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加藤(清)
委員 私は、
輸出振興策についてお尋ねしたいことは非常にたくさんございまするけれ
ども、本日は時間の
関係でほんのヒントを与える
程度にしておきまして、この次行われまする当
委員会に正式な
具体策を
お答えいただきたい、こう思うわけでございます。
そこで私が第一にお尋ねしたい点は、今日の
政府の行われておりまする
施策が、
コストを引下げて
健全財政にし、
輸出振興をはかろう、こういうたいへん
けつこうな目的のもとに行われておりまするけれ
ども、それが悲しいことに逆な結果を来している、こういうことを
大臣にお示しをして、それに対してどのような
施策をされるかということをお尋ねしたいのが第一点でございます。御
承知の
通り輸出振興には内地の品物が
コストが高過ぎるからだろうということで、
コスト引下げのための
デフレ政策が行われてお
つたわけでございまするが、それが
金融独走のおかげで非常な悪い結果を生じて来た。
選別融資や
系列融資となり、これがやがて
中小企業の
倒産となり、
不渡り続出となり、これが最初は
資本力、
経済力の浅いところの
弱小企業にだけ発生しておりましたものの、きようこのごろではこれがバランスシート十億くらいにな
つている。一体いつの日にこれをとどめるのか、
限界点はいつなのかということを今
国会の当初、いや去年の秋ごろから再三再四にわた
つて私はお尋ねして来たのです。にもかかわりませず、それを放任しておかれた。いや大丈夫だ、
日本の
経済はそれに耐え得るのだという御
答弁でございました。一体どういう場合に
なつたら耐え得ないのかという
質問に対しては、いまだか
つてお答えがございません。私
大蔵委員にもかわりまして
大蔵大臣にも尋ねましたが、
お答えがございません。
お答えするというお
約束でありましたが、いまだに私の手元へ来ておりません。
日銀に尋ねましたところ、
日銀は大丈夫だ、耐え得る、こういうことを言
つておる。逆ざやにな
つても投売りが始ま
つてもやると、こういう
お答えです。もしそれそういうことに
なつたら、
輸出振興に阻害があるのみならず、ゼネラル・パニツクが来るから、そのときにはちよつとやそつとの手助けでは何ともならないが、どうするかという
質問に対しても
お答えがなか
つた。ところがどうです
大臣、きようにな
つてみると、私が見通した
通りの結果が生じて来ておるでしよう。すでにこの金融引締めの
余波は大
企業にまで及びました。そこで投売りが始ま
つておるのです。なぜ投売りが始まらなければならないかということを、具体的に数字をも
つてお示ししてみましよう。まず
スフ糸の
採算割れであります。なぜこうなるか、それは
中小企業が
原料高の
製品安で苦しんでいるうちはよろしか
つたのでありますが、
倒産商社続出、そこでどこへ売
つていいかわからないから、結局現金ならば、手形が短かければ売りましよう、こういうことなんです。これも売れないので、やがて
ストツク品が
工場によけい残る、こういうことなんです。
ストツク品が
工場にたくさん残るということはどういうことかといえば、
資金の回転ができないから、糸が買えないということなんです。糸が買えないということは生産がぐんとふえていた紡績にと
つては、
換金ができないということにな
つて来る。
換金ができないということは、引締めのおかげてやがて投売りが生じて来ると、こういうことなんです。それが今現われて来ておる。そこでそのもとであります
糸値が、
スフにいたしまして五月に入りましてからは、原価が百四十円であるにもかかわりませず、時価がきようこのごろでは
ポンド当り百三十円に
なつた。これは十円の
採算割れでございます。それから
生糸でございまするが、この
生糸が二十一中にして二十二万円、これだけはまだ少々下る余裕がございますけれ
ども、綿糸にいたしますると、二十一番の単糸にいたしまして一時二十六万円もしたことがあ
つた。それが八万円台に下
つて来たので操短という手をお打ちに
なつた。ところがきようは六万八千円くらい、完全に
採算割れなんです。
人絹糸はと見ますと、百二十のデニールにいたしまして、
昭和二十七年の十月ごろにはべらぼうな安値を見たことがありましたけれ
ども、去年の今ごろは三百四十円だ
つた。それがきようは、二百二十円。ところが生産がどんどんとふえております
関係上、どう
考えましても月産二十万ポンドくらいの過剰なんです。これが毛になるともつとひどい。四十八の双糸にいたしまして、一時高値千五百円余を呼んだものが、現在は八百五十円、これは完全に
採算割れでございます。もつとひどいことには、ついせんだ
つてのこと、毛四のサージ十二オンスつきのものをメーター四百円で大紡が売
つている。
日本一の日毛がこういうことをや
つている。先ほどあなたはフロア・プライスの
お話を出されましたけれ
ども、南亜向けのフロア・プライスは五百三十円ということをおたくはおきめに
なつた。ところが四百円ということになりますと、完全にそのフロア・プライスを百三十円下まわ
つているという勘定なんです。一体これがほんとうに
政府の
施策がよろしくて、
コストが下
つたからこういうふうに値段が下
つて来たというなら、これは万々歳でございましよう。ところが
ストツク品が多く
なつた、金がないから投げるということなんです。機場が買わないから投げる、こういうことなんです。これは結局金融引締めから来るところの一連の自然的な結果が、こういうことを生じて来たということでございまして、この先一体どういうことになるかという問題です。これはもうここまで言えば
大臣ならおわかりのことと存じますが、これはとんだ
輸出阻害になりますよ。投売りが始まれば、一時はそれは外商も飛びつくでございましよう。ところがまだ下るかもしれないということで、飛びついたのは一時のことであ
つて、これは永続性がございません。結局フロア・プライスまでも下まわ
つて来るということは、いわゆる外国が商社を守るための関税を引上げるという結果を生じて来ることは、これは当然なことです。それから買控えが行われるということは、これまた当然なんです。すでにアルゼンチンにおいてそれが行われている。アルゼンチン羊毛を国際
価格を一割五分も高く上まわ
つて買いつけてやるその理由は、
日本商品をあそこが買
つてくれるから、こういうことなんです。ところがどうです、今度契約の一割以下に下つちや
つたでしよう。一体これをどうするのです。完全に
日本の傾向は
輸出を阻害して来た。一体
政府のとられておりますところの
デフレ政策というものの限界は、すでにここに来たと言うてあえて過言でない。一体
政府は盲めつぽう
金融独走をどこまでやるつもりでございますか。
日本経済がどういう
状態に
なつたならば、政策の転換をおやりになるつもりでございますか。吉田首相は喜んで外国へ行かれるそうでございますが、どういう意味合いをも
つて行かれるかしれませんけれ
ども、みやげを持
つて行
つておられるうちに
業界がぶつ倒れて来て、糸へんの
業界がゼネラル・パニツクの原因に
なつたら、いかに今日
政府のお方が延命工作をやられても、これはたま
つたもんじやありませんよ。だからこの前も私が言うた。
大臣さん早く何とかいい手を打ちなさい、あなたの功績になることは大賛成だ、あなたの功績になることを野党だからとい
つて恨むよりも、むしろ
業界を救うことの方に私は賛成すると言うたはずなんです。その後手を打
つておられません。近ごろ長期
輸出振興計画なるものをお立てに
なつたようでございますけれ
ども、長期のことでは薬になりません。今カンフル注射が必要なんです。どうなさる御予定でございますか、これについてはつきりとお尋ねしたい。