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1954-02-04 第19回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月四日(木曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 千葉 三郎君    理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君    理事 坊  秀男君 理事 山本 勝市君    理事 内藤 友明君 理事 久保田鶴松君    理事 井上 良二君       有田 二郎君    宇都宮徳馬君       大平 正芳君    苫米地英俊君       福田 赳夫君    藤枝 泉介君       宮原幸三郎君    池田 清志君       小川 豊明君    佐々木更三君       柴田 義男君    春日 一幸君       平岡忠次郎君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君  出席政府委員         大蔵政務次官  植木庚子郎君         大蔵事務官         (日本専売公社         監理官)    今泉 兼寛君         大蔵事務官         (主計局次長) 正示啓次郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局農         林保険課長)  久宗  高君         通商産業事務官         (企業局通商経         理課長)    安達 次郎君         通商産業事務官         (企業局援助物         資課長)    若江 幾三君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 二月三日  大衆保護のため保全経済会立法化に関する請  願外四件(廣瀬正雄紹介)(第五二一号)  同外十三件(加藤常太郎紹介)(第五二二  号)  旧軍艦河内残がい払下げに関する請願(田口  長治郎君紹介)(第五二三号)  生糸に対する原糸課税反対に関する請願(松平  忠久君紹介)(第五二四号)  同(中澤茂一紹介)(第五二五号)  宇賀神社御神酒醸造に対する酒造税免除に関す  る請願福田繁芳紹介)(第五二六号)  漆器に対する物品税免除に関する請願西村直  己君紹介)(第五二七号)  油津港を貿易開港に指定の請願持永義夫君紹  介)(第五七五号)  藤原ダム建設に伴う移転補償費の免税に関する  請願藤枝泉介紹介)(第五八六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長補欠選任  米国日援助物資等処理特別会計法等を廃止す  る法律案内閣提出第三号)  昭和二十八年度における国債整理基金に充てる  べき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第四号)  農業共済保険特別会計歳入不足を補てんす  るための一般会計からする繰入金に関する法律  案(内閣提出第五号)  資金軍用部特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出第八号)  製造たばこ定価決定又は改定に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第一〇号)  開拓者資金融通特別会計において貸付金財源  に充てるための一般会計からする繰入金に関す  る法律案内閣提出第一一号)  金融に関する件     —————————————
  2. 千葉三郎

    ○千葉委員長 これより会議を開きます。  本日は、米国日援助物資等処理特別会計法等を廃止する法律案昭和二十八年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案農業共済保険特別会計歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案資金運用部特別会計法の一部を改正する法律案製造たばこ定価決定又は改正に関する法律の一部を改正する法律案及び開拓者資金融通特別会計において貸付金財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案の六法案一括議題として質疑を行います。  なお本日は、政府側より政府委員といたしまして正示主計局次長、また今泉日本専売公社監理官、さらに農業経済局長小倉武一君、説明員として農業保険課長久宗君が出席になつております。質疑は通告順によつてこれを許します。井上君。
  3. 井上良二

    井上委員 農業共済保険特別会計に関連して質問をいたしますが、一体この法律建前は、予算的に申しますと、財政法のどこの規定によつてこの法律を出して来たのでしようか。と申しますのは、二十八年度災害被害による再保険支払いが増加したので、第十七国会では八十五億を一般会計から繰込んだけれども、それでは足らぬので、さしあたり二十九年度予算において五十五億を一般会計から繰入れる、こういうのであります。二十八年度災害による被害ということは、すでに第十七国会において、政府は当初本国会に確かに百三十五億農業共済保険に繰入れなければならぬとする法案を提出して参りまして、その後冷害等実情から、農業共済に繰入れるべき百三十五億のうちから約四十五億を冷害対策費に振り向けて、現実農業共済の再保険料支払いが困難な実情なつた。その後第十八国会においても補正予算が出ましたにかかわらず、そのままほおかむりでやつて参りまして、現実農業共済の再保険は赤字の状態にあることが事実であつたにかかわらず、どういうわけでこの不足額を第十八国会補正予算に計上せずに、これから一年間をまかなおうとする二十九年度予算に、二十八年度の当然予想されておる政府負担となるべき保険金支払い不足額一般会計から繰入れる処置をとつたか、これは実に財政法建前から申しましても、重大な予算的処置であろうと思います。この点に対して、一体政府はどうお考えになつておるか、一応大蔵当局に御答弁願います。
  4. 小倉武一

    小倉政府委員 御承知通り農業災害補償制度は、政府と県の農業保険連合会の間に再保険関係で成立しておるのであります。ただいま御指摘一般会計から繰入れの問題も、その再保険との関連において起つて来る問題であります。ところでこの農業災害補償制度における再保険の問題につきましては、農業災害の特殊な性格からいたしまして、どうしても長期的な均衡考えざるを得ないのであります。従つて年々の収支均衡を見るということは、はなはだこれは困難であることは申すまでもなく、年によりましては一般会計から繰入れを必要とするのでありますが、その繰入れにつきましても、必ず当該年度の再保険金支出のための不足金当該年度でもつて補うということば、先ほど申しましたような長期均衡趣旨から見ますれば、必ずしも百パーセント貫徹すべき原則でもなかろうかと存じます。特に本年のような異常な災害、本年と申しましても二十八年度でございますが、春以来の異常な災害のときにおきましては、この災害に基いてどの程度の再保険金支出をするかということは、あらかじめ的確に把握することははなはだ困難な事情でございましたので、御指摘のように、当初百三十億程度を予想しておつたのでありますが、これを財政その他の都合によりまして八十五億といたし、さらに二十九年度予算におきまして、五十五億の繰入れをするということに相なつているのでございまして、その間今申しましたような、保険長期均衡といつたような趣旨と、二十八年度災害が特殊な災害でありまして、金額の的確な算定が非常に困難であるということから、二度にわけられているということに相なつているのであります。
  5. 井上良二

    井上委員 政府は、二十八年度災害被害が甚大であつて政府責任の再保険料支払いが増加するというところから、十七国会には百三十五億という予算を提出して参つたので、それを八十五億に削つてしまつた。削ることを承知した。さらにその後被害実情は深刻であり、再保険料支払額は増加する見通しが立つているにかかわらず、その後国会が開かれなかつたならばいざ知らず、第十八国会が開かれ、補正予算が提出されている。その場合何で一体補正予算を提出しないか。ここに財政法がございますが、この財政法を調べてみましても、過年度の歳出を新年度において見るという規定は、どこにも規定してありません。そういう法的根拠はありません。従つて、これは完全に財政法の上から言うと違反であります。それといま一つ、私が非常に遺憾に存じますのは、八十五億は十七国会で繰入れたが、なおかつ七十一億ほどこの会計では不足を予想される。そとでとの七十一億の暫定処置として、さしあたり農林中金から農業共済基金の方で金を一時借りまして、共済基金連合会に対して、二十九年度予算で支払うまでのつなぎ資金として、一応資金的あつせんをするという処置を講じているのでありますが、こういう処置を講じなければならぬような事態になつているのに、どういうわけで一体十八国会補正予算を出さなかつたか。しかもここで二十九年度予算が成立し、との五十五億がかりに繰入れられることに国会承認を得ました場合、その間に生じますつなぎ資金利子補給が一億一千七百万円に上つておる。だから政府が第十八国会において予想される被害額に対処して再保険予算をとうに計上いたしておきますならば、一億一千万円からの利子は支払わなくて済むのです。しかもこの利子補給をやることにしておきながら、一体利子補給法的根拠はどれによつておるのです。何によつて一体利子補給をしようというのです。この利子予備金から支出するように説明がしてありますが、予備金から支出しようとも、どこから支出しようとも、利子補給をするという場合は、当然利子補給をするという法律を出さなかつた利子補給はできぬはずであります。一体どこに利子補給をする法的根拠がありますか、それをひとつ説明を願いたい。
  6. 小倉武一

    小倉政府委員 二十八年度災害に対しまする再保険金支払いにつきましては、ひとつ大きな私どもの方針といたしまして、また一般の希望といたしまして、できるだけ早く金を払うということがこれ当然の要請であり、また私ども努力のあるところであつたのであります。当然早く払う。しかしながら一方財政的な措置もこれに伴わなければそういうことはできませんので、でき得べくんば御指摘のように、再保険金の支払ひのための不足の額をできるだけ早い機会一般会計から十分に入れてもらう、これが一番的確で、一番容易な方法であることはこれは申すまでもないのであります。しかしながら年々一般会計から繰入れるということは、財政上の都合で迅速に出来ない場合も生じて参りますので、保険制度の上としては、御承知のように特別会計基金制度がございまして、二十五億ばかり用意してあるのであります。これがございますれば、一時の不足金を一々特別会計から入れてから保険金を払うということが必要なくなるのでございまするけれども、二十八年度災害が、との基金でもつては対処し得ないような大きな災害であつた、こういうことから、繰入れもまた相当厖大になるので、一時に入れるということは実は容易でなかつたのであります。ところが一時にそれを入れないからといつて、再保険金麦払いを延ばすということはできません。これはやはりできるだけ払うべきものであるということで、私どもといたしましては仮渡しの制度を利用いたしまして——もちろん一般会計からの繰入れによつてまかなえる分はそれでやりまして、足りない分は借入金でやりまして、仮払い制度を利用したのであります。ところが仮払いをやりますと、そこに利子負担の問題が生じます。この利子負担連合会従つて農民負担すべきであるか、あるいは政府負担すべきであるかという問題になるわけであります。ところで今回の災害に対処いたしまして、できるだけ早い機会に払うという努力をいたしまして、保険金を確定をし、払い込めば早くできないわけでもないのであります。それを形式的には仮払いという制度でやるのでございます。仮払いという制度は、通常であればそうではないのでありまするが、本年は特殊の事情をもちまして、そういう制度を利用したのでございますから、政府負担するのが適当である。こういうことで、仮払いのために必要とする資金利子につきましては、国が負担するということにいたしたのでございまして、その点は十分御了承願いたいと存ずるのであります。
  7. 井上良二

    井上委員 大蔵省に伺いますが、ただいま農林省当局としては、この保険責任を持つておる以上は、現実にその支払いが起つて参りますならば、できるだけ早く支払つてやりたいということから、困難な操作をいろいろおやりになつておるようでございますが、現実にあなたも御存じ通り、十七国会では百三十五億という案を出して来たわけであります。それをちよん切つて八十五億に減らして、そのまま穴埋めをせずにほうつておいて、これから二十九年度どういう災害が起り、どういう負担になつて行くかまだわかりませんが、大体例年の災害の実績から申して、やはり百億余りは一般会計から繰入れるという措置がとられるのが妥当であります。しかるに過年度災害を新年度に計上して行くという行き方は、妥当な予算的措置とお思いになりますか。その間に国会が開かれでなければ私は追究いたしません。開かれておるのであります。その場合にあなたの方としては、当然不足する予定額予算化すべきであります。それをせずに、これから起り得る災害を予想して予算を組まなければならないのに、過年度災害負担を新年度予算に組んで来るという行き方は、予算的措置として妥当な考え方とは考えられないのであります。これは明らかに財政法に反しておると私は見ておるのでありますが、そうお考えになりませんか。
  8. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 私から申し上げるまでもなく、この農業共済保険制度は、実は井上委員のおつくりになつ制度でございまして、非常にお詳しいのでありまして、メンタル・テストの意味でお答え申し上げます。特別会計の繰入れは、支払い金不足を補うということになつておることは御承知通りでございますが、年度区分がございまするので、二十八年度中にどの程度支払いが行われるか、またそれが二十九年度にどの程度行くかという問題が一つつたわけであります。それで前国会におきまして、たしかこの委員会でも、その点については迅速に支払うべきであるという御趣旨から、いろいろの点をおつきいただき、私どもとしても考えておることは御承知通りでございます。全部予算に組むべしという意見もたしかあつたことは承知いたしておるのでありますが、しかし今から反省をいたしますると、当時は災害という絶対的なバツク・グラウンドのもとに、何でもとにかく金を出せという空気も非常に強かつたのであります。その闘わずかの時間的な経過でございますが、今日は、国の金を出すことについてきわめて峻厳でなければならぬということが、また全般的な空気になつております。私どもとしては、当時から、国の金を出すにはやはり最小限度に切り詰めるべきであるという事務当局としての見解を持つておりまして、農林当局ともいろいろお打合せをいたしまして、連合会資金を使うということ、またそれに伴いまして、必要なる利子については補給措置を講ずるということも、この席上において御説明申し上げました通りであります。いろいろ御覧はございましたが、最終的には、それらの私ども考え方を御了承賜わりまして、予算国会を通過いたしましたことは事実でございます。今日におきましては、いろいろの経過はございましたが、一応私ども農林当局とよく相談をいたしまして出しました案を御了承賜わり、それによつて予算を実行いたしておるのであります。  なお過年度災害につきまして、新年度において払うのはどうかという御意見でございますが、これはいわば義務費的なものでございまして、ほかにもそういう例はあることはあるのであります。しかしながらさようなことは極力避けるべきであつて、もとより二十八年度災害がもう少し年度の初めに起つてつたと仮定いたしますならば、この繰入れ等も二十八年度に計上する額が多かつたであろうと私は思います。しかしながら打続く水害、冷害というものが時間的もある程度年度の終りに片寄りました関係もありまして、伺いますると、農林当局の非常な御努力にもかかわりませず、本日でございますか、旧正月までに一応全部の概算払いを終りたいという御意図でいろいろ御努力なつたようでございま芸、やはりいろいろの関係で一考の県に残つたところがあるようでございます。私どもとしましては、金の出し方につきましてはどこまでも厳正でございますが、しかし事農民の方々の利益に関係することでございまするから、事務処理につきましては、常に迅速果敢にこれをやつて行くべきである、こういうふうに心得てやつておる次第であります。
  9. 井上良二

    井上委員 非常に御丁重な御答弁でございまして、あなたの方でいろいろ事務を果敢に迅速に進めておる、また予算的措置もそれに伴つてつておる、こういう御説明でございますが、それならば去年国会で問題になつたときに、予算的措置さえあなたの方で農林省が要求するだけしておいてもろうたら、ここに一億一千七百万円もの金利を払わぬでも済んでおるのですよ。  一億一千七百万円というものは、これは金利です。農民の腹のふくれるものとは違うのです。あなた方の予算的措置が悪かつたために、一億一千七百万円というものを国が損をしておることになるのですよ。あなたはそうお考えになりませんか。現実にそうなつておるのです。  それから問題は、予算的措置がいかにまずかつたかということが、この一億一千七百万円の利子によつてはつきり証明されておる。しかもこの利子は、政府負担すると言いながら、利子補給法律一体どこにあるのですか。その法律はどこに隠れておるのですか。それをひとつ御説明願いたい。
  10. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 これまたすでに御承知の点であろうと存じますが、一応御説明申し上げます。  御承知のように、あのときの積立金が二十五億であつたのでありますが、実はもう少し積立金がありさえすればこういう利子はいらなかつた。しかし積立金が多ければ、それに対応する利子が起つておるはずでございまして、どちらに出るかという問題でございます。その点は実質的には差異はないのであります。  それから利子補給の点でございますが、その点につきましては、なるほど法律をつくるのが筋だという御意見もあろうかと存じますが、当時も御説明を申し上げまして、一応法律がなくともいいという解釈でございました。その点は委員会におきましても御説明を申し上げたと記憶いたしております。
  11. 井上良二

    井上委員 私がこの問題を取上げて問題にいたしておりますのは、御存じ通り農業災害補償法は農村に対する一種の社会保障的意味を多分に持つた法律でありまして、従つてただ一つ農作物にその生活の全体をたよつております農民といたしましては、一年に一ぺんしかとれない農作物被害が、深到に農家経済に影響をいたして参ります関係から、この保険によつてできるだけ農家被害最小限度に補うてやるという立場から考えて、二十八年度の問題は二十八年度処置をしておかぬと、二十九年度災害が起り、政府負担保険料相当量つて参りますと二十八年度災害政府負担がその年に始末されないで、二十九年度に持ち越された関係から、二十九年度の全体のこの会計のわくというものが政治的に非常に圧迫されて来る危険が起つて参ります。この前はこれだけ出したじやないか、またかまたかという、そういう一つ財政的な感情で圧迫される危険が非常にありますから、その点から、財政法立場から考えても、二十八年度に当然予想されておる被害に対して、政府負担分予算に計上しするという処置をとるべきであろうと私は考えております。それといま一つここで伺つておきたいのは、全体の清算をしました後において、差引七十一億二百万円ほど不足が生じておつて、そのうち五十五億をともかくも繰入れるということになつておりますが、これでもなおかつ実際の不足は補えないのであります。そういたしますと、未経過保険料、未経過の再保険料というものは一体、全体でどのくらいの数字に今見込んでおりますか。まだ数府県がはつきり政府の方に要求して来ていないので、最後的結論がわからぬというお話のようでございますが、それにいたしましても、およそ予算を請求いたします場合に、未経過の再保険料支払い見込額というものは一体どのくらいの予想をされておるかということを、一応この際明らかにしてもらいたい。  それから何か利子補給は、委員会政府説明さえうまくしておいたらそれで事が済むようにお考えでございますが、そういう建前法的根拠が、省令か何かあるのでありますか。私の考えるところによると、少くとも国の金を使います場合には、予算的措置を講ずるか、さもなければ法律によつてその支出を明確にしておかなければならぬことになつておるはずであります。そうしますと、予備金から一億一千七百万円もの利子補給いたします場合には、当然利子補給法案国会に提出して承認を求めておくべきが正当なやり方でないか、こう考えますが、いいかげんに話して驚いて事が済むものでございますか、その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  12. 小倉武一

    小倉政府委員 二十九年度の起り得べき被害に対します再保険金支払いでございますが、これはもちろん二十九年度にどの程度被害が起るかということを見込んで準備しておくという性質のものじやございませんで、御承知通り年々農家共済掛金払い連合会は再保険料払い、その再保険料につきまして政府が一部負担しておる。従いまして政府支出といたしましては、再保険料特別会計への繰入れ、こういうことになつて現われるのであります。こういう金が二十九年度では七十三億余りあるのでありまして、超均衡建前からいえば、年々政府としての負担になつております再保険料と、連合会の積立てるべきものと合せまして対処できるような処置になつておるのであります。これ以上の災害ができますれば、ただいま御審議になつておりますような一般会計からの繰入れといつたような問題が生じて参ります。それからこの利子補給の問題でございますが、これは十七国会で成立しました予算冷害対策の中に、この利子補給予算を組んであるのであります。そういうことで、御了承願つておるものといういうに了解しておるのであります。
  13. 井上良二

    井上委員 この農業共済基金ですが、この基金政府出資をいたしまして、また連合会からも出資をするということでできておるのでありますが、連合会側出資金はその後どういうぐあいになつておりますか、わかつておるところを説明願いたいと思います。
  14. 久宗高

    久宗説明員 農業共済基金に対します農家負担の問題につきましては、当初法律に五年以内と書いてあつたわけでございますが、これが落ちまして、結果におきましては七年間に分割して払うことになつたわけでございます。初年度の分は年度が大分経過しておりましたので、大分少額であつたわけでございますが、八千五百万円程度のものが初年度に入りまして、第二年度からその後の分を六年間で平均いたしましたもので入つておりまして、お手元に差上げました数字に載つておると思いますが、現在たしか三億七千万円だつたかと思いますが、それが払込み済みになつておるわけでございます。
  15. 井上良二

    井上委員 もう一点伺いますが、農家及び農業協同組合の持つております建物等建物共済に入つておりましたところ、例の昨年の災害を受けまして、被害があまりにもひどい。それでこの保険の軽いがなかなかで言い関係から、この建物共済に一定の支払いに充てるための資金を融通いたしまして、それに対して利子補給損失補償をする法律が成立いたしておるのであります。ところが政府の方では、どういう御都合でございますか、この建物共済に対して支払うべき保険料の裏づけになります資金損失補償利子補給を、最初は和歌山県だけ認めて、他は認めなかつた。その後今度はちよつとうるさくなつて来よつたので、一千万円以上の被害を受けたところは認める、一千万円以下は認めぬ、切捨てだ、こういう処置をとつておるのであります。これは主として大蔵省がぐずぐず言うておるということでありますが、一体ごの法律を丁被害額によつて左右するということにきめてあるならいいけれども、そんなことはきめてありません。一千万円以上は損失補償なり利子補給をするが、一千万円以下はしないという大蔵省の見解はどういうところから来たのですか。しかもそのあとに残つたのはわずか数府県で、たしか三、四県しかない。これがまま子扱いになつておる。どういうわけで一体大蔵省はそういうことにしているのです。あなたの方にそんな相談はございませんか。事務当局でかつてにそんなことをやつておるのですか。そんなことをすればむちやくちやだ。
  16. 小倉武一

    小倉政府委員 建物共済につきまして、水害等による共済金の支払いについての融資に関連します利子補給損失補償の問題についてのお尋ねでございますが、これはもちろん法律でそういうことが政府としてできる規定になつておりまして、できるだけ広い範囲でやりたいことは、私どもとしても希望するところでありますが、これはこういう利子補給に限りませず、ほかの営農資金あるいはその他の利子補給につきましても、水害その他の災害によつて必要とする資金の融通につきましてどの程度まで見るか、たとえば県にいたしまして、どの程度被害のあるところまで、たとえば冷害県なら冷害県と見るかということにつきましては、特別に法律でうたつているめどはございませんので、私どもができる範囲で、どの程度以上の府県についてはめんどうを見よう、どの程度以下の府県については、これはごく小規模であるから県の自前でやり、あるいは団体の自前でやつたらよかろうという境目はどうしても生じて参るのであります。保険の場合、建物共済の場合にどういうめどでやるかということにつきましては、もちろんいろいろ御議論がございましようが、そういう一つの線一の引き方として、一千万円程度でもつて線を引いて、それ以上のところの損失補償なり利子補給ということについては政府が相当めんどうを見なければ、連合会としても金融の便にも困るだろう、それ以下は県なり、あるいは場合によつて連合会の自前でやれやしないか、こういうところで、そこにめどを置いてきめましたので、御指摘のようなこの措置から漏れました県は、二、三ございますけれども、その利子負担等を見ますると、連合会として政府の助成がなければ耐え得ない程度ではないというように考えますので、かように措置をいたしたのであります。
  17. 井上良二

    井上委員 それはあなたの方の一方的解釈です。法律はそんな区分をしていない。しかも残余のものが、国として予算的に非常に大きな負担になるということならば、予算的処置の上からこれはいろいろ考えなければならぬ点もあろうかと思います。しかし、取残されたものは数県にすぎないのでありますから、国の負担としてもごくわずかである。しかもそのことによつて農民共済に対す信頼感が失われる。せつかく現金をかけておいても、政府はぐずぐず言つて少しもめんどう見てくれない。法律にちやんと規定してあるにかかわらず、その法律さえ、あるものは適用され、あるものは適用されないという差別がとられていいかどうか。正示さん、お帰りになりまして、係の人に会つてもらつて、そういう差別をつけることをやめて、全体にしてやるというお話ができますかどうか。それとも、それはだめですか、どうですか。あとほんのわずかだと思いますが、せつかく隣まではもらつているのに、こちらはもらえないとなつた場合に、えらい違いです。みぞ一つ離れて、県が違うだけで、片一方はやつてもらつて、片一方はやつてもらえないということになるのですから、そんな差別はありません。そこには何とか考えてやつたらどうかと思います。どうですか。何とか話はできますか。
  18. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま農林省政府委員からお答えになりました通り考えておりますが、さらに国会におきまして、災害に関する特別の立法がいろいろなされたのでございます。それらの立法の中にも、適用地域等につきましては、被害程度、あるいは地元負担力の程度というふうなことで、線を引いておられる例はたくさんございます。また昨年度災害は、まことに異常のものでございましたが、災害は年々歳々起つております。それらとのバランスということも考えなければならぬかと存じます。私どもといたしましては、ただいまのような御意見をも十分考慮に入れながら、適正なところで線を引きまして、やはり負担力その他を考えまして、がまんを願うところはがまんを願わなければならぬというふうに考えておるのであります。私どもといたしましては、そういう気持で農林省と十分相談をいたしましてやつておりますので、その点は御了承を賜わりたいと存じます。
  19. 井上良二

    井上委員 それはあなた方の方の一方的解釈で、非常に僣越でありますけれども、あなた方としては法の規定通りの行政をやつてもらつたらいいので、法の規定以上の考えを持つてもらつては、はなはだ迷惑です。その点は、もう一度よく御検討を願いたいと思います。  最後に、この災害による被害の損害査定の適正化の問題でございますが、御承知通りこの保険の一番大きな欠点は、損害査定をどう適正に把握するかという問題であろうと思います。このことについては、農林委員会におきましても、いろいろ検討を加えておるようでございますが、なかなか正確なよい案が生れて参りません。問題は、損害査定をいかに適正に把握するかということが、保険金支払いの上に非常に重大な関係を持つて来るし、またこれが保険を信頼する上においても、いろいろな関係を生んで来る一番土台であります。この問題に対して、政府一体どういう対策をこれに加えようとしておるか、現状維持で行こうとするか、それとももつと公正な機関を設けて、適正にこの損害を押えて行こうとするか。私はこれはこの保険がよくなつて行くか、悪くなつて行くかという非常に重大なポイントではないかと思います。  それからいま一つ保険金支払いでございますが、これがいろいろ問題がございまして、政府もときどき必要な指示をそれぞれ関係面に出しておるようでありますけれども、なかなか趣旨が徹底いたしません。ために、実際被害を受けました農家が、保険金をまるまる適時にいただくということがなかなか困難な実情であつて、いつもそこに問題を生んでおるのでありますが、保険金が完全に、すみやかに農家に渡る処置を願いたい。どうやつたらいいかということについて、御検討を願つておりますならば、それをひとつ御説明願いたいと思います。
  20. 小倉武一

    小倉政府委員 災害補償につきましての損害評価の問題が非常に重要性を持つておることは、御指摘通りであります。私ども行政事務をやつております者といたしましても、現行制度が最善であるとは考えておりません。これはむしろ相当根本的に検討を加うべきものであるというふうに考えております。そこでどういう方向で今考えておるかと申しますと、一つは組合なり団体が損害を評価するのではなくて、御指摘のような第三者が損害を査定をする、こういう行き方であります。ただ第三者で損害を評価する行き方が、現行の補償の立て方で一体可能かどうか。技術的に、あるいは人員、予算の点から見まして、今のままの制度では、おそらく不可能に近いというように私考えるのであります。そこで、第三者の評価をやるといたしますれば、評価ということを技術的に可能ならしめるために、保険制度自体の実態をむしろかえて行かなければならぬという面が出て来るのであります。もう一つの行ぎ方は、保険の仕組みはほぼ現在の通りといたしまして、当事者がやはり基本的に評価いたして参るのでありますけれども、これを査定をすると申しまするか、わくづけをする。このわくづけを第三者がやる。たとえば農林省の統計調査部等の被害調査なり、実収高からこれを的確にわくづけして参る、こういう行き方もあろうかと思います。損害評価自体は現行のようなやり方であるけれども、村あるいは県、郡といつたようなところで、一体被害がどの程度であるかということで、大わくを外からはめてしまう、こういう行き方もあろうかと思うのであります。その両方の行き方につきまして、技術的にも可能な、なおまた、より経費の少くて実効の上るやり方を、ただいま検討いたしております。  それから、共済金の支払いが的確に行くように、どのようなくふうをしておるか、こういう御質問でございまするが、この点につきましては、もちろん金銭の支払いについての事務的な問題にわたりまする点もございまするが、他方共済金をやつております団体の性格自体にも関連を持つと思います。保険金あるいは共済金の支払いが的確に参りますためには、なるべくよけいな仕事はやめまして、保険なり共済に徹した専門の、しかもできるだけ公の性格を持つた機関であることが望ましいのではないかと思いまして、そういう共済事業を担当する団体としての、性格の問題も出て来るかと思うのであります。     〔委員長退席、内藤委員長代理着席〕 これは根本の問題でありますが、日常の業務といたしましては、賦課金なりあるいは掛金等の相殺の問題、あるいは協同組合と事務所を同一にいたしておりまする結果、協同組合に対する債務が共済金の支払いのときに相殺される、こういつた問題もございまして、あるいはよその団体でなくとも、先ほど申しましたような共済組合自体の賦課金などをあらかじめ納めないために、共済金から差引く、こういう事務的な問題が実は多いのでございますが、こういう点につきましては、共済金を支払うというかわりに、少くともその以前に掛金なり賦課金はちやんと納めてあるということを当然前提にいたしまして、差引はまかりならぬ、実はこういう指示をいたしております。そういうことを確保するために、連合会につきましては組合別に、どの組合にはどれくらい保険金を払うかということを一般に公示させ、また組合におきましては、個人別にどの程度共済金を払うかという正確な金額を公にさせる、こういうことでもつて措置いたしております。これは何も組合あるいは連合会だけの措置では行きませんので、一般農民の方の自覚と申しまするか、これだけの金が来るのだから当然もらうべきだという主張が伴わないと、そこに相殺、その他場合によりましては非常に遺憾な問題も生じて参りますので、そういう点について、昨年から本年の共済金の支払いにつきましては、いろいろ地方団体に指導監督して参つております。なお今年度にさかのぼりまして、団体の性格からいたしまする問題につきましては、先ほどの損害評価の問題とあわせまして、ただいま検討いたしております。
  21. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 柴田君。
  22. 柴田義男

    ○柴田委員 昨日、私どもから考えますと突如としてガリオア、イロアの問題が提案されておつたのでありますが、この問題は十六国会以来国民の大きな関心事でもあつたのでございまして、十六国会におきましては、予算委員会あるいは決算委員会におきまして、ガリオア、イロアの問題がはたして物質的な日本の債務であるのかどうかという問題が論議されたのであります。十六国会予算委員会におきまして、総理大臣もみずから、この問題は完全な日本の債務だとは考えていない。ただ当時非常に物資の少い時期に援助をしてもらつたものであるから、精神的な債務ではあるというようなことをお答えになつておりますし、また決算委員会におきましても、記録を詳細に調べてみたのでありますが、岡野通産大臣もあるいは緒方副総理も、そういう意味合いの御答弁をされているのであります。しかるにこのたび今国会においてこれを債務として決定されるということになつたようでございますが、そういう外交交渉、あるいはその他の折衝等の経過を一通り承らなければならないことが一点であります。  もう一点は、昨日伺います。とレートが問題だと思うのであります。日本で昭和二十年の三月から昭和二十五年において朝鮮に送りました物資で、いわゆる対米債権となつております分が四千七百万ドルと記憶いたしておりますが、この場合のレートの計算は百二十五円で延べ計算になつております。日本から向うに送りました物資の計算の場合にはレートを百二十五円と計算し、今度はアメリカからもらつたガリオア、イロアの計算に至りましては、レートが三百五十円ないし三百六十円ということになつておりますならば、損失を受けるのは日本だけであつて、あまりにも一方的なレート計算ではないかと思われるのであります。この経過は大臣等の御出席によつて詳細に承るといたして、まずレート計算の基礎がどこにあつたかを承りたいと思います。
  23. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答えを申し上げます。昨日当委員会におきまして、通産省の援助物資課長からガリオア、イロアの昭和二十四年四月以降の経理を主といたしまして申し上げたのであります。ただいま柴田委員から、何かその債務につきまして、すでに政府はこの金額を債務と心得ているかのごとく昨日述べたようなお話でございましたが、そういうことを申し上げた事実はございません。私どもといたしましては、ただ今回対日援助物資特別会計法を廃止いたすにつきまして、その会計が取扱いました物資の収支、並びに今回それを廃止いたすにつきましては、一般会計に引継ぐべき未回収債権その他の物資はどの程度になつているかという事実を申し上げたのであります。今後このガリオア、イロアによつて受けました援助をどの程度債務として考えるかという問題は、全然別の問題でございます。その点につきましては、追つて適当なる国務大臣から御答弁をということでございますから、深くは立ち入りませんが、大蔵省といたしましては、そういうものを予算に幾ら幾らというふうに見込んだ事実は全然ございません。これは私どもとしましては、たびたび総理その他からも申されました通りに、精神的な一つの債務というふうには心得ておりますが、これを幾らというふうに考える段階にはまだ来ていない。それをきめるのはあらためて外交交渉が行われまして、国会において議決されまして、初めてきまるものであるというふうに心得ているのでございます。この点は誤解を防ぐ意味におきまして、明確に申し上げておきたいと思います。  なおレートの問題その他につきましては、本日通産省におかれまして、昨日以後、二十四年三月以前の経理等につきましてもある程度資料を整備されて見えているようでございますから、御説明を申し上げるのでございますが、繰返して申し上げますが、この収支によつて生じましたところの債権、債務の関係は、ただ単に当時の資料によつて、その資料によればどれだけになるかという数字を申し上げるだけのことでございまして、これを外交的にどの程度処理するかという問題は、すでに柴田委員も御承知通り、ドイツの事例、イタリアの事例、その他の例もございますので、全然別個に外交的に処理さるべきものと心得ている次第でございます。
  24. 柴田義男

    ○柴田委員 大分明らかになつたので、多少安心が置かれるように見通しがついて参りましたが、昨日の通産省当局の御説明でございますと、今たとえば大体の標準が二十一億ドルと称されておりますけれども、このガリオア、イロアの問題を、昨日の御説明では、何か二十一億ドルというはつきりした数字ではございませんでしたが、今度一般会計としてこの債務を決定されるというようなことで御説明を承つたような気がしておりましたので、驚いて実は過言ことをいろいろ検討を加えてみたのでありましたが、きのうの御説明はそういうことではなかつたのでございましようか、あらためて承りたいのであります。
  25. 若江幾三

    ○若江説明員 ただいま柴田委員の御質問でございますが、私が昨日申し上げたのは、いわゆる米国の対日援助額として、アメリカ側の資料によりますと二十一億四千万ドル余りになつている。この数字については、日本は確認はしていない。ただ昭和二十四年四月以降の八億四千七百万ドル余りについては、日米間の意見が一致している。これはあくまでいわゆる対日援助額についての数字を申し上げたわけでありまして、これが債務であるとかどうとかについては絶対申しておりません。念のため議事録をお調べ願いたいと思います。
  26. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 対日援助物資が精神的な債務だという御答弁のようですが、一体精神的な債務と法律的の債務、国際的貿易勘定といいますか、そういうものの債務関係の性格の差異がどういうところにあつてそういう御答弁をなさるのか。この精神的債務と法律的債務の性格の差異を御説明願います。
  27. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。佐々木委員昨日おいでになりましたのでありますが、昨日も、そういう問題は実は私ども事務屋が答弁するのは不適当だから、あらためて大臣にということで、昨日実はおあずかりを願つたのでありますが、たまたま先ほど柴田委員から、昨日の当委員会で債務としての金額を君たちは大体幾ら幾らというふうに言つたということがございましたので、私どもはそういうことを申し上げたのではなくて、ただ私どもの方で持つております資料で調べましたところの事実がこうでありますが、これはどの程度の債権として認めるかどうかは、全然今後の外交交渉というように心得ておりますということを申し上げたのであります。用語があるいは不適当であつたかも存じませんが、たびたび大臣のお話として、全体としての気持は、やはり私どもは債務として考えてはおるが、しかしそれを実際にどの程度の返済をいたすかどうかということは、今後の交渉にまつのであるというふうに伺つておりますので、ただその点を申し上げたわけであります。
  28. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 佐々木委員に申し上げますが、今の問題でありますが、きようの二時半から大蔵大臣がここへ出席することになつておりますので、そのときその問題をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  29. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 しかし事務当局考えを……。債務を支払わなければならぬということをあなたはおつしやるが、現実的に金額であつてもあるいは何であろうとも、もしそれが債務であつてこれを支払わなければならない、こういうならば、これは明らかに法律上の債務とこう考えるべきものであつて、今まであなたが、事務当局の解釈として精神的債務ということとは大分性格が異なる。精神的債務であるならば、恩義を感ずるという精神上の負担はありますけれども、金銭、物質でこれを返済するという、いわゆる経済上の給付履行の責任はないだろうと思う。どうも事務当局からしてあいまいな考えを持つて、まかり間違えば一兆億近くもこれを国民の税金で支払わなければならぬというようなことが起きるとすると、大きなゆゆしい問題だとこう思うのであります。ここで事務当局一体どういう解釈を下しておるのか、事務当局の見解を明白にしていただきたいと思います。
  30. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 佐々木さん、それはきのうから話がありましたので、大臣にひとつ聞いていただきたい、政務次官が骨を折られて、きよう、二時半に大臣がここの委員会に出て来るということになつておりますので、これは政治的用語だと思うのですから、そのときにひとつはつきりしていただきたい。そういうことに願いたいと思うのです。
  31. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 事務当局そのものがそういう言葉を使つたから、私は性格を明らかにしたいと思つたのだが、御答弁ができなければ、また後の機会に伺いたいと思います。しかしそれはたとい政府がどう解釈しようとも、やはり事務当局としては、事務当局としてのはつきりした解釈がなければならぬはずであります。この点は後に譲ります。  そこでこういうような、どうも債権債務の関係がある場合に、事務当局並びに政府も宣伝をして、二十一億何千万ドルという対日援助物資の額を支払わなければならぬような印象を与えておるのでございますが、これは日本経済に精神的に影響する部分が非常に大きい。これはすみやかに明白にする義務があるだろう。そこでただいまあなたの御答弁では、その対日援助物資の計算は、アメリカは二十一億何千万ドルと計算しておるが、通産省としては八億何千万ドルまではこれを認める、日米間の意見もそこで一致しておるのだ。それ以外のものはこれがまだきまつておらないというのだが、非常にずさんと申しますか、非常に当局の態度としては無責任な態度だろうと思う、先ほど申しました通り、日本が逼迫した経済の中で、八億ドルと二十一億ドルの差約十三億ドルの金額が、日本の貧弱な財政の上でいかなる大きな比重を持つかということは、あなたはよく御存じのはずである。それがすでに今  日対日援助物資の関係が出て来てからすでに三年か四年になつて、まだ日本がアメリカから受けた援助が精神的な援助なのか、法律的に支払いの義務を有するのか、それさえも明白にならないばかりか、総額が一体十三億も違うのか違わないのかはつきりしないということは、私は事務当局としても怠慢しごくだろうと思う。もし八億何千万ドルと、それからアメリカの主張する二十一億何千万ドルの相違があるとすれば、どういうところでそういう相違が出て来るのか、通産省当局はどういう解釈の上に立つたアメリカの二十一億何千万ドルという債権の主張か、言葉をかえて言えば、不当なものであるか、この点やはりこの機会に明白にしておく必要があると思うのでありますが、いかがでありますか。
  32. 若江幾三

    ○若江説明員 ただいま御指摘の点はごもつともでございまして、われわれといたしましては、第十六国会の決算委員会におきましても同様の点の御指摘を受けた次第でありまして、その昭和二十四年三月以前の日本側の数字につきましては、集め得る資料をことごとく検討してその集計作業をやる、そういう方針で進んでおりまして、現在それは実施中でございます。ただそれがいつ完成するかということにつきましては、まだ目下検討中でございます。  なお申し上げますが、この対日援助物資等処理特別会計は、御承知のように昭和二十五年以降実施されまして、その以前は、ちようどまる一年前には貿易特別会計の援助物資勘定ということになつて分離されたわけであります。でありますから、その援助物資勘定以降については明確な数字が出ておりますが、それが先ほど申し上げた八億四千万ドル余りになるのであります。昭和二十四年三月以前の数字につきましては、単にいわゆる貿易物資として処理されまして、それが援助の輸入であるか、あるいは商業の輸入であるかという区別が考えられず、混然として経理されておる。今その区別を洗つておるのが先ほど申し上げました作業でございます。大体そういつた状況でございます。
  33. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 どうも聞けば聞くほどいよいよ奇怪しごくなんだが、二十四年何月以前の対日援助物資といわれるものがいわゆる援助物資であるか、それとも普通の貿易勘定であるか、どうも性格がはつきりしない、それで今それを計算しているのだと、こういうふうに受取れるが、それでよろしゆうございますか、そういうことになるのですか、あなたのお答えは。
  34. 若江幾三

    ○若江説明員 二十四年三月以前におきましては、その入りました輸入物資につきまして、資金の区別が一部明らかでないものがある、すなわちいわゆるエイドで入つたものか、コマーシヤルで入つたものか、そういう別が輸入受領証の上で現われていないものが一部あつたりなんかしまして、そういつた点で明確を欠くという意味でございます。
  35. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 そうすると、二十四年の三月以前までの対日援助物資と思われているものの中には、普通の商業関係、貿易関係のものもある、こういう意味ですな。
  36. 若江幾三

    ○若江説明員 結局日本側の帳簿といたしましては、輸入物資は一本で経理されておつたわけであります。それの外貨勘定は司令部で握つておりますので、どういう資金かということが日本側でははつきりつかめなかつた次第であります。
  37. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 私はどうも納得が行かないが、私もあとで調査いたしまして、再質問することにいたしますが、しかし二十四年の三月ごろのものが普通のコマーシヤルの関係で来たのか、それとも対日援助物資で来たのか、三、四年もたつてまだ処理がつかないなどといつて一体通産省は何をなさつているのか、私はそう申し上げたいのであります。  そのことはしばらく抜きにいたしまして、そのことと関連いたしまして、昨年の予算委員会で、いわゆる河野君の朝鮮特需に対する対米債権が四千何百万ドルかある、こういう問題が起きまして、われわれは愕然とした。貧乏な日本が、しかも払うことばかり考えて、とる方を忘れている。この清算関係に対して、当時通産省のお答えでは明確になつておらないのであります。何の代金か、石炭の代金か、あるいは木材の代金か、はつきりした債権はどのくらいあるのか、それがはつきりしておらない、こういうことを聞いて、一体通産省という役所は何をやつておるのだろう、私は当時愕然としたのであります。それで関連してお聞きいたしますが、これらの清算関係がその後どうなつておるか、実際には債権はどのくらいになつておるのか、今日アメリカとのこんな決済関係が外交交渉の段階になつたならば、一体どういうことになるのか、こういうことについて一応の御説明をお願いしたいと思います。
  38. 安達次郎

    ○安達説明員 お答えいたします。昨年の国会で対米債権四千七百五万ドルの未収債権のの問題が出ましたが、当時の国会における通産省側からの答弁によりまして、その債権の発生しますまでの経緯と、それが確認されるまでの経緯は大体御説明が済んでおりますので、ただいまの御質問のその後の処理の問題等につきましては、当時、昨年夏の国会においても御説明申し上げたのでありますが、この四千七百五万ドルが確認されるまでに、当時の司令部から三つの条件がつけられて、もしもその条件が満たされるならば正当であろうというような確認があつたのであります。その条件の中に、現地に荷物が到着したという証明が整えられることというふうなことが一つの条件に入つておるわけであります。当時諸先生方の御指摘によりまして、あの国会以後通産省におきましては、この四千七百五万ドルの裏づけとなるべき書類の全部の精査をただいまも続行して参つております。そうして、そのうち四千七百万ドルが確認されます経緯におきまして、昭和二十二年五月以前の分の数量につきましては、具体的な書類にわたることなしに、一括の計数について、司令部とつき合せて両方で確認をしたような経緯もございまして、その後一件々々の輸入契約の細部にわたつてただいま整理中でございます。大部分の受取りを証明すべき書類の整備が行われておりますが、なお一部につきまして検討中でございます。
  39. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 どうも私は通産省に質問するのはいやなんであります。何でもかんでも整理中で、一体通産省が事務処理をするということはどういうことをおやりになつておるのか。今さら言うまでもないことでございますが、いわゆる対米債権の今の四千七百万ドルの、送つたという証明もつかない状態、数量その他価格さえもまだ未整理の状態である。こういう状態で一体どんなに国民に耐乏生活を要望したところで、通産省を初めとする政府当局がこんなでたらめをやつて、どうして国民の経済が立ち直るかと言いたくなるのであります。アメリカの日本に対する援助物資の清算関係も、現在約十年になんなんとする日月がたつてもこれが説明がつかない。事務当局は、きようはこれ以上答弁できない状態でありましようが、私自身も独自の調査をしてあらためてあなた方に質問いたしますが、通産省としてはもう少し国民の利益を考えなければいかぬ。あなた方がやつておるのは役人の仕事の体をなしません。これは国民のすべてのさいふに関係することなんです。それをあなた方は十年近くもかかつて清算がまだつかないで、どうして国民のよい公務員と言えましようか。気をつけてもらいたい。私はあらためてこれは質問します。     —————————————
  40. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 この際小委員長補欠選任の件について御報告いたします。小委員長補欠選任につきましては、昨日の本委員会におきまして委員長に御一任願つた次第でありますが、去る一月二十六日国有財産に関する小委員長の佐藤觀次郎君が本委員を辞任されましたので、その補欠として、本日久保田鶴松君を小委員長に選任いたしました。この点御報告いたしておきます。  午前中はこの程度にとどめ、時まで休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ————◇—————     午後二時二十三分開議
  41. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  まず、米国日援助物資等処理特別会計法等を廃止する法律案を議題として、質疑を続行いたしたいと存じますが、本案に関し通産省当局より発言を求められておりますので、これを許します。若江援助物資課長
  42. 若江幾三

    ○若江説明員 昨日の本委員会で、柴田委員並びに井上委員から御質問がありました昭和二十四年三月以前の援助物資の処理の状況、経理状況、そういつたものを通産省では企業局の通商経理課で担当いたしておりますので、本日経理課長より御説明申し上げます。
  43. 安達次郎

    ○安達説明員 終戦より昭和二十四年三月に至るまでの間のわが国の貿易のあり方について、簡単に御説明申し上げたいと思います。  戦後のわが国の貿易は、占領軍の管理のもとで政府貿易の形態をとつてつたわけであります。この仕事を行うために、貿易庁が設けられまして、輸出入物資の受払い、それからその収支をつかさどるために貿易資金が設けられたわけであります。当初は為替貿易調整特別会計昭和十九年度の剰余金の中から五千万円を繰入れて、それで出発したわけであります。当時の貿易及び貿易外取引のすべては、その収支につきましては正常な決済が行われておりません。それでまず外貨の決済と国内の円貨の受払いとは完全に遮断されております。そうしてその円貨の受払いをいたしますのは、ただいま申し上げました貿易資金で行い、外貨の受払いの方は、司令部の管理しております外貨勘定でもつて処理して参つたわけであります。従つてこの外貨の勘定につきましては、政府側としましては全然関与することができなかつたわけであります。そうして輸出入につきましても、その受渡しはすべて司令部の指示に基いて行つて来たわけであります。たとえば輸入品につきまして言いますと、どの船がどんな物を積んでいつどの港に入る、従つてこれを引取れという指令が参りまして、その指令に基いてその港へ行つて、その港湾司令官ですか、ポート・コマンダーに連絡の上物資を引取るというような形で引取つてつたわけであります。輸出につきましても同じような形になつております。これらの輸出物資の代金が貿易資金でもつて国内で買上げされ、まかなつて来られたわけであります。貿易資金が先ほどの五千万円から発足いたしまして、二十三年度末までの収支状況の概況を申し上げますと、昭和二十一年から三年まで、大体収入といたしまして約三千六十億の収入になり、支出が約三千五十数億の支出になつておりまして、差引残額として約八億四千万ほどの残額が出ております。従いまして貿易資金は輸入物資の売払い代金を受入れ、輸出物資の買上げ代金を支払つて、その資金繰りは、結局輸入物資の売却収納金で輸出物資の買入れ代金を支払つてつたということになるわけであります。なお申し遅れましたが、最初五千万円で出発しました輸入資金は その後特別会計法等の改正によりまして、一般会計からさらに九億五千万を繰入れて、計約十億でやつて来ております。この会計は二十四年三月末で廃止され、貿易特別会計が新しく発足したわけであります。そうして今までの貿易資金特別会計の資産負債を全部その新しい貿易特別会計に引継いだわけであります。貿易特別会計では、二十四年四月一日以後、入港いたしました援助物資の見返り資金への積立てを行いますために援助物資の勘定を特別に区わけしてやつております。そうしてその経理を区わけして明確にして行つております。この援助物資の特別勘定は二十五年四月から発足いたしました。そうしてただいま議題となつて廃止法律案が提出されております援助物資等処理特別会計に引継がれて参つておるわけであります。大体援助物資特別会計ができます以前の貿易の概況は、ただいま申し上げましたようなことでございます。
  44. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 それではただいま議題となつております案件につきまして質疑を許します。質疑は通告順によりましてこれを許可いたします。春日一幸君。
  45. 春日一幸

    ○春日委員 先般来本会議におきまする大蔵大臣の施政方針演説の場合には、アメリカにおける池田・ロバートソンの共同コミユニケ等によりまして日本がかつて受けておつたところのイロア、ガリオアの援助、これはわが国の債務であるというようなぐあいに表明されておりましたが、政府一体これをわが国の債務であるとお考えになつておるかどうか、おるならばその法律的根拠についてお伺いをいたしたいと思います。
  46. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ガリオア、イロア等を債務と心得ておるというのは、春日さん御承知のように、第十三国会以来の政府の一貫した答弁であります。第十三国会以来、いつも債務と心得ておる。しかしながら、それは心得ておるということでありまして、債務とし  て有効かつ確定するというには、向うとの折衝がついて、そして国会の御承認を経なければこれは債務として確定し、また有効にならないわけであります。ただ考え方としては債務と心得ておるということを、第十三国会以来常に答弁されておる、こういう次第でありまして、先般の池田・ロバートソン会談から実は始まつたわけではないのであります。
  47. 春日一幸

    ○春日委員 外交的、あるいは国を代表するという資格を持たないところの  一国民が、漫然と債務と心得ておるということであるならば、それは一向に弊害をもたらすものではあるいはないかもしれないと思うのでありますが、しかし少くとも国を代表するところの政府が債務と心得ると言うからには、やはり債務を負う立場における義務を生じて参ると思うのでございます。従いまして、今大臣の申されました債務として心得ておるというその心得方の中身には、どの程度の義務を負うとお考えになつて心得ておられるか。この点をひとつお伺いをいたしたいと思います。
  48. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 債務と心得ておるということは、総理が率直な言葉で、実はそんな恩恵を向うから受けたくないから、それで自分たちはできたら早く返したい、こういう意味で心得ておると言つておられるのでありまして、その通りでありまして、どういう債務になるかということは、今申し上げた通り国会承認を得なければならぬものであり、金額を確定しなければならぬ問題であつて、金額も条件も何もきまつておりません。ただこういうものは日本人が受放しにしたくない、こういう心持が実は債務と心得ておる、こういうことでございます。
  49. 春日一幸

    ○春日委員 債務という言葉の持つ定義は、法律的にもまた言語学的にも、私はいろいろ内容があるだろうと思うのであります。しかしながらその心得ておる当時者が政府である。従つて債権債務という関連性から考えて参りますれば、それは必ず返済の義務を負うというふうに考えるのが常識でありましよう。しかもその金額というのは幾らかわからないという御説でありまするが、一説には十四億ドルという説もあり、あるいは二十億五千何百万ドルというような説もあり、いろいろとその債務の金額等についても表明された段階があつたと思うのであります。私はこの機会に、これはわれわれの債務である限り、日本がアメリカに負う債務である限り、しよせんは返済の義務を伴うものであると考えるのが私は常識ではないかと思うのでありまするが、その場合、不当にそれだけの返済の義務がやはり国民に附帯的に生じて参る。問題は、この意味において重大であろうと思うのででございます。私どもはこれを債務としては考えていない、贈与であると考えておる。こういう考え方が国民の中で多数を占めておるのではないかと考えるのでありまするが、そこで憲法第八十五条には、国が債務を負うときには国会の議決を要するということが明確になつております。従いまして、本日までイロア、ガリオアに対する債権債務の関連性については、国会は今まで一度もこの債務一を負うことの議決をいたしてはおりません。従つて法律的な債務という、債務を負うの法律的な何らの条件がそこに出ていないと思う。従つてこんなものは債務でも何でもない。少くとも債務であるならば、われわれはアメリカにこれこれの債務をこういう条件によつて負うことになるからといつて、吉田政府が当然国会に対してそれをお諮りにならなければならぬ。ところがその法律的手続は何らふまれていないから、これは債務たるの資格を持つていないものである、従つてこれは贈与である、こういうぐあいに解釈をいたしておるのでありますが、憲法所定の手続をふまないで、政府がこれを公の席において、たとえば池田・ロバートソン会談のごとき、ああいうオフイシヤルの立場においてこれを債務として明確にされたことは、これは憲法違反であると思うが、これについてどういうお考えをお持ちになつておりますか、御答弁を願いたい。
  50. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 憲法上の解釈は、あるいは法制局長官の方がいいと思いますが、私が信じているところは、これは御承知のごとく債務と心得ているというだけの話であつて、春日君も御承知通り、債務というものは金額が確定し、支払い条件等が確しなければ債務でないのであります。従つてそう確定するときには、事前に国会承認を得ることは憲法の定めるところであります。従いまして確定債務となるときには、もちろん国会承認を得た上で初めて有効になる債務となるのでありまして、ただ第十三国会以来政府が答弁している債務と心得ているというのは、やはり心得ていることは心得ているという以上には申し上げにくいので、債務だと言つているのではなく、債務だと心得ていると申しているのでありまして、債務と言つているのでない。債務というものは、いかにして支払うかという金額及び条件が確定しなければ債務でないことは、これは春日さん言われた通りだと思います。従いまして、まだ何も国会承認を得てないのでありますから、その意味から言うならば、厳格な法律上の債務ではありません。
  51. 春日一幸

    ○春日委員 国会承認を得なければ債務でない、債務でないものを債務だと心得てもらうことは、国民としてはなはだ迷惑しごくだと思うわけであります。しかのみならず池田・ロバートソン会談共同声明というものの中には、これは一九五三年十月三十日ワシントンにおいて発表されたものであります。こういう曖昧模糊とした、何ら国会承認をも与えていない、いまだ一討議をも加えてない問題に対して、米国の終戦後の対日経済援助の処理、こういう問題についてこの池田・ロバートソンの両氏がいろいろな会談を行つた、ところが池田さんは吉田さんの個人の代表という立場において、当然これを債務と心得て、その処理についてもいろいろ打合せを行つた思うのであります。このことは、日本国にとつてはなはだ意外なことであつたと思うのであります。  そこで私はお伺いしたいことは、大蔵大臣は国の財政を管理せられている立場において、池田・ロバートソン会談において、この経済援助の処理につ  いて池田さんがどういう会談を行つたかということは、当然大体内容を御承知であろうと思うが、これは一体どの程度のお話か、その処理方式に進んだものであるか、この機会に明確にいたされたいと思うのであります。
  52. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 これは当時いわれ  ているように、吉田総理個人のいわゆる特使の資格で行つたもので、その話は私的会談である、従つてどもも、ただ発表されたもの以外には何も聞いておりません。但し今の通産相の愛知君は同行されたから、あるいはもう少し詳しく聞いておられるかもしれませんが、私自身はそれ以上は何も聞いておりません。
  53. 春日一幸

    ○春日委員 その共同コミユニケの中には、「米国会議出席者はガリオア援助の可及的早期解決の重要性を強調した。本件の処理に関する合意に到達することを目途として東京に於て近い将来日米両国代表が会合することに意見の一致を見た。」こういうぐあいに発表されておるわけでありまして、従いまして米国政府は、日本の当事者がこれを債務であるという心得方をしておるので、従つて、債務ならば、これをひとつ早いところ早期解決をしてくれ、早期の解決ということは、まあ返すということを端的に意味するであろうと思うのでありますが、とにかく返してもらうことを向うは強調したわけです。しかして、これはこの場で解決はできないから、いずれひとつ東京で日米代表が集まつてこの問題の合理的な解決をしようではないかということが、ここに申し合されておるのであります。そこで私がお伺いしたいことは、結局国民はもらつたものだと思つておる。現に私もそう思つております。もしこれがほんとうにアメリカに借金したものならば、向うから送つてもらつたいろいろな品物対しても、値段の相談もあるであろうし、品物のよしあしに対する買う側のひとつの希望もあるでありましよう。ところが、今の通産省の係官の御説明にはつきり示されております通り、占領下においては、何一つ日本政府には知らされていなかつた。どういう船がどこに来るから、この品物をこういう金を払つて受取れという指令があつただけだと言われておる。そういうばかげたものは、債権債務の条件としては私は問題にならない思う。特にまたわれわれは、終戦後こうりやんだとか、あるいは鶏のえさのようなものをもらつて、配給されたと思うのだが、そういうようなものが、どういう単価で計算されているかということさえもわれわれは承知していない。同時にまた、これは前国会においてもいろいろ意見が述べられておりますが、国民はこれはアメリカの深い友情——日本が飢えにあえいでおるときに、この飢餓を救つてくれるアメリカのほんとうの友情というふうに考えまして、国会はこの深い友情に対して感謝決議を行つておるのでございます。少くとも相手から金を出して買うとか、あるいは後日それに対してそれぞれの利子をつけたり、いろいろな問題を付してお返しをするということなら、国会があらためて随喜の涙を流して感謝するとか、そんな決議をするはずはなかつたと思う。従つて吉田さんが十三国会において初めて——これはアチソンさんが来られたときですが、これを債務と心得ると発言するまでは、吉田さん自体も、おそらくこれは日本に対する贈与と理解しておられたのではないかと思う。十三国会で初めてこれが日本の債務であるということを突然、しかも吉田さんの独断によつて発言されたのであつて、その発言に基いてこういうような米国の早期解決の強調となつて現われて参つたのではないかと思うのでございます。  そこで私が申し述べたいことは、政府は憲法におけるこの厳粛な規定というものを全然無視して、そうしてかつてにアメリカに負うところの債務である、かくのごとくに述べられることは、非常に迷惑千万なことであると思うのでありますが、この点についてもう少し明確に、責任ある御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。
  54. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 先ほども繰返し申しました通りに、債務と心得ておるというだけの話であつて、債務というものは、金額や支払い条件その他が確定しなければ有効な債務でも何でもありません。債務とするときには、憲法に従つてもちろん国会の御承認を得るのでありますから、そのときに初めて債務となつて確定するのです。だから心得ておる分には、これは皆さんの考え方ですから、債務と心得る、こういうふうに吉田政府として言うのは、何らさしつかえない話だと考えております。  それから今のお話でありますが、まだどういうふうな金額になるのか、どういう条件になるのか、そういうことも全然交渉をこちらではされておりません。東京においてはどこでも交渉されておりません。今の池田・ロバートソンの覚書に書いてあるような、東京において交渉すると言われても、東京ではまだ何ら交渉されておりません。従つてこれらの点については何ら申し上げることはできませんが、しかし西ドイツあたりでもみんな同じように、ガリオア、イロア等のものについてやはりある程度に——西ドイツではたしか三分の一くらいかと思いますが、もらつたものの三分の一くらいを、話をつけて払つておる。今後どういうふうになるか、まだ交渉は起つていないのですから、金額も何もわかりませんけれども、話が進んで行きますときには、もちろん国会承認を求めることは当然でありまして、そうしなければ、そのときこそ憲法違反だと御指摘になつてしかるべきことと思うのであります。
  55. 春日一幸

    ○春日委員 現在交渉は行われてはいないということでありますが、このことは、この問題について将来とも交渉が行われることはあり得ない、こういうぐあいに了解してもよろしいか、それともあしたにでも、あるいは来月か再来月かにでもこの問題について交渉が開始されるかもしれない、こういうぐあいのお見通しであるか、この点をお尋ねしておきます。
  56. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 将来交渉はあるものと期待いたしております。
  57. 春日一幸

    ○春日委員 さすれば、この二十一億ドルの中の何ぼかを新しく国の債務として議題に供した交渉が持たれる、こうなつて参りましよう。しかして政府はこれを債務であると心得ているのだから、金額はどう縮まるかは知りませんけれども、一応ここに法律的な新しい債務を発生する事態というものは、当然われわれは予想できると思うのであります。そこで、このことが非常に重大な問題でありますが、あなた方はこれを債務だとお考えになつているが、われわれはこれを贈与である、ありがたくちようだいしたものとして、さきには国会で感謝決議を行つている通り、ただでもらつたものだと考えているわけであります。そこで問題になりますことは、今あなたの吉田内閣は、保全経済会の問題や造船疑獄の問題等、いろいろ事件が進展しておりますが、その他の問題がからんで、もしこの内閣が更迭されるような場合があつたといたしましたならば、その場合には日本国の代表がかわるだけでありますが、その場合、必ずしも吉田さんと同じようにこれを債務だと心得ていない入が日本の代表になるかもしれない。そのときには、日本においては、今法律的にこれを債務としてまとまつた意見とか、あるいは決定というものは何らなされていない。ただ単に吉田さんの個人的な感想であり、これは大蔵大臣も、総理がそう言うのだから政府はそういう方針を踏襲しているというだけのことで、これは日本としては、法律的な条件というものは何らそこに具備されてはいない。その形において今後対米交渉をする場合に、今度アメリカは前内閣はこれに対して債務と心得ておつたし、しかも池田・ロバートソン会談によつて、近く東京で会議を持とうということになつているのだから、日本政府はこれは債務と心得て、とにかく交渉に応ぜよ、こういうことを向うが言つて来ると思う。このことは、すなわちアメリカをして乗ぜしめるの足場となつて日本に迫つて来ると思うのであります。  またただいまあなたは、これが国の債務であるということを確定するためには、当然国会の議決を求めるから、そんなことは今とやかく論ずるまでのことではないとおつしやる。しかしながらすでにその外交交渉において、国会承認も、何ら意見も徴さないで、すでに債務であるといつてアメリカに意思表示をされているのです。これは後日の交渉において重大な悪影響を与えるものであると思うが、これに対してどういうお考えをお持ちであるか、お伺いしたい。
  58. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 債務と心得ない者が内閣をとつた場合にどうするか、そういう仮定の場合には御答弁はできません。またそういうことがあるかないか、全然予想もできぬことで、かれこれ御答弁はできません。  それからなお池田・ロバートソン会談は、これは私的会談であつて、外交上の交渉とか、政府の交渉とかいうものではないわけで、外交上の問題は今後に起つて来る問題である、かように考えますので、それが起つて来るときには、それは金額及び条件等、いわゆる債努としての内容を持つたものがきまるということになつて来るであろうと私は考えます。
  59. 春日一幸

    ○春日委員 この問題は、過ぐる第十七国会でありましたか、決算委員会でも同様の問題となりまして、そこに佐藤会計検査院長が出ておりましたが、佐藤会計検査院長の意見も、国が債務を負うときには当然国会の議決を必要とするが、ガリオア、イロアについては、今まで一度も諮つたこともないし、議決したこともないから、これはあらゆる意味において債務ではない、こういうはつきりした意見を述べております。さらにそこに出ておりましたところの緒方副総理は、債務という意味はいろいろある、すなわち法律的の債務もあるし、精神的な債務もある。そこでただいまの佐藤会計検査院長の答弁等に徴すれば、これは法律的な債務ではないが、ただ何となくアメリカに負うところがあるという精神的な債務、こんなふうであるように考えます、と緒方副総理は述べております。精神的な債務というものは、これは法律的な債務ではない、明確にこれは物質的な債務ではない、ただ何となくLOUというようなもので、これは何となく君に負うところがあるというようなもので、返済の義務を生じないところの精神的な債務だ、これならば私は問題はないと思う。従つて私は、第十三国会において吉田さんが、これは債務と心得ておると言うたことから端を発して、せつかく決算委員会においてわれわれのいろいろな研究の結果緒方副総理も、これは単なる精神的な債務、物質的な法律的な内容を含まないところの精神的な債務、こういうふうに心得るということでこれが答弁をされております。ところが驚いたことには、われわれはこれ政府の代表的な意見と了承しておつたのだが、その後さらにこれが池田・ロバートソンの会談によつて、物質的な法律的な内容を持つ債務であるといつて、再度対外的に意見が述べられたということは、非常に驚いたことであります。従つて私は、吉田さんの言うことがほんとうなのか、緒方さんの言うことがほんとうなのか、一体どちらがほんとうなのか、その都度かわつたことを言われては、われわれとしても非常に迷惑しごくであります。しかもそのような何千億という借金を国民が負うことになる、返済するのは国民であります。どうかそういう意味で、せつかく緒方さんが単なる精神的な債務、こういうぐあいに言われた以上、同じ閣僚であるあなた方がそうではない、これは物質的の債務だ、どうしても返さなければならぬ債務だと思う、金額はどういうところに決定するかわからぬが、しよせんは交渉の結果返済の義務を伴うところの債務である、こういうようなことを、今事あらためてあなた方がおつ しやる必要は一体どこにあるか、これを私はもう一ぺんお伺いいたしたいと思うのであります。
  60. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 緒方副総理の言葉は、きのうもちよつと予算総会でどなたかからお尋ねがあつて、それに対する緒方副総理の答弁がありましたが、それは、やはり債務と心得ておるということについては一致しておつたのであります。それで、ただその意味するところは、現在今ここで法律上の債務が、こういうお尋ねならば、現在今ここでは法律上の債務ではない、こういう意味だと思います。これは春日さんよく聞いておいていただきたい。現在今は法律上の債務ではない。しかし債務と心得ておるから、将来交渉によつて債務の金額、条件等がきまつて国会承認を経たあかつきに初めて債務となる、こういうことに御了承願います。現在のところは債務ではありません。
  61. 柴田義男

    ○柴田委員 ちよつと関連して、今の春日委員の質問に関連してでありますが、私どももこの問題の債務であるかないかということに対しましては、非常に大きな関心を持ちまして、十六国会の決算委員会におきましても、この問題がしばしば論議されたのであります。この場合に、十六国会の七月二十日に、私がこの問題を緒方副総理に伺つておるのが速記録に載つておりますが、この場、合に私は、ガリオア、イロアは実際日本へどれだけの金額で来たのであるか、という根拠も明らかでなかつたはずであるし、それから、あれは当然アメリカの占領政策の一環として日本に持つて来てくれたものである、しかも当時は、なるほど諸物資が不足しておつた時代でございまするから、ありがたくもらつたことはもらつた、こういうことを率直に申し上げておつて、その金額がただすこぶる不明である、しかもこれは債務だというような考え方が妥当であるのかどうか、こういう御質問を申しましたところが、緒方副総理は、こうお答えになつております。「二十億ドル余りと言うておりますのは、向うの評価によつて言うておるのだそうでありまして、それがはたして日本の援助物資であつたか、商品であつたか、また向うの政府の官吏あるいはアメリカンスクール等の費用も入つておるそうでありますが、そういうものはどの数字に当るかというようなことは、一々チエツクをいたしまして、つき合せないとわからぬことだろうと思います。それが私先ほどから申し上げますように、はたしてこれのどれだけが日本の債務になるかということは、軽々に申し上げられないというのはそこにあるわけでございます。」こういうようなお答えに、重ねて私が、しからば精神的な債務であるとわれわれは心得ていいのでございましようかと質問いたしましたのに対して、緒方副総理は「精神的な債務とのみ言うことができるかどうかわかりませんが、多分にその意味を含んでおります。あの際に日本の物資の窮乏底をついておるときに、あれだけの救援物資を送つてもらつたことに対しまして、精神的にも非常に感謝の念があつたことは、当時の国民感情もそうであつたろうと信じております。」こういうお答えで、多分に精神的な意味の債務であるということをお答えになつております。これらに関連いたしまして数次の論戦が重ねられておりますけれども、確固とした債務だというようなことはさらに見受けられておりません。それが半年たたずして、今日になつて政府のしかも責任のある大蔵大臣が、債務だとお考えになつておるということでとありますと、閣内がばらばらの状態でお考えであつたのかどうか、これをお伺いいたします。
  62. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 現在の段階で債務でないということは、申し上げた通りであります。しかしながら、債務というものは金額や条件等が完備して初めて債務でありますから、現在の段階では債務ではありません。しかしながらこれは債務と心得ておりまするので、従つて今後の交渉によつて金額がきまり、あるいは支払い条件等がきまるということになりまするときには、前もつて国会承認を経て、それで国会承認があつた上で初めてこれがきまつて参る、こう言つておるのであります。この点に何も閣僚間に不一致の点はありません。みんなそう言つておるのです。
  63. 柴田義男

    ○柴田委員 どうも大蔵大臣の御答弁を承つておりますと、国会承認を経なければ債務でないのだから、こういうようなことでありますけれども、そのお話の中に、実際われわれは債務と心得て今まで方針を立てて来たのだ、こういうようにも伺われるのです。外交交渉をおやりになるという前提といたしましても、債務だと考えて、アメリカに支払いがあるんだ、こういう前提がここにございました場合とない場合とでは、外交交渉の上においても非常に大きな相違があると私ども考えるのであります。ことに朝鮮向けの物資の対米債権の問題にいたしましても、これと大きな関連があつたということは否定のできない事実だと思う。日本がまつたく窮乏にあえいでおりながら、向うに送つたあの債権に対しまして、やはりそのイロア、ガリオアと、いろいろな関連があつたから、あの四千七百万ドルという債権を持つていながら、いまだにこの交渉が進んでおらない。これはやはり一つの関連性があつたがゆえに進んでおらないとわれわれは考えるのでありますが、そういう考え方でなしに、あの援助物資は援助物資で、われわれはもらつたんだ、ありがたいんだ、だが日本で貸しておるものはとらなければならぬ、こういうお考え方をなぜ政府当局はお持ちにならぬかと不審にたえないのであります。こういう点をはつきりとお示しを願いたいと思います。
  64. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 これは、十三国会以来はつきりと債務と心得ているということを申してあるのでありまして、これ以上の言葉はございません。これははつきりしております。しかし債務というものはどうかといえば、金額とか条件とか整わなければ債務でない。だから現在の段階で法律的債務かと仰せになれば、何ら法律的債務ではないとお答えする、しかし債務と心得るかという分には、十三国会以来吉田内閣は心得て来ておるのだから心得る。今後の交渉よつてこれはいろいろ違つて来ると思います。なお数字のことがお話ありましたが、ジヤパニーズ・エコノミツク・スタテイステイツクスによると、大体二十一億ドルくらいになるのです。その中には春日さんが言われたのか、あなたがおつしやつたのか、いろいろのものが入つておるのです。軍の払下げ物資、いわゆる対日援助というやつが入つておるので、この内容についても、どうも私どもが見ると二重じやないかと思われるようなものが含まれております。従つてこういうものは交渉するのが当然じやないか、今そういうお話がありましたが、そういう類のものが相当あります。朝鮮の方は違いますが、こういう交渉すべき性質のものがありまして、これは先方と十分打合せをしてみなければ、一体どれだけのものがガリオア、イロアだということはわかりません。わからぬのは、あなたもお聞きになつたでしようが、貿易資金特別会計とかいうやつがあつて、一方的に向うでつけられたのだから、こまかいことは通産省に聞かないとわかりません。私、通産省におつたが、そちらの方ははつきり知らないのです。だからそれらの点については十分今後取調べる必要があると思います。
  65. 柴田義男

    ○柴田委員 もう一つ伺いますが、朝鮮に向けて発送いたしました物資の場合の四千七日五万ドルというあの場合でも、たとえばアメリカでは三つの条件をつけまして、そうして三つのいろいろな条件の資料が中に入つたということを承つております。こういうようにこつちから向うへ送りました場合には、非常に厳格な裏づけを要求しております。そういたしました反面、日本に送つてくれた援助物資の場合は、アメリカだけの一方的な計算において立てておる。何らそこに裏づけする何ものも残つていない。ただ昨日来当委員会で承つておりますると、通産省では昭和二十四年の何月以降の八億四千万ドルかの分に対しましては、大体裏づけがある、こういう御説明でございますが、その以前のものに対しましては、何らの根拠がないということだけは明らかでございましようか、大蔵大臣からお答えを願いたいと思います。
  66. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 これは当時大蔵省の所管でございませんので、はつきりいたしません。ただ大蔵省でも通産省からそういうふうに聞いておりまして、伺うが一方的につけておるということは聞いております。ただ今柴田さんがおつしやつた八億四千万ドル、つまり一ドル三百六十円とレートがきまりまして以来は、これははつきりと見返り資金特別勘定へ入れておりますので、これははつきりいたしております。その以前のものは、あまりはつきりいたしておりません。それと、御承知でもございましようが、あの分は複数レートというのでやつてつたわけです。たとえば輸入をするものも、輸出をするものも、みんな公定価格で売買しておつたのです。ところが輸入するものについては、公定価格で売りますと、比較的安く売ることになる。輸出するものは高く買つて輸出することになつてつた。レートがまちまちであつたということは、柴田さんも御承知通りであります。だから、これははつきりわからぬから、よほどこまかく今後調べて行つて数字を確かめなければならぬと思います。
  67. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 春日、柴田両君から大蔵大臣に対して、ガリオア、イロアの性質、あるいは金額その他についていろいろ質問があり答弁があり、ましたが、承つておりまして、私は少くとも大蔵大臣の答弁ははつきりしておると思うのです。これはへつらいでも何でもありません。ただ春日、柴田両君の方で——少し答弁者と質問者の間に一致しない点があるのは、いろいろ概念の食い違いがあるのではないかと思います。第一、春日君は精神的債務というものに対立して物質的債務——物質的という言葉は緒方さんも使つていないし、だれも使つていないのですけれども、春日氏は、精神的債務ということは物質的債務でないということだと思う。(「法律的債務だぞ」と呼ぶ者あり)物質的ということと法律的ということと同じ意味に解して……。(笑声)速記録をごらんになればわかります。春日氏の質問は、少くとも私の了解したところでは、物質的といい法律的といい、両者は大体同じ意味と解せられて、これを精神的債務というものと対立して述べられた、これは速記録を見ればわかる。しかし私どもの解釈では、精神的というのは、むしろ道徳的といつたような意味と同じもので、精神的あるいは道徳的ということは、必ずしも物質的ということと反対概念でも矛盾概念でもない、こういうふうに思うのです。私はガリオア、イロアの性質についても、こういうふうにこれまで解釈しておるのですが、大蔵大臣のそれについてのお考えを承りたいのです。何しろ占領治下におけることだ、憲法ももちろん存在いたしますから、日本の政治は憲法を無視してはいけませんけれども、憲法以上の力が支配しておつた時代のできごとであるということを、一つ前提に置いて考えなければいかぬ。憲法がまるまる実行されておつた独立国家において起こつた場合と、憲法は一応ありましても、占領政策の便宜上という、言葉は少し強参いかもしれませんが、憲法をつくつて、そうして政府をつくつてつた、こういう最高指令官の占領治下における憲法と、完全なる独立国家における憲法とは、やはり区別して考えるのが実際的であるということであります。従つて先ほど申された占領治下の占領政策の意味を含んでガリオア、イロアが行われたということも、これは事実だと思います。決して占領政策と無関係に、やつたのでないことは明らかであります。もしこれがなくて、日本の治安が乱れるというようなことになれば、最も責任を問われる者はマツカーサー元帥であつたに相違ありませんから、マツカーサー元帥としては、自己が占領政策の責任者として、必要な処置としてやられたことは、私は間違いないと思います。しかしそのことを、われわれ受ける方の日本人として考える場合に、だからわれわれは払わぬでもいいのだというふうに言うことは、われわれの道徳的な責任観念というか、感情が許すかどうかということを考えてみなければならぬ。たとえば、自分の玄関のところの道路でよその子供が倒れたという場合に、家の者が飛び出て行つてこれを介抱して、医者をつけて車に乗せて送り返した、そのときに、その費用は貸してあるのであるが、あとで返すのだぞという約束をしなくても、請求はしなくても、その世話をしてもらつた子供の親が実力相当のお礼をするか、できるだけのことをするということは、これは人間として人倫の道だろうと思う。だから国家といえども、その道をはずれてはとうてい世界の文化国家として大手を振つて歩くことはできないだろう。いわんやアジアの諸国に向つて、われわれが対等の顔でつき合つて行けないだろう、こういうふうに思うのです。ですからアメリカから請求があつた法律上どうかということと別に、道徳的というか、私は精神的という意味を道徳的という意味に解して、債務と考えてできるだけのことをしたいと考える。ところがアメリカの方では、そうではなくて、いやあれは債務ではなくて上げたのだと言われるかもしれぬ、こちらの態度いかんによつてそう言われるかもしれぬし、言われないかもしれない。しかし相手は相手の立場考えるのであつて、私は、こちらとしては道徳的には少くとも債務と考えるのが妥当だと思う。もつとも玄関先で倒れた場合と違うことは、占領治下であつたということは、先ほど申しましたように、占領政策の必要も含んで行われたということは、これは考慮さるべきことだと思います。しかし一般に……。
  68. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 山本さん、質問の要旨をはつきりしてください。討論じやないので、大蔵大臣は忙しいのですから……。
  69. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 討論じやない。自分の考えを言つて、これに対して考えを聞きたい。委員長はそういうことをかれこれ言う必要はないんですよ。
  70. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 実は、大蔵大臣は時間が非常にない、約束の時間を経過しておる、だからなるべく簡潔にお尋ね願いたい。
  71. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 それでは簡単にやりますが、そういうことを言うと長引いて来る。  占領治下であるということは考慮しなければならぬが、同時に占領軍の要した費用は、大体占領せられておる国が支払うことが一般に従来の国際慣例になつておるということも考えなければならぬ。ですから、どうも反対概念として、精神的ということに理解して質疑応答されておつたのでは、それこそ時間がいつまでもかかつて片ずかぬだろうと思うから申し上げて、大蔵大臣の私の考えに対するお考えを承りたいと思います。
  72. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私も仰せの通りに解しております。従いまして、私としては現在のところは何ら法律的債務を負つておるものではない。しかしながら、日本としてはああいうふうに世話になり、またそのときに国民が非常に飢餓をせずに済んで来た。また経済復興に大きな寄与をして来た物資については、これはできれば債務と心得て払うことにしたい、こういう気持を持つて申している。債務でないということは繰返し申し上げた通りであります。債務と心得ておるというのは、その点なのであります。
  73. 春日一幸

    ○春日委員 現在のところ法律的な何らの責任のないものだというふうに述べられておりまするけれども、それならばそれでいいのですが、しかし池田・ロバートソン共同コミユニケを通じて、これがあたかも日本に対して法律的義務を附加せんとしておるので、問題が新しく呈示されておるのであります。  そこで私はもう一点明確にしておきたいのですが、佐藤会計検査院長がこういうことを言つておる。国の債務は、国会の議決を経なければ負担できぬ、だからこれには議決がないので、国は債務を負担すべきではない、こういうぐあいに明確に言つておる。これはその後に緒方国務大臣も、私がさらにこれは債務であるか何であるかということを聞いたら、これは、ダレス・吉田会談の間にガリオアをどういうふうに思つておるかという会話があつて、それに対して、これは多分に精神的の意味と思いますが、日本はオブリゲーシヨンと思つておるということが出ているので、そういう意味でございます。これは、法律的の債務と感ぜられるには、非常に距離があると思います。こういうぐあいに緒方さんは言つておる。すなわちこれは単なるオブリゲーシヨン、しかも、それは法律的な債務と精神的な債務とどこが違うかというと、これはただいま山本君がいろいろな詭弁を弄されたが、しかしながら法律的な債務は返済の義、務があるが、精神的な債務ということは、ただありがたい、恩義を受けておる、こういうことであります。従つてわれわれは返済の義務を負わないところの債務であるというふうに考える、緒方さんはかように述べておる。すなわち法律的な債務と感ぜられるには、ちよつとした距離どころではない、非常なる距離がありますということを述べられておる。それでオブリゲーシヨンという言葉の語訳でありますが、いろいろとある。義務、債務という解釈もありますが、しかしこれは恩義、おかげ、吉田さんもダレスさんに対して恩義、おかげというふうに述べておられるといたしますならば、これは単なる精神的な一つの債務であつて、アメリカにかたじけない、恩義を受けておるという感謝の気持であります。だからありがとうございましたというふうにお礼を言えば、それで足りることであります。ところがこれは法律的な債務であるということを言うものだから、向うでいろいろとロバートソンが池田に難題を吹つかけて来る。だから現に対日援助の処理については、早急に東京で会談を開いて、そうして早いところこれを解決するところの重要性を強調したと言つておる。だから支払わなければならないような新しい義務を、まさに日本に負わせようとしておる。だから、何もあなた方は、吉田さんもオブリゲーシヨンと言つておるし、しかもオブリゲーシヨンの語訳は、恩義であり、おかげであるとするならば、あれはただ単なる精神的な恩義であつて、何も返す意味はありません、こういうふうに言つておきさえすれば、ロバートソンの難題になつて現われて来ることはないと思う。願わくは大蔵大臣は、後日どういう金額になるとか、どういう条件になるとかいうようなことを全然お考えにならずして、オブリゲーシヨンは単なる恩義である、非常に恩義を受けておりますと言つて、ただダレスさんに吉田さんがおつしやつたようにひとつ了解してもらわないと、税金を払つて、また新しい債務をさらに日本国民が負うということは、貧困に貧困を重ねるということになるということを真剣にお考えになつて、もう一ぺん緒方さんと御相談になつて、閣内の統一した御意見によつて進まれるよう強く要望いたしまして、私の質問を終ります。
  74. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今別に御質疑でもないようでしたが、もう閣内では、十三国会以来一致して債務と心得ておるというふうに言つておるのでありまして、これは過日来本会議で、吉田総理がすでに債務と心得ておるということをはつきり言つておるのであります。但し債務ということは、そこがまだはつきりしない。債務というものは、これは会計検査院長の言つた通りでありまして、また法制局長官が申された通りでありまして、これは金額、条件等がきまつて、しかも国会承認を経なければ何ら法律的な債務でないことは、これは申すまでもありません。ただ債務という言葉の意味ですが、これは今のオブライジするとか、オブリゲーシヨンとかいうことは、どう訳していいかわかりませんが、ただ債務と心得ておるということは、吉田総理が数回述べられておるし、のみならず、十三国会以来閣僚もことごとく申しておるのでありまして、それは緒方さんの答弁を、そこだけを御引用になりますが、全文を見ていただくと、これは債務と心得ておるということが出ております。きのうも、あとの面を省いてはいけないので、全体をずつと読んでいただくとおわかりになるということを御答弁いたしましたが、しかし春日さんの言われることは、私もよく承つておきます。
  75. 井上良二

    井上委員 問題は、吉田内閣が対日援助の問題について、債務と心得ておるという方針を決定したことに問題があろうと思います。今山本さんからもお話がありましたように、これはアメリカを中心とする連合国が、日本は占領政策の必要からとられた政策であります。当時日本の占領下にあつて、日本自身主権を持つていない。日本が主権のない占領下に置かれて、一切の生殺与奪の権が連合軍に握られておる状態において行われたことなんです。だが日本国民としては、当時の物資不足その他の関係から、このアメリカの多大な援助に関して、あなたは当時おりませんでしたけれども国会ではたびたび感謝決議をいたしまして、この援助に対して道義的な感謝の意を表しておるのであります。また単に国会のみならず、民間の各種の公共団体においても、それぞれの機関においてたびたび感謝決議をいたし、アメリカ軍当局にその会場までわざわざ出向いてもらつて、感謝状まで渡しておる、こういうことでありましたけれども、国民は、これは単にお恵みのあるものとして、ただでもらつておりません。全部金を支払つておるのであります。金を支払つておりますが、ただ問題は、今日政府でこれを債務と心得て、アメリカ側との間において今後交渉の上である一定額が債権として取立てられるということになりますと、国民は二重に支払わなければならぬことになる。すでに一ぺん代金を払つておるのに、再び政府予算の中から債務を支払うということになれば、国民は二重の負担をしなければならぬことになる、そういう問題が一つつて来る。  それからいま一つは、二十六年の七月以来対日援助は打切られておる、その後日本が独立し、今日まですでに三年になろうとするのに、政府はこの問題に対して何らアメリカ側と折衝もしていないということは、はなはだしくこれは怠慢ではないかと思う。それほどあなた方はアメリカの援助に対して、債務と心得るというほどアメリカに義理を尽さなければならぬのなら、進んで、一体あれはどのくらいの程度に負けてくれるかとか、どの程度にいつ話を進めたらいいかとかいうことを、すみやかに話をすべきなんです。それを何ら話をせずに、そのうちにちようど再軍備問題と一緒に、知らず知らずの簡単備はどんどん進められて行くという行き方と一緒に、表向きやれば国民はぐずぐず言うから、どこか陰で、知らぬようなところでこそこそと相談をまとめて、それでどうしてもこれだけ払わなければならぬことになつたというところへ持つて行くような気配がしてしかたがないのです。それだから、あなた方の当然法的根拠に基く債務と心得るというその考え方自身にあやまちがありませんか。これは国会の論議でありますから、このことはただちに対外的にも影響する問題であります。二十一億ドルという金額は、日本の一箇年間の予算に匹敵する厖大な金額であります。日本の一年間の予算に匹敵する厖大な金額が、政府のいわゆる考え方一つによつて債務となるかどうかという重大な問題になつている。今の日本の財政経済の実情は、あなたみずから御存じ通りでありまして、国民に耐乏さえ要求せなければならぬ実情にある。そういうときに、こういう問題を軽率に債務と心得るなんということを一方的に言われても、われわれはそれをそのままのむわけには参りませんぞ。これはもう少し内閣としては慎重にお考え願いたい。現にアメリカから援助を受けたイタリーは、これを全部棒引きにしてもらつておる。ドイツは日本よりはるかに多くの援助を受けたために、その一部分を負担することになつておりますけれども、アメリカの第一線基地として、アメリカみずからが日本に駐屯軍を置かなければならぬというこの国際的な立場から、日本に負わされたアメリカ側のいろいろな任務というものは有形無形に日本国民にいろいろな負担をかけておるのです。この事実から考えて、占領当時から今日まで参りました援助は、当然アメリカがそれを負担すべきものであつて、日本のようにやせ細つたこの国に、一年間の予算に匹敵するような厖大な負債を要求する一体何の権利がアメリカにありますか。そういう点からお考えになり、もつと強い腰でもつてこの問題は交渉してもらわなければならぬ。私はそういう考え方を持つておるが、あなたが債務と心得るというのは一体どういうところから来ているのですか。徳義的な上における問題ならば、山本さんがおつしやるように、われわれはそれは困つたときに助けられておりますから、当然その恩義は考えます。また日本がそれだけの財政的余裕ができましたならば、アメリカに対してそれだけの恩義をまたわれわれも返すときが来ましよう。しかしわが国の置かれておる現状は、この狭い国に八千数百万の国民をかかえて、どうして生きて行くかという重大な段階に立つておるのです。そういうときに、この問題をそのままいいかげんにされて、しかもこれが何か再軍備の問題と交換条件のようなことで話が重ねられておるように考えられる。これはまことに国民としては心外でなりません。せつかくのアメリカの好意が、逆に反米的なものの考え方に転化する危険さえ起つて来ますぞ。そういう点をあなた方はどうお考えになりますか。一国の大蔵大臣としてひとつ真剣にこの問題をお考え願いたい。この点に関するあなたのほんとうの心境をお聞かせ願いたい。
  76. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 先ほどもちよつと、申した通り、現在の段階で、何ら法律上の債務でないということは申し上げた通りであります。法律上の債務として確定する場合には、それは先方と話合いをつけて、あるいは金額、条件等がきまつて国会承認を得て初めてなるのであつて、それまではいわゆるオブリゲーシヨンといいますか、われわれが債務と心得ておるというにとどまるのでありまして、これは道徳的なものと見てよかろうと思います。しかしながら、これは伺うがあの日本占領中のいろいろな諸施策から来ておることもありましようけれども、あのときに各種の食糧その他必要なものを供給してくれ、かつまた日本の経済を助けてくれた。これを、ただそうか、どうもありがとうというのではいかぬ。つまりこれは、われわれとしては債務と心得て、できるだけのことをしよう、こういうのであります。従つてまだだれも正式に交渉しておりません。さつきの池田・ロバートソン会談というのは、私的な会談でありまして、これは何ら公のものではありませんから、今後公にいろいろ交渉することが起つて来ると思います。その場合、今お話になりましたようなぐあいに、西ドイツの例、イタリーの例、また日本の経済の実情財政実情もよく話をして、なるほど日本人はよく忠義に感じてやつてくれたということのわかるようなことで持つて行く、またそれでなければ、これは国会承認を経て有効なる債務となることもむづかしいでしよう。いずれにしても国会の御承認を得るのでありますから、今仰せになつたような、日本の一年分にも相当する二十一億ドルまるまるを債務と認める、かようなことは私は夢にも考えておりません。さようなことは頭に置いておりませんけれども、日本の経済力、財力で支払い得る、なるほどこの程度ならといつたところに話がおちつくように交渉してもらわなければならぬと思います。そうしてわれわれも、ああいうことをしてやつておいたが、自分の方へこう報いてくれたなあというように、やはり国際友好の感じでものを処して行かなければならない、かように考えている次第であります。従つて今申し上げる債務として確定するような場合には、これが国会でみな了承して承認し得る条件でなければなりませず、金額でなければならぬことは当然でございます。
  77. 井上良二

    井上委員 そうしますと、政府はこの問題に関して——この問題はすでに国会でもたびたび問題につて来ているのです。それにかかわらずこの問題に対して、アメリカの意向を何ら今まで確かめたことはないのですか、それを聞きたい。
  78. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 政府としては何な正式交渉をしたことはない。それは外務大臣でなければよくわかりませんが、私はないと思います。少くともその金の支出については、大蔵大臣の方で関係いたしますが、さようなことについての話は、まだ受けておりません。従いまして、たとえばこの債務額がかりに何億かにきまるよりな場合には、もちろん相談を受けることになるだろうと思いますが、そういうことの相談を受けておりませんから、私はそういう交渉はないものと思つております。池田・ロバートソン会談というああいう私的会談でああいうことを発表したのも、近く東京へ行つて早くこの問題を解決しようというのでありますから、これは交渉のなかつたことを裏から申しておるように思つていいのではないか、かように思います。
  79. 井上良二

    井上委員 何か池田・ロバートソン会談を私的会談、私的会談と言つて、いかにも政府責任のないようなことを言つておりますけれども、これは、あなたみずから自分の政務次官であつた愛知氏をこの会談に出席さしておるではありませんか。これは民間人がかつてに行つたのと違うのですよ。それを何かどだい借り物を着たようなことを言つて責任をのがれるようなことはいけませんよ。池田・ロバートソン会談で、はつきりその問題が議題となつて来ておるわけであります。そうしたら、政府としてはこれに対する態度を明確にしなければならぬ。さきにお話が出ましたように、二十四年以降においては大体八億四千万ドルくらいの受渡しが明らかになつておりますけれども、それ以前のことは、全然日本側に的確な資料がどつちかと言えば欠けております。そういう点についても全然ほうかむりでおる。ずうずうしく考えて、あんまりこいつはさわらぬでおこう、そうすれば向うも忘れてくれるだろう、こういうことを思つておるけれども、向うは覚えておるのだ。向うの方がその実積極的に何とかこれはMSAの問題と結びつけて話をしよう、何か大きな義務を負わせて、こつちの言うことを聞かそう、こういうことです。あなたみずから御存じ通り、南方諸国に対しても、賠償問題その他も、なかなか向うさんのお話だけこつちは払うだけの能力は現にないじやありませんか。ましてや大金持ちであるアメリカに対しては、そんなことを言われたからといつて、ただちにこれをオーケーと言うわけには行かぬ。払うなら南方の貧乏国に、少しでも相互的に生きて行くために、円満にひとつ話を進める方に力を入れて、アメリカの方は待つてくれと行くよりしようがない。これをあなたの方が債務と心得る、債務と心得るというから、向うの方では、日本はやはり払う金があるな、こう見ると思う。こう見られるところに吉田内閣の対外的に、特にアメリカに対して、何かアメリカの言うことばかり聞いておつて、こつちの言うことをちつとも聞かぬなという印象を国民に与える。特に大蔵大臣は、財政を握つておるのですから、この問題だけは一歩も譲れませんといつて大上段に構えて、大声でひとつ張り切つてもらいたい。これならあなたの声は通る。これは正しい。私どもは何も無理なことを言うているわけではないのですから、ぜひひとつ、これはあなたみずから債務と心得るという弱気を出さずに、日本もよくなつたら、いずれそのうちにお話をして返礼に上ります。その返礼は桜の木であつても何でも、それは日本人のほんとうのアメリカに対する感謝の意思表示をすればいいのですから、こういう気持でこの問題は解決してもらわぬと、これはたいへんな問題になつてしまう。われわれは軽率にこれを考えていない。日本の国のかりに予算に匹敵する代金を払うか払わぬかということになつておるから、この問題こそ、大蔵大臣がひとつ真剣にとつ組んでもらいたいということを、私は特にあなたに要求いたしますが、そういう腹構えはありませんか、どうですか。
  80. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 さつき話がありました池田・ロバートソン会談の件でありますが、これは総理もたびたび申しました通り、いわゆる総理の私設特使でありまして、何ら公のものでないので、その意味で申したのであります。ちようどその時分愛知政務次官も向うに参つておりましたことは、その通りでありますが、これはしかし公のものではありません。外交の正式なチヤンネルを通したものでないので、これは公式な会談でないことは御承知通りであります。  それからあと仰せになりました井上さんの御意見、まことにごもつともに拝聴いたします。私どもも、この話がつきますについても、債務と心得ておつて一幕の交渉を外務省にいろいろやつてもらうのでありますが、しかしその支払いについては、日本の財政経済の実情以上のものは払えないことは、これは当然であります。従つて、こういうことについては、私ども国の財政をおあずかりしておる立場としては、可能な範囲を越したものについて御同意をいたしかねることは、これは申すまでもないことでございます。
  81. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 皆さんにお諮りいたしますが、大蔵大臣とお約束いたしました時間を超過すること三十分。予算委員会から催促がありますので、大臣にお願いしますが、次会にまたお出ましいただくことにして、きようは、大蔵大臣に対する質問はこの程度で打切つておきたいと思います。
  82. 井上良二

    井上委員 それでは簡単に大蔵大臣に希望だけ申し上げておきます。この問題は、単にわが国とアメリカとの債権債務だけの問題ではありません。これは先ほどから申し上げておりますように、終戦以来、アメリカから援助してもらつたことに対する国民の感謝の意思表示はたびたびやつて来ているので、国民としては、それで済んだことと考えておつた。ところが政府の方で、債務と心得るなんという、とんでもないことを言い出したものだから、問題が非常に政治性を常びて来ているのです。そういう意味から、これは閣議でもう一度この問題に対して態度をきめて、特に終戦直後から二十四年以前のこの間の収支の内容を、至急にアメリカ側と折衝して明らかにされたい。道義的な債務であるとお考えになるならば、そんな手間をかけぬでもいいが、債務としてこれを心得て話を進める心構えがあるとなりますと、これは重大な問題がそこから発生して来ますから、特にこの点については、後日本委員会出席されるまでに、外務大臣を通してアメリカ側に公文でもつて、この問題に対する具体的な回答を要求していただきたい。特にお願いをいたします。
  83. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 一言お答えいたしておきますが、実は二十四年三月以前の分が非常に不明確なことは、さき申した通りであります。ところで、これは一方的に向うが帳面をつけたからそうなつておりますので、いろいろ話を進めて行く上においても、それでは困りますから、たとえばこれはどうなるかわかりませんが、ドイツなどは三分の一ほどになつておりますが、何分の一にしてくれというときにも、その元の数字がなくても困りますので、今回わずかでありますが、それがために特に調査費をこの予算に計上をしてございます。そういたしまして、これを的確に調べる方法を講じておりますから、これはひとつお含み置きを願います。
  84. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 次会は公報をもつてお知らせすることにして、本日はこの程度で散会いたします。     午後三時三十七分散会