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1954-05-21 第19回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十一日(金曜日)    午前十一時四十八分開議  出席委員    委員長 森 三樹二君    理事 大村 清一君 理事 鍛冶 良作君    理事 田嶋 好文君 理事 高瀬  傳君    理事 島上善五郎君 理事 竹谷源太郎君       小澤佐重喜君    尾関 義一君       中川 俊思君    丹羽喬四郎君       橋本 龍伍君    長谷川 峻君       羽田武嗣郎君    葉梨新五郎君       原 健三郎君    松山 義雄君       亘  四郎君    河野 金昇君       中嶋 太郎君    並木 芳雄君       飛鳥田一雄君    石村 英雄君       杉村沖治郎君    鈴木 義男君       三輪 壽壯君    川上 貫一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         法制局次長   林  修三君         自治政務次官  青木  正君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      金丸 三郎君  委員外出席者         衆議院法制局参         事         (第一部長)  三浦 義男君     ――――――――――――― 五月二十一日  委員綱島正興君、中川俊思君西村直己君、原  健三郎君、吉田安君及び加藤鐐造君辞任につき、  その補欠として亘四郎君、長谷川峻君、葉梨新  五郎君、小澤佐重喜君、中嶋太郎君及び竹谷源  太郎君が議長の指名で委員選任された。 同日  竹谷源太郎君が理事補欠当選した。 五月二十日  公職選挙法の一部を改正する法律案館哲二君  外二名提出参法第一二号)(f) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第七号)     ―――――――――――――
  2. 森三樹二

    森委員長 これより会議々開きます。  最初にお諮りいたします。理事補欠選任についてでありますが、理事でありました竹谷源太郎君が昨二十日委員を辞任されておりますので、理事が一名欠員になつております。それで、その選任について、投票の手続々省略して、委員長より指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森三樹二

    森委員長 御異議がないようでありますから、それでは委員竹谷源太郎君を理事に指名いたします。
  4. 森三樹二

    森委員長 この際御報告申し上げます。理事会申合せによりまして、時間の関係上、質疑時間は全部で四時間、一人大体二十分内外とし、討論採決に一時間ということになりましたから、さよう御了承願います。  なお、念のために申し添えますが、先例によりまして、質疑の時間には答弁の時間も含めることにいたします。
  5. 森三樹二

    森委員長 昨日に引続き、公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出第七号)を議題といたしまして質疑を続行いたします。質疑は通告順によつてこれを許します。石村英雄君。
  6. 石村英雄

    石村委員 修正案提出者鍛冶さんにお尋ねいたしますが、先日の御説明で、こういう修正が出た理由B案によるのだというのですが、考え方として住所については民法規定と一致させるのだというようなお話つたのですが、そうなんでしようか。私の聞き間違いなんですか、どうですか。
  7. 鍛冶良作

    鍛冶委員 大体そういう方向に向いたいという趣旨からやつたのであります。
  8. 石村英雄

    石村委員 法律は私はあまりよく知らないのですが、民法住所とは生活本拠を言う、こういうことだと思うのですが、そういたしますと、民法と一致させるといつても、学生生活本拠郷里にあるのだということは、民法はつきり書いてあるわけではないのですが、生活本拠郷里にあるのだといりお考えはどういうところから出て来るわけですか。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは原則論でありまして、原則といたしまして永久にこちらにかわつて来るという考え方ではない。勉強が済めば帰るというのが原則であるわけです。こういうことから、いまだ住所は移つておるとは認めない、従つて生活本拠が移つておるとは認めない、従つて住所も移つていない、こう認めることが原則としてよろしい。但し、これからもずつと東京におるのだという主張をし、それに沿うた手続をして来られるなら、これは拒むことは必要ない、こういう考え方であります。
  10. 石村英雄

    石村委員 学生修学東京なら東京に出て来ておるのだ、学校が済めばうちへ帰るのだ、こういうお考えなんですが、しかし大体学校が済めば就職で郷里に帰るということはむしろ少いのじやないかと思います。大部分学生が必ず郷里に帰るときまつておるのではなくて、大部分郷里に帰らないようにきまつているのじやないかと思うのですが、いかがですか。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員 大部分がそうとは考えませんが、私はもうこれから東京へ来て、東京でずつと就職するつもりだ、従つて住民登録もここでやつてここに住みますと言えば、それは拒みません。ですから、ほとんど実質においてはかわりのないものでありますから、理論の立て方だけの問題です。
  12. 石村英雄

    石村委員 その理論の立て方というのが私にはわからないのですが、結局、鍛冶さんの考え方からいつても、生活本拠はどこにあるかということを判定するのが問題だと思うのです。しかし、学生修学に来ておるのだから学校が済んだら帰るのだ、という理論の立て方というものはどういうわけなんですか。現在学生が住んで社会生活をしているところが将来かわるであろう、これは必ず郷里に帰るであろうという推定のもとに、そういう理論が立つのですか。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その通りです。
  14. 石村英雄

    石村委員 学生修学が済んだら帰るだろうという推定は、むしろ実情に沿わない推定ではないでしようか。鍛冶さんはそういう御推定なんでしようか、一般的に言いまして、学校を出たら必ずどこかに就職する。失業すればうちへ帰ることもあり得るでしようが、大体の学生親元には帰らない。東京に住むか大阪に住むかどこかわかりませんが、郷里でない方が原則じゃないでしようか。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これ以上は議論になりますが、あなたの言われるどこかへ住むだろうということでは、今おるところが住所とは言われぬと思う。どこかに住むということがきまるまでは一応郷里に帰ると見ておる。また一般常識もさようだと信じております。
  16. 石村英雄

    石村委員 将来のことは、だれだつて、どこへ行つて住むかなどということはわかりやしない。きよう東京に住んでおつても、また二、三日たてばどこへ行くかわからないので、現実のその人の生活中心がどこにあるかということが問題じゃないかと思うのです。鍛冶さんの郷里にあるという前提は、これは民法と一致せるというお考えですが、私は、民法に一致させても、生活本拠はどこにあるかという判断が問題になつて来ると思う。民法には必ず郷里にあるということが書いてあるわけではないし、昔のように住所本籍地にあるということになつておれば、これは本籍地だということになるのですが、現在の民法本籍地というようなことは書いてないと思うのですが、いかがですか、
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 結局生活本拠とは何ぞやということなんで、どうも議論になりますが、居所というものと住所というものは根本的に違うものである。この頭から考えてもらえば納得が行くと思います。これは納得せぬと言われればしようがありません。
  18. 石村英雄

    石村委員 居所住所とは区別があるのだ、それで住所郷里にあるのだという鍛冶さんの判断であるということに尽きてしまうように思うのですが、ところで、この点については、政府原案に対しても十分に鍛冶さん初め皆さんは政府お尋ねにたつておる。それは、政府原案民法生活本拠なさすのかどうかという質問があつて政府答弁では、何も選挙権についての特別な住所考えたのではないのだ、生活本拠という考え方で、学生生活修学地住所があるのだ、学生生活本拠修学地にあるのだという答弁が、政府においてずつとなされておるわけですが、この点、塚田さんがまだお見えになつておりませんが、昨日でしたか一昨日でしたかの塚田さんの答弁は、ごくあいまいなんです。どちらでもいいのだ、修正されればそれでもいいのだという御答弁つたのですが、今までの四日間にわたつて政府原案答弁を繰返して読んでみますと、決してそんないいかげんな答弁にはたつていないのです。政府としては、学生生活本拠修学勉にあるものが大部分だ、そこで推定をしたのだ、しかし具体的な場合には必ずしも修学地にあるということは言えないから、みなすということにしないで、推定にして、いささか弱い推定規定を置いた、根本考え方学生生活本拠修学地にあるのだという答弁になつておるのですが、いかがでございますか。
  19. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 住所考え方は、ただいまいろいろ質疑応答が行われましたが、政府におきましても、住所根本考え方は、生活本拠である。これは、民法なり公職選挙法なりあるいは地方自治法なりの住所というものは、みな同じ考え方に立つておるのであります。従つて住民登録法という法律において、一つ住所を押えまして、その住所を他のあらゆる住所に関する事柄にも適用しよう、こういうことになつておるわけでありますから、現行法制の建前といたしましては、やはり住所公私法を通じて一つである。こういうふうに思つておるのであります。  それから、学生生活実態から、郷里住所があるのかあるいは勉学の地にあるかという実際上の問題といたしましては、婆するに今の生活本拠がどこにあるかという解釈の問題になろわけでございまして、さればこそ、現実認定と実際の問題との間にいろいうの紛議があつたわけでございまして、これは、従来自治庁等考えて参りました案は、どちらかと申せば郷里にあるというふうに考えて来たわけでございますが、先般の選挙制度調査会審議並びに答中の際におきまして、学生生活実態もさることながら、選挙権行使便宜というようなこと、あるいは最近の家族生活の状況というようなことから、どちらかと申せば勉学地原則にした方がよい、こういう答申があつたわけでございまして、政府はその答申従つて立案をいたしたわけでございますが、しかし同時に、反対原則な立てるということも、一つ意見として選小制度調査会にあつたわけでございます。昨日大臣からいろいろお話のありました点は、それら両案に関連なして御答弁があつたことと考えておるのであります。
  20. 石村英雄

    石村委員 もちろんこの住所判断についてはいろいろな意見があると思うのです。また、あるからこそ、鍛冶さんの修正案も出て来たと思うのですが、しかし、政府原案に対する説明な読んでみますと、従来の学生生活本拠というものに対する考え方がわかつておるということがはつきり言えるわけなんです。たとえば、金丸政府委員答弁でも、「立法的にも、この際、現住地において市民生活な営んでおるならば、そこに生活本拠があり、従つて住所があると推定していいのではないか」云々とありまして、政府考えとしては、両方意見があつたのだが、まあ便宜的に片方取つたのだというのではなしに、学生生活本拠修学地にあるのが原則だ、こう判断したのだという答弁になつてつて生活本拠に対する考え方はどちらでもいいんだが、ただ選挙権行使便宜意味修学地にあるというようにしたのではないという答弁なのですが、ただいまの御説明及び塚田さんの御説明は、その点が従来の答弁とは考え方が違つておると思うのですが、いかがですか。家族制度の時代には、学生生活本拠家族、親のおるところにあるというような考え方もあつたのだが、今日の憲法なり民法たりのもとにおいては、そうした考えでなしに、学生現実社会生活を営んでおるところが住所であると判断すべきだという御答弁なのです。そういう根本的な考えの上に立つて――但し一概にすべての場合がそうだと言うわけには行かないので、郷里がすぐそばにあるとかいうふうなことで、具体的にそれを一々見ると、修学地、すなわち下宿しておるところにあるとは言い切れない場合もあるから、みなすということにしないで、推定にして、そうしてこれをああいう非常に弱い推定にしたのだという御説明なのです。考え方根本はそこにあるので、便宜上やつたのではないと思う。私もこの点については念な押して聞いたのですが、やはりそういう御答弁です。決して鍛冶さんのようなお考えでもないという答弁つたのですが、その点はどうですか、
  21. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 先ほど申し上げましたことは、要するに、選挙制度調査会答申趣旨従つて政府としては今回の改正法な提案いたしたわけでございまして、選挙制度調査会においても、従来のこの扱いは現行法解釈としてはやむを得ないが、現在における学生保安隊員等生活実態にかんがみて、これらの岩の選挙権行使及び住所認定を容易ならしめるために、かような案が適当であると思うというふうに答申をしておるわけでございまして、その趣旨に従つたわけでありますが、学生住所実態がどうであるかということは、やはり勉学堀郷里のいずれにありますか、実際問題として判定に苦しむ場合が相当多いと思うのであります。そこにこういうような推定規定を置く理由があるわけでありますが、その推定規定を置きます場合に、いずれを原則に立てるかということは、それぞれ御見解の相違もあろうかと思いますが、政府としてはこの調査会の答中の線に沿つたということを申し上げておるわけでございます。
  22. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私もそのあなたの質問のときに立ち会つてつたのですが、政府で川しました以上は、いい案の力を推薦するのが当然だと思います。ところが、いずれを聞きましても、これは便宜論から来ておる。私は、法律なのだから便宜論ではいけない、やはり原則を立てなければいかぬというところから来ておる。審議の結果なおさらそういうことは正当であると考えたのです。そこでなお便宜論もわれわれ考えないでもありませんけれども、これあるがゆえに非常に不便になるとか、選挙権が制限されるなどとは私は考えない。私はそういうことを言う人の気持がわからない。それから、先ほど言われるように市民生活がそこに移つたということ、これは推定も何もないと思う。そこに市民生活移つたというのは、生活本拠がそこに移つたということで問題はないので、その点がなおはつきりしないものは郷里にもると推定することの方がいい、こういうことなのですから、そこからわれわれは出発しておるわけであります。
  23. 石村英雄

    石村委員 鍛冶さんのおつしやることは私もよくわかるのですが、しかしそこはやはり意見相違ということになるかと思うのであります。市民生活がそこに移つたのだということがはつきりしておるならば、そこでよろしいというお考えなのでしようが、しかし、考え方根本的に――学生市民生活中心郷里にある、こう原則的に言う判断と、修学地にあるという判断とは、やはり違うと思うのです。一般的に学生生活本拠はどこにあるかと考えたときの考え方が、政府答弁では、――これはわれわれの解釈もそれと同じなのですが、学生市民生活本拠というものは修学地にあるのだ、学生というものの生活実態から考えて、原則的にはそれは修学地にあるのだ、しかし具体的な一々の例な引くとそうでない場合もありましようが、大部分修学地にある、こういう判断のもとに私は政府原案は出ておると思う。またそういう説明つたのです。しかし鍛冶さんの修正案は、そうではなしに、学生市民生活中心原則的に郷里にあるのだ、ただ具体的な例の場合に修学地にある場合があればそれはそこでよろしいのだ、これは当然なことだという御説明だと思うのです。しかし、政府原案の出たころの考え方は、学生市民生活中心原則的には修学地にあるのだ、決して便宜的に修学地にあるとしたのではないというのが、従来の政府説明なのです。そうすると、あなたの考え方政府考え方反対になつておると思うのです。その点、私は最後のところでも申し上げたのですが、私の、この法律は、結局学生住所というものが修学地にあるという考えから出ておるので、通達の出たときの政府考え方とはかなり違つて来たと思うのだが、そうした解釈通達を今後もやはりお出しになるのかという質問に対して、基本的に従来の学生住所考え方がこの法律によつてかわつて来るということは当然であります。こういう答弁をされておる。それからまた、私が、希望として、この改正法律というものは、選挙権行使たんか便宜的な意味でこういう法律ができたというよりも、学生、生徒の住所というものの考え方が今までとかわつておるということが根本のものだと思いますが、通達の場合、そういう便宜的な規定考えないように、根本的に考えがかわつて来たということなはつきり通達していただくということな念のために申し上げたのですが、それに対して、私どももそういう考えでありますという答弁なんです。考え方鍛冶さんの意見とは正反対になつておる。そういうこと々政府は今まで認めておいでになるわけであります。ただ、選挙制度調査会答申があつたから、その答弁原案なとつただけだというのでなしに、はつきり政府考え方学生生活本拠修学地にあるのだという考え方に立つて、この原案は出たという御説明なんです。その点塚田さんは、昨日か一昨日か、はなはだあいまいな答弁をたさつたのですが、今の答弁はその通りなのでおりますか。
  24. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これは学生生活本拠がどこにあるかということが言えるたらば、法律も何もなくてきまつてしまうのでありまして、それは問題にたらないのであります。親元にあるというたらば親元選挙権があることになりますし、下宿先にあるというならば下宿先にあるということになる。ところがこれは実際問題としてはなかなか判定がむずかしい。ただ、その現実の状態なじつと見ておりますと、昔よりは下宿先にある事例がだんだん多くなつて来ておるということは考えられる。そこで、私どもとしましては、どちらかに法律できめていただく方が問題が起らないし、また起つた場合の判定基準はつきりして来るからいいということで、法律できめるということがぜひ必要である。そこできめる場合にどちらに重点を置いて考えるかということにたると、最近大分下宿先学生本拠がありと考えられるような事例が多くなつておると想像されるので、そちらに重点を置いて行こう、こういう感じが私ども原案提出いたしましたとぎの気持なのであります。どこまでも推定でありますから、それと別の場合があり得るわけでありまして、結局実態はどちらの事例の力が多くたつておるかということが一つ判断基準である。それで、むしろ下宿先にある方が選挙される場合に便利でもあるだろうということが、政府原案を決定される場合の基準になつておるわけであります。
  25. 石村英雄

    石村委員 ただいまの御答弁だと、結局学生生活本拠は、大部分というか、とにかく修学地の方が多いんだ、そこで推定規定として修学地に置いたということだと解釈するのですが、その考え方鍛冶さんの考え方とは正反対だと私は思うのですが、鍛冶さん、いかがですか。
  26. 鍛冶良作

    鍛冶委員 政府考え方はどうであろうと、これは原案が出された以上はそう説明されるのはあたりまえなんです。そこでその説明を聞いてみますると、根本論じやなくて便宜論である。そうしてみると、こういうことはいかぬ。便宜はわれわれも考えるのだが、便宜ばかりでやるべきではなくて、法律は何といつて基本原理から立てて行かなければならぬ。その基本原理をここできめておいて、なるべく便宜を妨げないように考えて行くときに、これは妨げにたらぬ、こういう確信を得たからわれわれはこの修正案を出した、こういうことであります。
  27. 石村英雄

    石村委員 どうも、鍛冶さんの言うのは、従来の質問から考えましても、政府考え方便宜論だということが根本になつておるようですが、しかし、ただいまの塚田大臣の御答弁では、便宜論根本になつておるのではないのであります。昔は郷里にあるというようなことも多かつたろうが、現在は学生生活本拠修学地にある場合の方が多くなつた。そういう根本的な考えの上に立つて便宜論が出て来た。便宜論根本ではないわけであります。これはただいまの塚田さんの答弁もそのように解釈しますが、従来の答弁も大体今のようた答弁つたのですが、鍛冶さんはいつも便宜論根本になつて出たというような判断をされております。今の塚田さんの御答弁を聞いても、便宜論根本になつて原案が出たとは解釈できないのでありますが、いかがですか。
  28. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 便宜論だと言われてもさしつかえないと思います。事実法律でもつて住所をこちらにきめてしまうということでない限りは、法律ではきまるわけではないのでありまして、どちらにきめてもよいが、比較的こちらの事例が多いだろうということに推定するという形でありますから、便宜論だと思います。ただ、最近そういうものが多くなつて来ておりますから、そちらに重点な置いた、こういう考え方であります。
  29. 石村英雄

    石村委員 便宜論でもよいという御答弁が出て来たが、便宜論というのは選挙権行使便宜だという考え方から出たと思いますが、塚田さんのお話はそうではないのであります。選挙権行使便宜のためという便宜論ではなく、住所判断便宜だ。どちらでもよいけれども、こうきめたら簡単にけりがつくという便宜論だ。今までわれわれは、便宜論といつた場合には、選挙権行使便宜だと判断して、すべて論議を進めて来たのでありますが、ただいまの塚田さんの答弁判断についての便宜論だということですが、そうたんですか。
  30. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 便宜論というのはどういう意味かというお尋ねでありますが、繰返して申し上げておりますように、住所実態はこの法律をつくることによつて少しもかわるわけでもないし、それから実態の認識が最近は下宿先にあると認定しなければならないような事例が多いだろうからして、どちらにあるかということ々法律できめること々前提に置いて、なるべく多い方に持つてつてきめることがよいという考え方であります。
  31. 石村英雄

    石村委員 結局政府考え方鍛冶さんの考え方は違うことがはつきりしたと思います。これ以上やつても何ですから、これで、私の質問は終ります。
  32. 森三樹二

    森委員長 舟上善五郎君。
  33. 島上善五郎

    島上委員 鍛冶君は、この案は政府提案と結果において大したかわりがないのだという御答弁をされておりましたが、これはたいへんな違いであつて政府原案とはまるで逆です。白と黒、天と地との違いです。それはとの大きな違いです。そこで私は、修正案提案者鍛冶君に、これは昨年六月十八日に自治庁が出した問題の自治庁通達と同じ考えの上に立つておるかどうかということを、まず最刊にお伺いしたい。
  34. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私は自治庁通達にならつてやつたわけではありません。われわれは、われわれの独自の考えでいろいろ審議した結果、そうでなければならぬという結論に到連したゆえに出したのであります。
  35. 島上善五郎

    島上委員 ですから、昨年自治庁が出した通達と同じような考えの上に立つておるかどうかということです
  36. 鍛冶良作

    鍛冶委員 いろいろ自治庁討論はいたしましたけれども自治庁としめし合せてかようなものをやつたわけではありません。考え一緒かと言われるが、結果において一緒になるかもしれませんが、私は何も自治庁考えにならつてやつたわけではない。
  37. 島上善五郎

    島上委員 つまり、自治庁通達は、学生がその学資の大部分親元から仕送りに受けている場合には、生活本拠郷里である、アルバイトをして、それとは逆に学資の大部分々自分でかせいでいる場合はそうではない、こういう解釈を下しておりましたが、それではあなたはこういう場合にどのような解釈を下しますか。
  38. 鍛冶良作

    鍛冶委員 学資の出どころも一つ参考資料にはなりましよう。けれども、学費あるがゆえに、それだけできまるものではなく、むしろ、ぼくらは、それよりも、学生勉学のために来ておるのだ、勉学が済めば郷里に帰るのが本則だ、ここから来ております、
  39. 島上善五郎

    島上委員 学生勉学が済めば郷里に帰るのが本則である、こうおつしやいますが遠い昔ならいざ知らず、今日では私はそれは逆だと思うのです。学生は、大部分修学が済めば都会地に就職する。その比率を見てもおそらくそうだと思います。それが私との見解の相違であるならばいたし方がないわけでありますけれども、私どもは、生活本拠というものは郷里にある、親元にある、本籍地にあるという考え方はどうしても了解することができない。生活本拠というのは、その人の正常な社会生活を営む場所である、こう私ども解釈しますが、それに対してどのようにお考えになりますか。
  40. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それは、生活本拠ということになれば、あなたの言われるのと同じ意味だと思います。その生活中心がここにあるということになれば、それは生活本拠と見てよかろうが、しかし便宜上ここで働いておるのだというのとはまた大分違います。ですけれども、たとえ、われわれは、うちは新宿に持つておりますが、事務所は日本橋に持つておる。日常働く時間は日本橋の方が多うございます。ことに仕事は日本橋を中心でやつでおるけれども、やはり世間一般では、住所という場くには新宿にある、こう言われております。その意味において、どこが一体その生活本拠か、こういうことになると、時間や働く場所だけではきめられぬと思います。従つてそれは実際問題として厳密に区別せなければならぬが、なかなかそうは行きませんから、そこで原則をきめておいて、あとは実際に沿うたやり方やる、こういうことになる。
  41. 島上善五郎

    島上委員 私の質問答弁とちよつとピントが違つておるようですが、私は、生活本拠とは、その人の正常な社会生活営む場所、こういうふうに解すべきものだと思います。金の出どころがどこにあるとか本籍がどうであるとかいうことではなくて、学生であつてもその他の場合であつても、その者が正常な社会生活な営むところが生活本拠である、こう解釈すべきものだと思うのです。
  42. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その通りです。その通りですが、いいですか。これからどこへかわるかわからぬのだ、今一時ここにおるのだ、こういうことで、社会生活中心がここにあると言われても、それはそのときだけの中心であつて、本来の中心までもかわつておるとは考えません。根本の違い方がそこにあるのです。
  43. 島上善五郎

    島上委員 その通りだとするならば、それはいつかわるかもわかりません。わかりませんが、それは何もあに学生のみならんやで、ほかの人でもいつかわるかわからぬということは当てはまる。そこで、学生の正常なる社会生活とは、学校へ行つて勉学することが正常なる社会生活だと思うのです。一年に一ぺん郷里に帰る、あるいは親元から若干の学費をもらう、これが正常な社会生活だというふうには、私はどう考えても解釈することはできない。学生学校に行つて勉強することが正常な社会生活である。従つて学生の場でには、正常な社会生活を営む場所、すなわち修学地生活本拠である、こう解釈すべきものだと私はあくまで考える。その点もう一度。
  44. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それはいくら議論をしたつていいが、今たとえて言えば、四月に上京して来たとしましよう。四月から七月までの間をとつて言えば、なるほどあなたの議論は立ちます。けれども、ずつと学生の本態から考えてみると、さようなものじやありません。学生東京に来ておるからといつて、これから永久に東京に住むとは原則的には考えられない。しかし、私らが東京に出て来たときは、これはもう国に帰らぬつもりで来たんですから、そういう場合は東京に来たのだ。けれどもそうでない人が多いと思う。また実際から見てそれが多いのだから原則はそこに置くべきだ。けれども、ほんとうに国に帰るつもりはないのだ、これから東京で弁護士をやるのだ、こう考えておると言われれば、それまでは否定すろ必要はない。そうではなくて、抽象的に原則はどこにあるということになると、学生は、勉学だけであつて勉学が済んだら国に帰つて、就職がきまつたら、そこで初めて生活本拠を移す、こう見るのが原則だ、こういうことです。
  45. 島上善五郎

    島上委員 これは大分見解の違いがあるようで、いくら議論をしても始まらぬと思いますが、かりに民法における住所認定の根拠がそのようでありましても、民法住所と選挙法の住所と必ずしも同じように扱わなければならぬという根拠はどこにもないと思います。選挙法における住所というのは、一般人の場合引続き三箇月住んでおればそこで選挙権々認められる。学生も一般人と同様に認めらるべきものだと思う。選挙法における住所は選挙法の目的にかたつて解釈さるべきものだ。すなわち投票に最も適切であり便利であり容易であるというところをもつて判断すべきものだと思う。その選挙法の趣旨に最もかなつたように判断するのが一番適切ではないか。必ずしも民法住所解釈に拘泥したければならぬという理由はない。そこがどうしても私ども了解することができない、その理由をお伺いしたい。
  46. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この議論のわかれはそこにあると私は思うんです。この間の宇都宮の判決なんかを見ましても、そういう議論なんです。われわれはそれがいかぬと言う。だからこれは修正しておかたければならぬということの根拠です。いやしくも住所と書いた以上は、民法の本則に書いてあろうが、民法なもとにした選挙法に書いてあろうが、自治法に書いてあろうが、住所という以上は、その住所の観念は一定さしておかなければならぬというのが、われわれの理論の根拠です。もしそういうことで選挙法の住所は違うんだというならば、選挙法の住所は違うんだということを明記せない限りは、そういう議論は出て来ぬ。ここに私どもがあなた方の議論をとらない根本論がある。そういうことをしたら法律解釈はたいへんなことになつてしまう。われわれは、いやしくも住所という以上は、本則を民法に置いて、そうしてそれにならつてつてくれ、こうでなかつたらたいへんだ、こういう考え方から出ておりますので、今あなたのおつしやる議論とわかれる点がそこにあるということが明瞭になつたことを喜びます。われわれは、さような考え方をもつてこの法律に臨んでもらうことは、将来に対して非常な大きな弊害を生ずる、従つて字都宮の判決のごときは必ず破れるものと信じております。
  47. 島上善五郎

    島上委員 同じ言葉でも法律によつてその内容が違うのはほかにもある。それはあなたは弁護士だからよく御存じだろう。(「そんなのがあつたらたいへんだ」と呼ぶ者あり)ありますよ。ないとおつしやるなら私は例をあげます。たとえば児童という言葉でも、ある面では小学校に通つておる間が児童、ある法律では十八歳までは児童である。こういうふうに違つておる。たいとおつしやるなら私は指摘しますが、児童福祉法と学校教育法ではそのように逃つておるのです。だから私どもは、選挙の場合には選挙の目的に最もかなうように解釈すべきだ。あなたは大して違いはない、こうおつしやいますけれども郷里にくぎづけにしてしまうということになれば、学生選挙権は事実上剥奪されたと同様になるのです。これは、学生だけの問題ではなくて、大問題です。私はそれ々問題にするのです。郷里にくぎづけにしましたならば、事実上大小無数の選挙の際、一体学業を放棄して多額の族費を使つて郷里に帰れるか。これは帰れない。同時に、選挙というものは投票する一日だけが選挙ではないのです。告示があつてから候補者の政見も聞かなければならぬ。選挙運動を受ける権利もあるのですから、選挙運動を受けて候補者の政見も開かなければならぬ。人物、行状等についてもなるべく多く知らなけれぱならない。そういうことになりますと、これでは事実上、かりに帰つても、適切な投票行使することができない。大部分は帰れないし、帰つても適切な投票の行使ができないということになります。従つて、もしあなたが出しているような修正案の遍りになりますならば、少くとも選挙法の目的とはまつたく相反した結果になると思う。今私が申しました選挙権行使が著しく妨げられる、そして投票が正当に行使されないという結果になることについては、あなたは大した違いはないというように軽く見ているようですが、どのようにお考えですか。
  48. 鍛冶良作

    鍛冶委員 第一番の法律論ですが、法律の目的によつて内容を異にすると言われることは、われわれは断然反対であります。但し、その法律の目的にできるだけ沿うように適用の上でこれを扱うということは、われわれは賛成であります。これを動かすことになりますと、法律の秩序というものはこわれてしまう。その意味で、われわれも、選挙人名簿のできるときに、私はここへ来てここへ永住するつもりで、この通り住民登録もしました、こう言えば、何もそれまで妨げると言つておるのじやない。そのとき必ずもう一ぺん調べて、そして反対して裁判してやれというよう問題ではない。ことにいわんや選挙管理委員会の公務員のやることですから、この第四項も認めまして、そういう場合にはそれに従つてやる、こういうことにやつておりますから、われわれは決してそんなに妨げになるとは思いません。
  49. 島上善五郎

    島上委員 住民登録をして申し出ればいい、こう言いますが、住民登録をして申し出れば、これは学生に限らずあたりまえのことたんです。そんなことは例外でも何でもない。住民登録をして申し出たければ修学地選挙権がないということは、事実上学生選挙権が奪われるということです。この法律案をもし実施したならば、私は学生の投票率というものはおそらく一割か二割程度になつてしまうのではないかと思う。不在投票の方法もあると言いますけれども、現に不在投票がどのくらいの比率でもつて行われておるか、投票率がどのくらいの率で行われているかということを見ればわかります通り、不在投票というものは、なるほど形はありますけれども、実際にはそれほど有効に使われていない現状です。ですから、このようにいたしますれば、実際は学生の投票率が非常に低下する。せいぜい二割かそこらになつてしまうということは、要するに事実上学生の投票権を取上げてしまうことになる、そして、私がさつき言つたように、投票するということは、投票する当日に一日帰つて形式的に入れるということではなくて、その投票が適切に行使されるためには、選挙運動期間中のは選挙運動を受けて、政見を聞き、候補者の人物、識見その他についてもなるべく多くの知識を得て公正に判断する、こういうのでなければ投票の適切な行使とは言えない。そういう投票の適切な行使がこの法律案によつて行われるかどうか。私どもはこれは全然行われないと思うが、その点に対するお考えをお聞きしたい。
  50. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうも、あなたの議論を聞いていると、目的のためには法律はどうでもいいと聞える。われわれは、法律はやはり原則としてどこまでも守らねばならぬと思う。但し、その趣旨に沿うように、適用の上ででき得る限りやるべきものだ、こういう考えです。従つて住民登録なんかどうでもいいじやないかと言われるが、われわれが住民登録法というものをこしらえたのは、選挙民の本拠は住民登録によらせよう――と言うと語弊があるが、よるベきものということでつくろつている。従つて、住民登録をしてやるということでなかつたら、選挙権行使することができないことを原則としなければならぬ、私はこう思つております。これを、法律なんかどうでもいいのだ、これが便宜だから、こう言われるならば、便宜を先にして法律な従にしようということになる。われわれは法律を主にして便宜は従にしてやれ、そのかわり、あなたの言われるように、なるべくそのことに便宜をはかつてやることは、これは行政上の事務として当然すべきである、それは否認するものじやない、できるだけその趣旨に沿うてやりたい、こう思つているのです。
  51. 島上善五郎

    島上委員 住民登録がどうでもいいということは一つも言つていない。住民登録をして選挙権が認められるということは、これはあたりまえの話である。学生が特に申し出た場合に該当するのでなくて、住民登録の要件が備わつて住民登録をすれば、それはだれだつて選挙権を認められるのはあたりまえです。あなたはなるべく便宜をはかると言いますが、このあなたの修正案で、一体学生がどういう便宜を得られますか。結局修学地で投票することが事実上できないと思うが、一体これができる余地があるならば、どうしたらできるかということを、はつきりと具体的に説明してもらいたい。
  52. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうも私はあなたの質問はふに落ちない。私は、ここで投票するのだと言うたら、それは妨げぬと言うのですよ。それを絶対やらせたいというのはどういうことです。私はここに永住するつもりだから、住所をここに移したのだから、ここでやらせてくれ、住民登録もした、こう言われれば喜んでやらせるのです。どうも、反対論は、やらせぬという前提からみな来ている。しかしわれわれは、そういう場合は、できるだけその意思に従つてあげなさい、あまりりくつは言わないように、こういうわけで四項があるのです。  それからもう一つ言いますが、住民登録三箇月以上と言われるならば、私はそのいい例を持つている。私の国から北海道へいつも出かせぎに行きます。春二月に行きまして十二月に帰つて来る。十一箇月間北海道にいます。三箇月どころじやありません。おまけに学校の子供まで連れて行つている。それでも住所郷里にあるものと、こう思つて、不在投票をすることにしております。これらの点もあなたの御参考になると思いますが、われわれは、その場合でも住所が移つているとは思いません。やはりかせぎが済めば帰つて来る。それは帰つて来ない者もありますよ。いわゆる越年と私の方では言つておりますが、そういう場合もありますけれども、それでも住所は移つておらぬ。やはり一応郷里に持つている。われわれはそういう考え方から出発しております。
  53. 島上善五郎

    島上委員 その季節労働の出かせぎと学生とは違う。季節労働の出かせぎは、三箇月ないし六箇月、今おつしやつたかりに十一箇月でもよろしい。自分が所有している住居には家族がおつて、必ずそこへ帰るのです。学生の場合には、あなたは修学が済めば帰るのが原則だと言うけれども学生の場合には必ずしもそうじやない、少くとも今日の学生はそうじやないと思う。しかも学生は、高等学校を入れますと七年、そういう長きにわたつて修学地に住んでいる。そこで生活を営んでいる。そうして今日の実態は、大部分はその修学地の都会に就職を希望して就職している。帰る者はほんのわずかである。従つて、出かせぎの季節労働者の必ず帰る者と同一視することは、たいへん事実と相違すると思う。(「同じことをやつてつては、聞く方は参つてしまうよ」と呼ぶ者あり)よけいなことを言うな。帰るなら自由に帰つてください。そういう季節労働者の出かせぎ、必ず帰る労働者と学生を同一視することは、これは議論にわたるということになりますれば別ですけれども実態とは相違していると思う。その点もう一ぺん伺いたい。
  54. 鍛冶良作

    鍛冶委員 あなたが三箇月以上と言われるから私は言つたのです。三箇月以上おつたら――従つて私らはあなたのような考え方でないのです。なるほど東京で就職するかもしれません。私は初めから東京で就職するのだ、おれはもういなかへ帰らぬのだというのなら、住所移つたんだから堂々とやつたらいい。そうでない場合はいなかにあると推定する。こういうことです。
  55. 島上善五郎

    島上委員 これは議論にわたりますから、私は議論にわたる点はあとまわしにします。これは討論の際にいたしますけれども、納得はどうしてもできない。しかし質問はまだたくさんある。選挙法における住所の要件は三箇月だ。三箇月同じところに住んでおれば選挙法における住所として認められるのです。それを六年も七年も住んでおる学生だけをどうして一般人と区別しなければならぬかというところなんです。これは明らかに学生のみを一般人と区別しておる。私どもは、学生といえども一般人と同様にみなすべきである、三箇月以上同一の市町村に居住して、そこで生活を営んでおるという事実があれば、そこで選挙権を一般人と同様に認むべきものである、これを言うのです。ところが、あなたの修正案は、一般人と学生と全然区別しておる。そこに問題がある。
  56. 鍛冶良作

    鍛冶委員 あなたはそう言われるから、私は私の方の出漁者のことを言うのです。三箇月おつたからといつて生活本拠は、その間はそれ以外にないのですから、そこです。それでも住所移つたと見られぬのが本則だと言うのです。あなたが言われるから私は言うのです。三箇月おつたからといつて、そこに本拠があるということは言われない、いつかは郷里にもどるのだ、こういう考え方である以上は、住所移つたものと見られぬ、こういうことなんです。三箇月おつたら必ずやれというのじやありません。こつちに来て、ここを生活本拠にして、そして三箇月以上おつたらやれというのが選挙法の本旨です。三箇月以上おつたら何でもかんでもやれということじやないのです。それをあなたはそう言われるから、私はそういう例を出した。生活本拠を移して、そして三箇月おつたらこつちへ移せという原則だ。生活本拠が移つておらぬということだつたら、それはだめなんだ。その点は十分御認識を願いたい。
  57. 島上善五郎

    島上委員 私どもは、学生の場合には長期にわたる修学ですから、そのときにすでに生活本拠が移つておる、こういうふうに解釈しておる。出かせぎの人は季節労働で必ず帰つて来るのですから、その場合と同一視することはできない。まるきり違うのです。これは議論相違であると言われればいたし方がないが、私は、学生の場合はもうすでに生活本拠修学地に移つておる、こういうふうに解釈するのです。
  58. 森三樹二

    森委員長 ここで休憩しまして、一時半ごろからやりたいと思いますが、どうですか。   〔「賛成」と呼ぶ者あり]
  59. 森三樹二

    森委員長 それでは休憩いたしまして、午後一時半から会議を再開いたします。    午後零時四十四分休憩      ――――◇―――――    午後二時十一分開議
  60. 森三樹二

    森委員長 これより再開いたします。  午前中に引続き、公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出第七号)を議題といたしまして質疑を続行いたします。質疑は通告順にこれを許します。飛鳥田君。
  61. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 まず提案者の鍛冶さんに一つ二つ伺わせていただきます。  今までの御提案の趣旨を伺つておりますと、民法上の住所というものと、この選挙法上の選挙権行使する拠点となるべき住所というものはどうしても一致しなければいけない、こういうことが修正案御提案のたつた一つ理由のように私たちには伺えるのでありますが、なぜ民法というような私法の領域におけるものと、選挙法というような公法上の領域におけるものが一致をしなければならないか。このことについて、幸いに鍛冶さんは専門家であられますので、もう少し詳しい御説明をいただきたい思います。
  62. 鍛冶良作

    鍛冶委員 唯一の理由とおつしやつたが、唯一の理由ではありません。私よりなお法律に詳しいあなたが御承知のように、法律住所と書いてある以上は、特別の表示のない限りは一致したものとすることは当然だと思います。特にこの法律において住所とは云云と書くなら別ですが、そうでなくて、住所と書いてある以上は、原則民法に置きましようが、ほかの法律に置きましようが、同一でなければならぬのは当然のことと思つております。
  63. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 その点について鍛冶さんと私たちの考え方が幾らか齟齬すると思いますが、法律に書かれてある言業の定義あるいは概念は、当然その法の目的とするところに従つて解釈をせられて行かなければいけない、こういうふうに私たちは考えます。民法は申し上げるまでもなく私法でありまして、それではこの民法の中でなぜ住所というものをわれわれが問題にしなければならないかという目的概念と関連せしめてこれを考えて行くのは当然だと思います。御承知のように、民法上の住所というものについては――あえてこんなことを言うとしかられるかもしれませんが、日本の民法の母法であるドイツ法を見ましても、サヴイニーにおいて、住所の問題は、裁判管轄あるいは異法地域間における準拠法の決定という問題にからめて、初めて問題になつて来ていると思います。こういう点から考えて参りますと、裁判管轄を決定する標準としての住所あるいは異法地域間における準拠法を決定するための住所、こういうもの以外には民法上における住所というものの目的概念がない。ところが、それと比べてみて、選挙法上における住所は、選挙法上の二大要請、すなわち投票あるいは選挙運動の公正を確保することと、あるいはその投票、いわゆる政治に参与することの簡素化あるいは容易化、そういうこととからめて選挙法上における住所を決定して行かなければならないということは、ほぼ明白だと思うのです。こういう法の目的としているところを異にしているにもかかわらず、それを一様に住所という言葉によつて概念規定をして行くということは、正しい法の解釈ではあり得ない、こういうふうに私たちは考えるのでありますが、一体あなたの言う住所は一致しなければならぬということは、諸法の法域における法の目的の差別、種別というものを全然無視しておつしやつているのかどうか、この点を先ず伺いたいと思います。  さらにまた、日本のいろいろな有力な学説の中でも、私の申し上げていることを支持している学説が多いと思います。法域を異にするに従つて、当然その概念規定は多様であるべきだ、むしろ法は分化の方向に進展しつつある、法の概念は各法域間に分化しつつあるというのが現在の法律学の方式だと思うのですが、こういうような点な全然無視して、同一でなければならぬということでは、問題が解決できないと思います。どうぞもう一度、くどいようですが、なぜこれを同一たらしめなければたらないのか、同一ならしめないとするたらばどういう点に不便、欠点が出て来るのか、あるいは法概念の上にどういう破綻が出て来るのか、こういうことをひとつ詳しくお話いただきたいと思います。
  64. 鍛冶良作

    鍛冶委員 同じ日本の法律で、ほかにも住所と書いてある、それは意味が違うというときには、意味が違うだけの明文がなくてはいかぬ。これは私が言わぬでも、あなたはおわかりだろうと思う。先ほど島上零はどうもえらいことを言われて、そんなばかなことがあるかと言うておつたが、同じ児童と言つて意味が違うと言う。どうも島上君もそこまで知つておられるなら もう一ぺん調べたいと思つて私は調べました。本法における児童とは、こう書いてある。それをことさら同じものだと言われた島上君の真意はわからない。本法において住所とは、こういうことが書いてあれば別ですが、しからざる限りにおいては、基本法である民法にいう住所と同一であると解釈するのは当然だと思います。選挙法においても民法と同一の住所であるということは、われわれは選挙法をつくるとき十分議論しておる。その意味から見ましても、いわゆる住民でなかつたらその住所において選挙権行使せしめないという方針であつたことも、立法当時の事情をお調べになればわかるでしよう。またその議論をおきましても、いやしくも日本の法律住所と書いてある以上は、基本法である民法と違うなら違うと書かない限りは、それは違うんだという議論はどこからも出て参りません。私はさように信じております。
  65. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 これはただ文字的な解釈で違うのなら違うのだ、あるいは本法における住所とはというような文句をつけぬでも、法の目的に従つてその概念の多様性があり得ることは、これはもう日本の学説だけでなしに、世界中の学説の認めているところだと思うのですが、それはそれであなたのお説としてけつこうです。  そこで、それでは民法上の住所と選挙法上の住所を一致させなければどういう不便が生じるのか、これについてお答えがたかつたと思いますが、御説明いただきたいと思います。
  66. 鍛冶良作

    鍛冶委員 選挙権を有せしめるということは、そこの住民に選挙権を持たせるということなんです。従つて住民というときは住所があるものなんです。この原則をくずすということは法律の秩序を乱すものだと思う。但し、行使の上の便宜ということならば、これはできるだけやらなければならぬ。しかしそれは行政上の適用の範囲内であつて法律論ではない。これは先ほど島上君にお答えした通りでありますが、その点にはわれわれかわりはありません。
  67. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 行使の上において便宜を一番与えることが選挙法の目的じやないでしようか。
  68. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その通りです。
  69. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もし行使の上に最も便宜な方法を与えることが選挙法の目的だとするならば、その目的に照して選挙法内における用語を解釈することは、最も正しい解釈ではないでしようか。
  70. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そこがどうもあなた方と私とは違うところなんです。便宜だからといつて法を曲げていいということを、いやしくも法律家である飛鳥田君から聞こうとは私は思わない。法は曲げられない、但し適用上においてさしつかえない限りこれに適応するようにやつたらいい、こういう議論なんです。それをあべこべに考えるということはもつてのほかだと思う。
  71. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今のお説を聞いておりますと、便宜ということが法の外にあつて法律はこうきまつておるけれども便宜だからこういう特殊な取扱いをしようという意味便宜でありますならば、お説の通りだと思います。ところが、そうでなく、学生諸君だけに限らず、すべての人に最も容易に政治に参与する逆を与えて行く、しかも容易に与えつつかつ公正に与えるということは、選挙法の法内に持つておる要請だと思います。これは法内の、法律の範囲内の問題を私は申し上げておるので、決していわゆる便宜な取扱いをするというような便宜ではありません。この点鍛冶先生のお話は私の申し上げていることを非常に曲解しておられる、こう申し上げざるを得ないと思いますが、もし法律が法内にそういう目的を持ち、それを選挙法の至上の目的としておるとするたらば、当然その選挙法の至上目的に照して概念形成を行つて行くというのが正しいあり方じやないか、こう考えざるを得ないのですが、もう一度くどいようですが……。
  72. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私はさようには考えません。便宜だからといつて法の原理をくつがえしていいという議論は、私は法律家の議論としては承りがたい。
  73. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 いや、便宜だからといつて法の原理をくつがえすというのではなしに、便宜に、最も容易に、最も公正に政治に参与させるということが法の原理だと私は申し上げておるのですから、その法の原理に従つて概念形成なするのが正しいのではないかと申し上げておる、こういうことです。押問答はいやですけれども……。
  74. 鍛冶良作

    鍛冶委員 何べん言うても、私は、立法論としてたら承りますが、できておる法律に対してさような観念は入れられぬと思つております。
  75. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、法の原理として、選挙法の原理として、すべての人に、最も容易に、最も公正に政治に参与させるという原理があることまで否定なさるのですか。
  76. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それは、法律ををつくるときに、そういう頭でこの法律をつくればいいとおつしやるなら、私はつつしんで承る。できておる法律をそういうことで曲げろとおつしやつても、私はそういうことを聞くわけに行かない。
  77. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 これは議論にたりますから、あまり申し上げませんが、曲げるのではなくして、そういう法の濃両の至上原理に基いて、その法内に存在する概念を規定して行くということが正しいのではないか、こういうふうに私は申し上げておるつもりたんですが……。
  78. 鍛冶良作

    鍛冶委員 否定なんかしやしませんよ。否定するなんて迷惑千万だ。曲解しろと言うのだから……。明らかに私は否定なんかしませんよ。むしろあなたは曲解してやれと、こういうお言葉と私は承つておる。
  79. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 いや、それでは選挙法の法の精神が、政治に容易に参子することのできるような方法、あるいは公正に政治に参与する方法を実現するためにあると、こういうふうに考えますことは曲解でしようか。
  80. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そう考えることは悪くないけれども、そのためにこの住所というものの解釈な異にせいと言われることが曲解だ。
  81. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは、さらにもう少し進みまして、法律解釈をいたします場合に、その法が精神として願つていること、そのことと無関連にいろいうの法律概念を決定するということが、あなたのお説でしようか。
  82. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私は法律に忠実に解釈しようと言うのです。あなたは、目的がこうだ。一体あなたの目的そのものも私にはよくわからない。ただ抽象的にできるだけ便宜でやろうとおつしやるなら、それはもう私は賛成だと、こう言う。そうかといつて、どうも法律を曲げてやれと言うが、それは立法でやる以外にないものだと、こう言うのです。
  83. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 少くとも法の概念規定をしようとする場合には、その法の領域あるいはその法の精神、こういうものと無関係に概念規定ができるとは私は思つておりません。まあしかし、その点について何べんあなたと押問答々しても、おそらく一致したところには到達いたしますまい。従つてこの点についてもつと伺うことは中止いたします。  そこで、民法上のいわゆる住所というものは、それでは何の標準になるものか、お教えをいただきたいと思います。
  84. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私はそのあなたの間われるポイントがわからないのだが、生活本拠住所と定める……。
  85. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 生活本拠住所と定める、それ以外に民法上の住所意味はないというお話ですが、それでは民法上の住所を定める実益は何でしよう。
  86. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私は飛鳥田君はわからずに聞かれるとは思わない。わかつてつて聞かれると思うから、私はあまり答えたくないのだが、それによつて民法上取扱うべきものの根拠にしたい。住所でなかつたらならぬというものがいろいろあります。その一つ選挙権行使です。その根拠にしよう。こういう、ことは、民法住所を定めるというのは、あらゆるものが出て来ます。住所であらぬければならぬという法律上の効果を現わすものがたくさんおる。その根本を定めるためにある。
  87. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 やはり民法上の住所な定めます場合には、これによつてわれわれが左右せられる何らかの実益があると思います。たとえば裁判管轄がこれによつて決定をされる、あるいは国際私法上の法の適用がこれによつて決定なせられる、債務の債権における義務履行地がこれによつて決定をせられる。あるいは相続開始地であるとか、そういういろいろな実益があると思います。この問題を抜きにして住所という概念を決定できるかどうか、くどいようですが、もう一ぺん伺いたいと思います。私は、あなたに、知つていてとぼけて伺うというような人の悪いことはいたしません。ただ私の考えておりますそういう決定標準と実益と、あなたのお考えになつている実益とが食い違つているといけませんので、その点から伺つて行こうと思つて実はお伺いをした。決して先輩にそんな不敬なことはいたしません。
  88. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今おつしやつた点においては相一致しております。
  89. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もしそうだとするならば、そういうものと全然違うところに目的のある選挙法における住所の決定、こういうものとは必然的に違わなければならない、こういうふうに考えられるのですが、その点はどうでしようか。
  90. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それなら明白に答える。そういう意味なら、そうじやありません。やはり民法上の住所において選挙権があるときめることがいいというので、この選挙法の住所もついた。それは間違いのないことです。
  91. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 結局民法上における住所というものを選挙法の中に輸入をしなければならない理由が私はわからないのですが、この点はもう議論のわかれるところにたります。従つて法制局の方に伺いたいと思いますが……。
  92. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ちよつと待つてください。私それに答える。そんなことじやたい。私は輸入しておるとは思つていません。同一の観念で住所に選準権があると認めることがいいというので、決して輸入しておるなどとは言つておりませんから、その点は……。
  93. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 同一としなければならないという理由が私にはわからないということを申し上げるつもりで、輸入と申し上げましたが、意味は同じであります。その点について法制局の方に伺いたいと思いますが、いわゆる民法というような私法領域における住所、これは少くとも、先ほども申し上げましたように、その発生をたずねてみましても、民法総則の中に入つて来た原因を見ましても、裁判管轄の決定の標準、あるいは異法地域問における準拠法の決定というようなことにからんで、住所というものが初めて問題にされて来た。これはサヴイニーの本なんかなごらんにたるとおわかりだと思いますが、こういうような点から考えてみて、また、今鍛冶さんにも申し上けたように、債務の義務履行地あるいは相続開始地、旧民法でありますが、後見人の何がしというような問題にからんで問題になる。そこで初めて民法上の住所というものが目的的に概念決定ができるのだと思います。ところが選挙法における住所というものはその目的が違う。しかもその領域は公法であるというような場合に、必ず民法上の住所と選挙法上の住所を一致させなければたらない、こういう根拠が一体どこにあるのでしようか。私はどうしてもその理由が明白にならないのですが、これはあなたのお考えで、必ず致させなければならぬものでしようか。これについてはいろいろ有力な学説があります。たとえば岩波の法律学辞典、五冊になつておりますあれなどを引いてみましても、明白に「なお住所は選挙法、税法等公法的関係においても重要な意義を持つものとされているが、この場合の住所を私法上の住所と同一に解すべきやいたやははなはだ疑問である。従来は二者を同一に解する考えが一般に行われているけれども、選挙法等の関係においては住所が形式的に定まつている必要が私法におけるよりははるかに大きいのであるから、ここでは寄留地すなわち住所なりと解するを正当とする。」というふうに、岩波の法律学辞典においてすら君かれておる。また東京大学の川島先生などの本な見ましても、必ずしも一致しなければならないということは書かれていない。むしろ民法上の住所という空疎な概念規定をすることは実益がたくなつているのではないかというような議論すらあると思います。こういうような点から考えてみて、ひとつ法制局の法律解釈する専門家の御意見として、専門家の権威にかけてこれが一致しなければならないと解釈すべきかどうか、この点について御意見を伺いたいと思います。
  94. 林修三

    ○林政府委員 行政法規なりあるいは公法上のいろいろの法律要件の、たとえば住所とか期問とかいうものなどう解釈すべきかということにつきましては、実は、御承知のように、わが国の実定法上に、そういうものの行政法上の総則というようなものがただいまのところございません。これは法令に一部あるだけで――法令というのは法律に一部ございますけれども、大体においてはない。従いまして、これは、学説によれば、大体民法上の――民法というものは大体私法ではございますが、法律一般に通ずる法律観念につきましては、それに準拠して解釈されるのが大体今までの通説のようでございます。住所につきましても、大体民法では生活本拠住所とする、従つて行政法規上の住所も大体これに準じて解釈すべきものだというのが、今までの判例たり学説の通説であろうと思うわけでございます。御指摘のように、民法上の住所に関しましてはいろいろ学説がございます。また市数説と複数説もあるようでございます。学説上はいろいろあるようでございますが、行政法規における住所は、いろいろ実定法の解釈にたつた場合に、同じような字句が使つてある場合には、一応これは法律解釈の立場としてはやはり同じ意味に、その法律においてきめられた観念あるいは社会通念上認められる観念と同じ意味に使われておると解釈するのが、大体実定法の解釈の態度であろうと思います。それと非常に違うという使い方をいたすたらば、やはりその違う定義の仕方も実はあり得るわけでございます。あるいは別の言葉を使うというのが普通の立法態度であろうと思うわけであります。従いまして、ただいままでのところの解釈といたしましては、やはり公職選挙法上の住所の観念は、民法上の住所が基本になつて解釈されて行くのが、今までの学説判例を見ましても、大体通説ではなかろうかと思うわけでございます。ただ住所に関して複数説をとられる学者の力がおられます。その場合において、公職選挙法上の住所が複数であつては、これは解釈上非常に問題でございます。従つて、複数説をとられる学者が、要するにどこをもつて公職選挙法上の住所と見るかということは、これはいろいろの説があります。しかし、大体につきまして、この法律解釈の立場といたしましては、ある基本的な法律があり、そこである法律観念がきまつており、あるいは社会通念上ある法律概念がきまつているというものと同じ字句を使つている場合には、大体これに対するよほどの反証があげられない限り、やはり同じように解釈するというのが法律解釈の立場ではなかろうか、大体今まではさように考えて来たわけであります。
  95. 森三樹二

    森委員長 ただいま塚田国務大臣が出席されましたが、塚田国務大臣は、二時半に世界レスリング選手に記念切手を贈呈するので、三時二十分にここな出なければならぬという申出がございました。従いまして、塚田国務大臣に御質疑がある委員は、そのように御配慮の上お願いいたしたいと思います。
  96. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 ちよつと恐れ入りますが、私は、大臣にはございませんから、ここで中断さしていただいて、ほかの方にやつていただいたあと、終りましたら続けさしていただきたいと思いますが、ようございますか。
  97. 森三樹二

    森委員長 よろしゆうございます。  島上善五郎君。
  98. 島上善五郎

    島上委員 大臣にお伺いしたいのですが、この政府提案が出て参りました経緯は、すでにあまねく知られておりますように、昨年六月十八日自治庁が発しました学資の出所にあるとする通速が問題になりまして、世間からごうごうたる非難を浴び、さすがの政府も法的に明確にしなければならぬという必要な感じられて、選挙制度調査会に諮問された。その答申に基いて出されたものであることは、政府の提案の理由説明の際にも明らかにされております。ところが、きのうの並木君の質問の際に、塚田長官並びに鍛冶良作君の答弁の中に、その答申にはA案とB案があつて政府はA案をとつたのだ、こういう言葉がございました。私には少くともそういうふうに解釈された。ところが事実はそうではないのです。答申はただ一つです。私は念のため答申をここで読み上げます。「内閣総理大臣吉田茂殿」「選挙制度調査会々長牧野良三」という名前で出されている答申、前文は省略いたしますが、「記」として「修学のため寮、下宿等に居住する学生生徒又は営舎内若しくは船舶内に居住する保安官若しくは警備官の住所は、その居住地又はその宮舎若しくは定けい港の所在地にあるものと推定する。但し、郷里住所として申し出た場合は、この限りでない。」これが答申の本文であります。そして別紙として、この答申に至つた調査会審議の経過の概要というものがございまして、この概要は私は長いので読むことを避けますが、この経過の概要の中にA案とB案があつた。(「ほんとうか」と呼ぶ者あり)ほんとうです。そうして「右の両案について」、これが大事なところです。この「右の両案について総会において討議した結果、A案がB案より優れているという意見が強く、採決の結果、出席委員十四名(欠席委員二名)、満場一致でA案を答申することに決定した。」この通り答申はただ一つであります。昨日のお答えは、鍛冶君も長官もともに食い違つておる。私はこれは故意にそういう答弁をしたのではないかとさえ疑われる。この事実をはつきりとしていただきたい。
  99. 並木芳雄

    ○並木委員 関連して。今の島上君の発言が事実だとすれば、私は政府としては非常な食言であると思う。私たちがほんとうにまじめな討議をやつている最中に、われわれの質問に対して間違つた答えをしたとなれば、私は許すことができないと思うのです。今の島上君の発言ば非常に重大でありますから、政府としては、あとから二度と訂正する必要のないように、しつかりした答弁をしていただきたいと思います。場合によつては陳謝なり抗議を申し込みます。
  100. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 事実は島上委員の御指摘の通りであります。昨日鍛冶委員質疑に関連してお答えしておったので、正確な表現ができなくて誤つてお答えしたので、この際訂正をさせていただきます。
  101. 並木芳雄

    ○並木委員 それは大臣非常な考え違いだと思います。そういうふうに逃げないで、われわれも真剣に討議をしておるのですから、きのうは間違っておつたら問違つておつたところで陳謝してやるのでなければ、われわれがこれから聞こうとすることに対して信用ができないのである。たいへんな問題です、またあしたになつて重大な錯娯が出て参ると、審議というものはできなくなりますから、もつと正直に、そして率直に、間違いであつたならばしかたがありませんから、間違いだ、悪意でやつたのではないということをはつきり表明していただきたい。
  102. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 それは間違いでありましたので、本日訂正させていただきます。
  103. 川上貫一

    ○川上委員 関連と同時に議事の進行です。私はこれは非常に重大だと思う。政府の責任ある答弁は、委員会に対して委員審議を曲げるような答弁をしておる。これは、間違つたとか言い方が足らなかつたとかいう問題てはなくて、委員審議を混乱させ、供つた方向に導くような答弁をしておる、これは私は非常に重大な問題であると思う。聞くところによると、委員長の方では本法案を本日何とかするとか、あるいは四時間で質疑を打切るとかいうようなお話があつたそうでありますが、こういうような状態になつた以上、断じてそんなことはできない。徹底的にこの法案について考えなければ、今後何を言い出すかもわからぬ。この根底には非常に怪しいものがあるのではないかと疑われてもしかたがないと私は思う。そうでなければ、政府がそのような答弁なするはずがない。これは非常に重大でありますから、委員長の方においても重要に考えて取扱つてもらいたい。私は質問をする予定をしておりましたが、この話々聞いて、短かい時間では質問が終らない、こういうことになる以上は、十分なる審議をするように特に委員長において取扱われんことを、議事の進行上私は発言をしておきたい。私の質問は、発言を許された時分にしたいと思います。
  104. 森三樹二

    森委員長 ただいまの川上君の御発言に対しましては、後ほど理事会等を開きまして適当に善処したいと思います。
  105. 島上善五郎

    島上委員 政府選挙制度調査会答申に基いて改正案を出されたことは明らかであり、選挙制度調査会答申がただ一つのものであることも明らかになつたわけであります。そこで私は政府に伺いたいのですが、政府選挙制度調査会答申に基いて改正案な出されたということは、そのただ一つ答申が正しいものである、こういう確信の上に立つて政府提案をされたものだと思う。A案でもB案でも、どちらでもよいから早くきめてほしいという事務屋が考えておるようなことではなくて、ただ一つ答申案が正しいものである、こういう確信の上に立つて提案されたと思いますが、そうであるかどうか所信を伺いたい。
  106. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 正しいということがどういうことを意味しておるのか。A案もしくはB案としたときに、どちらが事実に合致しておるかということで正しいとか正しくないとかいうことを言っておられるとするのであるならば、私は、この場合、正しいとか正しくないとかいう表現は、どちらの場合にも当らないであろうと思います。なぜかと申しますと、この規定の仕方では、別に住所をどこにきめたということではなのでありまして、事実ば依然として認定をしてみなければならないのでありますが、ただ扱いの便宜の上で、こういう事例が多いであろうと思う方になるべく推定をしておけば、争いなしに一応きめておける。それでこうする方がよいでしようというのが答申の案であり、私どももその答申気持がよいであろうということでやつたのでありまして、これは正しいとか正しくないかいうことを答申として決定して出しておると私どもは思っておらぬのです。
  107. 島上善五郎

    島上委員 しかし、政府はこの答申に基いて出されたのでありますから、選挙権行使する際の住所推定については、修学のため寮、下宿等に居住する学生生徒は、その寮、下宿を選挙権行使の際の住所として推定する、この答申を現在の状態に照して妥当である、こういうお考えの上に立つて出されたものだと私ども考えるが、そうであるかどうか。
  108. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 その方が便宜であろう、こういうことです。ですから、私どもは、この答申はどういう意味を持つておるかというと、一つ法律できめるということ、それからきめる場合にはこういうぐあいにきめる、この二つの意味な持つておると思う。きめるということの意味は、A案でもB案でもよいわけですが、選挙制度調査会は、繰返して申し上げておきますが、今の学生生活の状態では、A案で推定した力がそのまま事実に当つてはまる場合が多いだろうという認定であるようであり、私ども大体調べてみてそんなふうだということでそのようにして、こういうことであります。
  109. 島上善五郎

    島上委員 そうだとするならば、政府は、この提案をしたのですから、この提案を通そうとする熱意を当然持つておるはずだと思うのです。政府が提案するのですから、通つても通らなくてもどちらになつてもけつこうでございますというものではないと思うのです。提案した以上は、提案した法律を通したい、通そうとする熱意をお持ちになつておるはずだと思うのです。これは質問するのはやぼかもしれませんけれども、次の質問との関連で一応承つておきます。
  110. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 それは御指摘をまつまでもなくその通りでございます。
  111. 島上善五郎

    島上委員 そうであるとするならば、今回の修正案が野党から出されたというならば、これは話は別ですけれども政府と一心同体であるべき与党から出されておる。そうしてこれは、鍛冶君の言うがごとく、結果において大した違いがないというものではなくて、天と地ほどのたいへんな違いがあるのです。その政府と一心同体であるべき与党と、この政府原案を通すために、あるいは与党の修正案を出そうとしました際に、政府はどのように連絡協議あるいは調整に努力をされたか。これを伺いたい。
  112. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これは政府がいろいろな法案を出します場合――法案だけではありません。予算を出します場合にも、十分に与党とは折衝をして、なるべく国会段階において与党側と意見の食い違いが起らないようにということで努力して、政府案について最終決定をいたしますことは申すまでもないのでありますが、しかし、そのようにしていたしますにかかわらず、なかく問題が微妙であつたり、国会に出しまして以後のいろいろな情勢が手伝いまして、判断をかえなければならないというような事態が発生いたしまして、政府案を与党が御修正になつておるということは幾たびもある事例であり、私はこの場合においてもそのようなもので、あると了解いたしております。
  113. 川上貫一

    ○川上委員 関連。どうも政府答弁は非常にたいへんなことを言うておると私は思う、A案でもB案でもよろしい、こういう御答弁であつたが、そう確認してよろしいかどうか。どららでもいい、便宜上つくつたにすぎないというのか、これが一つ。  いま一つは、鍛冶委員は、先に民法上の住所なるものを選挙法にも適用しなければ法律上の秩序をこわすと言つた。政府は、原案では法律上の秩序をこわすと思いますか、この点が第二点。  第三点は、法制局の方では、原則上、通念の上からいえば、住所といえば民法上の住所であるという答弁になつておる。そうすると、政府は、通念ではないけれども、こうやろうと考えて出したのか。これは通念として受取つてよろしいとして原案をつくつたのか、この三点をお聞きしておきたい。
  114. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 第一の点についてだけ私からお答え申し上げます。もちろん、政府が最終的に案を決定いたしまして、国会の御審議を願うために提案をいたしました以上は、その通りになることを希望いたすわけであります。従つて、A案とB案とどちらでもいいというようなことは、基本の考え方としてはない。ただこの問題の場合に、昨日も申し上げましたように、ぜひ法律としておきめ願うということの力が一層重大であつて、国会側において御意見のわかれがあるときには、私どもは御意見のわかれのために法律が成り立たないということよれば、まだ次善の策としてはB案でもけつこうである、こういう考え方をしております。
  115. 林修三

    ○林政府委員 今の御質問うち塚田大臣からお答えにならなかつた点をお答えいたします。法律上の秩序を政府案では破壊することにたるかというお話でございましたが、実は私鍛冶委員のおつしやつたことは伺つておりませんから、どういう御趣旨でそういう言葉が出たのか私は存じませんが、これは第二の問題とも関連いたしますけれども、御承知のように住所そのものをこの法律によつてきめようというのではございません。これは推定規定を入れる。住所という観念は、別に客観的にある法律観念であるという観点に立つて、その推定規定な書いてございます。住所そのものを確定しようというものではないことは、御承知の通りであります。
  116. 川上貫一

    ○川上委員 では法律上の秩序をくずすようなものとは思わぬというのですか、どうなんですか。それをはつきりしておきたい、
  117. 林修三

    ○林政府委員 先ほど申し上げました通り鍛冶委員の御発言はよく存じませんので的確なお答えはできませんが、別にこれは法律上の秩序を破壊するというような目的で出したものでないことは、もちろん明らかでございます。
  118. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私は、A案ならば法律の秩序を乱すだろうとは言つた覚えはありません。そんなことを言うわけがありません。目的のために法律解釈を異にするということは秩序を乱す、目的のために法律根本をかえてもいいんだというその考え方は、法秩序を乱すものだ、こう言つたのです。
  119. 川上貫一

    ○川上委員 それは違う。そういうごまかしを言うてはいかぬ。鍛冶君の意見は、住所というのは民法上の住所でなければならない、この原則をくずすならば法律の秩序をくずすと言うた。速記を見たら明らかです。いいくらかげんなことを言うたらだめです。これについて、政府答弁は、法律上の秩序はくずさないという答弁だと私は理解します。
  120. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 私は、昨日は、旅行中のために他の委員にかわつていただいて、本委員会には出席しなかつたのでありますが、ただいま島上委員と並木委員からの塚田国務大臣に対する質問応答を聞いておりますと、塚田国務大臣は、選挙制度調査会答申はA案、B案、いずれでもよろしいようなものであつたというように考えておつた。それは訂正なさつたのでありますが、今各委員質問に対する答弁を聞きますると、しかしながら政府原案であるA案の方をなるべく通すように努力したい、こういう答弁があつたのでございます。しかしそれは、A案、B案いずれでもよろしいという選挙制度調査会答申であつたと考えて、その上に立つて考えであつたろうと思う。ところが今、選挙制度調査会答申はA案一つであつてB案はない。B案は否決せられて、全会一致A案な採用して政府に対して選挙制度調査会は答中した。その事実を今塚田国務大臣はつきり認識したはずである。従つて、A案でもB案でもどちらでもよろしいという選挙制度調査会答申であると考えたこの原案並びに修正案に対する塚田国務大臣の態度については、今度は全然はつきりしまして、A案すなわち政府原案でなければならたいということをはつきり確認をされて、いよいよその信念を強められたことと思う。その点いかがであるか、御所見を承りたい。
  121. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 初めから政府が提案をいたしました以上は、政府の提案の線で国会が御賛成いただくということを希望しているわけでありまして、その態度におきましては少しもかわつておりません。
  122. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 一層強められたことと思う。それならば、今自由党の諸君から修正案提出されている。そうした修正案はあなたの信念に反するのであるから、ひとつあなたの党へ持ち帰つて、何とかひとつ修正案な撤回してもらつて政府原案を通すために、ここ二、三日一生懸命努力されてはどうですか。会期も九日間延長されたのであるから、この法案の審議に十分な時間があります。急いで本日中にこれを上げなければならないという理由は消滅したのだから、ここ二、三日十分あなたの党の人たちを説得なさつて政府原案を通すことが、あなたの国務大臣としての、政府の閣員としての重要な責任でなければならないと思う。その御所信を承りたい。
  123. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 いろいろ勧告いただいて、ありがたく存ずるわけでありますが、私は、今日の段階においては、もうそういう段階は過ぎていると了解いたしております。
  124. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 私の大臣に伺いたいのは、先ほど飛鳥田君に対する答弁に、答申案のようにきめるのがいいと思つた、こういうふうにおつしやられたのでありますが、そうすると、学生のいわゆる選挙権に対する住所は、すなわち寮、下宿等な住所と認める力がよろしい、こういうことと承つてよろしいだろうと思うのであります。あとの、修正案ご出した思案考に対する質問の関係上さらに伺つておきたいのですが、いかがでありなすか。
  125. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 今度の法律でも、学生選挙権の所在がどこにあるがということをちつとも最終的にはきめてはおらぬのでありまして、学生選挙権のある場所は、本質的には、今度の法律にかかわらず、かりに推定されて下宿先にあるというようになつても、争いがあつて問題になれば、やはり調べて、現実にそうでなければそれはくつがえされなければならない性質のものである。私は、ここにあるということではなくて、昨日来繰返してお答え申し上げているように、今日の学生諸君の生活実態を見、またその実態判断をすれば、結局住所下宿先にある、そういうように判定をされるような事例が多いであろう、こういうように申し上げておるのであります。
  126. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それであるから、あなたは学生住所はいわゆる選挙法上下宿あるいは寮にある、こういうふうに定めることが適当なりとお考えであるとはつきり伺つておくのですが、その辺りでさしつかえありませんか。重ねてお伺いします。
  127. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 その点も繰返してお答えを申し上げておるのでありますが、推定をいたしましても、事実とあまり反するような推定をいたしますと、争わなければならない場合がでさて来るであろう。従つて推定をする場合には、なるべくそちらの方が多いという認定が立つたならば、その方に推定をしておくということの方がいいだろう、こういう考え方であります。
  128. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 理事会でどういう決定があつたか存じませんが、本会議が始まつたならば――本日は非常に重大な議案がある。東条大将の家族に名誉の戦死者としての恩給を贈る。これは一般の困つておる人ならしかたがないのですけれども、事実われわれは生活扶助料を与えろということを要求しておる。とにかく恩給法案が上程される。両派社会党はまつ向から反対をしておるのでありまして、欠席をしたのでは、われわれはここにおることは非常に心苦しいので、ぜひ出て投票に参加したい。本会議も始まつたようですから、休憩せられんことを希望いたします。
  129. 森三樹二

    森委員長 本会議はまだのようですが、始まりましたら一旦休憩することにいたします。
  130. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今の大臣お話を聞いておりますと、A案、政府案に対して修正意見が出るならしかたがないというお話のようですが、これは普通の修正案とは意味が違うと思う。何かの率を五%のものを六%にするとか、七%にするとかいう程度の修正案ならば、お説はうなずけるのですが、この問題は根本的に白か黒か正反対の結論の出るものであつて修正案という名前はついておりますが、実賃的には修正案じゃない、こういうふうに私たちは考えるのですが、こういう白か黒かという正反対のものについて、どつちでもいいのだというのは少し無節操じゃないか。何かノー・ズロースのような感じがする。はなはだ恐縮のような言葉ですが、この点についてはどつちでもよろしいのだというようなことはよしていただいて、もつとはつきり――政府が提案せられる以上は、正反対のものにかわつてもいいのだというような無責任なことでなしに、もつとはつきりしたことをおつしやつていただきたいと思います。
  131. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 A案とB案を正反対のものと御認識になるのは、事実認定に少し不十分な点があるのではないかと思うのであります。先ほどから私はA案の方が多いだろうということを言いますけれども、私ども認定でも、わずかの違いで、大体半々くらいと言つてもいいくらいのところになつておるのであります。そういう事実を承知しておりますので、この問題については、私は、A案、B案どちらでもいい。ただA案の場合には、学生諸君があまりめんどうな手続をせぬで、便利に選挙権行使されるようになれるというプラスがあるだろう、こういう判断です。
  132. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 大した違いはないというお話ですが、これは非常な違いがある、たとえば、さつきから鍛冶さんがおつしやつているように、民法のあるいは法の体系な維持するかしないかという点ても決定的な違いがあるし、あるいはまた、かりに今出ておる修正案ならば、住民登録をそえて選管に届ける、こういう手数な学生に課するという形になると思います。選挙権行使という点については、学生なるがゆえに、どこにおるがゆえに特殊な手続を課するということは、一つの不公平の取扱いだ、こういう点で決定的な違いがあると思います。それをどつちでも同じだという言い力は少しおかしいじゃないか。まず第一に、法体系をくずすかくずさないかという鍛冶さんのお説に従つて、同じものでしようか。
  133. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 法体系をくずすかくずさないかの議論は、どうか法制局の御意見をお開きいただきたいと思うのであります。私といたしましては、どこまでも現実の状態にのつとつて、大体どちらに推定をしても事実に合致をしておるという率においては、大きな違いはない、こういうお答えをしておるのであります。
  134. 川上貫一

    ○川上委員 自治庁長官が三時半に帰るということだから、特に関連して発言なさせていただきたい。あなたは考え方が違うておる。この修正案については昨日以来島上委員鍛冶委員とが長い間質疑応答をしておる。その質疑応答の中で明らかなように、この修正案は、法律上の原則として学生住所は父兄のもとになければ法律上の秩序がこわれ、法の体系が整わぬというのが修正案なんです。どつちでもいいというものと違う。つまりその結果において正反対である。これではない、修正案の提案理由が、政府原案では法律にならぬという。民法上の規定をこわしてしまうのだ、これでは法律の秩序がこわれるというのだ。こういう理由で提案しておるのであります。だから結果において非常に違うなどという問題じゃない。根本においてまつたく政府原案法律上いけないという提案なしておる。どつちでもいいということが言えますか。あなたは考え方が問違つておる。ここをはつきりさせなければだめです。
  135. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 鍛冶委員がどのような機会にどのように御発言になつたのか、先ほどの川上委員お尋ねに対しては、鍛冶委員からそういうことを言つたことはないというお答えもあつたようであります。私どもといたしましては、今度の法律住所というものは別にどうともかわつておらない、住所というものはどこまでもやはり最終的には生活本拠がどこにあるかということな調べてきめるべきものであつて、ただそれは、現在の学生実態に照し合せてみると、下宿先にあるという推定をしておく方が事実に合致する率が幾らか多いだろうということで、その方が便宜だからここで一応きめておいていただく、そうすると、選管も、選挙権ありと申告した人に対しては、その都度調べる手数を省くことができるだろうという考え方でできておるのでありますから、そういう考え方の場合に、しかも下宿先住所があると考えられるものと、郷里住所があると考えられるものと、率においても大きな違いがあるかということであれば、そう絶対にA案でなければ困るというほどの問題は、この問題の場合には私はないと思います。こういうお答えをしておるわけであります。
  136. 川上貫一

    ○川上委員 そうなれば、修正なしなければならぬというようなものではないということですね。原案通りでよろしい……。
  137. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 申した通りであります。原案でもいいと考えております。
  138. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 今塚田国務大臣の発言によりますと、下宿先学生住所があると見るのが事実に合致する場合が多いというお考えは、その通りですね。だとすれば、その点については先ほど飛鳥田委員から質問したのでありますが、学生に特殊な選挙権の登録の積極的な行為を特に要求して、それをするのでなければ下宿先で投票ができたいとすることは、これは憲法の精神に反します。特殊な手続、犠牲を払わなければ、大部分学生下宿先において選挙権行使ができないならば、これは重天な問題です。憲法第十四条に「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は片会的関係において、差別されない。」とある。そこで学生は、社会的身分が、おやじのむすこであろうと、学生であろうと、他の有権者と何な差別を受ける理由はない。鍛冶説によるその学生住所が当然に下宿先にあると認定せらるべき場合においては、郷里の方に選挙権が登録せられている。そこで郷里に帰つて投票しなければならない。ぜひ自分のいるところでやりたいという場合には、市役所あるいは区役所へ出頭して、特殊な手続を経なければ選挙権行使ができないということは、差別される結果になるのであつて、これは憲法に違反するおそれがある。他の人々は当然にその住所においてできるのに、学生だけが、住所が下宿にありましても、一々郷里に帰るか、あるいは特別な行為をするのでなければ投票ができないということになれば、その住所下宿先にあると大臣も認められる大多数の学生が、その住所において行使ができないということは、法律論は別といたしまして、棄権者が起きて来る、あるいは不在投票なしなければならぬということで、学生選挙権な事実上大部分拒否するという結果になることは、これは、学生の政権を押えるものであつて、政治的にも非常に問題がある。その点どう考えられるか。
  139. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 私は、竹谷委員学生だけが何か非常に無理なことを要求されているようにお考えの点は、全然意見が違います。しかも学生が特に差別待遇されているというよりにお考えになつておるようでありますが、学生住所というものが認定の困難のような現実の事態にあるから、そういうめんどうをされなければ自分の選挙権の所在というものがはつきりしないのであつて、それは事実上そうだからして、その上に立つて学生が自分の選挙権をどこにしようという場合に困難をされることは、これは別にちつとも差別待遇でも何でもないと私ども考えておる。ただ実際にやる上に、こうする方が便利だからというので、推定規定を置いただけなんです。
  140. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 しかし、大臣は、パーセンテージから見ても下宿先住所があると応められる学生が多いと言う。だから多くの人間に選挙権を拒否するという結果になる事実は、認めざるを得ないと思う。多くの学生住所下宿先にあると認められるならば、あなたは、どこまでも、学生選挙権下宿先にあると推定するところの政府原案をあくまで支持すべきではないか、こう思うわけであります。
  141. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 政府案を支持しておることは繰返して申し上げるまでもないことであります。ほんとうから言いますならば、私は今度の法的措置をしなくとも、今の法律学生諸君の選挙権の所在というものは問題はないのだ、こういうふうに考えております。ちつともこれによつてかわらない。ただ便宜の上でこの力がいいということで法的措置をされるということになつただけであつて従つて、これによつてさらに一層学生便宜を奪われる、選挙権行使を不自由にされるというようなことはない、私はこういうふうに思うのです。
  142. 島上善五郎

    島上委員 先ほど、大臣は、今の段階となつては与党たる自由党との間に調整の努力をする余地はない、こういうことを申しましたが、私はどうも今までどういう努力をしたか疑わしいものだと思う。きのうの答弁では、二つの案があつてどちらでもいいというような答弁をして、非常に混乱を起した。これは明白になりましたけれども、そういうような考えで、まあどちらでもいい、まるで、選挙管理委員公が、どつちでもいいから早くきめてもらいたい、事務的に困るからと言うのと同じような態度で、そういう答弁をしておる。多分今までまつたく与党との間に政府原案を通すための努力というものはしてなかつたと思う。そこで、今の段階になつてはどうにもならないというのは逃げ言葉でおつて、今の段階になつてからでも、あるいは参議院に行つてまた審議をしますが、参議院は、私どもの聞くところによれば、政府原案を忠実に支持しようとしておる。そういうふうになりますと、今になつても、きようからでも、私は、当然政府政府原案を通すために、与党のがむしやら、横車に対して調整する努力をすべきだと思うのでありますが、そのような信念な持つておるかどうか。
  143. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 今まで党内の意見の調整に努力ないたさなかつたという疑いを受けることは遺憾ではありますが、これはまことにやむを得ません。しかし、私のお答えすることは、先ほど申し上げた通りに、衆議院においては、今日の段階では、そういう段階ではないというわけであります。
  144. 島上善五郎

    島上委員 衆議院においては今日の段階では努力する余地はないとおつしやいますが、私はまだまだ努力する余地があると思う。会期があすで切れるらな別ですけれども、さらに九日とか十日とか三箇月とか延ばそうとしているのですから、やろうとする信念と熱意があれば、十分努力する余地がある。本委員会においては、政府が努力されようとするならば、政府にその努力をする時間的な余裕を与える雅量を持つておる。ですから、政府がそのような努力をする考えがあるかどうかということをもう一ぺんはつきりして、この委員会の意思を決定しようという考えを持つております。
  145. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これは、与党が政府案に対して修正の御意見を持たれるときに、政府と与党との間でさらに意見力再調整をするかしないかということは、私は会期がまだあるからできる、ないからできないという問題ではないと思うのであります。もし島上委員の御意見のようであるならば、今まで幾つかの法案が近つて、与党も賛成して修正しておりますものは、みな会期末まで持ち越さなければならたいということになります。やはりある程度折衝をいたしてみた上で、そういう意見でおるというようにまとまつた以上は、先ほど申し上げたように行くよりしようがないと存じます。
  146. 島上善五郎

    島上委員 これは、先ほど飛鳥円委員も言つたように、ちよつと修正をするというようなものではないのです。全然逆の、正反対の案です。そうして私ども今の御答弁から判断できますことは、与党との洲に政府原案を通すための努力をしたという形跡を認めることができない。そこで私は政府はその熱意があるならば、当然これから努力すべきだと思う。  私はここで動議を提出いたします。委員会の勧告によって、政府は、政府原案を通すために与党との間に努力をすべしということを、本委員会の名において勧告したいと思う。  〔「採決」と呼ぶ者あり〕
  147. 森三樹二

    森委員長 大臣に対する勧告といいますか、一つの動議として取扱ってさしつかえありませんか。  〔「異議なし」「異議あり」と呼び、その発言する者あり〕
  148. 森三樹二

    森委員長 島上君の動議に賛成の諸君の起立々求めます。    〔賛成者起立〕
  149. 森三樹二

    森委員長 起立多数。よつて動議は可決されました。  [「どういう意味か」「多数ではない」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  150. 森三樹二

    森委員長 再時休憩いたします。    午後三時二十一分休憩      ――――◇―――――    午後三時三十二分開議
  151. 森三樹二

    森委員長 引続いて再開いたします。ただいま島上君より、先ほどの動議撤回の意見が述べられましたので、さようひとつ御了承願います。  なお、先ほどの動議の採決につきましては、可否同数でございましたが、私は動議賛成者が一名多いように考えましたので、その点は私の過認でありましたから、ここにあらためて取消します。田嶋委員
  152. 田嶋好文

    ○田嶋委員 委員長不不信任案を提出いたします。
  153. 森三樹二

    森委員長 本会議が始まりましたから、(発言する者多し)暫時休憩いたします。    午後三時三十四分休憩      ――――◇―――――    午後三時四十二分休憩
  154. 森三樹二

    森委員長 それでは再開いたします。ただいま委員長の手元に、田嶋君外一五名より委員長不信任の動議が文書をもって提出せられましたので、委員長の職務を島上理事に行っていただきます。   [委員長退席、島上委員長代理着席〕
  155. 島上善五郎

    島上委員長 代理本会議が開かれましたから、暫時休憩いたします。    午後三時四十三分休憩      ――――◇―――――    午後六時三十一分開議
  156. 島上善五郎

    島上委員長代理 休憩前に引続いて会議を開きます。
  157. 田嶋好文

    ○田嶋委員 先ほど私から委員長不信任の動議を提出したのでございますが、この動議は暫時その提出を留保いたしたいと思います。
  158. 島上善五郎

    島上委員長代理 ただいまお聞きのように、委員長不信任動議を提出者においてこれが提出を留保するとの発言がありました。この際森委員長の復帰を求めます。    [島上委員長代理退席、委員長着席〕
  159. 森三樹二

    森委員長 それでは公職選挙法の一部を改正する法律案及び鍛冶良作君提出修正案々一括して議題とし、質疑を進めます。川上貫一君。
  160. 川上貫一

    ○川上委員 これは何分くらいありますか。
  161. 森三樹二

    森委員長 大体十分程度にお願いしたいかと思っております。
  162. 川上貫一

    ○川上委員 十分程度ということになるとはなはだ困るのですが、いろいろ事情もありましようから、まず第一にお聞きしたいことは、先にも関連質問で私聞いたのでありますが、修正案を出しておられる。特に説明をされた鍛冶君でありますか、あなたの方の説明によると、住所規定は、民法規定法律上の建前である。民法規定するところの住所、これをくずすということになれば、法律根本の精神なくずすことになるのだから、どうしても政府原案ではぐあいが悪い、修正案を出したのだというのが、説明の全部の焦点だつたと思う。ところが、先ほどからの法制局の答弁政府の見解その他から考えて、こういう議論は成り立たぬことになったと思う、つまり法の精神という建前からは、住所規定の法的原則というような建前からは修正をする必要はない、これが私の前の質問の結論だと思う。修正案選挙権行使の上で適切だという理由は、これまた一つもない。選挙法の精神から見て修正案の方がよいという理由は、これまた一つもない。それで私は、修正案説明、それから質疑の間に出たいろいろなお答え、これの根拠はもう一つもなくたったと思う。これは修正案を撤回なさってはどうか。もし何か根拠がありましたら、焦点だけでよろしゅうございますから、あらためてひとつ意見を開きたい。
  163. 鍛冶良作

    鍛冶委員 あなたはないという大前提のもとに私に声をかけられるのですから、答えてみでもしようがありません。私は前から述べておることで十分理由があると確信いたしております。
  164. 川上貫一

    ○川上委員 それは困る。根拠がなくなったのです。これは速記録を見れば明らかです。ですから、そうではない、やはりあるのだということを答えてもらわなければ話にならない。
  165. 鍛冶良作

    鍛冶委員 なくなったと言われることがあなたの独断たんだ。私は、相かわらずある。ほかに何もありません。
  166. 川上貫一

    ○川上委員 妙な答弁をする。あなたは法律家なんです。法律のことは何でも知っておられるだろうと思う。民法上の住所というものが一切の法律上の住所として規定せなければならぬという考え方は、今日広汎には一般的な理論にはなっておらぬ。これは御承知だろうと思う、そこで私は聞きますが、たいへん失礼でありますけれども、同志社大学の田畑忍教授の同志社大学の法学会のパンフレット、これはお読みになっていると思う。関口博士の昨年の秋の朝日新聞の論文もお読みになっていると思う。矢内原東大教授の東大新聞に発表されたもの、これもおそらくお読みになっていると思う。これをお読みになれば、こういう修正案、そうしてそれが法的原則にもとるから、こういう修正案がいるというような御議論は出ない。また矢内原教授が国立学校会議で発表された意見についても、御承知のことだと思う。都立大学の唄助教授も昨年十二月の中央公論に所見を発表している。これもおそらく御承知だろうと思う。つまり今日の学説の上から言っても、法理論の上から言っても、法律上の住所民法のみで統一をしてはならないというのが通説である。これは複数説という言葉もありますけれども住所といえども法律の目的に適合せねばならぬのだから、それぞれの法律によって住所規定さるべきである。これが内容なんです。社会生活がだんだん複雑になって来て、昔美濃部達吉博士やあるいは吉田博士の唱えておった従来の考え方解釈してはならないというのが、一般的通説になっている。これは御承知だろうと思う。これに対してあなたの論拠はどこにあるのかと私は聞いている。あなたは法律家であって、きよう午前中からも法律論をなかなか振りまいておられる。でございますから、これらの学説、学者の議論を十分に御研究の上だろうと思う。この上に立って、あなたは、住居というものの概念は母法の規定にようなければならぬのだという、このことだけがこの修正、案の骨子なんだ。私はそうでないということを。言うておるのであるが、時間がないから、この学説を、ここで一々述べるわけに行かない。あなたはこれ々読んでおられるだろうと思う。第一にこれを全部読んでおられるかどうかを聞きたい。第二の問題としては、もし読んでおられてもおられなくても、あなたの言われる論拠、これなもう少しはっきり言ってもらいたい。(「関係がない」と呼ぶ者あり)一つも関係がないことはないのであつて、この修正案根本の精神が法理論から来ておるのだという説明なんです。もしも政府原案のような形でやれば、法の根本原則はくずれるということな言っておる。だから修築が必要だと言うておる。私はこれを質問している。くずれはせぬのじゃないか、くずれるというなら、これなもっとはっきり説明してくれ、こう言っておる。私は、あなたが法律家だから、非常に親切な説明々してくれると思う。そんなことは答弁するに及ばぬということを言うてはいけない。
  167. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私は、私に対する御質問をなさるならば、できる限り丁寧にお答えしたいと思いますが、川上君のお言葉を聞いておると、私の意見はこうだが、お前はこれに服せぬかと言う。私は、それに対しては、あなたの御意見としてつつしんで承りますが、討論をする意思はございません。
  168. 川上貫一

    ○川上委員 答弁ができぬからというて、そういう答弁をしてはいかぬ。――そうすると、水戸の地方裁判所の判例、これで茨城大学は処理しておる。それから宇都宮地方裁判所の判例、これは住所に関する法的原則なくずしだと思います。これはどうですか。
  169. 鍛冶良作

    鍛冶委員 水戸の判例については、まだ研究の余地はあるのですが、私は宇都宮の判決は必ずくずれるものと思っております。ああいうことではいかぬと思います。住所を二つに解釈するがごときことはいかぬと思っております。
  170. 川上貫一

    ○川上委員 法律論をやっておっては時間ばかりとるし、答弁できやせぬのだと私は思うから、これでもう法律論はしませんが、おそらく、あとで速記録を見る人がおったら、どちらがどういう議論なしておったかということは明らかになる。  大体法律の上の住所というものは、民法住所と一致しなければならぬというような学説も法理論も今日ありません。たとえば法律上の住所というものは違う。一つ一つ法律によって、その法律の実際の目的によって、住所の概念はかわっておる。これは複数説なんです。これが一般的な説なんです。おそらく鍛冶さんはこれを読んでおられるのだろうと思う。私は繰返して言うように、美濃部博士、吉田博士なんかの言うた従来の考え方、あなたのような考え方は確かにあった。しかし今日では通用したくなって来ておる。私はそれをあなたに聞きたいのだが、あなたは答えない。そうすると、こういうことを言わたければならない。政府はこの前のときにここでうそを言っておる。審議会の答申はA案とB案とあった、そこでA案をとったのだということを看うておる。きよう、島上さんの貸間で、あれは間違いだったと言いかえておる。自治庁の長官ともあろう者が、そんなことを間違えるはずはない。これは、一口に言えば、政府が大衆の圧力に押されて、やむを得ず原案をつくって、学生諸君の選挙権は下宿並びに寮にあるとして、裏にまわって自由党が多数を頼んで修正案を出して、これで押し通してしまおうというはっきりした陰謀であったと理解されてもしかたのないやり方をやっておる。この通りたのである。もしそうでないと言うのならば、きようの自治庁長官の答弁はまったく了解することができない。一方においては、修正案を出した方の理論とすれば、法律論だけである。こういうような形のものを多数もつて押し通すというやり方は、少し考えたらどうかと私は思う。  さらにつけ加えて私が言いたいのは、はたはだ失礼な言い分でありますけれども、前回の委員会において――ここに多くの署名が来た。その署名が来た時分に、この委員会が開会中であるにもかかわらず、ある委員から、このようなきたないものをなぜ持って来るか、これを外へ引きずり出せという御発言があった。このほこりだらけのものを何をするかという御発言であった。これは私は考えなければならない。(「それは質問じゃない」と呼ぶ者あり)これは質問じゃないことはありません。このような精神でこういう法案を審議し、こういう精神で修正案を出しておるんじゃないか。われわれが見れば、これはきたないものじゃありません。これこそきれいなものである。これこそ国民としてきれいなものだ。きたたいものは汚職なんだ。何でこれがきたないか。今日の政治のやり方こそきたないんだ。こういうような考え方修正案を出しているんだ。こういう考え方審議をしようとしておるんだ。私は、こういう立場から、あなたはよろしく国民の声を聞き、ほんとうに学生諸君の声を聞いて、撤回なさってはどうかということを言うておる。    〔「委員長質問じゃない」と呼ぶ者あり〕
  171. 森三樹二

    森委員長 なるべく簡潔にお願いいたします。
  172. 川上貫一

    ○川上委員 あなたは撤回しないというが、静かに考えてごらんなさい。そういうことをやるからこそ、国民が国会に対して、議会に対して不信な抱くのである。このことをほんとうに考えたら、提案者はすみやかに私は撤回すべきであると思う。多数をもつて押し切るだけが能じゃありません。(「質問をやれ」「よけいたことな言うな」と呼び、その他発言する者あり)この人の発言を許しておるのですか。委員長、これを整理してください。
  173. 森三樹二

    森委員長 なるべく簡単にお願いいたします。
  174. 川上貫一

    ○川上委員 簡単にやりますが、こういうやじが出ておるから簡単にやれなくなる。こういう発言をとめてください。
  175. 森三樹二

    森委員長 委員諸君もひとつ静粛にお願いいたします。
  176. 川上貫一

    ○川上委員 そういう考えを持っておるから、一体に国会というものがほんとうに自由党の国会になってしまう。  そこで私は、撤回をなさいということを勧告すると同時に、こういう修正をした結果はどういう利益があるのかという点を、修正案の提案者からもう一度聞いておきたい。いかなる利益が国民にあるのか。この修正案によったら学生諸君はどういう利益を得るか。また選挙権行使する上にいかなる利益があるか。そういうことは一向問題にしたいで、法理論だけでこの修正案を出したのかどうか。その点だけはやはり聞いておきたい。
  177. 鍛冶良作

    鍛冶委員 法律上論理一貫するということが第一の目的であります。その次は、選挙権行使にあたっては、やはり住民登録に従うということをわれわれは原則としたい。その住民登録もやはり住児でやらなければならぬ。これによって秩序を立てて行くということが選挙権の最も明朗な行使の仕方である。こう思っております。それから便、不便は考え方一つであって、住民登録をしてここでやるといえば、何も固執することはないのである。先ほど来聞いておると、住民登録をやらぬでもやらせたらよいと言うが、それは住民登録法なつくった趣旨と違うのであって、選挙権行使の観念と異なる観念でありますから、その点はとりません。その意味においては学生諸君に不便を与えない、そうして法秩序を守って行く、こういう重要なる利益がある。
  178. 川上貫一

    ○川上委員 もう時間がないと思いますから、たくさんは聞きませんが、ここに四十万の署名が来ておる。これだけのものはそう簡単にとれるものではありません。学生諸君が血の汗でとっておる。これはたれの声だと思いますか。こういうことを基礎に置いてつくる法律こそが、国民の利益を守る法律である。法律というものはそれでありがたいのじゃないか。法律というものは、なかんずく選挙に関するものは、多くの国民諸君がいかにして選挙権を都合よく行使するかという観点に立たなければ、選挙法の精神はできやしない。あなたの観念はこれと違う。この四十万になんなんとするところの署名、嘆願、これはどう考えるか。何でもないものとお考えであるか。こんなものはなつちやおらないと考えるのか。これを聞かなければならぬ。耳を傾けなければならぬものとお考えになりますか。この点を承っておきます。
  179. 鍛冶良作

    鍛冶委員 あらゆる方面を考慮したる結果、この修正案が最もよろしいという結論に到達いたしました。
  180. 川上貫一

    ○川上委員 こうなって来ると、質問してもむだだと思いますが、実際にこの論点は明らかになっておると思います。  私はこれ以上質問いたしません。社会党の方の御質問があると思いますので、私の質問はこれで終ります。
  181. 森三樹二

  182. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 私も、時間があれば、十分ひとつ修正案の提案者と問答いたして、後のために保存したいと思ったのでありますが、予定の時間がわずかでありますから、ごく要点をかいつまんで後々のために記録しておきたい、そういう趣旨お尋ねいたします。どうか御了解を願いたい。鍛冶委員選挙権というものをどういうふうにお考えになっておられるか。まさか婚姻とか商取引とかの私権と同じように考えておられるのではなかろうと思うのでありますが、質問すべきところを省略して申し上げますから、御了解願いたいと思います。  私がある人を選ぶということは政治上の参与をする公権でありますから、決して私法上の住所、そういう要件にとらわるべきものではないと考えておる。鍛冶委員は、あまり法律に詳しいために、重箱のすみをようじで掘るような御議論になって、木を見て森を見ざる体の御見解に堕しておられるのではないかということな、たいへん遺憾に存ずるのであります。日本国民であればだれでも二十歳以上、行く行くは十八歳以上にいたしたいと私ども考えております。が、二十歳以上の日本国民であれば、日本国民たることが証明されさえすれば、居住の条件というようなものは問題でない。投票権を行使し、進学権を行使してよろしいのであります。ただ、選挙人名簿をつくらなければなりませんから、その便宜上居住の要件というものをきめておるのだと思う。ゆえに、何よりも尊重すべきものは本人の意思である。自分はぜひ選挙権行使したい、そうして場所は今自分のおるところで意思を表示したいと思う者が、ここに四十万もおるというんです。それをどうして尊重する気にならないで、ただ法律上の論理性を一貫すればいい、こういうふうにお考えになるのか、念のために承りたいのであります。
  183. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私はこの間からそういう議論が出るのがふしぎでならない。あなたの今おっしゃるように、本人がここで行使したいということをとめる意思は少しもありません。それを尊重しようということであります。ただ住所というものの本質なここにあるという推定をしただけであって、実際は、あなたの言われる通り、ここで行使したいと言われるなら、それはやってよろしい、ただ法律に定めた今あなたのおっしゃった選挙人名簿というものに基礎がある。その選挙人名簿に載っておらぬ者にまでやれと言ったつていかぬのであります。その基礎を定めるまでは本則にのっとってやればよろしい。しかし本人がやりたいと言うならば、これはできるだけ尊重してやるということであります。しかし住所がどうしてもないと認定される者までは、それは尊重すると言ったつてやれない、こうわれわれは考えるのであります。
  184. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 そのお答えはほぼ予定されるのでありますが、それじゃそういう修正案を出す必要がないのであります。あなたが仰せられるものよりも、政府案の方がはるかによろしいのです。原則政府案の力に置いて、例外を鍛冶委員のようにされるならば、われわれは文句はない。修正案のようにいたしますと、選挙管理委員会の実際の取扱いは、なるべく郷里の方に持って行って登録してしまう。お前は郷里の方にあるはずだから、ここに登録するならば郷里に登録してないという証明書を持って来いとか、いろいろめんどうなことを言って、実質上の居住地である修学地において選挙権行使することができないようになることは、火を見るよりも明らかである。それをわれわれは防止したい。国民の中で、同じ二十歳でも、大学に行っておる青年の参政権の内容というものは尊重すべきものである。資的に優良なものである。それが実際上、選挙権行使することができたくたるとは申しませんが、しにくくなるようなことをすることは、選挙権を与える目的に反するのではないか。選挙権はできるだけこれを楽に安易に行使することができるようにすることが、私は選挙法の目的であると思う。アメリカなんかは、海外に出征しておる軍人にもみな投票させる。手続さえうまく行くたらば、そうでたければならぬ。要するに、日本国民で成年以上の男女であるという条件さえ整えば、私は、住居の条件というものはつけたりで、証明の一つの手段にすぎない、そういう点にあまり重きを置いて投票権を行使することを困難たらしめることは、修正案の欠点であると思うのでありますが、いかがでありますか。
  185. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうも鈴木さんの前提は、選挙権を制限するものなりというそういう大前提を持っていられる。これははなはだどうも私は心得ぬ御議論だと存じます。今あなたが言われるように、手続さえしてくれればよろしい。手続せぬでもやれるのだと言われるならば、これはわれわれと全然考えが違います。手続さえしてくれればよろしいのだ。ところで、あなたがおっしゃるのは、こういうものが出れば、これを理由にして拒絶するだろう、そうして選挙権行使を妨害するだろう、――するだろうでなくて、するんだ、それだからいかぬのだ、こういう前提から来ておられるが、われわれはそうは思っていない。まず住所というものな定めて、そうしてその住所にあるということをきめろ、そこでその住所な定めるならば、特別の手続なをしてもらわぬ限りは、郷里にあると一応推定しよう、しかし、ここでやるのだ、おれはここに住所があるのだ、こう言うたら、あえてこれを拒む必要はない、こういうことです。あなたは必ず拒絶するだろうとか言われるが、われわれはさようなことのないようにということで考えておる。法律論としても、さらにまた実際問題といたしましても、万一さようなあなたの言われるようなことがあってはたいへんだと思うから、この四項というものをここに設けて、そういうことなしてはいけないのだ、実際問題をよく調べてやって、本人の意思を尊重してやれ、これがわれわれの修正案の第四項の趣旨である、こう思っております。
  186. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 いま一問だけ。結局それは理論の上ではどうにでも言われるのでありますが、実際選挙管理委員会で取扱うことになると、お前の学費は郷里から来ているではないか、一応郷里に登録してあるものと考えなければならぬから、その方に確かにないことが明らかにならないと登録ができないとか、いろいろなことを言うにきまっておるのであります。そうして登録が何となくしくくになる。それを冒してまでもあえてやるという学生は、けなげな学生でありますが、また私はそれを希望いたしますけれども、たくさんの学生にはそれを望むことはなかなかむずかしい。めんどうだと、つい途中でやめてしまうということが起る。また選挙管理委員会の方でも、これが政府案のようにちゃんと原則の方が修学地であるときまっていれば、文句を言わずに登録する。郷里の方にも登録があったら、郷里の方の登録を取消せばいい。非常に話が違うし、実際に運用した上において違うということを私は予言しておきます。幸いに、鍛冶委員の言うように、そんな心配がないというたらたいへんけっこうですが、私の心配は確かに理由ある心配であり、実際に実行した後にはそういう結果が現われるということを今から予言して、一応私の質問は時間が来ましたから終ります。
  187. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ちよつとお答えしておきますが、どうも住民登録の実際な感違いしておるのじゃないか。郷里に登録してあるから拒絶するのじゃない。それじゃあなたはここで住民登録しますか、これは言いますよ。けれども、お前郷里の取消したものを持って来なければいかぬ、こんなことを言うものではない。あなたの言われるようなものではありません。但し、申し出て、住民登録があるかということを聞かれることは、これはやむを得ない。またそうでなかったら、選挙人名簿というものの基礎がなくなりますから、その点はやむ得ぬと思いますが、あなたの御懸念のようなことはないと思います。
  188. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 関連して。私も質問通告をいたしておきましたので、大いに質問をいたしたいのでございますが、いろいろ時間の関係がありますので質問を省略いたしますが、ただ鍛冶委員の住居に対するところの解釈が、いわゆる旧憲法時代の封建治下におけるところの、すなわち家族制度時代におけるところの住所の観念であるということが十分にうかがわれるのでありまして、この点が非常に私どもの現在の住所に対するところの解釈とはたいへん異なつて、おるのでありますが、その点につきまして簡単にお答えが願えればけっこうだと思います。
  189. 鍛冶良作

    鍛冶委員 さようなことはございません、旧憲法時代においては本籍地にあるものと推定しておった、今はそういうことでない。生活本拠というものをよく見きわめて、その本拠にある、こう守ることが原則である。それだけのことであります。
  190. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 旧憲法時代でも本籍地ということと住居ということとが異なっておることは、いまさらここで論争をすることは避けますが、要するに旧憲法時代の、子供が親の支配を受けるという時代においては、鍛冶委員のような考え方はできたのでありますが、個人主義を基調とする今日の民法下においては、住居は学生生活するところ、すなわち学生生活ということを言つておるぐらいですから、すでにそれは議論の余地のないところであって、学生のいるところが住所なりと私は解釈してさしつかえない、またそう解釈すべきものであろうと思うのであります。これだけ申し上げておいて、私の質問な終ります。
  191. 森三樹二

    森委員長 ほかに質疑の通告はありません、これにて質疑は終局いたしました。  これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。通告順に従いこれを許します。飛鳥田一雄君。
  192. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府原案については賛成、修正案については反対意見を表示いたしたい、このように考えます。  この政府原案並びに修正案両案を通じまして一番論争の対象になりましたものは、すなわち住居の概念ということであります。再々の質疑によって明確になっておりますように、修正案は、選挙法上の住所民法上の住所、これらのものは統一的に解釈をせられなければならないということが根元のように思われます。従って、まず第一に、その点について意見々申し述べたい、このように考えます。  一体、法律というものは、少くともその国の民衆の利益のためにあるものでありますし、その利益の種類に従って異なった法の法域を持っておりますことは当然であります。あるいは私法、あるいは公法、私法の中においてもまた幾多の分類が存在いたします。これらの法域に従って、その法の目的としておるところに照しつつ、かつ概念規定を行わなければならないことも、これまた当然なことだと存じます。民法における目的と、選挙法における目的というものが、少くとも異なっておるものであることも明白でありましよう。民法における住所という概念の決定の実益というものは、少くとむ裁判管轄な決定する、あるいは異法地域間における準拠法な決定する、こまかく申し上げますならば、債務の履行を決定するもの、あるいは不在者、失踪者を決定する要件になるというようなものでありまして、このような目的に照して一定められる住所という概念と、同氏をして政治に参与せしむるための選挙法における住所の概念が同一でなければならないということ自身が不可解であります。私たちは、このような異なった法域がありまする概念は当然別個に解釈なせられなければならない、こう考えて参りますと、修正案の唯一の根拠といたしております法概念の統一というようなことは、とるに足らない御議論ではないか、こう考えざるを得ないのであります。  過去法において私たちが住所として考えて行かなければならない重要な論点といたしましては、選挙権を最も有効に行使し観ること、第二には、選挙権を最も容易に行使し得ること、第二には、選挙権行使について住所認定が容易であり、かつ確実であるということが、選挙法の要請しておるところであります。  今もし修正案のように学生選挙権郷里にあるということになりまするならば、非常たる不便が生じて参ります。投票をするというようなことは、単にその投票日において一票を投ずるということに限らないのでありまして、いかなる候補者に投票をするかということは、全選挙運動の期間な通じて考えて行かなければならない。すなわち、選挙運動の中において行われるいろいろな判断の資料が必要であります。東京に住んでおって、青森県において選挙権行使する場合において、そこの候補者の政権を聞き、あるいはパンフレットを見、あるいは新聞な見、あるいは長きにわたって候補者の行動を監視するということが、非常に重要であります。こういう判断資料なくして選挙権行使することは不可能であります。こう考えて参りますと、当然選挙権を有効に行使するという点から考えて参りましても、われわれは、学生選挙権の決定標準となるべき住所はいわゆる修学地にある、こう考えて行くべきことは理の当然だと思います。  また国会議員の選挙に限らず、地方議会の選挙などについても同様でありまして、本郷に下宿あるいは寄宿いたしておりまする学生は、この東京都において勉学の施設がより完成せらるることを望むのは当然であります。また道路がよくなるのを望むのは当然であります。いわゆる出て来てしまった親元の町、あるいは村、県、こういうものの改善に対して持ちます関心よりも、自己が勉強をいたしており市する修学地における環境の改善に、より多く利害を感ずることは当然であります。こういう点から考えてみましで、も、その選挙権の決定標準となるべき住所修学地にあるといたしますことは、選挙権の有効なる行使という点において最も重要なものであることは明白であります。  さらに、選挙権を容易に行使せしめるという目的に照して考えて参りしますれば、これは一々旅費を使って親元にもどるというよう次ことはほとんど不可能であります。旅費を支出しなければならない、あるいは学校な欠席して投票に行かなければたらないというような点から考えて参りますならば、当然選挙権行使の容易性という点から参りましても、修学地にあるとすべきことは当然であります。  さらに第三の問題といたしまして、先ほど申し上げました住所認定が容易かつ確実であるという点から見ましても、現に居住をいたしておりまする修学地、これを決定いたすことが最も容易であることは明白であります。  こういう選挙法の精神に照して私たちが考えて参りますと、学主の住居は修学地にあると考えることが、住居の概念決定について最も正しいものではないか。それを無理に民法上の住所というものに一致をせしめるということは、必ずしも正しい方向ではあり得ない。むしろ正しくない。そういう強引なやり方によって利益を阻害する形が現われて参ります。冒頭に申し上げましたように、法律は少くとむ民衆の利益のために存在すべきものであります。その利益をまざまざとそこなって行くようなやり方について、私たちは、単に学年の選挙権という問題ではなしに、国の政治、国民の全体の利益という点から考えてみまして、このような民法、選外法、この何れな合致せしめなければならないとする御議論には、とうてい承服し得ないのであります。  お説によりますと、住民登録なして届け出るならば、少しも現実において被害はないじゃ広いかというようなお説でありますか、ここにも私は一つの問題があると思います。  一つは、すなわち学生なるがゆえに特に届出の手続を課せしめろということは不利益な取扱いではないか、こういうことであり申す。この点については、先はどの質疑の中で明確になっておりますので、詳しくは申しません。さらにもう一つの問題は、住民登録と関連せしめるという御議論でありますが、住民登録と関連せしめるということは法規の上でいまだ確定していない。学生選挙権の申出、いわゆる住所な定めるための申出についてのみ住民登録と関連をせしめるという理由を、私たちは発見できないのである。あらゆる国民の選挙権、住民登録と結びつけるという一つの法的な関連性がありますならば別として、学生の場合にのみこれを関連づけて行こうとすることは、少くとも学生に対する一つの別個の取扱い、他の国民に対する別個の取扱いをなさしめることに帰着すると思います。  こういう点から考えて参りますと、修正案について私たちは理論的にも賛同し得ざる数多くのものを発見せざるを得ません。  現に、法律解釈をその職責といたしております裁判所においても、水戸の裁判所において、あるいは宇都宮の裁判所において、修正案をはっきりと否定いたしますところの判決が出ておるのであります。さらに、裁判所の判決だけではなしに、現にここに列席なせられ政府の責任竹である自治庁長官ですらもが、政府原案の力が現実に即応しておるのだということを言明せられておるのであります。現実に即応しておるということは、すなわら正しく学生の権利を守って行くということであります。このような現実に即応したものを、単なる理論的な満足、そういうものによってへし曲げて行こうとするやり方は、単に理論を押し貫こうとする意図だけではなしに、他に隠されたる意図があるのではないかとすら私たちは疑わざるな得ません。すなわち、民法上の住所と選挙法上の住所を一貫せしめるという口実に籍口して、現実においては社会の少くとも進歩的な、要素であるところの学生諸者の選挙権を剥奪してしまおう、あるいは制限をしてしまおうとする野望でありと言われても、いたしかたのないものではないかと考えるのであります。  考えて参りますると、学生諸君は、学校において、社会の進歩に対しあるいは学理に対し専心研究をせられておるのでありますから、一般の社会人のように因縁情実あるいは世俗に妥協ないたしました考え方な持っておりません。彼らは、当然、みずからの理性に照して、その叡智に照して、学理に照して正しいと思うものな選ぶことに躊躇しないでありましよう。こういうことが必要的な結果として保守党の皆さん方に不利益の現実をもたらしておるという事実、この事実をやはり私たちはこの法案の修正案の中にまざまざと見て行かないわけには行かないと思います。しかし私は、自党に不利益である、あるいはどこくに不利益であるというようなことによって、次の時代たにない、あるいは時代の良心であるべきこの良識、すなわち学生諸君の政治への参与をいささかでも妨げるというようなことがありまするならば、これはゆゆしぎ問題であり、しかも日本の民族の将来にとつて、非常に重要な問題だと存じます。  しかも、日本を今取巻いておりまする世界の情勢な考えて参りますると、さらに問題は大きなもの々感じます。あまり長く討論をいたしますことは恐縮でありますから、簡単に申し上げますが、今世界は、ほんとうに平和を求める、あるいは戦争へ突入するという境目に立っておると思います。平和勢力あるいは戦争を求める死の商人たち、こういうものによって民族の興亡をかけた争いにあると思います。アメリカとソ連の対立あるいはヨーロッパにおけるジユネーヴ会議の問題、アジアにおける日本の地位、こういう諸情勢を考えで参りますると、やはり、最も真理に対して忠実であり、最も民族の行来に対して正しい見通しな持ち得る時代の良識に、私たちはもつともつと多くのものな依存しなければならない、かように考えるのであります。ところが、そのようだ良識に対して、逆にその選挙権行使を、政治への参与を制限して行こうという結果に陥る――そういう意図はないとおっしゃるでありましようが、現実の結果においてそういう結果なもたらすようなこの修正案に対しては、私たちは全面的に反対の意を表示せざる々得ないのであります。  そういう意味で、私たちは、政府と与党たる自由党との両案の矛盾について、それは中なる矛盾とのみ見ることはできない。むしろもっと露骨なものをその中に発見せざるな得ないということなつけ加えて、私の討論を終らせていただきます。
  193. 森三樹二

    森委員長 田嶋好文君。
  194. 田嶋好文

    ○田嶋委員 私は、自由党を代表いたしまして、簡単にしかも率直に賛成の意見を述べさせていただきたいと思います。  賛成と申しましても、これは公職選挙法の一部な改正する法律案に対する鍛冶修正案に対して賛成し、修正部分を除く原案に対して賛成、こういうことになるわけでございます。  私たちは、今回の法案について、自由党として、皆さんからいろいろ批判なされておることもよく承知をいたしておるのでございます。それは、ごもっともな御議論でございまして、自由党が与党としてつくっております政府提出した原案に対して自由党みずからが修正案な、出した、これはまことに一貫ない行き力ではないかという点でございます。ごもっともなことでございまして、私たちも、その点に対してけ十分これを検討しながら、今日までやって参ったのであります。しかし、政府の案はあながちこれが絶対的にわれわれ国会議員の案と見るべきものではないのでありまして、やはり国会議員は国会議員の立場から正しく政府原案に対して批判なする、メスを加える、そうして正しい点な見つけて、われわれは国民のために法律なつくるという良心な持ちたいものだと希に考えております。その現われが今日の修正案となって出て参ったもので。ございまして、結論的に申し上げますと、私たちは、政府の出しました案と今回鍛冶修正案として出されました自由党の修正案とは、結論から見ては大差ない。同じものだというように考えて参っておるのであります。  実を出しますと、昨年来この法案が問題になりまして、特に学生諸君の一部から活発な反対運動が起されましたことは、私たちもよく承知々いたしております。こうした学生諸君の一部の反対論がなくとも、良心的な自由党は、政府の案のような行き方をするか、またそうでなくして鍛冶君が出したような修正案の行き方をするかということに、率直に申して党内に意見が両立いたしておりまして、相当この点に対して検討をいたしたものであります。かく申す私たちも、実は政府原案に当初においてはやはり賛成的な気分を持っておったものであることは率直に認めます。しかし、いろいろ検討してみますると、結論的には大差はございませんし、なお、昭和二十六年の六年八日に、私たちは国会を通して住民登録法というのをつくりました。この住民登録法というのは、今後の日本の住民の形をこの登録法によつて規定して行きたい。これがすべての生活の根拠である。そうしてまた今後の完了その他に関する根本的な規正法として体系を打立てたいというところに、国会の意思があったので刈ります。遺憾ながら、これに対しましては、御承知のように社会党両派はたしか反対なされまして、われわれ保守党において作成したのであります。住民登録法に対しましては、登録法が施行された当時、登録なしないという反対運動が起つたことも皆さん御承知の通りであります。こういうふうに、私たちは、住民登録法をもつて、今後のすべての進学法その他こうした住居に関係するところの規正法としたいという観念から出発いたしておりますので、今回のこの修正案も、この線に沿うた修正案とすることが、やはり今後の選挙にれける住所その他の住所の規正に適当である、こう考え、また結論的には大した相違がございませんので、当初、反対をしておりましたが、私たちといたしましては鍛冶案に賛成するに至ったのであります。  なお、おそらく賛成された諸君も同じようなところから発しておると思うのでありますが、この選挙法の関係も、御承知のように地方自治法の第二章に住民の規定がございまして、その十条には、「市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。」と住民の定義が出ております。この住民の定義によりまして、地方自治方の十三条で、地方公共団体の後負に対するリコールの制度をつくり、その他納税義務がこの十条から発して生れ、また選挙法の住所に対する規定地方自治法の第十条を基本として生れて来る。地方自治法の第十条の住民及びこの住所規定によるところの住民、この規定修正しないで地方自治法が存在いたしております以上、やはり地方自治法第三章の第十条が、住居、住民の基本観念として取上げられなければならぬ、そうしてこれを基本として取上げるところに住民登録との一致点を見出すことができる、こう考え、住居の観念を一貫せしめるとともに、われわれが当初住民登録をもつてこうした法律制定に対する、また解釈に対する基本的な線としたいという考えと一致する、こう考えて今日も進んでおるのでございます。  なお、私たちは、今後選準法の制定にあたりましても、その他の改正にあたりましても、私たちは、選挙規定の住居と住民登録に登録されたところと、これは一致させなければならぬ、今後はそうした立場で行きたい、できれば住民登録法自体をもって選挙のすべてを実施することができるように今後考えて行く、そうすることがやはり混乱を招かない一貫した国の政策である、こういうように考えております。だから、今後やはり野党諸君との間には、住民登録なもって基本観念、基本的な法律考えて選挙法なつくって行きますのは、こうした論がかわされることは、これは覚悟して進まなければならぬ問題だ、こういうふうに考えております。願わくは、私は、われわれの観念に立ちまして、住民登録をもつて今後は選挙が全部行われる、選挙の実施ができるようになりたいものだと念願をいたしておるのであります。そうした意味からいたしまして、当初自由党内では非常に政府原案支持の意見もありましたが、今日いろいろ検討の結果、鍛冶修正案に党議なもって賛成するということになりました。  こういうような次第で自由党はこの鍛冶修正案に賛成の意見々述べます。修正部分を除く原案に対しても賛成の意見を申し上げます。
  195. 森三樹二

  196. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 私は、日本社会党を代表して、政府原案に賛成、修正案反対意見を開陳いたしたいと存じます。  私の申し上げようと思ったことの大体は飛鳥田君が先に尽されましたから、繰返すことはいたしたくありません。要するに、法律に詳しいために、法律的なものの考え方にとらわれて、実際に迂遠になるということが、しばしば法律家の陥る弊になるのでありますが、自由党の修正案はその弊告を端的に示しているものと存ずるのであります。  参政権は国民の基本的権利でありまして、一人も漏れなくきわめて簡単明瞭に行使できるようにすることが、選挙権行使させる根本目的でなければならぬと存ずるのであります。私、イギリスの選挙法も多少調べましたし、またミスターラングという労働党の代議士が先年おりまして、一緒に食事をしてお話をしましたときに、ちょうどイギリスで選挙が行われているのに、彼は日本に来てわれわれと話している。あなたそれで大丈夫ですか、いや大丈夫です。世界のどこにいても、私はイギリスの選挙区でちゃんと投票して当選さしてくれる、しかも一市町村に三箇月以上居住している者は、みんな例外なく選挙人名簿に登録し、登録しないような者は一人もいないとい、うことで、うらやましい次第と存じたのであります。先ほど鍛冶君のお話にあった十一箇月北海道へ出かせぎするような人は、北海道の現地で話を聞き、輿論を聞いて投票するのが正しい態度であります。楽にそこで登録し、また富山にもどったら名簿確定のときに閲覧をして登録するだけの心がけが日本国民にできて来れば、それが一番いいと思う。何も住居なんということにとらわれる必要がない。日本国民であり、かつ日本国内に居住している者であれば、重複して行使することは犯罪になるのでありますし、またやり力によってできないはずなのでありますから、だれでも投票ができるようにすることが、一番親切な、政治家として考えてやらなければならぬ選挙制度であると思うのであります。  そういう意味において、仙台において御承知のような判決があり、一応あれはあれで理由があったのでありますが、裁判所はいつまでも具体的妥当性だけを考えますから、その事件については安全でありますが、これを全日本の学生に及ぼすときにはえらい大問題になる。そこで自治庁におかれましても、最初は仙台の判決が正しいとされたけれども、輿論の趨向にかんがみて今回のようた改正案を御提出になった。これは正しい民主的なあり方であります。輿論というものを尊重し、輿論の動向に従うということが正しい民主政治であるのであります。これに逆行することは、遺憾ながらわれわれはこれを反動であると申すのであります。  この問題については、ほとんど天下の輿論が、学生選挙権修学地において行使せしめるようにすべきである、ただ例外として、ぜひ郷里に帰って行使したい人、郷里修学地が致する者、これはその地において投票させるのがよろしい、こういうふうになっている。イギリスなとでは、大学の見識というものな特に尊重して歴史があることでありますが、オックスフォード大学でも、ケンブリツジ大学でも、独立の選挙区を構成しているのであります。オックスフォード大学選出の代議士、ケンブリッジ大学選出の代議士、これは教職員、学生が選挙するのであります。そうなることが最も望ましい。大学生の知識というものは何といっても時代の先端を行っておるのであり、一般の国民に比して質的にも正しいよいものでありますから、これを尊重することはさしつかえないばかりでなく、必要なことである思っております。これに対して、何かあきたらないような、あるいは危険視するような考えというものは、少し保守党の諸君がどうかしておられるのではないか。あまり失礼な言葉を使うことは避けたいと思いますために言葉がよどむのでありますが、こう存ずるのであります。  ぜひ一つ法律を離れ、――私は鍛冶君や田嶋君のように法律に詳しくはありませんが、法律を離れて政治家的にやっていただきたいと思います。法律を知りながら法律を。離れることは大切なことであると思います。先日平民所論、本籍論まで飛び出して来るに至っては、ほとんどさたの限りであろうと思います。日本国民であることと、浮浪者のように流れて歩く者でなくて一定の所におる者、ことに大学生のごときは四年間一定の所に滞在するのでありますから、四年間はそこで行使させてよろしい。そしてさらに卒業後よそへ行ったならば、その行った先においてただちに登録々して行使する。日本国民もだんだん、イギリス国民のように、一人も漏れなく登録なし選挙権行使するようになることを私は信じます。そう導いて行くことがわれわれの使命であると考えまして、いかなる見地からも、どうかひとつ反動的な修正案でなく、政府原案に賛成をせられまして、国民の知識階級である学生選挙権を遺憾なく行使せしめるように御賛成あらんことを希望して、私の討論を終る次第であります。
  197. 森三樹二

    森委員長 高瀬博君。
  198. 高瀬傳

    ○高瀬委員 私は、改進党を代表いたしまして、ただいま上程されておりますところの公職選挙法の一部な改正する法律案原案に対しまして、鍛冶良作君より提出されました修正案に賛成いたし、その他の部分に対して賛成の討論を行わんといたします。  先ほど来、同僚の委員諸君から、種々この学生選挙権の問題について討論が行われましたが、私の記憶するところでは、政府公職選挙法の一部を改正する法律案を本国会に提出するに至りました動機は、昨年六月十八日でありましたか、自治庁通達をもつて学生選挙権の問題について一定の法的措置をとつたことに基因いたしておると、私は記憶いたしております。しかして私は、これらの問題について、去る国会におきまして、自治庁通達によつて、かくのごとき国民の基本的人権を制限しあるいは規制するということは、はなはだ問題であるから、これを一定の法律案として政府提出する義務があるということ々、強く当委員会において主張いたしました。しかるところ政府は、この国会に公職選挙法の一部を改正する法律案提出して参りました。従つて、これらの学生選挙権の問題に関して政府法律案をもつてその解決に当られたことに対しては、私は非常に敬意を表するものであります。しかしながら、われわれの非常に意外といたしましたところは、最初自治庁通達をもつて学生選挙権の問題について政府のとつた処置と、今回提出された法律案との内容に至つては、まつたく正反対でありまして、この点われわれ一驚を喫したのであります。  そもそも、この自治庁通達の案に対しましては、私は数回にわたつて委員会において政府の所見をただしました。しかも、政府の所見では、事務的に最も権威ありといわれるところの金丸選挙部長は、国民の基本的人権であるところの選挙権行使については、何ら例外的な考えを持つておらない、いわゆる憲法の趣旨従つて国民の基本的権利を行使すべきであるということな、明確に答弁されたのであります。すなわち、わが国の憲法十四条にありますように、先ほど竹谷君も申し述べられましたが、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」というのが憲法十四条の趣旨であります。従つて、われわれの了解するところでは、いわゆる選挙権行使のごとき重大なる国民の権利に関しまして特殊な例外的な考慮をなすということは、わが国の基本法の精神にそむくものでありまして、この選挙権行使について、特に学生選挙権行使について、あくまで例外的な考慮ななすということは、真の民主主義の確立に寄与するものではないと、私はかたく確信いたしております。従つて、私の主張せんとするところは、選挙権は、民法二十一条の住所にある、いわゆる生活本拠にあるというのがわが国の法律の建前でありますので、学生といえども、この重大なる選挙権行使にあたつては、何ら例外的な考えをもつて取扱うべきではないというのが私の信念であり、強い主張であります。  このいわゆる鍛冶修正案なるものは、たとえば学生が鹿児島から東京に遊学して東大に行つておるという場合、四年間というものは、いわゆる鍛冶修正案によれば憲法違反の疑いがある、こんな鍛冶修正案な実施するならば国民の基本的人権を蹂躙する、こういうような所説を先ほど竹谷君はなされましたが、この鍛冶修正案は、いわゆる学生選挙権の制限を何ら行つておらないのでありまして、日本国憲法の真の趣旨に従い、その原則と大道にのつとつて、この修正をなしておるのであります。もし学生諸君が、遊学地において、いわゆる居所において選挙権行使したいたらば、三箇月以上そこに居住しておられますならば、一定の法的手続をとれば明らかにその地においで、選挙権行使できるのでありまして、先ほど鈴木君が言われましたように、これはイギリスの場合と同じである。つまり、申分ははなはだ失礼でありますが、大体において学生諸君は、親の支持を受け、経済的援助のもとに勉学にいそしんでおる方が大部分であうと思います。従つて、これらのいろいろな経済的な立場あるいは社会的立場から申しまして、学生諸君は、――大学ともなれば相当の紳士ぞろいでありましようが、いろいろの点でまだ社会的経験の豊富でない点が多多ございます。従つて、これらの学生の特殊の立場も考慮いたしまして、社会的訓練の一つとして、また法治国家の国民の一人として、一定の法的手続をとるくらいのことは、当然学生としてなすべき義務の一つであろうと考えるのであります。この鍛冶良作君によつて出されたところの修正案は、学生の基本的人権を蹂躙するとか、あるいは憲法の趣旨に反するとか、かようなものでは絶対ないのでありまして、一定の法的手続学生諸君がとられるならば、これによつて当然わが国の基本法であるところの憲法の趣旨にのつとり、また民法住所趣旨にのつとつて、基本的国民の権利を堂々と行使できるのでありまして、この点鍛冶良作君の修正案はまことにわが意を得たものと衷心から賛成する次第であります、  従つて、多くは申し上げませんが、私は、学生諸君がいわゆる法治国家の将来の指導者として、わが国の将来の民主主義確立のために学生諸君に与えられたところの自治の法律的義務の行使について全身の努力を捧げ、日本再建に協力されんことをこの際希望するとともに、この鍛冶君の修正案に衷心賛成いたし、それ以外の政府提出法律案に対しても賛成の意を表する次第であります。以上。
  199. 森三樹二

    森委員長 川上貫一君。
  200. 川上貫一

    ○川上委員 非常に時間が少いそうでありますから、その範囲で、私は今議題となつている修正案並びに修正部分々除く政府原案に対しても反対するものであります。  まず第一に、修正案は、説明によつて明らかのように、民法規定にあるところの住所、これをどこまでも守らなければいかぬのだ、これ一本やりである、ほかには何の論拠もない。ところがこの論拠はことごとくくずれている。第一に、法制局次長答弁によつて、普通そう考えるけれども、それ以外に住所規定をすることができないというようには解釈されぬ、こういう答弁があつた。第二に、自治庁長官はどちらでもよいという答弁はつきりしている。しかも、政府の力では、公職選挙制度審議会の答申の、学生修学地において選挙において選挙権を有するものと推定する、これを受けて、これでよろしいと言つている。これはくずれておる。第三には、裁判所の判決で水戸の裁判所においても、あるいは宇都宮の地方裁判所においても、学生選挙権修学地にあるのが適当であるという判決が出ている。第四に、公職選挙制度審議会の答申が、ちやんと修学地にあるべきものであるという回答になつている。さらに、学説の上から申しましても、古い学説はありますけれども、今日広く承認されている学説は、明らかにいわゆる複数説である。法律上の住所民法ので統一することは適当でないということになつている、法律の目的に適合して住所規定すべものであつて、社会の生活が複雑化するに伴うて、こういう解釈をしなければ法の解釈として適当でないという意見が通説である。私は一々憲法学著、法律学者の名前はあげませんけれども。少し御研究になればすぐわかることである。時間の関係上一々名前はあげませんが、これはきまつている。たとえば憲法上の住所を見ても、民法上の住所でなければならぬというような規定になつておりません。これは明らかな点なんです。第五点として、住民登録というようなことを修正案提案者はしきり言うているが、住民登録などというものは住所規定根本要因ではありません。第六に、この修正案によると、選挙の便宜一つもない。不便ばかりあることは明らかである。第七に、この修正案によると、選準法の精神――鈴木委員も言われたように、選挙法の精神は、一人でも多く選挙権行使させなければならぬ、これが根本精神になつている。これは第六条の規定を見ても明らかである。その規定に全然反する。選挙法の精神に反する。第八には、学生の要望を無視している。ここにこれだけ来ている学生諸君は、いたずらにこんなことをするものではありません。どつちでもよいというようなことを言いますが、どつちでもよいのならば学生がなぜ四十万というような署名をするのです。どつちでもよくないからしているではありませんか。国民の声を聞かなければいけない。政治というものは、国民の意思と国民の声を聞かなければ決して成果を結ぶものでないとはつきり言うておきたい。第九には、この修正は、どうして選挙権を与えようかという観点から出発したのではなくして、どうして学生選挙権をむずかしく行使させるようにしようかということを中心にして立案されている。これはもう説明を要せぬほど明らかである。第十番目には、これは政府とぐるになつていることは、本日の委員会において明らかになつている。政府は以前この委員会においてうそを言つている、A案とB案と画方出ているのをA案をとつたと言うている。これは、明らかに、政府は大衆の圧力に押されて原案を出したが、そのうらはらにたつて自由党が修正案を出し、それで、どちらでもよいという態度で多数で押切ろうとしている、こういう陰謀的なものである。これは非常にいけないと思う。第十一に、これは私は重大だと思う。日本は今日どういう状態にあるのか。MSAを受けて再軍備を強制されて、憲法改正、軍国主義を復活して、太平洋軍事同盟の一員にされよりとしているのである。この時分に一番重要な問題は何か。日本の産業も、経済も、国民の生活も、あげてアメリカの支配のもとになろうとしているではないか。これを守る道は何か。平和と、自由と、民主主義について、国民がほんとうにこれを闘い守り、法律の上でもこれを支持し、これを援助するようなものでなければ祖国の利益になる法律ではない。今日国の存亡は、私は、国民が憲法上の権利、民主主義の権利を守るか守らぬかというところにあると思う。いわんや将来の祖国を背負うところの学生諸希、この学生諸君に選挙権を一人でも多く行使させて、自由な民主主義的な権利を使わせようというのが選挙法の立法精神でなければならぬ。これなこわしてしまおうとしておるのがこの修正案である。これははつきり言えると思う。この修正案は、私は次に言いたいけれども、一連の反動立法の一部分である、(「反対するのは共産党だけだ。」と呼ぶ者あり、笑声)そうではない。私はこれは静かに聞く必要があると思う。日本が今のような状態のものに置かれて、国民の権利と自由を奪おうとする法律案がこの国会においてもたくさん出て来ておる。私は一々これをあげる必要はないと思う。それと同じような精神のもとにおいて、学生選挙権を制限しあるいは妨害しようとしておる。それがこの選挙法の修正案なんだ。この根本精神に触れて論議をしなければならぬ、枝葉末節の問題ではない。われわれは正義と考えておる。大多数の人も正義を考えておる。この根本的な、日本の置かれておる状態、日本の国際的に置かれておる状態、アジアの状態々考え一つ法律でも考えなければ、ほんとうのりつぱな法律はできるものではない。こういう点から考えて、この修正案はとんでもないものであつて……。
  201. 森三樹二

    森委員長 川上君、簡潔に願います。
  202. 川上貫一

    ○川上委員 まつたくこれはわれわれの賛成することのできない悪修正案である。  さらにいま一つ、私が政府原案についても反対意見を述べておるのは、この中に、第二百七十条の四項に、「第二項但書及び前項後段の規定は、これらの規定による申出があつた場合に限り、第二項本文及び前項後前段の住所に関する推定規定の適用が排除される趣旨のものと解釈してはならない。」とある。これはどういうことか。これは学生の住居、選挙権所属の問題というのを実際はぼやかしてしまってある。政府原案説明によると、選挙権の所在に関するものな立法的に明らかにしたいんだと言うておられる、ところがこれでは明らかにならぬのです。なぜならば、基準一つもない。どこでこれをきめるのか。どういう基準できめるのか。これを操作する人、これを活用する人の自由かつてにすることができる、学生が申し出たらそこでできると言いますけれども、申し出ただけでできるわけではない。申し出てもできぬようにかつてにできる。またこの申出でいかんにかかわらず、これを自由にすることができるということなここの第四項で規定してある。これでは、学生選挙権修学地にあるということをせつかくきめながら、事実においては、修学地にあるのやらないのやらわからぬような取扱いが幾らでもできるような形にわざわざこしらえてある。これではだめなんです。学生選挙権修学地にある心のと規定しなければならぬとわれわれは考えますので、修正部分を除く政府原案にも反対するのであります。
  203. 森三樹二

    森委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。まず、鍛冶良作君提出修正案に賛成の諸盆の起立々求めます。   〔賛成者起立〕
  204. 森三樹二

    森委員長 起立多数。よつて修正案は可決されました。  次に、ただいま講決いたしました修正部分々除いた原案につき採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  205. 森三樹二

    森委員長 起立多数。よつて修正部分を除いた原案は可決されました。これにて本案は修正議決いたしました。  なお、本案の委員会報告書については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 森三樹二

    森委員長 御異議なしと認めます。ではさよう決しました。
  207. 田嶋好文

    ○田嶋委員 この際、非常に円満に議事も進行したようでございますし、委員長の誠意のほども認められますので、私は先刻提出を留保いたしておきました委員長に対する不信任の動議はこれな正式に撤回いたします。(拍手)
  208. 森三樹二

    森委員長 これにて散会いたします。    午後七時五十二分散会      ――――◇―――――