○滝井
委員 そういうぐあいに国民保険とは別個とおつしやるのですが、
短期給付ということになれば、現在国民保険はやはり
市町村共済組合が行う
短期給付と大体同じことをや
つておるわけなのであります。そうしますと
自治庁も御存じの通り、国民保険は現在
地方財政が不如意のためになかなか進展をしないわけです。ところがその進展をしない中から比較的有利なところに勤務しておる人たちがピツクアツプされて、そうして短期あるいは長期の保険の対象に引上げられて
行つてしまう。残るものはますます弱いものだけにな
つてしま
つて、中小商工業者、農民だけが
残つて、これが
ばらばらにほうり出されているというのが現在の
状態です。たとえば集団的な自由労働者は少くとも集団がある、
地方の
市町村組合の対象になるものはこれでとらえて行く、そうして
事業場のごときは
健康保険で吸い上げられて行くということになると、
ばらばらの中小商工業者と農民だけが
残つて、そうしてこれらのものが永遠に
日本の現在の
状態から行くとまうり出されて、何ら保険の長期、短期の対象にもならない、しかも米は
政府のきめた生産者価格で引上げられて行くという
状態にな
つてしまう。あるいは中小商工業者の金融
はつかないで、これらの人だけが弱い者として放置されてお
つて、何か足がかりのあるところだけが引上げられ、あとはそのままになるということではいけない。やはり足がかりのあるところから、今度はそれを足がかりとしてそれらを何とか包括して行くということに向わなければ、
日本の
社会保障制度は進まないと思う。どうも
政府の行き方は、困難なところはあとにしてやすいところから先にや
つて行くというのも
一つの
方法だが、やはりさいぜん青柳
委員も言つた通り、これは
一つの既得権にな
つてしまう。既得権にな
つてしまうと、それをこわすことが困難な情勢にあることは明らかなことである。国民保険の
運営の主体は
市町村にあるわけですから、当然
自治庁が厚生省とともに、やはり
一つの
推進力にな
つてもらわなければいけない
制度なのです。私はそういうことを言つたわけなのです。
いま
一つは、その
短期給付の対象となる医療機関の問題なのですが、この三十一条
関係でいろいろ療養の
給付及び療養費について書いております。
組合の医療機関からやることができる場合、それから
組合が医療機関と契約をする場合、それから保険医または保険薬剤師に
組合が頼む場合、こういう場合がおもなもので、そのほかやむを得ず緊急でしかたがないというようなときには、いわゆる保険医、保険薬剤師でない普通
一般の医師にもかかることができる、こういう四つの場合にな
つておりますが、問題は
組合員の療養について
組合が契約している医療機関から受けるという、この特殊の医療機関と契約するという問題です。こういうことは
日本の医療
制度を非常に乱すいけないことだと私は思う。それは
組合独自が
福祉機関として医療機関をつくることはいいと思う。ところが現在の
日本の社会保険の形態というものは、やはり公私の医療機関が
機会均等の
立場で
行つておるわけです。しかし現在厚生省あたりのと
つておる
方策がどうもいけないのは、結核予防法ができると結核予防の指定医をつくる、あるいは生活
保護法ができてだんだん医療が拡充して来ると生活
保護法の医療を対象とする指定医をつくる、こういう
制度をどうもとりがちである。そうすると医者同士の間で、何と申しますか、やはりそういう何か
自分がいい子になりたいという傾向が出て来るわけです。こういうふうにわずかに十一万人ぐらいのものを対象にした
共済組合ができると、その
組合がまた全国五万の医師の中から何人かをピツク・アツプして
自分の指定みたいなものにして、そうしてその何人かのものといい契約をして、いい子になろうというようなことは、やはり医療の
機会均等という原則から考えるとどうもいけないことだ。現在こういう
制度は運輸省がと
つておるのですが、各地において問題が起りつつある。鉄道の指定医というものがあ
つて、その指定医に行けばちよつと安くしてくれるとか、何か便宜をはか
つてくれるとかいうようなことで、こういうようなことは結局
日本の医療体制をこわすことになるわけです。むしろこういう特殊の医療機関と契約することでなくして、すべてこれは保険医か公的医療機関というようなすつきりした形として、
日本の医療機関を整備する
意味からも、やはりこういう
措置で新しくあとから出るものはとらない方がいいのではないかと私は思う。なぜかと言うと、三十四条を見ますと「保険医又は保険薬剤師は、
健康保険法の
規定に
従つて組合員及びその被
扶養者の療養を行わなければならない。」こういう
規定までつくつたわけです。そうすると三十一条でこういう四つの場合を考えながらも——
機会均等で四つの場合を並べておきながらも、保険医にはどうしても
共済組合員が保険証を持
つて来たらやらなければならぬぞという義務
規定を負わせることにな
つておるのですね。こういう点から考えても、やはり私はこういう特殊のものをつくらない方がいい、保険医なり保険薬剤師には義務を負わせておるのですから。何もこういうものをつくらなくても医療は順当に行われて行くと思うのですが、どうしてこういうものをつくらなければならなかつたか おそらく既存の
法律にこういうものがあつたから、そういうものをまねしただけですと言うと思う。せつかくこういう
法律をつくるなら悪いものはのけて、やはり生成発展して行く方向に、
日本の社会保険というものはどういう方向に向いておるかを考えて、それを
推進して行く方向に、国民の保険の片棒をかついでおる
自治庁としては考えなければならぬと思うが、この点はどうお考えにな
つておりますか。