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1954-11-16 第19回国会 衆議院 決算委員会 第56号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十一月十六日(火曜日)     午後一時三十七分開議  出席委員    委員長 田中 彰治君    理事 鍛冶 良作君 理事 田中 角榮君    理事 高橋 英吉君 理事 河野 金昇君    理事 柴田 義男君 理事 杉村沖治郎君       天野 公義君    田渕 光一君       松山 義雄君    三和 精一君       安井 大吉君    藤田 義光君       村瀬 宣親君    片島  港君       山田 長司君    大矢 省三君       吉田 賢一君    池田正之輔君  委員外出席者         証     人         (東京地方検察         庁検事)    河井信太郎君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         専  門  員 大久保忠文君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した事件  政府関係機関収支日本開発銀行造船融  資)に関する件  証人出頭要求に関する件     —————————————
  2. 田中彰治

    田中委員長 これより決算委員会を開会いたします。  前会に引続きまして、政府関係機関収支のうち造船融資の問題に関する件を議題として審議調査を進めますが、審議に入るに先立ち、昨日の委員会において要求いたしました通り井本刑事局長小原法務大臣に会見されたことと思いますので、その結果について報告を求めたいと思います。井本刑事局長発言を求めます。
  3. 井本臺吉

    井本説明員 昨日のお約束に基きまして、昨夕午後六時半に世田谷区成城町の小原法相宅を訪問いたしまして、小原法相にお目にかかりました。面会時間は約十五、六分でありました。小原法相は非常に礼儀の正しい方でありますので、暖房にはなつておりますが客間に出て来られまして、私が決算委員会伺つた点についてお話いたしたのでございます。小原法相談話の要旨は次の通りでございます。  自分は、衆議院決算委員会滝川幸辰博士以下多数の学者などを参考人に呼んで、昭和二十九年九月二十一日付のいわゆる小原疏明についていろいろ意見を陳述せしめておることを新聞紙その他で知つて自分としても機会を得て決算委員会でみずからの所見をぜひ申し述べたいと考えていたところ、幸い十一月十五日午前十時に出席すべき旨の通知を十一月十二日受けたので、むしろそのおそきを嘆じていたくらいで、昨日はぜひ出席したいと考えていた。しかるに十一月十四日夕刻から風邪の気味でかつ下痢を伴い、からだに変調を来したので、文京区本富士町一番地東大病院田坂内科吉利医師診断を求めたところ、いわゆるかぜであるが、体温も七度二、三分であり、かつ下痢を伴つておるから、このところ数日の静養はぜひとも必要であるという診断でありました。自分としても発熱の際には血圧に変調を来すことをしばしば経験しおり、かつ下痢をしていたので昨日は残念ながらお届けのよう診断書を得て欠席しました。しかし両三日で必ず出席できると思うから、その旨決算委員会各位にお伝えを願いたいということでありました。  なお理髪店の件については、自分としても……。
  4. 田中彰治

    田中委員長 それはきよう理事会にかけてあれしますから、それだけでけつこうです。
  5. 井本臺吉

    井本説明員 以上の通りでございまして、私小原法相にお目にかかりました。ところがいまだ咳嗽の模様も見受けられましたが、両三日御静養になれば、御自身の言明の通り、必ず決算委員会に御出席になるというふうに私には考えられたのでございます。  以上御報告申し上げます。
  6. 田中彰治

    田中委員長 御苦労さんでございました。お帰りになつてけつこうです。  それでは証人として出頭を求めております東京地方検察庁検事河井信太郎君に本問題に対する証言を求めることにいたします。  まず証人お尋ねいたします。ここに出頭されております証人は、東京地方検察庁検事河井信太郎君に相違はありませんか。——人違いのないことを認めます。  ついては文書をもつてあらかじめ証人に通知いたしておきました通り造船融資に関する件について証言を求めたいと存じますが、証言を求める前にあらかじめ御注意を申し上げます。すなわち昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言をなす前に、宣誓をしなければならないのであります。  証人宣誓または証言を拒むことができるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由なくして宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。証人は以上のことを承知しておいていただきたいのであります。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人河合信太郎朗読〕    宣 誓 書  良心に従つて真実を述べ、何事もか  くさず、又何事もつけ加えないこと  を誓います。
  7. 田中彰治

    田中委員長 宣誓書署名捺印をお願いします。     〔証人宣誓書署名捺印
  8. 田中彰治

    田中委員長 これより証人証言を求めますが、順序として委員長からまず概括的に尋問を行い、続いて委員各位から証言を求めることになります。御了承願います。  なお委員各位に申し上げておきます。なるべく双方に尋問事項の重複を避け、かつ要点を簡潔に行い、議事進行を円滑にいたされますよう切にお願いする次第であります。  また証人証言される場合にはその都度必ず委員長の許可を求めること、及び証言はその求められた範囲に限ることになつておりますから御了承おき願います。     〔田渕委員委員長、その前にひとつ議長進行で……」と呼ぶ〕
  9. 田中彰治

  10. 田渕光一

    田渕委員 憲法四十一条の国権最高機関であるという点は冒頭においてまず申し上げておきます。その国権最高機関つまり国会を構成する委員長権限というものは、国会法衆議院規則で定めておる通り、御承知の通りであると思います。ことに国会法の十六条の四項並びに衆議院規則の六十六条におきましては、委員長がこの議事の整理並びに秩序保持権限を持つておられるのであります。つきましては、私はそういう関係から議事進行でまずその点を申し上げて、議事進行に関連して、まず委員長証人証言を求める前に一応伺つておきたいことがあるのであります。  それは昨日の杉村議員発言によりまして、委員長並び杉村議員東京地方検察庁取調べを受けた、こういう御発言がありまして、杉村議員から井本局長にその真相の何がありました。その日に委員長は一向黙して語られなかつたのであります。巷間伝えるところによりますと、脱税事件公務執行妨害等において田中委員長河井検事に数回お取調べを受けたというよう伺つております。もししかりとするならば、この国権最高機関である国会の、しかも委員長をお取調べなつ証人が、侮蔑をするというような非常識な方ではないと思いますけれども、完全なる証言を求めるということについて私は疑義を持つのであります。これについてまず河井検事田中彰治君をいついかなる件名によつて、いかなる場所で何回調べたかということを伺つてからこの審議に入つていただきたいと思います。
  11. 杉村沖治郎

    杉村委員 ただいま田渕君が述べられたことは、非常な見当違いのことであります。委員長はいかなることで東京地方検察庁取調べを受けたことがあるかないかわれわれは存じませんが、少くとも本日のこの証人喚問につきましては、何らそれと関係がありません。さようなことをこの証人喚問の前に田渕委員が申されるということは、本日の議事進行を妨害するものとしかわれわれは考えられないから、さようなことは取上げないようにしていただきたいと思います。
  12. 田渕光一

    田渕委員 私は決して議事を妨害するものではありません。国会は最も神聖であり、厳粛でなければなりません。過ぐる十九国会以後における当決算委員会に対する社会の批判言論機関批判、ことにあの当日の審議ぶりなどに対しては、銀座をうろついておりまするあんちやん連中まで、われわれ以上国会議員はごろつきだと言つておるのであります。こういうよう神聖を汚すようなやり方をしたくないということで反省しておりますがゆえに、国会神聖とその厳粛を守る上において、委員長がもし当該証人検事から調べられたというようなことがあるとすれば重大な問題であります。これをまず承わらなければならぬというので、議事進行に関して申し上げておるのでありますから、まず河井検事からこの点に対して、本質問に対する答弁を求めます。     〔発言する者あり〕
  13. 田中彰治

    田中委員長 御静粛に願います。
  14. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今の田渕君の発言はきよう証人調べ目的である事項と直接関連のないことは明らかであります。またすでに宣誓終つて証人尋問に入らんとする刹那でありますので、私はこれにかかわらず議事を進められんことを動議として提出いたします。
  15. 田中彰治

    田中委員長 田渕君に申し上げます。私は商売はしておりませんから、脱税等取調べられた覚えはございません。あるいはその他の参考としてはいろいろな取調べがあるかもしれません。  また昨日の取調べについては、私は吉田茂君を告発したその代表者として検察庁行つたのでありまして、そういうことに関係ございません。(発言する者あり)それ以上あなたの発言は許しません。  ただいまの吉田君の動機に対して採決いたします。(「何の動機だ」と呼ぶ者あり)吉田君の動議賛成の方の起立を求めます。     〔賛成者起立
  16. 田中彰治

    田中委員長 起立多数。採決は決定いたしました。  本委員会造船融資の問題及びこれに関する造船疑獄について、予算の執行上の当否につき、国政調査権に基いてその真相を究明しつつあることは、すでに証人の承知されておるところと思いますが、検察庁捜査対象となりました造船疑獄については、証人主任検事として第一線捜査をされたと聞くが事実かどうか、まずこの点について承りたいのであります。
  17. 河井信太郎

    河井証人 私はお尋ね事件主任検事としてこの事件捜査に当りました。
  18. 田中彰治

    田中委員長 二についてお尋ねいたしますが、造船融資からは多額の金員がリベートとされ、融資本来の目的に反して不正に使用され、汚職事件となり、遂に刑事上の問題に発展したのでありますが、血税の使途についてかくのごときは許さるべきではなく、証人等はこの不正事件捜査し、国損の所在を明らかにしつつあつたやさき指揮権発動によつて捜査は中絶し、国損はもとより国民の期待はまつたく裏切られた結果となつたのであるが、第一線捜査に当つていた証人はそれでよいと思うか、次に、言いかえれば本問題に関する不測の国損やみからやみに葬られ、国民に多大の疑惑を残しながらも、なお指揮権発動によつていたし方ないと考えられるか、検事職務を行う者としての心境を述べられたいのであります。
  19. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点につきましては、まず本件捜査の端緒から私どもが担当いたしました事件の概要を、許された範囲において申し上げることが最も御納得のいただける事柄であろうと存じまするので、この点から申し上げたいと存じます。  いわゆる造船事件と申しますのは、昭和二十八年八月二十八日に森脇将光という者から東京地検にあてて、志賀米平猪股功という両名に詐欺横領背任の告訴が提起されたのであります。この事件は初め他の検事が担当いたしておりましたが、途中から私に割りかえになつて、私が担当いたすことになつたのであります。割りかえになりましたいきさつは、当時私は新任検事指導官をいたしておりましたところ、その任が終了いたしまして、東京地検特捜部に帰りましたために、手持ち事件がないということで割りかえになつて参りまして、普通の事件としてこの捜査に着手いたしたのであります。  ところでこの詐欺横領被害事実の被害品の中に、山下汽船振出しの一千万円の手形が二通入つてつて、これが被害物件であるということが明らかになつて参りましたので、何ゆえ山下汽船がこのよう手形を振り出したのであろうか、捜査の常道といたしまして当然この点の捜査をしなければならなかつたのであります。  さて山下汽船と申しますれば、私どもが考えておるところは、従来わが国において五指に屈する代表的な海運会社である。かよう会社が何ゆえに二千万円に達するよう手形を振り出したのであろうかという点について取調べをして行く過程におきまして、まず山下汽船内容を調べ、海運会社事業形態捜査して参つたのであります。その結果山下汽船におきましては、猪股功に対して合計約一億八千五百万円に達する貸出しをしておるという事実が明らかになり、これに対しては、そのうち証拠の明らかな一億三千五百万円に対して特別背任起訴をいたすようになつたのであります。  一方私どもといたしましては、それでは船会社がなぜこのような金が必要であろうか、何ゆえにかよう手形振出しを行つたか、会社事業内容はどのようであろうかということを取調べて参るためには、日本海運界状況を一応明らかにしなければならないという立場に立ち至りまして、すでに当委員会においても明らかにされたと存じまするが、戦後における日本海運界の実情を捜査いたしたのであります。その結果、戦前におきましてはわが国所有船舶は、いわゆるスチール・ボードが約六百三十万トン程度あり、それに三百三十万トン程度建造されて、合計九百六十万トン程度スチール・ボートがあつたのであります。ところが戦時中の被害によつて約八百三十万トンが喪失され、戦時においては百三十万程度のものしか残らなかつた。この戦争の被害によりまして、いわゆる戦時補償を受けられる状況にあつたの戦時補償打切りになりまして、日本海運会社七十九社で約二十五億一千六百万円に対する戦時補償打切りという運命になつたこと、そのために終戦後におけるわが国海運界の再建ということは自力ではとうていできない、国家助成を必要とするという結果となり、終戦の年の昭和二十年から昭和二十四年までに第一次ないし第四次の海運助成策がとられ、その後第五次ないし第九次の海運助成策外航船舶建造中心として行われて来たという事実が明らかとなつたのであります。  一方この助成対象といたしましては、いわゆる復金融資、あるいは船舶公団に対する船舶建造あるいは見返り資金融資、その後開発銀行融資と、順次国家助成による建造資金融資が行われて来たこと、その結果財政融資で約一千億、市中銀行融資で約一千億、合計今日までに終戦後二千億あまりの金が船舶建造資金として融資されておるという事実が明らかになつたのであります。しこうしてこのうちの財政融資に基く分を中心といたしまして、いわゆる海運会社では朝鮮事変の終焉とともに運賃コスト高から、国家助成によるいわゆる利子補給の対策が立てられなければ、国際競争に勝つことができないと言う船主集まりである船主協会、あるいはその建造助成をするために鋼材価格引下げなければ、運賃コストの低下をはかることができないと言う造船業者集まりである造船工業会、この二つを中心とて国家助成のために金利の引下げ及び鋼材価格引下げという運動が、昭和二十七年七月ごろから政界、官界あるいは財界に対して行われて来たという事実が明らかになつたのであります。その結果、昭和二十八年一月五日法律第一号をもつて外航船舶建造融資利子補給法が成立し、第九次前期外航船舶への融資に対する利子補給が行われるようになつたのであります。  ところが第九次前期建造船舶のみに対する助成では、とうてい海運会社として立ち行かないというところから、さらにこの法律の改正が叫ばれ、各種の運動が行われて、昭和二十八年八月十五日には外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の成立を見て、その公布実施が行われたという事実も明らかになつて来たのであります。その結果海運会社としては、昭和二十八年から三十五年に至る八箇年の分において、いわゆる助成額の限度、百六十八億の多きに達する国家助成を受けられることになつたという事実が明らかになりますとともに、昭和二十八年一月五日公布された法律助成の額から見ますと、約十倍に達する国家助成を得られるという恩典に浴する結果になつていることも明らかになつたのであります。しこうしてかよう国家助成を受けている船会社が、自己の営業とはまつたく関係のないところの猪股功というような者に対して、一億数千万円の融資をするというようなことは許されないのではないか、なおこの法律内容を検討いたしてみますと、財政融資について五分の利息が払えない。一分五厘を負けて三分五厘の利息しか払えないから、あとは国家助成にまつというその法律を実現するために運動を行つている船会社が、一億数千万円の不当融資を行つているというようなことはとうてい許すわけに行かないということで、この特別背任起訴ということに相なつたのであります。  さてこの捜査過程におきまして、昭和二十九年一月七日、山下汽船を家宅捜索いたしました際に、はからずもこの会社において昭和二十八年の選挙に際し、政界人相当の方々に選挙陣中見舞として金が送られているという事実も明らかになつたのであります。一方その際造船融資を受けながら、その一部をリベートとして造船所からもらつているという証拠も発見されたのであります。  以上申し上げましたような事情にある海運会社が、かような金を選挙陣中見舞として出すとか、あるいはリベートとして一部を重役が山わけするというようなことは、許されないのではなかろうか。またこれを出すのには何らかの理由があるのではなかろうかということで、その捜査をいたして行きました結果、山下汽船のみではなく、他の海運会社にも同種なことが起り、さらにその結果、自由党幹事長であつた佐藤榮作氏に対して金が渡されておるという事実も明らかになり、ここに佐藤氏に対する贈賄容疑が起りまして、四月の十日には飯野海運の社長俣野健輔氏、その他日本船主協会の幹部を逮捕勾留して取調べを進めた結果、贈賄容疑濃厚となり、四月十九日には収賄容疑のある佐藤榮作氏に対し逮捕勾留の必要ありとして、その旨を上司に申し上げたのであります。ところがはからずも指揮権発動となり、任意捜査によつて捜査をいたしましたけれども、予期の結果が得られず、今日の状態に立ち至つたという次第であります。
  20. 田中彰治

    田中委員長 次にもう一点最後にお聞きいたしますが、証人は本年八月の文芸春秋に指揮権発動について、「検察独立性は裁判官のように完全なものではない、最後は大臣の指揮に服するのが遵法さ。しかしこの遵法上下共通でありたいね。」と述べておられるが、この「上下共通でありたい」という意味を具体的に示していただきたいのであります。
  21. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点につきましては、法の前には何人も平等であるという憲法の精神を私はそこにいささか再現したつもりで書いたのであります。
  22. 田中彰治

    田中委員長 それではこれより委員各位発言を許します。柴田義男君。
  23. 柴田義男

    柴田委員 河井検事お尋ねいたしますが、今前段の造船融資に関するいろいろな捜査の経過を順序立てて伺いまして、非常にわかつてつたのであります。結論といたしましては、指揮権発動によつて今までの苦心というものはほとんど水泡に帰せられた、かように伺われるのでございますが、ただ私どもは具体的に少し伺いたい点があるのであります。あれは検事総長談話でも明らかでございましたが、造船関係捜査において、涜職であるのかあるいは政治資金規正法違反になるのか、こういう点であります。われわれはいかなる角度から考えましても、たとえば自由党の前幹事長佐藤榮作氏に、船主協会あるいは造船工業会、こういう政府から——しかも日本開発銀行から融資が行われておる諸団体寄付をするということは、この政治資金規正法を見ましても納得が行かぬのであります。こういう点でどうしても涜職でなければならないはずの問題が政治資金規正法によつて起訴される、こういう形が表面に現われておりますが、この一点であります。政治資金規正法をわれわれしろうとでございますから、六法全書をもつてそのままわれわれが受取りますると、どうしても納得が行かぬのでありまするが、これに対する見解を承りたいのであります。
  24. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点は、本件事案においては涜職起訴すべきで、政治資金規正法等犯罪に該当するということで起訴したのは間違ではないかという御趣旨に承つたのでありますが、率直に申しまして、一応収賄容疑があるとかあるいは贈賄容疑があるということと、これを起訴いたしまして、公訴を維持して有罪の判決を受け得るかいなかということとは、かなり内容が異つて参るのであります。私どもといたしましてはかような場合に、捜査をいたしまして犯罪の証明十分であると確信を得られる証拠を集めるために終始努力をいたすのでありますが、許されたる条件の範囲では、その証拠を得られない場合も起つて参るのであります。しこういたしまして事案を判断いたします場合に、集つた証拠範囲において、はたしてこれでいかなる犯罪構成要件を充足する事実を証明する証拠があるかいなかということを判断して参るのであります。今回の事件におきましては涜職犯罪事実を立証するに足る証拠は得られなかつたのでありますが、政治資金規正法違反の事実を立証する証拠は得られましたので、この点において公訴を提起した次第であります。  私どもといたしましては、政治資金規正法違反というのが何か簡単な形式犯罪ように考えられる向きもあるやに聞いておりますが、さように考えていないのであります。法定刑状況から申しましても、あるいはその内容から申しましても、決して単なる形式犯ではなく、実質犯であるというふうに考えておるのであります。
  25. 柴田義男

    柴田委員 その点でもう一度重ねて承りますが、政治資金規正法起訴された、こういうことでありまするけれども寄付をしたものは船主がまじつている団体であります。それから船主協会造船工業会といたしましても、同じような性質の団体であるということは間違いかないと思うのです。こういう団体寄付をするというような場合は政治資金規正法では禁じられておりますが、これも厳然として間違いはないと思います。  もう一つ河井検事に伺いたいことは、日本開発銀行はいかなる性格であるかということをお尋ねいたしたい。私どもの考えでは、あれは一般市中銀行とは違います。一般の株式会社何何銀行という性格のものでなしに、政府機関であります。国民の税金によつてつくり上げている銀行である、融資機関である、こういう考え方から見ますると、どうしてもこれは涜職でなければならないとわれわれは考えておるのであります。今の検事の御見解では、いろいろそこにはまた裏づけとなるべき証拠が問題になるでありましようが、どういう角度証拠がつくり上げ得なかつたの——。つくり上げるという言葉は悪いのですが、その証拠がおつかみ得なかつたのか。それはすなわち指揮権発動によつて一切が葬り去られてしまつたのであるかどうか、こういう点を承りたいと思います。
  26. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点の第一点は、海運会社国家と特別の契約があるから、政治献金などはできない関係にあるのではないか、こういう点であると承りましたが、この点につきましては、御承知のように、外航船舶建造融資利子補給法が成立、公布されましたのが、昭和二十八年一月五日であります。従いまして同法律に基いて利子補給契約が締結されました時期が問題になつて参るのであります。国と特別の利益を伴う契約、その契約がいつ成立したかということによりまして、政治献金ができるかできないかという問題が、いわゆる公職選挙法違反の犯罪成立の有無ということにかかつて参るのであります。本件の具体的な場合にどうなつておるかということは、捜査内容になりますので、今この点は許されていないのであります。さように御承知願いたいと思います。
  27. 柴田義男

    柴田委員 ただいま利子補給法案が二十八年の一月と御記憶のようでありますが、八月十五日ではなかつたでしようか。この点をもう一度承りたいと思います。
  28. 河井信太郎

    河井証人 御承知のように、最初に成立いたしました法律は、外航船舶建造融資利子補給法という法律で、これは昭和二十八年一月五日に法律第一号として公布されております。その後改正案が通過成立いたしましたのが、外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法となつて八月十五日に成立、公布されておる、さように承知いたしております。
  29. 柴田義男

    柴田委員 先ほどお尋ねいたしました日本開発銀行に対する性格的な御見解を承りたいと思います。
  30. 河井信太郎

    河井証人 日本開発銀行は、御承知のごとくその資本は全額政府の出資により、その資本の内容国家予算によつて組まれたものがこれに充てられ、それが融資されておるという性格から見まして、御見解通りであろうと存じます。
  31. 柴田義男

    柴田委員 そういたしますと、日本開発銀行に対する性格の御判断もわれわれと同様の御判断のようでありますから、重ねて承りたいと思います。船主は運輸省から、たとえば佐藤検事総長談話の中にもございましたが、——佐藤検事総長談話でございましても、やはり主任検事でいらつしやる河井検事さんも御関係があつたとわれわれは考えざるを得ないのでありますが、その談話の中でも、昭和二十八年の四月選挙中心に官房長官に贈賄しておることは事実であつた。先ほどの委員長からの御質問に対しましても、明らかに昭和二十八年の選挙にも相当政界人に対しましても、金が陣中見舞の形で山下汽船以外の海運関係会社から出ておるということをお話でございましたが、政界と申しましてもあまりにも漠然としておりますので、代表的にどういう政界人に金が出ておるのか、具体的に承りたいと思います。
  32. 河井信太郎

    河井証人 昭和二十八年の衆議院議員総選挙に際して、海運会社から政界人のどなたに幾ら金が出されておるかということを具体的に述べよというお尋ねと承りましたが、この点はすでに検事総長検事正が当委員会に参りました際も御質問がありまして、その点は上司の許可がないからという答弁であつたと承知いたしておりますが、私どもも許可の範囲外になつておりますので、さように御承知願いたいと思います。
  33. 柴田義男

    柴田委員 どうも私どもは具体的に一歩も出ない御答弁だけ承つておりましても、実際われわれといたしましてこの造船融資をめぐるいろいろな収賄関係というものは明らかにならぬ。こういうことでわれわれ国会におる者だけでございません、日本国民大衆は日本にきれいな政治の確立を望んでおるのであります。こういう観点からどうしてもこの点を明らかにしていただきたいというので、証人にも御出頭つて、そうして何とか検事だという立場でなしに、やはり善良なる日本国民である、そうして日本の将来の政治をまつたくきれいなものにしなければならない。こういう観点からもう少し上司の命令、あるいは上司の許可ということにこだわらぬで、良心的な立場で多少でもこれを明らかにしていただけないのでございましようか。その点の御心境をもう一度承りたいと思うのであります。
  34. 河井信太郎

    河井証人 御趣旨のほどはよくわかるのでございますが、私どもは法を守り、権力を行使する職責におります立場からいたしますれば、国家公務員法第百条によつて職務上の秘密についてはこれを守らなければならないという法の建前がございます以上、みずからこれを無視して、御趣旨に沿い得るよう発言をするということは、断じて行うべきでなかろうと私は確信いたしております。
  35. 柴田義男

    柴田委員 その今のお話から、われわれ考えざるを得ないことは、法の維持をしなければならぬ、あるいは国家公務員法の百条によつて束縛されておる、こういう法律上の問題は一応わかるのであります。しかしほんとうに法を維持する建前からいいますと、公訴維持が困難であればこそ、秘密がここに必要となつて参りましよう。しかしあらゆる角度から捜査をされた河井検事が、多少のことをここで発言されることによつて、何で公訴維持が困難になるのか。しかも日本の一流の代表的な検事があらゆる資料をもつて調査をされて、これであればこの事件はまつたく国民を毒するものである、この事件を徹底的に糾明しなければならないという考え方で、いきまいてあの捜査に当られた河井検事としては、わわれれは納得できぬのであります。少くも公訴維持に困難であればこそ、職務上の秘密という問題がここに出て参りまするけれども、もう確然とした証拠を握つておられて何の躊躇なさることはない。どうかもう少し明らかに、たとえば検事みずから佐藤榮作君をお調べになつた場合にも、佐藤榮作君は調べられたときはひざを折つて涙を流して、こういう問題を徹底的に糾明されるならば、日本の保守政党というものは崩壊に瀕してしまう、こういうことすらも明らかに言つたと私どもは聞いておりまするが……。     〔発言する者あり〕
  36. 田中彰治

    田中委員長 御静粛に願います。
  37. 柴田義男

    柴田委員 しかも彼は終つてしまえば、雑誌等に向つては放言をはいております。これは武士の向う傷にすぎない……。     〔発言する者あり〕
  38. 田中彰治

    田中委員長 御静粛に願います。
  39. 柴田義男

    柴田委員 あるいは吉田総理は、あの問題は流言飛語だとすら放言をされておる。一面徹底的な悪いことを彼らがしていながら、世間に対する発表の仕方というものは、総理大臣は流言飛語と言い、あるいは……。     〔発言する者あり〕
  40. 田中彰治

    田中委員長 御静粛に願います。
  41. 柴田義男

    柴田委員 佐藤榮作君は武士の向う傷にすぎないというような放言をはいておるのであります。こういう良心の麻痺した政治家を是正するのは、検察庁のほんとうの力であるとわれわれは信頼をして今日に至つたのであります。こういう観点から、あくまでもこの問題は徹底的にここで証言せられて、日本の政治を、日本の経済界を明朗にしていただかなければならぬとわれわれは思うのであります。こういう観点からも、佐藤榮作君を、調べまして、そうしてたとえば船主協会あるいは造船工業会その他から五千数百万の金が授受されておる。この問題は単に政治資金の規正法だけでこれを処断するというようなことは、根本的に間違いではないかと思いまするが、それに対する御見解を承りたいと思うのであります。     〔発言する者あり〕
  42. 田中彰治

    田中委員長 よけいなことを言わぬがいい。黙つていなさい。発言中だ。     〔「黙つて聞いておられるか」「そういうことで調べられるか。だから検察庁国会がなめられるのだ」と呼ぶ者あり〕
  43. 田中彰治

    田中委員長 そんなことは言わないでいい。議員の発言中だ。静粛になさい。     〔「われわれは正しい立場で調べてもらいたいのだ」と呼ぶ者あり〕
  44. 杉村沖治郎

    杉村委員 自由党の諸君がこのような妨害をするということは、議事進行を明らかに妨害するのであります。田渕君の退場を命ぜられんことを望みます。
  45. 田中彰治

    田中委員長 田渕君、退場を命じますよ。     〔「そんな穏かでないことを言うものじやないよ」「退場しろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  46. 田中彰治

    田中委員長 静粛になさい。きようは何のために証人を呼んでおるのか。委員長の許可なしによけいなことを言わぬでよろしい。静粛になさい。君の態度がいけない。
  47. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点は、検事はいわゆる造船事件について全力を尽してやつた結果、指揮権発動のためにかようになつたのだから、捜査内容をここでぶちまけて、国民の前に明らかにする熱意はないかというお尋ねが第一点と存じまするが、まことに御心中はよくわかりますが、私どもといたしましては、法の定めるところによつてそれぞれの証言をいたすということが私どもの義務と存じますので、許された範囲において申し上げることが正しいと存じます。  第二点の、政治資金規正法によつて起訴されたことは、いわゆる向う傷であるというような考えもあるがというお尋ねでありますが、先ほども申し上げましたように、私どもといたしましてはさように考えていないのであります。単なる形式犯ではなく、実質犯であるということを考えておりまして、この点につきまして単に政治資金規正法起訴するということは、何か軽々しいような御印象に承りましたが、私どもとしてはさようには考えていないのであります。特に新憲法下、いわゆる捜査の原則が昔とは非常に異なりまして、証拠の収集その他にも非常な困難を来たしておる今日におきましては、やはり集まつた証拠によつて証明し得る範囲でその責任を追究するということが、法の建前であろうと存じておるのであります。
  48. 田中彰治

    田中委員長 柴田君、もう時間ですから……。
  49. 柴田義男

    柴田委員 どうも雑音が入つて相当時間を食われたので、その点を御了承願いたいと思います。  最後に、海運会社が長年の間赤字が続いておつた、こういうことは捜査過程においておわかりになつたと思いますが、こういう赤字続きの海運会社が、政党等に献金をすることによつて莫大な利益を得ようという意図があつた、こうわれわれは判断いたしますが、この捜査過程において、赤字続きの海運会社は莫大な献金をいたしまするその代償としての、何か大きな利益を得ておつたものであろう、こう思います。そういう赤字続きの海運会社から寄付を受けるような政党というものは、やはり赤字続きの海運会社を何か救済しようという目的があつた、こう考えられまするが、これらに対する捜査過程において調査された、たとえば具体的と申しましても、何のだれそれということは遠慮いたしまするが、どの政党に一番多く金が行つたというようなこともひとつ伺いたいのですが、その点もやはり秘密で言えないのかどうか、この点を最後に承りたいと思います。
  50. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点につきましては、先ほど来申し上げましたように、いわゆる海運会社財政融資を受けておるのにかかわらず、その利息も満足に払えないと当委員会におきましても明らかにされたと存じまするが、さらに三箇年間すえおき、十三箇年月年賦償還のその元金すらも払えない。五分の利息が、払えなくて三分五厘にしてもらいたいという法律をつくつてもらつておる。さよう会社が、片方において政治献金をするということは、やはり何らかの利益の反対給付があるのではなかろうかという容疑を持つのは、当然であろうと私は考えたのでございます。そこで捜査が開始されたというのがこの間のいきさつでございます。
  51. 田中彰治

    田中委員長 ちよつと河井証人お尋ねしますが、たとえばそれは政治資金規正法であろうとも、あるいは収賄であろうとも、その罪の上下は別として、あなたの方は政治資金規正法にされたということは、やはり指揮権発動によつて収賄の事実の証拠をつかむことが困難であつたのだというようなことじやないのですか。ちよつとそれだけを一言お尋ねいたします。
  52. 河井信太郎

    河井証人 それはお尋ね通りであります。
  53. 田中彰治

    田中委員長 わかりました。  田渕君。——田渕君に御注意を申し上げておきます。きようはあなたも国会法を調べておいでになつていましようから、きよう造船融資に関する件で証人を呼び出しておるのですから、それ以外発言は許しません。
  54. 田渕光一

    田渕委員 委員長から御丁重なる御注意がありましたので、私はことさら国会の権威の保持のために伺うのであります。河井検事憲法第五十条に基いて、まず第一号逮捕とも申しましようか、有田議員の逮捕以来、改進党の荒木君の第五号の逮捕まで、国会開会中には、議員というものは少くとも数万票の票をとつて来ておる、全国民を代表しておる国会議員である。国権最高機関の構成員であり、何も逃げも隠れもしない。証拠の隠滅もしない。何を好んで予算の切迫しておるときに逮捕状を出なさければならぬのか、こういうことが非常に問題になつたのであります。しかしこうことはすでに過ぎておりますから、これはおきまして、私は国会の権威の保持上、あるいはこの厳粛さのために先ほどからどなつておるのでありますが、まず伺いたいことは、今質問されました柴田議員をお調べになつたことがありますか。
  55. 田中彰治

    田中委員長 それは関係ないことじやないか。
  56. 田渕光一

    田渕委員 これは関係があるじやありませんか。造船疑獄関係があるから、本件に関して私は伺いたい。あなたは柴田議員をお調べになつたことがあるかどうか、それを伺います。
  57. 田中彰治

    田中委員長 田渕委員に申し上げます。柴田議員は造船では調べられておりません。
  58. 田渕光一

    田渕委員 あなたに聞いておるのではありません。
  59. 田中彰治

    田中委員長 範囲が違つておるから言うのです。
  60. 田渕光一

    田渕委員 証人に私は答弁を求めておる。
  61. 田中彰治

    田中委員長 そんなことを言う必要はない。
  62. 田渕光一

    田渕委員 委員長に聞いおるのではない。ぼくは証人に聞いておるのだ。造船疑獄関係があるから聞いておる。
  63. 田中彰治

    田中委員長 それでは許しますから聞いてごらんなさい。調べたことはありませんから……。
  64. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点につきましては、私は取調べたことは、ございません。
  65. 田渕光一

    田渕委員 それを伺えばいいのであります。名誉のために伺うのであります。しからば他の検事がお調べになつたということを捜査会議等においてお聞きになつたことはございませんか。
  66. 河井信太郎

    河井証人 どなたをどのよう容疑で調べたとか、あるいはいつどなたを調べたということになりますと、いずれ御質問があろうと存じますが、やはり私どもはそれを明確に申し上げるには許可の範囲に属することと存じまするので、この点は御寛容を願いたいと思います。
  67. 田渕光一

    田渕委員 柴田議員に対するその点はそれでわかりました。一応留保しておきましよう。  しからば当委員会委員長田中彰治君をあなたはお調べになつたことがございますか、これを伺いたい。
  68. 田中彰治

    田中委員長 造船疑獄田中彰治が調べられたことは一度もありません。河井証人、あなたが調べたというのなら遠慮なく言いなさい。
  69. 河井信太郎

    河井証人 その点につきましても先ほど申し上げましたと同様に、調べたことがあるとかないとかいうことを申し上げることは、やはり許可の範囲に属すると思いますので、申し上げることは差控えたいと思います。
  70. 田中彰治

    田中委員長 河井証人に申し上げますが、この造船とかあるいは国会のことについて、汚職事件に対してあなたが私をお取調べなつたことがあつたらどうぞおつしやつてください。けつこうです。私が承知しますから、国会のことについて何かお調べになつたらおつしやつてください。けつこうです。
  71. 田渕光一

    田渕委員 委員長、私は権利があるから聞いておるのだ。委員長はよけいな注意をしなくてもよろしい。——しからば証人証言をもつて、調べたものと私は了承しておきます。
  72. 河井信太郎

    河井証人 どのようにお受取りになりますかは私の関知するところではございませんが、私どもといたしましては、その点については申し上げかねるというふうにはつきり申し上げておきます。
  73. 田中彰治

    田中委員長 いや申されてもいいですよ。
  74. 田渕光一

    田渕委員 それは了承するせぬは私の自由であります。あなたに調べられたことがあるということをはつきり申し上げておきます。そこで私はもうこれ以上質問をいたしません。少くとも当委員会委員長を調べたことがないと担当検事である証人が断言し、明確に言わない以上は、国会の権威保持上、私はこれ以上質問いたしません。大いにこの委員会委員長というものに対して私は疑いを持つて、これでやめます。
  75. 田中彰治

    田中委員長 河野金昇君。
  76. 河野金昇

    ○河野(金)委員 この委員会でさきに検事総長検事正に来ていただいて、いろいろ承つたのでありますが、ほとんど全部職務上の秘密として上司の許可がない限り言えないということでありました。河井検事も最初佐藤検事総長を私たちが調べたときにも傍聴に来ておられたのでありますから、おそらく佐藤検事総長に聞いたようなこと、あるいは翌日馬場検事正に聞いたようなことをここで繰返してみても、あなたもおつしやられないことは当然であろうと思いますから、私は具体的なことをきようは聞こうとは思いません。しかし佐藤検事総長あるいは馬場検事正等の証言によりましても、第一線のあなた方が非常に熱意を持つてこの事件に取組んでおられたが、指揮権発動によつてその後の捜査に非常に支障を来したと言つておられるのであります。その点第一線で真剣に取組まれたあなた方として、ああいう結果になつたことに対して全体としてのあなたの感想、指揮権発動に対するところのあなたの感想というものをまず承りたいと存じます。
  77. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点は、指揮権発動によつてせつかく第一線検事が熱意を持つてつていた事件が結局つぶれたのではないか、その点の心境いかん、こういうお尋ねであろうと存じまするが、私どもといたしましては、御推察の通り真剣に事案真相究明ということに三十数名の検事が努力いたして参つたのであります。指揮権発動されましたときに、別途指示あるまで待てという趣旨の指揮権と承知いたしておりまするが、捜査には時期がございます、贈賄者を逮捕勾留いたしておきまして、四月二十九日にはすでにその勾留満期になつて保釈出所をしなければならないという時期に立ち至つておる際におきまして、しばらく待てと言われ待てるものならば、私どもとしてはことさらにあの重要な国会開会中に、逮捕勾留の必要ありというようなことを言い出すわけがないということで御承知願いたいと存じます。
  78. 河野金昇

    ○河野(金)委員 いかに検事の方といえども一党の幹事長、ましてや与党の幹事長収賄罪で逮捕したいという御要求をなさる以上は、確固たる証拠をお持ちになつておつたことであろうと思います。河井検事が冷静しかも丁寧な言葉で今心境をお述べになりましたから、私はこれ以上あなたを追究しようとは思いませんが、法の前に万人平等でなけらねばならないけれども、やつぱり今度の事件でも小者は逮捕されて大物は逮捕を免れるのだ、こういう思想を国民の前に蔓延させたことは、まことに検察当局の威信の上から言つても残念至極のことであつたと思います。ましてや八月十日の自由党の支部長会議における吉田総裁のあの言葉を、おそらく河井検事といえども録音か何かではお聞きになつたことであろうと思いますが、現在現職の検事であるがゆえに、いかなる暴言を吐かれようともそれに対するところの反撥のできない心中は察するに余りあるのであります。あの八月十日の暴言は新聞でごらんになり、あるいは録音でも聞かれたと思いますが、あれに対する御心境もこのとき承ることができれば仕合せであります。
  79. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点につきましては、検察に寄せられました深き御理解を哀心から厚く御礼申し上げる次第でありますが、八月十日の支部長会議における吉田総裁の発言につきましては私も新聞で承知いたし、ラジオで録音放送を聞き、さらにその一言一句まで念を入れて確かめたのであります。この発言を聞き私どもとしては愕然とし、同時に憤懣やる方ないものがあつたのであります。それがために今回の証言範囲につきましても、捜査に関する内容というようなことは軽々しく発表すべきことでない、突き詰めて申しますれば超法律的なものである、人の悪事醜行に関することが主としてあるような事柄は公表すべきことを差控えなければならぬというのが私の考え方でありまするけれども指揮権発動吉田総裁の発言によりまして、検察国民から受けた不信というものは、私ども検察の信頼性のために、威信のためにこれをぬぐい去ることだけはお許し願いたい、私どもはるる上司にも意見を申し上げたのであります。     〔「読み違えておりはせぬか」と呼び、それ他発言する者あり〕
  80. 田中彰治

    田中委員長 御静粛に願います。
  81. 河野金昇

    ○河野(金)委員 検察庁第一線で働いておられる河井検事としては、私は当然のことだと思います。これをやじつたり、ひやかしたりする諸君の心境を私はむしろ疑うものであります。これは何も自由党とか改進党とか社会党という立場でなしに、法の威信というものだけは国民全体で守つて行かなければ、法治国というものは成り立つて行かないであろうと私は思うのであります。従いまして自由党の諸君が何とおつしやろうとも、この造船疑獄をめぐるいろいろな事件並びにそれに関連したところの指揮権発動吉田総裁の暴言というものは法の威信、検察庁の威信を回復することはあなた方御自身も考えていただかなければならぬし、われわれもこれは考えて行かなければならないし、自由党の諸君が何にもないと言うならばそれはいずれ国民批判を受けるときにわかることであろうと思いますから、私はそれにかかり合おうとは思いません。しかし今ここで何と言おうとも、ああいう一連の事件あるいは権力の発動によつて検察庁の信用は、あなた方の意思とは違つて落ちたのであります。政党の信用も落ち、政治家の信用の落ちたことはやむを得ないとしても、法の威信、検察当局の威信も落ちておるのでありまするから、第一線のあなた方はこれを回復するのに全力を注いでいただかなければならないと思います。もちろん今後回復しようと御努力なさるお気持はわかりますが、具体的にこうしたら威信が回復できるというようなものがあれば承りたい。なければただ心境を承るだけでけつうであります。
  82. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点につきましては、私どもといたしましては、この事件をよき教訓といたしまして、再びかような不信を受け、かような結果にならないように、今後も全力を尽しまして検察のために働く所存でおります。
  83. 河野金昇

    ○河野(金)委員 御心境を承りましたから、私は具体的な問題に対する質問はきようは差控えておきます。
  84. 田中彰治

    田中委員長 河井証人に申し上げますが、決算委員長として、やはり職責を実行する上にいろいろ関係もありますから、もし造船についても、鉄道問題についても、国会国民の血税とかそういうような問題について私がお取調べを受けたとかなんとかいうことがあつたら、私が承知をしておるのですから、そこでおつしやつてけつこうです。どうぞひとつおつしやつてください、証言を許しますから……。
  85. 河井信太郎

    河井証人 その点につきまして私はここで明確にいたすことはいとたやすいことでございますが、これがほかの例にも相なりますし、私どもとしては委員長の御承認があつたからここで発言するというわけにも参りませんので、この点はさように御承知願いてす。
  86. 田中彰治

  87. 杉村沖治郎

    杉村委員 私が証人お尋ねいたしますのは、職務上の秘密についての見解をまず尋ねたいと思うのであります。  刑事訴訟法や民事訴訟法にはいろいろそういつたことについて書いてあるのですが、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律、この法律におけるところの、この場合の職務上の秘密ということは一般の民、刑法のそれとはいささか見解が違うのじやあるまいかと思われるのであります。それは私がここで申し上げるまでもなく、この法律の第五条末尾に、政府はどうしても国家の利益に重大なる悪影響を及ぼす場合でなくては内閣声明というものは出されない、そういうことになつておるのですが、しからばやはり証人証言を拒否することは、職務上の祕密として拒否する場合においては、少くともそれを拒否しなかつたなれば、国家の重大なる利益に悪影響を及ぼすという観点に立つた場合でなかつたなれば拒否してはならぬのじやあるまいか、この職務上の秘密に対する法律上の根拠とすれば、民法あるいは刑法、刑事訴訟法、民事訴訟法によるべきものではなくて、この議院における証人宣誓及び証言等に関する法律の第五条末段から出ておると私は思うのでありますが、これをあなたはどうお考えになりますか。あなたの今日までおつしやられておる職務上の秘密はいずれも実体法、他の公法によるところの職務上の秘密という御見解のもとに証言を拒否せられておるのでありますか、いずれでありますか。その点をお尋ねいたします。     〔発言する者多し〕
  88. 田中彰治

    田中委員長 御静粛に願います。
  89. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点につきましては二つの問題があつたと存じます。  第一点は、法の解釈として職務上の秘密とは何であるか、証人はどのように考えておるかというお尋ねが一つと、第二点は、私が職務上の秘密と申し上げておることがその条文のどれに該当するのだというお尋ねであろうと承りましたが、問題はお尋ね通り、国の利益に重大な影響のあることが結局秘密事項という範囲に入ることは間違いないと存じます。しかしながら具体的な問題におきまして、私の場合にはすでに検事総長検事正は職務上の秘密として証言されており、そのわくはおのずからここにきまつて来ており、さらに法務大臣は先般当委員会に対してその範囲を明確にされたと承つておりますが、そういたしますと、具体的な問題につきましては私が御証言申し上げる範囲はおのずからきまつて参ると存じますので、私はその範囲において許されておると承知いたしております。
  90. 杉村沖治郎

    杉村委員 河井証人の今の御意見であれば、私はそれ以上は申し上げません。それでけつこうであります。  さてしからば事実問題について伺いたいのでありますが、犬養法務大臣が山下汽船から二十万円を受取つたというこの事実についてあなたはお取調べなつたことがあるかどうか、いかがでありますか。
  91. 河井信太郎

    河井証人 その点につきまして、私は取調べをいたしておりません。ただ他の検事が明らかにされたということは聞いております。
  92. 杉村沖治郎

    杉村委員 あなたがお取調べになられなくても、あなたは東京地方検察庁主任検事であつたのであるから、少くともこの点については他の検事取調べましても御存じであろうと思うのですが、この点をひとつ他の検事取調べで承知しておる範囲を承りたいのですが……。
  93. 河井信太郎

    河井証人 その点になりますと取調べ内容ということになりまして、どの検事がいつどのような方法で取調べかいなかという問題に帰着すると思いますので、これは許可の範囲に属していないのでありまして申し上げかねる次第であります。
  94. 杉村沖治郎

    杉村委員 その点は法務大臣の回答の中でさしつかえないことになつておりはしませんか。それをどういうふうにお考えになつておりますか。私どもはあなたの方の法務大臣の回答を持つてつて伺つておるのですから……。
  95. 河井信太郎

    河井証人 私の承知いたしました範囲は、この点について法務大臣の当委員会に対する回答は、犬養法相と山下氏とが料亭中川で会合した事実についての取調べの結果を証言することを承認するということになつておると承知いたしておりますので、これ以外には申し上げかねると思います。
  96. 杉村沖治郎

    杉村委員 それですからこの取調べの結果をそれぞれ証言することはよろしいということになつておるのでしよう。それでは、とにかくあなたがどういうふうに御解釈になつてけつこうですが、法務大臣が回答として許したこの犬養君に関する点をひとつお述べ願いたい。
  97. 河井信太郎

    河井証人 私がさきにも申し上げましたように、この点について事実が明らかになつておると申しましたのは、他の検事がこの点について事実を明らかにしておるということを聞いておるのであります。それは、犬養法相が中川へ所用があつて行かれたときに、たまたまそこにいた山下太郎氏と会われ、新年のあいさつをされて、話があつた。しかしそのときは、まだ事件捜査には着手したばかりのときでありまして、事件の話については何も出ていなかつたということが明らかになつたということを私は聞いております。以上の通りであります。
  98. 杉村沖治郎

    杉村委員 そうすると、その後取調べはどういう結果を生じたのでありますか。その取調べの結果をそれぞれ証言することはさしつかえないということになつておりますが、その取調べの結果はどうなりましたか。あつたのですか、なかつたのですか。
  99. 河井信太郎

    河井証人 その場合はそれだけの話がとりかわされたというだけで、取調べの結果とすれば、その事実が明らかになつたということだけで、それ以外のことは——別にそのことが犯罪になるわけでもありませんし、またその容疑が生ずるわけでもないので、それだけの結果であつたというふうに承知いたしております。
  100. 杉村沖治郎

    杉村委員 私はあなたにからまるわけじやないのだが、少くとも山下太郎は山下汽船の社長でございましよう。この山下汽船の社長と犬養法務大臣とが中川に会合した件についての取調べの結果を、それぞれ証言することがさしつかえないということになつておれば、取調べた結果犯罪容疑があつたのかなかつたのか、そういうことの結果があるはずです。あなたの今おつしやることでは、ただ結果は出たのであろう、こういうようなことであつたのですが、そのことについては、どういうことになつたのですか。取調べの結果がおわかりにならないのならばおわかりにならないでよいのですが、主任検事はどなたですか。お調べになつ検事はだれであるか。それからあなたが知つている範囲において取調べの結果はどうなつたのか……。
  101. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点まことにごもつともだと思います。その証言範囲でございますが、許可の範囲——そうしますと、結果はどうなつたかと仰せられましても、それは要するに時の法務大臣が、後には造船事件として発展したもとになつておる会社の社長と会うということは、一応何らかの疑惑を持つて見られるという節もあるのじやなかろうかということで、その点の事実が明らかにされた結果は、それについて疑惑を持つて見るような何ものもなかつたということになつた、こういうふうに承知いたしております。
  102. 杉村沖治郎

    杉村委員 それでは、それはその程度にいたしておきましよう。  次に西郷吉之助参議院議員、この西郷吉之助参議院議員に関するところの金銭の授受並びに趣旨につき、ひとつお述べ願いたい。
  103. 河井信太郎

    河井証人 この点につきましては、日立造船の社長並びに東京支社長金子喜三郎氏を逮捕勾留中におきまして、日立造船としては、保安庁の建造船舶の入札割当等について、これを獲得するために何らかの手づるを求めて運動をしようということを決定して、たまたま金子常務の知り合いであつたものを介して西郷吉之助氏にその尽力方を依頼した。そうして西郷氏は、池田勇人氏にその尽力を頼んだ、頼むことを約束して尽力してやることを引受けた。そこで金子常務は社長の松原氏と相談の上、五百万円の現金を西郷吉之助氏に渡して運動を依頼した。そこで西郷氏は、この金を池田勇人氏のところへ持つてつて自分が日立からもらつた金であるが、党に差上げたいと思うが党のために使つてもらえないかということを話をした。ところが池田勇人氏は、言下にこれを断つた、お志はありがたいが、そういう金であるならば受けるわけに行かないということで、西郷吉之助氏はこれを持ち帰つた。そうしてこれを親戚に当る西郷隆秀に渡し、そこで処分をしたというのが事案の趣旨でございます。関係人を取調べました結果、問題はこの五百万円の趣旨について、池田勇人氏に渡してくれということを頼まれて西郷吉之助氏が預かつたものであるならば、西郷氏について横領罪の容疑がある。西郷吉之助氏が、自分運動してやる報酬として五百万円をもらつたのであれば、犯罪の嫌疑は一応ないのではなかろうかという点について、関係人を取調べ行つたのであります。その結果、金子常務は池田氏に渡してもらうということで、西郷氏に五百万円渡したと、終始一貫しておりました。西郷氏は、自分がもらつた金で、池田氏に持つて行つたのは、自分も参議院議員として自由党の幹部であるから持つて行つたと、終始一貫してこの点の供述は食い違つておりました。池田勇人氏については、当時自由党の政調会長であり、公務員としての職務に関するという容疑は初めから何らありませんので、かりに西郷氏がこれを提供いたしましても、賄賂提供にもならなければ何ら犯罪容疑はないということが、これは初めから明確になつていたのであります。いわんやこれをただちに返しておられることがはつきりいたしておりましたので、結局西郷吉之助氏の横領の容疑について取調べをいたしました結果、この点について犯罪の成立を認むるに足る証拠が得られませんので、嫌疑不十分ということになつておるのであります。
  104. 杉村沖治郎

    杉村委員 この点について犯罪の嫌疑不十分ということで済ましたとおつしやるのですが、そういたしますると、少くとも日立造船は、西郷吉之助に金を託して、これを池田にやつてもらいたいということで池田のところへ持つて行つた。そのことにつきまして池田が返したというのだが、実際池田について直接お調べになりましたか。
  105. 河井信太郎

    河井証人 それはまだ金子氏などの関係者が身柄拘束されておる時期に、いわゆる通謀のできない時期において取調べましたその結果、返されたことは間違いないという心証を私は受けました。
  106. 杉村沖治郎

    杉村委員 この事件について西郷吉之助が当時行方不明である、検察庁から呼び出しを受けて行方不明になつてしまつたということは、当時の新聞がみな筆をそろえて書いておつたのですが、このごときに西郷吉之助をどこへか留置でもいたしておつたのでありますかどうですか。
  107. 河井信太郎

    河井証人 身柄の拘束はいたしませんでした。しかし当時といたしましては、まだ犯罪容疑がそれほど確実にあるとも言えないという状態でありましたので、できるだけ事実を秘匿して取調べるために、いろいろ取調べの場所を考えましたために、あるいは報道関係の人は、行方不明とか、あるいはどこであるかわからないために、さような報道がなされたのではなかろうかと考えております。
  108. 杉村沖治郎

    杉村委員 この五百万円の処理について、実は西郷隆秀でありますか、西郷隆秀にこの五百万円を背負わせてしまつて、池田が逃げたのである、こういうことがもつぱら伝えられておるのでありますが、この西郷隆秀をお調べになつてどんなぐあいでありましたか。その金の処分等はいかがでありましたか。
  109. 河井信太郎

    河井証人 その点につきましては、西郷隆秀氏は身柄を拘束いたしまして、たしか二十日間であつたと思いますが、取調べをいたしました。その結果、少くとも池田勇人氏に行つていないことだけは明確になりました。ただ最終の何十何円までがどこへ行つたかという点については必ずしも明確になつていないというふうに報告を受けております。
  110. 杉村沖治郎

    杉村委員 何十何円までは明確でなくてもけつこうでありますが、その五百万円の大半はどこへ処理されておるか、それくらいはお調べになつておるであろうと思うのですが、いかがでありましようか。
  111. 河井信太郎

    河井証人 西郷吉之助氏と西郷隆秀氏の関係でありますが、これはたしか、いとこかに当つておつたということの報告を聞いております。さよう関係で西郷隆秀に預けたと吉之助氏は言つておる。またその方はもらつたということで、その処分についてはいろいろと述べていたというふうに聞いておりますが、お尋ねように池田勇人氏が西郷隆秀氏に大半を背負わせてというような点については、これはそれぞれ身柄拘束中でありまして、私どもとしては、その点は十分取調べました結果、さような事実はないということだけは明確になりました。これは私ははつきりと申し上げることができると思います。
  112. 杉村沖治郎

    杉村委員 この五百万円の金を池田勇人氏のところへ持つてつて、池田勇人がそれは困るといつて返したのであるなれば、西郷吉之助はその金を元へ返すべきではありますまいか。それをそのままにしておいてはどうもおかしいと思うのですが、検察庁はそれは西郷吉之助が個人でもらつたというふうにお認めになつてそのままにしておるのでありますか。その点は取調べの結果どういうふうな結末がついたのでありますか。
  113. 河井信太郎

    河井証人 まことにごもつともな点でありまして、私どももそれが最初からの取調べの一つの重点になつてつたのであります。従いまして、その点については金子常務と西郷吉之助氏との対質尋問とかさようなことまでして、一体池田勇人氏に渡すために預けたものであるか、西郷吉之助氏にやつたものであるかという点については、かなり詳細に取調べを進めたのでございます。その結果、その点について、池田勇人氏に渡してもらうためで、もしそうでなければただちに日立側に返してもらわなければならないという条件のついた金であるというふうに認むることはできなかつたのであります。その結果その点の犯罪の嫌疑は不十分ということになつたのであります。
  114. 杉村沖治郎

    杉村委員 この点はこの程度にいたしまして、次は政治資金規正法起訴されております……。
  115. 田中彰治

    田中委員長 杉村委員、もうじきに時間ですから……。
  116. 杉村沖治郎

    杉村委員 もう一点だけ。政治資金規正法佐藤榮作氏を起訴いたしておることは、先ほども申された通りなんですが、この政治資金規正法佐藤榮作氏を起訴するについては、これはつまり自由党に献金をした、こういうことについてその取扱いが悪いからということで政治資金規正法起訴されたのでありましようか。自由党の総裁は吉田茂君でありますが、幹事長であるとか、政調会長であるとかいうようなものは一つの機関であつて自由党の全体的の責任は吉田総裁にあると私どもは考えておる。従つてはたしてどういうふうな趣旨で金が受入れられたのか、いやしくも五千五百万円というような莫大な金であります。造船汚職という点から見ればきわめて微々たるものであります。けれども五千五百万円という金は非常に大きな金である。しかもその中の金が船主協会の五十四社の総務委員長である俣野健輔から二千万円、造船工業会の会長である丹羽周夫氏から一千万円、あるいは石炭鉱業会から二千万円、こういうような莫大な金を受取つたことについては、いやしくも幹事長は総裁と何らかの連絡がないということはないと私は思うのであります。ことにかくのごとく汚職問題が天下を風靡しておる際におきまして検察陣が少くとも自由党の責任者である吉田総理、総裁を調べるべきが当然じやないかと思いますが、この吉田総裁を調べたのであるか調べないのであるか。調べなかつたとするなればどういうわけで調べなかつたのか。そういう点を伺いたいのであります。  それから第二点といたしましては、本年の三月二十一日の各新聞が、松野鶴平氏のせがれ松野代議士が造船会社から八百万円、そのほか岸信介を初め、石井運輸大臣あるいは犬養法務大臣までがそれぞれ多額の金円を収受しておることを報道いたしておるのでありますが、これらについては中川におけるところの会合の事実についても、これは石井運輸大臣みずからが認めておる。こういうことについてお調べになられたことがありますか、ありませんか、それを伺いたい。私どもは前回馬場検事正に対してもこのことは申し上げたのです。いやしくも犯罪の端緒となるべき事実を天下の新聞が筆をそろえて書いておること、国会においてわれわれが発言しておること、これらは当然にお調べになるべき事項であると思いますが、お調べになられたか、なられないか。また今日も私はここでこう申し上げておるのだが、将来これに対してお調べになる意思があるかないか。以上お尋ぬをして私の質問を終ります。
  117. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの第一点、吉田総理を調べたかどうかという点につきましては、もちろんその必要があれば取調べをいたすととにはなるのでありますが、政治資金規正法違反の点についてはその必要がなかつたので、取調べはいたしておりません。  第二点の、その他の方々について取調べをしたかどうかという点につきましては、すでに法務大臣から当委員会あてに、たしかその点の回答も参つておると思いますが、私がこれを無視してお答え申し上げるというわけには参らないので、その点はさよう御了承願います。
  118. 田中彰治

    田中委員長 ちよつと河井証人、あなたにお聞きしますが、今も吉田総理が調べられないことは調べられないとおつしやつているのだから、先ほど田渕君から、この造船問題に対して私があなたに調べられたかということを言われておるのだが、調べられておるのなら調べられておる、調べれらておらないのなら調べられておらないとはつきりしたらどうですか。
  119. 河井信太郎

    河井証人 委員長の御趣旨よくかわるのでありますが、私どもその点について許可を受けておりませんので、ここでお答えしてよろしいのかどうか。実は明確にいたしたいのでありますが、それをもつて御了承願いたいと思います。
  120. 田中彰治

  121. 田中角榮

    田中(角)委員 証人お疲れでありましようから、簡単に三点ばかり御質問を申し上げたいと思います。これはこの委員会においてのこの種の国政調査に対する将来の問題を考えまして、法務大臣、検事総長検事正に伺いたい問題でありましたが、今までその機会もなく、今日に至りましたが、特に第一線の河井さんがおいでになりましたので、過去の問題とひつくるめて重大な問題に対して簡単に所見をお聞きしたいと思うわけであります。  その第一点は、国会開会中における議員逮捕の問題であります。この議員逮捕の問題に対してはいろいろなことが言われておりますし、またいろいろな説もなされておりますが、このたびの佐藤榮作君に対する逮捕許諾請求の問題にからみ指揮権発動ともなり、この問題が今ほど世論に大きく上せられたときはありません。その意味において、国民のすべてがこの問題を注目しておるときでありますので、この問題に対する一つの解決点と申しますか、調和点を見出すには非常にいい機会にぶつかつたのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。特に逮捕権の問題につきまして、逮捕請求の最終責任者は勾留判事の名においてなされるのでありますが、これは法律上の問題でありまして、いわゆる第一線の担当検事が合議の上で逮捕の請求をなすべきかいなかということが、逮捕請求に対しては一つの大きなポイントになるわけであります。そういう意味におきまして私は特に河井さんに伺つておきたいのでありますが、国会開会中の国会議員の逮捕については三つの段階があつたと思います。その一つは、新憲法下の議員逮捕でありますが、占領軍治下における逮捕請求の問題が一つ。もう一つは、非常に問題になりましたが、今回の十九国会開会中における逮捕の問題であります。これは新しい憲法下でありますが、占領軍が撤退し、完全に独立国家なつ日本としての最初の逮捕請求であります。第三段としては、将来の国会議員に対する逮捕請求という問題であります。こう三つにわけられると私は思うのであります。これは議論をするのではありませんが、非常に重大な問題だろうと思います。その意味におきまして、私はこのたびの十九国会開会中においてなされた議員の逮捕ということがいいとか悪いとかいうことを論ずるのではなく、将来のこの問題に対してお聞きをいたしたいのであります。  憲法には明らかに国会の開会中議員を逮捕してはならないという不逮捕の特権が明記されております。と同時に別に、別の法律の定めのある場合逮捕してもよろしいという規定があります。国会法には国会の議決があつた場合逮捕してもよろしい、こういうふうになつておりますから、今までの逮捕請求に関しては法律通りに運用せられております。しかしこの問題はただ法律の解釈だけによつて運用せらるべきものではなく、いわゆる憲法の精神に背反してはならないということは動かすことのできない問題だと思います。もう一つ第二の段階において起つて来る問題は、当然国会国権最高機関である、こう規定せられておる。議員の審議権、すなわち新しい憲法における主権は在君から在民になつた、いわゆる在民憲法である現憲法下、国民の直接選挙によつて出て来た国会議員というものが、明治憲法時代の国会議員よりも非常に位置が高くなつておる。もつとはつきり申し上げると、天皇権の七百何十分の一かを持つておる、こう極言してもいいのではないか。こういう国会の制度にあるところの議員の審議権と事件捜査するために必要な逮捕勾留権と、こういう問題が論じられるときにいずれを優先するか、こういう問題にぶつかるわけであります。いずれを優先するかの問題になると非常に議論がありますが、私はすなおに考えてみて、国会国権最高機関である、こういう規定をまず第一番に前提とし、もう一つは国会の開会中逮捕をしない、逮捕をしないということはしてはならないというふうに極論をしても、新憲法の解釈は間違いではない。私はこの第二のものを前提にして考えておるわけであります。それは旧憲法時代において、議員の力が今よりも非常に小さいときであります。天皇権が存在し、議員はただに協賛議員であつたという場合でさえも、国会開会中逮捕の先例は全然ありません。ないのみならず、東条軍閥時代においてさえもすでに逮捕せられておつた者であつても、国会開会の前日これを釈放するというのが、明治憲法以来の先例であります。中野正剛氏が警視庁から釈放されたのもその例に漏れないわけであります。にもかかわらず、なぜ新憲法において国会議員の職責が非常に高くなつたにもかかわらず、こういうふうに逮捕許諾せられることが多くなつたのであろうかという疑問が当然わいて来るわけであります。戦後の議員の素質が悪くなつたのだ、こう一言に片づけてしまう一部の方々もあるでありましようが、私はしかく簡単に考えるべき問題ではないと思います。一つの例は、これは、私も率直に申し上げますと、占領治下において検察庁の意見にさからつても、検察庁の方々があまり賛成をせられない状態においてさえも、逮捕した例があります。これは芦田均氏の逮捕においてしかりであります。大野伴睦氏の逮捕においてもしかりだという説が流布されております。私たちも当時不当財産調査特別委員会委員として、しよつちゆう検察庁との連絡にも当つたのでありますが、堀ばたの方々の言うことでもうやむを得ないのだというような意見も出ておつたことは、世間周知の事実であります。そういうときに国会開会中の議員の逮捕が行われたのでありますが、これは占領軍の治下にあつて日本人がどうにもならなかつた状態であつて、天皇権に優先し、憲法に優先する大きな力があつたので、このような前例が開かれたのでありますが、少くとも日本が完全な独立国家になつてからの状態においては、明治憲法下であつてさえも逮捕許諾の請求がなかつたのになぜ逮捕請求が出るかという問題は、必ずしも検察庁の意見だけで納得するわけに行かぬのであります。ただに私が今議員の職にあるからをもつて言うのではありません。日本の主権の存在の尊厳さを考える場合、私はこの問題には深く思いをいたしておるのでありますが、特に河井さんは、第一の段階においても第二の段階においても、この逮捕請求の所管者として相当の重責にあられたので、この問題に対しては相当お苦しみでもあり、また明快なるお考えもあると思います。ただ、国会の開会中でも捜査上必要があれば逮捕請求は一方的になし得るのです、あなた方がこれを重要な段階であるから拒否するというならば拒否をすればいいじやないですか、こういう議論をなしておりますが、私はこれは俗論だと思う。いやしくも国会においてかかる議論をなすべきではない、こういう考えを持つております。なぜかといいますと、もうすでに新聞、ラジオでどんどんとたたかれておるときに逮捕請求が出て——国会議員というものは選挙によつて出るのでありますから、率直に申し上げると、公選の弱みを遺憾なく露呈しますと、大衆に対して、国権最高機関である議員の職責を全うするためにはこれがいいと思つても、逮捕反対という決議はなかなか出せないのであります。そういう事態を十分御認識の場合は、ここにはおのずから慎重な処置が必要なのではないかと考えるのであります。もしこれを間違つたならば大臣は訴追せられない——私はこれは自由党とか改進党とか野党というので申し上げておるのでは全然ありません。総理大臣の認可がなければ大臣は訴追せられないという意見を持つておられますし、またそういう規定がありますが、來栖大蔵大臣当時は、身柄逮捕は訴追ではないという議論をなされて、訴追せられております。そのために芦田内閣は瓦解しております。非常な大きな問題であります。新刑事訴訟法は、疑わしきは訴追すればいいんだ、実際の判決は裁判官が行うというのではありますが、日本人の感覚において、大臣が訴追せられれば内閣は瓦解するのであります。倒閣の責任は最終的に一体だれが負うのかという問題を、国民が大きく声を上げないのはおかしいとさえ私は思つておる。ただに大衆に迎合することが真に国を思うの道ではない。こういう混乱の時代においてこそ正しく百年の将来に目を転じて、われらは新しき道を開かなければならないと考えておる。その意味におきまして、芦田内閣の倒壊の問題もあり、特に開会中の議員逮捕は——事件の解明はもちろん大切でありますが、このように与野党が接近しておりますときには、予算不通過の責任も負わなければならぬかもしれない、議案不成立の責任もある場合においては負わなければいかぬのであります。それは、われわれはただ訴追をすればいいのだということだけでは私たちはなかなか考えられない。なぜならば、私たちも今国会において裁判官訴追委員会を持つておりますが、疑わしい裁判官を訴追しようと思つたならばどんどん訴追して弾劾裁判所にまわせばいいのだ、こういう考えはいかに戦後のわれわれでも持つておりません。だから、検察庁もお持ちになつておらぬことはもちろん私もわかります。このたびの佐藤君等の問題に対しましても、国会開会中はできるだけ権限の紛淆は避けたいと思つておるのです、そして国政審議の優先権ももちろん認めておるのでありますが、時あたかも開会中に、捜査中の事件の中からこのような大きな犯罪容疑が浮かんだので、開会中といわず逮捕請求をしなければならなかつたという御説明でありまして、私は、過去の事例においてはそれをそのまま全幅の信頼を持つて認めます。しかし将来の問題において、ここまで議論をせられ、ここまで真剣に考えられて来たこの国会開会中の、逮捕権の問題に対し、新しい憲法に書かれた不逮捕の特権——不逮捕の特権などということを議員が言うと、新聞もまた非常に悪く書きますが、議員だけは悪いことをしてもつかまらぬのか、こういう俗論をやられてはだれも日本の大道を守る人はおらなくなります。私はそういう意味で特にはつきり申し上げたいのでありますが、いわゆる憲法の不逮捕権の問題と、これを前提にしたところの国会開会中における議員に対する逮捕、これに対して第一線検事であるところの河井さんは将来どうあるべきだと考えられるか、こういう問題をひとつお聞きしたいと思います。
  122. 田中彰治

    田中委員長 芦田内閣のときのことは言わんでよろしいです。今度の融資に関する逮捕の問題たけお答えください。
  123. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点の国会開会中における議員逮捕の問題に対する考え方でありますが、慎重の上にも慎重を期してこれを行うべきであるというお言葉は、私どもはまつたくその通りであると存じております。今回の場合につきましても、私どもといたしましては、逮捕要求をいたしますまでには何回となく上司にも、この結果はこうなるのだということは御報告いたしておるのであります。さきに検事総長検事正も御証言になりましたように、四月十九日までそれについて何らのお話がなかつたのであります。突如として指揮権発動されましたために、ただいま田中委員御心配のような問題が起きて参つたのでありますが、今後におきましても、私どもといたしましては慎重の上にも慎重を期してこの逮捕の問題は扱うべきであると考えております。ただしかし、開会中であるために絶対に不逮捕という考え方でよろしいかということに相なりますと、結局は司法権と立法権とのバランスの問題になるかと思いますので、どこに線を引くかということが、結局法律に特別の定めある場合においてその逮捕を許すという線に現われて来たのではなかろうかと考えております。
  124. 田中角榮

    田中(角)委員 まあそういうお答えになる以外にないと思いますし、また、そのお答え、その通り信用できるのでありますが、実際問題になりますといろいろな問題が起きて来ると思います。国会が、外部より提出せられた、特に法律で認められる道を通じて来た成規の要求に対しては、自分の力でもつてこれを拒否するとか応諾するとかを決定すべきだというのでありますから、その力のない、実際問題として非常にむずかしい国会の状態を考えて、これは私たち自身の手で何とか立法処置を講じなければならぬだろうという結論がつくわけであります。ただ私は、いわゆる検察陣の持つ感覚の中で——感覚というよりも精神と申しましよう、一つの大きな検察の精神であります。この精神はいわゆる鹿を追う者山を見ずで、事件を追究するということは非常に重大なものであります。裁判を行う、事件の解明に当る、これは非常に大きな国政でありますが、いわゆる憲法下における主権といいますか、主権というのが少し表現がまずければ、新しい憲法における議員の地位を考えた場合、国権最高機関である、こういうふうに規定しており、立法も予算の編成も決算の確定も国会の力なくしてはできないのであります。もつと平たく言いますと、まさに戦争が負けるまでの天皇権であります。この調和点というものは相当考えておやりにならないと、将来問題が起きるのではないかという考えを持ちます。私の方は国会法に定めがあるのですから、あなた方の自主的な判断にまかせて逮捕請求をするのだというのですが、これはあなたに申し上げるのは少し筋違いだと思うのでありまして、これは法務大臣、検事総長に対しても十分意見をたださなければいかぬのでありますが、やはり国会開会中は現職議員に対しては逮捕をせない、これが私はほんとうだと思います。もう一つ、しかし絶対しないのだというのでは私はありません。これは国会法にある通り、反乱罪とかそれから現行犯とか、こういうものはおのずから罪に対して区別がなければいかぬのではないか、こういうふうに考えるのです。私は先ほど委員諸君が言われたように、政治資金規正法収賄罪とどちらが軽いか重いかなどという議論をしておるのではありませんが、とにかく開会中の議員に対しては、そういうふうにどうしても逮捕をしなければならないという場合にのみ行うのであつて国会開会中の議員の逮捕が少し延びたために、国会が終るまで逮捕ができなかつたために、ある種の事件がつぶれても、ある意味においては考えなければならぬのではないか、こういうことを私は考えております。これは私個人として非常に深く考えておる。今こんなことを申し上げますと世論の反撃あびて、なかなか通る議論ではありませんが、私はこの問題はひとつ真剣に取組んでいたただかなければならない問題ではないかと思うのであります。特に今この請求権に対しては、勾留判事の名前をもつてやられておるのでありますが、私も先ほど申した通り、大臣を訴追するというよりも、逮捕しただけで内閣は瓦壊するという前例もあるのであります。実際倒閣の責任もあり、予算不通過の責任、解散の責任等も不随して来る検察権の行使でありますから、新しい刑事訴訟法の改正によつて請求権者を裁判官にしましたが、これは検事総長でなければいかぬ。検事総長というよりも、内閣は経由すべきものではなく、国会議員の逮捕においては、内閣の責任において国会に逮捕請求をなすべきだ、こういう議論を私は持つております。そうであるならば、当然このような大きな責任の所在は明らかになるのであります。芦田内閣の倒閣の責任はだれがとるのかというと、これは非常に大きな問題になります。芦田内閣の方々が全部無罪になつた場合にどうなさいます。その問題に対して、判事がいいのか、検事総長がいいのかということはいろいろな問題がある思いますが、これは第一線の方々は、いつでもこういうものに慎重な考慮をなさるのでありましようから、私の意見としてお聞きいただければけつこうだと思います。  あとに一点だけ伺いたいのは、政治資金規正法及び公職選挙法によつて佐藤榮作君が起訴せられておりますが、これは新聞ラジオの報道その他この委員会において明らかにせられた事情によりまして承知をしたのでありますが、同じような問題といいますか、特に政治資金規正法とか公職選挙法違反とか国会議員職務に関する問題は、保守党に所属する議員の問題は簡単に事件になつておるようであります。一つの例を申しますと、選挙違反に対しても、保守党の連中のやつはひつぱれば簡単に割れてしまう。ところが急進政党の諸君はなかなかスクラムが強いので割れない。今いろいろな問題を申し上げますが、いま日政連から政治資金が流されておることは世間周知の事実であります。それだけではなく、数十名の候補者に対して日政連から大きな選挙資金が交付せられておることもまた事実であります。それのみではなく、労働組合員から大きな金が各政党に流れ込んでおります。これは届け出られております。届け出ておるものと出ておらないものとを問わず、こういう問題にも明らかに法律的な解釈を行うと、職務権限に関して収賄をしたというような問題は起き得ると思う。起き得るというよりも、私はもつと明らかな例を言い得る。なぜかと言いますと、とにかく定員法の反対を堂々とスローガンを掲げて反対運動をやつてつて、金をもらつておる。ただ請託があるかないかというところに対して証拠がとれないだけであります。こういう大きな問題がたくさんあつたのでありますが、いわゆる佐藤君に対して政治資金規正法でもつて起訴した検察庁としては、かかる種類の問題に対して、今の検察の陣容が小さくして、この種の問題には手をつけ得ないのか、もしくはこれからでもおやりになるおつもりか。この点に対して一点だけ伺つておきたいと思います。
  125. 河井信太郎

    河井証人 私どもといたしましては、どの党であるからどうというようなことは毛頭考えておりません。またそれを考えないことが検察の生命であると確信いたしておりますので、犯罪があれば、いついかなる場合でもこれを捜査いたす所存でおります。
  126. 田中彰治

    田中委員長 山田長司君。
  127. 山田長司

    ○山田(長)委員 二、三点お伺いいたします。自由党の有田議員の起訴をきつかけに、検察当局が動かれました造船事件摘発中の当局の動向について、捜査方針の中に、積極的に捜査すべしということと、それから政治的考慮は払われるべきではないかという消極論の派とあつたということを聞くのでありますが、部内にそういう対立した底流があつたものかどうか。最初にこれを伺いたいと思います。
  128. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点につきましては、造船事件に関しましては、さようなことは毛頭ございません。ただ検察全般に申しまして、現場の検事第一線検事は、別に政治的な考慮を払うとかこれをどうするとかいうことは考えないで、ただ事の真相を明らかにして行くのが第一線検事に課せられた職務である。政治的な考慮あるいは天下国家を考えてどうするかということは、上司がそれぞれの指示をなすべきことである。私ども検察の部内に入りまして以来、今日まで、さような教育を受け、またさように確信いたして仕事をいたしておるのでございます。
  129. 山田長司

    ○山田(長)委員 有田代議士の起訴に関する法的な解釈を聞こうとするのではありませんが、同氏の釈放後東京や大阪であなたを追放しなければならぬというような、あなたに対する暴言がかなり各地で吐かれておるようであります。この暴言を吐かれたことによつてかなりあなた自身の考え方が強化して、造船疑獄事件というのは河井検事が先頭に立つて検察当局が従来予期していなかつたほど積極的にあなたが政府当局及び自由党に対する圧力をかけたのだ、こういうようなことを自由党の内部の人たちが各地で言われておることを耳にしておるのですが、この点についてあなたはどういうことをお考えになつておられるか、一応伺いたいと思うのです。
  130. 河井信太郎

    河井証人 私は有田議員とは今日まで一面識ございません。事件は一人の検事がどのように考えましてもそれのみで発展するものでもなければ、またそれによつて左右されるものでもございませんので、上は法務大臣、検事総長から、下は現場の第一線検事に至るまで一致協力いたしまして初めて事案真相が明らかになつて参るのでありますから、お尋ねようなことは毛頭ないものであることが明白であると思います。
  131. 山田長司

    ○山田(長)委員 飯野海運の俣野社長の逮捕や有田氏の起訴に相次いで政界の大物の取調べが当時次々と進んで行つたときに、あなた方の部内の岸本次席検事が多少与党的に政治的考慮を払われたということが当時新聞などにうわさされていた事実があるのでありますが、これらについてなかなか言いにくい点もあると思うのですが、そういうことがあつたものかなかつたものか参考に伺いたいと思います。
  132. 河井信太郎

    河井証人 私はさようなことは毛頭なかつたと確信いたしております。
  133. 田中彰治

    田中委員長 河井証人にちよつとお聞きしますが、こんな場合はどうなるんですか。今事件のことであなたは一人の検事で自由になることはないとおつしやるのだが、たとえばもし大きな事件があつて、それを取調べようとしたときに、法務大臣がそれを調べぬでもいいと言われた場合やはり調べられないのですか。いやこれは重大事件だからどうしても調べようといつて調べられるのですか。たとえば田中彰治なら田中彰治が大きな事件をやつた、これを取調べるとき、法務大臣がいや君あれは自由党の者だから調べぬでおけと言つたような場合、あるいは代議士だから調べぬでおけと言つた場合は、ああそうですかと言つて調べられないのですか、それを押し切つて調べるのですかどうですか。
  134. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねような場合には私どもは全力を尽して意見の具申をいたします。今日までそういう場合に事をわけて申し上げて、そしてそれが聞き入れられなかつたという例は、私どもでは今度の指揮権の問題以外にはなかつたのであります。
  135. 山田長司

    ○山田(長)委員 昨年十二月の初めに猪股功逮捕後続いて検挙される手はずになつておつた造船疑獄事件の検挙が経済界の変動をおそれて十二月になされないで一月の七日まで延ばされたということを言われておりますが、この点についての事実はどうですか、一応伺いたいと思います。
  136. 河井信太郎

    河井証人 それはお尋ね通りであります。十二月の年末を控えて山下汽船の家宅捜索をやるかどうかというときに、上司から財界の不安その他を考慮して年を越すまで延ばせという指示がありまして、私どももしごくもつともな御指揮であると存じてその通りにいたしたのであります。
  137. 山田長司

    ○山田(長)委員 ただいま河井検事証言で、私たちが調べた範囲のことでうなずけぬ点があるのですが、それは一月五日に中川に飯野海運社長以下数人が集まりまして、当局の手が伸び初めているからこれを早く隠滅しなければならぬという会合が持たれたと言われているのです。一月五日にそういう会合が持たれた事実が、あなた方の調べの範疇の中から出たかどうか、これを参考伺つておきます。
  138. 河井信太郎

    河井証人 これはもう明らかになつておることでありますから申し上げてよろしいと思いますが、私はそれはまつたく間違つておるのではなかろうかと思います。と申しますことは、もしその当時造船事件の対策を中川で飯野海運の人たちが立てておるほどに心配いたしておりましたものならば、一月七日山下汽船の家宅捜索をいたしましたときに、さきに申し上げましたようないわゆる選挙の際の献金のメモ等の証拠が出て参るわけがないと思うのであります。私どもはまつたく予期しないそういうものが出て来たために、これはどうしても冒頭に申し上げましたように、事実を明らかにして行かなければならぬということでこの事件が発展して参つたのであります。従いましてお尋ねの点は私はなかつたのじやないかというふうに存じております。
  139. 山田長司

    ○山田(長)委員 同僚杉村委員から先ほどあなたに伺われておりますので、その点について詳しく伺うことを避けますが、吉田総理の八月十日の支部長会議におけるあなた方の調べはでたらめであるという暴言について、検察当局は少くともその立場を明らかにする声明くらいはなぜ出せなかつたものか、私は日本検察の威信のために非常にさびしく思うのですが、あなたは責任の担当者としてこれについて何か首脳者に対する意見の陳述くらいしたものかどうか、したとするならばそれを詳細にお話願いたいと思うのです。
  140. 河井信太郎

    河井証人 先ほども申し上げましたように、八月十日の自由党支部長会議における吉田総裁の発表を録音新聞等で承知いたしまして、愕然として私は検事正に対しその真相が何であるかということを確かめていただきたいとすぐ申し上げたのであります。これがもし総裁の真意から出ておる言葉であるとするならば、今お尋ねような、あるいは何かの方法をとらなければならないのではないかということも考えておりました。しかし上司もその点は了とされ、みずからもこの点は明らかにしなければならないということで、それぞれの順序を経て真相を確かめられた結果、先般来当委員会において明らかにされた通り、この点は真意でなかつたという点も明らかになり、さらにその旨の書面も参つたということを聞きましたので、そうなつた以上、さらに声明を出してどうするということをする必要もないじやなかろうかということで、その点はそのままになつたのであります。しかし先ほども申し上げましたように、吉田総裁のその点の発言について、そのこと自体を云々するのではなくて、検察がそのために全国民から受けた不信というものは、私どもとしてはぬぐうべく努力しなければならぬということを考えて、その意見も具申をいたし、上司もこれを了承されておるのであります。
  141. 山田長司

    ○山田(長)委員 私の質問はこれで終ります。
  142. 田中彰治

    田中委員長 証人にちよつとお尋ねしますが、この事件をお取調べなつたときには相当激励文なんか来まして、わずかな金でも金を送つたりした人が大分あるのですが、その人たちから、指揮権発動されてあなたがおやめになつてから、何かそれに対する投書なんか来ませんでしたか。それをひとつ証言してもらいたいと思います。
  143. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点につきましてはずいぶん激励文や金なども寄せられた方もございまして、金を検事がいただくわけにも参りませんので、これはそれぞれ小為替にしたりその他の方法で送り返し、厚くお礼を申し上げておきました。指揮権発動後には、しつかりしろとか真相を発表しろという趣旨の書面もずいぶん参つております。
  144. 田中彰治

    田中委員長 村瀬君。
  145. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 先ほど同僚河野委員証人に対するお尋ねに対しまして、八月十日の吉田総裁の部長会議における一言一句を気をつけて聞いたが愕然とし憤懣やる方なかつたという証言でございました。それはその通りであろうと察するのであります。ところがこの吉田総裁の支部長会議における発言が、いかにまじめな日本検察陣営全体を侮辱した感を与、その権威を失墜させたかということは、これは国民も非常に憤懣やる方なかつたのであります。私はこれと同様くらいに検察陣の一つの威信を疑わしめるものがこの委員会において証言なさつておる点にあると思いますので、それについてこの造船疑獄事件主任検事であられた河井証人にひとつ率直にお尋ねをいたすのであります。  それは去る九月六日の当委員会におきまして、私が佐藤検事総長に聞きましたときに、こういう答弁をなさつておる。リベートとして会社が受取つた中から政界に流れておる分、その分は刑事事件として取扱つた分だけでございます。すでに刑事事件として取扱つたリベートの総額は約二億六千七百万円という総額に上つておりますと、はつきり証言をなさつたのであります。ところがその翌朝小原法務大臣は閣議におきましてこの佐藤検事総長証言はまつたく誤りであつて、実際政界に流れたものは七千万円くらいだということを言われて、それがその日の夕刊に全部大見出しで掲載されました。その翌日七日の日でありますが、馬場検事正は当委員会において、政界に流れたリベートの総額は約一億円だと証言をなさいました。それから間もなくその金額は一億一千六百万円だということになつたのであります。一体われわれの血税であるものがまわりまわつてリベートとなつて、それがしかも政界に不正に流れたということは、これは実に今日の政治に対する不信を招く根本の原因になつておるのでありますが、その金額について検察庁証言なさるものが二億六千七百万円あるいは七千万円、また一億円、一億一千六百万円と次々にわずかな期間にかわつて参るということは、これほど検察陣の取調べ内容に対し国民が不信を抱いたことはないのであります。これは何か今ごろ政界に流れたといえば、それは与党である自由党へほとんど大半が流れたのであろうという感じを持つから、政府を掩護する意味で、少しでも金額を少くしようというふうに検察庁自体がいろいろのそろばんを入れたのではないかという疑いを国民は当時持つたのであります。この数字の出所はおそらく小原大臣がかつてにお述べになつたものでもないでありましようし、帰するところは主任検事河井証人のところからいろいろ出たものではないかと思うのであります。かよう国家の最も峻厳なるべき一円一銭たりとも間違つておれば、それを罪に問う権能を持つておられる検察陣のチヤンピオンとしての河井検事におかれては、こういうふうに数字が短期間に四回もなぜかわつたのであるか、その間のいきさつをひとつ正直に証言していただきたいと思うのであります。
  146. 河井信太郎

    河井証人 リベートの総額並びに内訳についてそれぞれお答えが異なつておることは御指摘の通りであり、私も承知いたしております。しかし検事総長の場合は御承知のように、非常な熱さと疲労が加わつた当委員会の終りごろの発言でありまして、私どもとしても御発言なつ内容の真意を刑事事件と言われたかどうかということをちよつと実は明確に記憶していなかつたような状態でありまして、あの空気を御承知の委員とされましては御推察いただけるかと思います。大臣の発言につきましては、私はそのいきさつを承知いたしておりません。それから馬場検事正の証言は数字のことでありますからかようになつたのだと思いまして、結局書面をもつて後に申し上げました通り、やはり正確を期する意味で書面で申し上げることが一番よいのではなかろうということでかようになつたのでありまして、御不審の点はごもつともと思いますが、今申し上げたような事情にありましたので、この点はさように御承知を願いたいと思います。
  147. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 なるほど佐藤検事総長の二億六千七百万円と証言なさつた当時は確かにお疲れでもあり、また非常に熱いときであつたとは思うのでありまするが、しかしそのときの空気について今あなたがお述べになつたことには私はちよつと了承いたしかねるのであります。その最初の日でありまして、あなたもどこかその辺の席で聞いておられましたし、馬場検事正も聞いておられたのであります。ことにどなたか二人ばかり連れて佐藤検事総長は参つておられまして、田中委員長は、それはだれだ、退席せよというくらいまで一時言われたのであります。小原大臣もその横にすわつておられたのであります。でありますからそうでないのならば、そんなに大きな金額が違つておるならば、ちよつと耳打ちするくらいの親切やあるいは時間は十分あつたわけなのであります。私は二度これを聞き直した。ところが二度ともそうお述べになつた。あなたもどこか横に立つておられたし、また二人連れて来ておられたし、大臣もいらしたのでありますから、二度も聞いて二度も間違つた証言をなさつておるならば、ちよつと耳打ちするくらいはできる。そのために二人もついて来ておるはずなんでありますから。私は、ただ暑さだけでちよつと間違つたともとりかねるのであります。ことにあのときには検事総長は、記憶しておりませんから書面によりますと言つて、謄写刷りをお読みになつたのでありますから、私はそうあいまいな御記憶をそのままお述べになつたとは思えないのであります。しかしだれでも誤ることはあるのでありますから、訂正することはもちろんけつこうでありまして、訂正をしたからどうだということを追究しようとは思いません。少くとも二十四、五時間のうちに四回も数字がかわるということについては、当時の新聞を見、ラジオを聞いた者は、検察庁自体が何か作為のそろばんを入れておるのだという感じを深めたものであり、今も深めておる国民が多いのでございますが、きようはその担当主任検事であられた河井証人がお出になつておられるのでありますから、先ほどの御答弁よりも、もつと何か国民が聞いて、ははあそういうわけであつたのか、それなら何も検察陣が作為的な数字を次々にあげたのはないなと、得心の行くような御答弁はできませんでしようか。
  148. 河井信太郎

    河井証人 それまでお尋ねでありますれば、そのときの事情を申し上げますが、午後から休憩になりまして検事総長が控室にお帰りになつたときに、実は私も確かめたのであります。その点は刑事事件になつたのを言つたのだろうか、どうだつたろうかというので、非常にその点を心配もされておりました。それじやあとで御訂正になつたらということで、たしか委員長にも検事総長が申し上げられたやに聞いておりました。それはあとで訂正されるならというようなことで終つたというふうに伺つております。それで控室へ行きましても疲労もされておりまして、聞いておりました私ども、ついて参りました者も、その点はどうだつただろう、速記をみせてもらわなければわからぬがという程度のいきさつでありましたので、御不審の点はわかりますが、さようなものでなくて、ただ非常に疲労をしておつたというのが真相であります。
  149. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 しからば現在のところリベートのうち政界に流れた金額は、正確に幾らでございますか。
  150. 河井信太郎

    河井証人 それは先ほども申し上げたように、書面をもつてさきに馬場検事正が当委員会に申し上げました数字が正確な数字でありまして、この内訳その他も明確になつております。これはいずれただいま政治資金規正法及び特別背任罪その他で係属しております公判において証拠上明白になつて参る次第でございます。
  151. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 しからば現在係争中の問題が公判の進行と同時に、この一億一千六百万円の行先は全部明白に公表される、こういうきようの御証言であつたと了解してよろしゆうございますか。
  152. 河井信太郎

    河井証人 その通りでございます。
  153. 田中彰治

    田中委員長 吉田賢一君。
  154. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 河井証人お尋ねいたします。造船融資の元締めは何といいましても開発銀行だつたと思います。そこで開発銀行は、船会社調査はもちろん、造船関係のあらゆる事情の調査は当然しておるのでございますが、検察庁といたしましては、すでに開発銀行融資の手順とか決定のいきさつとか、そういうものはお調べになりましたか。
  155. 河井信太郎

    河井証人 それはもちろん調べております。
  156. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 五十数社の船会社のうちには、われわれの常識から考えてもずいぶんいかがわしいと思われるものがあるわけであります。例をあげますれば、すでに起訴されておる古川鉄男氏の関係しておつた新日本海運などで、新聞その他世上にずいぶん喧伝せられたのでございまして、古川鉄男氏のごときは、詐欺横領等前科五犯ということまで伝えられるのであります。こういう人が重要な地位にあつて会社を操従している船会社に対しまして数億円の財政資金を貸し付けるということは、どこから考えましても十分に調査した結果とは思われぬのであります。お調べになりましたあなたといたしましては、その点についてどういうふうにお感じになりましたでしようか、その感想をお漏らし願いたいと思います。
  157. 河井信太郎

    河井証人 御指摘の点はまことにごもつともでございまして、さような問題については、融資の不当とか不正あるいは融資された金の不当、不正というようなことは、いわば本件の基礎をなす一つの事実でございますので、私どもとしては十分捜査をいたしたのであります。その結果出ましたことは、先ほども申し上げましたように、右の手で、五分の利息は払えないから一分五厘国家で補給してくれと叫びながら、左の手で、それぞれのところへ金を出しておる。しかも船をつくるために必要なものでないのを出しておるというようなことは、断じて許されないのじやないかということがその結論となつて出て来たのであります。ただ御指摘の会社につきましては、目下公判係属中でありますので、いずれ公判においてその点のいきさつが明確になると思いますから、さよう御承知を願いたいと思います。
  158. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私の主として聞きたい点は、この際は借主側の船会社もさることですが、貸しました財政資金を保管して扱つております開発銀行、千億円のわれわれの血税を造船融資に流しておりまする責任者の開発銀行が、前科数犯の人が主宰しておる船会社に数億円の金を貸しつけるということは、何らかの手落ちがそこにあるのでなければならぬと思う。そこであなたは検察当局といたしまして開発銀行自体の法規上の、業務上の責任はどうか。あなたは山下汽船の二千万円の手形が貸しつけられておるということに疑惑を抱いて、それが捜査の端緒になつたごとき御説明があるごとくに、開発銀行国民から預かつておる尊い財政資金を、こういうような前科者がかきまわしておるようなアプレ船会社に何億円も貸しつけるというようなことがある以上は、開発銀行の貸付の手続自体に相当欠陥があるのではないか。そこに何らかの不正がひそんでおるのではないかというような疑いを持つのは私は常識だと思う。そこで開発銀行に対してそういう方面に対する御捜査が行われたかどうか、これを聞きたいのであります。
  159. 河井信太郎

    河井証人 御指摘の点につきましては、私どもとしては捜査はいたしました。いたしましたが、しかしそれについて刑事責任を追究するよう容疑というものはございませんでした。
  160. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は別の面からちよつと聞いてみたいのですが、開発銀行は何がしのリベートの数額になるか、これは別に伺いますが、開発銀行は一定の目的を定めて約束をした範囲内においてのみ融資もし、またその使用の目的に反しておる場合には返還せしめなければならぬ義務があると思います。これは別の法律の根拠によつてそう思いますが、そういうようなときに私は目的外の使用の金が多額に流されておるというときには、やはりそこに何らかの刑事的責任がなければならないと思うのです。あるいはそれが刑訴の犯罪の構成はいたしましても、便宜起訴しなかつたというような場合ならば別でありますけれども、ともかく最低数億円と見られるこのリベートのうちに、かなり悪質なものがあるというときには、貸した方に対しましても私は相当追究の手が延べられなければならぬと思う。ところが一向に貸し付けた方の責任者について世上伝えられることもなく、またあなたの方におきましてもこの方につきましてはあまりお述べにならぬ。私はやはりここは目のつけどころが、船会社あるいは造船所等に重きを置いて、貸した側の方にはあまり重きを置かれなかつたのではないだろうか。しかしながらわれわれの財政監督的な国会の立場というよう角度からいたしますると、この貸しつけた側の責任というものは、よしんば究極において刑事責任を負担しないまでも、政治的な、財政的な、もしくは業務的な、道徳的な、あらゆる角度から相当大きな責任を負わなければならぬ、こう考えております。それであなたはそれは刑事責任を負うまでにも至らなかつたという御見解らしいのでありますが、それはまたどういうわけなんでしようか。まあ失礼ですが、これも逃げてしまいなすつても困るのでありますけれども、一体どういうわけでそれを深く追究することをなさらなかつただろうか。時間がなかつた、手がなかつた、そこまで及ばなかつた、指揮権発動によつて打切りになつてしまつたような事情が起つたことによるならばいざ知らず、それはどうなんでありましようか、その点をひとつお漏らしといいますか、お答えを願いたいのであります。
  161. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点は、なるほど結果から見ますと、融資された金がリベートとかその他に使われておるという点で、こういう余分なものを貸し出すという銀行の責任もあるのではないかという御意見、まことにごもつともでございますが、それならば貸すときにそういうものがわかつてつたのにかかわらずこれを削減しなかつたという点の責任があるのではないかというところまでその責任を追究し得るかということになりますと、私ども犯罪捜査を担当いたしております者としては、その点の証拠がない以上、予断臆測をもつて調べるというわけには参らない。結局審査の材料とか、審査の方法とか、あるいは審査の場合にそれについて余分なものを見ておつたのではなかろうかどうかというような点をしさいに捜査した結果、さような点について手心を特に加えたと認められるようなものはなかつたということが明確になりましたので、なるほど結果から見ると不当な点もあるということにはなりましようけれども刑事責任を追究するという段階には至らなかつたのであります。
  162. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 村瀬委員の御質問に対しまして、このリベートの額をある角度から御説明になりましたのですが、犯罪性の有無にかかわらずあなたが御調べになりました範囲におきましていわゆるリベートは一体何ほど出たのでしようか。あるいは伝えられるところによると数十億円出ておるという説もあるのでありますが、いわゆるリベートはどれほど出たのでありましようか。
  163. 河井信太郎

    河井証人 証拠上明白になりましたものは、さきに書面をもつて申し上げた通りでございます。
  164. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 証拠上明白になつたというものは、それによつて起訴したという御説明に次はなるわけでありますが、私が伺おうとするのはそうではなくて、証拠上明白の有無にかかわらず、あるいは推定したのがどれだけあつた、証拠上明白にならざるものがどれだけあつた、犯罪性ありと認定したものがどれだけあつた、そうでなかつたものがどれだけあつた、こういうふうな数字は御説明あつてしかるべきだと思うのであります。何となれば一体造船融資につきましてわれわれが審査を続けておりまするゆえんのものは、リベートの行方を探求するということが重要な目標であります。従つてそのリベートの総額というものはあらゆる角度から検討して行かなければならぬのであります。幸いにあなたは国家の機関として莫大な経費を使用なさつた検察陣の重要な一員といたしまして、それを主として御担当になつたのでありますから、終局における刑事責任を負うべき証拠の有無にかかわらず、あらゆる意味におきまして、最初このくらいのものが出た、これは一つの推定であつた、その後こういうふうになつたとかいうような、そういう御説明もひとつしていただくことが、国会のこの調査に対する御協力の態度であろうと私は思う。やはり今われわれがあなたらに求めんとするものは、消極的にあれも言えない、これも言えないということの以外に、また別の立場からでき得る限り国政調査に御協力を願うという一面もわれわれは要請したいのであります。こういう意味におきまして今のような数字をひとつぜひともお示しを願いたいと思うのであります。
  165. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの御趣旨はまことにごもつともでございます。私どもも、許されておる範囲が、今申し上げましたように、書面をもつて申し上げました範囲にとどまりまするので、その他に推定とか、あるいは証拠不十分だけれども現われたというような数字がどれだけあるかということを今明確に申し上げかねる次第でございます。
  166. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならば伺いますが、一体あなたらが法律によつてのみ言う限界と、言うことのできない限界があるはずであります。何ら犯罪性のないものを、あえてこれを言うことを拒否するという根拠が一体あるのでしようか。それまでも一体あなたらのお立場は言うことを制限されるのでしようか。たとえばかりに十億円とか十五億円のリベートがあつたといたします。そのうち十億円は何ら犯罪性はない、しかしリベートであつた、リベートには違いない。リベートにも千種万態、いろいろある。要するに造船所から返つたのリベートとしますと、重役のふところに入つたリベートはあるいは一応疑われる。そうでなくして会計帳簿に当然経理されて行くならば、それはもうかつた、あるいは値切つたということで、一般商慣習上だれも疑わない。しかしそれも一種のリベートに入る。こういうふうに考えて参りますと、千種万態のリベートがなければならぬと私は考える。そういうこともリベートであります。さようでありますが、それは国家の損失であります。国会といたしましてはそれが調査対象になつております。それをどうしても究明しなければならぬ。そういうものまでもあなたらは言うことができないという権限が一体ございましようか。何ら犯罪関係がないという以上は、要するに検察行政上の事務の対象から除外されると思う。しかしながらあなたらはやはりそれを取扱いなさつたのでありますから、それを一体証言することを拒否するという権限がございましようか。
  167. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点も私は国家公務員法百条のいわゆる秘密に属する、「漏らしてはならない」という規定の範囲に属するものと考えております。
  168. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 国家公務員法百条の秘密という、秘密の趣旨、秘密の性質、秘密の限界、そういうものは一体だれが判断するのでしようか。
  169. 河井信太郎

    河井証人 もちろんそれは主解的判断によるということになりましようけれども、しかしそれにはおのずから専恣な判断を許すものでないということは当然のことであろうと存じておます。
  170. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 証人がこれを恣意に判断して拒否するとういことを許されないということはあなたもお認めになつておる。しからばこれはやはり社会通念上、客観性があつて、妥当性がなければならぬと思われます。そういたしますと、われわれは憲法に基きまして国会調査権によつてこれを行つておるのであります。そういたしますと、あなたの処分し得るものは刑事責任を負うべき犯罪性のあるものに限られておる。そういうものがあなたの秘匿すべき範囲内に属すべきものだと思う。それ以外のものは民事的争いになろうともあなたらの処分の範囲内ではないわけである。その範囲外の職務上の範囲に属しない対象になつておる数額の金円に至りますまで、あなたが国家公務員法百条の秘密の範疇に属するということは、これは独断じやないでしようか。なぜならば、あなたの上司が国会に提出いたしましたこの数額によりますと、根拠のある、証拠のあるリベートの金額が出ておるわけであります。でありますからそれ以外のものについて言えないということは、これはあなたらの職務対象範囲に属しない数字についてこれをあえて黙秘する、秘密として証言をしないということになるのでありますから、それは結局あなたの恣意によつて証人の恣意によつて証言を拒否する、こういうことになると思うのですが、そういうふうな矛盾をお感じになりませんか。
  171. 河井信太郎

    河井証人 この点は先ほど来申し上げましたように、私はその百条の範囲に入ると存じますので……。
  172. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それはおかしい。しかしこれはお互い時間の関係もありますから多く繰返すことはいたしませんけれども、ここは御承知の通り憲法国会法その他によりまする相当歴史を持つたところの国会国政調査権の行使であります。あなたのお立場は検事といたしまして、検察行政上の事務のそのできごとについて、私ども造船融資範囲内で聞こうとしておるのであります。でありますから、あなたが取捨選択してこれは秘密に密する事項だと言うて述べることを差控え、述べることを拒否するということのその処分をなし得る対象は、あなたの当然の事務の範囲内のものに限られると私は思う。それはつまりあなたの方で上司が文書でこの委員会にお出しになつておる数字であります。今村瀬君にお述べになりました数字であります、その以外の数字、そういうものまでも言えないということは、まつたくそれは独断であり、恣意によるところの拒否に帰するのではないか、こう思うのであります。しかしこれはあなたはそうでないような御見解でありますので、ここでいろいろと繰返しましても議論の応酬ということになりますから私は差控えますけれども、そういうようなあなたらの調子でございますと、一切の国家公務員はほとんど自分の恣意によつて国会のこの調査権の行使に協力することを拒むことが可能になりまして、結局これは憲法上の機関といたしましてのわれわれの権限の行使は満足することができない。言いかえますならば、ほんとうに国会の立場、権限に対して正しい理解を持たぬところの多数の公務員によりまして、少し極言いたしますならば国会の活動が阻害せられるという結果になるじやないか。でありますので、それは上司の許可を得ることが必要であるという御見解ならば、これからでもよろしゆうございますから、文書をもちましてあなたのお扱いになりましたリベートの総額をどうして出していただきたい。そういたしましたら私どもも、開発銀行がリーべートとして莫大な損失をしております、当然回収しなくてはならぬところの資金の数額というものを認定する上におきまして、非常に有力な参考になるわけであります。これはぜひお願いしておきますが、そういう約束を履行していただけましようか、ちよつとお尋ねいたします。
  173. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの御趣旨と私の申し上げておることいささか食い違つておるように思いますが、私は毛頭許されておることを秘匿して国政調査に協力しないというような考えは持つておりません。どこまでも許された範囲では御協力申し上げ、お答えするのが当然の義務であると存じております。しかし刑事事件にならないからすべて職務上の秘密でないのだということには、私どもとしては賛同いたしかねるのでございます。と申しますことは、卑近な例をとりますれば、不起訴事件内容はそれならばどこででもしやべつてよろしいかということに相なるのであります。その点で御了承を願いたいと思います。
  174. 田中彰治

    田中委員長 ちよつと証人に御質問しますが、さつきこの事件開発銀行の罪にならぬとおつしやたが、私は詐欺罪を構成しないということはないように感ずるのです。たとえば開発銀行にこの船を一億でつくつて担保に入れますということを約束しております。ところがこの中から一割とか二割とられますと、開発銀行は一億でつくつた船だと思つておるのだが、これが八千万円の船にしかならないということになりますと、ここで二千万円は開発銀行をはめておるということになりますから、私はこういうような問題は詐欺罪とかそういう問題が出て来るはずであると思います。  いま一つ、あなたはおつしやらぬでいいのですが、私らの方は、いろいろ調べた結果これは不起訴なつたものもございましよう。また今のようなものもございましよう。いろいろなものを見てあなたの手でもつてお調べになつた三十一、二億の金が動いておると、われわれはある程度のもの握つておるのですが、それに対してどうなんですか。ほんとうにひとつ正直に言つていただきたいのです。
  175. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点は、私どもとしてはそれぞれの手続をとつていただきますれば、いつでも明らかにすることができると思いますが、この点は先ほど来申し上げた通りの事情によりまして、今ここで申し上げるわけには行かぬのであります。
  176. 田中彰治

    田中委員長 詐欺の方はどうです。
  177. 河井信太郎

    河井証人 詐欺の点につきましては、私どもも検討を十分いたしました。現にその容疑で逮捕した人もあるのですから。しかしその点について犯罪の証明十分という証拠を得る段階には至りませんでした。
  178. 田中彰治

    田中委員長 証人に申し上げますが、われわれの握つておる三十一、二億というものは不起訴なつたもの、あるいは事件にならぬもの、事件なつたものが一応それだけある。——田渕君がさつき言つたのは、自分がかつてに判断したのだが、われわれのは数字上にそういうものが出たのだとすれば、やはりあなたの方でも多少そういうものをとつてもそう不当でないと思われますか、どうですか。
  179. 河井信太郎

    河井証人 それはなかなかむずかしい問題でありまして……。
  180. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 開発銀行についてもう一点だけ聞きますが、開発銀行が出した資融のうちのリベートなつた総額につきましては、結局開発銀行の損失に帰すべきものと思いますが、起訴された事件リベートになつております金品はとりもどさせる、こういうような手をお打ちになるおつもりございませんでしようか。たとえば開発銀行の出しております融資のうちで——あるいはそれのみとは限らぬと思います。混淆しておると思いますが、開発銀行融資のうち、そのリベートが明らかに犯罪性を帯びて、それが起訴された事件の金になつておるということが認定されるようなものにつきましては、とりもどして行くというようなことはお考えになつておりませんか。
  181. 河井信太郎

    河井証人 それは一般事件と同様に検察庁としては扱つております。ただしかし御心配の点は、大蔵省の方でもいろいろと考えておるやに聞いております。またその書面も参つておりますので、それぞれ御心配の点は善処されることと信じております。
  182. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 不起訴事件についてちよつと伺つておきたいのでありますが、不起訴事件は原則としてこれは証言拒否をしないという建前が私は純理的だと思います。あなたはここにいらつしやるについて、あらかじめ上司と広汎に御協議になつた結果かどうか知りませんが、これはあなた自身の御判断で——ようはあなた自身を呼んだわけでありますから、不起訴事件としては、もしその事件内容をなす事実がわれわれの調査対象をなしておる事実と一致する範囲におきましては、原則として全面的に証言は拒否しないで言わなければならぬ、こう思うのですが、この点についての御見解を伺いたい。
  183. 河井信太郎

    河井証人 私の考えはいささか異なりまして、不起訴事件は、検察従来の扱い方から参りますと公表すべきでないということになつております。しかし国政調査権の必要性から、これに御協力するという面でどの程度明らかにするかということは、やはり上司の許可の範囲にかかつておる問題であろうと存じます。
  184. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこに参りますと、最初杉村委員が問いました点にまた触れて来、また前回私が聞きましたことも触れて来るのでありますが、あなたの頭に持つておる秘密なるものは、必ずこれは国家の利益に重大な影響を及ぼすという制限がついておるのでなければなるまい、こう考えるのであります。従来の扱いも、不起訴事件は概して秘密であつて、外に公表しないというような例であるとおつしやつておりますが、従来はそうかもしれませんけれども、今の具体的な問題は国政調査対象としての証言であります。でありますから、あくまでも国会証言法五条の範囲におきまして秘密、同時にそれは国家の利益に重大な不利益な影響を及ぼすという制限条件がつかなければならぬ。だからあなたが従来お考えになつておりますその秘密なるものと、ここで秘密として拒否し得る範囲はまつたく違うのであります。だから何でもかんでもあなたの方では原則として、不起訴事件証言できないのだということは、それはお考え違いで、証言することが原則でなければならぬのであります。でありますから、そこは国家公務員法百条による秘密というその秘密でも、同時にそれは国会証言法の五条による、国家の重大な利益に悪影響があるという条件がついた秘密でないと拒否できない。この点についてのあなたの御見解はどうでしよう。それはまさかそうでないとはおつしやるまいと思いますが、はつきりしておいていただきたい。
  185. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点は、結論は御指摘の通りだと思います。しかしその結論に至る前提には、段階があるんだと思います。第一には私どもが秘密と申すことについて、さらにこれについて許可をおとりになり、許可される段階において今のようなわくがしぼられてきまつて来る、いわゆる国家の利益に重大な影響のある以外のことは言うべきであるという、わくになるのじやないか。従いまして私どもとしては、初めから国家の利益に重大なる影響がないんだから、これは秘密でないのだというわけには参らぬと思います。私はさように解釈いたしております。
  186. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうじやありません。この問題は国会といたしましても非常に新しいケースでざいます。従つて今後の重大な例になりますので、やはり明らかにしておかなければならぬ。究極におきましては内閣の声明の要求というところまで行くのでありますが、その行く道程におきまして、国家公務員が単に国家公務員法百条による秘密であるということを証人自分で判断して、それで証言が拒否できるということで一貫して行くならだ、これはたいへんなことになります。国会はつまたくその運営をその方面から制約されてしまうのであります。事重大であります。そこではつきりしておきたいと思うのでありますが、ここであなたでお答えできませねば、別の機会に法務大臣にその点についても質問するのでありますけれども、あなたも重要な職責にあられた方で、また重大な証言をなさる今の立場でありますので、これはやはり法律的にも正確な解釈判断のもとに、お互いが問答を続けたいと思うのです。解釈を誤まり、誤解した上に問答するような、そういう醜態は私ども残したくないのであります。あくまでもあなたのお立場では国会証言法第五条の国家の利益に重大な悪影響を及ぼすという、そういう趣旨の秘密に限つてのみ私は証言拒否の権限があると思う。その点についてはつきりしておきたいのでありますが、いかがでございましようか。
  187. 河井信太郎

    河井証人 その点は重ね重ねのお尋ねでありますが、私といたしましては、先ほど来申し上げたようなふうに解釈いたしております。また現行法制のもとではそう解釈せざるを得ないのではないかと考えております。ただそのお言葉の中で非常にニユアンスが違いますのは、何でも職務上の秘密で、お前は国会の国政調査に非協力であるやにうかがえるような節がありますが、私どもとしては要するに百条の規定があり、その他の規定によつて法制の制限があるから、その範囲で誠心誠意申し上げておるという点をどうぞおくみとり願いたいと思います。
  188. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたが立場をかえていろいろと証人を御尋問になりますことは、やはり刑事訴証法その他の法律によつておやりになる、非常に峻厳な態度をもつて多くの国民をお調べになるのであります。従つてそれは厳正に法律を守つて行かれる立場をとつておられるのであります。同様に、私どもといたしましても、やはりこの国会における国政調査権なるもののその限界とまたその権限の行使につきまして、制約を受くべきものは厳格にその線を引いて行きたいと思うのです。同時に私どもは、求める証言につきましては、あなたが法律をたてに証言を拒否すると言われる以上は、やはりそこに法律の解釈、憲法の解釈、国会の運営及び検察行政におけるあなたらの使命等との相互の関連におきましても、そこに紛淆することのないはつきりした線をお互いに持ちながら問答することによつて有効な質疑を行つて行きたい、こう思うのであります。でありまするから、あなたが国家公務員法の百条をたてに拒否をされて行くというようなことは、これはどう考えましても、国会証言法の八条の末尾の重大な国家の利益に悪影響するというあの条件を無視されるところのお考え方でありまするので、そういうようなお考え方で証人国会証言を拒否して行かれるということになりましたら、私ども国会の将来というものは確かにそういうような行為によつてほんとうに権限を完全に行うことができないようなことにされる危険を実は感じるのであります。でありますから、そこはひとつ冷静に、最も新しい問題でもあるし、新しい問題であるとともに、重大な関心を国民は持つております、またわれわれも重大な関心を持つてあなたらの証言を求むべく臨んでおるのでありまするから、ほんとうに国の利益に重大な悪影響をするという制約を無視して、単に秘密だから、上司の許可を得て来なければならぬということになれば、それは独断でないかと私ども思うのであります。ここでこれ以上申しませんが、その重要なお互いの食い違いといいまするか、そういう線は、明確な解釈のもとに、統一的に何らの疑義を残さないようにしておかねばならぬと思うのであります、もしあなたが今は拒否なさつたけれども、上司と御相談の上、私の愚言が適当であるとなさるならば、ひとつ文書でもよろしいから、当委員会参考までに出していただきたい。あなたらのように、真剣にこの問題についてお考えくださつてよう臨んでくださる方は、他の一般普通の証人と事かわりまして、非常に重大な影響を委員会の将来の運営にも持ちまするので、ぜひ文書でもよろしいから、見解を明らかにしていただきたい、こう思うのであります。これをお願いしておきます。
  189. 田中彰治

    田中委員長 吉田君、もう時間が二十分も過ぎているのですが……。
  190. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 もう一点だけさせてください。  伺いますと、第一線と言うと何ですが、検挙などなさる検事からただいま何か部長か副部長というような地位にお移りになつようでございますが、これは事実でございますか。またこれは今度の造船疑獄について何か直接関係でもあることでしようか、この点をちよつと伺つておきたいのであります。
  191. 河井信太郎

    河井証人 刑事部の副部長というのにかわりましたけれども、これは単に内部の事柄でありまして、大して相違はないのであります。
  192. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私の聞きたい点は、あなたは長い間造船融資事件について努力なさつた中心検事であつて、主任であつて、多数の事件起訴なさり、国会議員起訴なさつて来ておりまするが、突如としてというか何ですか、その一線からお退きになつておりまするのは、造船融資事件関係があるのでしようか、こういう点であります。
  193. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点は、全然そういう関係はございません。必要があれば、いつでもまた出て参れるのであります。
  194. 田中彰治

    田中委員長 大矢君。
  195. 大矢省三

    ○大矢委員 私は、時間も相当たつておりますので、ごく簡単に二点だけお伺いしたい。それは御承知の通り決算委員会日本開発銀行融資が適当であるかどうか、有効に行われておるかどうかということを調べればいい、そこでこの問題で数回来ていただいてお聞きしていることは、事件が成立しなかつたとか何とかいうことではない、この行方を明かにしたい。そこで今度のこの大きな問題が指揮権発動、それからどうも証拠が不十分でできなかつたということなんですが、少くとも私どもしろうとから考えまして、その専門家である検察陣が国会開会中しかも大政党の幹部を逮捕請求するからには相当の証拠があると思う。そこでそのことのためにこれが成立しなかつたということになると、今後こういう問題は拒否さえすれば成立しないということ、ことに新刑事訴訟法によりまして不利なことは言わぬでもいいということ。  そこで私の一番聞きたいことは、専門家である検事がそういう政党の幹部——海千山千と申しまするか、そういう人を呼んで、すらすらと言うと考えて、これができなかつたか不成立であつた。それをなぜ聞くかというと、そのためにわれわれが調べられなくなつた。帳簿は会社といわず開発銀行といわず全部検察庁が上げてしまつた。それでわれわれは調べる手がない。われわれは申訳ないと思う。従つてこの点は初めからすらすらと言うというふうに考えて請求なさつたのか。これは言うと言わずとは別だ。このごろはだれでも黙祕権は持つているから、言わないけれども、必ず成立するものだという確信でやられたかどうか。一般の人は、私らもそうですが、そんなに甘く考えていたか。そこでこういうふうにうやむやになつた。検察庁がやらなかつたら、われわれは順序を経てできるだけ力を尽してその行方を追究する。当然これは調べられると思う。確信を持つてやつたけれども検察陣がそれを調べてくれるのならけつこうだということになつて、今日こういう状態になつた。これは何か法律に欠陥があるのか、どうすれば今後こういうことが一体明らかになるのかということをこの機会にはつきりさせないと、根拠のないのにやつてみた、結局承諾がなかつたから、幸い成立しなかつたという幕をおろす一つの言い訳になつた、こう言われてもしかたがないと思いますが、この点を……。
  196. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点はまことにその通りでありまして、私どもといたましては、逮捕、勾留すれば、必ず自白するというようなことを考えて捜査をいたしてはおりません。しかしこれは釈迦に説法のような言葉になりましようが、贈収賄事件というのは贈賄犯罪構成要件収賄犯罪構成要件とは別個でございます。従いまして、贈賄者が職務に関する不法の報酬であるとして金を渡したという供述をいたしておりましても、それだけで収賄犯罪の証明にならないのであります。収賄犯罪構成要件を充足する事実に対する証拠を得なくてはならない。それは収賄者から単に賄賂として受取りましたという自白がありましても、御承知のように、憲法では自白一本では有罪の判決ができないのであります。今日まで経験いたしました事実から申しますれば、どうもさような場合に自白を得るというようなことは大体予想されない。しかしながら収賄者を逮捕勾留して、交通を遮断して取調べるという——必要は——贈賄者が逮捕勾留されておる間に交通を遮断しなければ、これは職務に関する不法の報酬でないという弁解が常に立つのであります。具体的に申しますと、いや金は受取つたけれども、あれは先に貸した金の返済としてもらつたのだ、職務に関する不法の報酬ではないという弁解が出たといたしますと、ただちにそれは贈賄者が勾留されておるところへ通謀されて、借用証なり手形なりが出て来て、貸借関係であるということで事件はつぶれてしまう。だからさような弁解が出た場合に、双方が交通遮断されておれば、検事はただちにその貸借関係があつたかなかつたかという点の取調べをして、事実無根であるということで真相を発見して行くことができるのであります。私どもが特に交通遮断をしなければならないと常に申します理由は、そこにあるのであります。例を涜職罪にとつてみますと収賄者については第一に職務に関する不法の報酬として金を受取つたという事実の証拠がなければなりません。そのためには、どのよう職務上の便宜供与について依頼を受けたか、自分職務に関する依頼であると思つて尽力したか、収賄者がどのよう職務上の尽力をしたか、あるいは依頼を受けて——どもは請託と申しますが、請託を受けてどのように尽力したか、尽力した結果どのような請託実現が行われたか、それについて授受された金は請託実現の謝礼であるという事実があるのかないのか、さらに贈られた金は自分職務に関する報酬であると思つて受取つたかどうか。かような点の証拠を一つ一つ集めなければ、収賄罪の成立ありとは言えないのであります。世間では、金が動いておる、公務員であるから、それでなぜ涜職起訴できぬかという言葉をよく耳にいたしますけれども刑事上の責任を追究する犯罪の証明というものがそれほど簡単なものではないことは、皆さん自身がそれぞれのお立場からよく御承知だと思うのであります。翻つて御指摘の現在の法制ではどうかと申しますと、賄賂であると思つて受取りましたという証拠は、収賄者の自白以外にはあまり証拠はないのであります。ところが刑事訴訟法は供述拒否権を認めております。言いたくなければ言わぬでもよろしいのだ。さような場合に、被疑者の供述以外には、求められない証拠を規定しておきながら、その立証責任を検察官に負わせておきながら、片方では言わなくてもよろしいということは、私は不能をしいておる規定であると言わなければならぬということを常に主張するのであります。さような点から捜査は非常に難渋する。たとえば殺人におきましても、殺すつもりで切りつけましたという犯意の立証をするには、本人の供述以外にはなかなか求められないという点が、御指摘の点としては今後に残された非常に重要な問題になつて参ると思うのであります。
  197. 大矢省三

    ○大矢委員 それではもう一点。先ほど申しするように、われわれはこの職責上、国民の知りたいというリベートの行方というものをどうしても知らなければならぬ。それでこれは今起訴して裁判中であるからということで、いろいろ質問に対してもお答えがないようでありまするが、裁判の結果そういう総額的なものはわかるのですか、わからないのですか。それといま一つは、これはくどいようでありますが、吉田委員からお話のありましたように、総額そのものがわからない、あるいはわれわれがそれを調べることが職責であるところの調査権に対して協力しないという意識的なものでなくして、先ほどから申しまするように、われわれは調べたいけれども、一切の調べるところの証拠品といいますか、そういう書類がないのですから、私は言葉は悪いけれども、こういう問題の結果から行きますと、意識的ではありませんけれども、われわれは調査権が妨害された。言葉は悪いかもしれませんが、協力的ではない。われわれが調べようと思つたつて、逆にそれが調べられなくなつている。そこで人に関する名誉であるとかそういうことは別として、総額これだけあつたから犯罪にはならなかつた、リベートとしてはこれだけあつたのだということ、それまで言えないというのだから、われわれはどうしたらいいか、どう調べられるか、このことなんです。それは事件が済めば帳簿はみな返してしまうから、そこで大いに調べなさい、こう言われるのか。あるいは、今は言えないけれども、裁判途中にあつて必ず総額なり全貌の真相が明らかになるから、それまでじつと待つてくれ、こう言われるのであるか、私はこの点だけを聞いておかないと、国民から受ける結局は決算委員会調査権そのものをあいまいにされたというそしりは免れぬと思う。また私どもも責任があるので、この点だけをひとつ明らかにしていただきたい。
  198. 河井信太郎

    河井証人 お尋ねの点につきましては、起訴されております分については当然公判廷において明らかになつて参ります。それから起訴の有無につきましては、明らかにならないかもしれないと思うのでありますが、大体は明らかになると思います。と申しますのは、現在起訴されております特別背任関係の関連事件として明らかになつて参ると思います。それからもう一つ国政調査妨害の点という問題は、これはどうも立法上の措置にまたなければ、私どもが申し上げてもどうしようもない、かように思つております。
  199. 田中彰治

    田中委員長 国鉄の経理に関して杉村沖治郎君から動議の申出がありますから、発言を許します。  その前にちよつと証人に申し上げます。以上で証人河井信太郎君に対する尋問を一応打切ります。本日は御苦労様でございました。     —————————————
  200. 杉村沖治郎

    杉村委員 今日私がここに動議を提出いたすゆえんのものは、政局がこういう状態になつておりまするし、この決算委員会がどの程度まで政局の変動前にやれるかということも考えなければならぬので、その議事進行上、ここにあらかじめ国鉄の経理について調査を開始することを動議として出すわけであります。それは日本通運株式会社日本交通公社等に対するところの財政経理があのままになつております。一方日本交通公社はこのごろは非常な新築をしておるのであります。さらに株式会社鉄道会館は六階までつくつておるのでありますが、これがどういう経理でつくられたか。東京駅の状態を見ますると、腰かけすらない。あそこはほとんど大丸のいわゆるデパートということになつてしまつておるのであります。これらの点に関して国鉄の経理を調査するということをここに動議として提出いたしますから、それらの進行等につきましては、委員長に一任して調査するということの御決議が願いたいと思います。
  201. 田中彰治

    田中委員長 お諮りいたします。ただいまの杉村君の動議は継続審議にもなつておることでありますから、杉村君の動議通りに決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立
  202. 田中彰治

    田中委員長 賛成者全員。よつて提案通り決しました。     —————————————
  203. 山田長司

    ○山田(長)委員 本委員会吉田総理を証人出頭義務違反者として告発しておりますが、吉田総理は明十七日帰国することになつておるので、この際あらためて吉田総理を日本開発銀行外航船舶建造についての融資に関する不正不当の事実及び船主選考等並びにこれらに関する諸般の事項について証人として、来る十一月二十五日午前十時当委員会喚問することを動議として提出いたします。
  204. 田中彰治

    田中委員長 ただいま山田長司君御提案の動議につきましてお諮りいたします。すなわち山田長司君提案の通り、内閣総理大臣吉田茂君をあらためて証人に決定し、来る十一月二十五日午前十時本委員会出頭を求めるに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  205. 田中彰治

    田中委員長 起立多数。よつて提案通り決しました。  証人喚問の手続等につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 田中彰治

    田中委員長 御異議なきものと認め、さようとりはからいます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十五分散会