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門脇参考人 全国繊維製品小売商連合会副
会長門脇勝太郎です。
所属団体に
はつきり書いてありますように、
繊維製品小売業者の
全国連合会でありまして、不肖がその副
会長として、
全国の
業者にかわ
つてここで陳弁いたしたい、かく感ずるわけであります。
百貨店と
繊維製品小売業者の
関係でありまするが、現在ありまする
全国の
百貨店、これはほとんどがいわゆる昔の
呉服屋さんが大きく
なつたものでありまして、
従つてその扱う
商品の大半が、
呉服を初め
繊維製品であります。そうい
つた内訳を検討してみましても、
売上げの少くとも五〇%以上は
繊維製品を扱
つておる、こういう
現状でありますので、特に
繊維業者の
小売部門全国連合会としましては、この
百貨店問題につきまして、非常に深刻な関心を持
つておるわけでありまして、本日の
意見発表の
立場から申しますると、私
どもが攻める
立場ということになるわけでありまして、よろしくお願いしたいと思うわけであります。現在デフレがますます深刻化いたしまして、
購買力が非常に低下して来る、ことに
繊維業者は、最近非常に同
業者がふえまして、同
業者過多のために、ほとんど共倒れとい
つたような情勢にあるのであります。その上にさらに最近
百貨店が非常な攻勢に出ておる。従来あ
つたものが続々復旧復興する。また
売場面積が無
制限に大拡張される。また最近どんどん新設がある。これを
東京の例にたとえて申しますなれば、
銀座の松屋とか、新宿の伊勢丹、これは全面的に接収が解除になりまして、昔より一層
りつぱな店舗ができ上
つて来る。
銀座の松坂屋とか、高島屋の
売場面積の大拡張ができ上
つておる。こうい
つた古いものが復興復旧するほかに、新しい
百貨店が新規にできて来る。池袋にも大きな
百貨店が二つ新しくできておりまするし、また大井には、
大阪の阪急が新しくこれも進出して来て店を出しておる。また一番最近全都の
小売業界を刺激しておりまするのは、
東京駅の
八重洲口に先日開店しました
大阪大丸の
東京進出であります。また近く完成を見んとしておるところの
渋谷の
駅頭における
東横百貨店の新館の竣工、これは今までの
百貨店の坪数よりもずつと大きいものができる。十何階建かの
東京で最高の
ビルができ、そこに全面的に
売場面積が拡張される。最近では
大丸と
渋谷の
東横、これが全都の
小売業界に大きなセンセーシヨンを巻き起しておるようなわけでありますが、
地方の例を見ましても、名古屋におきましては最近
名鉄ビルに厖大な
百貨店が生まれんとしておりまするし、また
大阪地区では、御
承知のように重要なターミナルは全部
百貨店が占領しておる。まことにこれに圧迫されて、
小売店が汲々としておる。最近下関あるいは福岡には、新しく
大丸が
地方の
資本と合流しまして、それぞれ進出している。
全国的に
百貨店が、非常な
小売段階に対するところの大きな圧迫にな
つておる。
もとに返りまして、
東京の例を申しますると、先日開店しておりまするところの
大阪大丸の
東京駅頭進出、これが
営業の方式といいまするか、
やり方が、俗に
関西弁で言いますると、えげつないと言いまするか、なかなか
営業ぶりがえげつない。たとえて言いますると、
資本力にものを言わせて、
問屋筋に非常に出血的
安値の
商品の
提供を強要する。とうていその
問屋が引き合わぬような値段であるが、
百貨店という魅力に圧迫されて、その
資本力に威圧されて、そして出血出品の強要に応ずる。普通の
小売店の販売価格、これとはずつとかけ離れた安い価格で、いわゆる廉売戦がそこに展開される。
一つの
百貨店がそうい
つたような波瀾の端緒をつくりますと、あとの
百貨店が対抗的にやはりそうい
つたような手段をとります。そこで
百貨店間の猛烈な攻防戦が展開するわけでありまして、
百貨店間の攻防戦、競争が、結局全面的に一般の小売
業者にその余波がしわ寄せして来る。
売上げが厖大な数字で毎月計上される。それだけの金額は
東京都内の販売
業者のどこかにそのしわが寄
つて来る。そのしわが
百貨店同士に寄らずして、結局一般の小売
業者の方へしわが寄
つて来る。小売
業者としては大
資本力というこん棒でたたきのめされたような結果に陥るという今の
現状なんでありまして、ことに
大丸は夜間常業をする。午後八時まで
営業をしておる。従来の
百貨店は、夜間常業しておらぬ。大体五時半から六時ごろまででしま
つておる。夜間の
小売店の
営業というものが、いわば
百貨店の
一つの落ちこぼれでありまして、
百貨店が済んでから一般
小売店にや
つて来る。そこで息を吹き返して、若干そこに商いができてお
つた。その最後の落ちこぼれの夜間
営業さえも
大丸がやる。何でも向うの主張としましては、これは鉄道
関係でやれという命令なんだ。国鉄がああい
つたような不当横暴な会館をつく
つて、しかもそれが一商社に賃貸させられる。それが国鉄の威をかりて夜間
営業をして、全都の小売
業者をこれによ
つてますます苦境に追い込むとい
つたようなことは、あまり今の
資本主義というものが
行き過ぎであるというようなことの
一つの生きた証拠にもなるわけでありますが、こういうような情勢によ
つて中小企業というものがますます落ち込んで行く。これを政府が傍観をしておられたということじやいかぬ。首くくりの足をひつぱるようなことではいかぬ。やはり
一つの
行き過ぎ、こういうことはどうしても国の力によ
つてこれを是正してもらいたい。こういうことから
小売業界の方で、
百貨店法を制定をしていただき、そしてこれ以上の
小売業界に対する圧迫、刺激を除去したい、こういうことを考えて、先般来それぞれの筋に向
つて運動を開始しておるようなわけであります。最近
公正取引委員会の方が、独禁法に準拠して
百貨店業者を特殊指定にして、そしてこのいろいろの常業上の弊害を
規制する、先ほど
問屋の方から話がありましたように、現在いろいろ弊毒害にな
つておりまするところの手伝い
店員の問題あるいは
不当返品の問題、またはおとり広告によるところの廉売政策、こうい
つたような
営業上の弊害は、順次この公取が特殊指定によ
つてこれを
規制して行く、こういうことが
発表されております。これもたいへんけつこうなことでありますが、しかし公取のそうい
つた一つの
規制は、そういう
営業面だけでありまして、先ほど申しまするところの根本的問題である
百貨店の新設であるとか、増設であるとか、あるいは
営業時間の問題あるいは休日の問題、支店、分店の設置の問題、または出張販売の問題、こういう基本的な問題は、公取の特殊指定ではこれはもうとうていできないところでありまして、そこでこういう基本的なことを解決する
一つの
立法措置として、私
どもは
百貨店法の制定を希望しておるような次第であります。終
戦前に、御
承知のように
百貨店法がありました。この
百貨店法ができましたのは、
昭和の初期以来非常に一般経済情勢が悪化しまして、だんだん不況に沈淪する。そうい
つたことが続きまするうちに、
昭和六年ごろから、この
百貨店の圧迫に耐えかねて、当時小売
業者が、ぜひ
百貨店法を制定願いたい。こういう運動を起したわけであります。その当時一般小売
業者のうちの有志家は、この
百貨店法制定運動のために巨額の私財を使いまして、非常に犠牲を払
つた。こういうことを私
ども聞いておりまするが、約七年間ほどこの
百貨店法の立法運動をいたしました結果、ようやく
昭和十二年の八月十四日に、この
百貨店法が制定発令されたわけであります。しかし
昭和十二年以後は、支那事変の発端以後でありまして、
百貨店法がなくても、
世の中が統制にな
つて順順に物がなくな
つて行
つたのでありますからして、これは自然あ
つてもなくても一般の小売
業者というものの
立場が非常に変化した経過にな
つております。しかし
百貨店法の発令によりまして――実施されたのは
昭和十二年十月一日からですが、新設とか増設とかい
つたものが全面的にとま
つた。この
百貨店法は、小売
業者が非常に希望して、小売
業者の
立場を擁護するために考えられたのが発端でありまするが、しかしでき上
つた百貨店法によ
つて、だれが一番利益を得たかというと、既存の
百貨店であります。既存の
百貨店は、これによ
つて非常に
営業成績が向上する
一つの素地をつく
つた。といいまするのは、その当時
百貨店間の競争が非常に激甚でありまして、あるいは無料送迎の自動車をふんだんに使用したとか、無
制限に遠距離を無賃配送したとか、こういう店の大きな負担が、そうい
つた法律の
規制によ
つて全面的にとま
つた。
百貨店同士の不当競争というものがなく
なつたということによ
つて、既存の
百貨店は、この
百貨店法によ
つて非常な好影響を受けております。小売
業者の犠牲によ
つてできた
法律によ
つて、その対象たる
百貨店が、逆に大きな利益を享受したというような、まことにおもしろい経過にな
つておるのであります。しかし何としましても、それによ
つて新設、増設、その他の不当行為がとま
つたということについては、小売
業者側もまた大いにこれで安心をしてお
つたわけでありまして、これは非常に時宜を得た処置だと考えておりましたが、結局、この
法律も、終戦後いろいろ角度から撤廃になりまして、現在では野放しにな
つておるわけであります。結局、この野放しにな
つておるということが、先ほど申しましたように、最近のいろいろな
百貨店の進出を招来したということにな
つたのでありまして、これはやはりぜひもとに返して行く方が、全面的に
中小企業者の常業を安定せしめる大きな原因である、こう実は考えておるようなわけであります。
なお、この機会にあわせて申し上げたいことは、
百貨店はそういうことによ
つて規制をされまするが、しかし一般の小売
業者の中にも、
相当不当廉売をするものもあります。あるいはおとり政策によるところの誇大広告をして消費者をつる、こうい
つたようなものもあります。そこで先ほど
問屋代表からもお話があ
つたのでありまするが、工
業者に対しては、
中小企業安定法等によ
つて、いろいろその保護法が設定されておる。商
業者は、
中小企業者に対しては、
中小企業等協同組合法がありまするが、これが、まあ内部の統制力というものが非常に今無力でありまして、その点にどうも遺憾の点があります。やはりこうい
つたような、小売
業者が多過ぎて、そしてその一部の不当
業者が内部を撹乱するというようなときには、自主的に組合の力によ
つてそれを押えて行くということの権限をある程度組合に与えるということがたいへん妥当である、こう考えております。全面的に統制経済に復帰というのではありませんが、やはりその情勢に相応じて、そこで適当に政府としても考えていただかなければならぬ。立法府としても考えていただかなければならぬ。そこで
百貨店に対する問題は、
百貨店法の制定によ
つてこれが処置をし、また小売業自体の内部で、不当撹乱者に対しては組合力を強化してこれに対処して行く。現在の組合法を、これを改正強化していただくのか、あるいは新たに特殊な
業者を指定して、実情に即した
一つの
商業安定法というものを御立法願うのか、その辺は
法律の立法技術でありますから適当にお考え願
つて、要するに、経済は生きものでありまするからして、すみやかにこれらに対して、立法府において御対処あらんことを切に希望する次第であります。
またあとで御
質問に答えることにしまして、一応以上をも
つて終ります。