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岡委員 私はお許しを得ましてこの際決議案を
提出いたしまして同僚各位の御賛同を願いたいと思うのであります。この決議案は、まずその本文を朗読さしていただきます。
生活保護と
社会保障に関する決議
最近の緊縮
予算のもとに於ては、ややもすれば
生活保護法、児童福祉法等の運営にあた
つて重大の
支障なきを保しがたいのである。このようにして国の
責任が地方団体、あるいは民間事業等に転嫁されるの結果となり、特に
入院患者の強制退所、あるいは要
措置児童の入所拒絶等の結果をもたらすことともなれば、まことに遺憾にたえないところである。
よ
つて政府は民生の安定と、社会不安の緩和のため特に
生活保護費をはじめ、
社会保障関係予算につき誠意ある
措置を講ずべきである。
右決議する。
以上がただいま
提出いたしました決議案の本文であります。
いささか簡潔にその
趣旨を弁明さしていただきたいと思うのでありまするが、私
どもからいまさら申し上げるまでもなく、最近におけるデフレの影響はもはやきわめて深刻な影響を与えております。中小企業等におきましても、東京手形交換所管内における不渡り手形の枚数が、一月に比べてもうすでに四月ははるかに多くな
つておりまするし、倒産等につきましても、繊維
商社の倒産が、本年一月の四十三件がすでに三月には百五件、なおこれらの事態が今後ますます深刻になろうといたしておるわけであります。こういうような一例をも
つて見ましても、デフレ政策の進展の結果、あるいは繰業の短縮となり、経営規模の縮小となり、また企業系列化の名に基くところの生産規模の縮小などによりまして、賃金の不払い、切下げ、労働時間の強化等、労働条件の悪化が漸次進行しつつある懸念を持
つておるのでありましてその結果は当然失業者の増加と相な
つておるのでありまするが、このことにつきましても、総理府統計局の労働力調査によりますると、完全失業者が本年の一月は三十九万人、二月が四十三万人、そうして三月は五十九万人と、実に前月よりも二十六万人も増加いたしております。おそらくこのほかには潜在失業者といわれる者も数百万人に達するのではないかということを私
どもは心配いたしておるわけであります。これに対しまして失業保険の受給者数も、一月が四十一万七千人、二月が四十二万六千人、三月は約二万四千人これに増加いたしまして四十五万人、昨年の三月に比べますると、十万人の増加を見せておるのであります。これら不渡り手形の増加、倒産の増加、そしてまた失業者の増加、失業保険受給者数の増加という、いわばデフレ進行下における
日本の
国民大衆の生活の貧困化が氷山の一角としてこれらの数字の上にはつきりと出ておるわけであります。従いましてわれわれはこういう結果特に失業保険のごときは、
御存じのように五人未満の事業所においては適用されないということに相な
つておりますので、おそらく目に見えない零細企業に働く人々の中で生活の困窮にあえぐ人々が今後どしどし増加し乗るのではなかろうかということを非常に懸念をいたしておるのであります。
こういうようかいろいろの事情を考えまして私はこの決議案を
提出いたしたのでありますが、さらに決議案の内容について具体的に申し上げますると、
生活保護法は
予算といたしましては二十七
年度には二百四十六億余円であつた。二十八
年度は二百六十五億余円、二十九
年度は二百八十四億八千六百万円と相な
つておるのでありまするが、この内容を見ますると、二十九
年度につきましては本
年度の一月、従
つて二十八
年度に扶助費についてはわずかに
主食の値上り部分を含めたにすぎないのであり、対象の範囲については辛うじて四%ぐらいの人たちは前
年度よりもよけい生活扶助費を与え得るであろうというようなことに相な
つておるようでありまするが、先ほど申しましたもろもろの事情、もろもろの数字から考えまして、とうてい四%をも
つてしては済まないのではないか。二十九
年度十九億八千万円の
予算増にな
つておりまするが、もう大衆の貧困化が刻々進行するという事実を考えますときに、十九億八千万をも
つてしてはなかなか生活扶助を決定することはむずかしいのではないか。もちろん事実上いろいろと濫給もあり、またその他の点もありましようが、しかしそれらのものを整理いたしまして法の運用の適正化をはかられましても、十九億余の
予算増をも
つてしてはなかなかこれは不可能ではなかろうかということを私
どもは心配しておるわけであります。特に医療扶助につきましては昨年の七月から十二月までの一箇月の支払いが大体十七億余平均出しておるわけであります。そういたしますると、おそらくこれは六月からは基金の窓口から支払いにな
つておりますので、そういう事情も多少あろうかとは思いまするけれ
ども、やはり生活の貧困という
根本の事情があ
つて医療扶助の申請をする者、従
つてまたその適用を受ける者が増加をいたして来ておるのであろうと私
どもは考えておるのでありますが、こういうような事情が先ほど来るる申し述べましたような事情のもとに、いよいよ多く広汎な大衆が生活の貧困よりやむを得ず医療扶助の申請をする。またこれにはその
通り保護を与えてやらなければならないという事実がますます強く起
つて来るのではなかろうか、そういうことに相なりますと、大体十六億といたしましても百九十余億の金が必要となる。これらについては同僚長谷川君等から
予算委員会、当
委員会を通じているく厚生当局との間に質疑応答もあり、御
要求があつたのでありますが、しかし最近の諸般の事情がどうしてもなかなかこれだけで集れないのではないか、もちろん生活扶助の点は
予算増を伴えば義務的にこれを増加しなければならないという建前にな
つております。かとは申すものの、一応既決
予算のわくに縛られて、これまでは不給付なり、あるいは地方においては私
どもの納得の行きかねるような子供の保育所の入所拒絶なり、またしばしば
指摘されましたような強制退院等のこともあつたのであります。これらのことを考えるときに、こうしたことがなく、
生活保護法が完全に運用され、そうして今日貧困化の一途をたど
つている
国民大衆の生活がせめてもこの
法律の円満なる運用によ
つて楽になるように、一家心中の新聞記事が新聞からなくな
つてしまうように、この際
政府は格別な御配慮を願いたいというのがこの決議案の
趣旨なのであります。どうか願わくば皆さんの御賛同を得まして、この決議案が成立するように御協力願いたいと思う次第であります。