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1954-02-01 第19回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月一日(月曜日)    午前十一時三十一分開議  出席委員    委員長 森 三樹二君    理事 大村 清一君 理事 鍛冶 良作君    理事 綱島 正興君 理事 高瀬  傳君    理事 島上善五郎君       尾関 義一君    木村 武雄君       原 健三郎君    山中 貞則君       並木 芳雄君    石村 英雄君       鈴木 義男君    三輪 壽壯君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      金丸 三郎君  委員外出席者         検     事         (民事局第二課         長)      阿川 清道君         検     事         (参事官)   平賀 健太君     ————————————— 本日の会議に付した事件  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第七号)     —————————————
  2. 森三樹二

    ○森委員長 これより会議を開きます。  前面に引続き公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出第七号を議題として質疑を続行いたします。質疑通告順にこれを許します。大村清一君。
  3. 大村清一

    大村委員 昨日の竹谷委員質問に関連いたしまして、簡単にお尋ねしてみたいと考えておったわけです。  その一つは、竹谷君の御質疑中に、学生住居の問題は最近においては昔とはよほど事情がかわって来たというような御陳述があったのであります。もとより、戦時中あるいは敗戦後、経済界事情の変動によりまして、アルバイト学生が非常にふえた、また日本育英会その他の育英資金がだんだんと広く給せられるようになったというようなことを原因といたしまして、郷里からの送金は全部仰がないで、居住地においてアルバイト日本育英会奨学資金によって勉強を続けるというような学生も、前に比べますればふえたことは認められるのでありますが、しかし、そのパーセンテージに至りましてはほとんど言うに足らざる程度の増加ではないかと思うのであります。今回政府が従来の取扱方と違った法律を提出されましたにつきましては、社会情勢の変化というようなことが原因になっておりますかどうか。もし原因になっておるとするならば、そのように、居住地において、学生社会生活関係が従来よりもよほどかわつて来て、そこに中心があるというようになったといたしますと、はたしてどの程度のものになっておるか。もし当局においてお調べがありますならば、参考のためにお示しを願いたいと思うのであります。  次に、竹谷君は住所問題の変遷の取扱いについて質疑中御発言があったのでありますが、私どもの解するところによりますと、住所判例実例とも居住地になくして親元にあるというのが、ずっと継続してとられて来ておった見解であるように信ずるのであります。もっとも、昭和二十一年の自治庁通牒によりまして、学生住所はむしろ居住地の方にあるように取扱えという指示があったのでありますが、あれは当時の特別の事情に基いておると私は思うのであります。すなわち、戦争中からの影響を受けまして、多数の都会人が地方疎開をしておるという事実がございました。また、一面におきましては、敗戦後の虚脱状態にございますので、選挙人名簿調製する当局人的組織におきまして十分でなかったというようなことを考慮されて、便宜上、敗戦後の特別事情として、学生居住地住所として扱うよりほかはないというような特殊事情から、あれが行われたものでありまして、事態がだんだんと治まりまして、疎開も復元をする。また名簿調製当局の機能も向上したという時期におきましては、従来の取扱いをかえて元の本則に返るというように私は理解をいたしておるのでありますが、これらの点につきましてもひとつ当局所見を伺っておきたいと思うのであります。  なお、第三に、従来の選挙法取扱いによって登録されておりましたものは、学生につきましては、居住地が何パーセント、親元が何パーセントであるというようなお調べがあればお示しを願いたい。なお、今回提出されました法律に従いまして名簿調製するといたしますならば、そこにパーセンテージがどのような異動が起るかというようなことを数字の上で御提示を願いたいのであります。  以上三点にわたりまして当局所見を伺いたいと思います。
  4. 金丸三郎

    金丸政府委員 ただいまのお尋ねの第一点でございますが、最近の学生生活の実情を文部省調べによりまして私どもが承知いたしておりますところでは、学生の七%ないし八%までがアルバイトをしておるのではないかという見込みでございます。但し、その中で、いわゆる生活費の大半を占めておるのが的確な数がどれくらいかということは、文部省でも判明いたしておらぬようであります。従いまして、その点はどうも的確な数字がないのでございますけれども、やはりこのように、戦前と戦後と比較いたしてみまして、学生相当に自活をする、あるいはそれに近いような状態において学生生活を送っておるということは事実であろうかと思います。私どもが従来の考えと違いましたこのような法律案を提案するようにいたしましたもう一つの理由は、従来、生活本拠と申しますと、学生の場合父兄に学資を送ってもらって学校に通学しておるというのが常態でございましたのと、同時にまた、率直に申しまして、従来の民法のとっておりました家族制度、そういう点から、やはり家族と一体といったような観念がありまして、それは個人主義憲法個人主義民法もとにおきましても、生活本拠がどちらにあるかという場合には、私どもはやはり家族との関係を無視することはできない。現在でもさように考えておりますけれども、やはりそのような民法憲法のかわつております今日におきましては、必ずしも従来通り家族との関係の比重を同じように考えるわけには参らないのであります。このような点等考えまして、原則として現在地にあるというふうにしてもいいのじやなかろうか。また、この点につきましては、公法学者のみならず、民法系学者調査会委員に入っておられますが、その御意見を伺ってみますと、そのように言えるのではないかというような意見でもございましたので、私どもといたしましても、その点について、そのようにしても間違いではないという考えもとに、このような立案をいたしたわけでございます。  第二の点は、沿革につきましての御質問でございましたが、昭和二十一年にあのような通牒出しましたのは、当時における社会生活、交通あるいは通信の状況、あるいは住居実態、また名薄調製事務能力、そういうような事情に基いた臨時的な措置であったということは御説の通りでございますが、ただいま申し上げましたように、そのような事情相当に緩和された今日の事態におきましても、学生生活実態考えてみた場合には、この第二項に規定しますような趣旨で参ってもよろしいのではないか、かように考えたわけでございます。  第三点の、従来あの通達出します以前に、学生がどれくらい現在地名簿登録され、何パーセントくらい郷里の方に登録をされておつたかという御質問でございますが、従来そのような数字のことを問題にすることも別にございませんでしたので、そういう数字は私どもの方でつかんでおりません。ただ、ほとんど全部に近いものが現在地登録をされておつた言つていいのではなかろうか、かように考えるのでございます。昨年通達出しまして、その後九月十五日現在で調製いたした名簿ではどのように登録をされておるかというお尋ねの点について申し上げますと、これは若干私どもの方でピック・アップいたしましたものからの推定でございますが、約五八%程度現在地登録をせられ、四二%程度郷里の方に登録をされておるのではないかというふうに考えております。
  5. 大村清一

    大村委員 ただいま最後にお答えになりました点でありますが、五八%と四二%になるということでありますが、当該学生の数はおよそどのくらいでありますか、これをひとつ伺いたい。  もう一つは、今度の推定規定を設けられたならば、これがさらにどのように動くであろうかというようなことにつきましての、大見当でけつこうでありますが、それも伺つておきたい。
  6. 金丸三郎

    金丸政府委員 いわゆる学生生徒と申します者は、総数約五十三万と推定されておりまして、そのうち満二十歳以上の有権者に該当すべき者が約二十万と推定いたしております。そのうち、自宅から通学をいたしております者が約半数の十万でなかろうか。従いまして、名簿現在地に載せるか、郷里の方に載せるかという問題に該当いたします者が約十万名、こういうように推定をいたしております。この法律案がかりに通過いたしましたといたしまして、どの見当郷里の方に登録をせられ、どれくらいが現在地の方に登録をされるかというお尋ねでございますが、その点的確な想像がつきませんが、おそらくは現在地登録をされる者の方が過半数を占めることになるのではなかろうかというふうに存じます。
  7. 大村清一

    大村委員 現在でも過半数でありますが、十万といたしますと、五万八千人が居住地で、四万二千人が郷里というような大体の数字になるようでありますが、この登録がえによりまして、五八と四二の比率が一〇%程度動くか、あるいは二〇%程度動くかというようなお見込額はおよそ見当がつきませんか。もし伺うことができれば重ねてお尋ねいたします。
  8. 金丸三郎

    金丸政府委員 その点はどうもはつきりとした見込みはつきません。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この選挙制度調査会答申を見ますと、附帯事項として「選挙人名簿住民登録に基いて調製することが望ましい。よつて、将来、公職選挙法住民登録法その他関係法令整備を図られたい。」こう書いてありますが、最初の「選挙人名簿住民登録に基いて調製することが望ましい。」はわかるが、「将来、公職選挙法住民登録法その他関係法令整備を図られたい。」という真意がよくわからないのです。これはどういう意味でありますか。
  10. 金丸三郎

    金丸政府委員 あるいは法務省の方からもお答えがあろうかと存じますが、私調査会出席をいたしておりまして、御意見のございました点から私の感じている点をお答えを申し上げますと、もし民法上の住所ということにするならば、住民登録法と一致すべきもので、選挙住所も一致すべきものではなかろうか。そうすれば、住民登録法登録に基いて名簿調整するようにすることも考えられるではなかろうか。ところが、現在ただちにそのような結びつけ方をいたしますと、地方税法関係でございますとか、ほかの法律等関係が出て参りますので、いろいろな関係法律等のことも考慮いたさなければなりません。従いまして、この学生選挙権問題につきましてはそのような結論が出ますけれども住民登録等関係におきまして登録がされていないのにかかわらず、名簿の方には登録をするとか、あるいは住民登録はしているにかかわらず、調べてみると実際に住所がないから名簿の方には載せぬとかいうようなこともありますので、なるべく国の制度として相互の間に矛盾や扞格の起きないように、ことに末端におきまして選挙人名簿調製いたします者、住民登録事務を扱つております者が困らないで、スムーズに事務が運べるように、将来立法的に考慮すべきである、こういう御趣旨であつた考えております。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員 スムーズに調整事務ができるように具体的な住民登録法改正しようというのか、それとも住民登録を厳重にして、住民登録に従うようにしろというのか。この点は今度の改正にあたつて重大なことですが、それはどういうことですか。
  12. 金丸三郎

    金丸政府委員 その点につきましては、そこまでつつ込んだ御意見は少かつたと思います。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 法務省から平賀参事官もお見えになつたから、法務省の方にお聞きしたいのですが、私は、まず第一番に、昨年あなたの方から七月の幾日でしたか通牒をお出しなつた。それから九月二十九日にある程度の修正というか補足説明のようなものが出ましたが、趣旨かわりはない。そこで、この七月の通牒をお出しになつたのは、おそらく昭和二十七年の六月十三日の仙台高等裁判所判例に刺激せられたことが多かつたろうと思うのであります。そうすると、現在法律解釈基本庁である法務省があの判例をどう見ておられるか、また今日その判例が正しいものであると認めておられるのか、あるいは悪いからこれをかえなければならぬという考えに立つておられるか。この点昨日阿川課長にも聞いたのですが、平賀さんから承りたいと思います。
  14. 平賀健太

    平賀説明員 法務省民事局におきまして七月の通達出しましたのは、直接にはその先月の六月に自治庁通達が出ましたので、住民登録関係選挙法との調整関係で、住所認定に関しまして齟齬を生ずるようなことがあつてはいけないというので、七月の通達出したわけでありまして、直接に仙台高等裁判所判決が出たからという事情ではなかつたのでございます。それからなお、仙台高等裁判所判決でございますが、これも判決をよく読んでみますと、やはり証拠に基いて両親住所でありますところを事実上の住所であるというふうに認定しておるのでありますが、必ずしもこの判決学生住所というものは郷里にあるという一般原則まで言っておるかどうかちよつと疑問だと思うのでございます。この判決の当否につきましては、これは事実関係その他いろいろございますので、正しいとも正しくないともちよつと言いかねるのでございますが、ただ、一般的に申しまして、学生住所というのは、民法の何と申しますか、オーソドックス解釈といたしましては、どちらかというとやはり両親もとにあるという解釈が従来は多少有力であつたのではないかという気はいたすのであります。この判決が従来のそういうオーソドックス考え影響された点が多少あるのではないかとも思います。しかしながら、以前でありますと、学生選挙権が問題になることがほとんどなかつたわけでありまして、学生住所というものが法律争いになる場合が比較的に少かつたのでございます。しかし、選挙法終戦改正されまして、学生にも大幅に選挙権を与えるということになりまして、この学生住所というものを、もう一度、選挙法立場なんかも考慮に入れまして、町検討する必要があるのではないか、従来のような郷里との結びつきを非常に強く考えるという解釈の仕方がはたして正しいかどうかということが問題になるのではないかと思うのであります。先ほど自治庁選挙部長仰せなつたような事情もございまして、現在の解釈としては、その選挙制度調査会結論のような解釈が学問的に見ましても正しいのではないかということが一応考えられるわけでございまして、法務省民事局におきましても、今回の法律案につきましてはもちろん異存はないわけでございます。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私はここであなた方を詰問することは避けたい。自治庁行政府だからまたどうか知らぬが、あなたの方は——法務省行政府ではあるけれども法律については権威者であるのに、去年の七月に出されたのと今またかわる。受取る選挙管理委員会は当惑すると思う。この間のは郷里でやらなければならぬ、今度は郷里ではない、またひつくり返さなければならぬということで、これはよほど慎重にやつてもらわなければはなはだ因ると私は思うのであります。そこへもつて来て、私の一番心配になるのは、推定ですから、寮もしくは下宿にあるものと推定して、そこに選挙権を与える。これは推定ですからなるべく与えるようになりましよう。そこで、これが問題になつて、これは違うという訴訟を起すと、それは判例でみなひつくり返るということになりますと、これはたいへんな混乱を来すことになりますが、さような憂いはないかどうか。これは一番重大です。この点に対してどういう見解を持たれるか。
  16. 平賀健太

    平賀説明員 昨年六月の自治庁通達、それから法務省民事局長通達によりまして、従来の取扱いを変更いたしました。それにまた、この法律案がかりに法律になるといたしますと、またそれがくつがえるということで、第一線におきましては混乱が生ずるということはもう仰せ通りでございまして、はなはだ好ましくないまずい事態だとは思うのでございます。しかし、終戦後の昭和二十一年の自治庁通達先例にかえるだけでございまして、一時の混乱は生ずるけれども、もしこの法律案通りますと、またそれでおちつくのではなかろうか。ほんとうに無用の一時の混乱が生じたということになりますけれども、やがてはまたおちつくのではないか。それからまた、この法律案によりますと、推定というふうになつておりますので、法律上争う余地があるということは、これは当然残るわけでございますが、必ずしもこういう推定するというような規定がなくても、住所の問題につきましては、やはりボーダー・ライン的なケースが多々あるわけでございまして、この法律の条文とは関係なしに、本来の住所認定が困難な状況に関連いたしまして、訴訟上の争いになることはあるのではなかろうか、この法律のために特にそのような争いがふえるというふうなことは、ちよつと考えられないのではないかというふうに考えます。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 納得行きかねますが、それ以上議論しても始まりませんから、その程度にしておきます。  そこで聞きたいのは、今選挙部長から答弁を得ましたこの答申案附帯条件、これは、もしこういうことがあれば、あなた方はどういうふうにしたらいいか。「住民登録法その他関係法令整備を図られたい。」こういうのですが、これは一致しなければはなはだ困ることはあなた方も私らも同一なんだが、そこで一致させるにはどうしたらいいかということをあなた方考えておられますか。
  18. 平賀健太

    平賀説明員 実は私ども選挙制度調査会の方では幹事を命ぜられまして、意見を述べる機会を与えられたのでございますが、その調査会におきましては、法務省といたしましては、この際ぜひとも公職選挙法住民登録法との結びつき考えていただきたい。そのためには、選挙人名簿住民登録基礎としてつくるという制度をはつきり確立していただきたい。なお、そういう制度を確立する以上は、住民登録法の方も整備をする必要がある。御承知の通り、現在の住民登録法におきましては、住民票の記載につきまして、住民立場から、法律上の手続によりまして、市町村の取扱いに異議を申し立てる、そして間違いを救済してもらうという法律的な手続が実はないのでございまして、もし住民登録基礎といたしまして選挙人名簿をつくるということになりますと、やはりどうしてもそういう法律的な救済の手続住民登録法に設けなくてはなりませんし、そういう趣旨改正住民登録法に必要になつて参ります。それからさらに、先ほど選挙部長が申されましたように、この住民登録選挙人名簿を結びつけるということになりますと、ひとり選挙人名簿だけの関係ではなしに、地方税法なんかの関係におきましても、やはり住民登録基礎とするということにならざるを得ないわけでありまして、そういう関係法律にそういう住民登録基礎とするという趣旨改正規定を設けることになつて来ると思うのでございます。調査会におきましては、私どもその点を強く意見として申し上げまして、ぜひともこの調査会においてそういう点をも考慮していただくように要望いたしたのでございますけれども、何分前回の選挙制度調査会におきましては、学生住所認定ということが主たる問題になつておりまして、とにかく昨年の自治庁通達における先例の変更によつて生じておりますところの解釈上の疑義、これを一方的に早く解決することが先決問題ではないか、住民登録基礎とするということになりますと、その他の関係法律にも影響がございますし、なお調査研究を要する点もあるので、この際は学生住所の問題を一方的に解決するということにとどめて、住民登録法との結びつきの問題は今後の問題として検討しようということでもって、この附帯決議ができたというふうに承知いたしております。
  19. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それは前からの問題ですが、いやしくも住民登録というものができた以上は、つまり住所の公定になるわけですから、住民登録住所が公定されるとすれば、どうあつて選挙人名簿住所と一致しなければならぬ。そこで、私らの考えとしては、選挙人名簿の作成は住民登録もとにしてやる、こういうふうに改めた方が一番いい、こう心得ておりますが、この点に関するあなた方の見解は、この法律が通るとすればかわりはしませんか、それとも同一のお考えをお持ちですか。
  20. 平賀健太

    平賀説明員 私ども考えも今鍛冶委員のおつしやいましたのとまつたく同じことでございます。立法的にそういう趣旨改正がなされることは緊急を要するものがあるというふうに私どもも感じております。なお、もしこの法律案が通れば、私ども考えがかわらざるを得ないのではないかというお尋ねでございますが、その点は別にかわらない。たといこの規定ができましても、やはり従来通り選挙人名簿調製住民登録に基いてすべきだというこの方針はかわつて来ないように考えます。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうじやありませんよ。まず選挙権は寮及び下宿にあるものと推定される。推定が先決問題です。ところが住民登録と違つておる。そうすると、推定によつて選挙権があるということにすると、推定してやつた以上はむしろその推定もとになつて住民登録をとつかえて来いということになりはせぬかと思う。そうならなければ一致して来ません。この点は、阿川君に言つたが、はつきりした答弁がない。これは一番めんどうな点ではないか。推定が先になる。反証のない限りはそれでやられる。むしろ、それでは困るから、私は住民登録郷里にあるから郷里でやると言えばよいが、黙つてつたとすれば、住民登録をとつかえてくれなければ困る、こういうしりまくりの議論になつて来る。ならざるを得ない。そうなると、あなた方の考えと全然かわつて来る。それでは非常にめんどうなことが起ると思つておるのですが、この点は私の間違いでありますか、いかがでありますか。
  22. 平賀健太

    平賀説明員 この法律案規定でございますが、学生につきましては現在居住しておる所に住所があるものと推定する、この原則が正しいかどうかは十分御審議に相なることと思うのでございますが、もしかりにこういう規定法律になるといたしますと、住民登録法住所公職選挙法住所というものは別のものでない、まつたく同じものでなければならぬわけであります。住民登録関係におきまして、学生住所認定するにあたりましては、やはりこの規定に従うことになりますので、建前といたしましては、やはり現に居住しておる所に住所があるものと推定されまして、住民登録もそこでされる。つまり現に居住しておる所を住所として住民登録もされるということになつて来ると思うのでございます。でありますから、理論的には選挙人名簿住所住民登録住所と不一致を生ずるということはないと考えられるわけであります。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それはあべこべだ。住民登録をするときに、なるべく居住地にあるものと推定してやるというのならこれはわかる。そうじやないのだから、住民登録民法原則従つて生活本拠地住所とする。その生活本拠地登録する。ところが、この選挙法ではそんなことはかまわない。まず居住地をもつて選挙権があるものと推定をしたのだから、これはあべこべです。反証をあげて反対を言わざる限りにおいてはそこに選挙権がある。住民登録方針選挙人名簿をつくる方針と、方針が全然違いますよ。推定が先です。推定が優先的です。そうすると、推定されたがために、むしろ、住民登録と一致しようというなら、あべこべ住民登録をかえて来てくれということになります。それを私は一番憂うるのです。
  24. 平賀健太

    平賀説明員 この法律案趣旨は、住所というのはやはり民法住所と同じという考えでありまして、生活本拠学生においては現に居住しておる所にあるというのがこの案の趣旨ではないかと私ども考えるのでございます。でありますから、住民登録住所は、民法住所であると同時にやはり公職選挙法住所でもあるわけです。この法律案がもし法律になりますれば、現に生活しておる所を生活本拠として住民登録においても登録することになつて来ると思うのでございます。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私はそれは理論が違うと思う。私も住民登録関係しておるところから見ると、むしろ住民登録をするときには生活本拠を十分見きわめて厳重に住民登録をしてもらいたい、しこうして、その住民登録ができた以上は、住民登録もととして選挙権をきめてもらいたい、こう出るのがほんとうだと思う。それをあべこべに、何でもかんでもいいから大体ここにおるところでやろうということでもつてきめてかかる。そうすると、住民登録の際には、これはどうも生活本拠でないが、生活本拠でなくても、反証をあげざる限りはここに移して行こうという。また、訴訟をやつてみると、そんな推定をしてもそれは生活本拠と違うというので、訴訟をすればまた負けることになる。どうも基本をきめないで単なる推定で行くと、そういう間違いが起る。どこかで必ず基本をきめてやるということでなくちやいかぬと思う。それはめんどうなこと、むずかしいことだと言うかもしれぬが、住民登録の際にそれを厳重にやつて、そうしてなるべくそれに従わせる、これが本則じやないかと思うのですが、いかがですか。
  26. 平賀健太

    平賀説明員 その点は私どももまつた鍛冶委員仰せられる通り考えております。そうあるべきものだと考えております。
  27. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私はこの程度にしておきます。
  28. 森三樹二

    ○森委員長 高瀬博君。
  29. 高瀬傳

    ○高瀬委員 ただいまの鍛冶委員の御質問にちよつと関連しますが、去年の六月十八日かの自治庁通達によつて学生生徒に関する選挙法地方選挙管理委員長あての通達改正しようとした、その問題を契機にして学生諸君が盛んに住民登録を拒否したという事件が起つたわけなんですが、私はどういう理由で拒否したのか知りませんが、想像し得るところでは二、三あると思うのです。たとえば、住民登録を拒否しておかないと、自分たちの欲しておるところの居住地ですか、現在地で投票ができなくなる。私どもいくら古く勉強しても、大学に入つて、もし住民登録をすれば、これがすなわち徴兵の名簿基礎になつて、えらいことになるというような妄説を信じるほど、私は常識がなかつた人間じやないと思う。ところが、巷間伝うるところによると、盛んにそういうことを共産党なんか宣伝して、その気になつている者も間々あつたかのごとき風説を聞くのです。そこで、これはたいへんだ。そういう思想堅固でな学生にかつてにいわゆる現在地において選挙権を与えれば、かなりいろいろ問題が起きる。場合によつては共産党のアジテーシヨンにも乗る。そのアジテーシヨンに基いて、大した思想的根拠あるいは独自性なく集団的に投票を回避される場合もなきにしもあらず。そこで私は政府側に聞きたいのですが、一体今回の学生住民登録拒否事件というものを政府当局はどういうふうに見ておられるか。この点は実は金丸選挙部長に伺うのははなはだお気の毒だと思うのですけれども選挙部長として責任ある答弁を聞きたい。いかがでしよう。あるいは私の言うことが見当違いで違つておるかもしれませんが……。
  30. 金丸三郎

    金丸政府委員 住民登録自体は私どもの所管ではございませんので、間違つておりましたり、あるいは足りませんでしたら、法務省の方から御説明を願うことにいたしたいと存じますが、昨年の通達に基きまして名簿調製いたします関係上、住民登録を拒否するというようなことは、あまり起らなかつたのではないかと存じます。住民登録法は一昨年の七月一日から施行いたされました。当時お話のような何か説が流布されたとかいうことで、学生相当に拒否をいたしたのは事実でございます。しかし、これはやはり国の法律であるから、住民登録は必ずしなければならない。これは各大学でも相当に強く学生諸君の反省を促して、住民登録相当に行われ、現在では、たとえば通学の定期パスでございますとか、ああいうものを買うのにも住民登録が必要だというような実際上の必要もございまして、相当住民登録はされておるやに私聞いておりますが、もし間違つておりましたら、法務省の方からお答えをいたすことにいたします。
  31. 高瀬傳

    ○高瀬委員 それでは今の問題について平賀参事官にちよつとお伺いいたします。
  32. 平賀健太

    平賀説明員 昨年の学生住所認定取扱いかわりましたことに関連いたしまして住民登録を拒否するという問題は全然起つておりません。住民登録の拒否の問題が起りましたのは、今選挙部長が申されましたように、一昨年あの法律施行の当時、一部の学生が拒否したということが起つただけで、これもほとんど全部後には登録いたしまして、問題は起つておりません。
  33. 高瀬傳

    ○高瀬委員 それではその問題はそれだけにいたしまして、政府が、去年の六月十八日に自治庁通達で、いわゆる学生生徒選挙権の行使につきまして、今まで政府がとつてつた、いわゆる居住地あるいは現在地というものに基く選挙権の行使に制限を加える——というよりは、全然本質的に考え方をかえて、住所地いわゆるウオーンジツツに選挙権の行使の本拠を置くということにきめた。あの通達でこういう重大なことをきめるということは、われわれは反対である。少くとも法律案をもつてこれを出して来てもらいたいということを、われわれはこの委員会で政府側に要望いたしました。幸いにしてその要望通り法律案をもつてその改正案を出して参りました。その点については、私は政府のとつた処置に対して非常に敬意を表しております。ただ、この法律案を見ますと、すこぶるあいまい模糊でありまして、もちろん選挙制度調査会答申に非常な基礎を置いていることは、私は十分認めますが、本質的に筋が通つていない。法律案は私はけつこうだと思う。しかし、政府出して来た法律案の内容を見ますと、非常に筋が通つていない。いわゆる本質的に重大なことを忘れているということを私は非常に遺憾に考えているものであります。特に、この前の選挙法改正委員会で、いわゆる学生なるがゆえに選挙権の行使について特例を認めるのか、少くとも日本の新憲法趣旨によれば、社会的あるいは身分の相違で特殊な扱いを受けないということになつておりますのに、学生なるがゆえに、この原則をはずして、憲法のいわゆる本質的なわれわれ日本国民に与えられたところの権利義務という観念に対して除外例を認めて、選挙権の行使に対してだけ特に学生なるがゆえに特例を認めてよいのかどうかということについて、私は政府所見をただした。ところが、そういう考えは毛頭ない、こういう話であつたのです。それならば非常にけつこうだから、これを法律案の形をもつて出してくれ、その参考としていわゆる選挙制度調査会意見を聞かれることはけつこうでしよう、こういうふうに申し上げて、私はその法律案の提出を待つてつた。ところが、その法律案が出て来ると、すこぶる本質的な問題がうやむやのうちにあさつての方に追いやられてしまつて、単なる便益上の問題ということに非常に重点を置いてある。いろいろ行政をやり、あるいはほんとうに国民の安寧康福をはかるという場合に、ある程度実際の実情に適したやり方、あるいは常識的な方法、あるいは合理的な方法というものを、国家の官吏としてもあるいは政府当局としても、こだわらずに考えるということはけつこうだと思う。それについては私は敬意を表するのです。しかしながら、憲法趣旨をまるで蹂躪したような形で、単に便宜そのものだけで法律をつくるということになると、島上君もおられますが、今はやつているやれ労働運動、学生運動、デモでもかけて来て、国会に行つて高瀬の野郎を締め上げてしまえ——事実私は一時間以上にわたつて学生諸君と議論した結果、あいつは誠意がないとか、あいつはもつてのほかのやつだとかいう判決のようなものを受けて、それで討論終結になつたこともあります。それ以来私は学生諸君を相手にしておらないのです。私は私独自の考えでこの問題に対処しようとしているのですが、とにかくデモでもやつたりあるいはおどしたり戸別訪問したりすれば、少し薬がきいたぞということになる。そうすると、思想があまり統一しない学生諸君は、今後また気に入らないことがあれば、国会に押しかけて高瀬のやつを締め上げ、政府をおどかせということになる。しかもこれは憲法上の根本的な原則をあさつての方に置いて政府が立案したということになると、将来日本の指導者を訓練する上においても、私は重大な問題だと思う。従つて、この法律などの制定は、単なる便益ということも無視はできませんが、それだけではとうていわれわれは了承できない、こう思う。そういう点から考えてみますと、私は、選挙制度調査会答申も、自治庁通達、すなわち民法上の住所地に選挙権があるのだという原則を明らかにした自治庁通達に対しては、ごもつともである。あるいは穏当であると言つていいようであります。しかしながら、実際上の便益上からいつて、ただいま政府が提出して来たような法律案趣旨のような通達をしているにすぎない。ところが私は、この政府から出して来たところの法律案が、非常に、原則はどうでもよいことにして、便益的なものだけを羅列して学生の思う通り選挙権の行使を与えた。これは別に反対するわけではありませんが、しかし大きな問題は大きな問題としてはつきりと原則の中へうたつてない法律案ということになりますと、選挙権の行使については、将来日本の政府がいろいろ立法する場合に派生的な問題が必ず起きて来る。たとえば、住所というものは民法上の住所選挙法上の住所の二つある。こういう点については非常にこれは重大だと思うのです。民法上の住所というものと選挙法上の住所というものと、選挙権の行使についてはとにかく二つあるものだ。住所というものは二つの観念があつて民法上の住所選挙法上の住所と二つある。一体それが違うのか同じなのか。これなどは非常に問題だと私は考えざるを得ないのです。ただ選挙権に関してだけ、特に学生選挙権の行使に関してだけ、住所というものをいわゆる現在地あるいは居住地に置くのだということを明らかにしてある法律案ならばいいのですが、そんなことは何にもしてないで、この法律案に関する限り、とにかく住所地というものは、学生に関する限りは、三箇月以上東京なら東京に住んでおつて、そこに下宿をして住民登録でもしてあればそこでできるのだ、こういうようになりますと、非常に私は問題じやないかと思う。だから、原則も何も明らかにせず、選挙権の行使に関しては民法上の住所選挙法上の住所がある。地方選挙についてはもちろん民法上の住所でなければ選挙権の行使は私はできないと思う。しかし国の選挙の場合は、たとえば国会議員の選挙とかそういう場合は、住所選挙権行使の一つの要件にすぎないのだ。選挙権行使の一つの要件、国会議員の選挙については住所選挙権行使の一つの要素にすぎない、こういう考え方だと思うのです。そうなりますと、選挙権行使に対しては住所というものは二種類あるということになる。この点非常に私は問題じやないかと思う。だから私は、何も学生あるいは保安隊あるいは警備隊の人たちに特例を認めないというのじやないのです。しかしながら、それを認める場合に、これは便益上の問題でありますから、原則をはつきりしておくべきである。学生といえども、あるいは保安官といえども、警備官といえども選挙権の行使に対しては民法二十一条の住所にあるのだということを政府は明らかにして、ただ、実際上の便益のために、特に学生あるいは保安官、こういうような人については、選挙権の行使を、三箇月以上そこに住んでおつて、寮、寄宿舎、そういうところにおれば認めるのだというならわかるのですが、そういうことには全然触れないで、これだけの法律出して来たことに対しては、私はどうしても憲法趣旨からいつても賛成できないのです。だから政府は、この点について、法律を出すというところまで進歩したわけですから、これは先ほどから申し上げる通り政府の大進歩だと思うのですから、その原則を忘れないように、原則をちやんとしておけば、私は必ずしも反対するものではない。大体こんなことを政府がはつきりと学生なんかの前にできないようでは、将来日本の再建などなかなかできないだろうと思うのです。将来日本の指導者になる人に対する一つの精神的指導部面も考えて、正法にはもつとそういう点を入れて立案していただきたい。この法律案を見て私が賛成できないのは、そういう点なんです。これはひとつはつきりと政府側でやつていただきたい。これだけ私は聞きたいわけなんです。
  34. 金丸三郎

    金丸政府委員 お尋ねの御趣旨が二点あるのではないかと存じますが、第一は、学生や保安官だけについて選挙法上の住所をきめないで、民法第二十一条の住所というものについて原則をはつきりすべきではないかというのが一つの御質問の点のように存じます。この点は、私どもも、欲と申すと語弊がございますが、できますならばそのようにいたした方がいい。外国の立法例を見ましても、民法の中に住所に関する推定規定がある例もございますが、問題が学生住所認定を中心にして起つております関係もございますのと、民法規定するいたし方もございますし、あるいは地方自治法に住所に関するいろいろな基本原則規定するというやり方もあると思います。また、登録制度に結びつけて参りますと、住民登録が各種の制度に使われるのであるならば、あるいは住民登録をする際の登録の基準として住所地の認定規定する、こういうような行き方もあろうかと個人としては考えるのでございますが、そのようにいろいろあるわけでございますけれども選挙制度調査会といたしまして、ほかの法律の分野にまでわたつて答申をすることは適当ではないとお考えになられたのではなかろうかと存じますのと、またなるべく早くこの問題を解決したいといつたような御配慮等もあつて、お手元に御配付申し上げておる資料に、ございますような答申になつたのではないかと存ずるのであります。だから、そういう意味におきましては、一昨日大村委員からも同じような御質疑がございました。そういう点からも、この規定の仕方は、あるいは法律的にすつきりと住所に関する意義を解決したとは言い得ないかと存ずるのであります。ただ、御質問では、特例を認めたのではないかというような御趣旨と拝承いたしたのでございますが、それと関連をしてお答えを申し上げますと、私どもは特例を設けたということではなく、先ほども大村委員に対しましてお答え申し上げました通りに、今日の学生生活の実状から考えまして、現在地原則として住所があると推定をしてもさしつかえない、そのような実態にあると考えていいのではないか。ただ、いろいろと両論ございますように、やはり郷里にあるという見方もございますし、いや、現在地にあるという見方もあります。また、学生生活実態が、私は両方現実にあるというふうに考えておるのでございます。従いまして、どちらの方に実態が多いと考えるかということは、このような現在地にあるという推定をするような考えの方もあれば、あるいは郷里の方に推定すべきだという考え方も出て来ようと存ずるのでございますけれども調査会現在地にあると推定していいのではないかという結論に到達されたように考えるのでございます。従いまして、そういう意味からは、学生とか保安官について、住所現在地にないのにかかわらず現在地にあるようにしてやろうという意味であれば、学生だけについて特例なり特権なりを与えたことになつて憲法にも触れるということも言えるかと存ずるのでございます。実態の見方には両論あり得ると思いますけれども実態現在地にあると言えるのではないかという考えもと推定規定を設けるのであれば、別に特例を設けて格別の特権的な利益なり便宜なりを与える、こういうようには言えないのではないか、かように存ずるのでございます。  なお、この第二項には、「この法律規定する住所に関する要件を定めるに当つては、」とございます。従いまして公職選挙法住所だけを規定しておるのでございます。字句通りにはまさしくそうでございます。公職選挙法選挙権の要件といたしまして「住所」ということがございます。これは、先般の国会においても申し上げましたように、地方自治法の中に選挙の基本規定がございますが、その前に、市町村の区域内に住所を有する者は住民とする、住民はこの法律の定めるところによつて選挙権を有するとなつております。これをずつとさかのぼつて参りますと、ここに「住所に関する要件」とございますのは、地方自治法にいう住所の要件ということでございます。その住民をとらえるために住民登録法という規定がございまして、住民登録法地方自治法にいう住民登録をするのが目的になつているわけでございますから、この改正案の第二項は、単に「この法律規定する住所」と申しておりますけれども、これはとりもなおさず地方自治法にいう「住所」である。それを人的につかまえますと、住民登録法にいう「住民」であり「住所」でございまして、私どもはこれは民法二十一条の「住所」であるというふうに考えておるのでございます。従いまして、「この法律規定する住所」という字句は使つてございますけれども地方自治法の住民を定めるための「住所」と、住民登録法にいう「住所」、この三者は全然同一のものであり、それは民法二十一条の「住所」である、かように考えておる次第でございます。従いまして、単に選挙住所であつて、便宜のための住所認定をするのではございませんで、やはり一般のほかの法律とも統一的に、民法二十一条の住所とこういうふうに法律的にはつながりがありますので、単に選挙のための便宜の住所ではない、こういうことが言えると考えております。
  35. 高瀬傳

    ○高瀬委員 ただいま金丸選挙部長の説明によりますと、事実問題として、たとえば鹿児島から東京大学へ勉強に来ているというような人は非常にはつきりするわけですね。しかしながら、たとえば、私の選挙区は栃木県ですが、私のところから宇都宮の大学へ行くわけです。そうして宇都宮へ下宿をしております。下宿をしておりますけれども、始終日曜だとかなんとかにうちへ帰つている。そして選挙ともなれば、栃木県の中におるのですから、やはりうちに帰つて選挙をするというのが、おそらく学生の通念だと思うのです。そうすると、ただいま言われたように、「この法律規定する住所に関する要件を定めるに当つては、」というようなことで、学生のいわゆる住所というものが、三箇月以上下宿をして宇都宮に住んでいればそこにあるのだ、これは何らの特例を設けたのではないということで、民法上の住所選挙法住所と、ちやんと並列した二つのものができたということになると、非常に妙なことになつてしまうと思うのです。この法律によれば、あるいは宇都宮に下宿しておつて、そこで選挙権があつても、自分の親元でやろうと思えばできますね。そうなれば、親元で投票するということは例外になつてしまうから、どうしたつて政府選挙権の行使に関して二つの異なつ住所というものを認めていることにわれわれは解釈せざるを得ないのですが、それはどうですか。
  36. 金丸三郎

    金丸政府委員 一人の人につきまして二つの住所を認めるというのではなく、一応下宿の方に住所があると推定を受けることになりますけれども推定でございますから、実態がそうでない場合には、選挙管理委員会自体が、反証をあげて、郷里の方に住所があると認定して、名簿に載せることもできるわけでございますし、学生生徒等が申出をすることによつて、そちらの方に登録もしてもらえるというわけで、ございまして、別に住所を二つ認めておるということではないと思うのでございます。
  37. 高瀬傳

    ○高瀬委員 それはやはり非常に重大な問題です。住所政府が二つ認めてしまつて選挙権行使に関しては憲法に例外を設けた、こういうふうにしかどうしても私には解釈できない。そうでなければ、宇都宮なら宇都宮に三箇月住んでおつて、そこで選挙権ができた人間が、欲するならば自分の親元で投票してもよいなんという規定を設ける必要がどこにあるのか、こういうことになるのですが、この点はどうでしようか
  38. 金丸三郎

    金丸政府委員 先ほど来申し上げますように、学生生活実態が、御指摘のように、ほとんど郷里と縁故がなくなつたというと語弊があるかもしれませんが、現在地の方で実際の生活を営んでいて、もう二年も三年もたつておるというような場合、あるいは二年も三年も市に下宿をしておるかもわかりませんが、土曜、日曜は始終自分の両親のうちに帰つているというような場合、これはいろいろあるわけでございます。従いまして、あるいは何ら規定がなく、個々の学生について認定をするということも一つの行き方ではあろうかと存じますけれども、やはり学生というものは、まず両親なり親族があつて自宅から通学している者と、寮なり下宿なりにいてそこから学校へ通つている者と、まあこういうような類型にわかれるわけでございます。そのような類型について住所をどういうふうに考えるかということを示しますには、一つの基準というものができると、それによつて住所認定が、どちらかと申しますと、容易に行われやすくなるわけでございます。この法律はそのような基準を示しまして、学生住所考え方——立方的に措置されますと、行政府なり司法裁判所も、これによつて住所自体がきまるわけではございませんで、裁判所も結局はその心証なり証拠によつて認定をするわけでございますけれども、やはり一つの基準が与えられたということになりまして、全体的に統一した行政の運営というものができることになるのではないか。そういう意味におきましても、この規定がございますことが、住所認定をいたします上に便宜があるのではなかろうか。ただ、やはり学生住所は個々の学生についていろいろ考えられると思うのでございますが、全体を達観をいたしまして、このように推定をしていいのではなかろうか、またその結果いろいろな行政上の便宜も得られて来る、かように考えまして、このような規定がございました方が私どもは行政上も望ましいのではないか、かように考えておる次第でございます。
  39. 高瀬傳

    ○高瀬委員 この前の六月十八日の自治庁通達趣旨ですね。趣旨はすなわち、地方選挙なんというものは住所というものが選挙権行使の重大要件だ、必要要件だ、そういう点で、選挙というものは何も国会議員の選挙ばかりではないのだから、県会議員の選挙もあれば、町村長の選挙もあり、あるいは教育委員選挙もある。そういうことで、非常に選挙権の行使というものを性格、適正にやりたいから、われわれはこの自治庁通達のような内容のものを立案したのだと政府は言つた。ところが、その趣旨が全然ほつたらかされてしまつてこういうことをやるというのは、われわれに言わせるならば、国会議員などの場合にこれを適用するために立案したとしか思えないのです。なぜかと言えば、国の選挙の場合、国会議員の選挙などの場合には、選挙権の行使に住所というものは必要要件じやないのです。必ずしもそこにいなければ投票できないというものではない。だから、その場合に対応する法律としては、私は一応原則さえはつきりしていればいいと思うのですが、いわゆる地方選挙なんかに対して正確、適正なる選挙権を行使しようと意図して立案したこの前の自治庁通達趣旨と、およそこれはとんちんかんにかけ離れてしまつている。私はこの点非常に遺憾であると思う。だから、少くともあの選挙制度調査会答申というものはそれほど決定的なものじやないわけですから、政府に対する一つの参考意見にすぎないのですから、法律案で出されるということはけつこうですが、その自治庁立案の趣旨原則というものは一応一貫されてそうして便宜上学生に対して便宜を与える、これは私は拒否するものではないのです。しかしながら、自治庁通達の根本理念まで一擲してこんな法律案を出すというのは、ぼくは政府としてはなはだ不見識じやないかと思うから聞いておるのです。この点いかがですか。
  40. 金丸三郎

    金丸政府委員 先ほど申し上げましたように、選挙法住所は、国会議員については単に名簿登録の要件にすぎませんけれども、自治団体選挙につきましては選挙権自体の要件でございますので、やはり住所のことは厳密に考えねばならないということは御説の通りでございますし、また現在でもそのように私ども考えております。ただ、先ほど申し上げましたように、今日の学生生活実態というものを考えまして、このように推定をしていいのではないかというような結論選挙制度調査会で出ましたし、権威ある委員会の結論でもございますので、それを尊重してこのように立法しても、単に居所を住所とするということにもならないのではないか。また、これは推定規定でございまして、このような推定規定がございましても、実際にそこに住所がないものについてまで選挙管理委員会住所として名簿登録をするというわけではございませんので、御説のように地方団体の選挙について住所実態上の要件であるという点を軽視するとか、無視をするとかいうようなことには万々ならない、かように考えております。
  41. 高瀬傳

    ○高瀬委員 その点は非常に見解を異にいたしますから、いずれまた質問いたすことにいたしましてその点は明らかにして法案の審議に当りたいと思つております。
  42. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ちよつと一言。私は先ほどから聞いておつて、この前から言おうと思つてつたが、この住民登録の際にもつと慎重にやらなければならなかつたと思う。もちろん住民登録をやるのは行政上の便宜のためだ、なるべく住民登録もとにして行政をやろうということでやられたのですが、それはあべこべな行政のために住民登録をやるように聞える。きのうも言つたが、配給を受けるために住民登録をしている。説明やりくつの上からは配給を受けるのには住民登録がなければならないが、今言つたように、学生のパスを買うのでも住民登録をやらなければならないから、住所がなくも住民登録をしている。こういうこともこういう問題の起るもとになる。あなた方もどこまでも住民登録基礎にするならばこの点を明確にすべきじやないか、これはいかがですか。
  43. 平賀健太

    平賀説明員 その点は法律はまさしくそういうふうにはなつていないのでありまして、住民登録もとにそれを行政の基礎にして行くということでございます。しかしながら、実際の運用におきましても、やはり法律の精神に忠実にして、ある事柄の便宜のために住民登録の運用を曲げるというようなことがあつてはならないと私ども信じております。住民登録の実際の運用におきましては、今後もなお一層注意をいたしまして、本末転倒するようなことがないように心がけたいと思います。
  44. 森三樹二

    ○森委員長 残余の質疑は続行することとし、本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。    午後零時四十七分散会