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1954-03-20 第19回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十日(土曜日)     午前十一時二十三分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 世耕 弘一君 理事 高木 松吉君    理事 田渕 光一君 理事 長谷川 峻君    理事 中野 四郎君 理事 小林  進君       天野 公義君    鈴木 仙八君       瀬戸山三男君    山中 貞則君       橋本 清吉君    古屋 貞雄君       佐竹 新市君    杉村沖治郎君       矢尾喜三郎君  委員外出席者         証     人         (法務省民事局         長)      村上 朝一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  保全経済会等特殊利殖機関に関する件     —————————————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 ただいまより会議を開きます。  前会に引続き、保全経済会等特殊利殖機関に関する件につきまして調査を進めます。ただちに証人より証言を求めることにいたします。  ただいまお見えになつておられる方は村上朝一さんですね。——あらかじめ文書をもつて承知通り、正式に証人として決定いたしましたから、さよう御了承願います。  これより保全経済会等特殊利殖機関に関する件について証言を求めたいと存じますが、この際証人に申し上げます。保全経済会全国に二百箇所以上の店舗を有し、出資総額約四十五億円、加入者は約十五万に達する特異な利殖機関でありまして、従来その業務運営についてはとかくの風評があつたのでありますが、昨年十月二十四日突如として全国一斉に臨時休業に入つたのであります。この休業に立ち至つた事情については世上幾多の疑惑と関心を有する向きもあり、また一方これら類似特殊利殖機関の累増を見た今日、これら特殊利殖機関業務運営実態を明らかにし、かつこれら特殊利殖機関に対する関係官庁の監督の当否について調査を進めることは、国の行政が適正にしてかつ能率的に行われているかどうかを監察し、もつて立法その他国政の審議に資するため行政運営上障害となつている各般の事情を総合的に調査しかつその責任調査する本委員会の使命にかんがみ、きわめて有意義なりと考え、本委員会は本件の調査をいたすことになつた次第であります。証人におかれては率直なる証言をお願いいたします。  証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なつております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親族等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者、及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者が、その職務知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。なお、証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものであるときは、その旨をお申出願いたいと存じます。  では、法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人村上朝一朗読〕    宣誓書  良心に従つて、真実を述べ、何事も かくさず、また面事もつけ加えないことを誓います。
  3. 塚原俊郎

    塚原委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  4. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。なお、委員長から概括的に証言を求め、ついで各委員から証言を求めることになりますから、御了承ください。  村上君の民事局長に御就任になるまでの経歴を簡単にお述べを願います。
  5. 村上朝一

    村上証人 昭和四年に東大法学部を卒業して以来、地方裁判所判事司法省民事局課長陸軍司政官東京控訴院判事最高裁判所調査官等を経まして、昭和二十三年二月に司法省が改組されて法務庁となりましたときに民事局長を拝命いたしました。爾来法務府、法務省機構改革が行われましたが、引続いて六年余り民事局長の職にあります。
  6. 塚原俊郎

    塚原委員長 保全経済会資金受入れは、相手方が不特定多数人であつて、しかもあらかじめ確定利益分配を約束している点、さらにあらかじめ期間を定めて元来の返還を約束している点、さらに契約の際の出資者意思等から判断するならば、出資ではなくて預金であると見るべきでありますが、村上君の御意見を伺いたいと存じます。
  7. 村上朝一

    村上証人 保全経済会匿名組合であるかないかということがよく議論されますときに、一つ保全経済会組織そのものについて言われていることがあるようであります。しかしながら、保全経済会事業方式は、伊藤斗福という人の個人経営でございまして、保全経済会という会社類似組織体があるわけではないのでございます。ところが、この保全経済会営業案内等を見ますと、商法匿名組合に準拠した全国的一大組織網を持つているというようなことが書いてございます。また、定款と称するものがございますが、これにも、本会は保全経済会と称し、商法第五百三十五条にないし第五百四十二条の規定に基き設立するという表現が使つてございます。あたかも商法の中に匿名組合という一種の社団法人的な組織が定められておつて、その組織ででき上つた一つ会社類似団体であるかのような印象を与えるのであります。従つて、多数の出資者の中には、そういう匿名組合という組織を持つた保全経済会契約をするというふうに誤解した人も多かつたかと思うのでありますが、申し上げるまでもなく、匿名組合契約と申しますのは商法で規定しております契約の一種でございまして、あたかも売買が売主と買主の契約であるのと同じように、匿名組合員営業者との間の契約なんであります。従いまして、保全経済会匿名組合であるということは法律意味をなさないと考えるのであります。  そこで、出資者一人々々と保全経済会すなわち伊藤斗福の間に出資をするについてできております契約法律上どういう契約であるかということは、これは契約解釈の問題になるわけでありますが、匿名組合契約は、申すまでもなく、匿名組合員が他人の営業出資をいたしまして、その営業から生ずる利益分配を受けることを約する契約であります。この匿名組合の本質的な要素といたしましては、法律的にはその営業営業者営業でありますけれども、経済的には匿名組合員営業者共同事業であるというところに第一の要点があるわけであります。また、従いまして、その営業から生じた利益なり損失営業者匿名組合員すなわち出資をした人々がわかち合うということが第二の要点になつておるのであります。  ただいま不特定多数人を相手としての匿名組合というのはへんではないかという御質問がありましたが、この場合契約はどういう趣旨のものであるかということを考えてみますと、一人一人の出資者保全経済会との間の法律関係、これがどうなるかということであります。たとえば、私が一万円の出資をして保全経済会に三箇月の約束で金を預けたといたしますと、私と保全経済会すなわち伊藤斗福との間にどういう契約ができたかということを考えなければならぬわけであります。私ども保全経済会実態につきまして詳細に調査いたしたわけではございません。後にお尋ねがありますればお答えいたしますが、大蔵省の方から若干の資料をいただきまして意見を聞かれましたので、その際研究いたしまして二、三答えたことがあるのであります。そのときに検討いたしました結果によると、まず一人の出資者保全経済会との間に経済的に共同事業を営む意思があつたかどうかということであります。この契約当事者意思というものは、本人に聞いてみない限り正確に断定はできないわけでありますけれども、いずれに聞いてみましても、その点のはつきりした認識はあるいはなかつたかもしれません。そういう場合に、共同して事業を営んでおつた実態があるかどうか。実態があるといたしますれば、そういう意味契約がなされたであろうと認めることが可能であります。そういう実態がないといたしますと、共同事業という意識はなかつたものと考えざるを得ないのであります。この大蔵省当局から見せてもらいました資料並びに当時すでに新聞紙上あるいは週刊雑誌等で私どもの知つておりました範囲の事実を総合して考えましても、この場合各出資者保全経済会との間に事業共同にするという意識があつたとは考えられないのであります。  次に、利益分配あるいは損失分担の問題でありますが、これは、ただいま委員長から御指摘の通り、最後には月二分の確定利率による利益配当を約束しておりますし、期限を三箇月として元本支払いを約束しておると見られるようであります。営業から生ずる利益分配するということが匿名組合契約要素であるといたしますと、確定利率による配当をし、元本をそのまま返すということは、少くとも通例考えられないことでありまして、その意味からも商法に定めた匿名組合契約をする意思はなかつた考えられるのであります。もしこれがかりに商法匿名組合契約であつたといたしますと、利益分配損失分担ということが非常に複雑にな法律関係になるわけであります。各当事者ごとに、営業年度ごとに、営業から生じた損益をまず算出いたしまして、その営業年度の始めにおける出資者出資額保全経済会すなわち伊藤斗福営業に充てておりました財産総額、それに伊藤斗福労務を評価した額、これを加えたものでありますから、最も多い時期にもし四十数億の巨額に達しておつたといたしますならば、極端な例を引きますと、一万円の出資者と四十数億の財産プラス労務評価額とのパーセンテージを出すわけであります。そうして初めてその営業年度における利益のうちどれが分配せらるべきものかという数字が出て来るわけであります。損失の場合も同様でありますが、しかもこの計算出資者ごとにしなければならぬわけでありますけれども。十数万の出資者ごとにそれぞれ契約成立の時が違い、契約の満了する時期が違うのでありまして、これが全国各地にあります支店、出張所を通じて毎日出資者の出入りがあるということになりますと、かりに物理的に可能であるといたしましても、損益計算をし分配率を算出することは事実上ほとんど不可能に近いと言つていいと思います。また現にそういうことをやつていた形跡は全然認められないのであります。  従いまして、当事者間の意思はその点におきましても匿名組合とする意思ではなかつたというふうに私ども考えたわけであります。  それでは、これは匿名組合契約でないとすれば、どういう契約になるかという点でございますが、確定の率による利息支払い一定期限元本を返すという場合におきまして、ことにこの契約当事者の目的は資産を保全経済会に託して利殖してもらうということにあつたといたしますれば、まず考えられますのは消費寄託契約、すなわち普通に言われます預金であります。それからまた信託ということも考えられないわけではないのでございますけれども、普通は、信託信託財産の運用による損益の効果は受益者に及ぶわけでありまして、この一定限度まで利益を保証し、その限度以上は報酬として受取るということは信託会社としてきわめて異例でございますから、むしろ預金考える方が当事者意思に合うのではないか。実は、最初どものところで検討いたしましたときにも、匿名組合と認めるべきではないという点につきましては民事局内の数名の諸君もほとんど異論がなかつた。一人も異論がなかつたのでありますが、それではどう見るかという点につきまして、初めのうちは信託と見るべきではないかという意見が多かつたと思います。しかし、いろいろ検討いたしました結果、預金と見る方がすなおな見方であろう、当事者意思預金解釈する方がよかろうということで、ずつとそういうふうに見て来ておるわけでございます。  もつとも、先ほどちよつと申し上げましたように、これは限られた範囲資料を検討いたしました結果の結論でございまして、すべてにわたつて責任を持つて調査したものではございませんので、匿名組合でないという断定は今まだいたしておりません。与えられた資料範囲内ではそう考えられる、匿名組合でなくて預金その他の金融法規違反疑いがあるという程度の意見を持つておるわけであります。なおまた、匿名組合方式による利殖機関と言われておりますものは多数あるのでありますが、その中で私ども資料を得て検討いたしましたのが保全経済会だけでありまして、それ塚外のものにつきましては全然資料も見ておりませんので、その点御了承願います。
  8. 塚原俊郎

    塚原委員長 そういうお考えであるとすれば、昨年の三月四日に大蔵委員会河野銀行局長政府の一致した見解であるとして説明されたことは、これは御承知ですね。その内容を御承知ですね。
  9. 村上朝一

    村上証人 承知しております。
  10. 塚原俊郎

    塚原委員長 それは法務省との完全なる同意のもとになされたものとは認めがたいものもわれわれは感ずるのですが、村上君の見解はいかがでしようか。
  11. 村上朝一

    村上証人 お許しを得まして、それまでの経過を簡単に申し上げたいと存じますが、初めて私がこの問題について意見を聞かれましたのが、たしか昨年の一月ごろと記憶いたしますが、あるいはもう少し早かつたかもしれません。一昨年の十二月か昨年の一月ころでございます。そのときに、大蔵省事務官の若い方が二、三人見えまして、私どもの方で商法の方の仕事をしております吉田参事官会つてこれを聞いたのでございます。相当世間で問題になつていることでもありまするし、吉田参事官も、一存では答えないで、私のところに一緒に参りまして、私もそのときに一緒資料を見、一緒説明を聞いたのでありますが、即答をいたさず、二、三日民事局内でほかの数人の意見も聞きまして結論を出して、吉田参事官を通じて大蔵省の方へ回答したのでございます。そのとき大蔵省に伝えました私の意見の要旨は、先ほど申し上げたように、匿名組合とは認めがたい、むしろ信託預金か、金融法規違反疑いがあるという意見であつた、さように思います。その後三月四日に銀行局長政府部内の統一した意見として答弁したいということで、関係当局打合せがあつたのでありますが、そのとき私は打合せの席には出ておりません。ただ、吉田参事官が出ておつたようであります。刑事局からも出ておつたようでありますが、吉田参事官及び刑事局課長からあとでそのときの様子を聞きますと、このときの答弁内容は、保全経済会だけについて言つたのではなくて、いわゆる匿名組合方式によると称せられる利殖機関一般についての答弁であるということであつた、それから、政府部内の統一した意見ということになりますと、こまかい点に至りますと先ほど申し上げたように必ずしも一致していなかつたわけでありますけれども政府部内の意見の最大公約数と申しますか、統一した意見として述べるということになりますと、匿名組合契約でないとは断定できないということにならざるを得なかつた、そこでそういう趣旨で統一してもらうことになつたというふうに吉田参事官からは報告を受けておるのであります。匿名組合と認めるべきであるというふうに意見が一致したということは私ども全然想像もしていなかつたわけでございます。私の意見吉田参事官もまつたく同意見でございまして、そういう意味で一致した意見というものは出なかつた、かよう考えております。
  12. 塚原俊郎

    塚原委員長 この点についてはまたあと委員諸君からいろいろ御質問があると思いますが、保全経済会の問題が国会で論議されて、政府対策を要望されたのは、二十六年の七月ごろからですが、大蔵法務両省意見の一致を見ないままに、長期間そのままにほつておかれて、この間に保全経済会とかあるいはそれに似通つた利殖機関が非常にたくさんの社会悪を犯しておるということは否定できないことですが、こういつたことに対して村上君はどういう責任をお感じになつておられますか。
  13. 村上朝一

    村上証人 先ほど申し上げましたように、私がこの問題について意見を申しましたのが二十七年の十二月か二十八年の一月でございまして、それまでに、大蔵省金融行政立場から、また法務省刑事局刑事行政立場から、それぞれ検討されて協議を続けて来られたようであります。私が意見を聞かれたのは大分あとになるわけでありますが、その後も、これは大蔵省だけでなく政府部内各局必ずしもはつきりした断定をする部局はなくてずつと来たわけでありまして、もつと早い時期に、もし金融法規罰則が軽過ぎて取締れないということならば罰則の改正をする、あるいは現在の金融法規のわくでは取締れないから新しい立法が必要だということならば新しい立法をする、あるいはどうもはつきりしなくて取締りに躊躇せざるを得ないということならば、いずれにしても躊躇なく取締れるような禁圧的な立法をすべきではなかろうかと考えるのであります。こういう事業が野放しにされて禁圧されないということが悪いことであるということは、政府部内の一致した意見でございました。何らかの立法対策をとるべきであつた考えます。  それから、私自身といたしましては、実は私の仕事として、国籍、戸籍、登記、供託その他いろいろ民事行政行政事務を担当しておりますほか、民法、商法民事訴訟法等立案仕事もしておりますし、各省立案の法案で民事関係あるものについての協議を受けるというようなことが設置法上の職務とされておるわけでありますが、そのほか、各官庁民間団体会社あるいは弁護士その他各方面から、非常にたくさんの法律問題についての意見を毎日聞かれておるわけであります。少い日でも数通、多いときは二十、三十という質問を受けるわけであります。多くは課長参事官のところで処理するのでありますが、特に重大な問題あるいは社会的に影響の大きいような問題につきましては、私のところへ相談に参りまして意見を求められるわけであります。実はこの問題もそういう法律問題についての意見の聞かれた一つの事例として、ただ、社会的に影響の大きい問題であるということで、特に数名の者を集めて会議までいたして意見を述べたのでございますけれども、今から考えますと、当時大蔵省ばかりでなく政府部内でどうも判断に迷つておられたよう考えられます。もう少し早い時期に積極的に私の方から資料を要求して、私の意見を必要があれば直接関係当局責任者会つて説明に当ればよかつたんではないかという反省をただいまはしておりますけれども、はたして説明をしても成功したかどうか、それについてはわかりませんけれども、事が重大でございますから、私自身の行動についても、自分の職務権限ということとは別に、政府に職を奉ずる一人として、もう少し積極的であつてよかつたのではないかというふうに反省します。
  14. 塚原俊郎

  15. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 今の局長の御説明で大体法理論はわかつたのですが、昭和二十七年の十二月か二十八年の一月に御相談があつたという証言がございました。     〔委員長退席田渕委員長代理着席〕  ところで、昭和二十七年の七月の十八日に、法務省会議室法務省並びに最高検、高検の検事さん、それから地検、国警警視庁が寄りまして、特にこういうぬえ的な利殖機関に対する政策の協議をされて、そのとき話題の中心になつた問題は保全経済会であつた、これについて国警並びに警視庁から相当強い意見が出て、これをこのまま放任しておくことになると大きな社会問題を引起す、引起したときには責任を問うてもしかたがないので、今ここで確たる態度をきめなければならないという、こういう会議の行われたことは御存じありませんか。
  16. 村上朝一

    村上証人 これは、ずつと後になつて、ここ二、三日前に耳にいたしましたので、こういう会議がありましたことは、私、当時存じませんでした。
  17. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 法律上の解釈で、どなたか証人以外で証人と同じ仕事をやつておられる方が、法務省民事局解釈を求められたということはありませんか。それがないと、このとき法律上の意見確定しないはずなんです。検察庁では刑事方面からお考えになるので、これが匿名組合であるかどうか、あるいは消費寄託契約であるかどうか、あるいは無名契約であるかどうかということは、おそらく民事局に御相談をしなければきまらない問題と思うのですけれども証人以外の方が相談か受けた事実があるかどうか。あつたとすれば、それに対する意見を述べられておるかどうか。そういうことはお聞きになつておりませんかどうですか。
  18. 村上朝一

    村上証人 その会議の席に私どもの局の者が出ておつたということは聞いておりません。匿名組合であるかどうかという問題はもとより民事局の問題でございますけれども刑事事件を処理するにあたりまして、ことに財産犯罪でございますと、民事法規解釈ということが常に前提になるわけでありますが、それらの民事法規解釈前提としての財産犯罪取締り、検挙あるいは刑罰法規解釈というような問題についてその都度私どもが関与しておるわけでございませんので、通常は刑事局刑事局責任で問題を解決しておるようでございます。
  19. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 御承知通り、これは相当重大な問題でありまして、当時警視庁に在職しておられました養老さんからは、どうしてもこの際これを積極的に処置しておかなければ、社会問題が起きてから騒いでもおつつかない、だから今積極的にやるべきだという強い意見が述べられたらしいのです。そうしますと、この当時刑事局にしても民事局の方に何か相談がなければならないと思うのですが、民事局の方に相談せずにかつてにこれがきめられておるということになれば、非常に取扱方が粗漏であつて、しかも警視庁からは非常な重大な案件であるという御主張が行われておるにかかわらず、法務省の扱いが非常に手落ちだつたと思うのでございます。やはり二十七年十二月あるいは一月ごろに証人のところに相談に参りましたのが具体的な問題として一番最初であつたということになるでしようか。
  20. 村上朝一

    村上証人 それは、先ほど申し上げましたように、二十七年の十二月か二十八年の一月ごろでございます。そのときが私が具体的に聞きました初めでございます。実は、その前に私の方の商法関係を担当しております吉田参事官があるいは意見を聞かれておるのではないかと思いまして、一昨日でしたか吉田参事官に確かめたのでありますが、吉田参事官としても、具体的な資料を持つて来て意見を聞かれたのは、私が聞かれたとき同時に聞かれたのが初めてであつた、それまで、ほかの部局なり省の方から、抽象的な法律問題として、たとえば確定利率による利息支払いを約束しておつて匿名組合契約と見ることができるかどうかというような、抽象的な法律問題としては聞かれたことがあつたということは言つておりました。
  21. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこで、進んでお尋ねしたいのは、先刻委員長からのお尋ねのときに、やはり証人の方といたしましては大体保全経済会を対象としてお考えになられた、そこで集められた証拠によつて判断をするならば、商法にいう匿名組名でなくして、むしろ消費寄託契約考えられる、少くとも匿名組合とは認めがたい、こういう結論になつたらしい。そこで、先日来大蔵省意見を聞きますと、河野銀行局長は、これとはまつたく正反対の、うらはらの、匿名組合にあらずと断ずる根拠はないものである、こういうふうにどこまでもつつぱつておるわけです。従いまして、これはほとんどうらはらになりまして、反対になるわけであります。ただいまの証言によりますと、吉田参事官が行かれて、そうして政府の統一された意見を発表するための会議には列席された—。そうされると、吉田参事官からはおそらく民事局長が今おつしやつたよう意見を述べられたということは想像されるわけであります。少くとも匿名組合ではないんだ、こういうことになつておりますから、その意見が述べられたと思うのですが、その述べられたときに、ただいま証言されたように、大蔵省においての関係当局相談会では、逆に、匿名組合にあらずとは断じ得ない、こういう結論政府の統一した意見として発表されておるわけであります。これに対して吉田参事官から何かあなたに御報告がございませんでしたか。その当時、と申しますのは、この意見が発表されたのは昨年の三月四日になつておるが、その前にあなたの方では今言つた逆の判断をされておる。かよう関係でありますと、私ども常識で考えますれば、少くとも大蔵省よりも法務省意見法律的な解釈としては尊重されなければならぬ建前に置かれておると思う。それなのに、法務省と逆の意見政府の統一意見として発表されておる。こういうことになりますと、何かそこにいきさつがあつて、そしてこういうことに押しつけられたとかなんとかいうような報告が局長のあなたのところにございましたら、その大略をお知らせ願いたい。
  22. 村上朝一

    村上証人 ただいまのところ——吉田参事官から当時受けました報告の内容は、政府部内の統一した意見としてはいずれとも断定できない状況であるということ、——これは匿名組合方式によつて行われておりました利殖機関一般についての判断でございまして、民事局はむろんのこと、刑事局も、少くともほかの諸機関については調査ができていないというようなことで、結局関係部局の統一した意見と申しますか、どこの部局にも通用する意見といたしましては、匿名組合でないとは断定できないという結論になつたんだ—。もつとも、私どもの気持からいたしますと、むしろ逆に匿名組合であるとは認められない、確認できないという程度に言つてもらいたかつたわけでありますけれども、これを統一した意見とするために、いずれとも断定のできないよう趣旨の表現になることは、これはやむを得ない、かよう考えておつた次第でござまいす。
  23. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこで、法務省意見でありまする消費寄託契約だということになれば、これは預金ということになり、銀行法違反で、犯罪の取締りの対象になるわけなんですね。法務省でその点について積極的意見がなくて、どうにもならなくて、大蔵省の方でそういう意見が出て来て、金融行政の面においてはこれはどうもまずい機関だ、将来大きな社会問題でも引起しては困るから、あらかじめ予防の立場から、多少は無理であつても、積極的の意見を持つてもらいたいという態度を大蔵省がとるなら、これは私ども納得が行くわけであります。それを逆に言つているわけですね。そこで、私どもの方から考えますと、大蔵省の態度に対してわれわれ非常に疑問があつて、本委員会でも調べなければならぬということになつて来たのですが、ただ、その当時の状況はそのくらいのことでございましたでしようか。ほかにございませんでしようか。私承りますと、一昨年の七月十八日の会のときにも、刑事局なり警視庁では、今の法務省のあなた方の御意見の、消費寄託契約である、従つて預金である、少くとも預金類似行為であるという点までは認定されておるといたしますと、やはりこれは銀行法違反で取締られるわけです。その当時取締つていただけば、そういう態度をとつていただけば、今日非常に零細な国民に被害を与えずに済んだ。こういうことは現在から推理いたしますと確定的な問題だと思われるので、しつこくここのところを聞くのですが、その当時、吉田君じやなくて、何かはかに法務省大蔵省の態度との関係でいきさつがありましたかどうか。その点はどうなんでしよう。  実は、法務大臣が以前法務委員会に参りまして、両者の意見がどうも合わなかつた言つておられるのです。決してその当事統一した意見がきまつたとは言わずに、大蔵省法務省意見が対立して、意見が一致されなかつたので、法務省としては今日かような問題を引起して申訳ないということを、くれぐれもすなおに法務大臣はあなたもお聞きの通り述べておるわけです。ただいまの河野銀行局長の説によると、そういう政府意見だといつて押しつけられて来ておるわけです。おそらく、この点は、保全経済会という確定されたものでなく、その他幾多の類似金融機関という点で意見の統一があつたというふうに逃げられておるように思われるのです。ほかのものは匿名組合にあらずと断ずるに由ないというように、対象になりましたものは保全経済会以外の一般の金融機関、こうおつしやつておりますけれども、ほかの機関になりますと、なお保全経済会よりもあやふやで、匿名組合でないことがはつきりしているわけなんです。この点は、まことにしつこいようでございますけれども法務大臣の説明と河野大蔵銀行局長説明との間に食い違いがあり、きよう証人証言でも完全に一致したとは言えないわけです。そこに私ども疑いを持つので、何かその辺の事情がございましたら、おわかりでなければいいですが、ありましたら、しつこいようですけれども、詳しい御説明をお願いしたい。
  24. 村上朝一

    村上証人 二十七年七月十八日当時は、私ども相談に関与しておりませんので、刑事局なり、国警警視庁あたりでどういう意見であつたかということも存じませんし、また大蔵省が当時どういう意見を持つておられたかということもまつたくわからないわけでございますが、私の推測するところによりますと、大蔵省当局も相当あとまで迷つておられたのではないか、迷つておられたればこそ、二十七年の暮れあるいは二十八年の一月ごろになつて、私の方にも意見を求められたのではないかと思うのであります。これは民事関係があるということで、私どもの方の意見を求められたのであるかと思いますが、そのほか、かりにこれが金融機関法規違反だというようなことで、何らかの行政処分をして、それが将来訴訟として裁判所の問題になるというようなときには、これは訟務局が法務大臣のかわりに法廷に立つわけでありまして、訟府局あたりの意見はあるいは聞いておるかもしれませんし、また、政府部内力各省の法律問題に関する意見が食い違つたようなときに、政府法律顧問という立場で各大臣に助言勧告をするという職務は、ただいまは内閣法制局長官の職務とされておりますが、昭和二十七年の七月までは法務府の法制意見長官の職務でありました。法制意見第一局というのがその仕事を専門にやつてつたわけであります。二十八年以後内閣法制局へ移つたわけでありますが、現在もその職務はとつているわけであります。大蔵省なり刑事局におかれまして、法制局の方の意見もあるいはお聞きになつたかもしれません。そういう政府部内、各方面意見をお聞きになつて大蔵省としては、私どものところにおいでになつたころはまだ非常に迷つておられたような感じを受けるのでございます。
  25. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 かように詳しく御説明を承るのは、それがために、保全経済から二十五年度あたりの税金をまだとつていないのです。この点についても問題になつておるわけなんですが、今の御説明でよくわかりました。そうすると、当時は法制局で大体まとめた意見が進言されておつたのですか。
  26. 村上朝一

    村上証人 法制局の職務といたしまして、各省大臣に対して法律問題に関する助言、勧告ということが官制上与えられておるということを申し上げたわけでありまして、法制局にはたして意見を聞きに行かれたかどうか、法制局がどういう態度をおとりになつたかということは、私よく存じません。
  27. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そうしますとこれはやはり、犬養法務大臣からおつしやられたように、法務省刑事局にいたしましても、大蔵省にいたしましても、少くとも法制局に相談に行かれて三者合体の上で相談されて最後の決定をきめるという措置をとられずに、先刻証言されたようなことで、大蔵省相談されたものを政府の統一した意見なりとして発表されたということになるのでありますか。そうなると、やはり大蔵省にいたしましても法務省にいたしましても、国民に対して相当大きな責任はある、こういう結論になるわけでございますね。もつと早く各省が責任を持つて積極的にこの問題の解明について御熱心になれば、かような大きな社会問題を引起さずに済んだということを言えるとなると、国民に対しては相当大きな責任を負わなければならぬ、かよう結論になると思いますが、いかがですか。
  28. 村上朝一

    村上証人 あるいは結果におきましてそういうことになるかとも存じます。実は、私ども民事に関する法律問題をしよつちゆうやつておりますので、割合に早く結論を出しまして、その結論をずつと今でも正しいと思つておるのでありますが、どういうものですか、ほかの部局では非常に迷われたという感じを私持つております。決してなおざりにしたというのではなくて、長い間判断に迷つておられたというような感じを受けるのであります。なるほど、いろいろな資料を見ますと、資料の一局部にとられますと本体を見失うのではないかと思われるよう資料もあるわけでありますが、全体を総合して本体を把握するという態度で見ましたならば、先ほど私が申し上げましたよう結論になる障害は一つも今まで見た資料の中ではないと考えます。責任問題としてお聞きになりますと、要するに、迷つたということは、一面におきましては非常に良心的にものを扱つたということにもなるわけでありまして、軽率に間違つた判断をされるよりは、いろいろ各方面意見を聞いて迷われたということは、お気持としては私どももよくわかるわけであります。
  29. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そういうふうに非常に謙遜されますが、しかし、われわれから申しますと、たとえば犯罪予防の措置をとらなければならない。それから徴税を三年も四年も延ばしておくのは大きな問題である。この問題は、非常に責任を持つて、しかも真剣であるならば、私はとつくに片づいていると思う。おそらく証人証言をされたように、私どもがどこをどう見ましても、これは消費寄託契約だと断ずる以外にない。実は、法務委員会におきまして、保全経済会の問題がかようになつてから、出資者を調べてみましたが、大半が預金だと言つておるのです。さよう民事局で御判断になりました御判断が正しかつたということは現在では大体想像ができておる。従いまして、私どもは、徴税の対象を早くきめねばならぬ、また犯罪予防の立場からも、大蔵省法務省の両方が三年もかかつてこの問題の解決ができぬということは、涜職の責任を感じなければならぬ、私はこう考えて、——いまさらあなた方の方において責任を負えとか攻撃するのではありませんが、今後の日本の行政運営の上において、われわれはさように断じて、しからばあとの掘り下げた意見をどうするかという、はつきりしたものをあらためてわれわれはつくりたいというのでお願いしておるわけです。それで、証人も謙遜なさらずに、率直に言つていただきたい。この問題についてはやはり相当責任を負わなければならぬ立場に置かれておるのだということをお考えになられているかどうか、その点を承つておきたい。これは記録に残しまして、その座おいてわれわれは行政監察委員会の職責を果したい、こういうので私しつこくお聞き申し上げるわけで、責めるわけではないのです。
  30. 村上朝一

    村上証人 先ほどもちよつと申し上げましたように、この問題につきましては、私は何らかの行政処分をあるいは立法措置を講ずるということにつきまして、金融行政の面からは大蔵省責任において匿名組合であるかどうかという判断をなさるべきである、また犯罪の検挙、罰則というよう意味からは法務省刑事局において、その責任において調査し判断されるべきであるという建前をとつております。私としましては意見を聞かれたときに意見を述べるという消極的な態度で参つたのでございます。通常の場合はそれでいいといたしましても、これだけの大きな問題で、多数の国民が被害を受ける問題でございますので、ただいま反省いたしますと、自分の職務権限ということだけにとらわれないで、たとえば犯罪検挙の面でありましても民事上の私の経験なり知識がもし役立つといたしますならば、積極的にこちらから進言をすればよかつたというふうには考えております。
  31. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 終りました。
  32. 田渕光一

    田渕委員長代理 佐竹君。
  33. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 民事局長が率直に、この問題についてこういう結果を来したことは非常に遺憾であつたという意を表されたのは、私は非常にいいことだと思うのです。今まで銀行局長あるいは東京圏税局長あたりを呼んでも、そのことを一つもここで表明しない。その点については私はいいと思うのでありますが、ただ一点お聞きしたいのは、銀行局長が、昨年の三月四日、意見の食い違いのあつたものが統一ができた、それまでにしばしば会合して、あなたのところも、刑事局も、大蔵省の銀行局も、数十回にわたつて会合して、三月四日の意見の統一を見た、こういうことを言つているのであります。その数十回にわたるところの会合をしなければ、この問題について意見の統一ができないということはどういうことが原因であるか、そのことをひとつ。     〔田渕委員長代理退席、委員長着席〕
  34. 村上朝一

    村上証人 この問題について数十回の会合が行われたということは、私は承知いたしませんでした。私ども吉田参事官が何回か会議に出たようには聞いておりますけれども民事局としての意見をきめまして、これを申し述べたのが、先ほど申し上げました二十七年の十二月か二十八年の一月ごろでございましたので、それまでは民事局意見というものは外部へ申してはいないかと思います。何回会合をやつて結論が出なかつたという原因をどう思うかというお尋ねでございますが、先ほどもちよつと申し上げましたが、実は私も十分了解できないのでありますけれども、各省ともこの問題についての判断には非常に迷つておられた。私の想像では、いろいろな資料を局部的にとらえてお考えになりましたので迷われたのではないかというふうに考えるのです。私どもは、その点では大胆と申しますか、与えられた資料だけで数日で実は結論を出したのでございまして、当時としては、これは匿名組合でないという意見は私ども以外の部局ではどこも積極的には主張していなかつたのであります。非常に迷つておられたような印象を受けております。その迷われた理由は実は十分わかりませんけれども、ちよつと先ほど申し上げたような、局部的な資料にとらわれ過ぎたのじやないかというふうに私は感じております。
  35. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 慎重な態度をとつたのでちよつと判断に迷つたということをあなたは言われておりますが、大体日本におけるところの官僚というものは、案外早く結論を出す場合もあるのですが、こういうような大きな問題になつて来るとなかなか判断に迷うといつて逃げられる点がある。たとえば貿易の点なんかにおいても、いわゆる早く結論をつけて、得々と書類で片をつけて、そのあとを見るとどうか。莫大なもうけを財界の方がやつてつたり、あるいは政界の方にばらまかれたり、今度のようなことが起きておるわけなのです。こういう問題は、早く判断をつけ結論をつけることによつて、国民は迷惑を見ない。それを逆に、判断をつけるに苦しんだと今証人は言われますが、そういう判断をつけるに苦しんだということは、法的な解釈であるとおそらくあなたは答弁されるでしようが、法的な解釈つて、しろうとが見てもこれは金融法規の違反です。だれが見てもはつきりしておる。こんなでたらめなことはありはしない。これは保全経済会だけではありません。町のやみ金融、株主相互金融にいたしましても、また現在それに類似したところの会社が金を多く集めておるところがある。また私がここで話しておる瞬間でも迷つておる者がある。それは金詰まりで苦しいから、何とかして一時の金をこしらえたいからである。それが積り積つて、本委員会におけるところの銀行局長の御証言によりますると、国民が三百八十億も迷惑をこうむつておる。これは判断を逡巡されるからこういう結果になる。その判断が迷つたということは、単に法規上における解釈の問題ではなくして、いわゆる背後に何か政治的なものが動いておつて判断に迷つたのではないか、かよう考えるが、証人はどう考えるか。
  36. 村上朝一

    村上証人 判断に迷つたのだろうということは私の推測でございまして、私自身は少しも迷わなかつたのでございます。ただ、判断に迷つた理由が政治的な圧力その他外部の力によつたのではないかということですが、実は、私たち関係当局責任者とこの問題についてたびたび顔を合せましたのは保全経済会休業後でありまして、古いことは存じませんけれども、私の受けております印象から申しますと、そういう外部の圧力があつたということは全然考えられないのでございます。現に、役所の者でなくても、法律をやつた人でも、この問題について意見を聞かれますと、資料を見たり教科書をあけてみたりして、かえつてますます迷うことがあるのであります。かえつて法律を知らない人の直感が当つているということはよくあることなのであります。局部的な資料にとらわれて迷つたのではないかと私は推測申し上げたのであります。
  37. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 関連して。私の伺うのは、証言ではなくして、学問上のことになるのだろうと思うのですが、先ほどおつしやられました、匿名組合としてどうも言いかねるということについてのお話のうちに、つまり組合員の方に共同事業をするという認識が欠けておるのじやないか、いわゆる匿名組合としますと民法の組合の六百六十七条が適用されることになるので、共同事業をなすということが組合員に認識されなければいかぬというふうに先ほどお話があつたように聞いておつたのですが、私は、保全経済会が金融事業をやつているという事業に対する認識は組合員にあつたのではないかと思われる点が、一点証人に伺うところなのです。  それから、いま一つは、匿名組合利益分配するということになつておるのにもかかわらず、元本を返すということになつておるから、それが匿名組合としてどうも考えられぬというふうなお話であつたようなんですが、ただ、ここに元本の返還契約というのは、これは匿名組合契約期限というふうには考えられないかどうか。これは単なる参考に伺うのですが……。  そかれら、いま一つは、利益計算上において科学的に困難であるということを先ほどおつしやられた。そうだろうと思うのですが、しかし、法の組合の中から行くと、そういう計算困難のようなことは、法文の上からも、終身的組合員がある場合においては云々というようなことが書いてありますから、そういうような点から言つてもおよそ想像されることになつておるのだが、ただそこで、今度はあらかじめ利益分配を約束しておる。匿名組合利益がなければ分配しなくてよろしいということになつておるのですが、あらかじめ前に利益分配することを約束しておることが匿名組合たるところの性質を阻害するものであるかどうか。匿名組合の法文上正面から見ると、こういう点にいろいろ疑点があるのです。利益分配すべきものであるにかかわらず、元来を返すということになつておるから、それは匿名組合と違うのだ、こういうように言い得るかどうか。なお反面から考えると、終身組合員があるような場合においては営業年度の年度末において契約を解除することができるというような規定もあるのですが、これが法律立場に立つて匿名組合であるか匿名組合でないか、一種特別な無名契約であるかということについては、いささか疑問を持つておるのですが、そういうことについていま一度御意見を伺つておきたい。  あなた方の方で判断が迷つたということですが、まつた法律を少し学んだ者は迷うのでありまして、その点において私ども法律的に見ると迷わざるを得ない点があるのですが、はたして今のようなことが匿名組合の性質を根本から抹殺するようなことになるかどうかということについていささか疑問もあるのですがいかがですか。
  38. 村上朝一

    村上証人 非常にこまかい議論になりまして恐縮でございますが、共同事業であるから十数万の出資者全部を一つの単位といたしまして、それと保全経済会すなわち伊藤斗福との間に共同事業があるかということになりますと、伊藤斗福のやつております事業そのものは出資者全体との共同事業であると見られるかのようにも考えられるのでありますが、この場合出資者相互の間に何らの法律関係がないわけであります。まつたくこれはばらばらで、契約存続期間もばらばらであります。相互に契約その他の行為があつたわけでもございません。一人々々が保全経済会とだけ契約しておる。一つの見方は、最初営業者匿名組合員との間に一つ匿名組合ができる、そこで第二の出資者匿名組合員として加入して行く、逐次そういうふうにして入つて行くこともできるのではないかということも一応考えられますけれども、すでにある匿名組合関係に新しい出資者が入つて行くためには、当事者双方との合意が必要であります。一個の契約でありますから、そうした期間は全部の出資者について共通でなければならぬわけであります。そういうふうなことで、全部を一括して保全経済会との共同事業というふうに見ることは困難ではないか。それから元本を返す。あるいは確定利益分配をするからということが必ずしも匿名組合契約の本質に反しないのではないかということでございますが、匿名組合契約は通常は利益及び損失をわかち合う、一緒事業をやつているわけでありますから、もうかつても損をしてもお互いにそれをわかち合おうというのが原則であります。ただ、出資者を得安くするために損失だけは営業者が全部かぶるという特約も行われる例がだんだん出て参りまして、損失分担をしないという特約ができるという解釈になつておりますが、少くとも営業から生じた利益をわかつということが本質的な要素なのであります。確定利益元本とを返すということは、それ以上に利益があつてもわけないということなんであります。一定の金額だけがもどつて来るということでありますれば、これは匿名組合契約と見ることは無理ではないか、かよう考えております。
  39. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 そこで、最後に一点お尋ねしておきたいのでありますが、あなたの方は、早く判断をして結論をつけるべきだ、こういうふうに考えた。そうしますと、この判断に迷つたというところにこういう責任問題を起した。それでは、大蔵省が長い間この判断を迷つた結果こういうことになつたと解していいのですかどうですか。
  40. 村上朝一

    村上証人 先ほど来、問題になつてから三年もたつのに結論が出なかつたのはどういうわけかということをお聞きになりましたので、私自身のことならば証言できますけれども、ほかの人がなぜ結論を出さなかつたかということは証言できませんので、迷われたのであろうという推測を申し上げたのでございます。証言という意味で申し上げたのではありません。
  41. 塚原俊郎

    塚原委員長 中野四郎君。
  42. 中野四郎

    ○中野委員 大体今度の問題は、御承知ように、関係官庁が怠慢の結果全国数十万の国民にこのような甚大な被害をかけたかどうかということをこの監察委員会で監察するわけなんですが、先ほどから村上さんの御証言を伺つておりますと、昨年の十二月四日でございましたか、お伺いいたしまして、いろいろと御懇談をした節の御意見とまつたく同じでありまして、まことに明快な御答弁で、満足をしておることは各委員と同様であります。そこで、結論といたしますと、刑事局が法的な処置をとることに怠慢であつたか、ないしは大蔵省がその取締り対象としての特殊金融機関に対するところの処置が怠慢であつたか、いずれかその非が明らかにされなければならぬと思うのであります。というのは、村上さんのお話は、きわめて婉曲に局部的な資料に迷つたのではないかという自分の御意見をつけられて、しかも良心的に取扱いをしようとすればこれもやむを得ないのではないかという御意見。あなたの御意見としては私は伺うことができるです。しかし、今日の結果を見た現実問題としましては、それをそのままに了承するわけには参らない。そこが私らの問題点なんです。  そこで、二、三さらに伺つておきたいと思いますのは、先ほど委員長質問の際に、大蔵省より若干の資料をいただいて意見を述べたのであるということをおつしやつていらつしやる。私は、法務省全般としては、単なる大蔵省の若干の資料によつて調査をせずに、いま少し積極的に刑事局なりあるいは検察当局なりが適当なる資料を集めて調査をしておくだけの義務はあると思うのです。それはあなたに申し上げてもやむを得ないことでありますが、この若干の資料をあなたの方で入手されたというのはいつごろであるかということが、大蔵省がこの問題に積極的に誠意をもつてつてつたかどうかという点を判断するのに必要な点だと思います。どの程度の資料であつて、いつごろあなたの方に提出したかということを御答弁願いたいと思います。
  43. 村上朝一

    村上証人 入手いたしました時期は、初めて意見を尋ねられました二十七年の十二月か二十八年の一月ごろでございます。そのときに入手いたしました資料は、私がただいま記憶しております範囲では、営業案内、匿名組合加入申込書、出資証書、これはプリントした写しでございます。その他国税局で調査されましたガリ版刷りのものも入つていたと思いますが、その程度だと思います。
  44. 中野四郎

    ○中野委員 それから、第二点は、この利益分配の点ですが、民事局解釈は、先ほど伺つた通り金融法規違反疑いがある、言いかえれば消費寄託契約信託か、預金考える方がピントが合うのではなかろうかという御意見でございましたが、今日においても法務省民事局長としてこの見解のもとに大体銀行法違反の疑いがあるという見解を持つておいでになるかどうか、この点を伺いたいと思うのです。
  45. 村上朝一

    村上証人 先ほど申し上げましたように、私、聞かれましたのは、匿名組合と認めるべきかどうかという点に主眼がございましたので、匿名組合と認めるかどうかを十分検討いたしまして回答いたしたのでございますが、それならばどうなるかという点についても、大蔵省から意見を聞かれました当時検討いたしました。そのときは、信託ではないか、——信託といたしますと信託業法違反でございます。信託ではないかという意見が多かつたのですが、その後、これは匿名組合でないと考えるということを大蔵省に回答いたした後になりまして、やはり預金すなわち消費寄託と考えてみる方がすなおな見方ではないかというふうにかわつたのでありまして、現在もさよう考えております。
  46. 中野四郎

    ○中野委員 そうすると、十二月四日に私らがお目にかかつたときには、ここに記録がとつてありますが、大体銀行法違反であるという見解局長はとつておいでになりましたが、今日でも銀行法違反という考え方を持つておられるかどうか、伺つておるのです。
  47. 村上朝一

    村上証人 実は、銀行法違反ということになりますと、これは罰則の適用という問題がただちに起きて来ます。罰則に触れるかどうかという解釈、これは私の方よりも職務上は刑事局の方においてその責任において判断すべきことでありますので、私から法務省民事局長としてどうということは申し上げられるわけではありませんが、私個人の法律上の見解といたしましては、銀行法違反の疑いがあるということにつきまして先般小委員会におきまして申し上げたと同じであります。
  48. 中野四郎

    ○中野委員 たいへん明快になりました。結果においてはとにかく、御意見としては、始終非常にまとまつた意見を述べておいでになるようですが、そこで、問題になるのは、先ほどお話になつた大蔵省の方では匿名組合ではないとは断じがたいという意見を持つておいでになるのです。それからあなたの方は、そういうよう吉田参事官の報告は聞いたが、むしろこちらの気持は匿名組合であるとは断じがたいという御意見で、これは非常にデリケートな問題でありまして、むしろここが一つの山になる傾向もあるわけであります。そこで、河野銀行局長はここでしばしば意見を述べまして、昨年の三月四日にあなたの方との意見がまつたく一致して、従つてわれわれは匿名組合でないとは断じがたいという見解従つて今日まで放任しておいた、しかし個人河野君としてはこのようなことを捨ておくことははなはだ遺憾にたえないから、何らかの形で新しい取締り立法をいたしたいというので、今回は法務省意見を大部分入れて提案をした次第だと言うておりまするが、河野君はその際附言されまして、後ほど民事局長なり刑事局長がここに御出席になるのだから、その場合にお聞き願いたい、われわれとしては、三月四日に意見がまつたく一致して、そうしてこのような処置をとつて来たことには間違いないと言つておるのです。そうしますと、私らが昨年の十二月四日に小委員会で皆さん方のところにおたずねをして、大体この銀行法違反の疑いが強い、そうして匿名組合であるとは断じがたいという先日のあなたの御意見をばこのまま述べて、河野君に質問しておるのですが、河野君の意見は、まつたくあなたとは違つた面から、古屋君の言をして言えばうらはらのいわゆる証言をしておるわけです。そこに責任の転嫁と申しまするか、非常にわれわれには解釈いたしたがたい点が多々現われて来るわけなのですが、その匿名組合であるとは断じがたいという意見を、吉田参事官をして関係当局との会合の節に述べさせられた事実がありましようか。先ほど佐竹さんはちよつと数を間違えられて数十回と言つておられますが、十数回のこれは誤りでありまして、これは河野君みずからが十数回の会合をしたと言うておられる。その会合の当時の状況、それから人名等についてはここで証言しておられまするので、特に吉田参事官であるのか、あるいはあなたの御意思を受けた係官が大蔵省の諮問に対して今申し上げたような点について強く主張しておるかどうか、きわめて消極的に、ただ出席しただけで意見を述べなかつたのか、あなたの見解をそのままに意思表示をしておるかどうかを御証言願いたいと思います。
  49. 村上朝一

    村上証人 この会合に私の方から出たということでありますが、あるいは吉田参事官であろうと思いますが、吉田参事官から私聞きますところによりますと、そのときに何でも銀行局長答弁要旨の原稿を書いて来て、この案を見せられた、その案はかなり匿名組合であると断定するに近い表現であつたので、これは困るということで直してもらつた——。あるいは吉田参事官が行つた刑事局の者が行つたか、詳しいことは存じませんけれども、しかし、これは単に匿名組合方式による利殖機関全般についての説明であるし、保全経済会以外のものについては断定できないことは事実なのです。それを今度政府部内における当時における統一した意見を述べるということになりますと、いずれとも断定できない段階にあつたことは間違いないのであります。その断定できない段階にあるということを表現する表現の仕方でございまして、匿名組合であるとは断定できないと言つても、匿名組合でないとは断定できないと言つても同じようでありますが、その言葉の使い方でもいろいろ多少話し合つたようであります。結局一般的な問題であるというようなことで、それじやまあそれでよかろうということで、民事局刑事局も了承したのだというふうに聞いております。
  50. 中野四郎

    ○中野委員 そうしますと、何ですか、先ほどこちらの質問に対して、あなたの政府部内は一致するでなく、断定しないで来たという御証言は、今のお話を聞きますと、三月四日にたとい不満足ではあつたが一致した意見としてきめられたものなのですか。あるいはあなたの方は依然として先ほどから御証言の点をいまだに堅持しておられるのかどうか。これは、三月四日に河野君は政府部内の一致した意見をもつて大蔵委員会に臨んだものだということを、それこそここで二、三十回にわたつて速記の上に残しておられるのです。私は、三月四日に意見が一致したものが、法務省にわれわれ小委員会の者が出張して伺つたところによればまつたく食い違つておるところがあり、しかも吉田参事官をしてこのことをば意見を述べさしめておるのだから、これでどうして一致しておるのだという尋問をしたら、一致した意見ということは、先ほど申し上げた民事局長なり刑事局長なりに聞いてくれと言つておる。そこが今日ちよつと解明されないのですが、あなた方は、不満足ではあるが意見の一致に同意をしたのか、ないしは、今日も先ほど来の御証言を堅持して、まつた匿名組合ではないと断じがたいという見解に基いて今まで大蔵省が放任しておいたことに対してどう考えておられるのか、この点を御証言を願いたいと思うのであります。
  51. 村上朝一

    村上証人 先ほど来申し上げましたように、保全経済会そのものについての答弁要旨ではなかつたのであります。匿名組合方式による利殖機関がたくさんある。そういうものについてそれを匿名結合と断定するかどうかということになりますと、少くとも保全経済会以外のものについては断定できないのじやないか。一般的な匿名組合方式のものにつきましては、当時政府部内として統一した意見というものは結局断定しがたいという点で一致しておると申し上げるよりほかはない。その意味において一致しておると申せば一致しておつたのであります。
  52. 中野四郎

    ○中野委員 ここに私は大蔵省のずるさがあると思うのです。きよう初めてあなたに伺つたのですけれども、先ほど資料の点を私が伺つたのはここにあるのであります。いやしくも大蔵省が合同会議を聞いてお互いにこの取締り対象になるべきものを調査するにあたつては、保全経済会資料だけをあなたのところに提出しつつ、そうしてその結論を得るときには保全経済会だけでなく一般の特殊金融機関を総合して断定しがたいという結論を出すところに、私は少し不可解な点があると思うのであります。最初にあなたの方に保全経済会資料を出したなれば、一応保全経済会特定の対象としてこれが調査をなされ、そうして特定の対象としてこれに結論を出すというのが妥当な行為ではなかろうかと私は考うるのであります。今お話を聞いてみますると、その内容は保全だけでなく一般についてであつたという御意見でありまするが、これは非常に千差万別なのであります。日本殖産金庫のごとく、ないしは日本勧業振興何がしのごとく、白十字経済のごとく、一つ型はこの商法の五百三十八条あるいは五百四十二条をばふんだごとくに見せておりすまるが、事実その営業形態はまつたく違つた営業形態をしておることは、現に検察当局でお調べ中のものでありまして、その過程において初めより詐欺容疑としてこれを十二分に追究しなければならぬというものがあるにおいてもおわかりだと思う。そういうように、最初資料をあなたのところには保全経済会のきわめて小部分のものを出しながら、その結論においては保全だけでなく一般特殊金融機関に対する結論を求められるに対して、あなたの方は、この際積極的に、われわれの方は保全の資料を得ておるのであるから、保全を対象として保全の結論はこうであるということを勇気をもつて立証なさるのが、また進んでそういう提言をなさるのが正しいと私は思うのですが、これはどういう経過になつておりましようか、この点を伺いたい。
  53. 村上朝一

    村上証人 この三月四日の銀行局長答弁の問題は、銀行局長が、従来から国会の各委員会匿名組合方式による利殖機関の問題、株主相互金融とかいうようなことについて質問が出ており、そのときに銀行局長から答えるということで、その答弁の原稿でいいかどうかという相談を受けたいきさつから、積極的にこういう内容を盛れという態度には私どもの吉田さんも出なかつたと思うのであります。先ほども申し上げましたように、私自身もつと早く銀行局長にも会いましてよく話合えばよかつた。その点について私の努力が足りなかつたことは申訳ないと思うのであります。
  54. 中野四郎

    ○中野委員 その点はよろしいのです。私の伺つておりますのは、あなたの気持に対してとやかく言うておるのではないのです。大蔵省側が、どうもひよつとすると、各省の合同会議を即きながら、自分がイニシアチーヴをとつて、そうしてどういうふうな処置をとつて来たという点に、今日までの調査の過程においては疑問が多々あるのであります。刑事局は、実際上の犯罪の対象となるべきにおいては、これは当然御処置をなさるのがあたりまえであり、また犯罪容疑としてこれを研究し、あるいは十二分にそれぞれの処置をとるということもお聞きしておるのでありまするから、これはよいのであります。ここに奇怪至極、まことに不可解なのは大蔵省の態度と言わざるを得ない。昭和二十五年においては、自分の担当する東京国税局では保全経済会に対するところの課税をしない。二十六年、二十七年には課税をしておるのであります。しかし、その二十五年の課税をしない事実をここで証言を求めますと、いまだ調査が未了だと言つておる。あにはからんや、当時東京国税局の保全経済会課税の査察官であるところの係長等二名が、保全経済会から在職中に伊藤斗福と話をして五千万円の出資を受けて、別に高利貸しであるところの金融機関六日商事というものをつくつて、役所をやめてただちにそこの社長なり専務に納まつておるという事実もある。大蔵省がこの特殊機関である利殖金融機関並びに保全経済会等に対しては何となく迷つたというあなたのお言葉——部分的な資料という御答弁はなるほどそれはそうであつたかもしれない。しかし、もう少し大きい政治的と申しまするか、あるいは悪意に意図するところがあつて延ばしたかの感が深いのであります。そこで私は今伺つたのです。あなたの方に資料保全経済会の微々たる資料だけを初め提出し、実際上にあなたの方の調査範囲というものは保全経済会を対象としていわゆる法的根拠をきわめられたものと私は考えるのでありますが、その結論は非常に重大なものであります。この結論において、匿名組合でないとは断じがたいという結論を出すにあたつて保全経済会だけでなく一般の特殊金融機関を含めてという複雑怪奇な結論を出しておるところに私らは納得ができないのであります。そこでそういう意味の御質問をしたのですが、もう一つつけ加えて御答弁を願いたいことは、当時の会議の主たる主催者はだれであつたのでしようか、法務省が進んで主催をされたのか、ないしは大蔵省が主催でこの合同省議と申しまするか会議を開いたのか、これをつけ加えて御答弁を願いたいと同時に、あなたの方がこの結論に対して賛成をされるのは、最初におつしやつた大蔵省の提供した保全経済会の若干の資料では満足な答えとお認めにならなかつたからかどうかという点をお答え願いたいと思うのであります。
  55. 村上朝一

    村上証人 たびたび関係省の間の会議があつたのでありまするが、私は会議には一度も出ておりませんので、どこの主催であつたかということを詳細存じませんけれども刑事局長室に集まつて会議をしたことがかなりあつたように聞いております。そのほかのところでやつた場合もあろうかと思います。
  56. 中野四郎

    ○中野委員 主催はだれでしたでしようか。
  57. 村上朝一

    村上証人 主催はどこで言い出したのか、そこまでは聞いておりません。  それから、大蔵省から与えられた資料だけで十分と思つたかどうかということでありますが、大蔵省から出されて拝見しました資料のほかに、私の判断の基礎といたしましたのは、当時新聞、雑誌等に記載されておつた保全経済会の業態と申しますか、事業のやり方に関する知識でございます。これらのものを基礎として一応判断したわけでありますが、資料が足りない、あるいは不正確であるから判断が的確でないという御批評を受けることはあり得ると思うのでありまして、いつも、私は、今まで国会の各委員会で御質問がありますたびに、私の拝見した資料範囲内ではという前提を置いてお答えをしておる次第、であります。
  58. 中野四郎

    ○中野委員 後ほど、恐縮ですが、係の方から、どこが主催であつて、何回ぐらい、それから場所、お集まりになつた方々、あなたの方から御出張になつた方々のお名前とか、相手方もわかつているところ、それから、やはり合同会議ですから記録があるはずでありますから、この記録、これを委員長のもとに御提出願いたい。委員長においてこの資料をお取寄せ願いたいと思います。これは何か捜査をなすつたの調査の会合をなすつたのと二つあるそうですが、私は不敏にして存じておりませんが、便宜上もし区別を願えればなおけつこうであります。  最後に伺つておきたいのは、結局、この匿名組合でないとは断じがたいという大蔵省側の意見に不本意ながら従つたのでしようか、あるいは従つてはいないのでしようか。  それから、もう一つ、現在残されております保全経済会財産を確実に保全して投資者の財産を守る方法としては、どういう処置が適当とお考えになるかを伺いたいと思うのであります。これは非常に大事な問題でありまして、立法府における行政監察委員会といたしましては、行政官庁の処置の適否に対して十二分に調査をすると同町に、もしこれが遺憾の点があれば、それぞれの与えられた権限に従つて勧告をいたします。しかし、それのみであつてはならぬことは、今日のこの特殊金融機関において実際の損害を受けた方は全国に数十万、その金額は相当な金額でありまして、むしろこれは社会的な問題として取扱わなければならぬ観点もなきにしもあらずであります。従つて、われわれは、一面においては——この全国投資者の諸君が非常な不安の中で今日暮しております。中には保全経済会並びにそれに関連する金融機関の諸君は、好機逸すべからずとしてこの財産を散逸せしめるおそれが多分にある。いろいろな形において手に入れて、一もうけをたくらむような人も相当数あるように聞いております。しかし、このことはやはりわれわれが考えて、投資者の財産を完全に守つてやるというのにはどういう方法が適当であるかということも勘案しなければならぬところでありまして、保全経済会関係者は、和議をするのが最もよい方法で、数年かかつてもこれを何らかの形で投資者に対して返却することがよいと思うという意見を一面においては述べ、一面、識者の中には、破産申請をして、国家がこの今日残存されておる財産を管理して適当なる処置をとることがよいという意見を述べる人もあります。その他の意見も多々あろうと思いますが、良識ある民事局長として、この処置についてはどういうような方法が最も適当な処置であるかという点についての御意見を述べられたいと思うのであります。
  59. 村上朝一

    村上証人 ただいまの御質問の第一点、三月四日の銀行局長答弁についての問題でありますが、一般に匿名組合方式によつて行われているらしい、これは匿名組合でないとは断定できないという答弁の点につきましては、先ほど申し上げた趣旨におきまして私どもとしても異論がなかつたし、現在も法律のこととしてはそれ以外なかつた、かよう考えます。つまり、政府部内の統一的意見として一般的な匿名組合方式について述べるとすれば、そういうことになつたであろう、どうも多少表現の仕方の相違が考えられるといたしましても、この答弁が間違つていたとは考えておりません。  それから、今後の財産保全の方針でございますが、これはぼつぼつ和議申立という意見も出ておるように聞いておりますが、やはり破産宣告が一番適当ではないか。そして、破産になりますと、否認権の行使によりまして、ある程度さかのぼつて不当な財産処分なども否認して財産をとりもどすということもできます。破産というと何となくいやな感じがいたしますが、破産宣告の方が出資者のためになるのではないか、かよう考えております。
  60. 中野四郎

    ○中野委員 今の御答弁の後者の方はけつこうですが、前者の方についてなお疑問が残るのですが、これは、匿名組合でないと判断することと、匿名組合であると断じがたいということは、言葉はやや似ておりますが、根本的に食い違つて来るんじやありませんか。あなたの先ほど来の立論からおつしやれば、当然これは寄託あるいは預金または信託というよう疑いも多分に出て来るような状況下にあつて、どうもこういうデリケートな政治的と申しますか、政府意見が不一致であつたということをここで言うことはまずいから、匿名組合でないとは断じがたいということに不本意ながら賛成したというような御意見に受取つたのですが、私はそれだけじやいかぬと思うのです。いやしくも民事局局長として、そういうような政治的な操作をせぬがいいと思うのです。意見の不一致があつても、日本の政府の中には健全な意見を述べる者があるということが必要なことであつて、ただ答弁の都合上、不一致があつたということはかんばしくないというような考慮は、されぬ方がよろしいと思うのです。このことは全国民が相当大きな関心を持つておることでもありまするし、健全な意見を持つておる役所があつたということは、将来のためにも現在においても、ごくよいことたと思うのでありますから、これは少し率直な意見を述べておいていただいた方がよいと思うのです。  もう一つ伺いたいのは、では、匿名組合でないと断じがたいという、この意見に賛成する根拠はどこにありましたか、その根拠を明らかにしていただきたい。法的に、商法の五百三十八条あるいは五百四十二条の条章に従つてこのことが行われておつたかどうか。匿名組合でないと断じがたい、そういう意見に一致せしめるには何らか法的な根拠がなくてはならぬと思いますが、何を根拠にさようなことに不本意ながら一致点を見出されたか、この点を明確にしておいていただきたいと思うのであります。
  61. 村上朝一

    村上証人 私がその答弁に同意いたしました理由を申し上げますと、先ほどから繰り返し申し上げましたように、保全経済会についての私の見方は終始一貫かわつておらぬのであります。しかし、このときの銀行局長答弁は、一般の匿名組合方式による利殖機関についての答弁、かように私は了解したのであります。それと、保全経済会につきましての私のいたしました判断は、与えられた資料、新聞雑誌等によつてつておりました私の私的な知識、それだけをもとにして判断いたしております。それ以外にもあるいは資料はあり得ると思いますが、いつも私の与えられた資料だけを基礎として考えておりますというふうに申し上げていることを、この場合断定するかしないかと聞かれますと、断じがたいという言葉の中に私の気持も幾らか表わしているのであります。決していいかげんの答弁をするためにしておるいうことではございません。
  62. 中野四郎

    ○中野委員 そうすると、資料の中に保全経済会の定款等はむろん資料としてあつたでしようね。そうして保全経済会だけを分離して民事局長として御見解を述べられんとするならば、これは銀行法違反の疑いありという見解を持たれますか。保全経済会だけを分離して考える場合です。いわゆる相互的類似機関を含めた場合においては断定しがたいという結論は出ますが、保全経済会だけを分離し、このものに対しては銀行法違反の疑いがあるという見解は間違いありませんかどうか、あらためて御証言を願いたい。
  63. 村上朝一

    村上証人 先ほど申し上げましたように、銀行法違反になるかどうかということは、罰則解釈の問題になりますので、私から政府意見というものを申し上げる地位にないのであります。私個人の意見といたしましては、銀行法違反の疑いが多分にあると考えます。
  64. 塚原俊郎

    塚原委員長 証人に申し上げますが、先ほど中野委員より要求いたしました資料を、できるだけすみやかに本委員会に御提出願います。
  65. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 関連して。さつき証人のお答えになりましたことは、こう承つていいのでしようか。これは重大なことなのです。吉田参事官が行かれて合同会議をしたときに、大蔵省側は文書を持つて来て、それを示された、その文書の内容については匿名組合であるらしい趣旨のことが書かれていた、それに対して吉田参事官から、それでは賛成できないというよう意見を述べられて訂正された結果、結論匿名組合でないとは断ずる根拠がないということの文書になつた、——これをこの間河野証人が読み上げたのですが、こういう経過だつたでしようか。さつき証人が中野委員質問に対してお述べになられたのはさように承つたのですが、こういうように承つてよろしゆうございますか。
  66. 村上朝一

    村上証人 最初見せられました案に訂正を求めたのは刑事局の係官であつた民事局の吉田君であつたかは私はつきり記憶ございませんが、その会議の席上で原案が多少直されて、ああいうようなことになつたというふうに承知しております。
  67. 塚原俊郎

    塚原委員長 田渕光一君。
  68. 田渕光一

    田渕委員 私は、当委員会保全経済会調査が始まつて証言を求めて以来、ほんとうに正しく、しかも公正な意見を伺つたのはきようが初めてです。この点については、昨年十二月四日お目にかかりました印象と今日とはちよつともかわらないので、ほんとうに感謝しております。ただ、私個人として承りたいのは、二十八年の二月十八日に正式会議をした、しかもそれは法務省刑事局長室において平田国税庁長官、銀行局、前の刑事局長、それに津田さん、長戸さん、民事局から吉田参事官が出ておられる、最高検の市島検事、熊澤検事、高検から司波、地検から関係検事が出ておる、こういうようなぐあいの会議がありますので、おそらくこれは大蔵省から最後の意見をまとめる会議であつたと思いますので、この会議録、これは刑事局長室でやられたから御存じないかもしれませんが、慣例といたしまして、こういうような大きな問題の結論を出す場合の合同会議というものは会議録をつくられておるのですかどうですか、この点をひとつ伺いたいと思います。
  69. 村上朝一

    村上証人 私の方では、日常起ります問題について局で全員を集めて会議をいたします場合に会議録というものはつくりません。それぞれ主任の人が関係記録の中に書き込んでおるだけであります。ただ、刑事局の方ではあるいは会議録をつくつておるかもしれませんが、私の方は、まだそういうものはつくつたことはあまりございません。この問題につきましては、私の方は議事録をとつておりませんので、こちらから参事官だけが行つておりますが、詳細のことはわかりません。     〔委員長退席、高木委員長代理着席〕
  70. 田渕光一

    田渕委員 どうも、私は、こういう場合に実際のイニシアチーヴと申しますか指導して行くのは民事局長でなければならないと思うのであります。大蔵省だけで解釈ができるものならば、何も法務省に合同会議を持ちかけたりすることはしない。少くともこういう問題については民事局長意見が尊重されなければならないと思いますのに、どうも、先刻来伺つておりますと、保全経済会資料はごく一部だけ持つてつて、あるいは営業案内、あるいはパンフレツト、あるいは定款、出資者、こういうようなものを持つてつておるけれども保全経済会というものをちよつと出しておいて、いわゆる類似金融機関でずつと大蔵省の方ではカバーして行くというようなことをしておる。そこで、合同会議の結果、まず保全経済会単独の議題であれば、こうだという断定はついたでありましようけれども、それはごまかすという悪意はなかつたかしらないけれども、どうも法務省民事局意見がはつきり現われないような方針にこの会議運営の仕方があつたと私は思う。従来もあつたと思うのですが、こういうように国内的な、社会的な問題について意見を求められるときには、この制度がかわるまでは法務府の意見長官に意見を問われた。そして意見長官の意見で訴訟でも何でもやつてつたように思いますが、意見長官がなくなつて、今度内閣法制局長ということになつたという御証言がありましたが、大体それだはの過程の中において、少くとも内閣法制局の意見をなぜ求めなかつたかということについては、さらに河野銀行局長から証言を受けたいと思うのですが、大体私らの常識では、大蔵省で割り切れないから法務省に持つてつた。そうすれば、法務省民事局長意見を尊重しなければならない。そこに威厳があり、また権威が保持される。しかるに、保全経済会というものはちよつと出しておいて、類似金融機関ということでごまかしたようなことをして、意見がまとまつたのだといつて国会で答弁をいたしておる。こういう点について、かつてもそういう例があつたか、将来もそういうぐあいに行くかという点については非常にいい参考になると思う。ほんとうに長い間民事局長として日々の民事局管内の事務を措置されるあなたとして、ずつと私たちがこの保全経済会の問題にかかつて以来、ほんとうにこの村上証人ほど率直な正しい、そしてありのままの証言を聞いたのは今日初めてであります。実は銀行局長でも国税局長でも、責任を回避してはつきりしたことを言わないのであります。非常にその点であなたを尊敬いたしておりますから、私はことにお願いするのでありますが、大体従来でもあなたの意見が尊重されて来たのか、この点は別として、今後も尊重されるべきものであるというのか、この点をもう一つ率直に伺いたい。
  71. 村上朝一

    村上証人 刑事局でやつております刑罰法規解釈、運用の問題にいたしましても、その他各省でやつております行政事務処理上の問題につきましても、民事法律問題というものが非常に多いのでございます。先ほどちよつと例をあげましたけれども刑事事件のうち財産犯罪というものは、ほとんど前提として民事法規解釈が先だつわけであります。それで、刑事局なり——検事局もそうでございますが、それぞれ民事に関する一通りの素養は持つております、そういう意味におきまして、民事問題が起きたからといつて一々私の方に意見を求めて来るわけではございません。私の方も、それぞれの罰則解釈につきましては刑事局におまかせし、また各種の行政法規の解釈については各省におまかせするという態度で今までもやつて来ておりますし、今後もそうやるほかはないのであります。ただ、意見を求められました場合には、よく研究いたしまして正しい意見を述べるようにいたしたい、かよう考えております。
  72. 田渕光一

    田渕委員 私は、実はこれは小委員会でお伺いしたときに申し上げようと思つたのだが、現刑事局長も一緒におられましたが、あなたの部屋では申し上げなかつたのであります。いずれ後日新証言をいただくことになりましようが、現刑事局長に責任があるかないかという問題は別として、伊藤斗福君が日新生命保険の外交次長としていたときに、保険に入つてくれるならばその契約高の二割は貸すのだというような偽りをいたしまして、相当な金を集め、一味五、六人おつたのでありますが、それでもつて小岩で保全経済会を始めたということになつておる。この事件を二十三年九月十三日に告訴しておるが、その告訴を東京地検が六年間持ちなぶつているのです。そうして検事のかわること数人、最後は昨年この問題がいよいよ世上やかましくなつて来たときに不起訴に決定した。それで、保険会社は怒つてしまつて、最高検に抗告したところが、受理されたということになつておる。これはなぜ地検でこうしておつたかというと、刑事局の方の意見が非常にあいまいであつた。私は率直に言つて、あそこであなたに会つたときの感じがよくなかつたが、私はあのときお目にかかつたときには言わなかつた。こういうことがあるからあなたははつきり言えないのだろうと思つてつた。巷間伝わるところでは、刑事局はこの保全経済会の問題に対しては非常に消極的だ。もつとも、犯罪捜査上の問題があるのでしようけれども……。民事局長の御意見ははつきりきまつている。そこにおいて、はつきり匿名組合でないということになつて来る。少くともあなたに私が伺つたのでは、匿名組合の沿革からずつと伺つたわけです。あなたのこういうような思想から言うなら、そうあるべきであり、主管の局長がそういう法的な考えを持つておられる。もちろん吉田参事官も持つてつたと思いますが、どうも刑事局が割切れなかつた。裏にそういう実績があるのであります。六年も検事局がこの問題を握りつぶしておつた。これはこれから担当検事やその他に御証言を伺うわけでありますが、こういうような点と、法務省のうちの刑事局の煮え切らない態度——どうして煮え切らなかつたか、割切れなかつたかということはあとで伺いますが、煮え切らなかつた態度というのは私たちの想像です。銀行局で、保全経済会というものをちよつとさしみのつまのごとく、わさびのごとく出しておいて、ほんとうのさしみは保全経済でなければならぬのに、町の利殖機関、金融機関というようなことを言つて、三月四日の河野君の政府の一致した意見だという議事録をずつと読んでみましても、これをどうしたかということがすうつと幽霊のしりのごとく逃げてしまつている。私たちの思うのは、そこにどうも大蔵省主計局がたとえば法務省の予算面に対しても査定権を握つておるから、あまり大蔵省の連中に関する問題についてはつきりした態度で行くと、法務省の予算のわくに対していじめられるというようなことがあるならば、これは正しい意見が言えないのだから、われわれが言わなければならぬということで、この委員会では、大蔵省のやり方が無責任なのと、ずるいのと、言い方かはつきりしないために追究しているのでありますが、局長はそんなことはなかつたのでありましようか、どうでございましようか。法務省の中に、大蔵省の問題に対してあまりはつきりすると予算査定のときにやられるというような結果、割切れないというようなことがあると、私はこれは重大な問題だと思うのです。彼らは常に国会議員すらなめているのですから、各省をなめることはあたりまえです。各省の局長でもみな予算のときには大蔵省に頭を下げなければならぬ。そういうときにずたずた切られるものだから、あまり断定すると予算にたたりがあるというので割切れなかつたのじやないか。こういうようないろいろの角度から見て、われわれまことに失礼なことを思つて、そこまで思いやりくださらぬでもよろしいと思われるかもしれぬけれども、実は刑事局の割切れなかつたのはそこにあるのじやなかろうかと思います。民事局にはそれはなかろうと思いますけれども、この際われわれが調べて行つて割出す結果の一つの判断にするためには、従来あるいは将来もそういう懸念は一つもないとおつしやるでありましようけれども、この際この点なども率直に伺つておきたいと思うのであります。さしつかえない範囲で、個人の意見でもけつこうであります。
  73. 村上朝一

    村上証人 なるほど、予算のときには大蔵省主計局に行つて頭を下げますけれども法律問題につきまして、相手が大蔵省であるからといつて遠慮するというようなことは、民事局にはもちろんございませんし、刑事局についても全然そういう気持はないと思います。もとより政策問題については、各省と意見が違うようなときには、これは妥協しなければ政策というものはとられないわけでありますから、ずいぶん妥協もいたしますけれども法律問題について、ことにこの経営の解釈ですが、これも大蔵省に都合が悪いからこういうよう解釈をかえようというようなことは、私ども裁判官を長年やつて来た役人としてはとうていできないのであります。全然そういうことはやつたことはございませんし、今後もやらないつもりであります。刑事局も同様だと思います。
  74. 田渕光一

    田渕委員 どうも、私は、一番正論をはき、これに対して正しい判断をされている民事局長をこの会議にオフ・リミツトしたような気がしてしようがないのであります。十数回開かれている会議吉田参事官しか出ていない。最後の三月四日の結論を出すときに初めて局長が聞いたというようなわけで、まことに私たちは解せない点がある。どうもあれは硬骨漢で正しいからいかぬというよう意味で、なるべく参事官やなんか、その他の者を出して会議を開いておいて、持つて行く資料もごくわずかである。しかもそういうふうにおぜん立てができている。まつた大蔵官僚のずるいやり方というものは、あれだけ予算でいじめられればそうなるかもしれぬと思いますが、実に狡猾なやり方をしておるのであります。私はこれをこの際はつきりしておかぬといかぬと思う。池田喚問のやかましいのはそこにあるのであります。許可、認可の関係、予算面を握つているものだから、その間の事情を調べなければならぬのであります。池田喚問のやかましいのはそこにある。こういうことが私たちは絶えず言うのでありますが、大蔵官僚で党の政調会に入つて来ていろいろやると、こういうようなことも疑惑を受けるのだからと言つているのであります。少くとも私が思うのに、どうもあなたをオフ・リミツトしたように思うのでありますが、あなたが、十数回開かれる会合に対してみずから出て行かねばいかぬ、吉田参事官だけではこれは片がつかぬ、ひとつぼくが行つて、こういうものだというぼくの意見をはつきり言つてやろうというようなことをお気づきになつたことはありませんですか。十何回あつたのに、民事局長を呼んでおらぬ。刑事局長は出ておる。どうもこれはおかしい。一番大事な意見を求めなければならぬ民事局長に列席を求めておらぬ。この運営が私たちは納得が行かぬのでありますが、これはまことに失礼な質問でありますけれども、どうも正義の硬骨漢であるから、正しい意見を出されては困るというよう意味で拒否しておつたかどうか——というようなことまで私は申し上げませんけれども、そういうような感じがなされなかつたかどうか、御感想はいかがでございますか。
  75. 村上朝一

    村上証人 私が会議に出ることを忌避されたわけでは決してございませんので、いろいろ仕事も持つておりますし、吉田参事官商法の方には非常に権威でありまして、私信頼しております。     〔高木委員長代理退席、委員長着席〕 だから、吉田参事官に出てもらえば十分であると思いまして、私は出なかつたのであります。だから、私が出ることを避けられたということは決してないのであります。  なお、大蔵省の態度についていろいろ御意見がありましたけれども、私がこの問題に関して感じておりますのは、初めに申し上げましたように、どうも少しいろいろな資料に気をとられて迷つておるのではないかという感じを持つただけでありまして、それ以外にしいて結論をある方向へまげて行こうというような感じがあるということは全然受取らなかつたのであります。とかく法律論をおやりになる法律家の中にも、ある結論を出しておいて、それを理由づけるりくつを考えるのに非常に巧みな法律家がございます。しかし、私どもはそういうことは法律家としては邪道だと思つております。その結論へ持つて行こうとするりくつかどうかということは、やはり長年やつておりますからぴんと来るのであります。銀行局長がそういう態度でものを考えておられる、大蔵省当局がそう考えておられるというふうには受取らなかつたのであります。
  76. 田渕光一

    田渕委員 たいへん時間も過ぎましたが、もう少しよろしゆうございますか。
  77. 村上朝一

    村上証人 けつこうです。
  78. 田渕光一

    田渕委員 私たちが十二月四日におたずねして、私個人といたしまして、他の委員諸君もそうであつたろうと思いますが、特に感銘に打たれたのが、この保全経済会で最も問題となる匿名組合の件であります。実はこれは、いろいろ伺つたというだけで、二、三の委員からたびたびあなたの御論が引用されているのでありますが、この機会に、ごくかいつまんだところで、二、三分でもけつこうでございますが、大体この匿名組合が現われる沿革というものを、またこの委員会で学識経験者をお呼びしてというようなこともひまがないと思いますので、もしおさしつかえなかつたら、この機会にこれをひとつ記録にとどめておきたいのですが、この点をひとつ御協力願えませんでしようか。というのは、私憲法改正の会議に出まして、アメリカが与えたというようなことがわかつて来ると、初めて憲法を直さなければならないということがわかつたようなもので、今度の匿名組合を解明して行く上に御意見が非常に参考になつたのであります。そこで、こういうような結果匿名組合になつたというよう匿名組合の沿革について、おさしつかえなければ、ひとつそういうよう意味で御供述願いたい。
  79. 村上朝一

    村上証人 十二月四日にどの程度に御説明申し上げましたか記憶がありませんが、匿名組合の歴史につきまして何か申し上げたとしますと、学者の書物を読んで記憶しておる範囲のごく簡単なことであつたと思います。  私の記憶しておりますところでは中世のイタリアの海上貿易の慣習から発生したものである。つまり、資金を出した人あるいは貨物を出した人が港に残つてつて、船主なり船長なりに金なり物を渡して商売をやる。商売して帰つたあとでその利益があればわけ合うというようなことが行われて、漸次陸上の事業にもその形が行われるようになつた。一面、キリスト教の教義で利息をとることが禁止されておつた関係もありまして、人から金を借りることが非常にむずかしい。そこで、匿名組合という形でやれば資金を容易に得られるというようなことで、匿名組合というものがだんだんと発達して来たのだということは、実はこれは学生時代に読んだ書物の記憶でございまして、はなはだ恐れ入りますが、お尋ねでございましたから、簡単に申し上げました。
  80. 塚原俊郎

    塚原委員長 ほかに御発言がなければ、村上証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。  証人には御苦労さまでございました。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時三十四分散会