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杉村参考人 この
接収貴金属なり
接収ダイヤモンドの
解除がありましてから、それをどう
処理するかという問題につきましては、この国会におきましても
行政監察委員会の当時から問題にせられてお
つたようでありまして、その当時から私
どもはいろいろな形において
意見を申し上げて来たわけでありまして、大体もう
皆さん方にも私
どもの
意見は申し上げてあると思います。大体今までのことを申し上げますと、
接収された
貴金属は、いろいろな形で従来そこまで来たのでありまして、これは大体におきまして、むろん
戦時中における国民の愛国心から出て、そうして買い上げられるにしましても、完全に
自由意思で必ずしもこうい
つた売買をされたものではない。こういうふうな
状態のものでありますが、その場合
法律関係としてどうなるかということが問題であ
つたわけであります。この点につきましては、その
所有権の帰属の問題になりますので、
民法の
専門家であられる
我妻教授から御
意見を御
提出にな
つたと思います。それから
行政法関係では私が今まで申し上げて来たわけであります。その場合、
行政法関係で問題となるところは、結局
戦時中に買い上げたという形にな
つております
接収貴金属の
買上げの
性格であります。それはいろいろな
団体が買い上げておるわけでありますが、
ダイヤモンド関係におきまして最も大きなものは、
交易営団が買い上げて、そうして持
つてお
つたものを
接収されたという、その形のものが最も大きな問題だと思います。
戦時中の
交易営団というものはどういう
性格のものであ
つたかという
交易営団の
性格問題から、あるいは
中央物資活用協会でありますとか、そういうようなものの
性格という問題から、いろいろ議論が出て来たわけでありますが、私はこの
交易営団というものは、一つの
人格者ではありますけれ
ども、しかしながら非常に
国家的な
色彩の強いものでありまして、むしろ
政府機関として取扱われてお
つたように承知いたしておるのであります。その場合、
政府機関が
政府の
指令によ
つて民間の金属を買い上げる、そういう方式がとられたのであります。しかしその
買上げの
形式は、これはあくまでやはり
所有権を
交易営団に移転するということで、いわば
売買契約の
形式をとり、そしてそれに対して
相当の
価格、当時の
時価で支払う、そういうような形がとられておるのであります。私は当時そういうように
形式的に
考えまして、
交易営団にその
所有権があるのではないかということを
ちよつと申し上げたことがありますが、その後いろいろ
考えまして、今度の
法案に出ておりますところの
所有権の移転ということにつきましては、当時の
実情から見まして、あるいは買い上げられた者の気持から申しまして、むしろ
国家のためにこれを利用してもらいたいという
意味におきまして買い上げられた、こういうようなことを
考えまして、現在は私の元の
考えはそう固執するわけではないのであります。そういう
いきさつが私の心境についてはあるのでございますが、
問題点はそういうところにあるのであります。なお
交易営団そのものは、
政府出資が三分の二でありまして、その
営団の
内容としまして
相当国家的な
色彩が強いわけであります。
それからこの
法案そのものにつきましては、私はこれをただ一応読んだ
程度でございまして、時間もありませんので
内容を詳しく検討したわけではないのでありますが、
接収貴金属等の
処理に関する
法律案、
接収解除ダイヤモンドの
処理等に関する
法律案、この二本建にな
つておるわけですが、これは一方は
議員提出のもので、一方は
政府提出のものだそうでありますが、むしろこれは一本にすべきものであると
考えるわけであります。つまり重複しておる点が多いわけであります。この
議員提出の方は、
接収解除ダイヤモンドを対象としているわけでありますし、
政府提出の方は、
接収貴金属等、一般的な
貴金属類についての
処理をしよう、こういう
目的を持
つておるものと思われます。それでこの
内容につきましては、今
横田教授からも
お話がありましたように、
接収までの事情につきましてはいろいろな形があるのでありますけれ
ども、その原
所有者というものが
はつきりわか
つておるもの、また
特定できるものにつきましては、これは本人に
返還する、こういう
処理の仕方があるわけでありまして、これは適当であろうと思うのであります。ただそれをどういうふうにして
確認するかという問題があるのでありまして、これがかなり大きな問題であろうと思うのであります。これについて、一方の方は
審査会がその
認定を
確認をするという
処置がとられておりますし、片一方の方は、
大蔵大臣が
認定するというふうな
処置がとられております。これは証拠などにつきましてかなり不明瞭なものがあると思われますので、
事務当局だけではたしてそれができるかどうかという問題はあろうかと思うのであります。
それから次の問題といたしましては、先ほど申したように、この
法案につきましては
双方ともに
交易営団その他の
国家を代行する
機関が買い上げたものについては、その
所有権は国庫に帰属するという形をと
つており、そうしてただそれに対して
補償をするという形がとられておる。つまり買入れ代金、買入れ手数料、あるいは
加工賃というふうなものの総額について、それらの
団体に対して
補償をする、そういう形をと
つておるのであります。この場合、この
補償価格というものがはたして
憲法の二十九条にいういわゆる正当なる
価格となるかどうかという問題が前々から議論せられてお
つたと思われます。この
憲法にいういわゆる正当な
価格というものは、
そのものの
実情によ
つてきまるものでありまして、あらかじめ
時価でなければならぬ、あるいはそれに近い
価格でなければならぬという
趣旨では必ずしもないのでありまして、これは一方におきまして、その当時の
補償価格で返してやるということは非常に低い
補償になるというおそれがあるのでありますが、さりとて現在における
時価というものを見るということになりますれば、これはまた非常に不当な利得ともなるわけであります、結局その当時の
営団というものの
性格を
考え合せまして、
つまり損をしない
程度の
補償をする、そういうことにおいて正当な
価格を生み出すといいますか、
考える。こういうことで、おそらく
憲法に違反する問題はないのではないかと
考えられるのであります。こういう問題はいろんな場合に出て来るのでありまして、三年前でありましたか、NHKが
出資について、これを
出資者に返すのに、やはり
出資金だけを返したということがありましたときに、一時問題にな
つたことがありますけれ
ども、そういう問題は往々にして生じ得るわけであります。
なお
接収解除ダイヤモンドの
処理等に関する
法律案の方におきまして、
審査会というものが設けられておるのでありますが、この
審査会は、一方において
所有権の
確認をする
機能と、それから訴訟による不服の
申立てに対する
審査の
決定をなすような
機能があるようでありますが、この点は多少問題になるのではないかとも思われるわけであります。
なお問題があろうと思いますけれ
ども、私
どもちよつと気がついた点を一応ここに申し上げまして、
あとは
皆様方の御
質問に応じてお答えしたいと思います。