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1954-04-17 第19回国会 衆議院 水産委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十七日(土曜日)     午後二時四分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 小高 熹郎君 理事 鈴木 善幸君    理事 田渕 光一君 理事 中村庸一郎君       中村  清君    濱田 幸雄君       松田 鐵藏君    吉武 惠市君       赤路 友藏君    淡谷 悠藏君       志村 茂治君    辻  文雄君       中村 英男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 安藤 正純君  出席政府委員         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         水産庁長官   清井  正君  委員外出席者         専  門  員 徳久 三種君     ————————————— 四月五日  委員石村英雄辞任につき、その補欠として勝  間田清一君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員遠藤三郎辞任につき、その補欠として降  旗徳弥君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員降旗徳弥辞任につき、その補欠として中  山マサ君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員高橋英吉君及び辻文雄辞任につき、その  補欠として星島二郎君及び伊瀬幸太郎君が議長  の指名委員に選任された。 同月十三日  委員伊瀬幸太郎辞任につき、その補欠として  辻文雄君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員勝間田清一辞任につき、その補欠として  志村茂治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十六日  水産関係業者に対する水爆被害対策に関する請  願(中村庸一郎紹介)(第四四〇七号)  保田漁港しゆんせつに関する請願(中村庸一郎  君紹介)(第四四〇八号)の審査を本委員会に  付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長補欠選任  公海漁業に関する件     —————————————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  公海漁業に関する件について調査を進めます。質疑を許します。松田鐵藏君。
  3. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 先日の協議会できめたソ連行きの内容に対して、その後委員長から、長官外務省との連絡をしていただくようになつておりましたが、その点はどのように進行しておられますか。
  4. 清井正

    清井政府委員 先般当委員会においてソ連邦との関係についての御決議があつたのでありますが、その後私といたしましては、外務省関係の方とも十分相談をいたして参つておるのであります。最近までの話合いにおきまして、私どものただいままでに申し上げ得ることは、御承知のようなただいまの国交状態でございます。また漁業問題という点につきましては、やはり領海問題等のことも関係いたしますので、この問題はよほど慎重に取扱いをいたさなければならないということが基本線であります。しかもまた外務省といたしまして、いろいろ事務的な措置を講ずる場合におきましても、原則としてはただいまの国交関係上、当然これは問題とならない。ただ例外的に特別に具体的な問題について、いろいろとりはからうということが外務省基本線であるのであります。私どもといたしましても、たまたま北洋漁業が再開せんとするときでありますので、しかもまた母船並びに独航船が昨年度に比しまして相当増加いたしておるのでありますから、何とかして北洋漁業が安全に操業し得るようにということを念願いたしておるのであります。この点は関係の方はもちろん、一般水産界においてもそれを痛切に望んでおることと私も考えておるのでございます。そこで私どもといたしまして、いろいろ外務省打合せいたしておるのでありますが、現在までのところにおきましては、かりに民間代表の方がソ連お話をするということが起きました場合においても、具体的な問題についていろいろ話合いを進めるということにつきましては、そこに難点があるというふうな考え方を持つておるのであります。相手方の情報を集めるとか、いろいろ相手方について知識を得るということは非常に必要であるとは思いますけれども、何らかの具体的な問題について、具体的なとりきめに類するようなことについては、よほどその辺に問題があるのではないか。いろいろな観点から見まして、その点につきましては、私どもといたしましても慎重に考えて行かなければならないという考え方で、ただいま外務省交渉を続けておる、こういう次第であります。
  5. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 長官の御意思はよくわかつておりますし、また外務省日本政府としての立場からいつて、ただいまお話のようにいろいろ非常にめんどうなことだろうと思いますが、民間立場から行きまして、会談をする場合においては、役所と違いまして相当気楽に話ができるのでありますが、先日の小委員会におきまして、ただいまの長官の御意見のように、非常に重大な問題であるが、昨年の暮北洋問題が論議されたときからわれわれが心配したのは、七船団安全操業ということである。そしてそれが一番の主体なつてこの問題が論議されて、たとえば領海だとかなんとかいうことは、行つた場面でなければなかなかどうにもならないのではないか。また日本の将来の立場からいつても、そう踏み込んでまで話合いはどうかという懸念もあるというお話でもあり、要は七船団安全操業というものが主体でなければならないということが一つ。それからドル、ボンドの不足している今日の日本経済界から行く貿易の振興というものに対しては、ソ連でも相当重視をし、日本に呼びかけておるような現状であるから、この面は、でき得るならば物と物との交換というような貿易の面から行つてやさしいのではないかという考え方を持つて、まずこの二点が主体となり、しかしてソ連との間に親交を増すという意味合いにおける、その行つた人々の努力がそれから出て来るものであつて、なかなか思うように簡単に行くものじやないということはよく認識しておつて長官に大体この二点々外務省とお打合せを願いたいという小委員会意見であつたと私は考えておるのであります。その次にはもしでき得ることであつたならば、英・ソ漁業協定がとりかわされておるのだから、こういう協定ができ得るかどうかという打診も、一ぺんではできないだろうけれども、やつていいか悪いか。行く人に対してそういうことをも外務省とお打合せを願いたいというように委員長を通じてお話があつたのでありますが、三番目の問題はお話になられておりますか。
  6. 清井正

    清井政府委員 第一点、第二点の問題につきましては、ただいま私が申し上げました趣旨で御了解願えると思うのでありますが、この点は私どもといたしましても、大体そういうことに考えておるのでございます。それ以外の点につきましては、外務省ともいろいろ話合いをいたしておりますが、まだ結論には到達しておりません。しかしながら趣旨はただいま申し上げたような趣旨でありまして、具体的な問題を持ち出して行くという話し方は、現在の段階では非常にむずかしいという考え方基本線になつておりますので、そういう線はなかなかゆるがないであろうと考えておりますが、なおこの問題につきましては折衝を進めたい、こういうように考えております。
  7. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 次に、この前動議を出して全会一致決定されたときに、速記録について見ますと、「今のに関連して、つきましては今後における当委員会といたしましても、この問題に対する委員会要望等に対する意見のとりまとめ方を、委員長はしかるべくとりはからつていただくこと、人選水産庁に一任されて、水産庁は各団体及び適当な処置を講じてもらうようにとりはからわれんことを要望しておくものであります。」という簡単な要望事項をつけ加えておいたのでありますが、その後聞くところによりますと、長官はこの人選に非常に御苦心されておるというように聞いておりますが、ごもつともなことだろうと思いまして、私ども委員長を通じて前の水産委員長であつた福永一臣君を長官の方へ推薦しておいたのであります。これは一人というわけでもありませんが、その後における経過はどのようになつておられますか、この点、もしお話ができるのでありましたら、簡単にお話を願いたいと思います。
  8. 清井正

    清井政府委員 先方に出かけられますれば、どなたが行かれるかということは、私どもといたしましても、これは非常に関心を持たざるを得ないのであります。現在の段階では政府代表というわけには参りませんから、あくまでこれは民間代表ということになるだろうということは御承知通りであります。その点につきまして、いかなる人物を派遣するのが適当と思うかということにつきましては、いろいろ大日本水産会の方とも十分連絡いたしまして、今まで相談をいたしておるのでありますが、まだ最後的な決定をするに至つていない、こういうような状況であります。
  9. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 長官は、日本の国の水産団体といたしまして大日本水産会お話願つておるというただいまのお話でありますが、大日本水産会のみが日本民間代表ではないのであります。もはや三週間にもなつておる今日において、まだ人選ができないというようなことは、私は非常に不満に思つておる。私は何も大日本水産会という名を出して人選方長官ひとつ頼みますというようなことを言うたわけではないのです。長官に御一任いたします、将来ソ連との交渉経過を考慮したときにおいて、日本政府がバツクしておるのだという立場から持つてつたのであつて、これを重視して長官人選に苦しむようなことでは私どもは困るのであります。北洋は五月一日に函館を出港するのであります。そういたしますと一番最初に問題となるのは北洋漁業安全操業というものでありまして、今日日本ソ連との国交が回復していない、これが一番の恐れとなつておるのであります。そこで三週間もこの人選が難航しておるなどということは、どうも私は受取れないのでありまして、長官もビキニの問題やいろいろなことで非常にお忙しいものだから、大日本水産会ならばまあ日本水産団体としても一番大きいのだから、そこへ人選方を頼まれる方が一番都合がいいというようにお考えなつたのだろうと思いますが、そうまで苦しい思いをされる必要は私はないと思う。長官がそういうように、巷間伝えられておるごとく非常に御苦心されておるということは、私ども見るに忍びない。それならば国民の最高の機関たる国会、その委員会長官に御推薦申し上げて、御決定を願うようにした方が一番好都合じやないかと考えるのであります。しかもそれには委員長を通じて福永君を推薦しておるということでありまして、何もいまさらそう御心配されることはないのじやないかと思われるのでありますが、どういうことでそう難航しておるのか、私実はさつぱりわからない。そういうことで難航されておるというのなら、あつさり大日本水産会というものに、せつかく頼んだけれども、君の方はもういいよ、こういうようにお断りになつた方が一番賢明な策と思いますが、そういうお気持はありませんか。私の方でやりますよ。
  10. 清井正

    清井政府委員 ただいまいろいろお話があつたのでありますが、やはり現在政府代表としてある人を派遣するという段階ではございませんので、やはり民間意向を体した形で行つていただくということになるのじやなかろうか。そういう考え方で、いろいろ民間業界代表機関である大日本水産会意向をも十分聞いてみたいということで、今までいろいろ折衝を実は重ねて参つておるのでありますが、いまだその折衝について、私どもとしても満足すべき段階に到達をしていないのであります。実は今日あたり日本水産でいろいろ御相談になつておるようでありますが、その結論を聞きまして、私どもとしてもいろいろ考えなければならぬと思つております。この問題は非常にむずかしい問題であります。私としてもこの問題については検討を加えなければならぬところがあるんじやないか、こういうふうに感じております。
  11. 辻文雄

    ○辻(文)委員 決議をしたとか話合いをしたことは松田委員が言われましたけれども、その以前に——これは他の新聞でも見たのですが国会新聞の四月の十一日の記事に「平塚下句訪ソか」という題で、「北洋漁業確保のために動く」というのが出ておるのです。この中を見ますと、われわれに関連がないとは言えない。「去月二十四日の衆院水産委員会では自由党松田鐵藏氏の提案で、わが水産業界にとつては今後北洋漁業重要性がますます増大してきているがそれにはソ連との話合いが絶対に必要である、」こういう書き出しで、平塚氏が大日本水産会推薦ソ連へ行くというような記事が出ているのですね。そういうようなことで、大体平塚氏が民間代表として行くという——これはこの新聞だけではないのです、ほかの新聞もありますが、そういうようなことがもうすでに内々きめられている、人選はすでにできている、こういうふうな感じがされますが、長官に一応おまかせしてあるということも先ほど松田委員の言われた通りでありますけれども、何かこれについて長官は詳しく御存じでありますか。
  12. 清井正

    清井政府委員 平塚会長が行かれるというお話があることは私も実は聞いております。平塚氏といたしましても、大日本水産会会長でありますし、かつて日魯漁業として北洋漁業に非常に経験を持つておられるので、その意味合いにおいても非常にあちらへ行つていろいろ話合いたいといいう御希望のあることを私も存じておるのであります。大日本水産会といたしましても、この問題についていろいろ相談をいたしておるのであります。ただ問題は、いわゆる政府と申しますか、さしあたり水産庁外務省でありますが、それとの関連においていかなる取扱いをするかというところに問題があるんじやないかと私は考えております。この間私どもといたしましても、ただ平塚さんがおいでになるということはわかつておりますが、ただいまお話がありましたように、一応水産委員会としての御決議もありますし、それから私どもいわゆる政府立場といたしましてこれとの関連がいかなる形でつき得るものであるかどうかということで、非常にむずかしい問題がいろいろあるんじやないかというふうに考えまして、その点についていろいろ外務省とも今検討をいたしておるのでございます。
  13. 辻文雄

    ○辻(文)委員 それで今松田委員の御発言の中に、前委員長福永氏をあなた方が推薦しておられるということですが、これは確実でありますか、これは松田委員にお伺いするのですが……。
  14. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 私ども自由党といたしまして、福永君が行きたいというお話つたから、昨年まで水産委員長としてあの名委員長振りを発揮されて、実に剛胆でありそして細心の注意を払う人であるから、最適任ではないか——平塚君が行くとか行かないとかということはわれわれはわかりませんでしたから、そこで委員長自由党の者が相談いたしまして、われわれ昨年までは席を同じくしておつたものですし、将来のこともあることだし、そういうことで一番適任じやないかということで——まあ何人行かれるかわからぬが、その中の一名に推薦しようじやないかという話がまとまりまして、委員長から長官推薦願つたわけであります。
  15. 辻文雄

    ○辻(文)委員 お話はわかりました。われわれといえども、党は違つても、御存じ通り水産委員会は割合に超党派で、漁民のため、漁業のために働いておることは申すまでもないのです。しかもその意味においてのかつて同僚議員であり前委員長であつたという観点から、私どもも同調するのに決してやぶさかではありません。これは人情だけではなく、今松田委員から言われたような意味合いにおいても同調いたします。しかしそういう場合に平塚氏は——私も前国会から水産委員なつたのですから非常に知識が浅いので、どんな方法か存じませんが、少くとも私ども委員会ソ連代表をやろうじやないかという私ども気持から申し上げましたら、最も身近で——われわれ人選までも容喙をするという気はありませんけれども、われわれの気持もわかつて、そうしてどんなにしてくれるか。もしこれが委員会としての責任にならぬというようなことでしたら、われわれの意思も十分に膝をまじえて懇談して、そうしてこういうことをやつて来てほしい——そのほしいというのは、この間長官とも話したような線に沿つてですけれど、そういうことでやれる人を私どもはやりたい、行つてもらいたい、こういう気がするのですよ。その意味から言うと少くとも——皆さんはまた別の角度がございましようけれども、私のような水産委員にとりましては、平塚氏はちよつと縁遠いように考えられる。平塚氏が水産関係としては非常な功労者であつたりあるいは非常に蘊蓄がある方であるということは、今の長官お話の中にもちよつとございましたけれども、私はそのことも重要だろうと思うけれども、かつてこういうことを水産委員会が行うということを話合いあるいはきめた。この場合で、こういう新聞に出る前に——何も私ども平塚さんから呼びかけを受けたわけでもない、相談を受けたわけでもないが、こういう意味からいつても何か非常に縁遠いというような感じがする。決してそういうことだけが代表を出す要素にはならない、偉い人だつた行つてもらうのもけつこうなんですが、水産委員会でそういうことがあつたらすぐこういうことができるというのは、私はどうしてもふに落ちない。この間から私は松田委員から聞こうと思つていたことですが、こういうことですから、長官も、お苦しみになつているのはどんなところにお苦しみになつておるか、私にはよくわからぬのですが、今のようなことがもしからんで人選をあなたが——ほかからなされるわけではありません。われわれから一任されて人選されるわけでしようが、その人選に非常に悩んでおられるというお気持がどんなところからか、そういうことも関連しているのか、まず最初にお聞きしてみたいのです。言われてもさしつかえない範囲でけつこうですから、もしお答えできたらお答え願いたいと思いますが、いかがですか。
  16. 清井正

    清井政府委員 関連していると申し上げていいのかどうかわかりませんか、私どもといたしましては、やはり水産委員会の御決議があつて、そこであちらに行かれるということになりますれば、やはり現在の段階においてやり得る使命というものをはつきり認識してやらなければならぬというふうに考えております。そういうような観点におきましても、やはり民間意向も十分聞かなければいけませんし、あるいはいろいろ検討しなければならぬことがあるわけであります。しかもこれは水産庁だけの立場ではございません。外務省立場からもいろいろ検討しなければならぬ問題もございまして、ただいま外務省といろいろ連絡をとりまして、これらの問題につきまして検討いたしておるわけであります。
  17. 辻文雄

    ○辻(文)委員 そこでちよつと平塚氏の問題に触れなければならぬことがあるのは、平塚氏はロンドンにも立ち寄るそうですけれども、マリク駐英大使からのソ連の要人に対する紹介状をもらつて、そしてチヱコスロヴアキアの首都である。プラーグにまずおいでになるそうですね。そういうことでプラーグで開かれておる世界平和会議出席中の平野義太郎氏、これは共産党員ですが、その人あたり協力を得て、同会議の世話で入ソの手続をとる。まだほかにもありますけれども、こういうふうなことを仄聞いたしてもおるし、今度松田議員委員長の手を通じてあなたの方に推薦なすつておる福永君にもそういう話を四月の十二日かにされたということですが、その際長官の耳にも入つているように私ちよつと聞いておるんですが、そういう話は御存じございませんか。
  18. 清井正

    清井政府委員 平塚氏がどういう経路で行かれようと考えておられるかという点につきましては、私ども新聞でもいろいろ拝見いたしますし、いろいろの方々からもお話を伺つておるのであります。また平塚さんからもいろいろお話を承つておりまするけれども、まだはつきり確かめておりません。しかしいろいろなお話が世上では伝わつておるのであります。これらの問題に関しまして、私どもといたしましても、やはり外務省と繁密な連絡をとつて、いろいろな角度から検討を加えなければならぬというふうに考えております。
  19. 辻文雄

    ○辻(文)委員 この間のお話合いのときも長官が心配しておられたのは、将来の日本北洋漁業に対し、その他についても、ソ連との話合いのときに、もし行き過ぎがあつたらということが現実の国家として困るんじやないか。これはいかに民間代表といえども、そういう点に一つ考え方を置かなければならぬようにお話なつたと私は思うんです。私はその際、たとえば腹がしつかりしておれば、共産主義国行つてみたところで、自分の思想が消化されている限り、決してそんなものに侵されるものではない、こういう極言をちよつとはさんで笑つたくらいですけれども、実際はそういう微妙な考え推薦の場合にもお持ちになつているということになれば、今のようなことがもしほんとうだとすると、私はこれは大いに考えなければならぬと思う。福永君はまさか松田さんそういうことはないだろうと思うんですがね。そういうことになると、何人おやりになるか知りませんが、極論のようですけれども、そういう線も御人選の場合におのずから浮かんで来ることじやないかという気も私するのですけれども、こういうことですから、今のように三箇月ほつたらかしておいたとかなんとかということと並行して、そういうことをにらみ合せますと、もうそろそろ長官もひとつ腹をきめて、民間代表としていずれが適当かというような結論をお出し願うことがいいじやないかというような気がいたしますが、これに直載にただちにお答えくださいというのはむずかしい話ですから、お気持だけでも御答弁願えればけつこうだと思いますが……。
  20. 清井正

    清井政府委員 私どもといたしましても、当委員会において御決議のありました次第もあり、また北洋漁業が再開されて出かけるときでありまするから、会議に行かれるといたしますれば、行かれた方があちらに行かれましての効果に対しましては、よほど慎重な考慮をめぐらさなければならぬと思つておるのであります。ことに将来にわたつてマイナスになるようなことがあつては決して相ならぬのであります。また具体的な問題につきまして云々ということも、ただいま外務省相談いたしておる限りにおきましては、これは実際上困難であります。やはり親善と申しますか、そういうようなことが主とならなければならない、あるいは貿易が主とならなければならぬのじやないかとただいまのところは考えております。そういうようなこともございますので、私どもといたしましては、その他のいろいろな事情を総合的に判断をいたしまして、対処いたして参らなければならぬと思うのであります。ただ一点申し上げなければなりませんことは、要するにこれは政府代表ではございませんで、あくまでも民間代表でございますので、その辺やはり民間とのつながりがなければ非常に困るというようなことも考えなければならぬと思います。そこら辺のところをいろいろ勘案いたしまして、この問題につきましては早急結論を出して行かなければならぬというふうに考えておるのでありまして、ただいま民間意向も十分参酌しながら、外務省とも相談いたしておるという状況でございます。
  21. 辻文雄

    ○辻(文)委員 たいへんくどいようですが、はなはだたやすいようで非常に重要な問題でありますので、今後今申し上げたようなことも十分御研究をいただいて、しかも大日本水産会だけが、松田議員お話のように、長官の参考にされる水産界の全部ではございませんので、多角に御検討願つて、あやまちのない、しかも私ども気持にもぴつたり来るものを、せつかくこういうことをお互いにきめましたので、その線に沿うことが遠くならないように人選もおやりいただくことを要望いたしておきますと同時に、委員長にもさような御協力を側面から強力にお願いいたしておいて、私の質問を打切ります。
  22. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 皆様も御承知通りと思いますが、平塚さんは私の先輩であります。しかも同じく北海道の出身であり、党も同じゆうしておるものでありますし、しかも平塚さんは北洋を切り開いて、目魯をあれまでに盛り上げた実際の実行家であります。私どもとして実に尊敬しておる方であり、また今日大日本水産会会長をされておる人であります。ところがただいま辻君からの話をだまつて聞いておりますと、新聞にも出ておる、それからまた福永君と会談をした、そのときにおいて共産党員である人々の手引きによつてソ連に入国する、こういう話をされたということであつたならば、私はだまつていられないのであります。当委員会考え方はさようなことじやない。どこまでも日ソの間というものは国交がないから、非常にむずかしい問題である。北洋に対する船団安全操業を一番われわれは考えなければならない。それには外務省委員会を通じて論議し、委員会決議をしてくれるならば、特例中の特例を認めるように努力をするということであつた。どこまでも正式ルートでなければいけないということで——大西廉作氏が密入国をした、それがために全然日本の国にはマイナスであつた、かような点からいつて委員会がバツクして決議をして、外務省は特例中の特例を認めるという御意思によつて、この問題を正式なルートに乗せて、日ソの関係を幾分でもやわらかくしたいというのがわれわれのねらいである。それにかかわらず新聞やそれから人々にお話になる。私の先輩としてまことに嘆かわしい話だ。ただいまの辻君のお話だと国会決議を無視しておる。さような考え方を持つておられるということだつたら、私はたとい自分の先輩であり、しかも私の尊敬しておる人といえども、私は行つてもらいたくない。長官がかかる人を推薦するということだつたならば長官の責任だ。われわれ国民は民間代表である。しかして立法府である。あらゆる努力をして、大きな壁にぶつかつてそれを打破して行くということが日本政府ではできないから、国会決議をもつてかようにして行こうという考えを持つておる。外務省苦しみというものは並たいていのものではないのである。長官を苦しめ、国会を無視して行くということであつたならば、私は断固として反対しなければならない。たとい先輩、それから礼を尽さなければならない人ではあるけれども、かような考え方をもし平塚さんに——私は決してないと思うが、現在の辻君のお話は間違いであろとは私信じておりますけれども、もしそういうことがあつたとすれば、私は自分の先輩であるけれども断固として反対しなければならない。すべからく国会意思というものを尊重し、役所の意見を尊重して、微妙な国際情勢に乗り出そうとするならば、私をなくしてかからなかつたならば、この問題の解決はできないものだと思う。ただいま辻君が言うようなことがあなたの耳にでも入つて、または本人直接からでもお話があつたとするならば、かような人であつては適格者でない、このことを強く私は長官に進言をしておくものであります。     —————————————
  23. 田口長治郎

    ○田口委員長 これよりビキニ水爆被害問題について審議を進めます。  本日の政府出席者は安藤国務大臣、水産庁長官清井政府委員、厚生省環境衛生部長楠本政府委員、厚生省乳肉衛生課長阿曾村説明員であります。赤路友藏君。
  24. 赤路友藏

    赤路委員 安藤国務大臣の御出席を得ておりますので、ビキニ問題についてお尋ねいたしたいと思います。政府では、ビキニ水爆実験の日本に及ぼすその後の被害の拡大に対処いたしまして、調査船を派遣することに決定したと聞いております。これは被害除去の抜本塞源的なものではございません。しかしがら一応の国民の不安除去と、その後の対策に対する基本線を打立てるという面においては賛意を表せざるを得ないのであります。しかもこのことは、今日の状況をもつていたしますと事は急を要すると存じますが、調査船を派遣すると御決定になつておれば、いつ御出発の予定であるか、その点についてお尋ねいたしたいと思います。
  25. 安藤正純

    ○安藤国務大臣 根本的調査を水域においてする必要があるということは、かねがね政府といたしましても考えておりましたし、またこの委員会におかれても要求がありましたので、さつそくそういう運びにいたしております。近く各方面の科学者を乗せて、そして水域の調査をしたい、こう考えております。船の出る時やらその他の細目は水産庁長官からお答えいたさせます。
  26. 清井正

    清井政府委員 ただいま御質問のありました点でありますが、たまたま水産庁におきましても相当の監視船等を所有いたしております。平常におきましても、南方方面に所要の任務のために回航いたしておりますので、この際いろいろ検討いたしまして、ただいまのところでは、水産講習所の練習船俊鶻丸という船、これは約六百トン程度でありますが、それを派遣いたしたいと考えております。その船は御承知通り水産講習所の練習船でありますので相当収容人員が多いわけであります。しかも学術用に使用するために、いろいろな施設も他の船に比べて持つておるというようなきわめて好都合な状況にありますので、この船を使用いたしたいと考えております。なお調査といたしましても、当該海域におきまして魚撈いたしまして、まぐろその他の魚類等を漁獲いたしまして、これについていろいろな調査をいたす、あるいは海水についての調査をいたす、あるいは空気中の問題につきましてもいろいろ調査するというようなことがあろうと思います。そういつたような問題についていろいろ調査を進めて参りまして、この問題の科学的な探究に資したい、かように実は考えておるのであります。来る二十一日に、実は関係の専門家が集つて最後的な打合せをいたすことになつとおります。これには大学方面の専門家並びに厚生省方面の専門家等にも十分参画していただきまして、そこで計画の具体的な内容を研究決定をいたさなければならぬ、こういうふうに考えておるのであります。その調査の結果に基きまして至急出発の日にちを定めまして、所要の調査にとりかかりたいと考えておるのであります。相当長期間を要するのではないかと実は考えておりますが、なるべく早く出かけませんと成果があがらぬのでありますので、その点を考えまして、準備のでき次第早く行こうということで、二十一日の打合せ会において専門家の検討を得た上で行きたい、こういうように実は考えておるのであります。
  27. 赤路友藏

    赤路委員 ただいま長官の御答弁で、大体調査船がおそくとも本月末までには出られることになるだろう、かように解釈いたしますが、お言葉の中に、当該海域において操業をする、そうして海水その他プランクトン、小魚等をとつて調査をすることと思いますが、当該海域ということになりますと、当然アメリカ側の一方的に設定いたしました危険区域にも入ることになるだろうと思います。また危険区域内に入らなくては調査の完全は期し得られないと思うのでありますが、この場合の対策をお考えになつておるかどうか、この点お聞きいたしたいと思います。
  28. 清井正

    清井政府委員 当該海域において調査をいたすことはむろんでございますが、アメリカ側の指示いたしましたいわゆる危険海域内に入つて実験研究を行うかどうかについては、実はまだきまつていないのであります。その点二十一日の専門家の会議におきまして検討をいたしたい、こういうように考えているのであります。むろん検査をいたしますためには、できるだけ爆発現場に近い方がいいということが、常識的には言えるのでありますが、いろいろな事情を考えてみなければなりませんので、その点につきしまして、いろいろ専門家の意見を十分聞きました上で、最後決定をいたしたいというふうに考えているのであります。  なお出発するにあたりまして、その出発日あるいは巡航する航路その他の詳細につきましては、米国側にも通知をいたしまして、予防措置等については十分遺憾ないようにいたさなければならぬというふうに考えているのでありまして、外務省とも実は内々相談をいたしている最中でございますが、まだ最後的な確定的なところまで至つておりません。目下相談をいたしている最中であります。
  29. 赤路友藏

    赤路委員 先般この問題が当委員会で論議されましたときに、他の同僚委員の中からも、本調査の重大性を強調いたしまして、この問題については、アメリカ側の方へも調査に対する協力を求むべきであるという点を、特に強調されたように私は記憶いたしておりますが、この調査船派遣について、今までそれでは一回もアメリカ側の方に対しては、そういう要請をしなかつたか、あるいは通知等をしなかつたか、その点について御答弁をお願い申し上げます。
  30. 清井正

    清井政府委員 ただいまのところでは、まだアメリカ側に対して調査の協力は求めておりません。この問題につきましては、なお専門家の専門的な観点からもいろいろの検討を経た上でないと、はつきりしたことは申し上げられませんが、現在の段階ではそこまでは考えていないのであります。また予防措置等の関係もありますので、緊密な連絡をとることは必要かと思いますが、いかなる形で連絡するかということにつきましては、なお専門家の意見を聴取した上で最後決定をいたさねばならぬ、こう考えております。
  31. 赤路友藏

    赤路委員 長官は、先ほどから専門家の意見、専門家の意見と盛んに言われるのですが、私はどうもそれはおかしいと思う。ただ危険区域として決定されたその区域外でやることでは、その本質的なものは絶対握れないと思います。従つて当然調査をするということになれば、危険区域内に入つて行かなければ、本質的な面は私は握り得ないと思います。私はしろうとでございますが、常識的に考えてそうだと思う。いまさら事あらためて専門家の意見を聞くにも及ばないじやないか、かように私は解釈している。なぜ私はこの点を申し上げるかというと、もしも危険区域内の調査が絶対必要だ、こういたしますと、当然アメリカ側に対しまして、危険区域への立入りを通告しなければなりますまいし、またアメリカ側のこれに対する承認をとらなければならない。私の聞き及ぶところによりますと、これは単なる風説であろうと思いますが、すでに政府の方において調査船を出すということを新聞発表したことによつてアメリカ側の方ではこれを拒否するという動きがあるということを聞いておりますが、さようなことはございませんか、この点一応お聞きいたしておきたいと思います。
  32. 安藤正純

    ○安藤国務大臣 その調査船に対しまして、アメリカの方との共同調査ということについては、日本側ではアメリカの方の調査を決して拒否するという意味じやない。都合によればアメリカとの共同調査も必要であろうというのであります。そういうような打合せもしているのであります。従つて船を出すということになつて、それらのすべてのことがきまれば、アメリカ側には通報いたすつもりであります。アメリカ側がこれに対してどういう態度をとるかは、それはそのときの話ですが、日本側としては向うへ通知をしよう、そうしてまた共同調査がよければ共同調査しよう、こういう態度をとつているのでありまして、まだそこまで行つておらない。それから、専門的ということはどうであろうと、根本調査をやるという態度を日本政府ではきめているのでありますが、それではどういう方面にこまかくやつていいかというようなことは、これはしろうとではわからないから、そういう科学者、専門家を集めて、こまかい、遺憾のない調査をしようという方針から出ているのでありますから、さよう御承知願います。
  33. 赤路友藏

    赤路委員 今の安藤国務大臣のお話でよくわかるわけでございますが、共同調査までもこちらの方はやりたいという意思を十分持つている。私ども委員会といたしましても、これはアメリカ側においても大きな責任のある問題でありますから、従つて当然私たちは、アメリカ側の方からもこちらの申入れに対しては、虚心坦懐に協力をするものであると確信はいたします。しかしながらそういうようなうわさが出るということになりますと、これまた一点疑わざるを得ないのでありまして、最初三月一日に爆弾実験をやりましてから、二十六日、四月六日と爾後二回連続してやられておりますが、全然事前通告もないような状態であります。そういうようなアメリカ側のやり方でございますので、そうしたうわさも単にうわさとして聞きのがせないかり、そういうような御心配はないかどうか、もし私たちが心配するようなことが事実起るといたしますと、せつかく出した調査船が、その本質を握り切れないで、上つらをなでただけの調査にしかすぎぬというおそれがあるものですから、これらに対する対策等も十分考えておやり願わなければならない、かような意味合いから私は申し上げたのでございます。従つてさようなことのないように、十分今回のこの調査に対しましては、アメリカ側の方にも絶対これは協力せしめるという決意の上に立つて御調査をお願い申し上げたい。  それからもう一点お尋ねいたしたいのでございますが、もうすでにこの船に乗る科学者の人選と申しましようか、これは漸次進められているかと思うのでございますが、これらに対しましては、どういうような御方針をお持ちになつているか、お聞かせ願えればけつこうだと思います。
  34. 清井正

    清井政府委員 現在の段階といたしましては、ただいま申し上げました通り、二十一日の専門家の会同に付しまして、調査に関する具体的な内容、並びに乗船して現地で研究調査に当ります人選等をいたすという予定にいたしているのでありまして、ただいまのところでは、人選決定いたしている段階でございません。ただわれわれといたしましては、せつかくの機会でありますので、やはり広くその方面の専門家に行つていただいたらいいじやないかというふうに、実は考えているような次第であります。
  35. 赤路友藏

    赤路委員 調査船の面につきましては、それで了解いたしますので、どうか万遺漏なきを期しておやり願いたいと思います。  最近入港して参ります船が、続々と放射能を持つたものが出て参つておりますし、また最近の新聞の発表を見てみますと、新潟の降雨あるいは大阪の降雨、千葉の降雨、こういうように各地における雨にこの放射能が検出されて来ている。こういうようなことになりまして、非常に国民は不安を持つておる段階でございますが、これらに対する研究が、あるいはこれらに対する検討が、単に各地方々々のものにまかしておるというのでなしに、統合されて十分対策が立てられておるかどうか、この点について一応御意見を承りたいと思います。
  36. 楠本正康

    ○楠本政府委員 御指摘のように雨中に放射能の証明が伝えられておるのでございます。私どもといたしましては、今後の研究にきわめて信を与えるものとしても重要なものでありますので、逐次これらの調査研究の成績をつぶさに取寄せまして検討を加えておる次第であります。なおこれらのものがそれぞれの立場でかつてに研究されることも成果が上りませんので、私どもの方といたしましては、目下原爆調査研究協議会の中にかような一つの部門を設けまして、総合的な研究をいたすべくすでに出発をいたしておるわけでございまして、方々で行われます研究を総合して正しい判断をつけて、正しい実態をつかんで行く、かような仕組みでいたしておる次第であります。  なお現在まで私どもの研究の範囲におきましては、これら雪あるいは雨等は、かなり多量のものを庄縮いたしまして少量にいたしまして、これを材料にして研究いたしておりますので、従つて自然雨、自然雪等におきましては、人体にさしたる影響のないものと考えております。しかしながらこれらはただいま御指摘のように、今後原爆の問題を総合的に対策を立てる上からいつて、研究的にはきわめて注意しなければならぬ問題だ、かように考えております。
  37. 赤路友藏

    赤路委員 今日本の国民のすべては、死の灰であるとか死の雨であるとかいうようなことが飛び出しますので、そういう実相を知りたがつておる、これが事実だと思います。これはわれわれ日本人としての生死に関する大きな問題であります。従つて人間本能として当然過ぎるほど当然な国民の声だと私は考える。従つてそれだけにこの研究結果の発表というものは、この不安を急速に除去するためになされなければならないと私は思う。ただいまの部長のお話によりますと、総合研究をなされて、一本化したもとにそれらの面が集約されて来て、そうしたものを発表する、こういうような段階になろうかと思うのですが、まことにけつこうであります。けつこうでありますが、その段階においてことさらに良心的な発表を押えつけるようなことはないかどうか、この点はひとつ特にお聞きしておきたいと思うのであります。  四月十四日の朝日新聞を見てみますと、東大の発表中止の問題が出ておりますが、名前は書いておりません。この中で某博士が言つておる言葉の中に、われわれが自由にものを言えることに圧力が加わつたのは四月初めからのことである、こう新聞紙が書いておるわけであります。かりにも何らかの政治的な意図と申しますか、これは非常にきつい言葉になるかもしれませんが、何らかのそういう別の意図からこうした発表に圧力が加えられるということになると、これはたいへんだ。私はやはり何ら隠すことなしに、その良心的な発表は良心的な発表としてなさしめるべきである。ただ違つた角度から個々ばらばらにやたらに出て来ることもこれまた困る。しかしながら総合されて発表されるという過程において、少くともそういうような政治的な意図が加えられてはならない。この新聞紙に出ておるようなことがほんとうであるのかどうか、この点についてお聞きいたしたいと思います。
  38. 楠本正康

    ○楠本政府委員 ただいま御指摘のように、学問の研究発表にかりにも政治的な圧迫あるいは政治的な意図をもつて曲げるようなことがあつてはならぬとは、まつたく御指摘の通りと存じます。新聞紙等に伝えられております点は、決してさような趣旨ではございません。私どもなあくまで学問研究発表というものは、正しくしかも事実を発表すべきものと思つております。ただ先ほども申し上げましたように、これらの研究が各個ばらばらに行われますことは必ずしも十分な成果が上りません。そこで原爆症研究調査協議会を活用いたしまして、これらが総合的に検討を加えて、正しいところを発表する。一つには、各個ばらばらに学者がわれがちに発表いたしますことは、それだけまたかえつて曲りもいたしますので、発表の統制とかあるいは政治的意図ということを除きまして、共同研究の立場で、協議会が中心となつて検討を加えて発表して行くという趣旨でございます。これは学問の共同研究の建前上、当然なことと思つておりますが、これらの発表形式が、あるいは曲げてむしろ表現されているのではなかろうか、私さように考えておる次第であります。
  39. 赤路友藏

    赤路委員 ただいまの部長のお話で曲げられておるのじやないかというようなお話があつたようでございます。私も新聞をずつと通覧いたしまして、学者の人たちを疑うわけでも何でもございません。またこの人たちの人格をどうこう言うわけではございませんが、こういう際はスタンド・プレーをやられては困るということなんです。この点は十分警戒を願いたいとともに、先ほど申しあげましたように、しかしそのことのために良心的な発表を抑えるがごときことは絶対やつてはならない、かように考えます。たとえば十日のアリソン声明は、およそ患者の実態を無視した声明であると思う。こういうような声明の内容は、これはアリソン大使自身がおわかりになるわけはない。この内容については、当時新聞でも大きく報道されましたように、アメリカ側の診断に対しましては、日本の患者はこれを拒否しておる。従つてその内容はわからないはずです。わかつておるとするならば、これはこちらの方から材料を提供したということになるわけであります。その材料の提供の仕方に、しごく簡単安易なものを提供したから、こういうような発表がなされたのではないか、この点私は今後もあることでありますから、十分御注意願わなければならぬと思うが、この問題について局長はどういうふうにお考えになつておるか、御答弁を願いたい。
  40. 楠本正康

    ○楠本政府委員 率直に申し上げまして、先日も当委員会におきましてお答えを申し上げた次第でございますが、アメリカ側の声明なり、あるいはわれわれに与える材料というものにつきましては、必ずしも私どもが十分に納得しておるものでもございません。また私どもの提供した材料を基礎に、忠実に研究した結果とも思われない節もございます。しかしながら私どもといたしましては、学問に国境もないわけでありますから、材料の提供あるいはお互いに研究に協力し合うという点につきましては、今後もできるだけさような趣旨から協力をして参りたい所存でございます。
  41. 赤路友藏

    赤路委員 いろいろお聞きいたしまして、大体了解いたしました。安藤国務大臣にお尋ねいたしますが、本事件の調査研究等が相当厖大なものになつて来ております。従つて、それだけにいろいろ予算措置が伴つてこなければならないと思います。これは実に重大な問題でありますので、簡単に現在の行政費の中から少しずつ節約をして出せというようなことでは、十分な研究ができないと私は思う。これに対して特別な予算措置を講じられるようなお考えがあるかどうか。そうしたことを早急にやつていただかなければ、調査研究が進まないと思いますが、この点についての御答弁をお願いいたします。
  42. 安藤正純

    ○安藤国務大臣 お話通り、だんだん時期も長くなり、調査の範囲も拡大し、それからこの重大事にかんがみまして、軽々に取過すわけには行かないのです。その意味におきまして、今後拡大すれば拡大する、もつとつつ込んでやればつつ込んでやるということの必要だけの軽費は、政府でもその覚悟をして、すでにそういうことが相談にも上つておる次第であります。その点は決して軽々にやつているというわけではありませんので、その考えは持つておりますから、そう御承知を願います。
  43. 赤路友藏

    赤路委員 ただいまの大臣の答弁で一応了承していいわけなんでありますが、いつも政府のおやりになることは、必要に応じて出す出すとおつしやるが、その出し方がしみつたれております。一向そういうような研究調査の実績が上らないきらいがありますので、この問題は日本人全体の生死にかかわる問題でありますから、この際特に思い切つておやりくださることを要望いたしておきます。  それから大臣にお尋ねいたしたいことは、損害補償の問題でありますが、私ども委員会におきましてこの問題を取上げまして、大体直接損害補償と間接損害補償との二つにわけまして、項目別にあげたわけでございます。直接損害補償といたしましては、まず第一点は被災廃棄漁船及び被災廃棄の漁具の損失補償であります。第二は被災漁獲物の損失の補償。第三は被災乗組員の医療費であります。第四は被災乗組員のあとに残された家族の生活の保障の問題であります。第五は被災船の船主の損失補償でございます。第六は被災者の慰藉料。第七は各関係官庁及び地方庁または民間における本件によるところの調査研究その他の経費、これだけのものを私どもは直接損害補償として打出しておるわけであります。  間接の損害補償といたしましては、魚価の暴落による損失。それから漁場の操業または航行禁止による損失。第三は漁場の変更及び禁止区域拡大による迂回航行から生じるところの燃料費その他の損失。第四は、出漁が遅延いたしておりますが、出漁遅延による損失。第五は、卸、小売等の面でございますが、漁獲物の扱い高が非常に減少しておる。これから生じて来る滞貨による損失。第七点は、地方に発送した品物が、それぞれ返品されておる。この損失は相当大きなものに上つております。第八は市場を休んだことによる損失。第九点としましては、販売が低下したことによる損失。これらのものが間接の損害補償として当然あげられなければならないものとして、私どもはこれを取上げたわけであります。  この直接損害補償と間接損害補償は、当然アメリカ側によつて補償さるべきものである、かように私たちは考えております。ただ当面これをアメリカ側に交渉いたしまして解決つけるまでの間には、相当な時日を要すると考えなければならない。直接損害補償に対しては、アメリカ側でもいやとは言えない問題でありますので、これは当然アメリカ側から来るものである。この前提に立つて政府はまずもつてこれに対して代払いをするということが考えられなければならぬが、この点はどうお考えになりますか。第二の間接損害補償については、これまた同様の措置をおとり願うことを私たちは望むのでありますが、なお検討する機関を置いたといたしますならば、当面これらに対する融資措置をいかようにお考えになるか。この二点についてお尋ねを申し上げます。
  44. 安藤正純

    ○安藤国務大臣 今あなたのおつしやる直接損害額、すなわち船体福龍丸、それから漁具、漁獲物とかその他船に載せてあつたところのいろいろな物品、そういう物の損害、それから今後の操業を休んでいる補償あるいは慰藉料、つまり今あなたが列挙なさつた事柄は、ことごとく調査の課題にいたしまして、過日来調査研究しております。大体において見込みがついたのであります。従つて直接損害補償額につきましては、実は今アメリカ側に内折衝をしておるような次第であります。でありますからそう御承知を願いたい。  それから間接補償といいますと、今たくさん列挙されましたが、やはり政府においてもそういうふうに考えておるのです。ただ間接損害補償といいますと、これはアメリカ側へ要求するとなると慎重を要する、慎重といつても遅らすというわけではない。慎重にして迅速にしなければならないのだが、俗に言うとふつかけてとろうというような様子が見えてはいけない。しかし要求すべき正当なものは必ず要求しなければならぬ、そういう点で慎重にしてかつ私は早くやつてくれ、やつてくれと言つて迅速に促進をいたしておる次第であります。まだ今のところでは間接損害というのはずいぶん範囲が広いですから、どこのどういう点までが間接損害になるのかというようなことを慎重に考究しておるのです。しかしおそらくこれもそう長くかからずにきまりがつきましようから、それについて要求すべきことは当然要求するという方針をもつて進んでおります。  それからアメリカの方へ交渉して向うが長くなる、その間はどうするのか。向うも早く出すかもしれません。今こつちで要求しておるのは、総額の最後の要求ではないのです。一例をとれば、これから治療が何箇月かかるのか、何年かかるかわかりませんから、今までのところの中間補償という程度、そして総額とれるものは総額の要求をするのです。しかしだんだんこの過程において中間的にやらなければならぬ性質のものがあるのですから、そういうものはそういうふうにやつておる次第であります。で、直接損害は言うまでもありませんが、間接損害につきましても不日話はきまると思いますから、要求すべき点は要求する、その間においてアメリカの方が早くそれらに対して出すというなら、それに越したことはありません。アメリカに早く賠償させようという方針をもつて政府は進んでおります。しかしその間、折衝においてこつちが言い出したことを向うがそつくり開けばいいのですが、そう聞かぬ場合もあることを予想しまして、それが長くなればその間政府においてはそれを立てかえて支払う、こういう方針をもつて進んでおります。  それからもう一つは融資の問題ですが、融資のことにつきましても、地方庁から言つて来ておるところもすでにありますから、この点についても今せつかく、早くそういうふうにしようという考えをもつてつております。
  45. 赤路友藏

    赤路委員 今の大臣の答弁で大体了解いたしました。直接損害補償の方ですが、これは何といつても大臣の方でももう十分御調査になつて、大体の中間補償としての分をアメリカの方へ要求しておる、こういう段階なんです。ところがこれがいつ中間補償としての分を出すかということがまだわからないわけです。まだわからぬものを、三月十四日に福龍丸が入りましてからもうすでに一箇月たつておるのに、そのまま放置されておるということでは困るわけです。もちろん漁協なり地方の団体等において、手の尽し得るだけのことは尽しておりますが、これとても十分なものでないことはおわかりのはずなんでございますので、立てかえるつもりでなしに、速急に何とか手を打つていただきたい。この点を特に御要望申し上げておきまして、私の質問を打切ることにいたします。
  46. 安藤正純

    ○安藤国務大臣 あなたの御要求はよくわかりました。政府も大体その方針で進んでいるのですが、なおよく委員会のお考えに対応してやりたいと思います。  それから船ですが、福龍丸はもう政府で買い上げることにはきまつているのです。それからその船価等についてもすでに大体きまりかけていますが、最後決定が不日できると思います。ただその保管といつたような点について、これはほんとうは非常に因つているのです。だれも福龍丸をうれしがつて引受けるところはないから非常に困つている。困つているが、これは大いに地方庁とも相談しまして、研究にもなれば、あとの処置をよくしよう、こういう態度で進んでおります。
  47. 田口長治郎

    ○田口委員長 淡谷悠藏君。
  48. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 外務省の小瀧政務次官のお話ですと、三月三十日にアメリカ側に対して、水爆実験をやる場合には、公海自由の原則から水爆実験の時期、危険水域について日本立場を十分に考慮してくれるようにという申入れをしたとか聞いておりますが、四月六日の第三回の水爆の実験においては、そうした外務省の申入れに対して、アメリカ側で全然考慮しなかつたことになりましようか、その点を安藤国務大臣から承りたいと思います。
  49. 安藤正純

    ○安藤国務大臣 これについては、アメリカ側と折衝をした結果、いろいろ実験をするのにも気象の状態等があつて、そういうようなことはしよつちゆう変化するのだから、あらかじめいつ必ずやるということをきめて通知してしまうということは、実際上実験の立場から困難だというようなことがあるのです。しかしながら、そう長くはやらぬ。こちら側は短縮してくれということを交渉したのです。だが今言つたようなわけで、そう確定するわけには行かない、しかしまあ六月一ぱいくらいで一応おしまいにする、またやるときはあらためて話をする、こういう話なんです。
  50. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ただいまの大臣の御答弁によりますと、こつちが申入れをしたのだが、水爆実験をやるその都度にこちらの方に通知をすることは不可能だ、またあまり長くはやらない、六月一ぱいくらいで一応打切るが、そのふとまたやるときは通知をしてやるというふうに了解してかまわないのでございましようか。大体そのように承りましたが、その通りでございましようか。
  51. 安藤正純

    ○安藤国務大臣 アメリカではそう言つているのです。しかし日本がそれでよろしいと言つたわけではない。なお続いて交渉しているのです。向うは向うの立場でそう言つておりますが、日本はそれで承知したとか了解したとかいうわけじやない。続いてこちらの主張を向うへ折衝しておる最中なんです。
  52. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 安藤国務大臣のようなお考えですとたいへん助かりますが、岡崎外務大臣は水爆実験に協力するという声明をしておるようでございますが、これはどういうふうに理解してよろしゆうございましようか。一方では困るという申入れをする、一方では国の外務大臣がこれに協力するというふうに申し入れたのでは、アメリカも決定に苦しむだろうと思いますが、この点はいかがでございましようか。
  53. 安藤正純

    ○安藤国務大臣 それは、岡崎外務大臣は岡崎外務大臣のお考えから言つたので、私はそれに対してお答えする責任はないが、おそらく岡崎君が言つたのは、水爆ということは今どんどん進んでいることで、これが現在の段階では世界の平和維持に必要なことだから、それを日本のみの利害の立場からやめてくれと言うことはどうか、しかしながらそれによつて受けるところの影響、打撃、すなわち損失等の問題は、明らかにアメリカが責任を持たなければならぬ、こういうのが岡崎君の言い方じやなかつたかと思うのです。だから一口に言いますと、世界の大局の上の話をしたのじやないかと思いますが、それは岡崎君は——私は岡崎君ではないからわからないが、おそらくそういう意味で言つたのじやないかと思う。
  54. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 笑いことじやないと思います。私は、岡崎外務大臣も吉田内閣の一閣僚だし、安藤国務大臣もやはり吉田内閣の一閣僚だと了解しておりますが、同じ内閣に所属する二人の大臣が、そのようにそれぞれかつて気ままなことを放言するような形では、私は今後の政治というものに対して、とうてい安心して信頼するわけには行きません。はつきりお話申し上げますが、当水産委員会は、昨年の夏あるいはその以前から、常に日本外務省の非常に不徹底な外交のとばつちりを食つておりまして、そのしりぬぐいばかりやつております。竹島問題にいたしましても李承晩ラインの問題にいたしましても、アラフラ海の問題にいたしましても、さらに中共、ソ連等による漁船の拿捕にいたしましても、常に水産委員会はこうした被害を受けまして、法案の審議さえ見通しがつかないような状態であります。外務省からはたびたび係官が出席されておりますけれども、こういう質問に対して、大臣ではないから私にはわからないという無責任な答弁でひつ込んでしまいます。で、委員長とも十分に協議いたしまして、どうしてもこれは所管大臣である農林大臣並びに外務大臣に御出席願つて、わが国水産行政の将来に対して確固たる基礎を今築かなければ、これは絶対にやつて行けない。日本漁業は全滅である。このような悲壮な気持からきよう私はこの質問に立つておるのでありまして、従つて同じ吉田内閣の一閣僚である安藤国務大臣は、こういう意味委員長からお聞取りになつて、つまり吉田内閣として十分責任ある御答弁を願えるものと、私はまじめに考えておるのであります。前には、木村保安庁長官あるいは岡崎外務大臣も、李承晩ラインあるいは竹島問題については少しも心配はいらない、平和的な折衝を続けておるから何とか平和的な解決を見るだろうと言つたが、にもかかわらずあの九月末、十月の非常に大量なる拿捕を見ております。中共、ソ連につきましても常に平和的な解決をやつておるのだと言つておきながら、さつぱりその効果が上つておりません。そうして今このビキニ問題がまたこのように大きくやつて来ておる。おそらく大臣は、ただいまおやりになつておりますこのビキニ被爆事件各省連絡協議会議長というお役柄外務省、農林省、一切の関係官庁とは十分に御連絡あるものと私は了解いたしますが、この安藤国務大臣の、外務省外務省だ、おれは知らぬという態度では、私ども何とも心もとないのであります。どうぞ本日はそういう意味ではなくて、責任ある政府の一閣僚として、はつきりした御答弁を願いたいと思うのであります。一体このビキニ問題の前途でありますが、今日本の漁船は出漁もできないでいる。出たものは全部放射能を持つてつて来る。国民はとつた魚も食えない。市場は閉鎖する。はなはだしきは、私は青森県でありますが、青森県のちくわ工場は全部閉鎖しておる、倒産しております。このくらい国民が不安をこうむり、しかもまたその放射能を含んだ灰などによりまして、まさに日本は死の直前にある現状ではありませんか。これは一漁業のみの問題ではありません。一体アメリカのその無責任なやり方に対して、外務大臣はどうか知らないと申しますが、閣僚としての安藤大臣は、今回のビキニ問題を一体どういうふうにおとりきめになる覚悟と決心とをお持ちになつておるか、その点をはつきりお聞きしたい。これは笑いことじやない。もつと真剣な御答弁を願いたいのでございます。
  55. 安藤正純

    ○安藤国務大臣 私は放言をしたり、いいかげんなことをやつておるのじやないのです。そんなことは私にはできない。御質問に対してまじめに答えておる。ただ岡崎君が言つたことはどうだと言うから、それは岡崎君の意見、岡崎君の考えておることを言われたのだろう。しかし私は岡崎君個人の言葉には責任は持てないのですよ。けれども岡崎君は、おそらくこういう点で言つたのだろうと思う。それはわれわれも、政府としても慎重に考慮しなければならないと思うのです。で、私はこういうふうに考えているのだが、それは日本の水産資源、漁業の将来に対して非常に重大な問題なんです。それから水産委員会は、そういうような大局から非常に真剣にやつておいでになることはよくわかつています。水産委員会もそうだが、政府の方でもやはり真剣にかかつているのです。それで日本の重大問題だから、あすこで水爆の実験をやつてはいけないと、はたして日本が言い切つていいか悪いかということです。これは実は私自身としてももう少し研究してみたいと思うのです。従つて政府もやはりこの重大問題については、今そう簡単に言い切ることはできないのじやないかと思うのです。あなたのおつしやることも非常にりくつはあるのです。しかしはたして日本の今の立場として、世界の情勢からいつて、すぐそう言い切つていいのかどうかという結論を出して、すぐ向うへ言うのに対しては、もう少し時日をかしてもらつて慎重にやる必要があろうと思う。それだからそう御承知を願いたいのです。従つてあなたの言うことを反対にとつたり、軽視したりしておるのじやないのですよ。ほんとうは見きわめがつかないのです。この見きわめもそう簡単につけてしまつたらいけないのじやないかと思うのです。しかしながらこれは重大なことですから、よく研究しまして、また各省にもあなた方水産委員会の真剣な立場をよく伝えます。それでなお研究いたします。しかしこれは決して容易な問題ではない。  それからその次に、今各省を集めてやつております仕事は、現在の福龍丸及びそれから以後ちよちよび起つて来たところのいろいろな船、これからまた起るかもしれませんが、これに対して遺憾なき処置を講じたい。それからアメリカに対しては十分要求すべき点は要求し、主張すべき点は十分に主張しなければならぬ、そういう現在の対策の打合せ協議会なのであります。それでは将来のことはこんな重大問題について考えないでいいかといえば、そんなわけではない。将来も大いに考えなければならぬのです。これはすでに政府においては考えつつあります。そこで考えた結果が、この現在の問題と別にするか、あるいはずつと引続いて連関するかして根本的の対策を考えて行かなければならぬと政府は思つております。
  56. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 御趣旨はよくわかりましたが、ただいまの御答弁で、水爆実験をただちにやめてくれということをアメリカに申すことはどうか、まだ考慮の余地があるというふうに伺いましたが、一体考慮しておる間に、この危険な状態が単に経済上の問題だけでなくて、日本の国民の生命の上まで刻々と迫つて来るような形になつておるのでございます。これはアメリカの立場はどうあろうとも、少くとも日本の自衛的なものとして、保安隊を増強する以上に日本人の生命の危険をどうするか、国土の不安をどうするかということは、自衛力を保持する上からいつても、もつと強く主張されて当然だろうと考えておりますが、大臣はどうお考えですか。
  57. 安藤正純

    ○安藤国務大臣 強く考えて、強く腹をきめて、強く主張したいのですよ。しかし強く主張するということが、水爆実験はあすこでやつてはいかぬとすぐ言い切れるかどうか。その強いということが、それではやめてしまえということと同じことになるかならぬかということに対しては、慎重を要する、こう言うんです。強くはやりたいんです。
  58. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そういたしますと、当面日本には水爆実験の危険を避ける逆なしという御断定でございましようか。くどいようですがもう一ぺんお尋ねしたい。やむを得ないから、どのような灰が降つても、どのような実験が行われても黙つているよりしかたがないということでございましようか。その一点だけを伺つておきたい。
  59. 安藤正純

    ○安藤国務大臣 今のアメリカの水爆実験で、日本人の生命が全滅するとか、半減するとかいう程度ではなかろう。しかしこれから向うがどんどん実験をやつて、その被害が増大して来れば、黙つてはおられません。水爆実験という必要なる問題と関連をして、日本でそういう被害を受けては、国としての重大問題だからという問題がそこに出て来まして、さらにその線に沿うて対策を講じなければならぬと思うのであります。
  60. 赤路友藏

    赤路委員 今の大臣のお話はよくわかるわけです。先ほど来楠本部長の答弁の中にもあつたのですが、現在降つている雨は、さしあたりのところ人体に影響の及ぶ程度のものじやないというお話つた。ただ大阪のものは割合カウントは小さかつたが、新潟のものは百四十一カウント出ております。百四十カウントというと、なかなか簡単なものではないと思う。千葉のものはまだわかりませんが、雨が降つた翌日は草花が全部なえたというようなことを新聞で報じている。この事態は私は非常に重大だと思う。もちろん政府の当事者である方々としては、なかなかそう思い切つて言えない面があろうとは思います。しかし私たちが心配するのは、事態がここまで進んで来ている。今のところまずまず人体にあまり影響がないからじつと見ている。しかし事態が進んで来るなれば、これは当然言わなければならぬというお話であつたと思うのですが、そのときはもうすでに事はおそいと思う。そういう事態が起つたときは、もう手のつけようがなくなつてしまう。今こそそうしたことをやめさすために、あらゆるものを集約して、その実情をアメリカに提示し、国連に提示して、その実験をやめさすべき時期であつて、これから事態が急速に進んで来た場合は、もう手遅れだ。それはたいへんなことになると思う。かりにも今放射能のあるものがどんどん降つて来るという事態に触れて、しかもそれにかかつたからといつて医療の処置がない。こういう事態になろうかと私は思う。だからこそ今すでにもう踏み切らなければならない。おそらく淡谷君が申し上げるのはその点だと思う。大臣のおつしやることはよくわかる。わかるが、少くとも今が一番大事な生死の関頭にある。この時期をはずしたのでは、それこそ大きな被害をこうむつて、収給しあたわざるものになる。こういうことを心配しますがゆえに、こういうような質問になるのだと思います。これらの点を十分お考えおき願いたい。
  61. 安藤正純

    ○安藤国務大臣 よくわかつておりますが、私自身はもちろんのこと、大体こういう専門的のことは予備知識がないからよくわからぬのです。だから専門家の言うことを慎重に聞いて、だんだん判断して行くよりしかたがない。今の段階では、これ以上非常に危険な段階にはならないじやないかというのがしろうとじやない方の見方なんです。しかし私どもはそれで安心しているわけじやないですよ。もしそういうことをやつて行つて間に合わなくなるというようなことがあつてはまたたいへんだから、それらの点については、政府国会もともに憂えているんですから、あなた方の意はよく体して大いに研究し、また対策を講じたいと思います。
  62. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 遺憾なきを期したいという大臣のお気持はよくわかりますが、すでに第一回の水爆実験がありましてから一月半たつております。この間政府としては、具体的にアメリカに対してどのようなことを申し入れたのか、伺つておきたい。日本漁業の将来について、また人命の危険について、少くともどの点だけを具体的に申し入れいるか、その点を御説明願いたい。
  63. 安藤正純

    ○安藤国務大臣 具体的のことは今折衝中でありますし、私はあまり事務のことは知らないから、もつとあけつぱなしにしてもいいのかどうか、そういうことはよくわからないのですよ。けれども外交折衝のということになると、そうばかりも行かないのかもしれぬ。そこで一々こういう折衝のことをあまり世間に知らしてしまわない方がいいんじやないか。つまり日本折衝したり、要求したりしていることを、向うがその通りに了解して、快諾しているなら言つたつていいんですが、必ずしもそうでもないところもあるんです。日本の言うことを承知した点もあります。しかし向うがまたそうも行かないという事情を述べている点もあるんですから、そういうことを言うことが苦しい立場にあると承知していただきたい。それは一つは国民に不安を呼ひ起すとか何とかいうような影響があつてもいけず、またその他の交渉等にりきましても、交渉の過程において収穫をうまくしたいという考えがあるものですから、そこを適度にやつて行きたい。その辺はひとつ政府の緩急伸縮のやり方を御了解願いたいと思います。
  64. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 きよう安藤国務大臣の御出席は、日本の水産行政の将来に暗影を投げておりますさまざまな公海漁業の問題並びに今のビキニの問題について、今まで出席された外務当局の方々では十分返答できなかつたことに対し、十分に責任ある御回答を願えるつもりで質問しておりましたが、どうやら所管外らしいので、これ以上追究することもはなはだ変だと思いますが、国民に不安を与えないようにというならば、今ほど国民が大きな不安を持つているときはございません。むしろ将来の必要に対してはこういう方針をとるんだ、漁に対してはこうするんだ、あるいは降つて来る灰に対してはこうしてもらいたいのだという、アメリカに対する日本政府の画然たる態度を国民の前に示してこそ国民は安心するのですが、どうもどうしたらいいかわからないというような、じんぜん腕をこまねいているというようなことでは、国民の不安はますます大きくなるだけだと私は考えます。これはあらためて私所管大臣である農林大臣、岡崎外務大臣の出席を求めたいと思いますが、国務大臣に対しても、ただいまのいろいろなお仕事の上から、国民を真に安心をさせるためにはどの程度までアメリカにこの実験を手控えさせるか、徹底的にやめないまでも、日本を不安に陥れないように手控えさせることができるかという見通しなども、一応ここでお明しになつた方が、私は国民を安心させるゆえんだと思いますが、いかがでごいますか。
  65. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 議事進行……。ただいま淡谷委員からお尋ねになつております問題は、アメリカとの折衝の問題でございまして、淡谷委員のおつしやる通り非常に重大であり、かつ外交上いろいろ微妙な問題が含まれておると思うのであります。そこでこれはやはりその対米折衝に当つております責任大臣の岡崎外務大臣を次会に御出席願つて、直接岡崎大臣から当委員会でお尋ねをする、こういうことにいたしまして、対米交渉の問題は次会に譲つた方がいいのじやないか、こう思うわけであります。このことを議事進行として提案いたします。
  66. 田口長治郎

    ○田口委員長 鈴木委員の議事進行に対する意見、対米折衝問題は次会において外務大臣においで願つてするということについては、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 田口長治郎

    ○田口委員長 それじやそのようにいたします。
  68. 赤路友藏

    赤路委員 ちよつと関連して……。楠本さんにちよつとお尋ねいたします。三月一日の福龍丸の事件があつてから、今度の図南丸の放射能が、これをしろうとなりに考えました場合、その図南丸の四月六日の航行しておつた地点はビキニから大体九百八十から一千マイル離れておる地点、従つてこの三月二十六日のものはどうであつたかはわかりませんが、四月六日のものは相当なものであつたのだということが考えられなければならないと思います。しかも最近の降つてつておる雨の中に含まれておる放射能というものは、おそらくこれは四月六日の一番近いときのものであると、われわれはしろうとなりに考えるわけです。そうすると以前のものよりもより強いものになり、しかも気流の関係かどうか、日本の方へよりそうした降灰の可能性が出て来ておるということになるので、私たちはしろうと考えで参りますと、危険性が三月一日のものよりもより高まつて来ておる、こういうふうに考えるわけなんです。今落ちておるそのもの自体が、五十カウントなりあるいは四十カウントなりというようなことで、大したものではないかもしれない。しかしながらこの程度のものであつたとしても、これがたび重なつて来るということになると、これは私は危険でないとはいえないのじやないかと思いますが、この点どういうふうにお考えになつておりますか。
  69. 楠本正康

    ○楠本政府委員 お答え申し上げます。最近各地に若干の問題を起しておること、並びに図南丸その他の船体に付着しておる放射能は、これは一体いつの実験のものであるかというようなことははつきりつかめないのでありますが、ただ私どもが放射能の弱まつて行く状況を見て参りますと、三月一日のものとは違つたものではなかろうかという想像ができます。しかしながらはたして強いものか、あるいは弱いものか、あるいはどういう性質のものだというようなことは、これは灰がつかめませんので知る由もございません。なおそれならば、最近雨雪等に若干の証明ができるんじやないかという点につきましては、これはいまだ確実な結論を得られませんが、気象の関係特に成層圏等におきまする空気の流れの関係等によつて支配されるそうでありまして、さような点から考えまして、必ずしもこれが強くなつたからかような危険が起きたとは言いきれない、かように考えております。要は気象の関係が強く響いているのではなかろうか、かように考えられます。従つて今後かようなものの実験がある期間続いて一体どうなるかという問題でありますが、これはすでにその雨が流れる、雪がとけるというようなことから、そう累積的なだんだんに積つて行くような被害というようなものは、一応考えられないわけであります。  なお最近いろいろ雨の中あるいは植物等から、さような点がわずかに証明されておりますが、これらは学問研究としてはきわめて注意すべき問題だと存じますが、先ほども申し上げますように、これらは何ら人体に支障がないものと考えております。ただいま御指摘のように、新潟で降つた雨が百四十カウントもあつたではないか、しかも私どもは食糧としては大体百カウント以上のものは危険であると言つておるのにおかしいじやないか、こういう御質問だと思いますが、これは約三リッターの雨を、平たく言えば煮詰めて、そうしてその中から放射能を証明し得たものでありまして、決して雨そのものにかような放射能を持つておつというものではないのであります。これらの点につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、逐次各地の調査成績等を持寄らせまして、総合的に判断をいたしておるわけであります。  それからなお最後に一言私から申し上げたい点は、現在国民は何と申しましても、一般に必要以上に不安を感じておるのじやないか、たとえばまぐろの問題にいたしましても、あるいはすべての問題が少し恐怖の度が過ぎておるのじやないか、私どもはもちろん人体に多少の危険があり、あるいはその他弊害の起きるという見通しがつきますれば、これは断固としてその対策を立てるにやぶさかでございません。従つて現在も魚類等は十分なる検査もし、安全を保証しておるわけであります。さような点は、ぜひひとつ私どもか日夜努力いたしております点を御信頼いただきまして、今さら不安を国民に与えるということを、私どもはむしろ押えたい感じでおるわけでありますが、ひとつよろしくお願いいたしたいと思います。
  70. 田口長治郎

    ○田口委員長 志村茂治君。
  71. 志村茂治

    志村委員 三月の十八日に衛発第一八三号、厚生省の公衆衛生局長の名前で、各都道府県知事に対して、原爆被害魚類の監視についてという通牒が出ております。この内容は、放射能を持つた魚類が人体にどういうふうな危険を与えるかということが説明され、そして魚類については一応指定港で衛生検査をし、スタンプを押したものだけが食べてよろしいというような通牒であるように見ております。この通牒が出ましたためにいろいろな問題が起きておるということであります。と申しますことは、この通牒が出ましたときに、千葉県では、十八日以前そのスタンプを押さない前の魚で手持ちしておるものは、これを全部廃棄処分にいたしております。それから輸送中のものは全部送還されております。また長野県あたりでは、十八日以前から同じような処置をとつておる。それがために魚商のこうむつた損害は非常に大きいのでありますが、これなどは当然今度の事件に対する直接被害額として計上すべきものではないかと思います。なおそのほかにもそういう例が多少あるようにも聞いております。私はそういう点から見ると、この通牒に多少不備があるのではないかというふうにも考えられますので、十分御調査の上、これも直接損害の中に計上していただきたい、こういうことであります。
  72. 田口長治郎

    ○田口委員長 ビキニ問題に関する被害補償の問題につきましては本日はこの程度にとどめておきます。
  73. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 議事進行。本日の私の質問に対する御答弁はどうも満足が行きませんので、安藤国務大臣だけでなく、外務大臣においで願つて、さらに——水産庁長官は見えておられますけれども、所管大臣としてぜひとも農林大臣に御出席を願いまして、将来の水産行政に対するはつきりした見通しなりを承つておきたいと思いますので、この点委員長におとりはからいをお願いいたします。
  74. 田口長治郎

    ○田口委員長 先ほどお手元にお配りいたしました「水産関係法律制定経過」は委員長において専門員室に命じ編集させたものであります。  内容といたしましては、第一回国会から今第十九回国会に至るまでの間の本委員会の活動を中心にして一覧表に取扱い、衆参両院の水産委員会において審査いたしました法律と水産業に関係のある法律を収録いたしたものであります。収録しました件数は百三十四件でありますが、そのうち水産委員会が審査いたしましたものが四十五件でありまして、その内訳は、内閣が提出したものが二十件、当衆議院より提出したものが十九件、参議院より提出したものが六件となつております。これらいずれもわが国水産業の発展振興のために不可欠の重要法律ばかりでありまして、その一つ一つを申し上げるまでもありませんが、漁業の基本法と申すべき漁業法及び水産業協同組合法を初め水産資源保護法、漁港法、漁船法、漁船損害補償法等々、多くの重要な法律を制定して参つたのでありまして、これらはみな立ち遅れているわが国水産業の再建復興の促進に大きな役割を果して来たものと確信する次第であります。  現在国会法の改正において、とかく水産委員会の存置については軽視されておる傾きがあるやに聞き及んでおりますが、この集録をごらんいただけばわかりますように、水産委員会の存置の意義はおのずから重要であるということが明らかであります。従いまして委員長といたしましては、ここに収録されております幾多の法律を通じて、水産業の置かれている立場が、単に漁業という単一的な産業としてでなく、他の産業と絶えず密接な関連を持ち続けておる関係上、水産委員会の存置の意義はきわめて大きいと考える次第であります。従いまして委員各位の御高覧に供し、国政審議の上に何とか御参考になりますれば幸甚であります。     —————————————
  75. 田口長治郎

    ○田口委員長 なお、この際小委員及び小委員長補欠選任についてお諮りいたします。公海漁業に関する小委員長辻文雄君につきまして、同君の委員異動の結果、現在同君の小委員及び小委員長の資格が失われております。つきましては、同君を従前通り公海漁業に関する小委員及び小委員長に選任いたしたいと存じますが、これに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 田口長治郎

    ○田口委員長 御異議なしと認めます。よつてそのように決定いたしま  本日はこの程度にとどめ、散会いたします。  次会は公報をもつて御通知いたしま  す。      午後四時六分散会