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1954-02-04 第19回国会 衆議院 水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月四日(木曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 小高 熹郎君 理事 川村善八郎君    理事 鈴木 善幸君 理事 田渕 光一君    理事 中村庸一郎君 理事 山中日露史君    理事 田中幾三郎君       遠藤 三郎君    中村  清君       濱田 幸雄君    松田 鐵藏君       吉武 惠市君    白浜 仁吉君       赤路 友藏君    辻  文雄君       中村 英男君  出席政府委員         農 林 技 官         (水産庁次長) 岡井 正男君         海上保安庁長官 山口  伝君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局農水産         課長)     森 日出哉君         専  門  員 徳久 三種君     ————————————— 二月一日  西浦地域西浦船入ま築設の請願松浦周太郎  君紹介)(第三八七号) 同月三日  真珠貝採取後の行政措置に関する請願前田正  男君紹介)(第五六九号)  油津漁港修築に関する請願持永義夫紹介)  (第五七四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  加工水産物輸出振興に関する法律案佐竹新  市君外四十五名提出、第十六回国会衆法第二七  号)  公海における漁業安全操業に関する件  朝鮮のりの輸入に関する件     —————————————
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  この際当委員会において審査中の佐竹新市君ほか四十五名提出加工水産物輸出振興に関する法律案取扱いについてお諮りいたします。  先日の委員打合会におきまして御協議をいたしました結果、本案につきましては、慎重に御審議を願うため、水産貿易に関する小委員会審査に付することにいたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認めます。よつてそのように決定いたしました。     —————————————
  4. 田口長治郎

    田口委員長 ただいまより公海漁業に関する件について調査を進めます。質疑を許します。赤路友藏君。
  5. 赤路友藏

    赤路委員 水産庁の方も海上保安庁の方も出ていただいておりますので、お尋ねいたしたいと思いますが、朝鮮海域においては、最近依然としてやはり日本漁船相当被害を受けておるようでありますし、支那海域におきますところの拿捕等も依然として継続されておる状態でありますが、この両海域における監視警戒状況はどういうふうになつておるか、その点をお聞きいたしたいと思います。
  6. 山口伝

    山口(伝)政府委員 韓国あるいは中共関係拿捕についてこちらの警備状況がどうなつておるかというお話でございますが、お許しをいただけるならば、昨年暮から今日までくらいの概況を一応御説明させていただきたいのであります。  御承知のように一昨年の五月の閣議決定に基いて、海上保安庁北方並びに朝鮮東支那海、この三つの海域において巡視船をもつてこれが保護に出ることになりまして、ことしはちようど三年目になるわけでありまするが、去年の一箇年間の様子をちよつと申し上げたいと思います。昨年一箇年中における拿捕事件発生件数は、ソ連関係によるものが四十五隻でございました。これは二十七年の五十隻に比べてやや減少を示しております。次に中共関係によるものが二十八年は二十四隻でございました。前年すなわち二十七年の四十六隻に比べて半減しております。次に韓国関係によるものが二十八年度は四十八隻でございまして、前年二十七年の十四隻に比べて激増いたしております。これは御承知のように国連軍による防衛水域実施停止後、すなわち李承晩ラインがデビューしてから、韓国艦艇があばれまして、日本漁船の一斉退去措置の結果かような数が出たのであります。  現在海上保安庁は、引続きこれらの特別哨戒を続けておるわけでありますが、現在の警備状況は、北海道方面宗谷海峡並び根室海域にそれぞれ常時一隻出しております。次に東支那海方面には済州西方海域を主として常陸二隻、朝鮮近海済州東方海域を主として常時二隻、朝鮮の東海岸に常時一隻を行動せしめているのでありますが、このうち東支那海及び朝鮮近海方面における常時六隻を行動させるためには、北海道等他管区からも巡視船を応援させておりましてこのために全般的に全国の海上保安庁日常業務の方は相当きゆうくつな状況に相なつておるわけであります。北海道方町はすでに結氷期に入り、底びき漁業出漁船も少く、本年に入りましてまだ拿捕襲撃等事件は発生いたしておりません。  東支那海方面におきましては、現在主として上海東方及び南東海域に底びき及びトロール漁船が常時約三百隻程度操業しておるようであります。中共漁船の進出が最近著しく、これらのうちの武装漁船によつて、最近拿捕追跡事件が頻発しております。すなわち本年に入りましてから、現在までの拿捕が四隻、関係船員が五十八名、襲撃十四隻の事件が発生いたしておるのであります。特に一月二十八日、農林漁区五百三十一区、これはずつと舟山列島の近所でございますが、におきまして拿捕されました第十六、十七東海丸の場合は、相手中共の軍艦四隻であつたと伝えられております。これらあの付近では艦艇の出動があるということは注目を要するところであります。また昨年十二月の十四日に、農林漁区三百二十三区、これは百二十度の付近であります、において拿捕されました第十六日東丸の釈放交渉に当つた当時の当庁の巡視船ひらどが中共武装漁船によつて襲撃を受けまして、船体各部に被弾二十数発を受けた事例が発生しております。また同様な事件として、そのほか十二月の二十二日、三日、農林漁区三石二十五匿及び三百三十三区において、中共漁船確認のため接近した当庁巡視船のとが銃撃を受けておる事件も発生しております。  朝鮮近海においては、韓国側の厳重な李ライン整備実施後、現在は済州西方及び南東海域李ライン付近で、日本漁船二十ないし三十隻が操業しておる状況であります。韓国側は、李ライン警備を昨年十二月より新設海洋警備隊警備船水産局監視船によつてつておるとの情報もありますが、去る一月十八日、農林漁区三百十四区、これは李ラインの中でありまするが、五隻の日本漁船韓国水産局監視船追跡を受けた事件があります。その中には銃撃されたものもあるとのことで、目下調査いたしておりまするが、確認するに至つておりません。なお同日巡視船こしきは当該先方監視船洋上会談をいたしておるのでありますが、その際先方船長はこちらの巡視船船長に対しまして、韓国政府の命によつて李ライン内の日本出漁船をあくまで拿捕する方針であり、旧正月を控えて日本漁船出漁が予想される、そのために警戒に当つておるのだと語つておるのであります。韓国側としては従来の方針を変更しておるとは考えられない状況でありまするが、昨年十二月以降、拿捕されたものは今のところございません。今日まで表面は比較的活発ではないように思われます。しかし先ほどの向うの監視船船長言葉等によりまして、油断はできない。なお十一月十五日に拿捕されました第七あけぼの丸乗組員等の二十九名は、これは一月十二日に門司に帰還いたしましたが、それによつて現在韓国側に未帰還で乗組員が残つておりますものは、去年の春拿捕されましたたしか太平丸だと思いますが、その乗組員の十八名だけが残つているわけで、乗組員だけは帰還いたしたわけであります。  以上が最近までの拿捕事件に関する概要でありますが、現在の行動中の巡視船水産庁監視船と協力いたしまして、漁船操業状況を勘案して、努めて重点的に行動し、操業漁船相手国領海に入ることのないよう、注意を喚起してあるいはまた方向探知機あるいはレーダー等を利用いたしまして、相手国監視船及び艦船動静把握に努めております。日本漁船に努めて警告を発して拿捕襲撃等の危険からのがれるようにいたすとともに、また日本漁船が不幸にして拿捕されようとしているときは、ただちに現場に急行する態勢をとる、間に合えば相手国艦船と直接交渉その他できる限りの手段を尽して、その救出に努めて参つたのであります。韓国艦艇に対してはこの交渉によつて効果が認められた事例がままあつたわけでありますが、中共側監視船に対しては、この前のひらどの銃撃事件にみるように、その交渉はほとんどできないという状況にございます。またさような場合には拿捕事件が起きて参つた際には、将来の事件解決のために、できる限り拿捕位置確認とかあるいは現場写真等をとつたり、いろいろの証拠資料をとることには努めておるわけであります。しかし実際の現場状況を率直に申しますと、特に東支那海方面のことでございますが、日本漁船の中には巡視船監視船等警告が再三再四発せられているにもかかわらず、無線通信の当直を怠つたり、あるいはまた警告をいれましても、魚を追うあまり危険海域内の操業をあえてして拿捕襲撃等を受けるように相なる事例がままあるわけであります。また巡視船相手国監視船との誤認を防止するために、かねて識別信号等を設定して、約束をいたしているわけでありますが、十分にこれが関係者に徹底していないような点もあり、あるいは巡視船識別信号に対して応答しないというようなことも再々あるわけでありまして、これらの点につきましては、今後一層関係業者との間にこれらの徹底方について一段のくふうを要するのではないかと考えております。  今後の海上保安庁警備について若干触れたいと思うのでありますが、実際のところ海上保安庁といたしましては、日本沿岸全体の日常業務を持つておりますために、現在所有船艇約三百隻でありますが、これは大小まぜてでありますが、そのうち巡視船は九十九隻ということになつております。これらでなかなか仕事が苦しい状態にございますので、ことに現在すなわち冬季には海難は非常に増加しております。一昨日あたりが本年に入つてからの最高件数でございますが、取扱い件数が一日二十七件であります。大体平均して十五、六件は毎日事故を持つております。はなはだ苦労いたしているわけであります。日本海方面浮流機雷の点も、実は漸減の傾向を見ておりましたが、どうした関係かこの一月はすでに十一個ありました。浮流が二個、漂着が九個であります。このことはちよつと気になるわけでありますが、今後どういうことになりますか。毎年一番よけいに現われるのは二月の月であります。これが今日まで漸次減つてつたのが、この一月だけは特異日の現象としてちよつとふえましたので、これも気になつております。これは主として山陰方面であります。これらの警戒のために巡視船が苦労いたしております。また一方密航、密輸その他の海上犯罪も依然として非常にたくさん出て来る状況であります。これらの平生の業務を遂行するためには、現地の巡視船は寧日のない状況でございます。現在この漁船拿捕防止対策のために、新鋭の大型巡視船相当東支那海朝鮮海峡方面にしぼつておりますために、海難救助犯罪の予防あるいは捜査等のために若干の気がねがあるわけでありますが、極力これは最小限度で持ちこたえる、そのために非常に努力を払つているということはひとつお認めをいただきたいと思うのであります。しかしなお今後かような拿捕事件が発展いたします場合によつては、さらにさらに巡視船をしぼつて増派しなければならぬかとも思うのであります。今日やつております警備のやり方について、今お話ございましたように、現在のところはこれらのために北方は一応別として七管区、八管区、そのうち特に七管区には相当隻数しぼつてあてつて、これらの日常指揮督励を七管の本部長にまかしているようなわけであります。大事なこと、特異なことにつきましてはむろん本部長に相談しますが、日常手配等につきましては七管本部長にほとんどまかせてあるわけであります。また七管本部長は、下関にございます業者の方の対策本部と常時連絡してやつておりますが、今後一層水産庁出先漁業調整事務所でございますか、そこらとの間のことにつきましてはさらに一層連絡を緊密にし、現場における巡視船並び監視船連絡さらに漁船との連絡方法等につきまして、一段のくふうをして対処して参らなければならぬと考えているわけであります。  なお参考までに、私の方の巡視船状況につきましていろいろ御心配をいただいておりましたのですが、昨年募れに特別哨戒手当というものが当該海域にある間一日号取高二百円でありましたが、六割ばかりの増額で、それがわずかではございますが最高三百五十円まで出得るように、これは予算折衝に成功いたしました。それからなお傷恤規定、万一、襲撃にあつて死んだりけがした場合の特別傷恤でございますが、これらの規定も昨年の募れにできましてそこまではできましたが、なおいろいろと将来これらの危険業務に対する対策としてまだまだ考えなくちやならぬところも残つております。たとえば襲撃手当とか、あるいは万一抑留されたような場合の措置等については、今のところきまつておりませんが、これらにつきましてはさらに大蔵省とも折衝してみたいと思つております。以上御質問に対しては少しピントがはずれましたが、全般を通じまして概況を申し上げた次第であります。
  7. 岡井正男

    岡井政府委員 ただいま長官の方から詳細御説明がありまして、その上私の方から別に色のかわつた意味での説明を加える必要もないと思いますが、ただ最後に、長官のお言葉があつたように、最近の状態では、マキシマムに私どもの方の船も動かしているし、七管、八管の方のお力添えもいただいておるのでありまして、この上は出先の船を少いながら最高度に利用して、より以上の効果を上げるというために、今までも緊密な連絡はいたしておつたつもりではございまするが、なお門司にある七管の本部と、私どもの方は福岡調整事務所を持つておりますので、その両者の絶えざる連絡、言いかえれば常置的な考え方による連絡を何か考えてみたい、かように考えております。そうすることによつてより以上もう少し効果をプラスすることができはせないか、かように考えております。
  8. 赤路友藏

    赤路委員 ただいま海上保安庁長官水産庁次長の方から御説明を願つたわけなんですが、特に海上保安庁長官の方からかなり詳細に御説明を承つたわけであります。非常に少い隻数でもつて、この長い日本沿岸一万海里にわたつて警備でございますので御苦労であることと存じます。ただ、この朝鮮及び支那海の問題につきましては、先ほど長官がおつしやつたように、水産庁に十分御協力を願つて重点的に行動していただいていることはよくわかるわけなんでありますが、何と申しましても、水産庁水産庁海上保安庁海上保安庁として、命令系統が二本になつてこの線がやられておるということは、やはりどうしても行動の場合重複したりするので、少ければ少いほどこれらのものが有機的に連絡をとつた、一本化された警戒というものが必要であるのじやないか、かように考えるわけなんであります。その点におきまして、今水産庁の方から、現在福岡にある水産庁調整事務所の方と、それから海上保安庁の方の第七管区の方とが常置的な連絡をとつて、これに対する警戒行動を十分万全を期してやつて行きたい、こういうような御意見があつたと思うのでありますが、まことにけつこうであると思います。ただしかしながら、その点が単に協力するという今までの段階が一歩進んだ程度では、私はいけないのじやないかと思う。少くともこの常置的な機関をつくることによつて、この東支那海南支那海及び朝鮮海域におきまする警戒は、できるならば一本化した命令系統でやつていただくようにしたい、そういうような意思がおありかどうか、この点簡単に御答弁願いたい。
  9. 山口伝

    山口(伝)政府委員 実質論としてまことにごもつともなんでありまして、私どももその線は賛成でございますが、一応いろいろ役所としてはわかれておりますので、水産庁と御相談申し上げまして、できる限り実質的に一元化できるように、指揮方法なり指揮系統なりというものを、実態に即して研究してみたいと思います。
  10. 赤路友藏

    赤路委員 今の御答弁けつこうなんでございますが、重ねてくどいようでございますが、これから相談して研究をしてみるという段階ではないと私は思う。研究してみるという段階ではない。少くともこれは速急にやつて、すぐ実行化していただくべき段階だと思うのでありますが、一体いつから実施される腹があるか、その点大体の目標ぐらいでもこの際お示し願いたいと思います。
  11. 岡井正男

    岡井政府委員 ただいま長官の相談という意味は急速にやるという意味の答えであつたと思います。私どもも急速に相談して御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  12. 赤路友藏

    赤路委員 この点はそれでは長官及び次長の責任のあるお言葉をいただきましたので、それを信頼いたしまして、急速にやつていただくことを希望いたしておきます。  これに関連いたしまして、海上保安庁長官ちよつとお尋ねいたしたいのであります。最近聞き及ぶところによりますと、海上保安庁韓国漁船海難しておるものを相当数救助されたということを聞いておるのでありますが、それについての経過をひとつ海上保安庁長官の方から御説明願いたいと思います。
  13. 山口伝

    山口(伝)政府委員 海上保安庁としては、日本沿岸海上の安全を守るという使命でありまして、もちろん日本船舶も対象でありますが、さらに進んで外国船をも海難救助をいたす建前であります。これは国際的にどこもそうなんであります。従来から随時発生します日本近海における海難救助にはそれぞれ出動いたして参つたのでありますが、今御質問ございましたので、ちようどたまたま昨年の李ラインがやかましくなつた九月以降の実情を申し上げますと、海難事故として、日本海上保安庁、もしくは日本船舶が助けたものもこの中にあるわけでありますが、これを分計して申し上げますと、九月以降韓国漁船あるいは機帆船、運搬船というようなものを、海難救助として助けたものは全部で十七件であります。十七隻とごらんになつてけつこうであります。そのうち面接海上保安庁巡視船もしくは巡視艇で救助いたしたものが十二件でございます。そのうち一月が多いのでありますが、本年一月の間に十三船救助しており、そのうち十船を海上保安庁巡視船艇によつて救助したわけであります。これらはその都度外務省にも情報を入れておりますし、私ども広報関係でも出しておるわであります。たまたま少し大きな事故でもありますと新聞等に報道されますが、これらがその都度出ておるとは申し上げにくいのであります。たまたま昨日でしたか、日本漁船韓国監視艇に救助されたのが載つておりましたが、こちらはもう数はたくさんあるのであります。
  14. 赤路友藏

    赤路委員 昨年の九月、李ライン問題が起つてから後において十七隻という隻数のものを、海難船として韓国のものを救助しているのですが、この中に——率直にお尋ねいたしますが、漁船も含まれていると思うのですが、日本のいわゆる領海内に入つて来て、もつと率直に申しますと、領海内に進行して来てやつたものがあるかどうか、そうした点について……。
  15. 山口伝

    山口(伝)政府委員 ここにただいま詳細な資料は持つておるわけでありますが、今まで私が承知しておりますのは、大体において対馬方面先方漁船が、エンジン故障や何かで漂流して来るのが多いのであります。積極的に日本沿岸領海へ入つて来て漁業して、事故を起したというのはほとんどないだろうと思います。その他一般船等は日本との交通があつたのでありますが、それらが座礁して救助された、そういうことになつております。
  16. 田口長治郎

  17. 白浜仁吉

    白浜委員 ただいま海上保安庁長官並びに岡井次長から詳しく承つたのでございますが、私もう一点赤路委員質問に関連してお尋ねしたいと思います。今二十七年に比較いたしまして非常に拿捕隻数が減つておるということを申されたのでございますが、二十七年と比較しまして二十八年の操業区域がどういうふうになつてつたか、また拿捕隻数減つた、あるいは被害件数減つたということは、結局政府保護がたよりにならないということで、漁民が自粛した、あるいはこれは縮まつたという字が適当かと思うのでございますが、そういう形において隻数減つたのではないかという見方もあると思うのでございます。その間のお考えを承つてみたいと思うのでございます。
  18. 岡井正男

    岡井政府委員 ただいま御指摘なつた点でございますが、御承知のように二十七年度は一般の小型船舶拿捕された件数相当に上つておりますが、最近はさばのはねづりを初めといたしまして、その他の小漁船拿捕されてまで行かないというように、漁業者の方が自重しておるという点は御指摘通りであります。最近拿捕件数が比較的少いといいますが、しかし内容的にいいますと機船底びきのようなものは二十七年度に比べて比例的にいえばそう落ちているとも思えない。言いかえれば、冬分になつて最近つかまえられているという船は、大体大型以西底びきでございます。従いまして以西底びき業者からは、むしろ一歩出れば中国でとらえられ、公海中は韓国拿捕され、行く場所がないじやないかというような、非常に悲惨な陳請を受けておるので、われわれもいても立つてもいられないという気持である現状であります。
  19. 白浜仁吉

    白浜委員 もう一点お尋ねしたいのでありますが、ただいま海上保安庁長官の御答弁なり御説明を承つておりましたところ、業務として海難救助方面に非常に御多忙だというふうなことでございます。もとより任務の遂行上当然であろうと思うのでございますが、私ども考えますに、日本沿岸が非常に暗いというふうなことで、燈台あるいは標識等が少いために、小さな漁船などはしけのときに自分の母港にたどり着くことができないということで、非常に避難の率も多いのではないかというふうに考えるのでございます。またこういう沿岸の小さな漁船を救助するのには、必ずしも大型救難艇を必要とするものではないと考えるのでございますが、将来小さな救難艇の基地を多数つくる、あるいはまた燈台標識ども増設して沿岸を明るくする、いわゆる道路の標識のようなふうにまで進めて行かなければならないと私は思うのでございます。終戦海上保安庁がその点に非常に力を尽しておるということは、私どもその御努力を認めて感謝するものでございますが、一層その点につきましての御努力をお願いするとともに、またこうした面にいくらかでも海上保安庁巡視船の力をさいて——われわれはどうしても外海に伸びなければならない、そうしなければ日本漁業が行き詰まつてしまうという現状から考えて、相当の力をもつて、この外海に働く、公海漁業を主とする漁民保護してもらいたいと思うのでございますが、こういうふうな二様、三様にわたる力を、将来どういうふうに持つて行こうと考えておられるのか、その辺のところの御計画でもあれば承りたいと思うのでございます。
  20. 山口伝

    山口(伝)政府委員 私どもとしてはたいへんありがたい御意見でありまして、まつたくその通りであります。  まず航路標識関係でございますが、終戦燈台航路標識関係で主としてやりましたことは、戦災によつておもな燈台はほとんど被害を受けましたので、終戦後三、四年というものは、まつた戦災復旧仕事に追われて、新設というものはほとんど年のうち数基程度にとどまつたのでありますが、ここ二、三年来新設燈台、あるいはまた夜標燈台等の改良、改修というものがかなり行われるようになりまして、沿岸も逐次明るくなつて参りましたが、それでは現在のところ他のイギリス、アメリカ等と比べてどうかということになりますと、大体夜間光をつけるわけでありますが、その夜標についての統計的なデータによつて見ますと、今まで相当努力をいたして参りましたが、まだあと五割くらいはふやさなければ、英米等には匹敵しないわけであります。われわれとしては、本来日本の海岸線はこれらの両国に比べればむしろ複雑で、非常に暗礁が多く、地形が入り組んでおりますし、さらに気象関係も複雑であります。いわゆる海難の多いところとされているのに、単純なる海岸線に対する夜標の比率より劣つておるというのは残念であります。むしろ凌駕しなければならぬと考えております。少くとも英米程度まではここ数年かかつてつて行きたいのであります。現在新設しておりますテンポというものはいささかもゆるめたくないのでありますが、二十九年度の予算案におきましては、いろいろの事情もございまして、二十八年度に比べて航路標識の整備費としては二割五分くらい減つたわけであります。この額につきましては大蔵省とされては、これから主としてつけなければならない沿岸の漁港等の小規模のものは、むしろ地元に費用を持たせたらどうかという御意見もあつたようありますが、われわれとしては、むろんある程度は地元負担も考えなければならぬと思いますけれども、できることならば、国としてつけて行くのがほんとうであろう。避難して入つて来る船はよその船も入つて来るわけでありまして、できる限り国営で持つて参りたいと思つておりますが、これは一応実は懸案となつたわけであります。いずれにいたしましても、二割五分ばかり減つたので、非常に弱つてはおりまするが、目下このわくの中でどれだけの航路標識の整備ができるか、実行案を練つております。およそ二十九年度におきましては、今のところ四十箇所くらいはつけ得るだろうという案ができております。しかし内容は、わくが小さいために、いわゆる外洋燈台の大きな燈台はわずかにそのうちの二、三基であります。あとは割合に規模の小さい燈台が多いので、その数は四十くらいになつておる。私どもとしては、この航路標識は、日本の地形に合せてもつともつと努力して参らなければならぬと考えております。この上ともひとつ御協力を願いたいと思います。  次に日常業務のための巡視船艇のことにつきまして、小型の船を出すことにしたらどうかというようなことでございますが、私どもの方ももちろん今日まで、この一万海里にわたる沿岸日常警備救難のためには、何としても船が足りないということを申し、折衝し続けて参つたのでありますが、大蔵省としては簡単について参らない。二十九年度の予算案では、三百五十トン刑の巡視船が一隻、二十三メートルの巡視艇が二隻、なお定点観測、の船が、昨年の暮、これは千二十トンございますが、入りました関係もございまして、新造の巡視船艇はこの程度にとめられたのであります。私どもとしては、将来航空機を合せて参りまするが、その点を勘案いたしましても、少くとも船艇としてまだ五割くらいはふやさなければならぬじやないかと私どもは考えておりまして、これから増強したいと思つております。飛行機との提携で、哨戒、捜索の船の方もあるいはもう少し節約してもいいかもしれませんが、これらの海空を通じての船艇並びに飛行機の数につきましては、これからもう一段と増強していただくようにして参りたいと思つております。超均衡予算というような財政状況が非常に苦しい際でありますから、私どもの思うようにはなかなか参りませんが、その方向に向つて今後もせいぜい努力して参る考えでおるわけであります。
  21. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 限られた予算と現在の法律からいつての最大の努力海上保安庁はされておる。これは当水産委員会の何人も認めておるものである。しかしてただいままでいろいろと議論されておる根本はどこにあるか、要は日本の外交の問題であり、国力の問題である。外務大臣が出席されることを私は要望するのだが、大体日本の今日の外交が——中共、ソビエトが在留邦人を帰したのは、その政府が帰したのではない。紅十字社というか、赤十字社というか、それが日本の赤十字社の団体の人たちと話し合つての結果あれだけの人間を帰した。それに対しての答礼の意味日本への招待をするというのも外務省は拒否した。かかることでは外交などというものは満足に行くものではない。もつともつと日韓会談においても、スムーズにこれを進める誠意を持つてつたならば、ただいま海上保安庁が心配されて努力しておるようなことも片づくのである。もう一つには、国力のないのが原因である。社会党の諸君は軍備に反対するが、国力がないがために今日の海上保安庁の苦労がある。われわれは侵略のための軍隊をつくれとは言わぬ。何で日本の国が侵略の軍隊が必要であるか。こうした問題をスムーズに解決し、日本の国の貧弱なる財政の上においても警備を厳重にするのが、日本の国のすべての国民または漁民保護する一端にもなる。こういうことから論議をして行かなければならないものと思うのであります。社会党の諸君もこの点を了とせられて、再軍備には反対されても、こうした軍隊と言おうか警備隊と言おうか、国の防衛とまた漁民の利益をはかり、日本の国力を海外にあげるというのじやないが、守るための協力を社会党の人々もよく考えられて、今後これに対して協力をされて行つたならば、こんな問題は簡単に片づくことと私は考えておるのであります。この点何分社会党の諸君も御協力を願いたい。そうしたならばこれは解消するものであります。
  22. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 私は、ただいま海上保安庁長官から、韓国船十七隻の海難の救助をされたという報告がございましたが、この十七隻の処分はどうなつておりますか、今この十七隻はどうなつておるか、お尋ねをしておきたい。
  23. 山口伝

    山口(伝)政府委員 いろいろのケースがあるわけでありますが、漁船などでエンジンの故障で漂流したようなものは、厳原とか竹敷あたりに入つて修理をして、そのまま自力で韓国にもどつてつております。それから座礁したので、すつかり船体は放棄して、人間を助けたというケースもあります。そういうときのエージェントはみなこちらにありまして、それぞれ処置をとつておるのであります。ただ従来現場で非常に困つたのは、海難救助はしても、連れて来てからあと食糧とか何とかの問題で、いわゆる自前を切つておるようなかつこうがありまして、これが制度としてなかなかはつきりしないので、今日まで現場では苦労さんたんをしております。
  24. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 私は、ただいまの海上保安庁取扱い方は、国際法に照してもまことに紳士的であり、当然そうなくちやならぬ、こう思うわけです。けれども、私ども昨年来李承晩ライン問題で非常に苦心さんたんをしておる。ほとんど理由のない拿捕の仕方をされて、中には機関の故障で李承晩ラインの外で漂流しておつたものまでひつぱられておる。私は非常に残念ではあるけれども、その十七隻の韓国の船は当然日本ちようだいしておいたらどうかと思う。これから一切そういうふうに扱つたらどうかと思う。これは国際法から言えば、まことに非道な扱い方かもしれないけれども、もともと韓国はそういう扱いをしておるわけであります。今後何十ぱいでもいいから、来たらみな押えていただきたい。そうしてどうせボロ船で何の役にも立たないだろうと思いますが、何かの役に立てたらどうか。それでもしできれば、理由なくして拿捕された日本の船主にでもくれてやつたらどうかと思う。それくらいの考え方をもつて、私は暴に報ゆるに暴をもつてしろとはあえて言わないけれども、今後の交渉の話合いの一つの手がかりになるという意味で、今後は絶対に帰さない、みな押えてしまう、そういうことを韓国に対してやつていただきたいと思うのですけれども、御意見いかがでしよう。
  25. 山口伝

    山口(伝)政府委員 今日までは、私どもは普通の国際法的な考えでそれぞれ処置をして、そのデーターをむろん外務省に連絡をいたして、これからの外交交渉に使つていただくつもりでいたしておつたわけであります。今のような御意見もございますが、その点についてこれをすぐに質にとるということにつきましては、ちよつと事が重要で私からお答えいたしかねます。
  26. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 この問題は海上保安庁長官が一人できめることができる問題とも思いません。従つて政府の部内で十分御相談を願うことが必要だと思うのでありますけれども、どうも少し日本政府は人がよ過ぎると思う。かつて日本が大国であつた当時の夢を持つているのではないか。李承晩はもう日本なんか問題にしていない。それで大国のようなつもりでおつて、偉そうに非常に紳士的な扱いをしておるから、日本の船がまつたく理由なくしてとられてしまつて、何ともしようがない状態になつておるのである。私はそれを強引にとつてしまえというのではないのですけれども、向うが違法なことをやつておる限りは、こつちもその腹をきめて、今後の交渉の進展の一つのチャンスを見出す材料にして行つたらどうか、そういうことを考えますので、政府の部内でとくと相談をされて、あくまで強硬にやつていただきたい。そうして一日も早くこの国際的に不法なる李承晩ラインの解決に資するようにしていただきたいと思います。
  27. 田口長治郎

  28. 白浜仁吉

    白浜委員 委員長ちよつとお伺いいたしたいのでございますが、去る十二月十八日に保利農林大臣が、この公海漁業における拿捕漁船について特別融資法案を二月の国会劈頭出すということを約束されたように私承つてつたのでございます。しかるに開会されましてからすでに一週間以上十日になりましても、まだ何らの通知に接してないのでございますが、この間における経過なりあるいは見込みなりを委員長から承つておきたいと思うのでございます。
  29. 田口長治郎

    田口委員長 ただいまの白慣君の言われた法案提出につきましては、府県負掛の金利補給問題につきまして、農林省と大蔵省及び自治庁の三者の意見が一致していないのでございます。おとといまでの経過によりまして、事務的にこれを解決することはきわめて困難だというふうに認識いたしましたから、福永官房長官に三者のあつせんを頼んでおつたのでございますが、昨日さらに農林大臣からも私からも、緒方副総理に三者の調停を依頼しておきました。今明日中に多分解決すると思いますから、近日中に政府提案として提出されることになる見込みでございます。
  30. 田口長治郎

    田口委員長 次に、水産貿易に関する件について調査を進めます。  朝鮮のりの輸入に関する問題について発言を許します。
  31. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 朝鮮のりの輸入問題についての審議が始まるそうでありますが、朝鮮のりの輸入の二十八年度の実情について水産庁当局からでも通産省からでもけつこうですが一応の説明を伺いたい。
  32. 森日出哉

    ○森説明員 二十八年の韓国のりの輸入の実績につきまして簡単に御説明をいたします。一昨年の十月から昨年の四月までに輸入しました韓国のりの実績は、外貨の割当が九十万ドル、このほか無為替バーターといたしまして百万ドル、合計いたしますと、数量で申しますと二百五十万束。一束は百枚でございます。  それから韓国側の生産事情でございますけれども、大体年間の輸出可能量は三百万束です。その輸出先はほとんど全部日本で、日本以外には輸出の実績もございませんし、今後輸出できる見込みもない、唯一の輸出先日本である、そういうのが韓国のりの二十八年の数字から見た情勢でございます。
  33. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 韓国のりの輸入の実情はわかつたのでありますが、韓国のりが輸入されて日本の国内ののりの相場にどういう影響があつたか、これについての御所見を拝聴したい。
  34. 森日出哉

    ○森説明員 その点は水産庁の方からお答えいたします。
  35. 岡井正男

    岡井政府委員 御承知かとは存じますが、日本ののりは、普通巻きずしにするとか焼きのり、味つけのりにするとかいう方面に利用されるのであるし、朝鮮のりは主として菓子用に使う。おかきといいますあれにつけるのが朝鮮のりの大部分の需要の様相でございます。従いまして、時期もあまり内地に迷惑にならぬ時期を選んで輸入されます、内地の生産者並びに販売業者の両方に比較的迷惑にならぬような結果であつたというのが一般の世評でございまして実情は、それが入つてからの価格の変動というようなものよりも、むしろ消費者がのりを需要する時期とどうかという問題の影響の方が大きいだろうと考えております。
  36. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 二十八年度の第四・四半期に輸入する計画はどうなつておりますか。今後の二十八年度の残つた部分についての輸入計画をお伺いしたいと思います。
  37. 森日出哉

    ○森説明員 お答えいたします。先ほど申し上げましたのは過去の実績について申し上げたわけでございますが、さしあたりののりの生産期に入つておりますし、それから先ほど申し上げましたように、韓国側では輸出先日本だけだという事情もございまして、韓国からは日本にのりを買つてもらいたいという要求があるわけでございます。大体これは御承知のことと思いますが、三月あたりまでに輸入ずるということは、今までの経過から見まして一つの時期になつているのでございますが、ことしはいろいろな事情、たとえば先ほどお話がございました国内の生産者の利害関係、それからまた日韓漁業問題というものをどう扱うかという問題もございますので、どういう方法でもつてどういう時期に一月—三月の輸入を実施するかということ、あるいはまた全然輸入しないでいいものか、そういうことにつきまして水産庁とただいま交渉をやつております。まだ水産庁の方からははつきりしたお答えを得ておりませんが、まだ問題はきまつておらない、そういうふうに了解しております。
  38. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 第四・四半期の輸入のドルの割当はどうなつておりますか。ドルの方の関係はどういう計画になつておりますか。
  39. 森日出哉

    ○森説明員 この割当は雑輸入という項目に入つておりまして、雑輸入の中からどのくらいのものを朝鮮のりに割当てるかということはまだきまつておりません。
  40. 赤路友藏

    赤路委員 ただいま森課長の方からのお話は、二十九年度の朝鮮のりの輸入のドル割当てについては、ただいま水産庁の方との話合い等もあつて未決定である、こういうふうに確認をいたします。なおその話の中に、その未決定の理由の一つとしては、先ほど水産庁次長お話しになりましたやはり生産者側の方の立場も考え、また消費者の方の立場も考えて、その輸入等についてはよほど時期を見きわめなければならないという一点、いま一つは、日韓会談がいまだ停滞しておる今日にあるので、そうした政治的な観点の上に立つての面がある、こういう二つの面からであるというふうに理解するのでありますが、特にこの際希望を申し上げておきたいことは、もちろん朝鮮のりの輸入に対する生産者側の打撃ということもございましよう。しかしながら今日本のりの主要用途、あるいは朝鮮のりの主要用途等が違つておりますので、必ずしもこの面からだけでものを律し得ないことは当然であると思います。しかしながら今日単にこうした供給需要の関係からだけでなく、日韓会談が依然として停滞しておるというこの事実の上に立つて、これの解決のめどと申しますか、これを静観することによつてドルの割当、朝鮮のりの輸入というものは当分見合すべきである、こういうふうに私は考えるのですが、これに対する通産省及び水産庁の御意見を承りたいと思います。
  41. 岡井正男

    岡井政府委員 ただいまの赤路先生からの御質問でございますが、李承晩ラインをめぐつて国際関係、いわゆる国内の国民感情を背景として考えてみますれば、経済的によしんば得が行くの、損が行くのという打算的な議論は乗り越えて、少くとも痛さがあれば入れぬでいいじやないかという議論が一部に猛烈に起つておることは十分承知いたしております。そろばんずくで言えば、おそらくのりは輸入した方が得であろうという意見も一部には出ておるわけであります。また朝鮮からの水産関係の輸入にいたしましても、昨年も議論になつたわけでございまするが、日本漁船拿捕してそれで漁獲されるような魚は入れぬ、しかしのりのように全然それと無関係なものであつて日本だけしか売れないようなものを朝鮮で腐らしてしまうのももつたいないし、値が安ければ日本の水産業者に迷惑のかからないようにして入れることは、消費者に対しては若干プラスになるのだし、いわゆるそろばんずくで言えば朝鮮の輸出輸入のバランス上からいつても得だという意見も勘案した結果、昨年は押え押えながらあれだけの輸入をしたわけでございます。ことしまた昨年と同じような議論を繰返して、結論をどこへ持つて行くかということについては、むしろ先生方の大所高所にお立ちになつた明確な御意見を擬したいのでわれわれはちようだいいたしたい、かように思つております。
  42. 赤路友藏

    赤路委員 次長からは逆に意見ちようだいしたいというようなことを言われたようでありますが、この件に関しましては、十六国会の当時から問題になつておるので、当時第二大邦丸事件が起りましたときも、私どもの方からは強力なる措置をとらなければいけないということを、たしか水産委員会でも申し上げたつもりなのであります。われわれが言う強力なる意見というのは、それは経済的に向うへ大きく打撃を与えなければいけない。今次長お話のように、のりは朝鮮ではおそらく腐らせておるでしよう。これは中共の方へも出ないから、おそらくのりが輸出されるとすれば日本以外にはないはずである。これまた打撃としては相当大きなものではないか。われわれは当時朝鮮が必要とするところの生産資材であつても、これの輸出はやめるべきである。ここまで強く当時申し上げたのであります。先ほど来松田委員から大いに議論をふつかけられたような形でございますが、国力を増進するというお話のようで、一向再軍備をするとは申しておりません。私たちはいささか観点、趣をかえておるのでございまして、ぜひこういう面においてこそ私たちは強く朝鮮に対すべきである。この際もちろん国民の消費者の方々に、ある程度の高いものを食べていただかなければならないということもございましようが、日本の今日置かれておる、特にこの朝鮮の問題においては、その程度の腹がまえ、強さ、こうしたものをもつてやはり対処して行くべきである、こういうふうに私考えておる次第でありますので、これは私の意見として申し上げておきたいと思います。
  43. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 水産庁や通産省の意見を聞くと、先ほどまでの海上保安庁長官の、日々の苦労というものを少しも顧みていない。日本の経済というものは、今日どういう経済に、なつておるか。口を開けば食えないというが、日本の国民を食えるようにしなければならないことが政治なんであります。今ここにある陳情書から行きましても、二十万の漁民が非常に迷惑しておるということを訴えておる。しからばこの二十万の国民をどういうように措置をしなければならないかということを考えなければならない。のりが足らない、であるからそののりを輸入するんだという御意見のように思われるし、そうして来たが、のりの代替は日本には幾らでもある。こんぶであろうと、わかめであろうと、のりがなければそれらに飛びつく。現在こんぶはどれだけの滞貨があるか、その滞貨は中共に向けて輸出しなければならないが、それも遅々として進まない。しかし日本漁民の犠牲においてこれも年々とつてその努力の結果、とられたものは、安くても中共へ売つてやらなければならないのが、日本の経済の現状の姿である。しからば、なければそれもまた日本人の食糧となつて消化されるのであります。こういう観点から言つたならば、二十万の漁民を救うことが日本の政治であり、通産省、水産庁がこれを考えなければならないのであります。われわれの議論は、外交の問題、貿易の問題、朝鮮に必要な特需をやらなければならないから、わずかのものを犠牲にせよという議論であつたならば、これもやむを得ないこともあるだろう。しかし品目が雑輸入という名目によつて輸入しなければならないということであつたならば、これは幾らでもカバーする方法があると思う。日本の国民が食つて行けるように、生活のできるように考えて行くのが役所であり、政府であり、またわれわれでなければならない、そこから言つたならば。昨年のごとくこの委員会においても、非常な議論になつたことであります。それを考えたならば、あのような措置はできなかつたはずなんだ。しかしいまさらやつてしまつたことをとやかくいつてもしようがない。本年においてそうした国民の生活ということをよく考えるならば、輸入というものから行く国民の利益、輸出というものから行く国民の利益というものを勘案して、適当な措置をとらなければならないものであります。あの海上保安庁長官の、限られた限度において、日日苦労しておる人々をしり目にかけて貿易をしなければならないなどということは、感情の上からいつて相当考えなければならない問題であろうと私は考える。単なる通産省なら通産省という一つの小さなわくの中の貿易とか輸出とかいうことじやない。国民感情というものを考慮して、高度な政治を行つて行かなかつたならば、小さな問題がやがては朝鮮人を即刻日本からほうり出してしまえという大きな議論にもなつて行くことになる。こういうことを勘案して、上手にそこのところをやつて行くのが、政府の考え方でなければならないと私は考える。こういうことからいつて、十分なる考慮を払つて行かなければならないと思う。水産庁と通産省とはよく協議して、善処あらんことを要望しておくものであります。
  44. 小高熹郎

    ○小高委員 この問題は、ただいま松田君や各委員から相当強硬な意見が出たと思いますが、私は国民感情ということも多分にこの問題に含まれておると思いますが、いま一つはこれの輸入による差額の問題でございます。一枚二円くらいの差があるとして、昨年の輸入数量が二億五千万枚、こういうことになりますと、そこに五億という利潤が生じて来るのでございます。従いまして、輸入業者がそれを扱おうとして猛烈に起動しておるということも聞いておりますが、その輸入する際に全国ののりの生産者団体がありまするから、その生産者団体に輸入の許可を与えるようにしたらどうか。そして輸入許可を与えますと、一億五千万枚輸入いたしまして、一枚二円の利益があるとすれば五億利益が上ります。それを日本の生産者の福利増進のために資材及びその他の生産資源にこれを充てるというような方向をとつてつたならば、これは政治として一つのあり方ではないか、かように考えるのでありまして、そういう生産者団体に輸入の許可を与える道を講じて、この問題を解決する方法をとつたらいかがか、かように考えるのでありますが、それに対して通産省及び水産庁当局の御意見を伺いたいのであります。
  45. 森日出哉

    ○森説明員 今の韓国ののりを入れるか入れないかという問題でございますが、もし入れるとすれば、今小高さんから承つたような方法も一つの方法じやないかと思います。それで御参考のために申し上げますが、同じようにむずかしい問題を起したものに、バターの輸入があるのでございます。それにつきましては全酪連と申しますか、日本の生産者に対しまして輸入バターを売り渡すという形でもつて、生産者と消費者の間の利害の調和をはかる、そういう方法をとつております。入れるか入れないかという問題もまだきまつておりませんし、入れるといたしましても、その方式をどうするかということが、今後討議されると思いますが、今の御意見は承つておきまして、私の方の上の方と御相談をいたします。
  46. 岡井正男

    岡井政府委員 根本問題が解決せぬので、仮定の上の議論になりますが、かりに入れるというような結論が出た場合を予想しまして、従来弊害があつたと思われるような節は、ことごとくこれを排除したい、それでだれが見ても妥当だというすつきりした、筋の通つたことにしたい。ただいま小高先生から御示唆のあつた点も勘案いたしまして、通産省とよく相談いたします。
  47. 小高熹郎

    ○小高委員 この朝鮮のりも浅草のりも一見しろうとが見てはわからないような似通つたものでございますがゆえに、特にその必要があるのでありますが、どうか生産者団体に輸入する際に発言権を持たしてもらいたい、そういうことによつて本問題がただ国民感情ばかりでなく、国内の生産者擁護という意味において、筋の通つた解決点が見出されるのではなかろうか、かように考えますので、その点を要望して質問を打切つておきます。
  48. 田口長治郎

    田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもつて御通知申し上げます。本日はこれにて散会いたします。     午後零時十分散会