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中井委員長 それでは、
派遣委員より
調査報告を聴取することといたします。すなわち本
委員会におきましては、本国全中議長の承認を得て、
制度改革及び町村合併促進に関する問題、
地方財政再建整備及び
地方税制
改正に関する問題、並びに警察消防等に関する
調査のため、九州、中国地方、中部地方及び近畿地方にそれぞれ
委員を派遣いたしましたが、その
調査も終了いたしましたので、これよりその
調査の結果について報告を聴取することといたします。まず第一班より報告を聴取いたします。
私は
調査班第一班といたしまして、その御報告をいたすものでございます。すなわちさきに行いました国政
調査のための
委員派遣につき、私からは九州、中国班の
調査の概要を御報告いたします。われわれの班は、阿部議員と私とそれに曽根
調査員を伴い、去る七月八日東京発、同十四日帰院までの七日間、地域としては福岡、山口、広島、島根、鳥取の五県にわたり、福岡県では門司、小倉、八幡の三市、山口県では下関市を訪問して、主として関門港をめぐるそれぞれの都市の港湾行政のあり方について
調査し、かたわらこれら都市の市政一般並びにこの両県の村政事情をも聴取し、広島、島根、鳥取の三県では、直接県庁を訪問して、県及び県下
市町村の財政事情、町村合併の進行
状況、
改正警察法の
施行に伴う諸問題、また広島市、松江市、鳥取市の三市については、それぞれ原爆被害や災害の復旧
状況、赤字財政の問題等、各市の特異な事情を
調査し、さらに島根県では合併町村の一例として東出雲町を視察、鳥取県では境町に立ち寄る等、短時日の間に、相当広汎な地域に足を伸ばして参
つた次第であります。この間私どもに与えられました各団体当事者の熱心なる御協力は、われらの深く感謝いたすところでございます。
詳細な報告は後日に譲ることとして、ただいまはとりあえず
各地で得た印象のおもなるもの二、三を申し上げて報告にかえたいと思います。
まず町村合併の促進
状況について申しますと、各県とも少くとも県当局は非常な熱意を持
つて促進に努力しており、広島県のごときは県側の推進力が強過ぎるという批判もあるくらいであり、住民の合併一の意欲もなかなか旺盛なものがあるようでありまして、おおむね法律の意図する町村数三分の二減少の目標達成は可能であると感ぜられたのであります。鳥取県のごときは、すでに昭和二十七年七月全
市町村に一斉に知事勧告を発して、その実現に努力して来たのであ
つて、昭和二十六年四月の百六十八
市町村が現在九十に減少しており、進捗率六〇%という
成績であり、さらに本
年度中に三十六町村を減少する予定であるということであります。このように促進法制定以前より合併に努力して
成績を上げて来た県では、促進法に
規定せられた特例自体が、かえ
つてじやまになるという売方もあり、特に議員の任期や定数の特例、住民投票の
規定等は不投票な混乱を生ぜしめるものであるという意見もあ
つたのであります。
広島県のごときも県としては議員の任期延長の特例は援用せず、編入合併のときは吸収
市町村の議員の残存任期に合せる
方針のもとに指尊して来ており、事実一、二の例外のほかはその
方針を貫いているということでありました。同県では法第六条の建設計画は、むしろ合併後に立てさせる方が実情に即し、かつ後にな
つて住民に失望感を与えないでよいのではないか。また知事の諮問については県議会の議決は不要である等の意見が出ていたのであります。
島根県の合併計画は、昭和二十六年四月一日の二百十四
市町村が、二十八年四月までに二百二に減少せられており、合併町村はそれぞれ急速整備を要する
事業に漕手し、すでに施工済みのものもあ
つて、促進法による国、県の優先的取扱いが相当効果的であ
つたことが認められているのであります。合併後の町村の財政は、おおむね健全であるようでありますが、合併前に、合併を見越してそれぞれの町村が不急未済の
事業の完成を急ぐため、赤字を生ずる例が少くないようでありました。結論として、いずれの県においても、財政的裏づけの多少が町村合併の成否のかぎを握るものとして、その一層の強化を希望していたことは当然であり、この点を改善することによ
つて、町村合併は予期以上の
成績を収め、将来の地方自治に一大飛躍が期待されるものと心強く感じて参
つたのであります。
地方財政の問題、特に赤字の問題は、大体われわれの推定したような実情であ
つて、再建整備法の実施の必要を深く感じて来たのでありますが、事詳細にわたりますので、ここには触れないことにいたしますが、特に財政と関連して
改正警察法の
施行に伴う財源不足の問題と、原爆都市広島市に対する国の財政
措置の問題は緊急の問題でありますので、実情の一端を述べて、特に
政府並びに
委員各位のご考慮を煩わしたいと存じます。
新警察法
施行に伴う国の財政
措置が不十分であることは、すでに各位のひとしく認められるところでありまして、今回訪問した行原とも多少の差はあ
つても、いずれも財源不足を訴えているのであります。山口県は二億八千万円、広島県一億五千万円、島根県五十三百万円、鳥取県三億円、いずれも県費の超過持出しを要するという計算でありました。これは国の策定する
地方財政計画の算定基礎となる単価が低いこと、定員外を認めないこと、調整手当の最高額を新給与の三割または七千五百円と定めたこと、事務職員の割合が実際は定員をはるかに上まわること、通信費のごときも、たとえば四級線の電話料金は半額国原補助の対象から除かれていること等が、その原因と見られているのであります。福岡県のごときは、自治体警察の職員数が約七割五分を占め、しかも給与ベースが高いという特殊の事情から、負担はきわめて重いものがあるのであります。もちろん一方、市の側では一千万、二千万円
程度の財政負担の
軽減があるのでありますが、これも警察用財産の無償移譲については、かなりの不満があるようであり、現に広島市では、将来市のために利用する含みをも
つて、目抜きの
場所に新築した庁舎が、
土地ごと取上げられるというような事情にあ
つて、市長は非常な不満の点を表しておられたのであります。いずれにしましても、新警察法
施行の結果は、その
影響するところ重大なものがありますので、その推移を注視する必要があると思うのであります。
次に、各位の注意を喚起したい問題は、原爆の犠牲と
なつた広島市の特殊事情についてであります。御承知の通り、広島市は、広島平和記念都市建設法の制定により、昭和二十五
年度から長崎市と合せて年二億七十万円、広島分一億八十万円の都市建設資金が五箇年計画で建設省から流されているのでありますが、これはいわば戦争の最も悲惨な犠牲をひとり背負
つて立
つた広島市の立ち上りのために、国が支出する
金額としてはきわめて零細なものと言うほかなく、現にこれによ
つて実施されて来た都市計画は、区画整理七四%、排水施設一〇%、幹線街路四九%公共施設六%
程度の進捗を見ているにすぎない状態であ
つて、四〇メートルのメイン・ストリートがいまだに鋪装されず、住民の非難に苦慮しているという市長の述懐を同情を持
つて開いて来たのであります。私は歩道から先に鋪装せらるるがよろしかろうとお勧めして来たような次第でありました。戦時中人口三十四万の住民の大半が原爆の犠牲となり、人口十三万に減少した同市が、今や実人吉四十万の大都市として立ち上りつつあることを思うならば、国の同市に対する援助はあまりにも非沖であると言うべきであります。ことに同市は、今なお原爆障害者六千名、うちさしあたり治療処置を要する者十六百名をかかえている実清でありまして、これに対する対策は、乏しい弧費と市費と民間医療
関係者の奉仕とによ
つて、辛うじて続けられている実情であります。国はほとんど何らの援助をも与えていないということは、今度現地に
行つて初めて認識したところであ
つて、実に驚くはかなか
つたところであります。米国は、いち早く原爆障害
調査委員会、すなわちABCCなるものを設置して、市内に広大な施設を持ち、わが国の厚生省の協力のもとに、一箇年数億円の経費を使
つて、被爆者の症状
調査、健康管理を
行つて、原爆症の診断治療の基礎をつくりつつあ
つて、治療上有益な示唆を与えてはおりますが、いわば患者は研究の材料にされるにとどまり、かんじんな治療自体には手を染めていないのであ
つて、われわれ予期に反した遺憾千万な事実を見まして感慨無量のものがございました。アメリカのためにもまことに遺憾十万に存ずるのであります。
現地の
関係者の広く要望するごとく、原子力災害の研究と治療の総合機関を広島に設けて、よりよい治療の手段を知り、かつ将来起り得べき障害を予知し、さらに類似の災害時における救護方法を研究することの必要は、すでに原子力時代に突入し、ビキニの灰のもとに生活する現下のわが国として、緊急の事案であると考えるのでございます。この施設の設置に約一億五千万円
程度、年間の経常費三千万円、治療費約六千万円、このほかは、治療中の患者の生活保証費若干を要するというのでありますが、国は当然その責任と面目において、この
程度の施策を講ずべきであると思うのでありまして、私は各位とともに、ぜひともこの実現を期したいと存ずるものでございます。
最後に、町村合併によりまして市制をしきたい場合の人口要件の問題でありますが、その一
事例として今回見て参りました鳥取県の境町という山陰地方屈指の良港を持つ町が、付近五箇町村と合併して港湾都市として市制をしきたいというのであります。この場合、現に災人口は三万三千に達するが、告示人口は、三万人に対しわずか二百五十七名ほど不足しているのであります。しかしてこの町の海湾の規模並びに将来性を考えるとき、当然都市としての性格を約束されているにかかわらず、地形上三万は海、一方は米子市に囲まれていて、他に合併すべき町村もしくは一時人吉を借りて来る地域を持たないのが実情であります。これに対し、現地はもとより、県も特例として市となることを許していただきたいと強く要望しておるのでありますが、かかる場合何らか特例
措置のとれる道を考究すべきではありますまいか、この点特に
自治庁の深き御考慮を煩わしたいと思うのでございます。
いろいろ御報告いたすべき問題はございますが、以上とりあえず心づきました数点のみを申し上げまして、私の御報告にかえる次第でございます。(拍手)