○山本(勝)委員 提案されております法案の二つの修正案に賛成またその修正を除く
政府原案に賛成の討論をいたします。
結論を申しますと、賛成でございますが、ここで誤解のないようにはつきりと申し上げておきたいので、今日は法務
当局が
出席されていないようでありましてまことに遺憾でありますけれ
ども、ひとつ
大蔵当局もよく聞いておいていただきたい。
最初に、ただいま
井上委員の討論の中に、業者の運動の結果われわれ自由党が行動したというようなことがございましたが、これは世間の疑惑を招くがために、まことに遺憾に存じます。われわれはこの出資の受入、
預り金及び
金利等の取締に関する
法律案は、
政府原案がまことにずさんであるということを認めざるを得ない。およそ経済の実際を無視し、また理論を無視した点で、これほどずさんな法案というものはあるまいと思うのであります。
大蔵省がイニシアチーヴをと
つたものか、法務省がと
つたものかは存じませんけれ
ども、われわれ自由党といたしましては、最初から、罰則を伴
つた法律をも
つて金利を規定するということに対しては反対の意思表示をしてお
つたのであります。
御
承知のごとく、
戦時中におきまして、各種の物資に公定価格をきめて参りました。これが次々にふえて参りまして、ほとんどすべての物資に公定価格をきめた。そこに従来なか
つたやみ取引というような言葉や現象が現われて来たのでありますが、そのようにほとんどあらゆる物資の公定価格がきめられたような時代でも、なおかつ金利を罰則を伴
つた法律で押えようというようなことは実行できなか
つたし、しなか
つたのであります。あらゆる物資に公定価格をきめる時代でありますから、もとより世の中には金利を
法律で公定せよという
意見がありました。ありましたけれ
ども、なおかつ、その時代ですら金利というものは
法律で公定できない。もしこれを公定すれば非常に
経済界の混乱を来すという理由で、これは実行されなか
つたのであります。先般のこの
委員会における法務
当局の
説明によりましても、現在の
経済界における金利の実際の実情というものを精密に調べてみたところが、安いのは二銭である、高いところは一円まである、しかしながら、最も多いのは三十銭ないし三十三銭である、こういう
説明であります。しかもこの場合の
説明によりますと、それならなぜ一円にきめないのか、あるいは三十三銭にきめないのかという議論があるかもしれないけれ
ども、これは
法律をも
つて利子を下げて行こうというねらいなんだという
説明である。そうして利率は結局いなかと都会は違う、時と場合によ
つて違うということも十分知
つておられる。この時と所とによ
つて千種万態であるところの金利を、
一定の数字をも
つて、しかも厳重なる罰則を伴う
法律でも
つて、実際の需要供給の均衡点以下に押えて行こうというようなこと、これがいかなる結果をもたらすかということは火を見るよりも明らかであります。すなわち、一段の実際に行われている均衡点よりも以下に罰則を適用した場合におきましては、必ず資金の需要はふえて供給は減るのであります。そこで金を借りたい人が従来よりも借りられなくなる。しかも農村方面におきましては、二銭から二十四、五銭のところだということは認めておられるのである。これらをかりに三十銭ときめました場合には、必ず三十銭まではよろしいのだということで、かえ
つてこれをつり上げるような若干の働きをして来る。また三十銭以上でなければ借りられないし、貸すこともできないという経済上の実情のもとにおきまして、もし三十銭を励行いたしました場合どうなるかというと、それ以上のものはやみにもぐり込んで、文字
通りやみ金融とな
つてしまうか、そうでなければその
仕事をやめてしま
つて、借りたい者も借りられないという
事態が起
つて来ることは明らかであります。か
つてこういう同じことを企てたときに、金を借りたいという人々の猛烈なる反対にあ
つて法案がつぶれたことがあるのです。われわれは決して高利貸しを保護しようなどという
考えではない。金を借りたい者全体を
考えて、金利はどの
程度がいいか、安ければ、借りられる人は安い方がいいにきま
つておる。しかし実情以下に安くなれば、借りられた人はよいけれ
ども、借りられない人が従来より多くな
つて来る。少数の借りられた人たちだけが安い金利で得をするという結果にな
つて、多数の資金需要者はかえ
つて被害を受け、しかもやみ金融にたよるということになりますと、従来よりもはなはだしい、ほとんど無制限ともいうべき金利を払わなければならぬ
事態が生じて来るのでございます。これは理論だけではありません。実際もその
通りであります。先般学者たちをここに呼びまして、参考人として
意見を聞きました場合にも、参考人の
意見は大体私の
考えと同じような
考えであ
つた。私は当然のことだと思うのであります。こういう意味において、実は先般藤枝君から、わが党は金利は
法律をも
つて押えようというようなことはよくない、あるいは
法律をも
つて上げようということもよくないと提案したのです。利息制限法のことを法務
当局が
説明して、これは先般改正が行われたのは、国家意思がこのように表現されたものだというような大げさなことを言
つて、すでに国家意思が一方にきま
つておる以上は、ここでこれをきめなければ国家意思の分裂を来すと言わんばかりの答弁をしておりましたけれ
ども、利息制限法というものは、これは御
承知のごとく罰則を伴
つていない、罰則を伴
つていないものでありますから、裁判に
なつたときだけ
一定の効力を発生するものでありますから、御案内のごとく明治十年に制定され、明治三十一年に改められて、大正八年まで
経済界の幾多の変動にもかかわらず無修正で来られた。さらに大正八年から今日まで三十幾年の間無修正、しかもその条文を見ますと、百円以下の貸し借りの金利は幾ら、百円以上は幾らというふうな、今日世の中にあり得ないような百円という単位で金利を定めておるような、そういう法案であの
インフレーシヨンの時代、
インフレによ
つて貨幣価値が下落した時代になおかつ修正されないで今日まで来られたということは、これが罰則を伴わない
法律であり、事実裁判に
なつたときだけある
程度ものをいう
法律でありまして、いわば先般私が申しましたように、二階の片すみにほうり込んでおかれたような
法律であるから、三十幾年の間無修正で来られた。ところが今度の
法律はそうではない。厳重な罰則を伴
つておる。しかもそれは法務
当局の
説明のごとく、法の力で、権力でも
つて金利を実際の相場よりも下げようというねらいを持
つておるのでありまして、私はこれほど理論を無視し、実際を無視した法案はないと申し上げる理由であります。ただしかしながら、何ゆえにそれほどずさんな
法律に賛成をするかという問題でありますが、簡単に申しますと政治
情勢、われわれは先般われわれの方の藤枝君から出しましたように、利息は
法律できめない方がよろしい、二十銭のところは二十銭、十銭のところは十銭、四十銭のところは四十銭、五十銭のところは五十銭で貸し借りをさせるべきだ、暴利の方は別に取締れるところがわれわれの
考えをさらに貫こうといたしますと、改進党の同調を得ることはできない。改進党はあくまでも
法律の数字で規定するという
考え方に賛成をしておられる。それでは本
会議で再び先般のごとき
事態を引起すことをおそれるので、改進党の諸君が同調される三十五銭の線で、われわれは正直に申しますと先般の修正案を撤回いたしまして、あらためてこの共同修正案に賛成したのであります。三十五銭がいいのかということでありますが、三十銭よりも三十五銭の方が幾らか被害が少いことは間違いありません。ですから、せめてこの被害を少くする、そうして政治的に保守各党の賛成を得られるという線で同意をしたのであります。しかしながら総務会におきましても、このような
法律はこの次には撤廃すべきだという
意見が
相当強く現われておるのであります。かような意味におきまして、いわば政治
情勢からこの修正案並びに修正案を除く原案に賛成をいたしますけれ
ども、この運用にあたりましては十分な注意をして、零細金融によ
つて仕事をし、生活をしておる人たちがこの
法律によ
つて逆な苦しい
立場に追い込まれるようなことのないように御留意を願いたい。そのような場合には、
政府が進んでまたこれが改正の案を出してもらいたいということを私は申し上げて、賛成の討論を終りたいと思います。