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1954-04-20 第19回国会 衆議院 地方行政委員会 第48号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十日(火曜日)     午前十一時二十四分開議  出席委員    委員長 中井 一夫君     理事 加藤 精三君 理事 佐藤 親弘君    理事 灘尾 弘吉君 理事 吉田 重延君    理事 鈴木 幹雄君 理事 西村 力弥君    理事 門司  亮君      岡村利右衞門君    木村 武雄君       熊谷 憲一君    西村 直己君       山本 友一君    橋本 清吉君       古井 喜實君    阿部 五郎君       北山 愛郎君    横路 節雄君       伊瀬幸太郎君    大石ヨシエ君       大矢 省三君    中井徳次郎君       松永  東君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         国 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部次長     谷口  寛君         国家地方警察本         部警視長         (総務部長)  柴田 達夫君  委員外出席者         国家地方警察本         部警視正         (企画課長)  高橋 幹夫君         海上保安監         (海上保安庁総         務部長)    朝田 静夫君         海上保安監         (海上保安庁警         備救難部長)  砂本周 一君         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ――――――――――――― 四月二十日  委員尾関義一君、床次徳二君及び山下榮二君辞  任につき、その補欠として岡村利右衞門君及び  伊瀬幸太郎君が議長の指名委員に選任された。 同日  鈴木幹雄君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 四月十九日  町村合併促進法の一部を改正する法律案(内村  清次君外十四名提出参法第九号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  警察法案内閣提出第三一号)  警察法施行に伴う関係法令整理に関する法  律案内閣提出第三二号)     ―――――――――――――
  2. 中井委員長(中井一夫)

    中井委員長 これより会議を開きます。  この際理事補欠選任についてお諮りをいたします。すなわち委員の異動に伴い理事が一名欠員となつておりますから、その補欠選任を行いたいと思いますが、これは投票の手続を省略して、委員長より指名することに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中井委員長(中井一夫)

    中井委員長 異議なしと認め、さように決します。鈴木幹雄君を理事指名をいたします。     ―――――――――――――
  4. 中井委員長(中井一夫)

    中井委員長 昨日に引続いて警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案の両案を一括して議題といたします。質疑を開始いたします前に、小坂国務大臣より発言を求めていられますから、これを許可いたします。小坂国務大臣
  5. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 昨日総理から警察担当国務大臣をというお話で、お受けをいたしまして、はなはだ至らない者でございますが、皆様の御協力を得まして、円満なる警察行政の執行をいたしたい、かよう考えておる次第であります。よろしくどうぞ……。
  6. 中井委員長(中井一夫)

    中井委員長 これより質疑を進めることにいたします。古井喜實君。
  7. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 警察法案審議の状態はまことに遅々として進まず、停頓の状況にあるように拝見をいたしております。政府考えるところあつてか、新進気鋭小坂大臣警察担当大臣に配せられたようであります。警察法案をどう料理されるか、小坂大臣の御手腕の見せどころであろうと存じております。ところで警察法案につきましては、この法案は何とか成り立たせたいものであると私どもは思つておりますが、現在の警察にもたくさんの欠陥があることは、もう衆論の一致したところであります。その欠陥原因は、あながち制度だけではありません。けれども制度の上にも、特に機構の上にも大きな原因があるということも争えない事実であります。これを改善することは、私どもは必要だと思います。また何しろ政治上の懸案になつてしまつたのでありますから、いつの日にかこれを結末をつけるということもしなければならぬことのように思うのであります。ところが、先ほども申すように、この警察法案審議状況は、なかなか進まない、また関係方面意見が対立して今日に至つておるようであります。この難航を重ねておる実情を見ますと、この問題に結末を与えることは容易でないように私は見受けるのであります。下手をやれば御苦心も水のあわにならぬとも限らんと憂うるのであります。そこで、なぜこの警察法案の問題がすらすらと円滑に進まないかという原因について、大臣にも御処見を伺いたいし、それについて伺う前提として問題点を出してみたいと思います。  こういう状況になつておる一つ原因は、まず法案内容にあると私は思います。今回の法案は、見方によれば、筋の通つたすつきりした案であります。しかし、見方をかえればまことに穴だらけの案であります。つまり一つ視野だけから考えて立案した案としか考えられぬ弱点があると私は思うのであります。警察能率という視野だけから見れば、なるほどりつぱな案ように思われるけれども視野をかえてみるとまことに無理があると思うのであります。その無理があるということを提案者は気づいておられぬと思う。気づいていないところに問題があると思う。つまり、まつた警察から立場をかえて、地方自治という観点から考えてみると、この法案が一体満足なものと考えられるかどうか、これはまず一つの問題であります。また地方自治の根底にあるデモクラシーの精神から考えてみると、あるいはまたこれと連なる人権の擁護という面、そういう広い面から考えてみると、この法案がほんとうに無理のない満足なものと考えられるかどうか。つまり視野が狭い、片寄つた視野からだけ立案されているような気がする。ここに無理があると私は思う。また、一つの案ではありますけれども白紙に絵を描いた感がある。今日まで数年の間行われて来た事実、この歴史の現実を無視して白紙に絵を描いておるところがあるが、改善すべき点があるならば、今日まで行われておる、また固まつて来ておる事実、これを改善するということを考える必要があるのではないか。つまりあまりに飛躍的であり、その方角は世にいわゆる反動的であるという方角に飛躍し来つているうらみがあるのではないか。(「ノーノー」)それがわからないという人が立案に参画するというところに、この法案の多数の国民を納得せしめ得ない弱点があるということを私は言うのであります。これがまず法案内容における全体論としての無理であると私は思つている。この点について、一体どうお考えになるか。ゆうべから、あるいはきのうからかかつてたいへん御勉強なさつただろうと思いますけれども警察当局だけから教えられても、私の言う意味はわからぬかもしれない。もしおわかりになるなら、さすがに新大臣大臣の器であると私は思う。  第二番目に、この法案を提案するに至つたまでの経過落度があると私は思つておる。つまり去年以来懸案の問題であるにかかわらず、政府は出すとも出さぬとも――出さぬらしい顔をして長い間過しておるのである。前の犬養大臣は、どうも警察法の問題は出したくないようなことをしきりに言いつつやつて来たのである。そう言つておいて、突如としてこの法案提出するということに態度が切りかわつたというのが実情であります。つまりやる気ならば、そのつもりで順次その態勢、考え方を浸透して行かなければならぬにかかわらず、やらないやらないと、やりたくないかつこうをして、突如としてこれに手をつけたということはどういうことでありましようか。ここにも確かに何か割切れないものが残つて来る。また国警自治警が今日まで対立して来ておる弊害を露骨に出しておりますが、この両者を統合して一つ機構制度を立てるということであるならば、すべからく国警側意見も尽し自治警側意見も尽し、両者議を尽して話のまとまるところまではまとめる努力をすべきであると思う。ただ一方だけの考えで始めるということ、そこにこういう困難に陥るそもそもの原因を置いておるのである。昔のいわゆる官僚時代といわれ、あるいは戦時の強力内閣当時であつても、地方制度をかえるにしても、あるいは町村会長市長会長という当事者の意見を十分聞いて、それでまとまらぬにしても、話は尽した上で法律改正提出したものであります。この警察法案提出するについて、まとまる、まとまらぬは別にして、国警自治警両方の議を一体尽したのかどうか。この辺に、御関係の方は十分御承知であろうけれども、尽さなかつた点が大いにあると私は思つておる。それがまた、今日この法案の進行の困難を起しておる一つ原因であると私は思つております。今日この法案をめぐつて国警自治警とがひどく対立しておるこの状況を、一体何とごらんになるか。こういう状況にまで陥つては、いずれに軍配を上げてもろくな結果にならぬと私は思う。この辺は、私は経過において落度があると思つており、できそこないになつてしまつたということを遺憾に思う次第であります。この点を一体どうお考えになるか。きようからでももみほぐせるとお考えになるか。納得させ得るとお考えになるか、納得させようとこれから努力ようとお考えになるかということであります。  次に第三の困難の起つている点は、もともと吉田内閣は絶対過半数を持たない、いわば弱体内閣であつた。この弱体内閣が不用意にかつぎ出すのには、法案があまりにも荷物が重過ぎる。自分の力もはからずに、不用意にかつぎ出したという、ここに落度があると私は思う。いわんやその後において、ごく最近に至つては政界の汚職だ、疑獄だということで、一体政府の運命がどうなるかわからない――というより、わかつているくらいに事態は困難になつて来ている。そのいわゆるやせ馬に重荷というか、自分の力をはからずして大きな荷物をかついでいるというところに、これまた大きなむずかしさがあるのであります。これを乗り切つて行かなければならぬというところに、新大臣は大きな責任をもつて登場されたのであります。  そこで以上の数点を考慮におかれて御所見を伺いたいのでありますが、一体政府警察法をどうしても成り立たせたいとお考えになつていると信じているが、いかなる道をとつたら成り立ち得るとお考えになつているか。私は、それにはどこに成り立つ道があるか、政府政治力なり、従来の経過なり、法案内容なりを冷静に考えて、その上でどこに成り立つ道があるかということを、行きがかりにとらわれないでお考えになる必要があると思う。出した原案ということにあまり拘泥しないで、成り立つ道がどこにあるかということを見出す努力を積極的にされる必要があると思う。これが一つの道である。さもなければこの際はむしろ改正を断念されて、地目あらためて出直されるほかはないと思うし、またそうされるのも一つの方法であると思う。もう二十日足らずの会期を残すのみとなつた今日となつては、この問題を考えねばならぬときになつていると思う。大臣としては新しい問題でありましようけれども法案としては古い問題でもあり、この委員会としても、もう長い期間をかけた問題であります。この辺についてどういうお考えをお持ちになつているか、お聞かせを願いたいと存じます。
  8. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 お答えを申し上げますが、非常に多岐にわたつての御質問でございますから、あるいは御答弁漏れがありましたら後ほど補足して申し上げたいと思います。  まず第一に地方自治観点から今回の警察法をどう考えるか、大体デモクラシーというものは能率的に見ればあまりいいものでないので、そういう非能率な弊をためるためにデモクラシー自身の危機を招くおそれはないかというような御趣旨であると思います。これは私から申し上げるまでもなく、警察法というものは占領早々の所産でありまして、非常にデモクラシーということを強く掲げているのでありますが、デモクラシーそのものも国によつてあり方が、歴史的にもまたその民族性というものによつても違う点もあろうかと思うのであります。そういう点を無視して画一的に日本に早々に実施した制度でありまするために、実施にあたりまして多くの非能率、不経済の欠陥を有しているということは、大方の指摘するところであろうと思うのであります。これをもつと具体的にいいますと、町村を所管する国家地方警察国家的性格が強過ぎる、そうして自治的要素を欠如している。また都市を管轄する自治体警察完全自治に過ぎて国家的性格を欠いているという点が一般にいわれている点でありまして、この民主的な保障という基盤を一方に高く掲げ、治安の責任の遂行と能率化と、責任明確化ということを、ぜひこの際解決をはかりたい。この二つの命題の上に立つて、その調和をはかろうとするものでありますからして、どうしてもその点につきましては、限界点の問題でありますから、幾多の意見が出るということも当然かと思うのであります。  そこで第二の問題に移るわけでありますが、この問題点国警自警との調和をどうするかということになつて、御質問の第二点になるだろうと思うのでありますが、私はこれは調和ははかり得るというふうな考えを持つておる。かりに国警自警の対立があつたとしましても、――私はこの実態についてはこれから十分究明したいと思つておりますが、かりにあつたといたしましても、本法案を可決していただくことによりまして、その結果、これはデモクラシーの基本でありますから、国会において定められたものについてはこれに従うということで、その問題は解決するであろう、またすべきであろう、こう考えておるのであります。  なお第三点として、そういうことを不用意にかつぎ出したために調和不可能になつているのではないかという御意見があつたのでございますが、これは前国会においても警察法というものが提案されて、国会の御審議を経て、その間に多くの貴重な御意見を承つております。これは一般国民の声を反映しての御議論でありまして、政府は謙虚にこれに耳を傾けて、そのとるべきところは十分しんしやくいたしたつもりでございます。選挙に際しても、各議員におかれましては十分一般の声を聞いておられる、その御意見を基礎といたしまして、政府与党でございます自由党の行政機構改革委員会において、練つたものでありますから、国警だけの意見を聞いてつくつたものとは考えておらぬ。国警意見ももちろん聴取されたでありましようけれども自警意見もまた同様の限度において聴取されておる。その両者意見の統合の上に立つてできた案がこの案であろう。従つて不用意にできたものではないというよう考えておるのであります。なるほど御指摘のよう会期も余すところわずかであります。私、はなはだ不敏にしてこの担当を命ぜられたので、その力至らざるをおそれておるのでございますが、政府といたしましては皆さんの御協力によりまして成立をさせたい、かように強く希望をしておる次第であります。  しからばその成立要件いかんということでございますが、私はこの成立につきましては、政府は誠意を尽して法案内容を御説明申し上げます。皆さんはその御判断によりまして、十分審議を尽されて、すみみやかに御可決あらんことを私は心より希望いたしておる次第であります。足りない点がありましたら、またお答え申し上げます。
  9. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 大臣の御答弁によると、要するに法案成立を期したい、こういうことが結論ようであります。成立を期したいとお考えになるならば、もし法案弱点があるならば謙虚に反省をされ、改善をされる必要がある、この点について申しておかなければならぬと思います。  なおただいまの御答弁のうちに出ました個々の点については、まだ御就任以来の時間が足らぬせいでありますか、事実と違う点も若干あるかもしれないと思います。自治警の議を尽したというふうなことはおそらくこれは非常なお間違いであろう思う。いろいろ議を尽しておる途中でこれはもうそれつきりになつてしまつて、この案はこの案で飛び出して来た、こういう経過があることもなお御研究になつておく必要があると思います。  それからなお警察能率とこれとあるいは矛盾するかもしれぬが、他の方と十分調和をはかつておるとおつしやいますけれども、その点はまことに調和が不十分であると私は思う。  次の点に進みつつ、その点についてお伺いしてみたいと思いますけれども、これは前々からの問題でありますが、一体府県自治体警察いうものの性格は何であるかということについては、遂にきようまでの質問応答では解明がつかなかつたと思つております。どこにこれの調和された点があるか、一体自治警察という説明を当初からしておられるその自治体警察本質はどこにあるとお考えになるか、本質が失われたら自治体警察ではないのであります。そこでこの府県警察は一応自治体警察だというふうに説明伺つておりますけれども、いわばその本質の中の本質とも言うべきものは人事権の問題でありましよう自治体方面において何の人事権も持たないというようなことになつて、一体自治体警察性格がそこなわれないものであるかどうか。たとえば府県知事市町村長の身分を国家公務員に切りかえて政府が任命しても、それでも一体自治体というものの本質を破壊しないものであるかどうか。自治体警察に限らずこの法案においては人事権が別の方角はつきり立てられておる。前々から伺つておるこの府県警察というものの性格、これはお断りをしたいと思いますが、府県警察というものは何だという場合に、つまり府県警察の機能の内容を分析してみれば、国家的な警察事務地方的の警察事務もあることはわかります。その意味において両方を含んでおるということはわかりますけれども、その仕事を行う機構は一体どこのものか、つまり自治体のものであるか国のものであるかという点になると、まことに疑問が出て来るのであります。自治体的の機構に国の事務をさせることもでき、また国の機構自治体的の事務をあわせてさせることも可能である。その機構性格はどこにあるかということが問題点なのであります。この辺はおそらく論じても尽きない点があると思います。しかしこれは御意見があれば伺つてもみたいと思いますけれども伺つてもこれははつきりしないだろうと私は想像しておる。それよりも、そういう形をとりつつ実質はどうなつおるかというところにつまりこの警察法の色彩が出て来るのであります。私はこの繰返されておる問題をここでむし返そうとは思いませんが、一体府県警察性格について新大臣はどうお考えになるか、ここでひとつ新しいお考えを念のために伺つてみたいと思います。
  10. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 お答え申し上げますが、今回の府県警察の実体というものは、元来国家的な性格地方的の性格を兼ね有すべき近代警察事務運営に適合したよう性格を持たせたいということで考えておるのでございますから、機構府県自治体のものであるのであります。御承知通り二百五十名程度を除きまして他は全部地方公務員になつております。予算につきましても県会の議決を経ることになつております。知事の所管のもとにあるのでありますし、また地方公安委員会の議を経て、委員会統括下にあつて何事もきめられておるということでございます。この点はいわゆる国家的の性格が強いのではなくて自治体本質的なものを持つておる、そういう性格のものだと考えております。
  11. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 これはりくつの問題ですから深く論じませんが、現在国警に対し都道府県公安委員会というものがありますが、これは自治体機構でありますか国の機構でありますか、どつちでありますか。
  12. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 地方公安委員会というものは自治体機関であります。
  13. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 そうすると、自治体機構国家警察を握るという機構になつておるというふうに現在の国警関係は御説明になるのでありますか。
  14. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 現在の都道府県公安委員会自治体機関でありますが、これについて国の警察仕事を委仕をしてやらせておる、こういう形になつておると解釈をいたしております。
  15. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 そうすると、今の国警府県公安委員会自治体機構である、つまり自治体のいわゆる固有事務範囲内に属する機構である、それに対して国警事務委任しておるという御説明でありますか。
  16. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 自治体の本来の事務固有事務と申しますか、かよう機構とは考えておりません。国から委任をされました警察運営管理について行う機構、現在の公安委員本会はさように了解をいたしております。
  17. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 そうすると、これは自治体固有事務範囲外の、しかも自治体機構である、こういう意味合いになりそうに思いますが、そういうことですか、
  18. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 さようでございます。御承知ように、固有事務あるいは本来の事務、さような区別を最近の立法はいたしていないようでありますが、従前のよう考え方から参りますならばさよう考えなければならぬものと思います。
  19. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 そうすると、今の観念をもとにすれば、今の長官の御説明は、現在の道府県公安委員会、これはこういう機構を設置するということを自治体委任したという、いわば団体委任事務――本来の自治体仕事ではないけれども自治体にこういう機構を設けようという、そういう仕事自治体に、つまり団体委任した、いわゆる団体委任的な領域に属する、こういう結論になると思いますが、それで悪いと思わぬのですが、突き詰めるとそういうことになりますか。つまりその意味では団体仕事である。しかし本来の団体仕事ではない。こういうことになりそうに思いますが……。
  20. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 さよう考えるのでございまして、地方自治法の百八十条の四の第三項に、「法律の定めるところにより、都道府県に、都道府県国家地方警察運営管理を行わせるため都道府県公安委員会を置かなければならない。」とあります趣旨は、ただいま仰せの通り趣旨であると、かよう考えております。
  21. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 それで多分通つた説明だろうと私は思いますが、そこで元に返つて申しますと、今回のこの警察法による都道府県公安委員会というものも、やはり同じ性格のものではありますまいか。つまり、それなればこそ公安委員会都道府県警察というものの性格、これに対して中央が相当大きな統制力を持つているということが説明がつくのではないかと思うのでありまして、今度の新しい公安委員会も同じ性格のものになるのではないかと思いますが、どうでしようか。
  22. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 これは私ども解釈といたしましては、現在の国家地方警察の行います仕事は国の仕事で、それを運営管理するという点だけを府県委任いたしておるのであります。ところが今度の新しい警察法におきましては、警察事務全体が都道府県にあるということに考えるのであります。しかしはつきり書いてないじやないかというお尋ねであろうと思いまするが、われわれといたしましては、警察法に、都道府県都道府県警察を置くというような表現をいたしましたが、都道府県警察を維持し、この法律または他の法令の定むるところによつてその管轄区域について警察の責に任ずる、こう書いたのと同じであると解釈をいたしておるのでございます。そのように明確には書いてありませんが、しかしながら、府県に置かれる警察の組織につきましても、法律に書いてある以外はすべて府県の条例で定めるようにいたしております。また費用につきましても、原則として都道府県の負担であり、また人事につきましては、一部の除外例はありますが、原則といたしましては地方公務員、しかもその地方公務員都道府県の条例に定められ、地方公務員法の適用をそのまま受けるということでありますので、組織も人も、それから経費も、原則としてはすべて都道府県の自主性にまかせてあるという形になつておるのであります。もちろん国家的な要請にも応じ得られる限度におきまして若干の除外例はございます。従いまして、その除外例を非常に強く見られるならば、これは自治体警察という看板は掲げてはあるけれども、実はないじやないかという御批判もあろうかと存じますが、われわれの根本的な考え方といたしましては、あくまでもこれは必要な最小限度において国が留保をした除外例、かよう考えておるのであります。
  23. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 この問題はりくつ論の方ですから、わざわざ大臣が初めておいでになつているときにあまり重複したくないと思いますので簡単にしておきますが、もともとこの自治体仕事は本来自治的な仕事であるということであり、公安委員会とそれから道府県警察機構自治体の本来のものであるというならば、この警察の首脳者を国家公務員にして中央が任免するということは、本質を破壊するという前々からの他の委員等の御意見は正しいのではありますまいか。これがほんとうの本来の自治体固有事務範囲内のことであるというならば、人事権という中心のものを中央に取上げていわば国家管理のようにしてしまうということは自治の本質を破壊する、何と弁明されてもやはりこういうことになつてしまうのではありますまいか、これが正しいのではありますまいか。そこで、これはそういう本来の固有の事務範囲ではなくて、つまり団体に対する国の委任事務として公安委員会警察機構、この機構を設置するということは、国が団体委任した事務である、こう見た方がすらつと通るではないか、そう言われて、どこが悪いだろうかという点が残るのであります。だから、結局団体仕事です。府県という団体仕事ですから、その意味では自治体仕事でけつこうなんです。しか肥し本来の仕事じやなくてそういう機構をつくることは、国が委任したのである、こういうふうに見てしまえば、この案の説明はすらつとつくように思うのでありますけれども、何かぐあいが、悪いことがありましようか。
  24. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 私最初から申し上げておりまするのは、これは都道府県の本来の事務とは申し上げておりません。従来のよう考え方解釈をすれば、これはやはり委任事務というよう解釈すべきものだと思います。現行法におきましては、公安委員会の行う仕事だけを都道府県委任をいたしておりますが、今度は警察全部を委任したという形になる、しかしながら今日の自治法の解釈としましては、委任事務あるいは本来の事務という解釈は、法制局におかれても、自治庁におかれてもとつておられないよう考えておりますので、大体従来からの考え方といたしますならば、そういうことになります。現在といたしましては、これは都道府県事務ようではありますが、しかし国家的の色彩も相当強いし、一面自治的の色彩も持つている、これを自治体の公共事務としてやらせる方がぐあいがいい、そういう意味から、今の自治法から申しますれば、自治体の行政事務、かよう解釈するのが適当じやないだろうかと考えるのであります。
  25. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 ただいまの説明で、私の考えるところと同じ結論なつように思います。多分これは斎藤長官は、古井は古ぼけた知識を持つているだろうからというので、固有事務委任事務というような区別はないという御教育も受けましたが、しかしこの自治法を見ましても、公共事務とその他の事務とは明確に区別をしておりまして、昔から公共事務がいわゆる固有事務であつたことにはかわりはないように思つておりますので、たびたびの御注意でありますけれども、その点は返上をしておきます。そこで団体に対する委任事務であるということになつてしまつたが、これはこの警察がそうなつた場合、この性格説明するときに非常に大事な問題だと思つている。官界における大学者の佐藤法制局長官もおいでになりますが、異論があれば、こういう機会におつしやつていただきたい。なければそれでよろしゆうございますが、ありませんか。
  26. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    佐藤(達)政府委員 ええ。
  27. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 ないということでありますから、これは性格は明確になりました。  そこで、そうなりますと、次にこの警察は、形においては一応自治体に属しているけれども、本来は、国の事務自治体委任したのだ、この機構国家警察である、それを団体委任したのだ、その機構が、国の本来の国家警察事務自治体警察事務と両方を行う、それから自治体委任するから、自治体的な色彩も加わつて来る、こういうことになつて来るだろうと思いますので、いわば国家警察というものを自治体委任したという性格ようにこの警察法ではなるように思います。これは論理の当然の結論でありますから、御答弁を伺うこともありません。  そこで、この警察法について角度をかえて憂えるものは、この警察法の結果、政党の警察になる心配はないか、時の与党の警察になる心配はないかということ、それから官僚的な警察になりはしないかという心配、これはみんなの心配であります。この点については、そういう角度から考えてみると、不安の点がなきにしもあらずであります。警察長官の任免権を総理大臣が持つ、中央の国家公安委員会意見は聞くけれども意見を聞くという程度のことであつて、一点がないからできないというものではない。聞きさえすればよろしい。つまりそこから始まつて、本部の一番中心かなめの警察長官を総理大臣が任免する、その警察長官に対してどれだけ国家公安委員会統制力を持つているかというと、あまり持つておらぬ。しかも警察長官地方の本部長を任免するという機構になつて来るにおいては、これはどうも時の政府警察になつてしまうのではないかという危惧を生ずるのは、私はもつともの心配だと思う。私は警察治安の仕事だからといつて、政党内閣が担当する資格なしとは思いません。けれども、ひどい弊害を起すという心配だけはしておく必要がある。そういうことにさせないようにする考慮だけは払つておかないと、とんでもない結果が起る。この点において、一体警察長官を総理大臣が任免することで心配ないか。国家公安委員会というものをせつかく設けておる、これに握らせてはなぜいけないのだろうか、こうしたら安心が行くという、ここに問題がどうしても出て来ると思う。この辺はどうお考えになるのか。この点は伺えるならば、簡単に伺つておきましよう。  もう一点の官僚警察になりはしないかという心配は、昔の警察時代に、あれでも官僚警察だ、警察国家だと言われて、ずいぶん非難も批判もありました。しかしあの節は警察の幹部は必ずしも警察畑だけで育つたものではありません。少くとも幹部は、あるいは学務行政をやり、経済行政もやつておるという広い経験を持ちつつ、そして警察の幹部になつてつた。今度は警察だけしかやらないという幅の狭い経験者が警察機構を占めるということになつて来る。いわば軍隊のようなものが大きな警察権を持つということになる。また昔は地方長官警察だけでなしに、民生一般担当しつつ警察を持つておるという立場であつたけれども、今度は地方警察の本部長にしても、警察だけしかやらぬという人である。こういう一つの組織をつくつた場合に、これは相当に官僚的な警察機構になつて、つまりお互いの人権の擁護の立場から心配がないかという憂いを持つことも、私は一つのもつともな心配だと思う。その辺について、今のこの制度のままでは心配だという論は、私は傾聴しなければならぬと思う。この点は論議をかわす意味ではありませんけれども、簡単にそんな心配はないとお考えになつておるのか、やはり考えてみなければならぬ点もあると考えておるのかをお伺いいたしておきます。
  28. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 今度御審議を願つておりますこの警察法施行された場合、警察の中立性というものが非常に侵されやしないか、あるいは非常に官僚的な機構によつて運営されやしないかという御懸念、それについて人権擁議の建前から、もう少し考え直せという意見もあるが、それについての意見ということでありますが、私どもはそういう心配に対処いたしますために良識のある公安委員会というものを表面に浮び上らせておるわけであります。長官は総理が任免するというのは、それに関連いたしましてその必要件を言及されたのでございますが、警視庁長官は国家公安委員会の管理のもとに警察行政についておのずから所定の権限を行う機関でありまして、政府の治安責任明確化するためには、国家公安委員会と同様これを総理が任命することが必要だと考えたのでございます。しかしこれによつて長官に対して職務の指揮監督を行う趣旨は毛頭持つておりません。職務上の指揮監督をあげて公安委員会にゆだねることになつておるのでありますから、その任免について直接の責任政府が持つことを適当と認めたための措置であります。任免にあたつては国家公安委員会意見を聞くことになつておりまして、国家公安委員会長官の懲戒、罷免に対する必要な勧告をすることができることになつておりますので、総理が任命する上においても勢い慎重にならざるを得ないと考えるのであります。これによつて警察の中立性が害されるようなおそれはない、かよう考えております。意見を聞くということは、必ずしも同意を前提としないではないかという御議論もありまするが、大体世の常識というものがございまして、同意がないから何でもかんでも押し切つてやるということでは、一時はやれても円満な行政を執行するという建前、運営するという建前から見ますならば、これはやはりそこに意見を聞くということが、これは何か常識的な納得と理解というものが前提になつておるのでございまして、その間の連絡を密にするということは、これはもう行政機関運営するものの常に考えていなければならぬことでございます。でございますから、この言葉の持つている深い意味を御理解願いまして、さような御懸念はなきようにお願いいたしたいと思います。もつとも古井さんはそういう御懸念を持つての御質問ではないと思います。ただそういう懸念もあるという御紹介の意味を持つての御質問でありますが、私もさよう考えております。  なお、警察長官は非常に幅の狭いものになるのじやないかという御懸念の御紹介もございました。まあここに斎藤長官がおられますが、警察一本やりではない、やはり非常に深く諸般の問題についての理解を持つておられるので、個人を例にとりましてはなはだ失礼でありますが、そういうことは一般の行政常識からいたしまして何か警察のこと以外には何も考えぬというような行政官が長になるという事態は、私どものの常識からは、お互いの常識にはないのだと思うのであります。さよう意味で人権擁護という建前からの議論は一応十分傾聴いたしますが、そういう御議論に対してはそういう懸念なしとお答え申し上げる次第でございます。
  29. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 小坂大臣はお人柄がいいせいか万事見方が甘いのであります。じつくりお考えになつてみると、まことにその甘い考えとは違つた結果が起ると思います。私はただ世上にある議論を紹介しているのではありません。それほど甘いことはこつちは言つておりません。よくお考えになつておく必要がありましよう。それをお考えになつておく必要があろうということだけを言つておきます。  それについてなお注意を喚起しておきますが、公委委員会というものがあつて、これが相当に警察に関与するようにお考えになつておるのでありますけれども、一体公安委員会――まあ国家公安委員会だけを例にとつてみますが、これは一体どれだけの権限を持つておりますか。公安委員会の権限です。これはこの警察法をごらんになれは、第一長官の任免権はないのですよ。これは急所です。首つたまを握るということが根本なんです。意見を聞かれると言うけれでも、自分が任免するのではない。つまりこの任免権がないということ、これが致命的な欠陥です。それからまた都道府県警察本部長の任免権も何もないのです。どうしてこれが地方警察を握れますか。また都道府県警察に対する指揮監督権も公安委員会にはないのです。警察長官にあるのてす。一体何があるのか。あるのは、つまり名前の上における警察庁所管事項についての管理ということだけである。一体管理というのは何であるか、一体どれだけのことに関与するのか。一々の警察事務について容喙するというものではありますまい。で、管理という範囲に何が入るのか。それについて関与させるのか、させないかは、実は警察長官のやり方次第になるのです。そこで国家公安委員会というのがありまして、小坂さんがごらんになればたいへん役に立つ機構ようになるのですけれども、実際はロボツト機関になるのです。これはもうやつてみるまでもなしにわかつている。おまけに国家公安委員会警察長官とはどういう関係になつておるか。これは、国家公安委員会は国家公安委員会警察長官警察長官と二つ別々の行政官庁になつておる。警察長官は決して国家公安委員会の付属機関ではないのです。これは警察法上明らかです。独自の権限を持つておる。しかも地方の本部長の任免については、公安委員会警察長官の諮問機関になつておる。これはおかしなかつこうです。諮問機関という建前になつておる。これは公安委員会が中心にあつて警察長官が付属機関になつておるという場合をかりに考えれば、付属機関の方が親玉の方に諮問をするというのは、これはもう体系がくずれてしまう。だから三つの別の機構になつておるのです。しかも都合によれば警察長官が上のよう機構になつておる。この法案はこういうことになつておるのです。大臣がお考えになるようなそんなものでないということを認識される必要がある。運用してみたらどういうことになるかということは、私はわかり切つておるように思う。この辺は、今の御説明でありますけれども、よく御研究になつてみたらどうか。また斎藤長官をおほめになつた言葉はまことに当つておると思います。しかし斎藤長官警察一本で育つた方ではありません。こういう幅の広い経験者ならばいいということを言つておるのでありまして、今後は警察という狭い畑だけで育つた兵隊さんみたいな人が警察を全部占めるようになるということを私は言つておるのです。これはお考えを願つておく必要がある。ここで私だけがしやべつてつても悪いから、突き詰めて論じてもよろしゆうございますけれども、注意を喚起しておくだけで次の問題に移ります。  そこで次は、小坂大臣は労働大臣を現在でもおやりになつてつて、労働運動、労働問題等についてはさだめし十分な認識を持つておられましようし、御信念もお持ちだろうと思いますが、この春季の労働攻勢のピークは、一体いつごろ来るというふうにお考えになつておられますか。春季とは言いながら夏から先に来るようにお考えになつておるか、春季にピークが来るとお考えになつておるか。これは警察法との関係で特に伺つておかなければならぬ、どうお考えになつておりますか。
  30. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 先ほどの点については私ども考え方もございますが、まあしいて答弁をしないで参考意見として聞けというお話でございますから、また別の機会でもございましたらお答え申し上げます。  ただいまの後段の御質問の労働攻勢についての見方でございますが、私どもの立場といたしまして将来のことを予見するということは、労働問題の扱い方として非常によくないという見解を持つております。労働運動そのものに対しましては、政府としての批判をするということは差控えたいと思いますが、ただ私どもも労働情勢全般についての判断はしておりますが、むしろそれが及ぼす国家への影響、国民経済への影響、そういう問題についてよく労働者諸君に知らしむる、こういう教育的な立場も必要であるとは考えております。ただそれがどうなるとか、この労働組合の個々の行き方がいいとか、悪いとかいうことを直接、私どもから言うということは、むしろ対立あるいは闘争というものを激化させることになりまして、非常に差控えるべきことであるという立場をとつておりますので、その点御了承願いたいのでありますが、春季労働攻勢ということで三月、電産、炭労あるいは国鉄の首切り反対、こういうものを中心として、あとに造船、鉄鋼、あるいは官公労というようなことで非常な一大労働攻勢が始まるということは言われておりましたが、御承知ようにこの問題については電産がただいま調停が出ておりますが、炭労の方は片づきました。国鉄の反対闘争の方も非常な激化した状態ではございませんことは御承知通りであります。大体三月攻勢というものについては、もうすでに三月も過ぎましたが、大体御承知ようなことになつておるという程度でお許しを願いたいと思います。
  31. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 遠慮深く事柄が事柄だからというので、十分は話さないという意味でお話になつておりますが、少し見方が甘くはございますまいか。三月に盛り上げる、これが今のようにちよつと治まつておるようなかつこうになつておるのを、これで治まつた、こういうふうにお考えになつておるかのごとく聞える。一部の研究者は、これはずらしておるんだ。これがつまりもともとある赤化勢力の既定の方針だと言つておる。条件が整い、機の熟する時期までずらすという考え方は、もともとその方面と、それから総評との間に食い違いがあつた。むしろそれに引きずられておるという見方がある。まさに条件は整つて来つつあります。これはあまり深くはここでは論じませんけれども、私もちよつとぼやけたことを言つておるのではない。これは真剣にお考えになつておく必要があると私は思つておる。  ところでこの警察法が幸いに成り立つということになれば、施行が七月であります。七月を前にしてもんでおる間に、またきまつて施行になるまでの間に、また施行なつた当分の間に、警察界が一体どれだけ動揺するのか、動揺しないのか、よくお考えになつておく必要がある。おしくじりをしないだけのことは、十分お考えになつておく必要があると私は心配しておるのであります。それでこの点は御答弁に満足はいたしませんが、よく考えていただきたいということを言うのであります。  次に七月からこれが施行になるとして、公安条例というものが、今いろいろな困難を起しつつ各地にできたのですが、この警察府県に移すとすれば、府県に公安条例というものがすぐできましようか。ギャップが相当できるのではないかと思う。また容易に簡単に府県で公安条例をつくることができないという場面も起りはしないかと思う。そういうこともあり得ると思います。これはどういうふうにお考えになつておるか。公安条例を府県で制定することができない場合も起りはしないか。また、つくるにしても相当なギヤツプが起きないか。悪い時期にぶつからなければ幸いです。その辺はどうごらんになつておるか。これはあとでわかることであります。どうせ秋まで行つてみれば、そこのところはどういう結果になつたかわかることでありますが、ごらんになつておるところをお聞かせ願いたい。
  32. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 御指摘のように新警察法施行に相なりますると、市町村でつくつております公安条例のうちで、市町村公安委員会にあらかじめ届け出るというような条項につきましては、市町村公安委員会がなくなりますから、従つてこの施行のしようがないのであります。そこで、しからばこれを当然に都道府県公安委員会に読みかえられるかと申しますと、その立法措置が必要なんでありまして、その点はこの法律の附則の二十八項の経過措置の政令によつて措置をいたしたい、かよう考えております。
  33. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 市町村の公安条例は失効する。府県の公安条例はまだできない。その間の経過措置をこの附則の二十八項でおやりになるとおつしやいますが、一体どういう方法があり得るでしようか。この経過措置として公安条例をどういうふうにこれはかわりにつくつてしまうということになるのですか。そんなことはできるでしようか。どういう方法をお考えになつておりますか。
  34. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 それは条例自身は失効いたしません。市町村警察法に言う警察を持つておりませんでも、公共の秩序を維持するために必要な条例は設けられるわけでありますから、条例はそのまま存続をいたします。しかしながら先ほど申しまするように、市町村警察あるいは市町村公安委員会というものがなくなりますから、その市町村警察というものはこれは都道府県警察だ、市町村公安委員会というものは都道府県公安委員会、かように読みかえるようにいたすのが最も適当である、かよう考えるのでございます。
  35. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 そういたしますと、市町村警察はなくなるが、市町村がつくつた公安条例は依然として失効しないで効力を持続する。そこで府県警察機構が執行するということになる、こういうことでありますか。もしそうだとすれば、この市町村の公安条例はいつまでも置いておくことになるのですか。府県はつくらずにいつまでも置いておいてもいいということになるのですか。府県につくれと言つたつて、つくるかつくらないかわからぬし、いつつくるかわからぬが、切りかえはできずにしまいはしますまいか、またしなくてもそのままで行こうということになるのでしようか、その辺はどうなりましようか。
  36. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 市町村がその条例を廃止しない限りは条例が残るわけであります。そこでその際に政令で読みかえ規定を設ける、かよう考えておるのであります。しかし本来は府県でさような条例をこしらえることが最も望ましいと考えますが、府県がその条例をつくるというようなことになるまでは、その市町村の条例は残るものとかよう解釈しております。
  37. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 市町村の条例が残るものだろうとおつしやいますが、市町村はかつてに廃止できるのであります。市町村府県にできようができまいがかつてに廃止できます。できるはずだと私は思うのです。それを廃止させないように拘束することは困難であろうと思う。のみならず市町村が市の警察などは自分で維持して行きたいといつているのに、警察法でこれを剥奪してしまうという。そうなると県に持つてつたときは感情的にも廃止すると思う。またそうなれば公安条例は、何と考えておろうがなくなる。府県の方でつくれといつても、つくらせるのに強制する方法はなかろうと思う。ここにどうしてもギヤツプができる心配はありますまいか、その点が私は問題であり心配であると思つている。
  38. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 府県が新しくつくるということは実際問題として相当困難であると存じます。市町村警察法改正について感情上これを廃止してしまうかもしれないという御意見でありますが、私は市町村自分の市町村の公共の秩序維持のためにつくつた条例を、感情上廃止しようとはちよつと考えられないのでございます。ただ公安条例につきましては、現在の実情にかんがみまして、国でこういつた内容法律をつくつた方がいいじやないかという意見もございますので、早晩全国の市町村あるいは都道府県の公安条例を参酌しながら、現在の実情に合う適当な立法措置が必要ではなかろうかと考えておるのでございます。従いまして、この経過的な読みかえの政令の措置もそれまでの暫定的なものである。さよう考えております。
  39. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 ただいまの点は、私には問題が残ります。市町村は廃止しないだろうとおつしやいますけれども、感情的でなくても警察事務が形の上でなくなれば、まだ市町村の公共事務的な人命、財産の保護という事務がございましても、現実に機構も持たぬのですから、多分廃止するのが当然の行き道になりはしないかと思う。これを廃止させないという方法はないと思う。そこに御説明で十分ならざるものがあると思いますし、おそらく条例の内容には警察に届出ろということがあると思います。この届出る警察というものは多分自治体警察に届出るという規定だろうと思うのですが、これはなくなるのです。それを改正するかどうかというと、しないと思う。こういう点がどうしても問題として残ると思う。多分これはむずかしいだろうと思いますが、適当なる方法がありましようかどうでありましようか、御説明がつくなら答弁していただきたい。
  40. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 市町村がつくつた条例でありますから、市町村の廃止は自由でありまして、これを廃止するなということはちよつと無理だろうと私も存じます。しかしながら市町村公安委員会あるいは市町村の当該警察を、今度は府県公安委員会府県警察署というように読みかえますことは、市町村が条例の改正をいたさないで政令でさように読みかえることを経過規定としてなし得るものと考えております。
  41. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 今の政令で読みかえをするようにということでありますが、これは市町村の条例の読みかえ規定を、一部改正の規定を政令で定め、政令で市町村の条例を改正するということになると思います。しかも改正をすることができるかどうか、それは府県の条例としての効力は持つていませんで、国の法令としての効力を持つことになります。もしどうしてもそこのところがお困りになるならもつと考えをかえて、根本的におかえにならなければならぬ点もあるのではありますまいか、この点は問題を残して、次の点に移りたいと思います。
  42. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 ちよつと関連して……。今の点は非常に重要ですが、斎藤考え違いをしているのではないですか。市町村の条例を府県に読みかえることはできないのです。同時に市町村には全部に公安条例があるわけじやない。地方自治法にきめられております条例の範囲から解釈して行けば、たとえばこういうことが書いてある。市町村の条例は、たとい条例をきめても、府県の条例に違反するときは、当該市町村の条例は無効とするということが書いてある。読んでごらんなさい、その通りのことが書いてある。もし斎藤君の意見ようなら、たとえば府県が公安条例を持つている場合は、当該市町村のあるものは全部無効になる。警察制度もかわりますし、条例も無効になる。市町村に残して置いても県の条例が優先するのでありますから、そういう結果になる。今の考え方は、考え方としてはまつたく逆な結果になると思う。古井さんの御心配されておるのは、規定の上から行けば市町村条例よりも府県の条例が優先するのであるから、警察法がかわれば市町村の公安条例はそのままあつてもいいのである。府県の条例を持たぬものはいかんともしがたいところができて来る。これは当該市町村だけにしか使えないのでありますから、これを府県の条例に読みかえることになると、府県の条例が六つも七つもできてしまつたらどうします、どの条例がほんとうだかわからなくなる。私はおよそ国の法律をこしらえ、府県の条例をこしらえる場合には、やはり統一したものでなければならぬと思う、市町村おのおの持つております条例は、これを府県の条例と読みかえるという、そんな不見識なものじやないと思う、だから古井さんの御心配になつておるのは、府県にもし公安条例がなかつた場合にはそこに大きなギャップができる、盲点ができる、その盲点をつかれて団体等の行為が無届けで行われるようなことがあつては困りはしないか、こういう御心配じやないかと思う、だからその点ははつきりあなたの方で考えないと、とんでもない問題が起ると思います。市町村がみな条例を持つておればいいのですけれども、みなは持つておりません。自治警察を持つておるところしか持つておりません。しかもその条例というものは、おのおの当該市町村で使うのでありますから、それを府県と読みかえるということで一体府県の統制がとれるか、Aという市はこういう条例がある、Bはこういう条例であるというのでは、統一された公安条例ということはいえない。その点は、自治法には県の条例が優先するように書いてありますから、あなたの方でそういうよう答弁したらどうなんです。
  43. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 ただいま御質問の点は、私はその前提に立つて申し上げておるのであります。もちろん府県の条一例があるなら全然心配はありません。府県に条例がないところについて心配があるわけで、これは当然のことだとして私は申し上げておるのであります。従いまして現在府県に条例があるところは市町村には条例がございません。公安条例につきましては、市町村の公安条例を持つておるところでは府県では持つておりません。従つてあなたの御心配になつた事態が起るわけであります。そこでその場合に市町村の条例がそのまま生きておる、生きてはおります。しかし当該市町村公安委員会に届け出るということがその内容になつておりますが、市町村公安委員会というものがなくなりますから、その市町村の条例はそのまま生きておりますが、その条例で市町村公安委員会という場合には、都道府県公安委員会と読みかえるのだという規定をいたすわけであります。
  44. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 そうすると、こういう解釈でいいのですか。たびたび議論になつておりますが、政府考え方は、法律できめれば何でもやれるのだ、結局法律できめるのだ、無理があろうとどうしようと、その形がたといおかしかろうとそれでいいのだ、こういうお考えなのですか。そこまで議論をすれば、これは何をか言わんやであります。別にわれわれ議論する余地はないのです。しかしわれわれが立法措置として考えて行きます場合には、やはり筋の通つたものにして、きちんとしておかぬと、おのおのの市町村の持つておりまする公安条例が、県の警察になつても生きているのだということになりましても、公安委員会の中には、やはりこれを読みかえるというようにあなたの方で簡単にお言いになりますけれども、読みかえるにいたしましても、一つの県に八つの公安委員会を持つてある都市があれば、八つの条例はみんな違うのであります。その場合に、当該公安委員会とあるのを、府県公安委員会と読みかえるというような政令を出せば、それでいいのだということになると思う。そうすれば斎藤さんのお考えは、大体条例としての取扱いはそれでいい、こういうふうにお考えだと思う。A、B、幾ら市があつても、府県の中にある全部の市の公安委員会という名前は、それは府県公安委員会と読みかえると書きかえれば、大体それでいいというようなお考えだと思う。手続上は一応それでいい、しかして府県としての公安を維持するための一つの方法としては、地区々々において違つた公安条例というものが、一体適用になるかどうか。もう一つは、府県にはおそらく今のお話のように、持つておるところと持つていないところとあります。持つていないところでは公安条例はないのでございましようが、しかし府県の持つておりまする公安条例が、国警に適用されているところがないわけではございません。やはり集会その他については、国警の地域内といえども、これちやんと、いろいろな届けを出させてやらしておることに間違いはないのであります。これはやはり一つ府県の条例に基いておると思う。今の公安条例というものは府県によつてあるところもあれば、ないところもありますし、市町村においても、警察を持つているところもあるし、持つていないところもあります。きわめて区々まちまちになつておる。従つてこういう時代に警察法改正を行います場合に、今古井さんの御心配は、先ほど大臣にお聞きになりましたことが前提でありますので、いろいろな問題が起りはしないか、その場合にそういう盲点のあるようなことではいけないのではないかというのが、私は古井さんの今の御心配の一番大きな問題だと思う。大臣にお聞きになつ考えだと思う。それから考えて参りますと、今の斎藤君のようなことでは、そこに非常に大きな盲点が私はできて来ると思う。だからどうしてもそういうことでなくして、ただ府県なら府県にやはり公安条例を置くのだというようなことが、もし斎藤君のお考えだとするならば、なければとてもこれは古井さんの御心配の排除はできない。どこまでも御心配のことができて来る。だから立法の建前上、そういうまちまちのものをたくさんこしらえて、一方にはそういう条例のない地域ができておるということではいけないということに対して、どう処置するかという古井さんの質問に対しては、これはそういう法律でやるのだから何でもやれるのだという今の考え方では、おそらくそういう盲点ができると思う。もう少しその点について、大臣から私ははつきり聞いておきたいと思うのです。大臣は両方所管されておりますので、一体どうされるのか、そういう斎藤君のよう答弁でいいのか悪いのか、もう少しはつきりしておいてもらいたいと思います。
  45. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 結論から申し上げますと、そういう盲点はないというふうに考えております。国警長官も御答弁申し上げましたように、府県の条例のあるところはそのままで、条例のないところについては、今までのものは別に失効するわけじやないのであります。経過的措置としてそれを認める、こういう考え方で行けると思います。
  46. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 それじやこれは大臣に聞いておきますが、今の心配は――府県条例のあるところはそれでいいのですよ。府県にないところは、府県全体の区域にこの公安条例は適用できませんよ。たとい斎藤君の言うように名前を書きかえても、八つの地域があれば、八つの地域だけに公安条例があつて、その他の地域には公安条例がないということになるのですが、そこに盲点ができやしないかという結論が出て来るのですよ。
  47. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 ただいまおつしやいますように、府県になくて、市町村にだけある、しかもそういうところは、市町村によつて、つくつているところとつくつていないところがあるわけであります。現在盲点があるわけであります。現状をそのまま経過的に引継いで行くというだけであつて、現状よりは悪くはならないのであります。現在府県にも条例がなく、市町村にも条例がないというところにおいて、その盲点があるわけであります。その盲点は盲点として残るだけで、今よりも悪くはならない。従つて町村の条例を持つておるところで、今度それを読みかえたという場合には、市町村ごとによつてその条例のないところはやはりありませんし、それからあるところにありましても、あるところでは七十二時間前に届け出る、あるところでは四十八時間前に届け出るということになつておりましよう。なつておりましても、その相違は現在と同じように違うだけであつて、現在の状態をそのままに経過的に存続させるというだけでございます。
  48. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 それからもう一つ、条例のことでそういう議論が出て来るならば、聞いておきたいのは、条例はあなたの方の議論は、法律でこしらえるから何でもいいのだという議論の上に立つておる暴論だと思う。条例は府県議会の議決がいりますよ。これは自治法にはつきり書いてある。府県でこしらえようとすれば、規則の場合は別でありますが、条例でありますれば府県の議会の議決を経なければならぬ。同時にこれについては罰則がついております。そういうものを単なる政令で一応府県の条令と読みかえるというようなことは、これは明らかに自治権に対する侵害ではありませんか。府県自治体がこれを議決しない前に、しかも市町村にある公安条例をそのまま移譲するといたしましても、その条例には罰則がついております。こういうものが区区まちまちになつておる。私はそういうことを考えて参りますと、政令で定めればそれでいいのだというりくつは通らぬと思います。府県の条例は府県の議会の議決を経なければならぬことになつておる。規則は別であります。規則は条例で都道府県の執行者に委任すればそれでいいのであります。ちよう国会で論ずる法律と政令のような形になつておるから、それでいい。しかし地方自治体の持つておる唯一の立法――と言うと少し言い過ぎでありますが、その条例を国の政令でどつちにでも移すことができるというようなことが、もしできたとするならば、それは将来えらいことになりますよ。これはもう少し考え答弁してしただきたい。
  49. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 ただいま私の申し上げましたのを、府県の条例にするようにおとりになつようでありますが、そうではございませんで、市町村の条例は市町村の条例であるのであります。従つて府県の条例にはなりません。ただ市町村の条例の中に市町村公安委員会とあるのを県の公安委員会と読みかえるというだけでございます。
  50. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 今の点について関連の関連でありますが、私がお尋ねしておつたのは、今県に公安条例をつくつていない、それから県にはないが、市町村でつくつておる、こういう場合に、つくつておらぬ市町村のところを問題にしておるのではないのでありまして、今つくつておる市町村の公安条例がどうなるかということを言つてつたのであります。だから現在盲点というか、穴があいておるところは、これは現在そうなんだから、問題じやない。現在つくつておるところを私は問題にしておつたのであります。そのときに、やはり市町村が廃止する自由はとめようがない。廃止する自由は何とも拘束しようもないというところに、どうしたつて盲点が起ると思う。また廃止しないでおるというところに、一部を読みかえをする規定をつくらなければならぬ。それは政令でつくるとおつしやる。しかしその政令は府県の条例ではないのであつて、政令である。その政令は一種の公安条例にかわる国の政令なんです。そうすると、公安条例を政令でつくるというようなことが一体できるのかということになる。読みかえるといえどもこれは一種の公安条例である。それを一体法律でなくて、政令で経過規定でできるかという大きな問題があると私は思つております。さつきはそこまでは実は言いませんでしたが、これは一つの大問題ですよ。そういう意味で実ははお尋ねしておつたのであります。関連の御質問があるかもしれませんが、問題を私はちよつと残しておいて、一応しまいにしておきたいと思つております。  そこで別の問題でありますが、これは私はこの委員会に出ておりませんので、従来の質疑応答ではつきりしておるかもしれませんが、そうだつたらそれでもうけつこうです。付則の十五項で、俸給が下る者について手当を支給するということになつております。この手当というものは俸給ではないのですから、恩給の基礎にはならぬものであることは当然だと思いますが、そうでありましようね。
  51. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 さようでございます。
  52. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 そうしますと、ここがやはり問題になつて来る。従来俸給が基礎になつて恩給をもらうことになつてつた者が、今度は切り下げられた低い俸給が基礎になつて恩給をもらうということになる。手当は恩給の基礎にならぬということは、ちよつとこれは問題のように私は思います。その点について私が心配しておるのは、一方にはそういうふうに今まで高い俸給をもらつてつた君が切下げられて手当ということになつて、それだけ不利益をこうむるということで、警察官に相当不満が起りはしないか。しかし一方国警の方の職員で給料が安かつたという人人は、切下げは受けないけれども自治警から来た人は俸給ではないけれども手当をもらつておるが、自分たちは手当をもらえないという不満が起る。こういうことで、国警から来た者にも自治警から来た者にも、両方に不平不満を起すような結果になりはしないか。こういう多数の警察官の気持からいつて、そこが気になるのであります。また警視正以上は国家公務員になさつており、それ以下の者は地方公務員にされていて、身分の差別待遇が行われている。この辺も、幹部の者だけが都合のいいことを考えたかのような不満が一般の多数の警察職員には残りはしないか。そういう身分の点、あるいは給与の点において警察職員に不平不満が起りはしないか。その点についてみんなが円満に治まつてくれるものだろうか、どうであろうか。たまたま時期もなかなか悪い。どういうことで心配があるのでありますけれども、これはあるいはしようがないかもしれない、しようがないとお考えになつているのか、どういうふうにお考えになつているのか。私には少し気になるのであります。御所見があれば伺いたいと思います。
  53. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 この点は御指摘のようにわれわれといたしましてもまことに気になる点でありまして、現在の自治体警察の給与の一番高いところに、全部上げてしまうことができれば一番けつこうでございますが、しかしこれは実際上不可能なことになつておるのであります。従つて国家地方警察から来た者から見れば、同じ勤務に服しておるのに、そうして経歴その他から考えても同じ給与であるべきであるのに、一方は過去の関係から手当をもらつておる、また手当をもらつておる方は恩給の基礎には算定されない、これももらつておりながらやはり不満があるというので、両方に不満があるのでありますが、これも先ほど申しますように、高いところまで持つて行くことができないからこれはやむを得ない、両方に不満があるのだから両方でがまんしてもらうよりしようがないのじやないか。しかもそれは暫定的の経過的の問題でございまして、私は大部分の府県はもう一両年のうちに片づいてしまう、かよう考えるわけであります。また警視正以上の二百名余りの者が国家公務員になる、そうすると給与体系も違う、これはむしろ国家公務員の方が、警視以下と比較すると給与が実際上低いというので、これは警視正以上の方が気の毒なんです。警視正以上の国家公務員の方が給与で得するというのではなくて、むしろ上の方が給与が比較的低い、かようになるのであります。
  54. 中井委員長(中井一夫)

    中井委員長 それでは午前中の質問はこの程度で休憩いたします。  なおただいま報告によりますと、本会議は定刻から始まり約十分間くらいで終るということでありますから、この委員会は午後二時より再開いたすことにいたします。     午後零時五十七分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十三分開議
  55. 中井委員長(中井一夫)

    中井委員長 休憩前に引続きまして会議を開きます。  警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案の両案を一括議題として質疑を続行いたします。午前中には古井委員、の御質疑が途中で保留をされておるのでありますが、ただいまお見えになりませんから、他の委員の方の質疑をお進めいただきたいと思います。北山愛郎君。
  56. 北山委員(北山愛郎)

    ○北山委員 私は二、三の点につきまして、新しい小坂国務大臣質問をいたしたいと思うのであります。  まずその前にわれわれとしては、警察担当大臣が今まで犬養さんがやつてつたのが急にかわつた、まことにこれは突然で驚いておるわけであります。けさの新聞によつてそういうことを見たのでございまして、いわゆる新聞辞令でだけ承知しておるようなわけでございますが、その間の事情並びに警察担当大臣というのは一体どういうふうな辞令をおもらいになるのであるか、これらの点についてまず小坂国務大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  57. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 先ほどもごあいさつを申し上げた次第でございますが、はからずも相当大臣という職をけがすことになりました。何とぞよろしく御協力のほどお順いいたします。  その間の経緯というお話でございますが、総理よりの話がございまして、御承知ように国家公安委員会の行政組織上の主務大臣は総理府の長としての内閣総理大臣、従つて総理大臣が行つております職能が、御承知よう法令案等の閣議請議であるとか、予算の編成、支出に関する権限、さらに国会におきます答弁説明というものがあるわけでございますけれども、総理大臣の職責が非常に多忙でありますこと、また非常に広汎多岐にわたつておりますため、ただいま申し上げたよう法令案の作成とか、あるいは国会答弁等、事実上国家地方警察に関します内閣総理大臣の職務を代行せしむる、これを御承知よう犬養大臣が私の前にやつておられたわけでありますが、代行を私にあらためてせよ、こういうことでございます。従いまして、手続上もそのようになつておる次第でございます。
  58. 中井委員長(中井一夫)

    中井委員長 ちよつと古井君に申し上げますが、あなたの御質疑は午前中留保されて、午後に至りましたところお姿が見えませなんだため、北山君に質疑を進めていただいた次第であります。従いましてあなたの御質疑につきましては、北山君の御質疑が終りましたらこれをお進めくださつてよろしゆうしざいますが、それともただいま副総理がみえましたから、これに対する御質疑があるならばあらためてお始めいただいてもよいと思います。いかがでしようか。
  59. 古井委員(古井喜實)

    古井委員 やつてもらつてけつこうです。
  60. 中井委員長(中井一夫)

    中井委員長 北山君に申し上げますが、今副総理が見えまして、副総理はさらに他に参らねばならない委員会をお持ちのようでありますから、できますなら副総理へ質疑を集中せられんことを希望いたします。
  61. 北山委員(北山愛郎)

    ○北山委員 それでは緒方さんにお伺いします。実はただいま小坂国務大臣にお伺いしたのでございますが、われわれとしては、今まで犬養国務大臣警察担当大臣として、警察法案に関する提案理由の説明その他の質疑等を進めて審議して参つたのでございますが、今突如として警察担当大臣をかえられるということは、本案の審議上におきましても大きな影響があると思うのであります。もちろん政府の意思としては一つであつて、これはだれが担当してもかわるところはないと思いますけれども、しかし審議を実際に進めるという意味からすれば非常に障害になる。当委員会としてはこれは大きな問題であろうと思うのでありますが、なぜ一体このような重要法案審議の途中においてかえなければならなかつたか、私ども、汚職の方が非常に忙しくなつたので、犬養さんは汚職専門の担当大臣ようになつて、こちらの方の兼任を解かれたというふうに常識的には承知するのでありますが、しかしこの案の審議を熱心に進めて来たわれわれ委員としましては、まことに迷惑しごくに思うのでございます。従いまして政府として国警担当大臣をおかえになつたという経緯については、御親切に委員会説明していただきたい、かよう意味を簡単に小坂大臣にもお聞きしたのでありますが、重ねて緒方副総理からこの点を明確にしていただきたい。お願いを申し上げます。
  62. 緒方政府委員(緒方竹虎)

    ○緒方政府委員 御質問の御趣旨ごもつともな点もあるのでありますが、政府では今回の警察法案を非常に重要に考えておりまして、ぜひ今国会中に御審議を煩わして通過さしたい、さよう考えておりまするところ、大分法案審議が遅れておる、その遅れた理由の中に、法務大臣警察担当している際にいろいろな問題が法務省に起りまして、そのために法務大臣の不出席が一つ原因になつておることも考えられて参りましたので、この際その担当をわけまして、小坂労働大臣担当してもらつて警察法案にひとつ集中して御審議を促進して参りたい、かよう考えまして、きのうこれをきめたような次第であります。小坂労働大臣警察法につきましては、相当熱心に研究しておられますので、この際の担当者として適任であろうと考えた次第でございます。
  63. 北山委員(北山愛郎)

    ○北山委員 大臣をおかえになつたということは、この警察法審議を進める上から、委員会担当大臣の出席を行うようにするという便宜上の趣意であるということは了解いたしますけれども、しかしそれにしましても、やはり委員会としては非常に困る立場に立つのじやないかと思うのです。今までのこの委員会審議はまだ一般質問範囲を出ておらない、逐次逐条審議に入ろうとする段階にあるのでありますが、しかしこの案を政府側において提案したいろいろな趣旨というような点につきましては、犬養大臣との間にいろいろな質疑応答がかわされております。しかしその土台の上にさらに審議を進めるといたしまするならば、これは委員会としての審議上非常に便宜じやないか、かように思うのでありますが、この際審議の途中において大臣をかえられた、そういたしますと、われわれとしてはやはり今までの一般的な質疑というようなものも、考え方によれば根本からやり直しをしなければならぬ、あらためて警察担当大臣としての所見をいろいろな角度から聞かなければならぬというような必要もこれは当然起つて来るわけでありまして、そういう意味ではかえつて審議のためにはうまくないのじやないか、かよう考えるのでありますが、副総理けその間のそれらの事情というものを十分にお含みの上で、やはりそういう障害が出て来るということを十分予想の上で大臣をおかえになつた、かよう考えてさしつかえないか、その点をお伺いします。
  64. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 そういう点ももちろん十分に考えた上で担当をかえたのでございます。今お話になつような点ももちろんあると思いますが、先ほど御指摘になりましたように、政府は一体でこの警察法そのものについては、みんな共通した考えを持つておりまするし、御質問を新たにされるということは委員会の御自由でありますけれども、大体において今までの御質疑の点は新しい担当者においても同じ共通な考えを持つておると思いまするし、前の大臣との間の引継等は十分にいたしたのでありますから、その点につきましてはあまり食い違いはないはずと考えております。
  65. 北山委員(北山愛郎)

    ○北山委員 私はもう一点副総理にお伺いしますがこの警察法についてでございますが、実は政府あるいは広く政界というものをめぐつても汚職あるいは疑獄というような問題がどんどん進行して参つておる、それと並行してこの警察法審議をいたしておるのでございますが、今やその混迷した政局というものは新たなる展開を迫られておる最後のぎりぎりのところに来ておるのじやないか、かような事態とわれわれは了承するわけでございます。従つてこのような混迷した政界の腐敗というものを一新して、新しい出直しをしなければならぬという政府におかれて、このよう国民の権利義務あるいは今後の施政というものに重要な関係の深い警察法というものを、そのままの状態でこれを成立させようとするのは間違つておるのじやないか、これはやはりあらためて出直して、そして最切からやり直しをするという、そうすべきじやないか、かよう考えるわけであります。特にこういうことを考えますのは、実はせんだつて委員会では秘密会をいたしまして、共産党あるいは右翼団体等いわゆる暴力的な破壊的な活動をすると称せられるものの国内における状況というものを、公安調査庁その他から事情を聴取したのでありますが、その際にその調査庁の人が言うのには、暴力革命というものを可能にするいろいろな条件といいますか、それにはやはり国民の感情というものがテロ行為に味方をする、あるいは少くともこれを黙認するというような事態が非常に危険である、ちようど戦争前に政党政治が腐敗をして、そうしてテロをどちらかといえば歓迎するようなファション的なテロ行為というものを、国民がある程度これを慫慂するような空気が効いて来て、そうして日本の政治というものがあの方に向つてつたのだ、従つてそのような事態になるということは、暴力革命を容易にする非常に危険なことといわなければならぬ、こういうことを申されたのでありますが、従つて、私どもは現在行われております政界の汚職あるいは疑獄の進展というものが、国民心理に与える影響というものの大きさを考える、そういたしますと、これはむしろ逆に、そういうこと事態が暴力革命なりそういうふうな騒動あるいは社会不安というものを起す大きな原因として進行しているんじやないか、そうしてそういう事態にありながら、一方ではこれを権力的な手段でもつて弾圧をするというよう法案審議するというようなことは、これはその両者の関連において私どもは適当ではないと、かよう考えるわけでありまして、まずもつて国民政治に対する不信というものを払拭をする、そうして国民政治に対する信頼というものを回復するというのが第一段階じやないか、しかる後にこのような措置を考えるべきであつて、むしろこの際において、こういう事態において警察法案を強行審議するということは、これは誤解を招くのではないか、かよう考えるのでありますが、副総理はどういうふうにお考えであるか、これをお答えを願いたい。
  66. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 警察法案を強行審議ようというよう考え政府においては毛頭持つておりません。今の政局に対していろいろな見方はあろうと考えますけれども、いかなる政局でありましようとも、国会というものが健全で、その多数決というものが冷静に行われれば、今お話になつような右翼とか左翼とかいうもののテロというものは私は起り得ない、この警察法案のつきまして、政府としましては確信をもつて推進いたしておりますけれども、各党政派によつていろいろ御意見もあろうと考えます。それに従つて国会が自主的に十分に御審議くだされば、今の政局がどうあろうとも、それはまた別個の問題であろうと考えまするので、どうぞ政局のことは御心配なく御審議を願いたいと政府としては考えます
  67. 西村(力)委員(西村力弥)

    西村(力)委員 総理大臣の本委員会への出席は、警察法審議にかかつた当初から理事会の決定によつて要請があつたわけですが、今まで一度もおいで願えなかつたということは非常に私たち遺憾に思つておる。これはそもそも警察法を提案した根本の内閣の考え方をお聞きして、それから担当大臣の見解を聞き、また逐条審議に入つて行くという段階を踏んで行こう、こういう審議明確化するための考え方であつた。ところが本日までおいで願えず、やつと本日お見えになつたということは遺憾に思いますが、たまたま担当の犬養法務大臣がおやめになつて、小坂さんが担当せられることになりましたので、きようお尋ねする点はその点に集中されるようになる。これは本質からいうとあまり好ましくないと私は思つているんです。しかしその点についてもやはりお聞きしなければなりませんので、これからお尋ねしたいと思います。  先ほど法務大臣が忙しくて委員会に出席ができないために審議が渋滞しておる、それを促進すをためにかえた、こういうことでありますが、私は、その考え方は、内閣の責任をとる立場からいうとあまりに軽率ではないかと思う。しかも私は審議渋滞ということをだれから聞かれたかということを反間したい。なぜかならば、われわれとしてはほとんど休みなく今までやつて来た。ところがいろいろ与党あるいは政府の都合によつて途中で税法の審議に入り、そのはかまた三派折衝とか云々の問題で無為に一週間も過す、こういうようなことになつて来て結局遅れておる。このことは審議渋帯ということを言い得るものではないと思う。そして私はやはり担当大臣の出席を求めておりますけれども、それはわれわれの審議権を放棄することはできないのでそういう主張はしても、最後は妥協して逐条の説明も聞きましよう、そういうぐあいにそのときどきに応じてこの質疑戦を展開しておる。だからいまさら審議渋滞ということを理由にして大臣をかえられたということは、実はわれわれとしては納得行かない。この理由はとつてつけた表面的な理由にすぎないと私は思うわけなんです。審議渋滞というぐあいに判断された根拠についてまずお尋ね申したい。
  68. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 国会の方が審議を渋滞さしておらるるとは少しも申しておりませんし、考えてもおりません。ただ先ほども申し上げましたように、法務大臣が手がふさがつて地方行政委員会警察法審議に出席できない場合があつて、そのために審議が遅れておるよう承知いたしておりますので、政府が最も重要な法案一つ考えておりますこの警察法審議を少しでも促進させたい、そういうふうな意味から担当をかえたのであります。法務大臣は、汚職の見通しも私どもに十分わかつておりませんが、逮捕請求ということがありましても、疑獄その他にずいぶん手をとられておる。それで今国会始まつて以後も、そのために出席できなかつたこともあつたよう考えております。とつてくつつけた理由と言われますけれども、私が先ほど来申したこと以外に何ら裏の理由というものはないのでございます。
  69. 西村(力)委員(西村力弥)

    西村(力)委員 参考のためにお聞きしたいと思うのですが、国警担当大臣がこの警察法ができてから何人かおかわりになつていらつしやると思うのですが、どういう方がなつていらつしやるのか、私はその点はわからない。しかしおそらく法務大臣担当するというのは、一つの慣例となつて今まで来ているんじやないか、担当大臣はどういうぐあいに変遷しておるか、これについてお尋ねしたい。
  70. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 従来自由党内閣の場合には、森幸太郎君、樋貝詮三君が専任でやつてつたことがあるそうでありますけれども、その他の場合には、すべて兼任と申しますか、ほかの所管を持つている大臣担当しておつたのでございます。
  71. 西村(力)委員(西村力弥)

    西村(力)委員 それは法務大臣の兼任であつたかどうか。
  72. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 兼任の場合は、法務大臣の兼任であります。
  73. 西村(力)委員(西村力弥)

    西村(力)委員 このたび突如として犬養法務大臣にやめてもらつて、かえたことに対しては、われわれの驚きもさることながら、国民一般は非常にその点に対して疑惑を持つておる。犬養法務大臣の苦しい立場は、新聞に再三再四報ぜられておる。汚職進展の処理にあたつて法務大臣が検察当局から浮さ上つた、こういうことのために与党との間にはさまつて非常に苦しい立場に置かれておる、こういう記事がたくさん出ております。法務大臣は検察権の独立性を侵すだけの力がないはずなのに、一体どうして苦しい立場にあるであろうかいう疑惑を率直に持つわけあります。そういう疑惑を一段と深めるがごときこの更迭をやつたことは、そういうことは全然世論としては考えられないと思われるかどうか。それも考えてはおるが、やむを得ない、こういうぐあいにお考えになるか。私はこの素朴な輿論の動向は実に重大な問題であると考える。そういう国民全体の疑惑に対しての、副総理としての見解をお開かせ願いたいと思います。
  74. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 国民の疑惑云々というお話でありますが、犬養法務大臣の立場が苦しそうだ、それで警察担当を離したということは、どうも私の考えでは国民の疑惑にならないのではないか。犬養法務大臣が非常に苦しい立場であつて、その法務大臣の位置を追われ、かわつた人が出て来たということになると、国民の疑惑を招くおそれがあるかもしれませんか、この場合はそうでなくて、犬養法務大臣が苦しい立場であるというその法務大臣の位置はそのまま保たれて、そうして警察担当をかえたことは、別に国民の疑惑を招く理由にはならないと考えます。
  75. 西村(力)委員(西村力弥)

    西村(力)委員 それは法務大臣の地位を追われないからこそそういうぐあいになるのだ。世間伝えられるところによると、犬養法務大臣自分の窮境に耐えかねて辞表を提出したが、しかしそれは撤回せられて、とにかく法務大臣としてこの疑獄の事態収拾に専心当りたい、こういうようなぐあいに、言葉はちよつと悪いが、その点だけは罪一等を減ぜられた、死一等を減ぜられたと言つておる。だからこそ私は国警の方をやめてもらつてこちらに専心させるということは、内閣の圧力がそれだけ犬養さんの背中に背負わされて来ておるのだという疑惑を持つ。だからこそ世論がそういうぐあひになつておるのではないかというわけです。法務大臣をやめさせられないからこそかえつて疑惑を深くしているというぐあいに考えているわけです。その点について、辞表云々の問題は単なるデマであるか。またそういうふうに私が考えておること、あるいは世間の人が考えておることもまた誤解である、そういうことは全然われわれとして考えられぬというぐあいに御答弁なさるか。その点についてお答えを願いたい。
  76. 加藤(精)委員(加藤精三)

    ○加藤(精)委員 関連して。法務大臣責任問題、その他の問題は、地方行政委員会の議事に関係ないのであまりして、そういうことについて論議をしている時間がございますれば、政策の審議にわれわれ国会議員としての職責を果させていただきたいのでありまして、議事を正常の軌道にもどしていただくように、議題を中心としての審議を始めるように……。     〔「委員長、あれは議事と違うじや   ないか。」と呼び離席する者あり〕
  77. 中井委員長(中井一夫)

    中井委員長 委員はその席に着かれんことを願います。
  78. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 今お述べになりました新聞記事については私は全然承知いたしておりません。作表を出したとか撤回させたということはございません。そういう新聞記事によりまして犬養法務大臣の立場が苦しいようにお述べになりましたが、そういう事情がないのか、それから今繰返してお述べになりましたけれども、やはりそれと関連して警察法担当を離したということが何か圧迫の結果である、あるいは国民の疑惑を招くという意味が私には出て参らないのでありますが、もう一度御質問願います。
  79. 西村(力)委員(西村力弥)

    西村(力)委員 おわかり願えないで、非常に残念で表現の下手をみずからはじるわけでありますが、私が申すのは、世論が非常に疑惑を持つておる。すなわち犬養さんは辞表を出したんだが、まあまあお前は心をあらためて専門にこつちの方をやれ、こういうぐあいに印象を受けておる。こつちの方はめんどうくさいから国警の方はやめにして、こつちだけ専門にやれ、こういうぐあいに印象を受けておる。そういうことに対してこの際法務大臣国警担当大臣をかえたことは非常にマイナスになつていることを、私は政治の信頼の問題から残念に思つているわけなんです。だからそういうことは全然ないというぐあいに答弁なさるならばそれでよろしいし、またそういうことは一切われわれは関係あるものとは考えない、かくかくのごとく、法務大臣仕事はこうであるから関係ない、こう思う、私はこういう御答弁を願いたいわけなんです。そうでないと、このままにしておけば、国民の疑惑というものは解けない、かように私は思うわけなんです。
  80. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 今のお話では疑惑は生じないと思いますが、いずれにいたしましても、今回の警察法担当をかえましたのは、別に先ほど申し上げた理由以外にない、と申しますのは、この重大法案の議事を少しでも早く促進していただきたい。それには政府側も今までのようにほかの仕事に手をとられて、この委員会に出席ができない場合がないようにしたい、そういうことから担当をかえたのでありまして、ほかに全然意味はございません。
  81. 北山委員(北山愛郎)

    ○北山委員 これはわれわれこの法案審議する際に必要でございますので、もう一点ちよつと聞いておきたいのでずが、それはこの警察法案というものは、今の吉田内閣の重要な施政の一部として提案になり、それで今われわれが審議をしておるわけです、ところが現に進行しておる政局の緊迫という問題は、吉田内閣が総辞職するかもしれぬ。場合によればそうなるかもしれぬというような情勢であつて、しかも緒方副総理自身が政局の転換についてもいろいろな工作をなさつており、またいろいろな機会でそういうことがあり得ることを示唆しておいでになる。そうすると場合によれば吉田内閣がやめてしまうかもしれない。こういう事態であることは天下周知の、だれが見てもそう思うだろうと思います。そういう事態において、この吉田内閣の施政方針といいますか、政策の一部であるこの法案審議しろということは、自体無理じやないかと思う。まずこれを既定方針通り審議を続行して、できるならば国会成立をさせたいという以上、内閣少くともどんどんこれからやつて行くのだというような心構えでなければ矛盾するのじやないか。ですから私のお伺いしたいのは、今進行しておる政局の緊迫化、あるいは吉田内閣の総辞職というようなことはあり得ないというか、場合によればあるかもしれぬというようなことも副総理も言つておられるようでありますが、そういうことと矛盾しないかどうか、この法案を提案された内閣そのものが根底からぐらついておる。総辞職すればこの法案審議は当然停止する、あるいはまた消滅するかもしれない。そういう事態において審議を希望されるのは矛盾じやないか。この点についてはつきりとひとつ御見解を承つておきたい。
  82. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 その点につきましては先ほどお答えしたことを繰返すようなものでありますが、政府としては今お話のどんどんやつて行くつもりで、別にやめるつもりはございません。そこでこの法案も、政府がかりにどういう立場にいましようとも、この法案の重要性にかんがみて国会が自主的にひとつ検討なさつて、この法案がいけなければ否決なさることも御自由でありますけれども、しかし政局がどうであるから、この法案について国会審議を怠る、休むということは私あり得ないことだと思います。
  83. 北山委員(北山愛郎)

    ○北山委員 それは副総理のお気持でありますが、客観的にいえば私が言つた通りだと思います。やはり吉田内閣の土台がぐらついておるということは客観的に事実である。だからそのもとでわれわれが法案を取扱う場合に、国会として、あるいは議員としてはそういうことを前提にして、この法案審議する態度としてこれは容認されてしかたがないと思うのですが、そういうことも含めて、われわれが吉田内閣の主観的な意図はともかくとしても、客観的にはもうぐらついておるのだということを頭の中に入れて審議するもやむを得ないということは御了承になつておるかどうか。
  84. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 客観的に政府の立場あるいは今の政局をどういうふうにごらんになつておるかということは、私どもにわかりませんし、また批判もいたしません。政府としましてはいちずにこの法案が早く上げられますように、それだけを希望しておる次第であります。
  85. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 緒方さんにあとでまた警察法に直接関係のある問題を附きたいと思いますが、最初に北山君、それから町村君からお聞きになつております大臣の更送問題であります。今までの組方さんの御答弁を開いておりますと常識的の答弁でありますが、しかし内蔵しておるものは必ずしもそうではないのじやございませんか。あるいは日本の警察行政の中に多少の問題があるのじやないか、どうも犬養さんに今の警察行政をまかせておいたのでは、少しぐあいの悪い点があるのではないか。これは私も確信を持てませんし、確実なものを持つておるわけではありませんが、外務省方面に多少の警察行政の上で考慮を払うべきような事件が起つておるやのことも附いておるのでありますが、そういうことがあるいは内蔵しておるのじやないかと私は考えるのですが、そういうことは絶対にございませんか。
  86. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 そういうことは絶対にございません。
  87. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 私はその事件がまだ表面化したわけではございませんので追究はいたしませんが、その次に聞いておきたいと思いますことは、警察大臣としてのものの考え方であります。今申し上げられましたように、森さんから樋貝大臣になり、さらにその次にたしか大橋さんだと思いますが、それから木村さんになつて今の犬養さんになつておる。樋貝さんまでは担当大臣として警察をお持ちになつております。ところが大橋さん以下になつて参りますると、法務大臣をずつと兼ねておられる。そのときにもわれわれは一応の疑問を持つてつて、大橋さんにも申し上げましたし、さらに木村さんにもお話したことがあります。また犬養さんにもお話したかと思いますが、一方の手で検察庁に対して、いわゆる検事総長に対して指揮命令をすることのできる法務大臣が――その検察庁の権限の中には司法警察官を指揮、命令し、さらにこれに服従しなかつた場合は、これに対して罷免を要求することができるという、検察庁は警察に対して非常に強い権力を持つておる。この強い権力を持つておりまする検察庁の所管を兼ねた法務大臣警察行政をやるということは、法の建前の上から言つて実際はどうかと考える。われわれは一応こういうふうに考えております。検察庁はなるほど行政府には属しておりまするが、一応裁判所に通ずる一つの司法権としての独立性をやはり認めなければならない。裁判所ほどではないにいたしましても、一応独立性を認めなければならない。しかし警察はあくまでも行政権に属するものであつて、三権分立の建前から言えば、どうもおかしいという考え方をわれわれは絶えず持つておる。ところがそういうことも一応考えられるが、しかしそういう検察権と行政権である警察権とを混同して考えようなことはないということで、これまで歴代約三代にわたつてずつと通して――これは自由党の内閣が大部分でありますが、法務大臣警察の所管をされておつた。ところが突如として今度この警察法審議いたしておりまする過程に、大臣をかえられた。これについては、さつきの議論から申し上げますならば、むしろ大臣をかえてもらつた方があるいは形の上ではいいかもしらぬ。しかしその理由になつておりまする大臣が忙しいからというお話でありますが、なるほど現在はいろいろな問題がございまして、法務大臣も非常に忙しいことは、われわれも了解しないわけではないのであります。しかしそうなつて参りますと、新しく担当大臣となられました小坂労働大臣でありますが、小坂さんも一方において労働行政をやり、さらに調達庁の長官をしておいでになる。今度この警察担当されれば、三つの大臣としての職責が与えられることになるのであります。従つて今の緒方さんの御答弁がそのまま受取れるとするならば、この場合はやはりこういう三つの大臣の職責を兼ねておるというような人よりも、むしろ国務大臣の中でしかるべき人を御推薦になる、あるいは新しい警察だけを受持つ大臣をおきめになつた方が私は筋が通ると思う。どうも今の緒方さんの答弁は犬養さんが忙しいからと言うが、そういうことが、そういうことになれば小坂さんも同じです。調達庁の問題もあります。それから労働省の関係もお持ちになつておる。ことに労働行政は先ほどからいろいろお話もありましたが、五月、六月ごろは労働攻勢として相当強く出て来はしないかということが考えられる。単に法案審議のために便宜的に大臣をかえるというようなことは、内閣として、あまりに不見識じやないか。と同時に繰返して申し上げまするが、三つの大臣を来ねられるということになれば、これまたどうも今の緒方さんの犬養さんが忙しいからかえたという理由にも、私はいささかはずれやしないかというよう考えられるのでありますが、この点は一体どうなんですか。小坂さんはほかの二つの仕事があいておるから、大体片手間にやつてもさしつかえないといような軽いお気持でこれをお、かえになつたのか、その点をもう一応伺つておきたいと思います。
  88. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 なるほど無住所の国務大臣が三人おりますが、やはり警察法案について適、不適がありまするので、小坂労働大臣が調達庁の担当をしておることも御指摘の通りでありますけれども政府では小坂労働大臣が今お述べになりました中で適任と考えまして、小坂労働大臣担当といたした次第であります。私が先ほど来申し述べた以外に別に何らの意味は持つておりません。
  89. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 これは政府の見解と見解を異にするかもしれませんが、今適任だというお言葉がございましたし、また適任であるからおかえになつたといことは当初からわかつておりました。しかし適任といふ言葉の中には非常に問題が残されておると思う。私は何もここで小坂大臣を否認するわけでもなければ、拒否するわけでもございませんが、御承知よう警察法改正に対して世間の持つております眼、わけても労働階級が持つておりまする考え方というものは、さきに破壊活動防止法をこしらえ、さらに炭労、電産の争議規制法をこしらえ、さらにいま国会にかかつておりまする教育二法案によつて教員の政治活動を抑えようとしておる。働く者の基本的の人権と自由を大幅に自由党内閣によつて抑圧をして来ておる。しかもその抑圧をしたあとの、法律をこしらえたあとの行政上の監督といいまするか行政上の取締りというものは、あげて警察が大体その任に当ると私は考える。従つてその労働省を受持つておる労働大臣でありまする者が、警察法の所管大臣となつて、そうしてこの警察法を無理に通そうということになると、これは内閣が無理にこの警察法を通して、そうしてさつき申し上げましたような働く者の自由を圧迫するのじやないかという疑惑を受けることが非常に大きいと思う。これはよけいなことでありますが、この問題に対するものの考え方であります。従つてこの大臣に人もあろうに労働大臣を持つて来たことに対する非難が世間にはたくさんあるのであつて、そうしてこの警察法が通れば、それは必要以上に取締るのではないか、必要以上にこれを圧迫するのじやないかということが往々考えられておる。そういううわさがされ、そういうことが考えられて、またそういうことは街頭においでになつてもおわかりの通りであつて、総評その他においても、警察法をどうしてもつぶさなければ、これによつて弾圧されるであろうということが考えられておる。その労働大臣が一方において警察法を促進して行こうということになると、これは内閣としては適任かもしれないが、われわれから考えれば、必ずしも適任者ではないというよう考えるのでありますが、その辺の思惑はどうなんですか。
  90. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 政府が小坂労働大臣担当としたことについて、それが賢明であるかどうかということは、別に批判があるかと思いまするけれども、それにかかわらず、それは法案審議とは全然別もので、政府がもつとほかの人にしたらどうかというお考えは、これは政府として責任を持つことでありまして、国会としては自主的にこの法案の御審議をされればいいのじやないかと思いますが、どうですか。
  91. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 それは政府としての見解でありますから、私どもの見解が違つておるといえば、それまでの話でありますけれども、私どもの見解としてはやはりそういう形が出て来る。  最後にもう一つ聞いておきたいと思いますことは、警察法改正されますについて、昨年出されて参りました警察法改正では明らかに五大都市を残すという形になつております。そうして大体自治警察というものが一応認められた。ところが今回の警察につきましては、自治警察であるのか国家警察であるのか、一向判断がつきません。きのうまで長い間この問題を中心にして議論しておりますが、きのうの委員会での当局からの御答弁でも、大体これはまあ七分三分くらいのものであつて、七分くらいが自治警であつて、三分くらいが警察であるかもしれない、あるいはこれは男であるのか女であるのかわからないが、まあ女の人だといえばあるいは女であろう、女であるに間違いないから、行動その他は男であつても、女であろうというような妙な答弁をされておる。従つてどもは、政府がこの一年の間に非常に大きな性格の相違を打つ警察法を提案されましたその理由というものが、はつきりつかめないのであります。従つて委員会といたしましては、総理大臣に出ていただいて、この警察を直接所轄されております総理大臣から、その大きくかわつて参りました変化の実態についてお聞きしたいということを、かねて申し上げておつたのであります。幸いきようは副総理がおいでになつておりますので、去年出されたときの警察法性格と、今日出されております警察法性格とが、副総理も御存じのように非常に大きくかわつて来ております。どうしてこういうふうに大きく性格をかえなければならなかつたかということについての、政府としてのお考えをこの機会に承つておきたいと思います。
  92. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 この前の警察法改正法案が、衆議院の解散のために不成立に終りました以後、いろいろ政府としても再検討いたしまして、その際の国会における審議状況、または世間の批判というようなものも慎重に研究をいたしまして、大体の骨子はかわりはないつもりでありますが、今お議のようにかわつた点もあります。これは国会審議の模様あるいは世論、それを十分に取入れまして、自治警察の長所また国家地方警察の長所、そういうものも占領下の経験からいたしまして、そのいいところをとつて、これならば将来長きにわたる日本の警察としていいであろうという、政府の確信のもとにつくつたのがこの法案ごございます。
  93. 中井委員長(中井一夫)

    中井委員長 ちよつと申し上げますが、今副総理に急用ができまして、退席を要求されておりますので……。
  94. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 これ一つだけお聞きしておきます。今の副総理の御答弁でございますが、しかし世間の事情というものは、私は必ずしも今の副総理のお話のようではないと思う。それの現われは、現在全国で各自治警察を持つております都市は、こぞつてこれに反対をいたしております。現行警察制度を残してもらいたい、いわゆる自治の本旨に沿うた警察行政を行うことがいいのであるということで、反対運動をしていることは政府も御存じであろうと思う。同時に地方制度調査会におきましても、いろいろ異論はございましたが、とにかく自治警察の本体は残すべきであるということで、去年の警察法改正と同じような、やはり一部分の自治警察を残すのがいいということで答申をいたしております。私は政府が参考資料にされるのは、おそらくこれくらいのものが参考資料になつておると思う。今縦方さんの、世間のいろいろな考え方、あるいは世間の輿論というものを政府が取上げようとするならば、やはり政府機関としてできております地方制度調査会の意見等は、当然政府は尊重すべきだと思う。しかるに今緒方さんは、そういうものがあるからかえたのだというふうに言つておるが、輿論というものは、まつたく今の緒方さんの言葉と反対に、自治警察は残すべきであるということです。地方制度調査会もこれを認めておる。政府は輿論がそうだとかあるいは世間がそうだとかいうことをおつしやつておりますが、明らかに政府に答申したものはさつきから申し上げておりますような状態であり、同時に政府がもし輿論あるいはみずから狩つております調査機関等の答申を重要視するというなら、私はこういう警察改正法案というものは出て来ないはずだと思う。今の答弁ははなはだ私は奇怪に感ずるのでありますが、政府はこの自治警察を残してもらいたいという、全国の自治警察を持つている自治体の運動――これは全国的に見て参りまして、私は日本の大部分と思う。今日の日本の人口の大部分というものは、これらの都市に集約されていると思う。そういたしますならば、日本国民の大部分の輿論というものは、やはり私は現行警察法を残してもらいたいという輿論が正しいと思う。かたがた政府機関としてできている地方制度調査会も、さつき申し上げましたような答申をしている。従つて今の緒方さんの言葉はまつたく当らないものだ、政府の独創のもとにこの法案が出されたと考える以外、われわれは考えようがないのであります。従つてそれらの輿論について、一体緒方さんはどうお考えになつているか、もう一度お開きしておきます。
  95. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 警察法に関連しまして、五大都市の自治警察をそのまま存続したいというような運動があつたことは、よく承知しております。それに関連して、またそれ以下の、人口三十万以上の市も、同様な警察を存続したいという運動があつたことも承知しております。しかし政府としましては、八年間の経験にかんがみまして、今回の府県単位の自治警察と、一口に言えば言えるようなものを考え出したのでありまして、その間には、従来の自治警察の長所、また国家警察の長所も両方ともに取入れたつもりであります。地方制度調査会のお話がありましたが、これも審議実情は十分御承知だと思いますが、きわめて少い票数で、五大都市の自治警察を存続したいという結果が現われておりますけれども、大勢はやはり警察一つにするということでありまして、五大都市というものについてきわめて利害関係の強い方面から、そういう意見があつたと思いますけれども、私世論といたしましては、警察を一本にするということが世論であると考えております。
  96. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 今の緒方さんの言葉は聞き捨てならぬと思います。地方制度調査会では、なるほど表決の場合は、わずか一票の差であつたかもしれない。がしかしおよそ民主政治をやつております以上は、たとえば国会でも、一票の差でも、結局多数で決することが法律になつて現われて参ります。この原則を組方さんは考えないで、あの採決は一票ぐらいの違いだつたから、世論はこうだというようなお考えを副総理がなさるということは、今議会政治をやつているときにいかがかと思います。これは私は考え直してもらいたいと思いますが、どうですか。
  97. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 それは仰せまでもないのです。ただ地方制度調査会の答申というものは、あれは政府が諮問したのでありまして、あの答申そのままを使うというわけではない。ただあの答申が実質的にどういうものであつたかという説明をしているのであつて、それは先ほど私どなたかの御質疑にお答えしましたように、多数決というものは民主政治、議院制の根本をなしているので、たとい一票といえどもそれに従うということは当然であります。しかし地方制度調査会の答申はそれに当はてはまらないので、その結果に対して私は一つの批判をしているだけであります。
  98. 中井委員長(中井一夫)

    中井委員長 では緒方副総理には、またあらためて出席を求めます。引続き御質疑の御進行を願います。御参考までに申し上げますが、ただいま出席の政府委員説明員は、小坂国務大臣斎藤国警長官外谷口国警次長、柴田総務部長、高橋企画課長の諸君が出席しておられます。北山君。
  99. 北山委員(北山愛郎)

    ○北山委員 引続いて二、三の点を伺いますが、先ほどもこの秘密会でもつて、国内におけるいわゆる無力的な破壊活動をやる団体と称せられるものの実態についていろいろ説明を受けたわけであります。その中で、公安調査庁の総務部長でありましたか、こういうことを育つておるのです。要するに暴力革命の危険というものをその際いろいろ説明されたのでありますが、イギリスとかあるいはフランス、イタリア等との比較において、日本の今のそういう方面における事態の危険というものが、どの程度であるかということの説明でありました。その際に、イギリスは暴力革命に対しては絶対に大丈夫である、イギリスでは暴力革命は起らない状態にあるのだというよう説明であつたようであります。日本は相当に危険である。申し上げるまでもなくイギリスにおいては、社会保障あるいはその他民衆の生活の安定を守るいろいろな政策というものが、相当に進んでおる、そういうことから、暴力革命の危険がないということを言われたのだろうと思うのであります。     〔委員長退席、加藤(精)委員長代    理着席〕 従いましてお伺いしたいと思いますことは、日本においても今回警察法改正、いわゆる中央に権力を集中するような、緒方副総理が言う警察の一本化というよう警察法改正でもつて、国内におけも暴力革命の危険を防ぐ方がいいか、あるいはイギリスのように社会保障とかそういういろいろな国民の生活の安定をはかるような政策を行うことによつて、暴力革命を防ぐ方がいいか、これは非常に大きな問題でありますが、それらの御見解を小坂大臣から承りたい。
  100. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 イギリスと比較してのお話でございますが、イギリスの実態について私すみぞみまでよく研究しておるわけではございません。概括的に申しまして、イギリスは歴史的に非常に長く同一の制度のもとに訓練された国民であり、また地理的に申しまして、幾多お外界からの刺激を非常に受ける立場にあるということで、そういう国民が長い間にわたつての国際的な視野が訓練されておるということは言えるのではないかと思います。社会保障は、なるほどイギリスは非常に発達しております。私どもその点についていろいろ研究してみたところによりますと、イギリスはなるほど社会保障が非常に発注しておりますけれども国民の租税負担もまた多いのであります。非常に多くとつて多くわかち与えるという考え方であります。日本の場合どうかといえば、終戦という日本の歴史始まつて以来ない大混乱を経まして、いわばストルム・ウント・ドラング時代というものをやつと過ぎて来たというようなところで、混乱期に対処するところの国民の心構えが処女地的なものであおと思います。そこに持つて来て大きな混乱をしたということであります。また地理的に見ましても、今までは交通機関等の関係もあつて、外界の変化を受けることは非常に少かつたのですが、最近はそういう点が非常に身近に感じられたという点もございまして、歴史的な変化あるいは地理的な条件からいたしまして、どうも終戦後の立直りがまだほんとうに完璧でないという状態から、ただいま御紹介のありましたような議論あるいは研究を妥当とせられる余地が多分にあるのじやないか、こういうように私も考えておる次第であります。
  101. 北山委員(北山愛郎)

    ○北山委員 大臣はイギリスの事態と比較する際に、自然的な条件であるとかあるいはその他の、どちらかといえば社会経済的な条件は過小評価するというふうに御説明なつたわけであります。しかしイギリスが同じ税金が高いといつても、それは日本の場合と違つて、日本の税金の高いのは、力のない貧乏な者の方が高い。向うの方は金持ちが税金が高いというよう制度上の違いが、国民生活の安定の上に現われているのじやないか。かよう考えるのでありますが、問題とするところは、結局日本においては今の社会制度あるいは政治経済の政府の政策によつて、どちらかといえば大きな資本家あるいは金持ちが惠まれておる社会制度である。そうして労働者やその他の勤労大衆は非常に圧迫されておるよう制度である。そういうような事態において、権力手段によつてテロなりあるいは暴力的な革命を防ぐということが適当であるかどうか。これは私は非常に疑問に思うのでありますが、この点をお伺いしたい。ことに大臣も御承知ように、戦争前、昭和の初めごろの田中内閣がやつたような、ああいうような事態と今とは非常に似ているのじないかと思うのであります。あの当時もやはり今のように資本家擁護の、一部の特権階級には非常に都合のよいような社会制度であり、政府の政策であつた。そして政府はあらゆる法律なりあるいは権力手段によつて、民衆の政治的なあるいは思想的な活動を弾圧したことは大臣承知通り、その結果が結局まわりまわつてフアッシヨ政治の温床をつくつてつたのじやないか。あわせて汚職、疑獄等においても、田中内閣当時における状態と今とはちようど似ている。そういうことをまず考えた上で、暴力革命あるいはテロ、クーデター等の機運を抑える手段として警察の一本化をやり、中央に警察権力を集中するよう改正が、はたして妥当なりやいなや、これらを戦前の大臣の記憶等を呼び起して御説明願いたい。
  102. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 経済的な基盤と、国民の現状ということについての御質問でございましたが、なるほど私も労働省を担当しておりまして、現在勤労者諸君の生活が十全であるとは考えていない。できるだけこれをよくしたい、こういう立場で考えております。しかし実態的には一体どうなつておるかということを少し調べてみたのでありますが、日本の勤労所得者の給与は、今申し上げたように十全ではないのであります。国民所得もまた十全でない。問題は諸外国との比例を見なければならぬと思いますが、日本で勤労所得、いわゆる雇用関係にある、賃金俸給によつて所得している者は約三八%、この国民所得の中において占める割合は、昨年の暮れには全体の四八・二%になつておる。これは戦前は三八%であつたもので、これをイギリスあるいはアメリカと比較してみますと、イギリスの場合は全体の九二%が勤労所得によつて生活をしておる。これが全体の四七%を占めております。アメリカでは八一%でございますが、これが全体の四六%を占めております。ですから国民所得の面において勤労者の占める所得の割合というものはイギリスでは四七であり、アメリカでは四六であるといつても、勤労者の数がまた違うのでありまして、イギリスは九二であり、アメリカは八一であり、日本は三八なんです。ですから国民所得の中において占める割合というものを比較してみますと、日本の勤労者の所得というものはその比較限度においては非常に大きい、そういうことが言えるのであります。これは組合の諸君にも話をして、そういうことだからやはりほんとうに生活を豊かに享受しようと思うなら生産を拡大して行かなければいかぬのじやないか、生産的な基盤がないときに分配の問題だけで争つてもだめじやないかということを言つておるのでありますが、これに対して反論があるのでありまして、それは今お話のように社会保障あるいは税金、そうしたものの割りもどしも考えてみなければ比較にならぬではないかというので、それはごもつともな御意見でありますから、それらを比較勘案いたしまして、勤労所得とそれから社会労働保険、勤労所得税、地方税の住民税、これを比較してみたのであります。これで、税金だけをまず申し上げますと、イギリスの場合は税金が中央地方の今の税種のもので見ますと三九%になつております。日本が二一%、ドイツ、フランスなどでは地方税を抜いて見まして、二二%とか二三%とかいうことで、フランスや、ドイツよりも日本の勤労者関係の税は、国税地方税を冷せたものよりも少いのであります。ですから、その割りもどしを考えてみますと、やはりさきに御紹介をしたと同じよう結論が出るのでありまして、やはりどうもこの際日本全体の経済基盤というものをもう少し拡大しなければならぬ、それには貿易を振興したり、産業の振興をする、そしてこの生産拡大の方向に労働運動というものは向うべきである、ぜひそういうよう協力してもらいたい、まあそういうことを言うたわけであるが、そのよう考え方で私ども考えておるのでございます。労働運動の面におきましても、今お話のございましたイギリスなどでは御承知のTUCがありますが、これは労働組合運動というものは政党の支配を受けない、まつたく別のものでなければいかぬという考えで、ほんとうに経済問題に専念しておるというのであります。西ドイツ等においても協同経営組織法というものがありますけれども、いずれにしましても労働組合というものは政党的なものであつてはならぬ、労働組合運動というものは革命というようなそうした方向をとるべきではないということを言つておるのであります。日本の場合そういう懸念が非常にあるということが言われるけれども、私はもう労働組合というものと政党というものはまつたく別なので、労働組合というのは労働者の経済的な地位の向上ということに専念すべきなのだ、こういうことを申しております。でございますから、今お話のような何か非常に経済的な労働組合運動というものが一つの社会的なものに行くということは、本来とるべきことではないのでありまして、またそれが根本となつて政治がどうなるというよう考え方も私はとり得ないというふうに思うのでございます。ただいま田中内閣当時どうしたというようなお話もございましたが、私ども決してそういう弾圧一本で行くということも考えておりませんし、大体憲法からして違つておるのです。民主的憲法のもとにおいて、国民の民主的な基本的な権利の暢達をはかるということは、私どもの施設の根本に置いておるつもりでございます。御審議をいただいております警察法につきましても同様でございまして、従来種々しばしばの機会において申し上げておると存じますが、警察を民主的に運営する、国民に親しまれるものにする、同時に非能率不経済な面というものはできるだけためて、この調和をはかつて行くすなわちこれは県単位の民主的な警察にする、こういう趣旨でございます。
  103. 北山委員(北山愛郎)

    ○北山委員 数字的にイギリスのことやなんかをお話になつたのですが、どうもただ勤労所得といつても、それは階層別とかそういう点に触れておらなければ、社会機構なり、経済の基盤なりというものの質的なものがわからない。ちようど日本の経済白書が階層別のものを黙殺しておるのと大臣答弁は同じことなんです。しかしいろいろそういうふうな数字的なことを議論するのがこの委員会のあれじやありませんから、ただ一つだけお伺いしておきますが、やはりいかに日本の大衆の生活不安が大きいかということは、私は一つの指標として親子心中があると思うのです。日本では一年に数百件の親子心中がある。これは親が子供を殺すということでありますから非常に異常なものであります。人間として、石川五右衛門であろうが何であろうが、とにかく子供がかわいくない者はないので、その親が子供を殺すということが、一年に何百件も日常茶飯事のように起るような日本の社会――イギリスにはそういうことがあるでしようか。そういうことをイギリスのことについて非常に事情が詳しいようでございますから(笑声)聞いておきますが、私はこれはイギリスの社会と日本の社会で、どちらが生活の安定した社会であるかということの一つの大きな指標じやないかと思うのです。その点は、これは一つの例でありますからお伺いしておきます。  その次に、この警察政治的な中立という問題なんです。これは改正法でも相当そういう点は守られるのだというふうな御答弁が今までにもあつたのです。ところが御承知ように前に内務省の警保局長をやられた次田大三郎さんが新警察法案に対する意見というものをパンフレットで出しており、また新聞にも書かれてございますが、それを拝見しますと、まず第一に今度の警察法における警察長官というものの権限が非常に大きい、むしろ戦前の警保局長よりもずつと大きな権限を持つておる。元の警保局長というものは地方警察官の任免権を持つてない。県の警察部長あるいは警視というようなものの任免権を持つていたのは内務大臣です。それ以下のものは地方長官が任免する。地方長官の任免は閣議を経て内閣がやる。こういうように任免権がばらばらになつておりますから、そこで警保局長がボタンを一つ押せば全国の警察を動かせるといつても、やはりそこには制限があつたのです。ところが今度の警察長官というものは絶大な人事上の権限、それから警察運営における地方警察というものを指揮監督し得る権限を持つておるので非常に危険なものである。戦前よりももつと中央に権力を集中した警察の形態でおるということを言われておるのですが、戦前の警察よりも中央集権的なものであるかどうか、前の警察と比べて、ひとつお考えをお聞きしたいと思うのです。
  104. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 最初の親子心中の話は、どうも私イギリスで何件あるかは存じませんが、いかにも痛ましいことでありまして、そうしたことのできるだけないような社会をつくりたい、経済状況を生みたいと考えております。何にいたしましても非常に経済変動があるということが大きなことかと思うのでありまして、たえば保全何とか会というものが一夜にして解散するとか、そうしたような非常に妙な機関が出て来て、それに非常に大事な金を預ける。それに対する法律上の措置がないということも一つの問題でございます。これは経済、法律両方の面からそういうことをできるだけ避けるようにして行きたいと思います。  もう一つは、死というものに対して非常に簡単に考えような一部の人がございまして、きようも読売新聞に出ておりましたが、七才の子供を殺す。こんなことは経済問題と関係がなく、何かしら異常心理どいうものがあるのじやないか、そういうこともお互いの共通した問題でありますから、そういうものが少くなるような社会をつくるということは同感であります。  さらに警察制度の中立ということに関連して次田氏の意見を引かれましたが、これはもう私どもの見解をもつていたしますれば、現在の、終戦以来の警察制度の民主的な運営ということについて全然お考えない御議論ではないか。御承知よう公安委員会といむものがございまして、中正な公安委員会意見を聞いて警察行政というものが行われておりまして、今回の法案においても第五条に示してございますように、公安委員会警察庁を管理するのでありまして、長官はその指揮下にあるのでありまして、決して君のような独断専行はできない、一般の良識ある人の意見を濾過して行われる警察行政でございますから、この点につきましては御懸念のようなことはない、かよう考えております。
  105. 北山委員(北山愛郎)

    ○北山委員 簡単に終りますが、今の点、公安委員会というものが民主警察一つの保証として残されておるから大丈夫だというようなお話でございますが、これは今まででも必ずしも思うようには行つていないと思うのでありますが、今までならばまだしも、人事権を持ち、ある程度にはその機能が果されておつた非常にいい点だと思うのです。それから大臣としてもその点はいいとして認めておられる。ところが今度この警察法において、公安委員会の権限というものを大幅に縮小し、人事権をまつたく奪つてしまつておる、管理権があるというけれども警察庁というものは公安委員会の中の役所のようにしておりながら、別に独立をさして、地方警察に対しては府県公安委員会を含めて指揮監督をし得るような絶大な権限をこの警察長官に与えておる。このようなことはむしろ今まで長官が言われておるような民主警察のいいところをなくしてしまうのじやないか、さよう考えられるのですが、その点をね重てお伺いしたい。  もう一つは今まででも今の国警本部から地方府県国家地方警察に対して選挙に関する取締りとか、そういうことについて指示をしておるのです。これは現在の制度では御承知通り国警本部というものは行政管理いわゆる人事とか、組織とか、予算とか、そういうふうな行政管理しかできないのが今の制度なんです。ところが現行制度のもとでも国警本部というものは、地方都道府県警察責任者を呼んで、具体的に衆議院なり参議院の選挙の取締り方針とか、そういうことについて指示をしておる、その他いろいろな指示がある、そういうふうに今でも国警本部というものが選挙等の指示をやつておる、権限のないものがやつておる、そういたしますと、今度この改正法でもつて絶大な権限が警察長官に与えられますと、その上には国務大臣である国家公安委員長があり、その上には内閣総理大臣がおるというようなぐあいで、時の政党の総裁である内閣総理大臣が一本で全国の警察というものを、あるいは選挙取締りというようなものを動かせる、そういうふうな体系になつて来るのでありますが、その際において、いかにしてこの警察政治的中立というものを守るか、この点についてひとつ大臣のお考えをお聞きしたい。
  106. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 先ほども申し上げましたように、公安委員会というものは非常に中正なものであり、しかも良識ゆたかなものである。この意見を濾過して行われる警察行政であるということを先ほど申し上げたのでありますが、公安委員会というものは有名無実ではないかという御質疑でございました。私どもはそういうふうには考えておりません。公安委員会は御承知のごとく懲戒罷免の勧告をする権限があるのでございます。この公安委員会のそうした勧告を受けてしかも何ら措置をしないというような事態は、実質的にはこれは行い得ないのでございます。実際は公安委員会というものの懲戒罷免の勧告でも出れば、完全に罷免されるということになるのが行政の実体であろうと私は考えております。また長が警察署長を任免いたします場合にも「公安委員会意見を聞いて、任免する。」公安委員会意見を聞くということが書いてあるのでありますから、意見を聞きつぱなしかというと、意見を聞く以上はその納得を得た上でやらなければ、国の警察行政は行い得ないと思います。従いまして、御意見ようなことはないと考えております。さらに選挙取締り等について一本の警察行政が全国的に関与して行くというおそれはないかということでございますが、この国家警察本部の行つておりまする訓令とか、指示とか、訓示とかいうものは、いずれも行政管理に属するものでございまして、第五条の運営管理の具体的事項に属するものではないのでございます。これらは行政管理事項としての警察職員に対する教養や職務を行うにあたつて法令解釈や基準並びに留意事項を示すにとどまつておるのでありまして、こういうふうな解釈で行われるのが、妥当ではないか、こういう基準にのつとつてやるべきであろう、こういうことでございます。従つて府県国警に対する連絡協調であつて警察法以上に関与するものではないという次第でございます。
  107. 加藤(精)委員長代理(加藤精三)

    ○加藤(精)委員長代理 中井徳次郎君。
  108. 中井(徳)委員(中井徳次郎)

    中井(徳)委員 先ほどから小坂さんのいろいろなお話を伺つておるのでございますが、私どもここ二月ばかり犬養さんの警察行政に関する考え方についていろいろと御質問をいたしまして、実は総括質問については双方へとへとになるほどやりました。大体われわれの感じとしては、七合目まで行つたという気持でおるのでございます。そこで突然あなたがいらつしやつて、非常に御研究なすつておるという先ほどの副総理のお話であります。敬意を表するのでありますが、しかしかわりますと、やはり七合目からひよつとしたら三合目、四合目へ下るのではないかという危惧の念を私は実は持つて伺つてつたのでありますが、今の北山さんの質問に対する御答弁の中に、私はやはりそういう心配が事実になつて来たというふうな感じを持つのでありまして、どうもたとえではありましたけれども公安委員会というもので瀘過をするからよいというふうなことがありました。公安委員会は断じて瀘過機関てはありません。これは警察機関そのものなんであります。こういう公安委員会を瀘過をするというふうなこういう形容でお考えになつておると、この警察法案そのものが私は非常にあなたの解釈とこの法案とはまつたく違うと思うのであります。はしなくもあなたは言葉のうちに出たのでありますが、それは今の内閣の率直な考え方ではなかろうか。その瀘過をやられちや困るのが人事行政であるというふうな考え方である。そこで人事だけは瀘過機関を通さずに行こうというふうな考え方、しかし根本は近代国家における公安委員会というものは、これは警察行政の最高のものなんであります。瀘過機関では断じてありません。そういう点について小坂さんの率直な意見を聞きたいと思います。
  109. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 この瀘過という言葉について非常に御不満の御意見の発表がございましたが、私の申しておりますのは、中央の警察官理機関たる国家公安委員会委員長は国務大臣をもつて充てておるのであります。治安の責任というものは内閣において最終的に持つのでありますが、それなればこそ政党的な支配であるとか、あるいは中央の意見地方まで一本に行われて、そこに独断的な行政が行われるのじやないか、こういう御質問がございましたので、そうではございません、この法案考え方によりますれば、委員長は国務大臣をもつて当てることになつておりますけれども、その意味において国が面接の責任という考え方を出しておるのでございますが、委員長というものは御承知よう会議に際しては表決に加わりません。また国家公表委員会というものは、政治的中立を保つところの合議機関でございまして、これは十分に堅持されておる。従つて政府の治安に対する国家的な考え方も一方においてあるけれども、その考え方の現われて来るのは中正な意見をこして出て来るのであるから、御懸念のようなことはございませんということを申し上げております。
  110. 中井(徳)委員(中井徳次郎)

    中井(徳)委員 そういうようなお気持であるならば、どうして今北山委員から申されましたように、人事権的なものを瀘過されないのかということを伺いたい。
  111. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 この点については、政府が一方的にしない、そして国家的な考え方公安委員会の中正な判断によつて警察行政運営の上に実現されるようにしたい、こういうことであります。
  112. 中井(徳)委員(中井徳次郎)

    中井(徳)委員 小坂さんはどうも過去二箇月の私どもの熱心な質疑応答についてもう一度よく御研究なさる必要があるのではないかと思います。この法案について一番問題になつておりますのは、はたして民主化の促進になつておるかどうか、また先ほどあなたもちよつとおつしやつたが、経済的になつておるかどうか、あるいはまた能率的であるかどうか、能率的と民主主義との関係はどうかというふうな問題でありまして、実は一つとして満足な解決を得ておらぬ。しかし双方の応答の間で、先ほど言いましたように七割まで行つておるとわれわれ感じております。瀘過ということになりますと、流過なんというものは非能率にきまつておるのであります。民主主義の本質にはそういうものはあり得るものではない。この点先般来われわれは公述人の意見も聞きました。そのときに鵜飼東大教授からそういう関連についての説明もあつたわけであります。私どもは、今回のこの政府の案のうちで一番不満なものは、きよう午前中にも質問があつたようでありますが、警察運営の最も背骨であります公安委員会、これは国家、地方両方とも実は素通りである。一応何か文句はつけるようにはなつておるが、その間の濾過の度合いは非常に薄いものであつて、ほとんど瀘過なしに来ておるというところに問題があるのであります。こういう点について、公安委員会性格そのものを、もう少し私どもは研究をしていただきたいと思います。今もまた国警担当大臣は、公安委員会委員長を兼ねて表決には参加しないという御答弁がありましたけれども、それも昨日他の委員から言われましたように、大体委員会委員長は表決には一応は参加しない、しかし同数の場合は可否を決定することになつておる。この国家公安委員会大臣を除いて五名であります。その中で二名は一つの政党に属していいということになります。従つて一名欠席いたしますと二対二になるのでありまして、こういう委員会ですから欠席者が出ることは非常に多いのであります。二対二になつて同数ということになると、すぐに大臣がこれを採決するというふうな面におきましても、不偏不党であるとか、あるいは公正にやるとかいうような面においても、ちやんと逃道がつくつてあるのであります。こういう点が私どもが大いに疑問とし不満といたしておるところでございます。大臣は、昨日の国警担当になりました就任の言葉の中で、場合によつて委員会の修正に応じてもよいというよう意味の表現があつたように、私はけさの新聞で拝見いたしましたが、こういう問題と関連をいたすのでありますけれども、そういう点についてどの程度に考えておられるか。この際率直にひとつ御答弁が願いたいのであります。
  113. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 公安委員会の行う任務につきましては、第五号に明記してありますから、これについて御説明は要しないと思いますが、私どもは、それについて今お話のように非常に経んじておるということは毛頭ないのであります。  次に委員長が採決に加わるという考え方でありますが、これは五名、地方においては三名の奇数委員の構成になつておりますから、採決の場合に委員長がこれを決するというようなことがないのが当然であります。しかし欠席の場合はどうかということでありますが、重要な問題については御出席を願えるものであると考えております。  なお民主主義において瀘過ということがあるかということでありますが、私は、民主主義は灘過すべきものである、あらゆる意見がお互いにかみ合わされてそこに調和が生れて来る、その中に進歩が出て来る、これが民主主義の原則であるというよう考えております。  最後に委員会において修正があつた場合にどうするかということでありますが、これは国会の権能に属する問題でありまして、委員会において修正の御決議があれば、政府はこれに従うことは当然のことであります。
  114. 加藤(精)委員長代理(加藤精三)

    ○加藤(精)委員長代理 大石ヨシエ君。
  115. 大石委員(大石ヨシエ)

    ○大石委員 小坂さんにちよつとお尋ねいたします。今回のこの警察法案について最も重大な点は府県単位でございます。この府県単位というものは、国警であるか、それとも自治体警察であるのか。これは中間的な存在である。男子であるか女子であるか、これはどういう性質を持つておるものであるか。たとえて言うと、吉川さんは保安隊は軍隊でないとおつしやるが、われわれはこれを軍隊と称する。それと同じようなものであつて、これは中間的存在であるといつて斎藤さんにお尋ねいたしましたら、斎藤さんいわく、女子でもあるし、男でもある。しからば一体どちらであるかと言つたら、少少男子であつてそうしてまあ女子の性格も持つている、こういうふうな御答弁を得ました。これが国警であるか、自治体警察であるか、この根本の問題がわからないと、これを慎重審議することができないのであります。これははたして自治体警察であるか。それならそのようにわれわれは審議するし、これが国警であるならば、国警よう審議いたします。それできのうこれはちようど私のような中性であるのか、(笑声)一体それはどういうふうな性格であるかということを齋藤さんに再び質問したような次第でございますが、賢明なる小坂さんに、これは国警であるか、自治体警察であるか、この点再度お聞きまして、われわれは慎重審議をしたいと思います。切に御答弁をお願いします。
  116. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。府県警察が、地方公共団体たる府原の機関として置かれる警察で、あつて府県自治体警察であるということにはかわりはないと考えております。現行のように、国警、市町村自警の二本建の警察ではないので、特に自治体の名を冠する必要を認めませんので、府県警察、こう申しております。先ほども質疑応答の中にございましたように、自治体警察であるが、国の団体委任事務を扱うものである、こういうことでございます。ただいま女であるか男であるかがわからぬければ審議しくいというお話でございましたが、これは違う例でお考えになつていただいたらどうかと思うのであります。たとえば鐘をつくわけでございます。鐘が鳴るのか撞木がなるのか、どつちが鳴るのかわからなければ審議できぬというのでありまして、要するによい音が出ればその目的は達するわけであります。この警察制度も鐘か撞木かとお考えにならないで、要するに民衆に愛されしかも能率のよい警察制度ができることを中心に御審議を煩わしたいと考えております。
  117. 大石委員(大石ヨシエ)

    ○大石委員 法案を読みますと、どうも私たちはこれは国警一本であると思うのです。たとえて言うたら国家公安委員会委員長に国務大臣がなつておる。中央の警察長官及び都の警視総監は、これは総理大臣が国家公安委員会意見を聞いて任免できる、こういうことになつておる。それでこれは総理大臣がすべての権限を持つていらつしやいます。これではファッシヨになる。そうすると私たち社会党左派も右派も、この法案通りますと、斎藤さんのところへみなくくられて行くこういうよう法案通りましては元の警察国家になる。これを私は非常に心配しておるような次第でございますが、この点小坂さんは、まあ一夜づけの警察担当の方ですからあまり御存じないと思うのですが、これは一体どうなるか。  それからもう一つ。あなたは今回この警察担当大臣におなりになりまして、もしこの警察法案審議未了に終つたとき、参議院で握りつぶされた、大幅に修正されとそのとき、あなたはそういうふうな態度をおとりになりますか。おやめになりますか。さてどういうふうな態度をおとりになるかそれをお聞きしたい。
  118. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 この新警察法によりまして、総理大臣がファション的な権力を振う余地が、かりにたとえて言いますと大石さん方がお困りになるということでございますが、私どもとすれば逆の場合もあつのでありまして、私どもが困ることもこれまた困るのです。そういうような独善的の運営をなされないためにはどうすればいいかということで、この警察制度は中立的な地位を保たなければならぬ。しかも良識ある運営がなされなければならぬ、こういうことで、公安委員会制度の活用ということが表面に大きく出て来ているわけであります。  次に、握りつぶされたりあるいは大幅修正された場合にどうなるか、こういうことでございますが、私どもとしては原案を十分御審議の上、一日も早く御可決をいただきたいとひたすらこいねがい、またそのように私ども職務の範囲内において努力をいたすわけでございますが、どうぞそういうふうにお願いしたいと考えております。できなかつた場合にどうするということは、これはそういう仮定の上に立つての御答弁は差控えさせていただきたいと思います。
  119. 加藤(精)委員長代理(加藤精三)

    ○加藤(精)委員長代理 大石委員に申し上げますが、海上保安庁より朝田総務部長、抄本警備救難部長が大石委員の要求に応じて出席いたしておりますのでお知らせ申し上げます。
  120. 大石委員(大石ヨシエ)

    ○大石委員 そこで小坂さんにお聞きしたいのですが、水上警察海上保安庁それから鉄道公安官、こういうものは同じような権限を持つていてダブるのです。水上警察海上保安庁と同じよう仕事をしておる。そして鉄道の公安官というものも同じよう仕事をしておる。片方の鉄道の公安官は運輸省である。これらをこのままにしておおきなさいますか。これは将来――将来でない、ただいまです。これがダブつていて非常に多数の者が困つております。たとえて言うと、水上警察署へ連れて行かれる、また海上保安本部へ連れて行かれて調べられる。これは一体どういうふうにしたらよろしいのでしようか。まず小坂さんの御説明を聞いて、海上保安庁の人の意見はあとで聞いてます。
  121. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 御指摘のような二重構造ということのために、お互いに一般国民が非常に不利不便を感じておるということであるといたしますならば、これは重大な問題でございます。そういうことのないようにしたいとまず第一に考えるのであります。さしあたりましては両者の連絡を緊密にする、こういうことであろうと存じますが、なおその他の点につきましては十分調査もいたしてみ、研究もしてみたいと考えております。
  122. 大石委員(大石ヨシエ)

    ○大石委員 海上保宏庁のお方にお聞きしたいのですが、海上保宏庁というものは海上における逮捕権をお持ちでございましようか、海上保安庁は海上警備に関し水上警察と重複する、この点に対してあなたはどういうふうにお考えになつておりますか、それをお聞かせ願いたい。
  123. 砂本説明員(砂本周一)

    ○砂本説明員 海上保安庁は、御承知よう海上保安庁法によりまして、海上における犯罪の予防、鎮圧、犯人の捜査及び逮捕、こういうことができることになつておりますので、先ほど御質問の逮捕はできるのでございます。それに関連いたしまして、国家警察または自治体との関係でございますが、これはやはり御質問ように非常に密接な関係がありまして、十分に両名の関係を密にいたしまして、無用の御迷惑をかけないように常時私どもは最善の努力をいたしておりす。海上保支庁があります限り、どこかで接触面は生ずるのでございまして、現在の法規関係におきまして、私どもはその運用に最善を尽すならば、無用の御迷惑は十分避け得る、こういうふうに考える次第でございます。
  124. 大石委員(大石ヨシエ)

    ○大石委員 私の知つておる範囲では、禁止区域に入る、そうするとあなたの方もその漁船を取調べる。またこつちの水上警察も取調べる。そうすると大衆は水上警察へも行つて調べられる。あなたの方へも行つて調べられる。これは非常に困つております。小坂さん、これは一体どういうふうにあなたはお考えになりますか。これは時間の点から、すべての点において重複いたしますので、非常に大衆が困つておる。この大衆の声を聞くこと、これすなわちわれわれの職務でございます。これをどういうふうにしてくださいますか。漁師が困つております。これを国警なら国警、海上保安本部なら保安本部、どつちか一つにしませんと。大衆は困ります。これはあなたはどういうふうにお考えになつておりますか。ここで私は、この警察法改正する前に、ひとつ聞いておきたいと思います。
  125. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 政府というものは国民のためにあるのでありまして、国民に迷惑がかかるようなことがあるとすれば、それをできるだけ避けねばならぬことは当然であります。同じ時刻に二つの方面から出て、同一の取調べをやるということは、あつてはならぬことだと思いますが、よく実情を調べてみまして、迷惑のかからぬような適当な処置を研究したいと考えております。
  126. 大石委員(大石ヨシエ)

    ○大石委員 実はこれは砂本さんもよく御承知でしようが、これはダブるのです。非常に大衆は困つております。実情を調べるまでもないことであります。これは保安庁にするとか、国警にするとか、どつちか一つにしませんと困ります。今回はこれは慎重審議でなくして、さつそく調べて、この警察法の中へ入れてほしいと思います。どうですか、小坂さん。横見をせぬで聞いてください。どつちか一つにしませんと、みなが困るのです。これは非常に困つておる。困つておることをそのままにしておいてはいけません。これは一つにせぬといかぬ。水上警察でちよつと来いと言われる。海上保安本部でちよつと来いと言う。密輸入でも水上警察で調べるが、海上保安本部でまた調べる。これは一体どうしたらよいか、みな迷つております。これは一体どうしたらいいのですか、教えていただきたい。
  127. 加藤(精)委員長代理(加藤精三)

    ○加藤(精)委員長代理 大石委員に申し上げますが、非常に政府当局も大石委員のお説に賛同しているようでございますし、善処を誓つておりますし、何とかこの辺で、非常に質問者が多いのでございますから……。
  128. 大石委員(大石ヨシエ)

    ○大石委員 簡単に、善処なんていうようなことを……。
  129. 加藤(精)委員長代理(加藤精三)

    ○加藤(精)委員長代理 それは私が言つたのであります。
  130. 大石委員(大石ヨシエ)

    ○大石委員 これをどつちにするか。はつきり言つてください。
  131. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 水上警察と海上保安本部とはおのずから職能が異なるのであります。従つて対象というものも、またその場合々々というものも、異なる場合があるのじやないかと思うのでありますが、要するに両者の間の連絡を密にいたしまして、そういうことが重複しないようにするということは必要であろうかと思うのであります。具体的な事例についてはまた伺いまして、重複している事実があるとすれば、そういうことのないよう考えたいと思います。
  132. 大石委員(大石ヨシエ)

    ○大石委員 鉄道公安官のことは、これはどうなるのですか。国警ですか、自警ですか。これはどうなるのですか。これをはつきり言うてちようだい。ごまかしたつてだめですよ。
  133. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 鉄道公安官は国鉄関係の所管になつておるのでございまして、この公安官の制度は、まず鉄道の区域内における自衛、こういうこういうことが主になつて設けられたのであります。これにつきまして大石委員ように、そういう制定はかえつてぐあいが悪いじやないかという御意見もございますが、今日の運用の状況におきましては、さして悪いような運用状況警察と公安官の間にはないと考えておるのでございます。しかし大石委員ような御意見もございますのでこれは政府といたしましては、今後の研究問題にいたしたい、かよう考えておるのでございます。
  134. 加藤(精)委員長代理(加藤精三)

    ○加藤(精)委員長代理 横路節雄君。
  135. 横路委員(横路節雄)

    ○横路委員 小坂国務大臣にお尋ねいたしますが、先ほど北山委員からも質問がありましたが、いわゆる警察政治的中立に関してであります。この点につきましては、前の警察法と今度の警察法との違いは、今度の警察法案の中には第三条に「不偏不党且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行うものとする。」こうあります。前の警察法にはこれがないのであります。なぜ前の警察法にないかといえば、前の警察法は明らかにそのときの政治権力から独立をしておるわけであります。斎藤国警長官ように、国家公安、委員会が任命するわけであります。それぞれの自治体における公安委員会がそれぞれ任命するわけでありますから、従つて前の警察は明らかに政浩的の中立が確保されておる。ところが今度は政治的な中立が確保されることがだんだん稀薄になつて来たので、そこで第三条にこういうことをうたつておる。従つて政治的中立の確保ということに関しては、現行警察法の方が政治的中立が確保されておるのであつて、今度の改正警察法案では現行の警察法よりは、政治的中立確保に関しては私は非常に稀薄になつておると思うのでありますが、組織運営その他から考えまして、この点はどうでしようか。
  136. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 御指摘のように、現在の警察法はそういうものはありません。前国会が解散になりましたために不成立に終りましたが、その際提案したものと今回のものとには入つております。なぜ入れたか、これは特に警察官の心構えといたしましても、警察の中立性を保つという点にあとう限りの配慮をしたという心構えの問題でございまして、他意はないのであります。
  137. 横路委員(横路節雄)

    ○横路委員 そういう心構えで政治的中立が確保されるものであるならば、政府がみずからお出しになつた義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案などというものは、お出しにならなくてもよいわけです。これはぜひ国務大臣に聞いておきたいのでありますが、この義務教育諸学校における教育の政治的中立確保と、それから警察政治的中立確保とは、今までは非常に似ておつたわけです。なぜ似ておつたかというと、教育は時の政治権力の支配に屈してはならないというので、都道府県の教育委員会、市町村の教育委員会、こうなつてつた。それぞれ任命権者は都道府県の教育委員会であり、市町村の教育委員会であつて、そのときの政治権力から離れておつた。それでもなお足らないといつて、今度はいわゆる義務教育における政治教育に関して、政治的に中立が確保されない場合においては、懲役一年以下に処するとまできめて、こういう苛酷な法律をつくつた。そこで警察に関しては、これは現行の警察法においては、一応国家公宏一委員会の任命によるいわゆる国家地方警察の職員並びに地方自治体の公安委員会によつて任命された地方自治体の警察職員という点で、そのときの政治権力と切り離されておればこそ、初めて警察政治的中立が確保される。これはまつたく逆ではございませんか。いわゆる教育に関するところの中立確保というものと、これとはまつたく逆で、そういう意味では、私は警察職員に関するところの政治的中立というものは、現行法よりは退歩だと思うのです。心配でたまらないから、第三条にわざわざこれを規定しているのであつて、現行の警察法には、いわゆる任免権者がそのときの政治権力とは関係ないから、わざわざ第三条のように規定しなくてもいい。私はだから退歩だと思う。退歩でなしに、政治的中立はもつときびしく確保されているのだということが、どこで明確になつておりましようか。これは斎藤さんでもいいです。斎藤さん、現行の警察法よりは、政治的中立がより確保されているということが、どこで言えましようか。その点ひとつお伺いいたします。
  138. 斎藤(昇)政府委員(斎藤昇)

    斎藤(昇)政府委員 現行の警察制度よりも、今度の方がなお政治的中立性が確保されているかどうかというお尋ねでございますが、私は少くとも現在中立性が確保されておりますると同様に、今度の制度においても確保されていると考えるのでございます。現在の自治体警察の面におきましては、当該自治体の面においてのみ確保という形をとつておるのでございますが、今度の制度によりますると、府県警察というものは、府県公安委員会、それから中央の公安委員会、両方の監督、監視あるいはチェツクというものがあるわけであります。さような点状から申しますと、あるいは今度の警察法の方が、よけい中央、地方両方の政治的中立性の確保ができておるのじやないか、かよう考えてさしつかえない、こう思うのでございます。
  139. 横路委員(横路節雄)

    ○横路委員 小坂さんにお尋ねしますが、この点は去る四月十三日に、吉田総理がわざわざ国会へ出ておいでになりまして、実はこの間改進党の中曽根君から、大野国務大臣と石井運輸大臣が、名村造船の被疑者の供述によれば、百万ずつもらつたじやないか、こういうことで非常に国会で問題になりまして、懲罰委員会に付すべく出したところが、自由党の動議でこれを下げたわけです。この点に関して質問が行われましたときに、大野国務大臣と石井運輸大臣はこう言つておるのです。国務大臣、運輸大臣としては、これに対しては当然了承できない。それは私は当然だと思う。満座の中で、お前百万円の賄賂をもらつたじやないかと言われたのですから、絶対了承できないのだけれども、自由党が取下げときめたものですから、やむを得ずこれに同意せざるを得ません。党というものがまず第一義的なんです。なおこの点につきましては、二月の二十六日に、吉田総理大臣は同様国会におきまして、党と政府とは一心同体だ、こう言つておる。そこでこの前の犬養法務大臣のこの警察法改正法案の提案説明の中にも、何を一つ明確にうたつているかというと、政府の治安の責任をより明確にしたのであるということなんです。政府の治安の責任を明確にしたのであるということは、警察長官の首を政府か切ることであり、都道府県警察本部長の首を政府が切ることであり、その警察長官の命を受けた都道府県警察本部長が、それぞれいわゆる意に反して行つた行動に関して首を切ることができる。これはこの警察法の中で、政府が治安について責任をとれることになる。いわゆる任免権を持つことができたから、初めて治安の責任をとれる。そうすると、そのときの政府考え方によつて、意に反したものは首を切ることができるのです。この点は、一番政治的な中立が確保できないところなんです。この点は斎藤国警長官の今の御答弁を聞いていても、それはてんでわからないですよ。現行法では明確に政治的な中立が確保されているのであつて、今度の改正法案の中で、前よりもより以上政治的な中立が確保できるなどということは、それは一体条文のどこにもないではございませんか。  もう一つ、小坂さんは条文をごらんにならなかつたのじやないかと思うのですが、先ほどのお話で、大臣であるところの国家公安委員長は採決に加わらないから、政治的な中立あるいは政治的な調整をとることができると言いますが、それはまつたくうそなんで、第十一条の第二項に「国家公安委員会の議事は、出席委員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。」と改正法案に書いてある。私は小坂さんが見落されておると思う。従つて犬養法務大臣の提案説明の中にあるように、いわゆる国務大臣たる国家公安委員長が採決に加わらないから、政治的な中立が確保できるなどということは、これは一体どこを押せばこの改正法案の条文から照らして、そう言うことができるのか、この点は私はまつたくどうもふに落ちないのであります。そういう意味では、政府の治安責任については、なるほど任免権を持つたのですから、前よりもとれるでしよう。しかしそのことは同時に、政治的中立確保は私はまつたくないと率直に言つた方がいい。かりにあるとしても、非常に後退したものである。それなればこそ心配だから、第三条に宣誓させるなどということを載つけた。現行警察法にはそういうものはない。ですからそういう意味では、先ほどの中井さんの質問にしても、北山さんの質問にしても大臣にいたしましても、またおそばについておる斎藤さんも同様に、国家公安委員長が採決に加わらないことで、政治的中立が確保できるとおつしやつて事おるけれども、私ははなはだ遺憾にたえない。これは会議録を読んだ中にも、出された提案理由説明の中にも、法案の中にもずつとある。義務教育諸学校に関する政治的中立性については、都道府県の教育委員会が任免権者であり、市町村の教育委員会が任免権者であるが、それでもなお足らないで、政治的中立性を犯した者については懲役一年以下に処するとまでだんだんこまかくきめておる。だから私は問題は、宣誓とかなんとかではなしに、組織であり、同時に任免権者が時の権力者から画然と独立していなければ、政治的中立は確保できないと思う。この点その任免権者が政府であるにかかわらず、一体どこに政治的な中立が確保できるというのでしようか。私は何としても納得できないので、ひとつわれわれの納得の行くよう説明をしてもらいたい。
  140. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 私は先ほど政治的中立に関連いたしまして、国務大臣が採決に加わらない云々と申しましたが、これは二月にこの法案が提案せられましたときに、提案理由の中で御説明申し上げておるのであります。その点については御了承を得ておつたことと考えておつたのであります。  要するにこれは先ほども申し上げたように、委員が奇数構成になつておりまして、こういう重大なる委員会に欠席をするということは、委員の職責上ないことであるというふうに考えております。奇数構成でありまするから、委員長採決の場合は実際はあり得ないのだ、こういうよう考えておるのであります。しかもお互い国会議員中――あるいは国会議員外から選ばれる場合もありますが、とにかく政党内閣でございますので、国会議員から選ばれる場合の方が多いと思いますが、国会議員の良識をもつていたしまして、そうしたへんぱな扱いというものはなされない、こういうふうに扱い上の問題として、良識に立脚いたしまして、私はさようなことはないと考えております。しかもなおそういう場合があるといけないというので特に第三条におきまして不偏不党かつ公平にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行うということまで書いておるのでございます。大体治安の最終責任というものは政府が負うのでございます。その明確化はどうしても必要であると同時に中立ということも必要である。こういう趣旨でできておるのでございますので御了承を願いたいと思います。
  141. 横路委員(横路節雄)

    ○横路委員 小坂さんは新たに警察担当大臣になられたのですから、第十一条の第一項と第三項は、それでは修正してお出しになつたらいいのじやないか。なぜならば第十一条の第一項には国家公安委員会会は、委員長が招集する。国家公安委員会は、委員長及び三人以上の委員の出席がなければ会議を開いて議決することはできないのですから、四人出席すればできるのです。四人ということになれば二対二でしかも犬養大臣説明を読んでみると実にうまいことをいつている。ほんとうはこれは完全に議決権を持たせないつもりであつたが、可否同数になつたときに委員長が議決に加わらないとそれは流れてしまうので、流産してしまうということもうまくないので、委員長に議決権を持たせた。これは当然なんです。だから今の小坂さんのお話であれば、第十一条の一項と二項を訂正なさつて、国家公安委員長は一切の議決権を有しない。国家公安委員会会議は全員出席をしなければ開けない、こういうようにしておかなければ「可否同数のときは、委員長の決するとこるによる。」とまできめておいて、どうしてそういうような提案説明をなさるのか。これはあまりにも牽強附会で私はこれ以上追究はしませんが、同じことを繰返されるのであればお直しになつたらいいですよ。まだ逐条審議に入つておりませんから。  それからもう一つは、小坂国務大臣に私は申し上げておきますが、一体教育に関してこれほど政治的な中立を確保するために都道府県の教育委員会なり、市町村の教育委員会に任免権を持たせて、それでもなお足りず懲役一年間に処するとまできめて、明らかに教育は不当な政治的な支配に屈服してはならないというので、教育委員会があると同じように、警察に関しても同じく公安委員会が存置しているのも、警察は時の不当な政治権力の支配に秘してはならないという、この点だけは何としても――政府与党だけはこれで政治的中立が確保できるとお思いになつておるか知りませんが、改進党をひつくるめまして野党は全部、これでは警察政治的な中立は確保できないと思う。小坂さんは訂正なさいますか。第十一条の第二項と第二項は、機会がございますから、何でしたら訂正なさるのであれば訂正なさつた方が私はいいと思います。
  142. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 法案といたしまして書きますのは、なるほどこの通りなんであります。しかし平常の場合これで議事も円滑に進行いたしますが、一朝今御心配のような非常に重大な事案になりました場合には、委員長が採決する場合も法文の体裁からすれば、そう出て来るのじやないかという御疑念でございますが、そういう場合は国家公安委員の重大な職責上当然に出席するものである。これは当然であると思うのであります。従いましてこの書き方で私どもの御説明の意は十分お汲みとり願えると思うのであります。ことに国会審議の議事録、これは重大なるものでございますから、私どもはつきりそう言明いたしておりますので御了承いただきたいと思うのであります。教育委員会の中立の問題にお触れになりましたが、ただいま御審議をいただいておりますのは、義務教育でございます。義務教育の政治的中立性の必要は、もう私から申し上げるまでもなく御理解をいただいておるところだろうと思うのであります。
  143. 横路委員(横路節雄)

    ○横路委員 これは答弁はいりませんが、小坂さんがそういうように言われるのなら私も言いたい。義務教育諸学校における政治的中立は、自分が言うまでもなく皆さん御了解だろうと言われますが、義務教育諸学校における政治的中立は私は認めます。しかしそれよりももつと恐しいのは警察である。極端に言えば警察は権力を持つておりますから、われわれの逮捕できれば、家宅捜索もできる。あるいはその他何でもできる。従つて何でもできる。従つて義務教育諸学校における政治的中立と同時に、警察はより以上に政治的に中立でなければならない。この点は小坂さんの言うところの義務教育の政治的中立は認めますけれども、私ども警察政治的中立は、これでは絶対に確保されないのだということを申し上げておくし、政府与党の方も何とかひとつ考慮していただきたいものだということを申し上げて、これでやめます。
  144. 加藤(精)委員長代理(加藤精三)

    ○加藤(精)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後五時七分散会