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1954-03-11 第19回国会 衆議院 建設委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十一日(木曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 内海 安吉君 理事 瀬戸山三男君    理事 田中 角榮君 理事 佐藤虎次郎君    理事 志村 茂治君 理事 細野三千雄君       逢澤  寛君   岡村利右衞門君       仲川房次郎君    松崎 朝治君       赤澤 正道君    村瀬 宣親君       三鍋 義三君    山下 榮二君  出席政府委員         建 設 技 官         (道路局長)  富樫 凱一君  委員外出席者         建設事務次官  稲浦 鹿藏君         参  考  人         (綜合国土計画         研究所長)   田中 清一君         専  門  員 西畑 正倫君         専  門  員 田中 義一君     ――――――――――――― 三月十日  国連軍演習場使用に伴う被害損失補償に関する  請願岸田正記紹介)(第三二一六号)  秋田船川港線及び能代船川港線を国道に編入の  請願細野三千雄紹介)(第三二九三号)  道路工事につき国の直轄工事継続施行に関する  請願細野三千雄紹介)(第三二九四号)  道路工事につき国の直轄工事継続施行に関する  請願石田博英紹介)(第三三三六号) の審査を本委員会に付託された。 同日  災害復旧関係費の確保に関する陳情書  (第一六四四号)  有帆川等中小河川改修工事施設に関する陳情  書(第一六四五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  道路に関する件     ―――――――――――――
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  道路に関する件について調査を進めます。  本日は前回の委員会におきまして決定いたしました本州を縦断する高速道路につきまして、参考人田中清一君より、その構想につきまして説明並びに意見を聴取することといたします。  田中さんに一言、ごあいさつとお礼を申し上げます。参考人田中清一君には、御多用中、しかも悪天候の中を、わざわざ当委員会へ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。  道路の問題に関しましては、当委員会といたしましても、先般ガソリン税収入道路費に充てるという画期的な法案が整備せられまして、産業開発のために、まず産業道路整備改良、こういうことに重点を注いで、予算上の措置が着々と講ぜられておるわけでございます。しかしながら、限られた予算の範囲内において、これが整備に当ることは、なかなか困難ことでございます。そのために、新しい方法といたしまして、先年特定道路整備法、いわゆる有料道路の制度も設けられたわけでございます。しかしながら、これをもつてしても、なお日本道路開発を全面的に進めることは、なかなか困難でありますので、でき得ることであるならば、民間資金あるいは外資、あらゆる資金をもこれに動員をいたしまして産業道路開発に資することが適切ではなかろうかという意見も、国会において今日出て来ておるわけでございます。  かかる際に、田中さんの高邁な、しかも長年月にわたつての御調査高速道路の件についてお話を伺うことは、私たちといたしましても非常に喜びにたえません。時間の許す限り、ひとつ意見を承りたいと存ずる次第でございます。  なお、当委員会といたしましても、質疑その他を通じて田中さんの御意見を十分尽してもらいたい、さように考えるわけでございます。一言お礼を申し上げます。  それではただいまより田中さんのお話を伺うことにいたします。
  3. 田中清一

    田中参考人 ただいま委員長殿から御紹介をいただきました田中清一でございます。  本日は、この権威ある国会建設委員の方々が、私のようしろうとの考えた道のアイデアについて、デイスカツシヨンするという機会をつくつていただきましたことに対しまして、民間の一しろうとの私といたしまして、これ以上の光栄はございません。これまでにいろいろお運びくださいました御列席の皆様に対して、厚くお礼を申し上げます。  この道路を考えましたことは、決して私が利益を得ようとか、あるいは道のための道をつくつて遊ぼうとかいうことではございません。この八千何百万という民族が生きて行くには、どうしたらいいかということから起つたのでございまして、決して道つくりのための道ではございません、ほんとうの血と涙で、これは研究したものでございます。どうかひとつそのつもりでお聞きになつていただきたいと思います。  と申しますのは、日本が敗戦いたしまして、だんだん領土が狭くなり、人口はますますふえて参ります。そして資源はなし、一体どうして生存しようかということが、もとでございまして、これを解決する方法三つ考えてみたのでございます。一つ産児制限による人口の調節、一つ輸出貿易によつてまかなう、もう一つは移民による、この三つを考えたのでございますが、それは三つとも、ほんとうに厳密に考えたら、全部不可能でございまして、残されたところは、この日本の国を開発して行くよりほか方法はないということになつたのであります。  それで、今まで私の調査しましたところによりますと、戦争の起るもとは、人口食糧アンバランスでございます。まあ資源アンバランスと申し上げた方がよいかと思いますが、まず、なかんずく食糧でございます。この食糧かなければ、いかにどんな学問でも芸術でも成り立ちません。そこでどうしても日本は、一億人くらいの人が楽に食えるだけの食糧をとらなければならぬということがもとでございます。今までのよう日本の八〇%ある山と高原を捨てておいて、二〇%の大河川沖積層二毛作三毛作がとれ、冷害旱魃もなく、一反の米が十俵も十二俵も十五俵もとれ、また麦が八俵もとれるようなところをつぶして、生産によらざるものをどんどんつくつて行くことがこの国のがんであります。だから、これを是正することが問題でございます。そうするのには、日本高原とか山を生かして、生産によらざる施設をそういつたところにつくるということがもとでございます。  それで日本の国を踏査してみますと、仙台の向うの王城寺原にしましても、春日原にいたしましても、軽井沢にいたしましても、富士山麓にいたしましても、また遠くは九州の阿蘇高原にしましても、水のいい、空気の清澄な景色のいい、人の住むのにりつぱなところが幾らでもある。その他愛知県の鳴海の方面、それから瀬戸の方面、あるいは愛知県と岐阜県との境の美濃の多治見から大井、あるいは中津川、その他岐阜県の側に行きましても、三濃村からあれにかけたところは、ほとんど不毛の土地でありますが、地磐はかたく、水がたくさんありまして、人の住んでいいところを数えて行つたら無数にあります。そういつたところをほつたらかしておいて、二毛作三毛作とれるような大河川沖積層のいいところをとつて行くということは、どういう国土計画であろうかということを考えたのであります。これを生かして使わなければならぬ。生かして使うのには道が必要である。そういつたところへ行つて、人さまに住めと言つてみたところで、道がなければいかぬ。  それで、近いところを見ましても、富士山麓などは、私の計算によると、富士山麓にあるあの水の自然湧出だけを飲むといたしましても、東京都の上水道と比べましたら、二百六十四万人の人が楽に住むだけの水がありまして数十万町歩のがらがらな不毛の土地があり、景色がよく空気がよい。それで、今私が考えておる道で行きますと、四十分ないし一時間の東京郊外になる。軽井沢にしましても、現在の科学を利用した道、その他ドイツにおいてヒトラーがつくつたオートバーンとか、アメリカのペンシルバニアの道路網のごとくしたら、軽井沢へは一時間二十分で行く。那須野原でもそうです。とにかく近いところに幾らでも人が住んで快適な生活ができるにかかわらず、大河川沖積層二毛作三毛作冷害もなく旱魃もないいいところをつぶして、食糧がないからといつてどうしてよその国に大砲をぶち込んで行くかということになる。そこで、そういうところには道路が必要じやないかということになりまして、私は日本全国至るところを踏査いたしました。それで、どこにはどんな川があり、どこには森林が何万石、何百万石くらいあり、平野がどれくらいあつて、水はどれくらいあるかということを全部調べましてこれなら一億人の人がここに住むにしても、ちよつとも不自由のないだけの食糧もとれるし、木材にも困らぬ。困るのは、里山を切つてしまつておる。奥地には、この道で行けば一時間で行けるようなところに、立腐れになつておる木が、山には一億本ぐらいある。これは北海道の端から鹿児島の端まで見たら、立腐れつつある材木は、最小限度五億四千万石はある。道さえあれば、東京へ一時間半あるいは一時間で来られる郊外があるということを考えますと、この国は狭くない。狭いどころか広い、こう思うのでございます。  それで、この道をつくることが第一だと思つて全国道路網を建設することを考えましたが、なかなか金がたくさんかかることでありますので、最も効果のあるところ、東京大阪神戸間、東京神戸間と申してもよろしいのですが、名古屋を入れた六大都市をぴんと結ぶ最短距離の道をつくつて、そこを資源開発道と称してやつた効果があると思う。御承知ように、富士川にしても大井川にしても天龍川にしても、近江の琵琶湖にしましても、ここをするだけで、水力電気で百五十万キロなら簡単にできる。その電気東京に持つて行つても、横浜に持つて行つても、清水港へ出しましても、焼津港べ出しましても沼津へ出しましても、その他岐阜でも名古屋でも、一番近いロスの少いようなところに持つて行く。ここに有名な電源があるということを考えると、この国には何が足らぬか、結局頭が足らぬということにならぬかということになつたのであります。  はなはだ口幅つたいことを言いますが、そうすれば、この国こそが地上天国になる。何が足らないでわれわれは何べんも何べんも悲惨な戦争を繰返したかということになる。そうすると、結局問題は食糧が足らぬ。食糧さえつくれば地上天国だということに結論としてなります。これはあとから御質問くだされば、私はここできちつと数学的に申し上げる自信を持つております。そういうわけで、第一に一番効果のある、皆さんの手近でおわかりになる東京大阪間をやろうと思つて調べました。足で調べておりますから、どんなところにどんな川があるか、どんな木があるか、どんな岩があるか、全部知つておりますから、あとで御質問いただきたい。  東京を起点にいたしまして、八王子にかかりまして中央線行つて、大月から富士吉田に出まして、富士山麓の広漠たるところを東京郊外にいたしまして、それから富士川に下つて富士川にできるだけ電気をつくつて——今までのようダムと道を別にしません。少しぐらいのまわりはありましても、ダム堰堤通りまして大井川に出ても、大井川に電気をつくりまして堰堤を通つて行く。また天龍川に出ましてもその通りであります。そうして中部アルプスと称せられておる赤石岳の方の山を貫いて飯田に出まして、それから昔の中仙道を通りまして美濃中津川に出まして、大井行つて、多知見に行つて内津峠を仰いで小牧飛行場通りまして、一宮を通りまして木曽川を渡りまして、そうすると岐阜県の笠松の南を通ります。そしてあの揖斐川と長良川の下をくぐつた方が安くつきますから、下をくぐることにしております。そうして大垣の南に出まして、関ケ原に行きまして、米原に行く。それからはほとんど今の東海道線に沿いまして京都の南に出まして、そうして今の山崎で今度は北側に移ります。そうして吹田に出まして神戸に行く。こういった道を、ほとんど直線でつくることができるのであります。だから、それをつくりますと、この沿線においてほんとうに力を入れて興そうと思えば、琵琶湖で百五十万キロくらいの電気か簡単に興ります。それから材木は恵那山からあれにかけまして二億七千万石が楽に出せる。それからあの附近には昔から掘つた鉱山がございます。昔は、御承知通り馬の背中で出したりしましたが、そろばんに合わないよう廃鉱がたくさんあります。こういった道ができて、精錬所に一日に三回も四回も通えるようになれば、昔の廃鉱良鉱になります。現在も峯の沢とか宝とかいう鉱山を掘つておりますが、その他たくさんの金山、銅山があります。  もう一つ日本中気がつかず、私も知らなかつたのですが、精密工業というものは、どうしても海から三十キロ以上隔たつていないと、だめなんであります。私は、この仕事は三十七年もしておりますから、その方はエキスパートであります。それで私の方と同じことをやつておる工場が、清水岐阜県の山奥にございますが、同じ技師が同じ図面で同じ工員で同じ設備でつくりまして、数等どころではない、問題にならないほどいいものができるのです。それで、御承知ようスイスだとか、あるいはアメリカのミシガン湖の付近とかが、あのりつぱな精密なものをつくるというのは、それなんでございます。  日本は、工場立地といえば、必ず海岸でなければならないよう思つておりますが、海岸は一番地盤が弱くて、潮風が来て、砂ぼこりがして湿度が多いから、仕事ができない。その精密なものができないようなところで仕事をやつておる。日本はボールベアリングをつくりましても、時計をつくりましても、ろくなものは一つもできません。できておつたら、私はお目にかかる。私は全部調べておる。できないようなところの立地でやつておる。もしも、こういった道ができましたら、この沿線というものは、スイスようになつてしまう。  御承知ように、日本はもう重工業などではなかなか行きません。私は三十七年もやつておるのですから、わかつておる。もし重工業で行くというなら、その人は頭がないのです。なぜならば、日本燃料原料も全部買つてつて、どうして先進国燃料原料もあるところに太刀打ちすることができましよう。私の方はタイ、仏印、ビルマ、ノース・ボルネオ、ハワイからフイリピンヘも売つておる。インドはもちろんです。もうあそこまで行つたら、私の方の機械は一割高いです。西ドイツとかチエコスロヴアキアの機械より高い。結局悪くて売れないならあれですが、よくて売れないのです。どうしても高くつく。どうしてこのハンディキヤツプを埋めるかということを考えなければならぬ。どうしてもこの国にふさわしい工業に切りかえなければならぬということになります。もちろん造船だとか造機というものは、海のはたでやらなければならぬが、日本が最も得意とするところは、みんな日本の人の手を利用して、材料が少くて、目方が軽くて、ドルのうんととれるよう時計であるとか、あるいはカメラであるとか、あるいは精密な工作品、そういつたものをつくらなければ国は行きません。これはいかなる権威者に対しても、私は言うだけの自信を持つております。私はやつておるのです。そこで、私は二の道をつくるということが、この国を今ここで建て直すことだ、これ一本でそのくらいの自信を持つております。  そこで、もしこの沿線に住めるだけ人を住ますということになりますと、大体三百五十万人の人が、今まで住まなかつたところに住める。つまり、今までの道の常識といたしましては、都市にしましても、町にしましても、村にしましても、人のおるところへ、人のおるところへと、筋をかえてでも、坂を下つてでも登つてでも、そういうところへつけたのでございますが、日本でよその国のような広い野原に、はたから来ましてそこへ家をつくつて、その広いところが繁栄すれば、それが繁栄だと思えば、それは別ですが、日本ような狭い国で、とにかくそういつたことをしておれるかどうかということが問題であります。何とかしてこれを立体的に住めるように、平家をビルディングにすると同じことをして住んで行きさえすれば、一億人ぐらいの人は楽に住めるということがはつきりわかるのです。これはどなたが計算されてもできます。まだ一億人になるまでは二十箇年かかりますから、われわれはそのうちに立ち直つて、そうしてこの国をいい国にできるということを考えます。  それで、もう一つ考えに入れなければならぬことは、御承知ように、今食糧買つておるだけでも一千七、八百億円と申しますが、これは容易なことではございません。今までのように、よそから持つて来てくれるような金があれば別ですが、それをほんとうに国民が働いてこれだけの外貨を獲得しようと思えばたいへんで、むしろ不可能でございましよう。そういうことを考えましたときに、これはどうしても、いついかなることがあつても、この民族は飢えないというように、食糧だけは自給自足せなければならぬということを私は考えております。これは御質問があればお答えしますが、食糧を自給自足せぬような国は、平和国家文化国家になりはしません。これをやらなければならぬということになつて来ると、今までやつたように、食糧増産というとすぐに高原開発高原開発——私は八百五十メートルのところに生れて、千メートルのところを二十四の年に起し耕してやりましたが、そんなところは、冷害があり旱魃があつて、三分の一もとれない。そういうところに百倍も労力をかけてやつておるのです。こんな愚かなことはないのでありまして、それよりも河川沖積層二毛作三毛作のできる、現在都市となりつつあるところの五十万町歩の上にすれば、さつまいもも麦も入れて、米に換算して二千万石とれるのであります。そうすれば、今かりに米が五千八百万石は完全にとれる。麦が千二百万石で七千万石。その上に二千万石ふえれば九千万石。さつまいもが十五億貫、ばれいしよが五億貫とれる。そうして今後この道ができることによつて、今まで奥地の牛や馬や羊も連れて行けなかつたところに、どんどん広大な酪農地帯、すなわち牧場ができて、動物性カロリー、それに魚獲物等の蛋白、脂肪などを入れますと、私は一億人の人は簡単に住めると思います。それをすることが、私はこの国の至上命令だと思つております。今までのように、こんな小さな国で食糧なんかとるよりも、大砲をぶち込んででも領土を拡張すればいいということが、もうできなくなつた以上は、ほんとうに敬虔な心に立ち返つて、自分の国をよく見詰めてやらなければならぬというのが、私がこれを考えたもとでございます。  それで、日本全国私の好きなように、あの青写真のようにやりまして、三十億ドルしかいりませんから、ちようど日本の一兆円予算と同じ額です。それは一年にはできませんので、十年にしても、一年に一年億円でできるはずです。そうして、これがもしできたとしましたら、国際観光収入が一千億円ぐらいとれる見込みでございます。どうしてかと申しますと、国際観光先進国スイスでございましようが、スイスは、御承知よう日本の五分の一ぐらいしかございません。あるいは六分の一と言つてもさしつかえないでしよう。そうして日本ような、陸前の松島であるとか、瀬戸内海であるとか、天の橋立であるとか、伊豆半島でありますとか、志摩半島でありますとか、その他等々、日本ような海の景色はちつともございません。それでおつて二億七千万ドルをとつておるのであります。ちようど一千億円でございます。私らの方は六倍近くもあるのですから、一千億円ぐらいは完全にとれます。それを考えこれを考えますと、食糧を千七百億円買わぬようにすること、それから国際観光収入でかりに一千億円とると二千七百億円。十年もたてばニユーギニアくらい買えるようになるので、人口がふえたつて、ちつともさしつかえないことになる。それが目的でございます。  この中央道に対する資源開発——中央道というのは、今ちよちよ弾丸道路とおつしやいますけれども、弾丸道路というのじやございません。私は資源開発するためにこの道をつくるのでございますから、弾丸道路とは違います。それで、この点については、約一千億円ほど金がかかるのでございますが、それは一年にはできませんから、五年かかるといたしますと、二百億です。ちようど今の失業救済にかけるほど、少し張り込んで出してもらえば、できます。それから今、日本失業者がたくさんおります。あるいは行政整理とかいろいろなことがございますが、仕事がないところに首を切つても、同じことでございます。それよりも、仕事をつくつておいて配置転換すれば、みな喜ぶ。日本の国にいる人が、どこに行つたつて食えぬようでは、失業しておれば失業救済をやらなければならぬが、それよりも、仕事をこしらえてやる。そうして、これは決してインフレになりません。なぜならぬかと申しますと、今材木は一千倍でございます。一番高い。元二円五十銭で買えたようなものが、二千五百円です。ですから、一千倍のものが、道は全部通らぬでも、赤石岳までとつつきさえすれば——ここにはその方のエキスパートの方がいらつしやるから、ぼくが喋々と説明しなくても、今日のトンネル技術をもつてすれば、ここはトンネルーつさえ掘れば行けます、あの大井川に出ることになりますれば——大井川に出なくても、野呂川にも出られますし早川にも出られます。そうすれば、とにかく一番高くて困つておるものが、一番早く出て来るようになります。それから、ここに長野県の方がいらつしやいますかしりませんが、長野県の三峰川の奥からこの道路沿線にかかつたところには、うわさに聞くところでは、石灰石が十億トンもあるということでございまして、かりに一千万トンずつ使つても、百年も使うほどあるのであります。これは露頭に出ておるので、はつきりしておる。そういつたよう資源開発して、そうしてセメントをつくつて輸出してもよろしゆうございます。それからまた、ダムをつくつてもよろしい、道をつくつてもよろしい。またビニールにしてもよろしい、あるいは肥料にしてもよろしいのであります。  そういつた資源がこの道の沿線にたくさんあることはこれは実際なんです。何とかしてこの道だけを日本の復興のために、日本の再建のためにつくつていただきたいと思いまして、ここに富樫先生がおいでになりますが、私はたびたび行つてお頼みしておるわけであります。そして去年はそれをお聞き入れになりまして、一千万円の調査費用をお出しくださいましたので、今せつかく調査しておるのでございます。それで来年度にもう少し予算を出してもらつてボーリング調査をしたりいろいろすれば、ほんとうにもう着手できる。  それで、とにかくこれが通つてしまわぬでも——私はけさも聞いておりますと、東京都では水道、下水道その他学校、住宅に非常にお困りらしいが、そんなことにお困りになる必要はないのです。一時間で行けるところに何十万町歩という土地がありまして、材木幾らでもあるし、ちつともお困りになる必要はありません。ここはそういつた面エキスパートの方ばかりですが、ほんとうにやる気なら、一年でここまで行けます、富士山麓まで持つて行けばいいのです。そうすれば二年ばかりでできるのです。ですから、ひとつそういつたようなことにしていただきたいと思つて、私はこれをお願いしたところ、幸いに権威あるこの委員会で私に説明しろということで、まことに私は、光栄というよりも涙の出るほどうれしいのです。どうかひとつきよう田中清一とつちめてやろうというようなつもりで、私に質問してくださるならば、お答えいたしたいと思いますから、お話の方はこれくらいにしておきまして、御質問を承ることにしたいと思います。
  4. 久野忠治

    久野委員長 田中参考人の陳述に対しまして、発言の通告があります。順次これを許します。内海安吉君。
  5. 内海安吉

    内海委員 田中清一さんの、国土総合開発の観点から多年にわたつてつたく私財を投じた御研究の結晶を、本日当委員会でその一端を発表していただきましたことは、感謝にたえません。  御承知のごとく、われわれは短かい間の歴史ではありますけれども、犬養内閣を思わざるを得ないのであります。当時、私の先輩である山本条太郎氏が、やはり田中さんと同様な意見もとに、日本の政治、経済、文化のあらゆる面において、ほんとうの国民全体の幸福を導かんがためには、どうあつても産業立国策で進まなければならない。ちようど山本条太郎氏の提案にかかるものを犬養内閣においてこれを実行に移そうとかかつて、あるいは産業の開発に、あるいは交通機関の整備に、さらに水産日本としての本能を発揮せしむべく、ちようど閣議があつたその爾余の一時間というものが、山本条太郎氏によつて講演をされたことが、今なお私の耳に新たなるところでございます。ところが、不幸にして犬養内閣は、御承知のごとく五・一五事件のあの青年士官のために倒れてしまつて、遂にその計画は行われなかつた。  最近においては、御承知通り、心盛んなればはてしなしという、いわゆる壮心無涯ということを大なる目標にして、そうして大東亜戦争まで行つたところの東条内閣は、無残にもわれわれの国を滅ぼしてしまうがごとき前夜まで導いてしまつた。われわれは、今ここに政治、経済、文化の面において、いかにしてもこの再建をはからんとするには国土の総合開発にまつて、そうして食糧の確保、進んで地下資源開発もとより、水産立国をもつてつて参りました日本独特の技術と産業の動員をもつてするにあらずんば、とうていわが日本は独立を維持することができないというのが現段階であります。われわれは、建設委員会の一員として、さらに田中さんと同様に総合開発審議会の一員として同様な研究を続けて来ておるものであります。もちろんこの問題は、全体をあげて議論するということになると、一日二日ではとうてい結論を見ることができませんので、ここに建設委員会の立場において、特に道路ということを問題にいたしまして田中さんに一、二点について御意見を承つてみたいと思うのであります。  第一に、ただいま仰せのいわゆる中央道案は、山岳地帯を開いて行かなければならないので、技術的に非常に困難があるばかりでなく、これが建設費も相当高くつくのではないかと考えられるのであります。特に隧道が多いと聞くのであります。この点について、なるほど描かれる理想はまことにけつこうではあるけれども、建設計画がこれに伴わなければ、せつかくのこのお考えも、実行に移すことができない遺憾の点もあるのではないかと思いますが、この点について、まず田中さんの率直な御意見を承りたいのであります。
  6. 田中清一

    田中参考人 今の内海先生の御質問にお答えいたしたいと思います。  なるほど内海先生のおつしやいます通りに、山岳地帯を行くのでありますから、工事が困難であることは事実でございます。またトンネルの長いことも事実でございますが、ああいつたところに道をつくる場合には、この道の性質ということをひとつ考える必要があると私は思うのでございます。と申しますのは、少くともこの道路が高速で行くということになります以上は、でき得る限り、というより、むしろ全部を立体交叉で行かなければならぬことになると思います。それで、平地を行きますには、どうしてもこの道の幅は大体二十二メートルにして行くのです。その理由はあとから御説明申し上げます。二十二メートルの幅で、少くとも八メートルの高さにしなければ、これが通れないのです。御承知ように、自動車に麦わらや、たくさんかさがある荷物をちよつと積めば、五メートルになります。五メートルになると、さらに一メートルなければこの立体交叉のトンネルは通れません。少くとも六メートル、あと二メートルぐらいの高さがなければ通れません。そういたしまして、その農耕地を買い入れる——農耕地ばかりではない、住宅地も買入れなければならぬ。また平野になりますと、五里も六里もある山から雇い土をして来なければならぬ。そんなことをしましたら、たいへんなことになります。かえつて平野の方が高くつくと思います。土地の買収費と雇い土に相当の費用を要すると思いますが、これは専門の方の御計算におまかせします。私の計算では高くつくと思います。こういった山岳地帯を行きますのは、一番困難と思われるところは隧道でございますが、隧道は橋梁に比して三分の一でできます。私は今後のことを考えると、少くとも五十ンの車を通すくらいな計画を立てなければなるまいと思います。そうしますと、橋梁ならば現在の鉄の価格からいたしまして、一キロ当りどうしても十一億五千万円かけなければできません。隧道は、九メートルにいたしまして、そして完全鋪装と、それからコンクリート巻きをいたしまして、二億円程度で一本だけできます。そうしますと、二車線が向うへ行きまして二車線がこつちへ抜けて、四億円ぐらいで一キロ当りできるのであります。そうすると、ほとんど三分の一でできるのでございます。それからもう一つ平野に比して、切取りは非常に安くつくのであります。  もう一つここに御疑問があろうと思いますのは一これは静岡県の地図でありますが、これが大月であります。大月までは何のへんてつもない、今の中央線のところを通つて来ればいいのでありますが、ここから入りまして富士の五湖でありますが、ここにたくさんの人が住めるということであります。そしてここに三百メートルほどの橋が一つあります。これが富士川の支流の早川であります。ここに雨畑川というのがあります。それからこれへ入ります。これは大井川であります。ここへ抜けます。ここが九百メートルで、ここを通ろうとするとここで七キロの隧道になります。それからここへ出まして、ここが八百三十メートルになりまして、これが九キロになります。ちよつとこれはたいへんな工事であります。今建設省の方では、田中の案は無理だから、もう少し隧道を五キロくらいにしたらよかろうということで、今直していただいております。それで多少道は高いところへ行つたりしますが、かりにこれといたしましても、今の技術をもつてすれば、私はそう大して難事ではないと思います。  と申しますのは、私の最近調べたところによりますと、現在静岡県といいますか、長野県といいますか、静岡県の方の佐久間ダムの排水路をやつておりますが、一日に十メートルずつ進んでおります。十メートルといつたら十  一メートルどうしても切らなければならぬ。その割合で行きましたら、私はそんなに困難なものじやないと思います。それで私が先ほど二億円程度と言いましたのは、私の調べたところ、ここは全部水成岩であります。丹那トンネルのように、上に盆地があつて水が出るということは、ほとんどないと見ております。まずあそこにある水成岩を現在の価格で切ろうとすると、私一番初めに九百八十一億円で見積つたときには、立米を三千円で切るものと仮定いたしました。それから一割ぐらい上つたので三千三百円と見ております。そして鉄材は一メートルの長さに対して半トンの割合で、たくさん使うところもあれば、使わぬでいいところもあると見ております。それから坑木は、いるところもいらぬところもありましようが、一メートルの長さに対して大体八石と見ております。そして二億円ぐらいでできます。そうして考えてみますと、今内海先生のおつしやいましたことは、われわれもそのことを最もおそれておるものでございますが、だんだんと科学の発達によつて、案外心配なしに行けるのじやないかというような考えがいたすのでございます。
  7. 久野忠治

    久野委員長 総工費でどのくらいかかりますか。
  8. 田中清一

    田中参考人 総工費は東京神戸間一千一百億円ばかりになります。
  9. 久野忠治

    久野委員長 一メートル当りどのくらいですか。
  10. 田中清一

    田中参考人 一キロ当り約二億で、ございます。
  11. 内海安吉

    内海委員 もう一つ、これは今後道路計画推進の上において絶対必要なことですが、建設省においても、実は東海道の弾丸道路計画が進められておる今日、この上あなたの御計画になつておられます中央道がどうしても必要であるということは、大体において今の産業計画というような点から了承はできるのでありますけれども、こういう考えを起した基本はここにあるということを、もつと簡単に御説明ができますならば、この際説明してください。
  12. 田中清一

    田中参考人 それは先ほどもるる申し上げましたが、日本の建直しが目的でございますから、資源開発が重点でございます。そして、あわせて六大都市最短距離で結ぶことができればということでございます。それで山林資源、地下資源、水力資源、観光資源等々、できればここにダムをつくることにおいて、この流域の治山治水もやつて行けるということを考えたのでございます。
  13. 内海安吉

    内海委員 この機会に、建設省当局もおいでになつておりますから、この中央道計画に対して、私は日本再建とさらに国土総合開発という観点から見ますと、これは当然来るべき機会に推進しなければならない問題ではないかと考えますが、これに対して建設当局の御意見を、この際参考までに承つておきたいと思います。
  14. 稲浦鹿藏

    稲浦説明員 田中氏の御計画、まことにけつこうでございまして、われわれも、その熱意に対して非常に敬意を払つておるものであります。ただ、現在の日本道路状態を見ますと、ごらんの通り国道、地方道、どれ一つとして完全に自動車交通のできるものがまだありません。現在において、東海道ですらまだ改修が完成していないという状態でございますので、まずわれわれとしては、現在の道路をある程度道路らしいものにして行くということが、まず道路に対する第一の考えであります。  それから国土計画という観点から行きますれば、田中氏の道路は、弾丸道路というよりも、むしろ生産開発道路というような観点から考えて行くべきものじやないかという考えを持つております。それで先ほどお話なつように、今年一千万円の調査費をもちまして、そういう観点で調査しております。できれば、将来そうした国土総合開発の立場から検討して実現に移すことができれば非常にけつこうだと思いますが現在としては、われわれは現在の道路をまず完備するということをやつて行きたい、かように考えております。
  15. 内海安吉

    内海委員 よくわかりますが、一昨日でございましたか、この委員会において建設大臣が、道路整備費の財源等に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、こういうものを今国会に提出せられまして、この法案を今後において議し、われわれも何とかこの法案の通過に協力したいと考えているのでございます。聞くところによれば、この中央道問題については、建設省においてもそれぞれ調査費を前年度からこれに与えて調査を進めているやに聞いているのでありますが、昭和二十九年あるいは三十年度においても、継続してこの調査をお進めになるお考えであるか、この点を伺いたい。
  16. 富樫凱一

    富樫政府委員 中央道につきましては、二十八年度の補正予算で、総合開発調査費から一千万円を出しまして調査することになつております。ただいませつかく調査が進められておりまして、本年度でこの調査は完結する予定でございます。二十七年度からついております調査は、東京神戸高速道路−大体ただいまも東海道に並行する高速道路について調査費を出しております。二十九年度にも一千五百万円を計上しておりますが、これで調査が完結する予定でございます。
  17. 田中角榮

    田中(角)委員 建設省に関連質問をしておきたいのですが、道路法を改正したときに、今までの都市都市を結ぶ線であるというよう道路の基本観念を改めて、新しく産業開発を行う、いわゆる人口の再分布を行うという基本観念にかえなければいかぬというのが、新しい道路法をつくる当時の観念であつたわけであります。そういう意味で、吉田内閣が五年間も外資導入によつて行いたいと言つている、いわゆる建設省原案である既存の東海道の国道と並行した高速道路をつくろうという案に対して、ただいま田中氏が言われた開発道路のアイデアというものは、非常におもしろいと考えているわけであります。もちろん政府が考えている既存国道に対する並行の道路とは別にこの問題は解決すべきだと思うのでありますが、経済的な価値から考えて、政府が今考えている高速道路とは全然別にこの道路をやるということではなく、政府原案をこの道路構想に切りかえたということを仮定して考えた場合、この道路に対して、何年間ぐらいで、その工事費は大体千百五十億——今の案が千百億だから、物価の値上りを見れば、大体千二、三百億ぐらいでできると思うのですが、この道路を別な資金民間資金等でもつてやるという考え方に立つた場合、大体何年間ぐらいでペイできるかということが一つ。  もう一つは、大体六百キロと押えて、時速百キロとすれば六時間ということになるのですが、神戸大阪東京間をつなぐということになると、非常にスピード・アップされるわけです。ヒトラーのオートバーンは、大体五十二年ないし五十三年ぐらいの車で百二十キロ、最もスピードの出るところでは百七十キロ、平均百四十キロぐらいで飛んでいるわけでありますから、そうすれば東京神戸間が約五時間で飛べる。夢のような話ではありますが、われわれが道路法をつくり、またこのたび道路整備費の財源等に関する法律を立案した趣旨も、そこにあつたわけであります。私は非常におもしろいアイデアであると考えておりますが、資本金に対してどの程度でペイをするかという専門的な見地からお話を願えるならば——私の考えでは十年間ぐらいでは年一割配当、十年以内でペイをするのじやないかとは考えておりますが、あなたのような専門家が、三年間でペイをするとか、東京神戸間が五時間で飛べるということになりますと、国民は保全経済会に金を出すよりもこの道路に金を出そうということになり、日本の経済はうんとよくなるのです。そういうところに持つて行くのが建設行政なんです。私はここでとんでもない質問をしているようですが、目標は誤らないと考えている。専門的な立場から、この二点だけ意見があつたら聞きたい。
  18. 富樫凱一

    富樫政府委員 ただいまお話のありました現在建設省が考えております東海道に並行の高速道路中央道に乗りかえた場合に、どういうふうになるかというお尋ねでございますが、かりに建設費が同じだといたしますと、いろいろ問題が考えられるのでございます。私どもの紙の上での調査では、建設費は中央道通りますと、おそらく相当高くなるという考え方でございます。これは先ほども申し上げましたように、ただいま調査中でございますので、その調査がつきましたら、もつと正確な数字を申し上げ得ると思いますが、ただいまのところでは、大体三倍ないし四倍かかるのではないかと考えております。  それから償還できる期間の問題でございますが、ただいま建設省の考えております高速道路では、五分利にして十五年度で償還できるような勘定であります。これは取る料金の多寡に関係するわけでございますが、ただいまは大体一キロ十円ないし十五円ということで勘定して、十五年という勘定をしておりますけれども、アメリカあたりの例で行きますと、大体その近所になるのではないか。あるいはもう小し高くてもいいとも考えられますが、そういつた前提で勘定して十五年という数字を出しております。
  19. 田中清一

    田中参考人 今富樫道路局長さんが、専門的立場から、この中央道はこちらの三倍かかると言われますと、私の方の計算が間違いということになる。私の技術に相当の影響がありますので、これは弁護しなければならぬ。こちらの方を行くのは、どういうわけで高くつくかということになると、おそらくいかなる人も、山を行くから、トンネルを行くから高くつくということになるでございましよう。平野の方を行きますと橋が——山の方を行くと三百キロでできるものが、千キロくらいになる。橋がたくさんあるはずです。一番高い橋と、それから道も六十キロ以上遠くなるのですから、それより高くなるということでは、私のせつかくの十年もかかつてつていることが、お前あほうかと言われてもしかたがございません。(笑声)あほうではございません。なぜかと申しますと、ここから大阪まで四百キロそこそこで行くのです。隧道ばかり、もぐらもちみたいに行つてみたところで、四億円なら千六百億円です。たまには頭を上げますから……。もぐらもちになつたところで、隧道が一番高いということになりましよう。これは私の独断の設計ではない。私は建設省で御計画になつたあちらの方の計算書も見せていただきましたが、隧道は、東海道の方は三十二キロ六で百十七億何千万円でできるということが明確に書いてございますから、そうすると三億七千八百万円でできるという計算ができている。東海道の方より中央道の方が、トンネルが倍も三倍にもなるということになれば、これはたいへんな問題になるわけでございます。  それで、高くなることが、一つございます。これは申し上げておきます。たとえば足場の悪いところに架設をする場合は、どうしても五%方高くなるものと見ていただけばいい。これは皆様の御明識に訴えたいと思います。  それからトンネルが長くなりますと、かりに一キロの場合は二億円でできるといたしましても、その次の一キロは大体二〇%と見ればいい。私は一〇%ぐらいで行けると思いますが、大体二〇%と見ればいい。そうするとその次の一キロは大体三〇%ぐらいになると思います。それは前後してもよろしいのであります。その次へ一キロ行きましても大体五〇%より高くはならぬ。これはなぜかと申しますと、トンネルが短かいところがたくさんあれば、たとえば一里隔たつても、架設するコンプレツサーなどは全部持つて行ける。私は隧道の権威者です。戦争当時、日本中の隧道工事を指導したのは私です。それから日本の建設界の皆さんでも、熊谷さんでも、飛島さんでも、坂井建設さんでも、みな私の友人です。私があの当時百十七万円という、今なら何億という金を出してトンネルの建設をさせたのです。だから、その方は、多少自信がございます。
  20. 久野忠治

    久野委員長 参考人に御注意申し上げますが、まだお尋ねしたいことがたくさんありますので、結論だけを簡潔にお答えいただきたい。
  21. 田中清一

    田中参考人 それで、結局三倍もかかることはないということを確言いたします。
  22. 田中角榮

    田中(角)委員 稲浦さんにお伺いしたいことは、これは日本の土木技術の粋を集めてやらなければならぬ仕事であるし、またこれくらいの画期的なものを、稲浦次官御在任中にやるということは、非常にいいことだと私は考えております。それで総延長四百キロ、一キロ三億円にして千二百億。二億にすれば八百億ないし九百億ですから、値上りを見ても千百億という数字は、大体妥当な数字だと考えます。ただ政府原案は、既存の都市を通つておりますから、その部分的竣工によつても、非常に早く実効が上るということが利点でありますし、現在の交通緩和という問題も非常に大きくなりますから、新しい道路よりも、償還をする期間が短かくなる、こういうふうに考えるのは普通であります。それで大体十五年という道路局長の説明でありますが、これは今までの交通量を考えるから十五年というのであつて、実際は二分の一くらいに短縮されるのではないかというふうに私は考える。そういう意味で、私は総延長が四百キロないし五百キロという新しい道路は、十年以内、すなわち私企業としても、一割以上の配当ができるのではないかというふうに考えられるのです。今田中さんの言われた通り、総工費千億以内の予算だということを前提にして考えた場合、技術屋として大体どの程度でペイすると考えられるか、あなたから一言聞いておきたい。  もう一つは、既設道路に並行するものは、どうしても障害物が非常に多い。それで現行のままでやるには、部分竣工できても、全長はなかなか予定通りには竣工しないのじやないか。私はこういうものをつくるには、やはりアメリカでやつたテネシー・ヴアレーのような特殊な法律をつくつて、特殊な権限を持たせてやらなければいかぬと思う。特に今イギリスでは、衛星都市というものに対してコーポレーシヨンをつくつて、強大なる土地収用権限を与えてやつております。もちろん、この種の事業をやるには、現在の土地収用法の段階ではできないと思う。だから、特殊な立法を行い得るとして、しかも土地収用ができる場合には、既存のたんぽをつぶしたり、家屋の移転等の少いということを考えると、山岳地帯の道路の方が安いのではないかということが、常識的に考えられるわけです。そういう意味から考えて、この種のものを実現化するとしたならば、いろいろな手段がある存ですが、最も端的な表現として、どういうふうな立法措置を講じた方がいいと思うか。しかも、そういう措置が講ぜられ、なお土地収用の権限が、先進諸国のような状況で与えられるとした場合、現在の尺度ではなく、別な尺度ではかつた場合、これは五年でペイするか十年でペイするかというような大ざつぱな見通しをお聞きしたい。
  23. 稲浦鹿藏

    稲浦説明員 現在のわが国の財源から考えまして、公共事業でこうした大事業をやるということは、とうてい考えられない。どうしても別の考え方でやつて行かなければならない。たとえば、公社をつくつてつて行くとか、あるいは会社をつくつてつて行くというような考え方でやつて行かなければならぬと、私は考えております。そこで、それがはたして私の会社でペイし得るかどうかということは、非常に疑問でありまして、たとえば災害等が起つた場合に、これは相当打撃を受ける。だから、やはり法律をつくつて公社的なものでもつくり、国がその中心勢力となつてこれをやつて行くという考え方が一番いいのではないか。それから財源そのものが、今申し上げましたように、日本だけの独力ではとうてい行かぬ、どうしても外資が必要である。そういう関係から、特別の考え方でやつて行きたい。今のルートにつきましては、建設省では、ごらんの東海道に沿うた道路についていろいろ検討しておりますが、田中さんのおつしやられた道路も、大ざつぱな検討をしましたし、またその中間の道路についても検討しましたが、われわれとしては大体建設省でつくつたものをとつて行きたい。それから最近になつて大阪市に近いところはもう少し大阪市に近いところにやる、横浜の方は横浜に近いところが、交通量の関係もよくなるのではないかというふうな意見も出ておりますので、そうしたことも検討して、大体一年ぐらいで調査が完了しますか、それができますれば、今申し上げたよう方法でやつて行きたいと考えております。
  24. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 私は、質問というよりも、多少希望になるかわかりませんが、これは余談になりますけれども、私どものところへ奇想天外な意見を文書で言つて来ておる人があります。それは、田中さんが真剣にお考えになつて、ここでごひろうになつ道路の問題ではありませんが、日本では今経済自立ということを一生懸命にやつておりますけれども、これをどうして達成して行くかということについての一つ意見であります。日本海岸はほとんど山で、半島という半島は山になつておる。これをほつたらかしておいて、食糧の自給などできるものではない。ああいう出つぱなの山という山は、ダイナマイトでも原子力でも使つて海にほうり出して、平地にしてそこを使うくらいの方法でもつてやらなければいけない。これは奇想天外の考えであるかも知れませんが、非常に傾聴に値する意見であると思つております。それくらいにしなければ、この狭いところにうじやうじや住んでおつて、ああだ、こうだと言つてつても、しかたがない。これはできるかどうかわかりませんが、日本開発、国土の利用ということは、少し気違いじみた考え方でやらなければ、とうていできない。そこで田中さんのお話は、昭和二十四年であつたと言いますが、田中さんも御記憶があると思います。自由党の代議士会のあとで有志代議士を集めて、多分橋本徹馬氏であつたかと思いますが、紹介されて、この構想をごひろうなさつた。私はその研究の成果を今日まで期待しておつて、私のところにもたびたび文書を送つてもらつて、その研究の結果を見せてもらつておるのであります。この問題は、道路が主眼ではない——もちろん道路はつくらなければなりませんが、日本の地図を見ても、青いところはきわめて少い。その狭いところに学校をつくつたり、家や工場を建てたりしておつて、高山において農作物の研究をやつておるが、そんなことをするくらいなら、学校なんかは平地でなくてもいいのだから、山のてつぺんというわけには行くまいけれども、高いところにつくつて、平地は全部農耕地にするだけの大改革をしなければ日本は立ち行かない。今建設省で計画されております道路を平地につくることは、きわめて簡単であります。だから、そういう人間が集まつておるところに道路をつくることは、あながち不当だとは言いませんけれども、人間をむやみに集めるからこういうことになる。人間をもう少し散らす政策をやることが必要だと思う。これは東京都の例の高速度道路も同じことであります。そういう意味で、現在の東海道の国道第一号に並行して、さらに、たんぼも畑もみなつぶしてしまつて便利にしようということですが、それは便利にはなりましようけれども、国全体の食糧問題その他経済自立策から言うと、私は非常に将来にマイナスの結果を残すのではないかと考える。私は技術者じやないから、そういう仕事をして何千億かかるかという計算はいたしませんけれども、金がかからなければ日本開発はできないのですから、ある程度経費が増してもしかたがない。今のよう田中さんの計画がいい、悪いということは、私は専門家じやありませんから申し上げませんが、そのくらいな奇想天外な気持で国の開発をすることが必要だ。役人さんの考えるような考え方ばかりでは、日本は決して立ち上れないと思うのであります。でありますから、必ずしも、今あなた方が研究されておるその東海道の並行線、いわゆる弾丸道路だけに執着されないで、出つぱなをみなくずしてしまつて海にほうり出して平地をつくれ、こういう意見民間の全然知らない人が文書で私のところに持つて来た。それはなぜかというと、私がある新聞に一口話のようなものを書いたら、同感だということで、さらにその人の非常におもしろい構想を示されたのでありますが、なるほどと思いました。今ソ連でも中共でも、奇想天外な仕事をして、あの開発をやつておるということを聞いておるのでありますが、ひとつそういうふうな考えで、いろいろ考えてもらいたいということをお願いいたしておきます。  それから田中さんにお尋ねしますが、先ほど内海さんが言われたように、田中さんは私財を投じて、神がかりみたいな気持で研究を進められておられる。その当時GHQとタイアツプされて厖大な資料をつくられたし、日本全国の模型もつくられたが、その後の問題は金の問題でありますから、これに対しては司令部も非常に関心を持つておるというお話がその当時もありました。この建設に対して、外資導入のお話が出たから関連してお尋ねするのでありますが、これに対して外資を入れてやろうというようお話はなかつたか、もしありましたら聞かせていただきたい。
  25. 田中清一

    田中参考人 それについては、日本にあの当時来ておりましたGHQの天然資源局に勤めておられた方々は、何としてもこういったことをやらなければ、この国はやつて行けないから、できるだけの力を貸してやろうということで、ああいつた日本全土の実態模型をつくることについても、図面をつくつてくださつたりして非常に私を応援してくださいました。その後あちらに帰られてからもいろいろと、もしこの仕事をする場合には、日本の経済を助けていただきたいということを申し上げました。これは私はかりではなく、たとえば日本工業倶楽部の中島久万吉さんにしましても、三井高修さんにしましても、非常にそれに対して力を入れてくださり、特にロツクフエラー三世氏が一番初めにダレス氏のお供をしてこちらに参りましたときには、私は親しくこの人に会つてアメリカ市民の税金を長らく食うことは、まことに申訳ないことだから、ぜひこういったようなことをして日本は立ち上つて行かなければならぬということをるる頼みました。ところが、私にもう一ぺん親しくその話が聞きたいということであつたのですが、その後行きはぐれになつております。  このことについて、最も積極的なのはベルギーであります。ベルギーの財団は、中国においてたくさんの利権を持つてつた。ところが、御承知通り中国は赤化してしまつて、中国より追い出されてしまつたそれでその金を持つて欧州に帰つてしまうと東洋に足場をなくするから、どうかして東洋において、利子は少くてもよいから最も確実な投資はなかろうかというので、元の宮内省の会計の係をしておられました人を通じて、私のところに話がありました。それで、私はその方とも会つて話をしました。その当時の話では、二百五十億円なら今金があるのだがという話であつたけれども、私は、これは私がやるのではない、政府にこれを受入れてくださるまでの話合いをするのだから、ひとつ政府の方にも話をしてくださいというようなことで、それではどつちにしてもひとつ書類をくれというので、向うに持つて行つてつておられるわけであります。そういつたようなことであります。
  26. 久野忠治

    久野委員長 いつごろの話ですか。
  27. 田中清一

    田中参考人 それは昨年の九月でございます。今二百五十億の金がある、そうしてこれがよければ、とにかくまだ投資することはできるのだということを言つております。これは私がやるわけではないから、あまり深くこつちから追究することはしておりません。そういつたようなわけであります。
  28. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 建設省にお願いをしておきたいのは、技術的な面、あるいは金の面もありますが、こういうことをしなければ、先ほど申し上げたように、日本食糧問題その他の解決はできないと思います。そこで、弾丸道路もけつこうでありますけれども——工事の施行技術について、多少意見を異にしておられるような発言もありましたが、今日まで取組んでおられると思いますけれども、田中さんは個人的にやつておられますから、協力して、もう少しつつ込んで御研究してくださるよう要求しておきます。
  29. 久野忠治

    久野委員長 村瀬宣親君。
  30. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 非常に高遠な御意見を、田中さん並びに各委員から伺つたのでありますが、私はもつと小さい具体的なことを二、三田中さんにお尋ねをしておきたいと思うのであります。もつとも、この道路は、一つの国づくりに革命的な課題を投げかけておるのでありまして、都市の再編成、人口の再分布という問題でもありますし、また食糧問題も基本になつておると思うのであります。私は先ほど瀬戸山委員のお話を非常におもしろく拝聴いたしましたが、しかしこの食糧問題をあまり主にして考えますと、これは人類の歴史がどの方向に向うかということを見きわめてかからねばならないのでありまして、私個人として念願しております世界連邦というものが、意外に早く実現いたしますならば、この日本食糧問題ということは、私はそう心配する必要はないと思います。しかし、あくまでも世界の民族が、自分の民族食糧を確保せねばならないという観点に立ちますならば、無理をしてでも、その国でわれわれの食べる食糧を持たねばならぬと思うのでありまして、これはやはりこれからの人類の叡知というものがどの方に向つて行くかという世界情勢の解剖からかからなければならないのでありますが、この道路に関する限り、私は主として人口の再分布、産業構造の再編成という観点から考えて行かねばならないことだと思うのであります。そのほか基本的には、建設省で考えておられます東海道線の高速度道路と、今問題になつております本件の中央産業開発道路と、いずれをとるかということは、将来当委員会においても、十分慎重な態度で研究しなければならないと思います。この両方ができれば、これに越したことはないかもしれませんが、それはほとんど不可能だと思つておりますので、この問題はひとつ将来に譲りまして、このどちらをとるかをきめる参考の上にも、私は二、三明らかにしておきたい、かような観点から小さいことをお尋ねをして参ります。  中国でも万里の長城をつくつておるのであります。これは一つの奴隷的な労力を使つてつたのでありましようが、昔から土木盛んなれば国滅ぶという格言もあるのでありまして、これは子孫のために、その時代の人間が力量以上のことをすると、国が滅びる場合もあるわけでありますし、これは国民経済全般の関係から考えて行かねばならないのであります。その意味におきまして、この道路を完成なさるために、資材は一体何々があつてどのくらいあればよいのであるか。それからこれに要する労働力は一体どのくらいを必要とするのか、この二つにわけてお尋ねいたします。と申しますのは、来年度のこの緊縮財政を強行いたしますと、自然完全雇用という問題に非常なひびが入つて参ります。そういたしますと、こういう考えがあるなしにかかわらず、日本国民のこの労働力というものをむだにさせない、また失業者を救済するにはどうやればよいかという問題が必ず起つて来るのでありますが、こうなりますと、今度は完全雇用の側から何か一つの事業が必要になつて来る、こうなつて参ります。この場合の労働賃金というものは、これはインフレーシヨンを別にして考えますならば、輪転機で印刷しただけで間に合う。ところが資材の点になりますと、さように簡単には参りません。従つて、この道路を完成するためには、どういう資材がどのくらいの量を必要とするのか。従つてそれをつくり上げるには、日本の今日の産業構造をどうやればよいか、このままでよいか、こういう観点から二、三の点についてお尋ねいたします。
  31. 久野忠治

    久野委員長 結論だけ簡単に……。
  32. 田中清一

    田中参考人 食糧は世界連邦ができれば心配する必要はないとおつしやいましたが、これはまことにごもつともなことでございますが、遺憾ながら世界は一触即発といつてもさしつかえないと思います。ですから、私どもはここに三百五十万トンの食糧を入れておるのでございますから、毎日一万トンずつ船が来なければならぬのです。それでこの一万トンのものが十日も切れれば、都会は遅配欠配が起きるのでありまして、われわれのしりと頭には火がついておるのであります。これをほうつておいて民生の安定はないのでありまして、少くとも政治を志される方ならば、もう人間は食わねば生きておれぬのだから、食わすことが政治だとひとつ考えていただきたいのです。この前の戦争のときのように、木の実でも草の葉でも食つておれというようなことを言つても、今はなかなか承知しませんから、この国の安寧秩序を維持するためには、ほかのもの、着物や家はどうでもいいが、少くとも食糧だけは切らせてはならぬという観点から、まず世界連邦ができまして、みんなが仏や神になつてしまえば、けんかもしますまいが、おそらく当分そういうことは望めないというよう思つておりますがゆえに、食糧はあくまでも自給自足しなければならぬということを考えるのでございます。  その次は、材料の問題でございますが、大体セメントにして全部で約百万トンいるのでございます。それから鉄材が約五十二万トンいるのでございます。それから人間は八千万人いりますから、ちようど日本の人々が一日無償で働いてくれればできるのであります。それからその人間は、御承知ように今土木工事が機械化しましたために、六三%が筋肉で働く、その他三七%はみんな設計、計算、監督等々、知識階級の方々の仕事になるのでございます。おそらくこれをやることになりますれば、上は鼻水たらして文字書いているような人まで、みんなトロッコを押してくれた人には一枚出す、そこらにおるみなし子には、昼ごろになつたら、そこらの百町歩、千町歩、一万町歩もある原つぽから枯枝をとつて来て茶を沸かしてくれといつて、何ぼかの賃金をやれば済むと思うのです。また戦争による未亡人その他には、ふとんをほしたり、洗濯をしてもらつたり、いろいろな意味で、あらゆる階級に職を与えることができると思いますから、労働力の問題については少しも心配はない。今、心配は完全雇用の問題とおつしやつたのですから、私はそれについては、それ以上に裨益する点があると思います。ことに行政整理とかそういうようなことがあります場合においてなおさらこの感を深うするものでございます。簡単でございますが……。
  33. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 今日お配りをいただきましたパンフレツトによりますと、本日問題になつております中央道路を仕上げて行く途中においては、橋梁をダムがわりにつくり上げて、二重の効用によつて道路と発電の目的をも達し得る場所が、相当あるということも書かれてあるのであります。橋梁のつくり方にもよるでありましようが、大ざつぱの御答弁でもけつこうであります、どのぐらいの電力量が、本工事を仕上げた上に——先ほどいろいろお話がありましたが、それはいわゆる橋梁とダムとの二重効用のために生ずるのであるか、あるいは別にダムのみの建設によつて、先ほどの話の電力量が出るのであるか。ことさらにダムをつくらないでも、この道路をつくる途中の橋梁が、たまたまダムの効用をなして、電力に資するという点がどのくらいになつておるか、それをひとつ伺いたい。  それからもう一つは、最初の御説明の中に、精密機械海岸から三十キロ離れて置く必要がある、こういうお話でありましたが、またスイスその他の実際の例をみましても、またミシガン湖であろうと、そういうことになつておると思うのでございますが、それは単に潮風が精密機械に悪いというだけの意味でございましようか。何かほかに根拠があり、また精密な人間の頭脳労働に関係がございますか、この二点について。
  34. 田中清一

    田中参考人 ダム堰堤を通るというところは、このうちには厳密に言つて三箇所くらいしかございませんから、それは知れたものでございます。せいぜいで十五、六万キロしかとれないのでございますが、御承知ように、たとえば十万キロのダムをつくると仮定いたしますと、大体少くて一二〇%、多ければ五〇%も砂利、砂、セメント、鉄材の運搬費にかかつてしまう。五万キロの発電機だつたら、最小に割りましても二十六トンございます。そうしたら、大きな鉄道を敷くか、大きな道路をつくらなければ、そこへ入れないのです。そうすると、現在までのよう道路のつくり方にしておきますと、その道路は特に電気を起すためにつくつた道路ということで、全部コストが電気へかかりますから、日本ではどうしても豊富低廉に供給できないのでございます。最も重視すべきことは、日本河川の状況は、アメリカのテネシーやなんかのようなわけには行きませんで、日本のは急流でございます。そうしてダムというのは、もちろん落差を利用して、普通の水路式よりも非常に有利ではありますが、そのダムの命取りは、ダムに砂利が流れて来て埋まることでございます。その埋まることを防ぐ方法は、現在世界にないのでございます。それで私が考えるのは、ダムを川の下流からつくつて行くということは、実に頭の悪い話だと思います。ダムを上流につくつて、そうして堰堤を通ることとして、そこで砂利をとれば、下流のダムは二十あつても埋まらない。そうなればダムの寿命が百倍にもなる。むしろその一番上流のダムにたまる砂利を売つて、大もうけをしようと私は思つておるのです。それで構想がちよつと違うのです。ダムの方は、そういうわけでありますから、このことによつてダムが百四十万キロぐらいできるのじやないか。それはもちろん別の金でやつてもらわねばなりません。ダムのサイドに非常に接近した道ができることは、水力電気を豊富、低廉に供給できる。しかもダムの寿命が数十倍というか、百倍といつていいか、千倍といつていいか、ダムが相当長く持つということを私は理想としているのです。  もう一つ精密工業は、ここに佐藤先生がおられますが、私の工場のことは、清水工場も沼津の工場——沼津の建設は大部分佐藤さんがやつてくれた。それだからよく御存じです。私の方では技師もかわらなければ、職工もかわつておりません。それが郡上へ持つてつたところが、同じ設計で非常に精度の高いものができる。それはどういうことかといいますと、精密機械なんかは、一ミクロンの誤差が問題です。ちよつとさびれば、一ミクロンになつてしまう。そのさびるということと、砂ほこりが入つて周動面がすれること、そうすると、その工場のマシーンの精度がどんどん下つてしまう。すなわち、さびないことと砂ほこりの来ないこと、湿度もあまり低くないことです。大体そういうことによつて、精密機械は三十キロ以上離れたところでなければできないということの結論を得ております。これは実際が証明しておるわけでございます。
  35. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 まだ伺いたいことがたくさんあるのでありますが、私は次々に飛ばして眼目だけを伺つておきたいのであります。  非常に御努力を傾けた研究がここまで進んで参られたわけであります。むろん、なおこの設計を完全にしていただく必要はあると思うのでありますが、もうこの辺で、いかにして工事を施工するかという経営形態の研究が必要な段階になつておるのではないかと思うのであります。先ほど稲浦次官から、いわゆる国が中心勢力となつた公社方式等をとつて、財源は外資をも必要とするという示唆に富んだ話があつたわけでありますが、いろいろ田中さんから伺つておりますと、これは日本の産業部面に、いい意味で非常な変革を来す要素を多分に持つておるのでありまして、それは単に一つ道路を完成するというだけのものでないことは、最初からわかつておるのであります。そこで、いろいろ日本の大陸政策等を、これがよかつたか悪かつたかは別といたしまして考えてみましても、南満州鉄道株式会社というものをつくりましたが、これは決して鉄道の交通運輸というだけにとどまらず、もつとほかの重大な意義があつたことは御承知通りであります。同様に、この道路に付随いたしまするたとえば今の電力の問題、これは十五、六万キロしか橋梁と併用ではできないが、しかしそこへ道路ができれば、安い方法で有数十万キロのダムをつくることができるというようなことにもなるのであります。従つて、新しい都市が続々とこの道路の周囲にできて来ることは当然であり、またそうなくてはならない。そこに人口の再分布も行われるわけであります。そういたしますと、かつて満鉄が単に鉄道輸送のみにとどまらなくて、ほかに一つの大きな役目と理想を持つておりましたように、これを施工する経営業態の性格は、いわゆるTVAの組織のようなものになるのであるかどうか。またその機能並びに機構は、非常に厖大な、ただ道をつくる技術者のみでは足らない、電気技師もいれば、あらゆる頭脳労働者、筋肉労働者を通じての、一つの超国家的な大きなものを必要とすると思うのでありますが、そういう点に対しまして、田中さんはどういう構想を持つておられますか。
  36. 田中清一

    田中参考人 それに対しましては、今までは、これは国家でやつていただく仕事だと思つておるがゆえに、十分な研究はしておりませんが、もし国家がこれを一手でおやりになることができないとすれば、こういった半公共というか、むしろ全公共的といつてもいいよう仕事でありますから、国家はよろしくこれに対して法律をつくつて保護をして、国家が五〇%か六〇%補助をして、適当な会社をつくつてそれに経営させる。それは先ほど十五年とおつしやつたように、私もやはり十五年くらいでペイできると思います。もしペイできたら、それを国家へ委譲するというような形態にやつて行けばいいと思います。それに対するすべての受益の負担は国家がびしやつと押えて、余分なところに利権等ができないようにやつて行かれれば、最も合理的なものができると思います。また牧場もできまして、これはたいへんなことになります。この一円から出る牛乳は、今までは腐つてしまつたが、それが朝しぼつたものがどんどん東京へ来るのですから、そういつたものができれば、牧場もできますし、森林業なんかは大したことになる。百万石ずつ切つても、百年切つたところで輸伐ができるのですから——ここに少くとも二億何千万石という木材があるのですから、そういつたようなことの経営方法もございましよう電気もございましよう、ホテルもございましよう、学校もございましよう、また土地経営もございましようが、もうすでにあなたのおつしやつたような、満鉄以上の高度なものになると思いますから、それはひとつ国会でおきめくださいまして、われわれにそれを教えていただきたいと思うのでございます。
  37. 逢澤寛

    ○逢澤委員 ただいまのに関連したことですが、先ほど来お話のありました木材資源にしても、また地下資源にしても、たいへんなものがここに埋蔵されておる、これがこの道路開発によつて有効に使用することができるという御説明がありました。もとよりこの道路が、今建設省が計画しておるような従来の道路としての価値だけでなく、いわゆる産業開発に対する大きな使命を持つておる道路であるということはわかりました。そこで、これだけの御研究を願つておるのでありますが、この未開発資源開発をするにつきましては、そこに大きな受益者が出て来ると私は思う。非常な受益者が出て来なければならぬはずです。死蔵しておるものが、この道路開発によつて生産にまわることになる。そうすると、この建設をやるのは、結局資金の問題だと思う。そこで、かりに木材がどれだけか−あり、その木材を伐採して消費地に出すとするとどれだけの利益が出て来る。そうすると、この道路開発によつてこれだけの利益が生じて来るのだから、これらの受益者は受益者負担としてどれだけの負担をすべきだ、そうするとこの道路建設に対しての負担割合がどうなつて来る、こういうことについて御研究になつたことがございましたら、お聞かせを願いたい。
  38. 田中清一

    田中参考人 それは今、大井川の奥などになりますと、一円ももらつてもそろばんに合わないところもあります。私どもが調べましたところでは、二フイートも二フイート半もあるようなひのき、もみ、つが、みずみが十本も二十本も立枯れになつておる。こういった道ができると、名古屋から一時間半のところで出るということになりますので、その木の価値は偉大なものであります。また先ほど申しましたように、今までは貧鉱であつたものが、良鉱になるのでございます。御承知ように、たとえば金山にしましても、一万貫の土砂でもつて選鉱してできる金は一貫目もできない。土砂運びがたいへんな仕事である。それが一日に何べんもできるようになつて、三十トンの車でどんどん運ぶようになりますれば、今までの貧鉱が変じて良鉱になるのでございますから、その受益というものは非常に大きなものであると思うのであります。それに対しては、国がそれを一まとめにまとめて——あるいは土地を持つておる人もございましよう。そうしてそれがためにその人の土地が値上りをすることもございましようが、そういつた場合は、国が一まとめにまとめておきまして、この建設に対する方へ持つて行かれるようなことが法律でできればけつこうだと思うのであります。  それからもう一言だけ申し上げておかなければならぬことは、私が利欲に迷つてつているのでないことを申し上げておきます。私はこの付近に木一本も、土地一坪も、家一軒、親戚一軒もございませんが、反対の建設省の方でつくつていらつしやいますところには、私は土地は五万坪あつて、七千坪の鉄筋コンクリートの工場を持つて経営している。そこがいいということになれば、土地が二千円に上つても一億円もうかります。しかし私が一億円もうけてもしようがない。だから私は、はつきり言えば三千九百何十万円という金をかけてやつている。十年かかつて、敗戦が目に見えているころからやつている。ですが、これを国家がずつとやつてくだされば、家にある模型から何から一切のものを建設省へ献上して、そうして私は、トロツコを押せと言えばトロツコを押し、きこりをやれと言えばきこりをやります。決してこんなことに食い下つて一銭ももうける腹はないことを、こういう公の場所で言明しておきます。
  39. 久野忠治

    久野委員長 先ほどお話がありましたのは、受益者負担等の問題、つまり財源の問題で、何か御調査なさつたことがあるかどうか。
  40. 田中清一

    田中参考人 今ちよつとそれに触れなかつたのですが、とにかくそんなぐあいに、あそこで今一円にもならぬ材木が、一石で一千円になり三千円になるという木がありますよ。そうしたら、一億石あれば一千億円あるのです。目に見えるものだけで、はつきりそのくらいあるのです。そういつたものは、大部分が国有林でございます——一部分民有林もございますが、そういうようなものを使つていただきたいということです。
  41. 佐藤虎次郎

    ○佐藤(虎)委員 実は私今まで発言をいたさずにおりましたのですが、田中社長には、もう二十年もお世話になつている者でございまして、率直に申し上げますと、こういう計画自体を田中社長がやるということは、私は夢にも知らなかつたのです。私は昭和十年から、田中社長の工場の敷地あるいは建設の工事を請負わせてもらつて、非常に仕込んでいただいたのです。そこで、特にこの際委員各位の方々に承知しておいていただきたいことは、田中社長をとらえて、とかくあれは気違いのさたじやないかということをよく言います。私はそういう言葉を世の中の人から聞くことを、まことに不愉快に思つておりましたが、これに対して弁解もいたさずにおりました。と申しますのは、精密機械工場の社長さんであるのにかかわらず、こうした国家窮乏の折、再建に寄与せんとして、何ゆえにこういう計画を立てられたか、私自身も実はふしぎに思つてつたのであります。簡単にお話申し上げますが、沼津の工場を昭和十年に建設いたすころには、あの沼津には工場なんかろくになかつた。当時、私は市会議員をしておりましたが、そのときに、約一箇月間というものは、たんぼの中に一人たたずんでいるこじきのような人がいる、朝の暗いうちから夜中まで立つている人がいるというので、ふしぎに思つた。それが田中社長です。ところが、その田中さんが、当時何百万円かの金を持つて来て駿河銀行に預けて、佐藤、これをお前がやれと、こういうわけです、どういうわけですかと聞いたら、この土地は、汽車がよく走るのだが、一つもゆすれない、精密機械をつくるには、地質を第一に調べなければならぬ、こういう話だつた。そこで私が、こんなたんぼじやありませんかと言つたところが、、これは富士山から流れて来た溶岩が岩になつているはずだ、とにかくボーリングして掘つてみてくれというので、掘つてみました。ところが、その工場の約十万坪になんなんとする敷地が溶岩で、つるぱしが通らぬような実態でありました。それでその工場を建てて、とにかく精密機械工場として一応国家に貢献したようであります。ところがそのうちに、岐阜の山の奥の方へ、またトンネルを掘つて工場を建てるのだと言われる。ばかに大将早あきするじやありませんかと言つたところが、湖風が来るとさびる。さびた場合には、それだけずつ精密機械に寄与することができ得ないから、潮風の来ないところに建てに行くのだというので、これまた私がその工事に行きました。  委員長初め私どもは、昨年ヨーロツパに道路視察に行つて参りまして、帰りにスイスに寄りましたところが、スイスは水の国だというお話です。水の都といわれておるが、その家庭工業においては、塩分が来ないために、あのりつぱな時計ができるのだ。なるほど田中社長の言われたのはほんとうだなと思つておりました。ただいまもこのお話を聞いておるときに、三十キロ以上入らなければだめだ、ここにこしらえることは、日本の精密機械工業の発展に寄与するものだというお話を承つておりまして、まことに私は感深きものを感じて、社長がこういう構想を持つてつてくださることに対して、まつたく私の勉強の足らざることを社長にはおわびしなければなりません。友森というのは、大学を卒業した者じやありません。その大学を卒業しないで、ほんとう機械にすがりついて来たような者を社長にして、この日本の国土開発のために私財をなげうつて、一般の人から見れば、まるで気違いざただ、あれは気違いじやないかと言われるのも無理からぬことでありましようが、これだけ努力して身命をささげておるのでありますから、私ども委員会といたしましても、十分これを研究しなければならない。  そこで、特に建設省と田中社長の間で御研究を願いたいと思いますことは、現在の東海道の既設道路並行に関しまする高速道路をつくるとかりに仮定する。今や建設省もその気持でおりますが、しからば、食糧不足で困つている日本の国家において、この平野をつぶして、耕地をつぶしましたときに、一体この次にはどれだけつぶれてどれだけ食糧を輸入しなければならないか。同時に、静岡県、愛知県の方々から常に陳情があるのでありますが、私どもは今日この畑を一坪もとられるのはいやだから、高速道路ができるなが、今日の農民の声であると私は強く信じておるのです。いわゆる東海道並行線に関します高速道路をつくりますときに、土地収用に関する当局のお考えは、どういうお考えを持つておるかということを、十分御研究願うと同時に、この中央国土開発道路は、荒地であります、荒野でありますから、降雪期あるいは結氷期の場合には、どういう結果が生れて来るかということも、十分建設省と田中社長との間におきまして御研究を願いたい。結氷期の場合に、すべつて自動車が走れない、あるいは雪が積つて自動車が走れないという場合も、やがて予想しなければならない問題であります。ゆえに、これに対しましても、十分調査費も出し、しかして建設省と御協議願う。同時に、建設省自体は、耕地の少いところ、宅地の少いところにこの東海道平行高速道路をつくる場合に、一坪の地所も譲ることができ得ないとして反対する者がもしあつたとするならば、今日建設省の御計画であるものが、十年、百年たつてもできない結果になる。このことは、日本道路行政上において、非常なる支障を来しはいたしますまいか。かように考えますから、この二点について建設省も田中社長も、胸襟を開いて十分これについてお話合いを願うと同時に、私ども建設委員会は、委員長が主体と相なりまして、この二つの問題を十分研究調査いたしまして、国民の要望にこたえたい、かように考えるのであります。どうぞ委員長におかれましては、この二つの問題を当事者同士に御研究願うと同時に、私ども委員会がこの問題の実態を把握して国民の要望にこたえるように、御尽力と御考慮を願つて委員会の行くべき道を尽されたい、かように考えて私の気持の一端をお話申し上げた次第であります。
  42. 久野忠治

    久野委員長 田中参考人一言御礼申し上げます。御多忙の中を長時間、長年月にわたつて調査せられました事項につき十分意を尽され、私たち非常に、感謝をいたしておる次第でございます。  しかしながら、お話を伺いました断片的な点から私たちが受けました印象を申し上げますならば、建設省の考えております中央高速道路計画と、田中さんの御構想の道路計画とには、現在相当開きがあるのじやないか。それから事業費の点も食い違いがあるようでありますし、なお幾多の疑点があるようでございます。そこで結論として田中参考人にお尋ねいたします。もうすでに着工の段階に来ておると思いますが、これはあくまでも自分一個人の立場から、資金の問題その他はあくまでも自分の考えでこれを推し進めて行きたいとお考えになるのか。先ほどお話のあつたように、国家にこれをやつていただくのだというお考えで終始一貫なさるのかどうか。もう一つは、万一建設省の立案したものが具体化して来た場合に、あくまでも自分の主張なさる線を固執なさろうとするのか。この二点を最後に結論としてお伺いいたしたいと思います。
  43. 田中清一

    田中参考人 先ほどもるる申し上げました通り、これは国家的大事業でございまして、単なる道づくりでございません、国づくりでございまして、おそらく日本はこれで立ち直ると確信いたしておるのでございますから、これはぜひ国でやつていただきたいと思います。しかし、国の方でどうしてもこれはやれないということになりますれば、われわれ同士は、工業倶楽部あるいはその他のものを中心として、たとえば三十億の会社でもつくつて、また政府にも願いして、いろいろと御補助も願つたりあるいは御鞭撻願つて、そうして法律等もつくつていただいて、これができるように、私はやりたいと思うのでございます。
  44. 久野忠治

    久野委員長 設計の点はどうですか。
  45. 田中清一

    田中参考人 設計の点は、今建設省でせつかく一万分の一の図面をつくつて大いにやつてつていただきますから、それを譲つていただければけつこうでございますが、現に私はこれに対しては非常にりつぱな設計を持つておるのです。ここにあるようなものじやありません。
  46. 久野忠治

    久野委員長 この案は一歩も譲れないというのですか。
  47. 田中清一

    田中参考人 一歩も譲れません。ちやんと図面は持つております。至るところ全部模型をつくつて、隧道のところも、水のところも、ダム・サイドも全部持つております。一歩も譲れません。
  48. 久野忠治

    久野委員長 どうもありがとうございました。  本日はこの程度にして散会いたします。    午後零時五十九分散会