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1954-01-29 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年一月二十九日(金曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 青柳 一郎君 理事 古屋 菊男君    理事 長谷川 保君 理事 岡  良一君       越智  茂君    助川 良平君       高橋  等君    降旗 徳弥君       亘  四郎君    山下 春江君       滝井 義高君    萩元たけ子君       柳田 秀一君    杉山元治郎君       山口シヅエ君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     堀岡 吉次君         厚生事務官         (薬務局長)  高田 正己君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         厚生事務官         (児童局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君         厚生事務官         (引揚援護庁次         長)      田辺 繁雄君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚 生 技 官         (医務局長)  曽田 長宗君  委員外出席者         厚生事務官         (医務局次長) 高田 浩運君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君     ————————————— 一月二十七日  委員堤ツルヨ君辞任につき、その補欠として山  口シヅエ君が議長の指名で委員選任された。 同月二十九日  理事堤ツルヨ君の補欠として岡良一君が理事に  当選した。     ————————————— 一月二十八日  清掃法案内閣提出第九号)の審査を本委員会 に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  厚生行政に関する件     —————————————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず理事補欠選任の件についてお諮りいたします。堤ツルヨ君が去る二十七日委員を辞任されましたるに伴いまして、理事の欠員を生じましたので、その理事選任を行いたいと存じますが、選任の手続に関しましては、委員長より指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小島徹三

    小島委員長 御異議がないようですから、岡良一君を理事に指名いたします。     —————————————
  4. 小島徹三

    小島委員長 次に前会に引続き厚生行政一般について、大臣に対する発言通告がありますので、これを許可いたします。柳田秀一君。
  5. 柳田秀一

    柳田委員 ちよつと委員長にお尋ねします。  きようは十時から参議院で本会議がありますが、大臣わざわざこちらに御出席願つたのでありますけれども大臣の御予定はどういうようになつておりますか。
  6. 小島徹三

    小島委員長 大体 三十分ぐらいおりたいということであります。
  7. 柳田秀一

    柳田委員 三十分ぐらいでありますと、おそらく質問もほとんどできません。またほかにも通告者がありますから、私一人でもできませんが、しかしそのつもりでごく簡潔にお尋ねしたい。  今回大臣は、非常に問題になりました二十九年度の予算の編成さ中において、辞表をふところにして闘われました山縣大臣のあとをお引受けになつたのですが、非常に事の多い、また事の非常にむずかしい厚生行政を御担当願う御労苦は、われわれ野党の者といたしましても、衷心からお察し申し上げると同時に、そうでありますからこそ、なお一層の御活躍を願いたいのでありまするが、そういう意味において、これは委員長にもお聞き置きを願いたいと思うのでありまするが、むしろこういうときに大臣でありまするから、厚生行政に対しては御経験者でもありまするから、大なる抱負をお持ちである、かように考えておるわけであります。そういうわけで、やはり本会議において総理その他外交、財政方針演説があるごとく、この委員会において当然厚生大臣は、自分の所管の厚生行政責任者としての抱負なり信念なりを御吐露なさつて、そうしてそれに対するところの質疑なりをお受けになるというふうにして行かれるのが、最も私は民主的であり、かつ常道でなかろうかと思うのでありまするが、そういうような御機会をつくられる意思が大臣におありになりますか。かりにおありになつても、本会議があり、同時に予算委員会が開かれますと、いつも予算委員会の方に大臣が固定されてしまう。ところが予算委員会厚生大臣質問が出る時間というものはきわめて僅少なんであります。従来の例から見ましても、本年はどうかしれませんが、わが党の滝井君も予算委員会におりますし、従来厚生委員会で活躍されました堤さんも入つておりますので、さぞかし厚生大臣予算委員会でひつぱり出すかと思いますけれども、しかし厚生委員会大臣としてそういうような御信念なり御抱負なりを吐露される御用意があるかどうか、これを承つて、そういうような機会があるならば、本日の私の質問はごく簡単にとどめて他の委員に譲りたいと思いますから、まずそれを伺つておきたい。当然そういうような御抱負お話になることがあろうと思いますが、それならばいつごろそういう機会をお持ちになるか承りたい。
  8. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 柳田さんの御意見、まことにごもつともと存じます。ただ厚生行政は、御承知のように皆さんたち委員会におきましていろいろ御検討をいただき、私ども省といたしましてはそれを十分尊重していろいろな実際の問題にタッチして行つて参つており、また参りたいと存じております。従いまして、ただここで経綸、抱負を申し上げるというよりも、実際は予算を通じての実施ということが中心になつて参ります。しかし予算だけが厚生行政中心でないことは当然でございますから、それで私は、今後はつとめて委員会に出さしていただきまして、いろいろ御意見等を拝承しながら、これを行政に反映いたすということを私のモツトーといたしたいと考えております。
  9. 柳田秀一

    柳田委員 多分そういうような御答弁があろうと思つておりました。(笑声予算中心にやつて行くだけでは、これは国務大臣として私ははなはだ見識がないと言わざるを得ないのであつて、そこにやはり山縣さんは山縣さんのニユアンスがあり、ことに草葉さんは長らく社会行政をやつておられたのだから、ここに草葉行政というニユアンスも出て来るので、もう一度それを御再考願いたいと思うのでありますが、ただきようは最野党の私が一番最初に通告順で出ましたので、また何か意地の悪い質問とか、つるし上げとか、そういうことをお考えなつたかもしれませんが、私はそういう意味で立つておるのじやありません。と申しましても、貧乏人は麦食らえ、中小企業の五人や十人死んでもかまわぬというようなことを言われるならば、これはわれわれも開き直ざるを得せんけれども、実際には厚生行政というものは、そういうことを言われる内閣にあつても、そういうことを言われる方々の、いわば最終産物処理役である。そういう見地から、従来でもこの厚生委員会では党利党略と申しますか、ほとんど与党、野党の対立したことはございません。もうほとんどが超党派的になりましてむしろこの厚生行政というものがこういう愛の行政のようなものでありますから、われわれが厚生当局を鞭撻し、激励し、バツク・アツプして、頑迷なる大蔵当局に当つておるような実情なんであります。またわれわれはそれをもつて、ある意味において誇りとしておるし、また今後そういうふうに行きたいと思う。そういう意味でやはり草葉大臣が、こういう信念で今後行きたいのだという信念を吐露されて、そしてわれわれも今言つたような意味合いから、協力するものは大いに協力したい、こう思つておるのでありますから、予算を忠実に施行すると言われるのでは、これは納得できない。もとより予算範囲において、さらに閣議の決定に従つてやられるのは当然でありますけれども、それではもう味もそつけもない。これはやはり大臣としても、ひとつ新たな信念なり抱負なりをお聞かせ願いたい。これは希望であります。  そこで、今後そういう意味において大臣厚生行政をおやりになつて行く場合に問題になつて参りますのは、今非常に問題になつております社会保障の問題であります。ことに旧臘二十九日に発表されました二十九年度予算案の一つの大きな性格として、いわゆるバター予算大砲予算に食われた。政府当局は、そうでないと言われるだろうと思います。しかしながら一般の見るところでは、これはもう明らかに——自由党の内部においても、代議士会等において相当の議論があり、政務次官自身がなかなか名文句を吐いておられます。自由党においてもこれは異論がある。まして野党においては喧々囂々これに対して反発しておる。ひとり政党だけじやありません、自治体においても、社会団体においても、あるいは学者グループにおいても、その他新聞の輿論におきましても、とにかく全国ほうはいとして沸き上つたのが、この大砲予算に食われたバター予算に対する反発であつたわけであります。従来から、選挙でもありますと、社会保障ということは一つ覚えのように言われますが、社会保障くらいむずかしい問題はありません。しかもそのむずかしい社会保障と真剣に取組んでおられるのが厚生当局であります。そこで私は、この社会保障というものの基本的考え方をひとつ大臣に伺いたい。きよう私が質問いたしますのは、大臣のお考え方を聞くだけでありまして、うしろにお並びになつておる局長課長メモがいるような質問は一切いたしません。大臣が即座にお答えになれるような質問しかいたしませんから、局長課長の方、大臣メモをお渡しにならなくてもけつこうでございます。(笑声)この社会保障という考え方はずいぶん昔からもあり、また変転もして来ておりますが、一九一一年でしたか、二年でしたか、ロイド・ジヨージのああいう立法以来、貧困にいたしましても、あるいは老齢にいたしましても、あるいは疾病にいたしましても、失業にいたしましても、そういうものは国家責任であるという考え方がありますが、これは文明国においては一つの既定の考え方になつておると思うのです。これは私は御異論ないと思うのです。であればこそ、憲法二十五条のあの調子の高い、かおりの高い名文句が生れた。憲法第二十五条の前段は社会保障の性質を規定して、後段は社会保障をどういうふうに具現するかということを現わしておると思うのでありますが、やはり貧困にしろ、病気にしろ、あるいは失業にしろ、そういうものは国家責任であるという観点は大臣も御確認願えるかどうかということを、まず承りたいのであります。
  10. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは理論的な立場からの社会保障概念検討という問題になつて来ると思いますが、私だんだんと考えて参りますと、ただいま社会保障についていろいろ御意見を伺いましたが、社会保障は近代的に発展した、いわゆる近代的な形における一つの新しい観念から生まれて来た制度で、その中にはお話のような点ももちろん含まれております。しかしこれを学問的に考えますと、いろいろな問題が論じられる。ただ一般的に社会保障といつて取上げて参ります問題におきましても、やはりこれも国によつて実際の面では相当つて来るのであります。従いまして日本における社会保障という立場も、これは社会保障制度審議会筆いろいろ検討はいただいておりますが、やはりいわゆる世界全体の社会保障という一つ観念以外におきましても、日本としての社会保障の今後のあり方、あるいは考え方というものがおのずから生れて来るだろうと思います。そういうのが厚生行政一つのポイントになつて、今後そういう点を十分尊重しながら進んで行かなければならぬのじやないかと考えます。従いまして単に社会保障という一つ概念の定義から割出して来るという場合におきましては、いろいろな問題が生じて参るでありましよう。日本現実の問題に即応した社会保障の取上げ方ということが、私どもが今後最も勉強して行かなければならぬ問題ではないかと考えます。
  11. 柳田秀一

    柳田委員 それはおつしやる通り貧困にいたしましても個人の責めに帰する貧困もありましよう。しかしながら今のような近代国家のこういう社会機構においては、社会保障理念というものは、国家責任においてこれを行うという理念が出て来なければ、社会保障には筋金が入らぬと思う。またこの考え方というものがドイツに起り、イギリスに起り、アメリカにも起つておりまするが、これは近代国家を通じての考え方である。この考え方があればこそ憲法が規定しておるのだ。だからそういうような国家責任において社会保障をやる、これは一つ概念規定でありますが、そういうような見地はいかがですかということを質問しておるのであります。
  12. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 あの憲法はただいまお話なつたような考え方から制定して参つたと思います。ただ社会保障全体の概念的な考え方からすると、今申し上げましたように、単なる理論だけではいろいろ問題が生じて来はしないか。近代国家一つ責任としてすべての社会現象を取上げて来るという一つの行き方及び考え方というものは当然あると思いますが、それがすべてであるということは断定できない場合が起り得るのではないかと思います。
  13. 柳田秀一

    柳田委員 社会保障概念として、いろいろ起るところの現象をどういうふうに取上げて行くかというような問題においては、なるほどこれはいろいろとありましよう。しかしこれはここで議論しておつても始まらぬのでありますが、あの憲法——憲法を改正するか改悪するか、ともかく改めるという風潮がある。お仕着せの憲法であると言われますが、よもや憲法を改めるという立場の人でも、あの二十五条だけはおそらく金輪際改めぬと思うのです。今言うような社会保障という基本理念は、やはりこれは国家責任においてやるという立場が明確にされておるからこそ出て来る、かように思つておりますが、どうも国家責任であるからそれをしろと言われやせんかというような、多少伏線を張つたような——とにかく議員が大臣になると急に発言が慎重になつて、あげ足をとられぬように、しつぽをとられぬようにというか、そういうきらいがあつて従つて委員会においても本会議においても、質問に対する答弁に何ら精彩がなくなる。それこそチユーイン・ガムの出しぶりを噛むようなことにしかならぬ。私は厚生行政を担当される新任の大臣ですから、抱負はひとつもう少し勇敢に発表願いたいと思うのです。  そこで社会保障国家責任だというもう一つ前提を立てて参りますと、これはやはり近代産業革命以後の産業構造資本構造、そういう一つ資本主義の高度の発展に伴うところの、当然その資本主義産物であるところの失業、あるいは老令あるいは癈疾ないしは病気、あるいはそういうものから出て来るところの貧困というようようなもの、これがいろいろと問題になつて来るわけでありまして、結局その元をなすものは、一つの大きな資本主義社会産物であるというように言えると思うのです。日本におきましては、直接に資本主義産物というよりは、なおそのほかに近く経験いたしました未曽有の悲惨なる戦争産物であると言えますが、戦争そのもの資本主義産物であるというならば、間接的にやはり一つの大きな資本主義産物である、こういうように私は思つております。またこの考え方は私は間違つていないと思います。そういう見地で現在の社会保障というものは資本主義産物——全部が全部ではありませんが、そこに一つ社会としてこれを大きく取上げるという理念がまた生れて来る、かように私は思うのでありますが、これに対してはどういう御見解を持つておられるか。
  14. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 私は、必ずしも社会保障資本主義社会だけの問題じやない、共産主義社会におきましても、一種の社会保障というものは当然あり得ると考えております。現実になしております。ただ社会保障の進んで参りました過程においては、ただいまお話なつたようなことから進展して来ておる、かように考えております。
  15. 柳田秀一

    柳田委員 私も全部が全部とは申しておらぬ。また共産主義国家社会主義国家等におきましては、国家責任において、進んで社会保障をするという態勢が初めからできておるわけなので、ただこういうような高度に発達した資本主義社会においては、特に資本主義産物としてなお社会保障対象になる部面が多く出て来るということを大臣がお認めになるのかどうかということでありますが、その点はお認めになるのかどうか、これをもう一つ確認しておきたいと思います。
  16. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 ただいま御答弁申し上げました通り、その過程におきまして現われて来た現象だと思います。
  17. 柳田秀一

    柳田委員 これは非常に重要なことでありまして、今後厚生年金等改正案が本国会に出て来ると思いますが、それとまた大いに関連もいたしますので、また後にあらためてお伺いいたしますが、今度の二十九年度予算を見まして、いわゆる大砲予算バター予算が食われた。それにはもとより異論はありましようが、これは客観的事実だろうと思うのでありますが、実際に底の浅い日本経済、さらに財政規模の小さい日本で、貿易は伸びない、輸出は伸びない、しかも今超均衡予算といつておられますが、なおかつインフレ要素というものを多分に包蔵した日本のこういう社会において、実際問題としていわゆる社会保障予算と、それから軍事予算と申しますか、再軍備予算、こういうような大砲予算とは両立ができるとお答えになりますか、どうですか。両手に花だというような希望じやなしに、現実問題として、日本のこういうような今の経済社会で、これが実際両立ができるとお考えになりますかどうか、この点を……。
  18. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 社会保障はただいまいろいろ柳田さんの御意見にありましたように、現実社会における一つ機構の中から当然必要として生れて来る、現実社会そのものの中には、いわゆる国家体系をつくり上げて行く上にいろいろな組織あるいは制度いうものが必要であろうと思います。従いましてこの組織制度社会保障とが両立するかせぬかという問題でなしに、そういう組織制度の中においての社会保障というものが必然的に理論づけられて来るのではないかと私は思います。
  19. 柳田秀一

    柳田委員 ただ質問の要点は、現段階の日本社会情勢ではたしてこれが両立できるかどうか、これはでき得ないとするならばまた何とか考えなければならぬというような御懸念もあるかと思いますが、率直に言つて、これは非常に可能なものであるか、不可能とは、私はこれは行政立場にあられる方あるいは閣議に列席される国務大臣として、言われないことはよくわかります、そうでなしに非常にむずかしいとお考えになるかどうか。
  20. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 ただいま申し上げましたように、日本社会あるいは制度あるいは今後行わんとするもろもろの方策、そういう一つ前提のもとに保障制度といえ、ものが必然的に必要になつて参るのが私は社会会保障だと考えておりますので、当然これはなすべきもの、かように考えております。
  21. 柳田秀一

    柳田委員 なかなか御用意周到な御答弁でありますが、当然に両立してなすべきものであるというのは、これは希望範囲を出ぬのですが、現実にこれは両立できてない、できてない証拠には今後の予算案がはつきしりしておる。これは今度厚生当局も、山縣大臣初めずいぶん反撃されましたが、行政の当事者としては、予算案が削られれば反撃されるのはあたりまえだ、しかし今度の厚生当局反撃というものは、単にそういうように考えておりません。これは厚生行政を担当される厚生大臣もて、われわれの自信もなくなる、われわれの希望もなくなるからやつて行けないということで、やむにやまれぬところの反撃であつたと私は思いますが、事実バター予算大砲予算とは両立ができておりません。そこでこれを生活保護法の面で見ますならば、どうにか八割の国庫負担は回復した、あるいは予算案も多少増加になつておりますが、大体前年並みだということでほつとせられたのは厚生当局でありますし、われわれも実際にほつといたしました。これは小島委員長もずいぶんお骨折り願つたことは知つておりますし、感謝しておりますが、ほつとしてよいかどうか、しかしこれは実質的にはむしろ大きな減額である、これは私一人でなしに一般輿論であろうと思う。ことにこのたびの予算は非常なデフレ予算を強行する、金融の引締めが行われる、それによつて下半期には商社の倒産等が出て来るでありましよう、失業群も出て来るでありましよう、労働省においてすら三〇%くらいの失業増は見ておるのであります。大蔵省の方では失業しても六箇月間は失業保険があるからいいじやないかといつておりますが、そういうような金融引締めとかデフレ政策によつて最も先に倒産するのは三百人以下、千万円以下というようないわゆる中小企業じやなしに、むしろ零細企業の方が多い。五人以下のそういうような零細企業失業保険対象にもなつておらない。こういうことからどんどん失業群が出て来るときに、今のような予算ではたして生活保護の実が上るかどうか。これは特に生活扶助の面についていつても上るかどうか。さらに五十億に近いところの赤字がすでに二十八年度に出ておる。この赤字に対しては、あるいは大蔵省予備金から出すとか、あるいは多少二十九年度予算に組み入れたとおつしやいますが、そうなればなおさらのこと、本年度予算はいよいよもつてきゆうくつな予算であつてとうていこれでは今後起るべきところの失業群、あるいは昨年襲いましたところの水害、冷害等における農村の疲弊、そういうようなものをこれで救い得るかどうか。実際に現実問題としてこれでやつて行けるかどうか、この点ひとつ大臣のお考えを伺いたいと思います。
  22. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 さつきのお話からの御関連で、結局今度は現実問題——さつきのはいわゆる概念的な問題でございましたから、ああいうふうにお答え申し上げたのであつて社会保障国家組織あるいは国家政策の当然の帰結として、そこに起つと来るから、どこの国だつてそういう意味においては同様であるという意味で私は申し上げたつもりだつたのでございます。従つて国によりましては、日本は別でございますが、軍備をしながら十分社会保障をやつておりましようし、それはそういう意味で申し上げたのでございます。御了承いただきたいと思います。  そこで今度は来年度一兆円予算実施にあたつては、相当いわゆる低落階級が生じて来て、従つて生活保護対象がふえることが予想されるがという問題になつて来ますが、これは実際のいろいろな今後の行き方、政策あるいは実施条件等によりまして違つて参ると思います。昨日も衆議院の本会議で御質問等がありましたが、それらの状態に即応する一応の準備は、生活保護の方におきましても相当増数考えながら検討はいたしております。しかし事実の今後の動きによりましてこれらの政策は十分検討して行かなければならぬと思つておりますが、ただいまのところでは大体今の見通しではやり得るものとして予算を組んでおる次第でございます。
  23. 柳田秀一

    柳田委員 それはどうも少し甘いお考えでありまして、現に二十八年度現在において赤字が出ておるのだ。これが今の金融引締めあるいはデフレ政策等によつて現に赤字が出ておるのだから、これは当然ふえるにきまつておる。これはやり得るとは思えない。しかし今も多少の増は考えて考慮したいとおつしやつておりますが、きのうも大蔵大臣総理大臣もはつきり言明しましたように、補正予算は断固として組まぬと言うが、生活扶助にしても、あるいは医療扶助にしても、その他児童保護の方にいたしましても、当然増が予想される。児童保護にいたしましても、現在すでに十億の赤字が出ておる。保育所を閉鎖したところも、あるいは保母の賃金すら払つておらぬところもある。あるいはいわゆる公費患者でありますか、全額あるいは一部そういうような負担をする患者はみなオミツトして、まるく自分のところから出せるような、そういうような人ばかりを採用して、何のための児童憲章であり、何のための児童保護であるかというかっこうになつておる保育所すらあるのです。これは現にそういうかっこうになつておる。これが来年度になりますと、児童保護にいたしましても、生活保護にいたしましても、当然対象がふえることはさまつておる。また日雇い健保にいたしましてもそういうような予算の増は当然見込まれる。しかも補正予算は組まぬという、しかも本年度予算は昨年庭、予算と大体同額である。その対象はふえるにきまつておる、これをどうして解決するか、この点ひとつ明確に御答弁願いたい。
  24. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 ただいま申し上げましたように、来年はある程度の増は見込んではおりますが、現に赤字があるではないか。しかしこれは何も二十八年度の十二月までに赤字があつたというのではなくて、年々支払いはあるいは翌月まわし、あるいは翌々月まわしでいたして参りますから、ある意味では従来からずつと続いておるのでございます。急に二十八年度に一ぺんに四十億、五十億赤字が出たという意味じやございません。従いましてそういう状態は同じだと思います。ただ見通しは二十九年度の実際における要保護世帯が急激に増加するかどうか、こういう問題になつて来ると思います。従いまして急激に増加するということは、私どもは実は急激という——数による問題ではございますが、急激とは私は必ずしも考えておりません。しかしながらそういう点に対します方策も十分検討する必要はあると考えております。
  25. 柳田秀一

    柳田委員 もとより赤字は累増のものでありますが、いずれあとで資料を提出していただきたいと思いますが、たとえば医療扶助にいたしましても、最近の医療扶助赤字は、やはりパス、マイシン等が大きく影響しておるのであつて、この赤字累増のカーヴが最近になつて急激にふえておることは、そういう数字を見ればすぐわかるのであつて、単に過年度の赤字がだんだんたまつて来たのだ、同様のカーヴで来たのでなしに、急激にふえております。この急激にふえる趨勢は当然続くと思います。そのときに補正予算は断固として組まぬという。現実予算そのものがなおかつ過年度の赤字を埋めなければならぬのだ、それでは全然財源の出どころがないじやないか、それに対して厚生大臣はどうせられるかということを聞いておる。
  26. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 そのような情勢がかりに今柳田さんのお話のように起るといたしますならば、おそらく私はさきに申し上げたように急激ということは考えられないのではないかと思いますが、ある意味における増額等がありますると、本年度のようにあるいは予備金支出というような方法も考えられると考えます。しかし現在では大体この予算でまかない得る見当のもとに執行をいたして参りたいと考えます。
  27. 柳田秀一

    柳田委員 最後には予備金ぐらいの御答弁になるだろうということは、これも大体予想して質問いたしておつたのでありますが、そこで実際問題として予備金から出すというのは、これは最後の最後のところで、最後ののがれ言葉であつて、この裏をひつくり返してみると、実際にどうにもならぬということである。ここに私は本年度の厚生予算の本質があると思うのでありまして、これは何も大臣を追究するのではなくて、大臣予算編成の途中から御就任になつたので、大臣に対して責任をどうこうというのではないのです。ここに二十九年度の厚生予算の本質があるからこそ私はしつこく問うておるわけです。  そこで本年度の予算を一応見ましてきのうも御説明願つたのですが、大臣御専門の社会行政の方は多少の増になつておりますが、衛生行政が非常にさみしいと申しますか減になつております。癩の方で一億増になつておりますが、そのほかでは結核あるいは保健所、上下水道等で四億ほどの減になつております。私は今のこういうような非常に困窮した日本において、社会行政というものが大きく取上げられることはよくわかつておりますが、今後の厚生行政で力の入れるところは、こういうような社会行政のような、受けて立つというか、どうしてもやらなければならぬ消極的な受けて立つ行政、こういう行政ではなしに、むしろ厚生省の方から進んで立つところの積極的な衛生行政の方にうんと力を入れていただきたい。ことにこの点に関しましては、大臣も従来社会行政の方はおやりになりましたが、衛生行政に関してはあまりおやりになつておらぬので、私は特に申し上げたいのですが、この衛生行政の方はむしろ厚生省の方から積極的に、進んでこういうような明るい文化的な社会を建設するのだというふうに、ひとつ御研究を願いたいと思います。特に上下水道なんかは、一億ほど組んだこの予算で減になつておりますが、上水道にいたしましても下水道にいたしましても、これは今、都市農村を問わず大きな問題になつております。特に私は最近の厚生省のヒットであると言うて山縣大臣にも讃辞を呈したのですが、簡易水道のごときは、農村文化向上のためにはこれくらい最近時宜に適した措置はなかつたと私は思います。これなんかはむしろ厚生省の方から積極的に出されたので、額は昨年度は一億、本年度は四億というようなものでございましたが、二十九年度も大体それにすえ置きになつておりますが、私の参りました農村なんかでは、豆ランプから電燈になつたとき母上に嬉しいと、主婦は泣いて喜んでおる。こういうような面は今後ひとつ、大蔵省は非常にいやがる予算でありますけれども、私はうんと力を入れていただきたい。また今国会に出ております清掃法等に一連の関係があります清掃の問題なんかにいたしましても、屎尿処理問題などにも、最近都市は至るところ困つておるのです。こういうような問題も旧態依然、あるいは立法措置もできておらぬ、従つて国庫補助の道もつかなければ起債もつかない。自治体としても非常に困つておる。都市農村を問わず、特に環境を改善する、そうして疾病をなくする、そうして健康を保持するというような立場でこの衛生行政のごときはうんと推進していただきたいと思うのです。ことに結核などにつきましては、本年度は医療費の減を見越して一億ほど減になつております。なるほど結核の死亡率は減少しておりますが、それは形の上、数字の上で、発病率、罹病率は何ら減少しておらぬと思う。医療費の一億減なんというものは、患者増から見ればゆゆしき社会問題じやないかと思うのです。ことに関連いたしますところの医療扶助がこういうように打切られたりなにかいたしますと、これは当然心ならずも、志途中において療養途中において自分の家に帰る、家族には濃厚感染する、家族感染するというような機会が多くなるのでありまして、医療扶助がこういうように減少されておるということは、今後の日本の結核行政に関してゆゆしき問題になるというふうに考えております。そういうような観点から、今後この衛生行政の推進には、大臣はひとつうんと力を入れていただきたいと思いますが、どういうようなお考えをお持ちになつて今後おやりになるおつもりであるか、御抱負を伺いたいのであります。
  28. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これはまつたく御意見通りであります。従いまして衛生行政にはうんと今後力を入れたいと存じております。
  29. 柳田秀一

    柳田委員 結核の問題に触れましたが、そこで国立病院におきましては結核のベツトは本年度はゼロになつております。他方国立病院の予算を見ますと、整備資金が多少ふえておりますが、こういうような整備資金は従来国立病院は地方に移管するということでほつたらかしになつておりますので、おそらく全体の今まで不完全なところを修理する程度になるんじやないかと思うのです。とうていこの国立病院の整備費等が、そういうような結核のベツト増にはならぬと思うのでありますが、やはり私は結核というようなものこそ医療を国の責任においてやつて行くというような立場から、むしろ国立病院等においてこそ結核病棟の増床を期さなければいかぬのじやないか、これが本年度ゼロになつているのはむしろ時代に逆行するのではないか、こういうようなことは十分お考えおきを願いたいと思うのであります。それから結核にいたしましても、あるいはこの生活保護医療扶助の面にいたしましても、あるいは健康保険にいたしましても、国民健康保険にいたしましても、最近非常に医療費が高騰しております。従つてこれが保険行政あるいはこういうような社会保障行政の面における予算を食う大きな原因になつておるのでありますが、その原因のもう一つ大きなもとを尋ねますと、私は日本の製薬というものがあまりにも無放任に放置され過ぎている。ここに原因の一半があるじやなかろうか。もともと製薬会社は広告費等はわずかなものでありますと言つて発表しませんけれども相当に濫立された乱脈な、いわゆる自由資本主義過程において製造されるところの新薬品というものが、日本の保険行政予算面を、あるいは日本社会保障予算面を非常に食うておる。従つて今後こういうような医療費の高騰というようなものは大きく今後の社会行政全体に響くのでありますが、製薬の経営に対して、何らかの政策なり、何らかの管理を行われる意図があるのかないのか、そういう点をひとつ明確にしていただきたい。
  30. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お話の点につきましてはよく検討いたしてみたいと思います。
  31. 柳田秀一

    柳田委員 これはよく検討してみたい。官庁では、この考えておきましようということは、これは何もしませんという通語である。今よく検討してみたいということは、私は大臣の御人格を信じて、従来の官庁語の考えておきましようというようなことでないように解釈いたしたいと思います。  なおそのほかに社会保障審議会から国民年金の問題が出ております、さらに社会保険の統合の問題も出ております。これは一つの今後の大きな問題でありまして、これに対しても触れたいのでありますが、私一人時間をとりましても何でありますから、これは後日の機会に譲りたいと思います。  さらに目下非常に苦しい経済をやつております国民健康保険その他社会保険の実情、それぞれにつきまして大臣からこの際伺いたいのですが、今は時間が非常に進んでおりますので、はなはだ不本意でありますけれどもこれくらいで質問を打切つておきます。  なお全般の質問を通じて大臣の御答弁を聞いておつて感じたことは、大臣も御就任早々であろうし、あまりここで立入つたことを言つて抜き差しならなくなつても困るというような御心配も多少あられるじやないかと思うのでありますが、やはり先ほど申し上げましたように、厚生委員会は御承知のように他の委員会と違うのでありますから、もう少しなるたけ打ちとけたというか、もう少し虚心坦懐に、率直に、こういうように思う、しかしこういうことでむずかしいのだ、皆さんも一緒にひとつこれに対しては協力してくれ、これくらいの気持で今後この委員会に臨んでいただきたい、かように思うのであります。社会保障はフローム・ザ・クレイドル・ツー・ザ・グレーヴで、ゆりかごから墓場まで、厚生委員会はゆりかごの方の役をする医者もおります、墓場の方は大臣専門のであります。(笑声)首鼠両端せられず、われわれとともにがんばつていただきたい。どうぞそういう意味で大いにこの委員会に顔を出していただいて、ほんとうに党略とは離れて、日本社会保障に前進するという意味から御尽力を願いたい。
  32. 小島徹三

    小島委員長 長谷川保君。
  33. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 今柳田君が率直にわれわれの意見を代表してくれたのでありますが、私も再開国会の初めにあたりまして、どうも厚生行政社会保障の問題は、今度のこのひどいはしにも棒にもかからぬような大蔵原案の出ましたときに、それぞれの方が、また厚生省の方でもいろいろ努力し、党派を越えまして努力をしたというところに率直に現われておりまするように、われわれも常にこの社会保障制度の前進、厚生行政の円満な遂行ということにつきまして協力を惜しまないということはしばしば申し上げた通りであります。そういう意味で、ここは決して変なあげ足とりというような考えはどなたも持つていらつしやらないと思いますので、ただいちずにこの困難な時代にあつて社会保障制度の前進ということを皆さんが考えておられると思うのでありますから、どうか大臣もそういうお考えで、この第十九国会をわれわれとともに力を合せて進んでいただきたい。率直にお伺いいたしますから、また率直にお答えを願いたいと思うのであります。  まず第一に、今二十九年度のこの予算は、非常な御努力によつてあの大蔵原案がひつくり返つて参りましたけれども、しかし率直に言つて、この二十九年度の厚生行政は前進であるか、後退であるか、どうお考えになるか、率直にお答えを願いたい。
  34. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 長谷川さんのただいまのお言葉、まことにありがたいと存じます。厚生委員長初め厚生委員の皆さん方が、日本社会行政の進展のために大いに力を尽してやるから、ひとつ今後率直にお前も手をとつて行けというお言葉に対しましては、衷心より感謝をいたします。  そこでことしの予算は、柳田さんからもいろいろお話がありました通りに私どももこれで最善とはもちろん考えておりません。しかし前進はしておると思つておる、決して退歩しておるとは考えておりません。なお今後のこれが運営にあたりましては、その前進を一層十分にすることができる、かように考えております。
  35. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 そういたしますと、まず具体的な問題といたしまして、先ほど柳田君も言われました生活保護関係の問題、あるいは児童保護関係を考えましても、本年はわずかに生活保護におきまして十五億円ばかり、児童保護におきまして三億七千万ばかり、表面から見ますとふえておりますけれども、しかし実際におきましては、一方から申しますと、今年度の赤字というものが相当見込んであるということを仄聞するのでありますけれども、その額によりましては、実は後退をしておるということになると思うのであります。小さい数字を伺つては恐縮でありますが、二十九年度予算生活保護あるいは児童保護予算の中に、二十八年度の赤字をどのくらい見積つてあるのでありましようか。
  36. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 その数字はあとで事務当局からお答え申しますが、少し見込んでございます。
  37. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 私の仄聞しておりますところでは、このふえました額よりもよほど多いように伺つております。事実はもつと多くなりはせぬか。厚生省の予想よりももつと多くなるのではないかと思うのです。そしてインフレが進むにいたしましても、デフレ政策を強行するにいたしましても、どつちからも、残念ながら生活困窮者が相当出て来るというのが今年の事情であると思うのであります。そうして万やむを得ないときに予備金で行くといたしましても、予備金がこの方面に使われますのは三十億を越えることはできなかろうというように考えるのであります。そういたしますと、実際におきましては、やはり相当後退するというように、私どもいただきました予算書等におきましては考えられるのでありますけれども、どこかここのところでこういうようにやつて行けば、ここがつじつまが合つて行くのだというような、何か特別な問題があるのでありましようか。大臣はどこをねらつて前進をしていると言われるのでありましようか、伺いたい。
  38. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは生活保護のいろいろ具体的な面からの御質問でございますから、昨日来予算の説明等でも一応はお話申し上げましたが、また予算面において御答弁をさせていただくことにいたしまして、全体から前進したと私申し上げましたのは、御承知のように、本年度はどうしても一兆円でひとつ緊縮政策をとつて行きたい。従いまして、全体としては相当押えて参つたのであります。各省関係におきまして相当圧縮をして参りましたが、先ほど来のいろいろ御意見にありまする通り社会保障あるいは生活保護その他におきましては、むしろ押えるよりも前進して行かなければならないという立場においてこの予算を組んだ点を御了承いただきたいと思います。
  39. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 大臣のお考えでは前進したと考えられるが、私ども考えでは、事実はどうもそうでないと考えるのであります。これは見解の相違といえば相違でありますが、数字から行つて、どうしてもそう出て来ないと考えます。この予算書の表面に出ていない、裏に何か特別なあやがあればともかくといたしまして、この数字だけから行つたのでは、どうしても前進をしないと思います。事実は相当後退しはせぬか。事実厚生省の第一線におきましては、たとえば生活保護の打切りがすでに相当強く行われて来ている、あるいは病院、療養所等におきまする付添婦の打切りというものがすでに相当出て来てしまつている。でありますから、この数字だけでどうしも押して行くとなれば、実際におきまして−なるほど表面ではさほどには見えなくても、実際の生活保護社会福祉の第一線におきましては、先ほど柳田君からもお話がありましたように、保育園を初めといたしまして、みな実際に国家責任を持つて保護の手を伸ばさなければならない国民一人々々の基本人権というものが、実際におきましてはここでもう切り捨てられて来ているという事実がすでに起つて来ていると思う。そういうふうに私どもは耳にしているのであります。そこで私は心配をいたしましてどうもこの表面の数字からだけではそういう結果になつて行くということを考え合せまして、今伺つているのでありますけれども、この生活保護もしくは児童保護の運営について、厚生省に何か相当大きな新しい方針があるかどうか、どうもあるに違いないと私ども見るのであります。それが実際問題として基本人権を切り捨てて行くようなことになるということを私どもは心配して、大臣の今年の大方針をここで伺つておきたいと思います。
  40. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お話の、予算の裏に何か隠れた魔術でもあるのかというような意味のこと、あるいは予算執行について新しい考え方があるかどうかというような意味考えられるのであります。予算執行にあたりましては、もちろん現在の生活保護法等々によつて予算は組んであるのでありますから、これを実施する上におきまして十分検討し、その遺漏なきを期して参りたいと存じております。従いましてこれらの執行におきましても、従来の経験等を十分検討いたすことはもちろんでございますが、何かまたお気づき等の点がありましたらお聞かせいただく機会を得たいと存じております。実際の問題では、国民にいかにも後退したような感覚を与えるというようなことでなしに進んで行かなければならない。従いましてそういう意味におきまして今後御協力をいただきたいと存じます。
  41. 小島徹三

    小島委員長 長谷川君に申しますが、大臣は十分前か十五分前に本会議に入らなければならぬということでありますから……。
  42. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 それではもう一点だけ聞かしていただきたいと思います。  時間がないようでありますから、次のことはまた次の機会に伺うとしましてもう一つ、大方針をひとつ伺つておきたいことは、国立もしくは公立の社会福祉事業あるいは医療事業等と、私立、公益法人等の社会福祉施設及び医療事業、こういうものについて大臣は、今後どういう方針でこの二つの類型のものを扱われて行かれるか、その方針を伺いたい。
  43. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは従来からたいへん大きないわゆる根本の問題だと存じますが、あるいは全部公立が妥当であるというお考えの場合もあるし、あるいはそれでは適当ではないという考えのこともあります。私はやはり私立は私立としての特長、いいところがあるのではないか、従つてこれをどういわゆる近代的な時代的なものとして十分育成発達するように国家が力を注ぐかということについては十分検討してそうして御協力を申し上げる態勢をとつて行くべきものものではないか、かように考えるわけであります。
  44. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 そこで、今度の予算を見ますると、全国の社会施設事業関係の非常に要望しておられましてまた長い間の要望の結果から、どうやら前国会で芽を出しました社会福祉事業振興会への政府の出資金、これが本来、初め法律をつくりますときには五十億円を期待しておつたのでありますが、それが御承知のように三千万円になつておる。まあこの三千万円になるにつきましても皆さんの御努力があつたということもよく知つておりますけれども、こういうことになつたのでは全国の私設の社会福祉事業はどうにも泣きたくても泣けないというかっこうになり、また実際その事業の運営に非常なさしつかえを来すわけであります。また医療金融の面もさつぱり進みません。どうもいまだにどう目鼻がつくやらわからぬというようなかつこうであります。これらにつきまして大臣は、今後どういうような方針で進まれるか、もう一言伺いたいと思います。
  45. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 医療金融のことは、実はこれは直接予算面には現われておりませんけれど、従来のように中小企業金融公庫等におきましてぜひわくを設けてやつて行きたい、その方針で関係省と連絡をいたしておるわけであります。  それから、お話社会福祉事業振興会等の資金でございますが、これはできまするならば、国力が許しまするならば、希望通り予算を計上して行きたいと私どもも熱望をいたしております。しかしこの事情は十分御承知のようでございますが、三千万円にいたしましてもぜひ本年度これを計上する、たとい少額でありましても計上しながら、今後の万全を期して行きたいという熱望を持つて、金額は少額ではございまするが、これが三千万円を計上いたしたような次第でございます。この点御了承をいただきたいと存じます。
  46. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 時間がありませんから、あとの質問は留保いたしまして、これで終ります。
  47. 小島徹三

    小島委員長 山下春江君。
  48. 山下春江

    ○山下(春)委員 時間がないので簡単に大臣にお尋ねをいたします。  先ほど大臣がおつしやいましたように、一兆億の予算を組む、国際収支のアンバランスを調整する、また政府が重ねて言明されるところによれば、補正予算を組まないという、今年度の日本の状態というものは容易ならざるものだと思うのでありますが、そういう状態から考えまして起るであろう社会情勢を想像いたしますときに、厚生行政というものは非常に重大な部門になると思うのであります。ただいま同僚委員から、大砲予算だというようなお言葉もあつたのでありますが、少くともことしの厚生行政というものは、現内閣の中におきまして非常な大きなウエートがなければならないと思うのであります。これは国民に一つの安心感を与える意味においても、厚生省がすみつこの方にいるようなことでは、ことしはとてもしのげないと思うのであります、そういう点から、現内閣厚生行政というものに対してどういうふうに重点的に考えてくれているか。現政府の厚生行政に対する心構えを、大臣が想像された点に対し、新しい年度でもありますし、新しい抱負をお持ちの新大臣に今年度行わるべき厚生行政の現内閣の中におけるウエートというものについての御決心をお伺いしたいのが第一点であります。  時間がありませんから続いて申し上げます。第二点は、いろいろな厚生行政中、どれも大事でございますけれども、どうしてもこういう年には、たとえば軍人恩給とか、あるいは社会保険が林立しておりますが、これらのものに対して前大臣も非常な熱意をお持ちのようでありましたが、できるだけすみやかに統合整理をいたしまして、厚生年金その他に統合いたしまして——たとえば厚生省の方から言われれば、今年のいわゆる軍備費に使つている費用よりもむしろ上まわつているという説明をされましても、さしあたり厚生行政が七百幾億しか使つていないような数字が出るために、これらはすべていわゆる社会行政的に使われておるにもかかわらず、国民にぴんと来ない。こういう点は、どうしても厚生省が将来できるだけすみやかな機会に統合整理をいたしまして、厚生行政の強力な一線を打出される必要があろうかと思いますが、そういう点に対しまして大臣はどういう御決意をお持ちになつているか。  それから今度の予算では、政府も説明いたしておりますごとく、住宅などに対して相当重点を置いているようであります。しかしながら建設省にありますと、どうもひもつきその他で実際に住まわせなければならない人には容易にこれが当らないというようなことがこれまでの長い間の社会の実情でございますから、これはどうしても今後厚生省が庶民住宅というものは監督し、厚生行政の一環の中にあるべきものだと思つております。同様な意味で、たとえば学校給食のごときものも、これは農林省と文部省との持合いみたいなものでやつておられますが、これはまことに不徹底なものでございまして、これらの行政も当然社会保障一つの線として厚生省が所管すべきもののように思います。ただちにはならないとしても、そういうお心組みがあるかどうか。  それからたとえば軍人恩給の関係の中に、あの恩給局のかちかちの頭ではとうていこれはこなして行けないケースがたくさんございます。例を申し上げる時間がございませんが、それらの問題は、やはり厚生省が扱つて行くことが、最も円滑にそれらの不平に対してこたえ得る一つの施策が出て来ると思いますが、そういうものに対しての援護措置、例を一つ申し上げますが、たとえば巣鴨の戦犯の今八百人ばかり残つておられる方々が、つい二、三日前にあの巣鴨委員会を解散するかどうかという全員投票をいたしました。幸いに残しておく方に投票が多かつたのでありますが、これはどういうことかと申しますと、これは捨てばちでやけになつておる、お互いに一人々々の行動で、一人々々が政府対一人で行こうという雲行きのようでありましてこれは私ども今までしんぼうしながらと思つて、非常に残念な気がいたしましたが、幸いに結論は存置するという票数が多かつたのでありますが、これらの人はもはやあきらめておりましてことしは釈放ということに行かないで、ひとつ援護の方に強力に働きとかけよう、こういう考えを持つております。内閣全体の、あるいは外務省、法務省その他のいろいろな業務がありましようが、これらの点も厚生省で引取つていただいて、厚生省の方で援護の面で、これらの人々のいらいらしております気持を押えていただけば、非常に大過なく済むと思うのであります。それからたとえば日雇い労働者の中からも漏れた、あるいはその地方の国民健康保険もまだ完備していないという場合に、結核患者についておる付添い看護婦だとか、あるいは助産婦だとか、それらの社会保障の線から漏れております者たちが大同団結いたしまして、何か国民健康保険の恩典にあずかりたいと非常な努力を傾けておりますが、いろいろな観点からこれらもまだ救われておりません。そういつた広い面で、今の助産婦とかあるいは付添い看護婦などが日雇い健康保険からも他の健康保険からも漏れておるというような問題を持ち出しましても、これを今大臣にどうしてくれということを私は言うのではありませんが、これらの問題も将来はいろいろなばらばらの線ではいけないと思うのであります。それでとりあえず今年度押し寄せて来るであろう、いろいろな問題が起るであろう社会情勢から、こういうものに対してどういうふうに処して行こうとお考えでございましようか。それらの問題についてお答え願いたいと思います。
  49. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 山下さんの第一の厚生行政に対してどういうふうな考え方を現内閣は持つているか。これは私の感じ、また受けておりますことからひとつ率直に申し上げてみたいと思います。現政府は厚生行政社会保障に対しましては、最もこれを重点の中心に置いてやつておると思います。ことに二十九年度の予算におきましては、この厚生行政予算そのものは、あるいは前年度と比べますると、飛躍の度が——もつとジヤンプした方がいいのではないかということになつて参りましようけれども、全体の今申しました一兆円のわく内におけるジャンプの度合いということをごらんいただきますと、おそらく厚生行政くらいが頭を出して一歩ジャンプしたので、あとは足踏みの状態にあるというくらいに重点を置いておる。どうぞひとつこの考え方を御了承いただきまして、皆さん方の御協力を賜わりたいと思つております。  それから年金の統合あるいは保険の統一というような問題につきましては、これはいろいろな面でなかなか困難ではありましようが、私ども強くこれを考えて、従来から私も厚生委員として強く主張して参りました点でございます。十分こういう点は御意見を尊重して参りたいと思います。  それから住宅その他の援護関係は、これは当然厚生省が一つの何と申しますか、指導権をとるなり、あるいは行政のもう少し統一ある行き方をするなり、ことに児童に対しまする、あるいは給食なりその他の援護的な立場からのやり方というものは、むしろある意味におきましては、統轄した行き方が必要ではないかとさえ私は考えております。従いまして、この点も私ども十分御意見を尊重いたしまして、今後努力をいたしたいと思つております。  なお派出看護婦なりあるいは助産婦なりその他の国民健康保険でありますが、漏れている方、また未組織の方々に対しましても近くいたしたいと考えております。どうぞそのときはよろしくお願い申し上げます。
  50. 山下春江

    ○山下(春)委員 今の大臣お答え、現内閣厚生行政に最重点を置いているという御答弁で、ございました。どうかそれを名実ともに自負されまして、自信をお持ちになりまして、とかく今年はいろいろな不安な条件が社会にたくさん惹起するものと思いますので、厚生省は強く国民の前にその自負をお持ちになつて臨まれんことを希望いたします。
  51. 高橋等

    ○高橋(等)委員 いろいろ伺いたいこともあるのでございますが、非常にお急ぎのようでございますから、さしあたつての問題を一件だけ申し上げまして、大臣の処置をお願いしたいと思うのであります。それはただいまいわゆる軍人、遺家族等に対しまする恩給が裁定を進められている最中でございますが、援護法ができまして一年八箇月の現在、まだ未処理のものが相当あるのでございます。これは非常に努力をされておりますし、いろいろな露があることもわかつておりますが、こんなことで今度軍人、遺家族の恩給裁定でまたひまがいることがあつては私はたいへんだと思います。それの隘路の一環としましていろいろ申し上げたいことがあるのですが、さしあたつての今日の問題としては、今府県におきまして世話課がいろいろとこれを受理して盛んに中央へ書類をまわしている最中であります。あるいは府県の地方事務所その他が盛んに処理をやつておる最中であります。ところがこれらに対しまする事務費が非常に少い、これが私は現在の大きな隘路になつておると考えております。いろいろな今年度の予算の関係もあり、もう使い果されておる点もあろうかと思いまするが、できるだけ金を集められまして、この事務費を至急にひとつ各県へやつていただきませんと、せつかくの大衆の要望に沿うことができぬのではないかと思いまして、この点を特にお願いをいたし、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  52. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 実はお話通り未裁定がまだ六、七万ぐらい残つておりますし、それに合せて新しい恩給法の改正による給付、しかもこれが厚生省経由ということになつておりますので、これは何とかして早くしたい。最近特に聞きます話の中の多くの部分——お話の事務費等も、あるだけをさらえて地方を督励いたしたいと思つております。
  53. 小島徹三

    小島委員長 この際岡委員より議事進行に関する発言を求められておりますのでこれを許します。岡良一君。
  54. 岡良一

    ○岡委員 先ほど来大臣とのいろいろな御質疑、御答弁があつたのでありますが、大臣の御答弁によれば、厚生省の本年度予算相当飛躍をした、こういうような御意見でありましたが、事実をもう少し資料をいただいて私どもの参考にいたしたいと思うので、議事進行の名のもとに資料の御提出をお願いしたいと思うのであります。その資料の内容は、昭和二十九年度予算要求額調、厚生省という、この文書の中で、一体おもなる厚生省の執行さるる行政の中で、生活保護法とか、社会保険関係とかの中において、固有な事業費として本年度新たに拡大された予算部分が一体どの程度であるのか、また必要なその内訳をお願いいたしたいと思うのであります。また総額といたしまして、一般会計においても二十億余の増になつておりまするが、この増の中でベース改訂に伴う給与費の増、それと切り離した固有な事業費の増というもののつり合いはどの程度になつておるのかという点、それから仄聞するところによれば、定員法も提出をされるかのように伝えられておりまするが、この予算の中に厚生省の機構改革、またそれに伴う定員の減というものが含まれているのかどうか、またいるとすればどの程度、どの局、部、課においてそれが見込まれておるのであるか、こういうような関係の資料の御提出を願いたい。
  55. 小島徹三

    小島委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は追つて公報をもつて御通知いたします。    午後零時一分散会