○門司
委員 私はこういうことなんです。事態を糾明すると言いますが、起
つた事態をどんなに糾明して、これを極刑に処してみましても、それで決して跡を絶つものではないということです。跡を絶とうとするのには、やはり跡を絶つだけの政府当局が腹をきめなければならぬ。従
つてこういう問題は偶発的に起
つたのでもなんでもございません。遺書の中に
はつきり書いておりますように、また先ほど私が申し述べましたように、自分は正しいことを正しくや
つたのだ。国民の一人が正しいと考えておる。あなた方はけしからぬと言うかもしれぬが、や
つた本人は正しいと考えておることである。私は非常にこれは
社会的な問題だと思う。先ほど
西村君も言いましたように、共産党の問題としては、共産党は非常にこわいこわいということを世間に宣伝して、国民の恐怖心をかり立てて、共産党を一応押える。実際にこういう事件が突発して来ると、これをできるだけ軽く扱
つて、国民にそういう思想を植えつけないようにしたい、こういうのは政府のえてか
つてなものの
考え方じやないかと思う。だから私の聞いておりますのは、
社会のこうした風潮の起るというところは、やはり
社会に
一つの大きな欠陥があるのである。ことに総理
大臣を暗殺しなければならないというようなこと、しかも遺書を読んでみると、やはり
はつきり世の中のこうなることを憂いておる。ことに吉田さんが外国に行けば、また日本の国のためによからぬことをきめて来るであろうから、外国に行かぬ前にこれをや
つてしまいたか
つたということを本人は自供しておるということが、新聞で全部発表されておる。
私はもう一言聞いておきますが、世評です。一体世評はいずれにくみするかということです。や
つた行為それ
自身は憎むべき行為かもしれませんが、その考えたこと
自体について、いわゆる事件の起
つた一つの動機といいますか、それについては、世間は必ずしもこれを極悪の犯人だと断定をしていないのじやないか、かくのごときこともあり得るであろうということは、やはり
一般世人の考えておるところじやないかというようにわれわれは考えるのであります。
大臣はその
通りだという答弁はできないかもしれませんが、しかし
警察法を今審議いたしておりますこの最中に、こういう大きな国家的といいまするか、一人でや
つた行為でありますから、集団的のものにならないだけはまだいいかと思いますが、いずれにいたしましてもこういう不祥事の起
つたということは、
警察法審議の過程においてはきわめて重要な問題としてわれわれは考えなければならぬ。従
つて大臣にもう一言お答えを願いたいと思いますことは、日本の国民全体が、かくのごときことは
まつたく大臣のお考えにな
つておるように、本人の気違いざたである、言語道断であるというように考えておるとお考えにな
つておるか、あるいはかくのごときこともあり得るであろうというように、国民はある程度——行為
自身は憎むけれども、しかし事態もしくは動機そのものに対しては、ある程度納得の行くようなことにな
つておりはしないか。もしそうであるとするならば、いかに厳罰でこれに臨み、あるいは政府当局がこれをもみ消そうとしても、国定の中にある思想は、政府当局の
考え方と逆な方向に私は行くと思う。従
つてもう一度
大臣からそういう観点に立
つて、多少答弁はしにくいと思いますが率直に答弁してもらいたい。