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1954-01-29 第19回国会 衆議院 水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年一月二十九日(金曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 川村善八郎君 理事 鈴木 善幸君    理事 中村庸一郎君 理事 山中日露史君    理事 田中幾三郎君       夏堀源三郎君    濱田 幸雄君       松田 鐵藏君    吉武 惠市君       白浜 仁吉君    赤路 友藏君       淡谷 悠藏君    辻  文雄君       長  正路君    中村 英男君  出席政府委員         水産庁長官   清井  正君  委員外出席者         専  門  員 徳久 三種君     ――――――――――――― 一月二十六日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として赤  路友藏君が議長指名委員選任された。 同月二十七日  委員今澄勇辞任につき、その補欠として長正  路君が議長指名委員選任された。 一月二十九日  理事辻文雄君の補欠として田中幾三郎君が理事  に当選した。     ――――――――――――― 一月二十六日  焼尻漁港築設の請願松浦周太郎紹介)(第  二六二号)  大樹町沿岸漁港築設の請願伊藤郷一君紹  介)(第二六三号)  苫前町に漁港築設の請願松浦周太郎紹介)  (第二六四号)  合成繊維漁網への転換促進に関する請願鈴木  善幸紹介)(第二六五号)  漁船保険料引下げに関する請願鈴木善幸君紹  介)(第二六六号)  漁船建造費に対する長期低利資金融資に関する  請願鈴木善幸紹介)(第二六七号)  漁業補償制度確立に関する請願鈴木善幸君紹  介)(第二六八号)  日中漁業調整促進に関する請願今澄勇君紹  介)(第二六九号)  同(赤路友藏紹介)(第二七〇号)  同(田口長治郎紹介)(第二七一号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十日  漁業用石油対策に関する陳情書  (第八〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員及び小委員長選任  昭和二十九年度水産関係予算に関する件  北洋母船式鮭鱒漁業に関する件     ―――――――――――――
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。理事辻文雄君より理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認め、同君の理事辞任の申出は、これを許可することに決定いたしました。引続き理事補欠選任を行いたいと存じますが、これは先例によりまして、選挙の手続を省略し、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田口長治郎

    田口委員長 異議なしと認めます。よつて委員長理事田中幾三郎君を指名いたします。     —————————————
  5. 田口長治郎

    田口委員長 次に小委員会設置の件についてお諮りいたします。本件につきましては、昨日の理事会において各派理事諸君とは協議をいたしたのでありますが、当委員会が本会期中に行うことになつております国政調査事項をそれぞれ専門的に担当していただくため、公海漁業に関する小委員会水産貿易に関する小委員会水産金融に関する小委員会漁業制度に関する小委員会、以上、四つの小委員会設置いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 田口長治郎

    田口委員長 異議なしと認めます。よつてそのように決しました。     —————————————
  7. 田口長治郎

    田口委員長 次に、ただいま設置に決定いたしました各小委員会の構成についてお諮りいたします。各小委員会の小委員の員数は、いずれも十三名とし、小委員各派所属員数の比率によりまして、これを各派に割当てることとし、なお小委員及び小委員長選任については、先例によりまして委員長において指名いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 田口長治郎

    田口委員長 異議なしと認めます。よつてそのように決定しました。  それではただちに各小委員会の小委員及び小委員長指名いたします。  公海漁業に関する小委員には    川村善八郎君  鈴木 善幸君    田渕 光一君  夏堀源三郎君    松田 鐵藏君  椎熊 三郎君    白濱 仁吉君  赤路 友藏君    山中日露史君  辻  文雄君    長  正路君  中村 英男君    田口長治郎君  同小委員長には辻文雄君。  水産貿易に関する小委員には    遠藤 三郎君  高橋 英吉君    吉武 恵市君  濱田 幸雄君    小高 熹郎君  白濱 仁吉君    中村庸一郎君  淡谷 悠藏君    勝間田清一君  田中幾三郎君    長  正路君  中村 英男君    田口長治郎君  同小委員長には中村庸一郎君。  水産金融に関する小委員には    鈴木 善幸君  田渕 光一君    中村  清君  夏堀源三郎君    松田 鐵藏君  志賀健次郎君    中村庸一郎君  赤路 友藏君    勝間田清一君  田中幾三郎君    辻  文雄君  中村 英男君    田口長治郎君  同小委員長には赤路友藏君。  漁業制度に関する小委員には    遠藤 三郎君  川村善八郎君    塚原 俊郎君  中村  清君    小高 熹郎君  志賀健次郎君    椎熊 三郎君  淡谷 悠藏君    山中日露史君  田中幾三郎君    辻  文雄君  中村 英男君    田口長治郎君  同小委員長には川村善八郎君。以上を指名いたします。     —————————————
  9. 田口長治郎

    田口委員長 ただいまより昭和二十九年度水産関係予算について説明を聴取することにいたします。水産庁長官清井政府委員
  10. 清井正

    清井政府委員 昭和二十九年度水産関係予算につきまして、ただいま事務的に編成を終りました数字につきまして御説明を申し上げます。資料はお手元にすでに御配付してあると思いますので、その資料に基きまして、概要をお話申し上げたいと思います。  御配付申し上げております資料には、一般会計予算公共事業予算と両方の書類がございますが、初めに公共事業以外の一般予算について申し上げます。横に刷りました八枚にわたります紙でございますが、そこに昭和二十九年度要求事項一覧表といたしまして、二十八年度予算額と二十九年度要求額とを比較対照いたして事項ごとに掲げ、なおその要求額内容のごく概要について備考欄に書き加えてあります。  初めに御配付しております資料の八ページの一番おしまいをちよつとごらんを願いたいのでありますが、その紙の四行目の数字、合計と書いてありますのが、いわゆる公共事業を除きました要求額であります。それによりますと、二十八年度のただいま執行いたしております予算額が、二十六億九千四百万余であります。明年度要求額は、その隣に書いております二十二億六百万円であります。従いまして、二十六億九千万円と二十二億六百万円とを比較いたしますと、約五億近いものが、二十九年度は減になつている計算でございます。しかしこれを純予算額として対照いたしてみますと、二十八年度、すなわちただいま執行しております予算であるところの二十六億九千四百万円の中には、御承知通り去る目補正予算特殊保険赤字補填額として二億五千五百万円、あるいは給与保険赤字補填額として七百万円等、いわゆる補正予算で入りました二億五千五百万円と七百万円、がその中に入つておるのであります。また免許料許可料の徴収の経費四千二百万円程度もこの中に入つております。これは御承知通り二十九年度からは全部なくなつております。それから二十八年度は一千トンの調査船を建造いたしましたが、二十九年度に二百五十トンの試験場の船を建造することになりましたので、一千トンの船と二百五十トンの船との建造費差額約二億五千七百万円程度がこの中に含まれるわけであります。その他真珠研究所建設費が約四千万円ございましたので、そういつたふうに二十八年度にありました特殊のものを除き、また特殊な差額を除いて計算いたしますると、二十八年度予算額は二十六億九千四百万円でありますが、これとただちに二十九年度予算とは比較できないのでありまして、この二十六億九千四百万円のうちから、ただいま申し上げましたような特殊保険給与保険赤字額とか、あるいは船の建造費差額であるとか、免許料許可料徴収額の減であるとか、真珠研究所の初年度建設費であるとか、そういうふうな当然二十八年度のみあつて二十九年度にはこれが引継がれない性質の予算があるのであります。それを差引いて計算いたしますると、二十八年度予算額の二十六億九千四百万円というものがちようど二十億九千七再万円ということになりまして、二十億九千七百万円と二十二億六百万円を比較いたさなければならぬということになりますので、いわゆる純計予算の比較といたしましては、二十九年度は約一億八百万円の増額ということになるわけでございます。そういうふうに計算をいたされると思うのであります。それは最初概要として御説明申し上げます。  次に内容に入りまして御説明申し上げます。  最初の第一は水産庁一般行政でありますが、これは二十九年度は少し減つております。この中には二十八年度には免許可料徴収経費四千万円等が入つておりますので非常に多額に見えますが、人員整理等をいたしまして若干人が減つており、これがこの中に入つております。  それから二の漁船乗組員養成事業でありますが、これは二十八年度の一千六百万円に対しまして、二十九年度は一千万円でございます。この内訳はその隣に書いてございますが、いわゆる小型船舶職員養成費補助といたしまして、県庁補助いたすもの及び船長機関長及び通信士養成費補助金といたしまして大日本水産会その他に補助金を出しておるのでございますが、この養成事業につきましては、前年度全額補助でございましたが、二十九年度補助率は二分の上ということになつておるのでありまして、この点が金額減つた理由で、ございます。  それから三のまき網漁業調整指導は、本省の人件費事務費であります。  それから四の小型機船底びき網漁業減船整理指導調整、これは計画に基きまして二十九年度は二千五百九十四隻を整理いたしたい。二十八年度は二千四百十二隻でありまして、括弧してありますのが二十八年度であります。それに対して二千五百九十四隻を整理いたしたいのであります。この点は隻数の変化のほかは前年度関係と同じような内容を持つております。ただここで(ニ)に書いてございます都道府県事務費補助金は、各府県整理をいたしますのに相当事務費を要しますので、各府県事務費補助金を三百万円程度組んでおつたのでございますが、二十九年度はやむを得ず交付いたさないことになつたのであります。  それから五は中型機船底びき網漁業整理転換であります。これは御承知通り二十八年度から始めたのでありますが、二十八年度四十二隻に対して本年度は六十五隻というものを整理いたし、整理方法等につきましては二十八年度とまつたく同様でありまして、隻数がふえているというだけであります。なおこれに関連いたしまして九州地方のいわしのまき網整理転換及び日本海若狭湾方面のさばのまき網整理転換等計上いたしたのでございましたが、遺憾ながらこの点は最後的には予算として計上いたすことができなかつたような次第でございます。  それから六は北海道の未開発魚田費であります。これは二百二十戸の新規入植を認めて行きたい、こういうことで予算額は昨年よりちよつとふえております。  それから七番は小型機船底びき網漁業取締り強化のための取締船費用であります。これは新たに用船一隻を増加いたしたのであります。  それから八は沖合い漁業取締りであります。これは前年度通りであります。  それから沿岸漁業調整、この中にはいわゆる海区漁業調整委員会関係費用と各府県職員設置費補助金等を含めてあるのでありますが、この点につきましては、いろいろ紆余曲折を経たのでありまして、結局農業委員会補助金とこれを同じレベルに持つて行くということに最後的にはなりまして、職員の方は、全額補助であつたものが二分の一になり、漁業調整委員会補助金の方は、委員手当等全額でございますが、調整委員会の書記の人件費補助全額が三分の二になつたのであります。これは農業委員会とのつり合いをとつたのであります。  それからその次は十の水産増殖でございますが、これは御承知通り、ここに書いております内水面資源維持補助浅海保護水面管理費浅海増殖開発費重要員類増殖費補助等でございまして、これは前年度一億三百万円から一億四千四百万円に増額に相なつております。この中には従来の事業を拡充いたしておりますほかに、特に魚礁施設といたしまして二千七百七十四万円が新たに計上されております。これは瀬戸内海方面を中心といたしましたところの魚礁施設事業でございます。  それからその次が内水面漁業調整、これは内水面のいわゆる漁場管理委員会等費用であります。これまた全額が三分の二ということになつて、海区漁業調整委員会と同じことになつております。  それから十二番が北海道の内水面鮭鱒流し網漁業整理転換、これは前年度が十六隻でありましたのを本年度は四十隻ということにいたしております。  それから十三は水産業協同組合指導監督、これは監督に要する事務費等補助金でありますが、これは前年度よりも少しふえております。事項といたしましては役職員講習会費補助金、これは前年度はありましたが、二十九年度計上いたしておりません。それから水産業協同組合役職員養成施設整備費、これはいわゆる組合学校というものでございましたが、前年度は違う形で約一千五百万円程度計上されておつたのでありますが、今年は施設整備費補助ということで七十万円を計上いたしたのであります。しかしこれは施設整備費補助でございますから、一年程度ということでできておりますので、また明年度につきましては、この問題につきましては、ひとつくふうをしなければならぬものと思つております。  それから十四番は、漁業協同組合及び同連合会再建整備促進、これは漁業協同組合増資奨励金等でございますが、これは計画に基きまして実施いたしておりますので、金額は二十八年度よりは減つております。  それから士五番は、漁業災害復旧資金の融通に関する特別措置法施行災害関係の立法に伴うところのいわゆる利子補給金でありますが、これは既定の計画を推進するために所定の経費をずつと計上いたしておるのであります。従いまして、二十八年度の六千六百万円が本年度は一億一百万円に相当金額増額を見ております。これは計画従つて法律上の事務費でございます。  それから十六番は、漁船損害補償実施であります。この点につきましては、過日法律が、いわゆる義務加入が二十トンから百トンに引上げられましたので、その義務加入分国庫負担分予算ととして計上いたしまして大蔵省事務的折衝を続けたのであります。しかし紆余曲折を経ました結果、ただいまきまつております要求額といたしましては、これは従前通りの二十トン以下のみに限られておるのであります。はなはだこの点は遺憾でございますが、ただいまの現状からいたしましては、法律が百トン以下となつておるにもかかわらず、予算計上は二十トン以下ということになつておるのでありまして、この点は別途法律を改正しなければならぬことに相なると思うのであります。その他この点につきましては従来通りであります。なおこの際に将来の漁船損害補償制度の根本的な確立を目ざしまして、漁業災害調査等予算に約二千五百万円程度のものを要求いたしたのでありまするが、残念ながらこの点は認められなかつたのであります。しかしこれはいわゆる最後の折衝におきまして、ごくわずか百三十万円程度事務費計上いたしまして、これは特別会計において実施するということで、この面では業務勘定に繰入れの四千二百万円の中に百三十万円が調査費としてわずかでございますが計上になつておるのであります。その他は従来の通りであります。  それから十七番は、これは庁内の事務費であります。  それから十八番のオットセイ調査指導監督、これはとりあえずは、今年度はこの春において調査をするだけの予算計上いたしてあります。これは米加と条約締結について打診をいたしておるのでありまして、その状況推移を見まして、もしかりにその状況が引続き調査を要するということになりますれば、この秋についての調査費も今後要求いたしたいということで大蔵省とお話合いをいたしておりますが、当初予算には春の分調査費計上しておる、こういうことであります。  その次は庁内の監督官の出かけます旅費であります。捕鯨業振興対策費であります。  二十帝の北洋漁業に関する指導監督、これは北洋漁業全般に関する指導監督経費でございまして、内訳に書いてあります通り取締船調査船、それから鮭鱒調査船が四隻、底魚の調査船が二隻ということになつております。  それからその次が二十一番、遠洋漁業取締り指導監督並びに新漁場開発、これは用船等従前通りでございますが、さらに南方におきまするまぐろを主とするところ−の漁場開発調査いたしたいと思いまして、その金額が約三百五十万円含まれております。これは新たな漁場開発調査をいたす金でございます。  それから二十二番は、漁船管理、改善、いわゆる漁船の検査、認定等仕事を主としていたしますために必要な経費でございます。これはここにはいわゆる超短波の無線陸上局設置費補助金として五周分の二百五十万円の計上になつております。それからここに三番といたしまして漁船船大工講習会費、これはいわゆる船大工技術を保存いたしたいという意味におきまする講習会費でございますが、これが新たに計上されております。  それから漁船研究室の金が二十三番であります。  三十四番は、いわゆる調査研究基礎調査の金でございます。これはその中にございますところの水産研究会調査委託費が、本年度は九百三十万円ございましたが、二十九年度は五百万円に減額になつております。  その次の二十五番は、水産研究管理並びに水産資源開発でございまして、いわゆる対馬暖流開発費補助等で、これは相当増額を見ておるのでありますが、いわゆる黒潮号というようなものの予算は、ここの予算よりも文部省の方の予算に振りかえ計上になつておるような次第でございます。  それからその次は二十六番といたしまして、冷害対策に関する海洋調査、これは新規でございます。これは先般の東北方面冷害に対処いたしまして、冷害を長期また早期に予報するために、主として北方、東北方海洋気象海洋調査をいたしたいということで新たにこれを計上いたしたのであります。先般も定点観測の廃止につきましていろいろ御議論があつたのでございますが、それにかわる調査といたしまして、水産庁に所属いたしております官船と東北、北海道の各県の試験船等を動員いたしまして、定期に航行いたしましてそれぞれの地点におきますところの気象海洋等の諸般のデータを集めまして、これを早期関係方面に出しまして、冷害に対する予報並びに水産自体研究に資したいということでございます。  それから二十七番が研究所調査船建造であります。これはただいま蒼鷹丸というのがございますが、その代船を建造する時期に達しておりますので、八千六百万円を計上いたしまして、新たに二百五十トンを一隻つくりたい、こういうことであります。  それから二十八番が水産技術改良普及、これはいわゆる先達漁船指導と各専門の機関なり、増殖についてのそれぞれの技術員技術普及仕事でございまして、増員は認められませんでしたけれども、大体去年通りのことは認められたのであります。ただ金額相当減つておりますのは、先達漁船に初め初度設備的に漁網等を搭載したのでありますが、本年度は二年度目でありますので、その関係経費は不要となつたので落しておるのであります。  それからここに前年度限りの経費といたしまして千六百万円、アラフラ開発海洋対策委員会費漁業協同組合編成というのがございますが、アラフラ開発は今は計上いたしてありませんが、これは出漁するということになりますれば当然必要になつて参ります金で、そのときには計上いたすという話になつております。海洋対策委員会費、これは事務費でありますので、前の方の漁業条約の中に含まれております。それから漁業協同組合編成、これは県庁に対する事務補助費でありますが、なくなつております。  以上がいわゆる水産庁本庁だけの金でございます。それが二十二億三千三百万円に対しまして十七億一千五百万円ということになつております。  それから場所といたしましては、場所一般相当にいい成績を示しておるのであります。水産研究所増額でありますし、真珠養殖事業振興費、これは二十八年度は初度設備研究費等が入つておりますので金額は多いのでありますが、実質的には非常にふえております。  それから北海道鮭鱒孵化場相当増額され、水産講習所相当増額になつております。従つて四億六千万円が四億九千万円になつております。  そこで場所本庁総合計が、二十六億九千万円に対しまして三十一億六百万円ということになりまするけれども、先ほどもちよつと申し上げたような、二十八年度には計上されましたが、二十九年度には当然計上されない経費を引きますと、やはり一億程度くらいの増加にはなつておると見てよろしいのじやないかというふうに考えます。  それからついででございますので特別会計の点でございますが、漁船保険特別会計、これは先ほどもちよつと申し上げました繰入れが、特別会計の方へ入つて計上になつておるのでございますが、御承知通りのような百トン未満の義務加入の問題が未解決のままに予算計上されております。  それから中小漁業融資保証特別会計、その点につきましては、実はただいま基金が五億ございます。それに対してさらに本年度は初め五億五千万円でございましたが、その後要求編成がえいたしまして、四億の追加計上をいたしたいということで、現在の五億に対しまして四億をプラスいたしまするから、九億ということになるのであります。そういうことでいたしたいということで、これは強く要求いたしたのでありますが、何しろこれは五億という厖大な金であり、その後変更いたしましても、四億という厖大な金でありますので、なかなかこれは計上できなかつたのであります。しかしそれがためにこの特別会計の運用がうまく行かないということになることは、大蔵省としてもこれを認めておりますので、この問題に対しましては、今後その特別会計並びに基金協会運営状況推移によりまして、必要ある場合には必ず相談をいたすという約束で、今回はこれを計上しないということにいたして、単にこれは事務的にはそういうような形で、今回は計上いたしてない、こういうような状況でございます。従つて今後基金協会の運用のいかんによつては、さらに本年度途中においても予算計上しなければならないような事態になつて来るかもしれないのでありますが、その点は全部事務当局と相談をいたしておるような状況でございます。  一般会計並びに特別会計は一応その程度にとどめまして、ここに漁港整備事業として書いてありますが、公共事業であります。公共事業につきましては、別途に一枚紙を御配付申し上げておるのでありますが、漁港施設公共事業といたしましては、いわゆる修築費関係は本土、北海道を合せて、二十八年度が二十一億二千七百万円でありましたものが、二十億六千八百万円、わずかではございますが減額になつております。災害復旧の方は十七億七千三百万円が十一億五千五百万円、これは相当減額になつておるのであります。災害復旧の方は全体の公共事業の災害復旧を一定の原則によつて計上いたしましてこれをそれぞれの事業割にいたしております。ある程度いたしてない点もあるのでありますが、漁港の修築事業そのものにつきましてはきわめて重大なる問題であると考えるのであります。もつともこの減額につきましては、御承知通り二十九年度の新規の着手事業は一切これを認めないという建前に実はなつております。今までの継続事業といえども、できる限りこれを重点的に施工いたしまして、補助金の使用が散漫にならないようにしなければならぬ、こういうような精神のもとに、すべての公共事業について、これはほとんど同じような思想でやられておるのでございます。ただ道路であるとか、治水事業であるとかいうものは若干違つたようなことになつておるのでありますが、その他の事業は全部一律に同じような査定を受けておるのでありまして、二十一億二千七百万円が二十億六千八百万円になりましたが、これは特に漁港だけがこういうふうになつておるのではなくして、港湾等もこれ以上の削減を受けておるというような状況でもありますし、この点は非常に問題はあるのでございまするが、ただいまのところはこのような状況でございます。ただ私ども心配いたしまするのは、二十九年度の新規着手はあるいはできないにいたしましても、今年荒手をいたしましたところの七十五港につきましてはどうすべきかという問題が、実際問題としてあるのであります。しかし、かくのごとくに本年度予算額にも達しないような状況であつては、二十八年度に着手いたしました七十五港につきましても、はたして事業をやつて行けるかどうかということはきわめて疑問であります。この点につきましては私どもといたしましても、この金額のままかりに予算が成立いたしますとすれば、この予算の運用につきましては重要な問題にぶつかることを予想いたしておるような次第であります。  ごく簡単でございますが、以上申し上げたのが大体の二十九年度予算編成概要でございます。
  11. 田口長治郎

    田口委員長 ただいまの説明について質疑があれば、これを許します。赤路友藏君。
  12. 赤路友藏

    赤路委員 ただいま水産庁長官から二十九年度水産予算概要について御説明を願つたのでありますが、純正予算としては、計算してみると、一億八千万円くらい増額になつておるというお話でございますが、これは内容を調べてみると、他に転嫁したのであつて、実質的にはふえていない、こういうようなことが言えるのではないかと思います。特に項目別にお尋ねしたいのですが、漁船再保険の問題であります。長官の御説明にもありましたように、これは法律を改正しなければならないということになるのですが、この問題は法律第百四十六号によつて改正されたばかりであつて、こういうことは国会を無視しておる行為であるといわなければならぬ。この点については、水産庁長官では御答弁もできなかろうと思いますので、追つて農林大臣等にお尋ねいたしたいと思いますが、ただその面を除いておいたといたしましても、昨年度と同一条件下にありながら、予算面では二億七千万円ほど削減されておる。そうなつて参りますと、この漁船の損害補償の面で非常に支障が来るのじやないか、こういうふうに私は考えるのですが、この点をお聞きしたい。  それから特殊保険給与保険の面が全然ここに落されておりますが、今御説明によりますと、わずかであるがどこかへ繰入れておるということでございますが、最近の支那海方面におきまするところの拿捕の状況等から考えまして、この面は絶対に削れない面じやないか、今後も拿捕その他がやはり行われるものという観測の上に立たなければならぬから、重大な支障を来すのではないか、この点をお聞きいたしておきたいと思います。  それからあちらこちら飛んで行くようですが、九番の沿岸漁業調整の面の漁業調整委員会補助金ですが、これが書記の全額が三分の二に落されておりますけれども、この場合一体書記の身分がどういうふうになるか、この点お考えになつておるのか、それを一点お聞きいたしておきたいと思います。  それから四番の小川底びき船の整理でありますが、これは予算面で減つて隻数で昨年度よりも整理隻数がふえておるということになるのでありますが、この点私は非常に重要だと思うんです。全体の金額といたしましては一千百万円くらいしか減つておりませんが、しかしながら沿岸漁業の本年度新たに起つて来るだろうところの様相を見通した場合、これはこういうような予算編成方法では収拾がつかなくなるのじやないかと思う。御承知通り最近入会その他の紛争が非常に多くかもし出されておるのですが、おそらく今までの紛争というものは、やはり業者それ自体がより幾分でも利潤を得たいというような面の上に立つた紛争であつたろうと思いますが、本年度あたりはそうした段階を飛び越えて、少くとも食うため、生きるための入会紛争であり、密漁の横行であるというような形になつて来る危険性が十分内包されておると私は思う。そういうような重大な情勢下において、かようなことではたして沿岸及び沖合いの調整ができるかどうか、その点御意見を承つておきたいと思う。  それから中小漁業基金の問題でありますが、これは御説明を聞いて一応わかるわけでございますが、五億円を計上いたしましたのは、これは二十七年度予算でなされて、その当時すでに説明を聞いたわけなんですが、二十八年度はおそらく支障はなかろう。しかし二十九年度に入つた場合は、当然この五億だけでは支障が来るということだけは、これははつきりしておるのじやないか。当初この両については割合金利が高いということであつて、これを利用する面が少かつたのでありますが、最近の対況では、各地においてこれの利用が増加しつつあるというときに、全然予算血に組まない、これを落しておるということは、私は大きな手落ちだと思う。もちろん今の御説明によりますと、運用が行き詰まつて来るなれば、そのときに予算計上しよう、こういうことなんですが、運用が行き詰まつて来るということは、私は当然見通された問題だと思う。これについて確実にいよいよという段階になれば、補正予算でも何でも組んで計上するのかどうか、この点をひとつはつきりしておいていただきたいと思う。  それから漁港予算の問題ですが、この漁港予算はどうもまことにけしからぬ組み方をしていると思う。率直に申し上げて、金額で政府関係では昨年度より五千万円の減にしかなつておりませんが、この説明書を見てみると、国土総合開発による分が一千二百万円、それから離島振興法によるものが二億八千六百万円、こういうようなものがこの中に組み込まれて来ておる。これは漁港関係公共事業の中に盛り込むべきでないのであつて、これはこの法律による特別なものとして、別途当然措置すべき性質のものだと私は思う。この点について一体どういうような御交渉をなさつたのか、どうもあまりにもインチキがひど過ぎると私は思つております。  それから災害関係なんですが、災害の方にいたしましても約二億円減じておるのですが、こういうようなやり方でやつて行くなれば、当初組みました漁港の整備というようなことは、これはもういつも予算編成のとき問題になつて、常に私たちは口をすつぱくして言つておるのだが、五年、六年の計画じやない。これでは十五年たつても二十年たつても第一次整備すらできないということになる。これらの点についてもう少し明確な、強い線を打ち出していただかなければならぬと私は思つております。以上の点について御説明をお願い申し上げたいと思います。
  13. 清井正

    清井政府委員 最初漁船損害補償の問題でございますが、これは先ほどちよつと御説明が、あるいは不十分だつたかもしれませんが、二十トンの限度が百トンに引上げられたことは、法律上もうすでに確定いたしておるのであります。従つてこれは二十九年四月一日より、施行ということになつておるのでありますから、当然これは百トンまでの義務加入予算計上しなければならぬものだと、私自身は思つております。金額にいたしまして約一億であります。ところがこれはいろいろな事情によりまして、二十トンまでしかようなことでございまして、その点はこのままで行きしますれば、法律を改正しなければならぬことになつて来るわけであります。これは単に漁船損害補償だけじやなくして、ほかにも実は同じような問題があるわけであります。その点ひとつ特に御了承願いたいと思います。  金額の点につきましては、二十八年度の四億一千九百万円の中には、この表の中にも計いてあります通り特殊保険給与保険の勘定の一億六千二百万円が入つておりますから、比較いたしますのは四億一千九百万円から二億六千二百万円を引きまして、一億五千七百万円と一億四千八百万円とを比較しなければならぬのであります。それにしても減つているのじやないか、こういうことになるわけであります。しかしこれはなぜ減つているかと申しますと、これは義務加入なり漁船の損害補償制度に加入する見方でございます。今まで入つていない者が今度新たに入つて来る。現在は三、四〇%しか入つていないのでありますから、今度どんどん加入して来るだろうというような、新しく加入し、あるいは一旦切れた者も加入し直すというような、いわゆるこれは加入の見込みの問題なんであります。ここで金額が少く出ておりますのは、実は加入見込みを低く見てあるのであります。と申しますのは、これは百トンまで船が強制加入になるので、その関係もあつて一般に満期保険に入り、あるいは普通保険に入る入り方というものを低く見ておつたのであります。ところが低く見た方が採用されて、百トンの方が切られたというようなかつこうに実はなつたので、加入の見方がこれは低く計上されておりますので、一億五千七百万円が一億四千八百万円というように、数百万円でありますが減になつている、こういうことであります。しかしこれは法律上の義務の問題であります。法律上これが加入いたしますれば、二十トン未満につきましては、現状でもこれは当然半額は国庫負担になるのであります。もしも見込みに反してよけい加入するというようなことが起りますれば、当然次の機会で、これは補正予算を組むなりあるいは予備金を組むなりして、計上いたさなければならぬ性質の金であると思うのであります。またその通りであります。従つて私どもといたしましては、この金額が減つたことは、さほど実は心配をいたしていないのであります。法律上の加入義務でありますから、かりに予想以上に加入する人が多い、従つて国庫の負担額がふえるということになれば、この計画から増加した分については、当然これは予算計上しなければならぬのであります。そういうことも完全に大蔵省と了解がついているのであります。そういう意味において、私どもはこの保険制度につきましては、二十トンと百トンの問題がただ一つの問題である、こういうふうに考えておりまして、そのほかの問題は従前通り、こういうふうに見てさしつかえないと私は考えております。  それから特殊保険の問題につきましては、御承知通り昨年非常に問題がありまして、昨年度におきましては二億五千五百万円と七百万円を計上いたしまして、現在一応つじつまが合つているのであります。しかし元来この保険制度というものは繰入れをしなければならぬ建前であります。従つて、実はこの制度に来る前に、特殊保険なり給与保険の保険料をどうするかという問題が実はあつたのであります。御承知通り現在は百円につき二円七十三銭というのが特殊保険の保険料であります。給与保険につきましても、百円につき約一円四十七銭が保険料になつているのであります。本来の建前から申しますと、これだけ一般会計から繰入れする以上は、保険料を当然上げなければならぬという問題があるわけであります。保険料を上げて一般会計から繰入れるのをやめて、保険自体の独立採算制にすべきだという議論が一方にあるのであります。そこで今回の予算編成にあたりましても、初めは現在きまつております一円七十三銭なり一円四十七銭の特殊保険並びに乗組員給与保険の保険料を引上げるべきではないかという議論があつたのでありましたが、これは結局二十八年通りにすえ置くということになつたのであります。そこですえ置く以上は、また今後災害が起つたり、漁船が拿捕されて参りましてこの特殊保険に赤字が出るということになりますれば、これは当然繰入れするということが起つて来るのでありまして、その点は大蔵省としてもはつきり了承いたしております。すでに御承知通り、最近におきましても中共方面の拿捕がちよちよいあるのでありましてむろん本年度におきましても、この保険の運用につきましては相当の注意を払つて行かなければならぬものと思うのでありまして、結局ただいまのところは、保険料は、二十八年通りの保険料である。今後の状況によつて漁船が拿捕されて当該保険料を支払つて特別会計にこれが繰入れをする必要が起れば、当然大蔵省としても繰入れをするという話合いになつております。この保険制度としては、結局二十トンと百トンの問題が問題として残つておる、こういうふうに考えてよろしいのじやないかと私どもは思つておるのであります。  それから第二点の漁業調整職員の問題でありますが、これは御承知通り農業委員会会に職員が二人おりまして、一人は全額、一人は三分の一、平均いたしますと三分の二になるわけであります。実はそれと歩調を合せたようなことであります。その経過を申し上げますと、初めは大蔵省の査定は、全部農林省の補助金から削るという案であつたのでありますが、これを一般の、いわゆる従前の平衡交付令に入れて県庁から出してもらつて、県の足らず前を国から給するという、いわゆる平衡交付金の中に全部繰入れてしまうという話であつたのでありますが、最後の折衝で農林省の補助金にもどつて来たのであります。その際にいろいろ議論になりまして、これは全額ではあるけれども、農林委員会の方が二人で、一人は全額で一人は三分の一だ、従つてそれよりも多いということはいかぬということになりまして、これは農業委員会と見合いをいたしまして三分の二ということにいたしたのであります。この点は事務的にははなはだ遺憾でありますが、これは実はいたし方ないというふうに考えておる次第であります。さてそれでは全額が三分の二になれば残りはどうなるのかということになりますと、これは当然県庁において負担をしていただくということになるわけであります。調整委員会仕事そのものも、ますます今後発展しなければならぬものでありますし、書記もむろんこれによつて影響があつてはいけないのでありまして、県に対して御負担をかけるようでありますが、全額が三分の二あるいは二分の一になつ差額は、県においてこれを負担していただかなければならぬというふうに実は考えておる次第であります。  それから小型の整理について、隻数はふえておるが金額が減つておるのはどういうわけかという御質問でございましたが、この点は私さつきちよつと説明を漏らしたのでありますが、なるほど隻数は二千四百十二隻から二千五百九十四隻にふえておるのでありますけれども、トン数は実は減つておるのであります。トン数が二十八年度は六千百七十七トンということになつておりましたのを、今度は五千九百二十九トンで、従つて小さい船になつて来たということでありまして、総トン数が六千百七十七トンから五千九百二十九トンというように減つております。補助金は全部トン数当りの補助金でありますから、従つてトン数が減つたことによつて補助金の全体の額が減つておる、こういうことでありまして、決して全体の計画を縮小したのではなくて、従前通り二十六年度から始まる五箇年計画をずつとそのまま推進しておる、こういうふうな実情であることを御了承願いたいと思うのであります。  それから中小漁業基金の問題でございますが、これはお話の点も十分承つたのでありますが、私どももその点を実は非常に心配をいたしたのであります。そこで何とかしてこれは繰入れをいたしたいものというふうに考えておつたのでありますが、とにかくこれは運用状況を見て、その結果によつて相談をいたす、そういうことを大蔵省事務局とも約束をいたしておりましたので、今後の運用状況によつて、不足を生ずるおそれがあつた場合にはこれは必ず繰入れを実現しようという、事務的な話合いになつております。もつともこれは確定的に約束したということはちよつと申し上げられないのでありますが、十分その点は相談をいたすということの約束をいたしておるのであります。私どもは、むろんこの会計の運用状況によりまして、支障を生ずるおそれがあつた場合には、さつそくこの問題を事務的に持ち出して参りたい、従つて繰入れをしなかつたから、全体の基金協会運用が困るということではなしに、基金協会運用従前通りつて行く、それによつて特別会計運用が支障を生ずるおそれがあつた場合には繰入れをする、こういうふうに考えております。事務当局もそういうふうに考えておりますし、関係方面にはそういうふうなことで伝えているようなわけであります。  それから最後の漁港予算の問題でありますが、なるほどこの大蔵省予算の中には、いわゆる離島振興の分も、その他の分も全部入つております。離島振興の分は、大きな仕事といたしましては漁港でありますが、漁港は離島振興法によりますと十割の補助率になりますので、どうしてもそこには普通の補助率との差額計上しなければならぬということになりますから、これは不十分ではありますが入つておるのであります。どうしてこれを入れたかというお尋ねでありますが、これは漁港補助である以上は、漁港補助として入れざるを得ないということになりますので、漁港修築の予算の一部といたしまして要求をいたしておるようなわけであります。  それから災害の予算相当減つたのではないかということでございますが、御承知通り災害の予算が非情に減つておるのであります。これは実は災害についての査定というものが非常にきつい査定を受けまして、一般的に申しますと、二十六年災あるいは二十七年災のものは全部八〇%に切る。というのは、いろいろ監査をした実情がありますし、机上査定をしたような経過もあるから、三十六年の災害と二十七年の災害につきましては今までの計画を八〇%に切つて行く。二十五年の災害、二十四年の災害は半分にしてしまう、こういうような査定の内容であります。そういうようなことで、相当に災害の予算は削減を受けていることは事実であります。これは災害についてはあらゆる公共事業が全部同じ査定基準で査定を受けているようなわけであります。そのために漁港の災害復旧が非常に困難を来すということは御承知通りでございますが、一旦きまりますれば、この少い資金を効率的に運用いたしまして、災害復旧の目的にできるだけ合致せしめるように努力しなければならぬ、こういうふうに実は考えているような次第であります。
  14. 赤路友藏

    赤路委員 一番最後の漁港関係でありますが、この災害の方で、二十六年が八〇%、二十五年が五〇%ということなんですが、御説明によると、きめられたもので効率的にやりたいとおつしやるけれども、これは現実の問題としてそうは行かないと思う。まだ漁港関係の二十五年、六年のものは相当つておりますので、それではほとんどこれらのものの復旧ができないということに当然なろうかと思うのであります。これはもうここで言つてみても始まらぬことかもしれませんが、まことに遺憾であるということを申し上げておきます。どちらにいたしましても、これは本会議でも、大蔵大臣は補正予算を組まないということは言つていない。従つて当然われわれは補正予算が組まれる状態になるということを考えますので、この災害漁港の復旧の面に対しては、十分お考えおきを願いたいと思います。  それから離島振興法なり国土総合開発法に基く漁港がこれに含まれて来ているのですが、長官の話を開きますと、これは漁港だから当然ここへ入るべきだというようなお考えのように私は聞いたのでありますが、大蔵省との折衡に最初からそういうようなお考え方を持つて折衝したとするなれば、これは大きな間違いじやないかと私は思う。そういうような形で、漁港だから、いや何だからというので、それらのものがそれぞれの既定のものに入るということになるなれば、離島振興法も国土総合開発法も、そんなものはいらぬ。みなそれぞれの既定のものでやればいい。離島振興法というようなものを特別につくつたということは、その特別な法に基いてそこで予算措置をして、早くそれらの面の振興をはかつて行こうということであつて、従来のものとはおのずからかわつた形になつて出て来なければならぬはずである。それを交渉の過程において頭から、これは漁港なんだからどの法律にあるものでもこつちで引受けるんだというような形の交渉では、最初から負けておるのはさまつておる。だから初めからそういうお考えを長官は持つてつたのかどうか、この点をちよつとお聞かせ願いたい。
  15. 清井正

    清井政府委員 今御質問の点の国土総合開発法につきましては、ちよつと私も調べてお答え申し上げませんとはつきり申し上げられませんが、離島振興の分については、これは私ども要求いたしたときには、離島振興の補助率差額分は含めて要求しておつたようなわけであります。これは御承知通り、昨年度年度途中できまりました制度でありまして、二十八年度、いわゆる本年度施行しております予算といたしましては補正の中に要求いたしましたが、これは認められていなかつたのであります。今度、二十九年度予算のときに離島振興の差額分をこの中に含めて要求いたしたようなわけであります。
  16. 田口長治郎

  17. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 ただいまの説明から行きますと、これは漁船損害補償法に対する二十トン以下のものだけが認められて、百トンまでのものは認められないという説明でありますが、法律ができておる。しかして水産庁は四月一日からあの法律によつて漁船損害補償法を実施して行かなければならないということになる。そこで水産庁としての心がまえはどういうようなことになつておるか、この点をお聞きしたい。
  18. 清井正

    清井政府委員 漁船損害補償法に基きますと、百トン未満につきましては義務加入制となりまして、二分の一が国庫負担と相なるのであります。その法律は二十九年の四月一日より実施に相なります。従いまして私どもは、予算のいかんにかかわらず、法律がございますれば、法律を実行いたしますのが水産庁の役目でございます。
  19. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 どうかその心がまえで遊んでいただきたいと思います。あとは何とも言いません。
  20. 田口長治郎

  21. 淡谷悠藏

    淡谷委員 内水面漁業関係につき二、三質問いたしますが、最近発電その他の公共事業が盛んに行われております。これに関しまして内水面が縮小し、この縮小に伴う漁業権が大分侵されておるようでございますが、この漁業権の補償はどういうふうに考えられておるか、それが一点。  さらに発電事業や干拓等による漁場損害が起つた場合、その補償責任は一体どこにあるのか。会社自体にあるのか、あるいはまた国家が出すべきものか、またそのような事例があつたかどうか、この点をお伺いしておきたいと思うのでございます。  それから、この予算にございます種苗確保でありますが、種苗確保の内容をなお詳しくお聞きしたいと思います。  さらにたしか昭和十六年でしたか、廃案になりましたが、鉱山や工場等の汚水並びに海水に関する損害の補償に関する法律が廃案になつた。しかし最近の情勢を見ますと、ますますこうした工場や鉱山の毒水、汚水の損害が内水面漁業に大きく出て参つておるようでございますが、これに対する何らかの補償の措置を考えられておるかどうか、この三点をまずお伺いしたいと思います。  さらにこれは内水面漁業とは関係がございませんが、減船整理等に伴う零細漁民の対策がスムーズに行われておるかどうか。その実態並びに今年度におけるその対策等について、長官のお考えを承りたいのであります。これは取締り強化という面が、予算面においても非常に大きく現われまして、零細沿岸漁民と底びき網漁船との争いは、ただ取締り強化という二面だけで解決を見るかのごとく考えられますが、こういう点に関する長官のお考えをお聞き申したい。  もう一つ、これは私の聞き違いかもわかりませんが、さつき全般予算が減つた原因として、許可料免許料徴収費が減ぜられたというようなお話と承りましたが、免許料許可料というものはもう滞納整理が終つたのかどうか。この点もあわせて質問いたします。
  22. 清井正

    清井政府委員 ちよつと順序が違うかもわかりませんが、お答え申し上げます。水産増殖のうちの種苗確保の施設、これは二十八年度が千五百万円でございましたが、二十九年度は二千二百万円ということで、若干の増額を見ているのでございますが、これは県庁におきまする稚魚の確保の施設であります、いわゆる種苗を孵化させる池であるとか、それに伴う諸般の施設であるとかいうような、県庁の主として行うところの稚魚の孵化の施設に対する補助金であります。それが三分の一あるのでありまして、これはちよつと県の名前は今わかりませんが、また詳しくわかりましたらお知らせ申し上げます。これは主として県庁施設に対する補助金であるというふうに御了解願いたいと思うのであります。  それからそれに関連すると申しますか、内水面その他の漁業権等が、相当地積事業との関連において損害を受け、あるいはこれを収用すると申しますか、使用すると申しますか、そういう問題についての措置でございますが、かりにそういうような事態が起りますれば、これは予算的には水産庁予算ではございませんけれども、かりに関連産業が電気事業であれば、電気会社の関係経費から、あるいは国の事業でありますれば、国の関係経費から、それぞれの具体的な漁業権の使用、収用の状況に応じて補助金を算定して、その方から支出して参るということになるのではないかと思うのであります。これは主として予算の問題よりも、実際の当面の問題の解決の問題として、かりにその問題が円満に解決いたしますれば、解決に基いた金額をそれぞれの事業自体がこれを捻出する、こういうふうに相なるのではないかと私は考えているのであります。従つて水産庁予算には計上いたしてないような状況でございます。  またそれに伴う将来の施設として、単に沿岸小漁民に対する取締りのみによつて沿岸漁業が振興しないのではないか、こういう趣旨の御質問でございますが、私もその通りに思つております。従つて沿岸におきまする魚族資源の保護という意味におきまして、わずかながらでも増加を見たのでございますが、単にこれのみによつては十分でないのでありまして、やはり零細な漁業者に対しまして協同組合を編成せしめ、それに対しましてできるだけの国家の保護を与えるとか、あるいは共同の力による漁船の建造に対して融資をいたしますとかいうような方法によりまして、あらゆる予算外並びに予算の措置によりまして、総合的な立場から沿岸漁民に対して指導、奨励をやつて行かなければならぬのでありまして、単に取締りというようなことのみをもつて事が済むものとは私も考えておりません。ただ言うはやすくして行うは実際むずかしいのでありますが、しかもまた言うほどに予算計上されていないのではないかという御非難もあろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、少くとも沿岸の魚族の増殖は本予算でやり、一方において組合活動なり有志の活動によりまして、できるだけの沿岸漁業を振興させて行きたいというように考えている次第であります。  最後に免許料の問題でありますが、これはちよつと数字をきよう持つて参りませんので、はつきりしたことは申し上げられませんが、実は関係県庁の方々も非常に熱心にやつていただきましたので、相当な成績を上げております。ただ残念ながら一〇〇%までなつていないのであります。これはたしか八〇%を越したのではなかつたかと思いますが、いずれこれは適当な機会に申し上げたいと思いますが、一〇〇%にはならないけれども、関係県庁の方々の御努力によりまして非常に成績を上げておるということを申し上げたいのでございます。
  23. 淡谷悠藏

    淡谷委員 お伺いしたいのは徴収費を減じまして、多少なり残つた免許可料徴収がはたして厳重に行われるかどうかという点についてでございます。  それからもう一つつけ加えてお尋ねいたしたいのは、この二ページにございます右側の内容の問題でございますが、調整関係訴証というのは、これは証拠の証ではなく訴訟の訟でしよう。字句が違つているらしいのですが、この訴訟事務費補助金という件ですが、前年の一直二十八件から本年は九十二件と大分減つたようでございますが、なお現地について見ますと、いろいろ複雑な困難な問題がたくさん起つておるようでありますが、これは何か漁業法その他に欠陥があつて起るようなことはなかつたかどうか、つまり法的な欠陥があつたのではなかろうか、その点もお答えを願いたいと思います。
  24. 清井正

    清井政府委員 徴収費の関係は二十九年度に全然計上されておりません。実はこれは本年度から徴収がだめになりましたので、本年度からなくなつてもいい筋合いだということを一般に言われるのであります。ただ昨年度から引続き残つておるものがありますから、実はそれをとるために私ども事務的に——むしろ年度の途中で切るというのはおかしいので、大蔵省を押えましてどうにかこうにか本年度末までは持つてつたのであります。御指摘のようにとれとれと言つても、とる人がいなければとれないじやないか、とる人を切つてしまつてそれでとれと言つてもできぬじやないかというりくつを言いまして、それはもつともだということで、とにかく本年度末まではこれは人だけは置いてあるわけであります。しかし御承知通り免許許可料は本年度から廃止になつておりますから、その辺のりくつが立たないわけでありますが、これは二十九年度まで経過して徴収する事務費なり人件費を、残念ながら置けないのであります。ただ一〇〇%までなつていないのでありますから、残るところをとるためには必要ではないかということは言えるわけでありますが、これは実際問題でありまして、予算編成上なかなか理由が立たない。そこで私どもといたしましては、二十九に度になりましたら、むしろこれは地方にも水産関係の人がおられるおけでありますから、むろん予算上はなくても、これはあくまで残額の徴収には最後まで努力して行かなければならない、こういうふうに考えております。  それから訴訟関係のことにつきましては、これは別に件数は予算編成上考慮いたしたのでありますが、これは主として調整関係のいろいろな紛争を起したときの訴訟関係事務費でありまして、事務的に漁業法の不備のために起つたものであるかどうかということにつきましてこまかく分析いたしておりませんので、にわかにお答えできかねますが、これは私どもといたしましては、紛争調停につきましては全力を尽してやつて行かなければならぬ、こういうふうに考えております。
  25. 淡谷悠藏

    淡谷委員 徴収費の件について長官の率直な御答弁、まことに感謝いたしますが、実は伺つておるところによりますと、この免許料許可料は、零細な漁民の滞納ではなくて、大きな会社の滞納が残つておるということを聞いております。それを徴収費節減を好機会に切り捨てるようなお考えはないでございましようか、その点をあわせてお伺いしたいのであります。事務ができないとか、人がないとかという理由で、大きな会社の未納がそのまま投げ捨てておかれるということになりますと、正直に納めた漁民だけが損をする結果になつて、まことに嘆かわしいことになりますので、そういう心構えは多分ないとは思いますが、この席上ではつきり長官の御言明をいただきたいのであります。
  26. 清井正

    清井政府委員 これはお話の通りでありまして、むろん残つております分につきましては、さらに初年度にわたりましてもできるだけ徴収いたしまして一〇〇%にいたすように参りたいと思つております。     —————————————
  27. 田口長治郎

    田口委員長 次に公海漁業に関する件について議事を進めます。  北洋漁業に関する母船と独航船の関係について質疑の通告がありますからこれを許します。松田鐵藏君。
  28. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 長官にお尋ねいたしますが、二十九年度北洋母船式鮭鱒漁業許可方針が発表されて、現在八母船がこの方針に基いて母船の許可を申請する努力をしておる。しこうして昨年まで許された百隻の独航船のほか、本年は新たに六十隻を許可する方針であるように書かれております。この独航船を許可する方針として、水産庁でとり来つた方針は、底びき漁船の転換をする船にこれを与えるとして出されておる。申すまでもなく、沿岸漁業との調整からいつて一番論議されるのが機船底びき漁業であり、その底びき転換を条件とするということに対しては、前の委員会でもいろいろと議論はありましたが、適切な方法であると考えておるのであります。しこうしてこの機船底びき漁船に対して、さような漁業調整の上から、こういう北津に出るという許可を与えようとする水産庁の親心をも考慮せずに、今日母船側に対する所属をきめるのに対して、巷間伝えられるところから行くと、非常な逸脱した、常軌を逸した利益を要求しておる独航船側がたくさんあるということを聞いておるのであります。たとえば明日もつて縦切りになる——昨年実績を持つた大洋漁業、日魯漁業、日本水産の三母船が三十日をもつて締切りになる許可申請をするというときにあたつても、いまだにその所属をきめていないというような漁船もあるということである。しかも一そう一そうではなく、集団をもつて右に行こう、左に行こうと、その要求を過大に要求するように議論を進めておるということも聞く。また甲の会社に、乙の会社に、丙の会社にというように渡り合つて、多額の要求をしておるといううわさも聞いておる。昨年における母船側の決算の状態を見るときに、われわれは非常な利益があつたものと考えておるが、税金の関係か、どういう理由かわからぬけれども、ほとんど利益がないような報告を水産庁にも出されておるという母船側の非常な不信きわまる行為に対しては、われわれもこれを糾弾しなければならないと議論を進めたものであるが、そうした母船側が、本年においてはより以上の大きな船を出して、そうして独航船を今日取合いしておるというような状態である。これはきのうの総理大臣の答弁にもあるごとく、無計画で行けばいいのかは知らないけれども、実に今日の状態から行くというと、あまりにも水産庁の親心を無視した独航船側の今日の仕方は、目に余るものが多いのであります。水産庁長官はこれらの事情がよくおわかりのことと思う。よつて常識を逸脱した自己のみを本位としたこうした漁民が、もしこのまま許されて行くようなことがあつたならば、国際上の漁場に出て、水産庁監督指導をも自己の利益のためには顧みないというような思想も、ここにおいて現われるのではないかという、非常な危険の念を私どもは持つものであると同時に、国際漁場における日本漁民の信義を落す一つの理由にもなるのではないかと考えるのであります。これらに対して、水産庁長官内容をよくおおかりのことと思う。また今後三十日、来月の二十日、その結果においてどのように所属がきまるかは知らないけれども、そうしたあまりにも行き過ぎたものに対しては、たとい今年は許可をしても明年から許可をしないというような方針に持つて行かなかつたならば、日本の漁民の信義が保たれないのではないかと思うのです。また母船側においてもしかりであります。母船側においても、自己の利益のみを追い、税をごまかすようなこともあえてする、または漁民から搾取一方の方針を立てて行くということであつたならば、これまたそうした母船側に対しても、国際漁場に臨む上においてよろしく取締らなければならないものではないか。ここにおける水産庁の態度、漁民に対するその指導方針が確立しなかつたならば、将来の日本漁業というものはいずこに行つても、パキスタンに行つてもメキシコに行つてもまた濠州に行つても、今日排斥されておる現状から見て、ゆゆしき問題であると思うのでありますが、長官はどのように御決意をなされておるか、承りたいのであります。
  29. 清井正

    清井政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、なるほど北洋漁業はきわめて統制ある指導のもとに操業をやつておる。これは当該水城が御承知のような状況でありまして、その他の公海漁業にもいろいろの問題が起つておる際でありますから、私どもといたしましても、統制ある操業のもとに実施をして参らなければならぬということは、お話の通りであると思つております。しこうして今年度の母船の選定にあたりまして、いろいろの事情にかんがみまして、私どもは、昨年実績を持つておりました船に対しましては隻数を指定、限定をいたしたのであります。それから新たに出漁を本年から希望する船につきましては、一定の限度を設けて、独航船と契約をして申請をするという趣旨の方針を決定したのであります。御承知通り、北洋の鮭鱒漁業は、母船だけの漁業ではなく、母船といわゆる独航船との共同経営であります。その独航船は、内地の底びきの転換といいますか、内地の沿岸における圧力を幾分でも緩和するという大きな方針に基く内地底びき船の他種漁業転換という大きな趣旨が含まれておるのであります。そういう意味において、これは単に母船だけの漁業ではなく、母船とそれに付属して実際の鮭鱒の流し網に従事する独航船とが相協力して共同漁業をするのが北洋漁業の建前であります。従つて私どもも、この独航船の問題につきましては、できるならば母船との間に円満な話合いが進むことが最も望ましいところであると考えておつたのでありますが、実際にこの方針を決定いたしまして、その後の状況——これは私どもの耳に入つて参りますのがはたして正確なニュースであるかどうかわかりませんが、いろいろな情報が入つて参るところによりますと、相当これについては出願会社の間に激烈な競争が行われておる。従つてその間いろいろな摩擦が起つておるということを聞いておるのであります。その点は、私どもといたしましても、あるいはそういうことも起らぬかとも考えておつたのでありますが、実際に私どもの想像以上のような問題もあるように開いております。しかしこれは私どもといたしましても、責任あるお答えをいたすためには、はたして実情がどうであるかということを、正確な資料に基いてお答えいたしませんと何ともお答えできぬのでありますけれども、確かにそういうようなことが起つておるという事実はあるように聞いております。またあり縛ることだと私も思つております。  そこで私どもは、既成の三船団につきましては一月末日までに申請を出していただくことになつておりますし、新しく申請される方には、二月一日から十日までの間にそれぞれ独航船と一緒になつて申請を出していただくことになつておりますので、その申請が出て参りますと、ただいま御指摘がありました一つの独航船が二つあるいは三つの母船と契約したというようなことが私どもの方に出て参りますれば、適当に措置して参ります。一つの独航船が二つの母船と契約することはあり得べからざることでありますが、私どもといたしましては、そういうような事態がかりに起りますれば、それに対応いたしまして適切な処置をとらなければならない。かりにそういうような事態が生じますれば、一母船をすみやかに選定させることが必要でありまして、その選定を慎重にいたしますれば、御心配のようなことは起らないと思います。これが本年の態度であります。しかしこれはいずれにしろ出て参らなければ何とも申し上げられません。出て参つて、かりにそういうような事態がありますれば、私どもといたしましては、独航船に対してはす入やかに一母船を選定させます。そうしてそのダブつた関係をよく話合いをしていただくということであります。役所の方であの会社、あの会社ということは適切ではありませんから、私どもといたしましては、そういうことで本年の独航船の処置に対しましては、そういつたようなかりに不当なものがありました場合には、すみやかに一母船を選定させる、それにもかかわらず申請して参りました場合には、これは出漁を遠慮していただくという方法以外にないと思います。ただこれは明年はどうなるかということでありますが、明年につきましてはなるほど予測しがたいのでありまして、これはどういう事態になつて来るか、今ここで明年の形態を予想することはできませんけれども、かりに本年そういうような事態があつて、ある一つの独航船がその際に母船側に対して非常に迷惑をかけておるというような個々の事例があつたといたしますならば、その事態につきましては、私どもは十分認識しておかなければなりません。明年どういう形態になるか予測はできませんけれども、ある独航船がどういうことをやつており、そうして母船側にこういう迷惑を、かけたということの事実を私どもが調査し認識いたしましたならば、その事実というものは私どもは必ずよく認識しておかなければならぬ、こういうふうに私ども考えるのであります。
  30. 川村善八郎

    ○川村委員 北洋のさけ、ます漁業は、過去二年間の試験創業によつて相当に成積が上りましたので、今年は大幅に独航船もふやし、さらに母船もふやして出漁させるということになつたことは、ひとり漁民の喜びばかりでなく、国家のためにも私は喜びにたえないと思うものでございます。二十九年度の出漁に対しましては、当初水産庁は百六十隻の独航船の発表をいたしまして、それぞれ検査を施行して適格船をきめたようでありますが、母船数については、昭和二十九年度北洋母船式鮭鱒漁業許可方針によつて今きめようとしておるのでございますけれども、まず根本問題として、母船を何隻ほんとうに出す腹であるか。つまり私の聞かんとするところは、この許可方針の内容を見ますと、相当疑義がある。疑義があるが、八船団もの競争があるので——おそらく八船団を全部許可するという方針ではなかろうと思いますが、こういう競争をさせておるのではないかと私は想像をいたしますが、水産長官としては、母船を一体何隻出すのが適当であるか、また何隻を出すという腹をきめておるのか。まずこの一点を御質問を申し上げまして、逐次御質問を申し上げたいと思うのであります。
  31. 清井正

    清井政府委員 端的に何隻を出す腹であるかという趣旨の御質問でありますが、先に新聞にも発表いたしましたし、現にただいまの御質問の中にもあつたわけでございますが、私どもはこの方針によつて、ただいま業界からの出願の実情を見守つているという状況であります。いわゆる実績を持つている船団には百隻を割当てましたため、新しい船団に対しましては六十隻しか残つていないのであります。ところが新しく出漁を希望された会社が申請いたしております母船数は、四千トン程度の船が大部分であります。そこで四千トン程度の母船を北洋に持つてつて鮭鱒流し網漁業をいたしますためにはどの程度の独航船が必要かということは、これは昨年、一昨年の実績があるわけであります。その実績において、当然これは常識というものがあるだろうと思うのであります。そういう意味合いから、私どもいろいろ考えました結果、新船団につきましては二十隻が最高ということでございまして、独航船の数が少くて母船経営に不適当と認められた場合には、極力許可しないということをはつきりとつけ加えておるのであります。従つて申請会社の申請いたしております漁船の能力、トン数等を考えますれば、この経営が円滑に行くためにはどの程度の独航船が必要であるかということは、業界の常識としてあると思うのであります。そこで今のようなところからいたしまして、私どもは現在会社がどのような独航船との契約を結んでおるかわかりませんが、いずれこれは申請が出て参りますれば、ただいま私が申し上げた常識からこの問題は判断して行かなければならぬと思うのであります。先ほど松田委員の御質問の中にもありましたが、これはやはり公海漁業でありますし、地域が相当なところであります。そこでやはりこれは統制ある操業をして行かなければならぬのでありまして、その間国際関係に及ぼすところの影響をも、母船の出漁の許可にあたつては十分考えて行かなければならぬと思うのであります。  それから既存の三船団あたりでありますれば、そういつた観点から常識をもつて判断いたしますれば、また私どもが発表いたしました数字から考えますれば、これはそうなまやさしい、弾力性のあるものとは考えておらないのであります。この点はひとえに今後申請する会社が、いかなる程度の独航船を所属して持つて行くかという判断によるわけであります。その判断の精神は今言つたような精神でやるということであります。
  32. 川村善八郎

    ○川村委員 ただいま長官から御答弁がありましたが、私が率直に何船団を出す腹かという点に対しては確答を得ないで、独航船をつけて来たものに対しては最高二十隻といつたようなあやふやな——文書ではそうなつておるから、残余の六十隻については三船団といつたような、常識上ではそう判断されますけれども、あとは七船団になるか八船団になるかといつたようなことはまだはつきり申されておりません。そこで私文書についてのはつきりしたことを伺つておきたいが、方針の第四項には、はつきり実績船については三船団に百隻を割当てております。そこで「残余の申請船については、水産庁検査合格済の独航船と所属契約を結び之を証明する書面と共に二月一日から同月一〇日までの間に申請すること。この場合一母船に対する附属独航船数の最高限度は二〇隻とし、所属独航船数が少く、母船経営に不適当と認められる場合は許可しないことがある。」こうなつておりますが、母船式漁業取締規則の第三条を見ますると、はつきり申請書には事業計画書を出さなければならない、こうなつております。おそらく申請者はいずれも相当数の独航船を要するという計画になつておると思いますが、今度の競争の結果、二十隻を獲得するところもありましよう、あるいは十五隻より獲得しないところもあり、あるいは十隻より獲得しないところもあるということになりますれば、二十隻で計画を立てておるところはこれは計画通りでありますので、当然許可しなければなるまいと私は考えております。しかし許可と申請、つまり率直に言うと計画と沿わないものに対しては、これは許可すべきでないというような判断はできるのでございます。しかし水産庁といたしましては、最高二十隻であるという方針を立てておりますから、その線に沿うたものは許可になるということもまたはつきり言えるのでございまするけれども、六十隻を五船団で競争をするということになりますれば、平均十二隻よりあたりません。そこで平均十二隻とつた場合に一体どれを落すかという問題になつて来るだろうと思います。八船団を全部認めるのだつたならば、これは最初から八船団より出願がないのであるから八船団を許せばいい。水産庁ではそれを五船団なり六船団に切り詰めようという考えであるから、こういう方針を出して今競争をさしておるのだろうと思いますが、この競争さしておるということについては、私は、弊害もあるけれども、規則で見るところによりますと、これは当然競争がある方がいいんじやないかというふうに解釈いたしますけれども、そこで六十隻というものが残余となつておるという解釈は、これは水産庁といたしましてちよつとあまく考えたんじやないか、既存の三船団に百隻割当てて、はたしてその既存の三船団が百隻とれば六十隻より残りませんけれども、今ここにはつきり表に表れておりまする大洋漁業の三十六隻、それから日魯漁業の三十隻、日水の三十四隻が、これが全部この通り獲得すれば六十隻になりますけれども、例を申し上げますと、大洋が三十隻よりないと、ここで六隻が残余の分になります。それから日水が三十四隻だけれども三十隻になりますれば四隻残余の分になるし、それから日魯が二十五隻になると、これも五隻残余の分になる。合計十五隻がとれないために事実上七十五隻になる。そうしますと、それをあと五船団で競争すれば十五隻になる。こういう場合に調査船が四隻つきますから十九隻になりますので、そうすると八船団許可してもいいという解釈になるのでありますが、そこで長官は、一体母船経営は何隻までで成り立つと考えておるか、この判断によるだろうと思いますが、長官は最高を二十隻で抑えておるけれども、最低は一体何隻ぐらいのものがいわゆる合格して今度の母船経営ができるというお考えを持つておるか、この点をまずお伺いします。
  33. 清井正

    清井政府委員 非常に詳細にわたつてのお話でございましたが、確かに私どもは、既成の船団につきましては、ただいまも御指摘のように大洋漁業を三十六隻、日魯は三十隻、日水が三十四隻というふうに定めましたが、これは当然昨年実積を持ちました船団でありますから、百隻を確保できるという想定のもとに立つておるのであります。そこで残余六十隻を二十隻最高でもつて契約してもらいたい、こういう趣旨でこれを実は立案いたしておるのであります。ただいまお話の通り、かりに三十六、三十、三十四という合計百隻の既成大洋、目魯、日水の三船団が、この規定通り獲得できてなかつた場合はどうなるかというようなことが御質問の根底にあるわけでありますが、かりに十隻だけとれなければ、六十隻に加える十隻であるから七十隻ということになるのであります。ただ私は実はそういうことを想像していなかつたのであります。これは一月末日までが申請期限でありますから、どういう形になつて参りますかまだわかりませんけれども、かりに持つて来た場合にどう処置するかということは、そのときになつて考えてみなければわからぬと思います。私は必ず何とか既成船団だけは出るのではないかというように今まで想像しておつて、また必ずこれはとれるものと考えておつたわけでありますが、ただいまの御説明のごとき事態がかりに起つたといたしますれば、これはこのとき予想しなかつた問題なのであります。そこでその点につきましては、あらためて考えなおさなければならぬというふうに考えております。ただ最低どのくらいを限度と考えるかというお話でございますが、これは非常にむずかしい問題だと思います。御承知通り、去年日本水産は三千トン程度の船で二十四隻をつけております。最低でも二十四隻です。去年はそのほかに調査船がついておる。そこで私どもは最低限度はどうかということを今すぐにはつきり申し上げることは非常にむずかしいのですけれども、去年の実例がみな二十隻以上つけて、しかも船の大きさも三千トンくらいの船で二十隻以上つけておる。それで経営をやつてつておるということを見れば、ここで何隻が最低限度かということを私どもが考えるまでもなく、およそ常識で、この程度の母船で経営するとこの程度の独航船が必要だということはあり得ると思うのであります。それで常識的な基準というものを一方考えに置きまして、実際の結果によつて適切に判断しなければならぬ、実はこういうふうに考えるのであります。何隻が最低限度かということもはなはだむずかしい問題であります。要するに私どもは、そういうふうに非常に弾力性ある考え方を初めからとつていないということだけははつきり申し上げたいのであります。先ほど申し上げた通り北洋漁業の出漁でありますから、これはきわめて弾力性のあるような、どうにでもなるような考えは持つてもらつては困るというようなことは、特に私がこの方針を関係業者を集めてお話したときに、ここにはこう書いてあるけれども、二隻でも三筆でも持つてつて許可してくれといつても、ここに書いてある「許可しないことがある。」というのは、非常に厳重に考えておるのであるということを私はつけ加えて御説明したわけであります。これは要するに、今言つたような常識から判断するところの独航船の能力、それから北洋漁業の出漁という国際性という問題、そういう観点から考えての私の意見であつたのであります。そういう意見は今でもかおりありません。しかしその点は、もうじき会社から申請が出て来るという状況でありますので、いろいろ問題があろうかと思いますので、この点は実況をよく見まして適当に判断しなければならぬと、実は考えておるわけであります。
  34. 川村善八郎

    ○川村委員 長官は、母船数は、ほんとうにどのくらい出す腹かということについては、隻数のお答えもございませんし、さらに三社に百隻割当てたのは、これは常識からいつて必ずとれるという善良な考えを持つてやつたんだ。さらに独航船の最低隻数は、一母船にどのくらいつけるかということについても明確な答弁がございません。ただ常識で判断をして経営の引合うものに対して許可をするというような含みのある、しかも全部が全部許可をするというような甘いことではなく、あまり弾力性を持つていないことは想像はできますけれども、いわゆるそういう甘い常識を持つたから今日その競争が始まつて、既設の三船団も十分にとれないから、今日までまだ願書を出して来ないんじやなかろうか。期間はもちろん一月の末までというのでございますから、あと二日、三日ございますが、長官のお考えのように、割当てた既設の三船団が独航船をとれるということであるならば、もうとつくに願書は出て来なければならぬはずなのに、まだ出て来ないということについては、やはり二船団出すという考えの会社もあるでありましようし、それから何らかの形で、ある会社を抱いて行こうというような計画もあるので、それらを含んで各船団の動きを注視してまだ出して来ないんではなかろうか、かように考えておるのでございますが、とにかく今日独航船側と母船側とは著しい競争が始まつておるということだけは事実であります。そうしたようなことから、先ほど松田君が言われたように、漁民が非常な常識を逸脱した行為をやつておる。はつきり申し上げると、三船団に同意書を出しておる、あるいは契約をしておるというようなことが私らの耳にも入つておるのでございます。そこで松田君は、そういうものに対しては来年は許可をしない方がいいんじやないかというようなことを申し上げておりますが、私はむしろ本年落すべきである、そういう非常識な、いわゆる漁民に傷をつけるようなものに対しては、本年から許可しないという方針をとるべきである、私はこういう強い気持を持つておるのでございます。なぜかといいますと、独航船の希望は三百になんなんとしておつたはずであります。おそらく関係各県とも自分の要望した隻数は割当てておらないはずであります。でありますから、まだ出漁までには約四箇月ありますので、これからでもそういう船、つまり悪い行為をするものを切つて、そうして新たな独航船を選んでも決して出漁には間に合わないというようなことはございません。でありますから、とにかく不正行為をやつているというようなものが明らかになりましたならば、これは今年でも切つて、そうしてかわりの船を各県から推薦さして、正しいあり方の船を独航船として母船につけて行くというのがほんとうじやないか、かように考えるのであります。もしこのことが今年で収まればいいのでありますけれども、おそらく今年の漁業がまた相当の成績を上げますと、新たにまだ八船団のほかに二船団も三船団も出て来た場合、今年にならつてやはり競争させなければならぬという事態が必ず起きる、私はかように考えておりますので、そうなりますと独航船というものは善良な者もますます悪い考えを持つて、いわゆる二船団から金をとつたとかあるいは三船団から金をとつて、承諾書を出したというようなことになると私は考えますので、まず私はそういうふうなことのあるものが調査の結果明らかになりましたならば、今一年でも切るべきだ、かように考えておるのでございますが、その点について長官はどういうお考えを持つておるか、さらに御答弁を願いたいと思うのでございます。
  35. 清井正

    清井政府委員 この点につきましてお答え申し上げますが、これは本年度につきまして、そういうようなうわさも私一部聞いているのであります。しかしこれはうわさにとどまりますので、はたして正確なニュースであるか、私どもは確信を持つておりません。ただ締切り期日が切迫いたしておりますので、それで私の方に申請が出て参りますれば、それぞれの申請者についての独航船を比較検討してみますれば、ダブつているものはダブつているものとしてわかるわけであります。またかりに最初の船団がきまりまして、あとの船団がきまるときた最初の船団に入つておるものがまたダブつてつておるということも考えられるのであります。いろいろな事態が考えられると思います。そこで私どもは、かりにこれが二重、三軍に重複してこちらに申請してくるような事態を発見した場合には、これは私どもといたしましては、当該独航船の船主に対しましては、これは必ず一母船に選定をすべきだということを期限を付して私は警告したいと思います。一定の期限の間に必ず一母船を選んでもらうということをはつきりさして、それがどうしてもはつきりしないような場合には、やむを得ず出漁を遠慮していただくようなことになるかもしれませんが、とにかくはつきりしていただきたいと思います。ただこれは御承知通り、母船が独航船との契約を競争するような形をとりました場合には、これはある程度起り得るということは考えられます。いい悪いにかかわらず、ただすべての場合がいいか悪いかということはなかなか、言い切れぬのでありまして、やはりこういうようなことが起りました場合には、私どもは実情を調査いたしまして、かりにこれが独航船側の非常な悪意に基いて、いたずらに母船側に迷惑をかけおるというような悪質なものを発見したというような場合につきましては、これは今言つたように、一定の期限をつけて一母船を選んでもらう、あるいはその他のいろいろな問題につきましては、関係母船と独航船の間で相談をしてもらうということ以外に本年は方法がなかろうと思つておるのであります。ただ明年度についてはどうするかということにつきましては、これは先ほど松田委員の御質問にもお答えしたのでありますが、明年度はどういうふうになるかということは、私は今ただちに予想することができないのであります。ただいま川村委員は、来年度も競争ということが起りやしないかという御想像のもとで御質問がございましたが、それはそうなるかもわかりませんし、そうならないかもわからない、私は今来年度のことを予想することはちよつと差控えさしていただきたいと思いますが、ただかりに本年度にこうやつてこういうふうに二重、三重に母船をきめた独航船がある。これが調査の結果非常に悪質なものであつたということになつたといたしますれば、これは具体的にはつきりわかるわけでございまするから、そういうような独航船の方につきましては、本年度においてそういう実績があつたということを私どもは十分含んでおかなければならぬと思うのであります。それでは明年度についてどうかということは、明年度の方針が決定しなければ何とも申し上げられないわけであります。とにかくこういう実績があつたということがわかりますれば、私どもとしては十分含んでおきたい、かように考えております。
  36. 川村善八郎

    ○川村委員 明年度のことについてはどうなるかというようなこと、今年の方針に基くか、さらに水産庁で許可を各船ごとに選ぶかというようなことはまだはつきり言えない。これはもちろんそうでございましよう。しかし私は明年度の許可についても、これは相当厳選をしなければなりませんので、それぞれの手続を経なければならぬと思いまするけれども、たとい本年出漁することに相なりました船でも、先ほどから議論になつておりますような不正のあるということがおそらく明らかになるだろうと思いますが、こういうことを是正するためにも、明年度の許可については、相当考慮しなければならぬのではないかという考え方から、たとい底びき網を放棄して許可を得た船であるといたしましても、許可は一年きりにして、今年のいろいろな事情を勘案して、明年度の許可方針を立てていただきたい。私はこう考えるものでありますが、この点について長官はどういう御意見を持つておるかということが一点。さらに母船式漁業取締規則の第四条に、(許可をしない場合)というところが六号になつておりまするが、第一号には、「申請者が漁業に関する法令を遵守する精神を著しく欠く者である場合」二が、「申請者が労働に関する法令を遵守する精神を著しく欠く者である場合」三が、「申請者がその申請に係る漁業を営むに足る資本を有しない場合」四には、「申請者が第一号又は第二号に該当する者によつて実質上当該漁業の経営を支配されるに至るおそれがあると認められる場合」五が、「その申請に係る漁業と同種の漁業の許可の不当な集中に至るおそれがある場合」六は、「漁業調整その他公益上必要があると認める場合」この六つのものに該当するものが、許可されないということになつております。そこで不当な集中ということについては相当議論があるだろうと思つておりますが、私たちの判断では、八船団出願しておるのであるから、一会社に二船団を許していることは不当な集中になりはしないかというような考えを持たなければならぬのではないか。この点について長官はどういうふうにお考えになつておるか。もちろん第四条の二、項には、「農林大臣は、前項の規定により不許可の処分をしようとするときは、あらかじめ、当該申請者にその理由を文書をもつて通知し、当該申請者又はその代理人が公開の聴聞において弁明し、且つ、有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。」こうなつておりますが、私たちの考えておるのは不当な集中をする場合、それから許可になつた場合といえども、はたしてその資本を有するかどうかという場合、それから法律を遵守する精神を著しく欠く場合といつたようなことが相当問題になるだろうと思いますが、この点については、第四条などをもう考慮しないで、そうして今度の競争によつて独航船を最高二十隻あるいはそれに近いものをとつたものから、共同申請した場合は許可するという腹をきめて方針を立てるのかどうか、この二点をお伺いしたいと思います。
  37. 清井正

    清井政府委員 ただいまの御質問の母船式漁業取締規則についての許可しない条件でありますが、その点は私どもといたしましても、実際に独航船をとりまして、母船の経営の申請がなければ何とも判断はできない問題であります。そこで実際上の具体的な事情に基いて、ただいま御指摘になつたような諸般の条件に該当するかどうかということを判断しなければならないのでありまして、私どもは、かりに一会社二母船ができたからすぐその規則に該当するかどうかの判断をすることは私どもいささかどうかと思うのでありまして、この点は実際の独航船の申請が出ました場合に、諸般の事情を考えてこれを判断すべきものだというふうに思つております。  それから一年許可にするかどうかということでありますが、その点は、なるほど本年は底びきを全部やめて転換するものを優先いたしているということはその通りであります。建前から申しますれば、せつかく底びきをやめたのでありますから、これはある程度継続的に許可しなければならぬということになるわけであります。ただこの母船の経営に対する許可は、先ほども申し上げた通り、母船と独航船とが両方別々な立場で許可されておる。一緒になつて共同経営を立てておるのでありますから、私どもはやはりことしは一年許可という建前をとつております。これは一母船と一独航船との建前が永続的につくことのよしあしということがあるのでありまして、永久に一つの母船に一つの独航船がついて行くという形は、一つの独航船を選ぶという趣旨からとりにくいという判断から、ことしは、業界から永久許可にしてくれという趣旨の御要望があつたのでありますけれども、私は形式許可は一年ということにいたしたのであります。ただ実際問題として、独航船がこれに応募したときには、底びきをやめて来ているのでありますから、一年こつきりで来年これが認められないということがあつてはいかがかという問題もおそらくあると思います。そこで私どもは、形式的には一年許可ということでありますが、実際問題といたしまして、ことし許可した独航船、しかも全然やめてしまつた独航船につきましては、実質的には一年こつきりでやめるということは、その面からだけでは不可能だと思つております。従つてこれはやはり二年なり三年なりの許可はどうしてもやらなければならぬと思つております。もつともこれは形式的には一年でございますけれども、こういうふうに転換したものは実質的には一年だけでは無理かと思います。そこでこれは少くとも二年ないし三年は継続的に許可いたさなければならぬと思つております。これはただいまの御質問の点にからむのじやないかと思つておりますが、私どもも今度のような二重申請というような点も別個の問題として扱わなければならぬと思うのでありまして、いわゆる転換いたしました独航船につきましては、形式は一年であるけれども、実際問題としては二年ないし三年の継続許可をして行かなければならぬという方針であることを申し上げておきたいと思います。
  38. 川村善八郎

    ○川村委員 もちろん今長官のお答えになりましたように、底びきの転換をしたのであるからという理由、そういう考えは私はいいと思います。ただそのことが永久の許可というようなことで不正なことをするものも許可するというようなことに相なりますれば、長官の親心をまつたく無視するということに相なりますので、独航船の許可におきましても、母船の許可についても、相当に良識ある判断の上においてやつてもらわなければならぬ、かように考えておるのでございます。二十九年度の母船式さけます漁業の出漁の許可方針については、新聞では一斉に、水産庁では政治圧迫を加えられたから手をあげて、ああいう投げやりの方針をとつたのだというようなことも流布されておりますし、おそらく漁業に体験のある識者は、相当この問題については批判していると私どもは考えておりますので、どこまでも私らは長官を信頼しておるのでございますから、長官におかれましては、たとい許可方針にいろいろな疑義がありましても、いわゆる常識上はつきりこれがいいという場合に許可していただき、再び社会の批判を——批判でなくて、非難を仰がないように御注意のほどをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  39. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 ただいままで母船と独航船の関連につきまして松田君、川村君から御質問がありましたが、要は公明選挙をさせるかどうかという点でありまして、明朗に独航船が母船を選択するということが一定の良識によつて行われるということでありますれば、これは制度化して行つても、たくさん申請が出ました場合にはやつていい制度ではないか。要はその間において悪質なものが出て参るという、そういう副次的な問題でありまして、今後当局におかれてそういう面を是正するように御配慮を願いたいと思うのであります。  次に長官にお尋ねと申しますよりも、助言の形になるのでありますけれども、独航船につきましては相当厳格な検査を実施されているようであります。ところが、私調査が不十分であるかもしれませんが、母船についての精密な検査をおやりになつたということをいまだ聞いていないのでありますが、これは検査を独航船と同じようなぐあいに実施なさつたのでありますか。それともまた母船は検査をしないというような御方針で進まれるのであるか、その点をまずお尋ねしたいと思うのであります。
  40. 清井正

    清井政府委員 独航船について厳重に検査をいたしましたと同様に、母船についてもいたすつもりであります。現在済んでいるものも何ほどがあるかと思いますが、この点は私詳細に調べておりませんけれども、独航船と同様に、母船につきましても、母船としての能力があるかどうかということは厳重に検査いたすつもりであります。
  41. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 これは非常に大切な問題であります。私がこう申し上げますのは、過去におきまして、北洋の母船式の漁業において漁船相当事故を起し、沈没、行方不明等の事故が起つておるのであります。私の調査によりましても、秩父丸でありますとか、あるいは八郎丸でありますとか、あるいは豊国丸でありますとか、あるいは永徳丸というように、四隻も過去において避難をしている。御承知のように北洋は相当荒天でありまして、それにたくさんの燃油、食糧その他漁獲物、塩、多数の作業員を母船は搭載いたしております関係で、それが荒天のために船が傾斜した、またデッキの上に魚を満載しておつたという場合には、復元力がきかないでそのまま沈没したとか、あるいは独航船に衝突をされ、船腹に穴が明いて、非常な浸水のために瞬時にして沈没をしたというような過去の苦い体験が業界にはあるのであります。そこで私は、独航船の検査も厳重にしなければなりませんが、それにも増して、母船の検査というものは重心の検査その他十分慎重にやるべきものと、こう考えておるのであります。今後長官はこの検査をおやりになるということでございますが、本来でありますれば、独航船がその母船の選択あるいは帰属をきめますためにも、事前に母船の性能検査というようなことをやりまして、これを十分独航船等に周知徹底せしめる、あるいはまた改造しても不十分であればかわる船を探させるとか、そういうような措置が独航船の検査と並行してなさるべきものである、こう私は考えるのであります。独航船の帰属がきまつた後において、もしも不幸にしてその船が不適格であるというような事情が起ると、非常な混乱を業界に与えるという結果になると思うのであります、また長官もしばしばお耳に入つておると思うのでありますが、独航船が母船を選択する場合に非常に迷つておる。あの船は非常にローリングして作業が沖合いで困難だというようなデマも飛び、そのために迷惑しておる者もあるようである。あるいはそうかもしれません。そういうものにいろいろな面からの勧誘によつて独航船がついて行く。これは独航船のためにも、母船側としても、国家としても大きな損失であり、重大な点であるのであります。この点を慎重に考えるべきだ、私はこう思うのでありますが、母船の検査はいつごろこれを実施なさる御方針であるか。また来年からは独航船の検査と並行して、これを帰属がきまる前に実施すべきものと思うのでありますが、この点に対する、長官のお考えを承りたいと思うのであります。
  42. 清井正

    清井政府委員 ただいまのお話の通り、独航船につきまして検査をいたしますと同じ趣旨によつて、母船についても検査をいたさなければならぬものと思つておるのであります。これはできる限りすみやかに実施をいたしたいと思つております。  なお今後の方針につきましての御意見でございましたが、御趣旨の点は十分了承いたしておるのでありまして、大体同じ趣旨によつて母船、独航船ともに今後は検査をいたしたいと考えております。
  43. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 母船の検査の遅れておりまする理由には、いろいろあろうかと思うのであります。現在南方の母船式のまぐろ漁業に出漁しておる。そのためにこれを呼びもとして検査をする。独航船の帰属がきまる前に検査をするということは企業にとつても非常な損失であり、国家的にも大きなマイナスであるというところを配慮されての長官のお考えであろうかと思うのでありますが、ただ私がここで御指摘をしたい点は、そういう母船について親心を示されると同時に、独航船の検査におきましてもそういう配慮がなされておつたかどうか。遺憾ながら生産部の今回の措置にはそういうあたたかい親心がなかつた。何月何日に検査をどこで実施するから、それまでに帰つて来い、そうして検査を受けなければ棄権と見なす、そういうようなことで、沖合い百海里、百五十海里という沖へまぐろのはえなわ等に出かけておつた独航船が、その検査の日を限定され、その目に来なければ棄権と見なすというようなことによつて、操業途上においてたくさんの船が帰つて来る。これは現在水産委員会の専門員室で、百六十隻の独航船についてその間の事情を調査いたしておるのでありますが、遺憾ながら力の弱い小さな企業の独航船については、厳重なる、そういうようなきわめて独断的な、冷酷な措置がとられておる。ところが母船については、また別の観点からそういうぐあいになつておる。ここに非常な行政の不統一がある、筋が通つていないということが指摘されると思うのであります。これはおそらく長官のお気持ではないと思うのでありますが、今後こういう点はただちに是正されるべき問題である、こう思うのであります。数十隻の独航船漁業者が、そのために非常な大きな損失をしている。これはただに一漁業者だけの損失ではなくして、国家としても大きなロスであります。もつと温情ある行政をとるべきである。いずれ資料に基いてこの点は長官に御指摘をいたしたいと思うのでありますが、そういう点を私は申し上げておきたいと思うので上あります。
  44. 田口長治郎

    田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもつて通知申し上げます。散会いたします。   午後零時五十五分散会