○太田
説明員 最初の御
質問の、日米石綿が輸出だけでや
つて行
つた場合にこれを認めるという方向に行くものだろうかどうかということでございますが、実はあの当初の申請の
説明の中には、相当部分を輸出するんだということは書いてあるわけでございます。その後もいろいろ
説明の中間段階におきまして、場合によ
つて海外の輸出は非常に困難であるというふうに心配するなら、向うの親会社でございましたか、ジヨンス・マンビルの方で全部日米石綿の製品を買い取
つてもいいというようなことを漏らしておる、そんな話も聞いてお
つたわけでございます。ただそういう
事態にな
つて参りました場合に、国内への
——輸出を目的とすれば横流れということになりましようが、これを完全に防止する手があるかどうか、また相手方にそうい
つた誠意を期待することができるかどうかという点、それから、はたして目的とするように相当額の輸出、つまりわが国からいえばある
程度の外貨の獲得ということになりますが、これが期待できるかどうかという二点が、やはり問題として残るわけでございます。国内への横流れ防止ということになりますと、
現実に製品を販売していかぬということは、これは現行法としてチエツクする方法がございません。やはります原料として石綿を輸入しなければならない、これの輸入割当の場合に、国内へ出しておるからだめだとい
つてとめる、そういう行政
措置の一点にかか
つて来るのではなかろうかと思うわけであります。
それからもう
一つ間接的に押える方法といたしまして、合弁会社でございますので、向うの持株についての利潤の配当を外国へ送金するということがございますが、それについて、輸出をした場合でなければ向うへ送らせない、こういう条件をつけることも、これは可能でございます。しかしい
ずれにいたしましても、それらの点だけでは完全に活動を防止するというところまでは、あるいは行かないのではないかという懸念は残るかと思います。
それから輸出の見込みの方でございますが、これはいろいろ見方によ
つて違うようでございます。日米石綿社側の
説明では、いろいろこういう方面、こういう方面に期待できるという資料を持
つて参
つておりますし、また反対の
意見を持
つておられる方からは、とても現状では、そうい
つたところへは伸びはしないという
意見で、これまた資料をお持ちにな
つておるわけであります。この辺になりますと、非常に判断がむずかしい問題にな
つて参ります。現に今審議会の方で、各
委員に慎重に御審議を願
つておるという点も、輸出ははたしてどの
程度できるものか、かりに国内をあの手この手で相当押えて、もつぱら輸出の方に向ける、それによ
つて相当かせぐことができるということでなければ、わざわざこうい
つたものをつくるに当らぬじやないかという結論になりますので、その点の慎重な御検討を願
つておるわけでございます。今のようにもつぱら海外へ向うということをいわれて参りました場合におきましても、やはりわれわれとしては、その点を十分についてみなければならない。そう簡単に、こういう
説明があ
つたからということだけで結論を出すことはなかなかできないのではなかろうかと感じております。
それから第二の、これは別個の会社の例でございます。大分いろいろ新聞その他にも出ておりますので、問題を御
承知にな
つておると思いますが、シンガー・、ミシンとわが国のパイン・ミシンとの提携によ
つて、シンガーの販売網を通じまして大いに海外に売り出そうということに趣意書は書いてあります。一応そういう形でなければむろん外資法に基きます申請は受けられないかつこうになるわけであります。これにつきましては、先ほどの日米石綿の場合と
一つ違
つた面があるわけであります。それは、日米石綿の場合には、わが国のこれに代替するような石綿製品は従来ほとんど海外には出ておりません。ところが、ミシンの場合には、わが国のミシンの生産の大部分、八〇%くらいにもなるかと思いますが、これは全部海外に輸出しておりまして、一部はアメリカにも出ております。そういう点、非常に日米石綿の場合と条件が違
つておるように感ぜられるわけであります。これは何分にも、まだ私
どもの方といたしましてもまた通商産業省の方におきましても十分に検討しておりません。と申しますのは、申請が正式に出て参りましたのはつい最近でありまして、まだわれわれの方で
説明を聞いておらない段階でございます。また最終的には、技術の面では通産省の方か、スタックの方でも検討していただくことになるわけであります。技術面の差が一体どの
程度のものであるか、わが国の現在の業界でも
つて一応世界的水準に達しておるというふうに自負されておるわけでございますが、申請の方の内容では、まだまだその間にギヤツプがあるのだということにな
つて、この点に
一つの問題がある。さらに本件につきましては、ミシン、特に家庭用のミシンでございまして、基礎産業、あるいはそれに類するような重要産業という面にはちよつと当りかねるかと思います。本件を取上げるだけのメリットがあるとすれば、国際収支の改善、言葉をかえていいますれば、この場合には輸出の増進に大いに役に立つということでなければならぬわけでございます。現在すでに日本の製品が出ておるわけでありますが、本件がかりに提携ができて実施された場合に、従来のわが国のミシン製品の輸出に、さらにこれが別の階層というか、あるいは別個の相手国というか、そうい
つた新しい分野を開拓するなり何なりして、全然プラスのものにな
つて行くということであれば、これは
一つの利点があるが、これが単にわが国が従来出しておりましたものに置きかわるというようなことであれば、全然
意味がない。そこで、究極の問題は日米石綿の場合と同じように、他に影響を与えないで輸出をさらにプラスすることができるかどうかというところに行くのじやなかろうかというふうに、われわれ実は感じおるわけであります。この点の検討、これは技術面並びにシンガーの商標と申しますか、それの持
つている値打ち、それからわが国ミシンか海外の市場においてどうい
つた評判をと
つておるかというような点等をにらみ合せまして、検討を要することであると思います。この辺が十分に有利だというふうに結論が出ない限り、やはりこれもなかなかむずかしい問題である、かように感じております。