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1954-05-28 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第52号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十八日(金曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君    理事 松永 佛骨君 理事 古屋 菊男君    理事 岡  良一君       越智  茂君    助川 良平君       亘  四郎君    滝井 義高君       萩元たけ子君    杉山元治郎君       山口シヅエ君  出席政府委員         厚生事務官         (薬務局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君  委員外出席者         参議院議員   高野 一夫君         参議院法制局参         事         (第一部第一課         長)      中原 武夫君         厚生事務官         (薬務局薬事課         長)      尾崎 重毅君         厚 生 技 官         (薬務局監視課         長)      大熊 治一君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ————————————— 五月二十八日  委員山下春江君辞任につき、その補欠として三  木武夫君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 五月二十七日  覚せい剤取締法の一部を改正する法律案高野  一夫君外十一名提出参法第一七号)(予) 同日  岩木山ろく地帯国定公園指定請願木村  文男紹介)(第五〇九四号)  医薬関係審議会設置法制定に関する請願只野  直三郎紹介)(第五〇九九号)  医薬分業延期反対に関する請願只野直三郎  君紹介)(第五一〇〇号)  戦傷病者援護強化に関する請願河野一郎君  外正名紹介)(第五一〇五号)  遺家族援護に関する請願大石ヨシエ紹介)  (第五一〇九号)  覚せい剤取締強化に関する請願佐々木盛雄君  紹介)(第五一一〇号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法公務死適用範囲  拡大に関する請願井出一太郎紹介)(第五  一一七号)  未帰還者留守家族等援護法による医療給付適用  期間延長に関する請願井出一太郎紹介)(  第五一一八号)  国立療養所給食費増額に関する請願井出一  太郎紹介)(第五一一九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  覚せい剤取締法の一部を改正する法律案高野  一夫君外十一名提出参法第一七号)(予)  請 願   一 戦傷病者戦没者遺族等援護法公務死適    用範囲拡大に関する請願原茂紹介)(    第四七五八号)   二 未帰還者留守家族等援護法による医療給    付適用期間延長に関する請願原茂君紹    介)(第四七五九号)   三 国立療養所給食費増額に関する請願(    原茂紹介)(第四七六〇号)   四 医師法歯科医師法及び薬事法の一部を    改正する法律廃止に関する請願外一件(田    中好紹介)(第四七六一号)   五 国民健康保険における医療給付費の二割    国庫負担法制化に関する請願木村文男君    紹介)(第四七八一号)   六 同(足鹿覺紹介)(第四七九五号)   七 同外二件(木村文男紹介)(第四七九    六号)   八 受胎調節普及に関する請願足鹿覺君紹    介)(第四七九四号)   九 指定薬品以外の医薬品販売業者資格制度    に関する請願村上勇紹介)(第四七九    七号)   一〇 医業類似療術行為期限延長反対に関    する請願原茂紹介)(第四八一一号)   一一 戦傷病者戦没者遺族等援護法等公務    死適用範囲拡大に関する請願大石ヨシエ    君紹介)(第四八七七号)   一二 戦傷病者援護強化に関する請願(中    嶋太郎紹介)(第四八七八号)   一三 同(伊藤好道紹介)(第四八七九    号)   一四 同(堤康次郎紹介)(第四九一一    号)   一五 同(小平忠紹介)(第四九一四号)   一六 同(今井耕紹介)(第四九二五号)   一七 同(堤ツルヨ紹介)(第四九七四    号)   一八 療術法制定に関する請願辻文雄君紹    介)(第四八八〇号)   一九 同(山口丈太郎紹介)(第四八八    一号)   二〇 日雇労働者健康保険法の一部改正に関    する請願宇都宮徳馬紹介)(第四九二    〇号)   二一 無名戦士墓献納に関する請願山口    六郎次君外一名紹介)(第四九二三号)   二二 遺家族等援護対策確立に関する請願    (大高康紹介)(第四九二四号)   二三 医師法歯科医師法及び薬事法の一部    を改正する法律廃止に関する請願外三件(    田中伊三次君紹介)(第四九二六号)   二四 クリーニング業における試験制度存続    に関する請願三池信紹介)(第四九三    九号)   二五 医薬関係審議会設置法制定に関する請    願(只野直三郎紹介)(第四九五二号)   二六 檮原村に簡易水道敷設請願長野長    廣君紹介)(第四九七五号)   二七 国立療養所給食費増額に関する請願    (降旗徳弥紹介)(第五〇〇四号)   二八 戦傷病者戦没者遺族等援護法公務死    適用範囲拡大に関する請願降旗徳弥君紹    介)(第五〇〇五号)   二九 酒毒者心身療養のための国営施設設    置に関する請願田中幾三郎紹介)(第    五〇一三号)   三〇 理容師美容師法の一部改正に関する請    願(福田篤泰紹介)(第五〇二一号)   三一 同(並木芳雄紹介)(第五〇三四    号)   三二 同(津雲國利紹介)(第五〇三五    号)   三三 医薬関係審議会設置法制定に関する請    願(只野直三郎紹介)(第五〇三六号)   三四 同(中村時雄紹介)(第五〇七九    号)   三五 医薬分業延期反対に関する請願(只    野直三郎紹介)(第五〇三七号)   三六 療術法制定に関する請願石山權作君    紹介)(第五〇五九号)   三七 未帰還者留守家族等援護法による医療    給付適用期間延長等に関する請願石山權    作者紹介)(第五〇六〇号)   三八 岩木山ろく地帯国定公園指定の請    願(木村文男紹介)(第五〇九四号)   三九 医薬関係審議会設置法制定に関する請    願(只野直三郎紹介)(第五〇九九号)   四〇 医薬分業延期反対に関する請願(只    野直三郎紹介)(第五一〇〇号)   四一 戦傷病者援護強化に関する請願(河    野一郎君外五名紹介)(第五一〇五号)   四二 遺家族援護に関する請願大石ヨシエ    君紹介)(第五一〇九号)   四三 覚せい剤取締強化に関する請願(佐々    木盛雄紹介)(第五一一〇号)   四四 戦傷病者戦没者遺族等援護法公務死    適用範囲拡大に関する請願井出一太郎君    紹介)(第五一一七号)   四五 未帰還者留守家族等援護法による医療    給付適用期間延長に関する請願井出一太    郎君紹介)(第五一一八号)   四六 国立療養所給食費増額に関する請願    (井出一太郎紹介)(第五一一九号)     —————————————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず本日の請願日程全部を一括して議題とし、審査に入ります。これらの各請願について、紹介議員委員並びに政府当局の御発言はありませんか——。  御発言もないようでありますからお諮りいたします。先刻理事会において協議いたしました通り日程第三、第五、ないし第八、第十二ないし第十七、第二十一、第二十七、第四十一、第四十六、以上の各請願は、去る五月十一日及び十四日に採択の上内閣に送付すべきものと決した各請願同一要旨でありますので、これらの各請願同一の決定をいたすこととし、日程第二十六檮原村に簡易水道敷設請願及び日程第三十八岩木山ろく地帯国定公園指定請願は、いずれも採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ございませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  なお本日採択と決しました各請願に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  5. 小島徹三

    小島委員長 次に日程を追加して、昨日当委員会に付託になりました覚せい剤取締法の一部を改正する法律案議題とし審査に入ります。まず提案者より趣旨説明を聴取したいと思います。提案者参議院議員高野一太君。
  6. 高野一夫

    高野参議院議員 ただいま議題になりました覚せい剤取締法の一部を改正する法律案でございますが、これは参議院厚生委員会におきまして、各委員が超党派的に一応まとまつた議を法律案に練りまして、提案をいたした次第でございまして、発議者として説明を申し上げておきたいと存じます。  覚醒剤濫用による弊害を防止するために、第十国会議員立法により覚せい剤取締法制定されましたことは皆様の御承知通りであります。しかるに取締法制定後においても、覚醒剤濫用による弊害は、一層はなはだしいものがありまして、覚醒剤常用者は、すでに数十万ないし百万を突破するのではないかと思われるような現状であります。しかもこれらの常用者は、多く直接間接に犯罪とつながりをもつものでありまして、この濫用傾向は、都市のみではなく、農漁村を通じて全国的なものとなつております。  さらに注目すべきは、かかる覚醒剤濫用による弊害に悩まされておりますのは、多くは次代の日本を背負うべき立場にある青少年であることであります。青少年をかかる覚醒剤の災禍から救うために、中央、地方の青少年問題協議会においても、覚醒剤対策が重要問題として取扱われていることは、ここであらためて説明を申上げるまでもない次第であります。  このような覚醒剤濫用による弊害を防止するには、この弊害各種啓蒙運動により一般に周知させることも必要でありますが、今一般に流通している覚醒剤密造品であることから、まず覚醒剤密造取締ることが必要であります。この点におきましては、罰則強化こそまず何よりも考慮されるべき点でありますが、この罰則強化中心として、取締法施行後種々運用上支障のある点を改正し、最近の状況に即応せしめたいというのがこの法案提案目的であります。  次に法案内容骨子を御説明申し上げます。まず第一は、この法律適用を受ける覚醒剤定義範囲を拡張したことであります。  第二は、罰則強化し、密造密売買不法所持及び不法使用行つた者は、五年以下の懲役または十万円以下の罰金に処し、さらに営利の目的でまたは常習としてこれらの違反行為行つた者は、七年以下の懲役に処し、また情状により七年以下の懲役及び五十万円以下の罰金に処することとし、これらの場合において、犯人が所有し、または所持する覚醒剤は、没収することができることとしたことであります。  第三は、覚醒剤研究者が、研究のため、厚生大臣許可を受けた場合に限り、他人に対して覚醒剤施用し、または覚醒剤製造することができることとしたことであります。  第四は、覚醒剤を保管し得る場所として、覚醒剤保管営業所を認め、それに応じた覚醒剤の移動をみとめたことであります。  第五は、覚醒剤の廃棄について厳重な規定を設けたことであります。  以上が本法案提案理由並びにその内容骨子でありますが、つけ加えて申し上げておきたいことは、ここの改正案にはございませんけれども審議過程において、覚醒剤そのもの正規製造または施用禁止する問題、また麻薬取締官一般司法警察権を与えて、取締り方法強化をはかりたいという問題、あるいは出入国管理令改正の問題、また患者強制収容の問題、また国外譲渡の是非の問題等々につきましても吟味いたしたのでございますが、これらは次の研究課題として留保いたした次第でございます。  以上が本提案理由でございますが、何とぞ慎重に御審議のほどをお願い申し上げます。
  7. 小島徹三

    小島委員長 次に本案の質疑に入ります。岡良一君。
  8. 岡良一

    岡委員 覚せい剤取締法の一部を改正する法律案は、今非常に斯界の大きな注目を浴びており、今日覚醒剤慢性中毒者によつて引起されておるいろいろな反社会的な事態について、これを防遏することは、当然立法府としての任務であろうとも考えておりますが、参議院では、いち早くこの問題について大きな関心を示され、ここにようやくこの取締法の一部を改正する法案の御提出を見ましたことは、われわれ衆議院としても、その御努力には衷心から敬意を表したいと思いまするが、何しろ御提案趣旨について今承つただけでありまして、この改正内容等についても、まだしさいに検討する余裕がございませんので、かねがね私どもが考えておる素朴な考え方を中心として、特に提案者高野さんは薬物関係ではその専門家でもあられますので、この際その立場から多少また御教示を得たいと思うわけであります。  私どもは、この覚醒剤中毒患者に基くところの各種の社会的な害悪については、まず第一にこれを禁止する必要があるのではないか、第二点としては、覚醒剤中毒患者、特にこれが社会的にその秩序を乱すおそれある者等については、これは医療等の保護を加えるところの収容施設を持ち、できるだけ多く分散的にこれを収容せしめることが一つ、いま一つは、覚醒剤害悪等について、これを広く一般に周知徹底せしめることによつて覚醒剤中毒への災いから、国民あるいは若き世代がみずから進んでこの危険に立ち入らないような啓蒙をいたす。大体この三点が、覚醒剤慢性中毒に基くところの現在の社会的な悪を絶滅するためのさしあたつての方便であろうと考えておるわけであります。  そこで、ただいま御提案理由の一端にありましたが、小委員会等におかれましても、覚醒剤禁止等について御考慮ありたるやに承つたのであります。その点、なぜ禁止をなされなかつたのかという点について、その間の事情また審議過程を、この際お聞かせ願えれば非常にけつこうだと思います。
  9. 高野一夫

    高野参議院議員 実は、この覚醒剤改正案をわれわれが練りまするまず一番最初のスタートにおきまして、ただいま岡委員からお話のございました覚醒剤そのもの正規の面における製造または施用禁止すべきかどうかという点が、根本の問題であると考えまして、そこでこれを禁止することになりますれば、この取締りの方針ががらつとまたかわつて参るわけでございます。その点について種々論議いたしたのでございますが、これを禁止するということは、さらになお医学者薬学者臨床家、そのほかとにかくこれが医療上にどの程度必要であるかどうかという点、またかりに禁止するということが適切であるといたしまするならば、どういう方法をもつて禁止ができるであろうかという点、それからもう一つは、禁止しました結果、この密造密売買不法使用所持というような犯罪がはたして根絶できるであろうかどうか、こういうような点について一応の吟味をいたしたわけでございます。それで覚醒剤そのもの医療用にどの程度大事なものであるかということは、もう岡先生の方が十分御承知でございますので、私はここで申し上げませんが、とにかく現在においては、医療用必要なものとして、医療用に使われることが許可されているわけでございます。そこでここで禁止するという場合を考えました場合に、しからばどういう方法禁止ができるであろうかという点について、一応私の意見を申し上げてみたいと思います。  御承知通りに、現在の覚醒剤取締法対象になるものは、現行法にあげてありまする通りに、フエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパン、この二つでございまして、この二つは化学的に申し上げますれば、誘導体でございますから、この二つ以外のものに、アミノ基のついたいろいろの誘導体はいくらでも今後合成できる、かように考えるのでございます。そこでこの二つのものをかりに覚醒剤として禁止いたしましても、この誘導体あるいはアミノ基を使つて覚酷作用を有するような化学合成品はいくらでも今後研究ができるのではないか。さらにまた御承知通りに、現在はこの二つ誘導体とまつた構造式違つた覚誘剤がアメリカに現われまして、それが日本にも多少輸入されておる。目下政府の方でこれが覚誘剤として取締り対象にすべきからどうかということについての調査をされておるように聞いておりますが、化学式から申し上げますれば全然違つたもので、やはり覚醒剤作用を持つておるものがたくさん出て参る。それを一つ一つ——たとえば阿片の場合は、けしを栽培して阿片をつくるわけですから、けし裁培禁止してしまえば、ただちに阿片の採取は禁止できるわけでございますが、この合成化学の問題は、一つのものをつくるにも、いろいろな方法がございまするし、またできたあと、そういう誘導体がいろいろできて来る。そういうような場合に、こういう化学合成品をどういうふうにして禁止することができるであろうかどうか、こういうことを考えますると、どうもなかなか容易に結論に到達し得なかつたわけでございます。そこで今度は、化学構造式におきまして、しからば現在のヒロポンその他のような覚醒作用を有するものは一切禁止する、こういうような作用の面から禁止する方法を考えたらどうか、こういうことも考えてみたのでございます。これは御承知通りに、一つ薬品にはたつた一つ作用だけでなく、いろいろな作用をあわせ有するのであります。大部分の薬品はそうでございますが、そういたしますれば、一面非常に大事な用をなす作用を持つてつて、また一面覚醒作用を持つておる薬品が現われた場合、これもまた禁止しなければ、やはりほんとうの意味をなさないのじやないか。そういたしますると、作用の面においてこれを禁ずるということも、臨床上非常にめんどうな問題ではなかろうかと考えまして、正直のところ、禁止することがいいか悪いかというそこまでの結論には達しませんで、この問題についてはさらに十分回を重ねて結論すべきであり、またいろいろ学者の意見も聞いた上で、慎重に検討をして、次の機会にさらに研究をしてみようじやないか、こういうわけで、一応現行法をもとにして行こうという結論に達したような次第でございます。
  10. 岡良一

    岡委員 しばしば医療上必要であるということが言われるので、ヒロポン中毒患者臨床的に扱つておる者から見て、自分の経験から見て、事実とは相違しておるわけであります。どういう点で一体臨床的にこれが必要なのかという点で、私も、多少専門家に聞いてみましたが、臨床的に必要であるという論拠は一つもありません。現在主として臨床的に使われておる場合は、精神科領域と、肺臓外科領域においてこれが使われておるわけであります。精神科領域で、たとえばヒロポン中毒患者が、四十本中毒しておる者が参りまして、即時全面的に禁止しましても、生命の危険を及ぼすような心配はありません。一例もそういう報告はありませんし、われわれは臨床的にも見ておる。またそのほかに、たとえばナルコレプシーに対して、昏睡状態をさますために、対症的な効果はありますが、ナルコレプシーそのものをなおすことはできない。かえつてナルコレプシー患者に対してヒロポンを連用するということは、ナルコレプシープラスヒロポン中毒患者にするという悪い結果しか予想できないというので、良心ある臨床家はその使用禁止しておる。みずからセーヴしておるという実情である。抑欝症の場合に使う。抑欝症の場合は、最近松沢病院報告によれば、かえつて不安状態を増加せしめる傾向が強いので、これまた使わない。あるいは肺臓外科においては、血圧上昇を精神的にいざなうためにヒロポンが有効であるが、それにかわるものがいくらでもある。ただ経済の観点からピツツグランドールが高いから、この方がいいというだけのものである。必ずしもこれが絶対的に必要だとは言えない、代用品がいくらでもある。そういうことになつておるので、医学上これが必要であるということは、私どもは考えられない。特にこれは私どもが申し上げるまでもなく、ヒツトラーの軍部が発明した薬だということを私は聞いている。これを飲まして不眠不休強行軍をさせる、そういうために飲ましたということが文献に報告されておる。そして戦争中に日本に流れ込んで、徴用工、また前線の兵隊にこれを使わした。私どもも、軍医として従軍しておつて、やはりその配給に努めたことがある。それが結局、戦後希望のない世相から、若い世代が刹那的な享楽に使つて行くというようなこととが、今日のヒロポン禍を起しておるというわけであります。こういうような関係からみて、まず第一に臨床上、われわれは少くともその当事者として何ら必要は感じられない。同時にまたそうした薬のできたこれまでの経過を見ても、このものが社会的に大きな害悪があるだけで、何のプラスもないというような立場になつておるわけであります。そういうようなものであるならば、私どもはやはりこの際思い切つて禁止すべきじやないか、今禁止困難性について高野氏からの御説明がありましたが、これについては、覚醒剤あるいはまたヒロポン同様な漫性中毒症状を引起し得る可能性のものがあるかどうか、あるものについては、ただちにこれは禁止項目に加えて行くということでいい。化学方程式違つた他化学方程式のものができた場合、その適用範囲を広めて行けばいいのであります。高野さん御存じの通り、今東京都下では、青少年愛護週間とか、月間とか申しまして、ヒロポン禍から青少年を救え、こういう立看板が出ておる。しかしあんなことではなかなか救えない。啓蒙宣伝啓発活動というものは、やはり立法の府なり、政府なりが、日本の国からヒロポンを追い出そう、覚醒剤を追い出そうという強い踏み切り、強い意思表示をする。この精神的効果というものをわれわれは考えなければならぬ。そこまで踏み切つて行かなければ、ヒロポン禍というものを、日本の若い世代から取除くことができないじやないか、そういう道義的なモラルとしての影響というものをわれわれが考えた場合、立法の府としてのそまつなスコラ哲学的な部分的に必要であるかどうかとか、取締り上、あるいは適用範囲において複雑である。こういうさまつな、いわば技術的な枝葉末節を越えた道義的な問題として、覚醒剤禁止するという、こういうはつきりした意思表示政府がし、国会がする。このことがやはり若い国民の層に与える心理的な啓蒙的価値というものは非常にあるのじやないか。そういう点について、私どもは今の御説明では納得いたしかねる。重ねて御所見があれば伺いたい。
  11. 高野一夫

    高野参議院議員 御意見ごもつともでありますが、一面われわれはこういうことも考えるわけでございます。医療用にしからばどの程度の効果があるか、価値があるかいう問題につきまてしは、私はあまりその点についての専門家でございませんので、厚生省の方から御説明願うことといたしますが、一応厚生省薬事審議会医薬関係者会議の上、これを許可に持つて行かれたということは、やはり医療用としての価値を認められた結果であろうかとも私は信ずるわけでございます。そこで実情厚生省に聞いてみますと、現在でも一箇年にわずか三百数十グラムしか正規のものはつくられていないということでございます。量の面においては至つて微々たるもので、ほとんど問題にならないような使われ方であります。これは量として使われ方が少いのか、あるいは使われる範囲、部面が少いのかは別にいたしまして、ほとんど問題にならない数量でございます。そこで一面、先ほどは申し落しましたが、正規のものを禁じた場合に、つまり密造部落その他における犯罪者の、こういうものをつくることを根絶させるにどの程度役立つか。モラルの点において、あるいは政治的問題として効果があるだろうかということについては、これは見解の相違であろうと思います。たえば、これもおそらく厚生省から御説明があつたかもしれませんが、一応禁じてみたところが、やはり麻薬の犯罪の一番多いのは、密造、密輸入、使用、すべてヘロインであります。そこで覚醒剤そのもの禁止いたしましても、この犯罪者全部が、社会が違う密造部落あるいは密輸入者、使用者、いずれもまつたく社会と隔絶した別個のグループであるということを考えますれば、覚醒剤の味をしめた彼らは、ここで覚醒剤そのもの禁止いたしましても、少くとも今まで彼らが知つているところの密造並びに不法使用については、この正規のもの根絶いかんにかかわらず、やるのではなかろうか、こういうことも考えているわけでございます。そこで正規使用機関である病院、診療所における使用、または正規製造というような面におけるそれらが元になつている違反行為というものは、ほとんどないようでございます。すべて別個に原料を仕入れて、別個に製造して、別個に使う、こういう社会にありましては、正規の元が根絶しても、やはりやるのではなかろうか。たとえば、これはたとえが当らないかもしれませんが、勝手なことを申し上げるようですけれども、どろぼうや強盗というものは、存在を許すぺからざるものとして許してないのだけれども、やはりそういうものが出て参る。そのほか物といたしましても。存在は全然許さなくとも、やはりいろいろな密造なり何なりされ、ピストル、武器にいたしましても、そういうものを使う犯罪者が出て来る。そういう社会の実情を考えまして、そこで効果的に考えて、やはりこの密造、密輸入という面の取締り方法と申しますか、あるいは罰則というものを強化することによつて犯罪の根絶といいますか、低減といいますか、その方の取締りに十分の業績を上げることができるのではなかろうか、一応こういうふうに考えるのでございます。岡さんの御質問に対して御満足を与える答弁でないかもしれませんが、一応私の意見として、お聞きを願いたいと思います。
  12. 岡良一

    岡委員 高野さんは医薬分業のときにも、いろいろお話合いをしたので、東西切つての論客ですから、いくら議論を言うても負けますから、(笑声)しかしどろぼうをやめろという法律があつてもどろぼうがいるから、どろぼうは少し許してもいいという結論は成立しないわけです。あなたの理由理由にならないと思うのです。しかしそういうことを申し上げても何ですけれども、私ども委員会としても、一応罰則強化をされるということだけでも、麻薬の例に徴しても、相当効果を上げておりますから、今後の問題として、われわれ委員会研究したいと思います。  そこで、先般この委員会で法務省関係あるいは国警関係の方々の御意見を聞いておりますと、いわゆる原薬の製造については、第三国人が関与しておるというよりも、むしろ独占的ではなかろうかというふうな感じを受ける。こういう点の内情がある。この点参議院の方の小委員会でも、そういう事実についてもいろいろ御調査になつたと思いまするが、その結果どういうふうに参議院としてはお考えになつておりますか。
  13. 高野一夫

    高野参議院議員 今のお話は原料の問題でございますか、それは私ども検察庁方面の話を聞きまして、そして従来どういうような取締りをしたかということも一応調べてみたのでございます。御承知通りに、ほとんど七〇%が第三国人、特に朝鮮関係であるということなんです。そこで先ほど申し上げた出入国管理令の問題も一応引合いに出したわけでございますが、この原料がどういう方面から入手されているかという点につきましては、まだ確たる私どもは証跡をつかんではおらないのでございまするけれども、おそらく外部から持ち込むというようなことが相当多いのではなかろうかと考えるのでございます。ここで具体的の材料をあげまして、こうであつた、ああであつたというようなことを申し上げるだけの材料は持つておりませんが、一応想定といたしましては、さように考えております。
  14. 岡良一

    岡委員 私読んでおらないのですが、この強化された罰則の中には、たとえば第三国人については、この処罰を受けたものは、強制送還ができるという規定が入つておるのでございますか。
  15. 高野一夫

    高野参議院議員 それはおそらく訂正前のものと思います。途中で一応いろいろな案をたくさんつくり直しましたので、その過程のものがお手元へまわつておるのではないかと考えます。実は私ども出入国管理令というのがあるのを知りまして、それを調べてみましたところが麻薬取締法の違反者はことごとく強制退去を命ずることができるということが、出入国管理令の中にあつたわけでございます。おそらくその点に対する御質問じやなかろうかと思うのですが、そこで、今度は覚醒剤取締法の違反者は、ことごとく強制退去を命ずることができるというふうに、この管理令を改正したならばどうだろうというようなことで、最初から最後までその案を持ち越したわけなんです。そこで法務省関係のいろいろな意見を聞きましたところが、麻薬に関しましては、御承知通りに各国相関的に取締つている問題でございます。そこでそういう出入国管理令の中に、強制退去を命ずる一つの項目としてあげてもいいけれども覚醒剤に関する限りは、厳重な取締りをやつているのは日本だけであつて、外国は全然やつておらない。まつたく普通の医薬品と同様に取扱つているに過ぎないから、日本だけがやつている取締り対象物に関する違反者を、出入国管理令の中に、麻薬違反者と同様に扱うということも、国際慣行上おもしろくない。こういうような法務省関係意見があつたのでございます。同時に、一方において、今度罰則強化することによりまして、一年以上の体刑を食うものがたくさん出て来るはずです。従来は一年以上の体刑を食いましても、多くは執行猶予となつております。たいてい罰金とかきわめて軽い刑罰しか与えておらない。私はここにも一つ取締りの欠陥があるのではないかと思うのであります。今度は高度に引上げたために一年以上の体刑を科せられる。そうなれば出入国管理令の中の一年以上の禁錮または懲役に処せられた者は強制退去を命ずることができるという条文に該当することになるであろうから、その方で十分取締ることができると思う。だからこの罰則強化によつて一応やつてみたいから、この問題についてはしばらく様子を見てもらえないだろうかというような法務省からの強い意見がございました。われわれもその意見を一応は納得いたしまして、出入国管理令の点は一応お預けにいたしまして、次回の検討に譲つたわけでございます。
  16. 岡良一

    岡委員 そうではないのです。私が実はお尋ねいたしましたのは、アンプレヤーまでは検挙できるが、アンプレヤー以前については、七〇%まで朝鮮人部落においてこれが行われておるので、そこでここにメスを入れなければ、ほんとうに処罰の強化ができないんじやないか、処罰の強化という意図するところの取締りができないんじやないか。そこでどうしたつてそこへメスを入れて行かなければならぬ。そこに出て来た第三国人については、やはりこの規定に触れた者については、麻薬と同様に強制送還をするという規定をはつきり打出すべきじやないか。それが見当つておらない、出ておらないので、いかなることなのかということを実はお尋ねしたわけであります。今あなたの、何というか、法務省の見解というものを聞いて、私どもふしぎに思うのは、大体出入国管理令適用が非常に甘いということが最近問題になつているわけです。しかし何しろ一番の大本は、七〇%が第三国人である朝鮮人部落である。ここにメスを入れてみたところで、それが日本の国内にやはりとどまるということで、最後のとどめをさしておらないということになれば、これはまた依然として繰返される可能性が非常に多い。そこが抜けておるんじやないかという点があるのです。法務省がそういうふうに、たとえば国際慣行上、覚醒剤というものは日本独自のものである、麻薬と違つて、国際的な制限の対象となつておる薬剤ではないからして、特に日本だけが覚醒剤取締り規定をもつて第三国人の出入国にまで強制的な措置を講ずるということは、国際慣行上おもしろくないという意見に妥協されたとするならば、これは提出者である参議院は、覚醒剤というものが青少年をいかに毒しておるかということの御認識がないのではないか、この点非常に足りないと思うのであります。というのは、そのもとをたださなければならないし、現在覚醒剤による慢性の中毒患者は、世界の学会に報告されておらないのです。ことに覚醒剤の慢性中毒患者は、日本ほどいるところはない。むしろ日本だけがこういう例外の不幸な目に若い世代があつているわけなんであります。でありますから、国際慣行上これがどうであるからということは問題でない。問題は、日本日本の独自の立場で、今日当面しておるヒロポン中毒という災難から、日本がみずから脱却しようとするときに、麻薬と同等でないから、国際的に制限等の措置が講じてないから、覚醒剤はやはり除外すべきが適当であろうというような腰の弱い態度では、われわれはヒロポン退治はできないんじやないかと思う。そういう点で、あなた方の態度は少しなまぬるいんじやないかと思うのですが、この点についてどうでしようか。
  17. 高野一夫

    高野参議院議員 御説ごもつともなんでありますが、どうも私どもは、まず出入国管理令の方で手をつけようとしたもので、覚せい剤取締法とは別個の問題でございますけれども、この点につきましては、やはりおつしやる通りに、麻薬と同様に条文を入れて処罰をする、違反者はことごとく強制退去を命ずることができるというようにいたしたかつたわけであります。そういうことで強制退去を命ずることができるようなことを、この覚せい剤取締法の条文の中に入れるかどうかということについては、われわれ自身多分に疑問を持つたのであります。そこで出入国管理令改正といつたようなものが必要である。そういうことになれば、先ほど申し上げたように、法務省の意見みたいなものも多分に出て来て、それもしんしやくせざるを得ないような、まことになまぬるいかもしれませんが、そういう事情になつてつたのでございます。ただ問題は、ここで罰則が非常に強化されますので、かりにここで五年としてあるが、常習五年ということになりますれば、ここで二年か三年体刑を食う者が出て来る。ことに従来の裁判の結果を見ましても、検察当局は相当の重罰を科したいということでやりましても、どうも判決がきわめて軽いということから、容易に犯罪者が跡を絶たないんじやないかという点もあるわけでございます。この点は、今度の法律改正趣旨を検察、司法当局で十分ひとつ吟味してもらつて、十分に捜査、検挙をやつてもらう、そして十分の罰則適用をやつてもらうということにしてもらう。そうなれば、出入国管理令の中の一年以上の懲役または禁錮に処せられた者は強制退去を命ずることができるという範疇に十分入り得るのではないか。だから一応それでやつてみて、その結果を見てみたい、こういうようなことであります。ですから、その点は決して軽視しておつたわけではないのであります。出入国管理令罰則の中に該当するように持つて行けばしないか、こういうようなことの期待をいたしたわけであります。
  18. 岡良一

    岡委員 法律案のいろいろ衝に当られた参議院の法制局からもお見えでございますので、この点ひとつ法律的な、立法技術の面としてできないものなのかどうかという点でお伺いいたしたい。いま一つは、やはりそこまで立ち入つてひとつやつていただかなければ、この法律がほんとうに処罰規定の強化を意図するものが空転するのじやないかと思う。これはこの間もこの委員会で、法務省関係の刑事部長のお話なんですが、ヒロポン慢性中毒者にして犯罪を犯して検挙された者が昭和二十六年には一万一千余である。昭和二十七年には二万三千余である。昭和二十八年には四万三千余である。そのうち起訴された者が大体三分の一である。また覚せい剤取締法の違反者が六千五百である。そのうち有罪の判決を受けた者が千二百であるが、そのうち八百が執行猶予である。まことに罰則規定はこれを見てもきわめて低調であつたことがよくわかるわけである。そこで御努力によつて強化され、かつまた法廷も覚醒剤に対する認識を改めてくれるということによつて、こういう手ぬるい処置は大いに直してくれると思うのです。しかし昭和二十六年にヒロポン中毒患者にして犯罪を犯して検挙された者が一万一千余である。昭和二十八年には四万三千余であるというふうに、三年で三倍以上にふえておる。こういうふえておるものに対して、たまたま日本の検察力が、密造だと目される部落を急襲いたしましても、そこにあげられて来るものは、二千数百本のアンプルにすぎない。アンプルの中に入つている薬を溶かす原料の薬を合成しているところまでは、徹底的に手が入つておらない。一、二入つたところがあるというお話ですが、ここはやはり日本法律で断固として追究して、そこに非違があつた場合には、何人であろうと、外国人であるならば当然強制送還の措置を講ずるというところまで強く行かなければ、結局一万一千から四万三千にふえて来るというこの事実は、事実の問題として検挙され、起訴され、執行猶予され、起訴の数がふえて来るとか、あるいはまた執行猶予が減るとかいうものだけであるが、事実上で一万一千が四万三千にふえておるというこの大きな趨勢の根本のきめ手が、やはりアンプレヤーでなく、その以前の、朝鮮人が七〇%を占めているこの原薬というか、溶かす原料を合成しておるところにメスを入れる、これがないとどうも物足らないという感じがするわけです。その点どうなんですか。これは参議院の法制局の方でもけつこうですが、お答えを願いたいと思います。
  19. 中原武夫

    ○中原参議院法制局参事 ただいまの強制退去の問題で、高野先生がおつしやいましたのは、参議院として断念したというふうにはおつしやつたのではなくて、もう少し見送つて、時期を待つという含みをもつておつしやつたわけであります。と申しますのは、覚せい剤取締法の中に違反外国人は強制退去を命ずるという規定を入れることは、これは可能であります。ただ体系から申しまして、外国人に強制退去を命ずることは出入国管理令の中に規定されております。それで出入国管理令の中に覚せい剤取締法に違反した者は強制退去を命ずるという規定を入れることの方が妥当であります。ところが出入国管理令の中に規定されております強制退去を命ずる事由になつております事項は、いずれも国際慣行上どの国もそういうようにしようという了解のある事項が掲げられております。このことは、日本の方から強制退去を命じましても、相手国が受入れませんと、これはどうにもしかたがないことであります。現在韓国人は、一年以上の刑に処せられた者は強制退去を命ずることができるという出入国管理令の規定に基いて強制送還をいたしましても、ほとんど引取らないのです。そのために大牟田の収容所にたくさんとめてあるわけです。そのことは、現在韓国は、国際慣行上相互に了解した事由による強制退去の命令を受けた者も引取らない。国際慣行からいつて日本だけの理由で、外国は承認しておらないような事由で強制退去を命ずるという規定を置いても、現在のような韓国の態度からいえば、ますます引取らないだろう。それでは実効が上りませんので、少くともそういう事前の了解を得られるだけの時間的余裕をいただきたい。それまでは、ただいま高野先生がおつしやいましたように、罰則強化によりまして、今後一年以上の刑を受ける者が多くなるであろうから、それに該当するものとして措置をして行くことにして行つたらどうでしようか、そういう意見がありまして、その意見を了承されて、参議院ではそれでは一応見送つて行こうということになつたのでございます。
  20. 松永佛骨

    ○松永(佛)委員 私ちよつと遅れて参りましたので、先に岡良一氏から御質疑があつたようでありますが、この覚せい剤取締法は、私は現在百万から百五十万になんなんとすると推定されておるヒロポン中毒患者、こういつた大きな社会悪を構成しておる者を除去するのには、罰副の強化ということをもつて臨むのも一歩前進には違いはないと思います。がしかし、従来の状況を見ると、出先の警察官が密造業者をつかまえる、それから判決からさらに体刑に至る日数、及びその間保釈金を積んで保釈をされて、また製造しておるというような実情、なお、ちやんと犠牲者をこしらえておいて、陰には大ボスがこれをあやつつて、今度ひつかかつた場合はだれが当面の責任者になつて引かれて行く、そしてそれが半期一年の間、食らい込んでいる間は、りつぱに家族の生計を維持してやつておる。大ボスの支配下に隠れてそれが行われておるということになりますと、その子分、手先をつかまえるだけであつて、本拠をつくに至らない、こういつたような実情から、罰副のみをもつてこの社会悪を除去するということは、一応うちわではえをあおぎますと、食物にとまつておるはえだけはおつぱらえるようだけれども、また一分、二分もたたずして、より多くの同類を伴つてつて来るという現象が起らないとも限らない。これはどうしても、私は製造施用も一切を禁止してしまうということが一番のいい道じやなかろうか、もちろんそれには正当なる医学上、あるいは治療上、いろいろな面におきまして必要もあると思いますし、また先般来から高田医務局次長のお話を承りますと、現在日本において正規ルートにおいて製造されておる覚醒剤は年産三百九十グラムにすぎない。その程度のものが正規のルートで流れておるのだから、これは医療上必要欠くべからざる実数である。これを禁止することはさしたる効果があるように思えないというお話もありましたが、これは考え方によりましては、そういうものがたとい少しでも、十グラムでもつくられておるということは、精神的な影響力があります。私どもは大衆的な人々とこの問題でつき合うと、政府は反面製造を許しておいて、そうしてこれの密造だけは取締りをしようというのは無理じやないか、こういう説が生れて来る。正規のルートで、製造しておるのは、ごく僅少の部分しか流れていないのだ、大部分は密造だ、こう言いましても、だつてトランプを売つておいて、そうしてとばくを禁止しているのと同じだ、こういうふうに、ただ一般的な扱い方をされてしまう。そこで覚醒剤及びその類似品は、これを製造すると、あるいは使用すると密造すると、あるいは携行すると販売すると、何たるとを問わず、それ自体が爆薬同然の危険物である。これは最も危険なものであるということになつて、ただちにこれを検挙するというところまで進んで行くならば、あるいはこの社会悪に対して一大斧鉞を加えることができるかもしれない。それに対する功罪というものはかりに相半ばしても、百五十万の社会悪を除くためにはやむを得ないのですが、岡、柳田両先生の専門的な御意見をこの間からたたいてみますると、医療上なくても行けるのだというようなお話も聞くのでありますが、これはやはり全面禁止ということによるよりほかには一番いい道はない、それが大きな社会的、精神的な効果をねらうという面にもなる、こういうふうに考えるのですが、その点は提案者であられる高野さんの方ではどういうふうにお考えですか。
  21. 高野一夫

    高野参議院議員 ただいまの御質問の問題につきましては、先ほど岡委員からお話がございまして、私の一応の意見も申し上げた次第でございますが、正規医療用に使われるものを禁止するということになりますれば、このことは医療関係諸学者の意見を十分徴しまして、そしてこれはまつたく必要がない、あるいは必要は多少あるけれども、この際とめてしまつてもごうも医療上さしつかえない、こういうような結論でも出て、最後に厚生省正規の機関でありまする薬事審議会——これは医学者薬学者、そのほか関係の学者でできておりますが、こういうような機関において、そういうようなことの判定でも下すということになりますれば、これはもう禁止してもさしつかえなかろうと私も思います。けれども現在医療用に使われるものを、きわめてわずかであるけれども、使われておるという現実の問題をとらえまして考えた場合に、かりに禁止するということにつきましては、先ほど申し上げたのでありますが、今度はいかなる方法をもつてこれを禁止することができるだろうかという問題でございまして、これを化学的の場合と医療作用の面からと、両方いろいろ検討いたしました結果、端的にただちに禁止するという案がなかなか浮ばないのであります。もう一つは、正規使用者の面と、密造不法使用の面とはまつたく社会が違うのであるから、正規の面を禁止しても密造不法使用は絶えないであろうということが一つ。  そこでもう一つは、先ほども岡さんからお話がございました通りに、道徳的、政治的な問題として、何か現物がすでに禁じられているのだということが強い精神的な影響を与えやしないかということがもちろん考えられるわけでございますが、具体的な、参議院におけるわれわれが議論いたしました結果からいたしますると、その化学的の面からと作用の面からと考え合せて、これを禁止する一つのいい方法がまだ考え及ばない。今後いろいろ学者の意見を聴取して、やはり禁止した方がいい、必要がないということになれば、またその面から厚生省においても研究してもらいたい。また衆議院、参議院においても十分ひとつ御検討を願つてみたい、こう考えたわけであります。そういうようなことで、とりあえずこの問題は一応保留の形でありまして、会期切迫して提案いたしまして、まことに申訳ないのでありますが、せめて罰則強化だけでもして、犯罪の検挙、捜査に資したい。非常に急ぎまして、こういうようなところに一応おちついた次第であります。
  22. 松永佛骨

    ○松永(佛)委員 ただいまの高野さんのお話のように、罰則強化だけでも確かに一歩、二歩の前進でありますから、これはやるとしても異存はないわけでありますが、同じことならば百尺竿頭一歩を進めて、より抜本塞源的な方法をとりたい、それが国会においてはとれないのかという声がほうはいとして全国市町村の青年指導育成員等から起つておる今日の情勢下において、罰則を数倍に強化したのだということだけで当面を糊塗しておるかのごとく見られるということには、われわれも多少の不満足な点があつて、あえてこういうことを繰返しお尋ねしておるわけであります。  なお薬務局長にお尋ねしたいのですが、現在正規のルートにおいて流されておるものは、認められたる施用患者の分として、町の開業医等にも施用患者として登録された分は、つまり何十回分というふうにして配分をしておるのでございますか。
  23. 高田正巳

    ○高田政府委員 町の開業医等にもというお話でございますが、今日病院、診療所を全部数えますと数万を算するのであります。そのうちでこれを使つてもよろしいという施用機関の指定を受けておりますのは七百幾つございます。従いまして精神科とか、あるいは大きな手術をいたします外科とか産婦人科とか、そういうふうな科を持つておる病院が主になつておると思います。但し開業医の方でありましても、その方の専門医という意味で指定を受けておる方もあるいはあるかもしれませんが、大勢といたしましては七百数十の病院が主であります。さようなわけで、販売機関を通じませんで、製造業者から直接そこにお送り申し上げております。こういう形になつております。
  24. 松永佛骨

    ○松永(佛)委員 ちようど大東亜戦争前に私が麻薬関係につきまして、中国を漢口からずつと広東まで歩き、調査をしたことがございますが、そういう際に中国の富豪がモヒ患者を三人、五人飼い殺しにして、遊ばして養つておる。どうしたのだと言いますと、その患者は登録された患者であつて、一日二十本とか三十本の施用患者としての配給を受けておる。それを三人雇つておると、それで九十本ある。実際は本人には十本ずつ使わせて、残つた六十本は富豪等が享楽用あるいはその他いろいろな面に使つておるということさえあつたのですが、日本ではそういうことは現在行えるようにはなつていないわけですね。
  25. 高田正巳

    ○高田政府委員 これを使用いたしました場合には、麻薬と同じような取扱いになると思いますが、どういうふうなところに使用したというふうな記録等も残すことになつております。今まで正規製造業者、施用機関等の違反につきましては、行政取締りといたしまして薬事監視員が監視をいたしておるわけであります。違反は一件も出ておりません。それからこれらが不正規な、不法なことをいたしました場合には犯罪取締り対象になるが、警察の方からも一件もあがつておりません。それからもう一つ実情は一件もあがつておりませんけれども、そういうことをやつておるらしいかどうかという想像の問題でございますが、メーカーと施用機関とあるが、そのメーカーは御承知のように日本で一流のメーカーの一社がこれをつくつておるわけであります。これらが横流しをいたしたりするものかどうか、これはいろいろほかの物の商売もやつておりまするので、かようなことでつまずいてはいけないというので、かようなことをするはずがない。施用機関の方は今のようなことでございますが、これもそういう病院等においてさようなことが行われるということも、ちよつとこれは想像の外にあるのであります。従いまして私は一件も違反が、行政取締りの面からも司法取締りの面からも出て来ないという実績と、さような判断からいたしまして、まずなきもの、かように確信をいたしております。
  26. 松永佛骨

    ○松永(佛)委員 そこで、大阪にあつたことなんですが、朝鮮人が密集して住居をしておりまする周辺の——もちろんこれは正規の免許医師でなくして、もぐり医者であると思いますが、病人が腹痛を訴えておると、モヒの注射をして一ぺんになおす。支那では麻薬というものは神の薬である、腹痛だろうが何だろうが、どんな重病でも一ペんにこれをやるとなおるという神秘的なひとつの信仰を持つておるようですが、これは医学的無知な者から見ればそういうことになりましようが、故意にヒロポン中毒患者を医者がこしらえて、そうしてこれを蔓延さしておるという傾向があります。もちろんもぐり医者です。正規の免状があれば取上げられるのですが、こういう大阪の者が朝鮮人密集部落で二、三発見された例もございます。そういつた面から考えると、一体その医者が——正規のルートからは絶対入らないのですから、全部密輸であります。しかし大衆は、医者が持つておる、医者が打つておる、医者が打つてくれるということに信頼を置いておる。そこでわずかであつても、三百九十グラムの正規ルートの製造禁止をして、日本からは覚醒剤というものが影を消したはずだ、どんな天下の名医がおつて覚醒剤を持つていること、それ自体が違反だということが大衆に徹底すれば、これはよほど社会悪の除去に大きな効果が見られるのじやないかということも考えられます。もちろん資本金十数億もの大会社が、こんなものを密造して利益を上げるという、そういうだらしないことは現在の日本にはあるべきことではなく、また常識で考えたつてそんなことはないことははつきりいたしておりますし、また正規の開業医が免状をかけたそういう危険行為をあえてするとも思われないのですが、ややともするともぐり医者等によつてそういうことが行われておるということから、やはりこれは全面禁止というところへどうしても持つて行かなければならない。私どもは衆議院において皆さんとも御相談をして、それが医学診療上実際の害がない、影響が少い、あるいはこれにかわるべきものがないことはない——速効性ではない遅効性ではあるけれども患者の手術後の覚醒というような場合には少し遅れるけれども、それにかわるべきもの、及びこういう覚醒剤ができる以前のもの、そういうものもあつたはずでありますから、多少の不便をしのんで、そういうものを使用することによつて、できるならば全面禁止というところに修正点を持つて行きたいということを、私ども考えておるわけなんですが、今の岡さんからの質問の朝鮮人等の強制帰還ということも、受入れ態勢の関係、国際的な慣習の関係等もあつて困難ではありましようが、捕えてみたところが、子分小方のつくられたる擬装の犠牲者ということで、かんじんのボスの本拠をつかないでは、この悪の征伐はできない、こう思うのですが、それでもまあとりあえず暫定的なものだから、一、二歩前進だから、これでやつて行こうということ衆議一決すればまた何をか言わんやであります。私はどこまでも日本から覚醒剤というものは影を消したのだ、医者が打とうがだれが打とうが、そこにあればそれ自体がもう違反だというところまで持つて行くには、なおかつ距離があるというお考えでありますが、この際ひとつ高野さんなり薬務局長意見を最後に承つておいて、あとの研究にしたいと思います。
  27. 高野一夫

    高野参議院議員 まず先ほどの岡さんの御質問にも関連して参りまするし、また松永先生の御質問にも関連して参りまするが、今回の罰則強化という点につきましては、ただ単に罰則を高度に引上げたということだけでなくして、一つはこういうねらいもあるわけなのであります。それは法務省を調べましたところが、昨年の覚せい剤取締法の違反者が、先ほど岡先生からもお話がございました通りに大体四万三千人ある。そのうちの二万九千人は不法所持者であります。持つていることができないにかかわらず持つていたために、違反者として問われた者が四万三千人のうちの二万九千人を占めておる。それからいわゆる密売買、譲渡、譲り受け、これの違反者が一万二千人余り、それから密造の方は、人員としてこの違反者であがつた者がわずか六百四十二人でございます。これはわずかでも非常な影響があるわけでございます。そこで私どもはまず最初この罰則強化につきましては、この根源であるべき密造部落をつく、あるいは密輸入をつく、こういうので行かなければ、その元を断たなければ、いくらやつてもしようがないのじやないかということでありまして、そこで密造、密輸入ということにまず一番重罰を科す、こういうことで一応体刑の年数も区別しておつたのでございますが、いわゆる犯罪捜査、検挙の統計並びに今まで与えられた法務省関係のいろいろな実情を聴取してみますると、密造の方はかように人数が少いと同時に、この密造関係をあげるということが非常にむずかしい、捜査上あるいはそのほかの面において、なかなかこれをひとつつきとめて根絶させるところまであげ切るということがむずかしい。一番やさしいのが不法所持である。そこで四万三千人の違反者のうち二万九千人というような大半の者が不法所持であるとするならば、まずこの不法所持を強く取締つて、強い罰則を与えるということで行くならば、その不法所持者がどこから買つたか、またその卸、あるいはまたその元の密造部落、だんだんとルートをたぐつて行けば、密造部落もつかまえやすい。そこで不法所持なり不法使用密造、密輸入と同格の高度の罰則適用することはどうかと、われわれも考えるわけでありますけれども、捜査技術上からいつて、そうしておけば非常にこの元をつきやすい。こういうようなこともございまして、実は密造密輸入と同格に、不法所持不法使用に対する処罰を五年以下、または営利常習の場合は七年以下と、こういうことにいたした点がございますので、この点は今後この捜査技術上の面から行きましても、検察当局で非常にあげやすい、元をつきやすくなる、従つて密造部落のいろいろな検挙なりその犯罪捜査がやりよくなつた。ただ単に罰則強化して適用するということだけでなくして、そういうような面からいつても、相当犯罪検挙上これを根絶させることに役立つのではなかろうか、こういう一面のねらいを持つた一つ強化の案になつておるわけでございます。  それとまた関連いたしまして、ただいまの松永先生のお話の、正規のものはもう一切ないのたというようなことでございますが、これは正規の学問的いろいろな機関におきまして、これが必要がない、必要ではあるけれども、まあ別のもので代用ができるとかどうとかいうような判定が下された後において、われわれも取上げて考えてみたい、こう思つておるわけでございます。ただ先ほども申し上げました通りに、現在麻薬においても覚醒剤以上の害病を流す、弊害を与える。麻薬におきましても、麻薬の医療上の使用はこれを禁止しておらずに、一方において麻薬の秘密の面を取締るという厳重なる制裁罰則を科しておるわけでございます。そこで麻薬の持つ医療用の効能と同様の高い効果でこの覚醒剤の持つ効果があるかどうかという点につきましては、さらに今後一層臨床医学者なんかの意見を徴して、ひとつ考えてみたい、その場合に、では必要がないという場合に、新たに起る問題は、いかにして禁止方法を設けるか、こういう問題にぶつかつて来るわけです。それは先ほども申し上げました通りに、この化合誘導体——この覚醒剤の持つ医療用の——ここに書いてございますが、このアミノ、これを持つ誘導体はいくらでもできるし、それを片つぱしから禁止することが合成化学上できるかどうかという面と、作用を持つものは一切とめるということが医療上できるかどうかという点についてまだわれわれ疑義を持つておりまして、そこまでの結論に到達し得ませんので、一応検討を次の国会並びに近い将来に保留をいたした次第であります。
  28. 高田正巳

    ○高田政府委員 覚醒剤を全般的に禁止するかどうかという問題についての私の意見を言えという御質問でございますが、現在の覚醒剤正規のものの状態も十分に御承知の上での松永先生並びに岡先生の御意見であります。従いましてさようなもののこまかいいろいろな点につきましては、今まで繰返しお答えを申し上げた通りでございます。従いまして私どものこれからの態度といたしましては、この間も申し上げましたように、これが医療上いるかどうかという点をもう少し責任のあるところで今研究をしてもらつております。その結論を待つて、こまかいいろいろな配慮等はさておいて、しからば大していらないということになれば、どうしたらこれが全面的に禁止できるかという具体的な方法研究いたしまして、そうして結論を下したい、かようなつもりでございます。従いまして全然そのつもりがないというの事ではございませんで、まだこの国会中にその結論を出すにはどうも自信がない、従つて取締り強化という方の重大な問題もありまするから、この国会ではその前の点は、ひとつ私どもとして結論を出しかねておるから保留をしていただいて、次のもう少し掘り下げて研究をする余裕を与えていただきたい、こういう態度でございます。
  29. 滝井義高

    ○滝井委員 ちよつと関連して最後にお尋ねいたしておきたいのですが、日本の今の一年間の製造は三百九十グラムと申しましたが、その内訳——それがアンプレにどのくらいなつて、錠剤にどのくらいなつておるか、それをちよつとお知らせ願いたい。
  30. 高田正巳

    ○高田政府委員 今三百九十グラムと申し上げましたのは二十八年度でございます。原末が三百五十グラムでございます。それから錠剤が二万五千箇、それから注射薬が五千七百五十本。これは原末から錠剤、注射薬をつくつたその原料になつている原末も、その原末の数量の中に含まれているわけであります。それから末そのもので供給されるものもその原末の数量の中に含まれいる、こういう計算になると思います。
  31. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、その三百五十グラムの原末、それは大体どういう方面に使用されていますか。それがさらにまた錠剤の製造あるいは注射薬の製造にまわつているものか。それとも全然別個の研究用その他にまわつているのか。その点をちよつと伺いたい。
  32. 高田正巳

    ○高田政府委員 三百五十グラムのうち二百六十一グラムが原末として施用機関の方に行つたものであります。その他は錠剤なり注射薬の材料として使つているという計算になるかと思います。
  33. 滝井義高

    ○滝井委員 そうするとどうもちよつとおかしくなるのですが、三百九十グラムというものが原末と錠剤とそれからアンプレ、こう三つにわけて御説明くださいました。ところがさらにその三百五十グラムの内訳を見ると、さらにそれがまた錠剤や注射になつているということになりますと、だんだん先に行くとどうもおかしくなつて来るわけですね。そういうことではないのですか。そうすると残りの二百六十一グラムの原末というのは大体どういうことに具体的に使われているかということなんですが。
  34. 大熊治一

    ○大熊説明員 御説明申し上げます。ただいま局長から申し上げました二十八年度の三百九十グラムの製造数量でございますが、これは原末に換算いたしまして三百九十グラム、そのうち原末としては三百五十グラムを製造いたしまして、二百六十一グラムを施用機関その他に渡しまして、その末の在庫数量というものが百九十一グラム、それから原末そのものとして売られましたほかに錠剤として二万五千本、それから注射薬として五千七百五十本というものがつくられております。
  35. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、その原末になつた二百六十一グラムというのは具体的にどういうぐあいに、たとえば施用機関、医療機関で使われているかということなんです。それがちよつとわかりかねるのですがね。
  36. 大熊治一

    ○大熊説明員 今おつしやいましたのはどういう病気に使われているかということなんですか。
  37. 滝井義高

    ○滝井委員 どういう使い方をしているかということです。
  38. 大熊治一

    ○大熊説明員 それは施用機関におきましてはこの末をもちまして百倍に薄めてそして施用いたします場合、それから研究機関において末そのものを研究の材料として使う場合もございます。ごく少数ではありますが、大きな病院におきましては末そのものを買いまして、病院の薬局におきましてアンプルに製剤するという場合もございます。
  39. 高野一夫

    高野参議院議員 先ほどの松永先生の御質問に対して私はつけ加えて最後に申し上げておきたいのですが、すでに御承知通りで私が申し上げるまでもないことでございますが、ヒロポンという名前でほとんど通つているわけですが、これは御承知通り登録商標でありますので、かりに覚醒剤そのもの禁止いたしましてもヒロポンという名前は厳としてとにかく登録されており残るわけでございまして、そしてこれは覚醒剤に対する名前として登録されたんでなくして、商標の一部として医薬品に対する商標として登録されておりますから、ほかのものにまたヒロポンという名前を使うということは、正規の良識ある会社では使うはずはないと思いますが、かりに健胃剤なり何なりをつくつてこれにヒロポンという名前を使つても、これは違法でも何でもないわけです。そういうことはやるはずはないと思いますが、このヒロポンという名前が根絶されるかどうか、やはりこの現物禁止ということについては相当重大な影響があるのではなかろうか。しかもこれは名称としてすでに登録して、高野とか、何とかいう名称なんでございますから、取消すということができない。この面もあわせてひとつこれを禁止する場合は研究考慮する必要がありはしないか。こういうことも考えているわけであります。つけ加えて申し上げておきます。
  40. 松永佛骨

    ○松永(佛)委員 今の高野さんのお話ですが、この点はヒロポンというものが覚醒剤の代表的なものであつた過去から、覚醒剤といえばどういう製品でもみなヒロポン及びその類似品、こういうことに通称なつている。太閤を秀吉がとつたように覚醒剤ヒロポンが代表名詞になつている。そこで名称登録されたものは禁止できませんが、どこの会社が持つているか知りませんが、覚醒剤として天下著名の名称を持つているヒロポンを、ほかの製品をつくつて健胃剤とかいろいろなものに使つてみても、これはいたずらに世人がおそれおののくばかりであつて、そういうことはおそらく商業道徳上からも販売技術上からもなし得ないと思いますが、とにかくヒロポンだとかそういうことが一切つくることも移すことも携帯も施用も、せんじつめて一切禁止されたんだということは、その及ぼす精神的影響、日本から消えたんだ、あるものはことごとくやみと犯罪の温床でしかないのだというこのねらいと、この両方を今後ひとつ研究していただきたいと思います。
  41. 小島徹三

    小島委員長 本案に関する残余の質疑は次会以後に譲ることといたしまして、本日はこれをもつて散会いたします。  なお次会は明日午前十時より開会いたし、覚醒剤取締りの問題に関し参考人より意見を聴取し、覚醒剤取締法の一部改正法案、なお本日提出を予定せられる精神衛生法の一部改正法案等の審査を進めて採決する予定でありますから、各委員はそれぞれ各党の態度を決定して御出席をお願いいたします。    午後零時二十九分散会      ————◇—————