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愛知国務大臣 国際情勢の問題でございますが、これはいろいろ広汎にわたる問題であると思いますので、とりあえず一番経済政策に
関係のあると思われる点のうちで国際情勢としてどういうふうに見ているかということをまず簡単に申し上げたいと思います。その
一つは私
どもから見ますれば、好むと好まざるとにかかわらず、アメリカの景気の見通しということが一番
基本的に
日本経済に影響があると思います。アメリカの経済につきましては、朝鮮動乱後、厖大な国防支出が原動力になりまして、異常な好景気でありましたが、昨年夏ごろを頂上にいたしまして、やや下降傾向を見せて参りましたことは事実でございますし、これはいろいろの情勢判断から的確に判定ができると思います。さらにこれが今後どうなるであろうかということにつきましては、学者専門家等の間でも楽観、悲観両様の見方があるようでございます。たとえば最近
日本でも大きくとりざたされたようでありますが、イギリスのコーリン・クラーク教授が非常にアメリカ経済の前途を悲観的に見ております。コーリン・クラークの説によりますれば、下手をすれば一九二九年のような不況に突入しかねないというようなことを
言つておるのですが、この説は私
どもの情勢把握分析といたしましてはむしろ少数説ではなかろうかと思うのであります。最近もずつと注視いたしているのでありますが、多くの専門家は、景気後退が起りましてもその
程度は軽度の
程度であろうというように見ているようでございます。一方アメリカの
政府筋も、要するに従来のよ過ぎたといいますか上昇しき
つた経済を適当のところに、正常な
程度に返すのであ
つて、そのためにいわゆる経済の調整が行われるにすぎ ない。アジヤストメントという言葉を
政府側は
使つておるようでございます。この点は大統領の今年初頭の
発表されました教書やアメリカの予算案で見ましても、
従つてそれほど深刻に不況
対策というものを織り込む必見はないというような
政府としての
見解を
発表しているわけでございますが、これがわれわれといたしましてアメリカ経済に対する
基本的な情勢把握として見てといるころでございます。しかしながらアメリカの予算案を見ましても国防支出がある
程度削減されております。それから昨年に比べますと、若干ではございますが、産業投資が減る。まあこの減り方は四%
程度のようでございますが、若干は減る。それからその次に、先ほ
どもちよつと申しましたが米国の経済は一九二九年当時に比べていろいろの点で不況に対する抵抗力が強くな
つている。
従つて大した
心配はない。こういうような見方をいたしているようでございます。しかしながらかりに米国の景気の後退が軽度ではありましても、諸外国あるいは
日本に対する影響というものは相当これは大きなものがあるのではなかろうかと思うのであります。たとえばこういう
一つの研究があるようでございますが、それは米国の
国内消費がかりに四%減るということを仮定いたしますと、米国全体としての
輸入額は二四%減少する、特に米国がスターリング地域から入れます
輸入は三四%減少するであろう、こういうような
調査がECA等においてもなされているようでございます。もしそういう見通しが正しいとすれば、スターリング地域に対する輸出に非常な期待をかけております
日本といたしましては間接的にかなりの影響があるのではなかろうか。また直接的には対米輸出にもある
程度の困難性を加えて来るのではなかろうか。大体アメリカと
日本の
関係はそういうふうに見ております。
従いまして
日本の二十九
年度の
計画の方におきましては、御承知のように対米輸出の見通しはむしろ二十八
年度よりもある
程度ではございますが少く見ております。これに反しましてスターリング地域の方への輸出は二十八
年度の六割増と見ているわけでございます。これは
基本的にアメリカの経済情勢判断が今まで申し上げたようなところではございますが、日英両国間におけるその後の
話合いによりまして、たとえば英国本国
政府としては従来の英連邦その他の
輸入制限等についてはできるだけこれを緩和して、
日本に対しても協力をするというような建前で協定をや
つてくれておりますので、アメリカとの
関係はともかくとして、
日本の対英、対スターリング地域に対する輸出というものにはこちらもできるでけの努力をし、またイギリス側の好意にもこたえなければならない、こういうふうに私
どもとしては
考えているわけでございます。なおまた英連邦の最近の情勢等につきましては先般も
ちよつと申しましたが、いわゆる非ドル地域との
貿易の促進でありますとか、それから英連邦の靭帯をもつと強化しなければならないとかいうような、いわゆる英連邦全体としての運命共同体とでも申しますか、そういう思想のもとに英連邦全体としての自立達成を何とかやり遂げようじやないかとういう機運が相当濃厚に出て来ておることは、これは大いに
注意しなければならないことである。
従つてこの面には、やはり
日本として相当
注意をしなければならない条件ではなかろうか。これが大体英米等に対する
関係でございます。それから東南アジア
方面におきましては、一口に申せば最近たとえばプラント輸出が相当
話合いが進んでいるというような点から見まして、東南アジア
方面について経済
関係が二十九
年度以降におきまして従来よりも進展するであろう。それから中共その他いわゆる北アジア
方面に対する
関係におきましては、まだ朝鮮の戦争が片づかない今日でありますから、国連協力の建前を守る、その範囲内においてできるだけ西欧並の線に近づいた対中国
貿易をや
つて参りたい、ごく簡単でございますが、大体荒つぽく申しますとそういうふうな情勢判断をしておるわけでございます。