○曽田
政府委員 お答え申し上げます。今度設けられます癩研究所は、その
趣旨といたしましては、予防及び治療の研究ということにな
つておるのであります。その目的を果しますために、一つは、この患者の治療
方法ということをまず直接に取上げることが必要である。御承知のように癩は、医学的には非常に根本的な問題、すなわち病原菌の培養というようなことが困難であり、動物実験もできないというよう
関係から、なかなか基本的なことはとりつきにくいような
関係にあるのであります。従
つて予防という点につきましても、ほかの伝染病のように予防注射とか、あるいは的確な予防の
方法が見つか
つておりません。とにかく現在おりまする患者の治療ということが直接の問題である。この方面におきましても、滝井さんも御承知のように、非常に長い間進歩がなか
つたのでありますけれ
ども、最近年に至りまして、いろいろな新治療薬が出て来て、相当な効果を上げておるのでございます。ここに曙光が認められて、さらにいろいろな系統の化学薬品あるいは合成医薬品というようなものをどこからか見つけて来ることによりまして、これを患者に用いてその治療効果を判定して行く、またその改良をはか
つて行くということが、これが一つの大きい問題だと思うのであります。それにあわせまして、いろいろな診断の
方法、あるいは癩の病理学、生理学というようなものを調べて参る、これが一つの大きい仕事だと思
つております。もちろんこの場合には科学者、ことに薬科学者の協力というようなものが非常に大切なこととな
つて来ると思うのであります。しかしながら今申し上げましたように、基本的な問題、ことに予防方面のことになりますと、菌の培養とか、あるいはその免疫の
方法とかいうものが必要にな
つて参りますので、このような基礎的な細菌血清学的な研究というものが、一つまた大切なことにな
つて来ると考えるのであります。大体要約いたしますれば、その治療薬の研究、細菌血清学的あるいは動物実験等を用いましての基礎的な研究、それから臨床的ないろいろ的確な診断
方法あるいは病菌の分類、治療の
方法というようなことが、この癩研究所の担当すべき主要なものであると考えております。これを幾つの部にいたしますか、大体三部くらい設けてや
つてみたいと考えておるわけであります。もちろんこのほかにいろ推定されます患者の感染の径路だとか、
病気にかか
つてから発見されるまでの
期間だとか、あるいはこれは非常にまれではありますけれ
ども、治癒あるいは
——最近は癩以外の死因によ
つて死ぬ者が多くな
つておりますけれ
ども、
死亡に至るまでの
期間とかい
つたことについてのいわゆる医学的な研究、かようなことも当面この研究所の担当すべき研究項目であると考えております。あわせて、癩のようないろいろの慢性疾患に冒されております
人たちの、最近よく喧伝されております精神医学的な研究、あるいはその患者の
家族等の生活状態とかい
つた問題にも、できますれば癩に関する総合的な研究所としては触れたいと思いますけれ
ども、主要な点はやはり医学的、生物学的な研究を主として参りらねばならぬと考えております。
なお定員は現在十名でございまして、非常勤を五名、それに常勤労務者が五名というような人数にな
つておりますので、初めからあまりに大きな計画も立てかねるかと思うのでありますが、この人員でも
つてやれるだけの最も合理的な機構を整えまして、能率的に運営して参りたいと考えております。
なおこの研究所の性格といたしましては、御承知のように癩問題を解決して行きます上には非常に各方面の学者の協力を必要といたしますので、一応は非常勤の職員を五名予定しておりますけれ
ども、このほかにすでに官立の大学あるいは研究所、その他の施設におりますこの方面の研究者とい
つた人たちを併任するということで、この仕事を援助してもらいたいと考えております。その中で特に大切なのは、既存の癩
療養所の職員等でございます。私
どもこの研究所が、現在広く他の研究機関で行われております癩
関係の研究を、統合して参る一つの中心になるという考え方が必要なものと思うのであります。予算定員といたしましては一応今申し上げましたように、常勤、非常勤合せて二十名ばかりではありますが、さような意味で研究者の人員の不足を補うためにも、この研究所の常任の職員ということだけではなしに、広く他の機関からの併任者というものを考えれば、相当な
人たちに協力していただいて、かなり大きな計画が進められるのではないかというふうに考えておるわけであります。
大体の構想は今申し上げた
通りでありますが、そこで場所の問題であります。この研究所を最も効率的に運営して行くということのためには、癩研究所の設置の場所というものが相当重大な意義を持
つて来るというふうに考えます。いかなる地がはたして適当であるかということについては、いろいろな点から
検討いたしておるのであります。今申し上げましたように、この研究所の性格から行きまして、研究所がただ研究所として活動するのではなしに、いろいろ他の癩学者の研究を集めて行く、またその
人たちの協力を得て行くということが必要でございます。そういう意味から行けば、交通の利便な所というふうに考えられます。また癩患者の分布状態というものも考慮の中に入
つて来るのであります。特にこの患者の多い地方
——将来何年くらい癩研究所の活動が必要であるかわかりませんけれ
ども、やはりこの研究を進めて行く上には最も好都合な所、つまり患者が多いということが一つの条件と考えられるであろう。また現在癩を研究しております学者の分布というものも考えまして、学者及びささやかながらも今日あります癩研究機関の分布の状況というものも見て行く。そうしてすぐれた研究者たちが集ま
つてチーム・ワークをや
つておるところに対しては、これはまたこれで今後もそのチーム・ワークをできるだけ傷つけないように考えて行くことも必要かと思われる。こういうことでいろいろな面から考えまして、
結論を申しますと、今私
どもとしては最後的な
結論には到達しておりませんが、そのほかの点についてもいろいろ考慮いたして、最も適当な場所を定めたいというふうに考えておる次第であります。