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1954-04-17 第19回国会 衆議院 厚生委員会労働委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十七日(土曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員   厚生委員会    委員長 小島 徹三君    理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君    理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君    理事 岡  良一君       越智  茂君    助川 良平君       田子 一民君    佐藤 芳男君       山下 春江君    滝井 義高君       杉山元治郎君    山口シヅエ君   労働委員会    委員長赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 鈴木 正文君    理事 丹羽喬四郎君 理事 持永 義夫君    理事 多賀谷真稔君 理事 井堀 繁雄君       黒澤 幸一君    島上善五郎君       大西 正道君    日野 吉夫君       矢尾喜三郎君    館  俊三君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君  出席政府委員         大蔵事務官         (理財局長)  阪田 泰二君         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君  委員外出席者         厚生委員会専門         員       川井 章知君         厚生委員会専門         員       引地亮太郎君         労働委員会専門         員       浜口金一郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  厚生年金保険法案内閣提出第一二四号)     —————————————   〔小島厚生委員長委員長席に着く〕
  2. 小島徹三

    小島委員長 協議の結果私が委員長の職を勤めます。  これより厚生委員会労働委員会連合審査会を開き、厚生年金保険法案議題とし審査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを順次許します。黒澤幸一君。
  3. 黒澤幸一

    黒澤委員 厚生年金保険法案につきまして厚生大臣に二、三お尋ねしたいと思うのであります。  申すまでもなく厚生年金保険社会保障制度の一環として行われるものでありまして、この制度を通じまして被保険者最低生活保障するということが目的だと思うのであります。今日かような社会保障制度を行わなければならなくなつたその原因は、何といいましても、これは今日の社会組織でありまする資本主義矛盾の現われであるというふうに私たち考えておるのであります。この資本主義世の中におきましては、好むと好まざるとにかかわらず、そこに経済的には営利追求の行き方が当然行われて参ります。またその結果は弱肉強食の事態も起つて参ります。そういうことから、この世の中二つ階級が自然に生れて参らなければならない状態になると思うのであります。いわゆる持てる階級と持たざる階級、搾取の対象になる階級と搾取する階級、そういうような、非常にそこに階級対立が激化して参らなければならないということが、これは資本主義社会の必然的な現われであるとわれわれは考えております。こういう階級分化対立ということが、一面においては非常に資本主義社会の恩恵を受けまして、莫大な資本を持つ一方の階級が現われると同時に、一方においてはいかに働いてもみずからの生活を守ることができないような勤労階級存在対立的に生れて参るのであります。こういうことがだんだん激化して来ますると、資本主義社会必然性によりましてかような対立が生れて、その村立のために資本主義が非常に危機に立つて来る。そのためにこの資本主義社会の中においては、そうした一方の犠牲となり、非常にへんぱな立場に置かれておる大衆に対しまして、これを救済し擁護する方法をとらなければ、資本主義社会それ自体の継続ということが困難な状態になつて来るのであります。そういう結果、資本主義社会といたしましては、これら資本主義のために生れたもの、それに対する救済救護方法をとらざるを得ない状態になつて参るのであります。かような事態があることは、何といいましても私は今日の資本主義社会それ自体の罪であり、資本主義社会それ自体の責任であると考えるものであります。これに対しまして、この困窮者に対する救済保護方法が、この資本主義社会を守るところの、時の政府によつて当然行われる結果となると思うのであります。そういうことにいたしまするならば、そうしたいわゆる社会保障制度というものは、一部の階層、一部の人たちだけを対象とするものではなくて、これは当然全国民規模においてなされなければならないものだと私たち考えるのであります。ところが今日までいろいろな社会保障制度的なものが行われては来ておりますが、それがみな部分的であつて、全国民的な規模によつてはなされていない。そういうところに私は大きな欠陥があると思うのであります。たとえはただいま議題となつておりまするところの厚生年金保険法にいたしましても、その対象の被保険者というものが限定せられておる。こういうことでは、私は真の社会保障制度確立ということは言い得ないと思うのでありますが、厚生大臣はこうした全国民的な規模においての社会保障制度確立ということに対しまして、どういうお考えをお持ちになつておるかを最初にお聞きしたいと思います。
  4. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 いろいろ御意見の点は拝承いたしましたが、社会保障は私は必ずしも資本主義の擁護ではないと考える。従いまして資本主義国であろうと、あるいは共産主義国であろうとも、現在の世界の情勢を見ますると、社会保障を十分実施している状態であります。今回の厚生年金保険法は、お話にありました多くの階層、ことに国民全体に及ぼすという目標をもつて進んで参るべきことは、その主張をもつてどもも参つておるのであります。ただそれには段階があろうと存じまして、現在まだ完全な、全国民に実施の状態となつておりませんが、でき得べくんばその状態に進んで参りたいという方針で、今回の改正にあたりましても、それを一つの基調といたしまして改正案をつくつて参つたような次第であります。
  5. 黒澤幸一

    黒澤委員 今厚生大臣は、社会保障制度資本主義社会ばかりでなく、社会主義社会においても行われているということでありましたが、私はそのことを否定するものではありません。ただわが国においてかような制度を必要としなければならなくなつたということは、何といいましても、日本の今日の組織というものが、これは資本主義組織でありまして、資本主義経済一つ矛盾というものが現われて、そういう社会保障制度をやらなければならない事態なつた、私はそういう意味において申し上げておるのであります。厚生大臣は全国民的な規模に立つた社会保障をおやりになるということを、ただいま御答弁をいただいたのでありますが、現在御承知のように、わが国にはいろいろな形の年金制も行われているようであります。たとえば公務員恩給、旧軍人恩給公務員共済組合町村職員恩給組合地方公共団体恩給制度あるいは私立学校の教職員の共済組合等、いろいろな形におきまして乱雑に並べているというのが実態だと思います。そこで今度は厚生年金保険が生れようとしているのでありますが、私はこういうものをそのままにしておいては、真の社会保障制度確立ということはむずかしいのではないか、こういういろいろな形に存在しております年金制に対しまして、当局においてはこれを統合する御意思がおありになるかどうか、またそういうことに対しましてこの厚生年金保険法案を提出するにあたりまして、どういう御努力をお払いになりましたか、その点をお尋ねしたいと思います。
  6. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 ごもつともな御意見と存じます。実は厚生年金中核といたしたいわゆる長期年金その他の年金制度統合、またこれに歩調を合せるような方向への努力は十分いたして参らねばならないと存じております。ただ現在の状態におきまして、むしろ場合によつては逆行するような傾向すら生じて、まことに遺憾に存じておりますが、しかしこれもそれぞれの立場を検討いたしますと、あるいは船員保険と今回の厚生年金との問題にいたしましても、その他御指摘になりましたもろもろの状態から考えましても、でき得べくんばこの機会に思い切つて統合するということが最も理想でありまするが、それらの問題についてもおのおのの歴史とか主張立場々々によつての強いものが現われて参り、従つて現在の段階でまだそこまで参つておりませんことをまことに遺憾に存ずるのであります。しかしそれらのおのおののものが、相当頭をそろえて参りましたときに、これを厚生年金中核とした一本に必ずまとめ、あるいは統合方向に進んで行かなければならないという段階に向つて行き、また向つて行くように行政的な措置等もとつて行きたいと存じております。今回もかような意味におきまして、関係いたしておりますもの、特に船員保険との関係におきまして、相当その点を調整して参りましたが、ただいま申し上げました全般の点に及び得なかつたこと、なおそればかりでなしに、いろいろ不十分なことのために落ちております点が、統合ということよりも現われ来つつあるという状態でありまして、まことに遺憾に存じておりまするが、現在の段階ではやむを得ないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  7. 黒澤幸一

    黒澤委員 ただいま厚生大臣が、いろいろな形に現在存在しておりまするそれらの年金制は、厚生年金保険中核として今後統合して行かれるとおつしやられましたことを私は信頼いたし、それが一日も早く実現せられることを希望いたしまして、次の質問に移りたいと思うのであります。  これは厚生委員会においても御論議された点でありますが、この法案によりますると、従業員五名以下の事業場は、対象から除外されているようになつております。これは、五名以下の事業場がたくさんありまして、事実的には厚生省としても非常にむずかしい問題であることは私は了承できるのであります。しかし現実の問題としては、これらの事業場に働いている人たちが、こうした厚生年金保険というものの必要を一番感じておるのではないか。こうした小さい事業場に働いている人々賃金も非常に安い、そのために老後のたくわえなどというものは思いもよらないような人たちであります。そういう実情から言いますならば、いろいろむずかしい点はありましても、率先してこうした小さい事業場人たちを被保険者にするということがより以上必要ではないか、そう考えております。そういう人々をなぜ被保険者とすることができないのであるか。それから市町村の雇員が相当数おると思うのでありますが、これもほかの年金制からは除外されており、まことに苦しい立場に置かれていると思うのであります。こういう面に対しまして、厚生大臣としては、将来どういうふうにおとりはからいくださるお考えであるか、また国家制度といたしまして、かような存在を許しておくことは非常に不公平な、片手落ちなやり方ではないか、そういうふうに考えられるのでありますが、その点につきまして大臣のお考えをお聞きしたいと思うのでございます。
  8. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 五人未満事業所に働いておる被用者を、今回の改正では包含しなかつた点は、まことに遺憾でございます。現在この五人未満事業所が大体口三十万箇所、人員三百三十万人は少くともあると考えます。現在適用しておる事業所は二十三万箇所で、その適用人員は七百六十七万人ということになつておる、今回五人未満事業所を包含しなかつたのは、労働実態を把握することがまことに困難である、また事業所形態が種々さまざまで、老齢年金を受ける長期勤務の点についても相当検討いたすべき特異な点がほかの事業所比較してありはしないか、雇用形態並びに賃金形態等について相当複雑なものがある、なお保険料その他の負担がこれら小企業経済に及ぼす影響、こういう点を実は十分検討してみなければならないと存じております。そこで目標としては、御指摘のように五人未満のものまで包含して行きたいという考えは十分持つております。ただ現在の状態において、ただいま申し上げたような実態その他の十分な把握ができておりませんのと、保険料率あるいは給付内容等をただちに同一の形において包含することが可能かどうか、そのままいたしますと、五人以上の普通の事業所事業形態に対して相当影響を来しはしないか、やる場合にはそのままでいいのか、あるいは給付内容等について十分検討し、実態をある程度把握いたしました後において行わなければならないと存じます。従つて今回の改正にはいたさなかつたことは遺憾に存ずる次第であります。しかし将来これらの点を十分検討し調査をいたしまして、これに対する処置を行つて参りたいと存じます。
  9. 黒澤幸一

    黒澤委員 この法案に盛られておる老齢年金保険給付金でありますが、この程度ではたして最低生活保障ができるかどうか、これは数字を見ればだれしも一目瞭然おわかりになると考えておるのであります。私は一つの事実問題について計算してみたのでありますが、私の計算が間違つておるならば訂正いたしますが、二十年勤続いたしまして報酬月額が一万五千円である夫婦二人の家族でありますと、これの標準報酬月額が一万六千円ということになつております。この一万六千円の千分の五に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて得た額、それに加えまする基本年金額一万八千円、そうしますと一年間に三万五千二百円ということになります。これに加給年金額、妻の四千八百円を加えますと、一年間の給付額が四万四千円ということになります。そうすると一箇月三千六百六十六円、一日百二十二円という計算に私はなつたのでありますが、この程度によつて夫婦老後最低生活保障せられるかどうか。これはわれわれ日日の生活をやつておりましても、一日百二十二円程度では、どうにもできない生活状態だと思うのでありますが、ことにここで考えなければならないことは、この一万五千円の報酬月額の人が二十年間支払いました保険料は、一箇月に四百五十円払つておるということになると思うのであります。そうすると一箇月三千六百六十六円老齢年金が支給されましても、自分の支払いました保険料を差引きますと、一箇月三千二百十六円にしかならない。そういう金額におきまして、この厚生年金による最低生活保障せられたというふうには、この数字からわれわれは考えられないのでありますが、厚生大臣はこの程度でどういう生活老後においてできるとお考えになつているのでありますか。またこれで十分だとは考えていないと思うのでありますが、これらに対して将来増額する方法をお考えになつているかどうか、ありましたらそれを御発表願いたいと思います。
  10. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 実は現行法が御承知のように本年当初から平均最低月に百円、年に千二百円という、まことに今の時代から考えますると問題にならない養老年金として支給されるという状態に差迫つて参つたのであります。そこで現在の保険経済保険掛金とのバランスを保ちながら、どの程度が妥当であるか、同時に社会保障といたしましての生活保障体系に、どの程度までこれをマツチさして行くかというのが、今回の改正の眼目になつて参る次第であります。そこで一方には標準報酬を千五百円とし、一方におきまして従来の三千円から八千円までの報酬月額を一万八千円に向上させまして、その間の掛金事業主負担としたバランスを保ちながら、従来の点をそういう意味におきまして思い切つてとつ改正をしようというので、最低二万一千六百円という線を出して参つたのが、改正主眼でございます。御指摘の一万五千円の人が二十箇年勤めまする場合に、年金額としましては基本給三万六千円、お話通りだと存じます。それにそれぞれ規定にあります加給が、一人について四千八百円ついてまわるのであります。そこでこれらの年金が実はそのままの金額において生活を十分まかない得る費用に持つて来るというのが、最も理想だと考えております。二十年働いた人はもう何もせずにそのままで生活ができるというのが、一つ理想だと考えますが、しかしこれにはただいま申し上げましたいろいろな制約があります関係で、その制約最大限度公約数を出しましたのが、ただいま御審議いただいておる改正案となつて現われて参つたのであります。従いまして俸給額におきましても、そういう関係から一応一万八千円で頭を押えるという状態になりましたのは、一方掛金等をあまりに急激に増加することも、被用者負担を急激に圧迫することになるし、あるいは事業主に対しましてもその負担を急激に増加する状態になりますので、この程度負担にいたしましても、実はそれぞれの立場に対して相当負担考えております。従つて一応はこの程度負担をしながら、そうして生活保障の面におきましても、ただいま申し上げました点でこのバランスを合わせながら改正をいたす、こういう方針をとつて参つた次第であります。
  11. 黒澤幸一

    黒澤委員 今厚生大臣がおつしやられましたように、今までの厚生年金保険法から見まするならば、相当増額されたということに対しては、私も承知しております。ただ今申し上げましたように、もちろん今日のいろいろな事情から、この給付金だけによつて、みずからの生活の全部をまかなうというようなことはむずかしいことだと思うのでありますが、しかし一日幾らというふうに計算して行きますると、百二十二円程度にしかならぬ。今の百二十二円程度の額が、われわれ使用してみまして、どれだけの価値があるかということは、もうどなたもおわかりになると思うのでありますが、この程度で満足しないということになりますと、厚生年金保険の趣旨がはたして果されるかどうか、そういう疑問を私は持つのであります。これ以上は財政が許さないということに結局はなると思うのでありますけれども、それはわれわれの立場から考えますならば、二十九年度の国の予算を見ましても、社会保障制度方面に、あるいは農村関係中小企業、こういう弱い面にしわ寄せが来まして、そうして一方におきましては、再軍備関係予算が大きく増額されておる。その犠牲で結局かような少額にならざるを得ないのではないかというふうにわれわれは考えるのであります。ことに今後におきましても日本に再軍備がいよいよ強化されて行くということになりますならば、来年になりましても、再来年になりましても、なかなかこの社会保障方面予算増額ということはむずかしいことになるのではないか。われわれはこういう社会保障制度の充実ということと、一面再軍備という二つのことを並行して考えますときに、どつちを重点的にとるかということになりますならば、われわれは国民生活の安定に重点を置くのが政治であり、日本のほんとうの平和を求める道である、こういうふうに信じておるのでありますが、厚生大臣はこの厚生年金保険におきましても、再軍備予算増額されたために、この重要な国民生活安定の、いわゆる社会保障予算というものが犠牲になつておる、非常に少額になつておる、そういうことをお考えになりませんか。
  12. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは実は社会保障全体として考えますると、保安庁関係の二十九年度百三十九億に比べまして、当初三十六億、さらに三党修正によりまして二十五億及びこの戦死者遺族公務死の五万円の特別弔慰金を出すということになりましたので、かれこれいたしますと従来の七%弱が約九%以上になり、全体の歳出に対しましては一七%程度になつて来ると存じております。それで片一方を増額して社会保障がその犠牲になつたのではないかということは、実はさようには考えておりません。むしろ一兆円の予算の、今申し上げましたような状態の中におきまして、二十九年度は、政府といたしましてはその他の費用相当圧縮いたしましたにかかわらず、社会保障費は主として増額をいたしておるのであります。また直接この厚生年金保険につきましても、従来一般に対しましては一割の国庫負担をいたしておりましたのを、今回は一割五分と増額をいたした次第でございます。そういうような関係で、社会保障なかんずく厚生年金の従来の費用を削つて防衛関係諸費の方へまわすという考えもなければ、実際の状態もとつて参らず、むしろかような緊縮財政でありますればこそ、社会保障には従来以上に力を入れて行かなければならないという予算を組みまして、今回の改正におきましても一割五分を見込みまして、御審議をいただいておる次第であります。
  13. 黒澤幸一

    黒澤委員 ただいまの点は、厚生大臣と私の見解の相違になると思いますので、これ以上申し上げません。  それでほかの方面からお聞きしたいのですが、この厚生年金保険と旧軍人恩給その他を比較してみまして、どういう給付状態になつておりますか、その点わかりますか。
  14. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 大体の点を申し上げ、また詳しい点はさらに政府委員の方からお答え申し上げることにいたします。特に旧軍人関係という御指摘がありましたが、最近、旧軍人関係では、その遺族というのが中心になつて、最も額の大きい部面を占めておるのであります。この場合、扶養家族子供については、あの場合では二十歳になつているが、こちらの方では十六歳になつている。それから年金額におきましては、こちらは先ほど来御説明申し上げました養老年金の半額であり、普通の公務員におきましても同様、恩給の二分の一が扶助料と相なつております。その扶助料と相なつております金額は、戦死者遺族につきましては、二等兵、一等兵上等兵を兵長に引上げましたから、最低二万六千七百六十五円であつたと記憶いたしておりますが、それに扶養家族加給がつく、こういうことに相なつて参ります。この場合には、先ほど御引例になりました一万五千円の場合におきましては、二十箇年で三万六千円、その二分の一でありますから一万八千円に扶養加給がつく、こういうことに相なります。その扶養加給は、子供だけが十六歳と二十歳との差異がある。大体そういうことであろうと思います。
  15. 黒澤幸一

    黒澤委員 次にお尋ねいたしますことは、これは厚生委員会でいろいろ御審議をなさつた点でありますが、この厚生年金保険生活保護法による生活保護との比較の点でありますが、厚生委員会会議録を私は見たのでありますが、厚生大臣は大した開きはないとおつしやつているようであります。ただ厚生年金保険におきましては、二十年以上で少くとも四、五万の保険料は支払われておる。一方におきまして、生活保護法による生活保護におきましてはそうした負担はないわけであります。そういうことになりますと、厚生年金保険料を納めても納めなくとも生活保護法適用を受ける立場にある人にとりましては、大したかわりがないということになりまして、そういうことがいろいろな面に私は影響を与えるのではないかと思うのでありますが、その点どういうふうにお考えになりますか。
  16. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 実は生活保護法との関係比較でございますが、これは直接に比較をする場合に、きちんと必ずそろばんに上つて来るということはなかなか困難でございます。先般来厚生委員会等においてお話のありました点も一応検討はいたしますけれども、同じ状態における同じ立場においてどうなるかということになりますと、一概にそろばん通りには言えない。それならば、厚生年金をもらわぬでも、その年齢なり、あるいはそれが世帯主家族かによつて基準違つても参りますし、また地域によつても、現在の生活保護法では違つて参つておりますから、そういう点を考えて、むしろ厚生年金制度ではなしに、困つた場合には生活保護法ということでやつてつたらいいのじやないか、そういう欠陥すら生ずるのではないかということになりますと、実は私どもは必ずしもそうは考えておらないのであります。社会保障中心として年金制度を設けて参ります主眼全体から考えまして、いわゆる働いておる者が働いておる期間に、国家もあるいは本人もあるいは事業主もそれぞれある程度負担をしながら、その後における生活の一端をこれから支給し得る方法をとる、それはみずからの力によつて、あるいは国家が約束した方法によつて、それぞれの規定に示すものを本人に一生涯支給するという方法と、生活保護法の現在の建前とは、根本的にかわつて参ると存じます。生活保護法にそういうものがあるから、社会保障のその他一切のものはダブつて来る、あるいは必要ないということには一概にはならないと存じまして、理論の筋が両方を比較検討し論ずるのには立場が異なつておると考える。しかし生活保護法そのものは、いろいろの立場において予期せざる疾病その他のことでみずからの手による生活が困難の場合においては、国家がこれを保障するという体制をとつて参ることは、これまた必要だと考えております。
  17. 黒澤幸一

    黒澤委員 今申し上げましたような矛盾は、生活保護法による生活保護費と失対事業に関係しておる労務者との問題におきましても、われわれ労働委員会で問題になつたのでありますが、もちろんかような事情をそのままにしておいてよろしいという結論にはならないと思うのでありまして、当然厚生年金保険に加入しておりました者は、やはり生活保護費よりは優利に立つものでなければ納得ができない、そういうふうに考えるのであります。こういう点につきましては、将来なお増額されることを希望したしまして、次の質問に移りたいと思います。  この点も厚生委員会で問題になつたことを繰返すようになるのでありますが、厚生年金保険料の積立金は、現在大蔵省の資金運用部に管理されていると思うのでありますが、その積立金の額が今日どのくらいになつておるか、またその積立金がどういうふうに利用されておるか、その点をお聞きしたいと思います。
  18. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 積立金は現在、本年の三月末日をもちまして八百五億二千四百万円と相なつております。私どものそろばんでいたしますると、来年の三月末で、これが一千百六十九億九千万円、十年後には五千五百四十億という予想をいたして参つておるのであります。これによりまする積立金の運用管理でございまするが、これによつてどういうことをやつておるか。これは現在御承知のように、資金運用部資金にこれを入れまして、それによつて国庫においてこれを運用をいたしておる次第でございますが、積立金から還元融資をして、これらの加入者のためになるべく利用する方法をとつて参りたいというので、二十七年度からこれを開始して参つたのであります。二十七年度におきましては、積立金の中から十六億支出いたしまして、住宅と病院におのおの十億、六億という費用を融資をいたしたのであります。二十八年度におきまして住宅に二十億、病院に五億、合計二十五億を融資をいたしました。二十九年度におきまして、本年の予算におきましては三十五億を融資額として見積つておるのであります。その内訳は今後決定いたしたいと存じます。こういう状態でございまするが、今後におきましては、本年度は三十五億と相なつておりまするが、なるべく還元融資を十分に地方の要望にこたえるようにいたしまして、加入者の住宅なり病院なり、その他の事業に便宜を与えるようにいたして参りたいと考えております。
  19. 黒澤幸一

    黒澤委員 ただいまお聞きいたしますると、保険料の積立金のうち二十七年度から二十九年度までで七十六億が住宅あるいは病院に融資されておるようでありますが、残りはどういうふうになつておりますか。
  20. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 残りは、ただいま申し上げましたように資金運用部資金といたしまして、大蔵省でこれを管理、経理をいたしながら運用をいたしておる次第でございます。
  21. 黒澤幸一

    黒澤委員 大蔵省で運用していると申されたのでありますが、どういうふうに運用されておりますか。
  22. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 大体におきまして国債——長期のものも短期のものもありますが、国債でありますとか、それから政府関係機関、これは中小企業金融公庫なり、住宅金融公庫なり、国民金融公庫なり、いろいろそういつた式の政府関係機関がございますが、そういうものに対する貸付金に出されております。それから地方公共団体に対する貸付金、こういうものに出ておりますが、これが現在のところ金額では一番大きな額を示しておるわけであります。そのほか金融債に対する運用、これは農林中央金庫、商工中央金庫あるいは長期信用銀行等に出ておるものであります。その他電源開発株式会社に対する貸付金でありますとか、そういうふうに全体として政府の一般会計から出ますもの、あるいは産業投資特別会計から出ますもの、出資の形で出るもの、貸付の形で出るもの、いろいろございますが、そういうものと総合的に考えまして、計画を立てて毎年運用されておるわけでございます。
  23. 黒澤幸一

    黒澤委員 ただいまいろいろな方面に利用されておることをお聞きしたのでありますが、これはあとで私詳細な数字承知したいと思うのであります。しかしただいまお聞きしましたところを見ますと、二十九年三月三十一日末におきまして八百億以上の積立金がある。ところが勤労階級に直接関係のあります住宅、病院にはその一割に足らない七十六億しか利用されていない。そうしてそのほかの莫大な積立金というものは直接勤労階級関係のない方面に利用されておる。これは非常に不都合ではないか。もし少し勤労階級に直接関係のある施策にこれは当然利用さるべきではないか。たとえば住宅にいたしましても、病院にいたしましても、今日政府予算程度におきましては、必要面を潤すことはできないのであります。そういう勤労階級からその大部分が保険料として積み立てられたものは、やはり私は勤労階級の施策に利用されるということが当然ではないかと思います。勤労階級の積み立てたその保険料が他の方面に利用される。私は全部を動労階級に利用しなければならぬということは言いませんが、しかしながらその積立金の一割にも満たない程度しか直接勤労階級の施策に利用されないことは、私は非常に不都合ではないかと考えておるのでありますが、厚生大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  24. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 実はこの積立金の管理運用ということはたいへん大事なことだと存じます。これが管理運用を誤りますと、この保険経済を根本的に破壊する状態になりますので、従つて最も安全確実に、しかも相当な利潤を増すという方法をとつて来なければならぬ。そういう意味から実は国家の管理運用ということに現在までずつといたして参つておる次第であります。ただその点から積立金の一部を還元融資をして、そうしてこれらの関係者をなるべく潤す方法をとつて行くという点においては、私ども同感でございます。今後これらの還元融資につきましては努めてこれをいたしたいと存じておりまするが、二十九年度では今申し上げた三十五億でございますが、この点は先般の、実は利息収入くらいは、大体そのくらいを限度として融資をしていいじやないかという御意見等も、まことに緊張して拝聴すべきものであると存じております。今後かような点につきましては、つとめて大蔵省と連絡をいたしまして、努力をいたして参りたいと存じております。
  25. 小島徹三

    小島委員長 黒澤君にちよつと申し上げますが、他にもたくさんの質疑者がございますので、できるだけ……。
  26. 黒澤幸一

    黒澤委員 もう終ります。ただいま厚生大臣は、今後やはり勤労階級の直接の施策の方面になお一段と努力をされるという御答弁でありましたので、それを信頼いたして、さように努力されることをお願いしたいと思うのであります。  なお私この機会に一点ただいまの質問に付随してお願いいたしたいことは、御承知のようにただいま労働組合が中心となりまして、全国各都道府県に労働金庫ができております。現在三十数府県に労働金庫ができまして、ここに預金が約三十億からされておるというような状態になつております。これに対しまして、各地方庁におきましても相当額の預託をされております。私はこの労働金庫の重要性ということは、今日の労働組合関係労働者の福利施設といたしまして、非常な効果を上げていることを身をもつて現在感じておるわけであります。今日の労働階級生活安定の道は、ただ単に賃金増額だけを求めていたのでは、いつまでたつても安定しないということを、労働組合においても考えまして、支出面に対しての合理化をはかつて行く、すなわちこの労働金庫を通じまして、労働者の貯蓄心を高揚いたし、また労働金庫の金を利用いたしまして、そうして加盟組合員の生活必需物資等を、生産者から消費者へというスローガンのもとに、安いものを求めて行くというような福利対策施設が、今日各府県において労働金庫とタイ・アツプしてされて行つております。これに対しましては、地方の都道府県におきましても非常な御協力をいただいておるのでありますが、政府におきましても、この労働金庫に対しましては、今御質問申し上げましたこの保険料の積立金のうちから相当額の預託をいたしまして、そうしてこの労働金庫の使命がより以上果せるような処置をとつてもらいたい、私はこの点は特に厚生大臣にお願いしたいと思うのであります。この労働金庫に対して、この保険料の積立金のうちから預託をしていただけるお考えがあるかどうか、ぜひこれはやつていただきたいと思うのでありますが、それに対する御答弁をお願いしたいと思います。
  27. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは大蔵省関係で答弁していただく方が適当だと思います。私どもの方では大蔵省とよく連絡して検討してみたいと思います。
  28. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 お尋ねの点でございますが、この労働金庫に直接資金運用部資金を融資するあるいは預託するということは、現行の資金運用部資金法の建前からはちよつとむずかしいわけでありますが、ただ現在におきましても労働金庫に対しましては、地方の府県に対しまして、その財政調整資金として金を出してやり、その資金の中から府県が労働金庫に融資するあるいは預託するというような措置は、一部は災害等の場合にすでに実施したこともございます。そういつたような方法で現にやつておるわけでありますが、なお労働金庫に対しまして、先ほど来も厚生大臣からお答えになりましたような趣旨から、こういう厚生年金から預かりました資金の運用として、その資金の趣旨から考えまして、いろいろそういつた方面に対する運用につきましても、なお十分検討して考えて参りたいというふうに存じておるようなわけでございます。  つけ加えて申し上げますが、先ほどいろいろ厚生年金の預託金に対しまして、勤労者厚生資金として運用している金が非常に割合が少いというようなお話がございましたわけでありますが、ただいま申し上げましたように、労働金庫に対しても、非常に間接の形ではありますが、そのほかに資金運用部から金が出ておるような問題もありますし、勤労者厚生資金ということで、特にこういう名前をつけて、厚生年金関係のものとして出しておるものは、先ほどお話がありました二十七年度十六億、二十八年度二十五億、それから二十九年度は三十五億の額を予定しておるのでありますが、お示しのような勤労者関係の資金といたしましては、もちろん資金運用部から従来も出ておるわけであります。たとえば地方債の中におきまして、地方の病院あるいは住宅関係の資金でありまするとか、あるいは国民金融公庫に対する融通資金でありまするとか、そういつたような勤労者関係の資金が勤労者厚生資金と銘打つて出したもの以外にも、従来からも出ておるわけでありまして、そういうものを合計いたしますれば、大体毎年厚生年金の預託金が増加いたしますが、その増加いたしまする額程度あるいはそれ以上のものは、広くそういうものを集めて参りますれば出ておるわけでありまするから、御説のような趣旨はこれからも十分考慮して参りたいとは思いますが、現在までの実情もさようになつておるということを御了承願いたいと思います。
  29. 黒澤幸一

    黒澤委員 時間がないようでありますから、一点だけお伺いしたいと思います。これは議題外になつて恐縮でありますが、非常に重要な問題でありますので、お伺いしたいと思います。実はこの点は厚生省の療養課長さんにお聞きしたいと思つたのでありますが、療養課長さんが本日はおいでにならないそうでありますから、大臣にこういうことがあるということだけお耳に入れておきたいと思うのであります。それは昨年の十二月末ごろから、生活保護法によりまして国立療養所に入院しておりまする結核患者の医療券、あるいは付添看護券、そういうものがひんぴんとして打切られて参つておるようであります。また生活保護法によるにもかかわらず、自己負担金が非常に増額されまして、入院しておる患者の人たちは非常に今日不安動揺しておるということが全国的な情勢であることを私は耳にしておるのでありますが、政府はかような必要な、しなければならない結核患者の医療券、あるいは付添看護券というようなものをだんだん打切つておる。どうしてこういうやり方をなさるのであるか。私はこれは社会保障費の赤字が相当出ておると聞いております。多分昨昭和二十八年度の社会保障費予算の四分の一は赤字になつておるのじやないか、というようなことまでわれわれは耳にしおります。この赤字を埋めんがために生活保護法による濫給ということを是正するのだという名目のもとに、さようなことが各国立療養所において行われておるのであります。しかもそのやり方が非常に苛酷なやり方をされております。半強制的にそういうことがやられております。たとえば排菌無処置の患者が医療券を打切られておる。あるいは細君の収入がいくらかよくなつたということで、その差額だけ自己負担が増加されて来ておる、あるいは親が死亡したので、生活費がそれだけ楽になつた、その分だけ自己負担額を増加しろ、また遺族年金をもらつておるから、医療券は出せない。付添看護券の場合には福祉事務所の係員がちよつと見ただけで、この人は付添いの必要がないというような非常に高圧的な強制的なやり方をされておる。病院の医師はこれには付添いをつけなくてはいけないという証明までも出しておるにもかかわらず、これをどんどん地方の福祉事務所あるいは地方事務所におきまして打切りをやる、あるいは付添い看護をさせないというようなことがたくさん出ております。時間がないので私はこまかく申し上げませんが、栃木県の国立療養所については現在六百七十五名おります。これはみな結核患者でありますが、そのうち四百五十名は生活保護法による入院患者であります。ところがこのうち五十九名が医療券の打切りをなされあるいは付添い看護婦を押えられておるとか、退所を勧告されておる、あるいは自己負担額を多くされておるというような一割以上の人たちがこういうやり方を昨年末から現在やられておる状態であります。こういうことがどういう厚生省の指示なりによつて行われておるのか、またそういうことを急激にやらなければならないのであるか、しかもこのやり方が非常に苛酷な残酷なやり方であるということを私はここにカルテをもつてはつきり申し上げることができる。たとえばある人は毎日のように喀血をやつております。これに対して付添い看護婦をつける必要はないというので、毎日喀血しておるにもかかわらず、ただ一人置きつばなしにしておくというような事実があるのであります。時間がないので、私はあとで厚生省に参りまして療養課長なり係の方に事情をこまかにお話して、適当な御処置をお願いしたいと思うのでありますが、こういう点を厚生大臣はお聞きになつておるかどうか、またこういう点についてはどういう御処置をとられておるのか、この点をお聞きしたいと思います。
  30. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 実はお話の点の栃木県の国立療養所につきましては、詳細はまだ承知いたしておりませんが、ただ医療費の支払いが昨年後半以来ずつと急激に増加いたしました。これは従来は直接に支払つておりましたので、そのために医療費の支払いが遅れておつたのであります。場合によりますと数箇月遅れておつたという状態でありましたから、昨年の夏から社会保険診療報酬支払基金の方から支払うことにいたして、支払いの方法をかえたのであります。かえました結果、従来おそらくストップしておつた支払い要求なりはその月分が確実に請求されるようになり、従来は月に医療費が大体十億程度でありましたのが、月に約十五、六億程度に急激に増加をして参つたのであります。そのために診療をいたされた方は、確実にその月のものが翌月に払われるというようにたいへん便宜になつたのでありますが、従来からの予算経理におきましてはただいま申し上げたような急激な変化を来し、従来のストツプがだんだんそこで整理されて来る。それを最初の間はおそらく昨年の年内一ぱいぐらいで大体平常の状態に復するのではないかと考えておりましたが、そうではなしにそれはずつと続いて参つたのであります。こういう関係で当初予算におきましては二百六十四億の予算を計上しておつたのが、国庫負担の見込みが二百九十六億、約三十二億円ほど赤字の状態を見込むようになりました。従つて二十八年度の二月であつたと記憶いたしますが、とりあえず年度内に予備金から十二億円支出いたしまして応急の処置をいたし、また本年度は当初予算において前年度の支払い遅延に対して二十億、三党修正において五億円であつたと存じておりますが、それだけの分を増額していただいて、これらの支出をいたしたわけであります。そういう関係で、実は一時支払いが遅れておつたことは全国的に事実であつたのであります。これは直接こちらで経営いたしておりますから、従つて療養所の国立の場合におきましては、一般の開業していらつしやる診療所あるいは病院等にはなるべく御迷惑をかけずに、内輪の方でやり繰りをするという意味においてさような状態が起つて来たことは事実であると思います。しかしそのために入つている人たちを出したり、あるいはなお治療を要する状態にあり、かつまた生活保護の当然の該当者である人に、そのような状態のために無理に費用負担させたり、あるいは当然重症の者を付添いをとる、こういう意思はございません。事実としては今申し上げたようなことでございますが、そのために患者自体に対して治療を中途でやめるという方針は全然持つておらないのであります。栃木県の国立療養所の場合につきましては、ひとつ十分事実を調査いたしまして、善処いたしたいと存じております。ただ全体として考えますと、療養所等の場合におきましては直り切つておる患者が実は相当あります。仕事とかあるいは住宅とかいろいろな関係で、むしろ出ずにおられるという場合が相当あるのであります。しかしこれも医療上からはもう当然退院していただいてけつこうでありましても、社会全体の立場から考えれば、そう急激にあまり無理をすることは適当でないと存じまして、就職を世話したり、あるいは家を探したりして、そうして出ていただくという方法をとつておるような次第であります。まして治療の中途で無理に治療を打切るという方針はとつておりません。ただいまの場合につきましてはよく調査をいたしたいと思います。
  31. 滝井義高

    ○滝井委員 先般厚生大臣お話をしたことがありますが、これは全国的な国立の療養所から、現実に菌の出ておる患者、あるいは黒澤さんのお話なつたような喀血しておる患者を出しておるという陳情がたくさん参つておるわけであります。これはひとえに生活保護法予算の引締めの結果がこういう情勢になつて来ておることは確実なんです。そればかりではなくして、一月から米価が上つた、その米価が上つた予算の配分が各国立療養所に参らないために、副食費が現実に削減を受けておる。米代に副食の費用をまわすために非常に副食の待遇が悪くなつておるということは、現実の事態として現われており、その陳情がたくさん参つておるのであります。これはきわめて重大な問題でありますので、速急に全国の国立療養所をお調べになつて、そしてその対策をしていただくことを切に要望いたしておきたいと思います。
  32. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 承知いたしました。
  33. 小島徹三

  34. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間がないそうでありますので、ごく簡単に質問いたしたいと思います。まず具体的な問題で疑問のある点から質問いたしますが、このたびの年齢の引上げによりまして、一番困りますのは坑内夫の場合であります。この前に本厚生委員会の公聴会で、和田氏から述べられておるようでありますけれども、これはむしろ実情を知らない人が述べておるようであります。問題は、最近の傾向では、十四年間坑内夫であつて、坑外に上つて来るという場合よりも、むしろ逆な場合が多い。従来は大体各会社とも五十歳が停年で、そして現在でもそれをほとんど断行しております。五十五歳というものは坑内夫にはありません。ほとんど五十歳が停年です。これはどの会社でもその通りにやつておる。そこで温情的といいますか、人が足らないときには、五十歳で停年になりますと、今度は坑外に上げて五年間使う、こういうことも従来はしておりました。しかし現在はほとんど五十歳でやめさしておるわけであります。そういつた場合に、年齢が引上げられるということになると非常に困るわけですが、特に次のような場合に困る。それは引揚者等が非常に現在多いのでありまして、三十五歳以上くらいから入つて来ている、そういたしますと、最初は坑外におけるわけですが、生活が非常に苦しいものですから、逆に坑外から坑内に志望して下るわけです。そうしますと当然十五年未満でやめて行かなければならない。こういう事態が起る。それが五十五歳で資格ができればいいのですけれども、六十歳ということになりますと、十年間の空白ができるわけです、これを一体どういうように処置されるのかお尋ねいたしたいと思います。
  35. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 坑内夫も従来の年齢を五年引上げまして、五十五歳といたしたのであります。しかし従来の関係者は、従来の既得権と申しますか期待権を尊重いたしまして、これが完全に五十五歳から実施するまでには——これは順次して参りますから、もう十五年なり二十年後でないと完全にそこまで参りません。従来の方は既得権、期待権はそのまま生かしている、今後新しくする人たちに対しまして五十五歳というのをいたす予定でございます。これが改正法の根本でございます。ことに坑内夫の場合において三十五等の相当な年輩から入坑をし坑内夫になられた場合におきましては、十一年三箇月間やつておられますと該当をする、こういうふうに改正案ではいたしております。ただ年限はそういたしておりますが、開始の年齢は五十五歳、こういうことでございます。
  36. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも大臣ははつきりおわかりになつていないようですが、引揚者が入つて来たというのは終戦後なんです。なるほど従来戦前から炭鉱におつた人は御存じのような特例の既得権もあるでしよう、期待権もあるでしようけれどもむしろ現在から入るというのではなくて、終戦後に入つて来ておる。そして十分な恩恵に浴さない。こういう関係になるわけです。それが敗戦のために引揚げて来ているのがかなり多い数字なんです。炭鉱の六割程度数字か現在は引揚者、こういう状態なんです。それで私は特に聞くわけですが、坑外に最初生活しておつて生活が非常に苦しい、そこで坑内に志望して入つた。従来でいいますと、坑内の方は志望者が非常に少くて募集して歩いても坑外の方が多いという現象でした。ところが現在はそうでなくて、賃金が低いものですから逆に坑内に志望する人が多い、こういう状態になつて来ておるのです。そうしますと当然十五年未満で停年になつて来る。しかも会社の方は定年制をびしびしやる。こういう状態ですから今度六十歳というので飛ぶわけですから、その間十年まで行かなくても経過措置がありますからあるいは七、八年になるかもしれませんが、とにかく非常な空白があるわけです。それをどういうふうに御処置なさるのかお尋ねいたしたい。
  37. 久下勝次

    ○久下政府委員 ただいまのお尋ねの点私からお答え申し上げます。坑内夫の老齢年金受給開始年齢を五十五歳に原則としては引上げておりますけれども、この法律が成立をいたしました場合に、そのときに現に坑内夫である人については、従前の通りの開始年齢資格要件で年金を支給いたすことにしております。その点が附則第十一条に明記してございます。いわゆる期待権の尊重ということをいたしたつもりでございます。なお、五十五歳に一挙に引上げるのではございませんで、同じく附則の第九条第二項にございますように、坑内夫につきまして、今後の問題といたしましては、二十年たつた後に全部の人か五十五歳になるというような場合でございまして、さしあたり法律施行のときから三年間は従前通り五十歳で開始をし、漸次一歳くらいずつ引上げて、二十年後に五十五歳になるというような措置をとつておるわけであります。この点は坑内夫以外の一般勤労者について五十五歳を六十歳に引上げました場合にも同様の措置を考えておるわけであります。すなわちこのことは、お話のように現在の停年は一般的には坑内夫は五十歳であり、一般の労働者は五十五歳である例が多いことを承知しております。そういう方面に対する影響を少くいたしますために、二つの点におきまして経過措置を講じておるわけでございます。
  38. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 十条の経過措置はわかりましたが、十一条の関係、現在坑内夫であれば当然五十五歳が適用される、こういうことがよくわからないのです。現在受給資格はないのです。将来において発生するという場合です。
  39. 久下勝次

    ○久下政府委員 その点につきましては附則第九条第二項の規定、先ほど私が申し上げましたように、これは坑内夫に関する本則の読みかえ規定でございまして、一応原則的には五十五歳開始にいたしておりますけれども、その生年月日に応じまして五十歳、五十一歳、五十二歳、五十三歳、五十四歳というふうに順次漸進的に五十五歳という原則を適用するような考え方でおりますが、さしあたり三年間は現行法通り五十歳の開始ということになります。
  40. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 なるほど老齢年金の受給年齢の読みかえ規定があるわけなんですが、しかしこれを見ても、今私が申しましたことは救われないと思う。本質的にこの問題があると思うのですが、そういう実情が私は十分わかつての立法がされていない。これは非常に遺憾だと思うわけです。今お話を聞きましても、現在坑内に在籍しておる者、また資格がない者、なるほどここに年は書いてありますけれども、この年の関係だけではうまく行かないと思う。この点を十分ひとつ勘案してもらいたい。またあとの厚生委員会でも討議していただきたいと思う。年齢の引上げが行われておりますけれども、これは能力のない、こういう者もあるでしよう、あるいはまた社会的条件が老齢者は入れない、こういう場合もあり得るだろうと思う。なるべく多くの人が長く働くということが好ましいことでもある。しかしこの法律だけが六十歳としても、はたして経営者が労働組合との関係で停年制を上げるかどうかということは疑問です。むしろ逆の方向に現在は進んでおる、こういう状態の中で政府としてはこれだけで能事終れりとするのか。それとも、いやしくも法律によつて老齢年金の支給開始をする時期を上げたのだから、当然その他の立法、たとえば労働法あるいはその他の方法によつて停年制というものに対する制限を加えるのか、この点についてどういうように考えられておるかお尋ねいたしたい。
  41. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 ただいまのお尋ねに対しましても私からお答えを申し上げます。停年制の問題というのは、主として労働協約等に基いてできておる制度でありまして、別に何ら法律上の根拠のない制度でもあると考えます。さような関係もございまして、法律によつてその問題に規制を加えるということは、現在の厚生事務の段階におきましては無理ではないかと思つております。ただお話のように確かに実際問題として五十歳なり五十五歳の停年制がしかれておるところも多いということを承知しております。ただこの制度自身としていろいろ検討をいたしたのでございまするが、年金支給開始の年齢というのは、一つはやはりどうしても労働可能の年までは働いていただきたいという考え方が基本に立つておるわけでございます。そういう点からいろいろな資料を検討いたしますると、まず日本人の平均余命が最近逐年著しく延びております。この法律制定のときと今日では非常な差がございます。さような点が一つの理由でもございまするし、また諸外国の事例を見ましても、五十五歳なり五十歳で年金の支給開始をやつているものはほとんどない実情でございます。さような関係一つ。それからもう一つは開始年齢を五歳動かしますことは、実は労使の保険料負担相当大きな影響がございます。現行の通りにしておきまするのと、この改正案のように漸進的な処置をとるにいたしましても、その程度をやるのとの差では、保険料率に一割四分、一四%くらいの開きが出て参ります。いろいろな点を勘案いたしまして、私どもとしては厚生年金制度自体としては五十歳、五十五歳の開始を五十五歳、六十歳に原則としては上げるという処置をとるのが妥当だという結論に達したわけでございます。ただ社会的な影響を考慮いたしまして、先ほど申し上げましたように二十年間という長期間にわたる漸進的な措置を講ずることにいたしまして、おのずからまた社会の実態もそういうふうにかわつて来るのではないだろうかという考え方でやつたものでございます。社会の実態がかわらず、また実際問題としてはそういうふうなことをやることが無理であるという事態になりますれば、私どもの見通しの違いでございますから、その際になつて検討してしかるべきだというふうに考えている次第でございます。
  42. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この年金制度というのはやはり長期計画のもとに立てなければならないのでありまして、みな厚生年金に入りましたときから非常な期待をしておるわけであります。それが年齢引上げになりますと、御存じのようにフランスでさえ大ゼネストを起しておる。二歳でも三歳でも相当大きな争議になつたのですから、ましてや五歳ということになりますと——これは本来、もしも受給資格者がいてもらつておるということになればたいへんなことなのです。しかしまだだれも今までもらつた者がないので関心がないから、これが単に委員会等で審議して通過する、こういうことなのですが、これがもし実際国民が非常な関心を持つておるならば、一歳でも引上げようというのだつたらたいへん大きな院外の闘争が起るだろう。フランスなんかでも御存じのように二歳ぐらい上げるのにあれだけストライキが起つたのですから、私はこれはきわめて重大な問題だと思うのです。しかし今平均寿命が長くなつたということを言われましたが、これは労働者の労働し得る期間が長くなつたという意味ではないと思う。あるいは医薬の発達その他によつて子供が死ななくなつたとかいろいろありますけれども、なるほど引上げることによつて保険の経済はうまく行くでしよう。また寿命が長くなれば保険経済は困るでしよう。しかしながら労働し得る能力が長くなつたという判定はつかないと思うのです、あるいは若干そういう要素があるかもしれませんが、労働し得る能力の期間が長くなつた、従来は五十歳あるいは五十五歳であつたのが今度は六十歳になつたという根拠は見出し得ないと思うのです。そこで私が先ほど質問いたしましたように、何か労働協約その他についての規制をする考えはないか。これは全然厚生省の管轄でもないし、また年金制度考え方からはそういうものは考えておらぬということですけれども、現実の問題としてこれは動く社会の法律であるのでありますから、動く労使関係をどういうように規制するか、こういうことを考えずして五十歳や五十五歳が論ぜられるわけはない。でありますから法律まで行かなくても、政府はよく勧告をする、こういうことが考えられますが、一体労使双方に今度養老年金あるいは老齢年金はかように年限を上げたから、停年制は従来五十歳であつたものを五十五歳にしろ、五十五歳であつたものを六十歳にしろということを勧告する意思は大いか。このくらいの行政的な措置をとらなければ、単に上げただけでは、その間に生活ができなくて死んで行くということしか意味しないと思うのですが、大臣はどうですか。この点は単に法律であなたの方が引上げたたけで、社会はそれでついて来るとお考えになるか、別個の行政的措置を講じなければこれに即応した態勢にならないとお考えですか、再度質問いたしたいと思います。
  43. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 実は停年制について東京、神奈川、埼玉、山梨に限つて一応調査いたしました結果、これらの停年制に関する規定を中心に検討いたしますると、調査事業所百五十九箇所について停年制の規定のないところが三十一個所、停年制の規定を設けております事業所が百二十八箇所であります。その規定のある百二十八箇所の中で、在職年数なり、男女、職階等の区別なしにしておりまする事業所が九十八箇所、区別を設けておりますところが二十四箇所、その他不明が六箇所になつておりますが、この九十八箇所について調べますと、五十歳を停年にしておりますところが一箇所、五十五歳が八十八箇所、六十歳が八箇所、六十五歳が一箇所でございます。大体五十五歳が多いと思います、それから六十歳、これが現状のようでございます。この停年制を設けておりますところでさらに停年で打切つてしまいますところが六十一箇所、あとの六十七箇所で停年後において期間の延長をしておりますのが三十九箇所、嘱託の制度を設けて入れておりますのが十六箇所、再雇用いたしておりますのが六箇所、その他が六箇所、大体はこう延ばしておるようでございます。これらの実情等を調べまして、先ほど局長から申し上げました点を勘案しながら今回五十五歳並びに六十歳という一つの検討をいたしたのでございますが、それもいろいろな面に影響するところが多いのであります。従つて一度にこれを実施するというのはあまり急激なことになりますので、二十年という一つの経過規定と、三箇年すえ置き規定を設けまして順次地ならしをして行く。ことに老齢年金を全体的に考えてみますると、各国とも五十五歳というのはほとんどないのでございます。これは体質が日本とは違うと言えば別なのですが、ほとんど六十歳以上で、ひとり日本が従来五十五歳並びに五十歳という状態でありました。これは何も各国がそうだからというわけではありませんが、こういう状態が大体大勢であると考えております。そういう点から——それならば今後勧告等て延ばすような方法はという点でありますが、これは労働関係ともよく相談いたし、検討いたしてみませんと、簡単にはこの厚生年金だけの立場から検討することは困難であると考えております。
  44. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今お示しになつた資料によれば、ますます現行法を置いておかなければいけない。こういう資料しか出ていない。さつき延長することができるのが三十九箇所、こういうことでありましたが、延長ができるというのは、ごく特殊な技能者で、その人がいなければ会社が非常に困るという人だけで、一年に一人出るか二人出るかわからない状態である。また嘱託なんというものは、全部の会社の中で二、三名おればいい方です。そういうことをお示しになつても、実情は従業員が二、三万おるような会社でただ一名か二名が嘱託です。ほかの人は関係ない。それも特殊な関係である。こういうことであつて、そういうデーターをお示しになれば、ますますこれは五十五歳でおかなければならない、こういうことを非常に強く感ずるので、お調べにならなかつたらいいのですが、調べてここで発表されますと、われわれは非常に痛切にそのことを感ずるわけです。ましてや五十五歳の停年でやめるというのはむしろ少くて、現実は二、三年前に慰労金を出してやめさしているのです。五十五歳の停年まで勤められる人は非常に少い、むしろ五十二、三歳でやめさせておる。要するに肩たたきといいまして、課長が呼んで、君ひとつやめてくれぬか、こういうことを言うのです。ですから、実際問題としては非常に困つた状態が起きる。それから、今発表になりませんでしたが、坑内は五歳下つて五十歳です。私は筑豊炭田におりますが、全部五十歳、こういう状態であります。でありますから、現在の炭鉱あたりでは退職金ももらえないのがほとんどであります、ですから私はこの点はひとつ十分勘案していたたきたい。私がここで幾ら質問しましても、では六十歳にしよう、五十五歳にしようとはおつしやられぬでしようけれども、これはきわめて重大な問題であろうと思う。どうも輿論が沸騰せぬものですから、すらすらと通るのですけれども、これはもし受給者が現在おつてそういう状態が起るということならば、たいへんな問題ですけれども、どうせ金額が少いから、大したことをしてもしようがないというので、あきらめているのかもしれない。それほど年金に対する考え方がない。このことを私は強調しておきたいと思います。  続いて標準報酬月額でありますが、昭和十六年三月十一日にこの法律ができておりますが、その前に労働年金がありますけれども、この法律ができましたときの標準報酬月額と、その当時の健康保険の標準報酬月額とは大体同じものであろうと思いますが、その当時の事情をお聞かせ願いたい、
  45. 久下勝次

    ○久下政府委員 この法律が施行されたのは昭和十七年の六月であります。標準報酬月額で出ておりますが、その当時は最低が十円、最高が百五十円、ちようどその当時昭和十七年の二月から昭和十九年五月まで健康保険は同額になつております。船員保険は、十五年の六月から二十年の三月まで、十五円から百五十円、最低額が五円上つております。そういう状況であります。大体お話通り同じであります。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は詳細に調査することができなかつたのですが、今の説明によりますと、大体十円から百五十円といえば同じであります。健康保険と大体同じであるということになりますと、現行法の三十二条の四箇月分というのは、当時期待しておつたと思うのです。これは本来ならば違約金でもとりたいところです。最初加入するときには、四箇月といつて加入させておいて、そうして今度はこういうふうに改正してだんだん減して行く、こういうことで、違約金をとりたいところですけれども、これは法律ですから、そういうわけに行かない。私なら国会を相手どつて訴えようかと思うのですけれども、どうも四箇月分というのは、当時かなり私は考えられておつたと思う。ILOの条約なんかによりますと、これは四〇%ということもあります。そうすると四箇月よりも多いのですが、当時労働者がむしろ非常に圧迫されたというか、あまり労働者のことを考えなかつた時代ですら、四箇月という線が出ている。これはやはり私は堅持すべきだろうと思う。あるいは保険経済がうまく行かなければ、経過措置等で弾力性を設けてもいいかもしれない。しかし四箇月という本法はかえるべきでないと思う。今こういう基準をかえるということ自体非常に問題があると思う。たとえば労災にいたしましても、死んだ場合は千日分、こういつて金額について指示しているわけではない。でありますから、この四箇月をなぜかえられるか。あくまでも厚生大臣としては四箇月を死守して、どうも保険経済がうまく行かないということになれば、経過措置で若干勘案してもいいと私は思うのですけれども、この四箇月という本法を動かすということは、これは純然たる契約違反である。債務不履行だ。一体どうしてかえられたか、お尋ねいたしたい。
  47. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは定額制という一つ制度を設けたのがその一つであります。それからもう一つは、報酬比例に勘案いたしたのであります。その点から申しますと、大体八千円以下におきましては、三千円以下が六〇%という状態になりまして、上ほどそれは減つて参りますが、従来よりも率は多くなつております。
  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 終戦後の、非常に日本経済が逼迫しておつたとき、正常な形でなかつたときのことは私は申し上げるわけではない。しかしこの厚生年金法ができたときは、正常ではなかつたかもしれませんけれども、四箇月という保証をしているわけです。とにかく入れば四箇月もらえるという期待をしている。私はちようどこの法律ができて一年目に会社に初めて入つてカードを渡されたとき、あなたは四箇月もらえますよ、こういうことを言われた。ところが、その後非常な変遷があつて、そうしていよいよ受給資格者ができるというときには、やはり四箇月という制度にし、現在また法律があるのですから、経過措置は別としても、やはり本法をいじるべきでないと私は思う。本法をいじつて、ことに金額を法律できめるなんという、こういうばかげたことはありません、これは物価の変動その他があるのですから、標準報酬月額金額は別として、本法を金額で定額一万八千円とか、そういう書き方というものは、立法上問題がある。でありますから、同月とか何日とか——ことにあなたは計画性ということを言われるが、長期計画ならば月で書かるべきで、現行法をいじるべきでないと私は思うのですが、一体四箇月にしたら金がどれくらい足りませんか。
  49. 久下勝次

    ○久下政府委員 私からお答え申し上げます。今回の厚生年金保険法改正考えます場合に、従来の建前であります平均標準報酬の四箇月分という考え方を大幅に変更いたしたのでございます。それは報酬比例で年金給付を行うということに、論理的にも実際的にも非常に不合理な点が出て参るのでございます。この点は、社会保障制度審議会が第一次勧告以来定額制を主張しておられる重要なポイントだと私ども考えるのであります。なぜかと申しますと、まず第一には、国庫負担が高額所得者のためにたくさん行く、低額所得者のためには低くなる、こういうところが一番矛盾でございます。それからもう一つは、何分にも最低賃金制がわが国では確立されておりません現状におきまして、事実三千円という最低標準報酬のわくに該当しております被保険者が、現在二十三万人ほどおるわけでございます。そういうふうに低額所得者が非常に多い場合に、これを一律に報酬比例でやるということになりますと、低額所得者に対する年金給付額は、その割合が非常に低くなつてしまつて、高額所得者によくなり過ぎるというようなこともございますし、また将来の国民年金というものを考えました場合にも、相当大幅に定額制を取入れた方が、この種の社会保障的な年金制度としては適当であるという考え方のもとに、今回の改正におきましては、定額制を大幅に取入れたということに、実は大きな特色があるのでございます。これがいいか悪いかは、いろいろ御批判がある点だろうと思いますけれども、少くとも社会保障に直接御関係しておられる社会保障審議会、あるいは社会保険審議会等におきましても、定額制の建前をとるべきだという意見は非常に強いのでございます。そういう考え方から、私どもとしては大幅に定額理論に近づきながら、しかも従来の制度であり、また実際の国民感情に合うと思いまする報酬比例を若干加味するというような、折衷的な案をとつたわけでございます。四箇月というのは既得権だと言われますけれども現行法から見れば、非常に低い標準報酬のわくを押えてしまつて、ただ四箇月だけとつて行くという建前が、現行法でございますから、その面から見ますれば、今回の改正はいずれにしてもよくなつておりまするし、また先ほど大臣が申し上げましたように、低額所得者には四箇月よりも多くなります。四箇月というと、三割程度きり年金が参らぬのでありますが、今回の案で参りますれば、月額六千円ぐらいの低額所得者までは、今回の改正の方がよくなつております。そういう意味で、高額所得者には現行法よりも不利にはなりまするけれども、そういうふうな考え方で今回の案をつくつたわけでございます。
  50. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間がないので簡単に申し上げますが、なるほど定額制を入れたから、四箇月というのはやめた、こういうことならよくわかります。なるほど労災なんかと違つて、これはやはり定額制を多く取入れる、むしろ定額制だけでもいいという議論すらありますから、この四箇月という報酬に直接比例した問題を排除して、そして、改められた、この点はわかるのですけれども、私はやはり経済変動がある状態においては、弾力的な規定を設けるべきだ、こういうことを主張するわけであります。  時間がありませんので、次に進みたいとおもいますが、先ほども質問がありました五人未満事業所の場合、これは今数字をお示しになりました。そして労働事情がわからない、こういうことを言われました。私もそうだろうと思います。しかしいくらあなたか今後研究すると言われましても、研究のしようがないのです。だれも研究してくれません。それで私は、これはやはり経過措置を設ける。本法には全部適用さして、五人未満事業所については何年度から実施する、こういう経過措置を設ければ、これは役人はいやおうなしに必ず調べなければなりませんから、予算をもつて調べる。現在のように五人未満は全然捨てて置いて本法をつくると、だれもまた何年たつても実情がわからない、こういうことなんです。現在いろいろ統計がありましても、五人未満がわかつた統計がないのです。いろいろわれわれも調べましたけれども、十分な把握がわれわれは残念ながらできません。しかしこれはできないからといつて、放置しおつたのでは、何年たつてもできなのです。ですからこれは五年なら五年後、三年なら三年後には実施するのだ、こういうことにして予算をおとりになれば、必ずこれはできるのです。実態が把握できる。ことに厚生年金の場合は全部が恩恵を受けるのですから、カードのようなものを持つて、あるいはそこの事業所に行き、あるいはこの事業所に行つて、業主から印紙か何かはつてもらつて、そうしてある一定機関に持つて行く、こういう方法をとれば、——今日雇い人夫がやつておりますが、あの日雇い保険のような考え方で、その手続でやれば、非常に簡易にできる。しかし厖大ですから、技術上あるいは困難かもしれませんけれども、私はでき得ると思う。ですから私は、現在実態を十分把握されておらないならば、当然本法では全部適用をするようにして、経過措置にして、何年後に五人未満のものは適用する、こういうようにされるべきが適当である。ことに大臣の御趣旨ですと、やはり目標としてはそういうことを考えておる、こういうことですから、私は本法は全部適用することにして、五人未満事業所については経過措置を設ける、こういう考え方をなされる方がけつこうであると思うのですが、大臣はどういう御所見であるか、お尋ねいたします。
  51. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは先ほど来申し上げましたように、五人未満事業所につきましては、実は私の方でも十分調査したいと思います。ちようど全国百十五箇所の保険課及び保健所の出張所がありますから、これらを動員いたしまして、これを調査いたしたいと思います。その調査の結果、納付の内容等を相当検討する必要がないか。今までの普通の場合と同じような給付を今おつしやるような方法で経過措置をするだけでは不十分ではないか。おそらく私どもが一応現在つかんでおる状態から申しましても、何か給付の状態その他を検討する余地がありはしないか。従つて調査の結果、それらを検討いたしまして、給付の種類、給付の方法、給付の額等においても検討を相当要するのではないか。そうしないと、ただ同じようにいたしました場合には、——これはだんだん将来国民保険に及ぼします場合においても、その場合には、先ほどの御意見にありました定額というものが一つの根本になつて参りますから、そう参りまする一つ段階においても、これは十分調査をして、給付の種類、方法、内容等をそれにマツチいたしますようにいたして、この保険の体制を整えて参りたいと考えております。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今から研究するということですけれども、しかし法律ができて、もう十何年たつておるのです。常にその点は問題になつておる。また一般の失業保険にいたしましても、あるいは労災の方にいたしましても、全部日本の保険制度というものは、あなただけを責めるわけではありませんけれども、五人未満事業所を全然顧みていない。ですから調べようがない。あなたがいかに力まれても、保健所なんかを通じて調べると言われますが、それは無理ですよ。保健所なんかを通じてどう調べるか。現在でも保健所は予算を削られててんてこ舞いをしておる。それを通じて調べるなんてことはまつたくナンセンスです。あの基準監督署すら調べられない。ですからやはりこれは法律で当然規定して、何年度には施行するということにしますと、これはどうしても調べる法律上の義務ができる。あなたがいかにそういうお気持でございましても、またおかわりになるかもしれません。ほかの方から見れば、またそれは元の大臣が私的に言つたのだということになりますと、言質をとつてもだめです。私は法律でやはり経過措置で——無理を言つておるのではない。あなたがそういうお気持であるならば、法律でやる、さらに給付内容があるいは無理であるということであるならば、それを経過措置でやられてもけつこうである、かように思つておるのですが、大臣どうですか、経過措置でやられるというお考えはないわけですか。
  53. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 五人未満事業所はさきに申し上げましたように、俸給の体系なりあるいは勤務の状態なりがたいへんまちまちであろうと思います。しかも勤務年限の問題等も考え合せまして、そういう点から考えますと、これをただちに今の状態において五人以下をある一定の経過規定だけでいたしますと、一般の方に対する保険経済相当な重圧をむしろ加えるおそれはないか。そうすると、その間にずつと検討をして、いよいよ実施のときにこれを保険給付の内容なり、率なりを検討したらいいじやないかということになりますと、また当時の約束と違うということになりますから、その点は十分検討した上で、給付の率なり内容なりを五人以下に即応するような一つの体系をとつて、そうして進めて行くことが一番妥当ではないか。今ただちにこれを五人以下まで拡張いたしまして、さきに申し上げました相当たくさんの数を受入れるという方法をとりますことは、従来の被保険者に対しまして一種の危険、経済的な圧迫を生ずるおそれがあると考えておる次第でございます。
  54. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その中小の企業家に保険料の面であるいは若干の圧迫を加えるということは考えられるが、現在の被保険者に圧迫を加えるということは考えられない。また賃金の内容が非常に不明確だと言われますけれども、これはごく簡単です。たとえば実物給与でやつているものはそれを換算すればいい。これは基準法にそういうように書いてある。あるいは一箇月賃金でなくて、日給である、あるいは日給であつて半分は月給であるというものも、現在の基準法によつてさつと細分されて、あるいは三箇月以上にわたるものは含まないとか含むとか、ちやんと書いてあるのですから、何も賃金形態、内容というものは複雑性を持つてない。ただ問題は、業者と労働者の負担が若干過重になりはしないか、そうでなくても安い賃金である、そういうことを感じますけれども、御承知通り三千円から始まつておるのです。五人以下だつてやはり三千円から始まつていますよ。調査によれば、あるいはアルバイトその他で二千円未満のものもありますけれども、大体三千円から始まつているのですから、これは何も複雑でない。ただどうして積立金をとるかというような点、こういう点はやはり若干問題があろうと思う。そこで日雇いの被保険者のようなやり方をすれば、一月分ずつ払つて行くのですから、どこの事業所に転々といたしましても、とにかく日本のどこかに勤めておる。そうしてそれが二十年たつて、こういう状態で行けるのですから、私は非常にむずかしくめんどうだということは起り得ないと思う。また現在入つております被保険者に迷惑をかけるということはあり得ない、さように考えるのですが、どうも自分の頭で考えられて、えらい複雑になさつておるのではないか。決して複雑ではない。賃金なんかでも複雑なものをちやんと解明して、部分にわけて、この賃金はこの部分に入るということがはつきりしているのですから、大臣はどうもそういう事情にうといようですけれども、何も複雑でなくて、ただ印紙や何かをどういうふうに張つて行くか、こういう点が問題であろうと思います。政府委員でけつこうですから御答弁を願いたい。
  55. 久下勝次

    ○久下政府委員 私から若干数字の見込みを加えまして申し上げたいと思います。  昨年厚生年金保険法、健康保険法を同時に改正をしていただきまして、約六十万人くらいの新規適用者に拡張したわけであります。この場合保険料徴収の基礎になります標準報酬というものが非常に下る見込みを立てておるのであります。また事実そうでございます。ただ厚生年金保険の方は御承知のように現行が八千円で頭打ちになつております。従いまして、その標準報酬の面に現われております数字は大したことはございません。現在三万六千円に引上げられております健康保険法を例にとりますと、従来の被保険者全体の年間を通じての平均標準報酬は、昭和二十九年度において、一万円を若干越えて、一万四百円程度になると予定いたしております。ところが昨年十一月から施行いいたしました六十万人の新規適用者分につきましては、いろいろな資料からとりますと、標準報酬は七千八百円程度にしかならないのでございます。結局先ほど大臣が申しました三百万の五人未満の被保険者が入つて参るということは——私どもの想像では、おそらくこの標準報酬はもつともつと低いのではないかと考えるものであります。そういたしますと、同じ比率で三百万人の非常に標準報酬の低い人を多数かかえ込むということになりますと、既存の被保険者の料率にまで影響するおそれがあるのではないかということを心配しておるものであります。その点を財政的にもよく具体的に検討してかかりませんと、既存の被保険者保険料負担あるいは事業主保険料負担にも影響を及ぼすおそれがあるということを考えるものでございます。  それからもう一つは事務的な点であります。現在私どもは、健康保険、厚生年金保険及び船員保険の仕事をいたしますために、全国に約五千人の職員を配置してございます。これは最近、年々の行政整理によりまして逐次減つてはおりますけれども、しかし大幅に新規適用の被保険者かふえます場合は、若干ずつ増員も認められております。それらの基準になつておりますのは被保険者の数と事業所の数であります。先ほど来大臣が申されましたように、現行の厚生年金保険の被保険者は、七百六十万ほどありますが、事業所は二十二万余にすぎないのであります。ところが五人未満のものに適用いたしますと、三百三十万の被保険者に対して百三十万という多数の事業所からいろいろな届出をとつたり、保険料の徴収をしたりすることになるわけであります。これを現行の五千人の職員について、被保険者数と事業所数の比率で職員をふやすといたしますと、機械的に従来の基準で計算いたしますれば、約二万人の増員が必要になります。そういう問題も私どもとしては行政的に十分検討してかかりませんと——これはもちろん事務費ですから国庫の負担にはなりますけれども、しかしながら、その点で二万人の人がふえるということになれば、第一建物から考えてかからなければならないというように、実際問題としていろいろ非常にむずかしい問題がからんでおります。決してこれは都合で延ばしておるわけではありませんので、それらの点について十分確信のある資料を得ました場合に、適用範囲を拡張したい、こういう考えであります。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間がございませんので、最後に一点だけ今の点について質問いたします。  なるほどお話を聞いておりますともつとものような話ですが、やはり前提が置いてある。すなわち標準報酬月額の下の人が入つて来るという御心配なら、上の方の人からも保険料をとつたらいい、何も一万八千円で押える必要はない。保険料は千分の幾らというのできめるのですから、当然上の方を野放しにしてとればよい、その点をお伏せになつて、下の方だけを問題にするということはどうも何かごまかしがあるようであります。それほど財政が窮迫しているならば、やはり上の方も野放しにする、少くとも船員保険程度あるいは健康保険の程度にされれば、さらにその点はふえて来る。それをわざわざ財源をお捨てになつて、そうしてきゆうくつな保険経済の中でおやりになろうとするから、非常に矛盾があると思います。この点を私は申し上げておきたいと思います。  それから、なるほど事務費の点でなかなか困難はあろうかと思いますが、これは今とつております厚生年金の積立金徴収の方法でなくとも、もう少し簡易な方法がありはしないか。ことに五人未満の場合は労働者の方でもよく事業所が移りかわるわけでありますから、それを何とか簡易な方法にかえて、そうして会社からとるのではなくて、何か手帳のようなものをもつて積み立てて行く、しかも印紙か何かを張る、こういうような方法を御考慮になつたら非常にいいのではなかろうか、かように考えまして、参考意見を述べて、私の質問を終りたいと思います。
  57. 小島徹三

    小島委員長 それでは午前中はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十分休憩      ————◇—————    午後一時五十三分開議
  58. 古屋菊男

    ○古屋(菊)委員長代理 休憩前に引続き会議を再開いたします。  厚生年金保険法案議題とし、質疑を続行いたします。井堀君。
  59. 井堀繁雄

    ○井堀委員 去る七日の厚生委員会で二、三お尋ねをいたしましたが、その際重要な点で聞き漏らしておりましたので、この機会を利用いたしましてお尋ねをいたしたいと思うのであります。この年金改正の中で被保険者にとつて非常に重要視され、かつこの保険の精神から行きましてもきわめて貴重な点は年金金額にあると思うのです。そこでこの年金金額を算出されました基礎的考え方なり数字の根拠についてまずお尋ねいたしたいと思うのであります。今度の改正は各表に展開されておりますが、その中で改正案による年金額表を見ますると、現行法で二十年千二百円、二十五年で最高千八百円、これに対しまして十五年最低で二万七百円、最高三十五年で五万五千八百円と表示されておるわけでありますが、この金額だけを見ますると、かなり大幅な増額に見えるのであります。そこでかかる金額はどこに根拠を持たれたかについて、前回お尋ねしたときには、生活保護法などを引例されておりましたが、これではちよつと納得ができませんので、この点について少しく詳しく伺つてみたいと思うのであります。
  60. 久下勝次

    ○久下政府委員 私からお答え申し上げます。給付額を決定いたしますためにいろいろな観点から検討いたしてみたつもりでございます。まず第一は労使の負担を大幅に増さないようにしなければならないという要請が相当強くございましたので、その点を一つの要素として考えたつもりでございます。第二は、それとは全然逆の意味におきまして、現在の老齢年金かあまりにも低額に失しますので、これをある程度説明のつく程度までは金額を上げたいという、両々二つの相反する要求をいろいろな計算をしつつ検討して参つたつもりでございます。一昨年厚生省といたしまして社会保険審議会に非公式に試案を出しました当時、その試案によりますると、定額部分を月額千円、年額一万二千円にいたしまして、そのかわり報酬比例がこの原案では千分の五になつておりますのを千分の十にするというような比率で御相談を申し上げたのでございます。ところでその当時はさらに標準報酬の点につきましても三万六千円という一つの試案をつくつたことがございました。問題は結局先ほど申し上げました第一の負担を増すべきでないという一つの要請もございましたので、その点についていろいろの面から検討を加えてみたつもりでございます。まず標準報酬のわくの問題につきましては現行最高額八千円でありますものを一躍三が六千円に持つて行くというような改正は、他の法律におきましても一挙にそう大幅な引上げをするということは行われたこともございませんし、漸次情勢に応じて引上げをしておるような実情でもありまするので、この際厚生年金保険法におきましては、二面における負担増ということを考慮いたしながら、とりあえず一万八千円程度標準報酬のわくに押えましたつもりであります。なお料率の面につきましても、別の資料で差上げてございますように、さしあたりは現行の保険料率の引上げをしないで行きたいというふうな考え方をまず基本的にとりましたので、将来におきましてもこの原案によりましても若干の料率の引上げはやむを得ないものと考え、その計画もいたしておりますけれども、これとてもあまり将来の被保険者なり事業主に大幅な負担増をかけますことは、いわゆる完全附加式の欠点と申しますか、そういうふうなものにぶつかるおそれもありますので、引上げをするにしても大幅な引上げでなく済むようにというような考え方を取入れました次第でございます。そういうような若干抽象的ではございますけれども両面の要請を考慮に入れつつ、まず給付の額の面におきましては先ほど申し上げた試案を、定額部分をふやすことによりまして逆に報酬比例の部分を減らすというような措置を講じまして、実質的にあまりかわらないようなものを維持しながら、しかもこの程度でありますれば将来の採算もとれるだろう、かりに積立金の運用利回りが四分五厘程度に将来下るものといたしましても、現行の料率の五割増し程度で済み得るという見通しが立ちましたので、この程度に押えたつもりでございます。そういうようなわけでございまして、それ以上実は具体的な根拠というのはあまりないのでございますが、さらにつけ加えて申し上げますならば、いろいろ計算をしてみますると、一つは千五百円の定額をとることによつて六十歳になつた男子の世帯を構成せざる人に対する生活保護費の基準にも合つて参りまするし、また長い間の給付を原価にもどしましてやりますと、ちようどこの程度の定額と、またこの原案のような報酬比例をつけ加えることによりまして、ちようど被保険者本人の負担をかけました保険料全体の財源に対する比率と、それからまた給付の面におきまして被保険者に対して報酬比例として支払われます全体の給付額に対する率とが、大体一致するような数字が出て来ます。そういうふうな点もこれはあとからの説明にはなりまするけれども、説明もつく額であります。こういうふうなことになりましたので、最終的にこの程度の額におちついたのでございます。
  61. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そこで厚生大臣にお尋ねをいたしたいのですが、もちろん保険でありますから、保険の財源と見合つて計画されることはわれわれもとくと承知しておるわけであります。そのことについてはあとでお尋ねをいたすつもりでありますが、その前に今お答えになつたところによりますと、一方には保険料率の引上げもしくは標準報酬の自然引上げによる、いずれにしても被保険者もしくは使用者の負担増を不可避として計画をされたといつておりますが、よしそれを前提といたしますと、この提案趣旨で大臣が説明されておりまする点から行きましても、また各委員の質問に答えております大臣の一貫した御主張とかなり食い違つた答えが出て来るように思うのですが、この矛盾についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。率直にお尋ねしますと、先ほど私が読み上げました改正案による年金金額で、どの程度労働者はこれによつて老後保障もしくは廃疾、あるいは遺家族生活を潤すことができるだろうかということについて、大臣のこれに対する見解をもう一度具体的に伺つておきたいと思います。
  62. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これはただいまもお述べになりました、たとえば一万八千円の場合におきましての三十五箇年の場合におきましては、年金額五万五千八百円、三千円の場合におきましては二万四千三百円、こういうふうに相当開きを生ずるのであります。従つて老後生活そのものには、二万四千三百円と五万五千八百円との間の生活保障の面からすると相当な開きが約三万円年額において生じておりまするから、そういう結果に相なつております。この点につきましては従来しばしば申し上げましたように、定額一本で参りますると年限の差異だけで済むと存じます。しかしどうしても定額だけでは、いろいろな観点から考えまして、その人の労働事情による労働報酬というものを全然無視して考えることが現在の状態では困難と存じまして、従つて標準報酬を加味した定額をとつて参つたのであります。結果におきましてはそういう状態に相なつておるのであります。一方は社会生活保障の面を含めて、その人の今まで働いて来られた報酬をその延長としての老後においても考えながら厚生年金計算して参りましたので、このような結果に相なつておるのであります。これはほかの長期年金の多くの場合におきましても、いわゆる定額一本で参りません場合におきましては、どうしても報酬による差異というのは、ある程度またそれが中心なつた形において年金の上に現われて来ることは当然なことではないか、その差異をある程度基本づけて参りまする意味においていわゆる定額というので調節をして来よう、こういう考え方でいたしたわけであります。そういう考え方のもとに計算をいたしましたのが、先ほど局長からもお答えを申し上げました状態と相なつている次第であります。
  63. 井堀繁雄

    ○井堀委員 端的にお尋ねをいたしますが、先ほどの表で行きますと、十五年で最高三万四千二百円の年額でありますが、二十年と仮定しても、三万九千六百円、これを月に引直しますと、きわめて低額なものになるわけであります。これで五十五歳ないしは六十歳まで労働を提供して、老後生活をこれに頼るということは、この法の精神からいえばなるわけでありますが、こういうささいな金額で今日の社会において一体どの程度生活が支えられると大臣はお考えになつておるか、率直にこの見通しについてお伺いをいたします。
  64. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは生活保護との比較の問題に結局理論的には相なつて参りますが、しかしこれは先刻申し上げましたように、厚生年金生活保護とは趣旨も違うし、体系も違つておりますから、これをただちに比較することは困難であると思います。このままの生活でしからば三千円の場合において、かりに十五箇年のときには年金が二万七百円、三十五年になつても二万四千三百円と相なり、月にすると約二千円そこそこで、一人の場合には月二千円の生活で、これは生活保障の面からいうと、確かに困難な場合があると思います。これは地域、従来の環境、すべてを考えないといけないとは存じますが、そのままの形において考えるならば、困難な場合がないとは決して申し上げかねる。つまり完全生活保障という立場から申しますると、不十分でおることは否定することのできないことであると思います。厚生年金を完全生活保障という態勢に取上げて来る場合におきまして、その生活保護最低生活保障という線から来ておりまするから、むしろそれ以上それにプラスした、いわゆる文化生活というものを加えて行かなければならぬと思います。そういたしますると、現在の根本の考え方と計算とをかえて行かなければならぬと思います。この厚生年金一つ考え方には生活保障というものも考えながらも、その人の老後における生活をそれで完全に保障という点までは現在日本におきまする長期年金そのものが行つておらないと存じております。これはほかの年金制度の多くがそういう状態だと存じております。それはいろいろの国力、国情、すべてのものも考えて参りまするとやむを得ない状態ではないかと考えまするが、ほかの国におきましてもこの年金制度全額をもつて十分な社会生活保障という点については、必ずしも各国が同様な状態ではないと考えます。しかし理想生活保障までやつて行くのが確かに理想であると考えます。それには財源の関係あるいは国庫負担関係あるいは掛金関係等が影響して参りますから、これらの中において現在の段階としては先ほど来申し上げました金額をとつて参つた次第でございます。さよう御了承をいただきたいと思います。
  65. 井堀繁雄

    ○井堀委員 たいへん長々御答弁をいただきましたか、とにかく月二千円では今日の物価ではお小づかいにしかならぬことは、私が申し上げるまでもなく大臣もとくと御案内の通りであります。でありますからこの改正によつて保険金年金額増額しても五十歩百歩だ。老後生活保障とかあるいは廃疾によつて生活困窮に陥つた場合の、過去の労に報いる保険金としてはお話にならないということは、この金額で明らかであると考えます。そこでお尋ねをいたすわけでありますが、先ほど保険局長からの御答弁で、抽象的なお答えをいただいたわけでありますが、少しく具体的にお尋ねをしてお答えをいただこうと思うであります。このいろいろの資料の中で、われわれがこの問題を研究する上に必要な資料をかなりたくさんいただきましたが、この資料を活用いたしましてお尋ねをいたしますが、この保険金額が今日どういう基礎によつて計算されて来なければならぬかというのがまず一つ考え方でありますが、それは言うまでもなく保険は大臣がたびたび繰返しておるように、これは長期保険としての性格を堅持しなければならぬわけでございます。長期保険については、保険に加盟したときに、被保険者としては反対給付に対する約束を守つてもらわなければならぬことは言うまでもないわけであります。そこでこの保険のかけ始めは、昭和十六年あるいは厳密に厚生年金保険法になりましたのは十七年からでございますが、もう十三年の歴史を経ておるわけであります。これはどんなにりくつを言つても、この過去を否定することはできまいと思う。一口にこの改正案の内容を見ますと、過去をまつたく無視し、否定した案が出て来ていると断ずる根拠がたくさんあるわけであります。その点ついてお尋ねをするわけでありますが、当時保険金をかけて反対給付をどれだけもらうかということについては、言うまでもなく保険に規定されております金額、ここでは千二百円、最高千八百円と押えてあります。これは保険法の欠点をそのまま数字に引直したものだと思う。しかし保険の精神はあくまで標準報酬に対する、たとえば四箇月の保険料をあげるという場合においては、その四箇月の標準報酬金額はこれは最低保障されなければなりません。四箇月と仮定いたしますと、平均標準報酬が一万八千円の場合におきましては、最高は一万八千円でありますから、一万八千円に四箇月をかけると七万二千円、ところがこれは三十五年でもちろん最高です。こんなことはきわめて少い例だと思いますが、これでも五万五千八百円、この点だけをとりましてもこれは改悪であります、極端なことを言いますと、被保険者を一ぱいひつかけておる。この点は一体どこからこういう数字を出して来たか。もう一つついでに、あなたの方から出された資料がどういう理由で出されたか知りませんが、労働省で毎勤統計を出して戦後における賃金水準の推移を紹介されております。これは非常に貴重な資料だと思う。戦後の二十二年以後の推移を見ましても、平均賃金 名目賃金、実質賃金ともにかなり上昇率を示して来ている。しかしこの参考資料ではこの保険を判断する資料としては適当ではありません。というのは、この保険といたしましては、戦後における動きよりも戦前の、すなわち昭和十六年から二十二年の間の問題がむしろ重要なのです。でありますから、ここに労働統計調査月報による賃金指数を見ますると、すなわち昭和九年から十一年の基準年度、これと十六年との開きはきわめて少いのでありますが、基準年度を一〇〇として昭和二十八年までの指数を見ますると、非常な速度で上つて来ております。たとえば製造工業だけの指数をとつてみましても、基準年度一〇〇に対しまして二十八年の平均は三〇七〇四に上昇しておるわけであります。この保険が標準報酬を土台としてこの保険の原資を求めておるわけでありますから、また給付も標準報酬によつて計算されるということなら、いうまでもなくこの賃金の倍率というものを無視してこういう発案がなされるはずがないと思うのであります。どうしてこういう根拠に基いて立案をなさらなかつたか、まずこの辺についてお答えを願いましよう。
  66. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お話の第一の点でございますが、お話のように四箇月というのをこの老齢年金の基本といたしておつたのであります。この点から比較してみますると、現行法におきましては、三千円から八千円といたしておりますから、御引例になりました長期の三十五年の場合におきまして、三千円の場合は四箇月といたしますると一万二千円にしかならないのであります。一万二千円というのは月に千円であります。そこでそれをここでは二万四千三百円、約倍にいたしております。これを十五箇年にいたしますると二万円程度でございますが、そこで下の方と申しまするか、低額の方に対しましては従来の十二分の四を大体十分の六程度に引上げて参ります。それから三十五年の場合に八千円の現行法、頭打ちをいたしております八千円といたしますると、四箇月では三万二千円でございますが、これでは三万四千八百円になりまして、その点からしまするとこの改正案の方が増しております。しかし年限が短かくなりますると、お話の四箇月には足らない程度になつて参り、現行法にありません上の部分に延びて参りましたから、従つて一万八千円の場合には三十五箇年になりますと、七万二千円が御指摘のような保険料計算に相なつて来る。そこでそういう意味におきましてある程度生活保障という点を加えましたために下の方に厚くなつて来ており、従つて上に薄くなつて来る、これは定額制を一つの基本にいたしましたからそういう結果に相なつたのであります。そういう点から全体の計算が下に厚く上に薄いという点は免れない点でありまするが、定額制をずつと通して参りまして、他を報酬比例にいたしましたために、低額部面におきましては、人体六千円以下におきましては従来よりもずつとふえており、それ以上が比率といたしまして減つて来ておると存じております。  次の問題は局長から申し上げます。
  67. 久下勝次

    ○久下政府委員 年金保険の給付額の決定につきまして、賃金の倍率と申しますか、貨幣価値と申しますか、そういう問題をそのままの姿で現わすようになぜしなかつたかというお話でございます。この問題は実はこの種の制度の非常に根本的な問題でありまして、現に現行法でもとつておりまするように、年金額の決定の基準には、平均標準報酬月額というものをとつておりますことは御承知通りでございます。これは結局被保険者本人がずつと長い間の被保険者期間中でありました場合に、保険料として納付をいたしましたものに応じて年金額が支払われる。つまり金の高に応じまして、年金額が支払われるというような建前をとらざるを得ないわけでございます。積立金をいたしておりまするが、これもまた金として積み立てられておるわけでございまするので、貨幣価値の変動がありましても、実質的な金の高にはかわりがございませんから、この種の制度といたしましては、物価指数と申しますか、貨幣価値と申しますか、そういうものをそのまま年金給付の上に現わすということは非常にむずかしい問題でございます。不可能ということは申せないのでありますけれども、要するに過去の蓄積が金として残されておりまする以上、これを将来にわたつて、貨幣価値に応じて給付の額をかえるというようなことにいたしますれば、結局その財源をどこに求めるかということが問題になるわけでございます。その点につきまして私どもも過去の低額の賃金でありました時代に、確かにお話の戦争中と申しますか、インフレ前の時代の問題の扱いをどうするかということは、非常に大きな問題として取上げたつもりでありますが、そうした問題がございますので、上げ方としては最低標準報酬である三千円までの引上げをし、またすでに年金を受けております者にはその最低標準報酬の人に納付する年金額までは引上げるというような、見ようによつては中途はんぱであるかもしれませんが、その程度以上のものはできないということに結倫がなつたわけでございます。それにいたしましても、保険財政的に申しますと、将来にわたつてこれが大きな保険財政の穴になつて参りますので、私どもは前にも厚生委員会におきましてお答えしたことがあるのでありますが、そうした過去の年金の引上げ、あるいは標準報酬の引上げに伴いまして生ずべき財政的な穴埋めといたしましては、一つには国庫負担増額のことも一つの理由にいたしたつもりであります。一つには今度の増額程度では必ずしもそれがカバーできませんので、若干将来の被保険者事業主負担にかかつておる部分もあろうかと存じております。この辺は実は分類して明確に概算ができないものでありますから、こういう年金額を給付することにいたしまして、将来どれだけの財源がいるか、国庫の負担は今度五分だけ増したということを前提にいたしまして、財政数理計算をいたしました関係で、それ以上その辺が、分類をして内訳を申し上げるような基準はございませんけれども考え方といたしましては、インフレに伴つて過去に対してさような処置を講じました。この財源としては、国の負担を増したこともその一つの理由になつておりますし、またその足りない部分は将来の被保険者事業主負担の中に転嫁されて行くという結果になつております。その辺の扱い方をどうするかという問題は大きな問題でございますが、結果におきましては、今申し上げましたような結果になつておるわけであります。
  68. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そこで、お答えの中で大事なところがピンぼけしておるようでありますから、もう一度念を押す意味でお尋ねをいたします。この保険は長期保険であると同時に、老後生活保障、廃疾の場合の生活保障は、これは法律の精神が一貫しておるわけであります。でありますから、この法律の精神からこれを時代に見合うように改正しようということになりしますれば、申すまでもなく最低生活保障するに足るように引直して来なければならぬわけであります。もう一つ、今局長から御答弁がありました通りだといたしましても、この保険に対する被保険者なりあるいはこれを雇用しておりまする使用者は、昭和十六年から二十三年の間、一般男子については千分の九十四、あるいは坑内夫についてははるかに高い千分の百二十三、女子にあつては千分の五十五という、こういう標準報酬に対する比率で保険料金というものは負担して来ておるわけであります。その後改正されて、昭和九年から十一年までは千分の三十といつたような便宜的な措置も講じられておるわけでありますが、それにいたしましてもあくまで保険の掛金というものは、標準報酬に対する比率をもつて掛金をかけて来ておるわけであります。ことに昭和二十三年度の改正前における、先ほど申し上げた坑内夫の千分の百二十三という比率は決して低いものではありません。きわめて高率なものが今まで保険財源をなして来ておるわけであります。それがインフレのために、一朝新聞紙をつかまされるような結果になるということになりますと、一体その責任はどこにあるのでございましようか、この点についてまず大臣からひとつ御答弁を伺つておきたいと思います。
  69. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お話のような考え方で、実は生活保障という点を強くいたしまするために、定額制をとり、かつまた低賃金人たちに対しまして、普通で四箇月にいたしますと三千円の場合には年にしてわずか一万二千円にしかすぎませんから、これを最小限度二万七百円というのに引上げて参り、普通の場合におきましては二万一千六百円といたした次第であります。これが経済価値の変動によりまして掛金のパーセントからただいま御指摘のような状態に相なり、これは日本経済の終戦後におけるすべての点がこのような影響を受けまして、全体といたしまして私どもまことに遺憾に存じまするが、御承知のような推移からかような状態に相なつたのであります。それでこの厚生年金といたしましては、それらの経済の大変動等従来のことを考えまして、従つて従来の額等を三千円以下のものは三千円に引上げて参り、これらの負担になるべく見合うように改正をし、さらに今回は八千円の頭打ちを引上げよう、こういう点でございます。これらの経済の変動そのものは、その実態におきまして御指摘のような状態になりましたが、この全体は日本経済の受けました一つの大きな破綻であります。その破綻によつて、ことにこの厚生年金保険者に受けまする損害あるいは負担等をできるだけカバーして参つて、従来から法律で明示いたしておりました線を実現することに努力をするというのが、改正の上で苦慮をいたしました点でございます。
  70. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そこで、どうも答弁を伺つておりますとはつきりいたさぬのでありますが、簡単でけつこうでございますからはつきりお答えをいただきたいと思いますことは、先ほど私は事実をあげてお尋ねをしておるわけでありまして、繰返すことは避けますが、この保険が発足してから十三年、半ば以上が労働者の高率の負担によつて維持されて来ておる。それは十五年ないし二十年先の老齢年金、その間にも多少はありましたけれども、主として老齢年金のごとき老後生活保障のために、安んじてこういう負担に耐えて来たのであります。その高率なもので保険の基礎をつくり上げて来たにもかかわらず、インフレーシヨンというような場合に、被保険者は全面的に犠牲に甘んじなければならぬという考え方で大臣がおいでになれば、これは別であります。こういう場合に、一体だれがこの問題の責任をとり、その犠牲をどこに求めなければならぬかという点について、これは政治上の責任でありまするが、私ども考え方からすれば、こういう事態なつた場合には、国の管理する保険である限りにおいては、国においてこういう問題は処理すべきことだと考えるわけであります。もしこの考え方に違いがありますれば、それを明らかにしていただきませんと、次の話をいたしましても食い違つて来る。こういうものは被保険者が背負い込むのか、あるいは国がこういうものに対してしかるべき処理をしなければならぬものかという点についてお答えを願いたいと思います。
  71. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 そこで、これだけの掛金をし負担をし、お約束は四月分というので、当時の法律によつていわゆる養老年金を支給するという約束をいたしておりますので、今回もそういう意味におきまして、定額制を実施しながら下に厚くし、かつまた国もその責任を負う意味におきまして負担金を増してやつて参る、そういうので三千円ないし八千円の部類におきましては、大体上の方に参りますと必ずしもそう一致しませんが、大体その線からとつて参つたのであります。国家もその負担を負う意味におきまして、従来の一割を一割五分にしながら、国家負担をこれに加算して行く、こういう方法をとつて参つたのであります、
  72. 井堀繁雄

    ○井堀委員 一応抽象的には政府も責任を感じておいでになるようでありますから、具体的にさつきの例をもう一度引例いたしますが、この保険が発足いたしました当時の物価なり賃金なりの指数というものが一応この際問題になると思うのです。再々引例いたしますが、労働統計月報によりますと、基準年度の昭和九年から十一年を一〇〇として、昭和二十八年までの家計費の指数が説明いたしてありますが、東京の例でありますけれども、基準年度を一〇〇にいたしまして昭和二十八年の平均は二六八八九になつております。消費者物価指数を引例いたしましても、基準年度を一〇〇にいたしまして二十八年の平均は二八六一九の指数を示しておるわけであります。でありますからこの当時の百円の賃金あるいは百円の保険給付を受けて、それで生活に見合うような指数ということになりますと、この指数をそのまま引直して、賃金指数にこの倍率をかけて行きますと、当時月百円の老齢年金をもらえば、今日これを換算いたしますと三十六万八千四百円という年額になるわけであります。もちろんこの指数通りに出すということは、いろいろ数字上の問題があると思いますけれども、非常にあらい議論をいたしますが、こういう賃金指数の上昇率あるいは消費者物価指数の上昇率というのを外にして議論はできまいと思う、あれこれと、あまりにも間隔がある修正案であるということについては、これは議論ではなくして事実である。こういう開きを生じておるわけである。この被害は、どんなに弁解しても被保険者としては——しよつちゆう法律の改正も行われておりますから、この通りには論議できないと思いますけれども、もしこれを限定して、昭和十六年から二十三年までの間には、この議論は成り立つと思う。でありますから、この間の問題をそのままそつくり国の財政負担が困難だというだけでこの改正案を見送るということになりますと、その大部分が被保険者犠牲において、その犠牲も、とにかく千分の九十四かければ老齢年金月百円もらえるのだと思い込んでかけておつたに違いない。ところが百円ばくれましたけれども、今申し上げるように、三百六十倍にも賃金指数が上つて来ております今日においては、金額でこの問題を論議するということは、あまりにも根拠のないことでありまして、あくまで物価指数なりあるいは賃金指数の上において論議されないと、抽象的には国の負担においてとかあるいは国庫の負担金を増額するというようにしても、それは問題にならぬ程度であります。こういう点について、この改正案というものは、改悪といつても少々の改悪ではありません、まつた労働者にとつては、これは一ぱいひつかけられたと考えるわけです。非常な被害を労働者が受ける結果になりまして、かかるやり方は、これがだんだんと施行されて来ますと、労働者がこの保険に対して関心を強く持つようになつて来まして、当然過去を検討する結果になると思うのであります。その場合にこういう過去を打消すことはできません。従つてわれわれといたしましても、この法案改正に取組む場合においては、共同の責任をとらなければなりませんので、そこで政府も根本的なものについては、改正案を出す場合に、かかる指数の上に対して相当の配意がなされていなければならぬと思うのでありますが、今までの答弁によりますと、ただ金額の上だけで、特に局長の答弁で明らかになりましたが、これが何かすべて金額によつてのみ立てられているかのごとき口吻でありましたが、これはさつき例をとりましたように、標準報酬に対する比率であります。それから大臣は何かこの際フラツト制を採用したことがいかにも進歩的な響きのする答弁でありましたが、これは改悪であります。ただ思想の飛躍をすれば、年金でなく、この年金制度が漸時、社会保障制度審議会が勧告しているように、かかる社会保険というものが統合され、さらには国民全体に普遍化される社会保障制度へ発展して行かなければならぬという趣旨については、われわれは満腔の敬意を表し、支持をしているものである。しかしそれの考え方は、言うまでもなくフラット制が正しいのであります。そこで年金制と保険の違いは、今申し上げたように、ことにこの長期保険として長い歴史を持つているその過去を無視するという、そういう飛躍でこれを処理してはならぬということは申すまでもないわけです。ここいら辺に対して、私どもはどうも納得が行きませんので、お尋ねをいたしておるので、もし私の考え方、見方に間違いがありますれば御指摘を願いたいと思う意味でお尋ねしております。こういう資料に基いてお尋ねしたわけでありますから、どうぞ率直にお答えを願いたい。
  73. 久下勝次

    ○久下政府委員 私からお答え申し上げます。生計費の指数をおあげになつての御質問でございますが、先ほど申し上げました通り厚生年金保険法が明和十七年六月に施行せられました当時から年金給付額計算いたしますための基本的な要件としては、平均標準報酬額をとるということになつているわけでございます。それは結局は先ほど申した通り、繰返すことになりますが、被保険者保険料を納めましたその高に応じて年金の額が決定をされるというふうな考え方に基いておるものと考えるのであります。そこで昭和十七年当時に百円の報酬をとつておりました人が、百円の標準報酬の額にランキングされたといたします。その人は、毎月九円四十銭の保険料、その半額が本人負担でございますから、四円七十銭の保険料負担したことになるわけであります。しかしながら、その負担をされました、事業主とあわせて九円四十銭という保険料は、今日の七百億、八百億を越えました積立金のやはり一部を構成しておるわけでございまして、金の額としてはかわらないと私は思います。またそういうふうに考えざるを得ないと思います。問題はたた、お話の中にありましたように、終戦後のはげしいインフレの時代を経過しておりますので、確かに私どももそれだからといつてそのままの給付をやればいいのだということは毛頭考えておるものではございません。できるだけ過去の低い年金につきましては再検討を加えまして、現にまだ千円未満遺族年金、障害年金をもらつておる人もあるわけでありますから、そういう人は最低額の二万一千六百円まで引上げようというような措置を講じたわけであります。しかしながらそれを逆に、貨幣価値が変動したのだから、その貨幣価値に応ずるような給付を今日全部に出すべきだということになりますと、問題はその財源をどうするかということになるわけであります。私どもは率直に申しまして、実はそれを年金保険に限つてすべて国庫が負担をすべきものだという議論も簡単には出て来ないのじやないかと思うのであります。原案で御審議をお願いしているような程度の引上げをいたしますにも、相当の財源が必要になつて参りますので、私どもは二十九年度の予算の折衝にあたりましては、一つにはこうした給付を上げることによつて労使の負担相当の幅で増して参りますので、そのためにもということが一つと、それから過去の年金にそういう特別な措置を講ずることにしましたので、そのための財源としてもというようなことを理由にして国庫負担増額を要求し、結果において一割が一割五分ということに納まつたわけでございます。そういう意味で先ほど来申し上げておるのでございまして、インフレによつて貨幣価値が下落した、その影響を全部国庫が負担をしなければならないという結論は出て来ないと思いますけれども、しかし国としても責任をもつてこの運営に当つております以上、被保険者及び事業主負担に全部転嫁してしまつて知らぬ顔はできないというふうに考えまして、両々相まつてこれを解決をして行くべき筋のものであるというふうに考えておるのであります。
  74. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私も全額この差額を国家負担をすることが適当だとは考えておりません。保険はあくまで保険金によつて主たる原資が求められておりますから、被保険者並びに雇主は、保険料率の引上げが困難でありまするならば、標準報酬の修正引上げ等によるある程度負担の増は忍ばなければならぬということは当然であると思う。しかしそれをもつていたしましても、このインフレの被害をチエツクすることはもちろんできません。そこでこういう被害に対して、当面の被保険者並びに雇主にになえない部分は、国がこれを肩がわりするというようなことが、私は政治のあり方だと考えるわけです。しかし国の財政にもおのずから限度もあることでありますし、こういう保険に対して、国民全体から徴収されます税をもつてかかる負担を全額やれということも多少矛盾を私ども感ずるのであります。その全額を言うのではありません。しかしさつき私が統計を引例いたしましたのは、単なる引例ではありません。あまりにも指数の開きが大きくなり過ぎて、それに対する、局長の御答弁の言葉を借りるわけではありませんけれども、あれやこれやを取捨してつくられたというにいたしましては、こういう一番大切な家計費の上昇率、消費物価の指数のはね上りなどを軽視する——というよりはまつたく顧みられていない案ではないかということが問題なんです。この点については局長から答弁をいただくことは無理かと思いますが、これは吉田政府の全体の政策によつて決せられなければならぬ重大な事柄だと思う。前回厚生大臣にいろいろの角度でお尋ねを申し上げましたが、厚生大臣個人としてはとにかくとして、吉田政府としては、かかる保険の制度に、あるいはインフレの高進に伴ういわれなき国民の被害に対する善政などというものは、求める方が無理であるかのような感じをいたしております私として、こういうことをお尋ねするのは、かかる長期保険というものは、いつまでも吉田政府によつてつて行かれるわけでありません。過去といい、将来といい、これは政治に関係を持つ者全体の責任でありますから、真摯なる立場からお尋ねをし、回答を求めているわけであります。この点は吉田政府ではできぬ。しかしこうすべきものだという考え方は述べられてしかるべきだと思う。そういう意味でお尋ねしているのでありますから、そこは限定を置いて答弁していただいてけつこうだと思う。こういう保険に関係をいたすものとしては、こういうものに対してはやはり明らかな事実だけは討議しておく必要があると思うので、お尋ねをしているわけです。そういう意味でもう一ぺん厚生大臣の御答弁を煩わしたい。
  75. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 実は今の御議論をずつと伸ばして参りますと、結局現在の俸給体系というものが、従来の昭和十六年ころからの俸給体系と、あるいはこれに対する物価指数を比例しました現在の俸給体系と、これが一つの問題になつて来る。従つてそれらの問題が一つ中心の議論に相なつて来る問題だと存じます。この厚生年金でとつておりますのは、これらの俸給体系の中から三千円と一万八千円とを抽出して参つたわけであります。それでその抽出して参る考え方の上で、むしろ一方においては従来の四箇月——公務員の給与なんかは恩給が四箇月になつておりますが、それよりももう一歩前進した意味において、いわゆる生活保障というものを強く加味して行く必要がある。ことに最近のいわゆる輿論は社会保障というので強く論議されておりますから、社会保障意味における生活保障というのが、単なる俸給の点だけではなしに考えられて行くべきものじやないか。従つてその点から一つの定額となり、そうしてそれは従来の四箇月、いわゆる三分の一、三三%から六〇%の一つの飛躍となつて現われた、そういう状態でありますから、上の方には薄らいで来る、こういう結果をとつて参りましたので、むしろ今度の改正は、さような意味におきまして、従来の俸給体系なり、あるいは物価指数等の議論からさらに根本的な、四箇月支給という老齢年金考え方よりも飛躍をし進歩をして、そうして実質的にも金額を増して行くという体系をとつて参つたのでありますから、従来の掛金をかけておられました方々に対します負担減あるいは収入減というようなことは来さないように、また来たしておらないし、ことに本年から支給いたします老齢年金養老年金にいたしまして、今度の改正案にそつくり切りかえて行こうという考え方も実はそこにある次第でございます。
  76. 井堀繁雄

    ○井堀委員 何回お尋ねいたしましてもはつきり答弁いただけませんが、とにかく一応こういう改正案が出た以上におきましては、私どもはこれを審議しなければならぬ責めがあるわけです。審議する者の立場からいたしますと、単なる程度の相違ということでありますならば、これは立場、持場で議論があつてよい。しかしあまりにも開きがあり過ぎることは、さつきから何回も引例している通りでありまして、今度の改正案の、三十五年の一万八千円の最高を持つて来ましても年額五万五千八百円です。これを多少でも生活に見合うように改正するというからには、物価指数の動きに対して配慮するということになれば、一体どういう程度の配慮をしなければならぬかということであります。でありますから、年額五万五千というこの数字をそのまま引用することはさき申し上げた通り適当ではありませんが、たとえば一番関係の深い消費者物価指数を持つて来ましても、当時百円のものでありますから三十四万三千余円になるわけであります。ですから三十五万ばかりのものと五万五千円とは、これはあまり違い過ぎると思う。こういう違い方というものが適当でないことは、先ほど来申し上げておることで明らかであります、ことに強調いたしたいのは積立金であります。なるほど積立金が金額で勘定されることは、百も承知であります。しかし何回も繰返すようでありますが、金額だけではありません。この保険は何円なんぼの掛金に対してなんぼ払うというのではないのです。標準報酬といえども、すなわち賃金の捕捉の方法に相違こそあれ、三箇月なり六箇月なりの賃金の間で操作されたいわゆる標準賃金であることには間違いないのであります。その賃金に比例して積立の率が規定されて、おるのであります。しかも長期にわたつて積立をして来たわけであります。このことについてはひとつ大蔵省にお尋ねをいたそうと思うのでありますが、大蔵省はこの金を預かつて来ておるわけであります。もちろん保険経営とは別個にお預かりになつておりますから、まつたく金の始末だけしておいでになると思いますが、昭和十六年以来、先ほど申し上げた坑内夫を例にとりますと、千分の百二十三という高率の掛金を取立てられて来た。金額としては大した額ではないかもしれませんが、二十三年度末の金額で幾らになつて、その金額を今日の物価指数に引直すとその金額は幾らになるかという点をお答えを願いたい。
  77. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 ただいまお尋ねの点でありますが、物価指数等は今具体的な数字で御返事申し上げられないのでありますが、資金運用の建前としましては、ただいまお話のありました通り、この積立金の金額を預託金としてお預かりいたしまして、これを債券とか貸付金等に運用しておるわけであります。従つてただいまのようなお話でございますが、預かります方の預託金、これも金額計算しておられるのであります。一方それの見合いになります運用しておる資産の方も、金額計算されておるのでありまして、物価指数で動くものではありません、さような計算をいたしましても意味が大いわけであります。
  78. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それでは金額だけ伺つておきましよう。
  79. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 厚生年金関係の預託金は、二十三年度におきまして九十七億円であります。
  80. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それでは大蔵省の方では金の勘定だけしかしておらぬようでありますから、お尋ねする方が無理だと思います。そこで厚生省にお尋ねするのですが、二十三年に九十七億の金を大蔵省にお預けになつていた。この九十七億の金は先ほど私が申し上げたような比率で、標準報酬によつて徴収されて来た金であるわけです。この積立金九十七億が、先私の引例いたしました二十三年の、あなたの方から出した統計で行きますと、毎月勤労統計調査結果表による資料を私どもにくださつておりますが、これで行きますと、二十二年を百にいたして二十八年平均が九百八十倍、九八〇・七になつておりますが、もちろんこういう資料を出すからには、こういうものに対する比率を出しておると思いますが、九十七億といつたら、昭和十六年、十七年がずつと上つて来ておりますが、そういうものを見合つてどのくらいの倍率になりましようか。計算したことがありますか。
  81. 久下勝次

    ○久下政府委員 この点は今理財局長からお答えがございました通りでありまして、貨幣価値をかけてみましても、それ自身は年金給付の財源としては意味がありませんので、そういう計算をいたしたことはございません。ただ私どもとしては今回の改正にあたりまして、過去の積立金の総額というものと、これから積み立てらるべき額というものとを見合いにいたしまして、一方における給付額計算をし、そして保険財政がこの程度ならやつて行けるというやり方だけをしたのであります。物価指数あるいは貨幣価値に応じて積立金の額をかりに計算をしてみましても、それは実際に給付の財源としては意味をなして参りませんので、計算はいたしてありません。
  82. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それでは大蔵省にお尋ねいたしますが、この九十七億はどういう方面に活用されておりましたか、お尋ねをいたします。
  83. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 これも御承知のように、その九十七億だけを分離して運用しておる、こういうものではございませんので、資金運用部の資金全体として統合して、いろいろな方面に運用しておるわけでありまして、二十三年度の運用の状況を見ますと、現在と多少違いますが、大体全体の資金が千二百二十七億でございましたが、そのうちで約四割ほど、四百八十四億、これが国債に運用されております。それから大体三分の一に当りまする四百九億というものが、地方債あるいは地方公共団体に対する貸付金に運用されております。なおそのほか特殊銀行等を通じまして、いろいろな事業に出ておるというようなものがあるわけでございます。大部分のものはそういうものであります。それからなお二十三年度末の状態といたしましては、短期の食糧証券、国債証券を二百二十三億ほど、大体おもなものを申しますと、そういう形になつております。
  84. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それではお尋ねいたします。国債あるいは地方自治体あるいはその他の事業に使つておるようであります。そこで大蔵省は最近税制の改正の中で再評価税をとつておるようであります。再評価税の思想的な根拠というものは、インフレによる財政の増加を見込んでおると思うのであります。こういう労働者の貴重な、高率なお金を預かつておりますが、こういうものに対しては一体再評価をするというような思想は適用できぬものであるかどうか、その点をお伺いいたします。
  85. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 再評価に対しましては再評価税をとつておるわけでありますが、この再評価税をとつております趣旨は、再評価ということによりまして、これは有形資産を金銭で表示いたしました評価額が増加いたしますので、増加差額に対して、それを会社が再評価として出した場合に税金をとる、こういうことでとつておるわけでございます。これは再評価いたしますれば、それが通常の場合でありますれば、評価益を出したということになる。当然全体に対して普通の所得税なり法人税なりが、利益がありますれば課税されるわけであります。それに対しまして、再評価というふうな趣旨から特別の税金をとつておる、こういうようなことになつておる次第であります。ただいまお示しのような預金あるいはその他の金銭債権等につきまして、これは別に金銭で表記した評価が増加するという事実もないわけでありまするから、そういうようなものに評価益を出すということも、そういうことを債権者がするということはあり得ないことでありまして、ちよつとどうもそういうふうな有形資産の再評価という問題とは、比較にはならないというふうに私ども考えております。
  86. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねの趣旨がのみ込めないでお答えいただいたのか、あるいは承知の上でか、その辺はなんですが、あらためて伺います。再評価というものは、貨幣の場合は御案内のように、貨幣価値がずつとかわつて来ている。ところがこの使途については、詳しい説明は伺えないようでありますけれども、たとえば地方に貸付を行います。地方がいろいろな建物を建てたり、不動産に大分投資しております。あるいは一般の日銀を通じて貸し付ける場合は、営利にこれはまわつて行きます。そういう場合には、昭和十七年当時の百円のものが今日百円で社会は扱つておりません。ですから労働者が生活の面において、経済的な変化によつて圧力を受ける場合には、容赦なく、先ほど説明いたしましたような物価指数やあるいは生活指数によつて、そのものの比重で生活の脅威を受けるわけです。ところが自分たちの貴重なそのとき高い値打ちがある金を、政府に預けておいたものが、貨幣の額はかわらないからというだけで、こういうものは見送つていいのであるならば、私は資産再評価税という思想は出て来ぬと思う。すなわち十年前の建物も今日の建物も、償却をして行つてしまえばただになるわけです。それがただに近いようなものまで相当の高い価格に見積ることを、徴税の立場からではありますが、法律は要求しておるわけであります。それはなぜかといえば、実際価値を評価して行くわけであります。これは当然なことだと思う。だから価値と額と同じように議論されることは、私は不穏当だと思うのであつて、一方のものに対しては価値の移動に対してそれぞれ評価をして、このものに対しては価値の移動を認めない、貨幣だけによつてものをさしはかるという考え方は、金を預かつておる大蔵省としては、一つのものを二つに解釈することになるのではないかと思うのですが、こういうものに対する見解はいかがでありましようか。
  87. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 これは先ほど来お答え申し上げましたように、有形資産、現物資産につきましては、インフレーシヨンによりまして、実際の貨幣で表示した時価価格が上つて来る。従いまして貨幣で表現された資産、債権とか預金、そういつたものが総体的に損失をこうむる。これはインフレーシヨンの当然の結果でありまして、そのこと自体は決してけつこうなことではありませんが、事実としてインフレーシヨンの結果はそういうことになるわけであります。ただいまの再評価税のお話でありますが、再評価税によりまして、政府が再評価をさせることによつてそういう有形固定資産を持つた者に利益を与える、こういうことはまつたくないのでありまして、そういう有形固定資産は、インフレーシヨンによつて金銭で評価した時価価格が上つておることは、これは当然もうすでに事実問題として発生した事実であります。ただその事実を会社が帳簿上に表現しよう、従来のままの評価でなくて、これを増価したものとして帳簿価格を上げよう、こういうような場合に、他の法人税あるいは所得税等の関係上、その評価差額から税金をとろう、積極的に会社がしたものに対して税金をとるわけであります、それが再評価税の趣旨であります。先ほど来のお尋ねでありますが、金銭債権との権衡におきましてその点について論ずるのは、ちよつと筋が違うのじやないかと私は考えております。
  88. 井堀繁雄

    ○井堀委員 局長は事務屋さんでございますから、こういう質問をする方が無理かと思うのです。事務的にものを判断すれば、そういうふうに説明することもやむを得ぬと思います。しかしそれにしても、割切れぬものが出て来ておる。それをお尋ねをしたのです。しかしまあ今の御答弁で、認めるかのごとく、認めないかのごとき御答弁でありますから、どつちでもけつこうでありますが、事実は今日そういう矛盾が出て来ております。たとえば金銭の貸借関係に対する法律の扱い方というものは、金額で行つておるようであります。ですからインフレーシヨンによつて得した者と損した者が、極端に出て来たということであります。しかしそれならばそれで、もう全部手離しであれば問題はない。私は再評価税というようなものが出て来た思想というものは、やはり価値と価格のアンバランスを調整しなければ社会秩序が維持できぬというところにあると思うのであります。それが政治だと思うのです。  そこで厚生大臣にお尋ねするわけでありますが、今大蔵省にお尋ねいたしたところでおわかりのように、同じ国民の財産で、貨幣価値が変動したことによつて、その価値が高まつたものに対しては税をとつて来ておるわけであります。それは当然のことだ。こういり思想がある限りにおいては、かかる労働者の、しかも二十年先、十五年先を——これが労働者が立案して、労働者が自主的につくつた組織であるならば別でありますが、管理、経営一切国が全責任を負う法的保険契約であります。その保険契約がインフレの結果によつて、二十年先六十になり、五十になつたら、必ずこれで余生が送れる、またそれに近い数字をその当時出して約束したわけであります。それはインフレは労働者も一半の責任を負うわけでありますけれども、その程度は、今言う再評価といつたようなところに現われて来ておる一例を私はとつたのであります。一般社会はその後者が通用しておる。社会通念になつておる。これが不幸にして政府の管理するところだつたものですから、労働者としてはひどい目にあうわけです。これが民間経営でありましたら、九十七億というものは、大蔵省に安い利息で預けておくわけはありません。ビルデイングの一つくらいは建てたかもしれません。このとき九十七億のビルデイングを建てた日には、すばらしいものができた。その価値の増加によつて受ける利益は、被保険者が全部ここから受けることになるのであります。そういう例は社会にざらにある。こういうものに対して責任を、ただ単にここでわずか一割五分ばかりに国庫負担を増加したことで、鬼の首でもとつたように報告をせられるのはナンセンスである。そういうことは答弁にならぬのでありますから、大臣はそういう御答弁をしてもらつては困る。こういう世界全体の動きの中に歩調を合せて、社会性のある保険の改正を行わなければならぬ。大臣どうですか、その辺はもう一ペんじつくり考えてみるという回答はいただけませんか。
  89. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 御質問のお気持はよくわかりますが、根本的な問題となると、やはりインフレーシヨン等の関係から、貨幣価値論とかそういう問題になつて来ると思います。それでそういうお気持を実は私どもも十分政治として考えて行かなければならぬ。だから改正の上には、とにかく世の中のそういうインフレによるさまざまな矛盾等が起つて参りましたから、それを国家経営においてやつて参ります上には、やはり大いに政治の上に生かしながら、有無相通ずるという一つの方策をとつて行くということでは、まつたく御質問の心持はよくわかるわけであります。それで先ほど来申し上げましたように、それを考え、ことに終戦後の昨今の思想あるいは行き方というものを考えて、そうして標準をずつと上げる上げ方なり、あるいは支給する支給の仕方なりにおいて、従来のお約束を破らない程度方法を講じながら、そこになお一層下に厚く、上に薄いという、こういう方法をとつて参つたわけであります、これは考え方の上では、今お話になりましたようなことを頭の中に置いて、そうして近代的なと申しますか、社会保障的な一つの思想を織り込んで、こういうやり方をして行つたわけであります。これ自身が決して、私万全とは考えておりません。それなら十年、二十年、二十五年してから、そのままの状態生活保障されるかというと、御指摘のような点がたくさんあると思います。しかしそれにしても現在行わんとしておる、あるいは行う時期になつておる状態をはるかに改善した行き方になつている。なお今後におきまして検討すべき余地もあろうと思います。また拡張すべき点もたくさんあるのでありまするから、そういう考え方でとつてつたのであります。今お話にありますお心持はよくわかります。
  90. 井堀繁雄

    ○井堀委員 大蔵当局にひとつお尋ねいたしますが、二十九年度末でこの積立金が一千六十九億九千万円だという御答弁をいただいた。私はまだ八百億か九百億だろうと思つている間に一千億になつて、その余を越しておるとの御答弁でありますが、その一千百六十九億九千万円の積立金を大蔵省が運用部資金としてどのように——今のところはもちろんそれだけではないと思いますが、いろいろなものが一緒になつてその使途はどういう方面で、その利率はどれだけ回収しておるか。  それからもう一つついでにこの保険に利息はいくら払つているか、額でなしに利率で言つてください。
  91. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 ただいまの厚生保険の預託金の額でありますが、これは二十九年度末では予想になると思いますが、二十八年度末、二十九年三月末現在では八百十六億というふうになつております。それでこういうものをも含めまして、資金運用部の資金の総額は三月末で八千百七十三億というふうな金額になつておるわけでありますが、これの運用といたしましては、先ほど申し上げました二十三年度ころの状況と少し違いまして、国債等は相当減少しておりまして長期国債三百二十二億、短期国債三百十九億程度の額になつております。地方公共団体に対する貸付金二千八百七十九億、全体の四割五分の額になつております。次に項目として多いのは政府関係機関に対する債券とか貸付金、この中には御承知の各種の金庫とか公庫とかいつたものが入つておるわけでございます。中小企業金融公庫でありますとか住宅金融公庫でありますとか農林漁業金融公庫でありますとか、そういつた資金が入つておりますが、その分が合せまして千四百八十九億、これが次に大きい項目に現在なつております。大体これは二三%程度になつております。その次の項目としましては、金融債、これは農林中金の債券、商工中金の債券、興業債券、長期信用銀行の債券等でありますが、これが大体千百三十七億、一割七分程度であります。おもなものはその程度でありまして、先ほど申し上げました二十三年度に比べますと国債等が非常に減りまして、政府関係機関とか金融債といつたようなものが新たにふえておるようなかつこうであります。地方団体に対する融通は依然として一番大きな部分を占めておる、こういう形に大体のところは相成つておるわけであります。  ただいまの収支の問題でありますが、率で申せというお話でありますから申し上げますと、預ります預託金の利率は預託機関によりましていろいろになつておるわけでありますが、大体三月以上一年未満のものは年三分五厘、一年以上三年未満のものは年四分五厘、三年以上五年未満のものは五分、五年以上のものが五分五厘となつております。厚生年金関係の預託金は大体一番長いものが大部分でありまして、五年以上五分五厘、これでほとんど全部を預けておられるようでありますが、ごくわずか十億円ぐらいのものが三分五厘、三月以上一年未満というものに該当する預託金になつております。それから運用の方の率でありますが、これは大小の種類によりましてかえておりまして、大体政府部内の特別会計に貸すような場合には六分で一番低い。先ほど申し上げました各種の金融公庫その他に貸すような場合あるいは地方公共団体に貸し付けます場合は六分五厘で運用しております。それから金融債は市場利率でございますが、八分五厘になつております。その他一般の特殊法人のようなものに融通します債券の引受というような場合には大体八分五厘程度の利率で運用しております。大体大ざつぱに申しましてそういうような関係になつております。
  92. 井堀繁雄

    ○井堀委員 大蔵省は市中銀行の貸付金利は最高幾らまで許しておりますか。
  93. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 市中銀行等の貸付の利率というようなものは、例の金利調整の法律の規定がございまして、それによりまして協定というような形で金利がきまつておるわけでありますが、実は全部の貸出しの金利の最高制限というような形できまつておりません。また種類によりましていろいろになつておるわけであります。長期貸付とかあるいは一定限度の金額以下の小口のものにつきましては、金利調整の規定の適用はないわけであります。普通の銀行の手形割引あるいは担保手形、担保貸付等の金利のものでありますと、二銭四厘というのが一般の場合の制限になつております。いろいろ貸付の態様その他によりまして調整金利にも差があります。
  94. 井堀繁雄

    ○井堀委員 手形貸付、手形割引は二銭四厘が最高ですか。そんなことはないでしよう。大蔵省としては今市中銀行の貸付の最高は幾らまで許しておいでになりますか。
  95. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 ただいま申し上げましたように、金利調整の規定は貸出しの種類あるいは金額の大小、期限の長いもの等は調整からはずされておるものもあります。従いましてただいま申し上げましたのは市中銀行の普通の手形の割引の調整金利を申し上げたのであります。
  96. 井堀繁雄

    ○井堀委員 お答えがありませんから何ですが、大蔵省が市中銀行の貸付に対しては五銭ないし五銭五厘を許可しておるようであります。それで今大蔵省が一千何十億ですか、これだけの莫大な金に対してきわめて低利で管理しておるわけでありますが、その低利の理由は、前回厚生大臣の説明では、安全な管理ということが主のようでありましたが、大蔵省といたしましては、こういうものに対してこんな低利で、市中銀行との間に、こんな開きがある預り方が妥当だとお考えであるか、この理由について御説明を願いたい。
  97. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 先ほどのお尋ねは、貸出しあるいは手形及び銀行の金利の問題のようでございましたが、預かりの方の金利になりますと、これはやはりいろいろと市中金融機関の預かります金利その他とのバランス考えなければなりませんし、なお資金運用部の預かります利率は、これは三月以上一年未満、一年以上三年未満という非常に特殊な形態の、特殊な預金でありますので、その点等も考慮に入れなければならないと思いますが、大体現在資金運用部が預かつておりまするこの預託金の利率というものは、今申しましたように形態等が市中金融機関と大分違いますので、一概には申すことはできませんが、大体市中金融機関の長期の預かり金の金利等と権衡を得たものというふうに考えておるわけであります。
  98. 井堀繁雄

    ○井堀委員 長期金融がどういうのか私はしろうとですからわかりませんけれども、しかしこんな大きな金額を、何ぼ何でもこんな安い利息で借りられるなら、労働者はもう住宅を建てたいだろうし、病院もつくつてもらいたいだろうし、いろいろ国としてもやらなければならぬ仕事はたくさんあるのですが、みな財源がないということで逃げておる。しかしこういう金が労働者に直接還元されない、先ほどの御説明によりますと、公債以外は直接営利をやるか、あるいは地方公共団体の利潤の追求のために活用されるわけなんです。一方では特定人の保険であるからということで、国庫負担を渋るときにはこの看板を高く掲げ、労働者の金を預かつて活用する場合には、一般並の低いものにおしなべてしまう、これも保険経済がゆたかである場合にはけつこうでありますが、先ほど来私がたびたび厚生省にお尋ねして答弁をいただいております中でも明らかにされておりますように、もつと出さなければならぬということは百も承知しておるわけなんです。また出したい誠意に欠けるものではないけれども、ないそでは振れぬという説明が繰返されておる。ないどころではない。一千億を上まわるありがたいこんな大きな金が一体最低三分五厘、最高五分五厘、もつてのほかのことであります。たとえばこれと類似した資金が、公務員共済組合に見られます。一昨々年になりますか、二十七年の活用の実際成績を、私は相当信ずべき筋から入手しておりますが、七分五厘くらいにまわつております。この利ざやだけでも、政府は大分苦しい保険の中からもうけておるわけであります。もうけるという言葉は語弊がありましようが、当然保険財源に繰込まるべき財源であります。なぜこんなに安くしなければならぬかということについては、先ほど来審議の模様でおわかりのように、大蔵省としては、その低い理由について、私どもを納得させるような何か根拠があるのでございましようか、もしおありならば説明をいただきたい。
  99. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 ただいまの融通利率が非常に安いというお尋ねでありましたが、先ほど来申し上げましたように、政府の特別会計等に融通する場合は別といたしまして、一般に地方債あるいは金融公庫等に融通いたします場合は、六分五厘という利率で運用しているわけであります。これは先ほど地方のいろいろ営利事業に貸すというようなお話がありましたが、そういう趣旨のものではございませんので、やはり地方の公共的なものに充てさせるために地方公共団体に貸している、あるいは金融公庫等にいたしましても、国民金融公庫とかあるいは住宅金融公庫とか、そういつた勤労者に縁の深い金融公庫等にも出てる資金があるわけであります。それらのものに対しまして、大体国の会計に入れます場合、あるいは一般の市中の金融債というような、これこそほんとうの市中金融債に出ます場合等のつり合いをとりまして、大体六分五厘というような利率で出しているわけであります。   〔古屋(菊)委員長代理退席、委員   長着席〕 それでただいま預かります方の利率の点にも触れておつたように考えますが、大体とりまとめて申し上げますと、資金運用部の預かります方の利子、あるいは事務——これはほとんどかかりませんが、両方総合いたしまして、大体昭和二十八年度で預かります方の資金の原価と申しますか、コストは五分九厘二毛ということになつております。それから運用いたします方の利まわり、これが大体総合平均いたしまして六分二厘二毛というふうになつているのであります。それでこの差額を見ますと約三厘ほどの利ざやがある。それだけもうけているじやないかというような御意見が出ることと思うのでありますが、これが大体金額にいたしまして、今の三厘幾らというのが十六億ほどの資金になります。ところがこの資金の関係は、これはもうかつたように見たますけれども実は利益になつていない。実質的に考えますともうかつたことになつていないのでありまして、実は郵便貯金の方の利子を払いますほかに、全国の郵便局で郵便貯金を受け入れ、払いもどしいたします事務費が相当かかるわけであります。それを入れますと、実際は資金運用部の一番大きい源泉であります郵便貯金の方は、資金運用部から払つてやります利子だけでは成り立つて行かない、こういう形になつているわけであります。従いましてただいまの余りました資金を一般会計へ繰入れておりますが、これがすぐに一般会計から郵便貯金の会計の方に繰入れられまして、郵便貯金の事務費の足りないのを補つている。二十九年度から資金運用部で余まりました金は、郵便貯金の事務費の不足を補損するために、直接郵便貯金の方へ繰入れることに制度がかわりましたが、いずれにいたしましてもそういうような形になつておりますので、実質上資金運用部の資金のコストというものは、郵便貯金を集めます経費まで総合して考えますと、決して利益が上つているという形にはなつていないわけであります。
  100. 井堀繁雄

    ○井堀委員 何も安く預かつて安く貸しているということから来る利ざやを私は問題にしておらぬのです。先ほど御説明がありましたように、公債でありますとか国債であるとか、あるいは地方団体へ貸しつける、あるいは住宅金融公庫あるいは庶民金融公庫といつたような公庫に貸しつけるとかいうような金に、一体どうして厚生年金のような、血の出るようなとうとい財源を振り向けなければならぬだろうかということが問題であります。こういう財源はこういうところにやるべきでなくして、こういう金は言うまでもなく労働者のために還元融資をされるのであるならばとにかく、御案内のように労働省で管理しております労働金庫については、貸付利息を最高五銭まで許しておるわけです。それでも資金源が足りないので、地方団体やあるいは労働組合の戦闘資金までかり集めて活用しておるわけであります。こういう実情からいつても、勤労大衆がいかにその日の生活のために高利を使わなければならぬかということがよくわかるわけです。これは労働金庫を通して合理化された面でありますが、実績を見ますとおおむね高利借りかえが多いのであります。やみ金融を使つて、あるいは質ぐさを持つてつて一割以上をとられる、質屋の金融で労働者は毎日危機をしのいでおるという実情であります。それが一体地方団体にどうして労働者の金を貸さなければならぬのですか。なぜ一体労働者に還元融資をしないのか。それでなかつたら利率については——一般の市中銀行の貸出し金利として大蔵省が許可しておるというのは、いうまでもなく、この程度の金利であれば金融機関として安全性が保たれるというので許可をして、きびしい監督条件を付しておると思うのであります。これだけがなぜ一体そんなに低い率でなければならぬかということについて、どうしても労働者は納得しないと思う。こういう点に対する何らかの答弁をいただかないと、私どもの責めも果されないわけであります。ところが厚生省の答弁を聞いているとないないづくしだ。私は金利計算をしてみたのですが、数字はあなたの方が詳しいと思いますけれども、一千億に対する五分五厘の利息と七分五厘の利息、この二分の違いがどれだけの金額になるか。市中銀行は一割五分までまわつておる。決して危険ではありません。安全率を保持しながらやつております。こういうものに対して一体大蔵省は——金融機関についてはあなたの所管ではないかもしれませんが、しかし預つておるのはあなたの責任ですから、そういう点について、大臣でないと答弁しにくいところもございましようが、あなたの答弁のできる範囲内でけつこうですから、はつきりひとつ答弁願います。
  101. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 私からお答えできる限りお答え申し上げてみたいと思いますが、この資金運用部の金を預かりまして、またこれを運用するということで、政府の金融機関と似たような形を外形上はしておるわけであります。しかしやはり資金運用部というものは国の機関でありまして、しかも預かつている金は郵便貯金など、広く庶民大衆の金が集まつたものであります。あるいはただいまお示しの厚生年金のような特別の資金とか、そういつたようなやはり公共的な資金というか、広く国民一般から集まつた金という色彩が強いと思うのでありまして、そういう意味におきまして、銀行のような——これも広く一般から集めるわけではありますが、たとえば事業会社の金とか、そういつた式の金は、資金運用部の預つておる資金には入つていないわけであります。そういうような趣旨から、資金運用部の運用の建前は、やはりそういう預かつた資金を安全に確実に、しかも公共的な方法で運用して行く、国民経済全体を考えて、適切な方面に運用して行く、これがどうしても資金運用部の建前になると思うのでありまして、安全確実でしかも非常に有利にまわる、資金の使途はどうあろうとも、金利さえよけい入ればいい、こういうような建前では、これはやはり運用はできないと思うのであります。ことに実際問題として考えますと、資金の総量が現在では八千億というような額になつておるわけであります。こういうような大きな資金を、もうかるからといつてそういうふうな営利的な、利まわりのいい方面ばかりに投資するということは、実際そういうものをそれだけ求めることも困難でもありましようし、国民経済としても非常に問題じやないか。やはり資金運用部といたしましては、その事業の性質上からいいまして、国民経済上ぜひともこれはやりたいことではあるが、市中金融機関から資金を仰いでおつたのでは資金がまわらぬ場合もありますし、あるいは利率が高過ぎる、事業の性質上やりにくいといつたようなものに、やはり力を入れてやるというような立場考えなければならない。ただ利まわりが低いじやないか、もう少し高い利率の運用先も探せるのではないかというようなことだけでは、資金運用部の本来の建前から申しまして少し無理ではないか、あるいは適切でないのじやないかというように考えるわけであります。それでただいま、集まりました金をなぜもつと勤労者に還元しないのか、あるいは地方団体なんかにどうして貸しておるのかというようなお尋ねがございましたが、これは実は多少誤解されておる点があるのではないかと思います、資金運用部の資金を地方にまわします場合には、これは何も地方で勤労者に全然縁のない費用に使うということではないのでありまして、御承知のように勤労者更生資金——これは住宅とか病院とかいう方面に融資されることになつておりまして、二十八年度の二十五億円にいたしましても、住宅に二十億、あるいは病院に五億というように出ておりますが、地方債の方におきましても同じようなことがあるわけでありまして、地方公共団体に融通されました資金の中で病院の方にまわつておるものが、たとえば二十八年度について申しますと十八億円あります。また住宅関係の起債にまわつておりますものが六十四億、あるいはこまかいものでありますが公益質屋にまわつておるものが一億、地方団体を通じてそういうような方面に出ておるわけであります。  なおお示しの労働金庫につきましても、実は先ほどもちよつと申しましたが、一般の長期融資の形ではありませんが、災害に対する特別の措置といたしまして、実は昨年度におきまして、災害のありました府県の財政調整というような形でその府県に融資をいたしまして、その府県から預託金の形で労働金庫に出ました金が、昨年度は災害のときと年度末と二回出ましたので、合せて五億二千九百万円ございます。そういうようないろいろな形で、地方団体に出すにいたしましても、勤労者に縁の深い方面に非常に出ておるわけであります。  そのほか、先ほどからたびたび申し上げておりますように、国民金融公庫に対する融通でありますとか、住宅金融公庫に対する融通ということも非常に勤労者に縁の深いものでありまして、数字で申しますと、昨年度中に厚生年金の預託金の新規にふえましたものは百八十億ほどでありますが、これに対しまして、勤労者更正資金として出た金が二十五億、そのほかに今申しましたところの地方公共団体を通じていろいろそういうような方面に出ました額が八十四億、国民金融公庫に出ました金額が五十一億、住宅金融公庫に出ました金額が百億、合せまして二百六十億という、厚生年金の預託金がふえた額よりもよけい多い金額が、こういうものだけを拾つてみても昨年度において出ておるわけであります。厚生年金の趣旨からいいまして、そういう勤労者、国民大衆に縁の深い方面にできるだけ力を入れて融資して行かなければならないということは当然のことでありまして、先ほど厚生大臣からもそういうお話があつたようでありますが、私どもといたしましても二十八年度二十五億の勤労者更生資金——これは二十九年度におきましては三十五億円に増加いたしますが、なおこれから先におきましても、そういうような運用の方針につきましては、ひとつ十分考慮して参りたいというように考えておる次第でございます。
  102. 井堀繁雄

    ○井堀委員 どうぞもう少し簡単に答えていただきたいと思います。資金運用部の性格については、私ども多少承知をしておるつもりであります。資金運用部が高利まわりを追求するような営利投資を考えられるはずのないことは言うまでもないのであります。そういう意味で、ここがこの金を預かれば、金利の低いことは覚悟しなければならぬ、それはわかつておる。だからそういうところになぜ入れたかということが問題になるわけであります。しかし入つておる、それで事実を伺つたわけでありますが、事実の上で明らかにいたしましたように、このために厚生年金がたいへんな迷惑をこうむつたことは——今答弁してもらうと長くなりますし、委員長の注意もありますから、大蔵省にはお気の毒ですけれども、あとで数字は文書で私の方に回答してください。さつきお尋ねいたしました昭和二十三年の七十九億は、昭和十六年からずつと、どういうぐあいに増加して来て、それの金利が何ぼで計算されたか、その当時の市中銀行と大蔵省の貸付最高利率との比較と、金額を出していただきたい。それから大蔵省が許可しております市中銀行の最高貸付利息は幾らであるか、それと今大蔵省が厚生年金保険に利息として払い込んでいる金額は何ぼであるか、その差額をひとつ数字の上に出していただきたい。そのお願いを先にしておきます。  そこで、先ほどお話地方公共団体に貸しつけた金は必ずしも労働者と縁のない貸付じやない、ごもつともである、私もよくそれを承知しております。しかしそうであるからといつて厚生年金の金がそこに使われていいという理由にはならぬです。これは資金運用部資金の金がそこにまわつておるという説明だけなんです。  それから、一体なぜ大蔵省は厚生年金保険の独立した管理を許さないのであるか、許さぬとか、許したとかいう言葉は強過ぎるかもしれませんが、そういう要求を厚生省から受けたことがないかあるかを御答弁願いたい。
  103. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 この政府関係の特別会計の積立金等は、資金運用部に集めて統一いたしまして、総合的に国民経済に役立つような方面に運用して行く、これが基本的の考え方でありまして、これによりまして各特別会計の積立金も安全確実に運用されて行く形になつておるわけであります。そういうような趣旨から、厚生年金の積立金も資金運用部の方に一緒に集めて運用されて行く、こういう形に現在なつておるわけでありまして、これを厚生省の方だけ分離して別に運用したいという申出を受けたことは、現在までございません。
  104. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それでは厚生省にお尋ねします。二十七年度だつたと思いますが、社会保険審議会がこのことを決議して、厚生大臣に要請したことがあるはずですが、それは握りつぶしておいでになるのですか、大蔵省と交渉したことがありますかどうか。
  105. 久下勝次

    ○久下政府委員 当時のことにつきまして私からお答え申し上げます。確かに社会保険審議会が、決議の形におきましてそういう建議をされたことがございます。それはひとり厚生大臣に対してのみでなく、関係大臣である大蔵大臣にもされたのでございます。このときは、私の記憶では、社会保険審議会の会長その他関係の委員の方々が、直接大蔵省に参つて建議の趣旨を説明されたのでございます。従いまして私どもとしては、厚生大臣にあてたものを受取つておるのであります。
  106. 井堀繁雄

    ○井堀委員 とてつもないことをやつております。委員会がせつかく決議をしてもう二年にもなるのに、大蔵省へ直接交渉されていないということは、ここでとがめだてはいたしませんが、そういうことは今後改めていただきたい。希望だけをいたしておきます。  そこでお伺いしたい。大蔵省は厚生省を信用しないのかもしれませんが、保険経済を担任する役所は言うまでもなく厚生省なんです。これと資金を切り離すというのはどうもあぶなくて預けられぬということかららしいのですが、あぶないということなら、これと同じケースがあるのです。先ほどもちよつと申し上げましたように、公務員の非現業の共済会が、これと同じ趣旨のことをやつているのです。これは決して大蔵省のお世話にならぬで、直接運営して上手にやつておると私ども聞いております。こつちは大き過ぎるからぐあいが悪いというなら、その大きなものを持たしてあぶないという根拠は一体何でしようか。それからまた厚生省は、こういう金を預つてみても持ちも下げもできないという心配があるのか、この点を伺つておかないと、決議した側に対して申訳ないと思います。今度国会も決議するかもわからない。
  107. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 だんだんお話のありますように、厚生年金によります積立金が、来年末になりますと一千百六十九億九千万円、十年後になりますと五千四百四十億円という厖大な額になります。従つてこれが運営、運用、管理ということが、厚生年金一つの大きい中心をなす。一方から考えますと、これだけの金を持つておりますと、利率を相当高いものにまわして、金融界を操作するくらいの大きな力がある。しかしこの金自体の性格から考えまして、この金の独立の運営だけを考えて参りましたら、一つの大きい機関を持つて経済の変動を常に注意しながら貸出し先を十分検討して参りませんと困難な状態、危険な状態になる、不安な状態が多くなつて来る。同じ国家の機関の中でこれらを専門といたしております大蔵省が、そういう点を十分検討しながら運営をするというやり方の方が現在としてはむしろ妥当ではないか。ただ利率がもう少し有利にまわる方法はないかということが結局具体的な問題になつて来ると思います。そこで別な機関を設けましてやることはかえつて——せつかく大蔵省あたりにそういう機関があり専門的にやつているのを、それと切り離して行くという場合におきましては、事務的にあるいは経済の変動に即応するという点から考えて、一応はよいように見えますけれども、必ずしも妥当ではないと思う。従つて国家機関が許し得る、また操作し得るなるべく高いと申しますか、有利な利率に今後まわすという方向で管理して行く方が適当ではないか、かような考え方でおります。従つてこれだけ厖大な資金運営あるいは運用する場合におきましては、よほどスタツフを十分にいたしませんと、むしろ一般経済界に、ときによりますと大きな影響を与えるおそれがありますので、そういう点から考えましても、国家のそういう機関においてなるべく統制した方がよいではないか、かように考えております。
  108. 井堀繁雄

    ○井堀委員 厚生大臣の答弁はきわめて重大だと思うのです。というのは、この保険は積立金に依存する建前をとつているのです。その積立金を保険運用の部門外において論議するということは、所管大臣としては大失態である。これはたいへんな失言です。そういう考えではこの保険は立ち直りません。これはなるほど日本の金融政策を左右するような大きな金額になるかもしれません。しかしそういう考え方というものがあるならば、この改正案というものはつじつまが合わないのです。何もこういう積立金を五千五百億円にすることが目的じやないのです。ある場合には積立金を食つても、被保険者犠牲を救済するというやり方が望ましいわけであります。しかしここでそれを議論するわけではありません。でありますからここで主張いたしたいことは、積立金というものはあくまで保険経済と密接不離の関係に置かれておる建前なんですが、それを所管違いで——いろいろ伺つてみると、もつてのほかなんです。保険経済のことを一向考慮しない、労働者の実情に全然無関心な管理と運用が行われている。のみならず、労働者の生血を吸収するような貴重な金を集めて、それを政府の地方政策やあるいはその他の政策のために利用するなどは、人のふんどしで相撲をとるというくらいならまだ許されるのですが、これはとんてもない運営の誤りである。こういうものを厚生大臣がのこのこと大蔵省に預けておきましようというようなことを言うようでは、厚生大臣は本日ただちにこの問題で辞表を出さなければならない。責任を感じなければいけませんよ。これは私がいまさら申し上げるまでもないと思う。こういう問題について、今度の改正案についてはまつたく一貫したものを認めることができないので、われわれははなはだ残念であります。まあそれはそれといたしまして、大蔵省の心配されまするように、金額が非常に大きいということが金融政策に影響があるというならば、それはあくまで保険経済の中で運用することであつて、目的はあくまで厚生年金保険を円滑にすることのために用いられるのでありますから、それが大蔵省の懸念するように、日本の金融界を、あるいは金融政策を混乱せしめるような投資をやるはずはもちろんありません。あり得ることではないのであります。それは単なる杞憂であるか、あるいは離したくないから因縁をつける口実にしか過ぎないのであります。そんなことはあり得るわけはないと思うのでありまして、こういうことについては大蔵省は、早くきれいさつぱり、よそのものに割込んで行くようなことをやらないで、また厚生省もこの際、緊褌一番、かかる経済の長期保険としての理想に向つて少しでも前進するように改正が行わるべきだ。こういう改悪を意図する結果、そういうところにも一つ欠陥が出ておると思う。厚生大臣の答弁の中から、随所に厚生大臣にふさわしからざる答弁ばかり伺つて残念に思いまするが、どうぞ真剣にこういう長期保険について御検討を願いたい。ことに今お尋ねをいたしました積立金については、いろいろ懸念される点について十分注意を払うことは当然でありますが、最も合理的で民主的なる独立した保険経済の中において積立金の管理と運営が行われまするよう、適切な処置を私は要望いたしまして、まだお尋ねいたしたいのでありますが、他の同志のお尋ねもあるようでありますし、時間もありませんので、一応私の御質問を終りたいと思います。
  109. 小島徹三

    小島委員長 館俊三君。
  110. 館俊三

    ○館委員 けさからの各委員の質問及び政府の回答によつて、ほとんど私の質問したい事柄は尽きてしまいました。ことに今の前発言者の最後の言葉で、きようの各委員の質問の集約が出たと私思うのであります。そういう質問によつて厚生年金保険法に対する諸問題が浮き彫りされておると思いますので、私は方面をかえまして、二、三お尋ねしたいと思うのであります。  それは二十九年度の国家予算における社会保障費関係予算は、大体八%になるかならないか、こういう位置を占めておると思うのですが、世界各国におけるこういうものの予算における比率はどういうふうになつておるか、二、三あげていただきたいと思います。
  111. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 世界各国におきまする社会保障費比較でございますが、実は最近のはまだ手元にありませんが、二十八年度の比較が、カナダ、アメリカ、イタリア、オランダ並びにイギリスと参つております。これらを比較いたしますると、社会保障費計算の基礎が各国によつて違いまするが、この比較によりますると、歳出における割合が、日本が八五一%、カナダが一六・一三%、アメリカが三・六三%、イタリアが一一・六二%、オランダが一三六〇%、イギリスが一七・〇七%、かように表としてはなつております。それでこの社会保障費予算の範囲は集計によつて少々違う点があろうと存じますが、しかし大体の点はこれで一応は見当がつくのであります。
  112. 館俊三

    ○館委員 各国における社会保障費予算の集計のぐあいによつて違うのでありますけれども、今おつしやつた計数によりましても、日本社会保障費負担は総予算の中において非常に低いということがわかるのです。今にわかに前の調査で調べてみたのですが、一九五一年の予算では、イギリスは一八%、フランスは一五%、イタリアは一三%、アメリカは一七%というふうになつておるのでありまして、日本厚生年金保険その他社会保障費の位置が各国に比べて非常に悪いということがこれでわかる。  その次にお聞きしたいのは、社会保障費の総費用国民所得の割合では、日本社会保障費日本国民所得、これを調べてみますと、日本では国民総所得の三・九%になつておるが、この点については各国がどういうふうになつているか、おわかりであつたらお聞かせ願いたい。
  113. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 国民総所得に対するパーセントはただいまちよつと手持ちがございませんので、あとでお知らせいたしたいと思います。
  114. 館俊三

    ○館委員 私の方の調査部で調べたのによりますと、イギリスでは国民総所得の一〇・三%くらいがそれに当つておる。フランスでは九%くらいがそれに当つておる。アメリカでは八〇%くらいがそれに当つておる。われわれの調査が間違いなければ、日本の場合は総所得の三・九%くらいにしか当つておらない。こういう面でも社会保障費がいかに考えられておらないかということがわかる。この厚生年金にいたしましても、いろいろの社会保障費にいたしましても、目的はそういう社会保障にあるのでありますから、その基礎になつておる労働賃金がどうなつておるかということを考えてみると、社会保障年鑑で調べてみますと、労働者の賃金水準は一九五一年の五月で、日本の場合は一時間当りで表わすと約五十八円になつておる。ところがよその国では、アメリカでは五百七十六円くらい——数字が間違つているかもしれません。厚生年金保険については皆さんが十分お聞きになると思いましたので、別な角度から大急ぎで調べて来たのですが、イギリスでは百四十八円くらい、フランスでは百二十円くらい、西ドイツは百二十八円くらいになつておる。考えてみますと、貧弱な日本社会保障費、その上さらに貧弱な、段違いの賃金水準を土台としてけさから論じられておつたのであります。だから厚生年金保険というものは厚生年金の値いがないということを、私はここで言つているわけです。皮肉な言い方をいたしますと、日本がこの方面で西欧諸国に肩比べできるのは、結局社会保険の保険料負担で、これは世界で一番多い。今使われておる被使用者負担は、諸保険料を賃金額で割つた数字を見ると、賃金に対する保険料負担総額に対して、一九五一年で五・三%ということで、世界で一番多いのです。イギリスでは三・一%しか負担しておらない。フランスでは同じく三・一%、アメリカでは一・五%の負担になつておる。各国に比べて保険料がいかに高いかがわかるのです。こういう保険料を算定する場合において、こういうことと比較して考えると、労働者がこういう制度ができる前から保険料の全額国庫負担をしきりに言つておるのは無理もないことなんです。以上の話で明らかになつたことは、日本では、社会保障は西欧諸国の場合のように、国民の権利あるいは国家の義務として考えられておるのではないということです。これは厚生年金とか社会保障とかいろいろ言つておりますけれども、現在提出されたもの、また行われておるものは、社会保障というものではなくて救貧政策としか考えられておらないということを私は言わなければならない。今日の問題は、予算案等に現われた新政策では、そういうことを無視して再軍備費用に多くを食いとられておるのですから、さつきから私たち委員がいろいろ言うておつても、金がないということはそういうことなんです。労働省とか日経連は、国民所得に占める労働者の所得が全体の五〇%になつておるから、賃金ストツプをするとかなんとかいつて切り下げる考えを持つておるようです。しかし五〇%になつてつたとしても、この数字の中にはいろいろのものが含まれておる。保険料も含まれておるが、多分に税金もその中に含まれておつての五〇%。純粋な可処分所得的に言うならば、五〇%になつておるという政府数字には承服できない。おそらくそれ以下の賃金水準になつておると思われるのですが、厚生大臣はこの点についてどういうふうにお考えになつておるかということもお聞きいたしたい。
  115. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 ただいま国民所得についてお話がありましたが、数字が少し古いのですけれども、一九五一年、昭和二十六年の分で見ますと——これは今お示しの年度かどうか存じませんが、カナダが二・五五%、アメリカが〇・九三%、イタリアが二・八五%、オランダが三・九三%、スウエーデンが四・七一%、スイスが一・二一%、イギリスが六・八六%、オーストラリアが三・五五%、ニユージーランドが九・八二%となつておるのでありますが、日本はこれらと比べますとお示しのようにずつと低いのであります。  それから各国の保険料率の問題でありますが、これも年代等が違いますから、一概には比較できますまいけれども、大体老齢年金中心考えますと、あながち日本の率が高いとは言えないと存じます。ブラジルが被保険者、雇い主おのおの五%であります。大きい国だけを申しますと、ドイツの米英占領地区はおのおの二・八%、ソビエトの占領地区が一〇%、スイスが二%、ソ連は雇い主が三・七%から一〇・七%、被用者はなしになつております。アメリカが一・五%、フランスが被保険者が六%、雇い主が一〇%、イギリスはちよつと出ておりませんからわかりかねますが、大体各国の状態は以上申し上げたようであります。
  116. 小島徹三

  117. 島上善五郎

    ○島上委員 簡単に質問しますが、この厚生年金の巨額の資金は、今日私ども考えると、不当に運用されておると思うのであります。そのことについては先ほど井堀委員から詳細に質問がありましたが、その御答弁に私ども納得しません。それに関連して一つだけ伺いたいのは、この運用をいたしまして、大蔵省においては、二十七年度に剰余金三億円を一般会計に繰入れておるということをある公述人がこの厚生委員会の公聴会において述べておりますが、これは事実でしようか。
  118. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 ちよつとその点は私もはつきりいたしませんが、ただこういうことがあると存じます。二十七年度で五分五厘の利率の運用が五分七厘七糸となつたので、二厘七糸でございますか、それが一般会計に繰入れられた形になつておる、こういうのではないかと存じます。
  119. 島上善五郎

    ○島上委員 厚生大臣はよく御存じにならないようですが、そういうようなことが行われて、それで厚生省においてはよろしいと考えておるかどうか。これはこの運用自体に問題があるのですが、その運用から生じたそういう剰余金が一般会計に持つて行かれるということに対してまだよくお気づきにならぬというようなことでは、はなはだこれは怠慢ではないかと思う。こういう点に対して、今までのことは過ぎ去つたことですが、今後どのようなお考えをもつて臨まれるか、この際承つておきたい。
  120. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 その差額と申しますか、その金が大体お示しの点であると存じます。そこで、これは二十七年度でそういう結果になりましたので、この点は、私どもも、今後の資金の運営につきまして十分考えて行かねばならない点でありまする。従つて、先ほど来利率の問題等で、私の方からもまた大蔵省からもお答えを申し上げましたが、これらの点を考えながら、利率のみならず、運用について現在両省で折衝いたしておる次第であります。
  121. 島上善五郎

    ○島上委員 この資金の運用につきましては、すでに公聴会において、労使公益各公述人からも、同様に、民主的な管理運用の道を開いてこれを被保険者の福祉のために運用するよう、いわゆる還元融資の道を講ずべきものである、そのうちのほんの一部を還元融資したというようなことではなしに、全額そういう方面に有効に使うべきものである、こういう公述がなされておりまするし、社会保障制度審議会の答申案の中にもはつきりとそのように政府に答申しておるわけであります。しかるに、今度の法改正にあたつてはそういう点がまつたく考慮されていない。これは私どもの最も不満とする一点でございますが、これに対して今後具体的にどういうふうなお考えを持つておるかという具体案がありましたら、ひとつこの際承らしていただきたい。
  122. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お示しのように、現在は資金運用部資金法に基き、また厚生年金特別会計法に基きまして、資金運用部に預入いたし、資金運用部におきまして、資金運用審議会の議を経てこれを運用いたしておる。従つて社会保障、社会保険等の関係からの御意見等もございまするし、かつまたこれが還元融資等につきましても、本委員会等のお話等もありまするし、資金の性格から考えましても、これらの点につきまして今後十分御意見を尊重して参りたいと存じております。ことに還元融資等につきましては、一層今後そういう点に力を注いで参りたいと存じます。
  123. 島上善五郎

    ○島上委員 ただいまの御答弁では満足しませんが、それはその程度にしておきまして、あくまでもこれは、醵出した側の被保険者の福祉のために完全に還元融資をするように、民主的な運営機関を設けて、そのようにしていただきたいということを希望するにとどめておきます。  そこでひとつ厚生大臣に伺つておきたいことは、この法律は目的にはつきりとうたつておりまするが、「労働者の老齢、廃疾、死亡又は脱退について保険給付を行い、労働者及びその遺族生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」と、条文の上では実にりつぱな目的でございますが、しかしこの法律が戦時中にできました当時のねらいというものから考えると、必ずしもこの法文にある目的を額面通りには受取れないと私は思う。そのことは、この法律制定当時に相当関与しておられたと思われる人の公述の中でも、戦時態勢のもとにあつて労働者の勤労意欲を高めるために老後生活保障を行うということが必要であり、また他方においては、当時上昇した賃金の一部を強制貯蓄にかわつて封鎖し、インフレを防ぎ、さらにまた生産拡充、つまり当時の軍需生産拡充の資金に利用する、こういうことを言つておるのであつて、これがほんとうのねらいではないかと私は思う。そうして今また日本の情勢が、再軍備をするような、そのために莫大な国家費用を必要とするというようなときにこの改正を行う、何かそこに一連の思想的なつながりがあるような気がしてならない。そうではないかもしれませんが、内容から見ますとそういうふうに考えられてしかたがない。そこで厚生大臣から、この法律のほんとうのねらいは一体どこにあるのかという点に対する考えを念のために一ぺん伺つておきたい。
  124. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは第一条にはつきり申しておりまするように、「この法律は、労働者の老齢、廃疾、死亡又は脱退について保険給付を行い、労働者及びその遺族生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」のであつて、従いまして、厚生委員会における公聴会においてのさる公述人からのお話にありまするように、かつてはあるいは公述人のおつしやるようなことがあつたかどうかは私は存じませんが、それはさておくといたしまして、今の御心配のような考え方は毛頭持つておりません。ことに、現在、再軍備云々というようなことと関連させましては全然考えておりませんから、この点は率直にはつきり申し上げますが、この額面通りの精神をもつて進んでおる次第でございます。
  125. 島上善五郎

    ○島上委員 まあ大臣が答弁されるのですから、この法律の額面通りだと答弁するよりしかたがないと思うのですが、問題は内容です。この条文の目的の項にどういうりつぱなことを書いてありましても、内容が一体これに沿うものであるかどうかということが問題なんです。これはもう多くの同志諸君によつて質問されたので、私は多く申し上げる必要はないと思うのですが、二十年も保険金をかけて生活保護よりも下まわるというようなことで、一体労働者及びその遺族生活の安定と福祉の向上ということを言えるかどうか、これはまつたくおはずかしい次第だと思うのです。そこで私は内容から見て額面と大分違つている、こう残念ながらいわざるを得ないわけです。そこで私はこの厚生年金保険が官吏の恩給及び遺族扶助料比較していかにはなはだしい差があるかということについて、厚生省においてはお調べになつておると思いますが、それをひとつ参考に承りたいと思います。
  126. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これはさきにも申しましたように、額面通りと申しまするか、額面以上にこの目的に向つて考えております。ことに寄与するという文字もいろいろ検討して、はかるなんということを用いずに、今後誤解を生ずることがありませんようにいたした次第であります。そこで国家公務員遺族扶助料との場合の比較はどうだ、これも比較はいたしました。むしろ現在の国家公務員のいわゆる恩給制度におきましては、先ほど来だんだんお話になつておりましたように、百五十分の五十といういわゆる三分の一が恩給であり、その二分の一が遺族扶助料、こういう建前をとつて参つております。この点につきましては四箇月というのが先ほど来問題になつた点でありますが、むしろ今回は四箇月という行き方ではなしに、定額制に報酬を加えた、むしろ恩給よりも少くとも考え方では一歩進んだ社会保障制度をとつておる、生活保障体系をとつておる、理論的にはそうなつておる。そこで現実の問題としまして、たとえば戦死者遺族扶助料の問題が最近最も比較される問題であります。この場合に上等兵一等兵、二等兵は兵長に引上げられまして、そうして加算倍率を二匹・五倍にいたしまして、その結果が二万六千七百六十五円ということになつたのが現在の遺族扶助料であります。こういう点等を相当検討をし、かつまた生活保護法等をも検討いたしまして、さきに資料でお示ししておりますような数字を出して参つたのであります。これは先ほど来申し上げておりますように、むしろ現在の恩給考え方よりももう一つ前進した考え方で来ておると考えております。
  127. 島上善五郎

    ○島上委員 考え方が前進したかどうかということよりも、問題はやはり実際にふところに入る金額がどうなつておるかという比較をされておるかどうか、されていると申しますが、もしここでそういう資料がただちになくて御答弁できなければ、私が計算したものをここで申し上げて伺いたいのです。これは私は間違いないと確信していますが、老齢年金の場合に初任給三千円、それから最終の月収が一万八千円、それに加給一人ということで一箇月二千九百五十円になるはずです。これを公務員恩給に直しますと、最終の月収が八千百二十円の人にちようど該当する。年限が二十年で恩給を受ける場合に二千九百五十円、これは実にはなはだしい差がある。遺族扶助料の場合も同様でありまして、初任給三千円、最終が一万八千円、加給一人で千六百七十五円、この場合には公務員でありますれば七千二百二十五円の月収、こういうふうに私の計算ではなつております。これは間違いないと確信しておりますが、もしこうだといたしますれば、いかに公務員労働者との間に大きな差があるかということがきわめてはつきりしておる。考え方の上においていかに前進しておりましようとも、金額にこういう差があるということになりますれば、私はこれは労働者に対する一つの大きな差別というよりは、むしろ労働者を侮辱するものではないか、こう言つてもよかろうと思うのです。私のこの計算は間違いないと信じておりますが、もし厚生省においてこの比較数字がありましたならばお示しを願いたいし、なかつたらあとでけつこうですからお示しを願いたい。
  128. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 一応お答えを申し上げておきたいと存じます。三千円の場合は厚生年金では十五箇年の場合に二万七百円になつておりますが、恩給法では十七箇年になつておると存じます。その場合には三分の一でございますから結局一万二千円に相なると存じます。従つて遺族扶助料はその半額でありますから六千円と相なります。家族加給は年齢の相違と遺族の範囲の違いはありまするが、四千八百円、この点は同額であります。
  129. 島上善五郎

    ○島上委員 まあこの数字の点は私は間違いないと確信しますが、早急に計算したので、あとでまた十分計算をいたしまして、はつきりと確かめたいと思いますが、いずれにしましても公務員恩給自体が今日決して理想的なものではございませんが、それに比べてもはなはだしく劣つておるものであるということだけは事実であろうと思います。なお今度の改正が改悪だと思われる点が幾つかありますが、そのうち私ども納得できませんのは、年齢を引上げたということであります。これは先ほどの御答弁の中で平均年齢が最近著るしく延びた、それから労働可能の年まで働いてもらいたい、そういうような考えであるということを言われましたが、平均年齢が延びましたのは、これはたしか多賀谷君も言われたと思いますが、幼児の死亡率が低下したということ、それから結核者の死亡年齢が最近は青年よりもむしろ壮年者に多くなつておるというようなことから平均年齢が若干延びておるのであつて労働者の就労年齢が延びておるかと申しますと、事実は逆でありまして、先ほど大臣が答弁された中にもすでに九九%ほどが五十五歳停年制を実施しておるということでも明らかであります。特に最近は年齢の高い長年の勤続者は、給料が高いところから、そういう給料の高い者をやめさせて、若い給料の安い者、三分の一程度で使える者を新規に採用するというような傾向が至るところ顕著な事実となつて現れておる、そういうようなときに年齢を引上げたということはどうも納得が行かぬ、この点に対してはもう一ぺん大臣考え方を聞かせていただきたいと思います。
  130. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 先ほど局長から御答弁申し上げました以外におきましても、実は現状のままでこのように引上げますと、大体一三%ほど負担が増して来ると存じております。従いましてその一三%の財源負担という点もあわせ考えまして、年齢の五年延長というのの負担もいたした次第でございます。なお各国の状態わが国状態とが必ずしも同一でありませんから、比較することはいかがかと存じまするが、大体各国の老齢年金の開始年齢を調べますると、オーストラリアが男が六十五歳、女が六十歳、ブラジルが、おのおの六十歳、カナダが七十歳、デンマークが男が六十五歳、女が六十歳、フランスが男女六十歳、ドイツが男女六十五歳、イギリスが男が六十五歳、女が六十歳、ソビエトが六十歳と五十五歳、アメリカが六十五歳というように、多く申し上げるまでもなく、こういうふうに、各国とも老齢年金の最近の社会保障としての取扱い方が、大体その辺におちついておるのではないか、しかし必ずしもそれがただちにわが国と同様だとは決して申し上げません。今申し上げました、また先ほど申し上げましたもろもろの点を検討いたしまして、五歳ずつ引上げるということにいたしました。しかしこれは先ほども申し上げましたが、にわかに引上げることは妥当ではないと存じまして、二十年間という期間を置きまして、完全実施は二十年後にいたす。その間は順次これを引上げて行く、こういう暫定的な処置をとつて、その間のやりくりをいたす、こういうふうにいたした次第でございます。
  131. 島上善五郎

    ○島上委員 日本も二十年後にはそういう諸外国のようなよい環境になる、そうして平均年齢も延び、就労の年齢も延びるということになれば、はなはだけつこうですけれども、それは今日においてはあくまでも大臣の単なる希望にすぎないのであつて、現実とは大きな食い違いがある、これは私ども今日そのように引上げるということは不満であります。こういうふうに一方では年齢を引上げておいて、さて今度は例の加給年金子供の年齢を十六歳にしておる。御承知のように軍人恩給遺族扶養家族の際にはたしか二十歳になつておる、所得税の家族控除の際には十八歳、ところがこの加給年金子供の年齢は十六歳、ここにもまた一つの改悪と申しますか矛盾があるわけです。これも私どもはどのような御答弁がありましようとも納得が行かない点でございますけれども、この点も一応御答弁を承つておきたいと思います。
  132. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これまつたお話のように現在の恩給法では二十歳でございます。戦傷病者戦没者遺族等援護法では十八歳、この十六歳はもともと十六歳でずつとこの厚生年金は参つておるのでありますが、この考え方は労働基準法の労働年齢というものを一つの基準に考えて、従つて厚生年金におきましては十六歳というものを家族加給の年齢といたした次第でございます。
  133. 島上善五郎

    ○島上委員 最後にもう一つ。この改正は全面的な改正とおつしやつておりますが、全面的ではあるけれども、根本的な重要な点はまつたく回避して、暫定的な改正になつておる、こういうふうに思われるわけであります。そこで政府公務員恩給制度を含めた総合的な年金制度を実現するということのために、積極的に努力するというお考えがあるかどうか。私どもはぜひ名実ともに総合的な社会保障制度中核となるようなりつぱな年金制度を樹立したいものだと考えておりまするが、それに対する御所見を最後に承つておきたい。
  134. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 実は各種の長期年金制度が現在おのおのの種別によつて行われております。しかしこれらは将来当然統一し、あるいは調整して参るべきものである、こういう考え方でおるのでありますが、現在の国家公務員に対します恩給制度におきましても、先般人事院の勧告等がありまして、従つて三月二十九日の閣議であつたと記憶しますが、公務員制度調査会を設置してこれらを検討するということにいたして参つておるのであります。将来はこれらの点を極力統合調整する方向に向つて参りたいと存じます。
  135. 小島徹三

    小島委員長 これにて連合審査会における質疑は終了いたしました。本日はこれにて散会いたします。   午後四時三十七分散会