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井上証人 ただいま高木
委員の御
質問の点は最も重要な問題でありますし、最も困難な問題でありまして、この
買受人が
代金の一部または全部を
委託会社またはその渉外員に渡しましたときに、それで
買受人が国に対する債務を弁済したと見られるかどうか、あるいはその金が私金であるか公金であるかという問題につきましては、私どもも二十五、六年ごろこの性格について非常に検討はしてみたのであります。それで、
預託金の発生時期発生原因、その後の経過等をつぶさに検討いたしてみますと、先ほど申しましたように、もともとは
委託会社の仲介によ
つて手付金を打
つた。今
ちよつと手元に持
つておりませんが、二十三年ごろ、これは都の
様式があ
つたのです。都ばかりでなく、各
委託会社もそれをと
つてお
つたと思うのでございますが、
買受人から、これも仲介によりまして五分の手数料を
委託会社がとるわけであります。そのときに、
買受人の中になかなか払
つてくれない人がある。それで、
委託会社として、やつぱり防衛上
買受人の方からそういう
事務を依頼するような
書類をと
つておる。その裏を見ますと、一応話がまとま
つたら三〇%の
手付を打つ、しかし、これは結局
決議書案を役所に出して、役所の決裁をまたぬくとまとまらぬ問題である、その決裁が下りなか
つたらそのままお返ししますというような文句を使
つております。だから、発生原因的に見ますと、この金は便宜上
委託会社が
買受人からと
つておる。その金が公金である、これを使
つたら公金の費消であるということは、
ちよつと
法律的には言いにくいのであります。二十五年の春ごろになりまして、だんだん各
委託会社もそういうことをや
つて、また役所もそれを了知して、場合によ
つてはそれは公知の事実、黙認の
状態にまでな
つてお
つたということも、これはいなめぬ事実だと思うのです。そうなりますと、非常に表見代理に近い
状態であります。また、
代金の一部を費消したということは、実際問題としては二十六年の半ばごろまであ
つたのです。惰性で、
整理々々と言いますけれども、なかなか
整理がつかない。前の
整理をやるためにあとのやつをとるというように、たらいまわしの
状態をや
つておりまして、二十六年ごろまであ
つた。役所としては、二十五年半ばころから、
整理、禁止ということにな
つております。それ以後たらいまわしをや
つたものは、どうも容認も黙認もない。実際上には
納入告知書を、それも非常に間違
つたやり方だ
つたのですが、人手も足りぬし、便宜上
委託会社あるいは
委託会社を通じてしよつちゆう出入りしておる仲介人を通じて
納入告知書を出してお
つたことがあります。それによりますと、
納入告知書面では、
日本銀行あるいは
国庫代理店、あるいは
郵便局とな
つてお
つたのです。もちろん役所でも分任収入官吏でないと
国庫金を
取扱えませんから、まして仲介人はそういう資格がない。しかし、
買受人の中にはそれをよく御存じで便宜上、しよつちゆう接触しているものでありますから、
代金を
国庫に納めて来いというので渡されて、仲介人は名刺の裏にでも簡単に書いておるような場合があるが、時期によ
つて違いますし、個々の場合をせんさくしませんと、表見代理かどうかということも非常にむずかしい。これは、極端に申しますと表見代理とも言い得るし、表見代理でないとも考えられるが、これは割切
つて考えることが非常に困難なものであります。近畿の場合は刑事問題で訴訟にな
つておりますが、これは結審にな
つてから一年になるが判決が下
つておりません。おそらくこれは非常にむずかしいものであります。新郊の場合は、これもやはり恫喝がありまして刑事問題になりましたが、これは業務上の横領にな
つております。この問題は非常にむずかしい問題で、なかなか割切
つて考えることはできないのであります。率直に申しまして、行政措置としては、とにかく国が被害にあ
つても、税金にかわ
つたものであるから、国の被害というものは忍べない。また
買受人の被害といたしましても、道義的に見て忍べるものではありません。何とかして早く補填することが
法律問題はさておき、行政上の措置としては次善の策ではないかということで、業務監理に移行して、できるだけ早く
国庫に入れようという措置をと
つたのであります。今の表見代理の問題につきましては、非常にむずかしい——表見代理の
時代も若干あ
つたのではないかと思いますが、しかし、発生原因的に、あるいはその後の
状態等から見れば、一概に表見代理とも言えないものであります。これにつきましては、
管財局長が法務府の民事訟務部長に照会しまして、訟務部長からも回答があ
つたのでありますが、その回答も、こういう場合にはこうだ、こういう場合にはこうだということで、なかなか割切
つた回答ではなか
つた。それで実際の場合、一線の現地においてそれをどう適用したらいいかということもなかなか割切
つて考えられなか
つたのであります。その点は非常に申し訳ないと思いますが、事実
関係がそのような
状態でありますから、まことにこの点は苦慮しております。結局、行政措置としては、早く補填することが
買受人に迷惑をかけない、あるいは国に迷惑をかけない措置ではないかということで、やむを得ない措置ではありましたが、そういうように
関東財務局としては措置をと
つてお
つたわけであります。