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1954-05-31 第19回国会 衆議院 通商産業委員会 第59号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月三十一日(月曜日)     午後二時開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 首藤 新八君    理事 中村 幸八君 理事 福田  一君    理事 山手 滿男君 理事 永井勝次郎君    理事 加藤 鐐造君       小川 平二君    小金 義照君       始関 伊平君    田中 龍夫君       笹木 一雄君    柳原 三郎君       加藤 清二君    齋木 重一君       帆足  計君    川上 貫一計  出席国務大臣         通商産業大臣  愛知 揆一君  出席政府委員         通商産業事務官         (企業局長)  記内 角一君         中小企業庁長官 岡田 秀男君  委員外出席者         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  貿易に関する件     ―――――――――――――
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  まず貿易に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。山手滿男君。
  3. 山手滿男

    山手委員 電気貿易のことをきようやることになつておりますが、会期もありませんし、一、二懸案になつてつた問題を大臣にお伺いをいたしておきたいと思います。  それは例の四日市の旧海軍燃料廠の問題でありますが、大臣からも非常な御配慮をいただいて、業界の方も踏み切つて来たように私ども考えております。先般この委員会業者代表を招致して事情を承つたのでありますが、向うの方でも、国会なんかの雰囲気あるいは政府側の真意がわからなかつたようでございますが、ようやく了承をして、自分たち約束通り要望通り断固踏み切つてやるのだ、こういうふうな態勢を、資金繰りそのほかで決意をしたというお話でございます。大臣業界人たちとお会いになつておられるようでございますが、この際私は大臣から、会期も余すところ数日でございますから、どういうふうな方針でこれを最終的にまとめておいでになるつもりか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 四日市の燃料廠問題につきましては、今国会の当初から、あらためて当委員会委員各位からもきわめて御熱心な御督促、御質疑あるいは御激励をいただきまして、その間いろいろと御承知のような経緯がございましたので、なかなか御要望に沿うような速度でもつてこの処理が進まなかつたことは、その当時も中間的に私からも遺憾の意を表して参つたような次第でございますが、当委員会におきまして、数回にわたつてお取上げになり、また関係会社から直接参考人としてお呼びになりまして、いろいろと御追及があつたようなことが非常に刺激になりまして、これは会社方面に対するのみでなく、政府に対しましてもあらためて非常に刺激になりまして、その後相当の進捗を見せておるような次第でございます。ただいま御指摘がございましたが、前に私が申しましたように、他の基幹産業についての既定計画についても、デフレ政策余波を受けて相当圧縮しなければならないような事態でもございますし、また私の考えとしては、できるだけ関係会社がほんとうに心底から熱心に、一方におきましては過剰の投資というようなことを避けながら、これに対して熱意を百パーセントに示してくれるかどうかということをとことんまで突き詰めて参りたいと思つたのでありまして、そういう観点から、一方において実際に即するように、なお計画も、少くとも初めの年度等においては相当圧縮する、それからどこまで自己資金でやれるかどうか、財政資金と申しましてもさしむきはあまり大したものは求められない、こういうような条件をいろいろと勘考いたしまして、会社側でもまじめに、深刻に検討を重ねるように相なりまして、私ども相談にも乗り、また最近におきましては、関係会社責任者の方々と私自身も会見もいたしまして、いろいろ今後の打合せ等もいたしましたので、事務当局におきましては、先般来ほとんど連日のごとく相談をいたしておるわけでございますが、いろいろの意見がしぼられて参りましたし、また調ぶべきものは調べ、大体この辺で調査も一応は終了したように考えます。そこでこれらのデータをもとにいたしまして、この出ております申請をどのように扱うか、また今後人事等の問題について具体的に進まなければならない段階参つた、こういうふうに考えますので、一面において慎重であると同時にできるだけ取急ぎまして、具体的なステツプがとれるような段階に持つて参りたい、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  5. 山手滿男

    山手委員 大臣の御答弁けつこうでございますが、ああいう経緯もありましたし、その後新しい決意でスタートをしたというお話でございますので、実は最近私親しく業界代表の人とも会つてみました。ところがもう全然業界の方では、既定方針通り、いつでもやるんだという一致した見解に足並をそろえたということを強調されますし、第一期、第二期で四十八億の資金がいるが、その中でさしあたり八億は財政資金でお願いするというふうなことにしておるけれども、もし八億円がどうしても財政資金から出ないという結論であつても、そのためにこの工事を遅らせるとかなんとかいうような意思は毛頭ない、自分たちは、今日の日本産業界において、この業界でこの程度資金ができないということであればそれこそ物笑いであつて、それらについてはいろく方法もあることであるし、あらゆる万難を排して自分たちでできるだけ資金を調達して、このくらいのことはやり遂げますという言明でございます。それで、そういう計画のもとに自分たち決意政府側に一応御伝達を申し上げてあるが、これ以上自分たちはもうなす何ものもない、さらに政府側資金計画そのほかで業者が遅らしておるというふうなお話であれば、それは全然当らないのであつて、それは一にかかつて政府側態度にあると思う、こういうふうなきわめて明確な意思表示がございまして、私ども業界人としての態度を一応了承せざるを得ないと思うわけであります。そういう実情になつて参つたわけでございますし、これは大臣、いろいろお忙しいとは思いますけれども、こんなもやもやしたようなことをほうつておかないで、この際断固、早急にこの問題は、この申請政府受取つて、許可をし、新しい会社を発足させ、そうしてあれが活用できるように、最後的な手を打たれることを私は希望する次第でありますが、この点についてもう一度お伺いをいたしておきたいと思います。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま山手委員から御指摘通りでございまして、私も、業界としては一応研究すべきものは研究し、打合すべきものは打合せて、結論を出して政府の方へ持つて来た、こういう業界の言い分はごもつともだと存じます。従つてどもといたしましていよいよ最後の仕上げをいたさなればならない段階になつており、いよいよ私どもの決心を急がなければならぬ、こういうふうに考えております。
  7. 山手滿男

    山手委員 それではこの問題は、大臣の御答弁を了承して、そのままにいたしておきたいと思います。  貿易電気の問題でありますが、電力料金の値上げにからんで、先般来業界からも申請が出され、いろいろ陳情もあり、またほかの産業各界から反対意思表示もなされております。こういう政治情勢下でございますので、所管大臣である通産大臣におかれましては、種々御研究、御心労のことと思うわけでございますが、この国会も間もなく閉会でございますし、この際電力料金を中心に、大臣はどういうふうな決断を下すつもりか。もちろんまだ最後的には腹がきまつておらないと思いまするけれども、こういうふうな要素をこういうふうに勘案して行きたいという今日までの通産省態度を、この際御説明願えればと思う次第であります。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 電力問題につきましては、ただいまもお話のございました通り、実は私といたしましても、遷延をしてまことに申訳ございませんが、最後的の腹がまだきまつておりません。しかしながら特に今年の四月以降、公聴会その他で議論になりましたこと、あるいは国会の御審議を経ましていろいろ問題になりました点で、当時不明確でありましたもののうち、あるものは相当具体的になつて参りました。たとえば地方税の軽減の問題でありますとか、あるいは開発銀行融資の金利の問題でありますとかいうものは、大体確定をしたと申してもよろしいと思います。それから決算も大体はつきりして参りました。また一方におきましては、その後中労委の賃金の裁定の問題も出て参りまして、これはまた別の意味で新しい要素となるものが出て参りました。他面公聴会等を通じまして、これは御承知のように公益事業委員会から通産省が引継いで以来初めての公聴会であつたのでありますが、努めて各方面から具体的に意見を出してもらうようにいたしました結果、ただ単なる反対とか賛成だけでなくて、考え方、取上げ方について相当参考になる点が多かつたのでありまして、これを四月に入りましてから、公益事業局の手をもちまして、あらゆる観点から取上げまして、私の考え方といたしましては、できるならば上げないで済ませたいという考え方は、前から私率直に申し上げておるわけでありますが、それを頂点にいたしまして、かりに上げるとしても、できるだけ需用者側消費者側公聴会その他を通じて希望された線に沿うて、納得願えるような、少くとも通産省として説明しやすいような方向に持つて行きたい、またその率も最小限度にとどめたい、また時期も年度中ではございますが、できるだけ遅くいたしたい、こういうふうな想定を事務当局にも与えまして、そういう観点から、できるだけしぼりにしぼつて研究をいたしておるのでございます。そういう関係でございますので、国会もいよいよ終了直前で、まだこういうことを申し上げますのは、私としてもまことに申訳ないのでありますが、何月何日から平均何ぼ上げますということは、まだ申し上げられません。上げるとも上げないとも、またいつからということも、ただいまのところでは明確に発表するだけの域に達しておりませんことを御了承願いたいと思います。
  9. 大西禎夫

    大西委員長 電力の問題でしたら、この次にやることにいたしておりますから……。
  10. 山手滿男

    山手委員 それでは電力の問題はきようは中途半端でございまするし、質疑をいたしませんが、貿易の問題で一点だけ……。最近貿易の問題はいよいよ深刻になつて来ておるのでありますが、貿易政策といいますか、貿易手続等によつて、伸びるべきものがずいぶんたくさん日陰者にされておる。あるいは業界の育つべきものが育たないでおるというものがたくさんあるように思う。その一つは、たとえて言えば望遠鏡輸出のようなものであります。望遠鏡輸出は、私どもいろいろ業界実情調査いたしてみますと、九五%以上が輸出でございます。業者相当たくさんありますが、ほとんど大部分が中小企業者であります。この中小企業者が――私はアメリカへ行きましたときもいろいろ向うバイヤーあたりから話を聞いたのでありますが、一個十五ドルくらいで五百万ドルほど望遠鏡輸出しておつた。ところが中小企業者の数が非常に多いために、バイヤーそのほかから買いたたかれて、最近は十一ドル五十セントくらいまで引下げられておる。不当競争によつて、こちらが弱味を出して、十五ドルで十分引合うものを、不必要に十一ドルばかりに引下げられておる。バイヤーにたたかれて、バイヤーだけが濡れ手にあわというふうなかつこうになつておる。ところが現在の状態では、これに対して最低価格を決定いたしましても、力の関係で、リベートを出すとかなんとかいうふうなことになつて、うまく行つておらない。業界の方でも、何とかこれをうまく軌道に乗せてもらいたい、日本外貨獲得に非常な役割を果して、九五%以上が輸出であるにかかわらず、向うバイヤーに搾取されておるというふうな形では困るということを言つており、また現実にバイヤーそのものも、だんだん値下げをされたんでは安心して商売ができないということで、むしろドイツの望遠鏡を所望し始めておる。こういう実情があるのです。こういうものは政府はどういうふうな対策を立てらるるのか。そのいい例は、今望遠鏡をあげましたが、ミシンにおいてはなはだしい。それからベニヤ板日本の対米輸出産業としては非常な進出をしておりますが、これも同様な事態が生じておる。一番ひどいのは望遠鏡のようであります。九五%以上が輸出向けであつて中小企業者ばかりで買いたたかれておるというふうな事態でありまするから、きわめてひどい実例でありますが、こういう問題は私は行政措置で政治的にすみやかに処置をする必要があると思う。これは業者を助けるということばかりでなしに、ドル不足折柄、不必要に貿易を阻害し、業界混乱さしておる事態でありまするから、手を打たれる必要があると思うのでありますが、どういう手を打たれるか、この際大臣から御意見を承りたい。
  11. 愛知揆一

    愛知国務大臣 望遠鏡の問題、ミシン問題等につきましては、政府といたしましても、非常に重大な関心を持つておるのであります。まず第一に、望遠鏡等につきましては、輸出組合法運用、これを活用することがまず第一に必要な方法であると考えておるわけであります。それからミシン等につきましても、たとえばフロアー・プライスを最近決定いたしたのでありますが、これなども輸出組合運用といたしまして当然期待される活動でございますが、これら国内的になし得る措置について一層機宜の措置をとることはもちろんでございますが、同時に前にも当委員会で申し上げたと思いますが、たとえば可燃性織物問題等にいたしましても、市場調査なり、あるいは先方の商取引実情慣習等について、占領が過ぎましてから日なお浅いために、なかなかかゆいところに手が届かぬような感じがいたすのでありますが、輸出国市場における市場調査や――ただいま商務官という制度はございませんが、大公使館、領事館等に実質上商取引に詳しい人を配置するとか、あるいは民間の人をそういうところに利用させていただくというようなことによつて現地側においても、いろいろの面でまだ努力の余地が残されておるように思うのでありまして、そういう内外両面において、なし得る限りの努力をいたすベきもの考えるわけでございます。
  12. 山手滿男

    山手委員 輸出組合法運用によるというふうなお話でございますが、どうも輸出組合法の運営によつてこれがうまく行くかどうか、私は疑問のように考えておるのです。私はむしろ先般この委員会修正議決をした中小企業安定法、あれは輸出を阻害しないという附帯条項をつけたのですが、輸出を増進せしめることであればあの安定法附帯決議とも何ら抵触をするものではないのであつて業界組合がもう少し自主的に、アウトサイダーまで含めて輸出を増進せしめることができる手が打たれるような行政指導が、私はより好ましいような気がいたします。輸出組合の問題はいろいろ従来も業界でやつておりまして、あの法律の適用によつて、独禁法の除外そのほかいろいろ利点はあると思うのでありますが、リベートや何か裏をくぐるのがたくさんあつてなかなかうまく行かない。むしろ業界を、もう少し強く自主的にそういうものを摘発し、自重して行くような方向に向けて行つた方がいいのじやないか。望遠鏡なんかはほとんど東京都内業者も集中をしておることでありますし、通産省係官などを十二分に派遣をして実情調査をしてもらいたい。実情調査をして行けば、大して大きな業界ではないのでありますけれども外貨獲得の上に相当実績が上るだろうと思う。大きな業界でないために、中小企業者であるために、政府はどう考えているか、どういうふうにこれを育成をしてもらえるのかわからずに、暗中模索をしておる実情でございますから、早急に係官をして業界に連絡をつけて万全の措置をとらしていただけるように要望をいたしたいと思う次第であります。その点一点だけ私はお願いをしておきます。
  13. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことにごもつともなお話でございまして、輸出の伸張というようなことについては、法律とか行政運用というようなことも根本でございますが、やはり当局がこまめに実情を掌握して、気のついたことを片つぱしから少しずつでも取上げて行くということが非常な効果があるのではないかと思います。  これは余談になりまして恐縮でありますが、私は先般も本所、深川方面における玩具商その他のところで、玩具輸出等についていろいろ直接に見てもらいたい、また係官を派遣していろいろ相談に乗つてもらいたいということでさような処置をとりましたところが、何か目に見えて効果が上つて来るような感じがいたしまして、非常に心強く感じたわけでありますが、ただいまの望遠鏡ミシンその他の問題につきましても、ひとつできる限りただいま御注意のありましたような方法をあわせ用いることによつて効果を期待いたしたいと思います。
  14. 山手滿男

    山手委員 私は機械類そのほか機械関係製品輸出実績等を少し最近調べてみたのでありますが、機械だけではもちろんございませんけれども、大企業輸出度合いと、それから中小企業輸出度合いを比較してみると、大企業輸出意欲というものが非常に少い。なぜかというと、今日ああいう機械ばかりではございませんけれども、自社の製品を販売いたします場合に、輸出をすれば比較的価格も安い。国内で販売をすればもうけが多い。こういうことで輸出を大企業はやろうとしないで、国内で安易に宣伝をしてもうけようとする。金融引締めが深刻になればなるほどそういう傾向を帯びて来ておる。国内では、中小企業者自己製品宣伝戦が大企業に比べて劣勢であるから、しかたなしに中小企業者輸出にその目を向けて、あまり高くなくてもとにかく輸出をして行こう、こういうふうな努力をしておるということが数字的に判明して来ておる実態がわかりました。これは大臣は御承知であるかどうか、望遠鏡ミシンベニヤ板のような非常に外貨獲得率のいい業種はほとんど中小企業者で、九〇%も九五%もの輸出をしておる。しかも金繰りに非常に困つておる。いろいろ業界が必要以上の難をさせられて混乱をしておるという状態である。大企業は、輸出価格国内価格は二重価格になつておりまするので、国内市場自己の商標にものをいわして壟断をして中小企業者市場進出を阻止をしておるという状態、これはどうしても是正しなければいかぬので、大企業者に対する責任輸出制というふうなものを通産省も最近ぼつぼつお考えになつておるそうでありまするが、これは強行する必要がある。ことに二重価格制度がこういうふうになつて参りました以上は、これをやらなければ、大企業中小企業との、――損得の話でありますが、政府態度が非常に不公平だということになつて行くと思うのでありますが、その点大臣はとくと御承知であろうと思うのですが、どういうふうにお考えでありますか。
  15. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま御指摘のような事情につきましては、私も一応は承知しておるつもりでございますが、さらにとくと調査しまして、ただいまお述べになりましたような線に沿つて施策を一段と効果を上げ得るようにいたしてみたいと考えるわけでございます。ただいまもお話がございましたが、まさに輸出につきましては中小企業の占める地位は非常に大きいのであつて、先般も御説明いたしましたが、それに対する対策の一助とも考えまして、いわゆる加工貿易についての中小企業の優遇と申しますか、賛助と申しますか、外貨予算の上においても、あるいは保税工場制度の利用についても、前年に比べますればかなり進んだ措置をいたして参りたいと考えておるような次第でございます。
  16. 大西禎夫

    大西委員長 次に加藤清二君。
  17. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、輸出振興策についてお尋ねしたいことは非常にたくさんございまするけれども、本日は時間の関係でほんのヒントを与える程度にしておきまして、この次行われまする当委員会に正式な具体策お答えいただきたい、こう思うわけでございます。  そこで私が第一にお尋ねしたい点は、今日の政府の行われておりまする施策が、コストを引下げて健全財政にし、輸出振興をはかろう、こういうたいへんけつこうな目的のもとに行われておりまするけれども、それが悲しいことに逆な結果を来している、こういうことを大臣にお示しをして、それに対してどのような施策をされるかということをお尋ねしたいのが第一点でございます。御承知通り輸出振興には内地の品物がコストが高過ぎるからだろうということで、コスト引下げのためのデフレ政策が行われておつたわけでございまするが、それが金融独走のおかげで非常な悪い結果を生じて来た。選別融資系列融資となり、これがやがて中小企業倒産となり、不渡り続出となり、これが最初は資本力経済力の浅いところの弱小企業にだけ発生しておりましたものの、きようこのごろではこれがバランスシート十億くらいになつている。一体いつの日にこれをとどめるのか、限界点はいつなのかということを今国会の当初、いや去年の秋ごろから再三再四にわたつて私はお尋ねして来たのです。にもかかわりませず、それを放任しておかれた。いや大丈夫だ、日本経済はそれに耐え得るのだという御答弁でございました。一体どういう場合になつたら耐え得ないのかという質問に対しては、いまだかつてお答えがございません。私大蔵委員にもかわりまして大蔵大臣にも尋ねましたが、お答えがございません。お答えするというお約束でありましたが、いまだに私の手元へ来ておりません。日銀に尋ねましたところ、日銀は大丈夫だ、耐え得る、こういうことを言つておる。逆ざやになつても投売りが始まつてもやると、こういうお答えです。もしそれそういうことになつたら、輸出振興に阻害があるのみならず、ゼネラル・パニツクが来るから、そのときにはちよつとやそつとの手助けでは何ともならないが、どうするかという質問に対してもお答えがなかつた。ところがどうです大臣、きようになつてみると、私が見通した通りの結果が生じて来ておるでしよう。すでにこの金融引締めの余波は大企業にまで及びました。そこで投売りが始まつておるのです。なぜ投売りが始まらなければならないかということを、具体的に数字をもつてお示ししてみましよう。まずスフ糸採算割れであります。なぜこうなるか、それは中小企業原料高製品安で苦しんでいるうちはよろしかつたのでありますが、倒産商社続出、そこでどこへ売つていいかわからないから、結局現金ならば、手形が短かければ売りましよう、こういうことなんです。これも売れないので、やがてストツク品工場によけい残る、こういうことなんです。ストツク品工場にたくさん残るということはどういうことかといえば、資金の回転ができないから、糸が買えないということなんです。糸が買えないということは生産がぐんとふえていた紡績にとつては、換金ができないということになつて来る。換金ができないということは、引締めのおかげてやがて投売りが生じて来ると、こういうことなんです。それが今現われて来ておる。そこでそのもとであります糸値が、スフにいたしまして五月に入りましてからは、原価が百四十円であるにもかかわりませず、時価がきようこのごろではポンド当り百三十円になつた。これは十円の採算割れでございます。それから生糸でございまするが、この生糸が二十一中にして二十二万円、これだけはまだ少々下る余裕がございますけれども、綿糸にいたしますると、二十一番の単糸にいたしまして一時二十六万円もしたことがあつた。それが八万円台に下つて来たので操短という手をお打ちになつた。ところがきようは六万八千円くらい、完全に採算割れなんです。人絹糸はと見ますと、百二十のデニールにいたしまして、昭和二十七年の十月ごろにはべらぼうな安値を見たことがありましたけれども、去年の今ごろは三百四十円だつた。それがきようは、二百二十円。ところが生産がどんどんとふえております関係上、どう考えましても月産二十万ポンドくらいの過剰なんです。これが毛になるともつとひどい。四十八の双糸にいたしまして、一時高値千五百円余を呼んだものが、現在は八百五十円、これは完全に採算割れでございます。もつとひどいことには、ついせんだつてのこと、毛四のサージ十二オンスつきのものをメーター四百円で大紡が売つている。日本一の日毛がこういうことをやつている。先ほどあなたはフロア・プライスのお話を出されましたけれども、南亜向けのフロア・プライスは五百三十円ということをおたくはおきめになつた。ところが四百円ということになりますと、完全にそのフロア・プライスを百三十円下まわつているという勘定なんです。一体これがほんとうに政府施策がよろしくて、コストが下つたからこういうふうに値段が下つて来たというなら、これは万々歳でございましよう。ところがストツク品が多くなつた、金がないから投げるということなんです。機場が買わないから投げる、こういうことなんです。これは結局金融引締めから来るところの一連の自然的な結果が、こういうことを生じて来たということでございまして、この先一体どういうことになるかという問題です。これはもうここまで言えば大臣ならおわかりのことと存じますが、これはとんだ輸出阻害になりますよ。投売りが始まれば、一時はそれは外商も飛びつくでございましよう。ところがまだ下るかもしれないということで、飛びついたのは一時のことであつて、これは永続性がございません。結局フロア・プライスまでも下まわつて来るということは、いわゆる外国が商社を守るための関税を引上げるという結果を生じて来ることは、これは当然なことです。それから買控えが行われるということは、これまた当然なんです。すでにアルゼンチンにおいてそれが行われている。アルゼンチン羊毛を国際価格を一割五分も高く上まわつて買いつけてやるその理由は、日本商品をあそこが買つてくれるから、こういうことなんです。ところがどうです、今度契約の一割以下に下つちやつたでしよう。一体これをどうするのです。完全に日本の傾向は輸出を阻害して来た。一体政府のとられておりますところのデフレ政策というものの限界は、すでにここに来たと言うてあえて過言でない。一体政府は盲めつぽう金融独走をどこまでやるつもりでございますか。日本経済がどういう状態なつたならば、政策の転換をおやりになるつもりでございますか。吉田首相は喜んで外国へ行かれるそうでございますが、どういう意味合いをもつて行かれるかしれませんけれども、みやげを持つてつておられるうちに業界がぶつ倒れて来て、糸へんの業界がゼネラル・パニツクの原因になつたら、いかに今日政府のお方が延命工作をやられても、これはたまつたもんじやありませんよ。だからこの前も私が言うた。大臣さん早く何とかいい手を打ちなさい、あなたの功績になることは大賛成だ、あなたの功績になることを野党だからといつて恨むよりも、むしろ業界を救うことの方に私は賛成すると言うたはずなんです。その後手を打つておられません。近ごろ長期輸出振興計画なるものをお立てになつたようでございますけれども、長期のことでは薬になりません。今カンフル注射が必要なんです。どうなさる御予定でございますか、これについてはつきりとお尋ねしたい。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一に、どこまでやつたならばデフレ政策というものはやめるのか、限界はどこかということについて昨年以来非常に御熱心に御主張があつたようでございます。また私が参りましてからもしばしばそのお話伺いましたけれども、私は率直に申しまして、たとえば具体的に各商品別等について生産が幾らになつたならばとか、あるいはコストがどうなつたならばというふうにして、その限界をお示しすることは困難というよりは不可能と申し上げた方がいいのではないかと思うのであります。しかしながら同時にそれはわれわれ国民として非常な関心の的でありますが、いささか抽象的になりますけれども、先般もちよつと申しましたように、私どもがこの一月以来全体の見通しとしてこういうところをねらつて行きたいと申し上げておりましたのは、たとえば国際収支の見通し、計画であり、あるいはまた物価の見通しなり計画でございました。一、二の例にすぎませんけれども、たとえば国際収支について申すならば、去る四月におきましては輸出信用状等の開設の状況また輸入の状況等から見まして、大体赤字が九百万ドル程度になつて参りました。むしろ九百万ドルを少し割るくらいの程度になつて参りました。その限りにおいてこの状態が一年間続けば、われわれの国際収支の収支じりの計画は予想通りになる。その限りにおいては、大体目的の線に沿つて来たのではないかというふうに考えます。また物価につきましては、一月以来の卸売物価について見ますれば、六・四%の下落であつて、私どもが大体予想しておつたところよりは少し進み過ぎていると言える程度になつております。従つて私は全体のデレフ的の政策としてはまず大道はこれでいいのではないかと私は考えております。しかしながらこのお正月以来私がるる申し上げておりますように、大道においてよろしいという場合でありましても、さらに個々の調整、あるいは全体はよろしくても、角をためて牛を殺すようなことがあつてはいけない、特に中小の企業に対しましては、十二分の配意をし、その過程において見守りつつ誤りない対策を立てて行かなければならない、こういうふうに申し上げておつたのでありますが、今その時期といたしまして、まさに私はあらためてまた中小企業対策をほんとうに重視して行かなければならない、そういう段階であろうと考えております。従つてただいま御指摘の個々の問題等につきましては、ちようど本会議が始まるようでございまして、私も気がせきますので、こまかい点は先ほどお尋ねがありましたように、明日、明後日の機会にさらにこまかくお答え申し上げ、また意見を申し上げたいと存じます。
  19. 中村幸八

    ○中村(幸)委員長代理 それでは暫時休憩いたします。     午後二時四十四分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は開会に至らなかつた