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中島政府委員 ただいまの御質問であります。
電気ガス事業関係法令改正審議会の
答申と、ただいま提出しております
事業法案との相違点でございますが、大体当初の立案のときには審議会の
答申にのつとりまして立案したわけでございます。その後
内部的な研究、あるいは法制局その他の検討の結果、若干違つた点が出ております。まず
答申の
内容と違
つて規定されております点を申し上げますと、まず
供給関係におきましては、特約
料金制度の採用が
答申の中ではうたわれております。これは
電気にはたとえば深夜電力を利用いたしますとか、あるいは豊水期の余剰電力を利用することによ
つて、他の形における電力の
使用と比べると、電力の
使用形態が違いますので、その点を考慮いたしまして特別の
料金制度を設けることが考えられるのありますが、
ガスにつきましては、深夜の電力のごとき性質のものが
現状といたしましては考えられませんので、また季節的に申しましても、余剰
ガスというものもありませんので、
従つてガスについて特約
料金制度は必要なかろうという見地から、
法案には削除いたしたわけでございます。実際面におきましても、原価主義の立場から特約
料金を設けるというケースは、従来もと
つておりません。かりにありましても、ただ特別の
関係で、原価と離れまして、特約
料金をや
つている例もないわけではございませんが、今日におきましては、やはり
ガスのごときはそういう特約
料金の制度を置く必要はない。むしろ置かないで一本で行つた方が、原価主義からい
つても、また消費者に対しましても明朗であると考えたわけでございます。しかし特別の例外といたしましては、二十条の但書の
規定がございます。これである
程度救済はできると思
つております。
それから次に会計
関係におきまして、審議会の
答申では社外投資と
利益金処分に関する規制、それから
臨時に大きな損失が出た場合において、それを繰延べる制度というふうなことを
勧告されております。これはいずれもこの
法律案におきましては採用しておりませんが、その中で社外投資及び
利益金の処分に関する規制は、
資金統制を前提とするようなものでありまして、企業経営の
内部干渉にわたるおそれがある。ことに
料金の決定方法いかんによりましては、大体その目的とするところは達せられるじやないかと考えられますので、会社の自主性を尊重するという
法律案の趣旨から申しまして、これはとりやめた次第であります。
それから
臨時に大きな損失が出た場合の繰延べ制度というものは、一応われわれとしても必要だと思いますが、これは現在の商法から考えまして非常に大きな特例になりまして、公法で私法の原則を破るということも適当でないと考えられますので、そこまでの大きな
規定をすることを差控えたわけであります。
それからその他の点につきまして、たとえば主任技術者試験制度というものがございますが、これは製造
関係と
供給関係に区分することを審議会では要望しております。ところがこれは国家試験制度をできるだけ簡素化するという今日の
政府の方針に幕きまして、この二つに区分することをやめまして、また主任技術者の職務を
保安監督の面だけに限定して
保安の確立をはかるということのために、製造と
供給の区分は必ずしも必要はなかろうという意味から、製造、
供給の区分を設けないで、単に段階を甲種と乙種の二つにわけたというだけにとどめたのでございます。この点につきましては、従来と同様の制度を踏襲したわけであります。
それから
料金算定基準等の省令事項、いわゆる附則にわたりますような事項を公聴会にかけることにつきましては、必要なものが法文上はつきり
規定されておりますので、これは必要がないと考えまして、この
規定はいたしておりません。
それから
答申においては触れておりません事項で、この
ガス事業法の中で特に
規定しております点がございますが、それは第一が、
ガス事業者の
供給区域外への特定
供給の問題であります。これは
ガス事業者がその区域内の
ガスの
供給に専念すべきであるという見地から、
供給区域外への
供給は一応禁止事項といたしまして、兼業と同じように許可を受けた場合においてのみ許すという制度をと
つております。この点は特別に審議会の
答申には盛られておりませんけれ
ども、
ガス事業の実際の性質、ことに
供給区域内におけるサービスを完全ならしめる趣旨から必要であろうと考えまして、こういう
規定をここに挿入したわけであります。
それから
供給規定の認可、それからそれの変更に対する命令というものを公聴会の事項としたこと、それから苦情の申し出制度を設けたこと。この点は二つとも
答申には盛られておりません。しかしこれらは
法案の制定にあた
つての基本的な
態度の
一つといたしまして、消費者
保護の見地から新たに設けたわけであります。
供給規程の認可につきましては、やはり一般の
意見も聞き、さらに
ガス事業のサービスのやり方、あるいは業務の運用方法につきましての不平に対しましては、苦情の申立て制度を置きまして、これをできるだけ官庁の方で迅速、公平に処置してやるということを置いたわけであります。
それからこまかい点につきましては、たとえば氏名等の変更の届出、相続の
規定等二、三の
規定が設けられておりますが、これは立法技術の問題として審議会としては特にそこまで触れておりませんけれ
ども、当然のこととしてこの
法案に挿入したわけでございます。
それから消費者
保護の見地からどういうふうな
規定があるかという点でございますが、元来
ガス事業はその
事業の性格から、おのずから地域的な独占の形になる
事業であります。
従つてその
独占事業の弊をできるだけ改めるという趣旨におきまして、消費者
保護の制度というものはこういう法規においては特に必要なわけであります。
従つてこの点については従来と同様に
事業の許可
義務、あるいは兼業の許可制、それから
事業の譲渡、譲り受けの認可制というようなことは同様に
規定いたしておりますが、特にこの
法案におきましてその見地からさらにそういう
規定を強化した点を申し上げますと、まず
事業許可に関しましては消費者
保護の見地から
規定されたものが三つございます。第一が第五条におきます
事業の地域的独占の排除でございます。これは従来は同一地区におきましては二つ以上の
ガス事業は成り立ち得ないというので二つ以上の
ガス事業を許可してはならないということにな
つておりましたが、今度の
法案におきましては、そういうふうな地域独占の制度は撤廃されております。ただ法文上許可要件といたしまして
事業設備が過剰にならないように、あるいは資本が余分に投下されないようにというようなことが許可の条件の
一つとな
つておりますが、そういう見地からいたしまして、大部分の場合におきまして、同じ地区に二つ以上の
ガス業者が認可されるということはないことになると思いますが、しかし必ずしもそれで全部を律しませんで、必要な場合におきましては同じ地区において二つ以上の
ガス事業を認めるということも法文上は可能でありますし、また実際問題といたしましても、場合によ
つてはそういうことも起り得るわけであります。この点につきましては単に
一つの
事業だけを認めれば、その
事業が十分なサービスをしないで、地域的独占の上に眠
つて、消費者に迷惑をかけておるというふうな場合に、従来の
規定ではいかんともなし得なかつたものを、こういう新しい制度によりまして排除することができるわけであります。
それから第七条に
設備の設置
義務という
規定がございますが、これは
事業許可を受けましても、その地区の一部だけに
供給する
程度の
設備をつくりまして、
供給地域全体に対しまして必要な
設備を設置しないでそのまま放任しておる。特に比較的
需要者の密集した地区だけに対応する
程度の
設備をつくりまして、それ以外の末端の地区に対して
供給することは不利であるというふうな見地から、十分な
設備もしないというふうな事例がありますと、これは消費者の
利益を害しますので、そういうようなことのないように、
事業許可を受けたならば、その
供給地域に対応する必要な
設備を設置しなければならない、こういう
義務規定を設けております。
その次は休眠区域の取消しの
措置でございますが、これも従来はなかつた
規定でございまして、
供給区域の一部におきまして
ガスの
供給が行われておらない、しかもその
ガス事業者は将来におきましても、そこに対して
供給する意思も
能力もないというような場合におきまして、一旦その区域がその
ガス事業者の
供給区域として許可された以上は、従来の法規によりますとほかからはいかんともしがたいというふうな
実情にございました。これを今度の
法律の十五条におきましては、そういう場合においては通産大臣はその地域を減少することができるようにいたしております。
従つてもしある
事業者の地区に一部そういうふうな場所がございましたならば、その地区だけをその
ガス事業者の地区から削り取りまして、新たにそこへ
供給したいという希望者がある場合には、そこへ許可する、それによ
つてその休眠地区の消費者の
利益をはかる、こういうことができるようにいたしておるわけであります。
それから
供給関係におきましては、先ほど申しましたように
供給区域外の
供給の禁止
規定——
ガス事業者は
供給区域内における
ガスの十分な
供給をするという本来の
義務を果すようにという趣旨で、区域外への
供給は一応禁止いたしまして許可事項にいたしております。
次に
供給ガスの熱量と圧力の測定
義務を課しております。これは本来
ガス事業者は、自分の
供給する
ガスの品質を保証する
義務が当然あるわけでありますが、ややもすれば
ガスが
所要の圧力あるいは熱量を持
つておらぬということがときどきございますので、
事業者としては常に圧力あるいは熱量を測定いたしまして、それを明らかにしておく。もしもこの
ガスの品質が
規定の品質に沿わない場合においては、これに対して改善命令その他をも
つて強制するということも考えられておりますが、その
義務を果すために、まず第一次的には
事業者としては圧力あるいは熱量の測定を常にしておく、こういう
義務を法文化しております。
次には卸
供給事業者の
供給を認可制にいたしております。これは卸
供給事業者から
ガス事業者が
ガスを買いまして、これを一般に
供給する場合でありますが、これを認可制にいたしません場合には、もしもか
つてに縁故の深い卸
供給事業者から高い
ガスを買
つてこれを売るということになりますと、かりに
料金を決定する場合におきまして、購入の
ガスはやはり購入の原価でも
つて算入せざるを得ない。
従つて不当に高い値段で買
つておりましても、消費者に対する
料金の決定の場合にはそれが基礎になるというふうな、不合理なことになりますので、一般の消費者に影響を及ぼすような卸の
ガスを買う場合には、その条件等はあらかじめ認可を受けさせるということにいたしたわけであります。つまり不当に高い
ガスを買
つて消費者に迷惑をかけないようにという趣旨でございます。
それから会計
関係の
規定におきましては、減価償却に関する命令権を新しく設定いたしております。これは
ガス事業といたしましては、一回
供給を開始いたしますと、確実に
供給を継続しなければ、
ガスの
需要者に対して大きな迷惑をかけます。初めから
ガスがない場合と、一旦
ガスが施設されましてあとで
ガス事業が停止した場合と比べますとこれが消費者に対する迷惑の相違というものは非常に大きなものがございますので、
ガス事業が開始されたあとで、いたずらにその業務が停止され、休止されるということのないように、健全に維持されることが必要であります。そのためには
事業維持あるいは
設備維持という見地から、減価償却は常に適正に行わなければならない。こういう見地から減価償却が、
不足する場合におきましては、これを強制するような命令を通産大臣ができるように
措置を講じておるわけであります。
それから
保安関係におきましては、
ガスの有害成分を検査するという
義務を負
つております。これは当然
ガスの消費者の
保護の
規定でございますが、
ガスが燃焼いたします際に、もしも有害成分がありますと、燃焼いたしましても身体等に危害を加えるようなことがございます。生の
ガスを吸いまして人が死ぬことはあたりまえで、これは防止の方法がないといたしましても、燃焼いたしますときには、少くとも有害成分は残
つておらないということにな
つておらなければなりません。ところがもし
ガス事業者の方で有害成分の除去を怠りますと、そういうことも起りかねないわけでありますので、常に有害成分があるかないかということを検査させるという
義務を法定いたしたわけであります。
こういうふうにいろいろ
規定を置きまして、消費者の
保護をはかつたわけでありますが、まだそのほかに、たとえば
供給規程の認可あるいは変更処分等については公聴会の制度を置くというようなこと、あるいは苦情申立ての制度を置くというふうな、先ほど申し上げましたような事項も、消費者
保護の見地からこの
法案に盛り込まれておるわけでありまして、従来の
ガス事業法あるいは公共
事業令に比べまして、この点につきましては一歩進んだ
内容を持
つておるものとわれわれは信じておる次第であります。
それから兼業の問題でありますが、大体
ガス事業が他の
事業を経営する場合に許可を受けるということがこの
法律上
規定されたわであります。この兼業の許可を受けさせる趣旨は、申すまでもなく
ガス事業者は本来の
ガス事業につきまして専念すべきであるという見地からしまして、
ガス事業にあまり
関係のない仕事を兼営いたしまして、その方に力を入れ過ぎたり、あるいはその方で損失を受けたりいたしました結果、本来の
ガス事業の遂行が十分でないということになりますと、これは消費者に対して非常な迷惑になりますので、そういう点をチエツクするというのがこの目的であります。しかしながら
ガス事業におきましては、御
承知のようにコークスあるいはタール製品等、当然に
ガスを生産するために出て来ます副産物がございます。しかもその副産物は、
ガス事業にと
つては
相当大きな
事業でありまして、こういうものを初めから禁止することは不可能であります。
従つて当然にこの附帯業務として考えられますようなコークスあるいはタール等の販売は、一々許可を受けさせませんでもできますように、命令をも
つて除外するつもりであります。現在におきましてもこの点は除外されておりますが、こういうようなものは
ガス事業におきまして当然の附帯
事業として除外するつもりでおります。その他の点につきまして、たとえば先ほど御指摘になりました
ガス器具の販売というようなこと、これは器具の販売そのものは一種の
ガス事業のサービスとも考えられまして、必ずしも禁止する必要はない。現在でも認められておりますし、今後も認めざるを得ないと思います。ただ
お話のありましたように、
ガス器具の販売と
ガスの引込み、とりつけというものが抱合せにされるというふうなことがかりにありますと、これは非常な行き過ぎでありますので、この点は十分に警告をいたしております。
従つてガス器具の販売自体は、今後も禁止する必要はないかと思
つておりますけれ
ども、それが本来の仕事に関連するようなことになります場合には、これは場合によ
つては禁止をいたさせますし、またそういうことがある場合には十分注意いたしまして行き過ぎのないようにということはいたしたいつもりでおります。