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1954-05-12 第19回国会 衆議院 大蔵委員会 第53号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十二日(水曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 千葉 三郎君    理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君    理事 山本 勝市君 理事 内藤 友明君    理事 久保田鶴松君 理事 井上 良二君       大上  司君    小西 寅松君       島村 一郎君    苫米地英俊君       福田 糾夫君    藤枝 泉介君       福田 繁芳君    本名  武君       小川 豊明君    佐々木更三君       柴田 義男君    平岡忠次郎君       山村新治郎君  出席政府委員         大蔵事務官         (管財局長)  窪谷 直光君  委員外出席者         参  考  人         (東京大学教         授)      横田喜三郎君         参  考  人         (東京大学教         授)      杉村章三郎君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  接収解除ダイヤモンド処理等に関する法律案  (中野四郎君外二十一名提出衆法第一五号)  接収貴金属等処理に関する法律案内閣提出  第一二五号)     ―――――――――――――
  2. 千葉三郎

    千葉委員長 これより会議を開きます。  ただいま本会委員会において審査中の企業再建整備法の一部を改正する法律案につきましては、昨日の懇談会において参考人出席を求めて意見を聴取することに御協議願つた次第でありますが、右案について経団連その他利害関係者参考人として招致することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 千葉三郎

    千葉委員長 御異議ないようでありますから、さように決定いたします。  なお参考人選定等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。     ―――――――――――――
  4. 千葉三郎

    千葉委員長 次に、接収解除ダイヤモンド処理等に関する法律案接収貴金属等処理に関する法律案の両案を一括議題といたします。  本日は両法案につきまして、東京大学教授横田喜三郎先生杉村章三郎先生の両先生参考人として御出席を願つておりますので、ただいまより両先生からそれぐれ御意見を拝聴することといたします。参考人各位の御発言は大体一人二十分程度にお願いいたしまして、委員各位から参考人の方々に対する質疑は、後刻一括して行いたいと存じますので、御了承を願います。  それではまず横田喜三郎先生にお願いいたします。
  5. 横田喜三郎

    横田参考人 私は主として連合軍最高司令部との関係を申し上げたいと思います。  御承知の通り占領が始まりまして間もなく、いろいろな指令ダイヤモンドその他貴金属連合国管理に移すことにする指令がたくさん参りまして、その間日本銀行の地下室に大体それを保管して、そうして連合国占領軍当局がそれを保管するという形をとつたのであります。そのときには、これをどう処分するかということは、初めのころの指令では何も指示されていなくて、ただそれについて占領軍から領収書を受取るようにということが指示されていただけであります。そこで連合軍としてはこれをどう処理するつもりであつたか、初めははつきりしませんでしたが、ちようどポーレー大使日本中間賠償のための調査に参りまして、一九四五年十二月七日、つまり昭和二十年の十二月七日に声明を発しておりまして、その中に、その当時の連合軍がこのダイヤモンドその他貴金属をどう処理するつもりであつたかということがかなりはつきり現われております。それによりますと、これらの接収された貴金属などは、サンフランシスコにあるアメリカ合衆国の造幣廠に輸送されて、そうしてその処分の決定があるまでこれを保管さるべきである。そうしてこれら貴金属の船によるアメリカへの積出しは、これらの貴金属を将来占領費に充当するか、あるいは輸入品の代価に使うか、あるいは賠償に使うか、もしくはこれを返還するかという、そういう将来の決定に対してはいかなる影響も与えない、こういう声明が発せられているのであります。ですからその当時におきましては、おそらくこれを賠償に充てるつもりであつたろうと思いますが、その最後決定があるまでは、一時アメリカにこれを輸送して、そうしてサンフランシスコ造幣廠に貯蔵し、管理しておく。但し日本から船で向うへ積み出すことは、将来どういう決定をするかについては何ら影響を与えないという声明であります。ところが実際には、一部はあるいはアメリカに輸送されたかもしれませんが、そのまま日本に保管されていたのでありまして、これによりましても、接収したときにはまだ貴金属所有権日本からアメリカに取上げたわけではないのであります。最後にそれを賠償に充てるか、あるいは占領軍の費用にするか、それとも原所有者返還するかということは後に決定する。後にどう決定するか、それには今のようにして保管したり、またかりにアメリカへそれを持つて行つても、将来の決定には影響を与えないということであつたのでありますから、まつたくこの接収によつて所有権アメリカ側移つたということは全然ないので、その所有権関係は元のままであつた。ただ占有がアメリカ軍の手に移つてアメリカ軍に保管されたと解釈すべきだと思います。そうして講和条約が効力を発生する間近になりまして、一九五二年四月付の連合国最高司令部からの覚書で、平和条約の発効する日に、最高司令部の課したすべての管理解除する。それについて、講和条約の発効後において、個人の利益と認められるものを調査して補償し、または特定のものを真実の所有者返還する処理案を立てることを認めるという覚書が来まして、これによると結局アメリカ側の意向としましては、適当な補償を与え、かつはつきりだれのものであるということがわかつた場合には、その真の所有者返還するのが適当だと認めて、そういう案を日本側で立てるようにという覚書をよこしているのであります。従つて連合国との関係では、連合国が単に一時預かつていただけで、その所有権を取上げるということではない。そうしてこれを、日本講和条約ができると同時に、日本政府にあてて返して来た。返した以上は、日本が主権を回復したのでありますから、日本がどのようにこれを処理してもいいわけであります。しかし連合国としては、しかるべき補償を与え、また所有者のわかつているものには、それを返すようにという意味を含めて返して来たわけであります。ですからこの趣旨から考えますれば、日本政府としましては、所有者が判明する限りは所有者返還し、そうでないものには適当な補償を与えるとすることが、いわば連合国との間の紳士的なとりきめとか、了解というようなものであると存じます。これは講和条約が発効しますれば、もとより連合国から日本に対して指令することはありませんから、日本側そのものをどう処理するかはもちろん日本の自由であります。しかしこういういきさつで返して来たのでありますから、今のように処理するのが日本側としては適当ではないかと思います。そういう意味でこの法律案も出ているようでありますが、その問題は直接私には関係ありませんから、大体連合国側日本側との関係とか、いきさつを私は申し上げて、あとで御質問があればそれにお答えいたしたいと思います。
  6. 千葉三郎

    千葉委員長 次に、杉村章三郎先生にお願いいたします。
  7. 杉村章三郎

    杉村参考人 この接収貴金属なり接収ダイヤモンド解除がありましてから、それをどう処理するかという問題につきましては、この国会におきましても行政監察委員会の当時から問題にせられておつたようでありまして、その当時から私どもはいろいろな形において意見を申し上げて来たわけでありまして、大体もう皆さん方にも私ども意見は申し上げてあると思います。大体今までのことを申し上げますと、接収された貴金属は、いろいろな形で従来そこまで来たのでありまして、これは大体におきまして、むろん戦時中における国民の愛国心から出て、そうして買い上げられるにしましても、完全に自由意思で必ずしもこういつた売買をされたものではない。こういうふうな状態のものでありますが、その場合法律関係としてどうなるかということが問題であつたわけであります。この点につきましては、その所有権の帰属の問題になりますので、民法専門家であられる我妻教授から御意見を御提出になつたと思います。それから行政法関係では私が今まで申し上げて来たわけであります。その場合、行政法関係で問題となるところは、結局戦時中に買い上げたという形になつております接収貴金属買上げ性格であります。それはいろいろな団体が買い上げておるわけでありますが、ダイヤモンド関係におきまして最も大きなものは、交易営団が買い上げて、そうして持つてつたものを接収されたという、その形のものが最も大きな問題だと思います。戦時中の交易営団というものはどういう性格のものであつたかという交易営団性格問題から、あるいは中央物資活用協会でありますとか、そういうようなものの性格という問題から、いろいろ議論が出て来たわけでありますが、私はこの交易営団というものは、一つの人格者ではありますけれども、しかしながら非常に国家的な色彩の強いものでありまして、むしろ政府機関として取扱われておつたように承知いたしておるのであります。その場合、政府機関政府指令によつて民間の金属を買い上げる、そういう方式がとられたのであります。しかしその買上げ形式は、これはあくまでやはり所有権交易営団に移転するということで、いわば売買契約形式をとり、そしてそれに対して相当価格、当時の時価で支払う、そういうような形がとられておるのであります。私は当時そういうように形式的に考えまして、交易営団にその所有権があるのではないかということをちよつと申し上げたことがありますが、その後いろいろ考えまして、今度の法案に出ておりますところの所有権の移転ということにつきましては、当時の実情から見まして、あるいは買い上げられた者の気持から申しまして、むしろ国家のためにこれを利用してもらいたいという意味におきまして買い上げられた、こういうようなことを考えまして、現在は私の元の考えはそう固執するわけではないのであります。そういういきさつが私の心境についてはあるのでございますが、問題点はそういうところにあるのであります。なお交易営団そのものは、政府出資が三分の二でありまして、その営団内容としまして相当国家的な色彩が強いわけであります。  それからこの法案そのものにつきましては、私はこれをただ一応読んだ程度でございまして、時間もありませんので内容を詳しく検討したわけではないのでありますが、接収貴金属等処理に関する法律案接収解除ダイヤモンド処理等に関する法律案、この二本建になつておるわけですが、これは一方は議員提出のもので、一方は政府提出のものだそうでありますが、むしろこれは一本にすべきものであると考えるわけであります。つまり重複しておる点が多いわけであります。この議員提出の方は、接収解除ダイヤモンドを対象としているわけでありますし、政府提出の方は、接収貴金属等、一般的な貴金属類についての処理をしよう、こういう目的を持つておるものと思われます。それでこの内容につきましては、今横田教授からもお話がありましたように、接収までの事情につきましてはいろいろな形があるのでありますけれども、その原所有者というものがはつきりわかつておるもの、また特定できるものにつきましては、これは本人に返還する、こういう処理の仕方があるわけでありまして、これは適当であろうと思うのであります。ただそれをどういうふうにして確認するかという問題があるのでありまして、これがかなり大きな問題であろうと思うのであります。これについて、一方の方は審査会がその認定確認をするという処置がとられておりますし、片一方の方は、大蔵大臣認定するというふうな処置がとられております。これは証拠などにつきましてかなり不明瞭なものがあると思われますので、事務当局だけではたしてそれができるかどうかという問題はあろうかと思うのであります。  それから次の問題といたしましては、先ほど申したように、この法案につきましては双方とも交易営団その他の国家を代行する機関が買い上げたものについては、その所有権は国庫に帰属するという形をとつており、そうしてただそれに対して補償をするという形がとられておる。つまり買入れ代金、買入れ手数料、あるいは加工賃というふうなものの総額について、それらの団体に対して補償をする、そういう形をとつておるのであります。この場合、この補償価格というものがはたして憲法の二十九条にいういわゆる正当なる価格となるかどうかという問題が前々から議論せられておつたと思われます。この憲法にいういわゆる正当な価格というものは、そのもの実情によつてきまるものでありまして、あらかじめ時価でなければならぬ、あるいはそれに近い価格でなければならぬという趣旨では必ずしもないのでありまして、これは一方におきまして、その当時の補償価格で返してやるということは非常に低い補償になるというおそれがあるのでありますが、さりとて現在における時価というものを見るということになりますれば、これはまた非常に不当な利得ともなるわけであります、結局その当時の営団というものの性格考え合せまして、つまり損をしない程度補償をする、そういうことにおいて正当な価格を生み出すといいますか、考える。こういうことで、おそらく憲法に違反する問題はないのではないかと考えられるのであります。こういう問題はいろんな場合に出て来るのでありまして、三年前でありましたか、NHKが出資について、これを出資者に返すのに、やはり出資金だけを返したということがありましたときに、一時問題になつたことがありますけれども、そういう問題は往々にして生じ得るわけであります。  なお接収解除ダイヤモンド処理等に関する法律案の方におきまして、審査会というものが設けられておるのでありますが、この審査会は、一方において所有権確認をする機能と、それから訴訟による不服の申立てに対する審査決定をなすような機能があるようでありますが、この点は多少問題になるのではないかとも思われるわけであります。  なお問題があろうと思いますけれども、私どもちよつと気がついた点を一応ここに申し上げまして、あと皆様方の御質問に応じてお答えしたいと思います。
  8. 千葉三郎

    千葉委員長 これにて参考人各位の御意見発言は終りました。  質疑に入りますが、質疑は通告順によつてこれを許します。藤枝泉介君。
  9. 藤枝泉介

    藤枝委員 私のお尋ねいたしますことは、むしろ私法関係の方が多いのでたいへん恐縮なんでございますが、まずそれの前提といたしまして、これは横田先生にお願いいたしたいと思います。  ただいまのお話によりましても、接収貴金属ダイヤモンド等連合軍所有には移らなかつた従つてまた返還されても、これは政府所有権を持つているのでなくて、接収された者に所有権があつて、それを政府管理しておるという形でありますから、従つて出されましたこの政府の案にいたしましても、中野さんのダイヤモンドに関する法律案にいたしましても請求権はある、ただその請求権をどう行使するかということをこの法律できめようというのだ、こう解釈してよろしゆうございましようか。その点をまずお伺いいたしたいと思います。
  10. 横田喜三郎

    横田参考人 私は私法関係のことはわかりませんが、連合軍との関係においては、今おつしやつた通りであると思います。所有権関係には関係がない。ただ向う接収したというのは、向うが占有して管理していただけだ。それをそのまま解除して日本に返して来たのでありますから、所有関係は元のままである。接収される前の状態がそのまま続いて行つておると見るべきであります。従つてその返還を認めるということになりますと、返して来たわけでありますから、それに対して当然請求権があるわけであります。従つて問題はその請求権をどういうふうにして認めるか、また確かに自分の持つていたものであるということの証明がどの程度までできるかという問題に帰着するであろうと思います。
  11. 藤枝泉介

    藤枝委員 それから杉村先生に、私法のことで恐縮なんですが、お感じの点をお聞かせ願えればけつこうだと思うのであります。政府ダイヤモンド貴金属とを一緒にしておるのでございます。私ども考えといたしましては、ダイヤモンドというのは非常に特定的なもののような、代替性がないと申しますか、特定物目的とした債権というような、そうした考え方が非常に強い。しかるに金、銀というようなものは、代替性が非常に強い点があるのじやないか。政府の案によりますと、接収されたものが、そのものずばりがあればもちろん返す。それから、そのものはないかもしれぬが、混合されたり、いつぶされたりしてその中にあれは、その限度で返して行こうという考え方のようでございますが、これは貴金属――金や銀でありますとそういうことが考えられるのですが、ダイヤモンドの方は非常に特定性が強いような気がしまして、従つてダイヤモンド貴金属も同じような考え方返還考え方をするのはむしろ不適当なので、ダイヤモンドのような特定性の強いものの返還考え方貴金属のような、たとえば純金一貫目というものとは考え方をかえてもいいような気がするのでありますが、その点いかがでございましようか。
  12. 杉村章三郎

    杉村参考人 御説の通りだと思います。ダイヤモンドに対する法律案を特につくろうという目的は、そういうところにある。もつとも問題は、ダイヤモンドが非常に大きいから特別の法律を御提出になつておると思いますが、ただダイヤモンドの場合は特定といいますか、貴金属、金、銀の場合はいつぶされて地金で接収されたという場合がむろんあるわけです。ですからそういつた点の取扱いは非常に違うと思います。ダイヤモンドの場合も、特定性というものが、いろいろな指輪になつたり、そういうもので、装飾品みたいなものである場合は特定しますけれども、それがダイヤモンドだけで、宝石だけになつてしまつたものは、特定といいましてもあまりはつきりしないのではないか、こういう考えを持つております。これは全然しろうとでありますから……。
  13. 藤枝泉介

    藤枝委員 なぜそんなことをお聞きしたかと申しますと、実は政府の案によりますと、そのものがあるときは返す。それからそのものはないけれども、混合されたものの牛のどれか該当するようなものというのがその限度であるという考え方なんですが、それもわからないときは、もちろんそのものがないのは返さないという考え方なんでありますね。中野さんの案の方は、特定したときは返還する、それからないことが判明し、また特定しなかつたときには、もう返還請求権がなくなるという考え方を持つておるわけなんであります。何といいますか、所有権の問題からいたしまして、政府でもその特定のものがないというときには返さないという考え方、結局ないものだから返さないというのであろうと思うのですけれども、その場合にこれこれのものが接収されたということははつきりしているが、それが政府返還を受けたものの中にはないということがはつきりしたときには返さないというだけで一体よろしいのでございましようか。それともやはりそれに相当する補償的なものが考えられなればいけないということになりましようか。ことに今の代替性の問題を非常に強調して、ダイヤモンドというものは非常に特定性が強いのだということになると、むしろ返還されたダイヤモンドの中に、ある人間が接収されたダイヤはおそらくないのだという考え方の方が強く出て来るのじやないかと思うのでありますが、そういう際の補償の問題というものは憲法所有権問題等関係でどういうことになるのですか。
  14. 杉村章三郎

    杉村参考人 どうも私はよくわからないのですけれども、どういうふうな場合を考えたらいいのでしようか、結局一かたまりダイヤがある、そのうちにとにかく自分ダイヤモンドが数個入つておるというケースなのですね。そういう場合、これもそういうことが証明されれば、やはりその限度において補償を受くべきものではないか、ちようどいつぶされたその中に入つておるというのと同じことじやないかというふうに私は考えております。私民法のことはわかりませんけれども、やはり民法の混和の原理じやないかと思うのですが、補償もそれが証明される限度においてなされるということがむしろ適当なのじやないでしようかと私は思います。
  15. 藤枝泉介

    藤枝委員 実は政府案の第九条の第二号の中に、品位または重量について認定ができないときには、最低品位または最低重量のものとみなして返すというようなことがあるものですから、何か金銀等だと、たとえば純金を一貫目接収されたのだというようなことならいいのですが、純金やら何やらわからぬのを無理に返さなければならぬということになると、重量の点は別として、少くとも品位というものは権利を認定する非常に重要なものではないかと思うのでございます。何か品位認定できなくても最低品位のものを返すのだ、どうしても返さなければならぬという思想が強いように思うのですが、その辺で、品位がわからないものは請求権自体があやふやなものだという考え方になる方がいいのじやないかと思うので、妙なことをくどくお尋ねしたのでありますが、いかがでございましようか。   〔委員長退席内藤委員長代理着席
  16. 杉村章三郎

    杉村参考人 私は貴金属のことはよくわからないのですけれども、まあ品位から何から含めてはつきりしておるものを返すというふうに先ほど申したわけでありますが、しかし混合されたもののうちでそれがどれであるかということが現実にはつきりしないので、その点おそらく統一するためにこういう最低とみなすというふうな規定があるのじやないかと思うわけなのであります。
  17. 内藤友明

  18. 柴田義男

    柴田委員 横田先生ちよつとお伺いしたいと思いますが、ポーレー日本に参りまして、サンフランシスコ造幣廠に前に置いたものが、単に講和が成立したために自動的にそれを日本に返して来たものであるかどうか、この点を承りたい。
  19. 横田喜三郎

    横田参考人 それはサンフランシスコには持つて行かなかつたのです。ポーレーが来たときには、サンフランシスコ造幣廠に保管するために日本から将来船で送り出すということを言つただけで、あるいは一部を送り出したかもしれませんけれども、ほとんどそれは送り出してもごくわずかで、大体は日本にそのままに置いたものと思います。ですから講和に伴つて向うから持つてつたものがありますかどうか知りませんけれども、おそらくそうでなしに、日本に置いたものだけを言つているのじやないかと思います。その点はないそうであります。つまり向うへ持つて行つて返したものはないそうであります。向うへ持つて行つたものは若干あろうと思います。それから持つて行つたものか、あるいは連合軍の人が途中でどうかしてしまつたかわからないけれども、そういうもので若干少くなつてはいますけれども、大部分は向うへ持つて行つたわけではないのです。
  20. 柴田義男

    柴田委員 ただ私ども巷間伝えられておるところを承りますと、たとえばダイヤモンドの場合なんかでは、何とかという少佐か大佐か知らぬが、向う相当量持つて行つた、それがあと日本に取返されたということを聞いております。ダイヤモンド等をその当時相当量国が集めたのですが、現在十六万一千カラットしかない。当時実際集めたダイヤは三十万カラツトくらいあつたであろうというようなことがうわさされておりますが、そのうわさの根拠等先生が御存じの範囲でお知らせ願いたいと思います。
  21. 横田喜三郎

    横田参考人 私はそういうことは全然知りません。しかし私もポケットに入れてどうとかいうようなうわさは聞いておりますから、おそらくそういうものはあつたのじやないかと思いますが、はつりとした事実は存じません。
  22. 柴田義男

    柴田委員 それはまたあとで大蔵省からもう一度聞いてみたいと思いますが、先生の御意見でございますと、特定の供出された方がはつきりわかつておる場合の処理と、それから全然わからぬという場合の処理と二つにお考えのようでありましたが、私の聞き違いでございましようか、もう一度あらためてその点をお聞きいたしたいと思います。
  23. 横田喜三郎

    横田参考人 私はその点ははつきりは申しませんでしたが、さつきも藤枝さんからいろいろ問題が出たのですが、確かに接収されたということは証明できる、しかし特定物そのものがないという場合に、それは切り捨てるのか、それともそれと同じような種類のものの中の幾分かを按分比例でわけるかこいう問題でありますが、切り捨てるのは適当ではないじやないか、そういうものまで補償すべき――現在あるものについて補償するなら、確かに接収したことがわかつたものにまで補償すべきだという議論があつたと思いますが、問題はこれはなくなつたものまで補償するのが適当か、あるものだけはせめて返してやるという行き方をすべきか、この二つの行き方のどちらがいいかという問題だろうと思います。つまりなくなつたもの、損害を受けたものまで補償してやる、そうして皆が平均にその損害をわけ合うということも一つの行き方だと思いますが、しかしそういう行き方をしますと、実際問題としましてたまたま貴金属ダイヤモンドの場合はそういうことができるが、そのほかの場合、戦争によつて、あるいは連合軍によつて非常にいろいろな損害を受けた人の場合は同じように取扱えない場合が非常に多いと思います。たとえば工場を接収された、一部機械などを接収された場合と接収されない場合、ひとしく国家国民であり、会社であり、所有権者であるものが、たまたま工場などの機械、あるいは工場の一部を接収された者はそのまま損害を受けても補償は受けない。それに反して接収されなかつた者はそういう補償は受ける。これをもし公平にやるというならみな一緒にして、接収された者は接収された者が悪いのではなくて、たまたまそこにそういうものがあつたので接収されたのだから、みなやるというのが一つの行き方だろうと思います。しかしそれをやりますと、一般接収された工場とそうでないものとをどういうふうに区別するか。あるいはもつと極端にこれを言いますと、たとえば戦災で焼けた家と焼けない家、これも戦争の損害でありまして、平均すべきではないかということになつて来ますと、ちよつと問題の収拾の仕方がない。しかしダイヤモンドなり貴金属なんかは、現にあるものは返されて来る、そのものについて、確かにそれと同じような種類のものを出したということが証明できたものについては、現にあるのだから、それをみんなにわけて返してやる方がいい、なくなれば戦争というものはそういうものだからしかたがない、こういうあきらめ方で――とにかくあるものを返さないというのは少し極端だと思う。そういう考え方がこれに出て来ていると思います。ですから、ある意味から言いますと、不公平にもなりますけれども、そういう不公平は戦争の場合、あらゆる場合にあるのだから、そこまで広げる、実際問題として非常に困難であるから、大体権利の証明ができて、そして現にそのもの特定物があるか、特定物がないにしましても、たとえばダイヤモンドの一カラツトのものを出した、しかし一カラツトのものは非常にたくさんある、一カラツトのダイヤモンドを出した人がたとえば五百人ある、しかし実際にはそのものが三百しかない、そういう場合には、やはりその三百を五百人にわけるようなわけ方がいいのじやないか、しかし特定のものを出して、そのものが確かにないという人にまでそれをやる必要はない、そういう点からいうと、特定のものはそのまま返す、特定のものはないが、一定の種類のものは按分比例し、確かにそのものがないと思つたら、ちようど工場を接収されたり、家を焼かれたりしたと同じように、そのときは不運だとあきらめてもらうよりしかたがない、こういうように私は考えるのです。
  24. 柴田義男

    柴田委員 御意見のようなそういう見方もございましようが、ただたとえば外地におつて預金をいたしましたものでも、徐々に解決の方途は講じておりますけれども、大きな金額にはほとんど触れておらない。いわゆる戦争によつて大きな犠牲を払つたのが国民全体なんです。そういう全体が被害を受けたことは明らかな事実なんですが、貴金属とか、あるいはダイヤモンドに関してだけ特定のわかつている人に返す、それから不分明の分は返さないで、特別な会計を設けて別個な法律をつくるという問題になりますと、この貴金属とかダイヤというものを供出いたしました当時の精神は、やはり戦争に負けたくない、勝つためにはあらゆる犠牲を払つてでもこれを国に供出するというきれいな気持で供出されたものが大部分なんです。そういうような場合には、やはり同じようにこれを一括いたしまして、政府の提案している案がいい悪いというのは別個でございましようが、何か特別会計を設けて、戦争によつて犠牲を払つたものを中心といたしました処理をしなければならぬ、こういうようにわれわれは考えられるのですが、こういう点に対する御意見を承りたいと思います。
  25. 横田喜三郎

    横田参考人 これは法律問題でありませんので、そういう御意見も確かに一つあると思いますし、私はそのほか、たまたま貴金属ダイヤモンドを供出した者はそういう関係になつておりますすれども、そうでないもりを供出したとか、あるいは生命というようなものも、これは供出したわけではありませんけれども、戦争の結果生命を失つた人もあるし、傷ついたりした人もあるし、幸いにしてそういうことにならなかつた人もある。そういう場合に、どうもこれはその不公平を完全にするということはできないから、どこかで線を引くほかない。そういう点から見て、とにかくあるもので、それが自分のものであつたとか、自分がその品物を出したということがわかるものはそこで線を引くということも一つの考え方で、私は両方の考え方が成り立つと思います。どちらがいいかということは、われわれ法律家が別にそういう問題について特別の知識を持つているものでもありませんから、私たちの意見はその点では何ら意味がない、むしろ皆さんが適当にお考えになるべき問題だと思います。
  26. 柴田義男

    柴田委員 杉村先生法律的な見解を承りたいと思いますが、当時の交易営団であるとか、中央物資活用協会というようなものの性格がどういう形の性格であつたでございましようか、その点を承りたいと思います。
  27. 杉村章三郎

    杉村参考人 これは先ほどちよつと申しましたように、交易営団というのは、実は戦時に際して国家経済の総力を増強するために、交易の統制、運営をなすとともに、重要物資の貯蔵を確保増強する。こういうようなことで設立されたものであります。しかし金属をここで買い上げるということは、そういう目的に沿うために設けられた交易営団をいわば利用して、そこでやらせたというような形になつておるのだろうと思います。それでありますから、いわば政府機関として行つたというふうに考えていいのじやないか、こういうように思われます。それから営団というものの性格は、これはいま一つ帝都交通営団がありますが、地下鉄をやつておりますあの営団が一つ残つております。あれからよほど性格はかわつて来ておるようでありますが、営団とか公団というものが大体公共企業体というふうに今日においては取扱われておりますけれども、その当時の営団考えと、現在の公共企業体の考え方とはよほど違つているように思われます。といいますのは、営団の方はむしろ政府がやるべきことを、いろいろ物資の統制、保管、あるいは交通とかいうふうなことを目的とする経済的な仕事をやりますので、一応営団という特別な法人を設立させて、政府の本来やるべき経済、あるいは取引関係の仕事をそこでさせる、そういうような形のものであつたわけであります。今日の公共企業体とはよほど性格を異にしておる、こういうように考えられます。あとの物資活用協会とか、そのほかの運営会というふうなものは、これは社団法人の形をとつておるのでありますが、これも性格的には同じような目的をもつてつくられておるものであります。こういうように考えております。
  28. 柴田義男

    柴田委員 もう一点伺いますが、この交易営団中央物資活用協会というものは、当時資金的な面では全部が政府から出ておつたのでございましようか、それとも民間団体からも資金がこれに多少でも加わつてつたんでございましようか、その点をお知りでございましたら承りたい。
  29. 杉村章三郎

    杉村参考人 交易営団の方は、たしか三分の二でありましたか政府出資で、あとは民間出資、主として銀行その他の団体出資していたようであります。それであとの社団法人の方は、これは政府出資しておらぬそうであります。
  30. 内藤友明

    内藤委員長代理 山本勝市君。
  31. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 先ほど来の御説明でだんだんわかつて参りましたが、接収の事実によつて所有権は別になくなつたのではない、ただ管理されている状況というような御説明でありましたが、そうすると、今それがなくなつてしまつたものがあるという場合に、なくなつたから、もうしかたがないから返さぬのだというようなことをかりに国で法律できめた場合、その所有権の問題として、いわば預かつたもの、あるいは管理しているものがかつてにこれはないから返さぬのだということをきめて、何か大きな法律問題が起るおそれはないかということが一点。つまり接収によつても元の所有者がやはり所有権は持つているということになると、それが管理者のところへ接収されたということはりつぱに証明できる。しかし現物がアメリカへ持つて行つたか、あるいは途中でどうなくなつたか、ないから返せぬわけです。返さぬと法律できめて、はたしてその所有者から大きな問題が起らぬかどうか。もしそれがないのだから返さぬのだ、こう法律できめればそれで済むということになると、現在あるものでも、これは返さぬのだというふうにきめても問題が起らぬことになるのではないか。もし管理しても、国家がこれはもう返さぬのだというふうにきめて問題が起るようなら、りつぱに接収されたという証明をできる人がやはり問題を起し得るのではないか。ここに疑問が私はあるのです。その点をひとつ伺いたいのです。
  32. 横田喜三郎

    横田参考人 今の接収は、所有権には関係がありませんが、なくなつた場合に、もうなくなつたものは返さぬでもいいかという御趣旨だと思います。つまりどこでなくなつたかと申しますと、日本政府が保管している場合になくなつたとすれば、日本政府に責任があるわけであります。しかしこの場合は、アメリカというか、連合国総司令部が保管していたわけでありますから、その間になくなつたとすれば、連合国に責任があるわけです。ところで講和条約によりますると、日本国及び日本国民の連合国に対する一切の請求権は、これを放棄するという規定がありますから、なくなつたものについては、こういう規定がなければ責任をとつて請求をすることもできるわけですが、この講和条約の規定によつて、そういうアメリカなりあるいは連合国に対する請求権は全部日本は放棄することになつている。これは講和条約はいつもこうなので、日本だけがそうなのではない。負けた国はそれぞれそういうことになるのですから、従つて戦勝国間において保管している間になくなつたものに対して請求をすることは、条約上できないことになるわけです。そうしますと、日本政府が保管している間になくなつたのではないから、日本政府自分の責任でないものに対してまで補償してやらなければならないかという問題があつて、そういう責任のない問題まで日本政府が国民に補償しなければならないという理由はないと考えます。それからこれが先例になつて、それではいつも法律でそういうことにきめていいかということになると、これは憲法で、所有権についてはこれを尊重しなければならない、適当な補償を与えてでなければ収用することはできないという規定がありますから、そうめちやにすることはできない。もしそういうことをすれば憲法違反になる。だからそういうことはあり得ないと思います。従いまして、正当な理由がなくして、将来こういう現に個人の持つている所有権政府が剥奪するような法律をつくるということはまああり得ない。憲法に違反しない限りはあり得ない。憲法に保障しているからそういうことはないだろう。ですから、この場合のことのためにそういう心配が将来起るというようなことはないだろう。この場合は戦争に基く特殊の場合で、しかも日本政府に責任がないのだから、日本政府が責任を負う理由もない。従つてあるものについてだけ返せば、法律上から見て私は正当と思うのであります。
  33. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 その点はよくわかりました。そこで、営団が買い上げた場合の資金関係について柴田委員から質問がありましたが、たとえば営団でなしに、個人でも配給を受けて持つてつた場合、その配給というのは完全な自由取引で、そのときの相場で買つたという場合でなくて、特別に戦争中に公定価格で安く配給を受けたものをたまたま終戦後持つていたというような場合、あるいはその機関あるいは個人が特に国家からそういうものを配給を受けるくらいですから、必要な機関として、金融面などで国家から非常な援助を受けておつたというような場合、こういうときは、その所有者は平時における完全な所有者とは同じように見られないのじやないかというようなこと、その他の点もありますが――を考えて、大体三分の一返す、あるいは半分だけ返すというようなことを国がもしきめた場合、これは法律上問題になるものかならぬものか。と申しますのは、よくいろいろな法律で五万円までは返すとか、封鎖した金でも、封鎖しておいて一万円までは返すとかいつたようなことを法律できめておりますが、その場合に、かりに現物がありましても、実際たまたまなくなつた人もある、それとの公平も考えなければならぬ。それからもともと持つに至つたのには、自分の金も払つているけれども、国の援助も入つているというようなことを、計数的にはそうこまかく計算できないけれども、しかし完全なる所有権とも認められぬし、それなら所有権がないとも認められないという場合に、三分の一とか、あるいは半分とか一定の額だけを返す、そうして残りは国家の適切なところに使うとかいうようなことをかりにきめたら、法律上大きな問題が起きるかどうか。
  34. 杉村章三郎

    杉村参考人 それは、おそらくそういうことがはつきり証明されれば、そういう取扱い、半分返すとか三分の一返すとかいうことも、立法技術としてできればやり得ることであるし、またその方が適当であるかもしれません。ただそういうような場合までをここに取扱うのがいいかどうかという問題があるのであります。それで先ほどお話が出ました封鎖などを五万円だけ返すということは、場合が少し違うのではないかと思いますが、一般的にとてもそれは返せない、しかし国家の財政からいつて五万円なら五万円だけは返せる、そういつた場合に、一律にこれを処理するという方法で国がそういう方法をとられた、こういうふうに見ることができます。ですから配給を受けたというような場合、これはこまかくやればそういうことも可能である、こういうふうに私は考えます。
  35. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 もう一つお伺いしますが、五箇月以内に請求しろというような期限がありますが、自分の方で証拠がないために、その期間内に請求できないでしない人もあろうし、それに対して、あとまた二箇月ばかりいろいろ何かあるようですけれども、とにかく出したことは出した、しかし証拠がないということのために請求しない者もあろうし、また証拠など実際はあつても、その期限内に要求をして来ない者もあろう。一方要求して来たが品物がないという者もあろうし、品物はあるけれども要求して来ないという者があつて、どつちの方が多いか私はわからぬと思います。しかし先ほど来ない場合は返さぬでも、講和条約によつて国民あるいは国家は一切占領治下のことには文句は言えないのだということがありましたが、品物が余つて来て、品物はあるのだけれども要求は来ないというような場合に、それを国家が、要するに預かつたというか管理しておる者が、二箇月以内に請求して来ないから、あるいは五箇月以内に請求して来ないのだから、これはもう請求できないのだというようなことをきめることは法律上は問題にならぬものですか。所有権所有者にある、管理者がかつてに五箇月という期限を切つて、それ以内に来ないからあとは要求できないというようなことをきめていいかどうか。
  36. 杉村章三郎

    杉村参考人 その点、たとえば遺失物などの場合、一年以内に請求しませんと、拾得者の方に所有権が移る、そういうことになつておるわけであります。あれなどは、やはり落した人間は別に所有権を放棄しておるわけではない、ただ届け出ない、こういうような場合になるわけであります。おそらくそういうような場合と同じような考え方で、どうしても一定の期限までに、一定の期限を切つて処理するという方がむしろ先決問題である、そういう場合があるわけですから、接収ダイヤモンドなり接収貴金属をどういうふうにして処理するか、一定の期間において処理してしまう、そういう一つの大きな目的から来るわけであります。そうしてその間に申出がなされない、こういう場合はその人の所有権を切り捨てる、こういう処置がとられるわけであります。そういう意味においてやむを得ないのではないかというふうに私は考えます。
  37. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 その遺失物でも一年間は請求できるわけです。とういうふうにはつきりと接収されたことがわかつており、そうして一方は管理者だという場合に、五箇月というふうなことで切ることが適当かどうかという問題があろうかと思いますが、この期限の問題についてはどういうふうにお考えになりますか。遺失物と同じように見るとした場合、これを両方比べてみて、一方は接収して管理し、預かつている人だ。一方は遺失したのだから、所有者は全然わからない。一方は大体わかつているのです。証明できないというだけです。書類が押入れかどこかに入つていてわからぬ、出したことははつきりしているのだけれども、しつかりした証拠を出すことができないというものを五箇月で切ることはどうかということであります。
  38. 杉村章三郎

    杉村参考人 これは立法技術の問題で、私もはつきりしたことを申し上げかねます。それが五箇月がいいか一年がいいかということは、結局立法考慮の問題で、私どもはどういうふうにきめられても別に異存はありませんけれども、まあいろいろな関係で、なるべく早く事を処理するということが要求されておる状態でありますし、またやはり物的な証明ということが必要になつて出て来るわけでありますし、大勢の者の所有関係のことでありますので、そういうふうに自分は持つていたということがはつきりしているといつても、それはいわば個人的な考えのことでありますから、一般的にこれを取扱うという場合に、一定の期間にそういう証明をしなければその所有権を喪失させるということも、やはりやむを得ないのではないかという気がするわけです。その期間の問題は、お話通り五箇月がいいか、一年がいいかということは問題にはなろうと思います。
  39. 井上良二

    ○井上委員 ちよつと大切なことを二、三伺つておきたいのですが、問題はダイヤ貴金属所有権の問題であります。お二人の先生方は、先般同じ衆議院の行政監察特別委員会へ参考人として出席をされまして、そこでこの問題に対する見解を御発表になつておりますが、その見解を伺いますと、これらダイヤ貴金属は、当時戦争遂行という国家の最高の公共的目的のために使用するということで供出をさした。従つて所有権は当然国家にあり、またそういう目的のために供出さした以上は、その所有をしております国家機関は、その目的に近い線において、つまり国家公共の目的にこれを使うようにした方がよかろう、こういうふうな見解が述べられたように私どもは伺つておるのであります。ところがただいまいろいろ伺つておりますと、なるほど当時はそういうことで供出さしたのだが、現実にこのものがあつて、しかも一方こういうものを自分は供出した。その供出したものが現存しておるから、現存しておる以上はその者に返してあげるのが妥当でないか、こういうふうにお話を今伺つたように思うのであります。そうなつて来ますと、かりに現存しておる特定物があつて、それをまた供出した特定人がおつて、それにその現物を返してやることが妥当である、こういうことにかりになりますと、これは、物は違いますけれども、たとえば市街地において一時強制疎開というものが行われました。そうしてその疎開跡地は国及び公共団体所有権移つております。ところがそれは戦後において、そこが新しく道路としてあるいは公共用の施設として利用されずに、疎開跡地としてそのまま放任されて現にまだあるのです。そして強制疎開させられた所有者も現におるのです。そういう場合は、当然あなた方の今の御見解でございますと、ダイヤモンドの場合は、こういうものを自分はこれだけ出した、そのものが現にある、ある以上はそれを返してやつたらいい、こういう解釈なら、疎開跡地においても、現にその跡地が公共の用途に使われずに、まだ疎開のままで現存しておる場合、その跡地は当然その疎開を強制された所有者に返してやつてもいいということになつて参りますが、それで一向さしつかえないことになりましようか、それらの関係はどういうことになりましようか、その点を一応ひとつお聞かせ願いたい。
  40. 横田喜三郎

    横田参考人 これは杉村君からも御返事があるかもしれませんが、ちよつと私から考えると、私の話を誤解なさつておるのではないかと思います。つまりこの接収されたダイヤモンド貴金属返還につきましては、今のような営団のものと、そうでないものと両方あるのです。つまり戦争中営団に半ば強制的か、あるいは愛国心か知りませんが、とにかく営団に売つたものと、それからそうでなく、連合国日本を占領した後、連合軍から直接接収されたものと両方あるのです。そこで直接接収されたものについては、その所有者に返す、そういうことを言つておるのです。ところが営団などに買い上げられたものは、その買い上げるときには、価格は幾らか低いかもしれませんけれども、とにかくすでに営団とそこで法律上は売買、契約があつて、その代金を受取つておるのです。ですからこのものについては、営団所有権があるのですけれども、これは営団には返さないで、営団国家の事務を代行したものでございますから、このものは国家の帰属に属する、こういうのがこの立法趣旨ですね。ですから営団で買い上げたものは別だ。ですから、今の土地を強制疎開で買い上げられたのは、そのときにすでにもう強制疎開で幾らかの代金はもらつておる。ですからその分はもう返らないわけで、ちようど営団に売つたものは、かりにその売つたものが今わかつていても、それはもう返してもらえない。そういうわけでありますから、決して今のような強制疎開させた土地を返すということは、私もそういう意味ではありませんし、この法律でもそういうことにはならないと思います。
  41. 井上良二

    ○井上委員 そうしますと、問題は、占領軍から直接接収された分に限つては、そのものがかりに現存しておつて接収された本人が言うことと現物とが合致したものは返してやつていい、こういう御見解でございますか。
  42. 横田喜三郎

    横田参考人 そうでございます。
  43. 井上良二

    ○井上委員 それですと、占領軍というものの性格ですが、これは占領軍が必要があつて接収したものをまたそれに返すというとき、そういうものの法的根拠は一体どこにありましようか。
  44. 横田喜三郎

    横田参考人 接収したものを返すということの法的根拠はどこにあるかという問題が、私にはつきりのみ込めないのですが、つまり連合軍は、初めはそれを賠償のかたにするつもりで接収したわけなんです。ところがそのうちに政策がかわつた。つまり初めは、日本をおそらく数十年間立ち上ることのできないような状態に置こうというのが、連合国の最初の方針であつた。これはもうその当時、たとえば四十年間日本における軍備は一切禁止するというような条約までできたくらいでありまして、結局それは効力は生じませんでしたか、そのくらいで、とにかく二、三十年間日本を政治的にも経済的にも軍事的にも、まつたくもう何といいますか、国家らしくないような地位に置いておこうという政策であつた。ですからその賠償に充てられるものは、全部取上げられるというのが連合国の政策で、そこでそういうものを全部接収したわけです。ところがその後いろいろな事情で政策がだんだんかわつて来て、日本をそれほど極端な取扱いはしない、むしろ日本の自立を早めるというような政策にかわつて来たものですから、一度は賠償で取立ててしまうつもりであつたものを、今度は取立てないことになつたものですから、これは連合国としてはとつてもいいし、とらなくてもいい。もちろんそれはあと日本に同意させなければなりません。講和条約で同意させることになりますが、そういうことはできるわけです。一ぺんはとるつもりであつたけれども考えがかわつてそれを返してやるということは少しもさしつかえない。むしろこちらから見れば非常にけつこうなことだから、別にその点で法律的根拠とか何とかいうような――自分接収して保管しておるものを、もう必要なくなつたから返してやるということで返してやる。そこで日本がそれを受取つた場合、つまりアメリカが一応保管したのを日本政府に向つて返して来て、そうして日本人の所有者になるべく返してやるようにという意味で返して来たのでありますから、日本としてはなるべく返すようにするということをしておるわけであります。法律的に別に不都合なこともないし、むしろそれが当然なことであるように思われます。
  45. 井上良二

    ○井上委員 ちよつと私そこの点が法文上よくわかりませんけれども、占領下に置かれておつた場合のわが国の権限というものは、占領軍に対しては何らの発言権が認められていなかつたのではないかと私は思うのであります。従つて占領軍の行います行為に対して、いろいろな損害を受けましても、その損害に対して請求権というものが一体日本国民に認められておるか認められていないか、問題はそこであろうと思う。それは道義上、あなたのおつしやるように、一応占領軍が強制接収したのだから、その接収した貴金属日本政府に返して来たなら、接収された日本国民がおるのならばそれに返してやるのが正当である、こういう道義的な一つの解釈は一応立ち得ると思いますが、占領軍による損害を受けましたものは単に貴金属だけではありません。あらゆる面において非常な大きな損害と自由を奪われていたことは事実であります。これに対して日本国民がその損害の賠償や、それに基く請求権があり得るやいなやという問題が起つて参ります。その請求権は一体あり得るのでしようか。そういう占領軍のやつた行為に対して、不当な損害を受け、人権を脅かされた者に対する報償というものが一体あり得るのでしようか。問題はそこに来はせぬかと私は見ておるのですが、そういうことがあり得るかどうか。私は平和条約その他においてはそんな請求権はない、日本国民は放棄しておるとこう解釈いたしておりますが、そういう請求権があり得るかどうかということをお聞かせを願いたいと思います。
  46. 横田喜三郎

    横田参考人 一般的の国際法上から、占領軍の権力、権能というものにつきましては、たとえば占領軍が占領をするために必要な場合になし得ることとして、いろいろ国際法上一応きまつておることがあります。たとえば普通の税を取立てる場合には、それを払わなければならない。私有財産は占領軍は没収することができない。そういうようにいろいろありますが、そのうちにたとえば徴発取立金という制度がありまして、占領軍が秩序の維持のために必要と認めて徴発することが、戦時国際法上認められておる。ものを取上げること、それから金を取上げること、これは一応認められております。但しそういう場合には必ず領収書を与える。徴発の場合にはなるべく代金をすぐ払わなければならない。もし払わなければ、後日の証明のために領収書を与える。それから取立金の場合も領収書を与える。こういうことになつております。その領収書をもらつたものがそれを返してもらうということ、これは講和条約できまる問題で、もし占領されている領土の国があとで勝てば、負けた敵国に対してそれの損害賠償を支払わせるわけです。そうすれば当然、つまりあと日本がもし勝てば、アメリカから領収書に当る金額を取立てて、そして本人に領収書従つて返す。ところが負けた場合には、そういうものは勝つた国からとれない。そういう場合には、本国がかわつてそういうものを払えというように、大体講和条約などにきめられるのが普通であります。つまりたまたまそこでものを持つているから占領軍が取上げた。しかしそれは、その人が悪いから取上げたんじやないから、その人に対しては日本政府が払つてやるベきだ。こういうのが今までの建前であります。講和条約では、今度は勝ち負けによつて権利がきまつて、それで負けた方はいつでも戦争に勝つた方の国及び軍のなした行為に基く損害に対する請求権は放棄する。大体どこの講和条約でもきまつている。そういうわけでありますから、もし日本が勝つていだとすると、金、銀、ダイヤモンドを取上げられて、領収書をもらつていれば、今度はアメリカからその金額そのものを取上げて、返してもらえるわけです。しかし負けたわけですからアメリカからはとれない。そこで日本政府がそういうものをかわつてつておるべきかという問題が起るわけですが、そうなると、さつきのように、確かにとられたことがわかつているもので、しかし現物がない人にも払つてやるべきだという議論がそこから出て来るわけです。しかしそうなりますと、そのほかにいろいろ損害を受けた日本人がたくさんいるんだから、そういう人に同じく払うことができないので、あるものだけは払うという案が出て来ると思う。これがちようど折衷説といいますか、中間の行き方をしていますので、私としては妥当なところじやないかと思います。
  47. 内藤友明

    内藤委員長代理 この際、参考人として御出席いただきました横田、杉村両教授に一言お礼を申し上げます。  本日御多忙中にもかかわりませず、当委員会に御出席をいただきまして、長時間にわたり貴重な御意見を忌憚なくお述べいただきまして、両法案審査の上に多大の参考になりましたことをここに厚くお礼を申し上げます。  午前の会議はこの程度にとどめまして、午後二時まで休憩いたします。  なお午後は出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律案外一案の取扱いについて協議懇談いたしたいと思いますので、御了承願います。    午後零時五分休憩