運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-06-03 第19回国会 衆議院 通商産業委員会化学工業振興に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年六月三日(木曜日)     午前十時五十三分開議  出席小委員    小委員長 山手 滿男君       小川 平二君    小平 久雄君       始関 伊平君    首藤 新八君       中村 幸八君    笹本 一雄君       齋木 重一君    加藤 鐐造君  小委員外出席者         議     員 田中 龍夫君         議     員 長谷川四郎君         議     員 加藤 清二君         議     員 永井勝次郎君         通商産業事務官         (繊維局絹化繊         課長)     岡嶋 楢文君         通商産業技官         (軽工業局有機         化学課長)   入江  明君         参  考  人         (日本化学繊維         協会専務)   足立 修三君         参  考  人         (三菱石油株式         会社研究所長) 山本 晴次君         参  考  人         (東海硫安工業         株式会社社長) 織田 研一君         参  考  人         (発酵協会会         長)      黒野 勘六君         参  考  人         (プラスチツク         ス協会事務局         長)      折美  儔君         参  考  人         (三井化学工業         株式会社顧問) 二階堂行徳君         専  門  員 谷崎  明君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  化学工業振興に関する件     ―――――――――――――
  2. 山手滿男

    山手委員長 これより会議を開きます。  化学工業振興に関する件について調査を進めます。本日は特に参考人各位より化学工業に関する諸問題につきまして、御意見を聴取することといたしました。  この際参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本小委員会は、現下の化学工業重要性にかんがみ、特に通産委員会に設置せられたものでありまして、過日の衆議院本会議においても、有機合成化学工業振興に関する決議案全会一致をもつて決定されておるのであります。かかるときにおきまして、参考人各位には御多用中を特に御出席くださいましたことに対し、厚く御礼を申し上げます。何とぞ十分隔意ない御意見を御開陳くださいますよう特にお願いを申し上げます。なお念のために一言申し上げておきますが、御発言の時間は、お一人十五分内外くらいにお願いをいたしたいと思います。  それではお手元に差上げてありまする参考人各位の名簿の順に御発言を願うことといたしまして、まず第一に足立修三君よりお願いをいたします。足立君。
  3. 足立修三

    足立参考人 私足立でございます。合成繊維並びにここに書いてございませんが、醋酸繊維のことにつきまして申し上げたいと思います。  合成繊維は、戦後政府並びに業界の育成並びに個々の絶大な努力によりまして、終戦後きわめて迅速に発展をして参つたわけでございます。ただいまの状況では、世界合成繊維の約五%程度のものを日本がつくれるようになつたわけでございます。現在合成繊維日本でやつておりますが、合成繊維と申しましてもいろいろ種類があるのでございまして、日本ではただいま御承知ナイロンビニロン並びに塩化ビニリデン、この三者が工業化されて参つたわけでございます。昨年の生産は、約千五百万ポンドくらいになりましたが、ようやく合成繊維需要者方面から認識を得るようになつたわけであります。今日ここまで合成繊維を持つて参ることができましたのも、政府方面から、あるいは税制問題では法人税の軽減であるとか、あるいは育成途上におきます海外よりの圧力による面では関税の設置、あるいは電力の割当、あるいは資金面というようなことでいろいろ援助を得たわけでございます。しかしまだ日本の現在置かれております繊維の事情から見ますならば、もつともつとこの合成繊維を今後伸ばさなければならないわけでございますので、政府筋におきましても、引続きこれが育成に絶大な協力をしていただいているわけでございます。合成繊維は、今後、どんなふうに持つてつたらいいのかというような問題があるわけでありますが、これはやはりただたくさんつくつてもいけないわけでございまして、それぞれやはり向きを考え、またその大体の需要というような問題も考えてみなければならないわけでございますが、ナイロンにつきましては、一応ナイロンでなければならないものもありますし、またナイロンでなくても、ほかのものでもいいというものもあるわけでございますが、一番強い面は、ナイロンでなければならないというところは、これは絶対にナイロン必要性をわれわれは認めるわけであります。そこで現在ナイロンは、原料的な方の見方からどんなに考えられるかというと、原料石炭酸でございますが、現在の日本石炭酸の実情から見ますならば、大体日産四十トンくらいの生産が妥当な考え方じやないか。もちろん今後アセナレンのレツペ反応であるとか、あるいはペトロ・ケミカルというような問題が原料面十分道を開いてくれるならば、あるいはまたその上に乗つて伸びることができるのじやないか。  それからビニロンにつきましては、従来一応ビニロンを、万能繊維として、あるいは羊毛代用に、あるいは綿の代用にというようなことで考えて参つているのでございますが、ビニロンにつきましては、いろいろまだ問題もあるわけでございます。しかし生産は昨今月百万くらいの生産をやつておりますが、今後のビニロンの進み方といたしましては、原料ポバールまではできるだけ集約的に生産して、ポバールから糸にする場合には、それぞれ用途に合致したようなビニロン繊維をつくる必要がある。と申しますのは、たとえばビニロンを非常に水に強くすると染めの性質が悪くなる。しかし工業的に使うならば、染めばどうであろうが、非常に水に強い用途が必要である。また衣料に使う場合には、強さはまあまあというところでも、十分きれいな色が染まり、衣料生活に趣味を与えるというようなことも必要になるわけでございますので、今後の考え方につきましては、できるだけポバール生産というようなものを集約的にやつて、それを利用する繊維につくる方の段階におきましては、向き向きのものに考えて行くというような方向をとることが必要じやないか。  それからサランでございますが、サランは先ほど申しました塩化ビニリデンからつくつた商品名でございます。塩化ビニリデンと申した方がここでは適当かと思いますが、このサランにつきましては、ナイロンビニロンに比べますと、この二つ天然繊維の一般のものより軽いのに対しまして、塩化ビニリデン繊維天然繊維のものよりも非常に重いわけであります。比重的な見方をいたしますと、従来の人絹であるとかあるいは綿というものの比重が一・五くらいのに比べまして一・七以上あるわけでございます。それからこの繊維は重い関係衣料にはあまり向かない。また水を吸つてくれませんので、こういう角度からも衣料には向かない、一方薬品には非常に強い性質があります。従つてこれらのものは今後工業用繊維あるいは漁網繊維として非常に道が多く開かれて行くのではないかというふうに考えられます。お手元資料を差上げてありますので、私きわめて概要を申し上げますが、現在つくられておりますビニロンあるいはナイロンビニリデンというものがどんな方面に現在どの程度の割合で使われておりますかということは、お手元に差上げてあります表にもパーセンテージで書いてございます。原料ではナイロンは一番用途の多いのは漁網でありまして、約四三%を漁網にいたしておるわけであります。ナイロン短繊維につきましてはナイロンプロパーよりもむしろ他の繊維を混ぜた形で使つておる。これは先ほど申し上げましたようにナイロン自体がすべてに向く繊維でありませんので、他の繊維の長所とからみ合して利用して行こうというわけでございます。ビニロンにつきましては大体衣料用に約四〇%が現在使われております。ビニリデンにつきましてはほとんど濾過布であるとか、漁網であるとか、ことに漁網には現在の生産の半分以上を使つております。なお御参考までに申し上げますと、現在ナイロン東洋レーヨン一社が生産しておりますが、近く日本レーヨンにおいてもこれをやる計画を持つておるようであります。ビニロンにつきましても現在現実に生産しておりますのは倉敷レーヨン、鐘紡、大日本紡、なお三菱レーヨンにおきましても従来短繊維をやつておりましたが、今度特殊な紡糸法によりまして、普通のビニロンをつくるような計画を持つておるようでございます、ビニリデンにつきましては旭化成並び旭化成の傍系の会社であります旭ダウ呉羽化学、この二社が現在つくつておるわけであります。  あとのいろいろな問題につきましてはお手元資料でごらんいただくことにいたしまして、もう一つアセテートの問題を申し上げます。アせテートは醋酸繊維と申すわけでございますが、これも政府の方から育成対策につきましていろいろ今後の指示をいただいておりますし、また資源調査会あたりからこの事業の育成方政府の方に勧告をしたものもありますので、お手元に差上げました小冊子はこれはそれを抜萃いたしまして手ごろに集めたものでございますが、これを読んでいただきますと大体御理解いただけると思います。なおアセテート合成繊維と同じ時代に工業的には発足したわけでございますが、日本では戦前すでにこれを相当研究的にやつてはおつたわけでございます。しかし工業的になりましたのは戦後でございます。現在の生産世界的に見ますと、アセテートの方は合成繊維よりもはるかに多くて約四億近い生産があるわけであります。たまたま日本ビスコース系統原料であるとか、スフにつきましては、御承知のように戦前においては世界のナンバー・ワンの生産をしたこともあつたのでございますが、戦後におきまして人絹生産が落ちたためにトータルの生産はまだ戦前に達しておりませんけれども、ビスコースについては戦前生産を上まわつておる。こういつた従来の再製された化学繊維だけでは今後輸出面でも非常に問題が起るわけでございまして、この醋酸繊維につきましては、他の合成繊維が綿や羊毛輸入にかえてできるだけ国内資源から国内衣料を供給し、進んでは輸出をするというような考え方と同じようにアセテートにつきましても言えるわけでございます。ことにアセテートにつきましては、世界至るところの市場にすでに世界商品として交易されておりますので、日本もこの繊維国内的に安くできるという見通しがあるならば、すみやかにつくることによつて大いに従来のビスコースと相ともども、世界市場に飛躍できるのではないか、今日生産数量につきましてはお手元資料のように非常に少いのでございますが、すでに昨年度あたり十億円以上の輸出ができたということは、やはり世界商品として相当高く評価していいものではないかという考え方ができると思います。今日合成繊維につきましては、醋酸繊維に比べまして相当工業的にも進んでおりますけれども、醋酸繊維につきましては、今後これから量産に入ろうという線でございますので、お手元資料にもありますが、生産規模というものが適正な規模にならなければコストが非常に高いわけでございます。そこでこの小冊子にもありますけれども、数においては、少くとも日産二十トン、それからフレークについては日産三十トンくらいのものをつくる必要がある。そこで一応の目途資源調査会あたりはさしあたり年間八千万ポンド以上のものをつくるようにしたらどうかというような考え方であり、通産省としましては当初の計画は、五千万ポンドというような考え方があるようでございます。しかしいずれにいたしましても、トン数にいたしますと、月産六十トンぐらいになるので、この資料にもありますように、フレークについては大体日産三十トンくらいの目途でつくるということは、当初申し上げましたように輸出に飛躍する面においても、コスト面で競争しなければならないので、そういうような構想で今後育成する必要があるのではないかと考えるわけでございます。時間も参りましたので、あと御質問がございましたらお答えすることにいたします。
  4. 山手滿男

    山手委員長 次に石油化学関係について、山本晴次君にお願いいたします。
  5. 山本晴次

    山本参考人 それでは簡単に私の考えを申し上げてみたいと存じます。まず石油化学製品重要性それから石炭石油の比較、それから石油化学工業をやる場合に二つの形がある。それから石油化学工業をやつた場合に石油原料としての利用はどうかという項目をあげてございます。これによりまして、非常に簡単に申し上げます。石油化学繊維重要性というものは、今合成繊維の方からいろいろお話がございましたが、大体この例にもありますように、アメリカ有機合成二つございまして、従来石炭系から出ておりました芳香族と申しますか、ベンゾールというようなものから行きますものと、もう一つは、最近のプラスチツク原料に非常に使われておりますオレフインと申しますか、脂肪族から行きますものと二つの大きな行き方がございます。その場合にアメリカの例あるいは英国の例を引きましても、芳香族の方で四〇%くらいが石炭から石油にかわつております。それから脂肪族の方はほとんど石油に依存しております。もちろん脂肪族の場合はアセチレン水力電気等関係がございまして、日本の場合と一概に英国アメリカの場合とは比較できません。そういう意味ではお話のように安い原料有機合成で得たい、そういう場合に石炭石油を比較しまして、どうしても石油の方は初めから水素が多量にくつついております非常に有利な原料であります。それが今までは燃料として非常に発達しておりました。この場合は、なぜそんなにいい原料が今まで使われなかつたか、石油石炭から出たベンゾールとかトルニンのように簡単に原料がわけられない、それが戦時中の航空ガソリンとか合成ゴム要求にかられまして、米国あたりでは非常に援助いたしまして、石油から精密分離による有機合成原料が要請され、純粋の分離に成功したので、非常に発達いたしました。それからこれにも書いてありますように、石炭からベンゾールとか、そういうものをとる、化学原料として、あるいは合成繊維原料としてできます場合に、どうしても製鉄業の大きな副産物になりますので、そこに制約がございます。またもう一つは、アセチレンあるいはエチルアルコールでございますが、合成繊維原料、こういうものも醗酵工業農産物関係あるいは水力電気によるある制限を受けまして、相当の量の原料要求する場合に、そこにフレキシビリテイがございません。石油の場合は自由に原料が得られます。そういう点が石油化学重要性というので、戦後各国が、あの石炭国であつた英国が率先してそういう原料意味石油を取上げております。フランスイタリア、全部同じ傾向になつております。それで、理論的にはどうしても石油原料を得なければならないとわれわれも感じております。そうすると、石油化学工業にどういう形があるか、現在の日本石油精製業とどういう関係があるかと申しますと、先ほど申し上げましたように、ベンゾールトリオールからナイロンのような合成繊維に行く場合、あるいは醋酸繊維原料になるアセトン醋酸をつくれ、その他のプラスチツク工業原料になるエナレンをつくれという三つの希望があるわけです。それに対して、もちろん石油原料そのもの合成化学会社でお使いになる場合はいいのでありますが、先ほど申し上げましたように石油を変性したり分解して、合成化学繊維にいたします場合に、希望のものだけが非常に多量にできればいいのでありますが、なかなかそうはできないのであります。いろいろな副産物が派生いたしますので、数字的には書けるのでありますが、実際の工業といたしましては、なるべく単純な原料から自分の目的の原料を得たいわけでございます。そういう点からいいまして、石油ガソリンから重油までございますが、今まで先進国でも成功しておりますやり方日本の場合とは、それから派生するものの向け先といいますか、消費先でございますか、その点をよほどよく研究しませんと、どういう段階でやるということは、なかなか問題であると思います。私は石油精製業でございますから、その方面から申しますと、石油は大体動力源として復活いたしまして、なおガソリンのオクタン価といいますか、品質の改良のために、かなり装置が進んで参りまして、現在この表にあげられておりますように、ベンゾールとかトルエンがとれる装置が、去年の暮に二つ動いております。それから今年になりまして、約六千バーレルというものが、ベンゾールトルエンをとればとれると思います。現在のところは自動車あるいは航空機、そういう方面燃料にそれを使つております。ただ合成繊維の方の要求があれば、さらにベンゾールとかトリオールとかあるいはキシレンのような、化学及び合成繊維原料になるものをとり得るわけでございます。それをつくります場合に、いろいろな副産物ガスが出ます。あるいは他の重油ガソリンが出ます。そういう場合に重油ガソリンガスというものが現在の日本需要でバランスしている意味において、もしベンゾールトルエン系統が、現在の石炭製鉄関係から出ているものよりもつと数量も増し、もつとコストが下れば合成繊維関係でいいということであれば、一番早くできるものじやないかと思われます。但し今申し上げましたのも、たとえば石油をかりに一千万トンほど使う場合に、有機合成の力の原料としては、その二%もあれば十分であると言われておりますが、その二%は有機合成原料の形における二%でありますから、やはり単に二%だけを持つて来て、簡単にそれが全部有機合成になるとは言えないわけでございます。その場合に副産物相当出ます。たとえばエチレンを十トンつくる場合には、副産物として硫安が――どちらが生産物かわかりませんが、硫安が約四十トンほどできます。後ほど織田さんからお話があると思いますが、そういう意味石油化学希望と申しますのは、何がどれだけ必要か、これが日本の他の産業とどれだけ関係があるか――そういう計画性によつて石油精製業の方に相当副産物が参ります。そこで重油原料からは九〇の燃料が出て、あとの一〇のうち二つ有機化学製品になると思います。そういう性質のものでありまして、この二つの形、今申しましたベンゾールトルエン芳香族でつくるのは、日本現状では一番やりいい形でございます。  なお合成繊維として一番要求されますのは、先ほどの醋酸原料であるアセトン、あるいは合成樹脂の方で要求されますエチレン、そういうものになりますと、現在の日本石油精製業からそれに一番向くというよりも、プロパンとか液化ガスといつておりますが、非常に単純なものであります。そういう原料をその装置にかけますと、プロピレンとかアセトンエチレン原料が非常にたやすく得られるわけでございます。そういう場合に、たとえば一方に航空ガソリンをやりまして、そちらが大きく費用を負担する、そういう場合に、そこに出て来ますエチレンを含んでいるガス代が非常に安くなります。そして相当複雑な工程を経て分離いたしましても、それが十分成り立つているのがアメリカ現状であります。  これはちよつと余談になりますが、アメリカでは原料からガソリンが六〇%ほど消費されております。日本の場合は原油を入れまして、最近ガソリンとしては二〇%ぐらいしか需要がございません。せいぜい二〇%で、ほとんど重油の形になつております。ガソリンができました場合に、副産物としてエチレンプロピレンというものが、原料として相当安く手に入るわけでございます。その点われわれ石油をやつております者として、今の日本石油状態から、急に工チレンプロピレン原料から持つて行くことは、今すぐにはたいへんむずかしいと思います。その場合にみな先輩が言つておることでありますが、脂肪族関係エチレンとかプロピレンに対しましては、まず中間アルコールの形で、原油輸入するのも同じことだからそれを輸入する。そうして醋酸にして有機合成関係の方に、十分ぺイするものを出す。それである時期に製油業あるいはそういう方面技術がもつと進んで、その値段輸入アルコール値段とほとんどペイする時期が、もう四、五年で来ると思われますが、そういう時期になつて初めて日本で一本でやる。それまでは中間体輸入してやつて行く、われわれ従来航空ガソリンあるいは航空潤滑油、そういうものを戦時中いろいろやりましたのですが、その経験から見ましても、そういう道が一番安全なやり方ではないかと私は技術屋個人としての意見を持つております。たいへん簡単なつじつまの合わないことを申し上げましたが、以上であります。
  6. 山手滿男

    山手委員長 次に織田研一君。
  7. 織田研一

    織田参考人 石油化学工業について意見を述べろ、こういうことでございますが、わが国におきましては、現在石油化学工業というものがほとんど成り立つておりません。従いましてこの石油化学というものの外国における状態がどういう状態であるか、こういうことからまずお話をして行きたいと思います。  石油化学というのは、大体従来原油を持つて参りまして、これを蒸溜してガソリン、軽油、重油、こういうようなわけ方をしまして、従来は石油そのもの燃料として使つてつたわけなんであります。ところが一九三〇年代に至りまして、石油精製技術が非常に進歩して参りまして、石油原油の中に含んでおりまするいろいろの成分をこまかにわけることができて参つたわけであります。特に熱を加えあるいは触媒を加えまして、原油熱分解あるいは接触分解によりまして、ガソリン溜分をふやす、こういうふうな方法が逐次発達して参りました。そうなつて参りますると、その際に排ガスが出て参るのであります。ところがその排ガスも当初におきましてはこれを石油工場燃料として使つてつたのでありまするが、逐次その燃料として使つておりましたこの排ガス化学工業原料にする、こういうようなことが進歩して参りまして、当初におきましてはこれを硫安工業水素源として使う、こういうようなことができて参つたのであります。特に第二次世界戦争中におきましては、航空ガソリン関係あるいは合成ゴム関係等におきまして研究が進められまして、従来廃棄されておりましたただいま申し上げましたような石油排ガスあるいは天然ガス、こういうものを利用して従来は石炭乾溜の際におきまするタールを主原料としてつくられておりました有機化学工業製品が逐次石油によつて置きかえられる、こういう段階なつたわけであります。それで石油化学現状は、現在はアメリカが大体主でありまするが、英国、カナダ、フランスイタリアオランダ等においてはこれが行われておるのであります。それで有機化学工業製品世界における年間生産額が大体一千万トンでありますが、現在におきましては、約その半分の五〇%が石油原料によつてつくられておる、またつくられておりまする製品も非常に多岐にわたりまして、先ほども話がありましたように、合成繊維関係におきましてナイロンあるいはサラン等原料合成ゴム合成樹脂、溶剤、特にアルコールのごときはアメリカにおいては年間百五、五十万トンのものが現在つくられておるわけであります。  それからそのほかホルマリン、肥料硫安におきましても、アメリカにおきましては大体アメリカ生産される硫安の半分というものは石油排ガス並びに天然ガス原料としてつくられておるわけであります。そのほか爆薬原料、あるいは染料原料でありまするベンゾール、トロール、カーボンブラツク、こういうようなものが主要でありますが、さらにこまかにわけて参りますと約五千種以上のものが石油原料にしまして現在はつくられておるという状況になつておるわけであります。こういうふうな状態なつておるのでありますが、特にこのお話を申し上げれば世界の他の国においてかくも発達しておる工業が、日本においてはまだ一つもできておらないということは、工業の確立ということがいかに国家として重要であるかということは十分明らかだろうと私は思うのであります。次にこの石油化学を確立するには、いろいろ問題があるわけなのであります。先ほど山本参考人から申しましたように、総合性、科学性、計画性、こういう問題もありますが、なおまず第一に問題になるのは、日本におきましては石油資源というものがないじやないか、そういうような工業日本に確立できるか、こういうふうな問題があると思うのであります。これは現在世界石油の供給事情から申しますと、大体中東、近東の原油が供給されておるのでありまして、石油の最大生産国であるアメリカにおきましても、かつて国内需要が増大したために輸入をしておつた、こういう現状でありますし、また英国あるいはフランス、ドイツ、ヨーロツパにおきましては、もちろん石油資源というものは日本と同様にほとんどないのであります。ここにおきましても石油化学工業というものが急速に伸びつつある、こういうことはやはり中東、近東の地位が、ヨーロツパあるいはアメリカと比較しましても、日本の置かれておる地位は決して劣つておらない、こういう点から見ましても、日本におきまして石油化学原料的に見てもこれは必ず起るべきものである、こういうふうに考えられるわけであります。  それからその次に技術の問題であります。これは非常にいつも話題になる問題でありますが、石油化学技術につきましても、この中のあるもの、たとえばアンモニアをつくるとか、あるいはベンゾールをつくる、こういうふうな段階まではそう困難はないと私は思うのでありますが、さらにこれがアセトンであるとか、あるいは有機化学のこまかい洗剤であるとかいうふうなものになつて参りますと、あるいはその重要なものでありますが、石油化学によつて現在はグリセリンもアメリカにおいてはほとんど全部製造されておるのであります。そういうふうな技術になりますと、これはタイミングの問題があるのであります。もちろんわれわれ日本技術というものを尊重はするのでありますが、何しろ戦争中の十年間のギヤツプ、それと日本の研究組織の貧弱、こういう問題でなかなかヨーロツパあるいはアメリカ技術に追いつくのは時間がかかると思いますので、この点については十分研究がいるんじやないか、こういうふうに思う次第であります。  なお、総合性、計画性ということにつきましては、問題はやはり日本需要のマーケツトの問題なんです。最近の化学工業石油化学も、もちろんその範疇にあるのでありますが、この工場の単位が次第に大きくなつて、工場規模によつて生産費が非常に影響されるようになつて参つた日本の現在の段階におきまする石油化学製品需要という面を考えると、そこにも大きな問題があるのじやないか、こういうふうにも考えます。  それで、われわれが考えている考え方としましては、まずわれわれは入りやすい、たとえば今の石油化学を確立する場合でも、当初におきましては水素をつくることは、比較的簡単なことでありまして、排ガスを利用しましてまず水素をつくつて、アンモニアにしてしまう。そうして逐次技術の習練を積んで、その後にこまかい精密なる石油化学に入つて行く、こういうふうな行き方も必要じやないか、こういうふうにも考える次第であります。  簡単でございますが、時間がございませんので、この程度で終ります。
  8. 山手滿男

    山手委員長 次に合成ゴム関係について、黒野勘六君。
  9. 黒野勘六

    ○黒野参考人 時間がありませんから簡単に申し上げます。つきましては、お手元に「藷からゴム」という小さいパンフレツトが差上げてありますが、この中に大体要点は書いてあるのでございます。書いてあるようなことはなるべく申し上げないで、政治家の方がお聞きになるのですから、政治、経済の方面関係の多い部分をかいつまんで御説明申し上げたいと思うのであります。  まず第一に、わが国で合成ゴムの製造を始めることが必要であるかないかということでありますが、大体わが国では合成ゴムというものはまだあまり使つておりません。ほとんど大部分がマレー南洋等から輸入しまする天然ゴムを使つておりますので、あまり使用についての研究もないのでありますが、世界的の趨勢から見ますると、ゴムの需要は非常にふえつつあります一方において、天然ゴムの生産というものがこれに追つつかないことは、識者がみな認めておるところでありまして、たとい合成ゴムを製造して行きましても、天然ゴムの輸入には大してさしつかえがない。将来のことを見越せば、ぜひ今のうちからスタートして、合成ゴムをつくつておかなければいかぬということになつておるのであります。また合成ゴムは、一方において天然ゴムと違つた方面の非常に有利な性質を持つておりまして、たとえば航空機関係に使いますると、天然ゴムは油に溶けるのでありますが、合成ゴムは油に溶けないような性質を持つておるとか、種々なる面において特長がありますので、現在の天然ゴムの需要以外の方面にも、合成ゴム相当な用述が見出されておるのであります。こういう面から考えましても、ぜひとも早くこれに着手する必要がある。現にアメリカではせんだつての大戦の前からそういう点に着眼しまして非常な発達をいたしました。これには政府みずから工場の経営に当る等各種の政治的施策が行われておるというような点も皆さん御存じの通りのことと思います。  それから第二は、国際収支の関係でありますが、近ごろ一番問題になつておりますのは、天然ゴムの輸入でありまして、もし合成ゴムをわが国で製造するとしまして、現在わが国で毎年使用する天然ゴムは約十万トン近くあります。もちろん年によつて違いますが、三分の一の約三万トンの合成ゴムを製造するという計画にしましても、最小限毎年一千万ドルの外貨をセーヴすることができるのであります。これはゴムの現在の相場によるのでありまして、このパンフレツトを書いた当時は昭和二十七年一月でございましたが、その当時は輸入します天然ゴムが高かつたものですから、三千万ドルくらいの外貨を毎年節約し得るような状態でありました。最近は非常に天然ゴムが安くなつておりますが、それでも一千万ドルくらいの外貨をセーヴすることができるのであります。それからこれはもちろん原料としまして国産のアルコールを使うという場合でございます。この国産のアルコールは、御承知の通りに大戦前アルコールの大増産をやりまして、わが国の石油輸入が杜絶してしまうのをおそれまして、ガソリンに二割の無水アルコールを入れてつくるという世界各国でやつておりました方法をやつておりました。そこで農林省、商工省、陸軍、海軍全部の協力でこの施策が行われて大増産をやりまして、約四十万トンのアルコールの供給をいたしました。そして石油の不足を防いでいたのであります。この点から考えますと、だれでも思いつくことで、アルコールの増産、すなわちゴムの原料の供給は純国産でやり得るのでありまして、その設備もまだ大分残つております。国内で二十万トンばかり生産しておりましたのが、現在の需要は四、五万トンくらいのもので、十万トン以上のアルコールをこの際つくる遊休設備の大部分は政府が持つております。民間とおそらく六対四くらいのものと思いますが、これを全部活用することができるので、設備費が一つもいらないという有利な点があるのであります。それからこのいもを原料としてアルコールをつくるということは、大戦前、九年ごろからしばしば私は企画院、それから当時の関係所管省の大臣に建白書を出してお勧めしたのでありますが、一時は反対する人も非常に多くて、そんな高いいもを使わないで台湾の砂糖を使つたらいいじやないか。台湾へ行つてアルコールをつくつたらいいじやないか。あるいは満州国の撫順に頁岩がある。頁岩をとつて、クラツキングしてアルコールをつくるとか、台湾の石油ガスからアルコールをとればいい。内地にアルコール工場をつくるのは愚である。植民地につくればいいじやないかといつて盛んな攻撃を受けましたが、ぜひこれは国産でやつておかなければいかぬ。満州や台湾がとられたらどうするか。ガソリンが一滴もなくて困る。せめて航空機だけでもアルコールで飛ばそうというくらいの考えでやつて来ている。いもが少しは高くついても、国産でこれをやつておくと、他日必ず役に立つということでこれに反対して来ました。はたして戦時中一番に台湾から来たアルコールのタンカーがやられました石油もみなそうでしたが、残つたのは内地のいもだけでありました。このいもは食糧とマツチしているからいかぬじやないかと言うのですが、私は食糧と関係があるからいいんだと言うんです。もし非常に食糧が欠乏して、国家が飢餓に瀕するというときには、この工業原種が食糧になつて行く。飢饉の場合、その助けはいもよりほかにないぞと言つた。これも事実が証明しました。終戦前後にこのアルコール原料のいもは皆さんに食われているのです。とにかく餓死者が出なかつたのは、このアルコールのために四億万貫のいもを増産していたからで、あのとき急にいもの増産をやれといつたつてできるものじやない。こういう面から単に外貨をセーブするというだけではなくて、われわれの食糧政策から考えても、こういう簡単な、日本特有のいもなどを研究して、工業原料に向けておくことは、一旦緩急があつた場合に非常に役に立つということが言えると思うのです。まに現実が証明しているのです。それから農業の方も、いもよりできないような悪い土地がずいぶんあるのです。開懇しても、山間部で水田にもならぬようなところでは、いもよりほかにはできない。悪い土地でもいもはできるのです。それから次男、三男の失業者はふえつつありますが、これを救済する面からも、いもの増産をやることは非常に必要なんです。それから合成ゴムを三万トンつくるのに、はたしてたくさんのいもがいるかということなんですが、そうたくさんはいらない。二億も増産すればいいんです。戦時中四億、五億の増産をやつた経験がありますから、二億ぐらいの増産は心配いらないのです。  それから合成ゴムをわが国でつくつておりますと――天然ゴムの輸入が一年でたいへんな値上りをしたり、値下りをする。それだからゴム業者は非常に不安定なために大きな損をしている。それを安定させるという点においても非常に重要だと思いのです。  ところがそんなようにいろいろな重要な点があるのになぜこの事業が起らないかということなんです。そこを私は特にお願い申し上げておきたい。二年前から石油原料を用いてゴムをつくるがよい、アルコール原料合成ゴムをつくればいいということになつていますが、およそ国にはその国の国情がある。アメリカ石油原料で何もかもつくつている。今承りますと、その製品は五十種に及んでいるという話であります。それだからといつて石油をほとんど持たないわが国で、肥料も合成繊維も何もかも石油原料が安いからアメリカの結果を持つて来てやろうといつたつて、なかなかできることじやない。現に石油化学はまだわが国に成り立つておらぬという参考人のお話でありましたが、これからぼつぼつ研究を進めて行かなければならぬ。しかもその需要面から見て、石油製品は多種多様であります。一つのものだけよけいつくることはできないんだということをさつき織田さんからおつしやいました。だから別にできる副産物と同時にこれの需要が起つて来ないと成り立たないということでありますと、これからぼつぼつ石油化学の研究を始めてアメリカに教わつてつても、何年後か、よほど前途ほど遠いことだろうと思います。もしこれをアルコール原料にしますれば、ただちに起り得る。来年からでもやり得る。そうすると来年からでも外貨を防ぎ得るということになる。アメリカから全部設備を持つて来ることになりますが、一年でたくさんである。設備費も大してかかりませんし、十年先の石油化学の発達を待つて石油原料でゴムをつくるよりもはるかに有利じやないかということと、アルコール原料でやる設備は、五年償却にしてあるから、もう償却しちやつております。そのときは石油原料の方がよければ、石油原料の設備を持つて来てもいいんです。しかも約半分は石油原料にしてもアルコール原料にしても同じ設備ですから、半分の設備は生きて行くわけです。  それから設備費の問題から考えましても、さつきの三万トンの合成ゴムをつくる設備費は、約二十六億円ほどかかるのでありますが、かりに石油原料にしますと、これよりほかに設備費が百億いります。現在とてもできることではないのであります。二十六億くらいの金でしたら、二、三の関係業者だけでも出し得るのです。この発起人になつている人を見ましても、今年一人で二十億くらいの増資をして、あるいは尿素の合成とかビニール会社をつくるとかいう計画をしている人があるのです。ですから資本的に見ても、アルコール原料でやればただちに興すことができると思います。それならやつたらいいじやないかというのですが、これはさつきも申し上げるように、政策的にお取上げくだすつて、政治的保護がないとできないのであります。これは要するに天然ゴムが非常に安いからであります。その天然ゴムと競争させて行くのには、いもの値段も安くしてやらなければならぬ。アルコールは専売で政府の事業としてやつておられるのですから、ここに二重価格というようなものもこしらえて保護してやらなければならぬ。かように各方面の政治的な保護がいるのでありますから、第一は政治的に皆様方の御援助によりまして、これは国家の重要なる産業であつて、これを援助して国策としてやらせなければいかぬという御援助をいただけるようになりますれば、たちどころにこの事業は興ることと思います。それならアメリカは昨年までアルコール原料合成ゴムをやつてつたのが、石油原料にかわりつつあるじやないか、こういうことをおつしやるのですが、これは歴史を見ましてもわかる。一番初めアメリカ合成ゴムをやりましたときには、確かに石油原料でやりました。ところが間もなく大戦が起りますと、高オクタン価のガソリンが必要なために、軍部の方から石油原料でやることに異議が出まして不可能になつた。そこで今度国産のアルコールを使用して合成ゴムをつくるようになつた。平和になつアルコールよりも石油の方が安くなつたので、再び石油でやつておるのであります。アルコール原料も決して捨てたわけではありません。その工場の六割は政府がいつでもやり得るようにそれをリザーヴしております。民間に払い下げて政府の命令によつてただちにアルコール原料でも合成ゴムをやらなければならぬ。要するにどつちでも安いものでやるという両天秤をかけておるのであつて、これはわが国も学ぶべきことです。一つ原料にあまりに固着しておりますと、なめられて原料が高くなる、そのときに牽制といつては悪いですけれども、他の原料でやり得るという実証を示すだけでも原料の騰貴を押えることができる。そういうような状態でありますから、私は決して石油化学面を否定するのではありません。このゴム事業においても両事業家は相提携してやるということが必要と思う。それにはまずここでスタートしやすいようにする。アメリカもそれがためには特許権なども非常に安く負けてくれるという、いわば有利な申込みがあるのでありますから、この際ぜひともスタートさせたいと思うのであります。また石油関係の方も御援助なさつて、まずアルコールの方からやらしておくということが非常に御有利だろうと思います。まず何からやるかというと石油合成品を初めは輸入するということになつてしまいますが、これも石油輸入できないような状態、いくさといつては悪いですが、そういう場合に立ち至つたときには、何も石油にたよらぬでも石炭資源によつてベンゾールをつくつて行けば、純国産で合成ゴムをつくることができます。少し高くつくだけの話です。こういうことをお話しますとますます長くなりますし、技術上のことになりますので、打切つておきますが、原料はそのときの経済状態によつてかえ得る、化学の真随はそこにある。石炭からでも石油からでもアルコールからでも何でもできるが、スタートしやすい、しかもただちに国家に貢献するというようなものから早く着手して、自分らの畑をとられるというような、そんなひがみ根性を起す必要はないと思う。ですから石油化学の発達はどこまでもお願いいたしますが、このアルコールから合成ゴムをつくるということはいかなる観点から見ても早急にやる方が国家のおためになると私は思います。特に御採用あらんことをお勧めする次第であります。
  10. 山手滿男

    山手委員長 次に折美儔君。
  11. 折美儔

    折美参考人 本日いろいろの方からお話がございますけれども、どうも私の役割が一番損なように思うのです。と申しますのはここにおいでになる方はプラスチツクスというものに対して、どれだけの予備知識を持つておいでになるか、その点ちよつと見当がつかないわけです。合成石油だとか合成繊維というと大体概念を持つておられますが、現に世界でつくられておりますプラスチツクの数はおよそ五十種類ございまして、日本でもおもなものは十五、六種類もある。それを説明するということになると、どうも時間もございませんし、おわかりにくいだろうと思うので、どういうお話をしていいかわかりませんのですけれども、本日サンプルを持つて来ておりますので説明しながらおまわしいたします。  合成樹脂という言葉が出ましたのは、御承知のようにベークライトという製品がございます。それが最初につくられましたときに、松やにに似たような製品が出ましたので、それで合成樹脂という言葉が出たわけですけれども、現在ではプラスチツクというものはそういう関係のものばかりでございませんので、われわれどもはプラスチツクスという言葉をもつて表現しております。プラスチツクスという言葉は可塑性のある物質ということですから、物の形につくられる物質、この灰皿にしてもそうなんですが、しかし材料は全然天然にない物質で、人間の知恵からしぼり出した新しい材料である、こういうことがプラスチツクスということになると思います。  それで日本現状を申し上げますと、大体昨二十八年度におきまして約八万四千トンくらい出ております。これはセルロイドももちろん入つております。セルロイドなんかもプラスチツクスの中に入つておるのですが、日本では別に考えておるようでございます。世界的に見ますとやはりセルロイドなんか入れております。ところが世界的に見ますと、アメリカでは昨年で約百二十万トン、ドイツで約二十三万トン、イギリスで二十万トンくらい、その次は日本で八万四千トンくらい出ております。その次がフランスイタリア、これはずつと程度が下つております。  よく言われるのですが、国民の文化の程度は砂糖の消費量でわかるということですが、最近はプラスチツクスの消費量が国民の生活水準を示す、こういうふうに言われております。そういうところからちよつと見てみますと、一番使用しておるのがアメリカで、国民一人当り七・五キロ使つております。日本は〇・八キロくらいしか使つておりません。約十分の一、生産量においてもそうですが、使用量においてもそうです。その次はスイスがやはり四キロくらい使つております。それからイギリス、ノールウエー、ドイツというのが約三キロ程度です。ずつと下りまして日本が十位くらいで〇・八キロくらい使つておるのでございます。そういうふうに日本プラスチツク工業はずいぶん進歩しております。お手元に差上げましたように、戦後急に伸びて来た工業でございます。戦後日本が経済的に回復するのには、要するに化学振興をはからねばならぬというふうなことがよく言われておりますけれども、その具体的な現われとして何があるかということになると、あまりないようで、幸いにして今回われわれは有機合成化学を発達しなければならぬというようなことをよく申しておりますが、この委員会で取上げていただいて、御援助願うということになりましたので、たいへん幸いだと思います。そういうふうに世界的に見ましても、これは日本としては非常に有利な地位にあると思います。  もう一つ日本としての特徴があるんです。それは表が出ておりますので、それをごらんくださればよくおわかりだと思いますけれども、アメリカプラスチツク工業は先ほど来お話のございますように、大体において石油を資源としたプラスチツク工業が発達しております。それに対比する特徴といたしましては、ドイツが第二番目を占めておりますが、これは大体において石炭、カーバイドというふうなものを主体にした行き方で発達して来ております。その中間を行くのが大体イギリスの行き方なのでございますが、日本としては現状はどうしても石炭とカーバイドを原料にしたものが主体になつております。お手元に差上げてございますように、一番生産量の多いユリア樹脂、尿素樹脂でございますが、これは原料がホルマリンと尿素でございますので、日本国内として十分まかない得る資源でございます、それから塩化ビニールもカーバイドを主体とした製品でございます。また醋酸ビニールもやはりカーバイドを主体としたものでございます。それからフエノール樹脂は先ほど申しましたように、べークライトという皆さん御承知のものでございます。そういうふうなものが日本としては発達して来ておるわけでございます。ですからそういう意味におきまして、やはりこの線を伸ばすことが原料的には非常に有利であるというふうなことになりますけれども、日本で足りないものは、やはり石油資源によるスチロール樹脂、あるいはエチレン樹脂というものがございますが、こういうものは現在国内では少しもできておりませんで、材料は全部輸入しておるものでございます。それでやはり合成樹脂の五箇年計画などにおきましても、この石油工業の関連性、あるいは鉱工業の関連性におきまして、どうしても日本で発達させなければならぬというふうなことが取上げられた問題だと思います。個々の商品につきましては、お手元に大体用途別といたしまして、医療関係、食糧関係、住居関係だとかいろいろの表がございます。これはたいへんラフなものでございますけれども、こういうふうにこれからの工業にとつてどうしても関係の深い商品でございますし、またこれから新しい材料といたしまして、世界的に伸びて行く材料でございますので、どうしてもこれを援助し、発達させなければいかぬというふうな種類の商品をここに羅列してございます。このうちでも特にプラスチツクとして大事なのは、合成繊維の材料になります醋酸ビニール、それから塩化ビニール樹脂は先ほど来お話がございましたように、やはりこれはプラステツクスの一種でございますので、原料的に見ましても、どうしてもこういうものを安く増産するということが大事な点になつて来るものだと思います。フエノール樹脂と申しますと、おわかりにくいのでございましようけれども、これはベークライトといえば、電話機とか、ラジオの真空管だとか、あるいは電燈のソケツトだとか、いろいろございまして、われわれの日常生活に欠くべからざる性質を持つております。それから尿素樹脂は手元にはサンプルを大して持つて来てございませんけれども、食器類だとかお椀くらい現在持つて来ております。これの一番大きな用途といたしましては、合板の接着剤に使われておるものが非常に多うございまして、こういうのが今後ますます発達して、合板なども輸出産業として非常に有望な事業でございますので、こういうものも欠くべからざる要素を持つております。  それから塩化ビニールでございますが、これも皆様のお目には、ふろしきだとか、レインコート、ハンドバツグあたりでお目に触れておると思いますけれども、これの工業用途というものは今後ますます発達すると思います。たとえば水道のパイプにいたしましても、そこに写真がございますけれども、いろいろな用途に使われて来ております。それから電線、これは日本の火災のパーセンテージをとつてみますと、漏電による火災が約一一%を占めておりますけれども、もしこれを塩化ビニール電線にすれば、漏電なんかによつて起る火災というものは少くなります。アメリカなどでも、塩化ビニール電線を使つてつくつた家屋などは保険料が安いというふうなことにもなつております。それからそこに稲の苗をサンプルに持つて来てございますけれども、これは農業用のフイルムとして使いまして育てた苗で、昨日とつたわけでございますけれども、こういうことによつて食糧の増産ということが明らかに記録が出ております。こういうふうな用途も、今後ますますわれわれの食糧増産については伸ばして行かなければならぬ性質のものでございますので、そういうふうな点、やはり根本的な原料をつくる工業というものも育成しなければならないものだと私どもは考えております。  最初に申しましたように、プラスチツクスの種類は非常に多うございますので、短時間内に説明もし切れませんので、この辺で説明を終りたいとは存じますけれども、どうぞひとつプラスチツク工業に対して十分御認識をくださいまして、また御希望でございますれば、いつでも出て参りまして、詳しく説明をいたしますから、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
  12. 山手滿男

  13. 二階堂行徳

    ○二階堂参考人 問題が非常に大きな上に、急なお話でありましたので、まとまつたお話ができないと思いますが、どうぞお許しを願います。  有機合成化学振興石炭資源の利用についてということだろうと思いましたので、そのお話を今から申し上げたいと思います。御承知のように有機化合物は芳香族脂肪族原料なつておりまして、その構成要素から言いますと、ちようど車の両輪のようなもので、両方ともに適度なバランスがなければなりません。芳香族と申しますのは、先ほどからお話もありましたが、石炭の高温工業従つて製鉄工業関係が非常に多いのであります。また現在日本では都市ガス工業とも関連があります。というのは、主としてベンゾールトリオール、いわゆる亀の甲と普通言つておりますが、既存工業でその回収率をよくするとか合理的にすれば、多少は増産ができるが、これをつくる原料石炭は割合良質の粘結炭でなければいけないのであります。もし増産の要があるなら、石油の方から行きますけれども、石炭を直接原料とする直接法も最近できたのであります。これは戦前からドイツでやつておりましたが、最近特にアメリカで、直接石炭から芳香族をたくさんつくる方法が完成しまして、その発表があつたのであります。でありますけれども、現状では製鉄を高炉製鉄法でやります関係がありまして、高炉を使用しない方式も将来近く出て来るだろうと予想されますが、そのときに直接石炭から芳香族をたくさんつくる方法が、物を言うときが出て来るだろうと思うのであります。芳香族のことにつきましてはこれくらいにいたします。  次に脂肪族でありますが、これは天然には石油、それから動植物油脂が直接原料となりますことは御承知の通りであります。わが国では石油は非常に少い、また油脂もはなはだ欠乏いたしておりまして、石油も油脂もともに相当輸入しておる現状でございます。従つてその輸入のために非常に外貨を使つておるわけであります。しかしこれを石炭で補うことができるようになつておるのであります。その事情はちようどドイツとまさに同じ状態でございます。しからばどんな方法があるかということでありますれば、それを今から考えてみたいと思うのであります。  石炭原料として今の脂肪族製品をつくりますのに、カーバイドを石炭からつくりまして、アセチレン、それからいろいろな方法によりまして製品をつくる方法があります。それから石炭を直接水素添加してやるいわゆるベルギウス法があります。それから石炭を一度ガス化しましてそれを合成しまして、そして脂肪族の化合物をつくりますいわゆるフイシヤー法というのがあるのであります。今私はその中の最後の、石炭を一度ガス化いたしまして、それから合成をいたしますそのことを述べたいと思うのであります。  戦前には、この方法が人造石油工業として大いに発展したのでありますが、合成法は石油がほんとうの目的ではなくて、脂肪族原料で有機化学工業の資源工業であるのであります。この点につきましては、あとで時間があれば申し上げたいと思いますが、フイツシヤー法がドイツで戦後禁止されましたときに、ドイツのデカベル、すなわち石炭鉱業指導協会でありますが、そのデカベルが炭鉱業と化学工業との国策的立場から、連合軍に解禁の要請をしたことがあるのです。それが一九五一年に解禁となつたのであります。そのいきさつについて、私は幸いにしてその資料を入手しましたから、それはあとでお配りして御了解を得たいと思います。ドイツでは直接の天然資源がないので、石炭原料とするフイツシヤー法が、有機化学工業脂肪族の根幹資源を提供する方法となつているのであります。しかも石炭は適質適所に使用し、従つてすそもの、すなわち低品位炭ができます。それを原料とすることを技術的に戦後完成して、いろいろな方法ができているのであります。たとえばアツシユで七〇%あるいはそれ以上を含んでおりますボタでも、あるいは泥炭であろうと、カロリーは二千キロカロリーくらいの、あるいはそれ以下でもいいのですが、そういつたようなごく劣悪な炭、普通ではほんとうに使用できないような原料を使用し得ることが完成いたしたのであります。しかもその安い低品位炭をガス化いたしまして、そのフイツシヤー法によりまして、先ほどからたびたび言葉が出ましたが、オレフインの豊富な炭化水素を合成しまして、これをオキソ法と名づけますが、それをドイツで完成しました。このオキソ法を応用してアルデハイドというものをつくります。それを水素添加いたしましてアルコールにすることが、戦時中ドイツで完成しているのであります。ここでアルコールと申しますのは、先ほどからお話のありましたアルコールももちろん含まれておりますが、そのほか非常に高級なアルコールであります――高級と申しますのは、カーボンの数がたくさんあるアルコールであります。そういうものができる工業が完成いたしたのであります。それと、フイツシヤー法自体も、戦後非常に改良されまして、有機合成工業に必要なるオレフインの豊富なものができまして、これが中間体となりまして、種々な有機製品ができることになりました。でありますから、オキソ反応が採用されますれば、オレフインさえあれば、必要な各種のアルコールをつくることができるのであります。  それで有機合成化学工業の中で問題になつております合成繊維とか合成樹脂、そういつたような有機合成化学工業製品に必要な溶剤とか可塑剤、界面活性剤、合成洗剤に原料として必要なる各種のアルコール石炭からできるのでございます。今もしこの方法によらないときには、油脂からか、あるいはアセチレンからか、あるいは醗酵工業によらなければなりませんが、みなそれらは相当な工程を経なければなりませんし、原料的にも相当値段が張ることと思います。すでに御承知の通り、油脂は、二十九年度の目標は四十万トンを越しているのでありますが、国産はそのうちわずか十五万六千トンぐらいで、輸入を二十万トンくらいしなくてはならないような現状であります。そのうち工業用に使われる目標に、国産品が四万六千数百トン、輸入が十八万五千トンくらい、価格にして百五十億をちよつと越すのでありますが、その輸入を見込まなくてはならないような現状なつております。そのうち相当量を今の石炭、しかも使えない、捨てなくてはならない、そういつた未利用石炭を利用することによりまして、これがまかなえることが確実になつて来ているのであります。現在フイツシヤー法によりまして、これは石炭が安くならなければなりませんが、安くさえあれば、ガソリンを目標としてもペイするのでございます。日本ではまだ今のところそこまでは行かぬといたしましても、すでに実例がありますのですが、これはあとで申し上げたいと思います。まず石炭から戦後ドイツでもつて改良されました改良フイツシヤー法によりしまて、オレフイン合成を行います。そして今のオキソ法を事業化する計画を現在われわれは進めておるのであります。これなどは至急実現させたいつもりでありますが、この方法を至急実現するためには、今のところドイツの技術を導入することになるでしようが、有機合成化学振興の実を結ぶために、このオキソ法を至急採用し得るように御助成を願いたいと思います。  改良フイツシヤー法とオキソ法の将来について述べたいと思いますけれども、今日は時間がございませんから、概要だけをちよつと述べさせていただきたいと思います。フイツシヤー法とオキソ法を組み合せることによりましてアルコールができますが、これは天然にもまだ見つからないようなアルコールを合成することができるのでありまして、いろいろな新しい製品が開拓されておるのであります。戦後連合軍技術調査団がドイツでオキソ法の完成を見まして非常に驚きまして、各国が競つてその追試研究を始めまして、一時は英、米、仏十五箇所くらいで研究を始めまして、主としてPBレポートに基きまして、現にイギリス、アメリカでは主として原料石油に仰いで、オキソ法をやつて製品相当出しておる現状であります。オキソ法は必ずしもアルコールにまでしなくても他の有用製品が非常に誘導されまして、有機化学製品の発展の資源となるものであります。表もきよう持つて参りましたからあとで御一覧願いたいと思います。フイツシヤー法の改良は戦前のものでもできましたが、特にオレフインが非常にたくさんできる、そういう点が特徴でありまして、そのために非常によい潤滑油の原料となるのであります。これはすでに戦前からも旧式の――旧式というとおかしいのですけれども、旧フイツシヤー法でつくつてもこれができたのでありますが、一般に認められておるものでありまして、戦前アメリカのスタンダードとか、テキサコ、ケログなども昔のフイツシヤー法でありましたけれども、その当時ライセンスを買つたのであります。それは主として高級の航空潤滑油製造に関心を寄せたことが大なる原因と思われております。これはアメリアの調べでありますが、ドイツでは航空機用の特殊潤滑油を石油から約三万四千九百八十トン、それから今のオレフインから約三万五千トン、それからエステル型の合成品が約四千七百七十トン、合計七万四千七百五十トン戦時中の一九四二年につくつておりますが、このエステル型の合成品といいますのは、ドイツで戦時中に工業化した最もすぐれた潤滑油でありまして、これは高級アルコールと二塩基性酸の化合エスナルで、目下問題のジエツト航空機用に欠くことのできないものであります。これは天然の鉱油や、いろいろの製品からは知恵をしぼつてつても、このジエツト航空機を運転するに必要な、安定度の低いところから高いところの幅の非常に広いものは、まだどうしてもできないのであります。このエステル型の合成、これは高級アルコールと先ほどの二塩基性酸の化合物でありますが、これが今役に立つのであります。当時ドイツでもまだジエツト機なんかないときでありましたから、そんなことに使われなかつたのでありますが、これがジエツト航空機に不可欠のものでございます。そのジエツト航空機用の潤滑油をつくります原料は、オキソ法によつてつくるのであります。今日本でジエツト機をつくる態勢はできたように承つておりますが、ジエツト機エンジンをつくつても、また燃料は割にたやすくできるそうでありますけれども、できましても潤滑油がなければ飛ぶことが絶対にできない。世界各国ともに、今ジエツト航空機の潤滑油は秘密にしてやつております。辛うじて用を足しておる程度のように、いろいろ乏しい資料でありますけれどもうかがわれておるのであります。  これは余談でありますけれども、この二塩基性酸といいますのは、今のところではひまし油の中の一成分でありまして、ひまし油の一成分と高級アルコールとの化合物でありますから、このひまし油の獲得で英米ともに非常な努力をし暗躍をして、ブラジル、インドはアメリカが買い占めております。しかたがないのでイギリスがニカラガに今栽培を奨励してひまし油の獲得をしておるというような報道にも接しておるくらいに、非常に重要な問題でありまして、その原料は、オキソ法で高級アルコールをつくることによつて一つ原料ができるのであります。その片方の相手は今のところひまし油でありますけれども、これもたとえばレツペ法なりいろいろな方法を研究いたしますれば、ひまし油程度のものでなくても、それに近いものができることは事実であります。これはレツペ博士がせんだつてお話になりましたが、そういつたようなもの、それからドイツではタールの一成分から出た原料使つてつたのでありますが、その当時の品物それ自体は現在のジエツト機エンジンの潤滑油としては性能が少し落ちると思いますけれども、その相手方のひまし油からとつた原料を使いますれば、高級アルコールと合成して十分潤滑油の性能が得られる品物ができるのであります。高級アルコールというものはこんな重要性が現在あるのでございます。  そのフイツシヤー法とオキソ法とを組み合せます工業を実現させるには、その主原料石炭資源活用の点から、どうしても今の日本といたしましては使えない悪い低品位炭、しかも安いものを利用開拓、選定することが一番大事な点であります。これは経済上、採算の面からも大切なことであることは申すに及びません。これには石炭業者がこの工業に直接関与する態勢をとるようにし向けるべきであると考えます。ドイツでは、石炭そのままによる利潤は、常識的には二%ぐらいです。しかし石炭の有効利用によりまして五%から一二%の利潤を上げて、優良炭としての工業の主食たるべき石炭は、一定の合理的限度の価格を維持させているようであります。まさに石炭政策、化学工業の行き方はかくあるべきではないかと私は信じます。  この点につきまして、フイツシヤー法の解禁になりましたときのドイツの業界の主張と、連合軍との質疑応答の中に、実に施政者として、また業者としても感じさせられることが非常にたくさん検討されております。幸いにしてその資料を入手いたしましたので、その訳文がありますから、ごらん願いたいと思います。  石炭鉱業と石炭を使う化学工業との結びつき、それによる石炭の有効利用、石炭の原価、石炭の価格、未利用資源の開発といつたような線を、もう少し掘り下げて検討する必要があると信じますけれども、今日はこれくらいにして一応お話をとどめたいと思いますが、ここに資料を持つて参りました。いろいろ用意ができれば、もつととりそろえますけれども、ありあわせのものだけ持つて参りました。  先ほど申し上げたように、石炭が安くさえあれば、ガソリンを目標としたフイツシヤー法が工業的に成り立つという実例がございます。それはアフリカのトランスバールに――あそこは七百億トンの石炭の埋蔵量があつて、これは戦前すでにフイツシヤー法のライセンスを買つたところでありますが、検討の結果、戦後になつてその工業を始めたのであります。資本金は日本の金にして三百億円。非常に石炭が安く掘れて、コストは一トン六シルというのですから、三百円ぐらい。これはほとんど手間だけだと考えられますが、そういうふうに石炭の価格をきめて、工業をその上に伸ばすならば、石炭を資源として非常にたくさん出る恵まれた石油が、天然石油と対抗することができるということが確立いたしましたので、三百億の資本をもつて、アフリカのトランスバールで今年の終りに一部運転を初め、来春早々には石油その他いろいろな副産物が出るのであります。  将来はアフリカにおいて化学工業の中心をイギリスの勢力範囲においてつくるという目標で国策としてやつている。必ず成功すると私は信じます。またアフリカのベルギー領コンゴも同じように安い石炭が得られるわけで、そこもフイツシヤー法を採用することに大体今きまつております。そういつたことの目標、資源、考え方につきまして、お手元に差上げましたサソールと書いてあります――これはサウス・アフリカン・コール・オイル・アンド・ガス・コーポレーシヨンの略でございますが、それをトランスバールの商業会議所の機関雑誌に出たものを概訳したものであります。原本は私一つつておりますが、おそらく外務省にも訳していると思います。それにはもう少し詳しく写真も入つております。この点につきましては、せんだつてドイツから来ましたルルギの社長が講演をしたことがございます。それからD・K・B・Lのフイツシヤー法を解禁するために主張した論旨――連合軍の非常に鋭い質問が出ておりますから、それを一々反駁して、どうしてもフイツシヤー法はただ石油を目的にするのではなくて、有機合成化学原料をつくる工業である。それをぱつととめられた石油鉱業が成り立たぬ。石炭屋も炭鉱業も成り立たぬから、ぜひドイツとしてはフイツシヤー法を早く解禁してもらわなければならぬ、そういつたようなことでありますので、御判読を願いたいと思います。石炭原料とする化学合成工業は、日本としてはいろいろ環境のあれもございましようけれども、原料的にはもちろん石油も必要でありますが、油脂も必要でありますが、それと競合しない程度において、ともに栄えるようなことと、もう一つは炭鉱業者のあり方について化学工業との結びつきを将来もう少し掘り下げて御検討願いたいと思います。
  14. 山手滿男

    山手委員長 以上で参考人の方々の御意見陳述は終りました。  参考人の皆様には御多忙中をわざわざお越しいただきまして、貴重な御意見を承りましたことについて、厚く感謝をいたします。  本日は国会の最終日で、速記の都合もございますので、以後の質疑は速記を付さないで、懇談の形式で行いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 山手滿男

    山手委員長 異議なきものと認め、それではさようにいたします。      ――――◇―――――     〔午後零時三十九分懇談会に入る〕     〔午後零時五十分懇談会を終る〕      ――――◇―――――     〔懇談会を終つて散会〕