○
久下政府委員 若干のお時間を拝借いたしまして御
説明を申し上げたいと思いますが、
法案そのものにつきまして一々申し上げますと相当な時間を要します
関係もございますので、お手元に「
厚生年金保険法案に関する
説明資料」というつづりが差上げてございます。これの一番最初に「
厚生年金保険法案要綱」というのがつづり込んでございますので、これに基きまして
説明を申し上げることにいたしたいと思う次第であります。
なお
内容に入ります前に、先ほどの
大臣の
提案理由の
説明にありました点について若干敷衍して申し上げたいと思うのであります。
厚生年金保険法の制定は、御案内の次第でございます。
昭和二十八年十二月末現在の被
保険者総数は七百六十七万六千人を越えておる次第でございます。同時に、この被
保険者によ
つて扶養されております被
保険者の
家族、被
扶養者でございますが、これが
健康保険の例で申しますと、大体被
保険者数の一・七倍ということでありますので、被
扶養者の総数は千三百万を越える数になるものと
考える次第であります。そういたしますと結局被
保険者、その被
扶養者数を合せまして二千万人の
勤労者並びにその
家族が本
制度に直接の
関係を持
つておると
思つてよろしいと思うのでございます。
こういうふうに
適用の
範囲が非常に広い
制度でございますが、先ほど
大臣の
説明にもありましたように、
戦争初期に
制度が創設され、特に
終戦後の
インフレ時代を経過して参りましたために、当時
長期保険でございます
関係上
年金の
給付はあまり行われず、一方
保険料だけはどんどん
徴収されるというようなことで、
年金保険制度の根本に対しましていろいろな批判が起
つたのでございます。そこで
インフレ時代の
貨幣価値の下落に対応して、一面におきましては新しい
給付を創設して、被
保険者に喜ばれるような
制度にしたいというような
方針と、同時にまた逆にそれとは全然正反対の
措置でございますが、被
保険者の
負担を大幅に軽減をするというような
措置があわせとられたのでございます。主としてその
改正は
昭和二十三年に行われておるのでございますが、そのときまでの
保険料率は、
一般男子は
標準報酬月額の千分の九十四を毎月
徴収をする。これを
労使折半負担で
徴収をしてお
つたのであります。
坑内夫は千分の百二十三、
一般女子は千分の五十五というような、相当高額な
保険料を
徴収する
制度にな
つてお
つたのでございます。先ほど申し上げました
保険料の
負担を軽減することのために、
大臣の御
説明にもございましたように、まずこの
制度の根幹をなしまする
老齢年金につきまして、大幅に
年金額を縮減して、
月額百円というものを
支給する
程度にとどめるという
方針のもとに、主としてこの点から
保険料率の低減をはか
つたのであります。そうして
昭和二十三年の
改正によりまして、
一般男子千分の九十四、
坑内夫千分の百二十三というような高額な
保険料率を一挙に千分の三十に引下げまして、今日に及んでおる次第でございます。
一方におきまして新しい
給付をつく
つたと申しまするのは、
遺族年金に類する
寡婦年金、
鰥夫年金、
遺児年金でございまして、当時におきましては、被
保険者が
老齢年金をもらう前に死亡いたしましても、その
遺族には
年金が出なか
つたのでありますが、
老齢年金をもらう前に死亡いたしました被
保険者の
遺族に対しまして、その
寡婦、
鰥夫、
遺児に対して
年金を
支給するという
制度をつく
つたのでございます。ところがこの
制度が前から存在しておりました狭義の
遺族年金と非常にアンバランスにな
つておりまして
——狭義の
遺族年金と申しまするのは、
現行法の
遺族年金でありますが、これは
老齢年金を受給いたす
資格のある者あるいは受給しておる者が死亡した場合に、その
遺族に転給される
遺族年金であります。これは
老齢年金が千二百円という
低額に押えられました
関係上、その半分の、
年額六百円きり
年金が出ないというような
制度にして
しまつたのでありますが、一方
遺族年金でありまする
寡婦、
鰥夫、
遺児年金につきましては、
最終報酬月額の三箇月分を平均いたしまして
——大体
最終報酬と申してよろしいのですが、この二箇月分を
支給するというような、相当高額な
給付をするような
制度にな
つてお
つたのでございます。
もう
一つ顕著な例を申し上げますと、
脱退手当金の
制度であります。
脱退手当金と申しますのは、
制度創設当初からあ
つた制度でありますが、これは、被
保険者か
保険料を
徴収されて将来
年金の
給付を受けたりするのでありますが、途中で被
保険者資格を喪失した者につきましては、
保険料のかけ捨てになることを防ぎますために、本人のかけた
保険料に
銀行預金利子程度のものを加えたものを還付する
制度であ
つたのであります。これは、そういう
考え方から申しますれば、
昭和二十三年に
保険料率を大幅に引下げましたときに、その金額もそれに応じて当然引下げるべきであ
つたと
考えるのでありますが、さきに申したような
趣旨に基きまして、
脱退手当金の
給付額を下げないで、
保険率を計算して参
つておるのであります。従いまして、大ざつぱに申し上げますると、
労使合せて千分の三十の
保険料しか納めておりませんのに、
脱退手当金の額は千分の五十五
程度のものが還付されるというような、被
保険者本人の立場から申しますれば、
銀行預金なんかよりよほど有利なことになるような、私
どもから
考えれば、合理的でない
制度のままにな
つてお
つた次第であります。こういうような点が、今度の
改正を全面的にいたさなければならないと私
どもは
考えておるおもな
理由であります。
それからこれも
大臣の
お話にございましたように、昨年の十二月以降
坑内夫に対する
老齢年金の
支給が開始されるような時期にも立ち至りましたので、私
どもとしては一昨年来この案をつくることに努力いたして参
つたのであります。
政府としては昨年の暮れ一応最終的な案を得まして、
法律に基いて社会保険
審議会に諮問いたしたのでございます。いずれ資料をお届けいたしますが、社会保険
審議会におきましては各
委員いろいろ御尽力いただましたけれ
ども、終局的には
労使及び公益代表
委員の意見の一致を見ることができませんで、三者の意見そのままを厚生
大臣に答申されたような次第でございます。
そこで私
どもといたしましては、それらの意見の答申をもらいましてから、なお原案につきまして再検討を加えましたほかに、さらにこれも
法律に基いて内閣に所属する
社会保障制度審議会にも原案を諮問した次第でございます。
社会保障制度審議会からも答申がありまして、若干原案を修正したものを今回御提案申し上げるような段取りに
なつた次第でございます。
内容に入
つて申し上げる前に申し上げますことは、大体そんなことでございます。
次に、
労使の意見の突き詰めたところを御
紹介申し上げて御参考に供したいと思います。労働者側の意見として、
保険給付内容が改善され、
増額されるということでありますれば、若干の
保険料負担が
増額することもやむを得ないということでありました。なおその財源としては
国庫負担も大幅に
増額し、あるいは積立金運用につきましても注意を払
つて、財源を確保することによ
つて、
給付額を原案より大幅に
増額すべきであるというような意見が主流を占めてお
つたように思います。これに対して使用者側の意見は、緊縮財政の今日でもございまするし、
保険料負担が額の上において大幅に
増額するという
政府の原案には賛同しがたいということが
一つのポイントでございます。また
年金給付は、それにも関連いたすのでありますが、報酬比例を加味することなく、定額制で最低生活の保障をすればいいというのが使用者側
委員の御意見であ
つたのでございます。大体そういうような御意見を参考にして私
どもとしては成案をまとめたつもりでございます。
以下先ほど申し上げました要綱について簡単に
説明を加えて参りたいと存じます。
改正の目的の第一に、
標準報酬という見出しがあります。これは御案内のように、
精神としては、
勤労者のと
つておりまする報酬額がそのまま
標準報酬として
制度の土に現われるべきでありまするが、実際は若干の食い違いがあります。これはこういう
制度をいたしておりますのは、もつぱらと申してよろしゆうございますが、事務上の便宜のためでございます。具体的に申しますれば、四千五百円から五千四百九十九円までの
標準報酬をと
つておりまする者は
標準報酬が五千円をと
つている者というふうにきめて行くわけでございます。一万円と
つている者は一万円でいいのでありますが、九千五百円から一万一千円の者は一万円というふうに計算するわけであります。そうすることにより、これを
基礎として、これに
保険料率をかけて
保険料を
徴収するということをいたしますとともに、また半面この
標準報酬の額が基準になりまして各種の
年金額が計算せられ、あるいは
脱退手当金の計算が行われるわけでございます。そういう意味から
標準報酬をどういうふうにきめるかということが
保険給付の面に実質的に影響いたし、また半面
保険料負担に影響があるわけでございます。ここに書いてございますように、
現行法は最低三千円から最高八千円までの六階級にわけておりますが、この
制度では
健康保険はすでに三万六千円に上
つておりますし、また
船員保険におきましても同じような
理由の保険を含んでおりますにかかわらず、やはり三万六千円が最高額にな
つておるのでございます。そこでこの
標準報酬を賃金の
実態に合せるとは申しながら、一方において
労使の
負担増ということも勘案いたしますと、これをどの
程度に
引上げするのがよろしいかということが重要な
改正のポイントと
なつたわけでございます。いろいろ検討をいたしました結果、一挙に他の
制度のように持
つて行きますことも、
労使の
負担を急激に増加することになりますので、
政府の原案といたしましては最高八千円の
現行法の額を最高一万八千円にいたしたい、こういう案を提出いたしておる次第でございます。なお最低三千円から一万八千円までの
内容の区分は十二等級、かようになりますが、これは事務上の便宜も考慮いたしまして、
健康保険の区分と同様にいたしておる次第でございます。
それからもう
一つの問題は、その次の項にございますが、後に申し上げますように
年金の
給付は被
保険者本人が過去においてどの
程度の報酬をと
つてお
つたか、言葉をかえて申しますれば、どの
程度のどういう
保険料を納付いたしておるかということが
年金給付の基本になる
関係があります。これは申すまでもないことでございますが、ところでインフレの時代を経過して参りましたために、インフレ前の非常にに
低額な報酬をと
つておりました時代のものをそのまま報酬にと
つて、
標準報酬額としてと
つて参りますと、
保険給付額が非常に低いものにな
つて、今日の
実態に合わないおそれがございます。そこで過去の低い時期の
標準報酬は全部新しい
制度の最
低額を三千円に見ようというふうに
考えておる次第であります。
第二は
保険給付でございます。これは
老齢年金、
障害年金、
遺族年金というふうに各項目をわけてございますが、各項につきまして簡単に申し上げておきたいと思います。
老齢年金、ここに書いてございますように二十年以上被
保険者でありました者が六十歳に達しましたときに、
支給をするものであります。簡単に申しますとそういうことでありますが、六十歳に
なつたときにまだ被
保険者でありますれば被
保険者である期間は
支給をいたしません。被
保険者資格を喪失した者が六十歳に達したか、あるいは六十歳を越えて被
保険者資格を喪失いたしましたときに
支給をすることにな
つておるのであります。これは
一般男子、女子ともこれでや
つております。二十年以上ということは男子、女子かわらないのであります。
坑内夫につきましては、従来から二十年の
資格期間が五年短縮いたされておりますので、新しい
制度でもそれを採用するつもりでございます。それから当時
坑内夫と女子につきましては
給付開始年齢を、六十歳を五十五歳、五歳だけの差をつけて女子及び
坑内夫の労働の
実態に合うようにしたい
考えでございます。なお六十歳に
引上げるということは、これは
一つの大きな問題があるのでございまして、社会的に
一般に行われております停年制の問題に大きな関連を持つ次第でございます。こういうふうに
引上げまする
趣旨は、
一般的には後に資料をごらんいただきますればおわかりいただけますように、日本人の平均寿命が非常に延びて参りました。この点が言いかえれば労働可能の期間が長く
なつたと申してよろしいと思います。また諸外国の
制度を見ましても、そういうようなことを根拠にいたしまして、
現行法のように
一般男子五十五歳、
坑内夫五十歳というような
支給開始年齢をと
つておるところはほとんどございません。みんな六十歳ないし六十五歳、はなはだしいところは七十歳ぐらいにな
つてから初めて
老齢年金を
支給するという
制度があるわけでございます。そういうような
理由から六十才ということに
引上げることにいたしましたが、ただ社会的に一挙にこれを
法律施行と同時に六十才に
引上げをいたしますると、停年制をしておる事業所の九割が現在五十五才の停年制をと
つております。そこでそういうところの
勤労者にと
つては非常に大きな影響を与えまするし、また場合によりましては、日本の雇用
関係全般に影響を及ぼすと
考えまするので、これは漸進的な方法をとることに
考えております。大体簡単に申しますると、
法律施行のとき五十二才以上でありますれば
現行通り五十五才で開始をする、五十一才から四十九才までの人につきましては五十六才で開始をするというふうにいたしまして、最終的には二十年後に六十に頭がそろうように、漸進的な方法をとる予定でございます。
それから高年齢者の
資格期間の特例、これは四十才を越えて被
保険者になりますような人につきましては、所定の二十年の
資格期間を満たすことが実際問題として困難でございます。そういう人につきましては十五年で開始をするというふうに特例で新たにこれを設けたものでございます。それから廃疾考に対する
老齢年金の繰上げ
支給というのも新しい
制度で、
現行法にはございません。
老齢年金を
給付する
資格期間を満たしておる人が六十才になるのを待
つておりまする間にけがをいたしたという場合には、
老齢年金を繰上げ
支給してやるという
制度でございます。
それから
老齢年金額、これらにつきましては少し御
説明申し上げますが、ここに書いてございますように、定額一万八千円に
報酬比例額を加算したものというふうにいたしたのであります。
現行の
制度は
老齢年金につきましては、
制度の建前としては報酬の四箇月分を支払うということで全面的に報酬比例にな
つておるわけでございます。これに対しまして
社会保障制度審議会の勧告は、累次にわたりまして定額一本で行けという勧告であり、先ほど申し上げましたこの
法案を諮問いたしました答申にも定額制を主張しておられるのであります。この定額制にしなければならない
理由というのは、主として社会保障であるから最低生活の保障をすればいいということ、それからさらに
給付費に対しまして国庫の
負担がございますが、これは
給付費に対して一割とか一割五分とかいう
関係にな
つている以上、高額所得者には
国庫負担が多額に行くというような結果になることがおもしろくない、いろいろなことがございます。私
どもとしてもこの定額制を主張する論拠に対しましては十分
考えなければならないと思いまして、
制度的には定額一万八千円、
月額一千五百円という
制度をとることにいたしました。それに若干の報酬比例を加算するということで、
現行制度の全面報酬比例に対して相当大幅に定額制を取入れるというようなことにしたのであります。
次にもう
一つ加給年金がございます。これは被
扶養者に対して出す
年金でございますが、これは
現行法にはございません。この
老齢年金に新たに附加することにいたしたものでございます。
一々申し上ておりますとだんだん長くなりますので、少しはしよらせていただきますが、
坑内夫の特例の廃止、
坑内夫につきましては現在二重の特例がございます。先ほど申し上げましたように
資格期間を五年短縮するほかに、継続して十二年
坑内夫であると
年金がつくというようなさらに附加した特例がございますが、今日のいろいろな
考え方から申しまして、附加した特例につきましては今後はとりやめてしかるべきであろうという
考え方をとりましたのであります。
それから
老齢年金の遡及
支給というのは、先ほ
ども申し上げました昨年の十二月から
年金の
支給が開始されることにな
つているので、これらの人につきましては新しい
制度の
年金額を繰上げて
支給するように
措置しておる次第であります。
次は
障害年金でありますが、これは時間の
関係もございまするから、各項目につきましては一々申し上げないことといたしまして、概略だけ申し上げます。
障害年金と申しますのは、被
保険者が被
保険者期間中にけがなり病気によりまして廃疾になりました場合に
支給する
年金でございます。これは
現行法では一級、二級と二階級にわかれておりましたが、いろいろ検討いたしましてそれを一級、二級、三級にわけることにいたしました。二級に相当いたしまするものは、
老齢年金と同額の
年金を
支給し、一級は常時介護を要する
程度のものであるというので、
年額一万二千円の加給をするものでございます。三級廃疾の
程度につきましては、二給
年金の七割を
支給する建前にいたしたのでございます。それから一級、二級、三級にも該当しない廃疾の
程度の低いものにつきましては、
障害手当という
制度が
現行法にもございます。これも続けて参りたいと思いますが、その額を若干
低額にいたしました。
現行法では最終三箇月間の平均
標準報酬月額十箇月分を出すことにな
つておりますが、今回の
制度では三級
年金の二箇月分を
支給する建前にしたのでございます。
その
程度で
障害年金は終らしていただきまして次は
遺族年金でございます。先ほ
ども申し上げましたように、
現行制度の
寡婦、
鰥夫、
遺児年金といわゆる狭義の
遺族年金というものが同じ
制度の中に混在をしておりまして筋も立
つておりませんように
考えております。今回はこれらの各
年金を統合して
遺族年金というふうにいたしました。被
保険者が
老齢年金をもらう
資格期間を満す前に死んでも、満したあとに死んでも、その
遺族には
年金を出すという
制度に改めました次第でございます。
年金の額は、
一般の観念に従いまして、
老齢年金の二分の一というふうに
考えております。なお一級、二級の
障害年金者の受給者がなくなりました場合にも、その
遺族には
遺族年金を出すことにしている次第でございます。
ここで申し上げておきたいと思いますることは
遺族の
範囲でございます。これは
現行法に若干の修正が行われて為りまするので、念のために申し上げておきたいのでありますが、
現行の
制度は、先ほど申し上げた被
保険者が
老齢年金をもらう前に死亡いたしました場合には、その配偶者と子供にだけしか
遺族年金が出ない。これに反しまして
老齢年金をもらう
資格期間を満した者がなくなりますと、その
遺族は配偶者と子のみでなく、父母、祖父母、孫まで
遺族年金が出るようにな
つておるのであります。しかもそれは漸次転給をされて行くような建前にな
つております。そこで今度新しく
遺族年金を統合するという建前に立ちましてさらに新しく民法の
精神等も考慮いたしまして、両者の
遺族の
範囲を調節したような
制度にいたしたのであります。まず、
一般的に配偶者と子には文句なしに
遺族年金が出ることにいたしました。父母、祖父母、孫につきましては、順次、配偶者及び子供のないときには父母に、父母のないときには祖父母に、祖父母のないときには孫にというぐあいに従来の転給の観念に若干制肘を加えたのであります。しかしながら孫までに
年金が行くという点については、
現行とかわりないのであります。すなわち、言葉をかえて申しますれば、
寡婦、
遺児、
鰥夫年金が今度
遺族年金に統合されることによりまして、その
遺族の
範囲は孫まで広がる。従来の狭義の
遺族年金は今度の
改正によりまして父母、祖父母、孫につきましては若干の制限が加わるようになり、両者折衷をされたというようにな
つておる次第でございます。
遺族年金につきましてはこの
程度にとどめさしていただきまして、次は
脱退手当金でございます。これは
現行の
制度と
内容的に若干かわ
つておる点がありますが、その点を主として申し上げます。
脱退手当金としては
現行通り
制度は存続いたしますが、
内容は合理化するという言葉で
大臣から御
説明申し上げたのであります。
一般男子につきましては、
資格期間あるいは
給付開始年齢はかわ
つておりません。五年以上五十五才に
——忘れておりましたが、五十才が五十五才に上
つております。この点失礼しました。そういう点で大体
老齢年金等でやりましたのとかわりない
考え方を取入れたのでありますが、
給付の金額につきましては、さしあたり当分の間
保険料が後に申し上げますように、千分の十五が被
保険者負担、その千分の十五に相応するものに若干利子をつけ加えた
程度のものを計算をいたしまして、それを別に
法律の事項に書いてございますような年限に応じて同額のものを出すようにいたしたのであります。
女子につきましては、現在の
制度の
脱退手当金と申しますものは、
一般的に男子と同様に、
資格期間は五年にな
つております。五年被
保険者でないと、やめても
脱退手当金がもらえないことにな
つておりますが、ただ結婚、分娩のために被
保険者であることをやめました場合には、六箇月で
脱退手当金が出る
制度にな
つておるのでございますが、そこで今回女子勤続年数を
調査いたしました結果、五年というのは長過ぎるというふうに
考えて、また結婚後五年というのを、特別に取上げることもいかがなものであろうかということで、その中間をとりまして、二年以上被
保険者であれば
脱退手当金を出すということに改めたのでございます。
給付金額については、男子よりも若干高額のものが出せるのであります。数字で申しますと大体千分の二十
程度のものが女子の
脱退手当金として出せる見込みでありますので、さようにいたしたのであります。なぜそういうふうに男子と違うかと申しますと、女子につきましては別計算でいたしたのでございます。日本の女子は長期に勤続する人が少いために、
従つて年金給付のための財源が比較的少くて済むわけでございます、そういう
関係上その部分だけが同じ
保険料率で
保険料をとりますと、
脱退手当金の方に多くまわるということになる
関係もございまして、その方が日本の女子の勤労の
実態に沿うゆえんであると
考えまして、男子と女子とは
資格期間及び
給付の領につきまして差をつけると同時に、女子につきましては五十五歳まで至らなくてもやめたときに
支給をするというふうにいたした次第であります。
最後に
保険料及び
国庫負担の点について申し上げます。
保険料率をどうきめるかということは、
年金の
財政計画を立てる上に非常に大きな問題でございます。ここの要綱に書いてありますのは、
保険料率は左の通りとする。男子千分の三十、女子千分の三十、
坑内夫千分の三十五、任意継続被
保険者千分の三十というふうにしてございますが、私たちとしてはさしあたり五年間くらいこれでやりたいという
考えでございます。五年たちましたあと積立金の予定利率がどうかわ
つて参りまするか、この辺を勘案いたしました上で若干の
増額をいたす必要があると
考えておるのでございます。
簡単に
一般男子についてだけ申し上げますると、もしも将来ずつと長く現在の積立金の運用利まわりのように五分五厘にまわるものといたしますれば、五年後に千分の三十四、つまり千分の四だけ
引上げることによりまして、将来の保険財政の見通しが立つ予定でございます。しかしながらもし予定利率が五分五厘にまわらない、十年間ずつと四分五厘
程度しかまわらないというような計算をいたしますと、別に資料で差上げてございますように、五年後に千分の四十にいたしまして、十年後に千分の四十五にして財政的に計算がつくというふうに
考えております。いずれにいたしましても、主として今後の運用利まわりの率に
関係をして参りまするので、さしあたりは利子
負担増を急激に来さないというので、大体におきまして
現行の料率を持続することにいたした次第でございます。
国庫負担につきましては、
大臣の御
説明にもございましたように、
一般勤労者の分だけ五分の
負担の
増額をすることになりました。このために
昭和二十九年度におきましては、一割にしておきますよりも、二億三、四千万円の
負担の
増額になります。この額はしかし、将来非常にふえて参る予定でありますことは申すまでもございません。終局的には四十年くらいたちましたときには、
老齢年金の受給者が約二百八十万
程度になる予定をいたしております。全体の
年金の受給者が五百万人を越える見込みでございます。そういう時代になりますと、
年金給付額が毎年毎年千八百億
程度になりますので、この一割五分なり二割の
国庫負担というものは、申すまでもなく相当な額に上るわけでございます。いろいろ折衝いたしました結果、一割五分という五分だけの
増額が承認をされ、ただいま参議院におきまして御
審議をいただいておるところでございます。
大分端折りまして恐縮でございましたが、時間の
関係もございますから、これをも
つてきようのところは御
説明を終りたいと思います。