○春日委員 ただいま議題となりました両
法案に
関係をいたします重要な事柄について、ひとつお伺いをいたしたいと思うのであります。この両
法案は、いずれも戦争中におきまして戦争経済遂行のために当時
政府によ
つて接収されたところの貴金属、ダイヤモンド等の活用について規則を行わんとするものでありますが、この
法案に関連して、
政府はこれらの貴金属を輸出用
加工金という方向へ活用することについて何かお考えにな
つておるかどうか。この点もひとつお伺いをいたしておきたいと思うわけでございます。
なお
質問の
趣旨を明確にいたしておきますために、この機会に大蔵当局に申し述べ、さらにこの間のいきさつを明らかにしておかなければ相なりません事柄は、昨年の八月一日であつたか、金管理法が改正されて、金の自由販売が認められることに
なつたのでございます。そういたしますと自由価格に相なるので、これは当然
加工用金の価格暴騰を来しまして、それがやはり輸出に悪い影響を与えるのではないであろうか、こういうことが国会の審議過程において最も重視された問題であろうと思うのであります。当時
政府は、国会内におけるこういうような疑義を解消いたしますために、
昭和二十八年二月十日の
次官通牒をも
つて、金管理法の一部改正に関する通産並びに大蔵両省の意見の調整が行われておるのであります。その通産
次官からの文書を簡単に申し述べますと、「金管理法を改正する必要があるが、これが改正に関し大蔵省に左記の案を申入れしてよろしいか。なほ輸出陶磁器用原材料たる金地金の価格については、陶磁器の輸出の困難なる現況に鑑み現行価格を維持するよう、当局に於て、金鉱
業者を行政指導するものとする。」こういう覚書が出されておるのでございます。もとよりこの産金事業については、年々
政府から巨額の補助金が出されておりまして、この
法律の改正によ
つて産金事業が
一つの自由企業に移されたといたしましても、これは
政府から巨額の補助金が出されておる事柄と関連いたして、その行政指導——
政府の発言権あるいは価格形成に対するいろいろな事柄というものは、これはただ単に自由に
なつたから彼らが自由に価格をきめ得るという事柄ではないのでありまして、当然通産
次官が
政府の責任において現行価格が維持できるように行政指導をする、こういうことをうたうに至つたのであろうと思うのであります。そこで国会におきましては、当然
政府が現行価格を維持するのだということをここで明らかにいたしておりますので、——当面輸出に一番大きく使用されておりますこの
加工金というものは、これは陶磁器が装飾用に使うのでありまして、ことにわれわれが心配いたしましたのは、陶磁器の年間輸出総額は四千万ドル、これは金地金量に換算いたしますと三十六トン何がしに相なるのでありまして、特に陶磁器のごときは、原材料のほとんどが
国内産のどろであり、それに工賃が加えられるのである。この四千万ドルはほとんど八千万ドルにも匹敵するところの外貨の効率を持つものでありますので、これが値上げされて
加工金が高くなる、
従つて輸出用陶磁器の生産コストが高くなる。こういうことが輸出をはばむといけないというので、この金管理法の改正については特に慎重に取扱つたのでありましたが、しかし一方この通産省から大蔵省に申し入れられた公文書——現行価格を維持するというこの事柄を信じまして、この
法律は遂に通過するに至つたのでございます。問題はその後の事柄でございますが、産金
業者はこの協約をわずか二箇月にして破棄いたしまして、そうして五百十五円で売るわけには参らぬ、五百三十円でなければ売り渡すことができない、こういう一方的な通告をして参りました。御
承知の
通り今輸出は、さらにますます困難の度を加えつつあります折から、コスト切下げの問題がいろいろ
政府によ
つてとられておりますけれ
ども、一方その主たる原材料が現実にこういうような値上りを来すということでは非常に困る、こういうので、大蔵当局並びに通産省に対しましてしばしば熱烈なる陳情を続けて参つたのであります。しかるところ一向らちが明きませんので、過ぐる四月十四日でありましたか、通産委員会は特別にこの問題を解明するために小委員会を開きまして、長時間にわた
つて論議をいたしました。すなわち
政府は、本
法案が上程されました当時、陶磁器だけに対しては現行価格につき責任をも
つて特別に取扱うのだ、
従つて輸出を阻害するというような結果にはならないであろう、こういうことで国会を了承させて本
法律案を通過せしめたその後において、
業者がわずか二箇月足らずしてその協約を破棄して、一方的な値上げを通告して来たことに対して、何らの影響力を与えていない、すなわち、いうところの行政指導は何ら行われていない。
〔
委員長退席、黒金
委員長代理着席〕
その責任を追究し、この両者の覚書により、さらにまた日陶連と産金
業者との間に結ばれたところの協約がそのまま履行されることのために、いろいろと論議がなされたのであります。これについては通産省からも
連絡があつたかと思うのでありますが、しかるところ四月の二十二日に至
つて——国会においてそういうような論議が行われるということは、察するところ日陶連そのものが国
会議員を動かしておるのだろう、そうしてそういうような反産金的な議論を行うということはけしからぬということで、今度は実に飛躍いたしまして、五百七十円でなければ金を渡さないという一方的の通告を四月二十二日に日陶連に対して正式に申入れを行つたということでございます。申し上げるまでもなく、現在の金の国際価格は四百五円でございます。陶磁器の生産国でありますイギリスにおきましても、あるいは
アメリカ、ドイツ、チェコ等におきましても、すべてインターナシヨナル・ベースで生産が行われておりますのに、ひとり
日本の代表的輸出産業の
一つである陶磁器、これにまた欠くことのできない金液のもとであるところの金、これが外国より三割も四割も高いものを使用いたしましたならば、輸出の振興が大きくはばまれるということは当然考えられる事柄であろうと思つのであります。私
どもは、この陶磁器
業者たちの大部分が中小企
業者であるということを特に重視しなければ相なりません。一方産金
業者はすべてで八社あるようでありますが、その基礎を大企業に置くものであり、しかもニッケル工業とか、銅工業とか、これらの関連産業を通じまして行わるべき大企業でございまして、しかも昨年度までは年間三億でありましたが、本年度におきましては年間九千五百万円の補助を受けておる。さらに本年度は鉱床に対して、二億五千万円というものが利益の中から損失に繰入れられるというような特別の減税
措置も講ぜられておる。すなわちあらゆる段階において
政府の保護を受けておるこれらの産金
業者が——われわれ社会党両派、改進党、当時自由党の方もいらつしやいましたが、輸出振興のために、これは当然立法の当初慎重に検討され、しかもそれが条件とな
つて法案が通過した。この事柄がその後弊履のごとくに打捨てられ、
政府のい
つておる問題が何ら解決されていない、こんなばかなことがあるか、こういうことでいろいろと論議いたしたのでございますが、問題はだんだんと内訌いたして参りまして、たとえば産金
業者がヒステリックにな
つて、五百三十円で悪かつたならば、しかもそういう反金鉱的な議論を国会で行うならば、一般市価と同じ五百七十円でなければ売らないのだ、こういうことではほとんど無
政府状態であろうと思うのであります。大蔵並びに通産両省間において
交換された文書がここにありますので、これはひとつ十分御検討いただきたいと思うのであります。
そこでこの機会に
政府にお伺いをいたしたいことは、しよせんこの問題は解決しなければなりません。とにかく四千万ドルの外貨を獲得しておるのだが、これはほとんど百パーセント円資金に上るものでございます。外国から原材料を買い入れたというものではございません。八千万ドルの輸出であれば、これは大きな輸出でございます。これらの諸君がとにかく非常に困
つておるのだ。しかも筋が通らない、一方的な産金
業者のあり方について国会並びに
政府の善処をひたすらに頼んで参
つておる事柄でありますので、これは接収貴金属の中から
処分するか、
処分して払い下げて
加工用金にこれを活用するか、あるいは
政府が年々買い上げております三分の一の
政府買上金の中からこれを払い下げることによ
つて彼らの要請を満たして行くか、あるいは別途四千万ドルの輸出の原材料として金塊そのものを外国から
輸入するか、あるいは
交換文書の中で約束されております
通り、すなわち行政指導の妙味を発揮されて、そこで協約されておつた実行を彼らに迫るか、四つの中の
一つの解決がなければ、この
法律に関する限りはほとんど無
政府状態でないかと思うわけであります。
大蔵政務次官にはただいま端的にこの書類をお見せいたしましたが、あるいは何ら基礎的な御研究が行われておらないかもしれませんけれ
ども、事柄はきわめて明白な事柄でございまして、輸出
業者たちが輸出に使うための金が高いのだ、高いのは困るから安くしてもらいたい、安くしましようとい
つてその
法律を改正して、自由に移すとき、陶磁器に使う金だけは今の値段にするのだ、こういうことにな
つておつたことがそうでない形にな
つておる事柄について、政務
次官は一体これをいかに
処理されるお考えでありますか。この機会にまずこの点をひとつお伺いいたしたいと思うのでございます。