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1954-05-10 第19回国会 衆議院 地方行政委員会 第58号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十日(月曜日)     午前十一時十六分開議  出席委員    委員長  中井一夫君    理事 加藤 精三君 理事 佐藤 親弘君    理事 灘尾 弘吉君 理事 吉田 重延君    理事 鈴木 幹雄君 理事 西村 力弥君    理事 門司  亮君       尾関 義一君    熊谷 憲一君       西村 直己君    山本 友一君       床次 徳二君    藤田 義光君       古井 喜實君    阿部 五郎君       北山 愛郎君    横路 節雄君       伊瀬幸太郎君    大石ヨシエ君       大矢 省三君    中井徳次郎君       松永  東君  出席国務大臣         国 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部次長     谷口  寛君         国家地方警察本         部警視長         (総務部長)  柴田 達夫君         国家地方警察本         部警視長         (警務部長)  石井 栄三君         国家地方警察本         郡警視長         (刑事部長)  中川 董治君         国家地方警察本         部警視長         (警備部長)  山口 善雄君  委員外出席者         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 五月八日  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出  第一七八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  警察法案内閣提出第二二号)  警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法  律案内閣提出第三二号)     —————————————
  2. 中井一夫

    中井委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き警察関係法案を議題とし、質疑を続行いたします。両案に対する逐条質疑は、前会におきまして、第四章都道府県警察についての問題が残つておりますので、通告順によつて順次これを許します。古井喜實君。
  3. 古井喜實

    古井委員 質問いたします点がすでに質問応答が済んでおつて、重複しておるような場合があつたならば、委員長から御注意を願いたいと思います。
  4. 中井一夫

    中井委員長 承知いたしました。
  5. 古井喜實

    古井委員 まずお伺いしたいと思いますのは、三十七条の三項に関係してであります。都道府県支弁に係る経費については、予算範囲内において、政令で定めるところにより、国がその一部を補助する。」という規定があります。この補助というのはどういう性格で、どういう趣旨のものでありましようか。補助というのでありますから、普通の場合には当然都道府県で持つべきものに対して援助するというふうな響きがするのでありますが、そういう意味補助でありますか、それとも都道府県と国費と双方負担すべきものである、その負担すべき部分を与えるという意味でありますか、どういう意味でありましようか。
  6. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 お尋ねのございました第三項の補助金性質でございますが、これは負担金性質のものでなくして、予算範囲内において、今古井先生お尋ねのございました援助するといつた意味の、地方財政法によりますれば十六条の方に当りますところの補助金である、かように考えております。
  7. 古井喜實

    古井委員 そうしますと、これは普通当然には都道府県において負担するべきものであるという種類経費に対して、何がしか、すけてやる、こういうふうに了解できるのでありますが、この都道府県支弁にかかる経費内容を考えてみると、庁舎経費あるいは警察職員給与経費等があると思います。そこでこういう種類経費は、いわば警察機構を維持するための、つまり活動面というよりも、警察機構を維持するために必要な経費のように思うのですが、この経費は前会の質問応答の場合にも、大体これは国の仕事であるものを都道府県という団体に委任したという性格のものだという御答弁を伺つたのであります。そういう性格のものじやないか。そのための経費ではないか。そこにただいまおつしやる点と、ちよつとしつくり来ない点があるような気がするのであります。なおまた庁舎にしても、警察職員給与にしても、庁舎とか警察職員は、自治体の本来の警察活動だけをやるのではなくて、国の警察活動もやる、両方やる機構だと思うのです。そうとすると、これはやはり都道府県と国と両方がわけ合つて分担すべき性質経費ではないだろうかと私は思うのであります。ただいまの御説明ではそうでないのだ、こういうことでありますが、少しそこのところがぐあいが悪いのじやないかと思いますけれども、やはりそうお考えになりますか。
  8. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 今御指摘のありましたような事項につきましては、確かに都道府県だけの負担にさしておくべきものではなくして、国も経費負担すべき性質を持つものであることは、お話通りだと存ずるのでありますが、これを厳密な意味におきましての負担金ということにいたしまして、府県が実際上支弁いたしますところに対しまして、厳格な意味においてかつて連帯支弁金のように、一定の率を負担するということは、どうしても困難であるという事情からいたしまして、やむなくこの点は、予算の定める範囲内において一定の率をきめまして、補助金を出すということにいたしたのであります。そうなりました以上は、この補助金性質は先ほどお答えいたしましたように、厳密な意味負担金ということを言い切ることができなくなつているのであります。そういう意味におきまして、これはその性質自体補助金になつておる、かようにお答えをいたしたのでありますが、その内容におきましては、でき得る限り負担金と同様な方法によつて支出することが適当であろうという点については、御意見通りだと思いますので、この予算範囲内におきますところの補助金につきましても、予算範囲内という前提のわくがございますけれども、原則として半額を補助するというふうにいたしまして、ただ一方的にわずかながら補助をするというものではなくして負担金に近い性質を持つところの補助金というふうに実際におきましては運用して参りたいというふうに考えております。
  9. 古井喜實

    古井委員 今の御説明で、本来はこれは昔の連帯支弁金に当るような、双方で分担すべき性質のもののごとくであるが、しかしながらこの法律では予算範囲内において云々というふうになつちやつたものだから、補助金ということにもなつてまつたのだというふうに了解される。そうすると、この予算範囲内においてということを書いた法律が、そういうふうに本来の性質をかえてしまうということになるような気がするので、それならばこの法律自身の問題になつて来るのではないか。つまり予算範囲内においてということをかぶせること自身が問題になつて来るのじやないか。法律、あるいは法律が委任するとすれば、委任の政令でもつて分担割合はつきり書くべきものではないか。こういうように法律が曲げてしまつたのだというならば、本来の性質に返すことが至当じやないかと思うのであります。従前の連帯支弁金の場合と違わぬのじやないかと私は思うのです。その辺については、もしこの法律が悪いならば、法律を修正するという問題になり得るのであります。御説明によれば、この法律を直しさえすれば本来の性質に返るのだ、直すことがベターであるというように伺えるのでありますが、そうでありましようか。
  10. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 現行法におきまして、特別区の警察に対しまして、やはりこの種の負担金と申しますか、法律用語では負担金補助金を区別しておりますが、負担することが書いてございますが、この道が二十七年度の改正以来開けております。これにつきましても、今お話がございましたような、首都警察性格上国が分担すべき性格を持つということが前提としてあるのでありますが、やはり予算範囲内という文句が入つておるのであります。それでこの府県経費負担全体の考え方でございますが、この全体を古井先生お話のように、全部かつて連帯支弁金のような形で厳密な意味負担金にするという考え方も、考え方としては確かに筋の通つた考え方一つであろうと考えるのであります。今回の経費負担方法につきましては、一定の国家的な活動とか、あるいは広域的な活動とか、それ自体府県負担させることは非常に不適当であると考えるものは、進んで全額国庫支弁するということを第一項に定めたわけであります。そういう種目のものが一つ。しこうしてそれを除きましたものについては、今の第一項のものよりは、国が分担すべき程度というものはおのずから低くなつておるわけでございまして、それに対しては予算範囲内において、しかしながら一定の率をきめまして、負担金同様の形において補助をする。ただその本質的な相違は、やはり最高額というものをきめまして、一つの国で定めたところの最高額に対して一定の率を負担する。これは厳密な意味においてはやはり補助金と解せざるを得ないので、この法律においては、予算範囲内において補助するというふうに規定いたしたのであります。もしこれを「予算範囲内において、」をとつて、これを負担するとやれば、絶対的な意味においての清算補助的なものにしなければならぬということになるのでありますが、それは国の財政の許すところでないという見地からいたしまして、一定国家性と申しますか、府県負担することが不適当なものは、全額国庫支弁といたしておりますので、爾余のものにつきましては極力負担金に近い補助金で満足する、こういう別な方法で、今回の経費分担については質的にそのことをわけまして、かような方法をとつた、こう御説明を申し上げた方が適当であろうかと思います。
  11. 古井喜實

    古井委員 それでは大体結末ですけれども、前に、この警察機構自身都道府県が設けるということは、都道府県という団体に対して、国の仕事を委任したのだというふうに私は説明伺つて、了解して帰つたのであります。そうとすると、地方財政法からいうと、十条の規定に当る性質のもののように思う。また分担割合等は十一条の建前によるべきもののように思うのであります。従つて算定基準とか分割合筆は、法律あるいは政令できめていいのでありますけれども、しかし予算でもつて総額を締めてしまう、これは少しぐあいが悪いということになるのじやないか。やたらに経費が膨脹するという心配は、地方財政法十一条式のことで十分に押えることができる。地方財政法はむろん法律ではありますけれども、こういう方面については基本法で、精神から言えば憲法のごときものである。そこでその建前にのつとるように、やはり警察経費についてもきめるべきものではないか。何の心要があつて予算範囲内と書かねばならないか。十分算定基準を書いておけばいいのじやないかと私は思うのです。これは少しだらしないじやないかと思う。警察をお扱いになる御当局としては、予算範囲内においてという文句をのまれることは、少しどうかと思うのです。この辺について十分御弁明にならぬような気がするのでありますが、もう一度得心の行くように伺つておきたい。
  12. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 今のお話のように地方財政法の十条の規定によりまして厳密な意味負担金で割切つてしまうべきだというお考え方からすれば、この第三項に関する限り確かに不徹底なものであると思いますが、これを予算範囲内ということにとどめましたのは、突き詰めて申しますれば、国の財政上の観点からやむを得なかつた、かようにお答えいたすよりほかにしかたがないと思います。
  13. 加藤精三

    加藤(精)委員 関連して……。ただいまの御質疑、非常に興味深く拝聴したのでありますが、三十七条三項の場合具体的にはどういう問題になるか。私は三十七条の第一項にほとんどすべての経費を網羅しておるような感じがいたします。しかも説明によれば人件費被服費赴任旅費、人当庁費等は全部国庫補助から除外になつておるのであります。あと残るところはどういう経費があるか、ちよつと想像がつきかねるのでありますが、実質的に、どういう部分連帯支弁がいいか、あるいは国庫支弁がいいかという対象ですね。地方財政法の十条、十一条で考えるのがいいか、十六条で考えるのがいいか、その対象になる分野の経費はどんなものでしようか。派出所、交番とか、警察の建物をつくるとか、そういう種類のものでございますと、財政力の非常にいいところはおそろしくりつぱなものをつくる、そういう問題も多分に起ると思いますので、実質的にどういうものであるかということを一応お請いただけたらありがたいと思います。
  14. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 第三項で補助対象になるような種類経費はどんなものであるかというお尋ねでございます。先般も御説明いたしましたように、この補助の場合におきましては、職員の設置に伴つて当然必要となる経費、すなわち人件費被服費、それから赴任旅費、人当庁費こういうものだけを除きました残りについて補助をいたすことになるのでありますが、しからばその残りになりますところのものは、どういうものかについて申し上げますと、第一項におきまして、ここに掲げたような経費国庫支弁にいたしておりますので、これに当ります補助対象になります経費一般犯罪、つまり第一項の八号に当るような犯罪ではない一般犯罪の捜査、それから防犯活動経費、あるいは交通取締り経費あるいは警備に関する経費の中で、いわゆる集団的な警備活動経費というようなものを除いた、祭礼でございますとか、競輪でございますとかいつたような、普通の行事に対します警備に関する経費、それから先ほど来御指摘のありましたような警察署その他の庁舎施設関係経費、大体こういうものが補助対象になることになつているわけでございます。その補助割合は、政令によりまして、原則として五割というふうに考えております。
  15. 中井一夫

    中井委員長 加藤君いいですか。
  16. 加藤精三

    加藤(精)委員 けつこうです。
  17. 古井喜實

    古井委員 ただいまの御説明によると、人件費に対しては補助がない、こういうことであります。ところが地方公務員たる警察職員というものは、まつたく地方自治体的な警察活動のみならず、国家警察的な警察活動もやるのである。しかしそういう人間の人件費は何も見ない、こういうことになるようであります。そういう辺は私少しぐあいが悪いじやないか、こういう感じがするのであります。やはり「予算範囲内において」というのは、国の財政を守る意味でありましようけれども、しかし法律算定基準等を分担するにしても、算定基準と書けばそう心配はない。またそうきまつたものを用が出さぬというりくつはないことにたるので、「予算範囲内において、」というのは、今までの御説明ではどうも十分得心が行かぬのであります。しかしこれは、おそらく御説明はその辺まででありましようから一応そこに置いておきまして、要するに得心が行きませんということだけこの問題については申し上げて、次の点に移りたいと思います。  次は、たいへん幼稚な質問で恐縮でありますが、三十八条の三項—三項だけ言つては正確でございませんが、「都道府県警察管理する。」この「都道府県」というのはどういう内容でありますか。つまり都道府県警察機構、それから警察活動ひつくるめての意味になりますか。たびたびこの「都道府県警察」という言葉が出るのですが、場所によつてちよつと頭をひねらぬとわからぬようなところがあるのです。この三十八条の三項の場合はどういう内容、どういう意味合いでありましようか。
  18. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 都道府県警察と申しますのは、この法案におきましては、警察仕事は全部都道府県警察の事務としてやらせる。そうして必要最小限度において国がこれを指揮監督あるいは関与する。そこで法令の定めるところに従つて都道府県警察は運用されなければなりませんが、その範囲内におきまして、都道府県はその都道府県管轄区域内におきまして警察の一切の責任任ずる、こういう観念でございます。従いまして、三十八条三項の「都道府県警察管理する。」と申します点床は、都道府県警察機構も、行政運営一切の管理を含むわけであります。
  19. 古井喜實

    古井委員 そうしますと、警察機能の面では、自治体警察的な機能と国家警察的な機能、つまり国家警察的な機能のうちで、当該都道府県区域内に関するもの、その双方機能の面では含んでいるという意味でありますか。
  20. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 さようでございます。この法案におきましては、しばしば御説明申し上げておりますように、警察働きから見ますと、国の利害に非常に関係の多い働きもあり、あるいは地方利害に非常に関係の深い働きもあり、これをどれが国家的な警察であり、どれが地方的な警察である、こうわけないで、全部、都道府県警察仕事として都道府県にやらせる、こういう仕組みでございますから、考え方はお説の通りであります。
  21. 古井喜實

    古井委員 「管理する。」というのは所属都道府県公安委員会にあるというだけの意味でありますか、その運営活動等にも実際的に関与するという意味でありますか。この「管理」というのの意味でありますが、これはどういうことになりましようか。ただ所属公安委員会にあるのだというだけの意味でありますか、もつと実際的に関与するというところまで含んでおるのでありますか。
  22. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 都道府県警察責任を持つて指揮監督する、こういう意味でございます。従いまして、管理をいたすのでございます。
  23. 古井喜實

    古井委員 そこで、都道府県警察本部長警察職員指揮監督するという規定があるようでありますが、委員会としては警察職員指揮監督する権限はないように見られるのであります。そうすると、警察職員に対しては、都道府県公安委員会としては何の権限も直接にはない。あとは何があるのでありましようか。職員任免権についても、都道府県公安委員会意見を聞かれるだけでありまして、自分には任免権はない、こういうことになつておるということであれば、実際面に関与するといつても、名目だけであつて、     〔委員長退席加藤(情)委員長代理着席〕 実際は関与しないということになるのじ、やないかと思うのですけれども、そうじやありませんか。
  24. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これは都道府県警察本部長は、都道府県公安委員会管理に服するということに相なつておりまして、警察本部長指揮監督をするわけであります。従いまして、警察本部長を通じて都道府県警察警察職員指揮監督をする、こういうことに相なるのでございます。その場合に、しからば警察本部長がその公安委員会指揮に服さないというような場合には、懲戒罷免勧告権を持つているわけでございます。また本部長が部下を任免する際には、公安委員会意見を開くということに法案はつくられておるのでございます。
  25. 古井喜實

    古井委員 警察職員指揮監督する者は都道府県警察本部長である。それから都道府県警察本部長委員会の監理に服するということであつて、そこで委員会本部長を通じて指揮監督するという御説明でありますけれども、管理管理されるという内容はつきりしないために疑問が起るのであります。それでは本部長職員指揮監督するについて、何でもかでも、どんなことでも、具体的な事柄にまで入つて委員会本部長指揮監督する、こういうことができる意味でありますか。管理という意味はつきりしないためにその疑問が起つて来るのであります。つまり、私の拝見するところでは、公安委員会というものと本部長というのは別個独立機関になつておるように思われる。本部長として独自の権限を持つておる。委員会も独自の権限を持つておる。決して本部長委員会付属機関ではないように思われる。現に職員任免権などを見れば明瞭であります。任免権を見れば、本部長任免権を持つているのであつて委員会ではない。委員会はむしろ意見を聞かれるという本部長諮問機関になつておる。どつちかというと本部長が中心の機関であつて委員会はそれよりもやや下風に立つがごとき諮問機関になつておる。少くとも任免権についてはそうなつておる。決して本部長委員会付属機関とは見られないのであります。別個のものであるとするならば、管理するということは何でもかんでもさしずできる、指揮監督できるというものではなかりそうに思われてならない。むしろどれだけの範囲において関与するかということは、本部長の持つて行き方によつてしまうのではないか。本部長委員会相談をかけれは委員会は関与するけれども、相談をかけなければ委員会はそれだけのものということで、これは本部長の出よう、持つて行きよう、動かしようというとこに、すべて委員会の職権というものはかかつておるような気がするのであります。そうではありますまいか。その点を御説明を願いたいと思います。
  26. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 政府委員に申し上げますが、かなり重要な点だと思いますので、すぐ御回答なさらぬでもいいと思うのでございますが、どうでございますか。
  27. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 本部長は執行の責任者でございます。公安委員会はこれを指揮監督する管理機関でございまして、本部長は、よくある外局あるいは、付属機関の長——たとえば以前社会局というものがありまして、社会局長官内務大臣管理のもとに仕事をやると、その場合の大臣社会局長官との関係、これを公安委員会警察本部長との関係と御理解いただければ大体御理解が願えるのじやないかと、かように考えます。
  28. 古井喜實

    古井委員 そうしますと、大体実際的な仕事本部長がやり、大綱委員会が握る、しかしてこれは完全な付属機関という意味ではない、ある独立的な立場を本部長は持つている、こういうことにやはりなるのだと思うのです。そうすれば、やはりさつき私が申し上げたように、どれだけのことに関与するかという大綱範囲ですけれども、常時警察仕事を扱つておりまたこれに関係しているのは本部長ですから、この委員会はそれほど警察の実務、実情に通じていないのでありますから、自発的に大綱にせよ何にせよ関与するということは事実あまりできない。そうすると、本部長委員会の方に持ちかければその範囲において関与するというのが実際の落ちではないか、つまり、その意味においては委員会というものが一種のロボット機関になつて来るのではないか、人事権は持たず、実際の運営においても今のようなことになつてしまう、こういうふうに、御説明伺つても思われてならぬのでありますが、はたしてそうでありましようか、それとも違いましようか、もう一ぺんそこをはつきりしていただきたいと思います。
  29. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 公安委員会大綱について指揮監督するという関係であるかという御所見に対しては、その通りだと存じます。公安委員会は、その警察行政が、一般の広い良識から考えてあるいは行き過ぎがないかあるいは不適正なことがないかということを監督するのが、実際上の大きな役割であると考えるのでございますが、ただ、警察本部長が持ちかけなければ、何をやつているかわからないというのでは必ずしもないと考えます。わからない場合には本部長を呼んで幾らでも聞きただせるのでありますし、また、一般社会の声というものを聞きながら、本部長説明がはたして正しいかどうかということの判断は十分でき得るのでございまして、これは任免権を持つているかいないかということとは、その点は、関係がないと考えます。ただいまのような御所見であるならば、任命権は持つてつても、しかし警察本部長がやつていることについては何もわからないという結論になるのじやなかろうかと考えますが、ただ、公安委員会本部長のやり方に対して、正しくない、こういう本部長をこのまま置けないという場合に、任免権を持つてあればそのままそこで任免ができます。この法案におきましては、それにつきましては、みずからやらないで勧告を中央に向つてするという相違であると考えるのでございます。
  30. 古井喜實

    古井委員 御説明はありますが、実際的にこの公安委員会というものは、警察がきよう、あしたという日常どう運営されておるか、どう動いておるかということについては知識があるはずはないのであります。専門にそれにかかりつきりにやつているというのではないのでありますし、そうすると自発的に発言し得るのだと言つたところで、できないのではないかと私は思うのです。でありますから実際上は警察本部長というものが警察を握つてしまうということになるのではないか。何か思いつきみたいに言うことはあるかもしれぬけれども、大綱を握るということ自体も空文になつてしまうのではないか。また警察官に対しても少しもにらみがききはしない。こういうことで浮いてしまうというか、かつこうだけのものになつてしまいはしないか。これが私の質問する疑問の点なのであります。御説明はそうならぬ建前だ——建前を論じておられますけれども、実際はそうなのだという疑問なのであります。  そこで、これは建前論と実際論との違いかもしれませんが、ほんとうにこの公安委員会警察管理するという名前にふさわしい役をするとお考えになつておりますがどうですか。これは警察の御専門家の斎藤長官などはちやんと見抜いておいでになりはせぬかと思うのですけれども、もう一度御所見伺つておきたい。
  31. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 その点は私の経験といいますか、そう言うとはなはだ申訳ございませんが、国家公安委員会と長官との関係というものを考えてみましても、私は国家公安委員会の、ここにおられます五人の大臣に監督されているような気持でございまして——大臣といえども必ずしも警察行政の専門家でない方々がたくさんおられるわけでありますが、やはりこれか管理責任大臣としておられます場合には細大となく指示をし、また御意見伺つて仕事をやる。この関係は公安委員警察本部長。国家公安委員会と長官、この関係と実際は何らかわりかない、私はさように思うのでございます。他からごらんになりますと、いかにもロボットのようにお考えであるかもわかりませんが、決して実情はさようなものではないということを、私は良心と確信を持つて申し上げることができると思うのでございます。
  32. 古井喜實

    古井委員 細大御報告になつて、細大さしずを受けておやりになつておるかどうかは知りませんか、それならば少し度が過ぎる、サービスが過ぎると思うので、細大とまでは行かぬと思いますけれども、しかしせつかく委員会をつくるならば、委員会を立てて、もう少し実際そこにある力が入るような立て方に行くべきではないかということに、結局申し上げておる意味はなるのであります。その点はどうお考えになりますか。せつかく公安委員会を設けておるということであれば、任免権などについてもただ下にあるべき建前本部長が、上の意見を聞くという諮問機関みたいに、そのときだけは下にひつくり返してしまうというようなことではなしに、公安委員会をもう少し中心的に立てて行くということが、お話のごとくであれば、もつとすつきりするというような気がするのですけれども、どうお考えになりますか。
  33. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 都道府県本部長が部下を任免する場合に意見を聞く点についてだと思いますが、これは大体今日の他の行政機関も同様でございますが、そこの執行機関責任者が部下を任免をするという建前に大体なつておる。従いまして都道府県警察職員任免権者は、やはり執行の責任者である都道府具本部長にまかせるのが適当であろう、ただこの場合に、都道府県本部長の独断専行であつては民主的な管理機関としての意思がどの程度本部長に通するか、実際はこういう規定がなくても、本部長都道府県公安委員の意向を人出の上にも反映すべきてある、かように考えますが、これを法律の上ではつきり都道府県公安委員会の意向を反映させるように保証を置いたんかよろしい、さように考えていたしたのでありまして、順序を逆にして下が上の意見を聞くという、そういつた考え方てはないのでございますから、その点は御了承をいただきたいと存じます。
  34. 古井喜實

    古井委員 そこで実際問題として公安委員会が任命するとなつたならば何か支障がありましようか、それでも一向かまわないものか、何か非常に困る点がありましようか、どんなものでしようか。
  35. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 やはり警察官を面接指揮監督をし、その責任を持つておりまする本部長といたしましては、この任免権者、徴戒、罷免まで含めた任免権者、人事管理権というものは、私はその執行の責任者に持たせる方が適当である、これを他の機関に、公安委員会に与えますることは絶対に不可とは申せないと思いますが、この方が筋道ではなかろうか、かように思うのでございます。
  36. 古井喜實

    古井委員 念のためですが、実際困るという点はありませんですね。筋道だとおつしやる、これは見方の問題ですが、実際困るということは特別にお考えになりませんか。
  37. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 実際に困るかどうか、これは運営の問題でございますが、警察の任務執行のためには人事管理が一番かんじんだ、私はかように考えます。その人事管理責任を持つた責任者はやはり本部長でございまして、その場合に部下の一切の任免権会議機関に与えるということは、運営が相当やつかいになりはしないだろうかという感じがいたすのでございます。また公安委員とされましても、日常部下を指揮監督をして使つておるその本部長に一任して、ただ本部長がやるについてあやまちないかどうかということを監督し意見を聞かれるという程度が、実際の運営にも私はいい結果をもたらすんじやないか、かように考えるのでございます。
  38. 北山愛郎

    ○北山委員 関連。今の点は確かに非常に大事な点だと思うのですが、先ほど長官は人事の管理権を持つということが——警察でも何でもそうですが、責任を負う者としては一番大事なことである、かようなお話つたわけであります。ところで都道府県警察の責めに任ずるのは、これはやはり都道府県公安委員会じやないか。その責めに任する公安委員会が一番大事な人事管理権を持たないということは一体どういうわけであるか、はなはだ長官の両方のお話に矛盾があると思うのですが、その点を明らかにしていただきたいわけであります。  それから同時に、同じことでありますが、一昨日の質疑の中でもありましたか、政府としては、やはり治安の責任を負うという立場から、国家公安委員長なり、あるいは警察庁長官なりの人事権というものを内閣総理大臣が持たなければならぬ、こういう同じ趣旨で、やはり都道府県公安委員会もその都道府県警察の執行について責任を持つておる機関でありますから、その機関か同じような意味人事権を持たなければ、今お話のような非常に大事な人事の管理権を持たなければ、その責めを果せないのじやないか、こういうふうに思うのですが、この点非常に前後のお話が矛盾しておるように思いますので明らかにしていただきたい。
  39. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この点は二つにわけて考えていただきたいと思います。いわゆる警察本部長人事権をだれが持つかという問題と、警察本部長の部下の任免権をだれが持つかというこも二つの問題——後者の力は現在の都市警察におきましても、警察本部長公安委員会が任命をいたしますが、しかし警察職員警察本部長が任命をするという形をとつておる。と申しますのは公安委員会は最終責任は負いますけれども、しかし執行の責任は一応警察本部長に持たせるという建前に立つておるから、さように相なるのでございまして、これは公安委員会性格それから警察仕事の執行の性格というものから考えますると、現行法においてもその形をとつておりますので、私は適当な方法だ、かように考えるのであります。従いまして警察本部長が部下を任免するという形はそのままこの法案も踏襲をいたしておるのでございます。そこで本部長の任免を公安委員会になぜやらせないか、この御質問に対しましては、たびたび世上げておりますように、警察仕事には国に非常に関係を持つ仕事が多分にございますから、人事管理面だけは、やはり国が持つている方がよろしい、こういう観念に立つておるのであります。従いましてその意味におきまして、都道府県公安委員会は完全な人事権を持たないという点におきましては、完全な自治体警察ではないと言われてもやむ得ないと申しておるのはこの点でございます。
  40. 北山愛郎

    ○北山委員 どうもよくわからないのですが、人事権の問題について警察本部長が行う場合の人事権と、それから都道府県公安委員会警察本部長に対する人事権と、これは性質から見て私は同じだと思うのです。もしも公安委員会というものが全然責任がないというならばこれは別です。しかしとにかく都道府県警察運営についてこれは最終責任を持つといつてもいいくらいなものです。その機関責任は負わなくてもいい——先ほどのお話でございますというとちらちら見えておるのですが、警察執行の責任者都道府県警察本部長が執行の責任者だというような言葉が出て来る。そうするというと、ますますもつて公安委員というものは責任のない浮び上つた存在になる。何か神だなみたいな存在になつてつて、ときどき本部長が拝みさえずればそれでよろしいというような存在に見えて来るのです。私どもは今までの質疑を通じて、やはり都道府県警察の全般的な責任者というものは、公安委員会だという話は聞いておるのです。従つてそれは本部長が部下の人事管理権を持たなければならぬと同じように、やはり本部長人事権を持たなければ、ほんとうの責任のある、その責めに任ずることができないのじやないか。内閣総理大臣人事権を持たなければその責めに任じ得ない、治安の責任を負えないという趣旨と同じだと私は思うのです。(「その通り」)どうも今の長官のお気持では、はなはだもつて矛盾があると同時に、管理という意味においても非常に限定されておる。警察の執行は都道府県警察本部長が常時の警察執行はやるのだというようなことで、あとはただ本部長公安委員会に対して最終的責めに任ずる責任を負つてやるというようなかつこうに、公安委員会本部長関係を何か考えておられる、しかし管理という言葉の中にはそんなことは何もないのです。おそらく私どもは公安委員会が相当具体的な問題まで警察管理しようというような運営上の規定をやるならば、それも決して管理という言葉とは反するものじやない、こう考える。ところがもう初めから長官は現在のおそらく今までやつて来たであろうところのそのやり方を基準にして、将来も日常の警察執行面は本部長にまかせて、そうしてこれをただときどき監督して行くのが公安委員会管理どいう仕事のやり方であると規定しておるのは私はおかしいのじやないかと思う。管理というのはもつとやり方によつては相当こまかい点まで見ても一向さしつかえない、しかも指揮監督権というものを含むというわけですからさしつかえないのじやないか、将来の管理という仕事内容をそういうふうに規定するのは、一体どういうふうな根拠に基くのであるか、それもあわせてお開きしたいのです。  それから同時に、今でも人事権は一—府県警察隊長の人事権警察官の人事権というものは中央で持つておるのだという、ふうにお話になりましたが、それは国家警察のことなんです。これはおそらくあたりまえでしよう。しかし今度は新しくそこへプラス自治体警察というものが入つて来るのですから、だからお話のようでありますと、結局自治体警察職員の入つて来る分についても、今までの国家警察並に—人事権は全部前の国家警察並にして行くのだ、そういう点においても自治体警察性格をほとんど抹殺しておる。もうあらゆる面で御説明が矛盾撞着をしておるのですが、今お話申し上げた点についてもう少しわかるようにこの性格を解明していただきたいのです。
  41. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 都道府県公安委員会は、都道府県の察事務について責任を負うことは申し上げておる通りでありますが、これが単独にそれだけの責任において負うわけではございません。と申しまするのは、任免権を中央に持つておりまするから、従つて隊長の人事管理というものは中央でやるということから、考えますると、その意味におきましては国と都道府県両方が責任を負うという形に相なります。これを公安委員会の単独の、しかも最終の責任において負わせるということに相なりまするならば今日の市町村警察と同じ性格になりまして、これは非常に観念的にはおわかりやすいと存じまするが、これでは国家的な性格を持つている警察事務の執行には完全と片言えないというのが、この法案建前でございまするから、そこで何だか割切れない点があるとおつしやいますのもこれは御無理ではないと存じます。いわゆる完全自治体警察、完全国家警察と、これの両方の折衷というのが今度の法案でございまするから、そこに折衷されるわけでございます。今度の都道府県公安委員会警察管理の片方は、今日の国家地方警察における等理の仕方とかわらぬじやなかろうかという御質問でございまするが、これは私がたびたび申し上げましたように、現在は運営管理だけしかないわでございますが、今度は全面的に行政管理公安委員会責任になるわけであります。予算の執行はもちろんのこと、ふるいは組織をどうするかという点におきましても、また人事管理につきまても本部長の任免、罷免の勧告権を持ち、また本部長が部下を任免する際にも公安委員会意見を聞くというわけで、人事管理面にも権限が全然ないわけではないのであります。さような意味からいたしまして、今度のこの法案が通過をいたしますならば、都道府県警察運営の仕方はただいまの国家地方警察本部と都道府県関係とは相当変化を来して来る。見ようによりましては国と地方との関係というものは今日よりも非常に薄くなつて、そうして都道府県性格、自治体的な性格というものが運営の面にも大きく現われて来ざるを得ない、かように考えておるのでございます。
  42. 北山愛郎

    ○北山委員 どうも先にお話なつ部分とあとの部分が矛盾しているの不すがね。自治体的な性格が非常に稀薄になつて来ておるというような初めのお話からだんだん行つて、今度は自治体的な性格がきつくなつておると言われるのです。それで今度は両者の折衷だ、国家警察と自治体警察の折衷だというのです。ところが先ほどお話なつたようにかんじんの警察官というものの人事権公安委員会にないのでありますからして、従つて同じ折衷でも自治体的性格は薄い、長官のお話からそういうふうに判断せざるを得ないと思うのですが、その点。それからこの自治体的な性格が非常に薄いということはいろいろな面で法案の中に出て来るのですが、この第四章にもたくさんあります。たとえば警察官ということを地方公務員である、今まで自治体警察であれば警察吏員という言葉を使つておりましたが、今度は地方公務員である警察官というものが出た、官という言葉をこの地方公務員の中で使つてもいいかどうかというようなことも私は非常に疑問に思うのですが、それは一向さしつかえないのであるか、その言葉だけを見ても置かれる場所は都道府県という自治体であるが、さき申しました警察職員というもは、これはどこまでも官である。地方公務員の場合でも警察官と言つております。だから官という言葉を使つておるなら、これは地方公務員というのは偽装であつて、実際は国家公務員いわゆる官吏であるというふうな気持がそこにも出ているのであります。それから懲戒罷免勧告権があると言いますが、勧告をしてもこれは聞かなくてもいいでしよう、勧告を聞かない例はたくさんあるのですよ、人事院の勧告であるとか、聞かなくても一向さしつかえない、聞いてもいいが、従わなくてもいい、それが勧告権である。だからそういういろいろな点を見ますると、やはりこの公安委員会というものの力、いわゆる警察の責めに任ずる、その責任も負えない、実に権限の博いような、従つて自治体的性格が稀薄なように思うのです。先ほどのお話の自治体的性格が濃厚であるとどうしても思えないのですが、今申し上げた点についてお答えを願いたいと思います。
  43. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 北山委員にお願いしますが、関連質問でございますけれども、直接三十六条のあれですから、これで終つていただきます。
  44. 北山愛郎

    ○北山委員 私はこれで終ります。関連として……。
  45. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 今度の都道府県警察は今日の市町村警察と、それから今日の国家地方警察、この両方を折衷したようなものであるとたびたび申し上げております。従いまして今日の都市警察から見ますると自主性は少くなつておる、今日の国家地方警察から見ると自主性が非常にふえている、その折衷である、かように申し上げたのであります。従いましてその運営も、今日の国家地方警察本部が都市警察に対する関係、それから国家地方警察府県に対する関係ちようどこの関係がまた折衷されるようになりまして、実際の運営からは、都道府県の国家地方警察に対する関係は、今までよりもうんと地方的な自主性を認めるという運営にならざるを得ない、かように申し上げたのであります。勧告権を聞かない例は多々あるとおつしやいますが、常時自分の管理し、監督をしておるその者に対する人事について勧告をすると申しますことは、これも不信任の表明でありまして、これをどこまでもほおかむりで通して、そうして都道府県警察運営が満足に行こう、かようには考えません。一たびさような勧告権を発動される、あるいは実際上発動されなくても非常に困るということであれば、中央としてはその意見を謙虚に聞かざるを得ないというのは、他の行政について何かその勧告をする、これを必ずしも聞かない場合があると言われることの例には私は実際問題としてはならないのじやないか、こう思うのでございます。
  46. 古井喜實

    古井委員 それではさつきの点に帰りまして、締めくくり的にお伺いして行きたいのですが、地方警察職員任免権本部長に与えるか、都道府県公安委員会に持たせるかという点でありますが、相当に警察官の数が多いことでありますし、一々公安委員会ということも煩雑なような感がしないでもない。それからまた公安委員会そのものが合議体のものであるので人事に適切かどうかという辺も考慮しなければならぬ点もあるような気がするのであります。ただしかし、一方警視、警部、警部補、巡査部長、巡査、これを府県本部長の名において任命するというのは、少し手続が軽過ぎるような気のする点もある。従前のようなことであつても、巡査の任命でも少くとも知事の名において知事が決定して任命はしておる。人の身分の問題の扱いが本部長限りでは少し軽過ぎるような気がする。意見は聞くという点はありますけれども……。そういううらみが一つどうも残るのであります。そこにどうも少し割切れない点が残るのであります。それとまたこの警察法の全部を通じての立て方から見ると、総理大臣警察長官を任免する、警察長官が県の本部長を任免する、県の本部長警察職員を任免すると、それに意見を聞くというふうな色合いはついておりますけれども、大筋はそういうことになつております。そうするとそこに全体として感じられる点は、一つには結局においては総理大臣というものが握るという人事の筋になるのでありますから、政党の警察になりはしないかということになつて、与党の手先になる警察になりはしないかという点において、どこかで総理大臣とかいう政党政府から断ち切らなければならぬ問題が起つて来る。それが総理の任免権になるか、公安委員会任免権になるかという問題にもなつて来る。しかしそこで毎回所断ち切つたらそれでいいかというと、あと全体の警察がいわゆる官僚的な色彩の強い警察になり過ぎても困る。やはりこの厖大な警察という大組織があり、そして前会にも申し上げたけれども今度は他の行政部門などに関与しない、警察一本で育つて行く職員がこの大組織を満たして来る。そういう人一色になつて来る。これがどえらい権力を持つて来るというと、警察としては非常に働きやすい点は重々ありましようけれども、裏を返して、今度は国民の人権、自由、権利という方面から考えてみると、いかにもここに不安なものが残つて来るのであります。そこでやはり一審急所は人事でありますので、これについて段階ごとに必要な程度の考慮だけは加えた機構にするという問題が残るのではないか。地方の今の警察の第一線の諸君の任免の問題を考えてみても、さつき申すように両方の考慮があるが、大きい線から考えて、どつちの結論を出すべきかというところに問題が帰着するような気がするのであります。すつぱりしない問題でありますので、いろいろな御所見も伺つたところであります。あとはどう結論を出すか、どう考えを立てるかという問題となろうと思いますので、この辺でこの問題の御査問はやめておきたいと思います。ただいまの関係の章の部分質問はこれで私は打切ります。
  47. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 皆様にお諮りいたしますが、午前の会議はこの程度にし、午後一時半より再開したいと思いますが、よろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 御異議ないようでありますので、これをもつて休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     午後三時三十九分開議
  49. 中井一夫

    中井委員長 これより午前に引続き会議を開きます。  会議に先立ちまして御報告をいたすべきことがございます。すなわち開会前の理事会におきまして各党間において申合せました警察関係法案に対する今後の審議方針について御報告をいたすのであります。すなわち第一に両案に対する質疑は明日をもつて終了すること、第二に各党の持ち時間は討論を含めて四時間とし、この持ち時間の使途については各党内において質疑時間を割当てて審議を進めること、第三に修正案の提出等による新事態が起りました場合は、理事会を開いて協議すること、第四は、委員長より総理大臣の出席を要求すること、以上でございますから御了承を願います。  なお内閣提出市町村職員共済組合法案は、自治庁所管のものでありますから、これが審議は衆議院規則第九十二条により、当委員会において行うべきは当然でありますが、さらに各派委員諸氏よりぜひ当委員会において、これを審議すべき旨の申出もありましたので、昨日の理事会の御決定に基き、委員長よりその旨を議院運営委員長に申し入れておきましたところ、本日の議運において種々論争のありました末、将来前例とせずとの条件を付して厚生委員会に付託せられることと決定し、ただいま議長より厚生委員会に付託せられた旨の通報に接しましたから、この旨御報告いたしておきます。  なおこの際申し上げますが、参議院側より、入場譲与税法案及び地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案に対する参議院修正についての説明書を、資料として提出いたして参りましたから、委員各位に配付いたさせました。何とぞごらんを願います。以上であります。
  50. 門司亮

    ○門司委員 ただいまの警察法の審議の経過の委員長の報告ですが、総理大臣の出席は単に委員長からこれを求めるということでございませんで、会の大体の申合せは、委員会における討論採決の前に、必ず総理大臣に出てもらうように尽力をしてもらう、大体こういう申合せであつたように思いますので、委員長はそういうふうにひとつ御了承を願つておきたいと思います。
  51. 中井一夫

    中井委員長 総理大臣の出席をせらるべき時期は、門司さんのお説のことく、討論採決前にこれをいたすべき申合せでございます。その通り相違ありません——。西村君。
  52. 西村力弥

    西村(力)委員 緊急な質問ちよつとしたいのですが、お許し願いたいと思います。  吉田総理の暗殺未遂というか、殺人予備というか、そういう事件が起きたことはこの前門司委員から質疑がありましたが、その際の政府側の答弁としては、気候のせいだろうとかあるいはエロ小説を持つておる軟派青年とか、そういう答弁でございましたが、地元の新聞や、その後報道になる新聞記事をずつと見ておりますと、そう簡単に片づけられるものでもない。しかも何がゆえか、政府側においてはこれをいろいろ隠蔽しようというような意図もうかがわれる。そうこうしている間に九日の夕刊に、葛原法生といいますか、この青年は吉田総理を殺害するつもりであつたという自供をした、こういうことになつておるわけなのであります。こうなりますと、今までの答弁はどうも真実を伝えていない、こういうぐあいに思われるし、またこうなつた以上は軽々にこのまま、この前の答弁や何かだけで私たちも見送るわけには参らない。われわれの反対党ではあるにしても、いやしくも一国の総理が暗殺の危機にさらされている現実の問題は、その簡単には見逃せない、こう思うのであります。私たちとしましては、たとい反対党の総理であろうとも、決してこれを喜ぶものではない。絶対喜ばない。私はかつて昭和二十一年に首相官邸にデモに参りましたが、われわれが行く前に韓国人のデモがありまして、その際に官邸の玄関のガラスがめちやくちやに割られたというようなことがありましたが、私はそのとき国民として非常に残念でたまらなく思つたのでございますが、それと同じ気持でありますし、軽々には見逃し得ない、かように思うわけなんです。そこでこの問題に対するその後の国警側の調査、あるいは政府側のこれに対する態度、こういう点について、ひとつ本日は、この前の答弁よりも一歩真剣さを加えた、そうして真実を伝えた御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  53. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 五月四日の夕刻、葛原某が大磯の吉田首相邸に闖入をいたしました事件につきまして、その闖入の目的でございますが、当初本人が逮捕されました際には、その目的は必ずしも総理を暗殺するという趣旨ではなかつたように自供をいたしていたのでございます。ただ本人の手紙等によりますと、二年ほど別から総理を暗殺をする、あるいは何」とかを促すべく決行をするというようなことを書いていたので、あるいは暗殺の意思を持つていたのではないだろうかというので十分取調べをいたしております。本人は昨日ですか、一昨日ですかに、暗殺の意思を持つて闖入したのである、かように自供をいたしておるのでございます。ただ、はたして暗殺の意思ありとするならば、邸内に入る十分前と本人は言つておりますが、アドルムを三十錠を飲んでいた——これは事実でありまして、逮捕直後、本人の訴えによりまして、医者の手によつてこれを吐瀉せしめたのでありますが、はたして暗殺の意図があるなら、アドルムを飲んで入つたということはどういう関係を持つておるのか。従つて、暗殺の意図というものは、ほんとうにそのつもりであつたのか、あるいはそういうことを育つておるだけであるか、これを外部的に立証するについて若干の困難を感じておつたのでありますが、本人が強くその暗殺の意思を自供をいたしており、そういつた書面等も持つておりますような状況からいたしまして、警察といたしましてはこれを殺人予備罪というので、検察庁に送検をいたした次第であります。
  54. 西村力弥

    西村(力)委員 大臣の方はございませんか。
  55. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今国警長官が答えられました通りでありまして、こうした暴力主義が芽ばえを見せているということは、お互い議会人といたしまして、民主主義を守るという立場からもまことに遺憾でございます。こうした事件は、そのよつて来るところ等も十分調査いたしまして、今後かかることのないように、その絶滅を期したい、こう考えます。
  56. 西村力弥

    西村(力)委員 ただいまの答弁ですと、この前と扱い方においてほとんどかわりがないというぐあいにお聞きしたのでございますが、しかし葛原某なる者が殺意を持つたということを自供しない前の答弁と、それを自供した、しかも二年前からこれを考えておる、あるいはまた右翼団体の刊行物を読み、あるいはそれに加入せんとしたというような動きなども、逐次明白になつて来ておるのでございまするが、その新しい展開に立ちましても、やはり当初の考え通りである。かような立場が国警の立場、あるいは政府側の扱い方の態度はこういうのである、かように今の答弁を受取つてよろしゆうございますか。
  57. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 当初にも申し上げましたように、こうしたばかばかしいテロリズムというものに心酔するようた者がいるということは遺憾であります。そういうことに対して私どもといたしましては、これを非常に大きく取上げるということも、かえつて同種のばか者を刺激するということもあり得るのでありますから、こういう点につやましては、この事件は事件として適正に処理するというふうに考えておるということを申し上げた次第でございます。
  58. 西村力弥

    西村(力)委員 そうしますと、こういう幼稚な者は問題にしないと総理が笑つて過しておるという立場と同じようなぐあいに見えまするが、しかし私たちとしてはそう簡単には行かないじやないかと思う。この前公安調査庁の人々に来てもらつて、秘密会において、いろいろ国内治安の状況の説明を聞きましたが左翼関係の方向においてはそれを細密に、しかも恐れをなすはどに説明に熱を入れられましたが、十翼団体の動きに対しては非常に過小評価というか、こういう傾向を私たちはその説明から受取つておるし、またこの警察法改正そのものについても、そういう立場がやはり存在しているよよに思えるんです。しかし日本の過去の事実から言いましても、あの総理官邸が犬養総理の血でいろどられ、さまざまにいろどられておるわけなんです。そういうことはもう過去において繰返しておる。まだそういう一人一殺的な動きが日本人に非常に強くなつておる。こういう観測をせざるを得ないわけなんです。     〔委員長退席加藤(精)委員長代理着席〕 こういう点について政府側の態度は、今のようなぐあいに、大した問題にしないように見えまするが、その態度は、広川前農林大臣が保全経済会の問題で右翼的な立場にある人々とたびたび会合しておつたということが、行政監察委員会において明らかにされた。むしろそういう立場を政府が弁護しておつたというようなぐあいにさえ見える行政監察委員会の調査の結果が現われておる。こういう一連の立場があるのではないかと思われるのです。そこで国警側に伺いまするが、これはやはりこういう自供がありましても、殺人予備罪以上に出る、あるいはそれを追起訴するとか、送検の理由として殺人未遂にまで発展させて、追加するというようなことは全然考えていないのか。今の通り殺人予備罪だけで送るかということについて、私は法律的にはあまりわかりませんが、そういう点について国警の立場をひとつ御説明願いたいと思う。
  59. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 われわれといたしましては、こういつた暴力主義が多くなるというようなことにつきましては、最大の関心をもつて見守つておるのでありまして、これらの警備その他につきましても、最善の努力をいたさなければならないと思つております。本件につきましては、こういうものはできるだけ厳罰にすべきものである、かように考えておりますが、ただいまの法律をもつていたしましては、殺人未遂というところには参りませんので、殺人予備というのがこの事件の取扱いの実際に講じました最高のものだ、かように考えております。
  60. 門司亮

    ○門司委員 関連して、ちよつと今の御答弁でただしておきたいと思います。アドルムを飲んでおつたということですが、新聞を通じて見ますると、当時診断した倉田医師の話では、そう多量でなかつた、ほとんどそういう気はなかつたということが発表されております。そういたしますと、アドルムを飲んでおつたということ自体は、今長官は途中で吐かせたというのですが、それは警察官が吐かせたのか、あるいは医師の手当であつたのかということの疑問が起るのですが、これはどつちがほんとうなんですか。
  61. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これは病院で医者が吐かせた、かように報告を受けております。本人は三十錠服用した、かように自供いたしております。
  62. 門司亮

    ○門司委員 その点ですが、倉田医師が新聞に発表したところによると、そう三十錠まで飲んでおらない、ほとんど飲んでいないというような発表の仕方をしているのですが、それは確かですか。
  63. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私の方でただいままで受けておりまする報告では、さように相なつております。
  64. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 簡単にお願いします。
  65. 門司亮

    ○門司委員 簡単にと言うけれども、ちよつと待つてください。問題は、先ほどから大臣並びに長官はこれをきわめて軽く扱われております。しかしこれは気違いじやなかつたということは事実です。最後に遺書を書いておりまするし、それから同時に彼の述懐した中を見てみますると、おそらく郷里の母は自殺するであろうということを言つておる。この問題は非常に私は重大な問題だと思う。だから単に一つの単独の気まぐれの犯罪では決してないということである。やはり思想的に—右翼団体には関係をしていないと本人も言つているようでありますが、関係しなくとも、思想的にやはり正しいことを貫くのだ、いわゆる吉田総理の存在が日本の将来を危うくするものだという、人を殺そうとする一つの家庭のしつけではございますまいが、社会的に正しいことは死を賭しても貫くのだという一つの固い信念の上に行われた犯罪だと考える。従つてこのことは単に陽気のせいや、気まぐれや、あるいは売名的にやつたものではないと思う。こういう事態の起ることをできるだけ防禦する、あるいはこれに厳罰をもつて臨むというが、厳罰をもつて臨んでみたところで、こういう事件がなくなるわけはない。原因があれば、必ずこういう問題は出て来る。従つて大臣にお聞きをしておきたいと思いまするが、この前の委員会でも聞きましたように、ダイナマイト事件があり、さらに今度直接行動に出た。こういう者が現われておりまするが、こういう世相に対して、大臣はよつて来る原因はどこにあるかということを率直にこの機会に言つてもらいたいと思う。
  66. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は門司さんにお願いしたいのであります。この前にも申したのでありまするが、私は暴力行為というものは側人的にも徹底的に憎んでおるのであります。議会人という者全体がそうであろうと推察申し上げております。しかるに暴力行為があつたからといつて、これを是認するような、原因あるところに必ず暴力行為が発生するというような断定したお聞きのなさり力をされますと、—門司さんの御心境はよくわかつております。あなたも暴力主義は否定されておる。これはよくわかつておるのでありまするが、一見誤解を生みまして、何か暴力行為が出て来るのは現在の政治が悪いからだということから、暴力が是認されるというようなことになりますると、これは非常な問題でございまするから、そこで私は先ほど来のような答弁をいたしておる。私どもは決してこの問題をいたずらに軽く扱うというような意図は持つておりません。事態は事態としてあくまで糾明いたします。
  67. 門司亮

    ○門司委員 私はこういうことなんです。事態を糾明すると言いますが、起つた事態をどんなに糾明して、これを極刑に処してみましても、それで決して跡を絶つものではないということです。跡を絶とうとするのには、やはり跡を絶つだけの政府当局が腹をきめなければならぬ。従つてこういう問題は偶発的に起つたのでもなんでもございません。遺書の中にはつきり書いておりますように、また先ほど私が申し述べましたように、自分は正しいことを正しくやつたのだ。国民の一人が正しいと考えておる。あなた方はけしからぬと言うかもしれぬが、やつた本人は正しいと考えておることである。私は非常にこれは社会的な問題だと思う。先ほど西村君も言いましたように、共産党の問題としては、共産党は非常にこわいこわいということを世間に宣伝して、国民の恐怖心をかり立てて、共産党を一応押える。実際にこういう事件が突発して来ると、これをできるだけ軽く扱つて、国民にそういう思想を植えつけないようにしたい、こういうのは政府のえてかつてなものの考え方じやないかと思う。だから私の聞いておりますのは、社会のこうした風潮の起るというところは、やはり社会一つの大きな欠陥があるのである。ことに総理大臣を暗殺しなければならないというようなこと、しかも遺書を読んでみると、やはりはつきり世の中のこうなることを憂いておる。ことに吉田さんが外国に行けば、また日本の国のためによからぬことをきめて来るであろうから、外国に行かぬ前にこれをやつてしまいたかつたということを本人は自供しておるということが、新聞で全部発表されておる。  私はもう一言聞いておきますが、世評です。一体世評はいずれにくみするかということです。やつた行為それ自身は憎むべき行為かもしれませんが、その考えたこと自体について、いわゆる事件の起つた一つの動機といいますか、それについては、世間は必ずしもこれを極悪の犯人だと断定をしていないのじやないか、かくのごときこともあり得るであろうということは、やはり一般世人の考えておるところじやないかというようにわれわれは考えるのであります。大臣はその通りだという答弁はできないかもしれませんが、しかし警察法を今審議いたしておりますこの最中に、こういう大きな国家的といいまするか、一人でやつた行為でありますから、集団的のものにならないだけはまだいいかと思いますが、いずれにいたしましてもこういう不祥事の起つたということは、警察法審議の過程においてはきわめて重要な問題としてわれわれは考えなければならぬ。従つて大臣にもう一言お答えを願いたいと思いますことは、日本の国民全体が、かくのごときことはまつたく大臣のお考えになつておるように、本人の気違いざたである、言語道断であるというように考えておるとお考えになつておるか、あるいはかくのごときこともあり得るであろうというように、国民はある程度——行為自身は憎むけれども、しかし事態もしくは動機そのものに対しては、ある程度納得の行くようなことになつておりはしないか。もしそうであるとするならば、いかに厳罰でこれに臨み、あるいは政府当局がこれをもみ消そうとしても、国定の中にある思想は、政府当局の考え方と逆な方向に私は行くと思う。従つてもう一度大臣からそういう観点に立つて、多少答弁はしにくいと思いますが率直に答弁してもらいたい。
  68. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 率直にお答え申し上げますが、私はある考えを持つたからといつて、これを実力によつて、あるいは人を殺してまでも解決しなければその解決ができない、こういう考え方については、これは戦前はあつたかもしれませんけれども、しかし現在はそういう考え方こそ最も憎むべきものであつて、議論はあくまで議論、考え方はあくまで考え方、その問題として解決しなければならぬということは、私どもはお互いに国会を通じて終戦以来努力している考え方の中心であると思うのです。あなたのお考えもわからぬでもありませんけれども、あなたのおつしやり方の中に、これは逆に立場をかえてあなたが政府側でそういう御答弁をなすつたらどういうことになりますか。たいへんな暴力思想肯定という攻撃が出て来ると思うのです。そういうような、いやしくもこの人を生かしておいては国のためにならぬから殺すのだ、そういう考え方がいいというような考え方が国民の中にあつてはならぬと思つております。そういう考え方において(「反省しなければならぬ」と呼ぶ者あり)反省というお言葉が出ましたが、お互いの反省はしよつちゆうしていなければならぬことでありますが、だからといつてこうした暴力によらざれば事が解決できないという考え方そのものは、円満な人格からは出て来る考え方じやない。これは一種の気違いと言つてもしかたがない。それも組織的に何かあるということであるかどうかという点については、私どもは十分調査いたしますが、現在のところはそういう考え方はないといつておるのであります。そうした一個人が偶発的に、たまたま意識過剰といいますか、何でも実力で解決せざれば事は解決しないのだということからしたことを政治的に非常に大きくお取上げになりまして、これは国民の考え方の中にもテロによつてものを解決することはやむを得ないのだというような考え方があるというような御言説は、どうぞおやめ願いたいと思うのであります。     〔加藤(精)委員長代理退席、委員   長着席〕
  69. 門司亮

    ○門司委員 最後にもう一言言つておきますが、大臣の気持も私にはわからぬわけじやない。わからぬわけじやないが、こういう問題について、やはりやつた行為だけが悪いのだ——行為がいいというふうに私は考えない。戦争の行為が悪いということはだれも知つております。しかし政府としては再軍備をしておる。これをけつこうだと言う人は一人もない。しかしわれわれは反対しておるが政府は再軍備をしなければならぬというところに、やはりそう簡単に行為自身が悪いから一切をやめるのだということに割切るわけには私は行かないと思う。従つて行為自身はわれわれは肯定するわけにはいきませんし、困つたものだと考えております。困つた行為をなくすることのためにはどうすればいいかということの気持は、お互いになければならぬと思います。私はそのことを大臣に率直に申し述べてもらいたい。いろいろ警察法を審議しておつて、国家的に警察権力が全部集中されて、警察庁長官が一切の指揮命令をするようになつて、場合によつてはクーデターが行い得るであろうというようなやかましい警察法を審議いたしておりますときに、行為自身はよくないが、これがこのまま進んで行つたならば、国民の政府に対する批判すらも許されないというようなことに行き過ぎないとも限らないと思う。やはり現在の社会を政府も国民も率直に慰めて、そうして善処して行くということが私は正しいと思う。それは当然ああいうことは起り得るようなことでありましようというようなことは、小坂さんにはなかなか言えないでしよう。あなたにそれを肯定してもらいたいと言つておるわけじやない。しかしああいうことが起つたということ自体は、単に本人の気違いざたであるとして本人を責めるということでなくして、ここで責任の一半はやはり社会が負うべきであり、さらに行政の担当をしておる人は当然その一半を負うべきであるということは、先ほどから申し上げておりまするように、世人の中にはかくのごときこともあり得るであろうというようなことは——それはほめるわけでもなし、いいことでもないが、そういうばかな気違いが出るであろうというくらいのことは、ある程度世人は是認しているんじやないかというように考える。この是認をおそれておるからさつきのようなああいうお言葉が出るんだと思う。政府がしつかりしておつて、気違いだというのでしりぞけるだけの世相になつておれば、それは今の大臣の御答弁でもけつこうだと思う。しかし必ずしも現在の世相はそうでないんじやないか。従つて政府としてはこういう事件が起つたことについて、それなり一体どう対処されて行くのか。斎藤君の言うように厳罰に処して、それで事が解決すると思つておられるのであるか、その点もう一応お聞かせ願いたい。
  70. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 政府といたしましては、右であると左であるとを問わず暴力によつて問題を解決するというような勢力に対しては断固として対処して行きたいと考えております。たまたまそういうことが一つの勢力になつて参りましたら、これは問題であります。大勢の中でございますから、たまには誤つた考え方を持つて、いわゆるテロリズムによつてでなければ話がつかぬというような非常に浅薄な、しかも非常識な考え方をする者もあることはあると思うのであります。しかしそれが出たからといつて、その責任は全部政府が持つべしという考え方も、これまた行き過ぎだろうと思うのであります。しかしそうかといつて、万物満ち足りて何も言うことのないりつぱな世の中になれば出ないでございましよう。しかし人間の世の中でありまするし、ただいまの日本の現況でありまするので、なかなかそう思うにはまかせぬことは、これまた御承知の通りであります。しかしわれわれがやつていることが十全である、政府は何事も何ら瑕疵のないことをやつておるというには私ども決して考えておりません。日々反省でございます。しかし私どものしておりますることは一つの信念を持つてつておることはお考え願いたいのであります。もちろん門司さんの方のお考えと違うでございましよう点は多数あると思うのであります。しかし今のお言葉にもございましたように、再軍備をやつておる、だから戦争を挑発しておるというお言葉がありましたが、私どもはそう考えていない。平和を維持するためには、民主主義の諸国家との間に、世界平和を維持するに足る均衡を共産主義国家との間に保たなきやならぬ、そういう考え方から今の自衛力を漸増する——再軍備ということは私ども申しておりません。自衛力を漸増するという考え方が正しいということでやつておるのでございます。これは意見の相違でございます。意見の相違をもつてただちにテロリズムでなければその意見は克服できほというふうな御批判あるいは今度の葛原何がしたる者の行動をもつて、世間大方は肯定するであろうというような御批判が用ますることについては、私ども遺憾ながらそれに同調するわけには参らないのでございます。
  71. 門司亮

    ○門司委員 最後にこれは政府に警告を発しておきますが、あなたはそう言われますが、こういうことなんですよ。こういう事件というものは、事件自体が起つたときには、その行動は非常によくない行為であつて、それは厳罰で臨むということが、法律的の解釈から申し上げましても、社会通念から考えても一応考えられる。しかしそれがある程度の時がたつて参りますと、ああいう事件の起るのがあたりまえだつたのだということが、大体歴史の肯定しているところですよ。今までのいろいろな暗殺事件その他をずつと見てごらんなさい。暗殺した者については世間はそれを憎む。そして大体それを厳罰に処することは、その当時の法律に違反し、その時の権力者の一つの手段であるに間違いがない。しかし後世になると、あの事件の起つたのは当然であつたのだということが肯定されている。それが往々にして、その当時はきわめてけしからぬやつだと言つていじめられておるが、ある時がたつて来ると、それを逆に表彰しなければならないような時代が出て来ないとも限らない、それらはやはり政治を行う者は十分に反省すべきことである。私の申し上げておるのはそういうことである。今の大臣のお言葉の中にありましたように、あなた方のやつておることは万全でないということはお認めになつておると私は思いますが、万全でない結果がこういう事態を引起したということの反省と、同時に政府も将来こういうことの起らぬように薄処して行く、社会風潮をよくして行くということに努力するというぐらいの御答弁が、ここであつてもしかるべきだと私は思う。どこまでもあの行為だけがけしからぬということであれば、いつまでも議論が尽きないと私は思う。
  72. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は決してあなたと議論をしようと思つておりませんけれども、一応誤解の点につきましては申開きをさしていただきたいと思います。私どもは、お言葉にもありましたように、できる限り日本の社会、経済状況をよくしたいと思つて努力をしておりますし、今は十全であるとも思いません。これは今後とも努力いたしたいと思います。ただ厳罰ということでありますが、この事件は厳罰に処すべきものと私は思つております。ただいまお言葉に、厳罰に処したときはよかつたが、あとでこれは是認されておるというお話がありましたが、歴史をふり返つてみますと、つい最近のことで五・二五や二・二六でも、これをやつた者は厳罰に処せられておらなかつたと私は思う。一部の者はこの青年将校にくみして、あの連中は行動は悪かつたけれども動機はよかつたのだということで、必ずしも私は当時厳罰に処せられていなかつたと思う。当時国民全体の声を代表する声があつて、これが厳罰に処せられておれば、日本はあの無謀な戦争には巻き込まれておらなかつたのではないかと私は思います。そうしたテロリズムに対しては、右であると左であるとを問わず、厳罰をもつて臨むべきであると私は思つております。
  73. 西村力弥

    西村(力)委員 われわれ暴力を否定して、これを憎むという点において一致しておるのですが、先ほど大臣の答弁をお聞きしておりますと、政治をやる心構えとしてあの答弁をずつと確認いたしますと、たとえば生活苦のために自殺をする、一家心中をする者が出て来る。あるいはこのごろ頻発する自動車の運転手の傷害事件、こういうような事件がたくさん起きておる。そういうこともこれを政治に関連づけて考えて行くということは、けしからぬというぐあいに答弁せられておるように私は聞いた。そういうことでは政治というものが国民のためにならないことは当然であるし、また今審議しておる警察法案もその精神で貫かれておるとするならば、この警察法案の精神は権力絶対主義以外の何物でもないというぐあいに言わざるを得ない。東洋の政治家の立場というものは、天災地変さえもこれは政治の責任であるという反省があつたわけです。今でも当然その考え方だけは貫かれていなければならないのではないかと思います。私は徳川時代の五人組のように、一人がどうすればあとがどうなるとか、子供がこうしたから親もというようなぐあいに行く考え方は悪いと思うのですけれども、しかしそういう社会の悪なりあるいは恐惨事が起るということに対して、政治に対する反省要求とか批判とかいうものまでも否定されるような答弁では、今まで警察法案の審議にあたつて、政府側のやつて来た答弁は、これは言葉だけのものであつて、実際は権力絶対主義を推し進めるのだというぐあいにとらざるを得ないわけです。私のこういう受取り方はあやまりであるか、その点について大臣の御所風を承りたいのであります。われわれはあなた方と政策そのものについてはいろいろ立場は違うけれども、そういう絶対批判を許さないというがごとき立場ではない。一国の総理が殺されるという問題を軽々しく考えて、そういうものは社会的な諸条件から生れるので、それは安定所などやられるくらいは気にかける必要はない。問題にしなくてもいいというぐあいにまで、あなたの答弁がなるように受取らざるを得ない。このことはまことにわれわれとして遺憾しごくにお聞きしましたのですが、そういうとり方はお前の誤りだ、かように御答弁願えれば別ですが、その点どうですか。
  74. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 このたびの暴力事件といいますか、総理私邸への侵入について御答弁申し上げた際に、何か今のお話でございますと、社会苦にあえぐというようなことは政治とは関係がないというようなことを私が考えているのじやないか、こういうお話でございますが、それは全然別でございます。政治というものは、国民のために、国民の信託によつてあるものでございますから、一人でもそういう社会苦にあえぐ者を少くするようにしたいというのは、これは政治に志す者の、一人の例外もない念願でなければならぬと考えております。ただその方法論におきまして、いろいろ見解はわかれることかと存じますが、その目的につきましては、私もあなたと同じことを考えているというふうに御了解願いたい。またこの警察法案は、これは民主的な能率のよい警察をつくるということでございまして、決して強権をもつて民衆に臨む警察をつくるというようなことは、寸毫も考えておりませんから御了承を賜わりいと思います。
  75. 大矢省三

    ○大矢委員 この四章以下あるいはその前に警察学校のことが出ているが、各管区とそれから都道府県に置き、さらにその上に警察大学を置くというように、私は三つも置く必要があるのかどうかと考える。この法案説明にあたつて、一番重要なことは責任の所在と、それから経済的にこれをもつと簡素にするのだと言いながら、こういうように府県警察学校があり、管区にあり、さらに警察庁に大学があるということは、あまり複雑じやないか。それからこれに関連して皇宮警察学校もまたあるのですが、この管区が問題です。この管区ということについて、先日来答弁を聞いておりますと、いろいろその必要なことを言つておりますが、私は今までのように各府県自治体警察と国警と二本建であり、しかも相当広範囲に行われるような犯罪があつた場合には、一つの地域的な管区本部というものがあるいは必要であつたかと私は思う。     〔委員長退席、加齢(精)委員長代理着席〕 しかし今度この法案によりますと、府県一本で、しかも府県警察本部長に向つてはいわゆる警察庁の長官みずからが指揮監督、命令をするのである。従つてこの管区からの命令というものは間接的で、しかもそういうことはあまりここにはうたつていない。そうなりますと、どうもあまり管区というものは必要がないじやないか。今までの通りつたならば必要であつたかもしれませんが、私は今度の警察法案の一貫した、経済的でありまた命令が迅速に行くようにというこの建前から行きますならば、管区の必要はない。私は管区という仕事が相当大規模な仕事であるかと思つて、人員その他を参考資料としてもらつたのですが、それを見ますとごく少数なんです。一体こういうことが必要かどうか。これはしばしば委員の中から、老朽最高幹部を最後にやるところとしてこういうところを置いておるのだということを言うておる。姥捨山はどうでもいいですが、そういうことのためにあるような気がするのです。しかも今まではなかつたのに、府県一本にした場合になお必要だ、学校も必要だというが、府県警察学校があつて、しかも最高の指導者といいますか、警視あるはい警部補という人たちは大学へ行けばいいのであります。相当教養のある人をちやんとピック・アツプしてとつたのですから、それは府県警察学校でそれぞれ専門的な教育をしたらたくさんであつて、管区にまで学校は必要でないと私は思うのですが、その点、管区並びにその他四つの学校のあることは、どうしても必要であるという理由を御説明願いたい。
  76. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 学校の点につきましては、前にも御説明申し上げましたように下級警察官の教養、山岡幹部の教養、高級幹部の教養、いずれも各段階に応じて教養の必要なごとは、これは御了承願えると思います。ところでしからば一箇所で全部やれるかと申しますと、下級警察官の数が非常に多うございます。これをやるためにはどうしても府県に置かなければなりません。しからばその府原で中間幹部の教室ができるかと申しますと、山岡幹部の数は非常に少い。しかもこれには相当高度の知識を持つた教官が必要である。この教官は各府県にみなわけて、そうしてやる。少数の五人、十人でもそれに五人、十人の優秀な教官がついて教える。これは徹底してまことによろしいのでありますが、今日の経済状況をもつていたしましてはなかなかこれが困難でありますので、これを管区に集めまして、管区内の一箇所でわずかの教官でやれれば、その方が経費が少くて済むということから、こういう管区の学校の必要ということが起つて参るのであります。管区の必要はまたたびたび申し上げておりますが、今のように犯罪が非常に広域にまたがつており、ことに思想的な背景を持つた擾乱というような事柄に相なりますと、これは常時その地方における治安の状況を十分知つておくことがまず第一、何かことが起りました場合にすべて中央でさしずをするというのでは間に合わない場合が非常に多いのであり、まして、たとえば先般の石川の内灘問題にいたしましても約二、三箇月かかりまして、ほとんど大阪管区からかわりばんこに応援に行つて、あの事態の収拾に当つておられるのでありますが、この際に応援に参ります府県の治安の情勢はどうであるか、そこにはどんな大衆の集まる行事がいつ行われるか、そのときの状況がどうであるかということを判断しながら、この一週間は何県から応援を出してくれないか、お前のところは大体こういう状況だから応援は出せるだろうというぐあいにいたしましてやらなければなりません。また一方同時に妙義山のあの相当な問題がある。これは二箇所くらいであれば本部で間に合うということもできましようが、数地方に相当そういうことが起るという場合に本部から一々各府県の状況を把握しながら、各府県に事柄にほんとにぴつたりした連絡あるいは調整をすることがきわめて困難でありますので、どうしてもこういう警察庁の前線指揮本部みたように連絡調整の仕事をするところがどうしても肝要である、かように考えるのでございます。
  77. 大矢省三

    ○大矢委員 なるほど必要な理由はわかりましたが、私の聞いているのは、政府の説明は、今度の改正の骨子は、責任の所在を明確にすることと、経費の不経済を経済的に有効的に行うこと五十万以上であつて、三倍、四倍もあるところと、その委員が比例しないということで、どうして民主警察、いわゆる警察行政が徹底できるか。従つて特別何らか考える必要がある。自治法においても特に五十万以上の大都市は特別市制にすることができる。これは法律を制定しなければなりませんけれども、そういう特例を設けたゆえんのものは、大都市行政、治安というもはきわめて重要であるからそういうことになつた。これを単に小さな府県と同一に三人だけで行うということについて、当局は何らか考慮されているのかどうか。大きくても小さくても同じである、こういう人数が違い、しかも自治体警察ができた当時にも、特に大都市の治安というもの、あるいは警察行政というものは関係が深いから、人数においてもあるいはその他においても特別に設けられたいろいろな規定があるのです。それを今度はそういうことを一つも考慮されていない。大都市があろうがなかろうが小さい県であろうが、大きい県であろうがとんちやくなしに、そういうことが規定されております。何らか特別に考えられているかどうか。うまく行くとお考えかどうかこの点について伺いたい。
  78. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 なお私先ほどのお答えが足りませんでしたが、管区の点でありますが、経済的見地から考えましても私は管区のあつた方が経済的である、かように考えております。九州ならば大体福岡の管区まで行けば用が足りる。いろいろな会合その他においても、これは一々東京に呼んで会合を開くということでありますと、それだけでも莫大な費用がかかるので、その方が経済的である、かように考えております。それから公安委員の数でございますが、昨日門司委員に御答弁申し上げましたように、最高の責任機関、これは合議体ということでありまして、町名ぐらいかよろしいかということは、大都市を持つておる府県あるいはそうでないところ、この人数にはさように関係がなかろう、かように申しあげたのであります。しかしながら公安委員の御活動は、最近実際からだをたくさん必要とする事柄が多くなつて来て、大都市において特にそうであるという御念児でありまして私もなるほどそうかと伺つたのであります。ただ今まで大都市の公安委員の数を増した方がよろしいという声を、た都市側からもどこからも伺つておりませんでしたので、全部二名ということで御提案を申しあげましたが、御意見の点まことにごもつともの点があろうと考えますので、さような実情であるという大都市の方の御意見であれば、政府は次の機会にでも増員のように改正案を思案いたしたい、かように申し上げたのでございます。
  79. 大矢省三

    ○大矢委員 大した立見がなかつたから考慮に入れなかつたというのですが、さらにまた任免権というものよりも、国の治安に対して責任の所在が明らかでないから、どうしても総理大臣の任命する長官並びに専任国務大臣を置かなければならない、主張して、具体的にこれを出している。それで私の聞きたいことは、それほどに治安維持の責任を痛感されるならば、民主主義の原則として、自治体の長であり、しかも一般から信任を得て公選によつて出て来たところの大都市の市長、府県知事、これらの人が、総理大臣が持つと同様に、地方の自治体に対する責任はあるはずなんです。ところがこの法律によると、責任の所在は少しも明らかになつておらない。国がやつてくれるからいいということではいけない。特に日常寸暇の間も、治安の維持に対しては、知事はもちろんのこと、市長というものは大責任がある。東京都知事の言葉をかりて言いますならば、金だけはこちらに出させる、警官は地方公務員である、ただ上の命令だけは天くだり的に来る、こんなばかばかしい地方行政がどこにあるか、こんな自治体警察はどこにあるかといつて、東京都知事はカンカンになつてつておる。私は当然だと思う。しかも自分は任免権は持たない、金だけは出させる、これではどうして責任の所在が知事なり地方自治体の長にあるかという。一方、自分の都合のいいときだけは責任の所在がどうのと言う。民主主義というものは、地方の自治体の治安が積み重なつて国の治安が完全に守れるので、いつも上から命令して治安が守れるという考え方は、昔の官僚の封建的なものの考え方だ。主権在民の民主主義の原則に立つならば、地方自治体の責任において治安を維持し、それが積み重なつて国の治安が守られなければならぬことは、当然であります。それに対して、金だけは出させる、任免権はない、こういうことであつてはならない。特に任免権ということを答弁するのに、あなたたちはしばしばこういうことを言う。悪かつたら罷免はできるでしよう、協議とかなんとかいう言葉を使つておりますが、つまり形式的に相談すればそれで済む——これは官僚の一番悪いところだ。ほんというの真実なくして、形式だけ整えたらよいというが、これは形式ではないのです。その署長におつてほしいと思つても、警察本部長がかわつて来たら、自分の自由に仕事をしたいために、自由に署長をかえる、必ずこれはかえますよ、こういう罷免は、相談するからいいというような形式でなしに、ほんとうに住民の意思をどこまで警察行政に反映するかということが徹底していない。それでもいい、それはこちらで守るから、知事なり市長なりはよけいなことだ、おれが責任をもつて守るのだと言われるかどうか。自治体の治安というものに対する責任の重大な知事並びに市長は、小さいところは別ですが、少くとも十五万、二十五万の大都市における治安の責任は、きわめて重大だ。これに対して何ら考慮を払つておらない。この点についてどう考えられますか。この点を伺つておきたい。
  80. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 地方の公共団体の治安についてその長が重大な関心を持ち、また責任を持たねばならないという御意見はごもつともだと存じます。しかしながらこれを地方だけにまかしておく、そして国は何らこれに対して関心が持てないという制度は、警察の事務の内容から考えまして適当でない。そこでしからば地方でも責任感じ、中央でも責任を持つて警察行政がやれるようにという考え方に立ちまするならば、任免権は中央で行いまするけれども、しかし地方の知事の任命をした公安委員が常時その運営について管理をするということで、両方のそういつた責任が全うされるのではなかろうか、かように考えております。
  81. 大矢省三

    ○大矢委員 大臣からひとつ……。
  82. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ただいま国警長官が答えました通りでございます。あらためて申し上げるのも蛇足かと思いますけれども、知事はやはり府県公安委員会委員を、府県議会の同意を得て任命いたしまするし、また罷免をいたしまする場合もありまするので、公安委員会というものが、都道府県本部長に対して強い発言力を持つわけでありますが、そうした間接の監督でございますが、決して知事が常時ないがしろにされるというようなことはなかろうと考えておる次第でございます。
  83. 大矢省三

    ○大矢委員 重ねて聞きますが、地方自治体の最終責任者は公安委員ですか、知事ですか。大都市もその通りですか。どこが治安の最終責任者ですか。
  84. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 自治体行政上の最終責任者は、知事あるいは市長でございましよう。そうして治安につきましては、最終と申しますか、公安委員会が知事の所轄のもとにおいて責任を持つ。そこでその公安委員が不適当である——不適当と申しますのは、職務を執行しないということになりますると、やはり知事が罷免いたすわけでありまするから、そういう意味におきましてはやはり知事、かように言えるかと思います。国家公安委員会について、その最終責任が総理であるか国家公安委員会であるかということと同じでございます。一応は国家公安委員会であるけれども、この国家公安委員がなすべきことをしないということになると、その罷免は総理大臣がするということになるわけであります。
  85. 大矢省三

    ○大矢委員 結局そうすると、公安委員会が最終責任者で、知事が公安委員を任命する場合に府県議会の同意を得て任命するのだから、知事の責任で公安委員がやる。その公安委員が不適当であればかえられる。要するに知事並びに知事が議会に推薦した公安委員が共同責任を負うのだ、こういうことでありますれば、それでは国家公安委員は総理大臣みずからが推薦して、そうして国会の承認を得たのでありますし、それがいけなければただちにかえることがでるのですから、どうして長をみずから国務大臣として直接任命しなければならないか。もし国務大臣として直接任命しなければならないのでしたら、府県警察本部長は公安委員なりあるいは知事が直接任命することは当然なのである。国だけがそうしておいて府県だけはそういうことは必要はないというのは論理が合わない。もし今斎藤さんが言われるようでありまするならば、国もそれでけつこうじやないですか。最終決定は国会の承認で、それを推薦した総理大臣に最終責任があるのです。また不適当であればただちにかえることができるのですから、一体何ゆえに国務大臣を充てたか。さらにまた警察庁の長官を総理大臣みずからが、二重に直接任命しなければならぬか。その点は今の答弁と上層部の国の機構とはまつたく相反する。その点でこれはどうしても承認できませんが、その点をひとつ伺いたい。
  86. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 総理が公安委員を任命いたしますけれども、先ほど申しましたように公安委員がなすべきことをしない場合にはこれをかえることができるのでありまして、公安委員を任命した以上は、一切公安委員の手において行政を行う。従つて政府のいろいろの意図と、公安委員会警察管理の間に制度の上でよく連絡ができて、政府の正しい意図を警察運営に現わし、また警察官理の実情をもつて政府の施策の参考にしようという面から申しまして、この緊密化をはかるという意味から、公安委員長を国務大臣をもつて充てるというように改正をいたし、また何といいましても、警察庁長官の人事の管理ということは公安委員会だけにまかすというのではなくて、総理が指導権を持ち、そして公安委員会と一緒になつて管理をするという形の方が、政府の行政責任を果す上において十全であろうというのがこの法案考え方でございまして、しからば知事も同様じやないかとおつしやいますが、その限りにおきましては同様でけございますが、一人の警察本部長の任免を中央でやるか地方でやるか、地方でやれば、先ほど申しますように国家的な色彩を持つた警察事務の執行に欠けるところが多いという点からいたしまして、この任免権者を中央にした方がそういう面でよろしい、そのかわり日常の管理は知事の選んだ公安委員管理をさせるというふうに折衷をいたしたわけであります。
  87. 大矢省三

    ○大矢委員 今の答弁を聞いておりますと、国が必要であるが、地方ではあまり必要ではない。しかも国家的な委任事務、あるいは治安に対してはその方がいいのだという答弁のようですが、岡でそれほど必要なものはやはり府県も必要なんです。これは法案によありますように、国の事務というものはごく限られている。平素地方警察行政というものはきわめて多い。——自治警察だと言わなければいいけれども、自治体警察だと言つてあくまでも説明もし、答弁のある限りにおいては、少くとも人事権というものは公安委員が持たなければならぬ。これは大義名分、原則だ。これをどうしてもいかぬということは私は納得できませんが、この問題は各方面から質疑応答がありましたけれども、結局私は最後まで納得の行かぬところなんです。そこで特にこれは重要ですから私はお聞きしたいが、この法案が通過した後における大都市行政、特に都市行政の上の警察行政というものはどういう結果になるということを想像されたことがあるかどうか、これははなはだ失礼な言い分ですが、小坂さんも斎藤さんも大都市の小さい行政には、ほんとうにどこまで理解と同情と経験があるかわからぬ。御承知の五大都市特別市制を通じて、府県と大都市の対立は言葉で尽せない現実の問題があるのです。そこで休戦しようということで、地方財政その他行政の問題について地方制度調査会にこれを一任するということでその回答があつたが、その回答に対しては全然考慮なしに大都市警察をなくして府県一本にしたのです。この結果は地、方の自治行政に大きな関係がある。私はこの警察法が出たときの本会議質問を丁寧に聞いておりましたが、只野君が最後に無所属で簡単な時間でありましたけれども、これを率直に言うておる。もしこれが実現するならば大都市はどうなるか、こういうことを私は謹聴しておつたのですが、大都市の自治行政が府県一本になつた場合のことを想像すると、当事者はもちろんのこと、住民がどれほで迷惑をするかわからない。そういうことを考慮されたことがあるかどうか、何らかこれに対して特別なことを考えているか、これは自治庁に聞いた方がいいかもしれませんが、警察法が出た後における影響というものの考慮なしに考えられないと思いますから、立案者であるところの関係大臣並びに斎藤さんにこの点を特に真剣に考えてもらいたい。何か腹案があるのか、そういうことは心配ないとおつしやるのか、この点を伺いたい。
  88. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 大都市を持ちました府県といたしましては、その大都市の区域内における府県の行政につきましては私は格別の関心を持つておると思うのであります。従いまして、警察府県一本になりましても、その大都市の市内における警察運営は、今日市みずから行つておられる運営よりも悪くなるというようには考えられないと思うのでございます。また今日大都市において警察事務を執行いたしております警察職員がやはり中心になりまして府県警察運営責任に実際上当るわけでありまして、決して府県のいなかの方の経験のみをもつて大都市の内部に臨むというようなことはないわけでございます。一番わかりいい例は、東京の警視庁、それから三多摩の都市警察、国家地方警察、これが一つになつて運営されましても、特別区の区域内における警察行政はやはり従前通り行える。それと同じように、他の大阪、京都等は今度は、府県警察になりますけれども、その市内の部分において行う警察行政は、やはり市民すなわち市内における府民の意向を聞いた、同じような運営が行われるものである、私はかように信ずるのであります。
  89. 大矢省三

    ○大矢委員 私が斎藤さんは特に大都市に対する理解といいますか、実情を知らぬということをさいぜん言つたのはそこなんです。東京の三多摩と神戸、横浜、大阪、京都というような大都市と同じように——私お尋ねしますが、一体東京都知事は市長ですか、それから府県知事ですか。あれは全国の市長会議のときに市長で出ている。私は都知事とは言うけれども、実際の事務的には市長だと思う。従つて大阪市のごときも、知事は市長であるならば問題はない。ところが実際は特別市である。東京都の知事は市長とまつたく同じ仕事をしておる。それとほかの五大都市、その他の福岡も入れて、大都市をかかえたところと同じに、三多摩がうまく行つているからそんなことは心配ない、そういうおざなりな実情を無視した答弁では、私が壁頭に言うたように大都市の情勢をあまりにも軽く見ている。大して不自由はありませんと言うようなことは、これはたいへんなことです。一体あつた責任を持ちますか。私は二十年近く大阪市会議員をしておつたが、どれだけ私ども府県との間に不自由を感じ、住民が迷惑をしておるか。これだけの長い期間において、しかも府庁に特別市制を訴え、それだけに各府県が対立し、その問題について運動が今日まで継続されて来たか、あなたの言うように簡単なものだつたら、そこに運動の必要もないし、経費もいらない。かりに私は一例を言いますが、特に私は残念なことには、本国会でしばしば問題になつた建築士の問題が、五万以上の市には必要であれば知事と会議の上置くことを得ると書いてある。大阪のごときは何べん言つても知事は言うことを聞きません。建築士を一人も放さない。それは特別市制にからんで感情的に放さない。そのために大阪市民は土地の明示は市役所に行かなければならぬ。照合は市役所、受付はみなそれである。ただ建築関係だけは府庁に行かなければならないというので、二重、三重に苦労している。これは私時間がありますれば、府県でやつた場合、一体大都市の行政にどういう支障を来すか、住民にどういう不便があるかということを詳しく申したいのでありますが、時間がありませんし、断片的に申しますけれども、実にこのことのために、警察行政が市政の妨害になるというような、まつたくわれわれの想像にもつかぬようなことが現実にあるのです。それを大したことありませんと言つて、東京の例を持つて来てあつさり片づけてしまうのは、あまりにも地方の実情に対してあなたは冷酷であると言わなければならぬ。なおかつ、そういうことの心配はないと言うが、あつた場合にどうするか。その点を私は非常に心配するのです。都市警察を残すか残さぬかということは、いわゆる政府与党たる自由党の中にも問題がある。改進党はもちろんのこと。われわれは全部残してもらいたいと思つている。それをなくてもさしつかないと言うのであるならば一体どういうことでさしつかえないのか。あつたときにどうするのか。一片の答弁では困るのです。当然この法が七月一日にもし実施されるとなると、その後に来るのですから、その点を重ねて、私の得心の行くように、心配しなくてもいいように答弁願いたい。
  90. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この大都市が特別市制をめぐりまして、府県と市との間に鋭い対立のあります事柄は、私も承知をいたしております。これは相当深刻な問題であるということも十分承知をいたしております。かるがゆえにこの警察法におきまして、大都市の特別市制のような形をとるかとらないかということは、大きな政治問題であろうと思うのでございます。先ほど私がお答えをいたしましたのは、そういつた市と県との間の政治問題を離れて、これが府県に一本化された場合に市民が非常に迷惑するような警察運営にたるか、あるいは市に不適当なような、そんな警察運営になるかということについてお答えを申し上げましたので、東京警視庁の例を引きましたのは、三多摩がよくなると申し上げたのではございません。今日、いわゆる警視庁いうものは特別区の警察事務に専念をいたしております。それから三多摩の都市警察あるいは国家地方警察、それはそれぞれ自分の区域において専念いたしておりますが、これが都に一本になりましても、この特別区を受持つている警察が中心になるわけでありますから、特別区から見ますならば、その特別区の区民に対しましては、従前通りのサービスができるような運営にたると私は考える。同様に大阪におきすしても、大阪の警察の主流というものは、大阪の市警がどうしても主流になるわけでありますから、むしろ警察運営は大阪の市民に今日のサービスしておりますと同じようなサービスが行われるであろう。しかもそれは府から目ましても、なるほど政治問題をめぐりましては市と府県とは特別市制をめぐつて、今申しますように相当尖鋭化はいたしておりますが、しかしこれも府民でありまして、人吉の大部分が大都市であるということであれば、この大都市の治安の状況というものが中心になつて、府の警察行政というものが運営されます、かように申し上げたのでございます。
  91. 大矢省三

    ○大矢委員 東京都の特別区というものは警視庁のもとにあつて、しかも今は東京都知事がこれを管理しているのでありまして、斎藤さんは大阪の特別市というものを東京都の特別区と同じように考えられておるが、これはとんでもないことです。これの行政は今、特別区といえども東京都知事の安井さんがちやんとしているので、大阪の特別市、あるいは京都とか、その他の知事や市長と違うのです。それを同じように解されたのでは非常に迷惑です。たとえば例を言いますと、これは私の想像の一つですが、今後大阪府に警察が移つた場合に、道路管理者は市長である。それから交通面のバス事業は市が行つておりますが、これは大阪に限られたことではないけれども、停留所を一つ置くのにも、いわゆる道路取締法によつてみな警察の許可を受けなければならない。ですからこういう仕事はみな府庁に行くのです。それに対して今までの感情からいつて、円満にこれでよかろうということを言いますか。私はほんとうに行別市はいずれかに解決しなければならぬ、何らかの形で解決しなければならぬと思う。警察関係の多い都市行政ということを、もし考慮なしに、東京都の特別区がうまく行つておるからというようなことで、五大都市の行政がさしつかえないように行けると言うことはとんでもない。一体そのことはそう簡単でなしに、何らか特別に考慮する必要があるのではないですか。それを重ねてお伺いします。
  92. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 それは、大体市の営造物であるとかあるいは市の経営しておるものと警察との関係というものにつきましては、市長が警察管理をする形になつております方が連絡が便利である。同時に市内におきましては、やはり府の管理するものもあるわけであります。そういつた面からいたしまして、出入りは両方に便不便は若干起ろうかと思いますが、これは大きな目から見れば大した問題はなかろう、かように思うのでございます。
  93. 大矢省三

    ○大矢委員 国家的な警察事務あるいは大規模な事案というものと、純然たるサービス機関としての警察行政というものを、大都市その他少くとも十万以上の都市の場合においては、いろいろ都市計画、水道、下水、青少年の指導あるいは社会施設その他がありますが、これはやはり警察との協力がなくちや、どうしても円滑に行かぬ点がたくさんあるわけです。特に最近の麻薬取締りその他についてもそうですが、こういう大都市の特殊な行政に対して、国の事案と別個に切り離して何らかの措置をする必要はないかどうか。いや、もうそういうことは考えられぬというのか。特別にそういう国家警察的な——団の事務あるいは事案というものと、地方のサービス機関としての警察行政というものを、何らか明らかに区別する必要があるのじやないかと思うが、その点についてどうですか。
  94. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 おつしやるように、地方地方としてその地方のサービス警察を持ち、国は国としてその必要に応じた警察を持つ、これは確かに一つの御識見でございまして、そういうことも考え得られると思うのでございますが、しかしながらさように相なりますと、国だけの警察というものは、ここで非常に御心配になるようなそういう面を多分に持つと思うのでございまして、むしろそういう面からいたしましても、他方のサービスに従事するものが同様に国のサービスにも従事するということの方が、私は警察運営が非常にうまく行くようになる、かように思うのであります。同時に二本建にいたしました際には、この両者の警察が円満に運営をされるということは非常に困難ではなかろうか。また費用も非常に高くつきまして、日本の議といたしましてなかなか採用のできがたい制度ではなかろうかと思うのでございます。
  95. 大矢省三

    ○大矢委員 最近しきりに府県側で一本にしてもらいたいという運動があります。しかしそれは無条件でないのです。これはお聞きの通り、少くとも任免権府県の公安委員に持たしてもらわなければ困る。先ほど安井都知事の例を引きましたが、各府県警察を一本にしてもらいたいといういろいろな陳情運動のあることは私どももよく知つております。しかしながらこれはあくまでも自治体警察で、すなわち公安委員府県警察本部長を任命するのでなければ、結局は先ほど育つたように費用だけは地方負担させられて、実際の運営は一切天くだり的ないわゆる警察国家になる。特に政党政治、民主政治の原則から言つて、時の政府の意思が強く反映するということで、自治体の本来の性格が侵されるということを心配して、府県一本にしてもらいたいという運動の中にも、賛成、反対を問わず、自治体警察の本姓は、その任免権が公安委員になくちやならぬという点で、この警察法に対しては、今の内容そのものでは全部反対だ。こういうことについて、なおかつどうしてもこれを押し通そうとするのかどうか。
  96. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 府県側におかれましては、警察本部長任免権府県が持つようにということであればあるいは御満足であるかもわかりませんが、しかし大きな目で見ますと、さようにいたしますと、府県内の警察官の他府県との交流も非常に困難になり、警察の内部が沈滞するというようないろいろな点も出て参りますし、国全体から考えましても適当じやなかろう。かように思うのでありまして、どちらにも十分御満足でないというのがちようどいいところであると思うのでございます。
  97. 大矢省三

    ○大矢委員 どちらにも満足でないというか、どちらとはだれを言うのか。警察は一体だれを対象にしているのですか。
  98. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 府県側が要求をしている。その通りにもならぬじやないかとおつしやいますが、府県側ばかり御満足の行くようにも行きません。そこらが、いろいろな警察に対する要請を調整してつくりました案といたしましては、やむを得ないのじやなかろうか。かように申し上げるのであります。
  99. 大矢省三

    ○大矢委員 どちら側というけれども、相手は全部住民なんです。府県側の言うのは、住民がそうでなくちやならぬというのです。何も府に対して市に対して育つたのではない。言葉じりをつかまえるわけではないからそれでいいのですが、新聞その他で長官は——大臣ももちろん御存じてしようが、改進党の小委員会では、大体三十万以上の都市には残す。任免桁は地方自治体の意思が警察に反映するように、自治体警察の本旨としてあくまでも公安委員に打たすという二つの原則だけは貫かなければならないということでいろいろお話があるようですが、こういうことになつた場合には、国会できめられたことは、最高の意思決定機関の決定でありますから、異議はないと思います。これは仮定じやない、そういうことが現に起きている。これについて斎藤さん並びに大臣の考えをお聞きしたい。
  100. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 以上いたしましては、本案が最も適当なものだと考えておりますので、本案の成立を望んでおります。どうぞよろしく、さように御決定いた、たぎたいと存じます。
  101. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私もその通りであります。化し国会の御審議あるいは国会での御相談が行われます際において、政府としてそれかいいとか悪いとかいうことは差控えるべきものと考えます。
  102. 大矢省三

    ○大矢委員 六十六条に小型武器を貸与するということかあります。これは小さいようでありますけれども、取締られる住民の側にあつて非常に関心の深い問題でありますから、お聞きしたい。終戦後ああいう世相でありましたし、軍隊が解放されて、警察のみに治安を維持する責任があつたから、やむを得なかつたと思うのです。これは政府がよく言う、アメリカさんから押しつけられた制度であるということが、その点は一応は考えられるのですが、そこであの当時拳銃を持つたことはやむを得なかつたと思う。軍隊もなければ、治安もずいぶんいろいろなことがあつたようですから、あの当時の拳銃はやむを得なかつたかもしれませんが、今日においてなお拳銃を持たなければならぬか。私は棍棒だけでたくさんだと思う。しかも私はそのためにいろいろな統計をいただいたのですが、二十五年から二十八年に至る間において二百六十六挺のピストルをなくしたりとられたりして、それが返つて来たのが二百挺ばかりで、その他六十三挺は行方不明になつている。これに対して意識的に無意識的にやつたのか、死人が実に二百数十人ある。生命財産を保護する警察官が、自分が死んでみたり、子供を殺してみたり、人を傷つけて殺してみたり、これは一体どういうことかと思う。サーベルのときにはこんなことはなかつた。これはただ住民側から見たことですが、警察官みずからもあれは困ると言う。あれをとられまいと思つて、交番におつて夜もおちおち寝られない。家へ帰つて来ても、子供がおもちやにして人を殺してみたり、耐えられぬから、警察が保管してくれて、万一のときだけに使うようにしてもらうか、そういうふうにしてもらわなければならぬというので、大都市の間では交通巡査だけは持たないようにしておりますが、これは今日なお必要なんですか。ことにアメリカでは国民が自由にピストルを護身用として持つている。日本の民間には絶対そんなものは持たせぬ。先祖伝来の宝刀でも、ちやんとそれを届け出でよということで、ちやんと届け出て、少くとも五寸以上のものは持てないことになつている。警察官だけがピストルを持つて裸の住民に向つていなければならぬということはどうかと思うのですが、これを改正する御意思はありませんか。また打たなければならぬ理由を伺いたい。
  103. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまのような御所見が他にも多々ありますことは十分承知をいたしておりまして、私どもといたしましても、これはよく考えてみなければならない問題だと思つているのでございます。ただ今日におきましても、警察官が拳銃を持つていることによつて、無言のうちに治安の維持の役割を果しているという声も相当強いのでございます。将来警察は一切拳銃を使用しなくてもよろしいかどうかという点を、もう少し見きわめたいと思うのでございまして、ふだんは持つていなくて、必要なときだけ拳銃を使うということは、非常に危険でございまして、いやしくも拳銃を警察官が使うことがあるというならば、ふだんしよつちゆう伴つてつて、これが自分の手足のように自由に使える。そうしてあやまちを起さないように訓練づけておきませんと、拳銃を打つたときに思わざる事故を非常にたくさんお越しますので、そういつた点を見きわめまして、現に拳銃を使用している全国の自警、国警を通ずる幹部の意向、あるいは公費委員会の以内、また世論等も十分聞きました上で、もう一度今おつしやいます通り考え直してみてもいい問題であろう、かように考えておりますが、ただいまどちらとも結論に達しない状況でございます。
  104. 大矢省三

    ○大矢委員 最後に最も重要な都市警察のことについて聞いたが、実に無理解もはなはだしく、全然考えていないということなんです。もしこれを強行した場合における大都市行政がどういうことになるか、想像にかたくない。一体世界の先進国における大都市に、都市独特の警察のないところがありますか。私は今度の警察法審議にあたつていろいろな参考資料をもらつておりまするが、またそれによつていろいろ先輩からも聞いております。欧州の大都市にはことごとく都市警察はあるのです。こんなに大都市を無視してそれからあくまでもその考え方地方自治というものはこれはいわゆる府県だという考え方が一貫している、私ども地方自治はほんとうの民主主義の基盤である。地方自治体というものは市町村である、それを統一連合機関、あるいは地域的な一つの行政をやるのは府県だ、かように考えておるが、その考え方は根本的に違う、従つてそういう警察法の制度に対してもそういう考えであるし、それからあらゆる答弁の間にもそういう食い違いが出て来るのでありまするが、われわれこの経験を通して、今後の日本の民主化のためにも、あるいはまた地方の行政の上にも、あるいはまたそれを強行した後における協力態勢といいますか、時の政府なりあるいは中央に対する協力というものが、非常なあらゆる部面において支障が来るということを考えますから、私は実情を非常に理解のないあなたたちにいくら言つたつてしようがないから私は言いませんけれども、後日必ず問題となると思いますから、私は強くこれを申しておきます。今の都市警察、これを強行した後における影響というものをお尋ねいたします。
  105. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えいたしますが、こういうことを申しますと——決して妙な意味で言うのでないのでございまするが、日本が後進国であるかどうかということについては私は疑問を持つております。日本はやはり日本独自の考えを持つて進んでよいと思つておりますが、かりに米、英独、仏等の例をあげてみますると、大陸系では大体市におきましても、たとえばロンドンのスコツトランドヤード警察であるとか、あるいはそのロンドンの中におきましても、ロンドン市警察部、シテイ・オブ・ロンドンというような警察がございますが、これは大体国でやつておる。西ドイツも、フランスもそのようにやつております。アメリカにおきましては、やはりその国柄といいますか、フロンテイアということで移民がだんだん出て行つたというような国柄から、米法上の一つの型があるのでありますが、アメリカにおきましては自治警察がある、こういうような状況と考えております。
  106. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 今のお尋ねは、小坂さんあなた誤解していると思いますが、それはたとえばロンドンとか、パリとか、あるいはフランクフルトとかいうような都市に警察がある、その警察が国警であるか自警であるかということを聞いておるわけではないのであります。その都市で単独の単位として警察を持つておる。それから世界各国とも持つておる。どうして日本だけがそういうことをやらぬか、こういうことであります。
  107. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 大臣もおつしやいましたように、大陸糸、フランスとか、あるいは戦前のドイツとか、イタリアとか、大陸系は都市独特の警察は持つていないのでありまして、大体県単位であります。そうしてフラシスのごときは戦前の日本の警察とほとんど同じ組織であります。西ドイツはこのたびの第二次戦争後におきましては、日本に似たような制度になりましたが、また元に最近復した、かように聞いておるのでございます。
  108. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 今の御答弁でありますけれども、国警は国警であるが、やはり人口十万以上とかそういうものには単一の警察体、警察署がある、こういうふうにわれわれは聞いておりますが、それはどうですか。たとえばフランスでは全部国家警察の形態である、しかし人口一万以下の小さいところではむしろ憲兵がやつておるような状況でありまして、やはり都市単位の警察がある。それは全部県であるという意味ではありませんので、非常にその事情に即してそういうものがたくさんわかれておるというふうにわれわれは了解をしておるのですが、その辺もう一度……。
  109. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 フランスにおきましては、先ほど私が申しましたように、ほとんど戦前の日本の警察と同じでありしまして、知事が警察権を持つておるのであります。ただフランスには田舎の方におきますると、むしろ憲兵の補佐官みたようなものがさらに設けられておるのでございます。
  110. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 どうも今の答弁ではすつきりしないと思うのでありますが、明日ひとつこれをお知らせいただきたい、特に英米のことは大体わかつております。フランス、ドイツのことについて最近の情勢をお聞かせいただきたい。しかもその場合にも県単位のものでありましても、みな県の知事とか、あるいは独立の市でありましたら市会の承認を得て署長というものが任命されております。内務大臣その他は認可をするわけであります。そういう形になつているようにわれわれは聞いております。その点もう少し御調査をなすつて、明日の初めにでもひとつ一括して御答弁いただきたい。かように思うのでございます。どうぞよろしく。
  111. 横路節雄

    ○横路委員 今の中井さんの質問に関しましては、ほんとうは先ほどの理事会等の結論がありますから、明後日ひとつ劈頭国警長官から諸外国の都市警察の実情について御報告願つて、それについて各委員から質疑があればあらためてやる、これは新しい事態ですから、ぜひ委員長からそういうふうにおとりはからい願いたいと思います。明日は予定された時間の四時間ずつの割当てがあるのでありますから、この点はひとつ中井さんの御了解をいただきたい。
  112. 大石ヨシエ

    ○大石委員 ちよつと議事進行……。斎藤さん、ドイツ、フランスはたいてい常識論で知つておりますから、デンマーク、スイス、それからスエーデン、ノルウエー、フインランド、あの辺は多数のものが知りませんから、まことに御多忙中相すみませんけれども、そういう小さい国をちよつと調べてもらいたい。それから、南米のアルゼンチン、ブラジル、そういう方面は国家警察であるか、どうであるか、どういうふうになつておるか、こういう都市の警察はどういうところに置かれておるか。私はドイツ、フランスは知つておりますから、そういうところを至急に、デンマークの大使館か公使館か領事館にでも聞いて、ちよつと調べてくださいな、お願いします。
  113. 横路節雄

    ○横路委員 それではただいま中井委員から御指摘の点はぜひ委員長の方から先ほどきまりましたように逐条審議につきましては、四時間ずつの持時間ときまつたのですから、きよう、あすの審議時間でもありませんから、ぜひ明後日ひとつ明確にしていただきたい。  そこで斎藤国警長官にお尋ねいたしますが、自治体警察の廃止の理由です。これは非能率的で不経済である、この点はわれわれ非常に反対ですが、この点はきよう特にあなたと論戦をしようとも思いませんが、国の治安に対する責任が不明確であるから明確にするのだ、こういうのが今度の警察法の改正であり、ただいまの第四章に非常に影響があるわけです。  そこでこの警察法によつて、国の治安に対する責任を明確にするということは、結論としてはどういうことになるのですか。警察庁長官がうまくなければ内閣総理大臣が首を切るというのですか、それとも都道府県警察本部長がうまくなければ、警察庁長官が首を切るというのですか、その点がいわゆる政府の治安に対する責任を明確にしたということなんですか、その点は一体端的にどうすることが、国の治安に対するいわゆる政府の責任を明確にしたというのか、その点をひとつはつきりと言葉を明確にして答弁をいただきたいと思います。
  114. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 政府の治安に対する責任という面からだけ考えますると、人事権指揮監督権も、すべて政府が持てば明確になるわけであります。しかし、さように相なりますると、警察を政治の道具に使うというようなおそれもなきにしもあらずということに相なりますから、そこで警察事務の管理指揮監督というものは、公安委員会で監督をし、警察長官、府県警察本部長の人事管理という面だけは、政府が、しかも単独ではなくて国家公安委員会意見を十分聞いた上でやる。これでは十分明確ではありませんが、しかし一方の警察運営の中正を期するという点も警察制度としては考えなければなりませんので、警察の政治からの中立性を確保する、そして民主的な運営を保障するという点と折衷をいたしたのでございます。
  115. 横路節雄

    ○横路委員 私もあなたの御意見通り、国が治安に対する責任を明確にすることは、うまくないことがあれば警察長官を首にし、それから都道府県警察本部長を首にすることだと思う。そのこと以外には端的に言つて、国の治安に対する責任を明確にすることはないのです。そこで私はこの点は国警長官にお尋ねしますが、いわゆる都道府県警察隊長、あるいは管区本部の本部長が、治安上うまくない場合は政府はこれの首を切らなければならない。しかし、それは国家公安委員会のもとにあるから、政府は、この管区本部の本部長を首切つてやろう、この県警察の方面隊長を首切つてやろう、あるいはもつと極端に言えば、斎藤国警長官を首切つてやろうと思つたが、どうも首を切れながつた、こういう事実があつたかどうか。今までに、政府が議会その他で追究されて、治安上うまくないから首を切ろうとしたが、いわゆる国家公安委員会のもとに任免権等があつたために、首を切れながつたという実情があつたかどうか、私は具体的にお尋ねしたい。
  116. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 人事権を持つということは、必ずしも首を切るためにのみ持つという趣旨ではございません。人事の適正な管理をいたすことでございまして、何も首を切ろうとしても切れながつたから、それで今度は切れるようにするのだという趣旨ではありません。
  117. 横路節雄

    ○横路委員 それでは国警長官にお尋ねしますが、今まででも国の治安上に対して管区本部の本部長や方面隊長の責任を追究しようと思つたが、別に治安上責任をとやかく問うことはなかつたのだ、そういうのであるならば、なぜ一体独断でこういう機構を新たにするのですか。これは私もこの前ここで聞いておつたのですが、小坂さんは今まで国の治安上について、政府がみずから責任を負わなければならないようなことは何らありませんでしたと、ちやんとこの委員会言つている。そういうのがあり、しかもあなたの今の御答弁で、あなたは国警長官として長い間実際に実務を担当されて、管区本部の本部長やあるいは警察の方面隊長等について、治安上について、おそらくあなたは直接に罷免その他をする必要はなかつたろうと思う。今まで治安がそういうのであつたにかかわらず、なぜ一体こういう急激な制度の変革をして、第四章において都市警察、町村警察を全面的に廃止するということをおやりになつたのか。先ほど大矢さんからお話があつたように、いわゆる警察については、日本共産党の弾圧のためにやるのだというのなら、また別ですが、少くとも警察については、それぞれ住民の福祉増進というような点についてもつと問題があると思うのです。だからこの点については私ども納得できないのです。こういうことにしたから、政府が治安上の責任を明確にできると言うて、都市警察を廃し、残置している町村警察を廃止したが、担当大臣でおる小坂さんに言わせれば、いまだ政府が治安上の責任を負わなければならぬようなことはなかつたという。あなた自身が今までの経験を通して方面隊長や管区本部長の首を切るようなことはなかつたと言うのに、どうしてこういうことをおやりになるのですか。
  118. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 管区本部長や知道府県警察隊長の任免権は現在では私が持つております。極端に言えば、私の一存で首が切れるわけであります。しかし何も首を切つたか切らなかつたかというのが問題じやなくて、警察の首脳幹部として適当にやつて行くかどうかということのふだんの監督、これに対するふだんの注意というものが必要で、国の治安の維持というものに非常に大きな影響を持つのであります。今日は自治体警察につきましては、そういつた事件は一切ございません。従いまして、少くとも人事の管理の面からその警察の幹部の適当、不適当について十分指導、注意を加えるということは治安の全きを期するゆええである。また間接に国がそういつた面において、国民にかわつてその責任を負うて、警察行政に関与するという一助になる、かように政府は考えておるのであります。政府が今まで治安に対して責任が負えたか負えなかつたか、そういう大きな事件があつたかなかつたかという点は問題ではないのでございます。
  119. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今の斎藤さんのお話では、この警察法の改正については、今まで政府としては治安上について責任を負えるような大きな事件があつたかどうかということは問題ではないのだ、こういう御答弁である。私どもの聞いておるところでは、国の治安に対する政府の責任が不明確であるからやるのだということであつた。そこでそういう事件があつたかと言うと、そういうものはなかつた、そういうものがあつたかどうかということは問題でないと言う。それでは一体この警察法の改正というのはどういうことになるか。私は今国警長官としてのあなたにお尋ねしたいのであるが、今お話のように管区本部長なり、都道府県警察方面隊長についての一切の任免権をあなたは持つていらつしやる。あなたは国警長官として、何か治安上うまくない人があつて、そういう人を首切つたことがございましたか。ありましたならば何々県の方面隊長のだれを切つたか、管区本部長のだれを切つたか、その事件はどういう事件であつたかということを明確にしてもらいたい。
  120. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私は事件が起つて、その事件の処理がまずいからというて首を切つたかどうか、これはあつたともないともちよつと申し上げかねますが、ふだんの責任というものは、何か事が起つてその処理の仕方がまずかつた、それで首を切つた責任が果せるのだ、こういうものではないと思うのであります。ふだんからさような事件の起らないように、また起つた場合にもうまく処理のできるように、日常からそういつた人事管理面について周到な注意を加え、教養を施すというところに初めて国民に対する責任を全うするということができるわけなんであります。従いまして、たとい、私が一人も首を切らなかつたからといつて責任を全うしていなかつた、かようには思わないのであります。私が長官になりましてから地方の幹部でやめた者もございます。しかし私がどういう責任を負わして首を切つたかどうかということは私は本人のためにも申し上げることは差控えたいと思います。
  121. 横路節雄

    ○横路委員 国警長官の話の一部には私も賛意を表することができる。しかし私はその人の責任というものは、人を罷免するということがその責任の最たるものだと思う。そうでなければ、この警察法の精神が生きて来ない。この警察法の精神の、国の治安に対する責任を明確にするということは、いわゆる議会で問題になつた国警長官を首切つた、あるいは警察長官を首切つた、それでも足りなくて、内閣総理大臣お前責任を負えと言つて、内閣がやめてしまうというのが最終的な責任である。このことなくしては国の治安に対する責任の明確化ということはない。今斎藤さんから、何かの問題が起きたので、一つ一つやめさせたからといつてそれで責任を明確にしたということにはならないというが、これはおかしい。一般の行政官として司法事務に携わる者は、どんな人でもやはり最終的にはその人の責任をとる、罷免するということが最後の責任の明確化なんです。内閣にしてみれば最後は内閣がみずから辞職するというそのことが、私は政府みずからの責任を明確化することであると思うのに、今の斎藤さんのお話ではどうもその点が明確でない。それともう一つは、今斎藤さんのお話を聞いてみると、あなたは国警長官として長い間人事権をお持ちになり、現在でも持つていらつしやるのだが、そのことはあなた自身としても、われわれに報告ができないということは、私はちよつと了解できません。しかし私はあなたのお話を、そういうような事件でやめさした例はないのだというようにお聞きして、それで了解したいと思う。何か事件について責任をとらせるというようなことがなかつたから、ここで話をすべきものではないといえば、私はそれで了解する。そうすればこの長い間、いわゆる警察法が施行せられてあなたが国警長官としておやりになつている間に、そういうような治安上の責任に関して最終的な責任を負うべき管区本部長なり、各県の方面警察隊長なりを罷免するようなことがなかつたということは、言いかえたならば、今日の警察制度というものが、この第四章にまつたく姿を没しているようないわゆる都市警察なり、今日残置している町村の警察というものを、なぜ一体抹殺しなければならないかという理由にはならないのであります。この点私とあなたと初めから意見が違うのだが、しかし違うにしても、やはりもう少しわれわれに納得するよう説明を、ひとつしていただきたいと思う。
  122. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この警察法は、政府の政治責任を明確にするということだけが目的ではないのでございまして、国警と自治警の二本建の制度、しかも自治体警察は、狭い地域を管轄し独立して責任を持つておるが、しかしこれは非能率で金もかかるので、これを府県単位にすることによつて能率も上り、経費も少くて済み、責任府県に一本化されるという点が大きな点でございまして、あわせて警察仕事も国の行政の一つでございますから、今日のようにまつたく公安委員会で切り離されておるという状況よりは、政府の正しい政治の意図というものと、警察の実際の管理の状況というものが、密接に連絡がとれるような制度にすることが、内閣責任制から考えましても適当であるというのでございまして、政府の責任を明確にするということだけが目的ではございません。先ほど申しましたような意味から、いろいろな方面から民主的な管理警察が政治的に中性を保つという点等をあわせまして、その政府の政治的責任を明確にするというのも、しかく明確にはなつておりませんということを申し上げたのであります。
  123. 横路節雄

    ○横路委員 国の治安に対する政府の責任を明確にすることが主たる目的だと思いましたら、今のお話で、いやそうではないのだ、非能率的で不経済であるから、自治警と国警とを一本にしたのだということであります。非能率的であるということになると、先ほど大矢委員から言われたように、実際住民の福祉増進に関するそういうことはどうなるのか。そういう点に関しては、これは逆に今日あなたたちのお考えになつておる都道府県警察ということになれば、都市、府県警察の間に非常に非能率的な現状が出て来るということを今大矢委員から指摘されて、あなた自身の答弁も楽でなかつたろうと思う。不経済であるかどうかという点については、私はあとでさらにお聞きしたいと思います。  次に先ほど大矢委員質問に対して国警長官は、都道府県の治安の最終的な責任者都道府県知事だというように答えておる。それでは都道府県知事は、治安について同様に最終的な責任を負えるかというと、第四十一条の第二項に「都道府県知事は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、当該都道府県の議会の同意を得て、これを罷免することができる。」とあります。都道府県に関するところの治安の最終的な責任者は知事だと御答弁しておる。私は今ここで聞いておつた。現行警察法においても、国における治安の最終的書任者は内閣総理大臣だ。内閣総理大臣は現行警察法でやれる。やれるならば今の四十一条二項の都道府県知事が都道府県の議会の同心を得て罷免することができるように、国家公安委員会においても、国会の同意を得てやることができる。それであるにかかわらず、片一方は内閣総理大臣警察庁長官を任命する。片一方は都道府県知事が都道府県警察本部長を任命することができない。これはどういうことですか。その点は、先ほど大矢委員質問に関連して私はお開きしたいと思つたが、いずれ私の番が来ると思つて聞かなつた。あなたのおつしやつておるところでは、都道府県の治安に対する最終的な責任者は知事なんだ。それは第四十条第二項において、都道府県の議会の同意を得て罷免することができる。この条項をあなたは合せたのだから、そうすれば現行警察法におけるところの内閣総理大臣は、最終的な責任者として国家公安委員をこの国会の同意を得て罷免することができるという点からいつたら、内閣総理大臣警察庁長官を任命しなければならぬのか。もしそういう筋を通すのであるならば、なぜ一体都道府県知事をして都道府県本部長任命権を持たせないのか、あなたの御答弁はこういう点はまつたく違うのですよ。この点は大臣として小坂さんどうですか、まず大臣から先にお聞きいたしたいと思います。
  124. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私の先ほどの御答弁に関連してのお尋ねでございますから、まず私から御説明を申し上げます。都道府県においては、しいてさかのぼれば最終責任は知事でありましよう。国においては、しいてさかのぼれば総理大臣でございます。しかし国の面におきましては、やはり国の施策というものと警察運営というものとは密接な関係を持つのでありますから、最小限度において国務大臣をもつて公安委員長にあてる、任免権公安委員会意見を聞いて総理が任命するということによりまして、政府の行政責任というものと警察運営というものを警察が政治的に濫用をされない、民主的管理をはばまない限度において政府の責任をそこにマツチさせる。それと同様に府県もいたしますならば、これは理論は立つわけでございますが、しかし先ほども御答弁いたしましたように、国家的な性格警察事務、地方的な性格警察事務というものを一つにわけまして、国家警察と自治体警察二つつくりますならば、その制度ができるわけであります。これは一つの組織でやろう、いわゆる府県警察は国の警察は国の警察性格を持ち、同時に地方性格も持つた、そういう一つ警察ということにいたす以上は、知事の持つている最終責任と国の持つている責任と、ここに調和をしなければなりませんから、運営、行政の日常の管理だけは知事の任命した公安委員会管理してもらう。そしてただ警察本部長の任免は中央で行うというところに折衷するよりほかしようがごございませんと申し上げているのでございます。
  125. 横路節雄

    ○横路委員 私はやはりその点が一番問題だと思う。この点は何べんも私ども指摘しておりますように、都道府県警察が国家警察だ、こう規定されれば、この法案はそれで筋が通つていると私は思うのです。これを無理に都道府県警察は自治体警察なんだと、こう言うから私たちが質問するのです。これを初めから、この警察法の改正は、都道府東の警察を全部国家警察にいたしたのでございます。従つて事案に関する最終的な責任は、全部政府です。だから都道府県における警察本部長も内閣総理大臣の任命された警察庁長官がやるのです、こういうことになれば私たちとやかく言わない。それを都道府県警察は自治体警察なんだ、こう言つて、今あなたから御指摘のように、都道府県における事案の最終的な責任は知事なんだこう言う。自分が都道府県の自治体警察の最終的な責任を負うのに、その末端の巡査まで任命権を持つている警察本部長に対して任命できないなんというばかなことはないでしよう。ですから当然都道府県警察本部長は知事が任命し、都通府県公安委員会委員長は副知事がこれに当るということでなければおかしい。いつそのこと大臣そういうふうになさつたらどうですか。そういうふうになさつたら筋が通る。筋が通らないからこれはおかしい。大臣どうですか、大臣の御所見伺つておきたいと思います。
  126. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この点はしばしば横路委員の御出席にならないときに問題になりまして、だからこそ政府といたしましては都道府県警察は完全な自治体警察とは申しません。国家的性格を多分に持つてはおります。しかしこれは国家警察か自治体警察かといえば、自治体警察、かように観念せざるを得ません。それで大部分警察職員地方公務員であり、府県警察機構組織等は府県の条例で定める。もちろん国の定めた基準とかいろいろの留保がありますが、府県の条例できめる、費用も原則として府県で出すという点から考えれば、これは自治体警察と観念せざるを得ない。われわれといたしましては、都道府県はこの警察法によつて警察を維持し、その区域内の治安の責任に任ず、あるいは警察法第二条の責務に任ずる、こう書いてあるのと同じであります、ただそれには相当の国の関与がございます。かように申し上げておりまして、完全な自治体警察とは申しておりません。     〔灘尾委員長代理退席、委員長着席〕
  127. 横路節雄

    ○横路委員 今の御答弁でもおかしいのですよ。国警か自治警かといえば、これはどちらかといえば自治警が主たるものであるというから私は聞いている。あなたの方で、これは国警か自治警かといえば、主たるものは国警なんです、しかし自治体警察性格も帯びていると言うのであれば話がわかる。今あなたは、どちらが主であり、どちらが従であるかといえば、自治体警察が主であるということになれば、都道府県公安委員会斎藤国警長官、いわゆるこれから警察庁長官になる人の意見を聞いて任命するということまで来れば、国家警察と自治体警察と両方の性格なんだが、主としてそれは自治体警察なんですということは言える。しかしその点をはずして内閣総理大臣が任命する警察庁長官が都道府県警察本部長を任命して、その都道府県警察本部長がその他の人事権を持つてつて、そうしてこれが主たる性格都道府県警察であるなんということは、これは斎藤さん以外にあまり考えていないのではないかと思う。これは実際与党の方だつてそう思いませんよ。斎藤さんがあくまでも、主たる性格は自治体警察ではあると言えば、私はどうしてもこの点はそういうようにお尋ねせざるを得ないのですが、大臣ちよつとお尋ねしたい。大臣は担当の大臣であると同時に、第三者というとたいへん失礼ですが、比較的冷静に判断されて来ておる。そこで今国警長官のように、主たる性格都道府県は自治体警察なんだといえば、これは私が指摘したように、都道府県警察本部長都道府県公安委員会が国警庁長官の意見を聞いて任命する、そう規定した方が私は斎藤国警長官の言われる目的に合すると思うのですが、冷静にそこで判断されておる小坂大臣から御答弁をいただきたい。
  128. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 人事権という問題について非常に明快な論理を展開されたわけでありますが、私どもといたしまして、しばしば申し上げておりますように、これは府県という地域を管轄する自治警察というかといえば、まずそうしたものである。しかし国警事務というものは自治体の公共事務というまのではないのでありますから、この自治体に対して警察事務というものを団体委任したものである、こういう解釈を申し上げておるわけであります。そうした意味からいたしますと、五条二項にありますような種々の問題につきましても、これはやはり国がその範囲内におきましては関与介入することになります。その意味からいたしまして、人事権というものもこの警察の持つております国家的な性格と自治体も管理するという性格、この二つの性格を兼ね合せましてその折衷されたる案がこれでございます。私はよく両者あんばいすると申すのでありますが、あんばいした上に立つての解釈なのでありますので、非常に人事権だけを強調されて言われますと、それでは府県の自治体がどこに関与する点があるか、いう御議論もあるかと思いますが、私は冷静に考えままして、両者を折衷したものでありますのでかような見解をとるのが普通であろう、こう考えております。
  129. 横路節雄

    ○横路委員 それでは重ねて小坂さんにお尋ねしたいのですが、先ほど他の委員からお話ございましたように、自治体というものは、そのものがほんとうに完全な自治体であるかどうかということは、その自治体の首長が自治体の住民の投票によつてきめられたものでなければならない。今日は都道府県の住民の意思によつて知事が選挙されておる。これはやはり幾分か国家的な性格を帯びながら自治体だと思う。しかしこれを官選の知事にしてごらんなさい。住民の投票によつて選挙された知事を廃止して官選の知事にしたならば、これは自治体という性格よりは同家的な性格の方が多くなつて来ると思う。今あなたから、都道府県警察本部長については人事の任免権の所在がどこにあるかということでは判断できないのだ、そういうふうに私は聞いたのですが、このことがやはり最終的には都道府県の自治体警察なのか、それとも国家警察なのかという最後ですよ。この点はどうなんですか。
  130. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように府県も自治体でありますし、市町村も自治体であります。われわれは自治体の一つである府県という団体に対して警察を持つておるわけであります。こういう考え方でおるので、人事権が全然ないかといいますと、そういうわけではございませんで、先ほどもお答え申し上げておりますように警察管理するものは府県公安委員会である。その府県公安委員会委員の任命をいたすものは、あるいはその罷免をいたしますものは府県知事でありまして、しかも知事が都道府県の議会の同窓を得てするのでございます。また予算面についての監督権も持つておるわけでございます。これはそうした意味を全部ひつくるめましてお考えいただきまして、斎藤国警長官の答弁を御了承願いたいと思います。
  131. 横路節雄

    ○横路委員 それはどうしてかというと、あなたは都道府県公安委員会は知事が議会の同意を得て選任するのだからいいのではないか、かように思つている、こういうのですが、その都道府県の公定委員会都道府県警察本部長任免権を持つていればあなたに同意します。あなたの言う通り賛成したいのです。ただこれは罷免について勧告することができる。だからなんぼこれに対して同意してもらいたい、賛成してもらいたいといつても、これは小坂さんの牽強附会になると思う。この点については政府与党である自由党の人々といえども、私とあなたの論戦を聞いていてやはり納得しないのではないかと私は思うのです。この点については、私どもはあなたと平行線をたどるというよりは、自治体国警であるという以上はあなたの意見の方が間違いであると指摘したいと思う。しかしあなたの方が訂正されて、これは自治体警察と国家警察と両方の性格を持つているが、より国家警察としての性格なるがゆえに、そういう措置をとつたというのであればこれは筋が通つているのだから、もうこれ以上私はあなたにお聞きしようと思わないが、そうでない限り、このことは何べんでも繰返されて来ると思うのであります。その点について斎藤国警長官、やはり翻す御意思はありませんか。
  132. 北山愛郎

    ○北山委員 関連して。先ほど小坂大臣は、冷静な立場で折衷したものが府県警察であるというふうな非常に巧みな答弁であつたのですが、チヤンポンにすることが非常におすきだと見えまして、この警察法の各所にその折衷が出ておるのです。これは午前にもお伺いしましたが、先ほど都道府県警察には、多数の地方公務員である警察職員がおるのだというふうなお話もあつたわけです。ところが府県警察職員警察官であるものがあるわけです。国家公務員でない警察官、地方公務員である警察官がある。官という言葉は、私どもはやはり官吏という概念であります。地方公務員には官という言葉を使つた例はあまり聞かないのです。それらの点を十分考慮されて、しかもなお警察官という地方公務員をおつくりになつたのか。特に今度地方自治法の改正を見ますと、警察吏員という言葉を除いて全部警察官にしております。官というのは国の公務に従事するものというのが一般の観念じやないか。官吏という言葉も憲法にあるようでありますが、これなども結局そういう趣旨である。地方公務員について官という言葉をこの際お使いになつたということは、それらのことを十分考慮されて、使つてもよろしいということでお使いになつたのか、あるいはただ警察官としては国家公務員も地方公務員も同じだから、官という字を共通して使つたのであるか、どうもここの第五十五条を見ましても、地方公務員法に従つてやるというだけであつて地方公務員法には従つておるから、地方公務員のような性格もあるのだ。警察官という以上は国家公務員的な名前を持つておる、こういういわゆる折衷の一つの現われだと思うのですが、これでさしつかえないのだというならばそれを御説明願いたい。
  133. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これは警察の公務に従事するものの集合名詞でございまして、警察官という名前がついておるから国の官吏だ、こういう趣旨ではございません。従つて警察官といわないで、何かいい集合名詞があるといいわけでありますが、適当なものもございませんので、これを官と、こう呼んだのであります。この点は法制局とも十分打合せの上でありまして、別段支障があるとは考えておりません。
  134. 北山愛郎

    ○北山委員 しかしながら法律の用語というものは、一つのその名前の定義をなしておると思うのです。たとえば所轄大臣の所轄という言葉によつて一定の所轄という意味内容が含まれておるのと同じなんです。だから官というのは、地方公務員に今までほかで使われておる場合があるかどうか。今度初めてお使いになつたのであるか。それをお伺いしたい。集合名詞といわれますけれども、何も地方公務員と国家公務員を無理やりに集合する必要はないと思う。従来でも自治体警察の方では警察吏員といつておる、国家警察の方では警察官といつて区別しておるのです。従つて今回も国家公務員である警察官もあるし、それから地方公務員である警察吏員もあつて一向さしつかえない。それを一本にするということは、警察機構がいろいろ自治体警察であるというような説明もあるようでありますが、警察官という身分といいますか、そういうものにおいてはほとんど人事系統は国の方一本であるから、従つてこれは集合名詞で警察官にしてしまつたのだ。ここにもやはり都道府県警察というものが、国家警察性格が非常に強いのだということが現われておるのだと思うのです。ほかの例がありましたらそれをお聞かせ願いたい。
  135. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私は不幸にして地方吏員のうちで、ある特定の仕事をするものの集合名詞として、官という名前のついたものをまだ存じません。あるいはないのかもわかりません。今日におきましても警察吏員、警察官、これが警察の職務執行に従事するものという意味におきましては、まつたく同様でございまして、たとえば警察官の職務執法におきましても警察官、吏員を含む、警察官等というような名前をつけなければならないので非常に不便である。身分が国に所属するか、地方所属するかという別はありますが、その別を離れて同一な性格で、同様に規律をしなければならぬ点が多々ありますので、現在のもとにおきましても、これを警察官、警察吏員とわけないで一つのものにしてもらいたいという要求といいますか、声が相当ございます。その方が便利であるというので、これに統一をいたしたのであります。
  136. 横路節雄

    ○横路委員 第五十六条の「地方警務官の定員は、都道府県警察を通じて、政令で定め、その都通府県警察ごとの階級別定員は、総理府令で定める。」こうなつておるのですが、この地方警務官の定員は、都道府県の条例では定めないのですね。その点だけはつき下していただきたい。
  137. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 御所見通りであります。
  138. 横路節雄

    ○横路委員 第三十七条の「都道府県警察に要する左に掲げる経費政令所定めるものは、国庫支弁する。」この第一号から第八号までの経費につしましては、これは一応都道府県知事が都道府県議会にかけるのですか。そうでなしに中央において令達でやるというのか、この金の支出は実際に都道府県議会においてはどうなるのですか。国庫負担すると書かないで国庫支弁するとなつておりますので、その点について特にお尋ねしたい。
  139. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 都道府県予算はくぐりません。
  140. 横路節雄

    ○横路委員 大臣お尋ねしたい。今特に第五十六条、第三十七条を私がお聞きしたのは、地方警務官については都道府県の条例では定員を定めないのだ、政令で定めるのだ、その階級別定員については総理府令で定めるのだ、それから第三十七条の第一号から第八号までの点については、国庫支弁をして、これは都道府県議会の同意を経ないのだということになれば、これが一体都道府県の自治体警察だと言えるでしようか。定員については議会の同意を得ないのだ、いわゆる三十七条の第一号から第八号までの点については、これも都道府県議会の同意を得ないのだ、そういうことで何で一体これが都道府県警察だと言えるのですか。やはり国家的な警察じやないでしようか、どうなんですか。
  141. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 警察事務というものは行政事務ではございますけれども、やはり国の治安に関係がありまして、その度合いからいたしまして、各府県の認識を越えて、国が必要と認識するものもあるわけでございます。従つてその分の費用は国がめんどうを見よう、こういう考え方で、府県のごやつかいにならずに国がめんどうを見よう、こういうことを規定しているわけでございます。ただこの点だけが全部でございますと、これはなるほど御所見通りになると思うのでございますけれども、一例といたしまして人員について申しますと、十三万人の警察官のうちで、国家公務員というものは府県本部長を入れまして二百五十名程度であります。全体のうちの非常にわずかな部分でございますので、私どもといたしましては、国の管理ではない、今申し上げたように国が地方の認識を越えての必要とする部分についてめんどうを見ている、こういう考え方でやる、これは警察事務の特殊性から来ている、こう考えております。
  142. 横路節雄

    ○横路委員 先ほどの私に対する大臣や長官の答弁は、いわゆる都道府県の治安に関する最終的な責任は知事にある、こういうお話である。私はそういうことをおつしやらなければこれを聞かないのですよ。最終的な責任は知事にあるのだ。そうすると今大臣から三百五百十名程度だというけれども、この大事ないわゆる都道府県警察本部長、北海道で言うならば方面隊長というのですか、それから警視正等の定員等については、都道府県の知事が関与できない。都道府県の議会は関与できない。その俸給その他についても関与できない。そのほか、ただいま第三十七条の第一号から第八号までの中におきましても、第七、警衛及び警備に要する経費、第八、国の公安に係る犯罪その他特殊の犯罪の捜査に要する経費、たとえば北海道等において何か特殊の犯罪の捜査に要する経費がある。そうすると当然道議会から知事に対して、どうして組まないのだ。北海道の公安委員会をひつぱり出して、どうしてやらないのだ。いやこれは私の責任ではないのです、何せ政府が予算をくれないのですから私どもはこれにタツチできません。といつて、片一方では特殊の犯罪についてどうしても捜査しなければならない。北海道住民の意思は、道議会で盛んにその要求があるのである。北海道の公安委員会は、やりたいと思つても、その点については何もできない。そういうことで何でこういう第三十七条や第五十六条をきめておいて——治安についての最終的な責任はこれは知事なんです。従つて、この都道府県警察は自治体警察なんだということがどうして言えるのですか。この点についてひとつ納得できるように説明しておいてもらいたい。
  143. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 都道府県においては知事でございますと申し上げたのは、知事が全責任を持つて国が全然責任を持つておらぬというわけではございません。国の責任、知事の責任、両方で初めて府県警察運営というものが成るわけでございます。この法令規定をしている国の関与というものを除きましては、知事の責任でございますという趣旨で申し上げたのであります。
  144. 横路節雄

    ○横路委員 私が国警長官に——私は声が大きいのですから、あまりそうむきにならないでください。私は別に怒つたり何かしているのではない、生れついた声ですから……。私があなたにお聞きしているのは、八の国の公安に係る犯罪その他特殊の犯罪の捜査に要する経費、七の警衛及び警備に要する経費、これが実際にそこの住民の意思だ。北海道であれば北海道議会というものは住民の意思が反映しておる。やはり北海道知事にしても、北海道の治安に対しては全力をあげてやりたいと思う。そうなればなぜ議会に予算を組んで出さないのか、知事どうした、公安委員どうした。公安委員は、実は第一号から第八号までの点につきましては、どうもはや中央できめますことで、何ともしようがないのだ、こういうことになつて、それで一体どうして、あなたたちがおつしやる都道府県警察が自治体警察と言えるのかと言うのです。都道府県警察が自治体警察であると言う以上は、この点は、「都道府県支弁に係る都道府県警察に要する経費については、予算範囲内において、政令で定めるところにより、国がその一部を補助する。」これで都道府県議会にこの予算をかけて——この三十七条の第二項、第三項は「国がその一部を補助する。」となつているのですから、補助金は当然かけて来るわけなんです。その点は大矢さんから指摘されているように、失礼ですが、斎藤さんや小坂さんは、地方自治体の実際の運営というものはあまりよく御承知でないのかと思う。私は当然ここは国庫負担をするとこうやつて、そうして第三項の「国がその一部を補助する。」とあわせて、これは国庫負担金です、これは国庫補助金です。これは平衡交付金ですと、こういうふうに予算を組んで来なければ、住民の意思が反映しないですよ。都道府県警察は、国家警察予算だけをしつかり握つておいて、知事と公安委員会が米つきばつたのように頭を下げて来なければやらないということは、私はどうもうまくないと思う。これは一体なぜ国が負担するというようにして、都道府県の議会にこの予算をかけるようになさらないのですか、その理由を承りたい。
  145. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 三十七条の第一項の費用は、これは国から考えまして非常に重要な事柄を行う費用でございますから、従つて都道府県考え方で、国が必要と思つて都道府県としてはそういうものは予算に組まないということでは困りますので、府県予算に組まないという場合にでも、国が必要と思う場合にはこの費用でやつてくれというて、費用を国が負担するわけであります。国庫支弁をいたす建前になつておりましても、国できめる国庫支弁の金では足らない、府県としてはもつとこの点に力を注いでやりたいという場合に、予算に組まれて、そうしてその仕事を完全にされるということは何ら妨げてはおらぬのでございますから、府県とされましては、国からたとえば十億来る。これではしかし第一項の仕事をするのにも、自分の県としては不満であるという場合には、さらに別に府県費でお組みになることは何ら妨げてはならぬのでございます。従つて府県の意思にかかわらず、やりたいことをやらせないというわけではございません。逆に府県が、おれのところはやらないのだ、おれのところは警衛、警備は全然やらぬのだ、こういうことで予算が組まれないということでは困りますから、国が見た必要な限度、第一項に掲げておりますものは、府県のごやつかいにならなくても、費用だけは支出できるという道を開いておるのでございます。
  146. 横路節雄

    ○横路委員 その点が、先ほど他の委員からも御指摘があつたように、地方自治体の実情を御存じないのではないかと思う。私は今あなたの説明であるならば、こういう第一号から第八号、特に今あなたは警衛及び警備に要する経費についてはこれを都道府県などが組まないと困るから、これは国が支弁してやるのだ、これが十億、実際には八億であつた都道府県が足りなければ、あと一億は別にやつたらいい、こういうが、この第一項に関する予算が国から道府県に八億来た、ところが実際にその都道府県の治安の実態から言つて、これを増したらどうですかということは起きて来るのであつて、そのものはてんで目隠しにしておいて——都道府県の議会にかかつていないのですから目隠しにしておいて、そうして何だか片一方には八億来たらしい、しかし足りないからもう一億組んだらどうかというふうなことは、これは実際に都道府県議会の実態を少し知つておれば私はそういうことを言えたものではないと思う。当然第三十七条は国が負担をするということにして、全部これは洗いざらいに都道府県の議会にかけるべきである。そういうことをやつてこそ始めてあなたのおつしやるように都道府県警察は自治体警察として住民の協力が必要だということが生れて来るのですよ。そうじやないでしようか。この点大臣どうですか。実際に住民が協力するという場合には片一方八億だけ隠しておいて、何でも足りないらしいからもう一億負担せよということを、それをそのまま国で負担金を出して来て、負担をするということでは大分違うのではないですか。どうも何だか少し失礼な言い方ですけれども、民主政治というものはどうか少しおかしくなつているのではないかと思う。地方議会の実態から見れば、私は当然これは国が負担をするということにしてやるべきだと思う。やはりせつかくの法律ですから、法の不備については明確にしておかなければならない。これは不備ですよ。ひとつ御答弁を願いたい。
  147. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 国の必要とする経費というものが隠されているということでございますが、実際問題といたしましてはそういうことはないと思います。府県公安委員会というものはまず第一にこれは知るわけでありますし、府県公安委員会は知事の任命によつて出て来ていることでありますから、そういうものが隠されて暗々裡にするということはもちろんないし、国がそういう費用を出すということも知つておりますし、府県の要求というものは常に国の方へ来るわけでありまして、そこで御疑念の根本は先ほどから申し上げましたが、そういう経費が大部分であるかどうかという問題であると思いますが、全体で五百数億の中でこの三十七条に掲げておりまする各号に要する経費というものは四十八億程度で、非常にわずかなものであります。そういうものが全体として隠されていることがあれは、これは民主政治上重大問題であります。そういうことはあり得ないことでありますし、私どもはそれによつて府県警察というものの自治体警察であるという性格をかえるということはない、かように考えております。
  148. 横路節雄

    ○横路委員 大臣お尋ねしますが、これは公安委員会が知つているからいいだろうというのですが、あなたたちの方で希望しているように都道府県警察が自治体警察である。国家的な性格を帯びながら自治体警察という点から行けば、地方住民の協力が必要なのです。地方住民の協力が必要なためには、この国の予算都道府県議会にかかつて、そうしてその上で公に討論され、討議される。足りなければそれに補充されて、その使い方が当然都道府県の監査委員会の手によつて監査されなければならない。私は悪く解釈すると、こういう点は都道府県議会のいわゆる干渉は入れたくないのだ、都道府県議会の監査委員などの手によつて、こういう費用等については洗いざらい出されることはいやなんだということになると、何だかこれは秘密警察だというような感じを受けるのです。もつと地方往民の協力を必要とするためには、この都道府県議会にかけて何が悪いのです。都道府県議会の監査委員によつて監査されて何が悪いのです。そういう地方住民の協力があつてこそ初めて四十八億の予算があるいは七十億になるかもしれない。これはちよつとおかしくはないのですか。もう一ぺん御答弁を願いたい。
  149. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は国の使います金も、府県の使います金も、これは国民の目をおおつて使われることはない性質のものであると考えております。またあつてはいけない、あれば弾劾せらるべき性質のものであると考えております。ただいまのお話で国から参りますものを都道府県の議会において監査がされない、一般の討論に付せられないということをあげておりましたが、これは同時に国の予算をつくります場合に十分公に討議せられるべき性質のものでありまするし、また国の会計検査院等の監査機関において十分検査されるべき性質のものである。それはだれがやるかといいますと、国の議会におきましては地方民の意思を代表して出ているお互い代議士、あるいは参議院議員がやるわけでありまして、そういう点から見ますれば、決してこれが府県の意思というものと隔絶せられて暗々裡に承認され、暗々裡に支出されるということは、実際問題として考えられないことであると考えております。いわんや先ほど申し上げましたように、五百億の頭で四百二、三十億のものが府県議会の議を経るわけです。そういう点からいたしますれば、決して御心配の点はない、かように考えております。
  150. 横路節雄

    ○横路委員 義務教育費の半額国庫負担、あれは国庫負担だが、そのまま都道府県に行くのです。都道府県に行きましてちやんと議会にかかるのです。だからどうしてこれを国庫負担金として明確に出さないのですか。私はこういうところにあなたたちがやはり何としても何かしら中央でこういう予算を握つて、そうして公の前にやれることを好まないというような風を生んで来る風習がだんだん出て来るのではないかと思う。やはりそういう意味ではこの点は国庫負担金としてやらなければならぬ。これは総務部長の方が専門家なんですからお尋ねするのですが、あなたは大臣や長官を補佐する責任者なんだから、これはやはり第三十七条については国庫負担金として都道府県の議会を通すようにしなければ、将来必ず警察本部長並びに一連の警視以上の者、その他の者については、秘密警察のにおいがするという非難を受けますよ。だからこれは絶対に国庫負担金として出さなければならぬ。そのように修正なさつた方がいいと思いますが、御意見はどうですか。
  151. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 第一項の国庫支弁に属する経費は、先ほど長官からお答えがございましたように、各府県がまちまちに支弁されてはどうしても困るという費用を限定しまして、最小限度のものを拾つたわけでございまして、この経費の中には実際上は中央におきまして一括調弁しなければどうしても困難なものが実は多いわけであります。通信の機材でございますとか、鑑識の機材でございますとか、警察用車両、船舶、警備装備品の類は実際各府県予算でまちまちに購入するということでなく、なるほど府県警察に要する経費ではありますけれども、一括的に国費で調弁して、そうして府県に割当てた経費でもつてまかなうという部分が実際問題として非常に多いのでございます。しかしお説のように、なるべく府県の議会を通すべきものであるという事柄自体については私ども同感でございます。そこで第三項によりまして一般犯罪経費だとか、防犯に要する経費交通取締り庁舎その他の施設とか、そういうものはお説のように補助金ということにいたしまして、できるだけ府県議会を通すことにいたしております。数字におきましても四十八億はお説の通り府県議会を通らぬのですが、残りの年間にいたしまして四百三十億というものはとにかく府県議会を通つているわけでありまして、四百三十億に比較いたしますと、一割でございます。その一割の中の大部分のものは中央において一括調弁しなければならないような経費が多いわけでありまして、なるべく府県議会を通じまして自治体警察の体を正すべきたくさんあるだろうと思います。そうだというお説には決して反対するというわけではありませんが、この程度は警察活動をくまなく各府県が円滑に均衡を保つてやらしめる意味から必要なものと思いまして、かようにいたした次第でございます。
  152. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 関連して。実は一週間ほどから第三十七条でいろいろな議論があるのですが、私どもは最初から三十七条の国庫支辨はもちろん都道府県予算書にも計上されるものだという了解のもとに当然のこととして話を実は進めておつたのですが、今の回答でそうじやないということになりますと、これはたいへんなことになります。たとえば工事の請負その他いろいな問題が起りますが、全部国が直接これをやるのでありますか、どうなるのですか、これはたいへんなことですよ。
  153. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 お答えというわけではありませんが、今工事の調弁というお話がございましたが、庁舎その他の施設に関しましては、補助金対象府県議会を通ることになつております。先ほどもお話いたしましたように、通信、鑑識施設等につきましては、器材購入の関係で実際上中央において一括調弁せざるを得ないものがございますので、それに関しましては国が責任を負うということになるのでございますが、今のお話のように、いろいろの府県庁舎その他の施設の工事関係経費補助金対象になるようにいたしております。
  154. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 今私は一例を申しただけでありますが、これは現物支給ということになれば、あなたの御意見もわかりますが、現金の場合もずいぶんいう場合には県の金庫を通らないで直接行くのですか、これはたいへんなことですよ、どうなんですか。
  155. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 府県が国費そのものを扱う例は多々あるのでございまして、今の場合の御議論とは別でありますけれども、会計上の取扱いといたしましては、県の警察本部長その他が国費についての支出官ということになりまして、会計法上の責任を負うわけでございます。
  156. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 お尋ねしておるのは、自治体である県の金庫に入るかどうか、こういうことです。
  157. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 自治体としての府県そのものの金庫にるわけではなくして、府県におきます国の金庫に入るわけであります。
  158. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 これは四十数億というお話でありましたが、毎年々々それだけ出るわけでありまして、非常に大きな問題だと思う。実は私どもは初めから当然府県予算に組まれるものだとして質問しておつたように思うのでありまして、この点どうもそういうふうに非常に簡単にやられると、ますます都道府県警察の自治体警察としての性格がなくなる、人事でもない、金でもないということになると思いますが、その点明快にしていただきたい。
  159. 北山愛郎

    ○北山委員 関連して。どうもこの点は私も初めから不可解に思つてつたのですが、国で支弁するところの国費を地方団体にやつて、それの支出を委任してやらせる、そこまでは形式上わかるのですが、しかし第八号のごときあるいは第七号のごとき物件を購入するとは必ずしも限つておらない。いろいろな現金で支払うようなものがあるわけですが、それの調定行為を一体どうするのか、それをだれがやるか、府県に調定行為とか経費を運用する行為を包括的に委任するのか、単にきまつた支払いについて府県の出納事務を行わせるというならはまだしものことでありますが、そうではなくて、そのようないろいろな場合に起つて来る一号から八号までの経費を国の方で支出をきめて、そしてただ金の取扱いだけを府県にやらせる、こういう経理ではこの運営ができないのではないかと思う。おまけに必ずしも国庫支弁ばかりではない、府県費でやる分もあるということになると、同じ対象の問題について国費で払う分もある、県費で払う分もある。これは一緒にごちやまぜにすることはできませんから、別個に経理しなければならなくなり、非常にめんどうくさい運用になる。一号から八号まではやはり仕事としては道府県警察仕事だろうと思います。そして国の方で統轄することになるだろうと思うのです。そうして金は県の方に預けないで、自分の方の金庫に入れて、ただ支払いの事務だけをまかせるということは、頭の中で考えることはよいかもしれませんけれども、府県なり地方公共団体の経理とかあるいは仕事の運用とか、そういうものを全然黙殺してしまつた、おそらく実行不可能なやり方じやないか、こう思うのですが、その経理をどういうふうにするか。またかりに物品を買うと、その品物は一応国のものになる。それが府県のものにどうしてなるのか。これは無償で保管を転換するというようなことになるのか。いろいろなことを事えると、ずいぶんめんどうくさい話になると思う。そういう経理を一体どういうふうに考えてこの三十七条をおつくりになつたのか。おそらく警察仕事の実際の運営そのものに大きな支障が出る。要するに政府の方では金と人を握つておれば——いわば一号から八号までというのは、警察活動の主要な部分であります。あとの第三項の県費支弁の分は、その他の人件費あるいは被服費といういうな、警察運営には直接関係のない維持的な経費である。そういう分は府…に背負わせておいて、あとのかんじんかなめの警察活動に必要な施設であるとかあるいは装備等の重要な経費は、ちやんと国で持つて府県には金を渡さないで握つておる。そうしてその経理だけやらせる。そんな仕組みをやつたのでは、どだい仕事はできません。これは一体どうなんです。
  160. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 府県自体が、国の会計法に基きまして都道府県やその他の吏員をして歳入歳出その他の負担行為を担当させるということはあるわけでございます。しかしこの警察法案の場合におきましては、警察本部長は国家公務員ということになつておりますので、会計法によりまして府県をして取扱わしめるという条項によらなくても、府県本部長が支出官として国費を管理することができるわけであります。国庫管理府県費の管理両方を府県が取扱う場合におきましても、お話によりますれば非常に円滑にうまく行かぬじやないかというお尋ねでございましたけれども、これは国費の部分府県費の部分と両方はつきり仕訳をいたしまして、それぞれ会計法規の命ずるところによりまして管理するわけでございます。しかも同一の費目について両方の経費があるということならば、あるいはお説のように混乱が生ずることがあるかもわかりませんが、それぞれの費用の種類を慨然とわけまして、そうしてあらかじめこういうような経費分担の制度をとるのだということを制度上明らかにして秩序を正してやるのでございますので、一見あるいは不便なような感じがなさるかもわかりませんが、実際問題としてはこの両方の経費は円滑に行くものと考えます。
  161. 門司亮

    ○門司委員 これは当局感違いをてしおるのではないですか。現行法では、今警視庁に出しておる金がある。それを拡張解釈すべきだという考え方で組んだのじやないのですか。警視庁は自治警察であるが、しかし国家事務があるので、警視庁に対しては特に現行法では補助規定がある。その補助規定の拡張解釈じやないのですか。それを各府県に及ぼした方がよいのではないかというのでこの条項を設けた、私のきのうの質問に対してはそういうふうに答えておる。従つてこれは県の経理を通過すべきである、こう解釈するのが正しいのではないですか。
  162. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 一つ仕事について地方もその仕事をやるけれども、国と地方の両方の利害関係するということから分担金という制度があるわけであります。現行法によりますところの特別区の警察に対するものは、そういう国と地方の両方の利害にまたがるというので、国の利害にかかる部分について分担金制度を、予算範囲内という文句をつけて書いているわけでございます。それに当りますものは、前にこの第三項の補助金のものとして例に引いたのでございますが、この第三十七条の一項で国庫支弁をきわめておりますのも、その国の利害に関することにつきまして、と申しますよりは、さらに府県そのものに負担せしめることが不適当であるという見地から支弁をいたしております点においては、方針においては首都警察に対します負担金とかわりはないかと思います。この制度自体は、一項に掲げますものは国庫支弁といたしまして、一般的な警察についてだけ補助金ということにいたしておるのであります。
  163. 門司亮

    ○門司委員 これ非常に重要な問題なんだが、私がさつき考えておつたような考え方で行けばこれでいいんだが、しかし今のような御答弁がされるということになると、旧来の連帯支弁法と同じような考え方になる、従つて警察自体が国家の警察であるというような考え方に基かなければこういうことはできないはずだ。従来たとえば警部補までは国庫で給料を支払つてつた、それ以下は都道府県で支払つておる、この警察は国の警察だと思つて間違いなかつた、ただ支弁方法連帯支弁法の形でやつておる。ところが今日は御存じのように地方自治体は独立しておるのであつて、自治体が独立している以上はやはり独立した自治体の費用ということになれば、これは当然自治体の費用にならなければ筋が通らぬ。だからこれはどこまでもいわゆる国家警察だ国家警察だという観念のもとに行けば、あなた方のような答弁ができる。しかしこれは自治警察だということになつて来れば、その答弁ではどうしても通らぬですよ。この点はきのうもかなりやかましく聞いたんだが、全体は現行の特別区の警察に対する補助金の拡張解釈というようなことで一応了解がされておつたのですが、今の答弁をだんだん聞いてみると、またもどつて連帯支弁法と同じじやないかという議論になつて来るんだが、警察を一体どう考えているのです。自治体というものをどう考えているのです。今日自治体は独立しているんだから、独立した自治体の支出するものは一応やはり独立した自治体というものに、これが入つて来なければならぬ、国の使うものであるならば国が費用としておとりになればいい、いわゆる国家の予算でおとりになればいいが、地方自治体が支弁するものはやはり自治体が予算に入れて支弁するという形をとらなければ独立した形にならない、その点もう少しはつきりしてください。どうなんです。旧来の連帯支弁法を適用しているのか、一体どつちなのかはつきりしてください。
  164. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 以前の連帯支弁金時代に例をとつてお尋ね部分をお答えいたしますが、これは昔の府県警察の時代におきましては国費の部分がございまして、お説のようにそれ以外の府県費に当る部分について連帯支弁金の制度があつたわけであります。この三十七条におきましても国庫支弁部分がございまして、それ以外の部分につきましては連帯支弁金の制度ではなくて、補助金という予算範囲内において定額定率の補助制度をとりまして、なるべく負担率を多くするということを考えてはあるのではございますが、とにかく連帯支弁金ではなくて、補助金といわざるを得ない制度をとつているのでございます。国庫支弁部分があるという点について、完全な自治体警察ではないのじやないかという御指摘につきましては、これは警察事務を府県団体委任いたしますけれども、これらも最小限度国家的に関心を持たざるを、得ない経費については、どうしても国庫支弁にするのが適当だということからきめたのでございまして、四百三十億というものが府県費の負担になりそれ以外の四十八億というものが国庫支弁がある、四十八億でもちよつとでもあればそれは自治体を無視しているじやないかというお尋ねでございますればこれはやむを得ないのでありまするが、しかし全体といたしまして年間にいたしまして四百三十億というものが府県議会をくぐる府県予算に含まれるということは、原則的にやはり自治体警察として府県が費用を負担しているのだという点においては原則を貫いているというつもりでございます。
  165. 北山愛郎

    ○北山委員 これはどういうふうに形容するかだんだんお伺いしてみると若干疑問があるのですが、そうするとこの前、第五条の第二項に列挙した事項について、かりに都道府県警察というものを指揮監督する場合でも、県の公安委員会を経由してやるのだという御説明でもあり、しかもそこの第六号から第十号までの仕事はそれは統轄であるというようなことであるから、中央の方では統轄をするのであつて、実際の仕事の方はもちろん、予算経理とか、そういうものは府県警察の方でするに国家公務員である地方警務官を都道府県警察の中へ置いておいて、それに国費を渡してそれを使わせるというようなかつこうになつて、第五条の質疑の当時にわれわれがいろいろお答えをいただいた運用のやり方とは非常に違つて来るのじやないか。この第一号から八号までの分については中央が直接に国費として都道府県警察本部長その他の国家公務員を通じてこれを運用するのだ、おそらく支出事務はそういう国の出先機関のような考え方を持つておる、で、仕事の運用と予算の使用というもの、経費の支出というようなものは、これは表と裏の関係で並行していなければならぬ、それが今のような運用をするということになれば、この第五条の中にあるいわゆる統轄をする事項というものは、中央の警察庁長官が都道府県警察を面接本部長を動かしてやるというような運営の仕方をやる、従つてこの面で今までえらい問題になつて来たこの自治体警察的な性格というものが大きくここで奪われておる。人事についてもそうだ、予算についてもそうだというようなことで、これでは都道府県というものの中に国家警察が寄生して、居候になつて、その離宮は中央でやるというような性格にしか見えないのですが、この点は地方都道府県警察本部長その他の国家公務員に、この国費というものを使用させるつもりなのであるか、その出納はだれにやらせるのか、これをもう一ぺんはつきりとお伺いしたい。
  166. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 昨日も申し上げましたようにこの費用の要求、この費用の使途、この費用を使つてやる仕事運営、これはすべて府県の公安委員管理のもとに都道府県本部長がやるのでありまして、これを都道府県公安委員会を抜きにして直接国と本部長との間においてやるものではないのでございます。この点には他の府県県を通す費用の使途と何らかわりはございません。さよう御承知を願いたいと思います。
  167. 横路節雄

    ○横路委員 今の第二十七条の第一項につきましては、私は大臣に特にお尋ねしますが、これは私が指摘いたしましたように、大体皆さんとしては国庫支弁するというので、これは自治体警察なのだから当然都道府県議会にかけるのだろうとお思いになつていた方が多い。しかしこの点はやはり私が先ほどからお話申し上げましたように、この法文をおやりになるにしてもぜひこの点は修正なさるべきだ。政府与党の方でも何でもかんでも政府原案を通すということはないと思う。この間の資産再評価の問題についても現に政府が出したものを、まつたく根本から直して、逆に与党の方が政府原案に反対して、政府案を全面的に修正して、大臣まであわ食つて修正案に投票するなんということすらあるのだから、もしも私が指摘したようにこれを都道府県の議会を通さないということになれば、当然この点に関しては、何といつても四十八億は総体の一割ではないというお話ですが、三万人が整理された場合における四百二十三億ですか、そういう場合においては、人件費被服費が多いのですから、従つて四十八億といえども国の公安にかかる犯罪その他の特殊な犯罪の捜査に関する経費とか、警衛及び警備に要する経費というものは、ともすると、これはいろいろ疑惑を生むことになるのです。こういう点はやはり私は当然地方議会において協力を得るようにしなければならぬと思う。その点ですが、大臣はあくまでこれは原案を固執なさるのかどうか、この点大臣から御答弁願いたい。
  168. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほど来累次にわたつてお答えを申し上げておりまするように、警察事務の特殊性からいたしまして、第三十七条の各号に掲げてありまするものは、国が支弁する方が適当であろうと、こう考えておるのであります。ただ私といたしましては、国会と行政府の関係は、国会において修正をされるということに、政府はとやかく言うべきでないと思います。政府といたしましては、この通りに考えておりまするが、国会がされることに対しては、私は何も言う権限も持ちませんし、また意思も持ちません。
  169. 横路節雄

    ○横路委員 大臣の方がやはり政治的に答弁をなさる。大臣の気持はわれわれに大体賛成であるように承りました。  そこで私は総務部長お尋ねしたいのですが、今の第三十七条の第一項の第六号の警察用車両という点ですが、この点は、実は私はこの間から、防犯協力会費とか、警察協力会費とかいう金の大部分は、これは山間僻地のいわゆる駐在所に行くというと、てくてく歩いたのでは、犯罪の捜査ができないから、オートバイを買つてくれ、こういうのです。それでオートバイを住民が買つてやる、そういう金になつておる。もつとひどいところに行きますと、自転車すらない。自転車を買つてくれという。あの協力会費というものはそういう金なんです。私はあの協力会費というものは、何も生活費に使つておるものとは考えない。現に私ども山を歩いて見て、そういうところから訴えられ、行つてみると、いいオートバイを持つている。なかなか国警はいいですね。そうじやない。こんなものは国が買つてくれない。住民からその金は大部分出る。その金は何の金だと言つたら、協力会費だというのです。このことは、今総務部長お話ですと、この点だけは、国が全面的に見るのだというが、そうではない。ジープを買つてくれ、雪の北海道では、何かうまく雪の上を走る特殊なジープがあつて、必ず買つてくれということになる。道議会で、それならばジープを何台、オートバイを何台ということになる。そうなると、これは片一方は、国庫支弁による警察の車両、片一方は、道費支弁による警察の車両、この寄付されたものは、何十台になるかわかりませんが、そうであれば、当然これは、やはり道議会を通して全部一括して買えなければ、いわゆる都道府県の議会が協力してやるということでなければどうしてもおかしいのです。但しこれは公にできないのがあるんだ。第七号や第八号、ことに第八号などは公にできない。これだけは金を握つて、どんなことがあつても公にできないから、やらないんだということになれば、やはりこれは国家警察で、俗に言う秘密警察的なにおいがする。都道府県警察ではないのですから、国家警察性格上やれないということになれば、別ですよ。総務部長、どうですか、この車両の点については、あなたは絶対に都道府県を満足させるようにやれるのかどうか、総務部長からこの点お答え願いたい。
  170. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 第六号の車両その他につきましては、これは普通の乗用車、自転車の類は含んでおらないのでございまして、装備車、輸送車、指揮官車、一昨日ですか、これを申し上げましたけれども、そういう警察が出動する場合に使うような、大がかりなようなものだけを六号に掲げてあるのでございます。ただいま寄付に転嫁しないか、またそういう事例が多いじやないかという御指摘がございましたが、そういう場合に問題になりますところの普通の乗用車、自転車の類は、第三項の補助金対象の方にいたしてある次第であります。
  171. 横路節雄

    ○横路委員 それではあなたにお尋ねしますが、ジープはどうですか。それからジープと同じような、雪中を走るそういう機動車はどうなりますか。
  172. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 ジープは六号の中に入つております。
  173. 横路節雄

    ○横路委員 それが問題ですよ。あなたの方で、これは足りないのですから必ず都道府県議会に要求なさるのです。オートバイはどうなりますか。
  174. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 六号の中に入つております。
  175. 横路節雄

    ○横路委員 この山間僻地で都道府県の住民が協力しているのは、ほとんどこれはオートバイですよ。だからこれはやはり当然一括して都道府県議会を通して、いわゆる帳簿台帳その他に載せなければならぬ。これほど私が指摘いたしてもまだ納得されませんか、どうですか。やはりこれはあなたの方で何としても国庫支弁として握つておいて、別な会計を通して、どうしても都道府県の協力を得ないようにするのでありますか。
  176. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、六号のような警察の出動用に使います車両の類、警備装備品の類は、四十八億の中で半分以上のものが中央において一括調弁せざるを得ないような経費にもなつておりますので、これはやはり国庫支弁にいたしまして、各府県に配給するという場ことが適当であろうと考えております。
  177. 横路節雄

    ○横路委員 それでは都道府県議会に対して、いわゆる公安委員会から足りないとか、それから都道府県の住民に対して、山間僻地の駐在所が、私が指摘したオートバイその他が足りないというゆえをもつて協力を仰がないということが絶対に明言できるのですね。
  178. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 府県費でそういうものについては絶対に支出してはならないかという問題につきましては、先ほど長官からお答えがございましたように、それを妨げておるというわけではございません。しかし、もちろんそれは国庫におきまして——第一国庫支弁とは申しましても、各府県の要求に基きましてこれは大蔵省に要求をするわけであります。またそれを経理いたします際におきましては、府県側で大きな事件があつた、そのために足りないという御要求があれば、またそれについて追加支出をするというように、府県とは緊密な連絡をとつて参るわけでございますから、予算操作といたしましてはできるだけそういう不自由のないように運営して参る考えであります。
  179. 横路節雄

    ○横路委員 私はこの点についてはちよつと了解できませんので、いずれ明後日委員長の留守中に、欧米各国の都市警察の実情についてお伺いすることになりましたから、そのときあわせて、会計検査院のだれかに来てもらつて、こういう点についてお尋ねしたいと思います。  大分時間もたちましたから、あと一つだけ聞いておきたいと思う。それは第十六条の第二項に、警察庁長官は「都道府県警察指揮監督する。」となつておる。第三十八条の第三項、には、「都道府県公安委員会は、都道府県警察管理する。」となつておる。そこで私がお尋ねしたいのは、警察庁長官は都道府県警察指揮監督する、それから都道府県公安委員会都道府県警察管理する、この区別はどうなんですか。前の方がお尋ねしておるかもしれませんが、この点ぜひひとつ長官から答弁していただきたい。
  180. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 都道府県警察、いわゆる都道県府におきまする都道府県警察全体を称して都道府県警察と、こう抽象的に呼んでおるのでございます。具体的に申しますと、第十六条の場合に、しからば都道府県警察指揮監督する場合に公安委員会警察本部長、この関係をどう考えておるのかというお尋ねがありましたが、公安委員会に対して指揮監督をする。公安委員会はその指揮監督に応じて管理をいたすわけでありますから、公定委員会都道府県警察本部長をさらに指揮監督して行く、こういうことになります。それで第三十八条では、これも抽象的に書いてあるわけであります。都道府県警察というものは公安委員会管理をするものだ。これを具体的に当てはめて参りますと、三十八条では、公安員会は警察本部長指揮監督する、具体的に言えばそういうことに相なります。
  181. 横路節雄

    ○横路委員 それでよくわかりました。そうすると警察庁長官は都道府県公安委員会指揮監督する、その指揮監督を受けた都道府県公安委員会は、都道府県警察本部長指揮監督する。そういうことになると、これはまつたく国家警察ですね。これは警察庁長官が都道府県公安委員会指揮監督する。その都道府県公安委員会警察庁長官から指揮されたその件について都道府県警察本部長を監督する、こういうことになつたらまつたく命令系統が一本ですね。都通府県公安委員会は、今までの自治体警察におけるいわゆる公安委員会のような性格を一体どこに持つているのか。私たちここにバツジをつけている。斎藤さんもバツジをつけていますが、これはやはり一つの職分に関してつけているのです。こういうものとはもつと違つて都道府県公安委員会というのは実際は命令系統は一本なのだが、そうするとどうもあまり国家警察というようにみんなから言われると困るから、そこに何か飾り物とし、ちよつと公安委員会を置くというようにしか受取れないのですが、この点は警察長長官が、第十六条の二項において、今あなたから御説明のように都道府県公安委員会指揮監督するというこの建前を通せば、どうしてもこれは国家警察になるのです。この面から考えて、あなたがお話のどちらが主か従かということを私はきようの笠間で開いているのですから、五分と五分と言うならわかるが、六分か七分だと言う。あなたの説明では、今の指揮系統から言えばやはり国家警察性格が六分か七分で、自治体警察性格が三分か四分だと思う。これがどうしてあなたがこの前からそうでないのだ、六分か七分が自治体警察なのだということになるのか、その点ひとつ御説明願いたい。
  182. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 第十六条の二項において「警察庁の所掌事務について、都道府県警察指揮監督する。」とありまして、警察庁の所掌事務は都道府県に関する一切のことではないのでございます。第五条の二項各号に掲げてある限度であります。しかも各号のうちにも指揮監督の伴うものと伴わないもの、単に基準を示したり調整したりするようなものは指揮監督に入らないという御説明を申し上げたのであります。従いまして中央から何ら指揮監督も受けない、完全に独立したそういう自治体の警察ではございません、第五条の三号、四号、六号ないし十号という事項に関する限りにおきましてはその範囲内で指揮監督は受けますが、そうでない面においては、都道府県公安委員会が自由に自分の責任をもつて管理をするという建前になつておる、かように御説明を申し上げておるのであります。若干限られた限度において指揮監督はされますけれども、しかしこれは自治体警察官の色彩を全然払拭してしまうというものではないと考えております。
  183. 加藤精三

    加藤(精)委員 ただいまの横路委員の長々と続いた御質問について私も非常に啓発されるところが多かつたのでございますが、自治警察という問題に関連いたしまして、どうも地方自治の本義ということが問題になつて来る、地方自治の本義というのは一体何であるかという最終的な問題に終着したと私は考えるのでございます。そういう問題について、私も地方行政を長年担当しておいて、感じたのでありますが、一番最終的には地方の人の良識をもつて地方の国の行政を動かす。地方の行政といつても、法律や制度を度外視しての地方の行政というものは実際あまりよけいはないのですから、そういう意味で行政を地方住民の手によつて、ないし地方住民の良識によつて動かすということが中心であるといたしますれば、運営管理というものがことごとく都道府県公安委員会の手にある以上、これは地方自治警察でもあるのじやないかというような気が非常にするのでございます。それについて都道府県公安委員会というものは、その都道府県知事が都道府県の議会と相談してきめるのですから、今度の自治警察の親分はまつたく地方的な住民であり、地方的な良識であるのじやないかというふうに考えるのですが、御当局の御意見はどうでございますか。  なお先ほど非常に混乱を招いたことに関連すると思いますが、これは私も非常に疑問なのでございますが、都道府県警察公務員の任命とそれから管理関係でございます。都道府県本部長そのものの任命は警察庁長官の任命であると思いますが、その都道府県本部長の執務の態様というか——これはスタツフ・コマンドに関することなんですが、執務の態様というか服務の規律というものは、私は都道府県公安委員会運営管理をする必要から見ても、どうしても都道府県公安委員会のある種の指揮監督を受けるのじやないか、しかるがゆえにその執務の態様が悪いときには罷免の請求もあるのじやないか、そういうふうに考えるのでございますが、御当局はどうお考えになりますか。それによつて横路委員の御質問の点も、相当程度氷解するだろうと思いますので御質問をいたします。
  184. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 加藤委員の御所見通りに大体考えております。府県あるいは市町村の事務の中で公共事務、行政事務両様でございまするが、いずれも都道府県あるいは市町村がみずからの機関でみずから処理をする、しかしこの場合に少くとも行政事務につきましては国から必要に応じてある程度の監督を受けたり、ある程度の国家性——国家行政事務を施行するについて条件をつけられることがありましても、それなるがゆえにこれが地方自治団体の事務でなくなつてしまう、かようには考えられないと思うのでございます。
  185. 横路節雄

    ○横路委員 私は時間がございませんからもうこれでやめます。実は第五十五条第一項、第二項の職員の人事管理についてお尋ねしたいと思つてつたのですが、時間も七時になりましたし、この点は附則の経過規定のところでさらにお伺いしようと思つておりますが、先ほど私が申しましたように実際提案された政府側で、これが国家警察、自治体警察という性格においてより自治体警察であるというのであるならば、やはり何としてもこの際任免権の問題、ことに第三十七条の問題はよほどしつかりしてやらなければ、国家警察は秘密警察であるというそしりをやがて受けるような事態になると私は思う。従つて私はあくまでも都道府県住民の協力を得るためにも、これは何としても国庫支弁でなしに地方負担するということにして、これを都道府県議会にかけることにする。私はこの法案に反対ですよ。反対ですが、政府みずからにおいても特に将来の運営のために、この点は大なる誤りであるということを指摘して私の質問を終ります。
  186. 中井一夫

    中井委員長 横路君が今五十五条の質疑をしたいということでありましたが、いかがでしよう、ちよつと皆さんにお諮りをいたします。今横路君のお言葉にもありましたが、もうこの法案残り少くなつて参りましたからこの際各章の区別をはずして、一括最後まで御審議願つたらどうでしようか。その方が手取り早いと思いますが、よろしゆうございますか。     〔「理事会では四章までやつて、五章以下は一括してやるということになつている。」と呼ぶ者あり〕
  187. 中井一夫

    中井委員長 そうではありましようが、どうせ同じことだから一緒おやりになつた方が横路さんも済んでしまうので楽じやありませんか。
  188. 横路節雄

    ○横路委員 私は今のお話のように第七章までをひつくるめてやれということになると、もつと言いたい。しかし今ここで、理事会できまつたように第四章についてというお話でありましたので、第四章についてやつたのです。今のお話のように全部やれということになれば、私はあらためて質問を継続しなければならない。この点は第四章でやつて、また皆さんの御発言のあとで順番をいただいてやろうと思つております、
  189. 中井一夫

    中井委員長 わかりました。実は横路さんの御質疑に便宜のようにということも考えたのでありますが、そうでもないということでありますから、やむを得ません。ではその通りやりましよう。それでは藤田義光君。
  190. 藤田義光

    ○藤田委員 割当の時間時間しかありませんから、ほかの委員諸君もおられますし、明日やられますから、私はきわめて簡単に四章の残りをお伺いしたいと思います。  まず第一にお伺いいたしたいことは、三十六条の問題であります。この点に関しましては、犬養前大臣も、小坂新大臣も大体同様な見解でありますが、都道府県警察は自治体警察である、そういう前提のもとに答弁を続行されております。そうすれば当然現行地方自治法というものは、そのまま適用することが法の建前でなくてはならぬと思うのでありますが、地方自治法は当然今回の改正案におきましても、そのまま適用されるというふうに解釈してよろしゆうございますか。
  191. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 さようでございます。
  192. 藤田義光

    ○藤田委員 そこでお伺いしたいのでありますが、今回の改正案は自治警察建前のもとに起草されたということであります。私は自治警察であるかいなかを測定するバロメーターといたしましては、第四章が一番重大ではないかと思うのであります。第四章で、これは私の見方を披瀝いたしましてそれに対する国警長官か大臣の御意見を聞きたいのでありますが第四章に規定されました各箇条のうち、自治体警察としての性格を持たせられているところは大体五つあると思うのであります。第一点が都道府県公安委員会の設置であります。第二点が地方警察職員地方公務員であるという御説明であります。第二点は経費府県負担であるという点であります。第四点は都道府県の組織、人事管理等に対する条例制定の基準であろうかと思うのであります。最後には都道府県警察は例外的に国家警察事務を運営するという点ではないかと思うのであります。これらの条文はそれぞれはつきりいたしておるのでありますが、大体第四章の中で自治体警察としての性格を持たされた具体的な問題は以上の五点というふりに解釈してよろしゆうございますか。
  193. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 大体御意見通りでございます。ただ第五番目に例外的に国家的な仕事をするとおつしやいましたが、これは例外的に国から干渉を受ける、かように御解釈いただきますならば、御意見通りでございます。
  194. 藤田義光

    ○藤田委員 三十八条の点でありますが、「都道府県知事の所轄の下に、都道府県公安委員会を置く。」という点であります。中央におきましては国家公安委員会が置かれております。これは総理大臣の所轄のもとにあるわけであります。ところが御承知の通り、総理大臣という国家機関と、都道府県知事という公選されたる自治体の機関は、法律上も実質上も全然性格を異にするのであります。その下にあります都道府県公安委員会と国家公安委員会は従いまして法律上も現実的にも性格は相当異なるのではないか、かように考えておりますが、この点に対する御意見をお伺いします。
  195. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 御質問意味がよくわかりませんが、性格と申しますると、都道府県公安委員会都道府県警察の一切の事柄について管理をする。国家公安委員会は第五条に限られた事項についてのみ管理するというので、内容は異なると思つております。ただ所属するのは総理に所属する、一方は知事に所属する、知事の方が民主的な要素が多いということであれば、従つて都道府県の方は民主的な要素が多い、かように見えるかもしれません。
  196. 藤田義光

    ○藤田委員 私は同じ行政委員会というふうなわくで律するのには、あまりに国家公安委員会都道府県会安委員会はその所轄の主体が違うのではないか、所轄される客体としての両公安委員会は、法律的な実体と申しますか、性格としても相当異なつたものを持つているのではないかというふうに考えておりますが、その脈に対するお考えをいま一度お伺いしたいとともに、私はどうも行政委員会の本質——これはアメリカの輸入でありますが、終戦後できました三十幾つかの行政委員会の本質からいたしまして、この改正案に見る行政委員会としての都道府県公安委員会を、いわゆる行政委員会と見るということには、これは相当無理があるのではないか、行政執行力は全然ない、単に都道府県公安委員会は最も重大なる人事権の運用に関しまして、警察庁長官の諮問勧告機関である。従つて長官といたしましては、意見を聞こうが勧告を聞くまいが自由であるというふうな認定をいたして参りますると、行政委員会ではない、かように考えるのでありますが、その点の御見解をお伺いします。
  197. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これが行政委員会であるかあるいは議決機関であるかということに相なりますと、議決機関的な色彩もありますけれども、行政委員会としての本質を持つておるものである、かように考えざるを得ないと思います。人事権について勧告権がある、この勧告権は聞かれても聞かぬでもしようがないという御所見のようではございますが、実際問題といたしましては、この勧告権というものは非常に大きな役割をする、かように考えております。
  198. 藤田義光

    ○藤田委員 どうもその点十分ではありませんが、時間をとうとびますので、次に参ります。  四十七条以下の問題でありまするが、実際上警視庁関係法律解釈をやつておられる方の御意見を間接に聞いたのでありますが、今回の改正案に明示されておりまする警視庁というものは、いわゆる都警察の本部としての名称である、従来の警視庁というものは二十三特別区を中心とした全警察行政を所轄するいわゆる警視庁でありまして、明治時代以来の由緒ある伝統を持つた警視庁であります。ところが今回の法文を見ますると、「都警察の本部として警視庁」云々というふうに四十七条に規定されておるところによつても明らかなごとく、従来の警視庁というものと本質的に性格が異なるような改正がなされております。その理由と申しまするか、その改正の根拠をこの機会にお伺いいたしておきたいと思います。
  199. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 四十七条をごらんいただきますと、本部の規定をいたしておりますので、警視庁は都警察の本部としての名称である、これには間違いないわけでありますが、そのことからして、都警察の広い意味の、全体の名称としての警視庁という名称を用いないように今度はしているのではないかという御疑念が出るのはごもつともだと思うのでありますが、この法律には警察全体を抽象名詞といたしまして、都道府県警察、こうやつているわけです。しかし都道府県警察という固有名詞の官庁をつくる意思ではございません。都道府県警察というのは一つ公安委員会管理している公安委員会を含む、かつ執行体をも含む抽象名詞でございまして、四十八条をごらんいただきますと「都警察に警視総監を」こういうふうにございますように、都警察全体といたしましても警視庁という名称は、この法律範囲内におきまして——この法律では広い言葉として用いている場所は、抽象名詞としては都道府県警察しかございませんので、なるほどそういう御疑念が生ずることはごもつともでございますが、気持といたしましては、本部も警視庁であるけれども、全体も警視庁という名称をこの法案範囲内において使い得る、さように考えております。
  200. 藤田義光

    ○藤田委員 五十条のいわゆる意見と勧告であります。これは総務部長の逐条説明で言われたと思いまするか、当然意見も勧告も拘束力はない。従いまして実際上意見、勧告を入れない場合も法律違反というような問題は全然起きて来ない、かように徳義上の問題と申しますか、そういうふうな効果しかないという結果になりまして、これは現実の政治問題化する危険が非常にふる規定でないかと思うのでありますが、この点に関して簡単でけつこうでございます。御見解をお願いいたします。
  201. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 意見を聞いて、その意見に従わない場合に、あるいは勧告があつた場合に、その勧告通りしなかつた場合、法律違反にはならないかということでありますが、法律上は違反にはなりません。しかしながらかような直接管理をされている公安委員会意見に従わないとか、あるいは直接都道府県警察本部長管理している公安委員会の勧告に従わないで、長官が実際運営をやつて行けるかというと、行けませんから、事実上これでいけないという場合はあり得ない、かように申し上げておきます。
  202. 藤田義光

    ○藤田委員 次にお伺いしたいのは、五十一条の方面本部の性格と申しますか、都道府県本部と方面本部の法律上の地位の相違というようなものをお示し願いたいと思うのであります。これはたとえば三十条に「地方機関として、管区警察局」というふうに、はつきりお示しになつておるのでありますが、この方面本部というものの性格がこの条文ではつきりいたしませんのでお伺いいたします。
  203. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 三十条の管区は、国の警察庁の地方機関、この五十条の方面本部は北海道の警察の下部組織でございます。
  204. 藤田義光

    ○藤田委員 そうしますと、各府県にあります警察署と方面本部、これはもちろん外形上違つておりますが、法律的にはどういうように——方面本部の下に警察署が当然できますが、この間の区別をお伺いします。
  205. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 方面本部は北海道におきましては、警察署を統轄している一つの本部でありまして、その方面本部をさらに北海道の道警察の本部が統轄している。従つて他の府県におきましては府県の本部からすぐ警察署でありますが、北海道は地域が広うございますから、北海道の警察本部と地方の署の間に、方面本部というものを設けているのであります。
  206. 藤田義光

    ○藤田委員 こういう制度を設けられました根拠をお伺いしたいのでありますが、大都市等に関しましても、根拠いかんによりましては、こういう制度を研究されたことがありますかどうですか。お伺いいたします。
  207. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 北海道におきましては、地域が非常に広汎でございますから北海道の各署を一つの道本部だけで統轄をいたしますのには、あまりに地域が広過ぎる、中間の方面本部を設けまして、そこである程度の事柄が処理できるということでございませんと、事務の敏活も欠きますので、方面本部を設けたのであります。都市におきましては、さような意味からは必要がなかろう、かように考えているのでございまして、たとえば今日の東京の警視庁におきましては、警察庁の区域を数方面にわけておりまするが、これは今度の都道府県警察の内部機構でございますから、さような必要があるならば、各府県で設けられましても、事実上必要に応じて設けられることはさしつかえはなかろうと考えておりますが、法律上これを設けなければならないようにする必要はなかろう、かような考えをただいまではとつております。
  208. 藤田義光

    ○藤田委員 私がお伺いしたいのは、地域広範のためにこういう制度をつくつたという御説明でありますが、もし北方の治安状況に照しまして非常に重大であるから、こういう制度を考えられたとすれば、たとえば名古屋市のごとく、非常に厖大な人口を擁しまして、犯罪も多い、こういう大都市に特殊な考慮を加えてよかつたのじやないか、都道府県本部のほかに、方面本部というようなものも、全国重点的にある程度考えてもよかつたのじやないか、かように考えるのであります。地域だけを考慮されてこういう制度をつくられたという御説明でありますが、防犯、治安の点を考えられたということであれば、一般府県にもこういう制度を研究する余地はなかつたか。現に春闘一部の有力な方面では、一般府県にもこういう制度を研究する必要がないかということも聞いておりますが、いま一度御意見をお伺いしたいと思います。
  209. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この考え方は、ただいま御指摘になりましたように、道本部から直接指揮をしておつたのでは遠過ぎる、まず現地に近いところで一応の仕事が役立つようにというのが、この方面本部でございます。かような考え方からいたしまして、たとえば愛知県は非常に地域が広過ぎる、たとえば豊橋が一つの中心である、あそこの近辺の事件を処理するのに、名古屋市内にある愛知県の本部から始終指揮をとるというのでは間に合わない、さような場合、豊橋に方面本部を設けて当該地方の事柄を一応統べさせる、こういう考え方は成り立つのでございます。東京警視庁ならば、三多摩、立川あたりに一つの三多摩方面本部を置いて、総監はある程度のことはその方面本部長にまかせて三多摩地方を処理させる、こういう考え方は十分成り立つのでございます。
  210. 藤田義光

    ○藤田委員 私は東京警視庁の例は適当でないと思うのでありますが、たとえば愛知県等におきまして、名古屋市、これは相当の人口を持ち、相当の犯罪発生地である。そこを一つの方面といたしまして、またその、ほかの郡部、都市を包含した方面本部、この三つくらいを考え、その上に本部長を置くというようなことを考えるという有力な意見があるので、東京都では、警視総監のほかに、郡部だけの方面本部というのはどうもあまりぴんと来ないのでありますが、そういう点立案の過程において研究されたことはございませんか、どうですか。実はこれは現実の警察内部の機構運営上つくるということでは非常に弱いのであります。法文にそういうことをうたうという計画はなかつたかどうか。これは学者の意見等を附かれた過程において研究されたことでもなかつたかどうか、これを伺つておきたい。
  211. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 昨年の法案には、数警察署を所轄する地区本部を設けることができるという規定を置いておきました。このたびの改正案の際にこの点をさらに検討いたしたのでございますが、数署を所轄する地区本部を設けますことは、昨年も考えたことでありますから、一つは非常に利点があります。しかしながら県本部から地区本部、さらに署、そう段階をたくさん踏むことは、かえつて警察事務の渋滞となり、また地区本部を置くだけ人員がよけいいるわけでありますから、不経済にもなるというので、今度の法案には取入れなかつたのであります。従いまして、観念といたしましては成り立ちますし、昨年のような地区本部という考え方も、ある意味においては意義のあることである、かようには考えております。
  212. 藤田義光

    ○藤田委員 次にお伺いしたいのは、第五十五条の括弧に「地方警務官」というふうな総称をつくられております。これに対し第二項に「地方警察職員」という言葉が規定されておるのでありますが、これは警視正以上を総称する場合は、一切の公文書等でこの略称を使われる予定でありますかどうですか。あるいは昔の地方事務官的な考えでこういう名称をつけられたのでありますか。便宜上の名称であるか、あるいは法律用語として長く使用される予定でありますかをお伺いいたします。
  213. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これは便宜上の名称でございまして、たとえば地方警務官に任ずるとか、そういつたような官名とか、そういういうものではございません。
  214. 藤田義光

    ○藤田委員 その次にお伺いしたいのは、五十六条の第二項であります。「地方警察職員の定員は、条例で定める。この場合において、警察官の定員については、政令で定める基準に従わなければならない。」ということでありまして、これはやや重複のきらいを生ずるのではないか。むしろ定員の基準を定めるならば、この機会に法律はつきりうたつておいた方が、地方制度調査会の答申にもそのまま沿うことになり、それから現行法においても定員ははつきりうたつているのでありますが、政令と条例、この二段構えの区別をされました理由——実際御説明願えぱすぐ納得が行くような規定でありますが、重複しているんじやないか、かように考えるのであります。
  215. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 これは各府県単位にやるものが地方警察職員であるものでありますので、法律によりまして府県別に定員をただちに規定するということは、若干の定員の増減について一々法律の改正を要するということにもなります。自治の本旨から申しましても、府県が条例で自己の地方警察職員の定員をきめるのが正当であるということから、条例にいたしたのであります。そのうちの警察官以外の職員につきましては条例できめつばなし、政令の基準も何も定めないのでありますが、警察官の定員につきましては、各府県がそれぞれ階級別に適正な編成がなされて、均衡がとれますように、ある程度の人口とか、犯罪発生条件とか、そういうものを基礎にいたしまして合理的な基準を定めまして、その基準に基きまして各府県の条例で定めるのが適当であろうということから、さように規定いたした次第であります。
  216. 藤田義光

    ○藤田委員 くどいようでありますが、この基準は、警部一名に対して一般巡査何名、巡査部長何名、警部補何名、そういう意味の基準でございますか。それとも、大体この規模の人口、この規模の犯罪等はどれくらいの警察官を要すべしというような意味の基準でありますか、その点をお伺いしておきます。おそらく第五条十一号のいわゆる基準ではないかとも思つております。この任用、勤務、活動の基準を定めるという規定が第五条十一号にあつたと記憶しておりますが……。
  217. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 政令で定める基準といたしましては、大体人口、面積、犯罪発生状況、その他治安関係につきましての特殊な対象があり、さような特殊事情を考慮いたしまして、階級別に定めるという考え方で、今お話がありましたような警部何名に対して警部補何名といつたようなことは、それは全体として均衡あらしめたいと思いますが、そういうきめ方ではなしにきめたいと考えております。それから第五条の十一号とは一応条文が違いますので、定員につきましては、特にこの条文によつて規定がなされておるものと解釈をいたしております。
  218. 藤田義光

    ○藤田委員 次にお伺いしたいのは最後の節でありますが、第五十八条、第五十九条に協力援助の規定がございます。先般もこの問題に関連してちよつとお尋ねしたのでありますが、消防とか海上保安あるいは鉄道公安、鉱山保安、麻薬取締り等の他の治安部門との協力援助あるいは応援というような規定も、この機会にこの第四節にうたつておいた方が、現状のまま放任することより安全ではないか、現状のまま放任することは非常に危険があるのではないか。たとえば麻薬の密輸等に関しましても、どの限界で府県警察が出て行くかというようなことに非常な紛淆を来すのではないかと思うのでありますが、その点に関するお考えを伺つておきます。
  219. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 御指摘のような特別司法警察職員との協力関係は、刑事訴訟法に別に規定されておりますので、警察法案の中には、これは一般警察に関するものを規定する法律であるという考え方によりまして、特に規定してございません。
  220. 藤田義光

    ○藤田委員 その点に関しましては六十五条に移動警察規定があるのであります。この移動警察規定と五十八条、五十九条の規定、それから他の治安機関との連繋、これか非常にコムプリケートして来るのではいか。GHQが現存しておりましたころ、警察担当の三世の松方君等が盛んにこの問題を取上げまして、至急国家地方警察に統合すべしということを育つてつたのであります。これはアメリカ人の考えでありましたが、われわれも、先般お尋ねしました通り、この機会にもし統合が不可能ならば、規定において運用上国警が中心となるというような態勢をとつておくべきでなかつたかと思うのであります。移動警察との関連においていろいろ非常に微妙な問題を生ずるおそれがありますので、その点の調整は刑事訴訟法だけの段階、司法警察の段階に行く前の問題としても、いろいろあることと私は思いますので、この移動警察等では全然鉄道公安官との関係等は考えられなかつたかどうか、お伺いいたしておきます。
  221. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 この移動警察に関しまする規定は、警察法案といたしましては、現行法にはこのような規定はないのであります。そこで現行法におきましては、実際におきまして移動警察というものはやつておるわけでございますが、今度の五十九条に当りますような相互の援助要求、こういう関係で、複合的かつ恒常的に援助の契約のようなものができておるというところから出発しておるわけでございますが、移動警察というふうに非常に複雑な管轄区域のものが一つの目的をもつて恒常的に複合的に約束をしてやるというようなことは、一々援助要求というような条項から出発するよりは、移動警察という観念自体がその協議によつてあるのだということを明記いたした方が適当であろうということから、六十五条の移動警察に関する職権行使の規定を設けたのであります。お話のように特にこの鉄道公安職員等との関係は、実際移動警察の場合には非常に規律を要する点がありますが、これは別に特別司法警察職員としての職務を律しておるところの法律がございまして、鉄道公安職員の職務に関する法律によりまして、警察職員との関係はこういう場合にに引渡しをしなければならないと、こういう相互関係規定がございますので、特にこの警察法案には特別司法警察職員との関係をあえて明記をしなかつたわけでございます。
  222. 中井一夫

    中井委員長 ちよつと私それに関連してお尋ねしますが、特別司法警察との統合問題につきましては、先般来だんだん委員諸君からも御意見が出ておりますが、その統合に関して本案をつくられるにあたつて考慮を払われたることあるやいなや、また、しからずとするも、そういう目途をもつてその特別司法警察当事者と話合いをせられたことがあつたかどうか、その点についてちよつとお伺いしたいと思います。
  223. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この問題は政府で行政機構の改革とか、あるいは簡素化という問題が出ますたびに一つの議題になるのでございます。しかしながらお互いにこれらの関係にはそれぞれ利害関係が非常に複雑でございますので、まだ今日までその結論を得ていないと、こういう次第でございまして、関係のところが寄り合つてひとつ協議するという段階まではまだ至つておりません。今後さような機会を政府でつくられて研究の段階に進むことがあるであろう、かように考えておるのであります。
  224. 中井一夫

    中井委員長 ちよつとその点について、本案の作成についてはいろいろの理由もありますが、政府の説明によれば、行政改革、簡素化ということが一つの大きな目的になつておる。それならばこの問題はぜひお取上げになつてしかるべきであり、そうしないというと実は徹底せぬというのが、委員皆さんの考えなんです。それについていろいろ御質疑があるが、いまだ徹底した御答弁がない。今日初めてこの問題に触れたわけであります。(大石委員「そんなことはないですよ、委員長さん、私がたびたび言うておりますよ」と呼ぶ)そうすると、その問題について話合いもせずに来られたというのが事実なんですね。
  225. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 関係各庁で話し合おうという段階にまでは来ていないのでございます。まずその警察というものの組織のあり方をどうするかということが本ぎまりになりませんと、どういうぐあいに統括をするかということもまたきわめて困難でありまするので、まず本格的に普通警察というものはこういう組織で行くということがきまりまして、その後の研究課題、かように考えておるのであります。
  226. 中井一夫

    中井委員長 もう一点。そうすると本案が成立した場合、将来にわたつて、この統合問題につき尽力をせられる御意思があるのですか。
  227. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 警察関係当局といたしましては、さような研究をいたしたいという考えを持つておるのでございます。しかしながら関係するところは各省にまたがつておりまするので、警察関係だけの一存では参らない。しかし政府もときどきこの問題を提出しておられまするので、この問題が解決をいたしますならば、少くともこれについて研究のことに歩が進められるのであろうということだけは申し上げられると思うのでございます。
  228. 加藤精三

    加藤(精)委員 関連。この問題につきましても、私藤田委員の御質問に非常に啓発されまして、警察法の逐条審議が非常に実質的な審議であることにつきまして、国会議員となつたことの意味があるようでございまして、非常なうれしい気持に打たれておるのでございますが、最近鏡子ちやん殺しの問題が起つたとき、実際世の中の母親はどれだけ大きな衝動を受けたかわからないのでございまして、八つの子供を郷里に置いておる私の家内のごときも、毎朝のように郷里に電話をかけて電話口で泣いている、それくらい心配しているのでございますが、この麻薬の取締りにつきましては、これは国会をあげて大きな運動を起して、ただちに国内の麻薬取締りの徹底化をはからなければ、ヒロポン中毒の問題が国家そのものの基礎を危くする。戦争で国が敗れるというような問題は、これはドイツのように何度敗れても立ち上る国もありますけれども、国民の精神、国民の脳髄が破れた場合におきましては、これはいかんともしがたい問題だと思いますし、これが麻薬取締官と警察官との関係におきまして、麻薬取締官が十分警察官——国をほんとうに最後まで守るのは警察官でありますがゆえに、その気概をもつてほんとうに国家の害毒を退治しようという気持がなければしようがないと思うのでありまして、そういう意味からも、ただいま藤田委員が御指摘になりました点は、この際徹底的に立法化し、そうしてこのヒロポン中毒並びにこれによつて起る諸種の残虐事態等を絶滅すべきものだろうと思います。これに加うるのに、現在日本では精神衛生学の方が非常に進歩が遅れておりまして、また精神衛生の要保護者を保護する施設が非常に少い。これと麻薬の蔓延とが結びつくことにおきましては、これは実に国家百年の基礎を危くするものだと思うのであります。ところがわが国の行政におきましては、各省のなわ張り争いがまことに熾烈でございまして、現在この国会内の各政党で審議しております水道法、河川法、その他軒並に醜い行政官庁のなわ張り争いをやつておりますので、畜犬取締法ですか、この狂犬の取締りにつきましても、種々問題があり、高利貸しの利率のことについてもいろいろ問題がある。こういうようなことがほんとうの現在の政治の病根でございまして、幸いにわれらの最も新進気鋭の、国会のほとんど全部の方が最も嘱望いたしております小坂国務大臣を、警察担当大臣に迎えたということは、われわれはおすがりすればこういう国家の病毒の絶滅を期する機会を得たということでありますので、これは藤田議員の質問に啓発せられて感謝のあまりあわせてお願いしたいところでございますが、小坂国務大臣のこれに対する御感想を承りたい。
  229. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 まことにごもつともな御意見を承りまして、実は私どもも非常にこの点につきまして御心配をかけておることを深く恥じておる次第でございます。麻薬の取締りにつきましては、内閣におきまして青少年問題協議会、これは厚生省が庶務を担当いたしておりまするが、これにおきまして種々協力するのにいかにすればいいかということは論議をいたしております。さつそく厚生大臣ともよく連絡をとりまして、御趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。  特別司法警察官をどうするかという問題につきましては、国警長官からもお答えがありましたように、実は先般の行政制度の改革の際にも問題として提起されておりました。しかしこれは国警当局が主体性をとつてどうするといつたことはないのでありますけれども、そういうことがすでに問題とすべきであるということについては論議がかわされておるのであります。幸いにいたしまして、警察法も皆様の非常に御熱心な御質問を得まして近く成立に至りますれば、この警察の主体を確保したということにおいて、しからばどうするかという、さつそく何らかの処置をしたい、かように考えております。
  230. 大石ヨシエ

    ○大石委員 これは私が、主役でずいぶん前から言うとるのですが、そのうちで最も重複したことは保安学校です。この保安学校は警察と同じことをやつておる。こうした重復したことをやつておるのを、この中の委員さんはだれ一人おつしやつておられません。こうしたことを国民の血税でやられては非常に困るのです。それで今度小坂さん、斎藤さんに特にお願いしますが、この保安学校も国警の中へ入れていただきたい。それから麻薬取締り、出入国、森林主事、海上保安庁、海上管区本部、それから水上警察、鉄道公安官、それから税務官吏、酒、タバコ、アルコール、これも全部国警にしていただきたい。そうしてあとの残りを自治隊警察として置いておいていただきたいというのが、私の希望でございます。どうぞよろしくお願い申します。
  231. 藤田義光

    ○藤田委員 いろいろこの問題に関して関連質問があつたのでございますが、どうも私の感じでは、初代の国家公安委員長に小坂大臣がなる公算が多いような気がします。私は吉田総理はおそらく洋行されると思いますが、吉川総理が洋行されて帰りまして臨時国会必至の情勢でありますが、国家警察におきまして一審緊急当面の課題は、麻薬取締りの問題であります。この問題に関しまして私は、これは独得の技術的素養を必要とすることも認めますが、厚生省の技官だけでは絶対これはできません。従いましてわれわれの政策委員会におきましては、議員立法で出そうじやないか、国警に一部をとつていいじやないかという意見が圧倒的であります。従いまして、もし今度の臨時国会に出されるならば、議員立法ということになりますればまずいと思います。今後のほかの司法職員の処理に悪例を残すことになりますが、どうですか、臨時国会等で具体化するという熱意はございませんか。くどいようですが、お聞きしておきたい。
  232. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 非常に先ほどから啓発されまする御意見を承つておりますが、私どもといたしましては、さような御趣旨に沿いたいと考えております。ただその前提といつてははなはだ恐縮でございますが、この警察法をひとつぜひすみやかに通していただきまして、ただいまの御趣旨に沿えるように努力したいと存じます。
  233. 藤田義光

    ○藤田委員 小坂大臣の意のあるところは十分了承いたしました、十分研究してみたいと思いますが、次にお伺いいたしたいのは、改正法案の中におきまして、どこにも防衛庁との連絡ということに関する規定がございません。緊急事態のところだけでございまするが、私は緊急事態に対する要綱の問題等はお尋ねいたしましたが、常時ある程度の連絡をしておくことが緊急事態の前に必要なことである、そのためには第四節等においても考えてみる必要はなかつたかということを感ずるのでございますが、御所見をお伺いしておきます。  それからたとえば五十九条の第二項に、警察庁に連絡ということになつております。私は地方機関としての管区警察局、これを経由すること、実際の運営の実績を見ますと、管区警察局を通ずることが、最も有効な方法ではないかと思うのであります。一挙に警察庁だけの連絡ということを規定されますと、せつかく存置されました管区警察局、こういうところの介入と申しますか、援助要求あるいは協力の義務等におきましても、十分考える必要がなかろうか、この点に対するお考えを承りたい。
  234. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 自衛隊との連絡は、先般も申し上げましたように、常時各級におきまして——と申しますのは、警察庁はこれに即応いたします自衛庁、それから各管区におきましては管区警察局と自衛隊の管区、それから各都道府県警察におきましては、そこに駐在しております自衛隊、各級におきましてそれぞれ密接な連絡をとるようにいたしているのでありまして、管区の必要な理由をこまかには申し上げませんでしたが、やはりそういう意味も大きく含んでおるのでございます。この法案に自衛隊との連絡を書いていないのでございますが、これは自衛隊法の方にそういつた連絡の規定を置いておるのでございまして、この法案に書いてあろうとなかろうと、そういつた連絡は日常緊密にいたさなければ、警察の任務もまた自衛隊の任務も十分達せられませんので、御所見通りあやまちなきを期したい、かように考えております。
  235. 藤田義光

    ○藤田委員 最後に今の問題もう一度伺つておきますが、この管区警察局とそれから警察庁の関係は上級下級で問題ありません。従いまして、私はただいま長官の御答弁のような運営を期しておられるならば、防衛庁はとにかくといたしましても、この管区警察局はこの第二項の規定等におきましては、必要な事項を警察庁に連絡しなければならぬということでなくて、管区警察局に連絡しなければならぬ。管区警察局が警察庁に連絡する、これは当然のことであります。それこそ法律の表現を必要としない、かように考えております。むしろこの点は修正をした方が長官の御答弁の趣旨を生かすことになるのではないかと思うのであります。非常にさまつな修正のようでありますが、管区警察の運用の面が、こういうところに大きく出て来るのではないかと考えますので、いま一度お伺いしたい。
  236. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 管区警察局は第三章の警察庁の中におきまして、つまり地方機関としてあるということになつておりますわけで、都でありますとか道には管区警察局はございませんので、この場合におきましては、まず管区警察局を通じて警察庁の本庁に連絡する。管区警察局にお話通り連絡をするということを、この条文は含んでいるものと御解釈をいただきたいのであります。
  237. 中井一夫

    中井委員長 北山君御留保の点がありますから、質疑のお進めを願います。
  238. 北山愛郎

    ○北山委員 第四章におきましては、先ほど関連質問で終つた分もございますから、なお残つた分二、三点簡単にお伺いいたします。  第三十七条につきましては、先ほどいろいろな質疑が行われましたが、第三十七条第一項第八号「国の公安に係る犯罪その他特殊の犯罪の捜査に要する経費」の内訳は、別に資料としていただいておるわけでありますが、この経費については国庫支弁として直接国費として支出をするんだというふうに承つたわけでありますが、そういたしますと、第五条第二項との関係においては、この国の利害にかかわりまた国内全般に関係もしくは影響のある事案というものに、大体この八号のところの事案が含まれるのではないか、こう思うのでありますが、この第五条第三項の質疑の際には、その問題はいわゆる統轄事項ではないんだ、第五条第二項の第三号には入れないで、別に連絡調整等でもつて適宜に規制ができるんだというお話でございましたが、第三十七条によつて今の事案に要する経費を直接国が支出をするんだということになりますと、これはほかの事項と同じように、ほとんど統轄事項の中へ仕事として入つて来るんじやないか。そういうふうにいたしますと、五条の二項の中では先ほど来御説明でありましたが、予算そのもの、経費そのものは、その分を直接国の方でお使いになるというわけでありますから、これはやはりその仕事について府県警察というものを統轄して動かすのではないか、実際上そうじやないか、そうなると五条の二項の場合の御説明とは、ちよつと違つて来るように思うのでありますが、その点お答えをいただきたい。     〔委員長退席加藤(精)委員長代理着席
  239. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これは費用は国費でございますが、しかしこの費用はあらかじめ令達をしておきまして都道府県警察活動として府県の公安委員管理のもとに活動し、それに要する費用を府県の支出官となつておる者が支出をするというわけでありまして、そのためにこの事件をどう処理せいとか、あるいはこの事件についてたれを検挙せいとかそういつたような事柄はこれは指揮はいたしません。全然これと無関係でございます。ただ国費であつた方が都道府県に迷惑なしに都道府県警察都道府県公安委員会のもとに十分活動できるであろう、かように考えておるだけでございます。
  240. 北山愛郎

    ○北山委員 都道府県警察都道府県公安委員会というようなものはいわば都道府県の執行機関であります。その執行機関に対して今のお話のように、この分の予算を令達して自由に使わせるというようなやり方は一体有効かどうか。そして仕事運営の方は規制、連絡、調整の方でこれを適宜に調整して行くというようなやり方で国費の支出についてはそれでいいのですか。
  241. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 今日たとえば国家地方警察におきましてはこの運営管理については国家公安委員会が一切権限を持つておりません。しかし費用は全部国費という建前になつておりまして、府県費というものは全然くぐらないで、公安委員会管理のもとに使用をいたしておるのでありますから、その点はさしつかえないとかように考えております。
  242. 北山愛郎

    ○北山委員 現在ではそれは明らかに国家地方警察であつて、しかも行政管理、というものは、国の方で持つておる。人事、予算というようなものは、国が責任を持つてやるのですから、これは当然なわけだと思うのです。しかし今度は都道府県警察であるということになつて来るのでありますから、この第五条の三項に少くとも統轄事項でないものについて、この第三十七条の八号にある「国の公安に係る犯罪その他特殊の犯罪の捜査に要する経費」というものを一括して、予算令達をするなどということについては、私は国と府県との会計規定上、そういうことが一体できるかどうか、はなはだ疑問に思うのでありますが、もう少し明快なお答えを願いたい。もしそれが明らかでなければ、先ほど横路君からお話があつたように、関係の会計の方の専門家にここに来ていただいて、そういうことができるかどうか、説明をしていただきたい。
  243. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これは都道府県職員に国の支出官を委任いたしますれば、その費用の支出ができるのでありまして、自治庁、大蔵省とも十分連絡して、これについては異論はございません。
  244. 北山愛郎

    ○北山委員 支出官を委任できるということは、個々の支出について中央の方で命令をするということなんですか。予算令達とは違うと思うのです。予算令達をして予算運営できるということと支出することとは別個だと思うのです。先ほどの長官のお答えのようでありますれば、予算というものをまとめて、都道府県公安委員会の方にやつて適宜使わせるのだ、あとはこつちの方でただ大きな部面について規制をして行けばいいというような御説明であつたのですが、支出官を置くということは、その支出について、その支出が起る原因となる事項について一一支出官を中央の方から指示するということになると思うのです。従つてこれは指揮監督の系統に属するのではないか。一般的な調整ではそれはできないわけですから、私は第五条との関係において疑問が生じておるのです。どうでしよう。
  245. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 都道府県の支出官に予算を令達いたしまして、支出官が支出命令を出して支出するという形になるのでございまして、ただ予算の支出については適当な予算の支出であるか、不適正に使つたかという、これは国の会計でございますから、国の検査に属することは申し上げるまでもございません。
  246. 北山愛郎

    ○北山委員 この点は私まだ疑問を持つておりますが、明日自治庁の長官あるいは関係者に来ていただいて、なお三十七条については、いろいろな経費予算、経理というような点について明らかにしたいと思うのであります。  その他のことでございますが、管区警察局、これは御承知の通りに北海道については通信部を置くだけであつて、管区警察局は置かない。それから関東においては東京都は除いておる。もちろん通信関係は入るということでございますが、そうしますとそういう部面を除いた北海道と東京都の部分についての管区警察局の仕事、いわゆる総務部、公安部の関係仕事はどういうふうにおやりになるのであるか、あるいは今まで質疑があつたかもしれませんが、その点をお答え願います。
  247. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 今のお尋ねの点は、北海道及び東京都に関しましては、管区警察局に当る仕事警察庁の本庁自体がやるわけであります。
  248. 北山愛郎

    ○北山委員 特に北海道でございますが、北海道は各方面にわけて方面公安委員会を置き、方面本部を置くということになつておりますが、方面公安委員会性格というものは、都道府県公安委員会性格と同じものであるか、その点をお答え願いたい。
  249. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 北海道の方面公安委員会性格でありますが、これが方面の区域に関しまして、そこの警察管理するという点は府県公安委員会と同じ関係でございますが、ただどうしても違う点が一つございます。これは方面本部自体が道警察という組織の中の下部機構でございますので、自己の管理下に属する方面本部長というものは、道警察本部長指揮監督を当然受けるわけであります。その限りにおきましては、方面公安委員会が職務上絶対に独立して方面の警察管理するというわけには行かない、この点だけが絶対の独立性がないという点は都道府県公安委員会と違う点であろうかと考えます。
  250. 北山愛郎

    ○北山委員 五十一条の三項「方面本部長は、方面公安委員会管理に服し、方両本部の事務を統括し、及び道警察本部長の命を受け、」と書いてある。それで方面本部長というものは、一方においては方面公安委員会管理に服して、一方においては道警察本部長の命を受ける。普通の場合でありますと公安委員会というものは、方面公安委員会においてもその警察管理するわけでありますから、系統上は方面公安委員会を通じてやるのが当然じやないか、これは都道府県公安委員会等も同じだと思うのですが、なぜこの場合だけ方面本部長公安委員会管理に服すると何時に、道警察本部長の命を面接受けるのであるか、なぜそういう必要があるか、それをお尋ねします。
  251. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 北海道警察というものは、道府県警察に当る一つの組織体でございまして、その執行の長でありますところの警察本部長が、道公安委員会管理のもとに仕事をやることは、あたかも他の府県警察本部長府県公安委員会管理のもとに仕事をすることと同じであります。方面本部は、方面本部ごとにあります方面警察が、それぞれ独立した警察になるという建前はとつておりませんので、あくまで有機的な道警察というものは一体でございますが、この内部におきますところの下部組織でありますので、あたかも警察署長が各府県警察本部長指揮監督を受けるのと同じ関係に立つわけであります。ただ北海道が広域であります関係上、中間機関のようなかつこうで方面の区域にわけまして、道警察本部長まつたく指揮のもとに仕事をするわけでありますが、しかし方面本部長仕事をするにあたりまして、全然公安委員会と無関係仕事をするというのは適当でないという考え方から、方面本部ごとにも方面公安委員会を置きまして、その管理のもとに仕事をするようにした。従つて事実上内部組織をきめます際に道公安委員会と方面公安委員会との間に仕事の分掌関係をきめておきまして、そうして方面本部に公安委員会がこれらの仕事はまかせたという限りにおきましては、方面本部長は直接指揮監督する、こういう建前であります。
  252. 北山愛郎

    ○北山委員 そうしますと先ほどお伺いしたよりに、方面公安委員会都道府県公安委員会というものは、やはりその仕事内容上は違いがあるというふうに了解いたします。  次に第九十一条の第五項でありますが、「方面本部の数、名称、位置及び管轄区域は、国家公安委員会意見を聞いて、条例で定める。」ところが五十二条の四項ですが、「警察署の名称、位置及び管轄区域は、政令で定める水準に従い、条例で定める。」こういうふうに書いておるわけです。この違いがどうして出るのであるか。方面についても、これは道という自治体の中の区域であり機関でありますから、方面本部の数や位置、名称というものも、政令で定める基準に従い、条例で定めるという方が正しいのではないか。なぜ直接に国家公安委員会意見を聞いて条例で定めるのであるか。その理由がちよつとわからないのですが、御説明を願いたい。
  253. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 この違いは一般的であるか個別的であるかの違いというふうに考えます。それぞれ「政令で定める基準に従い、」ということが書いてあるのでありますが、これはいずれも各都道府県に共通するような一般的な事項でございます。そもそも警察署というものはどれくらいの人口の単位につくるというようなものも基準にしてもらいたいというのが五十二条の場合でありますが、方面本部の場合は、北海道において現実に北海道という区域を何と何という区域にわけるか、そうして幾つ置くか、どの地方管轄区域にするかという具体的な個別的な問題でございますので、一般的抽象的に基準をきめることはその必要がないだろと考えますので、北海道では五つにわけたい、これはどことどこに置きたいという北海道側の意見によりまして、条例できめるわけでございますが、その場合には国家公安委員会意見を聞いてもらいたい。と申しますのは方面本部長は非常に重要視いたしまして、これも特に中央の任免にいたしております。それからその階級も警視正以上の者が当ることになつておりますので、定員を配置するというような関係からいたしましても、北海道の方にどういうふうに方面本部をわけて置くかということは、国家公安委員会も関心を持たざるを得ない非常に重要な事項であるというので、国家公安委員会意見を聞いてというふうにきめまして、この意見を聞いて条例で定めるようにいたしたわけでございます。
  254. 北山愛郎

    ○北山委員 私も第五十一条を読んで同様に感じたわけであります。要するに北海道については国家的な見地からの重要性は特に認めておるのじやないか、そうじやなくて単にこれが一つのいわゆる自治体警察的な性格のものの内部的な組織をきめるということであれば、これはやはりほかの警察署と同じように政令の基準事項というようにする方がほんとうだ、これは国家的な色彩が強い、国家的な見地から北海道を重視しておるというように了解いたよす  次にもう一点お伺いしたいのですが、先ほどもちよつと申し上げました警察官の官という字ですが、これは第六十二条を見ますと——これは第五章に関連しますのでお伺いしますが、「警察官は、上官の指揮監督を受け、警察の事務を執行する。」と書いてあるわけでありまして、ここでも官という字が使つてある。上官というのはやはり国家公務員といいますか、官吏の方にだけ使うように私どもは了解しておる。こういうふうに官吏という字を地方公務員の場合についても一緒にくるめて使つておる点、私はこの用語についてに非常に不適当でないかというのですが、先ほどこれは法制局でも文句はなかつた、こういうのですが、一応問題になつて文句がないとされたのであるか、ただこの法案全体として、そのことは問題とならなかつたのであるか、その点をお伺いいたします。
  255. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 これは先ほど長官からお答えがございましたように、警察官という職名のものではなくして一つ警察の職務を執行するところの人種を称して、そういう権限を持つところの公務員の一つの集合名称として——一々警察官、それから地方公務員である場合には警察吏員という区別をしてみますのも非常に不便なものでありますから、まつたくの便宜上警察官という名称に統一をいたしたのであります。従つて審議の過程におきまして警察官という名称を使うのはどうだろうか、地方公務員になるものがずいぶん数が多いのだけれどもどうだろうかという話は確かに出ましたのですが、これは集合名称という意味におきまして、警察官と言う方が便利でよかろうという意味で長官からお答えがありましたように、自治庁、法制局が了解してくださいまして警察官ということになりました。上官という言葉も、この警察官の官の字に当る六十一条に階級の区別がございますが、この一つ上のものがこの場合の上官でありまして、警察官という文字を使いました関係上、これは職務上の上司というのではなくして、階級の上にあるものという意味で上官という言葉を受けて使つたような次第であります。
  256. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 その他御発言の方はございませんか。——本日の質疑はございませんようですからこの程度にいたします。明日の質疑は午前十時半から第五章以下、法案の最後までを一括いたしまして上程いたしたいと思いますがよろしゆうございましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 御異議がないようでございますから、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後八時十六分散会