○楠本
説明員 殺菌方法につきましては、現在省令によりまして低温殺菌を原則といたしております。ただ例外規定といたしまして、特に僻陬の地等を
対象といたしまして、高温殺菌を知事の裁量によ
つて認め得ることとな
つております。但し昨年暮れあたりから農村におきましても牛乳の増産が順調に進み、特に農村地帯における食
生活の改善がきわめて必要とな
つて参りましたので、本年二月次官通牒をも
つて以上申し上げました省令の例外規定を積極的に活用して、簡易なる消毒方法によ
つて新たに農村地帯における牛乳の消費を促進するよう方針を改めた次第であります。しかしながらその結果、現在ではかような措置を講じましたものの、原則が低温殺菌方法を規定いたしております
関係もありまして、現在は農村地帯等におきましてもなかなか高温殺菌は普及しがたい現状でございます。現在は大部分が低温殺菌によ
つておる、かように
考えております。
第二点の、しからば以上の殺菌方法を高温殺菌、低温殺菌の二本建にかりに改めたといたしました場合、すでに低温殺菌施設のために資本を投下したものに対して一体どういう措置をとるかという問題でございますが、これは第三点の問題にも関連をいたしますが、私
どもといたしましては、現在広く高温殺菌を認めようといたしておりません。しかしながら先ほど申し上げました次官通牒の
趣旨等によりまして、農村地帯等に今後高温殺菌を積極的に指導して参ります場合は当然御
指摘のような問題も出て来るかと存じますが、これらは低温殺菌を禁止するわけでございませんので、私
どもといたしましては、数もきわめて少いものと期待をいたしておりますし、またただいま申し上げましたように、低温殺菌を禁止する
建前でございませんので、特に補償その他の問題は
考えておらない現状でございます。
第三の御質疑の点につきましては、私
どもといたしましては、現在できるだけ牛乳の消費を普及し、これによ
つて食
生活改善の実をあげようと
考えておる次第でございまして、もちろん消費者本位にものを
考えて参りますことは申すまでもございません。この場合消費者本位に
考えますと、すでに低温殺菌が完全に行われております都市、市部等におきましては従来
通りの方針を堅持して参りたい方針でございます。ただ先ほど次官通牒の
趣旨を申し上げましたように、農村地帯等におきましては、今後特に乳牛の増加と並行いたしまして、農村におきまする牛乳消費の促進をはかる必要がございますので、その場合には、その施設の規模あるいは消費量等もきわめて少い現状にかんがみまして、これからは簡易なる低温殺菌を積極的に普及して参りたい所存でございます。
最後の御
質問の、高温殺菌並びに低温殺菌の優劣の問題でございますが、まず栄養的に見ますれば、もちろん低温殺菌が優秀であります。次にこれを衛生的に安全性という点から見ますると、これはいろいろ
条件にも支配されますが、結論的に申し上げまして、一長一短といわざるを得ません。特に原料牛が比較的悪いような場合、あるいは一日五百本あるいは千本程度の処理をする小規模の施設の場合、あるいは
一般に衛生知識がさほど進んでおらない
地域等におきましては、むしろ高温殺菌が安全であります。これに反しまして、多量の牛乳を扱う場合等におきましては、これは逆に低温殺菌がはるかに安全であります。従いまして、この利害得失はもちろん
地域の
実情によ
つて判断さるべきものだと存じております。