかゆしの問題でありますので……。そこで百貨店側としては、返品や手伝いの方のことは、これは一方的な押売りであるというように言われておるようでございますけれどもデパートの人を前にしてここのところ言えませんかどうですか。別にうそを言えというわけじやないのですけれども、事実のところを開いておかないといけないわけなんですが、忌憚のない御披瀝をひとつ率直に承つてみたいと思うわけなんです。もし言えなければ私が持つておる実例を申し上げます。
  39. 沼田義雄

    沼田参考人 私の方からいたしますれば、小売屋さんもお得意であり、デパートさんもお得意であります。従つて、あえて曲げてお話申し上げるというわけではございません。私は特に絹、人絹関係でございますが、衣料品の関係で見ますと、全国の小売部門の総売上高に対しまして、デパートの総売上高が一割八分という状態でございます。従つて、衣料品の卸売業者に関する限りは――他のことは存じませんが、むしろ小売屋さんの方が大きなお得意ということが言えると思います。忌憚なく申し上げますが、御懸念になるようなことはありません。これは地方によつて違うと思いますけれども東京で今一般的に言われているのは、衣料品関係ですが、デパート商売を三割以上したら危険だ、こういうことが言われております。もつとも個々の店によりましては、四割五分も五割もデパートに納入している店もございますけれども、総体的にはそういうふうなことを言われております。それは何を意味するかといえば、ぼんぽん返品を食うということです。またその一面におきましては、先ほども申し上げましたように、問屋戦前ほどの力を持つておりません。戦後は、他人資本を自己資本の何十倍も借りているというような実情でございますから、毎日毎日手形に追われている。従つて、次の手形を落すために、手持ちの商品をどつかへ持つて行つてそれを現金化さなければならないというような場合に利用する面もあるわけでありまして、必ずしも悪い面ばかりじやないのであります。ただ三割以上デパート商売をしては危険だというようなことは、要するに返品その他の問題があるからで、先ほど申し上げましたように、返品や手伝いの問題にしましても、要するに不当返品、不当借上げ店員というような問題、これは不当でないようにカムフラージユしてやらなければならない。こういうふうなことを百貨店法ではたして規定できるかどうか。条文でものをきめられますけれども、それはこれだけはしてはいけない、あとはやつてもいいという結果になり得る危険が多分にあるのじやないかと思われます。もちろん百貨店法の制定に当つて、抜術的ないろいろな面を御研究になることとは存じますけれども戦前百貨店法あるいは最近新聞等に伝えられておりますところの法案等によつて、私の頭で解釈した結果によりますと、どうも規定されたことだけは守らねば、これは罰せられる、しかしそれ以外のことはやつてもいいのだということになる危険があると思います。また規定されたことにつきましても、たとえば委託販売というようなことはいけないといたしますれば、買取りの形にして、そして両者の間で、いつでも返品は引受けますというような契約書を入れさせられる場合もあります。それは、先ほど申し上げますように、後に光つているところの後光の作用によつてそれをやらせる。その後光を条文によつて規制するということは、私は困難じやないかと思う。従つて卸売部門におきましては、百貨店法を制定されることによつて、まことに完全であるとは言えない。ないよりはましであるけれども、心理的効果をねらう以外の何ものでもないじやないかというふうに考えているのです。
  40. 加藤清二

    加藤(清)委員 今の後光の問題でございますけれども、後光を使つてメーカーの方も問屋さんも助かる場合もあるわけですね。これは特に新製品のごときは……。けれども、そこから来るところの安値提供だとか、あるいは返品だとか決済とかいうような面でずいぶんいじめられる。これが、今度小売の方の立場に立つてみますと、同じ品物でも、デパートへ納められるときの値段と、小売屋さんへ納めるときの値段とは大分開きがある。そこで小売屋さんとしてはデパートとはとても競争ができないで困る、そういう問題が一つの難点になつておるようでございますけれども、これをあなたはさつきこの法律でどうにもならないから、問屋共同行為ができてるようにしてもらいたい。そして公正取引ができるようないい方策はないものかという御説でございますけれども、はたして先ほどお尋ねいたしますると、デパートの方としてはアウト・サイダーの禁止もなかなかできない、こういうことでございますが、問屋としては共同行為をすればそういうデパートからの圧迫というようなものは解消できそうでございますか。
  41. 沼田義雄

    沼田参考人 今日では独占禁止法というものが厳として控えておりますので、特に卸売部門デパート商売と同様に任意組合です。従つてその取引先の問題につきましても、取引条件あるいは販売等の問題につきましても、協定をしてやるということが正式にはできない。従つてそういうふうな不況カルテルまで行かないまでも、合理化カルテルのでき得るような方法――われわれは不況カルテルまでお願いしたいと思うのでございますけれども、そういう方法のできるような卸売り部門に対する立法をお願いすることによつて百貨店法が制定されるよりも有効ではないか、かように考えるのであります。
  42. 加藤清二

    加藤(清)委員 最後にそれでは小売の方にちよつとお尋ねいたしたいのですが、先ほどせつかくデパート法が過去において制定されたけれども、それは結果としてデパートを利することになつてしまつて、小売の方としては、あまり好影響をこうむらなかつたというようなお話がございましたが、時期的に考えまして、やはり今小売側がデパートを抑制するとかというようなことをすると、かえつて百貨店の保護法になつてしまつて、小売の方は利する点が少いじやないか、こう考えられる向きがございますが、一体それはどんなものでございますか。  それからもう一つ引続いてデパート側にお尋ねしたいのですが、大丸さんや東横さんが小売の方に大きな刺激を与えているということは、これはもう皆さんよく御存じでございましようが、この間新聞、雑誌で見ますると、やはり大丸さんは大阪流にじやんじやん発表していらつしやるようでございますが、これはデパート法を促進させることを躊躇していた人々までもやや硬化させたというような感じがなきにしもあらずでございまするが、こういう点はやはりデパートおのおのの独自性にまかしてあるものでございましようか。協会としては何ら関知することができないものでございましようか。これを一つ
  43. 門脇勝太郎

    門脇参考人 先ほど申し上げましたのは、前の百貨店法の制定によりまして当時競争が激甚であつた百貨店間の行き過ぎ行為、無料送迎自動車、あるいは非常な遠距離に無料配達した、こういうようなことが法律によつて規制されて、そのために百貨店の経費が非常に助かつた、また新規に百貨店ができないということは既存百貨店の大きな特権でありますから、そういう意味において既存百貨店が非常な保護を受けておる。そこでこれは既存百貨店が保護を受けるとともに、やはり一般小売商もその恩恵、特典を受けるわけでありますから、これはいわゆる小売業という同じ立場において、同じように受ける擁護であり、同じように受ける特典でありますから、これは百貨店だけが保護されたというわけではない。既存百貨店も保護され、また一般小売業者もそれによつて擁護されて、それぞれ法律によるところの利益をわかち得られるというわけであります。でありますから、かりに今後再び百貨店法ができましても、現在まである既存百貨店というものは、非常なそこに大きな特権ができるわけです。これから先はこういうものはできないのだ。これはほとんど禁止と同じような結果になりますが、これから先できないということになりますと、今あるものは非常な特権であります。その大きな特権を既存百貨店は得るわけでありまして、これによつて不当競争は百貨店同士がいずれもできなくなるということは、これも大きな経費の節約なのです。百貨店同士の競争がなくなれば百貨店側としましては一般小売商というものはあまり敵に考えておらぬ。要するに百貨店同士の競争は一般小売商にしわ寄せをするのですから、百貨店同士の競争がなくなつて、それだけ経費が節約されますと、百貨店の経営が安定しますし、既存百貨店の保護になる、擁護になるということはどうしても争われぬことであります。結局そうなることが一般小売商に対するところの安定になる、一般小売商の擁護になるわけであります。ですからわれわれは一生懸命かりに百貨店法をつくつていただいたとしまして、むしろわれわれより以上に現在の各既存百貨店というものは大きな利益を受けるわけです。われわれの縁の下の力持ちによつて、ますます百貨店は、ちようどここに理事長がおられますが、理事長のように太つて行くのであります。これはどうもしかたがないのです。どうしても、百貨店も太らせ、われわれも太りたいと、こういうわけですから、しかたがないと思います。
  44. 高橋貞治

    ○高橋参考人 私も同じ公益代表でありますが、今お話がありました百貨店は、ちようど戦前百貨店法は先ほどもちよつと申し上げましたが、戦争にひつかかつてだんだんこういうふうになつたわけです。ですから競争がなくなつてしまつたわけです。その結果、これから効果が出るときに廃止になつた。戦争になつてしまつて自然と休業状態になつてしまつた。戦後はマツカーサーによつて廃止になりました。こういつた状態であります。われわれ百貨店法をつくつていただくことを多大の頼みの綱としておるわけです。今門脇参考人のおつしやつた通りです。これは確かに百貨店もよいと思います。しかし小売がうんと助かります。たとえて申しますと、出張販売は戦前百貨店はとめております。それから売場もとめております。私どもが一万坪という大きな坪数を持つておれば、三階以上、四階以上は住宅が足りませんから、そういつた面から使つていただくような方法で、ある程度の制限をやつていただきますれば、あとは自由に販売ができると思います。そういつた意味におきまして、私は百貨店さんもよい、小売もよいというふうに信じております。以上申し上げます。
  45. 能勢昌雄

    能勢参考人 今新しく進出した大丸に対して何もしていないかということでございますが、数箇月前から大丸東京に出るということがわかりました。と同時にまず第一に大丸に対しましては、東京百貨店自粛している内容を伝えて、東京にお出ましになるということはわれわれは制約する権能も持たないが、出る以上は十分われわれがいろいろの方面から考えて気をつけておる点は十分気をつけてもらいたいということはたびたび警告しました。はからずもあけてみると八時の営業時間というものがありまして、これは私どもの今までの自粛の線を超過しておりますので、これは全国協会長あるいは東京協会長がわれわれとともに、大丸の社長に対して種々懇請しまして反省を促したわけであります。ところが大丸自分の意思でなく鉄道会館、その裏には国鉄の要望があつて、あるいは鉄道の一つの構内営業の規則によつて九時から九時まで年中無休でやれということを折衝した結果、一部分一階と二階と地下一階とだけが、約二千坪ほどのものを朝十時から八時まで、そうして木曜日は休むというところまでごぎつけたということであります。それでも私どもははなはだ遺憾で、その国鉄の要望というものはどれほど今日の経済情勢における百貨店営業時間というものに対して圧力を加える力があるかどうか。私ども国鉄へ行こうかと言つたのですけれども、実際打明けた話が国鉄がどうであろうと、大丸に縮めるという意思がなければというので、まず大丸の意思を聞いてみたわけです。たまたまわれわれの監督官庁であります。企業局から局長がわれわれをお呼び出しになりまして、そういう問題についてわれわれに反省を促されました。それをまた私ども大丸へ持つて行つて折衝している最中でございますが、昨日夕方大丸からの回答で、国鉄の方の了解がつけば、まだ何時にしてどうするということは出ておりませんが、国鉄の方の意思がよければわれわれは反省する、考え直すという用意があるという返事を得ました。私まだ企業局長にも返事しておりません。それはゆうべ夕方の五時半ごろであります。けさ返事する時間がないわけであります。そういうことでどういう程度になるかわかりませんが、これは大丸自粛でありまして、私はそうしろという権能も持たないわけであります。それで私の先ほど申しましたのは、企業局なりいろいろの方面行き過ぎだと思うことは、協会を通して改める。行き過ぎであるという点は、業者相当反省する自信を私は持つております。それは皆のために考えるというより、自分のためにもなるわけでありますから、実際これから発展して行くには、先ほどお話のありましたように返品問題であるとか、手伝い店員ということは、百貨店の正常なる発展のためにもなるわけでありますから、十分その点は改めて行く用意があります。これは先ほど加藤先生のお話がありましたが、私どもがさせるのではなくて、みんなそう考えさせて行くように力を尽す用意があるということであります。公取の業種指定はまだこれから公聴会でもいろいろ変遷があるかとも思いますが、原案には相当委託販売においても制限されておる部分がありますから、これはよく御検討願いましたらわかると思います。それをつけ加えて申します。  後光のお話も出ましたが、われわれのメンバーのうちにどれだけが後光があるかということは、ひとつ慎重に御勘案を願いたい。百貨店の会員全部後光があるということは決してないと思います。むしろ全国集まりますとこれはまた地方的なものは迷惑な話で、大きな問屋がそんなことを百貨店とするから――するしないはともかく、するからそういうことが起こる。われわれ安いものは問屋からもらえないというような話がありましたが、独禁法は弱い者が強い者にいじめられる、強い者は弱い者をいじめるという問題を取上げているわけであります。私ども協会全部が、百貨店という看板を掲げたらみんな後光が光るということはないということは御同意を得られると思います。ちよつとお答えするついででございますけれども、先ほどの株の値段の高低というものは、はなはだ不行き届きで調べておりませんけれども、調べるだけ調べて申し上げます。
  46. 加藤清二

    加藤(清)委員 どうもいろいろありがとうございました。要はかいつまんで申しますと、やはり協会の方としても今後ある程度の規制と申しましようか、自粛と申しましようか、ということをしなければならぬ段階に立ち至つているということはお認めのようでございますし、片や小売側の方の御意見ですと、この規制することによつて、小売だけでなくして、デパートの方もたいへん利することになるんだ、共存共栄の立場からいつてもたいへんけつこうであるというお話のように了解いたしました。片やこれを国家的見地から考えてみましても、これは自由党の建前から行きましてもそうでございますが、消費規正をして国力を振興しよう、だからデフレ政策をとろう、こういうことでございますけれども、その見地から言つて、この消費の部面であるところが競争をするがゆえに、ここへあえて多くの投資をしなければならないというところの銀行とかデパートというものは、やはりある程度の規制が必要ではないか、こういうところへ投資するよりも、その金があればドイツのように、工場の設備改善ということをまずやつて、そうしてデパートの外郭よりも、デパートの中に並べる品物を一層安くてよい物にする、こういうことに努力をすべきではないか。かてて加えて賠償がまだ済んでおりません今日、外国の使節が参りました折に、銀行、デパートのたいへんりつぱな陣容や、そこへ並んだ三万台の自動車をながめて、たいへん裕福になつておるじやないか、だからたくさん賠償をよこせということの材料に使われるということは、国家的に考えても賢明な策ではないじやないか、かように私どもは思うのであります。何しろしろうとでございますからわかりませんが、今後ひとつよろしく御指導をいただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  47. 永井勝次郎

    永井委員長 小委員長から一、二点お尋ねしたいと思います。大丸に非常に安い値段で納入しておる問屋とは在京百貨店は今後取引しない、こういうような圧力を問屋に加えておるというようなことを新聞で見たんですが、そういう事実があるかどうか、沼田参考人金子参考人にお尋ねします。
  48. 沼田義雄

    沼田参考人 そういうことをよく聞きますが、私が耳にいたしましたところでは、そういう、お前の店は大丸取引がある、従つて今後あまりひいきにしてやらぬというようなことを言つたとかいうお話を聞きますけれども、それよりも、お前のところは一体大丸取引があるのか、ございます、それじやひいきにしてやろうということの方が多いように思います。なお最近われわれの聞いたところでございますが、大丸さんの今並べられておる商品は、大部分関西の方から入つて来ておるというようなお話で、あるいはただいま小委員長の御質問のことは私どもの耳に入らないのかもしれませんが、さようなことであります。
  49. 金子忠夫

    金子参考人 この間、今お尋ねのような新聞記事は私も見ました。しかしこれは私の個人的な意見になるか存じませんが、今日の少くとも百貨店一つ部門を預かつておる人としては、そういうばかなことを言うはずはない、そういう考えを持つているようなちやちな態度ではいないはずだと思います。お茶飲み話か何かで、どこかでそんなことでも出たんじやないかと想像されます。そういうことはないと思います。
  50. 永井勝次郎

    永井委員長 それから門脇参考人と高橋参考人に伺いますが、大丸の進出、阪急の進出、東横その他百貨店の拡張競争、こういうことを中心にして最近百貨店中心にした競争が非常に激甚になつて来ておる、その結果公正取引という面から見て、これじや困るというようないろいろな条件が顕著に現われて来ておる事象はないか、小売店から見て不公正な取引である、やり方であると思われるようなやり方はないか、そういう点について伺いたいと思います。
  51. 門脇勝太郎

    門脇参考人 東横はこれから開店されますので、まだ今のところは直接刺激を与えておりません。大丸と阪急はすでに開店をして、これは非常な刺激を与えております。阪急は先ほど百貨店側からお話がありましたように、これは食料品がおもなんです。食料品の販売価格などが非常に安いです。しかし私どもは繊維関係全国連合会を預かつております関係で、食料品方面にまであまり積極的にくちばしを入れたくないと考えております。大丸の場合は、繊維品が大体中心になつております。先ほど申しましたように、問屋に向つて出血提供を強要しておる。とにかく普通尋常の採算方法では確かに原価を割る。その原価を割る値段で売つておる。それでいろいろ小売業界のいろいろな人が情報を集めて参つて開かしたのでありますが、たとえて言いますなれば、ある問屋に対しまして、百反のものは正常価格で買う、あとの百反は出血価格で買う。問屋もそれを納得して、いわゆる開店祝儀といつたような意味で、将来の取引の魅力ということから、その分に対しては非常に欠損であるが、将来を楽しみに、泣く泣く提供するというようなぐあいで、相当大量の開店売出しの特別な安価品をあすこに陳列されるようになつた、こういうことであります。そこでそういう問屋を強要して、非常に安いものを提供させるということが、これは公正取引委員会の方のいろいろな不公正取引として摘発される材料になるとは考えまするが、要するに売手と買手が納得ずくでやりますならば、これはどういう方法でもとれるのです。売手と買手が納得ずくで買いましよう、売りましようで取引したことを、一々公正取引委員会があとから追つかけて行つて、おつとり刀で摘発されるということは、これはとても今の商売には関係のないことで、そういうことは来年来い、あさつて来いということで、済んでから縄をなうような話であつて、生きた商売の観点から見ますると、――それは公正取引委員会というものは、ないよりかあつた方がいいでしよう。しかしこれはやはりそのときの商売には間に合わない。――こう言うとえらいお役所には悪いようですが、お役所仕事というのは大体そういうものだ。でありますから適切に、事前に、そういうことが、できないような、手を打つていただくことが、やはり生きた政治だと考えるのです。こういつたようなことをある役所行つて陳情しましたところが、資本力をもつて資本主義の時代に、こういう新憲法下で、堂々と合理的に商売をするのに、それは圧迫できぬ、こういうような御意向もあるようであります。何もかも資本力にまかせて放置しておくということになれば、政治というものは、これは警察と監獄だけあればいいことになる。あとの一切の施設はなくとも済むかもしれません。しかしそれは程度問題であつて、やはり国内の一つの秩序がありますから、一つの道義があり、そこには商業道なら商業道というものの一つの基本があるわけです。要するにある一定の原価に利潤を加えて、この利潤が常業経費になり、生活費になつて、商業者というものが多数生活しておるわけであります。それが売価で余剰が浮かんで来ぬということになると、これはちよつと商業の基本線が破壊されるわけです。そういう商業の基本線が破壊されるような情勢をながめておつて、なお資本主議というものを強要することは、政治家として非常によろしくないことだと考えます。やはり程度問題で限界がありますから、いかに合理的にできておつても、あまり行き過ぎがあつたときは、そこで適切な手を打たなければ、国家の一つ商業道の秩序が破壊される。そういう意味において私は、やはり今の百貨店法というものは、あるいは新憲法のどこかの条章にそぐはぬかもしれぬ、あるいはそこまで積極的に政府が資本主義を干渉するものではないというような点から、不必要かもしれませんが、やはり生きた政治をして行くということになれば、公正な商業道の基本線が破壊されるということを打破していただかなければならない。多数の小売業者というものはそれで飯の食い上げになる。どうしてもみんなが一家心中をしなければならぬようになる。そういう一つ商業道の基本線の秩序が破壊されないようにお願いしたいということを、特につけ加えて申し上げておきます。
  52. 高橋貞治

    ○高橋参考人 実は大丸がわれわれが税金で出した鉄道の敷地に、特定の一店が出て来たということに対して、東京の小売業者は非常に神経をいらだてて不安を持つております。ああいうところはそう言つては何ですが、ホテルか何かにしていただいて一般に何しろ御存じの通り、あらゆる鉄道の線が集まつております。かつまた始発点でございますので、こういつたところは努めて百貨店はやめてもらいたいという主張は絶えずやつております。  それから先ほどお話がございました、非常に安く売るということに対して、こうもりがさの話をちよつと申し上げます。これに対しても東京洋傘卸商組合から公正取引委員会に陳情いたしております。こういうことをされては困る。後ほど新聞を置いて参りますから、ごらんを願います。なお私は既製服の小売商でございますが、全国の既製服の卸商組合が百貨店に申し入れております。あまり廉売を年中やられるのは困る、年に二回や三回ならいいけれども、一年中やられるということでは押し切れぬというような正式な文書を、デパート協会に出しております。こういつたことはまた雨がさにもあつたようですが、事実先ほどお話があつたようなことが耐え切れなくなつてはつきり文書になつて出ておる。こういうふうにわれわれ小売業者が買えない値段で買われて、われわれ小売業者を刺激いたしておることを申し上げておきます。
  53. 永井勝次郎

    永井委員長 それではこの際参考人各位に一言お礼を申し上げます。  各位には長時間にわたり御出席くだされ、種々貴重なる御意見発表され、ありがとうございました。本小委員会といたしましては、各位の御意見を十分参考として調査行つて参りたいと存じます。  これにて散会いたします。     午後一時十七分散会