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1954-11-26 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第75号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十一月二十六日(金曜日)    午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 中川源一郎君 理事 松永 佛骨君    理事 高橋  等君       青柳 一郎君    寺島隆太郎君       降旗 徳弥君    安井 大吉君       亘  四郎君    萩元たけ子君       柳田 秀一君    杉山元治郎君       中野 四郎君    山下 春江君  委員外出席者         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田辺 繁雄君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ————————————— 十一月二十六日  委員有田二郎君辞任につき、その補欠として降  旗徳弥君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  戦争犠牲者補償に関する件  食品衛生に関する件     —————————————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず戦争犠牲者補償に関する件について発言を求められておりますのでこれを許可いたします。高橋等君。
  3. 高橋等

    高橋(等)委員 援護法関係の問題について一点だけ御質問いたしたいと思います。恩給法改正になりまして、そのために大部分の軍人遺族恩給適用を受けることになつておるのでございまするが、船員その他援護法年金を受けとる人々もまた相当多数あると思うのでございます。ところがこの恩給法支給を受ける人と、援護法支給を受ける場合に、そこに非常な差別があるということがありといたしますれば、同じように戦争に出て、そして犠牲になつた人々であります。国がやはり同じようにこれを補償いたす建前に立つてやるのが一応筋かと思います。そこでこの恩給法援護法との問で、常識的にみまして、当然これは歩調を合さねばならないというようなものについては、これは歩調を合すのがしかるべきことと考える。そこでその一つの問題といたしまして、いわゆる父母及び子供受給資格としての年令制限の問題、これはぜひとも取上げなければならぬ問題だろうと私は前から考えておる。前国会では、遺憾ながらこの調整ができなかつたのでありまするが、何とかこの問題の解決をいたさねばならぬということを熱望いたしております。そこで一応まず伺うのでございまするが、六十歳未満父母の大体の概数、及び二十歳——これはちよつとむずかしいのですが、十八歳以上二十歳未満子供の数、遺児の数、これがどういう程度になつておりますか、この点を伺わしていただきたいと思います。
  4. 田辺繁雄

    田辺説明員 戦歿者遺族のうちで年齢が六十歳以上の者と六十歳以下の者との割合がその数がどうなつておるかという御質問でございますが、遺族援護法を起案いたします際に調査いたしました際、父母の総数は全体の戦歿者のどのくらいになつておりましたか、今正確な記憶はないのでございますが、六十歳以上と六十歳未満との割合は当時におきましておおむね半々、若干六十歳以上の方が多かつたと思つております。調査いたしましたのは二十六年でございますので、すでに三年を経過しておりますので、六十歳以上の者が六十歳未満の者よりも割合はさらにかわつて来ておると思います。六十歳以上の者がはるかに多くなつているのではないかと思つております。それから十八歳未満と二十歳との割合でありますが、ちよつとただいまのところ調査したものがございませんので、見当がつきかねるのでございます。
  5. 高橋等

    高橋(等)委員 そこで私の希望といたしまして申し述べておきたいのですが、恩給法では六十歳にならないでも恩給支給を受けております。子供は二十歳までいただいております。援護法では六十歳にならなければ出さない、子供は十八歳まで、こういうようなことで、ことに老齢者はやはりだんだんと年をとると心細くなる。遺族父母で高齢のために死亡する人が年々歳々相当ある。ところがこれが六十歳まで来なければ遺族年金はもらえないという非常に気の毒な状況が出ております。恩給ではもらうのに、どういうわけで援護法では六十歳という線を引いたのか。これはいろいろなりくつあると思うけれども、そうした区々たるりくつでなしに、国民感情といいますか、また社会常識といいますか、そうした観点から、ぜひともこの年齢制限撤廃をやらねばならぬ、こう私は考える。田辺さんは大臣じゃないのだから、今これをおやりになるかどうかというようなことをお伺いすることもどうかと思うのですが、これを私は強く希望をいたしておきます。おそらく当委員会人々でこの問題に反対の方は一人も私はないだろうと考えます。  そこでお願いをいたしておきたい。これは資料としてお出し願えればけつこうなんですが、先ほど申し上げました六十歳未満父母の数、推定でよろしゆうございます。父母の数と申しますのは、援護法適用を受ける父母の数であります。それから十八歳以上二十歳未満子供の数。それからこれも推定けつこうでございまするが、父母のうち、年金支給される場合に、第一順位者に該当する者の数をそこからもう一つ引抜いて資料をおつくりおき願いたいと思います。これをお願いいたしておきます。  もう一点、これは文部当局お話をせねばならぬ問題ですが、厚生省としてどういう手を打たれておるかということをお伺いいたしたい。遺児育英資金の問題、これは年々歳々遺児がちょうど育英資金が必要になる年になりつつあります。そこでこれは国策的に見ましても、こうした国の犠牲になつた人子供たちに教育を施す。しかもいつも議論になるように、未亡人の手で育てておることでありますから、一般子供と同じ条件育英資金を出すということになると、両親のそろつた者に負けるということが起る。しかしこうした人に、父がおつたならば教育されたであろうのに、父が国の犠牲になつたために自分らは学校に行けないのだ、こういう悲しい気持といいますか、そういう気持を持たすということも、私は大きな国策として考えなければならないし、また当然国として考えてやるべき問題だろうと思います。そこで、来年度予算におきまして、金額は大したことはないのでございますから、少くともその比率を——たとえば全遺児の一五%に出すとか何とかというような御説明を承つておるのでありまするが、実際はあのパーセンテージは非常に上まわつた説明をなさつたように聞いておりますが、たとえば一五%くらい行つてつたものを三〇%、四〇%くらいまでは適用できるようにするとかいうことで、大幅に育英資金を拡げてやる、これはぜひともお願いしておきたいと思うのです。この点について厚生省文部省とはいろいろな折衝があるかと思うのですが、どういう調子になつておりますか。また来年度予算文部省要求はどうなつておるかも承らしていただきたいと思う。もしこの数字が今お手元にないとすれば、この次の委員会までにぜひともお知らせ願いたいと思います。以上で終ります。
  6. 田辺繁雄

    田辺説明員 遺児育英資金の問題につきましては御趣旨もつともでございまして、われわれとしましても遺児のために就学の機会が十分与えられるように努力したいと思います。  御質問予算数字につきましては、文部省に連絡いたしまして、この次に直接文部省当局からお知らせするようにするか、あるいはそれを伺つてお知らせするようにいたしたいと思います。
  7. 高橋等

    高橋(等)委員 なるべく早急の機会文部当局を呼んでいただきたい。時間がかかることでありませんから、この問題についてはぜひとも当委員会として希望いたしたいと思います。おとりはからいをお願いいたしたいと思います。
  8. 小島徹三

  9. 中川源一郎

    中川(源)委員 私は援護法改正につきまして若干お尋ね申し上げたいと思います。第一にお伺いいたしたいことは、戦病死されました者の戦病死された地域いかんを問わず、また病気種類いかんを問わず、また発病原因が何であるか、あるいは死亡原因自己責任に帰するという事実の立証がない限り、公務死亡認むべきであると私ども考えておるのでございます。この点についてお伺いしたい。  今度の戦争は何分大規模であり、長期にわたつた戦争でありましたために、地域あるいは病気種類についても再検討を要したり、また病気原因、経過につきましても証明することははなはだ困難なものが少くないのであります。こういう点を考えまして、地域いかんを問わず、また病気種類いかんを問わず、発病原因死亡原因自分責任であるという立証が政府においてなされるものは別といたしまして、その立証のない限り、公務死亡と認めなければ、解決のつかないものが非常に多いと思うのです。それで公務死亡と認めまして、遺族年金なり弔慰金支給するように関係法規を改める御意思がないかどうかをお伺いいたしたい。
  10. 田辺繁雄

    田辺説明員 ただいま中川委員の御質問になりました点は、遺族会といたしましても正式にわれわれの方に要望があつたでございます。われわれもそれを拝見いたしております。在隊中自己の責に帰すべからざる事由によつて死亡した場合は一切遺族年金対象にしてほしい、こういう要望でありますが、自己の責に帰すべからざる事由と申しますのは、逆に申しますと、故意または過失によらないということになるわけであります。故意または過失によらないで病気にかかつて、それがために死亡した場合はすべて年金対象にしてほしい、こういうことになるわけであります。御承知の通り援護法は、軍人に関しましては恩給法暫定措置法として施行されたわけであります。従つて法根本精神公務のためということが条件についておるわけであります。公務のためということと、それから自己の責に帰すべからざる事由という言葉は非常に違うのでありまして在隊中いやしくも死亡した場合においては、本人の故意または過失がない限りすべて年金を出すということと、公務のためということとの間には非常に開きがあると思います。それは理論的にも違いますし、実際の過去における戦争の場合の公務死亡の場合においても、やはり違つた取扱いをいたしておるわけであります。従つてさような取扱いをいたしますためには、ただいまお話もございました通り法規改正する必要がございます。そうなりますと、恩給法というものも同断でありまして、恩給法自体においても公務のためという言葉改正しなければならぬ。このことは相当大きな問題でございます。今後そういう社会保障制度的な性格から全面的に戦争犠牲者に対してそういつた手を伸ばすということも考えられるわけでありますが、これは援護法立法の際に、国家保障ということを根本精神として、すでに援護的な性格を加味して立案されたわけであります。従つて公務という観念がどうしてもつきまとうのはやむを得ないことであろうと思います。そこでわれわれといたしましては、今度のお話もありました通り戦争特殊性ということを考えまして、公務傷病という観念をできるだけ広く、実情に沿うように運用いたしてておるわけであります。かつて恩給の裁定の基準よりは、現実においては相当大幅に広がつているのじゃないか、かように考えております。なお今後の運営につきましても、御趣旨に沿うようにとりはからつて行きたい、かように考えております。
  11. 中川源一郎

    中川(源)委員 大体広く解釈して公務死亡と認めるようにお取扱いをいただいておるように思うのでございますが、たとえば内地死亡でありましても、自己が外出の場合に食事をして伝染病になつたのは、当然自己過失でありますけれども、兵営内に伝染病が流行いたしまして、そうして炊事場の不都合のために死亡したというような場合には、当然これは公務と認めなければならぬ、内地でもそう思うのです。また外地でもその病気種類によつて、たとえば脳溢血で死んだ、心臓麻痺で死んだ——人間が死ぬときはほとんど心臓麻痺です。ほかの病気がありましても、心臓麻痺で死ぬ。その心臓麻痺は該当しないとか、あるいは脳溢血は該当しないというので、今却下の通知がたくさん来ておりますが、脳溢血でも、たとえば討伐に行つて一週間山奥へ入つて、ふらふらになつてもどつて来た。食べるものもなかつた。ようやくたどりついて、やれやれといつて腰をかけてふーつとなくなつた。それは何の病気かわからぬから、これは心臓麻痺であろうという推測のもとに心臓麻痺とつけておる。こういうものを、病気が該当しないということはまことに不都合である。恩給法の方ではさようなものは戦争の前後を研究して、そうして公務に従事しておつたということによつてなくなつたものならば、これは恩給法該当者とみなすというふうに、局長も言明しておるのでございます。援護局におかれましても解釈をもう少し広くされまして、審査の場合、若い人が、心臓麻痺はだめだ、脳溢血はだめだ、胃がんはだめ、あるいはまた盲腸炎はだめというふうに簡単な取扱いをするということでなしに、早くそういう戦争の前後を調査されまして、広く解釈されるものならば早く解釈して裁定されたらどうかと思うのでございます。この点特にお考えを願いたいと思うのでございます。法の改正の必要があれば、法を改正すベきであると思うのでございます。  それから第二点にお尋ね申し上げたい点は、法の第三十四条第二項該当者にも年金弔慰金及び同条の第三項該当者にも年金弔慰金五万円を支給すべきであると私ども思うのでございますが、これは昭和二十八年に援護法改正で、船舶運営会の運航する船舶乗組員は、弔慰金五万円を支給するということになつたわけでございます。今度の戦争の、広範囲動員が実施されました国民義勇隊、あるいはまた学徒動員女子挺身隊、また満州開拓団海軍から燃料を与えられ、兵器を与えられまして防空及び洋上の監視の軍事に従事した漁船の乗組員日本航空株式会社、南満鉄道株式会社華北鉄道株式会社中華鉄道株式会社満州航空株式会社中華航空株式会社満州電電株式会社日魯漁業株式会社というような、南方に進出いたしまして、旧国家総動員法に基いて徴用されまして、総動員業務に協力させられた者が相当あるのでございます。陸軍または海軍要請に基いて戦闘に参加させられたという者が、現在これは三万円の弔慰金支給されておるのでございますが、三万円に該当するか、五万円に該当するかという点について等差をつけにくいものがたくさんここにあるわけです。これらの人々に対しましては、弔慰金を五万円にして支給されたい、年金支給すべきである、こういうふうに私ども考えるのでありますが、この点はいかがでありますか。
  12. 田辺繁雄

    田辺説明員 法三十四条第二項該当者に対しても遺族年金支給するようにしてはどうかという御質問があつたのでございますが、援護法根本趣旨が、先ほど申しましたように、一時恩給復活までの暫定措置ということを主眼といたしまして、かたがた内地において実施されました軍属に対する国家保障制度を、戦後において戦地軍属にまで及ぼした、これが援護法の内容であります。これは戦争中すでにあつた制度であつて、戦後司令部要請によつて打切られた制度を復活する、こういう性格のものであります。それから軍属につきましては、戦争中においても内地の者についてやつたのでございますから、戦地も当然やるべくして、いろいろの関係でやり得なかつた事情のものを、この際やろうということでございます。従つてそこに一線を画しておりまして、当時一般社会通念として、国家においてそういう制度を設けておらないで済んでおつたものは、この際手を触れないでおこう、こういう考えで進んでおるわけであります。援護法対象年金対象をどの範囲にするかということは非常にむずかしい問題でありまして、どこで打切るかということは非常に困難でございます。従つて先ほどのような一つの形式的な原理に基きまして、一線を画したわけであります。船員の場合などを取上げましたのは、船員の場合はよく検討してみますと、これは当然やはり国家として放置すべきものであつてはならない、現に船員保険におきましては、全額国費をもちましてそういう方方の遺族に対してやつてつたわけで、これは船員保険の形において国家がなしておつた従つてそれのべース・アツプも考えられたのでありますが、他の船員保険に対する関係でどうかという点もあつたのでありますが、ただいま御指摘になりました問題は一件一件当つてみますと、ごもつともな点もございますけれども、それはどういうふうに考えて行くかという問題は今ただちに決定しかねるわけでございます。なおわれわれといたしましても一応検討をいたして行きたいと思つております。
  13. 中川源一郎

    中川(源)委員 先に申しましたように、船舶乗組員に対しまして弔慰金五万円を支給した。そうして三万円をただいま支給されている方々と比較して、どちらが多いかという区別がつきにくい人が多い。むしろ船舶運営会方々よりももつと重点を置くべきもので、その人が三万円しか支給されていないということはまことに不都合である。どうかこの点をひとつお考えくださいまして、五万円支給すべきであると私どもは強く考えているわけであります。  それから第三点にお尋ね申し上げたいのは、昭和二十八年八月一日までに再婚を解消したり養子縁組を解消した者、そして旧の状態に復した場合には、妻及び遺族に対しまして遺族年金受給権を認めるべきである、そういうふうな法令の改正を私は望ましいと思うのです。何分この二十一年まで勅令第六八号戦没者遺族に対する公務扶助料は停止されたのでございますが、遺族物心ともに非常に苦労と困難をなめて来たのであります。やむを得ず結婚しなければ生活ができぬというような人もありましたし、またいろいろな勧誘等において結婚いたしましたが、不幸にしてよい結果が出ないというのでただちに結婚を解消した者も非常に多いのであります。これらに対しまして正式に結婚して籍をかえたという者には一切支給されてないというために、たいへん気の毒な者もたくさんあります。ただ表面つていないが、相当目立つた生活をしておつて支給されている。表面上だけでも籍を移すことになるとこれは支給されないというので、まじめな者が非常に困つている向きも相当ございます。こういう点をひとつ法の改正をする必要があると思います。またそれと同じ意味で、若い者が正式結婚することでできない。年寄りはこれは正式結婚しても年金を与えられるわけでございますけれども、若い未亡人が正式結婚した場合には認められないわけでございます。その裏面においてたいへんいまわしい問題も起つて参ります。年寄り結婚を認めて若い者が結婚できないということはまことにおかしいと思います。こういう点についてはひとつ根本的に検討を加える必要がある。外国のどの国でも結婚した場合には恩給なりまた年金のとれない国はないと私は思います。これは正式結婚いたしましても支給されているのでございます。まず第一に結婚を解消した者、養子縁組、ことに小さな子どもは親のやることに反対したりする力のない者が多い。そういうものまでも取上げてしまつて受給権がないということは、まことに気の毒だと思うのでございますが、この点はいかがお考えになりますか。
  14. 田辺繁雄

    田辺説明員 恩給法による扶助料または遺族年金支給を受けておつた未亡人が、正式に再婚した場合においても、扶助料または年金を継続すべきであるという点についてはたいへん見解を異にするわけでございますが、これはどこの国の立法例等も、再婚した未亡人に対しては年金を打切るというのが建前になつているものと思つております。ただ前段に御質問になりました恩給がストツプされておつた時代再婚し、恩給がストツプされておつた時代にまた元へもどつた人、あるいは他人養子となつた人恩給法のストツプしている間にまた元の実家に帰られた方、こういう人たちにまで年金なり扶助料受給権失権せしめるということについてはどうかという御意見でございますが、これはごもつともだと思います。ストツプしておつた時代のいろいろの失権事由は不問に付するということは成り立つと思います。いずれにいたしましても、この問題は恩給法根本でございまして、恩給法では再婚をした場合あるいは他人養子となつた場合においては失格または失権すると書いてあるわけでございます。それを復活するするということで、そのまま受けついでいるわけでございます。言いかえれば、舞台に幕が下りている間、その舞台裏で行われた失格失権の理由が、その幕が開いてもそのままものを言うということになつているわけであります。その点は確かに御指摘の点があると思います。恩給法も関連する問題でございますので、今後よく検討を加えたいと思います。
  15. 中川源一郎

    中川(源)委員 弔慰金支給範囲を広げて、実際祭祀行つている者まで及ぼすというふうには参らぬかどうかと思いますが、現行法では弔慰金順位を定めて兄弟姉妹にまで支給されているのでありますが、遺族の中には、叔父叔母が実際の親と同様に世話している者もありまするし、その他の親戚とかあるいはまた慰霊行事を親同様に血縁関係の者が行つている場合があります。また血縁関係でなくても、祭祀を丁重に町内とか村で行つているという場合においては、弔慰金戦歿者の霊に捧げるものでございますので、これらの受給範囲を広げまして、そして実際祭祀行つている者までにこれを支給する、及ぼすということが適当だろうと思うのでございますが、この点はどういうふうにお考えでございますか。
  16. 田辺繁雄

    田辺説明員 弔慰金もやはり一種の援護として支給いたしているわけでありますが、援護法という体系において一般に取上げられております対象は、大体兄弟姉妹までというのが通例でございます。阿波丸事件の際に弔慰金支給した例においても、その範囲兄弟姉妹までとなつております。そういう例にならつてわれわれも遺族範囲をきめたわけでございますけれども、実際問題としてただいまお話になつたような例もありますし、今事実上祭祀行つている者に弔慰金支給するという考え方もあると思います。ただ私の方では祭祀料弔慰金というものを一応区別しおりますので、祭祀料兄弟姉妹以外の方にさし上げてもいいが、弔慰金援護的な性格を持つている関係上、一応兄弟姉妹までということに考えているわけであります。実際の運用の面におきましてもいろいろの問題があろうかと思いますが、事実上祭祀行つている方の認定というものは非常に困難なのでございます、そういう面もあろうと思います。この点はしかし弔慰金性格の問題にも関連する問題でもございますので、検討中でございますが、なかなか支給すべきであるという結論にまで到達しかねている実情でございます。なお今後とも研究を続けて参りたいと思つております。
  17. 中川源一郎

    中川(源)委員 ひとつ十分御研究をいただきまして、一日もすみやかにその恩典を関係者に及ぼすようにしてもらいたいと思います。そうして実際のお祭りが年々できまして、お墓でも建てたいという者には建てることのできるようにしたいと思つておりますので、十分ひとつ御研究を願いたいと思います。  次にお尋ね申し上げたいのは、弔慰金昭和十二年七月七日以後の戦没者支給されるようにならぬものかと思うのであります。ただいま弔慰金昭和十六年の十二月八日以後の戦没者遺族支給されておるのでございますけれども、今度の戦争昭和十二年七月七日以後引続いて行われているのでございますので、昭和十六年十二月八日に線を引くということは実情に沿わないという向きが非常に多いと思われるのでございます。昭和十二年七月七日以後の戦没者にも弔慰金五万円を支給すべきである、この点不公平な点もたいへん多く見受けられます。これをお考え願うことができるかどうか。
  18. 田辺繁雄

    田辺説明員 弔慰金五万円の支給の際に議論になつた点でございまするが、戦争中は死没者に対して死没者特別資金という相当多額の一時資金が支給せられておつたわけでございます。ところが大東亜戦争の中期以後の死没者に対しましては、かようなものが実際支給されておらない実情であつたのであります。そこで建前といたしましては、その死没者特別資金の支給になつた遺族を除いて、支給されなかつた者に弔慰金支給するのが一番公平であつたかと思いますが、遺憾ながらだれに支給され、だれに支給されなかつたかということがわからない実情でございましたので、大東亜戦争の何年勃発のいつから以降死亡した者について支給する、こういうふうにすればいいのでありますが、それを一年たつた昭和十七年の十二月、あるいは十八年の十二月にするかということは実際困難でございますので、十六年の十二月以降死没した者は一切支給することにいたしたわけであります。その間もらつた方もあり、もらわない方もあろうと思いますが、そこは実際の運用上やむを得ないのでございまして、多少重複している方があるかもしれませんが、それはやむを得ないと考えておるわけであります。支那事変当時死亡された方は、おそらく全部死没者特別資金は支給されておると考えています。大東亜戦争の初期において死歿されておる方についても支給されておるような状況でございます。そこで大東亜戦争の初期と後期と時期的な区別をするということは困難でございますので、大東亜戦争の勃発に線を引いたわけであります。だから全部に出せということになりますと、ちよつとそこは当初の趣旨と違つて参りますので、弔慰金は大東亜戦争以後ということでがまんをしていただくほかはないと思います。
  19. 中川源一郎

    中川(源)委員 支那事変以後の方々弔慰金の国債を受けた人にも、すでにその国債を焼却するとか、あるいはまたそれを返上する向きが非常に多うございまして、ほとんどこれを現金化して受けておる人がまれであると私は思つておるのです。すでに現金になつておる人はけつこうでございますけれども、そうでない人にはたいへん気の毒な向きが多うございますので、これをもう少し御検討をいただきたい。十六年十二月八日に線を引くということは私は適当でないと思うのです。どうかひとつ、もう一度お調べと御研究をいただきたいと思います。  次に弔慰金の買上げでございますが、この買上げ償還の対象をもう少し広げる。そうして年額八十億ぐらいのものを買上げ償還をするというわけに行かぬものか。弔慰国債は昭和二十七年度におきましては二十億、二十八年度におきましては三十億買い上げられたのであります。おもに生活保護を受けておるもの、そういう世帯を対象としてこれを買い上げられたのでございますが、遺族の中には生活保護法の扶助の線すれすれの世帯が少くないのです。これらの人々の中には、この弔慰金をもらつてお墓を建てようという人もありまするし、この弔慰金で金を借りて非常に苦しんでおる人、中には三万円借りてそのままの人もあるし、二万円でとられてしまうというような人もできるわけです。このわくを八十億に広げまして、そして生活保護法すれすれの方々に対しましてこれを買い上げるということが適当であると思うのですが、大蔵省とも御交渉をなさいまして、そしてこの金額をもつとひとつ上げてもらうというふうにならぬものでしようか。
  20. 田辺繁雄

    田辺説明員 国債の買上げの問題でございますが、われわれも御要望に沿うように努力をしたいと思います。二十九年度におきましては国債の買上げの総額を二十億、わくをとつております。そのうちの半額は生活保護法の該当者以外の、いわゆるボーダー・ラインと申しますか、要援護者と申しますか、そういう方々の国債を買い上げるに充当しよう、こういうふうに話合いがついております。従来少額でありましたのを大幅に拡充してやろうという考え方でございます。従いまして、今日までの国債の買上げ総額が約六十億近くになつたようでありますが、来年度以降におきましてもかような措置を継続するように努力いたしたいと考えております。
  21. 中川源一郎

    中川(源)委員 先ほど高橋委員から戦没者遺児のことについてお尋ねになりましたので、多くを申さないつもりでございますが、何と申しましても戦没者の家庭は遺児ということが非常に大きな問題で、遺児を大きく育て上げるという、かんじんの父を失つておるのでございますから、これの学校教育ということにつきましてその家族は非常に苦労をいたしておるわけであります。どうかこれをもう少し真剣に取上げていただきまして、学校に学ぶのに遺憾のないような措置を講ずるようにする考えはないか。高等学校に入る者に対しましても、普通の子供と同じでなしに、せめて授業料くらいのものは免除するような法令をつくらすようにお骨折りを願うわけには行かぬかと思うのでございます。昭和二十七年度におきましては遺児の育英費が六千万円、二十八年度におきましては一億二千万円、二十九年度におきましては一億三十八百万円ぐらいしか計上されていないのです。実際におきましては日本育英会の資金を使つておるものもありますので、五億円程度のものが利用されておるのではないかと思うのでございますけれども、一億三千八百万円ではとうていこれは足りないことは明らかでございます。厚生省が二十六年度に調査されましたものを見てみますると、遺児の概数が、当時六歳未満の者が二万五千七百九十名、六歳以上十二歳未満の者が五十五万七千七百人もおります。また十二歳以上十五歳未満の者が二十二万二千四百五十名、十五歳以上十八歳未満の者が十三万六千三百八十名、十八歳以上二十歳未満遺児が五万三千六十名、二十歳以上二十四歳未満の者、そして就学中の者がわずか一万四百八十名、合計いたしますと百万五千八百六十名ということになるのでございますが、二十六年度におきまして十五歳以上の遺児の概数は約二十万人という計算になつておるのでございます。そして十二歳以上十五歳未満の者、六歳以上十二歳未満の者の概数が七十九万ということであります。今後累年遺児の高等学校以上に進学したいという者が増加して参ると私どもは思つておるのでございますが、これに従いまして、今後何年かの間の実情に合うような、遺児の育英費を別わくにおいて大幅に増額してもらう必要がある、こう私どもつておるのですが、遺児の就学に遺憾のないようにしていただく考えがないものかということをお伺いしたいと思います。
  22. 田辺繁雄

    田辺説明員 遺児の育英の問題は、御承知の通り文部省の所管でございますが、われわれといたしましても文部省と十分連絡をとりまして、できるだけ御要望に沿い得るようにいたしたいと考えております。
  23. 中川源一郎

    中川(源)委員 戦没者遺児未亡人の就職についてでございますが、これは強制的な雇用制度を設けるというようなことにいたしませんと、ただいまではせつかく学校を卒業しました遺児でも、片親しかない者は保護者の力が弱いと見て採用しない向きが多い。銀行などではほとんど採用しない。またその他の大会社におきましても採用しないというような向きが多いのでございます。これではまことに気の毒でございますから、戦没者遺児で中学、高等学校あるいは大学を卒業しても、父のない、身元の保証の弱いために就職ができなかつたり、また戦没者未亡人が一家を支えるために働きたいと願つておりましても、容易にその職場を得ることができないという状態でございます。遺児及び未亡人の就職に関しまして、各種の業界の状態に即した適当な員数を、たとえばドイツでなされておるような、適当な員数を強制的に雇用するような立法化が必要であると私は思つております。この点をひとつ御検討いただきまして、各都道府県、市町村にも遺児及び未亡人の就職あつせんについて方策を立てるように指示することが望ましいと考えておりますが、いかがでございますか。
  24. 田辺繁雄

    田辺説明員 未亡人及び遺児の就職という問題は、非常に大事なことであると思います。この点につきましては、一般未亡人対策にも関連する問題でございまするので、所管の部局とも十分連絡をとりまして、できるだけ遺児であることによつて不利益をこうむらないようにいたしたいと思つております。
  25. 中川源一郎

    中川(源)委員 恩給法による公務扶助料及び援護法によるところの遺族年金を受けますと、生活保護法の適用上、これを所得とみなされるということになつておりますが、これに対して何らかの措置を講じてもらわないと、せつかく恩給なり年金ちようだいいたしましても、それによつて生活保護法の適用を打切られるという場合には、かえつてもらうために苦しんでおるという向きもあるわけであります。これを停止されないように、何らかの具体的方法を講ぜられるお考えがないかどうか。これは地方の実情に一任しておくということになりますと、たいてい打切りということが一応なされておりますので、非常に苦しんでおる向きが多うございます。この点はもう皆さんが心配になつておることでございますが、何らか具体的の方法をお考えくださるわけにいかぬかどうかお尋ねいたします。
  26. 田辺繁雄

    田辺説明員 これは生活保護法の適用の問題でございまして、私どもの所管ではございませんので、最近どういう措置をとつておるかを詳しく知つておりませんが、原則的には生活保護法の建前上実際の収入は差引くという建前に相なつております。それをどういうふうに調和してやりますか、その点最近の情勢をよく承知いたしておりません、社会局の所管でございますので、社会局長の方から御答弁になるのが適当ではないかと存じます。
  27. 中川源一郎

    中川(源)委員 それではこの点は社会局の方にまたお尋ねいたしたいと思います。  それから物質的の面においてはいささか弔慰金なり、年金なり恩給支給がなされますので、遺族も喜んでおる向きが多うございます。精神的の方面に対しましてもひとつ何らかお考えをいただくわけに参らぬかと思うのでございます。精神的と申しますと、たとえば靖国神社とか地方府県の護国神社で行う祭祀は今まで国費をもつてされておりましたが、今は憲法とかいろいろなものに触れるような考え方もありまして、まことに困難をいたしておる。この点について、その費用を国または地方の団体において支弁するというようなことにでもいたしまして、精神的の慰安を与えることができないものかどうか、お伺いいたします。
  28. 田辺繁雄

    田辺説明員 この問題は私の方の所管というわけではございませんが、行政の部門から申しますると、靖国神社は宗教法人になつておる関係上、文部省の所管ということに相なろうかと思います。私の方でも、精神的処遇の点につきましては非常に大事なことと思つておりますので、文部省にその点についていろいろ御意見を打診してみる機会もあるわけでありますが、先ほどお話になりましたように、憲法上の問題というようなこともございまして、なかなかむずかしい問題があるようでございます。われわれの方でも、側面からではございますが、何とか精神的処遇の点について考えてみる余地はないだろうかということで連絡をとつておりますが、今後も十分連絡をとつて参りたいと存じております。
  29. 中川源一郎

    中川(源)委員 これも鉄道関係の問題かもしれませんが、以前には各府県から靖国神社へ参拝の場合には無料の乗車券を発行されたのでございますが、こういう点について各都道府県の方でまた再び無料乗車券を復活してほしいという希望が非常に強いのでございます。また運輸省とも御相談をしていただきまして、そういうことができますならば大きな精神的な慰安になると思うのでございますが、お考えをいただきたいと思います。  それから老人ホームというようなものをおつくりくださる計画がないか。これは外国でもみなやつておるのでございますが、遺族の中には、子供を失つたために扶養してくれる直系卑属がない、世話してくれる者がない、親戚もないというような老人が相当ございます。これに対しては、都道府県また主要な都市にも国費をもつて老人ホームをつくる必要が、ただいまそれはきわめて少数ではございますけれども、非常に痛感されておるのでございます。この点お考えくださることができぬものかどうか。  それから母子家庭に対しまして公営住宅あるいは庶民住宅を大幅に開放するという考えがないかどうか。遺族の中には、子供が成長して、もうすでに母子家庭という名前がつかないようになりまして、母子寮に居住する資格がなくなつた者もだんだんふえて参つております。これらの人々のために公営住宅あるいは庶民住宅を優先的に開放して、住宅に困る人に適当な措置を講じてもらいたいという向きが非常に多うございますが、この点はどういうふうにお考えくださつておりましようか。
  30. 田辺繁雄

    田辺説明員 老人ホームの問題は、生活保護法の保護施設としての老人ホームと、有料の老人ホームがあると思いますが、有料の方は、いろいろな関係があつてまだ実現に至つていない状況でございますが、厚生省としてもその点は努力しておるわけであります。  低額所得の者に対する低家賃の住宅の問題につきましては、建設省でやつております公営住宅の中に第二種公営住宅という特別の制度を設けまして、これにつきましては厚生省も一枚加わりまして、総戸数を各県に割当てる際、あるいはその規格あるいは家賃という点につきまして、中央においては厚生大臣、地方においては民生部がタツチいたしまして、管理、運営に当つているわけでございます。何分にもそのわくが小さい関係上、未亡人ないしは小さい子供さんをかかえた遺族の方方全部にわたることができないかと思いますが、建前といたしましては、そういう方々を含めて要援護者のような方々を優先的に入れるという趣旨でできておるのでありまして、このわくの拡充につきましては、一般の住宅の拡充と関連して厚生省としても努力して行きたいと思つております。
  31. 中川源一郎

    中川(源)委員 もう一、二点お伺いしたいと思います。無名戦士の墓について、厚生省ではいろいろ御計画をお持ちくださつておるということでございますが、もうすでに場所はきまりましたが、またその経過並びに今後の御方針について承ることができますならば、たいへんけつこうだと思います。
  32. 田辺繁雄

    田辺説明員 戦没者の墓の点につきましては、すでに閣議の了解も得まして、大体の計画を立てておるわけでありますが、敷地の問題について目下各方面とお話合い中であります。二、三候補地を持つておるのでございますが、こういうものは各方面の円満な御賛成を得ました上で進めたいというのがわれわれの念願でございまして、遺族会その他関係の方面とも十分御相談いたしまして進めて参りたい、かように考えております。目下協議中であります。
  33. 中川源一郎

    中川(源)委員 各方面の御意見を承るのはたいへんけつこうでございますが、これは主として戦歿者遺族希望ということが非常に大きいものじやないか。たとえば宗教団体でありましたならば、自分の宗教団体に都合のいい希望をいれたいということがあると思いますので、それよりも遺族希望をいれるということが一番大切じやないか。どのくらいあるのか知りませんが、南方に六十万も遺骨が捨てて置かれてあるということを聞いておるのであります。そういう人たちの親あるいは肉親の者は、この点について非常に注意深く見ておるわけでありまして、参りますときには、国のため死んで靖国神社に帰りますと約束して行つた者がほとんど全部であります。靖国神社の中とか、そばが適当であると日本遺族会でも決議しておりますので、こういう点も十分お考えくださいまして、八百万遺族の期待にあまりはずれるようなことのないような場所で、またその様式についても希望するようなものを十分お考え願いたいと思うのでございます。  最後に遺骨の収集について、たとえは南方方面——フイリピンの方はどうなつておるか、ビルマの方はどうなつておるか、インドネシアはどうなつておるか、また中国、満州あるいはソ連はどうなつておるかということは、みなの者が注意深く見ておるのでございますが、今後の収集に対する御方針なり、また今までおとりくださつた経過についてこの機会に承ることができるならば、たいへんけつこうだと思います。
  34. 田辺繁雄

    田辺説明員 遺骨の収集対象地域は非常に広範囲でありまして、一挙に実施することがいろいろの関係で困難でございますので、逐次実施可能の地域からやつて参りたいと考えております。先般南方の八島、これはアメリカの関係の地区でございます、それからアツツ島を実施いたしました。近く英領関係と、東部ニユーギニア、これは濠州関係でございますが、これも実施したいということで、従来関係の英濠政府と交渉をいたしておりましたが、最近向うの承諾を得られましたので、来年早々船を派遣いたしまして、遺骨の収集及び現地慰霊の実地をいたしたいと思います。目下準備中でございます。
  35. 中川源一郎

    中川(源)委員 未復員者という名前はつけられておりますが、未復員者の中にはすでに死亡した者が非常に多かろうと思います。たとえば、中国には八万人の未復員者が——行方不明者という名前になつておるかもしれませんが、ある、あるいはソビエトにおいては十六万五千人ものたくさんな行方不明者というか未復員者というか、そういう者があるということでありますが、相当これは死歿しておる者があるのじやないかと思うのでございます。もうすでに十年になるのでございますから、死歿者を明らかにしてもらいまして、その名簿を向うからもらうということについて、どういうふうに処理してくださつておるかということを伺いたい。またできますならば遺骨を引取ることのできるような御交渉をひとつ願いたいと思うのでございますが、そのこれまでのおとりくださつた事柄、また将来についてどういうお考えを持つておるかということを承りたいと思います。
  36. 田辺繁雄

    田辺説明員 ソ連及び中共地域における未帰還者の中で、相当多数の者が状況不明になつておることはお話通りでございます。実態的には、すでに死亡しているか生存しているかどちらかだと思いますが、私の方ではその状況がわかりませんので、状況不明となつておるわけでございます。これを一日も早く生死の実態を明らかにするということは、全留守家族の強い要望でございますので、引揚問題の重要な一環としてわれわれ今日まで努力をして参つたのでございます。今日までのやり方は、現地からの通信または現地からお帰りになつた方々の提供する資料によりまして逐次明らかにして行くわけでございますが、終戦直後の情報だけでその後何ら情報がない者が大部分でございます。従つて、これらの方々の状態を明らかにするためにも、終戦直後の状態を知つておる方々にお集まりをいただきまして、過去の記憶を呼び起していただいてやつているような状態でございますが、この方法ももちろん大事でございます、今後もやるつもりでございますが、この方法によつては全部の者を残らず明らかにすることは困難でございます。どうしてもソ連なり中共側の協力がなければ全部を明らかにすることは困難でございます。従つて、従来その見地から死亡者及び生存者に関する資料の提供を、いろいろのルートを通じまして要望いたしております。先般紅十字会の代表が日本に参りました際におきましても、現在生存している方々を確認する方法についていろいろと申入れをいたしました。また死亡者につきましても、持つている限りの資料を送つてくれるように、われわれの方から日赤を通じて申し入れたわけでございます。先方といたしましてもできるだけ持つている資料を提供し協力するという努力を誓つておりますので、今後の成果に期待をいたしております。
  37. 中川源一郎

    中川(源)委員 ソビエトなどの状況を聞いてみますと、なくなりましたら、穴を掘つてその中に埋めてしまつて、あとは整地をしてすぐ麦をまいたり何かして、墓というようなものをつくつていないということも聞くのでございます。そうして点呼をして、きのうは何名であつたが、きようは何名ということで、名前もはつきりとわかつておらぬというような向きも聞くのでございます。そういうふうなことがもしもありといたしますならば、これはいつまでたつても行方不明は行方不明なりで、百年たつても、二百年たつてもわからないということになるのではないか。何とかひとつ方法を講じてソビエトの方と交渉してもらつて、名簿だけでも早くもらいたい、お弔いだけでもしたいという向きが多うございます。もう少し積極的に対策を講じてもらうということをひとつお考え願いたいと思うのでございます。  たいへんるるお伺いをいたしまして恐縮いたしましたが、いずれも解決していないものばかりでございます。今後の問題といたしましては、これらの未解決のものを早く処理していただくということが急務ではないかと思われる向きが多うございますので、どうかこの上特別の御高配を願いたいということをお願いいたしまして、私のお尋ねを終ります。
  38. 小島徹三

    小島委員長 中野四郎君。
  39. 中野四郎

    ○中野委員 臨時国会から通常国会に臨むにあたつて、国会が開かれれば、当然国会側として、援護方法の不備等について改正をしなければならぬ課題が多々あると思うのです。しかしここで援護局長と質疑を闘わすことによつてそのことがむしろ悪い支障が起つてはなりませんので、私は質問をきわめて重点的に二つだけ当面の問題を援護局長に伺つておきたいと思う。それはあくまでも近く開かれる臨時国会あるいは通常国会というものを前提としてでありますから、今の遺族人々年金あるいはそれぞれの国家からの支給を受けておる人たちはよろしいのですが、俗にいう未裁定の人に対しては、法律の上においてもし援護がかなわぬというような場合を想像しますれば、政治的にもこれらの人々に対して何らかの措置をしなければならぬことは当然だと思うのです。国家民族のために赤紙一本で召集をされて、そのことによつて、たといいかなる理由があろうといえども、召集という一つの基礎事実の上に立つて病気となつたり、あるいはいろいろな形でなくなられた人々に対しては、当然国家民族がその責任においてこれを補償し、その人々遺族に対して生活を補う、あたたかい思いやりのある政治、あるいは社会状態というものをかもして行かなければならぬことは論をまたぬところであります。  そこで一点伺つておきたいのは、従来は恩給法等から漏れた人に対しては、軍事保護院とか、あるいは軍人援護会とかいうような一つの別な団体があつてこれらを補つてつたのでありまするが、現在は軍人というものはない、軍事ということもあり得ないのですから、当然遺族援護会とか、あるいは遺族保護院とでもいうような、従来の軍事保護院のような性格を持つた法律をつくる必要があると思うのであります。現在民間団体としてはいろいろな形でそういう意見は出てもおりますし、現実の問題としてできているものも承知をしておりますが、あれではいかにも力が弱い。むしろ現在の援護法あるいは恩給法というようなものからどうしてもわくにはまらないという圧縮した最後の段階においては、別に定むる法律によつて遺族援護の徹底を期し、遺族のすべての保護に対する万全をはかるというような措置に出ずべきだと思うのでありますが、政府はそういうような別途法律によつてこれら遺族援護の万全を期する意思があるかどうか、この点をまず伺つてみたいと思うのです。
  40. 田辺繁雄

    田辺説明員 戦時中に軍事保護院というのがございまして、戦歿者及び傷痍軍人に対する各般の援護を実施して参つたのでございますが、その援護の内容は、年金というような、お金を支給するという制度とは別に、厚生省のいわゆる援護、こういう行政上の措置を中心として実施されておつたものであります。たとえて申しますれば、傷痍軍人に対する対策といたしましては、まず病気をなおしてやる、こういう関係からたくさんの療養所をつくる。また療養所以外で療養する人に対して国がいろいろな療養の施設を講じ、それから病気のなおつた人に対しましては、職業の補導あるいは就職あつせん、こういうようなことを中心としてやつておりました。遺族に対しましても相談員を置いていろいろ相談に応ずるとか、あるいは遺児に対する育英を実施するとか、あるいは未亡人等に対する職業の再教育、こういつたことを中心として実施いたしました。その面は今日厚生省におきまして依然としてやつておりますが、社会局、児童局あるいは労働省において、一般の身体障害者、一般未亡人も入れながら実施いたしているような状態であります。それで現在の援護法では、そういう援護面はないではございません。若干入つておりますが、主としては恩給法の系統の年金支給あるいは弔慰金支給等を中心として実施されているわけであります。軍人軍属遺族あるいは傷痍軍人に対するいろいろの病気ないしは職業上の措置を、一般の身体障害者、一般未亡人と切り離して特別な恩典として別にやるかどうかという点は、これは厚生省として議論のあるところだろうと思いますが、でき得れば一般のそういう施設を充実しつつ、特に重点的に身体障害者の中にそういうものを考える、一般未亡人の中で遺族考えるということが望ましいことでないかと私個人として考えているわけであります。但し遺族年金といつたようなものは、これはやはり先ほどお話のあつたような精神に基くものでありまして、恩給法というものもそういうために置かれたものでございます。恩給法軍人に対して適用になるということは当然のことでございます。ただ恩給法だけでは確かに狭い面がございまして、戦争中に内地軍属に対しましては、いろいろの共済組合の特例といたしまして、その系統で国が金を出して軍属恩給を出す。それが戦地には及んでなかつたので、かようなことはまことに不都合であり、また当としてもいろいろそのための準備をしておつたようであります。かようなものをつくるために、遺族援護法というものによつて対象にいたしたわけであります。そういつた関係上、年金支給対象は、従来の公務という線で一応厳密な審査を受けるわけでありますが、軍人に関しましては、確かにお話のありました身分ないし勤務の特殊性ということを考えまして、在隊中に死亡した者に関しましては、公務、非公務の別なく弔慰金支給することが妥当であると考えまして、先般法律の改正を御審議いただきまして、五万円の弔慰金支給できるようにいたしました。目下裁定を急いでいるような状態であります。いまだ全部の方々支給するまでには運んでおりませんが、できるだけ馬力をかけまして、少くとも在隊中に死亡した方に対しましては、原則的にほとんど全部の方に差上げるようにしたいと思つて、目下努力いたしております。ただ同じ軍人でございましても、いわゆる官衙勤務、陸軍省、海軍省、軍需省、その他そういつた官衙勤務の方々は、一般の文官、一般公務員と勤務の態様がかわらなかつたというように考えられますので、こういうものは若干除外してございます。それから除隊後一定の期間を経過した者、つまり一般の疾病については一年以上、結核、精神病につきましては三年以上経過した人は、法律上弔慰金対象になつておらないのでございますが、それ以外の方々でございますれば、ほとんど全部がこの弔慰金対象になると思います。ただ除隊後における疾病が原因であると明瞭に考えられる者は、援護法弔慰金対象から落しております。ただその対象の中で考えられますのは、もちろんこれでもつて全部を包括するとは考えておりませんが、軍属の一部の方につきましては弔慰金支給できないという状態であります。その他いろいろ不備な点があろうと思いますが、今後検討いたしまして、できるだけこういつた不備を補充するようにして行きたいという考えを持つておるのでございますが、いろいろの均衡がございまして、早急に行きかねているような状態でございます。われわれ研究を遂げまして、できるだけ法律の不備を補つて行きたいと考えております。従いましてただいまお話のありましたような遺族援護会、遺族援護のための特別機関という点につきましては、引揚援護局というものが、むろん引揚者の援護、それから遺族に対する年金あるいは弔慰金支給、その他の遺族処遇に対する根本のことを研究するつもりでやつております。われわれそういう気持ちで現在つております。
  41. 中野四郎

    ○中野委員 よくわからないのですが、もう少し率直に伺いましよう。たとえば公務死であるか公務死でないかということは、なかなか限界がむずかしいから、現在審査の過程にあるものが相当あります。日にちも相当延びて、慎重審査しておられることはけつこうですが、しかし結局のところは、未裁定となつてこの人は公務死でないということになる。あなたの方は法律上の見解から公務死でないと言われるが、死亡した人の遺族から見れば、赤紙一本で召集された。そのことが原因になつて死んだ。してみれば、当然国家民族はこれにそれぞれのあり方をきめるのが当然だと思う。そういう場合、援護局はしかたがないからといつてつておくつもりですか。未裁定者は最後の段階ではどうするつもりか。そういう場合に、私が前段に申し上げたような処置が必要になつて来はせぬかと思うから、伺つたのです。どうするつもりなんですか。
  42. 田辺繁雄

    田辺説明員 これは先ほど申しましたように、公務でないとして裁定された者につきましても、服務に関連するものにつきましては、五万円の弔慰金を差上げるようにいたしておるのであります。但しこれにつきましても、先ほど申しましたようなこまかな若干の制限があるのでございます。現在死因に関する関係で保留になつておりますものが、中央分で四千五百件ございます。これもいろいろむずかしいケースがございまして、恩給関係の調査を要するとか、ことに自殺した場合のケースであるとか、いろいろございます。そう急に却下もしかねるという状態でございまして、何とか研究して可決の方向に持つて行きたいというつもりで、研究いたしておるのであります。恩給との関係もございまして、いろいろ研究しております。総体といたしましては、中央の手持分といたしましては、死因に関する分は四千五百件でございます。遠からずこれも解決できるのではないかと考えております。なおこのほかに都道府県の手持ちの分がございます。これにつきましても、なるベく御遺族の方に御迷惑をかけずに、われわれの方でいろいろ資料を集めたいと思つて、目下努力しております。会議等も開きまして、近く解決をいたしたいと考えております。
  43. 中野四郎

    ○中野委員 それは死因に関するだけですね。まだいろいろの事情のものが相当数残つておる。特に海軍関係は非常に多いのですが、最後の段階はどうするか。これは公務死でないという見解をあなたの方でとられたときに、この人は公務死でないからしかたがないといつて放任するのか。しかし法律のわくにはまらないけれども国家のためにとうとい犠牲になつたのだから、この人に対してはこういう処置をとりたいという、その処置を別途考慮する意思があるかどうか。たとえばそうなると、あなたの方では予算関係とかなんとか言うでしよう。すでに十九国会以来ずつと継続審議になつておるダイヤモンドの法律だつてそうでしよう。別に定める法人でもつて、その法人にダイヤモンドを処理せしめる、その処理せしめた使途はどうするかというと、いわゆる法律のわくから漏れた遺族方々に対しての援護、ある意味においては、あらゆる生活の広い意味での社会保障制度の強化とでも申しますか、いろいろな意味を含んでおりましようが、大体が遺族中心のものでしよう。だからそういうような予算的措置も考えられることもあるのです。ただ政府の方ではそういう法人をつくられては困る、大蔵省の方で特別会計にしてくれれば厚生省の方にその金はまわしますと言うのでしよう。そこで金、銀、白金の方はまた別に法律を出して来て、この金は特別会計にまわしてくれ、それにしても使途については考慮すると言つておる。議員立法で各派共同提案で出ておるダイヤモンドの法律においては、十七条に、別に定める法人、すなわち遺族援護会とか、あるいは遺族保護院というか、何でもいい、そういうものに厚生大臣あるいは大蔵大臣等においてその金をやつて、実際圧縮されて最後の段階にある人々国家のために赤紙一本で召集されて、そのことが起因して死んだという人々に対して、国家として報いる道を講じたいというのが、あの法律の趣旨です。ところが特別会計に入れてしまえば、当然法律のわく内以外の操作はできませんから、あなたの方で五十億余分に予算を組むか、百億余分に予算をとるか知らぬが、別途考慮すると言うのですが、これも当てにはならぬけれども、考慮された場合に、あなたの方でどういうふうに処置されるか。われわれは臨時国会、通常国会に臨むにあたつては、法律案を審議しなければならぬ。その審議の過程において、圧縮された最後の段階にあるこの人々に対して、そういうような予算的措置があれば、別に何らか方途を講ずる考えがあるかどうか、こう聞いておるわけなんです。
  44. 田辺繁雄

    田辺説明員 ただいまの未裁定件数について将来どうするかというお尋ねでございますが、これはいずれ公務か非公務かどつちかに裁定があるわけでございます。公務になれば問題はないわけでございます。非公務になりました場合においても、五万円の弔慰金は大部分の方に差上げることができるだろう、こう思つております。五万円の弔慰金もはずれる者はどうかという問題があるわけでありますが、これは大東亜戦争以前の死没者については、これは当時すでに死没者特別賜金というものが全部行つているとわれわれは考えております。それから三年を経過したあとで病気のためになくなつた方々の問題、あるいは一般の官衙勤務の軍人軍属で、公務でなしになくなつた方々、そういうものを考えますと、戦争犠牲者というものの範囲一般の戦災者にまで及んで来るという関係がございますので、いろいろの均衡から、まあ軍隊中における勤務が原因でなくなつた方には、これは三年という制限はございますが、それ以外の方には全部五万円の弔慰金を差上げることができるだろう、こう考えている次第でございます。どうもそういう特別の法人ができまして、年金から漏れたような方々に対する特別の措置があるということは、けつこうなことであつて、また望ましいことであるのですが、年金という形でそれができるかどうか、この点は研究を要すると思います。こういう年金、一時金が出ているにしても、一時金の金額が少額だから、こういう方々に対してはこういう金額を援護会の方から多くしてやるということも考えられるが、しかし年金支給するということになりますれば、財源の関係からやはり国というものが出て行かないとなかなか困難ではないか、こういうふうに考えております。
  45. 中野四郎

    ○中野委員 今の特別弔慰金の問題ですが、五万円ずつの特別弔慰金をやるというお話ですが、先日来厚生委員会においてこれを決定する場合においても、なぜ純軍人だけであつて軍属に及ぼさぬか。この軍属に対しては、一時資金が出ておるからという理由で軍属に及ぼさぬと言つてつたのですが、そういう一時金の来てない軍属をあるということも議論の中心になつていた。現にあなたとは大いに議論をした仲なんです。ところでそれは後日の問題にして、当面の問題ですが、この委員会であなたが約束なさつた、すなわち大東亜戦争以後の人々に対して、公務、非公務に限らずいわゆる五万円の特別弔慰金を給付する、こういう約束だつた。それには速記録をどんなに調べてみても全然条件はついておらないのです。ところがこの公務、非公務人々に対して特別弔慰金がはたして行つておるかといえば、行つておらぬ。現に特別弔慰金に対してはいろいろな議論を述べておるのです。これは御調査になればすぐわかることです。あなたのおつしやる大東亜戦争後のこの人人に対して、現在審査をして却下された人、異議の申請を申し立てておる人あるいは現在裁定中の者、いわゆる審査中の者、こういうようなものをひつくるめて、公務、非公務にかかわらず九万円ずつ特別弔慰金を出すという約束をしながら、予算的措置をこの委員会に要求もし、それぞれの措置をば審議させておいて、実際上においてはやつておらないのですよ。特別弔慰金を給付された者なんてきわめて少数なものです。だからあなたの方では予算の上で相当余つてつてしわ寄せになつているのではないかと思いますが、これは早いところやつていただきたいと思う。  それと同時にもう一つ私がわからぬのは、末端の町村役場においては何を誤解したのでしようか、特別弔慰金を受ける人に対しては、異議の申請を申立て中のものはこれを取下げなければならぬということを言つておる。まことにまかふしぎなことです。この委員会においてこの特別弔慰金を決定する場合においては、さような条件をつけた覚えはない。しかしどこの町村役場へ行きましても、あなたが特別弔慰金の給付を受けんとするならば、現在不服の申立てをしていらつしやるものを取下げなさい、これをお受けになるともう一切異議の申立てはできませんよ、こういうような言葉を使つておりますから、特別弔慰金の五万円の証書はのどから手が出るほどほしいが、もらえば実際上において今後の年金請求あるいは援護法によるところのそれぞれの援護を受けることはできぬというので、ほしさはほししそれもいやだというような状態で、逡巡しておる遺家族が相当ある。現に私の手元へ来ておるだけでもなかなかそう簡単な数ではないのであります。従つて率直に言えば、援護局長名において、さような誤解のないように、ひとつ末端町村役場に至るまで指令を出していただきたい。特別弔慰金というものは、今申し山げた公務、非公務にかかわらず、八東亜戦争以後の人々に対しては給付するのだ、しかしこのことは何も審査は関係がないのだ、その後審査して裁定を受ければ当然年金なりそれぞれの給付を受ける資格があるのですから、異議の申立てを取下げなければならないというりくつは成り立たないのです。たいへんな誤解が起つておりますし、この点はひとつ援護局長からこの際明確に伺うと同時に、適当な措置を希望したい。
  46. 田辺繁雄

    田辺説明員 異議の申立てを取下げなければ特別弔慰金は給付されないのだ、こういうふうな指導はいたしておりません。おそらく私の想像では、可決になりますと年金弔慰金と両方行くわけであります。そこで却下になりますと、再び五万円の国債と年金と両方もらいたいということで異議の申立てがされるわけであります。従つて特別弔慰金をやる際に、不服の申立てのうちの五万円の弔慰金の方は重複いたしますから、こつちの分だけは取下げてもらいたいという意味のことを間違つてそういうふうに伝わつておるのじやないかと思います。これは事務的にその都度注意すればよいのであります。たくさんの中のことですから、特別弔慰金の不服の申立ての際、可決になつたのでまた五万円ということになつて、どうしてもダブつてしまう関係になりますので、不服の申立てのときは、特別弔慰金によつてもらつておるから、それは年金の方だけにしてもらいたい、こういうふうにしてもらうつもりの意味が末端でそういうふうに誤解されて伝わつておるのじやないかと思いますが、この点は私の方からも通達を出しまして誤解のないようにいたしたいと思います。
  47. 中野四郎

    ○中野委員 その点は了解いたしましたから、至急適当な文書をもつてそれぞれ指令を出しておいていただきたいと思います。  もう一点だけ聞いておきたいのは軍属の問題ですが、その節私が伺つたときには数が明らかでなかつた軍属が現在公務か非公務かはつきりわからなくて、その際特別弔慰金軍属にも当然支給すべしという私らの意見があつたときに、軍属の数を伺つたのですがよくわかつておりませんでしたが、今日ではわかつておるかどうか。それからこの軍属に対して、新たに次の国会においてさらに特別弔慰金を給付するような気持があるかどうか、この点だけを伺つておきたい。
  48. 田辺繁雄

    田辺説明員 軍人の非公務の場合に弔慰金五万円を出すということは、御承知の通りわれわれの方としても折衝でもめまして、私ども最後まで粘りましてようやく五万円ということが通つたわけであります。その際身分の議論になつて参りますとき、私の方は先ほどお話のありましたような軍人の身分の特殊性、勤務の特殊性ということを非常に強調したわけであります。その点でわれわれの主張が通つたわけでありますが、その過程においても、戦地勤務だけにしてはどうか、あるいは金額を三万円にしてはどうかという意味の議論があつたわけであります。これもわれわれの主張が通りまして、軍人の身分並びに勤務の特殊性ということによつて五万円が認められたわけであります。軍属の場合を考えてみますと、軍属は多種多様であります。戦地の場合と内地の場合とでは非常に違つておりますし、極端に申しますと、内地の場合における軍属というものは、一般の文官ないしは雇用人とかわらない状態の者も相当あるわけであります。たとえば海軍工廠とか陸軍工廠とかに働いておる人が、普通の病気でなくなつた場合においては非公務ということになります。従つてどの範囲で切るかということは非常にむずかしい問題でありますが、そうかといつて戦地の場合には全部はげしい特殊性のある勤務であるかどうかということについては疑問がございます。それを一々こまかく差別をするということも困難でありまして、まあ戦地勤務の軍属の非公務の場合においては若干の疑問を残しながら今のような交渉が通つたわけであります。そこで先般の国会におきまして中野委員からその点を御質問になつたわけでありますが、今日戦地において死亡した軍属の中で年金弔慰金に該当しない者の総額は千五百件ないし二千件程度じやないかと思つております。大部分の方々につきましては年金弔慰金の裁定があつたと思つております。われわれもできるだけ戦時災害という解釈をとつて運用しておりますが、しかしどうしてもそれに該当しないという者が出て参りますので、今までの調査では千五百人ないし二千人ということになつております。これをどうするかということですが、内地勤務の軍属との関係もあり、従来のいろいろのいきさつもありまして、われわれの方もデリケートな立場にあります。気持は持つておりますが、具体的にどういうことになりますか、なお一層研究いたしたいと思います。
  49. 中野四郎

    ○中野委員 ちよつと忘れておつたのですが、大事な問題で特別弔慰金の問題ですが、今のあなたの方の話と私の申し上げることと合致しないところがあるのです。たとえて言えば、公務公務に限らず大東亜戦争後の人に特別弔慰金を給付するということがきまつたのですね。そうしますとその手続の問題ですが、ここに少しおかしいところがあると思うのです。また間違いのもともここにあると思うのだが、たとえば現在の給付をされる対象遺族に申請をせしめ、それから許可をして給付をするということになるでしよう。そうするとあなたの方がもし大東亜戦争後の、公務公務の人に限らず、現在審査中の者に全部五万円ずつの特別弔慰金を給付するということなら、軍属だけを除いて作業中の人全部に給付をするという通知を出したらいいのではないかと思うのです。それがないから間違いのもとが起つて来るのです。あなたの方から、あなたは現在審査中ではあるけれども、特別弔慰金はあなたのところに行きますよ、だから今度裁定が許可になつた場合においても、弔慰金は行かないけれども特別弔慰金はあなたのところに行くのだということの通知をやるくらいの親切があれば間違いが起らないのではないかと思う。それから私の今申し上げたような特別弔慰金が現在相当行き渡つていないのですよ。当然受けるべき資格を持つた人も酢だ、こんにやくだとなかなか能書を並べて、お役所仕事ですか、何年かかつても来ないという状態なんです。これは何ではなかつたですか、おそくとも本年の五月半ば、月末までには全部特別弔慰金を給付するということを、あなたは厚生委員会で約束したはずなんだ。ところが今は年末を目前に控えた十二月の初めじやありませんか。それをまだ何らの措置をとつていない人が相当数あるということをば、ひとつ田辺さんほどのヴエテランは考えてもらいたいと思うのです。そこで今申し上げたように万全の措置をおはかり願いたいと思いますから、先ほど来申し上げておるように、誤解のないように公務公務の現在のお約束による軍属を除いた全部の人に給付の通知を出すだけの用意をしてもらいたいと思いまするが、急速にそういう措置をとつて、本年中に一体特別弔慰金の給付を完了する意思があるかどうか、これだけを伺つておきたいと思います。
  50. 田辺繁雄

    田辺説明員 実は特別弔慰金の中で現在審査中のもの、つまり公務か非公務かがまだ未決定のものがございます。これは公務になりますれば年金弔慰金と両方行く。それが非公務ということになりますれば特別弔慰金だけが行くということになる。そんならどつちにしたつて同じだから、特別弔慰金だけを出したらよかろうというお話でありますが、実は特別弔慰金一般弔慰金と違う点は、一般弔慰金でありますと発行年月日が二十七年になるのです。特別弔慰金でありますと今年の同月からということになりまして、若干金額が違うのです。そこで予算上の関係もありますので、公務の出す弔慰金と非公務の場合に該当する弔慰金と銘柄が違うわけです。そこでりくつを申しますと、不服の申立て中はまだきまらないのだから特別弔慰金を出さぬというりくつも出て来るかと思いますが、しかし特別弔慰金の五万円を差上げておいて、あとでその不服の申立てが成功して公務となつた場合は、そのままにして年金だけを支給するということでやつて行きたいということまで遺族の方にも御納得をいただいておるのであります。そういう関係がありまして、不服の申立てが出ておるから年金の方をどうこうするということはいたさない方針でおるわけなのであります。  そこで現在却下になつたものにつきましてまたあらためて遺族の方から申請をしていただく申請書類をつくつてやるのはたいへんだから、私の方で全部書類をつくつて遺族に送つてあげて、遺族の方が参照してそのまま出されれば裁定ができるということでわれわれやつたのでありますが、却下になつたものの中で三年の期限が過ぎてしまつたものであるとかなんとかいう要件でもらえない方があるわけなんです。そういう方に対しては、あなたもらえませんぞということの通知はまだ出していないわけであります。そういう点が若干あります。  それから可決になつてつて、そうして特別弔慰金をすでに可決決定したものについては全部やつておるわけです。そこで問題は現在進行中のものであります。特別弔慰金それ自体すでに公務の方では却下になつた。そこで特別弔慰金を出すか出さぬかということを審査しなければならぬのだが、その審査の対象になりながら、また審査も進行しておるものがあるわけです。そこでいつまでぐずぐずしておるかというおしかりを受けるわけなのでありますが、実は現在公務扶助料がたくさん申達になつております。その際に去年裁定いたしました遺族年金の書類を公務扶助料に一応くつつけましていろいろの関係を総合しながら調べておるわけであります。この書類があちこちに行つておる関係上早急に進み得ないという実情もありまして——これはほんとうに内部の書類の取扱い上の問題でありますが、たくさんになりますと紛失混乱する関係もありますので、その関係から審査が遅れておるという点もあります。しかしこの前の国会でできるだけ早くすると言つた関係もあつて、特別弔慰金の性質上そういうことでありますので、急がせております。本年中に全部という気持でやつておりますが、年末を控えまして大作業をやりまして大幅にさばいて行きたいと思つております。こう思つてできるだけ善処いたしたいと思います。
  51. 中野四郎

    ○中野委員 今の審議中に、議員と政府を代表するあなたの方との一問一答を相当重要視しなければならぬ点があると思う。何も軽視するわけではないでしようが、たとえば速記録を一ぺん開いてごらんなさい、特別弔慰金のときの私とあなたのやりとりの速記録を。私は特に、審査中のものといえどもという質問をしておる。あなたの方は、その通りです、審査中のものでも特別弔慰金を給付いたしますと言つておるのです。速記録をお開きになればよくわかる。私はそういう見解のもとに今質問申し上げたのであります。だから作業中のものであろうとも、これが公務であろうと非公務であろうと、審査中のもの全部に五万円の特別弔慰金をまず出す。山縣君だつてそのとき言うておつたのだから……。出すと言つたのは去年の暮れですよ。それが何か金額の問題で、大蔵省とあなたの方の折衝の都合上遅れたわけなんです。そうしておそくとも五月の末にはということで……。私速記録の間違いではないと思いますから、今のお言葉をば私は了とはいたしませんが、ひとつすみやかに特別弔慰金をばそれぞれ該当すべき人に交付するようにしていただきたい。これだけお願いしておけばけつこうであります。
  52. 田辺繁雄

    田辺説明員 実は私も最初の五万円の特別弔慰金の際はそういうつもりであつたのです。五万円の弔慰金は、公務であろうと非公務であろうと、どうせ弔慰金だから、全部に差上げて、年金の方は多少遅れるつもりだつた。ところが五万円の弔慰金が、公務の場合と特別弔慰金の場合とで、大蔵省のいろいろな財政その他の都合で銘柄をかえられてしまつたわけなんです。そこで公務の場合ならこちらの銘柄、非公務の場合ならこちらの銘柄ときまつたものですから、そこで公務か非公務かどつちかをきめなければ、どつちも出せないということになつてつたわけであります。そういう関係もありまして、昨年私が御返答申し上げましたことが実は実現しなかつたわけでございまして、従つて審査中のものはすみやかに審査を終了して、公務か非公務かをきめることが必要となつたのであります。この点たいへん申訳ないことでありますが、その当時の事情と違つて参りましたので、御了承いただきたいと思います。
  53. 小島徹三

    小島委員長 山下春江君。
  54. 山下春江

    ○山下(春)委員 先ほど来諸委員から質問されたことによつて尽きておりますし、ただいま中野委員から御質問になつた点も私の伺いたい点でございました。厚生省から却下になります書類にいとも簡単に公務死に該当せずというような言葉引揚援護局長という大きな判を押して行つておるのでありまして、私ども常に委員会で局長の御答弁や心構えを聞いておるだけに——こういう書類の扱い方をすることははなはだけしからぬと思うような書類を地方で幾つも見かけるのであります。そこで気持は今のお話通りであろうと思いますが、何しろ数のことであるし、援護局という役所は、その点では非常に多くの人からぎりぎり結着の気持でとりすがられ、ながめられておるだけに、そういう小さな欠点が一々表面に出て来まして、まことにお気の毒だと思いますけれども、しかしながら私どもも、そういう書類を見せつけられますと、どうも援護局長の判が押してあるから、地方の人はこれは援護局長がやつたのだと思いますので、そういう点で援護局長という判を押すときには、少くともふだんの局長のお心構え、お心やりが書類の上に現われたような、そういう書類を御作成願いたいということを、今の中野委員質問とこれはまつたく同一の質問をしようと思いました点でございますので、私から要望いたしておきます。  援護の問題は中川委員からもこまごまとございましたので、私は省略いたします。  今度は問題の焦点をちよつと違えまして、援護局長は御存じでないとは思いますが、環境衛生部長も御存じでないかもしれませんが、畑違いの質問になりますが、ビキニの水爆の犠牲者、それから過日の洞爺丸の犠牲者に対する国の補償の外郭がおわかりならば——さんざん新聞で見ておりましたけれどもちよつと今私失念いたしておりますので、外郭でけつこうでございますから、御記憶の点をちよつと聞かしていただきたいと思います。
  55. 楠本正康

    ○楠本説明員 洞爺丸の関係は全然存じませんが、ビキニ被爆によります船員の被災につきましては、とりあえず船員保険によりまして医療費並びに生活費の一部を積算いたしまして支出をいたしておつたのであります。その後国といたしましては見舞金のような形をもちまして一人当り五十万円ずつ応急に支出いたしてございます。なお久保山さんにつきましては、なくなられた直後、相当多額の経費を弔慰金として支出したわけでございます。なおこれらの経費はすべて目下賠償計画と申しましようか、補償計画のうちに積算をいたしまして交渉をいたしておるやさきでございます。但しこれらの交渉につきましては、厚生省資料に基きまして外務省がこれを実施しておる現状でございます。
  56. 山下春江

    ○山下(春)委員 そこで援護局等の関係になるのでございますが、ビキニの水爆で犠牲となられました方々に対しましては、むろんどのような償いをいたしましてもこれで足りるとは思いませんけれども戦争犠牲者の国の補償という面を常に考究いたして参つたわれわれから考えますと、いかにしてもこれは不均衡過ぎると考えられるのであります。おけがをなさつた方の御一名も、現在病院におられまして、いかように相なるかがまだ今のところ見当もつかないときに、これを対比いたしますことははなはだ人道上おそれるのでありますけれども、しかしながら国策のために、国家民族のために一身を犠牲にいたしましたこの国家犠牲者の人々に対しましての国の補償ということは、これはできるだけのことをいたさなければならないと思います。今日日本の国内における思想問題、その他財政面、いろいろな意味から、この犠牲となられました方たちも隠忍自重はいたしておりますけれども、洞爺丸の問題、あるいはビキニの国の補償の問題等が起りまするや、それでは大東亜戦争犠牲になつた方たちに対する国の補償があまりに軽きに失するではないかということが、今実はほうはいとして全国に起りつつございます。これは同一視することはできないことは当然でございますが、そういう意味で政府のお心構えを、みんなの要望するその要望に対して速記録に残しておきたいと思います。非常に多くの、二十二、三項目に対する要望をみないたしておりますが、私は二つだけ速記録に残して、政府の御意見が承れればこの際承つておいて、政府、国会ともにこれに対して善処いたしたいと思います。  その一つ戦没者遺族公務扶助料は文官と同様に措置してもらいたい。その二は公務死の範囲を拡大して、法の適用から漏れる気の毒な人のないようにしてもらいたい。この二つのことを要望いたしておきます。これはむしろ謙虚な申出でありまして、政府も国会もこのことに対して何かこたえていただくべきではあるまいかと考えますので、政府のこれに対するお心構えを承つておきたいと思います。
  57. 田辺繁雄

    田辺説明員 公務扶助料支給の基礎ペースの金額を文官同様に引上げてほしいという御要望でございますが、この点は実は御承知の通り恩給法の問題でございまして、従つてどもの方の所管でないものでございますので、恩給局長あるいは恩給関係の政府の方からお答えするのが至当であろうと思います。  それから公務範囲を広げてほしいという要望はわれわれも内容につきまして一々承知いたしております。援護法の運用上公務認定の基準をなるべく広目にしてほしいということでございますれば、われわれもその線に沿うて今日までやつて来ておることでありますし、今後もまたできるだけそのつもりでやつて参りたいと思いますが、在隊中における死亡過失または故意によるもの以外は全部現金を支給するものであるということにするためには、まず恩給法検討が必要だろうと思います。公務ということと自己の責にすべからざることの間には非常に大きな開きがございまして、今まで恩給法公務というものはやはり疾病と勤務との間の因果関係ということを相当問題にしておりますので、在隊中における死亡全部をこの恩給法扶助料対象にするということにはなつておらないのであります。建前も実際上もそうなつておらないのでございまして、従つてそうするためには恩給法からの改正が必要ではないかと思います。但し戦争特殊性にかんがみまして、少くとも戦地における死亡に関しましては実情に沿うようにできるだけ広範囲にいたして参りたいということの点にはごもつともの点が多いのであります。私どもも今後その心構えで善処いたして参りたいと思います。  その他遺族関係であるとかあるいは戸籍の関係とかいろいろこまかい問題がございますが、主としてはやはり恩給法関係であろうと思います。私どもの方では戸籍ということを問題としておらないのでございますが、主としては恩給法の問題であろうと思います。  それから現在年金対象となつておらない戦争犠牲者に対しましては、法律によりまして三万円の弔慰金支給いたしております。この支給にあたりましても、法の許す限り、法の精神を逸脱しない限り、できるだけ法律を広範囲に解釈いたして運用いたしております。  開拓団の場合におきましても死亡の態様はいろいろでございます。すでに辺境の地帯からそれぞれの引揚げのセンターに移動して参りまして、引揚げの船を待つておる間に、一般の引揚者と同じような状態で病気でなくなつた方もございます。こういう方々を戦闘参加者とも言えませんので、こういう方は除外してございまするが、辺境地帯ないしは辺境の地帯から引揚げのセンターに移動して来る途中において、ソ連の戦車あるいは土匪と申しますか、そういうものに襲撃を受けて死亡した場合におきましては、女でありましても、年齢が若くても、できるだけ広くとつて、三万円の弔慰金支給するようにいたしております。その他いろいろお話がございまするように、無給の軍属あるいは軍属にもなつておらないような方で、戦闘班に巻き込まれて、なくなつた方に対しましても、解釈のつく限り陸海軍要請に基いて戦闘に参加したものと認定いたしまして、三万円の弔慰金支給するようにいたしております。実際戦争犠牲者全部に対して何らかの措置ができるということはわれわれも望ましいことと思いますが、そうなりますると、戦争犠牲者ということになれば、一般の戦災者も入つて参ります。その他地域の区別なしに外地において死亡した者全部に広げなければならぬということになつて参りますと、その数が厖大になる関係もありまするので、現在の法律の許す範囲内においてできるだけ広く解釈いたしまして、これに該当する方々弔慰金を差上げるという心構えでやつております。目下のところは、その範囲でございまして、戦争犠牲者全部に対する漏れない徹底した援護の手を差延べるということは、ことに年金支給するということになりますると、たいへんな財源を要しますので、この点は慎重に検討しなければならぬ問題だと考えております。われわれとしましては、少くとも現在の法律の範囲内におきましても、できるだけ御趣旨に沿うように運用して参りたい、こう考えておる次第でございます。
  58. 山下春江

    ○山下(春)委員 国家財政の非常に窮迫しておる折からでございますから、もちろん、ただいま局長が仰せられた点をもつてわれわれもまずまず最高としなければならぬと思いますが、できれば法の許す範囲内の最大限を本年内に片づけることが、ほうはいとして起りつつある気持を押えて行くのに——押えるということはいかがであるかわかりませんが、そういう人たちにがまんをしていただくのに非常にいいことだと思いますので、あらゆる困難を押し切つていただいて、いまだ行き渡つていない特別弔慰金を受ける方々に本年中に到達いたしますようにひとつ御努力願いたいと思います。  先ほどのお話で死因による未裁定のものが四千五百というお話でございましたが、法律の不備と申しましようか、どうも農村には——全国的にそうだと思いますが、法律というものに対してあまり深い関心がなかつたために起つて来る問題が相当あるのじやないかと思います。私どもの手元にも非常にたくさん来ておりますが、そうしますと、法律の不備となりますと、その戸主が百才になるまでは決裁がつかないというような問題があるのですね。私ども現にその問題を扱つて援護局といろいろやつているのでございますが、法律というものをいなかの者がまるつきり無視しておるものですから、そういう問題が起つておりますが、法律の不備から来る未裁定というものが見当でお手元にどのくらいありましようか。例を申さないとわからないでしようか。
  59. 田辺繁雄

    田辺説明員 法律の不備による未裁定というものは、一応ない建前になつております。たとえば公務であるか、非公務であるかという認定上の問題で困難なケースであるために裁定が遅れているということはございます。しかしそれは法の不備というよりは、実際の実情が非常に困難であるというケースであろうと思います。たとえば終戦後の責任自殺というものがございます。これは従来恩給局では公務とは裁定しておらないのでございます。しかしこれなんかも私考える必要がありはしないかと思つて未裁定にいたしております。戦闘中における自殺につきましては、でき得る限り広くとつておりまして、これは決裁をいたしております。しかし終戦後内地において、または戦地において武装解除が平穏に行われている過程における自殺者があるのでございます。こういうものに対しましてどういうふうな処置をとるかというような問題、これも法律の不備と申しますよりは、取扱い上の解釈の問題でございますが、法律による件数と申しますのは、主として戸籍関係ではないかと思います。(山下(春)委員「戸籍です」と呼ぶ)戸籍関係の不備と申しますか、戸籍が整備されておらないという結果であろうと思います。これにも二つございまして、法律が不備であるために、当然やつてよろしいのにかかわらずやらないというものがある。こういう問題であろうと思います。これは主として恩給法関係でございまして、恩給法昭和二十三年の民法改正以前の死歿者に対しましては戸籍を要件としております。民法改正後における死亡者に対しましては戸籍というものを要件としておらない。その結果、戸籍というものを要件としないでやつてほしいという観点からしますと、それはちよつと不備ではないかという議論も出て来ます。これは別としまして、戸籍謄本をつけて年金弔慰金の裁定をするということになつておりますので、戸籍自体が不備であるという場合もあろうかと思います。しかし戸籍は実体の反映でございますので、実体を明らかにした上で裁定できないものではないと考えます。
  60. 山下春江

    ○山下(春)委員 ただいま私が法律と申しましたが、ことごとくそれは戸籍という意味でございます。ところがそれが先ほど申しました援護局長の判が押してございまして、公務死に該当せずというのですか、何か非常に簡単な言葉でそれが書いてあります。簡単にその戸籍の状態を申しますと、完全な戦死でございますが、その戦死いたしました者は、生みました生母と——要するに生んだ父母がおりません。母がなくなつて父が失踪したか何か、五つぐらいの年におじさんか何かにもらわれて行つております。ところがそれは戸籍に入つておりません。従つて同工戸籍でずつと来たのですけれども、死んだときに戸籍も何も入つておりませんし、生母は死亡、ほんとうの父は失踪して行方知れずというときがその戦死の状態です。従つてこれを養子にしようと思つていたその養父もなくなつております。そういうところに戦死になりましたので、その家はその養父の何か非常に遠い血続きの者が今そこにおるのであります。そこに仏様がまつつてあるわけです。そういう場合に、これは完全な戦死の通知で、むろん戦死した場所もわかつておりますが、どうにも扱いようがない、いわゆる法律の不備である。村長その他がいろいろ嘆願書をつけて出しておりますが、それに対して援護局長から何か該当せずという——これは戸籍上ほんとうにその通りなんです。その通りで、私も戸籍からいえば、それを無理とは申しませんけれども、しかしそういうのがきつと何件かあると思います。私が調査したところによると、これと同じケースがあると言われましたところから見ると、こういうことで苦しんでおるのが全国にあると思います。そのあとの仏をまつつておるいとこか、またいとこと思いますが、この人間がそれを受けられるかどうかということを伺います。
  61. 田辺繁雄

    田辺説明員 身分上の認定は役所がかつてにするということはできない建前になつております。自分子供同然に育てておつたから親子であるというわけには参らないのでありまして、やつぱり法律上の手続をとつて戸籍に実際に記載されませんと、法律上におきまして親子にならないわけであります。ただ内縁の妻だけは各般の立法令におきまして、事実上故人との関係は同様に扱うのが従来からの例であります。一方養子父母の場合は、やはりそこに一定の形式上の行為があつて初めて親子になる、こういうことになつております。これを実際問題にとつてみますと、親子であるか親子でなかつたか、養子にしたかしないかということは、非常にむずかしい問題でございまして、極端な場合をとればそういうことでございますけれども、そうでない人が親子であると言い出した場合に、役所がそうであるとかそうでないとか言うことはできない。ただ裁判上の問題として処理するよりほかないわけであります。先ほど申し上げておりますように、こういうケースは、戦死者があつて、もしだれも法律上の身寄りがないという場合は、その人を育ててめんどうを見ておつた人がある場合に、その人に対して弔慰金を差上げたらどうかということになるわけであります。先ほど中川さんから御質問があつた点はその点であります。その点はよく研究をさせていただきたいと思います。
  62. 山下春江

    ○山下(春)委員 援護の問題は打切りまして、これはかねがね問題にしておりましたが、この委員会として問題になつておらないと思いますが、この際局長にちよつと伺つておきたいと思うのです。ということは本年度も大体終りになりますし、新しい予算ができるときでございますので、厚生委員会としてもひとつ考えていただきたいと思うのです。それは日本中各地にあると思いますが、特にはなはだしいのは北海道でございますが、外地から引揚げられました方を旧軍事施設などにとりあえず入れてあります。そのことは非常に手まわしよく入れてありますので、きようまではとにかくしのいで来たのでありますが、何しろ引揚げてから七年も十年も経た今日でありますから、その施設もいたみまして、これを疎開させなければならないという問題が非常に切実に起つております。その最も切実なのが北海道でございまして、局長のところにも非常に切実な陳情が行つておると思いますが、この疎開住宅の問題に対しまして、これは厚生省特に引揚援護庁の手元で扱うべき問題でありますが、本年度はどういうふうなお心構えで、どういうふうに進められておりましようか。
  63. 田辺繁雄

    田辺説明員 終戦直後外地から引揚げられた多数の方々を収容する、住宅がなかつた方に、当時の軍なり工場の古い施設を応急に利用したわけであります。それが相当多数に及んで、腐朽または衛生上いろいろ問題がございましたので、厚生省ではかつて二箇年計画を立てまして、三箇年でございましたか、全国的に疎開作業を実施いたしたわけでありますが、北海道はあまりにも数が多かつた関係上、地元においても都道府県においても負担ができかねるという関係から延びたわけであります。それが千何百からあるわけであります。これはやはり問題として提起されまして、大蔵省と非常にやつたわけでありますが、時日も長くなるので、第二種公営住宅の中に特別なわくをつくつて、それをひもつきで北海道に流して、それをもつて集団住宅の疎開に充てるということにしまして、二箇年実施したわけであります。ところがそれでは単価が高くなる関係上、思うように建設戸数がふえないという問題がございまして、昨年からまた新しい問題が起つておるわけでございます。そこで本年度におきましては、私の方では従来やつたと同じ方式で厚生省予算をとつてやろうということで、六百戸分だけ予算を要求してございます。ただそれがはたして昨年と同じような方式で、建設省の中に特別なわくとして設けられるようになりますかどうですか、予算折衝の際に話合いをしなければならぬと思つておりますが、端的に申しますれば、厚生省でつくる場合は若干建築の基準と申しますか、内容が低くなる。建設省で建設する場合は単価が高いかわりに建築はよくなる。この点は地元負担との関係があつて、地元でもいろいろ甲乙両論あるわけであります。地元においては厚生省が負担しない場合はりつぱなものができるけれども負担が高くなる。入る人から言わせれば家賃さえかわらなければりつぱな方がいいということで、地元の方の要望が一本にまとまつておればわれわれの方はいいと思いますが、せつかくりつぱなものができて入る人が希望していても、それは高過ぎるからおれの方にしろということは言いかねる。この間大蔵省といたしましても、国家全体の費用から見まして厚生省がやつておれば厚生省、建設省がやつておれば高くても建設省という振合いがあろうと思います。いずれにいたしましても厚生省といたしましては六百戸分だけは来年度ぜひやりたいということで予算を要求して、できればわれわれの予算で建築いたしたいと考えております。
  64. 山下春江

    ○山下(春)委員 六百戸に対して援護局長は御自信があるということはわれわれ非常にけつこうなことでありますが、御自信がどの程度にあるかということで非常に心細いのでありますが、疎開させなければならない住宅が六千五百戸ほどある。その中でもうどうしてもこの冬が越せないというのが千九百七十五戸ある、それを三年計画で解消していただきたいというのが向うの言い方でございますが、地元では役所のなわ張りのどつちへ行つてこれを陳情することが正しいのかわからない、建設省に行つてみたり、北海道開発庁に行つてみたり、主として厚生省に泣きついている状態でございますが、私ども厚生委員から考えますと、建設省の第二種公営住宅の中に入れたのが無理でございます。当然一応援護局の仕事として曲りなりにもこの最悪の千九百七十五戸というものは厚生省援護局がこの疎開住宅を建てて、とにもかくにも一応一段落をつけるべきものであつて、建設省が第二種公営住宅というものを持ち出したものでありますから、話が混乱してできなくなつたのでありますが、実は私はこの夏調査をいたしまして、こういうことは思想上から言つてもいろいろな面から言いましても、このままに捨てておくわけに行かぬ。特に帯広のそばの音更では、大風で二棟吹き倒されてぺしやんこになつて跡形もなくなつております。従つて近所の農家に百何家族が入れられている。近所の農家も非常に迷惑で座敷一問を貸して家族の方を入れているという状態で、これはどうしても建設省は仕事の性質上家を建てさえすればいいということで、そういう実情とか様子がよくわからないものでもありますから、もう十年もたつた今日そんな引揚者の疎開住宅などおかしいという言い方が出て来ると思いますが、それはとんでもない言い方でありまして、千九百七十五戸だけはどうしても援護局責任を持つておやりいただかなければ片づかない問題だと思います。そこでこの委員会あたりでも、そういうことに対しまして来年度の予算に、厚生省から出してあるということになりますれば、委員会といたしましてもぜひその線を強力に押して、これが削られることのないようにいたしたいと思つておりますが、今のところ局長さんの見通しとしては、どうにか六百戸分が獲得できそうにお思いになりますかどうですか。
  65. 田辺繁雄

    田辺説明員 実は建設省の住宅にまかせますと、内地の庶民住宅にプラスされまして防寒住宅でなければならない。北海道における防寒住宅建設促進法があつてその関係で非常に高くなつているわけでございます。もし内地並の公営住宅でございますれば、厚生省で建てる場合でも建設省で建てる場合でもあまり大きな差はないと思つております。実は厚生省で建設省の方に住宅を入れる際に了承いたしましたのもそういういきさつがあつたわけでありますから、こちらで建てても地元負担は同じで、むしろ建築の内容は建設省の建てる方がりつぱなものになるような点もあるのであります。長い目から見ればりつぱな住宅を建てた方がいいということで建設省のわくに入ることを了承したのであります。もともと第二種住宅というものは御承知の通り厚生省の方で提案をいたしまして、住宅は建設省だというので建設省に入つたいきさつもあります。厚生大臣が主管大臣の一人であつたわけであります。従つてその中で特別のわくをちようだいするならば、それで建てることも一つの方法であろうと思つております。ただこちらで建てる方が安あがりになるということが問題点になりますが、厚生省よりも建設省で建てる方が安いのは間違いないことであります。その点は大蔵省の方でもこまかい計算をしてくれていると思います。下の方の話でございますから最後の判定がどうなるかわかりませんが、われわれといたしましては、六百戸の戸数だけは確保できるようにがんばりたいと思つております。昨年、一昨年と公営住宅のわく内で処理された実例がございまするので、その例から申しますと、厚生省はもう手を離れたのだ、こういう既成観念ができ上つているものですから、その点に難点がございます。いずれにいたしましても措置しなければならぬことは同じでございますので、一応厚生省希望しますが、建設省に入る場合であつても戸数だけは確保できるように努力したいと考えております。
  66. 山下春江

    ○山下(春)委員 大体わかつたようなわからぬようなことでございまして、これはなかなかむずかしいから、局長もそうはつきり言えない段階の状態だと思いますが、第二種公営ブロツク建築になりますと、今年度の予算で六百戸なんかとんでもない話であります。それこそ二、三十戸がせいぜいなんでございますが、そういう状態にして放置しておきますことは実はよくない、国家全体からいつてこれはとんでもない損でございますので、私ども厚生省の引揚疎開住宅という、きようまでお建てになりましたあれで、とりあえずやつていただくということに腹をきめていただく。現実に現地へ行つてみますと、ブロツク住宅へせつかく入りましたものが、家のまわりに草を一ぱいはやしていてちつとも奮い立つていない。厚生省が建てました七坪半の木造建築でございましても、非常に家のまわりが光つて、商売などを始めて、非常に勢いよく立ち上つているということでございまして、今いい家を建てたらみんなが元気よく立ち上つて、家が安いから立ち上らないということは絶対ないのでございます。すみやかに疎開されることが今日置かれた政治だと思いますので、そのようにぜひ奮発してお願いをいたしたいと思います。いろいろございますけれども、たいへん時間がおそくなりましたので、その疎開住宅の件につきまして、特に私から強く厚生省に反省をお願いするように要望いたして終ります。
  67. 青柳一郎

    ○青柳委員 遺族の問題について、たくさんの方々がほとんど論議し尽されたようでありますが、私はそのうちの軍属の問題を具体的に少しく取上げて、厚生省の御意見を承らしていただきたいと思います。  まず一つは陸海軍工廠に働いておつた人たちが敵の爆撃、銃撃によりましてなくなつたいわゆる公務死の場合、これは現在非現業共済組合の旧令共済で扱つておりまして、そのなくなつた人が、その属しておる一家の生計を維持する人であつた場合には年金がかかる。そのなくなつた人のほかに兄弟でもあつて、その兄弟が働ければ、一家の生計ができるという場合には一時金だ、そういうふうになつております。同じ卑属であつて軍人と同じ人が同じような公務死を受けた場合に、そういう取扱いが二つに出ておるという点について疑問を持つておるのであります。一方は大蔵省所管、援護法厚生省所管でありますが、援護法にも軍人軍属援護というふうにうたつてあるし、厚生省としては全国民に対して平等な立場から援護をするという考え方でなくてはいけない、こう思うのです。従いましてこの陸海軍工廠で働いておつて敵の攻撃によつて死んだ人、こういう人々についても、普通の軍人さんと同じように扱うのがよかろうと思うのです。ことに共済組合員でまだ生きておつた人、終戦後五年分の養老年金をもらつて退職したのです。五年たつたときにこれを年金に切りかえたことがある。これは現実の事実なんです。ですから今年金をもらわない、一時金をもらつた人、これは十年分もらつていると思う。もう十年分が切れる。この機会に養老年金をもらつてつた人に対して問題が起つて、一時金はもらつたんだけれども、それが五年分だから六年目から年金になつたと同じように、十年たつとしたら現在はこれを現実化しなければならないと思つておる。同じような職務にあたつておる人が、一方は一時金をというようなことをそのまま置いておくということが基本的におかしいという点と、十年たつという点から厚生省当局は相当考えなければならぬ時代が来たと思うのですが、そういうことにつきまして今まで検討されたか、あるいはお考えがどうだかということを承りたい。
  68. 田辺繁雄

    田辺説明員 軍人軍属戦争による災害に対して、国家補償の見地から措置をする場合、厚生省がいかなる立場に立つてこれを行うかということについては、いろいろに考えなければならぬことがたくさんあると思う。たとえば軍人恩給が復活するという場合に、これは恩給局においてやるべきだと思います。ところが当時特殊の事情があつて、暫定的に厚生省がその措置をやつたのでございます。有給の軍属戦争災害については陸海軍とも共済組合の系統でやつていたのであります。当時陸軍も海軍も共済組合という制度を設けまして、この共済組合によつてつてつたわけであります。戦争による災害に対しましてはそれぞれそういつたことでやつてつたわけであります。その際には当然戦地における軍属対象としてやるべきはずだつたのでございますが、これは立案過程中に終戦になつてものにならなかつたのであります。従いまして本筋としては陸海軍共済組合というものがあつてそれが今日まで続いておるわけでございますので、その制度で行くのが筋ではないかと思われるのであります。それで遺族援護法というものが少くとも年金に関しましてはそういつた暫定的な措置法ということを主眼として立法されたわけでございまして、もし国家補償ということを根本として、そしてそれだけの観点から立案するということでありますれば、それぞれの所管官庁において措置すべきが当然ではなかろうか、これが他の観点から立案されるということになりますれば、また別途の考え方があろうと思う。たとえば戦争による犠牲者に対しましては広く援護をやるのだ、この援護生活保護法とは別にやるのだというようなことであれば広くやれると思う。しかし国家補償ということを唯一の根本としてやるということでありますれば、恩給法なり、共済組合法なり、そういうことが基本となつて措置されるべきだと思う。なお共済組合の遺族年金遺族援護法のそれとの関係は非常に入り組んでおりまして、遺族年金の額は、実は共済組合の方が高いのであります。従つて遺族援護法の中に共済組合の制度を吸収するといつても、実際問題として吸収し切れないわけであります。共済組合で遺族年金支給する際には、主として生計依存の関係にあつたかどうかという認定につきましてはいろいろ問題があろうと思うのでありますが、そうした立法建前は厚生年金保険についてもあるのでありまして、公務で死んだ場合におきまして生計依存の関係のある方に対しましては年金支給する、そうでない方に対しましては一時金を支給するということがあるのであります。要するに共済組合制度遺族年金をやめてしまつて遺族援護法に吸収するということは、実際の運営から申しましても困難な面がたくさんあるのではないかと考えております。
  69. 青柳一郎

    ○青柳委員 今の点話の筋は大体わかるのですが、きようも議論が出ているのは軍属に関する議論が非常に多い。軍属関係について抜けている点がたくさんあると思う。それらの点を整理して行きたいという気持もあるし、それに援護法というものは一時的なものであつても、やはりその制度は永久的なもので、一方生活依存主義というものを公務によつて死んだ者にとつておる部分はごく少い。一般的には生活依存主義でなくなつておるという情勢なんです。それも直したいという気持から実は質問したのですが、それならもう一つほかの点について御質問したいのです。それは、学徒動員動員された人、徴用工の問題です。これは一般の文官や雇用員と違つて国家が強制的にひつぱり上げた、総動員法によつて強制的に好むと好まざるとにかかわらずひつぱり出した。私はこういうふうな制度がある以上、必ずその裏づけとして国家補償の制度があるべきであつたと思う。それができないままに敗戦に突入してしまつた。まことに気の毒千万だと思うので、これはりくつから考えても何とかしなければならないと思つておるのですが、現在はそれができておらない。三万円の弔慰金だけでうつちやられておる。これは非常に気の毒だと思うのですが、御意見を承りたい。
  70. 田辺繁雄

    田辺説明員 今日になつてみますると、戦争犠牲者軍人であろうと軍属であろうと、その他の者と区別はないという考え方が当然出て来ると思うのでありますが、範囲をどこまでにするかという問題は非常にむずかしい問題でございます。それなら権力によらない学徒はどうするか。広島の原子爆弾でなくなつた中に国民義勇隊というのがあります。これは自治組織で、隣組の国民義勇隊ということになりまして、多少軍の要請があつて疎開作業をしておつた。これにはおばあさんもおる。権力ないしは権力に準じた強い要請があつたものまで取上げるということになりますと、すべて強制配置ということになります。極端に申しますと、農村でもそういうものがあり得る。ことに終戦直前におきましては、相当多数の方々が直接権力に基く場合とそうでない場合とを問わずそういつた態勢についたわけて亙ります。徴用の場合におきましても、新規徴用の場合におきましては、一般に徴用して軍需工場へ連れて行つたが、移動を防止するために現員徴用ということをやつて社長まで徴用したのであります。そういうことになつておりますし、たとえば挺身隊というものがありますが、挺身隊は全然法律に基かず、自発的にやつておるところもあります。これは学徒の場合と五十歩百歩であろうと思うのであります。そういうことを考えますと、広まるところはだんだん広まつて参ります。空襲で焼け死んだ人の中には、どうしてもその土地を離れることができないという国家要請があつた者も相当あると考えられます。そのためにその土地で死んだ。特に防火作業に従事中に——国の要請に即応いたしまして、どうしても火を消すということを考えて防火作業をして空襲で焼け死んだ人も相当あると思います。こういう関係で、もし範囲を広げるということになりますと、どこまで広げるかということで非常に困難な問題が出て来るわけであります。われわれといたしましては、先ほども申し上げますように、戦時中にあつた制度、つまり当時の社会通念においてそれでよろしいということになつてつた制度につきましては、それで済ましたということになります。確かに学徒の場合におきましても、徴用の場合におきましても、国家においてこれを補償するという道は講じてございません。但し徴用援護会、学徒援護会というものがございまして、ここで一時金は差上げておるはずでございます。使つておる会社からも相当の一時金を出す建前になつてつたと思います。少なくとも徴用援護会、学徒援護会からは一時金が出ております。そういつた関係で、形式的な議論を言うようでございますが、当時の社会通念において国家が補償するという道が講ぜられなかつたものにつきましては、この際それは復活しないという一線を画しまして、現在の体制ができ上つておるといつたような状態でございますので、もしそれを広げるということになりますと、どこまでやるかということを慎重に考え、またやらないと、一つつつつき一つつつつきということは非常に不公平になりますので、まことにお気の毒な実情でございますから、慎重に御考慮をお願いいたしたいと思います。
  71. 青柳一郎

    ○青柳委員 ただ私がただいま質問したように、国家が裏づけとして補償制度をつくるべきであつたということで明らかなように、法律をもつて無理にひつぱり出された人に限定して私は質問したつもりでございます。この点は明確にしておきたいと思います。  それから一時金が出ておりますが、一時金とは何であるか。これは弔慰を意味するものであつて弔慰金類似のもので、不幸な目にあつた、一家が将来とも不幸な目にあうのを何とか補う生活の費用ではなかつたのではないかという気持がするので、私はこういう質問をした。あくまでも法律をもつてしやにむにひつぱり出した人に限定して私は質問したのでございます。その点どうか……。     —————————————
  72. 小島徹三

    小島委員長 次に食品衛生に関する件について発言を求められておりますので、これを許可いたします。松永佛骨君。   〔委員長退席、青柳委員長代理着   席〕
  73. 松永佛骨

    ○松永(佛)委員 楠本環境衛生局長さんに食品衛生特に牛乳の問題についてお尋ねしたいと思います。きわめて簡明なる質問をいたしますから、時間の関係もあるので、お答えもできるだけ簡単明瞭にお願いいたしたいと思います。  最近牛乳の殺菌方法につきましていろいろの議論があるようであります。ことに大牛乳会社と政府関係金融機関との間に公正取引法違反等の問題すら起しておる等のことを聞くのでありますが、牛乳の殺菌の現状はどうなつておるかというのが第一点。  また将来殺菌並びに保存方法の基準を改訂するとしますれば、第一には、厚生省の命令によつて相当の資本を投じて低温殺菌の処理をしている業者との間の調整をどうはかつて行かれるか。第二点は、これが独占企業化しておる実情を、農村等における生産者側並びに農山漁村等の消費者の不利不便から見て、これをどうして措置されるか。さしあたつての予定方針を伺つておきたいと思います。並びに高温殺菌によつて栄養が逃げるとかビタミンCがなくなるといつた常識的なこと以外に、高温殺菌でどういう弊害があつたかなかつたか、何か特に著しい弊害のあるようなことがあつたのかということをひとつ承つておきたい。  以上であります。
  74. 楠本正康

    ○楠本説明員 殺菌方法につきましては、現在省令によりまして低温殺菌を原則といたしております。ただ例外規定といたしまして、特に僻陬の地等を対象といたしまして、高温殺菌を知事の裁量によつて認め得ることとなつております。但し昨年暮れあたりから農村におきましても牛乳の増産が順調に進み、特に農村地帯における食生活の改善がきわめて必要となつて参りましたので、本年二月次官通牒をもつて以上申し上げました省令の例外規定を積極的に活用して、簡易なる消毒方法によつて新たに農村地帯における牛乳の消費を促進するよう方針を改めた次第であります。しかしながらその結果、現在ではかような措置を講じましたものの、原則が低温殺菌方法を規定いたしております関係もありまして、現在は農村地帯等におきましてもなかなか高温殺菌は普及しがたい現状でございます。現在は大部分が低温殺菌によつておる、かように考えております。  第二点の、しからば以上の殺菌方法を高温殺菌、低温殺菌の二本建にかりに改めたといたしました場合、すでに低温殺菌施設のために資本を投下したものに対して一体どういう措置をとるかという問題でございますが、これは第三点の問題にも関連をいたしますが、私どもといたしましては、現在広く高温殺菌を認めようといたしておりません。しかしながら先ほど申し上げました次官通牒の趣旨等によりまして、農村地帯等に今後高温殺菌を積極的に指導して参ります場合は当然御指摘のような問題も出て来るかと存じますが、これらは低温殺菌を禁止するわけでございませんので、私どもといたしましては、数もきわめて少いものと期待をいたしておりますし、またただいま申し上げましたように、低温殺菌を禁止する建前でございませんので、特に補償その他の問題は考えておらない現状でございます。  第三の御質疑の点につきましては、私どもといたしましては、現在できるだけ牛乳の消費を普及し、これによつて生活改善の実をあげようと考えておる次第でございまして、もちろん消費者本位にものを考えて参りますことは申すまでもございません。この場合消費者本位に考えますと、すでに低温殺菌が完全に行われております都市、市部等におきましては従来通りの方針を堅持して参りたい方針でございます。ただ先ほど次官通牒の趣旨を申し上げましたように、農村地帯等におきましては、今後特に乳牛の増加と並行いたしまして、農村におきまする牛乳消費の促進をはかる必要がございますので、その場合には、その施設の規模あるいは消費量等もきわめて少い現状にかんがみまして、これからは簡易なる低温殺菌を積極的に普及して参りたい所存でございます。  最後の御質問の、高温殺菌並びに低温殺菌の優劣の問題でございますが、まず栄養的に見ますれば、もちろん低温殺菌が優秀であります。次にこれを衛生的に安全性という点から見ますると、これはいろいろ条件にも支配されますが、結論的に申し上げまして、一長一短といわざるを得ません。特に原料牛が比較的悪いような場合、あるいは一日五百本あるいは千本程度の処理をする小規模の施設の場合、あるいは一般に衛生知識がさほど進んでおらない地域等におきましては、むしろ高温殺菌が安全であります。これに反しまして、多量の牛乳を扱う場合等におきましては、これは逆に低温殺菌がはるかに安全であります。従いまして、この利害得失はもちろん地域実情によつて判断さるべきものだと存じております。
  75. 青柳一郎

    ○青柳委員長代理 次会は来る二十九日午前十時より理事会、十時半より委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五分散会