○岡
委員 ヒロポンの問題は繰返しこの
委員会で大臣お御出席にな
つて私
どももとも
どもに心配をいたしておるわけであります。今さら問題として新しく提起すべきものは何もないわけでございますが、ただ先ほど来
柳田さんとの質疑応答の中で、どうしても私
どもがひとつや
つてもらいたいと思うことは、これも繰返し申しておるのでありますが、今
薬務局長の御答弁では、まだその点が踏切りがついておらないように思います。これは
ヒロポンの
中毒禍を
日本から除く
ためには、まず
ヒロポンの
密造なり、また密売買なり、また不正なる商人に対しては厳罰をも
つて臨む、少くともモルヒネ
程度をも
つて臨む、場合によ
つては
ヒロポンを常習的に販売して利益を得る者に対しては、厳罰規定を置くことは当然であります。いま
一つはやはり現在
ヒロポン中毒にな
つている特に若い子供たちをどうするかということ、まあいわば早く回復せしめてやること、その
ためには一応隔離しなければならないので、特別な
収容施設等を
考えるということが
一つ。それからもう
一つは、やはり
ヒロポンというものがどういう素姓のおい立ちを持
つておるものであるか、こういうものがどういう害悪を
社会に流し込むのかということを、やはり広く啓発宣伝する。これは常識的にその三本立で行くよりほかにしようがない。そして問題は啓発宣伝の問題なんですが、よく新聞などではトピツクとして、
ヒロポンによる常識では
考えられないような凶悪な
犯罪が報道されておるけれ
ども、しかしそれはあくまでも
社会面のトピツクとして取上げられておる。そこで青
少年保護週間としては、東京
都内でも
警察署の名前入りで、防犯協会というようなものが青
少年を
ヒロポンから守りましようという立札をあつちこつちに並べておるだけで、こういうことでは、
ヒロポン禍はいかに百万ぺん叫んでも、ほんとうに
社会の常識がこの
ヒロポンから青
少年を救うという啓発宣伝にな
つておらぬ。私
どもの
考えることは、やはり政治的のセンスから言うならば、
ヒロポンをつく
つてはいけない、禁止すべきだ、この踏切りをやはり厚生省がはつきり打出すことが、そのことがもう
ヒロポンを
日本から駆逐する何にもまさる大きな意思表示になるのではないか。それが輿論を率いる大きな姿になるのではないかと思う。まず
ヒロポンを禁止するというここの踏切りをどうしてもつけていただきたいと思う。先ほど来
薬務局長のお話を聞いておりますと、専門家の御意見等もいろいろ勘案されて、特に麻薬を引合いに出してのお話でありますが、たとえばモルヒネは医者には治療上欠くべからざるものです。しかし
ヒロポンは医師の治療上絶対欠くべからざるものではない。これは大家の意見が一致しておると思う。先ほど来
田中警視総監のお話を聞いておると、五十本や
つておる者は四十八本、四十本というふうに下げて行く、その四十八本を残しておくことが治療上必要であるというようなことでありますが、これはナンセンスです。私
どもが手にかけておる者は五十本くらいのものは全面的に禁止しても何ともない。一時仮病を装うて非常に苦しみますが、臨症上は何の異常もない。それによ
つて早い期間内に
ヒロポンから解放されておる。これは
ヒロポンを扱
つておる松沢
病院の例を見ても林先生自身が言
つておられる。ただ
ヒロポンが必要なことは、非常に稀有な病気があるのです。ナルコレプシーという非常にまれな病気がある。この病気の場合は、ひよこひよこ町を歩いておる者が発作的に睡眠状態に陥る。また目が覚めるとひよこひよこ歩き出すという、非常に稀有な病気があるのです。こういう場合に、発作的に彼が睡眠状態に入
つて倒れたときに
ヒロポンを
注射すると早く気がつく。しかしこれは対症療法です。これによ
つてナルコレプシーという病気そのものがなおるのではない。ただ一時の対症病法とし、多少
ヒロポンが効果があるのです。しかもこの病気は東大の精神科の
統計を見ても一年間に一人外来を取扱うことがあるかないかというくらいで、これも問題にならない。治療上絶対に欠くべからざるものではない。しかも病気そのものがきわめて稀有なものです。それからいわゆる抑欝病というものもある。これは何でもかんでも自分にと
つて不利な、自分を苦しめるような解釈を求めてしながら、だんだんと憂欝にな
つて来る。こういう場合も
ヒロポンを
注射する。しかしこれもやはり対症療法なんです。してやると、一時少し気が晴れ晴れとするというだけのことで、抑欝病そのものをなおす根本的な治療の薬ではない。そういうふうに
考えてみると、
ヒロポンが治療上多少効果があるというにしても、それはほんの対症的なものであ
つて、決して病を根本的になおすものでない。そういう
意味で、人道的観点からも
ヒロポンというものは
日本の国土からなくしてしまう、この踏切りをやる、国会も政府も一体とな
つて、できるだけすみやかに、大きな具体的行動において
ヒロポンを駆逐するという意思表示をやることが、最上の啓発宣伝である。またそうやらなければ
ヒロポンの問題をどう取上げてみましましても解決しない。それにはいろいろな問題があると思います。補償の問題その他多少あるといたしましても、やはりどうしてもこの踏切りをつけなければならぬと思うのです。こういう点はさらにいろいろ
関係の学者の方々の御意見も聞かれてけつこうです。また精神病の研究上
ヒロポンがあ
つた方がよいということはそれはあるのです。しかしこれも内輪を申し上げると、
人間を実験台にして
精神分裂症の研究をやろうというもので、
ヒロポンを使
つて、
人間が実験台にな
つて、アミン
中毒が
精神分裂症の
原因であるということを究明しようというそのことも、すでに科学者としての良心的な問題があると思う。そういう点から
考えても、研究上の必要ということも、人道的な立場からいうならば、あるいは科学者の良心から見てどうかと思う。そういうことになれば、
ヒロポンの効用というものは
一つもない。どうかそういう点でぜひとも
ヒロポンをなくするという御方針をと
つていただきたいと思います。
それからもう
一つ、先ほど来残りの部分についてはまた次の機会にでもそれをさらに改正すると言われておりますが、残りの部分と称されるのは現在
中毒しておる青
少年等をいかに
処置するかということであろうと思います。これは大臣にもこの前申し上げておいたが、
覚せい剤取締法はあくまでものを対象とすればいい、ものを対象として、そのものの
製造なり売買なり使用について
取締るという線をうんと強く出してそしてそのものをなくするという建前でや
つてもらう。一方現在
中毒しておる
患者、これは青
少年が非常に多いということから
考えましても、やはり
精神衛生法で行くべきじやないか、私は今もそういうふうに思
つております。
精神衛生法の一条には明らかに国民の精神の衛生の向上、保持をはかるということが書いてある。しかも今青
少年の精神に一番大きな害をなしておるものが
ヒロポンであることは、これまた事実なんです。国民の、特にこれからわが国を背負
つてくれる若い世代の健全な精神を育成して行く、向上をはか
つて行くというなら、まず端的に
精神衛生法の目的に沿わない、事実大きな害毒を与えておる
ヒロポン中毒、
ヒロポン化から救うということは、やはり
精神衛生法によ
つてやるべきである。そこで
精神衛生法には第二十九条に
強制入院の規定があり、
入院をさせる——問題はその
ために必要なる予算をいかに国家から出して行くか、またそういう
患者をどういうふうに配置するかということであります。これもこの間申し上げましたが、薬務局あたりの御意見によると、二百なり三百の
ヒロポン患者を大都会を
中心に一箇所に集めようということですが、事実上の問題としてそういうことはできないのです。これは松沢
病院の脱走
患者を見ましても、大体
ヒロポン患者が脱走しておる。もし
一つの病棟に
ヒロポンの
中毒患者だけ集めましたら、ま
つたく強硬なモツブの集団を預か
つたことになる。こういうことにしましたら、
病院の管理はできつこない。でありますから、現在多少の予算をも
つて地方に精神病棟の増加をはかろうとしておられますので、この予算をふやして、適当な地域に指定
病院なり公立
病院なりのベツドをふやして分散的にやる——その手続については二十九条の規定が援用できるかどうかは法律上いろいろの解釈もありましようが、そういうやり方で行
つた方がいいのではないか、これは私見ですが、一応この機会に申し上げておきます。