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小坂国務大臣 経済的な基盤と、
国民の現状ということについての御
質問でございましたが、なるほど私も労働省を
担当しておりまして、現在勤労者諸君の生活が十全であるとは
考えていない。できるだけこれをよくしたい、こういう立場で
考えております。しかし実態的には一体どうな
つておるかということを少し調べてみたのでありますが、日本の勤労所得者の給与は、今申し上げた
ように十全ではないのであります。
国民所得もまた十全でない。問題は諸外国との比例を見なければならぬと思いますが、日本で勤労所得、いわゆる雇用
関係にある、賃金俸給によ
つて所得している者は約三八%、この
国民所得の中において占める割合は、昨年の暮れには全体の四八・二%にな
つておる。これは戦前は三八%であ
つたもので、これをイギリスあるいはアメリカと比較してみますと、イギリスの場合は全体の九二%が勤労所得によ
つて生活をしておる。これが全体の四七%を占めております。アメリカでは八一%でございますが、これが全体の四六%を占めております。ですから
国民所得の面において勤労者の占める所得の割合というものはイギリスでは四七であり、アメリカでは四六であるとい
つても、勤労者の数がまた違うのでありまして、イギリスは九二であり、アメリカは八一であり、日本は三八なんです。ですから
国民所得の中において占める割合というものを比較してみますと、日本の勤労者の所得というものはその比較限度においては非常に大きい、そういうことが言えるのであります。これは組合の諸君にも話をして、そういうことだからやはりほんとうに生活を豊かに享受し
ようと思うなら生産を拡大して行かなければいかぬのじやないか、生産的な基盤がないときに分配の問題だけで争
つてもだめじやないかということを言
つておるのでありますが、これに対して反論があるのでありまして、それは今お話の
ように社会保障あるいは税金、そうしたものの割りもどしも
考えてみなければ比較にならぬではないかというので、それはごもつともな御
意見でありますから、それらを比較勘案いたしまして、勤労所得とそれから社会労働保険、勤労所得税、
地方税の住民税、これを比較してみたのであります。これで、税金だけをまず申し上げますと、イギリスの場合は税金が中央
地方の今の税種のもので見ますと三九%にな
つております。日本が二一%、ドイツ、フランスなどでは
地方税を抜いて見まして、二二%とか二三%とかいうことで、フランスや、ドイツよりも日本の勤労者
関係の税は、国税
地方税を冷せたものよりも少いのであります。ですから、その割りもどしを
考えてみますと、やはりさきに御紹介をしたと同じ
ような
結論が出るのでありまして、やはりどうもこの際日本全体の経済基盤というものをもう少し拡大しなければならぬ、それには貿易を振興したり、産業の振興をする、そしてこの生産拡大の方向に労働運動というものは向うべきである、ぜひそういう
ように
協力してもらいたい、まあそういうことを言うたわけであるが、その
ような
考え方で私
どもは
考えておるのでございます。労働運動の面におきましても、今お話のございましたイギリスなどでは御
承知のTUCがありますが、これは労働組合運動というものは政党の支配を受けない、ま
つたく別のものでなければいかぬという
考えで、ほんとうに経済問題に専念しておるというのであります。西ドイツ等においても協同経営組織法というものがありますけれ
ども、いずれにしましても労働組合というものは政党的なものであ
つてはならぬ、労働組合運動というものは革命という
ようなそうした方向をとるべきではないということを言
つておるのであります。日本の場合そういう懸念が非常にあるということが言われるけれ
ども、私はもう労働組合というものと政党というものはま
つたく別なので、労働組合というのは労働者の経済的な地位の向上ということに専念すべきなのだ、こういうことを申しております。でございますから、今お話の
ような何か非常に経済的な労働組合運動というものが
一つの社会的なものに行くということは、本来とるべきことではないのでありまして、またそれが根本とな
つて政治がどうなるという
ような
考え方も私はとり得ないというふうに思うのでございます。ただいま田中内閣当時どうしたという
ようなお話もございましたが、私
ども決してそういう弾圧一本で行くということも
考えておりませんし、大体憲法からして違
つておるのです。民主的憲法のもとにおいて、
国民の民主的な基本的な権利の暢達をはかるということは、私
どもの施設の根本に置いておるつもりでございます。御
審議をいただいております
警察法につきましても同様でございまして、従来種々しばしばの機会において申し上げておると存じますが、
警察を民主的に
運営する、
国民に親しまれるものにする、同時に非
能率不経済な面というものはできるだけためて、この
調和をはか
つて行くすなわちこれは県単位の民主的な
警察にする、こういう
趣旨でございます。