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牛場説明員 今回の
日英支払協定は、その一番大きな
目的は
支払協定の一年間
延長ということでございまして、これは本年の十二月三十一日まで、一年間
延長ということにとりきめができた次第であります。
協定そのものにつきまして、若干の
変更がありましたが、これは
イギリス側の
為替管理のやり方が少しかわりまして、
為替レートを大体バンク・オブ・イングランドの毎日の市場の
相場を見ながら立てて行くということにかわりましたので、その
建値にわが方でも同調して、その
建値がある
一定限度以上動いた場合に、こちらの方も円とポンドとの
建値をロンドンの
相場に応じて改訂して行くということにいたしたわけであります。これは実質的な
変更ではございません。それから
協定の裏打ちとしまして
貿易の問題に話がなりました。御承知の
通り昨年は
イギリス連邦諸国の非常な
輸入制限のために、わが方の
輸出が半分近く減りましたので、今回の
会談におきましても、
先方に
輸入制限緩和を求めることを第一の
目的といたしまして、初めからそれに重点を置いて話を運んだわけであります。
先方も
日本側の希望に応じて、各
植民地などに対して
日本品をどれくらい
輸入できる見込みかということをずつと問合せを出した模様でありまして、その結果が大体十二月の末ぐらいに集まり、数字の引合せということになりまして、大体片道二償九百五十万ポンドというような売払いの一応の目標ができたわけであります。ただ今回の
会談は相手が
イギリス本国と
英領植民地だけについて義務を負い、
約束をし得る立場にあります。従いましてわが方としましても、
約束しましたのは
英本国及び
英領植民地からの
輸入についてある程度の
約束をしておるということであります。そのほかの
スターリング地域内の各
独立国におきましては、これは一応の推定はできておりますが、しかし具体的にこれを実行に移す場合におきましては、ある国との間においてはあるいはなお具体的な
話合いをしなければならないということが起ることと存じます、私
どもの一番問題といたします
輸入制限緩和については、私
ども要求いたしましたことは、とにかく
スターリング地域内の
各国相互の
貿易がある程度特恵的な
条項で行われることはやむを得ないけれ
ども、その他の国かうの
輸入ということについては、
日本に対しても平等な
待遇、一番いい
待遇を与えてもらいたいということであります。それから大体その
総額をきめることはやむを得ないけれ
ども、
総額の
範囲内において
品目別の区別をすることをや
つてもらいたい、それから第三としまして、ことに
日本からの
輸出品のうちでは
繊維品が非常に重大なウエイトを占めるのであるから、
繊維品の
輸出を
制限することは特にやめてもらいたい。大体この三点を申しました。それからさららにつけ加えまして、香港、
シンガール、それからアデンというような中継港については、これは全然
制限をやめるようにしてもらいたいということを申したのであります。これにつきましても大体
日本の言い分が通つたわけでありますが、やや
制限が残りましたのは、
先方の
植民地のうちで
東アフリカ、それからジヤマイカ、
サイプラス、この三つの場所であります。
東アフリカにつきましては、これは
先方にいろいろな内政上の
理由がありまして、
日本からの
繊維品は特別に
制限せざるを得ないということ、これははつきり申しております。それからジヤマイカと
サイプラスにつきましては
繊維品の
輸入一般を
制限しているので、
日本もその例外となすわけにはいかない、だからほかの国と同じような
制限に付するということでありますそれ以外の
植民地、そのうちで一番大きなのは西アフリカ、すなわちニジエリア及びゴールド・コーストでありますが、これは一定の
総額の中におきましては全然
品目別の区別は設けないということははつきり申しましたし、それから香港、シンガポール、アデンにつきましては一応目標の数字はきまりましたが、これは決して最上の条件ではないのであります。これ以行
つてもかまわないということを申しておりますし、
日本品の再
輸出につきましてはほとんど全部フリーにするということであります。
スターリング地域向けの再
輸出について若干の
制限が残
つておりますが、これはほとんど案質的にはないと同じでありまして、現に香港におきましてもシンガポールにおきましても、またアデンにおきしても、そういうような方針が
政府の方で明らかにされております。きめたことは余部向うでや
つてくれたという
状況であります。それからさらに
英本国におきましては、これは初めから
制限なしに物を入れるということは無理でありますから、
品目別の割当をつくりまして、できるだけたくさん割当をとるように交渉したわけであります。その結果総量におきまして千四百五十万ポンド、そのうちで新しい品物を七百七十万ポンド入れよう、それからさらに現在でも入
つておる品物六百八十万ポンドを合せて千四百五十万ポンドという数字を
約束したわけであります。この新品目七百七十万ポンドのうちでは、
繊維品の
輸入がやはり一番大きいのでありまして、これは
先方にとりましても非常に大きな政治問題であるために、日業の要求をのむことを渋つたのでありますが、最後に大体こちらの要求の七、八割はのむことになりました。繊維は全部で三百三十万ポンド、それにメリヤス類を入れますと三百六十万ポンドというわくをとつたわけであります。そのほかに陶磁器でありますとか、おもちやでありますとか、象牙細工でありますとか、紙製品、ちようちんのようなもの、あるいは豆電球のようなもの、そういう雑貨
輸出を少しずつでありますがとりました。それからさらに向うで非常に好意を示しましたのはカン詰類でありまして、みかんのカン詰、それからさけのカン詰につきましては、これは一定のわくがありますが、このわくを越えても買
つていいんだということを向うもはつきり申しておりました。これはむしろ
日本側がどれだけ出せるかということによるだろうと思います。そういうような
約束をいたしたのであります。
その対価として
日本側が何を
約束したかということであります。大体わが国の
貿易構造から申しまして、
英本国、
植民地に対しましてはこれは相当の
輸出超過にな
つて、その
輸出超過の分で、たとえば濠州でありますとか、あるいはニユージーランドというような国からの
輸入をまかなうというかつこうになるわけであります。従いまして今回一応の目標としてきめました数字も、
英本国及び
植民地につきましてはこちらは約五千万ポンドほどの
輸出超過という数字にな
つておるわけであります。従いまして
先方から言えば
輸入超過になる
約束をするにつきまして、
イギリス側からの
輸出が去年以下に下まわるようなことがあ
つては、これはとうてい国内的に
説明しにくい、どうしてもこれは去年のべースくらいは維持してもらわないことには、政治的にとても
日本からの
輸入制限緩和ということはできないということを当初からしきりに申しまして、その結果こういう数字にな
つて一応おちついたのでありますが、
先方の気持はあくまでもつと売りたいということであります。
日本がバランスした
貿易をするには、すでにかせいだだけのポンドしか使わないということをはつきり申しましたので、それではしかたがないということにはなりましたが、自分たちの真意は、
日本にはポンド品に対する需要がもつとあると思うしまた実際売れると思うのだということを最後まで申しておつた次第であります。従いまして対日
輸出について
日本からやはりある程度の
約束をとりつけたいということは非常に執拗に迫つたところでありまして、その結果といたしまして結局
約束いたしましたことは、いわゆる自動承認制の
輸入でありますが、この
輸入を四
——九の外貨予算において継続するということ、その一定の額がございますが、その額の点は割合に小さな額でありますが、継続するということを
約束いたしました。それから石油の
輸入につきましてある程度の公正な割合をポンドに割当てるということを
約束しました。さらに
英本国からの
輸入につきましては、毛輸物とオートバイそれからウイスキー、チヨコレートというようなものにつきまして、ごく少量でありますけれ
ども、少しずつのわくをつけてくれ、それから
植民地からの
輸入といたしましては、綿花、塩それからコーヒーというものにつきまして、これも大体昨年の実績並のわくをつける、そういうことでこれを
約束いたした次第であります。以上が
協定の大要であります。
それ以外に小さな問題といたしましては、たとえば海運の問題について、
日本が平和条約で
約束した
通りにや
つてもらいたい、つまり差別
待遇をしないでくれということ、それから映画から上る収入の送金にあたりまして、アメリカその他と差別
待遇をしないでくれ、これは当然現在でも差別
待遇はしておらないわけであります。新しい義務を負つたわけではございません。それから最後に通商航海条約のことにつきまして早く結びたいということを申したに対して、向うもそれを了承するということを申しております。これはそれだけのことで別にそれ以上の
約束ではないのでありますので、とにかく
日本が主張しておるということは
先方でも十分認識はしておる次第であります。
この
貿易の話と関連いたしまして金融の問題も議に上りました。御承知の
通り日本が現在ポンドの手持ちが枯渇いたしまして、国際通貨基金あたりからポンドを借り入れておるような
状況で、この際
先方から幾分の金融的便宜を得たいということを申したのでありますが、
先方は原則論としては絶対にこれは困るということであります。
支払協定は決してクレジツトを与えるための
協定ではないのであ
つて、
支払協定を結んだ相手方が、ある程度のポンドの操作資金というものを持つことは当然であ
つて、それがなく
なつたからとい
つて、金を貸してくれと言われても困るということをはつきり申しておつたのでありますが、最後にこの点も折れ合いまして、
一定限度の金融の便宜を得たわけであります。ただこれがきわめて例外的なものであり、かつこれ以上はやらないということもはつきり向うは申しました。
大要かような次第であります。