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犬養国務大臣 お答えを申し上げます。まず
最初に申し上げたいことは、
現行法は
占領政策の一環としてできたものであることは御
承知の
通りでございますが、なかなかいいところがございます。つまり
警官が
国民と親しみやすくなる。
警官が町の子供と笑
つてちよいちよい雑談するというようなことは前にありませんでしたが、今ごろはあります。そういう意味で今の
警察法はなかなかいい功績を残していると思いますが、他面においていろいろな点で、これは
あとからまた御
質問に応じて申し上げたいと思いますが、今の
日本の
状態に適しないところがあると
考えまして、本
会議で申し上げましたような
諸点の
改正を行おうとして、御
審議を願
つているわけでございます。そこで
橋本さんの御心配もごもつともな点があると思います。つまりこういう
根本的改正というものは、すぐ国の
状態が変化したからやるということではいけない、しばらく長い
ものさしで
情勢を見て、いよいよいけないというときにやらないと行過ぎが起る、私はま
つたくそう思うのでございます。
従つて過去六年ばかりの実績を見て、大体ものの変化というものは五、六年が
一つの
ものさしになると思うのでありますが、どうも
改正した方がよいと
考えまして、昨年来私の
責任において
警察法の
改正を上程して御
審議を願
つているわけでございます。そこである一時的な
情勢で、急に
警察組織をかえてはいけないという
お話でございましたが、その
通りでございます。
警察法改正の
理由はたくさんございますが、
一つは同時に数箇所において起る大規模な
騒擾事件に備えるということも
理由の
一つでございます。それは決して一時的な
世界情勢でなく、よく
新聞や雑誌の論文でもお互いに
承知いたしておりますように、長きにわたる冷戦、長きにわたる地下運動的な
暴力主義的破壊運動、これに対処しておかなければならないと
考えまして、
改正の方式をその方にも備えたわけでございます。それから
中央集権的でまるで
戦争前の世界無比に完備した
警察とよく似ているではないかという
お話でございますが、私はそう思
つておりません。
戦争前の
内務大臣や
警保局長には民間から選ばれた現在の
国家公安委員会のようなものはできておりません。御
承知のように
国家公安委員会は親しみやすい
警察庁長官の
相談相手ともなりますが、ときには非常にけむたい
監視役にもなるのでございます。名前をあげて失礼ではありますが、現在
国家公安委員会の中に社会党の
金正米吉さんという方がおられます。総同盟の会長もされて非常に
りつぱな方であります。
警察に関しても公正な抽象的でない非常によい
議論をなさ
つて、私は心から尊敬をしております。ああいう方が
国家公安委員会の中におられることを切望しているくらいであります。ところがああいう筋骨の
通つた方は、いやしくも
警察国家に
政府及び
中央警察の方向が向おうとしたら、全生命をあげて闘われると思います。そのように
国家公安委員会というものはなかなかけむたいのでありまして、私は逆に今後の
警察庁長官や
地方の
警察本部長というものは、よほど人間的に練れた者でなければ、ただ
警察知識を持
つているたけでは勤まらない、こう
考えているのでございます。また
地方におきましても申し上げましたように
地方の
都道府県公安委員会というものがございまして、そうして目を光らせている。
警察本部長は
権力があるようでございますが、他県に乗り込んだ
他郷者にすぎません。こういうものがその県のあるいは府の何といいますか、
愛郷心に満ちたそこの民衆とうまを合せるには、よほど我を
折つて、円満な話をしなければ毎日勤まらない。また御
承知のように
国家公安委員も他方の
公安委員も、その
警察長官や
警察本部長が気に入らなければ、非行がある、不適当と認めれば、
懲戒、
罷免の
勧告権を持つことができるのでございます。これに対してそれが
懲戒、
罷免の勧めをしたら自動的に受取るのでなければ、安心できないじやないかという御
議論もありますが、私はそう思
つておりません。なぜとなれば、
懲戒、
罷免の
勧告を受けた
警察隊長というものは、もうま
つたく
新聞にも批評が出ますし、
輿論というものに押されてやりにくくなる。そこに私はやはり
民主主義の
輿論による制約というものがあるのではないかと思う。私が本
会議でいろいろ御
質問を受けました
質問者と私自身との意見の
相違は、そういうときに
最後の行司になり、審判官になるのは
輿論である。どんな強力な
政府もこの
輿論にはやはり一目置かなければならぬ。その
輿論の作用と力というものを信じて、
公安委員会制度をして
警察にと
つて煙たい存在にいたしたわけでございまして、こういうふうにやりにくいチエツクをする
機関がありますから、私は
戦争前の
橋本さんがいろいろ御苦労になりました
時代の
警察とは大分違う、こういうふうに
考えておる次第でございます。