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愛知国務大臣 本日は、通商
産業省のこれからやつて参りたいと思いまする施策の大綱につきまして説明する機会を与えていただきまして、まことにありがとう存じます。
現在の
日本経済全体の状況につきましては、先般本会議で
経済審議庁長官の立場において御説明をいたしたわけでございまするが、お手元に配付いたしました説明の要旨に入りまする前に、先般のいわゆる
経済演説の基礎になりました私どもの
考え方をちよつと最初に申し上げてみたいと思うのであります。
昭和二十八年、昨年一年の十二月までの
経済経費の
指数等が大体まとまりましたので、それを振り返つてみますると、
昭和二十八年中の
経済動向については、特徴的なものが数点あるように存ずるわけでございます。その二、三の点を申し上げますならば、まず第一に
昭和二十八年中は、
鉱工業の
生産の
上昇率が大きかつたことがその第一点でございます。
消費水準の上昇が二十七年に続いておるということが、第二の特徴でございます。そうして第三の特徴として、
国際収支の逆調が目立つて参
つたのであります。この点につきましては、後にさらに詳しく申し上げたいと思います。それから災害や凶作の影響もございまして、
物価水準が上昇したということが第四の特徴だと思います。第五に、
投資活動が非常に旺盛であつたことがあげられます。最後に第六点として、
財政資金の
散布超過額が相当増大し、また
日本銀行の信用の増加が目立つたこと。大体大きな特徴をあげてみますと、さような六つの特色があると思うのであります。
こういつたような昨年中の
動向のもとにおきまして、
昭和二十九年においてどういうことをやつて行くかということが、これからの問題になると思うのであります。御承知のように
昭和二十九年度の
政府の予算の原案におきましては、
財政投融資や
公共事業費などが圧縮されました結果、二十九年度の
投資活動は、二十八年度に比べますると、約一割程度低下するということを考えられておるわけでございます。一方
消費購買力を抑制して行きたいということがその基本的な
考え方の一つでございますが、必ずしもこの方はそう急激には落ちないと見られますけれども、いわゆるデフレ的な影響が次第に強くなり、
物価が下つて来るにつれまして、漸次買い控えの傾向も出て来るものと思われるわけでごいます。しかしてこのような内需の大体の
動向に加えまして、
輸出は
日英貿易会談の結果等によりまして、多少の好転が期待されると思うのでありますが、特需の方はMSAを考慮に入れましても、二十八年度以上に出るということは望まれないのではなかろうかと思うのであります。
こういつたような想定をいたしてみますると、二十九年度のいわゆる
有効需要は全般的にむしろ先細りになると予想されるわけでございます。そういたしますると、
鉱工業の
生産は、二十九年度の年度初めにおきましては、今年度からの引続きでありますから強調を呈するでありましようが、下期に入りましてからは、主として
機械金属などの
投資財を中心にいたしまして低下の方向をたどるものと思われるのでありまして、この点から、私が先般申し上げましたように年度を通じますると、二十八年度とほぼ同
水準になりまして、
昭和九—十一を基準にいたしまして、大体二十八年度とほぼ同様の一五二程度にとどまるものと思われるということを申しましたのは、そういつたような基本的な
情勢判断から考えたわけでございます。
国際収支の状況はあとで申し上げることにいたしまして、今申しましたような
投資需要の減少や、これに対しまする
生産の
振興のぐあい、また
金融引締めの強化というようなことによりまして、
生産財の
物価の方はやはり下期にかけてかなり急角度に下落して、二十八年度
水準に比しまして
生産財としては六、七パーセントの低下が予想されるのではなかろうか。また
消費者物価の方については、
消費購買力は先ほど申しましたようにしかく急角度には落ちませんけれども、主として
物資需給の改善によりまして、やはり三、四パーセント程度は下落するものと考えているわけでございます。
大体においてかような構想を中心にいたしているわけでございますが、これを一言にして申しますならば、お手元に配付いたしました書類の第一ページの中ごろにもございますように、
昭和二十八年において
わが国の
経済規模は、
生産の増加、
消費水準の向上、これなどによりまして二十七年より一まわり拡大されたのでありますが、
物価の方はどうかと申しますと、おおむね
横ばいないし
強含みの推移をたどるなど、
国際経済の基本的な
動向から遊離する傾向が顕著に現われておつたわけであります。
物価の方は申すまでもございませんが、ここに
横ばいないし
強含みの推移と書きましたゆえんのものは、たとえば木材のごときものは非常に
上つたのでありますが、これを除きますれば、大体
横ばいということが数字的にもはつきりするわけでございます。しかし全体とすればやはり
強含みの推移をたどつて、その結果
国際収支の面もまた遺憾ながら
輸出の伸び悩み、
輸入の増大によりまして収支のバランスが悪化したわけでございます。ここに数字をあげてございますように、
昭和二十八年十二月末までの係数は大体わか
つたのでありますが、さらに三月までの二十八年度としての
国際収支の
見通しといたしましては、
輸出が十二億二千万ドル、
駐留軍関係の収入、いわゆる
特需等の合計が八億一千万ドル、その他
貿易外収入を含めまして、受取り合計が二十五億五千万ドル見込まれるわけでございます。これに対して
支払いは、
輸入二十一億七千万ドル、
貿易外支払いを含めて
支払い合計が二十七億四千万ドル程度と推定されまして、その結果
支払い超過額が一億九千万ドル、あるいはこれをある程度上まわるのではなかろうかと想像されるわけでございます。かくのごとく八億ドルにも達しまする
特需収入にもかかわらず、大幅の逆調に転じたのでありまして、この点は遺憾ながら
経済自立とは逆行する方向に向いつつあるような感じを受けるわけであります。
他方国際経済の
主導力でありまする
米国経済の
動向でございまするが、この
米国経済のこれからの
動向がどうであろうかということにつきましては、
米国内部におきましても、あるいは他の諸外国におきましても、いろいろの見方があるようでございまするが、大体においてすでに頭打ちの傾向にあるということが、大体多数の人の
見込みのようでございます。これを契機にいたしまして、各国の
輸出競争は一段と激化するものと予想されることは当然でございますが、従来
国際収支の均衡に大きく貢献いたしておりました
特需収入も、
朝鮮休戦並びに米国の新
政策によつて漸次減少するかとも思われまするので、
わが国当面の目標である
国際収支の均衡、
経済自立の達成の道は楽観を許さないものがあると存ずるのでであります。これは本会議でも申し上げましたように、私どもの
考え方としては、
生産と消費のアンバランスに基く
有効需要の過大によるものと思われまするので、ここでひとつ決意を新たにいたしまして、基本的に財政と
金融の引締めをはかつて、そしてこの過剰な
有効需要を切りたい。これが単にインフレ的な傾向を阻止するのみでなく、進んで国内の
物価水準を引下げる方向において、
経済の安定をもたらすことになるであろう。
従つてこれを根本の方針といたしまして、あらゆる施策を
輸出第一主義に集中することにいたしたいというのでございます。
従つて通産省といしましてのこれからの施策の根本も、当然この
輸出の
振興のために、以下に述べまするような諸方策を一段と強力に推進いたしたいという
考え方でございます。
まず、この
輸出の
振興につきまして考えておりますることのうちのおものな点を以下数項目あげておいたのでございまするが、その点について簡単に御説明申し上げたいと思います。
その一つは、
輸出を阻害しておりまする
外的要因を打破するということでございまして、御承知のように国内の
輸出振興の効力ももちろん非常に大事なことでありますが、同時に従来におきましては、日本の
輸出を阻害する海外からのいろいろの要因があつたように思われまするので、
経済外交の推進ということによりまして、これをだんだんと処理して参りたいという
考え方でございます。その内容といたしましては、御承知のように各国との
通商航海条約がまだ締結されておらないところのが相当ございまするので、これを早期に締結いたしたい、また賠償問題の円満かつ早期な解決をはかりたい、並びにガツトへの正式の加入を促進いたしたい、それとともに
通商協定の拡大及びその有効な活用に特段の努力を払いたいということでございます。
この海外との
関係におきましては、御承知のごとく
日英会談につきましても、一昨日調印ができましたように、一段と躍進して参つたわけでございまするが、他の各国に対しましても、
輸入制限の緩和につきましては特に強く要請を行いたいと考える次第でございます。
日英支払い協定は昨年十二月末をもつて失効することになつておりましたので、
英国側と交渉のため、御承知のごとく
政府は十一月下旬から
代表団をロンドンに派遣いたしまして、鋭意
貿易の拡大、均衡をはかる方針をもつて折衝中でございましたが、このほどようやく交渉がまとまり、
支払い協定に若干の修正を施して、本年末まで延長することといたしましたが、同時に
貿易計画につきましても、昨年の
輸出実績は一億二千二百万ポンドでございましたが、これに比較して
輸出を約六割強増加するものといたしまして、受取り及び
支払い、それぞれ約二億九百五十万ポンドの規模において
話合いができたわけでございます。この際注目すべきことは、
英本国及びその
植民地における従来の
輸入制限措置を大幅に緩和せしめることについて、先方の確約を得たことでございます。
なお
自治領につきましては、今回の
貿易計画のラインに沿いまして、今後
自治領諸国と個別的に話合うことにいたしたわけでございます。これによりまして、昨年における
輸出伸び悩みの
主要原因でありました。
ポンド圏貿易の拡大がはかれるものと期待いたしておるのでございます。
そのほか
目下アルゼンチン、ブラジル、
トルコ等と
貿易協定の改訂ないし締結について
話合いを進めておる次第でございます。以上が対外的な要因によりまするところの
輸出阻害の原因となつた事情を打開して行うということのうちのおもなる点でございます。
その二は、
海外市場の開拓と
経済協力の推進でございます。
明年度におきましては、
国庫補助金を大幅に増額し、既設の
貿易斡旋所の機能の活用と
新設増設をはかり、また重
機械類技術相談室、
海外市場調査機能を整備拡充し、また
海外見本市への参加、
旅商団の派遣、
海外広報宣伝活動の
強化等の措置を進めたいと考えておるのでございます。これがため、これらの施策に対する
補助金の額も、二十八年度の一億八千五百万円余に対しまして、二十九年度の
予算案は、一般的な
節減方針にもかかわらず、三億二千三百万円余と七割強を増額した次第でございます。
次に
東南アジア等との
経済協力を促進いたしまするため、
プラント輸出における
長期延払い等の
優遇措置、重
機械類技術相談室の整備、
技術協力団体に対する
補助等をさらに推進するとともに、
輸出入銀行の機能を積極的に活用いたしまして、最近好況にありまする
プラント輸出の促進に一層の拍車をかけ、あわせて現地の
資源開発のための
技術援助、
事業提携を積極的に講する方針でございます。
次は
国際競争力の
培養強化でございます。この点は、全般的な基本的な
政策が実を結ぶということがその結局のねらいを達成することになることはもちろんでございまするが、さしあたり国産の困難な
近代化用機械及び良質低廉な原材料の
輸入の確保をはかるとうことに特に重点を置きたい。これとともに
リンク貿易、
委託加工貿易を適宜に推進いたしまするし、また
貿易商社、
為替銀行等の
貿易担当者を強化する方途を講する所存でございます。
なお
わが国商品の
割高事情にかんがみ、
財政金融面より一般的に
物価水準の低下を企図いたしておりますることは、ただいま申し上げた通りでございます。
以上のような施策を背景といたしまして、
昭和二十九年度の
輸出入額を推算いたしますると、次の通りになるのでありまして、
ドル地域、
ポンド地域、
オープン・
アカウント地域に一応わけまして、
輸出、
輸入それぞれの
見通しを推計いたしてみたわけでございます。ここに数字があがつておりますがごとく、ます
ドル地域におきましては、
輸出を四億四千五百万ドル、
輸入が十億九千万ドルというふうに見たわけでございまして、この
ドル地域に対する
関係におきましては、先ほども申し上げましたように、ある程度
アメリカ経済の今後の
動向というようなことをも見合せて、こういう推算をしてみたわけでございます。
ポンド地域につきましては、
輸出五億一千五百万ドル、
輸入五億一千八百万ドル、この推計の
見通しはさらによく検討いたします結果、ある程度若干の修正を施さなければならぬかと考えておりますが、一応こういうふうな
見込みをつくつてみました。この点は先ほど申しましたように、
日英会談が成立いたしました等の
関係を考慮いたしまして、これはできるだけ協定で確保でき得たところの限界まで
輸出の努力をぜひともやらなければならないというふうな
考え方がここに出ておるのでございます。
オープン・
アカウント地域におきましては、
輸出四億一千五百万ドル、
輸入五億三千二百万ドルと一応想定いたしますと、その結果が全体で
輸出が
ドル換算で十三億七千五百万ドル、
輸入が二十一億四千万ドルとなりまして、これに
貿易外収支を加減いたしますと、受取りの合計は二十四億七千五百万ドル、
支払いの合計が二十五億六千五百万ドル、差引九千万ドルの
支払い超過、すなわち赤字となるのでありますが、前年度の凶作による食糧の
緊急輸入分を考慮いたしますれば、大よそ二十九年度とすれば、
収支均衡といつてよいのではなかろうかというような推計をいたしておる次第でございます。もとよりこれだけの予定を達成いたしますためには、われわれとしても並々ならぬ決意をもつて
輸出の
振興と外貨の節約のために、あらゆる努力を傾注しなければならぬと考える次第でございまして、この点については
皆様方の御協力をお願いしなければならない点でございます。大体以上が第一の柱といたしました
輸出の
振興ということについて考えております施策の大体の大綱でございます。
次に
中小企業対策について申し上げたいと思います。申すまでもなく、先ほど来御説明申し上げておりますように、
昭和二十九年度の予算及び
財政投資計画が、率直に申しまして相当切られておる。これらによつて表現されておりますところのこれからの
政策ということを考えますならば、これから私どもが企図いたしておりますところの
経済の
正常化ということを達成する過程におきましては、各
企業も相当の苦難を覚悟しなければならないと思われるのであります。なかんずく
経済変動に対しましては、
抵抗力の弱い
中小企業におきましてはその影響を受ける程度が強いと予想されますので、これに対しましては万全の措置を考慮しなければならないと考える次第でございます。そこでまず経営の面につきましては、特に
診断制度の滲透に努めて、各
企業者に自己の
企業内容についての十分の自省を促し、経営の強化を指導するとともに、
協同組合組織の
普及整備をはかり、また
金融対策としても、単に苦境の救済にとどまることなく、自主的に最善を尽して、なお力の及ばないような
企業に対しまして、その
向上発展のために真に必要と認められる資金は、これを円滑に供給するというような
積極的意義を持たせたいと考えておる次第でございまして、
中小企業金融公庫の
運用資金額も、これに備えまして五十億円程度を増額して、百七十億円とする予定でございます。国民
金融公庫の運用と相まちまして、これが運用に遺憾なきを期したいと考えておるわけでございます。また
中小企業、特に
小規模企業に対する
金融上、
信用力の不足がしばしば痛感されますので、新たに
信用補完の
制度充実をはかるために、
小口信用保険というようなことを、近く
中小企業信用保険法の改正として提案する予定に考えておるのでございます。さらに個々の
企業の力の及ばないところを、団結の力によつて補うことも必要でございますので、このためには
共同施設等についても
近代化による効果の発揚というような目標をもつて進ませたいと念願し、特に予算を前年度より一億円余増額して総計三億円といたしたような次第でございます。
なお今回の
税制改正を機会といたしまして、
個人企業及び
中小法人に対して若干の調整を行うべく、現在
政府部内におきまして
関係当局と鋭意折衝をいたしておる次第でございます。
次は
合理化の対策でございます。以上申し述べましたような
考え方は、単に
中小企業に対してのみではなく、いわゆる
基礎産業、
重要産業にももとより一層強く要請されるところでございまして、まず自主的な努力によ
つて企業内容を健全にし、資本の蓄積をはかり、施設を
近代化して、
コストを引下げることに渾身の力を傾けていただきたいと希望する次第でございます。このためには、
政府においても資産再評価、
内部留保の充実に関しまして、税制、
金融等の
制度面において極力これを支持し促進する方策を講する所存でございまして、それぞれ所要の
法律改正を本国会に提案することにいたしておる次第でございます。率直に申しますならば、ここ数年の
産業、
経済界には、いささか自立の気構えに欠けたと思われる節がないでもないのでありまして、国全体の
財政経済政策が、目先の繁栄よりもまず基礎の安定と
物価水準引下げの方向へと切りかえられる転換期にあたりましては、官民を問わず総力をこの一点に集中することがぜひとも必要ではないかと考えられるのであります。たとえば資産再評価につきましても、少くとも税制上資産再評価を阻害しておりましたような原因となつておる事項は、税法上これを取除こうと考えておるような次第でございますが、資産再評価が適正に合理的に行われました場合におきましては、
経営者も
従業員も、自己の
企業の実態が正確に把握されることになりましようし、また株主もこれに対して正確にその
企業の内容の把握ができるというようなことによりまして、
関係者全部が
合理主義の上において、いかにすれば経営の基礎を健全にし、また
政府の
財政政策、
金融政策等に即応して運営がやつて行けるかというような点について、
創意とくふうとが期待できるのではなかろうかと考えておるわけでございます。
従つて、たとえばいわゆる
不況カルテルのごとく
価格維持を目標とするような動きには最も慎重を期さなければならないと存じますが、反面
コスト引下げのために必要とあれば、いわゆる
合理化カルテルの類はむしろ助長すべきではなかろうかと考えるのであります。また
生産コスト引下げを主目標とする
施設近代化のための
財政投資にいたしましても、
明年度の、たとえば
開発銀行をとつてみましても、その
運用資金は六百五十億円程度になるのでありまして、本年度に比しますと二百億円以上の減額となる
見込みでございます。そこで
輸出産業、
基礎産業等の少数の
重要産業部門に対して、必要不可欠と認められるものに限定いたしまして、最も効果的にこの資金を投入いたしたいと思うのでございます。現在電力、石炭、鉄鋼、
合成繊維等、
わが国の
重要産業の
近代化計画は進捗の途上にありますが、
緊縮予算の実施に伴う
物価水準の下降、需要の
減退等を見越し、すでに各業界におきましても
既定計画を再検討し、重点化する機運もございます。
従つてこれらの各
産業に対しましては、
電力事業に三百五十億円で、二十八年度に比較しまして、五十億円減額となつております。
海運事業を除くその他の
産業に百十五億円、これは二十八年度は二百四十億円でありましたから、相当の減額になるのでありまするが、これを割当てることになる
見込みでございまして、その中で緊急を要する石炭、機械、
肥料等の
近代化計画も相当に織り込み、極力
投資効果を早く発現させるように努力いたしたいと考えまして、目下各
業種ごとに具体的な検討を早急に進めておるような次第でございます。また
電源開発会社に対する
政府出資金も前年度よりこれは六十億円を増して、二百六十億円といたしたのでありますが、実行上は一層工費の切り詰め、着工順位のくふうなどの手段をとりまして、当初計画に近い発電量の確保に努めたい所存であります。この電源開発事業は、御承知のごとく
昭和三十二年度までの開発目標五百十万キロワツトに対しまして、今日までに着工いたしましたものは、二十七年度よりの継続工事が三百五十二万キロワツト、二十八年度の新規工事が九十二万キロワツト、合計四百四十五万キロワツトに及びまして、計画全体の八七%でございます。現在までのところ、ほとんど大部分の工事は順調に進捗しておるように見受けるのでございます。
国際収支の均衡を確保したいという基本的な目標を達成いたしまするためには、以上のように外貨受取りの増加に努める反面、工業技術の
振興、国内自給度の向上、資源の開発その他根本的に外貨
支払いを節減する方策を引続き強力に実施しなければならないと考える次第でございます。
そこで技術
振興でございまするが、工業技術の
振興に関しましては、試験研究の一層の推進とその普及が必要でございまして、通商
産業省としては管下の各試験研究所の機能を活用いたしまして、鋭意その
水準の向上に努力いたしておるのでありまするが、民間
企業に対しましては、研究費に対する税法上の
優遇措置を講じておりまするほか、来年度におきましても予算総額の縮減にもかかわらず、本年度と同額の六億円の試験研究
補助金を交付いたしまして、優秀な試験研究及び発明の普及をはかる予定でございます。また戦時戦後の空白期間における技術の国際的後進性を急速に回復いたしまするため、必要と認められまする外国技術の導入、
合理化に必要な機械設備の
輸入は、優先的にこれを考慮するつもりでございますが、他面
わが国の機械工業の設備更新を根強く実施いたしまするためには、単なる
輸入依存にとどまらず優秀な国産機械を増産させ、使用者の信頼度を向上させる必要があると思うのであります。重要機械国産化
補助金を本年度同様一億円計上いたしまするほか、
金融上の優遇その他の具体的措置をこの点について考究いたしたいと考えております。
次に国内における自給度の向上によりまして、外貨の支出を節減いたしまする上から、燃資料源対策について一言いたしたいと存じます。石油資源の開発につきましては、従来から法規をもつて資源の保護をはかりますととものに、その試掘に対しましては、
補助金を交付して奨励に努めて来たのでありますが、最近特にその
輸入量が御承知のように厖大に上りまして、将来さらにその需要増加を見込まれ、かつまた国内の試掘技術も世界
水準を抜くという程度に達しておりまするので、この際国産原油の飛躍的な増産を企図し、五年後年産百万キロリツトルの採油を目標とする計画をつくりました次第でございます。これがため初年度たる二十九年度には試掘
補助金を前年度の約四倍、一億三千万円に増額いたしまして、
企業の探鉱活動を助成することによつて国内油田の発見、開発を促進することといたしたのでございます。
次に石炭につきましては、すでに縦坑の開鑿によりまして
昭和三十二年末までに平均三割前後の価格引下げをはかる目標を立てまして、その促進に努めて参
つたのでありまするが、その後の
経済事情の変動、重油消費の増加等のため、炭種によりましては現在においてすでに一箇年前に比して一割以上の下落を示しておるものもあるのでございます。この傾向は一面におきまして
企業の
合理化意欲を強めることともなりますが、他面経理の安定を害し、
既定計画の遂行を困難にするおそれもありまするので、坑道掘進費の損金算入等、資本蓄積促進のための税制の改正等による効果をも考慮に入れまして、必要最小限度の
財政資金を優先的に確保して、あくまで炭価の引下げ方針というものを堅持する所存でございます。石炭と石油等の全般にわたりまする総合的な燃料対策につきましては、さしあたり石油の
輸入外貨を節減いたしまするために、
関係企業の協力を求めて新規需要に対する重油転換を抑制しつつ、緊急用途に対しましては、その入手を確保する方途を講じまして、もつて石油消費の
合理化をはかるとともに、石炭需給の安定に努めたい考えでございます。
以上が通産省といたしまして今後とるべき施策の大綱と考えておる点でございます。先般ごあいさつにも申し上げました通り、御承知の通り就任早々のところでございまするし、研究の不十分な点も多々あることと推測するのであります。
委員各位の御鞭撻と御援助によりまして、
わが国の
経済自立の達成のために微力を尽したい念願でございます。