○笹本一雄君 私は今問題にな
つておりまする可燃性繊維に対する
アメリカの販売輸入禁止に対する問題に対して
質問をいたしたいと思うのであります。この問題は今やわが国の各
業界におきまして深刻な影響を与えておるのでありまして、一日もすみやかに明確にして適切妥当な対策が確立されなければならないと思
つておるのであります。そこで私は大臣の御出席を願
つて、先般来大臣がこの問題について大使館等に熱心な交渉をされたというので、その経過もあわせて聞きたいと思いまして、あえて大臣の出席をお願いしたのでありますが、大臣以上この問題について非常に熱心に政務次官が研究せられておるという
お話でありまするから、まず政務次官にこれをお伺いしまして、他の箇所については大臣と特に御
相談にな
つて、適当な機会に答弁をしていただきたいと思うのであります。
問題というのは、近く
アメリカにおいて実施されようとしておりますところの、さいぜん申し上げましたいわゆる燃える衣料の使用禁止、つまり可燃性織物の製造販売並びに輸入の禁止
措置の問題であります。これはすでにわが国の絹織物関係業者に深刻な動揺を与え、かつまた新聞やラジオにおいてはもとより、去る二十四日には参議院の本
会議におきまして、またその前の二十三日には参議院の予算
委員会において、すでに論及されたところでありまするが、問題の重要性にかんがみまして、私はここにこの通産
委員会であえてこれを取上げて、そして十分論議検討を重ねたいと思うのであります。これから幾つかの問題につきまして御
質問申し上げたいと存じます。
まず第一にお伺いしたいのは、可燃性織物禁止についてどんな交渉をしてお
つたか。わが国の輸出絹織物の生産高は、申すまでもなく一九五二年、つまり
昭和二十七年においては八千八百万ヤール、二十八年には六千万ヤール、そのうち
アメリカ向けの輸出はその約五〇%から六〇%にな
つておるのであります。しかもその生産高の約八〇%はいわゆる軽目もの、羽二重及びオーガンジーであ
つて、そしてこれらの絹織物の生産地は、申すまでもなく福島県の川俣
地方あるいは福井県、石川県であるのでありますか、月産約四百万ヤールを生産しているのであります。すべてこれらは
中小企業に属するものでありまして、今回この禁止法か実施されますあかつきにおきましては、わが国の絹織物生産業者に与える打撃というものはきわめて大であります。そしてまた非常に深刻なものがあるのであります。なかんずく福島県のこれら機業者は全滅し、福井、石川県の織物業者もその半数は職を失うような結果になるのであります。またこれらの従業員家族は、新聞にも出ておる
通り二万五千といわれておりますが、そのほかに横浜付近のプリント工業とか、家内工業に従事しているところの
人たちが約四万といわれております。この
人たちはこれによ
つてたちどころに生活に窮することは言うまでもありません。これはまことにゆゆしい社会問題が起
つて来るのであります。年間六百万ドルから八百万ドルをかせいで、わが国の対米輸山貿易に大なる4貢献をなし、かつまた
日本経済の復興に重要な役割を果しつつあるこれら軽目、羽二重すなわち絹織物の
中小企業者を苦難困窮に追いやることは重大問題であります。かかる重大な、深刻な影響のある米国における禁止法の施行に対しては、政府はいかなる交渉を
行つているのであろうか。さいぜん話しましたごとく、大臣はこの問題が起きますと、いち早く大使館と熱心に交渉したと言われますが、その交渉の内容と今後の見通しについて詳細な答弁を願いたいのであります。
第二は、この一年間を通ずる政府の無策の責任についてであります。この
法律は昨年の六月三十日米国の第八十三国会において通過成立し、本年の七月一日より実施されることにな
つておるのであります。つまり実施までに一年の猶予期間があ
つたのでありますが、しかるにその一年間の間、わが政府はその影響すこぶる大なる本
法律案に対し、何らの関心も持たず、情報も持たず、従
つて、何らの対策も持
つておらなか
つたといわれておるのでありますが、まことに荏苒むなしく日を送
つて、いよいよ実施の間近に
なつた今ごろにな
つて騒ぎ出し、周章狼狽しておるのはまさに怠慢といわざるを得ないのであります。昨年米国会においては、公聴会を開いて禁止
法案に賛成して、あるいはまたこれに対する四十五度の傾斜で四秒以内に燃焼という商業規格を決定したのでございます。そして、
アメリカの
業界は、この間にすでに燃えにくくする研究とか、あるいは製造工程の切りかえを済ましていたという。これに対しましてわが国では、今ごろにな
つてその対策に、あるいはまた外交交渉に右往左往するというがごときは、その差幾ばくでありますか。あまりにも無為、あまりにも無策で、まことにその処置は遺憾であるのであります。しかし
アメリカの
業界から、貴社の商品見本を試験したが、四秒以内に完全に燃えてしま
つたという
意味のキャンセルの電報を受けて驚いた
日本の
業界筋の動揺から、初めて知
つたというがごときは、ま
つたくも
つて話にならぬ。現に駐日
アメリカ大使も、この一年間何らの意思表示もなく、今とな
つていろいろなことを申し出されても、事は困難である。何ゆえもつと早くから手を打
つて来なか
つたかという、非難とも、好意の苦言とも見られるような発言をしたということも聞いておるのであります。また昨年十月、世界の国際絹業大会がイタリアで開かれたのでありますが、私もこれに出席したのでありますが、そのミラノ
会議に、わが国の政府といたしましては、通産省からは
繊維局長、農林省からは蚕糸局長が出席しておりますが、この問題については何ら一言も発言がなか
つたのであります。またわれわれの代表、同僚も今や絹製品問題については
アメリカにおいてこういう重大な問題があるということも一言も聞かなか
つたのであります。本問題についてそういう情報を持ちながらだま
つていたとすれば、これは大いに譴責しなければならぬと思うのであります。全然知らなか
つたとすれば、あまりにもうかつ千万なことであります。どつちにしましても何のための出席であ
つたか、
意味なしといわねばならないのであります。この問題が起きますると、業者の関係から、あのミラノの
会議のときにこの問題を取上げなか
つたという問合せがたくさんあるのであります。そうしますと、そういう情報を持ちながら、わかりながらも、それに対してしてわれわれにもその話をしない。何のためにそういう人を派遣されたか。これは次官非常に重大な問題であります。しかも虫が、わが国にできる桑を食
つて、何ら外国から原材料を入れずに輸出してドルを獲得するということは、この生糸だけであります。しかも四回目のミラノの国際絹業大会に各国から来ておるのであります。ミラノの
会議は、
アメリカ外十七箇国の
人たちが集
つて、
アメリカの
業界の代表の人もたくさん来てお
つたのであります。ここで議題にすれば、多少なりとも米
業界の情報も得られましよう。これが対策も一応強力に推進することかできたと思うのでありますが、この点につきまして、徳永君は帰
つて来るとすぐ重工業局長にな
つてしま
つた。一体何のために出したのか。この点については、農林大臣も、蚕糸局長に関して、この世界の
会議に出席する上において、こういう自分の所管に属することもうかつにしているようなことについては、今後の見せしめもあるから、こういう機会に適当な処置をとるべきものだと思うのであります。
一体わが国の存外公館は、この問題について何をしているのであろうか。もつと商業的努力があ
つてよいのではないかと思うのであります。特に通産省より人事交流もしておりますし、優秀なる人物を派遣しておるのでありますか、今回のごとき件についてはまことに遺憾にたえないのであります。これは外務大臣に通商大臣から聞いていただきたいのでありますが、ややもすると、通産省から優秀な人が
行つてお
つても、こういうすべての報告をする場合において、外務省へ一括しなければいけない。通産省としては非常に必要なことがあ
つても、そういう報告に対しての費用の関係で通信の制限とかいうような圧迫があるのではないか、こういう点について出先地もよく調べて、もしそういうことがかりにあ
つたとするならば、これは重大な問題であります。優秀なる通産省の在外派遣員が
行つておりましても、その行動したことが
一つも
日本の経済界に通じないということに
なつたならば、これこそ重大であります。この答弁に対しては、多分外務大臣はそういうことは絶対にないということを言うかもしれませんけれ
ども、この実情は実際大事であります。実際の問題にしてなおそういうことを言うのであ
つたならば、私は先般欧米をまわ
つて参りまして実際の問題をたくさん聞いておりますが、この点についてはせつかく通産省から出した
人たちが十分に働けて、十分に視察したこと、
調査したことを本省に
たちどころに通報のできるように、そうして
日本の産業に寄与できるように、これを機会に強力に外務省に申し入れていただきたいと思うのであります。西ドイツの在外公館などは、海外の輸出市場の開拓に非常に熱心だと聞いておりますが、わが国の在外公館はもつとこれに学ばなければならないと思うのであります。本問題のごときについては、当然注意の上万全の予防
措置をとり得るよう、いち早く情報や
資料をキヤツチして逐一報告、政府に連絡、警告すべきであると思うのであります。私の知
つている限りにおいては、この三月八日ワシントン大使館及びニユーヨーク領事館から外務省に入
つた公報がこれに関した最初の明瞭な情報であるということであります。もしこれが事実であるとするならば、まことに遺憾きわまるものであります。またわが政府当局においても怠慢の非難を受けなければならぬと思うのであります。在外公館を督励し、常に海外の情報に注意を払い、たとえばあの費用を出しているところのJETROの筋を通して
調査するとか、あるいはまた外務省、通産省当局が常に緊密なるところの連絡と提携をも
つて情報の入手交換に今後遺漏のないことを期していただきたいと思うのであります。今次その失態あるいは醜態をさらすようなことに
なつたことは、まことに遺憾にたえません。これらについて政府の誠意ある答弁を承りたいのであります。まずこの二点について次官の知
つている範囲において御答弁を願いたい。