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1954-03-31 第19回国会 衆議院 大蔵委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月三十一日(水曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 千葉 三郎君    理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君    理事 坊  秀男君 理事 山本 勝市君    理事 内藤 友明君 理事 久保田鶴松君    理事 井上 良二君       大平 正芳君    島村 一郎君       苫米地英俊君    福田 赴夫君       藤枝 泉介君    堀川 恭平君       池田 清志君    福田 繁芳君       柴田 義男君    春日 一幸君       平岡忠次郎君  出席政府委員         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君  委員外出席者         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 三月三十一日  委員滝井義高君辞任につき、その補欠として佐  々木更三君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月三十日  接収貴金属等の処理に関する法律案内閣提出  第一二五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  外国為替銀行法案内閣提出第七三号)(参議  院送付)     —————————————
  2. 千葉三郎

    千葉委員長 これより会議を開きます。  本日はまず外国為替銀行法案を議題として質疑に入ります。質疑は通告順によつてこれを許します。平岡忠次郎君。
  3. 平岡忠次郎

    平岡委員 本日本会議MSA協定の承認を求める案件が出ております。このMSAが過ぐる三月八日に両国間に調印を見た際に、アリソン大使は、この協定日米両国の合意によつてなされた、こういうふうに言うております。私は、アリソン大使をしてあえて日米両国の合意によつてなされた、こういうことを言わしめるところに日本の悲劇があろうと思います。もう一つは、昨年の暮れにやはりニクソンが日本にやつて来まして、練馬の保安隊の本部ですか、そこに参りまして、保安隊の諸君を閲兵、査閲した際に、あなたたちはすばらしい、ボランテイア、志願兵である、祖国の国防をになつて志願兵である、こういうことを言つております。はなはだくすぐつたい話であります。実際問題は、いろいろな潜在的な失業者が農村におびただしく発生しておる。保安隊が募集しますと、食わんがためにそこに応募しただけの話なのであります。ですからこの点は、一家といえども、一国といえども経済的な力がない限りは、しよせんは強者の側の誘導的な一つの工作によつて、そこにあたかも合意であるとか、あたかも志願である、こういうこと自体に馴致されてしまう、こういうことが私は非常にこわいと思う。外国為替銀行法案なるものがただいま上程されておりますが、日本の対外的な貿易依存度の強い経済実情におきまして、この点は非常に大切な法案であろうと思います。それにもかかわらず、外国為替銀行法案を一瞥といいますか、一読いたしましての感じは、何かぬえ的な煮え切らぬ点がございまして、私どもはむしろこの点を憂慮いたしております。御存じのように、三月末におきましては、日本蓄積外貨も七億ドル前後に減つております。これはまだ七億ドル台にあるという見方もできますが、インドネシアとか、韓国に対する不良債権というようなものを差引きますと、おそらく六億ドル台になつておると思うのです。こうした日本経済にとりまして非常に危急存亡のときに、何ぞ外国為替銀行法案の出ることのおそきや、私はかように考えるものであります。ですから、少くとも出て来た以上は、徹底的なわれわれに期待を持たし得るような骨格を持つたものを期待するのでございまして、私はこの観点から二、三御質問申し上げたいのであります。今日は討論的な私の意向とか希望とかいうものもかなりあります。ありますけれども、実は明日は公聴会ですか、各界参考人の方がこの委員会においでになることになつておりますので、参考人の御意見を聞く上にも、一応ここにウオーミング・アツプ的な段階があつてよいと思いますから、むしろ政府の方から質問に対してのお答えとして、問題点を明らかにしていただきたい。かような点に一応私の限定を置きまして、御質問したいのであります。  私はこの為替銀行法が今まで立法措置をせずに、行政措置で間に合うというふうな見解から暖められておつた経緯も多少知つておりますし、それが今や暖めておくわけにも行かず、ここに法律的な制定をしなければならぬ、かような点から提出されたと思うのですが、これをはばんでおつた要素が二つあるように思うのです。一つは、日本銀行自身がやはり新たなる一つ外国為替銀行なるものの出現を好まなかつたのではないかと思われる節であります。もう一つは、いわゆる財閥銀行人たちからの、何かこういうふうな専門銀行というものが特定されますと、自分たちに都合が悪い。こうした小乗的な意向のために、出るべき法律が今まで出て来なかつた、かように考えるのですが、この二つの障害と私が想像いたしておる事柄につきまして、多少二、三年か一年前までさかのぼつてその点を解明していただきたいのであります。
  4. 河野通一

    河野政府委員 私ども為替銀行整備いたしたいと考え出しましたのは、一昨年の講和条約の発行によりまして、日本がいよいよ経済的に独立をする、対外的に今後いよく一本立ちをして一人前の立場海外との経済関係に入つて行くということに相なりまするのに応じて、その裏づけになる金融的な活動という面において、外国為替銀行整備ということが急務であるという観点に立つて、この問題の検討に入つたのであります。大蔵省といたしましては、実は一昨年の暮れくらいには一応の成案を得ておりまして、その後これらの問題を中心にして、各関係方面とも非公式にこれらの意見を闘わして参つたのであります。今御指摘になりました日本銀行あるいは市中銀行等も、いわゆる討議をいたして参りました当の相手一つではあります。しかし必ずしも私どもは、日本銀行あるいは市中銀行だけを相手としてこの問題を討議をいたして参つたのではありません。日本銀行あるいは市中銀行等におきましては、いろいろな点において慎重に検討を要するという観点から、意見はいろいろございました。しかし今お話のように、日本銀行は必ずしもこれらの問題について全面的に反対をいたして参つておるということでは実はなかつたのであります。問題の取上げ方として、たとえばかりにそういつた方向がいいとしても、これを法律制度としてやる必要があるかないかといつたような議論とか、あるいは時期をもう少し考えたらどうかといつたような議論は一部にありましたけれども日本銀行全体として、この問題について日本銀行立場から反対であるという意見をきめたということは実はないのであります。また市中銀行におきましても、御案内のように、これは各銀行がおのおの立場々々によつて意見が相当違つております。現に御案内かと思いますが、昨年の暮れ以来今年の初めにかけて開きました臨時金融制度懇談会で、この為替銀行制度整備について諮つたのでありますが、この際におきましても、この懇談会委員として出られた市中銀行の各指導者方々、これらが必ずしも一致した意見でない、皆様方の御意見がおのおの違つておるというようなことであります。これらのうちには、もちろん為替銀行として十分に活動しておる銀行が大部分でありますが、必ずしも一致した意見はなかつたのであります。これらの方々意見を十分にしんしやくしつつ、私どもといたしましては、さらに私どもが一昨年の暮れでありますか、秋でありますか、一応方針をきめましたこれらの問題を、さらに各界意見を十分に取上げながら、これに修正を加えて参つたのであります。そういつたようなことで、一応各界意見も出尽しましたので、先ほどもちよつと申し上げましたように、昨年の暮れこれらの関係方々のお集まりをいただいて、臨時金融制度懇談会を開催いたした次第であります。臨時金融制度懇談会の議事の経過及び内容等につきましては、また御質問によつてお答え申し上げたいと考えます。
  5. 平岡忠次郎

    平岡委員 今金融制度懇談会のことが答弁のうちに出ましたし、また私ども手元金融懇談会答申が配付されています。ですから、これによりまして御質問すれば問題点が一番わかると思いますので、まず最初に金融制度懇談会メンバーをお示し願いたいと思います。会長渋沢敬三さんだつたと思うのですが……。
  6. 河野通一

    河野政府委員 臨時金融制度懇談会の顔ぶれでありますが、ちよつとその前にこの臨時金融制度懇談会の性格を申し上げておきたいと思います。これはたしか一昨々年の暮れに大蔵大臣諮問機関として省議決定によつてできたものでありまして、ごく非公式な会合であります。一昨々年のこれをつくりました当時に、この機関に諮りましたものは、その当時よくいわれました——私どもはそういう言葉を使つたことはないのでありますが、いわゆる金融三法といわれた問題で、その後国会に御提案申し上げたものといたしましては、長期信用銀行法あるいは国民貯蓄債券に関する法律、あるいは貸付信託制度に関する法律これらの法案をこの懇談会に諮つて答申をいただいて、法制化いたした次第であります。  メンバーは正委員臨時委員にわかれておりますが、正委員金融界代表者として六名、名前を申し上げますと、全国銀行協会連合会会長である千金良さん、全国地方銀行協会会長である亀山さん、日本興業銀行頭取である川北さん、日本銀行の副総裁の二見さん、全国相互銀行協会会長である上山さん、農林中央金庫の理事長である湯河さん、これらの方々金融界代表として出ておられます。産業界からは、経団連の会長の石川さんと大阪の商工会議所会頭の杉さん、日本商工会議所会頭の藤山さん、この三人の方にお願いいたしているわけであります。それから学識経験者といたしまして、衆議院大蔵委員淺香さん——あいうえお順になつておりますので、ちよつと、ごつちやになりますが、その次は、日本経済新聞の編集局長をやつておられる円城寺さん、参議院大蔵委員長の大矢さん、同じく参議院大蔵委員の小林さん、貯蓄増強中央委員会会長である渋沢さん、衆議院大蔵委員長千葉さん、同じく衆議院議員の水田さん、輸出入銀行の副総裁の山際さん、参議院大蔵委員山本米治さん、この方々が正委員であります。それから為替銀行制度整備のための私ども諮問に対して、特に臨時委員としてお入り願つた方が十三名おります。日本紡績協会委員長の阿部さん、日本貿易会会長の稲垣さん、神戸銀行頭取の岡崎さん、第一銀行頭取の酒井さん、富士銀行頭取の迫さん、今は三井銀行でありますが、その当時帝国銀行でありました、そこの社長でありました佐藤さん、東海銀行頭取の鈴木さん、大和銀行頭取の寺尾さん、東京銀行頭取の浜口さん、北海道拓殖銀行頭取の広瀬さん、日本勧業銀行頭取の堀さん、住友銀行頭取の堀田さん、三和銀行頭取の渡辺さん、以上が臨時委員であります。
  7. 平岡忠次郎

    平岡委員 そうしますと、金融制度懇談会の中に特別委員会的なものを設けたわけですね。
  8. 河野通一

    河野政府委員 特別委員会は設けておりません。この臨時委員と正委員と申しますか、これとが一緒になつて一つのところで御会議をいただいたわけであります。
  9. 平岡忠次郎

    平岡委員 特別委員と申し上げたのですが、要する臨時委員と合議させる。今まででも、たとえば長期信用銀行法案策定の前の諮問という場合には、それに関しての臨時的な委員を加えたのですか。そういうことはございますか。
  10. 河野通一

    河野政府委員 人数はこういうように多くございませんでしたが、はつきり記憶いたしませんが、たしか少くとも日興証券の社長遠山さんは臨時委員として長期信用制度の審議に入つていただいたのであります。あるいはまだほかにあつたかと思いますが、記憶しておりますのは、遠山さんだけであります。
  11. 平岡忠次郎

    平岡委員 それをお聞きした理由は、臨時委員として各市中銀行方々大挙列に加わつて、こういう点から答申書自身内容相当支配もされる、そういうような点があろうと思つたので、その点をお聞きしたのであります。ただわれわれは今の国におきますと、元の財閥銀行方々とかが、こういうような決定的な支配力を持つておりまして、錯覚を起しがちです。しかし一歩海外に出まして、いわゆる国際金融市場において、この人たちのポジシヨンがどうかということになると、まるで問題になつておらぬという点を発見しまして、これはわが国自体の今の国際金融市場における劣勢を悲しむとともに、今の国内論議されているこうした為替銀行専門銀行をつくるやいなやという問題に対して、からまわり的な議論に終始しておる。こういうふうに、たとえば銀行民主化とか、そういうような点から全部に機会均等を与えよとかというような大義名分的な議論が出ようと思うのです。しかし実際に明治維新後の日本と同様に、いわゆる国際金融市場あるいは広くは国際経済の中にある日本自身の地位が、明治維新のあとの日本と同様な非常に劣勢に立つておると思うのです。だから劣勢を克服することが必要か、あるいは民主化というような空名のもとに、機会均等を与えようとするような議論が大切かというような点は、私はもう議論の余地はない、かように思つております。それで国内論議されるからぼやかされておりますけれども、われわれは外国為替銀行をつくるというのは、だてや酔興でやるわけではなしに、日本自立経済をつちかうための一環としてどうしてもこのことは必要である。こういう観点からものを見て行かなければならぬと思うのです。こうした点におきまして、昨年九月に私ロンドンに参りましたときに、こうした点に一応関心を持つていまして、そういう点も多少調べてみたのであります。ところが昭和二十七年の九月から日本の三銀行ロンドンで店を持てることになつたわけです。そこでちようど私が参りましたときは一年経過しておる。それでロンドンに出ています銀行は、富士銀行帝国銀行と、それから東京銀行の三行でございます。これは、二十七年の九月一日に同じスタートをしておるわけです。そこで各三支店に参りまして、私つぶさにその実情を見たのですが、富士銀行にしましても、帝国銀行にいたしましても、二十七年に派遣された五、六名の日本人の陣容がそのままで、閑古鳥といいますか、何にも仕事をしてないのです。ところが東京銀行の場合は、大体七、八十名のフランス人を縦横に駆使いたしまして、わずか一箇年にほんとうの仕事をしておるのです。こういう点はイギリス自身伝統を重んずる国であり、歴史というものを尊重する、こういう点で、正金銀行が八十年なり九十年なりの歴史を持つておる。そこで終戦後初めてロンドン市場に首を出した三銀行が、日本論議においては、一様に同じような条件なりとして出て行つた銀行が、結局外国の方から見た評価がまるで違うのです。こういう点は無視し得ないと思うのです。それで、たとえば日本における外銀支店がございます。そこに為替業務のある一部を委任するというようなオーソライズド・デイーラーとしての扱いを受けておる。ところが私が行きましたときには、その三銀行をオーソライズドするかどうかの問題があつたようであります。こういうふうな点におきましても、いずれにしても国際的な金融市場において輸臓を競うという点では、単なる形式論ではなしに、やはり歴史を持ち、その陣容を持つたそういう銀行が幸いにして日本にあるのですから、そういうものを政府の力でバツク・アツプしまして強力に推し進めて行く。こういう点がどうしても大局から考えられなければならぬと思うのです。この点は単に伝統を重んずるロンドン金融界が、今までの正金東京銀行を無視し得ないところまでやはり評価しておるということと、それからただこれは伝統を尊重するイギリスの国柄であるからと思つたのですが、やはりニユーヨークに行つても同じ事態です。こういう点から行きまして今の形式的な論議は何にもならぬと思うのです。これはりくつからいえば、反対議論も幾らでもあります。賛成の議論纂ります。しかしわれわれがスケツプテイシズムに陥つたときには歴史を振り返る。この歴史のどの時点にあるか、そこで何がなし得るかということが必要なんで、こうした点から、私はこの外国為替銀行制度が法制化される傾向は非常に喜ぶのですが、一本そこにバツク・ボーンが足りぬという点に対して多大の不満を感ずるのであります。少し議論が多過ぎるようでして、今日はむしろ銀行局長から問題点を開陳してもらつて、あすの用意にしたいというのですから、またもどしましてこの為替銀行制度についての答申の中に、九点にわたつて羅列されており、なおそのほかに原案を妥当とする意見にも特に要望事項というものがあつて、それが三点ほど列記されておりますが、この点につきまして、逐次問題点を解明していただきたいのであります。
  12. 河野通一

    河野政府委員 それではお求めによりまして、臨時金融制度懇談会における外国為替銀行制度についての答申について御説明申し上げます。  この答申はこういう形になつております。諮問をされたが、この政府原案については、これを妥当とする意見が比較的多かつた。しかしながらこれはやはり妥当でないとする意見もあつて、本懇談会として全会一致結論には到達しなかつた。こういうのが要するにこの骨子であります。特にこの答申案の中には、政府案を妥当とするという点についての理由は何らあげてございません。というのは、これは政府案を出そうとしておるわけでありますから、政府はいろいろ諮問したのがいいと思うから、これはあげてございません。ただ政府の案に対して、これは妥当でないという意見については、その理由がここに列記してあるわけであります。その理由がここに列記してあるわけであります。その理由は今お示しのように一から九まで大体まとめてあるわけです。一つずつ御説明いたしますと、一は、「現在における貿易金融実情にかんがみれば貿易金融国内金融との分断は困難であつて、強いてこの間に分界を劃すれば、金融の不円滑を招く。」従つてこういう専門銀行制度をつくることは適当でないというのがまず第一の議論であります。この点は、私どもも十分にこの問題の討議の際に非常に考えた問題であります。私どもは、外国貿易金融あるいは外国為替取引というものが特殊の能力と特殊の経験とを要する。これは大きな分類からいえば、もちろん商業金融ではありまするが、商業金融の中で、外国貿易金融というものは非常に特殊な能力と特殊な経験を要するという点に重点を置いて考えておるのであります。もちろん国内金融貿易金融とのつながりが全然ないということは申すべきでないと私は考えますが、すべての金融について、ある一つ金融が初めから終りまで一本でつながらなければならぬということはないので、これは縦割論横割論という議論がよく言われますが、金融というものは縦割一本でつながらなければならぬという理論は理論的に成り立たない。早い話が、長期信用銀行制度ができた。ある一つ企業会社に対して長期信用銀行設備資金を出す。しかしそれに伴う運転資金は他の商業銀行が出すということはあり得るわけであります。それは何らさしつかえないと思うのです。問題は、その間の連繋というものがうまくとれさえすればいいと私は考えております。しかしながら現在の状況では、なかなか日本金融情勢からいいまして、これをはつきり横割に割切つてしまうということはむずかしい。つまり貿易金融段階は、これははつきりと為替専門銀行がやる。しかしそこから先は全部為替銀行が手を引くべきであるといつたような意味における厳格な意味横割論実情に即しないと思います。しかしながら、方向としてはそういう方向をとることは金融制度としてさしつかえないものだと考えておるわけであります。現に貿易界におきましては、この為替銀行制度に対しての意見として、国内金融貿易金融とをはつきりわけることが貿易金融としてのあり方として正しい姿であるという意見さえ出ておるようなわけであります。私はこの意見に対して全的に同感をしておるわけではございませんが、そういう意味で今読み上げました第一の議論については、私どもは十分考えた末こういつた点についての弊害はない。またそういう弊害を起さないで済むと私どもは考えておるという結論であります。  第二は「外国為替専門銀行外国為替取引及び貿易金融に専念するあまり、国民経済全体にとつて好ましくない結果を導くおそれなしとしない。」この意味は、私が懇談会で傍聴しておりましたときに得た印象からいいますと、たとえば一昨々年ですか、例のいわゆる新三品の輸入の問題について、非常に為替銀行金融をゆるやかにつけたために国内経済を相当混乱させるような要素があつた従つてあまり貿易に専念すると、どうしてもそういうふうに陥りがちだという議論であろうと思うのです。これは非常におかしい議論であろうと私は考えております。たとえば長期信用銀行なら長期信用銀行というものが設備資金なり長期金融というものを専門にやつて行くわけであります。専門長期金融をやるあまり、長期融金にむちやくちやなことをやる。それで日本経済に対して混乱を起すということは考えられない問題であります。この議論もどうも私としては納得が行かないと思つております。  それから第三は「貿易振興には物価政策その他の総合的施策が必要であつて専門銀行制度を確立してもその効果はない。」というのでありますが、これは要するに為替専門銀行をつくつて貿易振興にはそんなに役に立たない。それよりも、もつと輸出振興なら輸出振興といつたようなもつと別の観点からの総合的な施策を進めることがまず先決である、こういう議論であります。これについて一半の理由はある。しかしながら、さればといつてども為替専門銀行制度をそのゆえをもつて排除するということは、何ら理由はないと思います。為替専門銀行制度をつくれば、とたんに貿易振興されるとか、日本自主経済がそれだけでもつて非常に促進されるというようなそんなことは毛頭考えていないのでありますけれども、これは他の面における政策が総合的に推進されることが必要であることはもちろんでありますけれども、それのゆえをもつて為替専門銀行制度をつくるということが意味をなさないという議論は、私はとるべきでないと考えております。  第四は「専門銀行に対しては国内業務の取扱を制限する結果、何らかの優遇措置を講じない限り採算はとれまい。特に専門銀行育成のため円資金の供給について他の為替銀行と異つた特別の待遇を与えるおそれが多い。しかし乍らそのような特別の措置は講ずべきでない。」この意見は、為替専門銀行につきましては、お手元にございます法案についてごらんいただきましても、ある程度の国内業務は事実上制限されることに相なるわけであります。制度としてもそういうことになつております。たとえば店舗等につきましても、外国為替取引上必要なところに限つて店舗を置くようになりますから、単なる預金吸収あるいは国内金融だけのための店舗というものは、これは整理することに相なるわけであります。そういつた点から、国内業務が制限される結果、ただ外国為替業務だけでほつておいては、どうしても採算がとれまいということを前提にしておられるわけであります。従つて採算がとれないということになると、どうしてもこの専門銀行を育成するために、他の為替銀行と違つた特別の待遇を与えることになるわけであります。この銀行に限つて質的に違つた待遇を与えるということはおもしろくない。従つて為替専門銀行をつくることは適当でない、こういう議論であると思います。この銀行採算国内業務を制限されることによつて、とれるかとれないかの問題が第一点であります。この点につきましては、将来にわたつてのいろいろな前提なり仮定なりを置いてでないとなかなか採算の計算をすることはむずかしいのでありますが、私どもの一応計算をいたしましたところでは、大体年間十億ドル程度の外国為替の取引を行う。この程度のことは専門銀行としてはそうむずかしい問題ではないと思います。店を海外べ大体十五店くらい置くといつたようなことを前提として考えました場合に、決して採算が十分楽だということはいえませんが、私は採算は何とかやつて行けるというふうな推算をいたしておるのであります。もつともこの点は、あるいは水かけ論になるかとも思いますが、私どもの置いた前提からいうとそういうことがいえると思います。従つてどもは、この点については後にも意見が出て参りますが、この為替専門銀行というものは決して独占的な、他を排除するような銀行としてつくつて行くということは考えていない。一般の為替銀行としても、その業務ができる範囲においては、その好むところに従つて外国為替業務をやつてもいい。しかしながら専門に専念して外国為替業務行つて行く銀行というものが必要であるという観点から、こういう制度をつくつて参りたいと考えておるのであります。従いまして私どもは、この銀行に対して質的な差別をつけるような育成措置は講ずるつもりはないのであります。ただこの点についてはいろいろ御意見があると思います。質的に差別をつけた育成措置を講ずべしという御意見も確かにあろうと思いますが、これは後にも申し上げたいと思います。あると思いますが、私どもはそういう考えに立つておりません。この量的差別、質的差別ということがどういうことで言われるかという点でありますが、この点について一応私から御説明申し上げておきたいと思います。量的には、私どもはこの銀行外国為替取引が多くなり、あるいは国内の貿手の取引等が多くなつて参りますれば、いろいろな金融措置等が量的にはこの銀行に多く与えられることになると思うのであります。たとえば貿手等の日銀による再割引、あるいは外貨預託——政府の持つておる外貨を預託するということ、これはやはりこの専門銀行に量的には重点を置いてやつて行く、しかしながらこの銀行には外貨預託するが、他の為替銀行には外貨預託しないということになると、私はこれは質的差別だと思います。そういう意味の質的差別はつけない。もう一つ質的差別は、この外貨預託の金利をこの専門銀行には、たとえば年一%の低利で預託するが、他の一般為替銀行には年二%で預託する、こういつたふうなことをやれば、これは質的差別だと思います。また国内の貿手に日本銀行が再割をする場合の再割レートを、市中一般の為替銀行に対してはたとえば日歩二銭で再割をする、しかしこの専門銀行に対しては再割レートを一銭五厘でやるといつたような金利上の差別をつけることは質的差別であろうと思います。そういつた意味の質的差別は、私どもはするつもりはありませんし、またする必要はないと考えておる次第であります。ただ海外に、貿易の中心地等に対して十分な世界的な規模において支店網を張る、これは為替専門銀行としては当然優先的に考えて行かなければならぬことであります。また海外における国庫代理店業務というようなものについては、これはこの専門銀行が優先的に取扱つて行く、こういう意味で、他の為替銀行に許されないことをやるという意味においては、これはあるいは質的差別と言えないこともないと思いますが、この言葉の点は別として、そういつた点についてははつきり区別をつけて行きたい。しかしその点につきましても、私どもは、他の一般為替銀行海外支店の設置を全部押えてしまうというようなことは考えていないのでありまして、その市場市場における必要から見て、為替専門銀行のほかにさらに店舗を置くことが日本経済のために必要であるという事情がありますれば、他の一般為替銀行に対しても、海外支店を設けることについて私どもはそれを全部禁止してしまうというような考え方は何ら持つておりません。以上がこの第四に対する私の見解であります。  第五は「専門銀行に対しては一般外国為替銀行に比し質的な差別待遇を講じないとしても、量的な優遇が一定の限界を超えると質的なものに転化し、延いては専門銀行が実際上為替の集配機構となつて金融政策の二元化を来すおそれがある。」こういう議論であります。これは先ほど申し上げましたように、量的な待遇の差別はあるけれども、質的には差別をしないとは言つておるけれども、その量が非常に違つて来ると、これは質的な差別に転化するではないか、こういう議論であります。ことに為替の集配機構となつて、為替管理上一種の外国為替の中央銀行というような形になると、国内金融における中央銀行としての日本銀行と対立して、金融というものが国際金融国内金融とにおいてその中央機関が二つできる、従つて金融政策といいますか、そういうものが二元化するおそれがあるという意見であります。この意見に対しま しても、私どもはこの諮問をいたしましたときに配つておる「外国為替銀行制度整備について」というものの最後のところに四とありますが、「外国為替管理の方式は、本制度により、特に変更をうけないものとする。」この意味は今の問題に実は答えておるわけであります、私どもがここで言つております外国為替管理の機構なり制度なりというものは、この外国為替専門銀行制度ができるといなとにかかわらず、それによつて、この制度ができたからというので、外国為替の管理の方式をかえることは考えていない。従つてこの専門銀行ができても、為替の集配機構となるようなことはいたしません。それから為替管理の方式をかえるということはいたしません。しかし為替管理の機構を他の理由からかえるということはあり得ると思います。しかしながら専門銀行をつくることに関連して、そういつたことをやろうとは考えていないのでありまして、これは私ども諮問いたしましたこの要綱をそのまま実行できるとすれば、こういう問題は起つて来ないわけであります。ただわれわれの考えておるところに対して不信である、口ではそう言つておるが、実際はなかなかそうやらないだろうという御疑念があつたのなら別でありますが、私どもはそういうことを考えていないわけであります。  第六の「金融制度の改革は、これを必要とする充分にして明白な理由がない限り軽々に行うべきではないが、政府原案にはそれ程の理由があるとは思われない。なお一層慎重に検討すべきである。」これは特に御説明申し上げるまでもなく、水かけ論になるわけであります。私どもとしては、金融制度というものは、これはすべての金融制度がそうでありますが、現状は百パーセント悪い、この制度を直したら百パーセントよくなるといつたようなものはないのであります。どちらがよりよいか、それと今までのどこが悪いのだという議論よりも、私どもはこの制度を新しくつくることによつてどんなによくなるのかという点をあげ、強調しておるわけであります。従つてよりよくなるものは急いでやつたらよろしい、こういうのが私どもの見解であります。  それから第七は「貿易振興りため専門銀行の設立をはかるとすれば、むしろ独占的な強力な銀行とすべきであるが、現在の経済体制ではその時機ではない。」これは先ほど第四について御説明申し上げたところとちようどうらはらになつておる議論であります。つまり貿易振興を徹底してやろうと思えば、専門銀行は独占的な、かつ強力な銀行でなければならぬ。もつと極端な議論をずれば、現在ある各市中の一般為替銀行のやつておる外国為替業務を全部これに集中する、そうしてほかの銀行はほとんど為替業務をやらないというようなところまで独占させたらいい。そうしなければこういう為替銀行制度をつくるということは無意味だ、しかるにそういうことは今ではできないであろう、従つてこの制度反対だという議論であります。これも私がここで御説明申し上げるまでもなくおわかり願えると思いますが、特に私の見解をつけ加えて申し上げるまでもないと思いますから、省略いたします。  それから第八は「政府原案の目的は行政的措置によつて充分達成できると思われる。敢て法制的措置によるべき理由に乏しい。」この議論は、一応もつともな点もあるのでありますが、私どもがこの為替銀行制度というものを特別の法律によつてつくり上げなければならぬという立場に立ちましたのは、二つの理由によります。一つは、為替を取扱う専門銀行が必要であるということが一点、為替を取扱う専門銀行は、そのために銀行法の規制を受ける一般銀行一つとしてではいけないので、そのためには特別の法制がいるというのが第二点、これが、私ども為替専門銀行をつくり出さなければならぬと考えた二つの大きな理由であります。その理由一つについて、それは行政措置でやればよろしいという議論に対しては、これは見解の相違と申し上げざるを得ないのですが、私どもは、そういう行政措置によつては、こういうことの目的を達成し得ないから、法制化する必要があるという見解に立つておるわけであります。これも、特に私どもの見解を詳しく申し上げることは省略させていただきたいと思います。  次は「本制度外国にも類例がないので、外国に好ましくない反響を与えるおそれがある。」この点は、外国に類例があるかないか、いろいろ議論もあるわけであります。外国為替の金融制度については、千差万別でありまして、専門銀行と言えるか言えないかわかりませんが、たとえばイギリス等におきましては、特許銀行としてチヤータード・バンクあるいは香港上海銀行といつたようなものが海外の為替取引——もちろんこれは植民地銀行としての仕事もしておりましたが、そういつたようなことを専門行つてつておるという実情であります。これも、それは専門銀行ではないという議論をする人もありますけれども、私どもは、そういう点からいえば、これは専門銀行と考えてもさしつかえないと思います。ただアメリカには専門銀行制度はございません。これは、一時専門銀行をつくるべしという意見が出たのでありますが、これはうまく行かなかつた。うまく行かなかつたのは、日本経済事情というものとアメリカの経済事情というものがまつたくその事情を異にしているという点に出発していると思うのであります。従つて、各国々においてその事情に適するような金融制度をつくり上げて行くのがいいのであつて外国為替の専門銀行というものは各国にもないわけでもありませんし、私どもは、アメリカにそういう専門銀行制度がないからといつて、まつたくそれと経済事情を異にしておる日本を同じに考えるわけに行かない。  一番いい例を申し上げますならば、アメリカのドルというものは世界通貨なんです。為替上の率とかそういうものが何らございません。従つてアメリカにおいては、通貨の面からいつたら、国内金融と国際金融というものがほとんど差異ない。全世界ドルで商売できる国です。ところが日本は、国際貿易をやろうとすれば、円では商売できない。従つて金融もできないという状態にある。イギリスつて、やはりポンドが相当範囲において世界通貨として通用しておるという事情にある。そういう基礎事情と、貿易の依存度が非常に高いという日本の置かれている地位、これらの点をひとつお考えいただきたい。  それから後進国と申しますか、これらの国にはまだ外国為替の専門銀行というものはありません。しかしこれらの国においては、英米等の強大な経済力を持つた国々の銀行が、ほとんどこれらの国の外国為替業務というものをまるがかえでやつておる。従つてそういう国には、特にそういつた問題のための銀行という制度がだんだんできて来ないのも、ある意味においては理由があるのであります。もつとも最近パキスタンでありますか、だんだんその国の経済的独立をはかつて行くために、こういう専門銀行をつくつて行くということになつておるようであります。これらの外国における為替銀行制度につきましては、お手元に差上げてあります資料の中にございますので、ひとつ御参照いただきたいと思います。以上が大体懇談会において議論されましたときに、政府原案に対してこれを妥当としない、あるいは時期尚早だという議論がされた理由の概要であります。  次に、政府原案を妥当とする意見、これは比較的多数であつたのでありますが、その中においても次のようなことについて十分注意して、今後の運営に当られたいという希望があつたのであります。  その第一は、「専門銀行を育成するにあたつては、一般外国為替銀行がこれとその能力に応じて充分に競争と補完の関係に立ち得るよう慎重な配慮を加うべきである。この点は先ほどちよつと申し上げました、政府諮問案の中の裏の紙の3に書いてございますように、私どもも「既存市中為替銀行については、その能力に応じて外国為替取引及び貿易金融に従事せしめ、為替専門銀行に対し競争と補完の余地を与える。」という建前におりますので、この点の御要望については、十分それに沿い得るように配慮いたしたいと考えておるのであります。  第二には「原案の目的を達成するためには、専門銀行に対して各界特に金融界の積極的協力を得られるよう充分な考慮をはらうべきである。このため専門銀行の設立又は運営に当つては可及的に各界意向をこれに反映せしめるよう特段の工夫をすべきである。」これは専門銀行ができましても、各界がこれに対して協力をしない、そつぽを向くというようなことであつては、この銀行の設立がせつかくできても、国の目的を十分達し得ないのではないか。従つて各界がこれに協力して行けるように、これらの専門銀行の設立、運営にあたつては協力関係をできるだけ確保できるような配慮を加える必要がある。この点につきましても、私どもも今後の専門銀行の設立、運営にあたつては十分配慮いたしたいと考えておるのであります。  第三は、「専門銀行制度の確立によつて商社金融と生産金融との円滑なる連繋が失われるようなことのないよう特段の配慮が必要である。」この点は今の反対論の中の(1)で申し上げましたことに対して、そういう実際上の問題として連繋が断たれる、そのために国内金融と国際金融との間のつながりが断たれた結果、金融の全体が非常にうまく行かないようにならないようにするということであります。この点ももちろん私どもとしては十分配慮いたして参りたいと考えております。  以上がこの答申内容の御説明及びこれに対する私どもの考え方の概略でございます。
  13. 平岡忠次郎

    平岡委員 御説明を聞きまして痛感することは、そうした異論を出している市中銀行と申しますか、財閥銀行と申しますか、これが国際経済に対して認識の不徹底というか、甘い情勢分析をしていること。これはほんとうにコツプの中でいい気になつてごたくを並べているとしか考えられません。そこで実際に普通の一般法としてこの為替銀行が発足するということになれば、これはりくつのつけようでこうした議論がジヤステイフアイされるわけであります。しかしそれは竿頭一歩を進めて単独法によつてやるとか、そのくらいの決意をしないことには問題の解決はしないように思います。こういう点で、ある意味では、この法律案の性格に対しての岐路にわれわれは立つていると思う。  今の御説明で大体の論点が明らかになりましたので、これはあすの参考人の論述とか、いろいろな審議の経過を経まして、逐次われわれの意見も述べたいと思うのですが、本日は、私としましては銀行局長の以上の解明をもちまして、一応私の質疑はこれで終ることにいたします。
  14. 柴田義男

    ○柴田委員 銀行局長に伺いますが、今度新しく為替銀行法律をつくるという根本的な考え方を伺いたいのです。結局理論的には、市中商業銀行経済力が常道であつて、何ら貿易上もさしつかえがないというように考えられます場合は、こういう特殊銀行制度というものは考えなくてもいいのじやないか、ただ現在の日本経済力から見まして 一般商業銀行経済力が非常にその度合いが薄くなつて来ておる。しかもオーバー・ローン解消というような問題が大きな問題となつておるわけであります。こういう見方から為替銀行の設立を急がれたような結果であるのかどうか、あるいはそういう問題でなしに、日本貿易関係をもつと高度に発達せしめるという意図から、貿易面から考えた結果、この専門銀行の設立の法案をつくるのだ、こういうことでございましようか。どちらが考えの比重の点において重いのか、この点をまず伺いたいと思います。  それからわれわれも為替専門銀行というものができ上ることはおそいような感じを持つておるのです。りくつとしてはどうしても必要である。ただこの法案を拝見いたしますと、現在為替扱いをやつておるその他の商業銀行に対しても、一切この法案を適用せしめて取引をせしめる、こういうふうに見受けるのでございますが、ほんとうに専門銀行をつくつて、それにのみ為替取引をやらせるのでなく、こういう商業銀行に対しましてもやらせなければならぬという考え方はどこにあるのか、この点を承りたいと思います。
  15. 河野通一

    河野政府委員 第一のお尋ねでありますが、私どもがこの為替専門銀行制度をつくる構想を立てましたのは、今お話のように、オーバー・ローン解消の措置、その問題とは全然関係はございません。むしろ今柴田さんもおつしやられましたし、また平岡さんもおつしやられた通り、私どもはそういうオーバ一・ローン解消の問題がいろいろ議論されておるのとは別に、理想としてはもつと早くこれらの制度が実現されることが望ましかつたとさえ考えておるのであります。従つてこれらとの間に、広い意味では金融制度、あるいは金融の仕組みという問題にやはり関連するという意味で、オーバー・ローンの問題と外国為替銀行制度とは関連がないとは言えませんけれども、今具体的に関連を持つて考える、あるいはオーバー・ローン問題の解決を促進するために為替銀行をどうした、そういうことは毛頭ございません。  それから第二に独占をさせないで、市中外国為替銀行にもおのがじしその力に応じ、外国為替業務を取扱わせるのは不徹底ではないか、なぜそういうことにしたかという御議論でありますが、これは先ほど平岡さんの御質問にもお答えいたしました通り、独占させるということは外国為替業務の性質からいつて必要がないと考えております。これは戦前でも御案内のように、横浜正金銀行というものがあり、外地銀行として朝鮮銀行、台湾銀行というものがございました。これはやはり一種の専門銀行ともいえるような機能を果しておりました。にもかかわらず、そのほかにいわゆる財閥銀行といわれた三井、三菱銀行等がやはり自分自身の支店海外に持つて外国為替業務行つてつたのであります。それらの業務を制限することは私は必要ないと考えております。むしろいわば言葉は非常に悪いのでありますが、国内業務を中心としてやつておる銀行が片手間に外国為替業務をやる、そういつた態勢にだけ放置しておくということは適当でない、外国為替業務に専念するいわゆる専門銀行というものの態勢を整える必要がある、しかしそれがために独占をしなければならないということにはただちに通じない、こういう考え方に立つておるのであります。これは戦前の例をごらんになつてもそうでありますし、現に先ほどちよつとイギリスの例を申し上げましたが、最近ではいわゆるチヤータード・バンクのほかに、ビツク・フアイブと申しますか、大きな国内銀行も相当外国為替業務をやつてつております。そういう点から見ても、これに独占させて、他の銀行には外国為替業務をやらせないという必要はこれはまつたくない。またそういうことをすることは、結局国の能力全体から見てかえつてマイナスであるように私ども考えておるのであります。戦前の例、また諸外国の例等から見まして、そういうことには競争、補完の余地を与えて行くことが適当であろうと考えておる次第であります。
  16. 柴田義男

    ○柴田委員 そういたしますと、為替銀行外国為替を取扱うという技術面等におきまして、先ほど平岡委員からもロンドン等をごらんになつ実情のお話がございましたが、一般商業銀行海外支店というものに対しまして、単に能力の点で相当の開きが現在見受けられるような感じをわれわれ受けたのですが、そういう弊害は今後とも伴わない、こういうお考えでございましようか。
  17. 河野通一

    河野政府委員 海外支店を設置するという問題でありますが、これは先ほど平岡さんの御質問にお答え申し上げたのでありますが、専門銀行ができたあかつきには、これを優先させる。しかもこれはおそらく世界的に重要な地域には支店網を張らなければいけない。その意味においては優先させます。しかし他の銀行から、たとえばある土地において、為替専門銀行支店一店だけでは足りない。日本貿易関係から見て、他にやはりもう一点ぐらい為替銀行があつた方が日本貿易を伸ばすために適当だということが出て参りますれば、その場合にはその地域の関係とか、その銀行能力等に応じて、一般の市中為替銀行に対しても支店の設置を認めてもさしつかえないと考えております。しかしあくまでも支店の設置については、為替専門銀行が優先するのだということは、はつきりこの制度によつて打立てられなければいけない、かように考えておる次第であります。
  18. 柴田義男

    ○柴田委員 反対のことで考えますと、今の局長の議論で行きますならば、今までの商業銀行外国為替取引をやらせても一向さしつかえないというふうに考えられるのです。たとえば技術面においても一人立ちができるということであつたなら、現在すでに大銀行海外支店を持つてつて、これに外国為替の取引を現にやらせておるのだから、そういうお考え方から行きますと、今までの通りで一向さしつかえはない。為替専門銀行というものを、法律をつくつて特殊銀行としてつくらなければならぬということはない。しかも日本経済の状態を考えました場合に、その取引をいたしますと問題になりますのは、採算の問題だと思うのです。こういうふうに分散せしめたことによつて採算がとれるかどうか、こういう問題がまた付随して来ると思います。この採算の問題についてどういうふうにお考えになりますか。
  19. 河野通一

    河野政府委員 採算の問題を申し上げます前に、今の外国為替取引という問題でありますが、これは柴田さん御案内のように、必ずしも外国為替取引をやりますためには外国に店を持たなくてもやれるわけであります。これは外国為替取引と言えるかどうかわかりませんが、広い意味貿易金融として、国内の貿手ということ、あるいは信用状を開設するというようなことは、必ずしも海外支店を持つこととは関係なく実はできるわけであります。あとは海外とのコルレスというものを利用して、金融上の操作はできるわけであります。そういう外国為替業務までこの専門銀行が独占をする、させるということは必ずしも必要ではないと私どもは考えております。海外の店の問題については、先ほど来申し上げた通りであります。  それから採算の問題でありますが、れも平岡さんの御質問のときにちよつと申し上げたのでありますが、なかなか的確なる推算をいたすことは今むずかしいと思います。と申しますのは、今後どういう前提に立つてこの問題を考えて行くかといつた点で、前提がいろいろございますので、われわれがある程度の前提を置いて考えましたところは、先ほど申し上げましたように、大体海外に十四、五店ぐらいの支店を置く、そうして年間の外国為替の取引は大体十億ドル程度の取扱いをいたす——現在の日本外国為替取引を一番大きく取扱つておる銀行の年間の取引が、大体七、八億ドルだろうと思います。十億ドル程度を取扱うということで計算をいたしますと、国内の業務だけをやつておりますように、実は利ざやが多くないのでありますから、決して非常に楽な決算ができるというわけには参りませんが、何とか採算はとれるという見込みであります。
  20. 千葉三郎

    千葉委員長 大平君。
  21. 大平正芳

    ○大平委員 先ほど銀行局長から、金融制度懇談会のいろいろな御意見を拝聴したのですが、この法律を見ますと、よほど政府は遠慮されたというか、各金融機関に気がねしたというか、できるだけ当りさわりのないようにしたいという配慮が非常に濃いような感じがするのです。もつとも金融機関の機能を分化さして専門銀行をつくつて行くという方針はけつこうでございます。われわれも賛成でございますが、この法律だけからは非常に積極性が乏しいような感じがいたします。もつとも法律によらないで、日銀や政府の力でこれをどう育成して行くかという問題は、これは銀行局の方でもいろいろ考えられておるんだと思いますが、そういつた点についてどういうお気持でおるか、二、三お尋ねしておきたいと思います。  第一は、量的な差別は、ある程度貿手の再割とか外貨預託等において配慮するというお話が今ございましたが、たとえば外貨預託にいたしましても、占領の間に外国銀行に預託した外貨を、専門銀行ができたからというてすぐ引揚げるということもなかなかむずかしいんじやなかろうか、向うの銀行にそつぽを向かれたのでは、こつちの外国における金融がなかなかうまく行かぬから、よほど用心しなければならぬと思いますが、一体外貨預託についてどういう段取りで考えられておるのかということが、一つ気にかかるのであります。  それと、この法律を読むと——先ほども御説明がございましたが、支店国内において制限するということ、もつともこれは三年の期限があるようですけれども……。そういたしますと、国内円資金を集めるということがそれだけ制約を受けることになります。ところが国内貿易商社は非常に弱体なんで、それだけを相手にしておつたのでは、円資金専門銀行が十分持つということはなかなかむずかしいと思います。また貸出し業務についても制限があるとすれば、今の預金が貸出し等の連鎖において出て来ているような状況ですから、専門銀行は円資に非常に困つて来るんじやなかろうかと考えます。戦前はコール市場が潤沢であつて正金あたりは主としてそこで供給を仰いでおつたのですが、このごろのようなコール市場では、戦前の十分の一弱ぐらいしかないように聞いております。そういたしますと、この銀行の外資にしても円資にしても、結局日本銀行とか大蔵省がこの銀行を育てるのか育てないのか、あらゆるヘゲモニーを握つておるという感じがするのです。従つて、一体政府はどういう段取りでこの銀行を育てて行くのか、この法律自体からは読めない、そういうことについてお考えを伺つておきたいと思います。
  22. 河野通一

    河野政府委員 第一は外貨預託の問題であります。外貨預託につきましては、これは御案内のように現在でも外貨預託をしておる、日本側にもいたしておる、もつともこれは外国銀行に預託をしている分量からいうと、日本側の銀行に預託している分量は必ずしも多くない、しかし逐次これは増加をいたして参つております。今後におきましては、やはり外国為替専門銀行制度ができますといなとにかかわらず、日本貿易金融制度が整うに応じて、これらの外国銀行にされておる外貨預託は、だんだんと日本側の銀行に預託されるという方向に馴致いたして行けるものだと私どもは考えておる。しかしながらこれを一気に行うということはいろいろな意味においてかえつて摩擦だけあつて益するところがないという結果にもなるので、今後の情勢の推移を見ながら、今日し上げたような方向へ逐次進めて行く、こういう方針で参りたいと考えております。  第二の御質問は、この新しい専門銀行円資金の問題でございます。これは非常に重要な問題でありまして、今後この銀行がうまく育つて行くかどうかの問題については、外貨の面においては外貨資金をいかにして調達するか、それから国内においては円資金をいかにして調達するかということが一番大きな問題だと思います。それで今後におきましても、私どもはこれらの問題については、必要なる貿易金融のための資金に欠けるところのないように十分なる配慮をいたしたいと考えております。それはあくまで先ほど来申し上げております量的な措置ということで行きたい。今も大平さんの御指摘のように、戦前におきましては正金銀行というのがあつたわけでありますが、これは国内における店は非常に少かつた貿易商社も強かつたということもありましようが、一方でコール市場も非常に潤沢であつて、大体横浜正金銀行はコール市場から貿易金融のための円資金を調達するということが一つのルートになつてつた。そのほかに日本銀行から若干の低利資金が旧正金には出ておりましたが、これは金額として非常にわずかなもので、横浜正金銀行自体円資金繰りを非常に楽にするというほどのウェートはなかつたと私は記憶いたしております。しかるに現在においては、コール市場も、今御指摘のように必ずしも非常に潤沢でないような事態においてどういうようにしてこの資金の調達をやるのかということについては、日本銀行との金融取引において、この貿易関係金融をどういうふうに取扱つて行くかということが一つの大きな重点になると思います。これを要するに、貿易金融のために必要でない資金はもちろん出す必要はありませんが、必要なる資金に間する限りにおいては、日本銀行との取引を通じて、できるだけ円滑に供給されるような配慮がなさるべきであろうと考えております。そのほか今のコール市場等の資金を集めることも、今後は並行して努力して行きたいと思います。  なお円資金を調達するという道として貿易債券というような短期の債券を発行することがよいか悪いかという議論もあつたのであります。この点はいろいろ勘案いたしました結果、かつ金融制度懇談会等の意見も聞きました結果、少くとも現在としてはまだそういう時期ではないであろうという意見が強かつたように思われます。従いましてそういつた制度は、この際としては採用したいことにいたした次第であります。
  23. 大平正芳

    ○大平委員 そうすると、今のだんだんと育成して行こうというお気持はわかるのでありますけれども、何さま今の貿易はこういうふうに不振でありますし、外国行つて商売をやるといたしましても、今のような金融にしても商社につきましても、これはとてもお話にならぬですが、そういう客観情勢が非常に深刻なだけに、相当勇気がいると思うのです。それで、たとえば先ほどあなたがおつしやつていましたが、質的差別について金利の差別はやらぬというけれども、内外の金利水準にこんな懸隔のあるときに、外国金融機関と競争してやらなければいかぬとなれば、よほど金利も考えてやらなければいかぬ。円資の供給が潤沢でないとするならば、これはやはり日本銀行が相当思い切つてめんどうを見なければいかぬし、しかもその金利は外国との競争という関係から相当考慮してやらぬといけない。つまり同じ為替銀行の間の質的差別はいけないとしても、国内金融との差別は相当勇敢にやつてやらないといかぬのじやないか、こういうような感じがするのですが、そういつた点重ねて御意見を拝聴したいことと、それからもう一つは、この第四条に免許する場合の心構えを書いてありますが、一番最初に人的構成というのがあります。おそらくこれは今の日本の現状では、たとえば東京銀行なら東京銀行というのが今度は外国為替銀行になるのだというようなことが常識になつております。しからば東京銀行としては、またその役員諸君としては、できたら外国為替銀行に衣がえして、自分たちも居すわるというか、そういうお気持に人情として当然なるだろうと思います。ただ今までのいきさつから見まして、相当国内金融界に波紋を起した問題でありますし、大体国内の反響から申しましても、これは人的構成をよほど注意しなければいかぬだろう。のみならず、これは御承知のように外国に信用を確立しなければいかぬ銀行なんだ。従つて対外的な関係をよほど考えないと、運営がうまく行かないのじやないか。従つてこの人的構成という点には特に注意していただいて、この育成をはかつて行くということにしなければならぬと思うのでございますが、そういつた点重ねて所見を伺いまして、きよう時間がございませんから、またよくお話を聞いた上であす質問いたしますから、今の点だけお願いいたします。
  24. 河野通一

    河野政府委員 金利のことでありますが、金利は今お話のように、国際金利と日本の金利とが非常に違いますので、たとえば外貨預託につきましても、現に日本の金利と相当違つた安い金利を出しております。今タイム・デポジツトで一分半です。これは日本の金利に比べたら非常に安い金利です。そういう点は極力排除して行きたい。貿易の金利につきましても、国際金利を十分見て、現在も、ことに輸出については相当優遇して参つておりますが、今後においては十分配慮いたしたいと思います。ただ今大平さんもお話のように、国内為替銀行、一般の為替銀行専門銀行との間に金利上の差別はつけないようにして行きたいと考えております。それから人的構成の問題でありますが、この四条の言葉はきまり文句であります。これは長期信用銀行にも同じようなことがあります。ただ新しくできる専門銀行の人的構成の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、金融制度懇談会答申の中にもありますように、この新しい銀行に対しては、金融界その他各界の積極的協力がどうしても必要である。そのためにはこの運営または設立にあたつて、可及的に各界意向を十分に反映できるようにすべきである。この意味はいろいろの意味を含んでおりますが、やはりこの新しくできる銀行の人的な構成の問題、あるいは資本の構成の問題、こういつた点が協力態勢というものをつくる場合の非常に大きなポイントになるのじやないかと私どもは考える。今のお話の点は、非常に重要な問題でもありますし、私どももかねがねそういつた観点からこの問題を考えて参り、ことに今御指摘がありましたように、この銀行は国際的に信用を持たなければならぬという点から見ましても、この人的構成につきましては、そういう点からも特に慎重な配慮を加える必要がある、かように考えておる次第であります。
  25. 千葉三郎

    千葉委員長 それでは明日は午前十時から開きまして、参考人として朝日新聞論説委員の土屋清君、一橋大学の山口茂教授、さらに岩井産業の社長の岩井雄二郎君の三人を参考人としてお招きいたしまして、御意見を承ることにいたしますから、なるべく早く御出席のほどをお願いします。  しばらく休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ————◇—————   〔休憩後は開会に至らなかつた