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北山委員 昨日
二重橋事件の
現場を
実地に視察いたしました結果の
所見を申し上げまして、
関係の
方々からこれに対する御
意見を伺いたいと思います。
こまかい点は除きまして、ごく大ざっぱに申し上げますと、やはりあの
正月の
一般参賀の
受入れ計画というものに、相当不十分な点があ
つたのではないか、こういうことが
検証の結果判断されるのであります。それは、
参賀を受ければ相当多数の
参賀者が来るということは、昨年の例から見ましても予想されることである。しかるにあの中には幾多のあぶない
場所があるわけであります。
一つは
鉄橋の腐朽した
部分であります。
鉄橋の
鉄柵が腐
つておるあぶない
場所であるために、幅員が十二メートルであるものを真中の
部分六メートルくらいしか通行に
使つてない。
従つてそこで
行列がせかれる。しかもその
手前に
記帳所を設けましたために、ますます
鉄橋の
手前に群集がたまるというような
事態が起きたのではないか。
実地に見ましてもさような説明でございます。それから
宮内庁の前の
広場、これを実際に見ますと、あそこの
場所が、たくさんの
群衆を集めて
陛下が出御をされる
場所としては、どうも適当ではないのじやないか。というのは、
地形が非常に複雑をいたしておりまして、多数の
群衆を整理するのに非常に困難をきわめるであろうということ、それから
広場に入る
手前が下り坂にな
つてお
つて、そこにもしたくさんの人が押しかけたならば、あそこでも
事故が起る危険がある
場所である。それから、
宮内庁本庁の前に丸池という池がありますが、その池の水の深さは五尺ないし八尺であ
つて、そこに落ちる危険がある。それから、その
ほりに沿うた方の土手にすぐ登れるようにな
つておりますが、それに多数の者が登りますと、
うしろの
ほりに落ちてしまう危険がある。その間百メートルの幅があるわけであります。そのような非常に
地形の悪い
場所で、多数の
群衆にああいうふうな
行事をされるということは、それ自体非常にその
場所があぶない
場所じやないかということ、そしてまた
現地を見ましても、昨年も相当あの
場所が
混雑をしているということが言われましたし、また
警備計画にもその
場所における
混雑を予想して、そして警官の多数の者を主としてあそこの
場所に配置をしておるわけであります。
従つてこの状況全体を見ますると、もしもあの
参賀者の
行列が
石橋及び
鉄橋をずらずらと多勢の
人たちが、あのままどしどし通
つて行くとした場合に、おそらく
宮内庁前の
広場で、あるいは
事故が発生したかもしらぬと予想されるわけであります。幸か不幸か、
鉄橋のところでせきとめられたために、むしろ
宮内庁前の
広場の方には
事故が起らなか
つた。そしてそのしわ寄せが、結局
石橋の一番
手前の入口に起
つたと推測されるわけであります。
従つてこのようないろいろの危険な
場所がございますまま、予想される多数の
参賀者を受入れる
準備を十分やらないでやるところに、一番の問題があるのじやないか。そのような
設備状態にしておいて、あとは
警察の取締りというだけでは、やはり
警察の方としても
警備上の負担が非常に重くな
つて、これはむしろ気の毒だとも考えられるわけであります。
宮内庁といいますか、その
行事計画をなさる担当の
方々としては、そういう点においてやはり
計画に不十分な点があ
つたのじやないか、それが
原因の
一つじやないかと思うのです。それから
警備の方から言いますと、昨日も指摘されました
通りに、警護、
護衛、
警備計画というものは、やはり全体を通じてみますと、
陛下の
護衛という
趣旨が強いのであります。そして
参賀者の
混雑を整理するという面は、どうも第二次的に考えられておるのじやないか、そういうふうな
計画に基いたこの
警備であります。
従つて広場との
関係、要するに
皇居外との
関係において、
国警と
警視庁との
事前の
打合せが不十分であ
つた。両者が一緒に集ま
つて十分に
検討すべきものを、単に書類を一方的に
皇宮警察の方から
丸の内署に出して、それで済ましてお
つたところに、やはり
警備の方に不十分な点があ
つたのじやないか、しかもあの
事態が起
つて参りましてから、すでに十一時半ごろには
相当人が詰めかけて、
鉄橋の前は非常な
混雑であ
つたということは、この
報告書によ
つても想像されるわけでありますが、そのころすぐに非常の
手配をやらないで、実際に
皇宮警察から正式に
丸の内署の方へ
連絡したのは零時四十分、約一時間た
つておる。しかも今度は
丸の内署の方で第一
予備隊第一中隊を、実際に
応援出動の
手配をしたのは一時五十五分で、それからまた一時間くらいた
つている。もちろんこの中間に
参賀に来た第六
予備隊三十九名の者を投入して一時、間に合せておりますけれ
ども、この
人たち自体がそういう危険が発生しそうだというようなことが、相当前にわか
つておるにかかわらず、早急にその
手配をしなか
つたという点で、この場合の
臨機の
処置というものにも不十分なものがあるのじやないか、こういうふうに考えられるわけであります。もちろん
現地で伺
つた際におきましても、
参賀に来られた
一般の
人たちの
群衆心理といいますか、
やじうま気分というか、
節度を
失つた行為というものが
一つの直接の
原因をなしておることはこれは疑いありませんけれ
ども、しかし今のどこの
行事を見ましても、非常に多数の人が集ま
つた場合には
節度を失いがちである。残念ながら日本人はそういう欠点を持
つておるわけであります。
一般のこういう
行事計画なり、あるいは
警備の
計画をする場合におきましては、そういうこともあわせて
計算に入れてやらなければならぬじやないかというふうに考えられるわけであります。
私としましては、あの
実地検証によ
つて、大
ざつぱに言つて以上のような点を感じたわけでありますが、これが間違いであるかどうか、
国警あるいは
警視庁、
宮内庁の
方々のこれに対する御
意見を承りたい。