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1954-05-27 第19回国会 衆議院 地方行政委員会農林委員会水産委員会建設委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十七日(木曜日)     午前十一時三分開議  地方行政委員会  出席委員    委員長 中井 一夫君    理事 加藤 精三君 理事 佐藤 親弘君    理事 灘尾 弘吉君 理事 吉田 重延君    理事 西村 力弥君 理事 門司  亮君       保岡 武久君    山中 貞則君       床次 徳二君    阿部 五郎君       北山 愛郎君    大石ヨシエ君  農林委員会  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 福田 喜東君 理事 芳賀  貢君    理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐藤善一郎君    松山 義雄君       吉川 久衛君    足鹿  覺君       井谷 正吉君    井手 以誠君       稲富 稜人君    中村 時雄君       安藤  覺君    河野 一郎君  水産委員会  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 小高 熹郎君 理事 川村善八郎君    理事 鈴木 善幸君 理事 中村庸一郎君    理事 田中幾三郎君       中村  清君    濱田 幸雄君       松田 鐵藏君    吉武 惠市君       赤路 友藏君    辻  文雄君       中村 英男君  建設委員会  出席委員    委員長 久野忠治君    理事 内海 安吉君 理事 瀬戸山三男君    理事 佐藤虎次郎君 理事 中島 茂喜君    理事 志村 茂治君      岡村利右衞門君    高田 弥市君       仲川房次郎君    堀川 恭平君       赤澤 正道君    村瀬 宣親君       三鍋 義三君  出席政府委員         自治政務次官  青木  正君         総理府事務官         (自治庁行政部         長)      小林与三次君         建設事務官         (大臣官房長) 石破 二朗君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   鳩山威一郎君         地方行政委員会         専門員     有松  昇君         地方行政委員会         専門員     長橋 茂男君         水産委員会専門         員       徳久 三種君         建設委員会専門         員       西畑 正倫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  奄美群島復興特別措置法案保岡武久君外二十  四名提出、衆法第四三号)     —————————————   〔中井地方行政委員長委員長席に着く〕
  2. 中井一夫

    中井委員長 これより地方行政農林水産及び建設、四委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして私が委員長の職務を行いますから、何とぞよろしくお願いをいたします。  それでは、これより奄美群島復興特別措置法案を議題といたします。まず提案者よりその趣旨の説明を聴取いたします。保岡武久君。
  3. 保岡武久

    保岡委員 ただいま提案になりました奄美群島復興特別措置法案提案理由、並びにその内容概略を御説明申し上げます。  奄美群島在住二十万同胞日本復帰の悲願が、終戦後八年にしてようやく達成され、昨年十二月二十五日正式にわが国復帰いたしましたことは、なお記憶に新たなところであります。敗戦という厳然たる事実の前にやむを得なかつたものとは言いながら、同じ血をわけた同胞があたかも生木を引きさくがごとく、母国ふところから切り離され、大海の孤島に孤立した生活を営むことを余儀なくされた八年の長きにわたる辛苦は、いかに筆舌に尽しがたいものであつたか、まことに御同情を禁じ得ないのでありまして、雄々しくこの困苦に耐えて、母国復帰喜びをかち得られた方々を迎えた八千万同胞としては、この長きにわたる空白をすみやかに埋めるために、できる限りの方途を講じ、同群島の急速な復興と民生の安定とを期することは、その義務であると存ずるものであります。  同群島は、大島本島、徳之島、喜界島、沖永良部島、与論島の主要五島を中心として、大小十余の島嶼からなり、面積は十二万八千町歩でありますが、田畑はわずかに一万六千町歩、総面積の一割三分強にすぎず、経済的にもきわめて恵まれない環境にあります、戦前におきましても、同地域経済的自立はすこぶる困難でありまして、同地域経済内地経済と同様な程度に引上げるためには、国の強力な施策を必要とするものとされ、昭和十年を初年度とする大島振興十箇年計画が立てられておつたのであります。この復興計画は、実施の緒についておりましたが、昭和十二年に日支事変が勃発し、引続き太平洋戦争への進展に伴い、その後遅々として進まず、終戦を迎えるに至つたのでありまして、同地域経済基礎を固めるにはほど遠いものがあつたのであります。その上、太平洋戦争による同地域の戦災は、沖縄失陥に伴い、きわめて激甚で、学校等公共建築物を初め、一般産業施設に至るまでほとんど破壊焼尽され、しかも終戦直後行政分離を宣せられ、その後本土との経済交流はまつたく杜絶し、一般産業窒息状態に陥り、同地域復興は放置にまかされて、八年間の苦難の日が続いたのであります。  以上のごとき経緯にかんがみましても、同地域復興は、単に行政分離中の空白をとりもどすだけではなく、二十年以前からの宿題でもあるのでありまして、強力な国の復興策なくしては、同地域内地並に生きる道がないことはあまりにも明らかであります。さらに一歩進んで考えますに、同地域沖縄に最も近接しており、対沖縄貿易が盛んでありまして、同地域復興は、これらの交易関係にも多大の好影響をもたらすものと考えております。  御承知のごとく、離島振興のための一般的制度として、離島振興法が制定されておりますが、奄美群島につきましては、右に申し述べましたような特殊事情にかんがみ、離島振興注によつてはとうていその復興を望むことができず、強力な特別の復興対策を講じなければならないと信じます。しかして同地域の急速な復興については、できるだけ簡素な行政機構で諸施策計画的に強力に行い、その実効を具体的に上げることが必要でありまして、これがためには総合的な復興計画樹立と、その樹立及び実施に関する事務の一元化、並びに計画実施に要する経費についての国の強力な措置が、緊要であります。これらに関し、すみやかに特別法を制定する要あることは、当委員会においてもさきに奄美群島復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案審議にあたつて附帯決議として明らかにしたところであります。  本法案内容概略を御説明申し上げます。条文の順を追うて申し上げますと、第一条は本法律の目的でありまして、奄美群島復帰に伴い、同地域特殊事情にかんがみ、その急速な復興をはかり、住民生活の安定に資するための特別措置として、総合的な復興計画樹立し、実施すべきことをうたつたものであります。  第二条から第五条までは、復興計画樹立及び実施に関する規定であります。奄美群島復興のため必要な事業は、これを総合的、計画的に実施することが必要でありますので、復興事業は、その地域における総合的な復興計画を策定し、これに基いて計画的に実施することといたしたいのであります。復興計画は、鹿児島県知事計画案を作成し、内閣総理大臣奄美群島復興審議会審議を経て決定するものとし、これに基いて年度別実施計画鹿児島県知事が定め、これを鹿児島県知事及び関係地方公共団体等が、それぞれ計画の定めるところにより、実施するものといたしております。  第六条は、復興事業に関する経費支弁及び特別の助成に関する規定でありまして、同地域復興計画を急速に実現するには、国において強力な特別の措置を講ずることが必要であります。これがため復興計画に掲げる事業のうち公共土木事業については国費支弁とし、文教施設その他の復興事業実施に要する経費につきましては、国は、全額または高率の負担または補助をすることとし、別表において他の法令に対する負担または補助率特例を具体的に定めることといたしております。  なお同地域基幹産業でありますつむぎ、黒糖及び漁業並びにすべての生産の基礎をなすべき電気事業復興を期するために、これらの事業者に対する県の貸付金に対しまして、国の財政資金から、特別融資を行うことができるものといたしております。  第七条及び第八条は、奄美群島復興審議会に関する規定でありまして、復興計画審議、その他奄美群島復興に関する重要事項を調査審議するために、関係行政機関職員鹿児島県知事、同議長、学識経験者、の二十名以内で構成する審議会を、総理府設置することといたしたいと存じます。  第九条は、復興事業実施に関する指揮監督に関する規定でありまして、先に述べましたように復興事業を総合的、一元的に実施するために、内閣総理大臣に、総合調整権及び事業実施者に対する指揮監督権を認め、また、鹿児島県知事には、現地における計画の総合的な実施のために、市町村長等に対する指揮監督ができることとしております。もつとも、この権限復興計画に基く事業の総合的な実施を期するのが本旨でありますので、各省大臣等法令に基く指揮監督権を排除するものでなく、その趣旨を明かにしてあります。  第十条は、復興計画実施に当る職員に関する規定でありまして、復興事業は、国費により、または、高度の国の助成により、強力に実施することが必要と認められますので、現地においてこれに従事する職員は、国家公務員とすることとし、その任免及び進退等建前内閣総理大臣が行うこととするが、内閣総理大臣は、この権限を、鹿児島県知事に委任できるようにいたしております。  第十一条は、復興事業に関する事務の所管に関する規定でありまして、この法律に基く内閣総理大臣権限の行使に関する事務審議会に関する事務、その他復興計画の策定及び復興計画に基く予算の執行に関する国の事務は、一括して処理することが適当と認められますので、これを自治庁において掌理する旨を定めてございます。  附則第一項は、この法律施行期日及び有効期間、第二項は第四条にいう年度別実施計画の本年度に関する特例、第三項は審議会設置に伴う総理府設置法の整理をいたしたものであります。  以上本法案提案理由及びその内容等概略を御説明申し上げました。奄美群島占領八年間にわたる長い空白をすみやかに埋め、同地域の急速な復興をはかり、二十万同胞喜びに燃えて、相ともに日本の再建に邁進する日の一日もすみやかならんことを希求し、本法案の成立を切に願うものであります。  何とぞ、慎重審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  4. 中井一夫

    中井委員長 それではこれより本案に対しまして質疑を行います。その順序につきましては、各委員会交互に順次許すことといたします。なお委員長の手元に質疑の御通告のある方は建設委員会所属方々ばかりであります。つきましては、建設委員会以外の委員会所属の方が御出席の際は急ぎお知らせを願います。村瀬宣親君。
  5. 村瀬宣親

    村瀬委員 私は奄美群島復興特別措置法案に対しまして、主として国土総合開発見地から若干の質問をいたしたいと存ずるのであります。  先般私は奄美大島行つて来たのでありますが、五つの島に住まつておられる方々が、すべて予想以上に窮乏されておりまして、本土生活とあまりにも立ち遅れておるのに驚いたのであります。土地の故老に聞きますと、昔島津藩徳川幕府ににらまれて、木曽川改修工事を一手に引受けさせられて藩の財政が滅亡せんとしたとき、奄美大島の黒砂糖に着目してこれをことごとく藩に収納せしめ、藩の財政を立て直したことが奄美群島の窮乏の始まりであつたと聞かされたのであります。ことにわが国が大東亜戦争に敗れてから奄美群島は八年間も占領政治の捨て子として、日米両国から顧みられなかつたために、二十二万の島民は今なおロビンソン・クルーソーの掛小屋のような家に住んで、中小学校のごときも見るにたえない荒廃の極に達しておりまして、いわば奄美群島敗戦国民が当然課せられねばならない運命を、日本国民にかわつて八年間耐えて来た気の毒な同胞でありますから、日本復帰の念願がかなつた以上は、一日も早く本土並の文化と生活に浴せしむべきことは国家として当然の義務であります。この観点から本法律案を見て参りますと、私はまずこの地域こそ国土総合開発法による奄美群島総合開発地域というようなものに設定をいたしまして、その事務局いわば奄美群島復興局というようなものをつくつて、それによつて真に国家的な立場から公平な正しい——一つ工事をしても、その金が全部島民ふところに潤うというような政治をせねばならないと存ずるのでありますが、本案によりますとすべて知事にまかすという建前になつておるようであります。私は直接地元の人人からも、知事にまかされては困るという幾多の例をあげて要望を受けて参つておるのでありますが、もちろん国が法律をつくる場合には、地元要望にのみ左右される必要はありませんけれども、あの奄美群島立地的条件から考えますときに、私は地元人々心配もまたゆえなきにあらずと存ずるのでありますが、何ゆえにすべてを知事にまかそうとなさるのであるか。もちろんかく言えばとて私は、地方自治の根源を破壊しようとか、あるいは地方自治の区域を分割しようというような思想に出ておるものではありません。問題はあの立ち遅れた島民生活をどうやつて公平に島民の得心の行くような方法で、一日も早く復帰できるかという観点に立つのでありまするが、まず知事にすべてをまかすというこの立法の基本から伺つておきたいのであります。
  6. 保岡武久

    保岡委員 ただいま村瀬委員から大島実情につきまして最も適切な、最も御理解の深いお話をいただきました。私自身も大島住民の一人としまして、まことに感銘にたえないところでございます。深く御礼を申し上げたいと存じます。  御承知のように奄美大島が今日に至つておりまするところにつきましては、沿革的にもいろいろと問題が累積いたしておるわけでございまするし、特に本土から隔絶されておりました南溟離島であるだけに、さらにまた太平洋戦争の末期におきまして、沖縄失陥に伴い、ほとんど完膚なきまでに爆撃を受けた。これも現地をごらんにならなければ想像もつかないくらいに激甚をきわめておるのでありまするが、その後間もなく本土から隔離されまして、米国の占領下になり、しかも大島復興の問題について十分な措置がなされておりませんために、今日疲弊困憊のどん底にあるわけでございます。このためには先ほど提案理由に述べましたように、ほんとうに強力なる国の援助をまたなければ、どうにもならないという実情にあるわけでございまして、それらにかんがみまして、この法律案を提出することに相なつたわけでございまするが、ただ今お説のように、中央におきまして、奄美群島復興のための一つの強力なる機関をつくり、さらにまた直接国が奄美大島復興措置を講ずべきじやないかという御意見一つの御意見として、きわめてもつともな御意見だと考えるのでございます。現地におきましては、いずれにいたしましても強力しかも急速に復興ができるということが一番大事なことでございまして、そのためにどうすればいいかという問題について、いろいろと研究をいたして参つたのでございまするが、何と申しましても、大島鹿児島県の十一郡のうちの一郡でございます。いろいろな一般行政復興事業に関する行政とは有無相通ずる面もきわめて多いわけでございます。従つてそれと同時にいろいろと現地機関をたくさん置こうということにでもなりますと、そのために要する費用も相当かかるわけでもございまするので、現在の機構をできるだけ活用する意味合いも持ちます。さらにまた鹿児島県を通ずるということによりまして、国が直接やることよりも非常に経費がかかる、経費が途中で空費される、あるいはまた適切な施策が行われないということはないという考えのもとに本法案を提出いたした次第であります。
  7. 村瀬宣親

    村瀬委員 提案者の御答弁によりますると、奄美群島復興局のごときものをつくるということには賛成するというような御答弁であります。しかしそうなると費用もいることだしするから、一応知事にまかしてやつても、一向何らの支障はないのみならず、経費のむだもないとお話しになるのでありまするが、私はよその県のことでございまするから、鹿児島県のことは鹿児島県の方にまかしたい気分は山々であります。しかしそで触れ合うも他生の縁と申しまするか、ついこの間奄美大島行つて、実際の奄美群島の姿も見、また島民の意向も聞き、また私は良心的にこうだとかたく信じまするがゆえに、あえてこのことを申すのであります。たとえば昭和七年には非常な不景気に襲われまして、農業匡救土木事業というものを起しました。ところが奄美大島におきましても、これは全国同様に県でやつてつたのでありますが、その金がとかく本土の方に流用されるというので、名瀬新川等につきましては、国が直接その工事費をそのかわりにつけねばならない事態が起つたという先例も聞いて参つておるのであります。あるいは奄美大島復帰に伴いまして、いち早く大島つむぎ展示会東京でこの間やつたのでありますが、その際にも鹿児島市内大島つむぎ展示が非常に多くて、それの準備にはみな飛行機ででどしどし参つた。しかし大島つむぎと銘打つてあるけれども、それは鹿児島のつむぎが大半出ておつた。これは国家的見地から申しますならば、いわゆる大島つむぎ鹿児島が登録してしまいましたから、あとから復帰をいたしました奄美大島のいわゆるほんとう大島つむぎ奄美大島つむぎといつて奄美という字がついておるので、しろうとはどつちが本場の大島つむぎかわからぬような形になつておりますけれども、先般東京展示会でもそういうこともあつたという事例を現に聞かされておるのであります。  さらにまことに恐縮でありますけれども、私もせつかく行つて聞いて来たことでありますから、この際明かにしておきたいのでありますが、昭和二十八年度の十億円の予算をもつてモデルスクールを建築いたしております。二十校請負をさせたそうでありますが、そのうちの九つは土地土建業者請負つた本土土建業者は五割高の見積りであつた。だからこれは五割も安く土地業者請負つておるのであります。ところが残りの十一校は随意契約をもつて鹿児島陸地部土建業者請負わしておる。しかもはつきりした例をあげますならば、鹿児島県の枕崎市の長野建設随意契約をもつて与論中学校、和泊町の国頭小学校知名町の小学校、この三つを請負わしておりますが、この長野建設はさらに地元下請業者を物色中だということを聞いておるのであります。これが第一の例であります。  第二の例を申し上げますと、与論島茶花港から茶花小学校に至る九百メートルの道路の修理工事に対しまして、三十七万円で鹿児島市の伊集院組請負つておる。ところが実際にやつたのはだれかというと、与論島地元村田組が二十万円で請負つておる。十七万円は消えてなくなつております。これが第二の例であります。  第三の例は、やはり先ほどの学校関係でありますが、徳之島の例をとつてみますならば、地元業者は坪五万円で入札をしております。鹿児島市の業者は坪六万円で入札しております。これは会計検査院が将来きつと黙つておるまいと思うが、五万円の地元業者には請負わさないで、坪一万円高い六万円の鹿児島県の業者請負せておる。これは徳之島ちやんとやつておるのであります。ところが地元でその非を追究いたしますと、名瀬市においては地元業者が坪四万七千円、鹿児島業者が五万円でありましたために、これは地元業者請負わせておる。こういうふうな事例を見ますと、地元の人が鹿児島県の知事にまかすのは不安だというのは、われわれが第三者として公平に見て当然だと思うのであります。さらにまた鹿児島県の建築課長の話として、これはみんなに言つたというのでありますが、ブロツク建築地元にはまかせない、強度の耐久検査が行われていないからまかせない、ブロツクは船で二十時間もかかる鹿児島市の方から持つて行つてモデルスクールをつくるのだ、こう言つたというのであります。ところが現に米軍におきましては、沖永良部島の知名町の兵站にはちやんと四階建の兵舎でも電波探知機でも現地ブロツクでつくつておるのであります。でありますから現地のブロックが弱いという証明にはなりません。もし弱いというならば耐久試験をやつて、合格しないから地元はだめだというならば、それはそれでよいと思うのでありますが、耐久試験も何もしないで、頭からこれははるか海をへだてた鹿児島本土から持つて行くのだ、こういうふうなことを県庁の役人が言うことを聞きまして、地元人々はそれでは二十八年度の十億円も、二十九年度の二十億円も鹿児島県の大隈、薩摩本位に金を使うのではないだろうか。国の方針奄美大島復興のために特別の予算を組んでくれたはずなのに、この金によつて潤うものは同じ県ではあるけれども、鹿児島県の本土の方にのみ潤わす方針で、県がこれらの事業を進めておるのではなかろうかという心配を持つのも当然だと思うのでありますが、提案者はこういう事実を御存じかどうか。また私の言うことが間違いであるかどうか、もし間違いでないとすれば、鹿児島県にまかすことが不安とはお考えになるか、ならないか伺いたいのであります。
  8. 保岡武久

    保岡委員 いろいろ事例を述べられて、鹿児島県にまかせることが非常に不安だというような御説を拝聴いたしたわけでございますが、今述べられた事例につきましては、私もつい二、三日前詳しく承つているのであります。ただ学校請負その他につきましては御承知の通りでございますが、すべて会計法規に基きまして請負方法がきめられるのでございまして、その法規の精神が十分に行われているかどうかということに問題があると思うのであります。そういうことでございますので、この問題はいずれにさせることがいいか、悪いかということももちろんでございますが、その前に法規が行われるかどうかということを厳格に監督をし、あるいは指導するというような点で解決ができる問題であるというふうに私は考えるのであります。私も奄美大島の出身でございますので、できるだけ奄美大島業者に仕事をやらせたいということはだれよりも考えております。また今後もそういうふうに努力して参りたいと思つております。しかし業者もたくさんおる間には、適格業者も不適格業者もいろいろあるわけでありまして、それらの問題を十分に検討いたしませんと、この問題に対する判定をただちに下すということはできないのではないかというふうに私は考えておりますが、しかしそういう問題等は今後の指導あるいは監督の努力次第で是正ができる、かように考えております。  なおまた昭和二十七年の匡救事業について、大島に配分されました費用本土に流されたということを承つたのでありますが、これにつきましては私よく事情承知いたしておりませんが、今度の場合は特にそういう点も十分に考慮いたしまして、現在の自治団体あり方等についてもよく事情考えまして、この法律には、土木公共事業等につきましては国費支弁といたしまして、これは鹿児島県の財政を通らないでやらせるということで、体系を明確にさせておるのでございます。さらにまた高度の国の補助というような問題につきましては、鹿児島県以下をして行わしめるのでありますが、これについては一般鹿児島県の財政と別個に経費を区分する、すなわち特別会計をつくらせる。それによりましてすべての使途が明確になりまするように、また他の方面に流用ができませんような措置をこの法律案の中に規定いたしまして、そういうことについての予防の措置も講じた次第でございます。
  9. 村瀬宣親

    村瀬委員 私は自由党のお考えになつておりまする知事官選には反対をいたしておるものでありまするが、しかし今の提案者の御答弁は、知事がもし官選になりましたときにはある程度通用のできる御答弁であります。しかし今日は私自身知事は官選にすべきでないと考えておりまするし、また実際においても知事は官選でありません。そういたしますると、自然県民の中の主要な部分の意向に知事としてはいろいろな配慮を煩わさねばならない立場に置かれておるのは、今日の制度上やむを得ない一つの仕組みなのであります。提案理由の説明にも、南浜の孤島に八年間呻吟して来たとありますが、この南溟の孤島に対するいろいろな計画はともかくとして、その実施面にあたつて今日の身分の知事がいろいろな制肘を受けることは、今日の状態では何人も考え得られることなのであります。ことに五月十九日名瀬市において現在の鹿児島県知事を中心に、約一万人の地元民大会が行われたことは提案者も御存じと思いますが、そのときに集まつた一万人のほとんどがどういう要求をしたか。奄美大島群島復興に対して知事にまかせていいという議論があつたかなかつたかということは、これも提案者はよく御存じと思うのであります。しかしこういうことをいつまで言つてつてもきりがありませんから、法案の各条文について、前後不同ですが、まず第一番に終りの方の第十一条から申し上げてみたい。第十一条によりますと「この法律に基く内閣総理大臣権限の行使に関する事務審議会に関する事務その他復興計画の策定に関する事務並びに復興計画に基く事業予算に関する見積及び予算の執行に関する国の事務は、自治庁において掌理する。」とありますが、予算に関する見積り及び予算の執行が自治庁で役人もふやさずしてできるでありましようか。どういう方法でおやりになりますか。
  10. 保岡武久

    保岡委員 これは予算の見積り並びに予算の施行ということにつきましては、普通の行政でありましたならば、それぞれの行政の体系に従つて各省がそれぞれ予算の見積りもし、予算の施行にも当るということになるのでございますが、奄美大島実情に即しまして、強力にかつ簡素にこういう仕事を進めて参りたいというので、そうするために中央に特別な、今お話になりましたような復興庁とか復興局とかいうものを設けることも一つの問題でありますけれども、いろいろ研究の結果は、現在のような行政簡素化の方向に進んでいるときにおきましては、むしろ既存の機関を利用した方がよかろうということになりまして、それに類するものといたしまして、そういう仕事をやつてもらうものとして、地方のことを平素一番によく考えております、また総括的に心配をいたしておりますところの自治庁にお願いした方がいいという趣旨から、この法律案なつたわけでございますが、もちろんいろいろな役所をつくるということ自体が相当経費もかかることでありますし、また先ほど申しましたように、行政簡素化の趣旨にも逆行するという建前もありまして、自治庁にお願いしますが、自治庁の方では今後機構を拡充するということについては、私何も承知いたしておらぬ次第でございます。
  11. 村瀬宣親

    村瀬委員 だから私は伺うのでありますが、いわゆる権限の行使に関する事務自治庁でやつてもいいのであります。どこかとりまとめの役をおやりになるのはよろしい。しかし復興計画に基く事業予算は、自治庁の何課のどなたがおやりになりますか。ことに復興計画に基く予算の執行のごときに至つては、やる人はないと思うのであります。どうしても予算の見積りや予算の執行をやつてもらうとすれば、新たに人をふやさねばならぬ。そういうことのできる人がおりますか。私はおらないと思うのでありますが、ひとつこの点をお伺いいたします。
  12. 青木正

    ○青木(正)政府委員 この法案考え方は、おそらく奄美群島復帰した当時におきましての奄美群島復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律、あの法律ができましたときと同じような考え方に立ちまして、急速に復興の仕事をやらなければなりませんし、またできるだけ強力に、一元化してやらなければいかぬ、こういうことから普通の行き方とかえまして、自治庁がとりまとめ役の立場に立つてそうした措置をやる、こういうことは前にも復帰の当時きまつたわけでありますが、その考えに立ちまして、今回のこの復興の問題につきましても、予算に対する要求であるとか、あるいはまた事業実施に伴つて予算の配分をするとか、こういうことも窓口を一つにして、できるだけ簡素化してやる必要があるんじやないか。もつと端的に申し上げますれば、自治庁がとりまとめ役になつて予算の要求もし、そうしてまた予算の配分もする、こういうふうにすることが事業を急速にかつ強力に実施するためにはかえつていいんじやないか、こういう考え方に立つておそらくこうした法案ができたと思うのであります。しからば自治庁のだれがやるか、こういうことでありますが、これは自治庁の内部から申し上げますれば、自治庁行政部が中心となつて従来の奄美復帰についての処理をやつてつておりますので、行政部が中心となつてそうした実務を担当する、こういうことに相なると思うのであります。
  13. 村瀬宣親

    村瀬委員 これは何ぼ急いで法案審議を進行してみましても、法律ができ上つたが実際の運用ができぬのでは何にもならぬのでありまして、非常に大事なことでありますから、法律をつくる以上はその法律がぴしぴしと運用ができて、そうして何らの支障のないような、安心した運用面を考えておかねばなりません。私はこの予算の見積り並びに執行をするのには、専門職員を配置せねばできないと思う。これはかつて——今も問題になつておりますが、最初厚生省には水道関係の技術職員は一人しかいなかつたものであります。それがちよつとこういうふうな——これとは違うが、ちよつとあいまいな一文句が入つたために、厚生省には今水道の技術者がたくさん入つておる。こうせねば実際の仕事ができなくなるのであります。そこで私は、私の考えておる予算の見積りあるいは予算の執行をするのには、ぜひとも専門職員を増員せねばできないと思うが、それともこの法律に言う予算の見積りと予算の執行という意味は、われわれが常識的に考えるのとは異なつたものなのであるか、これはどういうことなのか、ひとつ具体的な内容を御説明いただきたいと思います。
  14. 保岡武久

    保岡委員 予算の見積り並びに執行は従来の通りでございまして、別にかわつた行き方じやございませんが、ただこの過程におきまして、この法律ができましたならば大島全体の復興計画というものができ上ります。この復興計画は御承知の通り内閣総理大臣が決定するのでございますが、各関係庁の職員をも主要なる構成員といたしますところの奄美群島復興審議会の議を経ることになつております。従つてその際にもいろいろと、各省所管に関する問題につきましては相当発言もされ、予算内容についても、その審議会できめられました原案に基いて予算の見積りをいたし、要求をいたし、さらにまた予算の執行もいたすわけでございますので、その間において各省とは十分な連絡をとり、また技術的に必要な面につきましては、各省の御指導も十分にいただけるという期待を持つておるわけでございますし、さらにまた各省の大臣の権限の行使について、この法律はいささかも排除する意図はないのでございまして、その点も、この法律にはあるいは規定する必要はないじやないかという気持もあつたのでございますが、特にそういう誤解があつてはいけないというので、各省大臣の権限の行使を全然妨げないという一項も具体的に設けたような次第でございまして、そういうようなやり方で、各省の援助は十分にいただけると考えております。
  15. 村瀬宣親

    村瀬委員 時間もかかるようですから、ひとつ簡単に、イエスかノーかだけを聞いて参ります。そういたしますと、自治庁はこの法律が通りました場合に、この予算の見積りと執行について職員をおふやしになりますか、現在のままでおやりになりますか。
  16. 青木正

    ○青木(正)政府委員 ただいま提案者からも御説明がありましたが、私どもの方の考え方といたしましては、この法律が通りました場合、実際の事業実施内容またはそれに必要なる予算、これは各省の御協力というよりは、むしろ各省の意向によつて予算の内客等もきまつて来ると思うのであります。それを審議会で各省と協議の上、自治省がとりまとめてこれを要求し、執行する、こういうことになると思うのであります。従いまして現在の段階におきまして、特別にこのために自治庁として増員をするというようなことは考えていないのでございます。
  17. 村瀬宣親

    村瀬委員 増員をしないということを言明なさいましたから、私はそれに一応信頼をいたしまするが、しかし現在の自治庁職員をもつてしては、私は奄美大島の期待するような復興に対する予算の見積りや、ことに執行はできないということを断言いたしておきます。  さらにこういう方法によりますと、先ほど提案者は一向各省大臣の権限を侵さないと御答弁になりましたけれども、このままこれを通しますならば、これはそれぞれの単行法により各主務大臣の有している指導監督権と必ず紛淆を来します。文章では書けますけれども、実際仕事をやつて行く上においては、このままで進みまするならば必ず紛淆を来すことを、これまた私はここに明言をいたしておくのであります。その紛淆が必ずまた奄美大島復興の障害となるであろうということも、私は心配にたえないのでありますが、この点はこのくらいにいたしておきます。  次に第八条の審議会委員の構成員につきまして、鹿児島県知事並びに県会議長その他学識経験のあるものにつき内閣総理大臣が二十人以内を任命するとあるのでありますが、これは当然私は大島の二十二万の住民代表、また大島の方は、私行つてみて非常に驚いたのでありまするが、あれほどやせた土地であるにかかわらず、西郷隆盛の流された龍郷村のごとき、人口わずか七、八千の村で、三百何十人が大学を卒業しておる。そのほかにも一村で四百人、五百人と大学を出ておるということに実に驚いたのでありますが、それらの方が本土に参つて、きわめて郷土愛の深い方ばかりなのでありますが、非常に大島振興に努めております。この本土在住の大島出身の代表者、これらの者を必ず入れるということが大島復興の進度を非常に早めるゆえんであると思いますが提案者におかれては、あるいはこれができましたときに、これを実際運用する自治庁におかれては、これら本土在住の奄美大島出身の代表を必ずお入れになる御方針であるかどうか、この際明らかにしておいていただきたいのであります。
  18. 青木正

    ○青木(正)政府委員 法案が成立いたしました場合、自治庁側といたしましても、御指摘のようにやはり大島出身の本土在住者等において適当なる学識経験者がありました場合には、委員に御参加願いたい、かように考えておるわけであります。
  19. 村瀬宣親

    村瀬委員 急行で質疑を早めて参りますが、次は第六条の第四項についてお尋ねいたします。これは当該貸付金額の十分の八に相当する金額の範囲内において、次の者に資金を貸し付けることができるとして、電気事業、つむぎの生産事業、製糖事業、漁業、この四つだけをあげておられるのでありますが、私は現地行つてみて、これは大事なことが落ちておると思うのであります。ぜひともあげねばならない問題は、亜熱帯植物、これは日本の自立経済にもぜひとも大事なことでございます。この四つのことをあげるならば、この四つ以上に、奄美大島復興のためにも、日本国自体の経済自立のためにも大事なものがあります。と申しますのは、たとえばレモングラスの香料、これは今フランス、アフリカから輸入しておりますが、これがりつぱに奄美大島にできる。またバナナも現在二十一万貫ほどできておりますが、品種を改良すれば、数億円に相当するドルを使つておるこのバナナについても解決ができるのであります。ことに栄養植物のパパイヤなどは年百年中鈴なりになつておるという状態であります。あるいはトマトは十二月には自然にできるという状態にありまするから、亜熱帯植物についても、これは当然ここに入れるべきである。  第二には鉱業であります。マンガン燐鉱石、金、銅、ことに大理石のトラヴアーチン、この議事堂のあのまん中の正玄関にありますトラヴアーチンの大理石なんか幾らでも海岸に出ておる。沖永良部島、与論島には海にまで出ておるのであります。燐鉱石のごときは南礼蔵農学博士が本にまで書いて、ラサ島のよりは与論島の方のものが作物によいという著書まで出ておる状態であります。これらに対しては当然この項に該当する最たるものであると私は考える。  第三には蚕糸業であります。徳之島、沖永良部島や与論島に参りますと、防風林は一かかえもあるような桑の木でなつております。一本あれば五グラムは十分飼える。そういたしますと、耕地面積をつぶさずして蚕業が営める。しかも年に六回も蚕繭がとれる。奄美大島つむぎの原料の見地からも、また蚕糸業は換金の一つの重要な産業としてぜひともやらねばならない問題であると存ずるのであります。あるいはタバコの耕作もまた必ず適しておるに違いない。試作地に指定をしてヴアージニア種の葉タバコ等をやりますならば、今野生のタバコは背丈に余るものができておる。こういうものに対しましては、当然ここにおいて資金並びに補助の面を考えて行かなければならない問題でありまするし、さらに林業の面では、大島つむぎの染料の原料でありまするテイチギが今濫伐にまかされておるのでありますから、このテイチギの根まで掘つたならば、大島つむぎの染料はなくなつてしまうわけであります。これらの面について当然ここに配慮が尽さるべきであると存ずるのでありますが、どのように提案者はお考えでありましようか。
  20. 保岡武久

    保岡委員 この法案の準備過程におきまして、今お述べになりましたような事柄についても十分に検討いたしたわけでございましたが、さしあたり政府資金を融資するということは、他の方面にもあまりたくさん例のないことでもありますし、特に大島特殊事情にかんがみまして、その復興ということのために相当限定した考え方を持たざるを得ない実情もこの法律の準備時代にございました。それらの関係で大島のどうしても先にやらなければならぬところの三つの基幹産業、それらのまた原動力でありますところの電気事業に限つたのでございますが、しかし今御指摘のような問題は、奄美大島群島にとりまして非常に大事な問題でもありまするので、それらにつきましては、第六条第三項の第四号に「前各号に掲げるものの外、奄美群島における民生安定のため必要な産業の復興に関する事業」ということで、相当な国の助成によつてそういう問題を解決して参りたい、こういう趣旨のもとに一応基幹産業電気事業復興という問題だけに、政府資金の融資ということは限つた次第であります。
  21. 村瀬宣親

    村瀬委員 私は提案者の御答弁に必ずしも全幅の満足をいたしませんが、次の第十条に移ります。第十条によりますと、いわゆる鹿児島県の県の吏員を、そのまま国家公務員と重複させようという妙な法律案であります。そしてその定員は政令で定める。但し行政機関職員定員法第二条第一項の規定に定める職員の定員のほかにあるというふうにするのでありまして、その任免、進退並びにこれに関する給与の支給は総理大臣が行う。そういたしますと、知事はこれは最も優秀な県の職員であるが、内閣総理大臣はこれを免職させなければならない、こういうことも起り得る規定であります。しかしそれを防ぐ意味かどうか、あるいはこの第十条を骨抜きにする意味か、第四項で「内閣総理大臣は、前項の事務鹿児島県知事に委任することができる。」こういうふうになつている。そうすると一、二、三はみんな消えてなくなつて、結局いろいろとりつくを書いてみたが、最後は鹿児島県知事が何もかもやるのだ、こういうようなことにもなつていて、これは妙な規定でありますが、実際の運用はどうなさるのであるか。たとえば給与の支給は内閣総理大臣が行うのだが、第四項で鹿児島県知事に委任するかもわかりませんが、そういう二途に出るこの法律を通じて、この職務権限の紛淆を来すおそれが各所に出ておるのでありますが、第十一条は非常にそういう心配があるものであります。さらに、基本問題でありませんけれども、法文の一つの例として妙に感じますことは、第九条に、内閣総理大臣はこれらの事業実施する地方公共団体の長その他の機関またはその他の者を指揮監督するとある。その他の者が何も内閣総理大臣監督される理由はありません。工事請負人は契約によつてなるほどいろいろな監督を受けるが、何によつて内閣総理大臣指揮監督を受けるのであるか、これは一体憲法との関係といいますか、その他の者が何で内閣総理大臣指揮監督を受けるのでありますか、これはささいなことでございますが、法文の体系上から一応伺つておきたいのであります。
  22. 保岡武久

    保岡委員 第十条について御答弁を申し上げます。第十条の規定は、これはいらないと言えばいらないとも言える規定でありましようが、しかしながら国が国費をもつて奄美群島復興事業をやり、さらにまた高額の補助をやるということになりますならば、それにつきましてはやはり相当強力な指揮監督ができるような立場にするために、国家公務員として行つた方が、その趣旨を実現する上において適当であるというような考え方からいたしまして、こういう国家公務員にいたした次第でございます。  なおまた、その任免、給与の問題につきまして三項、四項のことについての御質問でございますが、比較的地位の軽い者につきましては第四項をもつてやり、たとえば長であるとかそういうものにつきましては、第三項でやるというふうな考え方を持つておるわけでございます。  なおまた、総理大臣の指揮監督権のうちに「その他の者」と書いてありますが、その他の者というのは、復興計画に基づきまして個人がいろいろと事業の主体者になる場合もありますので、それについては、事業を行う以上は、それぞれ指揮監督することも必要じやないかという趣旨でございます。
  23. 村瀬宣親

    村瀬委員 個人がこの十億を使つて、いろいろ事業をやるということは、これは聞き捨てならぬ問題でありますが、どういうことでありますか。この二十八年度の十億円、二十九年度の二十億円を使つて、個人が何かやるのでありますか。
  24. 保岡武久

    保岡委員 まだ具体的な問題として、今すぐ出ていないと思うのでございますが、将来の問題といたしましては、あるいは土地改良区の事業等につきましては、そういう問題があります。
  25. 村瀬宣親

    村瀬委員 土地改良ならけつこうでありますが、これは言わぬつもりでおりましたけれども、ひとつこの際申し上げておかねば、あとでまた島民がいろいろと立法府をうらむということはないにしても、立法府が非常な苦しい立場になるかもしれないから、今の御答弁に関連して私は申し上げるのであります。御承知の通り大島群島の山林地帯は、官有林が半分と民有林が相当ありますが、それは岩崎産業のものになつております。この岩崎産業に対しまして、農林中金融資を六千万円先般いたしました。これで林道をつくるというのでありますが、この林道は、それより奥にある民有林の搬出にはこの道を通らさないということであります。支庁長の意見を聞いても、それはそう言われる以上はやむを得ぬだろうという意見だというのでありますが、私はこの一つ国家資金の入つている農林中金で貸し出したもので道をつけたものを、その奥の方の山の搬出に通らさない——それは自分の山の搬出に支障のある時期に限つて通らないというのは当然でありますが、そうでない、ふだん道路の遊んでいるときも、その奥の山の搬出に通らさないということでは、それではその奥の方の山は二束三文にたたき売るよりほかないという結果になるのでありまして、ここのその他の者の中にこれが入るといたしますならば、これは大いに警戒を要さねばならないと思うのであります。ことに大島の電気は非常に暗くて、本も何も読めなくて困つたのでありますが、この電気会社も、実は岩崎産業が今の六千万円の中でやつているそうであります。しかしこれらに対しては、現に十億円の中から二千万円が補修費に出るようになつていると思うのでありますが、はたして個人にこれらを出すのであるかどうか。これら電気事業のごときは当然公営にすべきものであつて、県のものにするか、そうでなければ、いわゆる九州電力に包含すべきものであると存ずるのでありまして、今言つた農林中金で金を借りて道はつけるが、人には通らさないというような思想の人に電気事業をやつて、しかもそれに何千万円の国の補助を出すというようなことは、これは大いに考えるべき問題であると存じますので、この第九条のその他の者に、それが入るといたしますならば、十分運営に当つては御警戒を願いたいということを申し上げておくのであります。  そこで私は締めくくりといたしまして、最後に提案者にもう一度お尋ねをいたすのでございますが、いろいろ御説明を承りましたけれども、私が最初に申し上げました、この奄美大島復興事業鹿児島県知事にまかすということの不安は、一向に解消いたしません。従つてこれはどうしても奄美群島復興局というようなものか、そうでなければ総合開発法に基く地方開発区域の設定が、今十八行われているのでありますが、実施しているものは三つにしか達しておりませんけれども、この総合開発法に基く地方開発の区域に設定いたしまして、そこに強力な開発委員会をつくつて、その事務局をして、この奄美群島復興に当らせることが、奄美群島民も安心をして復興に協力するでありましようし、また国費三十億円の使途についても、一片の疑念なくできると存ずるのでございます。たとえば、先ほど申しましたように、職員が二途の監督を受けているようでありますが、鹿児島県の財政の助かるように、この十億のあるいは二十億の金を使つた職員鹿児島県としては功労者であつて昇給をさすかもしれないが、大島復興のためにはそういう片寄つた使い方をすれば総理大臣は罷免をするかもしれない。第十条で私の質問いたしましたのは、知事にまかすとそういう場合の生ずるおそれ必ずしもなきにしもあらずだから、そういう李下に冠を正すような疑いを持つ制度はやめて、すつきりとした、ほんとうに遅れた大島島民復興を国会が念願するならば、虚心坦懐にこれらが真に復興のできる明朗闊達な組織によつてやらねばならないと私は考える。また自治庁がそのお世話役をするということは私は反対ではありませんが、予算の見積りや執行は、現在の定員の職員をもつてしては不可能であるという考えもかえるわけに行きません。従つてどうしても自治庁がこの法律を通してやるというときには、必ずこれらあらゆる部面の職員を三人ずつか五人ずつか、学校建築、道路その他のものをおふやしにならねばならない結果になるのでありますから、そういうこともはなはだむだであり、またこちらから、役所をつくれば、出張その他で費用がいると提案者は言われますが、しかし今のこの機構にいたしましても、今度は鹿児島県知事が上京して来たり、いろいろな役人が上京して打合せるために、結局旅費はそれ以上にいるかもしれないのでありまして、その問題については大して増減はございません。従つて何としても私が奄美大島復興を念願するあまり、良心的に考えますときに、どうしても新たなる一つ機関をつくつて、ただ単に県知事にすべてをまかすのではなくして、島民の得心の行く、一致協力して復興に勇んで協力のできる体制を整えねばならないと存ずるのでございますが、提案者は以上私の質問に対し、最後にどのようなお考えでありましようか、重ねてお伺いをいたしておきます。
  26. 保岡武久

    保岡委員 村瀬委員大島復興についての御意見は、一つの御意見といたしまして、また非常に御親切な御意見といたしまして感銘いたしておるわけでございますが、いろいろ検討の結果、この法案を作成いたした次第でございまして、さしあたりのところはこの法案で十分に目的を達成し得るというふうに考えております。
  27. 中井一夫

  28. 佐藤虎次郎

    佐藤(虎)委員 ただいま提案になりました奄美群島復興特別措置法案提案者にお尋ねいたす前に、委員長に対しまして一応私は動議として提出しておきたいと思います。この復興措置法案審議するにあたりまして、八年復帰が遅れました奄美大島島民の叫びの声はどこにあるかということが根本ではないか、こう私は考えるのであります。と申しますのは占領下に置かれまして、その復興が北は北海道より南は九州鹿児島に至るまでの復興計画というものが八年遅れております。そこで奄美大島島民方々の熱烈なる叫びが——昨年の九月かと私は思つておりますが、この種の促進運動が効を奏し、国民相呼応して、この要求に応じまして、幸いに復帰されたのであります。そこで八年遅れましたところのこの奄美大島群島復興は、ただ今日の叫び声だけであつては、とうていでき得ないと私は信じます。ゆえに二十万島民がどれだけの叫びの声があるかということをまず聞く必要はないか、この声を聞いて提案者趣旨に沿うか沿わないかということが一番大きな主眼でなければならない。幸いにして奄美大島群島復興促進会というものがありまして、われわれの大先輩であり、私が常日ごろ議会史録を読み、あるいはその速記録を読んで崇拝しておる奥山先生が会長を勤めております。こういう権威者、島民の代表者をまず一応呼んで、この奄美大島群島復興はいかにすべきかということを聞くことが、絶対今日必要でありますがゆえに、次回におきましては、どうぞこの島民の声を一応われわれ委員として聴取するということにおとりはからいが願いたい、私はまず開口一番これを動議として提案いたします。  つきましては、提案者に一応お尋ねいたしますが、第三条に「鹿児島県知事は、復興計画の案を作成し、内閣総理大臣に提出するものとする。」とお書きになつております。私は保岡さんともしばしばお会いいたしましたが、保岡さんも非常に御苦労なすつて、今回島民の輿望をになつて最高点で当選されたことを、ひそかに喜んでおるものでありまして、十分あなたの要求にこたえ、この復興計画には一命を賭しても協力してやりたいという熱意でおることには間違いないのですから、誤解なく私の意見を聞いてもらいたい。それは保岡君を初めとして提案者の各位は、奄美大島群島を一日も早く復興させたいという熱意のあまりこの案を会期迫つた今日提案されたものであるが、むしろ私はおそき感ありと思つております。要は島民の今日より明日、明日より明後日へとよりよき生活が営めますような復興計画をつくることが主眼でなければならないと考えております。そこで何ゆえにこの第三条の劈頭に鹿児島県知事は、この復興計画案を作成しなければならないとしたのか、これに私は疑義をもつております。一日も早く復興するということは、鹿児島県からも負担金をなくして、地元島民からも負担金をなくして、国家みずからの手によつて、一日も早くわれわれ同じ同胞である奄美大島島民を、今日の不平と不満から取除いてやることが主体でなければならないはずです。あえてこれを鹿児島県知事が、この案を作成するということが、私は不可解であります。ゆえに私はここで字句の訂正をいたしてみました。「鹿児島県知事は、復興計画の案を作成し、内閣総理大臣に提出するものとする。」ということを、主務大臣は、その所管する行政に関して復興計画の案の作成をするというように訂正なすつたらいかがであろうか、この点を一応まずお尋ねいたします。
  29. 保岡武久

    保岡委員 佐藤先生も奄美大島をとくとごらんのことでございますので、奄美大島復興の問題について、御熱意を持つていただいておる点については、非常に尊敬をいたしております。  第三条の問題でございますが、今の御意見は、各省大臣に復興計画をそれぞれつくらせる方がよくはないかという御意見のように承つたのであります。しかしながら、奄美大島実情行政的にそれぞれの部門について最もよく掌握し、知悉しているものは、地方行政の筋道からいたしまして鹿児島県知事でなければならないというふうに考えるのでございまして、鹿児島県知事実情に即して、この通り奄美群島復興させなければならないという一つの構想をつくることが一番具体的であり、また大島郡民のためにも、最も適切であるというふうに考えるのでございます。さらにまた、今御意見のようなことがありますとすれば、たとえば一つの省がその省の所管する問題について、奄美大島実情を十分に御存じであるかどうか、また御存じになるまでにどれだけの時間がかかるか、そういうように考えましたときには、やはり急速に奄美大島復興を促進いたしますために、鹿児島県知事をして一応の原案をつくらせた方が、最も妥当であるという気持から、この条文の作成をいたした次第でございます。
  30. 佐藤虎次郎

    佐藤(虎)委員 私は過般の選挙のみぎり奄美大島に行きまして、十六、七日おりました。奄美大島群島の道路の延長は、大体百十八キロと私は思つております。この道路は、提案者である保岡さんが一番実態を知つておるでしようが、私はこれを道路と申しません。これは道路の仲間にはなりません。私は建設委員でありますから、ほかのことに対して論及はいたしませんが、鹿児島県知事だけの作成したもので、はたして復興できるだけの予算がとれる御確信がありますか。私はないということを断言します。そこで鹿児島県知事がこれを作成するよりも、所管大臣にすべての案を作成せしめて——自治庁所管でけつこうです、自治庁所管にして一本にまとめまして、所管大臣の意見を十分尊重する。それによつてなし得なかつたならば、しからば鹿児島県知事がこれを作成するといたしましたときに、政府はお金がないのだから、三分の一あるいは二分の一は地元負担せよというお言葉になつたら、あなたはどうしますか。その負担能力があるかないか。それを一応お聞きしたい。
  31. 保岡武久

    保岡委員 鹿児島県知事予算をとるというふうにおつしやるのでございますが、この法律建前はそうじやございませんので、政府が大島復興について各省それぞれの方々の御意見をお聞きになつて内閣総理大臣復興計画を策定されまして、その策定されました年度区分によつて自治庁がそのまとめ役になりまして、自治庁がその予算をおとりになるのでありまして、鹿児島県知事がおとりになるのじやないのであります。その点は御了承いただきたいと思います。
  32. 佐藤虎次郎

    佐藤(虎)委員 そこがあなたと私との食い違いなんです。鹿児島県知事がこれを作成すると申しますが、しからば鹿児島県の道路行政、港湾行政学校行政というものは完全なものであるかどうか。あなた自身も副知事をして、よく御承知でしよう。私も二、三回鹿児島県に行つて参りましたが、率直に言つて申訳ないけれども、鹿児島県のごとき道路は、まだ道路の仲間に入つていません。そこで一日本早く奄美大島復興に寄与せんとするあなたの熱意に対しましては、私は敬意を表して御協力もいたしますが、これは主務大臣の意見を一応とりまとめたものを地方自治庁にゆだねるということでなかつたならば——地元負担金もいらない、国庫の金でやろうじやないか、どうか各代議士諸君賛成してくれというあなたの叫び声でなければならないはずだと思う。それをあえて鹿児島県知事計画を作成せしめるというところに、われわれは断固として反対しなければならないのです。
  33. 保岡武久

    保岡委員 佐藤先生の御熱意非常にありがたいと思うし、また今後ぜひそうしてもらわなければならぬと考えておるわけでございますが、御承知のように鹿児島県にも土木部があります。それぞれ土木部の下部機構もありまして、鹿児島県の道路がどうなつておるか——確かに御説のように奄美大島の道路は道路でありません。鹿児島県の道路も、私は副知事をいたしてよく知つておるのであります。最近は佐藤先生方の非常な御努力によりまして非常によくなつたと思いますが、三年前私が在職中は、全国一の悪道路でございました。そういうことでありますので、これは鹿児島県の貧弱な財政にもよるでありましようが、大島につきましては全額国庫でやるという建前に、この法律ができますとなりますので、結局国がおやりになるということでございます。従つて予算さえたくさんもらえば、十分にできるのでございます。それで予算をもらいまして、各省大臣の御協力をいただいて——というのは審議会におきましても十分に御意見を拝聴いたしましてできるのでございます。やはり各省の御協力によつて案自体もできるのでございます。またその後の予算のとり方についても、やはり各省の御協力をぜひいただかなければならないということは明白なことでございますので、ぜひともひとつ御協力くださいますようにお願いいたします。
  34. 佐藤虎次郎

    佐藤(虎)委員 あなだの意見がそこまで一歩参れば一応考えられるのですが、六条及び十一条によると、復興計画に基く事業のうち、内閣総理大臣の指定するものは全額または高率負担、または補助をなし、これが予算の見積り、予算の執行は自治庁が一切これをなすことになつております。これもけつこうでしよう。しかし予算見積り等については、それぞれの単行法があります。それは主務大臣の有している指導監督権、すなわち河川法、道路法、砂防法という建設大臣の単行法があります。そこでこの単行法を無視してまでもあなたの原案を通そうという御意見になると、この単行法はつぶれてしまう結果になりはしないか。  そこで私は自治庁政務次官にお尋ねしておくのですが、これは所管大臣はその所管する行政に関して復興計画の案を作成するということにいたしまして、自治庁でとりまとめてこの所管をしたらどうか。一体こういうお考えがあるかどうか。自治庁政務次官にお聞きしておきたい。
  35. 青木正

    ○青木(正)政府委員 ただいま提案者からも御説明がありましたが、この復興計画の一応の案は、鹿児島県知事がつくりますが、これを決定いたしますのは審議会で決定するのであります。このときはもちろん言うまでもなく関係各省の御意見によつて決定する。ですから実際の問題といたしますと、佐藤委員のおつしやるようなことになるのだと私どもは考えておるのであります。鹿児島県知事としては、現地事情もよく知つておりますので、一応の案をつくつて出す。これを具体的に決定する場合には、各省の意見によつて決定する、こういう考え方に立つております。
  36. 佐藤虎次郎

    佐藤(虎)委員 私はそこがあなたと違つておるのだ。何のために鹿児島県知事ということにしなければならないかというのです。奄美大島復帰するのは八年遅れておるのです。八年のマイナスを今急速にとりもどすには、——鹿児島県知事にゆだねておつたならば、行つたり来たりしていなければなりません。それには、こちらはこちらで——私どもはちやんと図面を持つて来ております。建設省は建設省で十分調査してあります。農林省は農林省で全部調査してあります。その専門家を四、五人もすつ飛ばしてやつて、実際に測定をさせ実態を見て来れば、こういうふうに道路をつけかえなければならない、港湾はこういうふうにしなければならない、学校は風が強いからこうしなければならない、こういういろいろな問題が出て来ます。そういう幾多の問題がここに山積して、おりますが、その土地復興の第一の主眼は、道路が主体です。それだのに鹿児島県知事にあるということになると、先ほども同僚村瀬君からもお話がありました通り、これは自治庁が主管となつておやりくださつてけつこうですが、その予算の作成というものはすべて主管大臣にあるのでなければならない。こういうのが私の意見であります。でありますから鹿児島県知事というこの字句を取除きまして、所管大臣とすれば、その所管大臣は閣議において毎日お話合いができるではありませんか。あえてわざわざ鹿児島県から飛んで来たり、あつちに行つたりこつちに行つたりする必要はない。私は率直に申し上げるならば、鹿児島県を承認しないということなんです。けれどもそれは言わせてくれるな、私の聞き及んでいる範囲では、それはとうていしのび得ないことなんです。しかしもしこれを通そうというならば、やがてこれは暴露演説にもなりましようし、暴露質問にもなりましよう。それはわれわれも一応国民の代表の一人としまして、そういう暴露演説のような破壊的なことはやりたくない、やはり島民要望している復興に一日も早くこたえてやることが必要だと思つているのです。そうするには責任ある所管大臣ということにこの字句の訂正をすることが、私は最も妥当だと思う。提案者はこれを直すお気持があるかどうか。
  37. 保岡武久

    保岡委員 佐藤議員のお説には、どうもふに落ちない点があるようでありますが……。
  38. 佐藤虎次郎

    佐藤(虎)委員 私もそうなんです。私の方もそれをはつきり言いたくてたまらないのだが、あなた方鹿児島県人に対して、どうもはつきり言えない。
  39. 保岡武久

    保岡委員 鹿児島県を除外するということが私にはどうもわからないのでありますが、私どもはやはり地方行政の筋道は通しておかぬと、大島の今後の問題についてはいろいろな支障を来して来るというふうに考えております。もし何か支障がかりにあつたとするならば、私個人も国会議員の一人といたしまして、今後それを是正するにやぶさかでないし、究極の目的である大島郡の復興ということも十分に考えて、一つの信念を持つてこの法案を作成いたしておるのでありまして、鹿児島県を大島郡の人が全部信用しないということが、はたして言えるかどうかということについては、私自身も大島郡から出ております国会議員といたしまして、そう軽々にそういうことを申し上げることはできないと思つておりますし、またそういう声が全部の声でないということも、私は確信いたしております。
  40. 佐藤虎次郎

    佐藤(虎)委員 これを直す意思がないそうですが、私は絶対に反対いたします。それは、いわゆる劈頭動議として提案しておきました奄美大島島民の声をまず第一にお聞きする必要がある。そこで私は、この復興計画というものを——私どもは鹿児島県をなきものにせよと言うのじやありません。三年なり五年の後にこの復興計画が成り立つた場合には、健全な姿にしてこれを鹿児島県でやつてもらう。けれども一応、今日一番行き詰まつておるものは何かというと港湾、学校、道路です。これらの復興がまず第一に必要じやないか。もちろんこれに付属する産業、経済があります。これらについては自治庁が十分お考えくださるでしようが、一応主体をなしておるものはこれらです。  そこで、私は奄美大島行つてみたときのことを申し上げますと、この奄美大島学校というのには、天井のある学校一つもない。ガラス戸のついている学校一つもありません。第一戸なんかありません、全部あけつぱなしです。そこで私は奄美大島にははぶがいるというが、この天井がないはりの上を、はぶがはつて歩くことはないか、と聞いたら、ありますと言う。これでは講義をしながら一々注意していなければならない。それほど遅れているのです。私は静岡県ですが、静岡県のげす小屋みたいになつていて、石を積み重ねた上に草屋根をふいて、学校の子供が十名ぐらいずつまつ暗い中で勉強しておるのが今日の奄美大島の実態です。この復興というものは、国が何ものをもさておいて十分力を入れて復興せしめて、健全なものにして鹿児島県にやるという親心がなかつたならば国会議員の資格はないと思うのです。そこで私は何も奄美大島を国がとつてしまうと言うんじやない。健全なものにして鹿児島県にやるからそれまで待て、たとえて申し上げるならば今傷のあるものを無傷のものに直してあげますから、それまで国の方の所管にまかしたらいかがです、こういう話なんです。あなたのお考えと私の考えとは大分違つておるのです。その辺についてあなたが誤解して、断じてそういう字句の改正ができ得ないとおつしやるならば、私はこの原案に対しては絶対賛成をしないで、いかなる努力をしても反対をすることをお誓いします。
  41. 山中貞則

    ○山中(貞)委員 私も提案者の一人として佐藤委員の御意見はやはり考えなければならない点があると考えます。一つには法律の面から考えてですが、第十一条について抱かれるような疑念というものは、この十一条の法文の文句そのものに疑義を生じて来る。それに対するはつきりした回答ができないような書き方にされておる点について、そういう御意見があろうと思うのであります。従つて第九条におきましては、第三項として、「当該事業を所管する各省大臣又は県の教育委員会の関係法令規定による指揮監督権限の行使を妨げるものではない。」という規定を持つておるにかかわらず、そういう御意見が出るといたしますならば、私どもは謙虚に反省いたしまして、第十一条の表現の仕方につきまして、そういう疑義を払拭し去るような修正をする必要があるのではないか、こう考えて、もつと個人的にも御意見をお伺いしまして、それについて考慮したいと思うのであります。(佐藤(虎)委員「それならわかる」と呼ぶ)  さらにまた鹿児島県という行政機構に対して、今回のこの特別措置立法において、その存在をどういうふうに取扱うかという問題でありますが、御意見は決して鹿児島県無視に出た言葉でなく、今おつしやつたように振興以前のいわゆる復興をまずなし遂げて、そうしてほかの内地並振興法の適用等が必要となつたときは、ほかの法令通り行政機構としての県庁の所在ももちろん考えるという御意見でありますから、これは私は非常な好意に出発した言葉だと考えておるのであります。但しそれを実際に今回行うといたしますと、国の段階におきまして、そういう御趣旨のようなことを実現するためには、一つ行政機構が必要になろうかと考えるのであります。単にこれは自治庁所管でもけつこうだとおつしやるのでありますが、それたけではいわゆる各省それぞれの立場においての復興計画ももちろんできましようし、またその実現も、私はある意味においてはかえつて促進されるとも考えますが、しかしやはりこういう特殊なところを復興させるにあたりましては、現在の北海道開発庁のような形の機構というものを新しく考えていただきまして、そうして国の力で直接強力なパイプになつて現地に送り込まれて、その目的が達成されるだけの組織を持たなければならないと考えるわけであります。従つてそのような点も御研究になりまして、今国会に間に合うような具体的なものができますならば、私どもまたこれを謙虚に検討するにやぶさかではない、かように考えます。
  42. 佐藤虎次郎

    佐藤(虎)委員 大分折れて来たようだから……。(笑声)十一条に「この法律に基く内閣総理大臣権限の行使に関する事務審議会に関する事務その他復興計画の策定に関する事務並びに復興計画に基く事業予算に関する見積及び予算の執行(第五条第三項の規定による工事に係る予算の執行を除く。)に関する国の事務は、自治庁において掌理する。」と書いてありますが、私はこのうち「復興計画の策定」というところから「執行を除く」までを削除して、策定に関する国の事務自治庁あるいは審議庁が所管するというふうにしてもらいたい。そうすればすつと行つちまう。
  43. 山中貞則

    ○山中(貞)委員 なるべくすつと行くようにやりたいと思いますが、その表現の方法、これは私どもの考え方は当初も現在も同じであります。こういう特別な地区に対する支出を円滑にするために窓口を一つにしたいという念願にほかなりません。決してその窓口に権限を集約して、既往の法令による各主管大臣もしくは各省の権限を奪い去ろうという意図は毛頭ないのでありますり従つてそういうことに御賛同いただいて、そういうお言葉が出るといたしますならば、この第一条の文句については、ただいまおつしやつたように、一気に削除する方がいいのか、または私どもが一応研究しようと考えておりますように、そういう誤解を省くような文言を研究してここに加えるのがいいか。各省主管大臣の権限を妨げられないということを、ここに規定するわけでありますから、ここで応答の間に結論を出さずに、いま少しく研究してみたらいいと思います。佐藤委員の御同意を得たいと思うのであります。
  44. 佐藤虎次郎

    佐藤(虎)委員 今後研究してやろうというならばこれに同意しましよう。要は鹿児島県知事と入れることが復興に大きな支障を来す。これは所管大臣ということでなければ復興計画がスムーズに行かないおそれが多分にあると思う。そこで開会劈頭に動議として申し上げましたが、これを審議するにあたつてまず地元の心がまえあるいは熱意がどこにあるのか。幸い奄美群島復興促進会というのがあります。これの本部が東京の中央区銀座東五丁目一番地三原橋ビル四階にあるように聞いております。そこに委員長の奥六郎先生がおられるようですから、その人たちの意見も一応われわれ委員会としてお聞きしたい。これを動議として提案しておりますから、採決をお願いいたします。
  45. 中井一夫

    中井委員長 佐藤君にお答えをいたします。この問題のために参考とすべくいろいろな人を本委員会に呼ぶという問題につきましては、先ほど来事務当局といろいろ打合せもいたしているのでありますが、この連合審査会におきましては、ただちにその手続はむずかしいというのが規則の建前のようであります。従つてできますならば一応地方行政委員会に問題を持ち帰り、地方行政委員会でこれを決定いたすことになるのが手続の正則のようでございます。御意見、できるだけいれて進みたいと存じますが、その節にはぜひ御出席をいただいて、親しくお聞きをいただきたいと思います。なおその点について地方行政委員会として決してこれを無視したり、軽視をいたしていないのであります。実はこの問題が起りましてから、わざわざ奄美大島から大島郡町村会長有村武義君、名瀬市長の牧義森君、古仁屋町長の蘇我清吉君、さらに県会議員の川井順英君、岡村寛義君、これらの諸君がずつと上京して一日千秋の思いで、この法案の成立を希望いたしているという実情なのであります。従いまして私どもとしては、それらの人々からいろいろな意見も実は個人的には承つているのであります。お示しになりました奥山君の問題は、私も友人の一人としてよく承知をいたしております。促進のためには最も功労のある一人であります。ただしかし委員会として聴取をいたしますならば、現に現地におつて一番よく万事の状態を承知いたしておりますただいま申し上げました人たちの中からこれを選び出すのが、適当ではないかと実は考えているのであります。いずれこの点につきましては、御意見を尊重いたしまして、善処いたしたいと思うております。
  46. 佐藤虎次郎

    佐藤(虎)委員 大分皆さんも質問があるようですから、私はこれで打切りますが、この法案を見ますと、単行法がこれに準用されておらぬ。たとえば河川法、道路法、砂防法に基く建設大臣の権限が何らここにうたつてありません。ただいま同僚山中君からも字句の訂正については、あとで協議しようというお話でありますから、重点的に単行法を尊重するという意味を御承認願つて、私の質問を打切ります。
  47. 山中貞則

    ○山中(貞)委員 単行法については、別表第一をごらんになつていただきますと、全部道路、河川、砂防、それぞれ括弧いたしまして、法律第何号と書いてありまして、準拠すべき規定が列記されてあります。それに基きまして関係大臣の権限の行使を妨げるものではないということが入れてあるわけであります。
  48. 中井一夫

    中井委員長 綱島正興君
  49. 綱島正興

    ○綱島委員 前置きはよしまして、法案を立案された動機には賛成をいたしますが、但し少し私どもが了承しかねる点が本文そのものの中にあるようでございますので、伺つておきたいと思います。特に伺つておきたい点は、御承知の通り国土総合開発、あるいは北海道開発、離島振興等についてもろもろの機関がありまして、審議庁がこれを担当官庁としているのに、この法案に限り、他の産業の関連があるにかかわらず、自治庁に担当官庁を持つて行かれた事情、そうせざるを得ざる事情を伺つておきたいと思います。
  50. 保岡武久

    保岡委員 奄美群島復興につきまして、強力に国が施策していただきますためには、どうしても中央にその所管する一つ行政機構をつくるということが必要でございますが、独立した行政機構をつくるということになりますと、このごろの行政簡素化の問題等もいろいろかち合つ参りますし、またそれに要する経費等も相当かさむということがありますので、それらのものはすべてあげて大島復興事業にそれを投入するというような考え方から、既存の諸官庁の一つにお願いして、そうして総合的な事務を担当していただく、これが適切だという結論に達したわけでございます。しからば自治庁をなぜ選んだかということでございますが、これは従来地方の実情についても十分に明らかでありますし、ことに今度の大島奄美群島復興につきまして、最初から自治庁がいろいろと手がけておりまする関係もありまするし、地方行政全般についての一つの総合的な考え方でいろいろな事務を進めておられますので、自治庁に所管していただいた方が現地としても非常に便利である、またその方が適切ではないかという建前で、自治庁にお願いするという法案にいたしたのでございます。
  51. 綱島正興

    ○綱島委員 およそそういうことを考えておられるのじやないかとも思つたのですけれども、御承知でもございましよう、国土総合開発とか、あるいは北海道開発とか、あるいは離島振興とかいうものについて、国土のあらゆる関係から総合的な計画方針を立てる役所であります。そのための役所であります。その専門の役所があるのに、自治庁の方が都合がよいようだということですが、何の都合がいいのか、都合の内容を伺つておきたい。
  52. 保岡武久

    保岡委員 これはたとえば離島振興法とかあるいはその他の一般法律をもちましては、大島復興にはまだほど遠い、大島復興はそれらの法律の施行の以前の状態である。多年の目標といたしまして、急速な強力な復興をいたして参りたいという建前から、特別な考え方で自治庁ということにいたしたのでございます。都合がいいということは、結局常に鹿児島県の問題、鹿児島県の一部の大島郡の問題につきまして、自治庁がすべての行政を世話しておるわけでございます。大島復興の問題といいましても、一般行政の問題ともいろいろやはり有無相通ずる問題もありまするし、錯綜いたす点もございますので、そういう点から自治庁にお願いするという方がいいのじやないかという趣旨でございます。     〔中井地方行政委員長退席、佐藤(親)地方行政委員長代理着席〕
  53. 綱島正興

    ○綱島委員 そうしますと、私が伺わんとするところは、経済開発が必要なのか、それとも単なるいわゆる行政機構のかつこうともいうべきものが必要なのか、こういうことを伺うのです。端的に伺うのは、人民が求めておるものは、産業が開発されたり、交通が開発されたりすることなのか、それとも機構だけのかつこうを何か整えようというのか、中身かかつこうか、こうお尋ねするのです。
  54. 保岡武久

    保岡委員 中身でございます。
  55. 綱島正興

    ○綱島委員 そうしますと問題があるのです。決して自治庁が悪いとは言いません。私ども自治庁には非常にお世話になつて、たいへんいい役所だと思つておるのですが、しかし適格性がどこにあるかという問題になるのです。ここで問題になりますのは、たとえば私どもの専門としておる農林関係で申し上げますならば、農林のどういう開発をするか、土地改良はどうか、林道はどういうものを通さなければならぬか、その予算はどういうところから見合うことが、特に大島地域として見て妥当であるか、こういうようなことを知らなければならぬ、交通についてもその通りであるし、他のもろくのことについてもその通りでございますが、これを総合的に計画審議いたしておるものは、御承知の通り審議庁という専門の役所である、それやこれらに類するものは全部そうやつておるのですが、大島だけは科学的開発の線に沿つて、その開発をやろうというお考えなのかどうか、こういうことをはつきり伺つておきたいと思います。
  56. 保岡武久

    保岡委員 法案全体を十こらんになれば大体御納得が行くと思うのでありますが、大島郡の状況、どういうところを復興しなければならぬかというような問題につきましては、一番よく知つておるのはやはり鹿児島県庁である、それぞれの職掌を行政的にたくさん伸ばして現に所掌しておりますので、そういう面から大島郡の復興という問題については、この点この点ということは大体鹿児島県において下計画をつくるということは妥当であると同時に、それを中央に持ち込みましたならば、内閣総理大臣のもとにおきまして、経済審議庁も含めるところの関係各省の方々によつて審議せられまして、個々に案が決定いたしますので、各省の各関係の、ことに専門の部門の方々の御意見が十分にそこに反映していささかも科学的その他の面においても支障がないじやないかというふうに考える次第であります。
  57. 綱島正興

    ○綱島委員 各省の人が十分に審議すると言われるけれども、担当の役人以外の者が会議にはなるほど見えるでしよう、審議をしたりいろいろなことをしたりやれるかやれぬか役所でそんなひまが役人にはありはしません。そうでなくてもひまがなくてどうにもならぬところでそんなことができよう道理がない、それはただ文章だけのことなんです。その文章だけのことでよいか悪いかということは立法府として考えなければならぬ問題で、ここに重要性がある。あなたのおつしやる、ただ一晩協議すればそれでよいということなら、それはそれでよいでしよう。しかしただいまの産業計画というものは、すべておのおの各省が専門的技術のもとに科学的組織に基いて開発をやつておるのです。国費は少くて御承知の通り非常に困つておるのでありますから、できるだけやらなければならぬが、むだに使つてもらうことは警戒をいたさなければならぬ、ここが重要な問題です。ただ知つておるとおつしやるが、知つておるという程度ならこれは言うてはいけません。あなたが帰つて来たのはつい最近じやないですか。それからいかほどの知識ですか、そんなことで知つておるなんて言われるものではない、あなたの言われる知つておるという言葉は、知らぬということを言つておられる、こういうことになる、二度か三度か旅行して来て、それで知つておるということなら、知らぬということを言われたのと同じ答えになるのです。そんなふうなごまかしでなく、ちやんとやはり納得する答弁をしてもらわなければ、私どもはそういうことで納得いたしません。鹿児島知事があるいは選挙運動みたような形で練り歩いたとか、あるいは県会が練り歩いたとかいうことで、県が知つておるなんという話では私どもは了解いたしません。私どもは自分の生れた港のことだつて——やはりこれは港湾局かそこらの技師が来て策定しなければ知りません。それを知つていると思うところに欠点がある、この立法全部を流れている考え方は、近代立法に沿わない実に値段の安い立法のようにも見える。そこで知つておるということは抜きにして、どういう事情で一体そういうふうにしなければならぬかを、さらに考えてお答えを願いたい。
  58. 保岡武久

    保岡委員 いろいろ方法があると思うのでございます。御意見のような方法もあると思うのでございますが、鹿児島県の大島郡でありますし、また鹿児島県には御承知のように知事がどうかそれはわかりませんけれども、各部課というのがありまして、各部課がほんとうにこまかい触手を大島郡全体に配つておるのでございます。現にいろいろと行政も進行いたしております。十二月二十五日以来すでに半年くういの間ずつとやつております。また現地には鹿児島県知事のもとに大島支庁がありまして、そこにまた鹿児島県の各部局の部課があります。そういうように多くの触手を大島郡に伸ばしておりまして、私の申し上げていることは現地についてどういうことが一番大事かということも、大体検討をつけているというような意味合いでございます。
  59. 綱島正興

    ○綱島委員 そうでございますと、私どもはその立法の理由に疑問をますます深めるのでありまして、非常に気安く考えて立法されたように思われるのでございます。  次にお尋ねいたしますが、鹿児島県知事復興計画をするという条章は、それはなるほど大体地方民の要求を聞いて一応の計画を立てる、これは私はそう悪くないと思う。これは私の意見ですよ。私はそれは大したことではないと思う。ただ問題は、国のする仕事は全部県知事がやると五条に書  いてございます。国を県と読みかえる実施する市町村長に対する監督権を知事が持つと規定してございます。この監督権の範囲は、地方自治の関連においてどういうことを監督権と言われておるのか。それから十条の規定とあわせてみると、ちようど大島天皇ができるのじやないか。鹿児島県知事は万能になりはしないか。もしこれが悪いことをしたところで、総理大臣にはその罷免権がございません。なるほど裁判をすればいいという規定が自治法のどこかにあるという説明を先ほど聞きましたが、裁判は御承知の通りいつ判決がおりるやらわからぬ。それで罷免権はなく、しかも責任はことごとく国が負うことになる。そうして県の吏員が国家公務員として、これに公務員の資格でやるという。これの罷免権も知事が持つておるわけです。そうすると、国はいいかげんに予算を出すだけで、あとは生かすも殺すも知事のかつてである。つまり科学者でない、農林行政も港湾行政も知らぬしろうとの知事が、これを運営するということになる。一体それに国家予算がうんとつけられるかつけられないか。かような法律をつくれば、かえつて鹿児島県には予算は組めない、大島には予算は組めないということになりはせぬか。はたして大蔵大臣がこれに対して予算を組むかどうか。これを予算審議に持ち込んだときに、一体大蔵省が納得するような法案の説明、また道路の説明、土地改良の説明ができるかどうか、こういう問題になつて参るのでありますが、その点をいかようにお考えになりますか。
  60. 保岡武久

    保岡委員 鹿児島県知事がこの復興事業についてまずいことがあつた場合の罷免権があるかという御意見でございます。これはないと思うのでございますが、しかし内閣総理大臣は、この復興事業についての各種機関指揮監督するということになつておりますし、また各省大臣の指揮監督権を妨げるものではないという規定になつておりますので、いろいろな面において違法あるいは不当の点がありましたならば、その点を改めるには十分な措置はできておるのではないかというふうに考えておる次第であります。
  61. 綱島正興

    ○綱島委員 もし法案を通すとなれば、これについて国が十分納得して予算を組めるような法案にするという御意思があるのですか。それともしいて—こういうことがあるんた、そういうことがあるんだと言つておられますけれども、どうも何もないように私は思つておるのですが、そういうことをしいてやつて、これをこのまま通した方がほんとうに利益だと思つておられますか。私はこういう法案で行けば結局予算が組めない。予算折衝というものは、御承知でもありましようが、非常に難航するものであります。大蔵省の役人に言いまくられては予算はつかない。しろうとが専門にわたる各項目についての予算折衝をして、それが一体できますか。
  62. 保岡武久

    保岡委員 御心配ごもつともと思うのでございますが、内閣総理大臣が、奄美群島復興計画を策定いたします際には、奄美群島復興審議会に聞きますし、審議会の委員にももちろん大蔵関係の方々も入つて来られます。そうしてそこでいろいろ大島にはこうやつたがよかろうというような基本的な問題を策定していただきますので、予算の折衝の際にも、その一つのわく内で予算を折衝することに相なるかと思いますので、根本的な反対をいただくというふうには考えておりません。その間におきましてもまた各省の御援助は十分にいただくということを予想いたし、また希望いたしておるわけでございますので、そこら辺についてもできるだけスムーズに持つて行きたいと考えておる次第でございます。
  63. 綱島正興

    ○綱島委員 もしそうお考えになつておるのならばそれは非常に甘い考え方です。審議会はたくさんありまして、大蔵省がそこに出て来ても、何も言わずに帰つて行きますよ。いよいよ予算を組むときには、あれもいかぬ、これもいかぬと言つて、一切予算は組みませんよ。そのときは出て来て、審議会で策定して、総理大臣の認定した計画書ができたら、それで予算がつくなどと思つていたら、先ほども申し上げたが、失礼ながらそれこそ町村長的な感覚だと言わなければならぬ。予算の実際というものはそういうものじやございません。そういうしろうとみたいなことでは、予算は通るものではございません。大蔵省が出て来たつてつています。各省も黙つています。決して自分の責任になることは各省は言いません。そうして予算になると、どうしてそういうわけには行きません。実際から言えば、こういうことで鹿児島県知事予算書をつくつて出したとする。そうして自治庁が取次いだとする。そうすると大蔵省は各省を呼ぶ出す。各省は、いや私の方はこちらの予算をつけてもらわなければならぬ、こういうことになると、予算は決してつきません。ここにおそらく大蔵省の人も来ておられるだろうが、健際はそうなります。大蔵省は予算の作成のためには、夜も寝ずに二箇月も三箇月も努力してやつておる。それに対してこつちがいろいろ言つてみても、なかなか容易なものじやない。審議会へ出て来ておつたから予算がつくなどと考えておられたら今年は二十億かついたし、去年は十億かついたけれども、それは特別な事情でついたので、これはいわゆるつかみ予算です。大体大島は二十七億ばかり損をしておるから、三十億ばかりつけてやろうというつかみ予算です。これがこうやつて行政機構を通じてということになれば、これでは予算はとうていおぼつかない。審議庁が各産業計画と見合つて出してさえ、なかなか骨が折れるのです。河岸をかえて自治庁にお伺いしますが、自治庁は一体こういうものについて予算をおとりになるお考えがあるか、これをひとつお伺いしたい。
  64. 小林与三次

    ○小林(与)政府委員 自治庁としましては、今お話の通り、かりにこの法案が通ればまず基本的な復興計画ができます。その復興計画は五箇年何十億かあるいは何百億か知りませんが、その計画に基きまして、年度別計画もありましようから、その計画基礎にして各省の意見を聞いて大蔵省と折衝して、奄美群集復興費という形で、現在大島振興費として計上されておりますが、それと同様にあるいは復興費という形で大蔵省に要求して、そうして大蔵省と折衝して、計画通り行かなくても、計画に近い線で予算をきめてもらうように、あらゆる力を尽さなければならぬと存じております。現に今お話の通り、去年も今年もある程度ついておりますから、こうした線をずつと確保して行くということが必要でありまして、そのためにはこの法律も非常に有力な力になるというふうに存じております。
  65. 綱島正興

    ○綱島委員 見解の相違ですから、後日になつて大蔵省が監督権のない予偉を出すものかどうか。これはあとのかけごとにしておきましよう。ぼくは絶対そういう予算は大蔵省は組まぬと思う。自己の監督もできないような予算を大蔵省はほとんど組んでおりません。  それからこの法律案について、もう少し今度は開発事業の中身についてお尋ねをいたしますが、どうも総括して申し上げると、この法案業者助けのような気味が盛んにあります。それが私にはどうも了解のできないことでありまして、二条の計画内容の中で、「つむぎの生産、製糖等の主要産業の復興事業」とありますが、このつむぎ生産ということのうちには、繭をつくることに対する助成がありますのか。御承知の通り、あれは暖地でありますから、掃立て等について、あるいは原種保存等についても特別な設備がいると思うのです。そういうことについて農家に対しての助成をされる意味か、それともこれはつむぎをつくる会社に金をやられる、あるいは金を貸される意味であるか。かつてこういうことがございます。政友会の内閣のときでございましたが、蚕糸救済法というものをやつて、農村の非常な賛同を博した。たしか二億円でございました。ところが実際には農民には一文もためにならなかつたというのは繭が一番安いときに繭業者が買つて、高くなるまで政府から金を援助してもらつてつてつて、一番高いときに売つたから、もうかつた者は製糸会社だけで、農民は依然として最低価格だけしか受けとらない。由来そういうことで非常な手落ちを重ねまして、こういうことについては特別な考え方をいたしておるのでありますが、この法案に見ると、あたかもつむぎ生産とありますが、これはつむぎ原料に対する奨励はされるのか、それともつむぎをつくる事柄について、一体援助されるつもりか。それから次に製糖についても百姓が砂糖きびを植えるところに奨励をされるのか、それとも製糖業者にされるのか、こういう点をひとつ伺つておきます。
  66. 保岡武久

    保岡委員 大島つむぎも御承知のように戦災によつて非常な大打撃を受けまして、その生産施設のごときも七割ないし八割程度が破壊消滅しておる状況でございます。現在は最盛期の五分の一にもまだ復興していないという実情でございますので、強力な国の助成方策によりまして、すみやかに復興して参りたいということでございますが、復興の対象はおそらく協同組合等をして、たとえば生産施設の復興とかいうような問題、あるいは染色の過程における助成とか、いろいろ問題があると思うのであります。今お話のように繭とかいうような蚕業問題につきましては、他の補助事業の中に入れて行くという建前で、この法案を実は立案しております。大島つむぎの問題は、生産施設とかあるいは染色の工程とか、あるいはまた意匠の問題とか、大島つむぎ復興に非常な諸事業があるわけです。それらの復興のために協同組合等を対象として、その資金を融資するということに相なるかと思います。なお繭とか蚕糸問題につきましては、これは基幹産業とはいえないわけでございまして、非常に重要な産業ではございますが、それらの問題は補助事業として別な助成方法で行く。資金融資という点からは一応はずしてあるわけであります。
  67. 綱島正興

    ○綱島委員 大体農政の建前から申し上げますと、補助はなるべくやらない、災害のときに限る、それから非常に虫ができたようなときに限る、融資で開発をやつて行く、こういう建前になつておるのですが、あなたの方はこれに補助を受けたいという考えである。そうすると、農民一人々々のかまどまで補助をするというお考え方でございましようか。
  68. 保岡武久

    保岡委員 日本の他の地域におきまして補助事業というものは大体なくして行くという建前のように承つておるわけでございますが、大島におきましては諸産業がほとんど自力で立つて行けない実情にあることは、綱島委員御承知の通りでございます。それらのうち大事なものにつきましては助成をして行くという特別なはからいをこの数年間はやつていただきたいというので、こういう立法をいたした次第であります。
  69. 綱島正興

    ○綱島委員 私ども非常に心配をしますことは、実は今の問題についてはくろうとが見なくてはわからぬことなのです。育成についてもくろうとであり、技術的にもくろうとである者がこれを判断しないと、この問題は非常にむずかしい問題であるから、実はそう簡単に行かないと思うのです。理由が非常に明らかでなければ補助の金なんかもこれは事実上つかないと思うのです。  それからいま一つつておきたいことは、この二条の七号の中にある「はぶの類及び病害虫の駆除事業」でございますが、実はこの問題は私は非常に懸念してあのときに見て参りました。そこで農林省にもこれを取調べるように言うて、多分農林省ではデータができておるはずですが、実はアメリカから害虫を持つた一本の材木あるいは一つの果実を輸入したために、日本の山が非常な被害をこうむつて、年々何十億という金を使わなければならぬ結果になつたというようなことが非常に多い。ところが奄美大島はどうしてもあのままでは行かない。常夏に近い地域だから、内地の冬分に生うりを持つて来るとか、生なすを持つて来るとか、トマトを持つて来るとか、あるいはバナナを持つて来るとかいたさなければならぬと思うのですが、御承知の通り奄美大島では昔から琉球いもといつてさつまいもが出ておりましたが、今はありもどきのために生産もほとんど皆無に近いのであります。こういう実情にあるので、この病害虫の駆除ということについては、木材についても、果実についても、その他の農作物についても厳重なる監督をいたさなければ、奄美大島のわずかばかりの復興助成するために、内地全部が迷惑をすることになると大問題になる。御承知の通り国際防疫については虫を駆除するということについていろいろな設備がございます。ところがこの奄美大島の害虫はおそらくはアメリカの害虫と違いますから、これは特に研究をいたさなければならない。専門の知識を有する人が、専門の研究と専門の設備をいたさなければこれはできないと思つておるのでありますが、そういう辺のこと等も農林省の管轄にまかさないで、実際知事の管轄で県の役人がこういうことをやられて、失礼だが私どもは賛成はできないから、場合によれば何年間かは奄美大島の農産物の移入について制限を加えなければならぬ。これは奄美大島も大切であるが、内地も大切であるからであります。ちよつとお考えになると何でもないこととお思いになるかもしれませんが、一本の材木のために、国内で年々何十億という費用を使わなければならぬことができて来ておる。そこでこういう問題等かう見ても、これは近代科学を基礎にした専門家をそろえておる各省の監督の上に仕事をして行くのでなければ、安上りのような高上りになりはしないか。そうしてこの趣旨を持つ立法はけつこうだけれども、実行についてはこういう大島振興のような方式でなく、日本の最も進んだ総合的計画を立ててやつて行くのでなければできぬのじやないか、また予算もつけられぬのじやないか、責任ある予算編成は不可能に属するんじやないか、こういう感がいたすのですが、その点についてもつとお考えになるようなことはございませんか。
  70. 保岡武久

    保岡委員 綱島委員のお説まことにごもつともであります。また非常に大事な問題をお話になつておられることも私よくわかるわけであります。ことに今御指摘のありました病害虫の駆除の問題等につきましては、病虫害があるため移出が禁止されておるということで、大島の産業振興、民生安定のために非常に大きな障害を来しておる問題もあるわけでございますが、しかしながらこれは日本全体の問題等も関連することでございますので、これこそほんとう農林省の非常に大きな御援助をいただかなければなりません。現に農林省とされましては、省令をもつて大島の青果物についてはほとんど移出禁止の措置をとつておられるわけであります。これらは私どもといたしましては、一日も早く大きな措置を講じてもらいまして、それらの病虫害がないということの証明のもとに、今後すみやかに青果物等の移出をやつてもらわなければならぬというふうに考えておりますが、それらの取扱いはおのずからはつきりわかることでございますので、どうしても国家的な計画を立てて行かなければならないような問題については、十分に各省の御指示を仰ぐなり、また各省としても十分権限を行使されることについては、この法律はこれを拒否しておるところは全然ないのでございまして、そこら辺のことはどうぞひとつ御了承願つておきたいと思います。なおまた国土総合開発見地から、大島をやるということでございますけれども、大島実情というものはその科学的な調査を待つことのできないほど、非常に困窮のどん底にあるわけでございまして、それらの問題にすみやかに対処して行きたいのが、この法律をすみやかにつくりたいという考えでもありますので、そこら辺の調節につきましては、万遺憾なきを期して参りたいというふうに考えております。
  71. 山中貞則

    ○山中(貞)委員 おつしやることは非常によくわかりますので、ほかの提案者方々とも協議いたしまして、そういう御心配をなくするように具体的に法に規定したいと思います。別表の第一、第二で、ただ単に総理大臣の指示するものとなつておりますのを、主管大臣と協議して指定するものとか、すべての事業の細目についてそういうことを考えて行きまして、そうして先ほど佐藤委員に御答弁申し上げました、第九条第三項の主管大臣の関係法令規定による指揮監督権限の行使を妨、げるものでないという趣旨を、第十一条においてもはつきりとうたえるように、いま少しく研究いたしまして、今御心配になるようなことが実質上排除されるような法律に完備して行きたいというふうに考える次第でございます。
  72. 綱島正興

    ○綱島委員 まことにけつこうな御答弁でありますが、くれぐも申し上げます通り、各省は消極的である。各省が積極的にやつたことであるならば、予算もとろうとするし、省令の解除等も急いでやらうといたしますけれども、各省が関知しないことには、ただ妨げないと書いてあつただけでは、それはそう書いてあるだけで、こちらはかまわないということになると思う。法律をつくるというなら別ですが、ほんとう奄美大島を開発なさろうという熱意があるなら、その法の構成をもつとお考えにならないと、第一予算が組めない。これでは予算はとれないと私は思います。その点を特に御留意を願うわけで、私は茶々を入れるわけではない。これを通してごらんなさい。予算が組めなくてあなた方がお困りなさるから申し上げておるのです。あなた方はこのことをよくお考えになつて、国政の運用をどういうふうにしたらやつて行けるかという責任ある考え方でやつていただきたいと思うのです。この法案は、確かに知事が特別の権限獲得に対して狂奔したものとしか見えない。その裏には予算を浪費するのではないかという疑いがすぐ出て参ります。先ほど驚くほどの発言が村瀬委員からありましたが、そういうことが実証されて参りますと絶対に予算がつきませんので、そういう点も御考慮願いたい。  最後にお尋ねをしておきます。二十八年度の補正第一号十億円の繰越し費目予算は、一体どういうふうに使われたか、あるいはどれだけ繰越しになつたか、これについてお答えを願いたい。
  73. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 お答え申し上げます。大蔵省所管として奄美大島群島復帰善後処理費を組みまして、それを所管の各省に移しかえました金額を申し上げたいと思います。  まず地方財政平衡交付金であります。これは県と市町村に行くわけでありますが、両方で三億二千九百四十七万四千円、それから衆議院議員の選挙の経費が八百六十八万一千円、奄美支庁における国家公務員経費が六百九十一万九千円、それから振興事業費、これは御承知の通り河川、道路その他の経費でありますが、七千百八十五万四千円、電気事業に対する貸付金といたしまして二千万円、奄美群島の産業、事業振興のための貸付金が九百九十七万七千円、義務教育費国庫負担金が五千四百九十八万五千円、学校施設の整備費が一億七千六百四十八万八千円、教科書の無償配付に要する経費が二千百八十三万八千円、生活保護費が一千二百十七万二千円、裁判所を含めました政府の出先機関経費が一億二千五百七十三万二千円、大蔵省所管といたしまして繰越しました経費が一億六千百八十八万円であります。この繰越しました経費のうち、すでに当時から計画が決定しておりました経費が、学校の施設費として一億二千八百七十八万一千円、それから国立癩療養所の整備費が一千八百六十八万四千円、あと使途を確定いたしませんで繰越しました経費が残りでありまして、約一千四百万円であります。
  74. 綱島正興

    ○綱島委員 主計官がおられますからちよつとお尋ねをいたします。今のお話で大体のことはわかりましたが、この予算では二十九年度に二十億円が組まれておりますね。この二十億の法的根拠は当時の現行法で組まれておりますね。そうでなければ組まれない。現行法にかわる新たな法律、たとえば振興法というようなものができたら、それに予算の性質上流用ができるというお考えでございますか、どうでございますか。
  75. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 お答え申し上げます。予算の項といたしましては、奄美群島復帰善後処理費という項でございまして、これは二十九年度奄美群島関係に要します経費には、何でも使えるというふうに考えております。
  76. 綱島正興

    ○綱島委員 その点でありますが、大わくに復興費というふうにただ総目に書いてあればいいといつても、その復興費は当時の現行法で内容はついているわけですね。予算の基本原則からいつて法律によらざる予算というものは組めない。それで復興費というものがついているのは、当時の現行法でついておる。そこで項目が復興費という名前であるから、復興費でありさえすればその後の法律でも何でも流用ができるというように御解釈になりますかどうか。
  77. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 経費を支出いたしますときの法律その他規則に従いまして支出することができる、こういうふうに考えます。
  78. 綱島正興

    ○綱島委員 私の質問はこれで終ります。
  79. 山中貞則

    ○山中(貞)委員 非常に適切な御指導をいただきましたので、もつと研究したいと思つておりますが、おつしやる通り大づかみて十億、二十億二箇年とれましたものの、その次の年度からの具体的な復興計画に基く予算の獲得は、綱島委員御指摘の通り諸種の障害等も感ぜられるかと思いますので、人に知れない苦労をして十億、二十億のつかみ予算の獲得に直接に当つてくださいました綱島委員の今後の御指導を、切に私どもお願いするわけであります。ありがとうございました。
  80. 佐藤親弘

    佐藤(親)委員長代理 他に質疑の通告がありませんので、これをもつて連合審査会を終了いたします。  これにて散会いたします。     午後一時三十四分散会