○阪田
政府委員 私からお答えできる限りお答え申し上げてみたいと思いますが、この資金運用部の金を預かりまして、またこれを運用するということで、
政府の金融機関と似たような形を外形上はしておるわけであります。しかしやはり資金運用部というものは国の機関でありまして、しかも預か
つている金は郵便貯金など、広く庶民大衆の金が集ま
つたものであります。あるいはただいまお示しの
厚生年金のような特別の資金とか、そうい
つたようなやはり公共的な資金というか、広く
国民一般から集ま
つた金という色彩が強いと思うのでありまして、そういう
意味におきまして、銀行のような——これも広く一般から集めるわけではありますが、たとえば事業会社の金とか、そうい
つた式の金は、資金運用部の預
つておる資金には入
つていないわけであります。そういうような趣旨から、資金運用部の運用の建前は、やはりそういう預か
つた資金を安全に確実に、しかも公共的な
方法で運用して行く、
国民経済全体を
考えて、適切な
方面に運用して行く、これがどうしても資金運用部の建前になると思うのでありまして、安全確実でしかも非常に有利にまわる、資金の使途はどうあろうとも、金利さえよけい入ればいい、こういうような建前では、これはやはり運用はできないと思うのであります。ことに実際問題として
考えますと、資金の総量が現在では八千億というような額にな
つておるわけであります。こういうような大きな資金を、もうかるからとい
つてそういうふうな営利的な、利まわりのいい
方面ばかりに投資するということは、実際そういうものをそれだけ求めることも困難でもありましようし、
国民経済としても非常に問題じやないか。やはり資金運用部といたしましては、その事業の性質上からいいまして、
国民経済上ぜひともこれはやりたいことではあるが、市中金融機関から資金を仰いでお
つたのでは資金がまわらぬ場合もありますし、あるいは利率が高過ぎる、事業の性質上やりにくいとい
つたようなものに、やはり力を入れてやるというような
立場も
考えなければならない。ただ利まわりが低いじやないか、もう少し高い利率の運用先も探せるのではないかというようなことだけでは、資金運用部の本来の建前から申しまして少し無理ではないか、あるいは適切でないのじやないかというように
考えるわけであります。それでただいま、集まりました金をなぜもつと勤労者に還元しないのか、あるいは地方団体なんかにどうして貸しておるのかというようなお尋ねがございましたが、これは実は多少誤解されておる点があるのではないかと思います、資金運用部の資金を地方にまわします場合には、これは何も地方で勤労者に全然縁のない
費用に使うということではないのでありまして、御
承知のように勤労者更生資金——これは住宅とか病院とかいう
方面に融資されることにな
つておりまして、二十八年度の二十五億円にいたしましても、住宅に二十億、あるいは病院に五億というように出ておりますが、地方債の方におきましても同じようなことがあるわけでありまして、
地方公共団体に融通されました資金の中で病院の方にまわ
つておるものが、たとえば二十八年度について申しますと十八億円あります。また住宅
関係の起債にまわ
つておりますものが六十四億、あるいはこまかいものでありますが公益質屋にまわ
つておるものが一億、地方団体を通じてそういうような
方面に出ておるわけであります。
なおお示しの
労働金庫につきましても、実は先ほ
どもちよつと申しましたが、一般の長期融資の形ではありませんが、災害に対する特別の措置といたしまして、実は昨年度におきまして、災害のありました府県の
財政調整というような形でその府県に融資をいたしまして、その府県から預託金の形で
労働金庫に出ました金が、昨年度は災害のときと年度末と二回出ましたので、合せて五億二千九百万円ございます。そういうようないろいろな形で、地方団体に出すにいたしましても、勤労者に縁の深い
方面に非常に出ておるわけであります。
そのほか、先ほどからたびたび申し上げておりますように、
国民金融公庫に対する融通でありますとか、住宅金融公庫に対する融通ということも非常に勤労者に縁の深いものでありまして、
数字で申しますと、昨年度中に
厚生年金の預託金の新規にふえましたものは百八十億ほどでありますが、これに対しまして、勤労者更正資金として出た金が二十五億、そのほかに今申しましたところの
地方公共団体を通じていろいろそういうような
方面に出ました額が八十四億、
国民金融公庫に出ました
金額が五十一億、住宅金融公庫に出ました
金額が百億、合せまして二百六十億という、
厚生年金の預託金がふえた額よりもよけい多い
金額が、こういうものだけを拾
つてみても昨年度において出ておるわけであります。
厚生年金の趣旨からいいまして、そういう勤労者、
国民大衆に縁の深い
方面にできるだけ力を入れて融資して行かなければならないということは当然のことでありまして、先ほど
厚生大臣からもそういう
お話があ
つたようでありますが、私
どもといたしましても二十八年度二十五億の勤労者更生資金——これは二十九年度におきましては三十五億円に増加いたしますが、なおこれから先におきましても、そういうような運用の
方針につきましては、ひ
とつ十分考慮して参りたいというように
考えておる次第でございます。